(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】路側中継装置、中央装置、及び信号情報の提供方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20240925BHJP
G08G 1/095 20060101ALI20240925BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20240925BHJP
【FI】
G08G1/09 D
G08G1/095 C
G16Y10/40
(21)【出願番号】P 2021574468
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2020041047
(87)【国際公開番号】W WO2021152947
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2020013686
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡山 藤治
(72)【発明者】
【氏名】石丸 弘之
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/126379(WO,A1)
【文献】特開2016-051435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
G08G 1/095
G16Y 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への情報提供を無線で行う通信システムに属する通信装置とは別体の装置である路側中継装置であって、
下記の第1回線が接続される第1通信部と、
下記の第2回線が接続される第2通信部と、
下記の第3回線が接続される第3通信部と、
前記第1通信部と前記第2通信部との通信を中継又は傍受する通信処理部と、
前記第1通信部が受信する交通信号制御機を制御するための制御指令と、前記第2通信部が受信する前記交通信号制御機が実行した制御内容とに基づいて、車両向けの信号情報を生成し、生成した前記信号情報を前記第3通信部に出力する情報処理部と、を備える路側中継装置。
第1回線:交通管制システムの中央装置との有線通信のための通信回線
第2回線:交通信号制御機との有線通信のための通信回線
第3回線:
前記通信装置との有線通信のための通信回線
【請求項2】
前記第2通信部は、
階梯変化時に前記交通信号制御機が送信する実行階梯情報を受信し、
前記情報処理部は、
前記実行階梯情報の受信タイミングに基づいて、前記信号情報の生成に必要な信号制御プランにおける階梯の継続時間を補正する請求項1に記載の路側中継装置。
【請求項3】
前記交通信号制御機に繋がる信号灯器の現在灯色を監視する灯色監視部を、更に備え、
前記情報処理部は、
前記現在灯色の変化タイミングに基づいて、前記信号情報の生成に必要な信号制御プランにおける階梯の継続時間を補正する請求項1又は請求項2に記載の路側中継装置。
【請求項4】
前記交通信号制御機に繋がる信号灯器の現在灯色を監視する灯色監視部を、更に備え、
前記情報処理部は、
前記現在灯色の遷移状態に基づいて、前記交通信号制御機の異常の有無を判定する請求項1又は請求項2に記載の路側中継装置。
【請求項5】
前記情報処理部は、
自装置、前記第2通信部と通信する通信機器、及び前記第3通信部と通信する通信機器のうちの少なくともいずれか1つの異常を検出した場合に、前記異常の内容と前記異常が発生した通信機器の識別情報とを含む前記中央装置宛ての異常通知を生成し、生成した前記異常通知を前記通信処理部に出力する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の路側中継装置。
【請求項6】
前記情報処理部は、
前記異常の発生期間を前記異常通知に含める請求項5に記載の路側中継装置。
【請求項7】
前記情報処理部は、
前記異常を検出した場合に、前記信号情報の出力を停止する請求項5又は請求項6に記載の路側中継装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の路側中継装置と有線で通信する中央装置であって、
前記異常通知を受信する通信部と、
管理項目として機器、内容、及び事業者を含む管理テーブルを記憶する記憶部と、
前記管理テーブルを管理する制御部と、を備え、
前記制御部は、
受信した前記異常通知に含まれる識別情報に対応する通信機器の種別を、前記機器の項目に記録し、
受信した前記異常通知に含まれる異常の内容を、前記内容の項目に記録し、
受信した前記異常通知に含まれる識別情報に対応する事業者の種別を、前記事業者の項目に記録する中央装置。
【請求項9】
前記異常通知には、更に前記異常の発生期間が含まれ、
前記管理テーブルの管理項目には、更に発生期間が含まれ、
前記制御部は、
受信した前記異常通知に含まれる前記異常の発生期間を、前記発生期間の項目に記録する請求項8に記載の中央装置。
【請求項10】
車両への情報提供を無線で行う通信システムに属する通信装置とは別体の装置である路側中継装置が実行する信号情報の提供方法であって、
前記路側中継装置は、
下記の第1回線が接続される第1通信部と、
下記の第2回線が接続される第2通信部と、
下記の第3回線が接続される第3通信部と、
前記第1通信部と前記第2通信部との通信を中継又は傍受する通信処理部と、を備
え、
前記提供方法は、
前記第1通信部が受信する交通信号制御機を制御するための制御指令と、前記第2通信部が受信する前記交通信号制御機が実行した制御内容とに基づいて、車両向けの信号情報を生成するステップと、
生成した前記信号情報を前記第3通信部に出力するステップと、を含む信号情報の提供方法。
第1回線:交通管制システムの中央装置との有線通信のための通信回線
第2回線:交通信号制御機との有線通信のための通信回線
第3回線:
前記通信装置との有線通信のための通信回線
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、路側中継装置、中央装置、及び信号情報の提供方法に関する。
本出願は、2020年1月30日出願の日本出願第2020-013686号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交通管制センターの中央装置と、中央装置と所定の通信回線で接続された交通信号制御機と、交通信号制御機と所定の通信回線で接続された路側通信機と、路側通信機と無線通信する車載通信機と、を備える通信システムが記載されている。
従来の通信システムでは、交通信号制御機は、信号灯色の表示予定時間を含む車両向けの信号情報を生成する。交通信号制御機は、生成した信号情報を路側通信機に送信し、路側通信機は、受信した信号情報を車載通信機に無線で送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る装置(路側中継装置)は、下記の第1回線が接続される第1通信部と、下記の第2回線が接続される第2通信部と、下記の第3回線が接続される第3通信部と、前記第1通信部と前記第2通信部との通信を中継又は傍受する通信処理部と、前記第1通信部が受信する交通信号制御機を制御するための制御指令と、前記第2通信部が受信する前記交通信号制御機が実行した制御内容とに基づいて、車両向けの信号情報を生成し、生成した前記信号情報を前記第3通信部に出力する情報処理部と、を備える。
【0005】
第1回線:交通管制システムの中央装置との有線通信のための通信回線
第2回線:交通信号制御機との有線通信のための通信回線
第3回線:車両への情報提供を無線で行う通信システムに属する通信装置との有線通信のための通信回線
【0006】
本開示の別態様に係る装置(中央装置)は、上記の路側中継装置と通信する中央装置であって、通信機器の異常を通知するための異常通知を前記路側中継装置から受信する通信部と、管理項目として、前記異常が発生した通信機器の種別、前記異常の内容、及び前記異常が発生した通信機器を運用する事業者を含む管理テーブルを記憶する記憶部と、前記通信機器の識別情報に対応する前記通信機器の種別ごとに、前記異常の内容及び前記事業者を前記管理テーブルに記録する制御部と、を備える。
【0007】
本開示の一態様に係る提供方法は、前記第1回線が接続される第1通信部と、前記第2回線が接続される第2通信部と、前記第3回線が接続される第3通信部と、前記第1通信部と前記第2通信部との通信を中継又は傍受する通信処理部と、を備える路側中継装置が実行する信号情報の提供方法であって、前記第1通信部が受信する交通信号制御機を制御するための制御指令と、前記第2通信部が受信する前記交通信号制御機が実行した制御内容とに基づいて、車両向けの信号情報を生成するステップと、生成した前記信号情報を前記第3通信部に出力するステップと、を含む。
【0008】
本開示は、上記のような特徴的な構成を備えるシステム及び装置として実現できるだけでなく、かかる特徴的な構成をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現することができる。また、本開示は、システム及び装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、交通管制システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、交差点周囲の路側装置の一例を示す道路平面図である。
【
図3】
図3は、交差点周囲の路側装置の別例を示す道路平面図である。
【
図4】
図4は、中央装置6の内部構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、交通信号制御機12の内部構成の一例を示すブロック図である。
【
図6A】
図6Aは、旧制御機と他の通信ノードとの接続形態の一例を示す概略図である。
【
図6B】
図6Bは、新制御機と他の通信ノードとの接続形態の一例を示す概略図である。
【
図7】
図7は、路側中継装置と他の通信ノードとの接続形態の一例を示す概略図である。
【
図8】
図8は、路側中継装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、信号制御指令のフォーマットの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、信号動作状態情報のフォーマットの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、路側中継装置が作成する信号制御プランの一例を示すテーブルである。
【
図12B】
図12Bは、信号情報のヘッダ部及びデータ部に格納されるデータ値とデータの内容を示す説明図である。
【
図13】
図13は、異常監視システムの全体構成の一例を示す概略図である。
【
図14】
図14は、路側中継装置の内部構成の別例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示が解決しようとする課題>
路側通信機を所定の通信回線で交通信号制御機に接続するためには、交通信号制御機が当該通信回線に対応する通信インタフェースを有する必要がある。しかし、既設の交通信号制御機は、路側通信機用の通信インタフェースを有しない旧型である場合が多い。
従って、旧型の交通信号制御機が設置された交差点において、車両向けの信号情報を提供可能な通信システムを構築するには、路側通信機用の通信インタフェースを有する新型の交通信号制御機に交換又は改造する必要があり、コストがかかるという問題がある。
【0011】
本開示は、既設の交通信号制御機を交換又は改造しなくても、車両向けの信号情報を車両に提供できるようにすることを目的とする。
【0012】
<本開示の効果>
本開示によれば、既設の交通信号制御機を交換又は改造しなくても、車両向けの信号情報を車両に提供することができる。
【0013】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態の路側中継装置は、下記の第1回線が接続される第1通信部と、下記の第2回線が接続される第2通信部と、下記の第3回線が接続される第3通信部と、前記第1通信部と前記第2通信部との通信を中継又は傍受する通信処理部と、前記第1通信部が受信する交通信号制御機を制御するための制御指令と、前記第2通信部が受信する前記交通信号制御機が実行した制御内容とに基づいて、車両向けの信号情報を生成し、生成した前記信号情報を前記第3通信部に出力する情報処理部と、を備える。
【0014】
第1回線:交通管制システムの中央装置との有線通信のための通信回線
第2回線:交通信号制御機との有線通信のための通信回線
第3回線:車両への情報提供を無線で行う通信システムに属する通信装置との有線通信のための通信回線
【0015】
本実施形態の路側中継装置によれば、情報処理部が、第1通信部が受信する交通信号制御機を制御するための制御指令と、第2通信部が受信する交通信号制御機が実行した制御内容とに基づいて、車両向けの信号情報を生成し、生成した信号情報を第3通信部に出力するので、交通信号制御機が第3回線に非対応であっても、車両への情報提供を無線で行う通信システムに属する通信装置に信号情報を送信できる。
従って、既設の交通信号制御機を交換又は改造しなくても、車両向けの信号情報を車両に提供することができる。
【0016】
(2) 本実施形態の路側中継装置において、前記第2通信部は、階梯変化時に前記交通信号制御機が送信する実行階梯情報を受信し、前記情報処理部は、前記実行階梯情報の受信タイミングに基づいて、前記信号情報の生成に必要な信号制御プランにおける階梯の継続時間を補正することが好ましい。
【0017】
本実施形態の路側中継装置によれば、情報処理部が、実行階梯情報の受信タイミングに基づいて、信号情報の生成に必要な信号制御プランにおける階梯の継続時間を補正するので、補正しない場合に比べて、車両向けの信号情報の精度を高めることができる。
【0018】
(3) 本実施形態の路側中継装置において、前記交通信号制御機に繋がる信号灯器の現在灯色を監視する灯色監視部を、更に備え、前記情報処理部は、前記現在灯色の変化タイミングに基づいて、前記信号情報の生成に必要な信号制御プランにおける階梯の継続時間を補正することが好ましい。
【0019】
本実施形態の路側中継装置によれば、情報処理部が、現在灯色の変化タイミングに基づいて、信号情報の生成に必要な信号制御プランにおける階梯の継続時間を補正するので、補正しない場合に比べて、車両向けの信号情報の精度を高めることができる。
【0020】
(4) 本実施形態の路側中継装置において、前記交通信号制御機に繋がる信号灯器の現在灯色を監視する灯色監視部を、更に備え、前記情報処理部は、前記現在灯色の遷移状態に基づいて、前記交通信号制御機の異常の有無を判定することが好ましい。
【0021】
本実施形態の路側中継装置によれば、情報処理部が、現在灯色の遷移状態に基づいて交通信号制御機の異常の有無を判定するので、交通信号制御機の異常の有無を正確に判定することができる。
【0022】
(5) 本実施形態の路側中継装置において、前記情報処理部は、自装置、前記第2通信部と通信する通信機器、及び前記第3通信部と通信する通信機器のうちの少なくともいずれか1つの異常を検出した場合に、前記異常の内容と前記異常が発生した通信機器の識別情報とを含む、前記中央装置宛ての異常通知を生成し、生成した前記異常通知を前記通信処理部に出力することが好ましい。
【0023】
本実施形態の路側中継装置によれば、情報処理部が、上記の異常の内容と当該異常が発生した通信機器の識別情報とを含む中央装置宛ての異常通知を生成し、生成した異常通知を通信処理部に出力するので、上記の異常の内容と当該異常が発生した通信機器の識別情報を、中央装置に通知することができる。
【0024】
(6) 本実施形態の路側中継装置において、前記情報処理部は、前記異常の発生期間を前記異常通知に含めることが好ましい。このようにすれば、異常の発生期間についても中央装置に通知できるようになる。
【0025】
(7) 本実施形態の路側中継装置において、前記情報処理部は、前記異常を検出した場合に、前記信号情報の出力を停止することが好ましい。
その理由は、信号情報の提供に関連する通信機器に異常がある場合は、不正確な信号情報が提供される可能性があるからである。
【0026】
(8) 本実施形態の中央装置は、上述の路側中継装置と通信する中央装置であって、前記異常通知を受信する通信部と、管理項目として機器、内容、及び事業者を含む管理テーブルを記憶する記憶部と、前記管理テーブルを管理する制御部と、を備え、前記制御部は、受信した前記異常通知に含まれる識別情報に対応する通信機器の種別を、前記機器の項目に記録し、受信した前記異常通知に含まれる異常の内容を、前記内容の項目に記録し、受信した前記異常通知に含まれる識別情報に対応する事業者の種別を、前記事業者の項目に記録する。
【0027】
本実施形態の中央装置によれば、制御部が、管理テーブルの各項目に対して上記の記録を実行するので、異常が発生した通信機器の種別ごとに、異常の内容、及び当該通信機器を運用する事業者の種別を判断できる管理テーブルが自動的に作成される。
従って、中央装置のユーザ(交通管制センターのオペレータなど)は、異常発生の事実及び内容の連絡などの対応を迅速に行うことができるようになる。
【0028】
(9) 本実施形態の中央装置において、前記異常通知には、更に前記異常の発生期間が含まれ、前記管理テーブルの管理項目には、更に発生期間が含まれ、前記制御部は、受信した前記異常通知に含まれる前記異常の発生期間を、前記発生期間の項目に記録することが好ましい。
このようにすれば、異常の発生期間を事業者の種別ごとに集計することにより、信号情報の提供に関係する各事業者の評価を行うことができる。
【0029】
(10) 本実施形態の提供方法は、上述の(1)~(7)の路側中継装置が実行する信号情報の提供方法に関する。従って、本実施形態の提供方法は、上述の(1)~(7)の路側中継装置と同様の作用効果を奏する。
【0030】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0031】
〔交通管制システムの全体構成〕
図1は、本実施形態に係る交通管制システムの全体構成を示す斜視図である。
図1には、一例として、中央装置6と交通信号制御機12との通信が、IP通信である場合の交通管制システムが示されている。
図1に示すように、本実施形態の交通管制システムには、交通信号機1、路側センサ2、路側通信機3、車載通信機4(
図2及び
図3参照)を搭載した車両5、及び中央装置6などが含まれる。車両5には、路側通信機3と通信可能な車載通信機4を有する車両と、車載通信機4を有しない車両が含まれる。
【0032】
交通信号機1は、交差点の各流入路に通行権の有無を表示する複数の信号灯器11(
図1では1つだけ図示)と、信号灯器11に含まれる丸灯及び矢印灯などの点灯及び消灯タイミングを制御する交通信号制御機12とを備える。
交通信号制御機12は、中央装置6の管轄エリアに含まれる複数の交差点Ji(図例ではi=1~12)のそれぞれに設置されている。交通信号制御機12は、電話線などの専用の通信回線8を介してルータ7に接続されている。
【0033】
ルータ7は、通信回線8を介して交通管制センターの中央装置6に接続されている。中央装置6は、自装置の管轄エリアに含まれる各交差点Jiの交通信号制御機12とLAN(Local Area Network)を構成している。
従って、中央装置6は、管轄エリア内の交通信号制御機12との通信が可能であり、交通信号制御機12は、他の交差点Jiの交通信号制御機12とも通信が可能である。なお、中央装置6は、交通管制センターではなく道路上や路側に設置してもよい。
【0034】
路側センサ2は、主として交差点Jiに流入する車両台数をカウントする目的で、管轄エリア内の道路の適所に設置されている。
路側センサ2には、直下を通行する車両5を超音波等で感知する車両感知器、インダクタンスの変化で車両5を感知するループコイル、車両5の通行状況を時系列に撮影する監視カメラ、及び、車両5と近赤外線による光通信を行う光ビーコンなどのうちの少なくとも1つが含まれる。路側センサ2は、ミリ波等の電波センサやLidarセンサであってもよい。
【0035】
路側通信機3は、例えば、ITS(Intelligent Transport Systems)無線に対応する路側の無線通信機よりなる。路側通信機3は、中央装置6の管轄エリアに含まれる1又は複数の交差点Jiの近傍に設置されている。
図1の例では、管轄エリアに含まれる交差点J1~J12のうち、重要交差点などの一部の交差点J4~J6に路側通信機3が設置され、その他の交差点J1~J3,J7~J12には路側通信機3が設置されていない。
【0036】
路側通信機3は、道路を通行する車両5の車載通信機4が無線で行う車車間通信の通信フレームを受信することができ、車両向けの提供情報を含む通信フレームを車載通信機4に無線送信することができる。
路側センサ2は、専用の通信回線9により交通信号制御機12に接続される(
図2及び
図3参照)。路側通信機3は、通信回線9とは別の通信回線10により交通信号制御機12に接続される(
図3参照)。
【0037】
車載通信機4は、例えば、ITS無線に対応する車両側の無線通信機よりなる。従って、車載通信機4は、道路を通行中の他の車両5と無線通信(車車間通信)を行うことができるとともに、路側通信機3がダウンリンク送信した車両向けの提供情報を含む通信フレームを受信することもできる。
車載通信機4は、光ビーコンの下方の通信領域において、近赤外線による光通信を当該光ビーコンと行う光通信機能を有していてもよい。
【0038】
中央装置6は、交通管制を担う事業者が保有する1又は複数のサーバコンピュータよりなる。中央装置6は、路側センサ2が計測するセンサ情報や、路側通信機3が車両5から受信した車車間通信情報(以下、「車両情報」ともいう。)などを収集する。
センサ情報には、車両感知器による感知情報(交通量及び占有時間)や、光通信対応の車載通信機4から光ビーコンが受信したビーコン情報などがある。車車間通信情報には、当該情報の生成元である車両5の車両ID、時刻、位置及び速度などが含まれる。
【0039】
中央装置6は、収集した各種のデータを用いて、交差点Jiへの単位時間当たりの流入交通量などの交通指標を算出する。中央装置6は、算出した交通指標に基づいて、管轄エリアに属する交差点Jiを対象として交通感応制御(集中制御)を行う。
中央装置6の交通感応制御には、例えば、所定の系統区間に属する交差点Jiの交通信号機1群を制御する「系統制御」や、系統制御を道路網に拡張した「広域制御(面制御)」などがある。
【0040】
日本国の場合、中央装置6による交通信号制御機12の制御方式には、大別して「歩進制御タイプ」と「テーブル制御タイプ」が存在する。
歩進制御タイプは、中央装置6が、信号灯器11の階梯(ステップ)ごとの継続時間を定めた信号制御プラン(例えば
図11)を決定し、決定した信号制御プランにおいて階梯が切り替わりわる時刻に、所定の灯色の点灯又は消灯を指令する制御信号(歩進指令)を交通信号制御機12に送信する方式である。
【0041】
テーブル制御タイプは、中央装置6が、信号制御プランの元データとなる「信号制御指令」(
図9参照)を交通信号制御機12に送信し、交通信号制御機12が、受信した信号制御指令に基づいて信号制御プラン(例えば
図11)を決定する方式である。
交通信号制御機12は、自身で決定した信号制御プランに従って信号灯器11の表示を切り替える。信号制御プランは、1サイクルごとに当該1サイクル分だけ決定される。本実施形態の交通管制システムは、テーブル制御方式に対応しているものとする。
【0042】
中央装置6は、交通感応制御を実行すると、サイクル、スプリット及びオフセットなどの信号制御パラメータを含む信号制御指令を生成する。中央装置6は、生成した信号制御指令を、制御対象である交差点Jiの交通信号制御機12に送信する。
【0043】
交通信号制御機12は、前回サイクルに実行した制御内容を表す信号制御実行情報を、今回サイクルの開始時に中央装置6に送信する。
信号制御実行情報に格納される情報には、前回サイクルのサイクル開始時刻(最初の階梯の開始時刻)、実行された各階梯の秒数、実行された端末感応制御の種別を表す感応実行種別、及び、車両感知器の感知情報(交通量及び占有時間)などが含まれる。
【0044】
交通信号制御機12は、信号制御実行情報の送信周期より短い周期(例えば毎秒)で、今回サイクルの動作状態を示す「信号動作状態情報」(
図10参照)を中央装置6に送信する。
信号動作状態情報には、例えば、実行中の現示状態と階梯番号を含む実行階梯情報、及び、自機の動作異常(タイマ異常やCPU異常など)を通知するための動作状況などが含まれる。実行階梯情報は、階梯が進行するタイミングで必ず中央装置6に送信される。
【0045】
図1には図示していないが、交差点Jiの近傍において、交通信号制御機12に路側中継装置70,90(
図8及び
図14参照)を接続する場合は、路側中継装置70,90も交通管制システムの構成要素に含まれる。
【0046】
〔交差点周囲の路側装置〕
図2は、交差点周囲の路側装置の一例を示す道路平面図である
図2の交差点J1に設置された交通信号制御機12は、路側通信機3用の通信インタフェースを有しない交通信号制御機(以下、「旧制御機」ともいう。)12Aよりなる。
図3は、交差点周囲の路側装置の別例を示す道路平面図である。
図3の交差点J4に設置された交通信号制御機12は、路側通信機3用の通信インタフェースを有する交通信号制御機(以下、「新制御機」ともいう。)12Bよりなる。
【0047】
交通信号制御機12に関して、新旧の共通事項を説明する場合は、共通の符号「12」を用いる。また、旧制御機特有の事項を説明する場合は、旧型を表す符号「12A」を用い、新制御機特有の事項を説明する場合は、新型を表す符号「12B」を用いる。
図2及び
図3に示すように、交差点J1,J4の路側装置には、交通信号機1及び路側センサ2が含まれる。交通信号機1は、流入路ごとに配置された複数の信号灯器11と、信号制御線13により各信号灯器11と接続された交通信号制御機12とを備える。
【0048】
交通信号制御機12は、中央装置6から信号制御指令を受信すると、受信した信号制御指令に従って信号灯器11の灯色切り替えタイミングを決定する(集中制御)。
交通信号制御機12は、中央装置6から信号制御指令を受信しない場合は、時間帯に応じて信号制御プランを設定する定周期制御を実行する。感知情報に基づく端末感応制御を実行する交差点Jiでは、交通信号制御機12が、信号制御指令で指定された範囲で、信号制御プランに含まれる可変階梯を変動させる場合もある。
【0049】
図2の交差点J1及び
図3の交差点J4では、路側センサ2は、通信回線9を介して交通信号制御機12に接続されている。従って、交通信号制御機12は、路側センサ2と中央装置6との間の有線通信を中継する機能を有する。
図3の交差点J4では、路側通信機3は、通信回線9とは別の通信回線10を介して新制御機12Bに接続されている。従って、新制御機12Bは、路側通信機3と中央装置6との間の有線通信を中継する機能も有する。
【0050】
図2の交差点J1及び
図3の交差点J4において、路側センサ2は、計測したセンサ情報を交通信号制御機12に送信する。交通信号制御機12は、路側センサ2から受信したセンサ情報を中央装置6に転送する。
図3の交差点J4において、路側通信機3は、交差点J4の流入路を通行する車両5と無線通信できるように交差点J4の近傍に設置されている。従って、路側通信機3は、車車間通信により送受信される車両情報S1を含む通信フレームを受信できる。
【0051】
路側通信機3は、車載通信機4から車両情報S1を受信すると、受信した車両情報S1を新制御機12Bに送信する。新制御機12Bは、路側通信機3から受信した車両情報S1を中央装置6に転送する。
路側通信機3は、交通信号制御機12から車両向けの提供情報S2を受信すると、受信した提供情報S2を含む通信フレームを生成し、生成した通信フレームをブロードキャスト送信する。
【0052】
車両向けの提供情報S2には、例えば、道路の渋滞情報、規制情報、及び交差点Ji近傍の道路線形情報などが含まれる。
新制御機12BがDSSS(Driving Safety Support System)に対応する場合は、新制御機12Bは、車両向けの提供情報S2として信号情報(
図12参照)を路側通信機3に出力できる。信号情報は、現時点以降の信号灯器11の表示予定時間を表す情報であって、例えば、各流入路における灯色ごとの表示予定秒数(残秒数)などが含まれる。
【0053】
〔中央装置の内部構成〕
図4は、中央装置6の内部構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、中央装置6は、制御部61、表示部62、通信部63、記憶部64、及び操作部65を備える。
中央装置6の制御部61は、各種情報の収集・処理(演算)・記録、交通信号制御、及び情報提供などを統括的に行う。制御部61は、内部バスを介してハードウェア各部と繋がっており、これら各部の動作も制御する。
【0054】
中央装置6の制御部61は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)よりなるメインメモリと、を含む演算処理装置よりなる。
制御部61のCPUは、記憶部64に格納されたコンピュータプログラムをメインメモリに読み出し、当該プログラムに従って各種の情報処理を行う。制御部61には、FPGA(Field-Programmable Gate Array)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路が含まれていてもよい。
【0055】
中央装置6の制御部61は、前述の系統制御や広域制御(面制御)を実行する。具体的には、制御部61は、収集したセンサ情報などから算出した交通指標(例えば、流入交通量)に基づいて、交差点Jiごとに信号制御パラメータ(スプリット、サイクル長及びオフセット)を設定する交通感応制御を行う。
【0056】
中央装置6の通信部63は、通信インタフェースを備え、通信回線8を介して自装置以外の路側装置と接続される。
通信部63は、所定の制御周期ごとに生成される信号制御指令と、渋滞情報及び規制情報などの交通情報を各交通信号制御機12に送信する。信号制御指令は、信号制御パラメータの制御周期(例えば、1.0~2.5分)ごとに送信され、交通情報は、例えば5分ごとに送信される。
【0057】
中央装置6の通信部63は、交通信号制御機12から、車載通信機4を有する車両5の車両ID、位置情報及び速度情報と、車両感知器よりなる路側センサ2の感知信号を、ほぼリアルタイム(例えば、0.1~1.0秒周期)で受信可能である。
【0058】
中央装置6の記憶部64は、ハードディスクや半導体メモリなどから構成されている。記憶部64は、交通感応制御のための制御プログラムや、交通感応制御に用いる信号制御パラメータの演算プログラムなどを記憶している。
中央装置6の記憶部64は、制御部61が生成した信号制御指令及び交通情報と、LAN側から取得した車両ID、位置情報、速度情報及び感知信号などを一時的に記憶する。
【0059】
中央装置6の表示部62は、1又は複数の液晶ディスプレイなどよりなる。表示部62は、管理エリアの道路地図を表示可能である。表示部62に表示される道路地図には、管轄エリア内の交通信号機1及び路側センサ2を表すアイコンが含まれる。
中央装置6の操作部65には、キーボード及びマウスなどの入力インタフェースが含まれる。交通管制センターのオペレータは、操作部65への操作入力により、表示部62に表示させる画面を切り替えることができる。
【0060】
〔交通信号制御機の内部構成〕
図5は、交通信号制御機12の内部構成の一例を示すブロック図である。
図5に示すように、交通信号制御機12は、制御部21、灯器駆動部22、通信部23、及び記憶部24などを備える。制御部21は、内部バスを介して灯器駆動部22、通信部23、及び記憶部24に接続されている。
【0061】
交通信号制御機12の制御部21は、CPUと、RAMよりなるメインメモリと、を含む演算処理装置よりなる。
制御部21のCPUは、記憶部24に格納されたコンピュータプログラムをメインメモリに読み出し、当該プログラムに従って各種の情報処理を行う。制御部21には、FPGA及びASICなどの集積回路が含まれていてもよい。
【0062】
交通信号制御機12の制御部21は、中央装置6が生成元である信号制御指令に含まれる信号制御パラメータに基づいて、信号制御プランを作成する。
制御部21は、作成した信号制御プランに基づいて、信号灯器11を構成する各信号灯をオン/オフする制御信号(歩進信号)を生成し、生成した制御信号を灯器駆動部22に出力する。
【0063】
灯器駆動部22は、電力線を含む信号制御線13(
図2及び
図3参照)により信号灯器11に接続される。灯器駆動部22は、制御部21から入力された制御信号に応じて、信号灯器11の信号灯色を切り替える半導体リレー(図示せず)を含む。
具体的には、灯器駆動部22は、制御部21から入力された制御信号に従って、信号灯器11に含まれる青色、黄色及び赤色などの各信号灯に供給する交流電圧又は直流電圧をオン/オフする。
【0064】
交通信号制御機12の通信部23は、中央装置6との有線通信を行う通信インタフェースと、路側センサ2との有線通信を行う通信インタフェースとを有する。
交通信号制御機12の通信部23は、中央装置6が生成元である信号制御指令を受信すると、受信した信号制御指令を制御部21に出力する。通信部23は、制御部21から信号制御実行情報又は信号動作状態情報が入力されると、入力された情報を中央装置6に送信する。通信部23は、路側センサ2からセンサ情報を受信すると、受信したセンサ情報を中央装置6に転送する。
【0065】
交通信号制御機12が新制御機12Bである場合、通信部23は、更に、路側通信機3との有線通信を行う通信インタフェースを有する。
従って、新制御機12Bの通信部23は、中央装置6から渋滞情報などの交通情報を受信すると、受信した交通情報を路側通信機3に転送する。また、通信部23は、路側通信機3から車両情報を受信すると、受信した車両情報を中央装置6に転送する。
【0066】
交通信号制御機12の記憶部24は、ハードディスクや半導体メモリなどから構成されている。記憶部24には、制御部21が実行する各種のコンピュータプログラムが格納されている。
記憶部24に格納されるコンピュータプログラムには、信号制御指令、交通情報、センサ情報、及び車両情報などの各種の受信データを、適切な送信先に中継させるための通信制御プログラムが含まれる。
【0067】
交通信号制御機12がDSSS対応の新制御機12Bである場合、記憶部24に格納されるコンピュータプログラムには、車両向けの「信号情報の生成処理」を制御部21に実行させるためのプログラムが含まれる。
交通信号制御機12Bが行う信号情報の生成処理は、後述の路側中継装置70,90(
図8及び
図14参照)が実行する信号情報の生成処理とほぼ同様である。従って、信号情報の生成処理の詳細については後述する。
【0068】
新制御機12Bの制御部21は、車両向けの信号情報を生成すると、生成した信号情報を通信部23に出力する。
新制御機12Bの通信部23は、入力された信号情報を路側通信機3に送信する。路側通信機3は、受信した信号情報を含む通信フレームを所定の送信周期(例えば100m秒)で車両5にブロードキャスト送信する。
【0069】
〔交通管制システムの課題と解決策〕
図6Aは、旧制御機12Aと他の通信ノードとの接続形態を示す概略図である。
図6Bは、新制御機12Bと他の通信ノードとの接続形態を示す概略図である。
DSSS用途では、新制御機12Bが生成した信号情報は、ITS無線対応の路側通信機3により車両5に提供される。従って、車両5のドライバは、受信した信号情報に基づいて、通行予定の交差点Jiの通過可否などを迅速に判断することができ、安全かつ円滑な運転を行える。
【0070】
車両5が自動運転車両である場合は、車載センサでセンシングした現時点の信号灯色と併せて、インフラ側から提供される信号情報と照合することにより、信号灯色の認識精度を向上することができる。
このように、信号情報の提供が自動運転に役立つことを想定すると、自動運転を行う車両5の通行経路に含まれるすべての交差点Jiの信号情報を、車両5に提供できるようにすることが好ましい。
【0071】
図1の交通管制システムにおいて、交差点J1~J3,J7~J12に存在する旧制御機12Aを新制御機12Bに交換するか、路側通信機3との通信が可能となるように旧制御機12Aを改造すれば、自動運転車両に有益な信号情報の提供システムを構築できる。
しかし、例えば日本国において、交通信号制御機12の大部分は、路側通信機3用の通信インタフェースを有しない旧制御機12Aであるから、すべての旧制御機12Aを交換又は改造するのは、コスト面で現実的ではない。
【0072】
また、交通信号制御機12の交換サイクルは20年程度であり、更新に長期間を要するので、自動運転向けの情報提供サービスを迅速に普及させることは困難である。
一方、車両への情報提供を無線で行う通信システムとして、第5世代移動通信システム(5G)などのセルラー通信を利用することが検討されている。しかし、交通信号制御機12は、基地局と通信するための通信インタフェースを備えていないので、いずれにしても、交通信号制御機12の交換又は改造が必要になる。
【0073】
上記の課題を解決すべく、本願発明者らは、交通信号制御機12の近傍に設置可能な路側中継装置(以下、「信号変換アダプタ」ともいう。)70を創案した。この路側中継装置70は、以下の機能1~3を有する。
【0074】
機能1:中央装置6と交通信号制御機12Aとの通信を中継する機能
機能2:中央装置6が生成した交通信号制御機12Aを制御するための制御指令(例えば、信号制御指令)と、当該制御指令に基づいて交通信号制御機12Aが実行した制御内容(例えば、信号動作状態情報)とを用いて、車両向けの信号情報を生成する機能
機能3:信号情報の提供を無線で行う通信システム(例えば、ITS無線システムや移動通信システムなど)に属する通信装置30との通信機能
【0075】
図7は、路側中継装置70と他の通信ノードとの接続形態の一例を示す概略図である。
図7に示すように、路側中継装置(信号変換アダプタ)70には、中央装置6用の伝送路である通信回線8が接続され、交通信号制御機12A用の伝送路である通信回線9が接続され、車両向けの通信装置30用の伝送路である通信回線(例えば、シリアル通信回線、LANケーブル又は光回線など)10が接続される。
【0076】
信号変換アダプタ70と中央装置6との間の通信経路には、ルータ7又はプロトコル変換が可能な中継装置が介在してもよい。
同様に、信号変換アダプタ70と通信装置30との間の通信経路には、LANスイッチ又はメディアコンバータなどの中継装置が介在してもよい。
【0077】
信号変換アダプタ70は、通信回線(第1回線)8が接続される第1通信インタフェースと、通信回線(第2回線)9が接続される第2通信インタフェースと、通信回線(第3回線)10が接続される第3通信インタフェースとを備える。
信号変換アダプタ70は、通信回線8,9間の通信プロトコルを変換して中継する機能を有する。従って、信号変換アダプタ70は、中央装置6に対して交通信号制御機12Aとして振る舞い、交通信号制御機12Aに対して中央装置6として振る舞う。
【0078】
なお、第1通信インタフェースと第2通信インタフェースが同じ通信規格(例えばUD形伝送方式)である場合は、両通信インタフェース間でのプロトコル変換は不要であり、通信回線8,9は同じタイプの通信回線が使用される。
【0079】
信号変換アダプタ70は、中央装置6が交通信号制御機12A宛てに送信する下りフレームと、交通信号制御機12Aが中央装置6宛てに送信する上りフレームとを中継するので、それらの通信フレームに含まれる情報を抽出できる。
そこで、信号変換アダプタ70は、通信フレームに含まれる情報(信号制御指令など)に基づいて、交通信号制御機12Aの制御動作をエミュレートし、車両向けの信号情報を生成する。信号変換アダプタ70は、上りフレームに含まれる情報(例えば、信号動作状態情報)に基づいて、交通信号制御機12Aの動作異常を判定することもできる。
【0080】
信号変換アダプタ70は、生成した信号情報を通信装置30に送信する。通信装置30は、例えばITS無線機(路側通信機3)又はセルラー通信の基地局よりなる。
通信装置30がITS無線機である場合、信号情報は、ITS無線機が車両5の車載通信機4に無線送信する。通信装置30が基地局である場合、信号情報は、基地局からコアネットワークのクラウドサーバに転送される。クラウドサーバは、上記と同じ又は別の基地局に信号情報を転送し、当該基地局が車両5の移動端末に信号情報を無線送信する。
【0081】
〔路側中継装置の内部構成〕
図8は、路側中継装置70の内部構成の一例を示すブロック図である。
図8に示すように、路側中継装置70は、上位側通信部71、信号機側通信部72、車両側通信部73、通信処理部74、情報処理部75、同期処理部76、メモリ77、及び灯色監視部78などを備える。
【0082】
上位側通信部71は、中央装置6との間で所定の伝送方式(通信プロトコル)に則った電気信号を送受信する通信インタフェースである。ここでは、中央装置6の伝送方式を、例えばIP通信が可能な「UD形伝送方式」であるとする。
上位側通信部(第1通信部)71には、中央装置6との有線通信に用いる通信回線(第1回線)8が接続される。
【0083】
上位側通信部71は、通信回線8から入力された電気信号(搬送信号)を復調して下りフレームを再生する。上位側通信部71は、再生した下りフレームを通信処理部74に出力する。
上位側通信部71は、通信処理部74から入力された上りフレームを所定周波数の電気信号(搬送信号)に変調する。上位側通信部71は、変調した電気信号(搬送信号)を通信回線8に送出する。
【0084】
信号機側通信部72は、交通信号制御機12Aとの間で所定の伝送方式に則った電気信号を送受信する通信インタフェースである。ここでは、交通信号制御機12Aの伝送方式は、例えばIP通信が不能な「U形伝送方式」であるとする。
信号機側通信部(第2通信部)72には、交通信号制御機12Aとの有線通信に用いる通信回線(第2回線)9が接続される。
【0085】
信号機側通信部72は、通信回線9から入力された電気信号(搬送信号)を復調して上りフレームを再生する。信号機側通信部72は、再生した上りフレームを通信処理部74に出力する。
信号機側通信部72は、通信処理部74から入力された下りフレームを所定周波数の電気信号(搬送信号)に変調する。信号機側通信部72は、変調した電気信号(搬送信号)を通信回線9に送出する。
【0086】
車両側通信部73は、通信装置30との間で所定の通信プロトコルに則った電気信号を送受信する通信インタフェースである。通信装置30の伝送方式は、例えば、高速シリアル伝送方式、又は有線LANなどのIP通信が可能な伝送方式などを採用し得る。
車両側通信部(第3通信部)73には、通信回線(第3回線:例えば、シリアルケーブル又はイーサケーブル)10が接続される。通信回線(第3回線)10は、路側中継装置70と通信装置30との有線通信に用いられる。通信装置30は、車両5への情報提供を無線で行う通信システムに属する。
【0087】
車両側通信部73は、通信回線10から受信した電気信号(搬送信号)を復調して上りフレームを再生する。車両側通信部73は、再生した上りフレームを通信処理部74に出力する。
車両側通信部73は、通信処理部74から入力された下りフレームを所定周波数の電気信号(搬送信号)に変調する。車両側通信部73は、変調した電気信号(搬送信号)を通信回線10に送出する。
【0088】
通信装置30が光回線を用いる基地局などの場合には、車両側通信部73は、光トランシーバにより構成される。この場合の車両側通信部73の処理内容は、次の通りである。
車両側通信部73は、光ファイバ(第3回線)10から入力された光信号を電気信号に変換して上りフレームを再生する。車両側通信部73は、変換した上りフレームを通信処理部74に出力する。
車両側通信部73は、通信処理部74から入力された下りフレームを所定波長の光信号に変換する。車両側通信部73は、変換した光信号を光ファイバ10に送出する。
【0089】
通信処理部74、情報処理部75、同期処理部76、メモリ77、及び灯色監視部78は、例えば、CPU及びRAMを含む演算処理装置の機能部分である。
演算処理装置のCPUは、図示しない記憶装置にインストールされたコンピュータプログラムをメインメモリ(RAM)に読み出し、当該プログラムに従って各種の情報処理を行う。演算処理装置は、CPU以外に又はCPUに加えて、FPGA及びASICなどの1又は複数の集積回路で構成することもできる。
【0090】
通信処理部74は、中央装置6と交通信号制御機12Aの間で送受信される通信フレームを、所定のプロトコル変換を行った上で中継する。
具体的には、通信処理部74は、上位側通信部71から入力されたUD形伝送方式の下りフレームをU形伝送方式のフォーマットに変換し、変換した下りフレームを信号機側通信部72に出力する。逆に、通信処理部74は、信号機側通信部72から入力されたU形伝送方式の上りフレームをUD形伝送方式のフォーマットに変換し、変換した上りフレームを上位側通信部71に出力する。
【0091】
通信処理部74は、上位側通信部71から入力された下りフレームに信号制御指令が含まれる場合は、下りフレームから信号制御指令を抽出し、抽出した信号制御指令をメモリ77に一時的に記憶させる。
通信処理部74は、信号機側通信部72から入力された上りフレームに信号動作状態情報が含まれる場合は、上りフレームから当該情報を抽出し、抽出した情報を一時的にメモリ77に記憶させる。
【0092】
なお、信号情報の生成処理に必要な情報のうち、中央装置6と交通信号制御機12Aとの間の通信では送受信されない情報(両装置間で暗黙的に設定されている、1サイクルに含まれる階梯数、階梯番号と各流入路の灯色との対応関係など)がある場合は、手動設定などよりメモリ77に恒久的に記憶させればよい。
【0093】
通信処理部74は、中央装置6と通信装置30の間で送受信される通信フレームを、所定のプロトコル変換を行った上で中継する。
具体的には、通信処理部74は、上位側通信部71から入力されたUD形伝送方式の下りフレームを通信装置30が採用する伝送方式のフォーマットに変換し、変換した下りフレームを車両側通信部73に出力する。逆に、通信処理部74は、車両側通信部73から入力された通信装置30が採用する伝送方式の上りフレームをUD形伝送方式のフォーマットに変換し、変換した上りフレームを上位側通信部71に出力する。
【0094】
中央装置6が下りフレームにより通信装置30に提供する情報には、例えば、渋滞情報又は規制情報などの交通情報が含まれる。
通信装置30が上りフレームにより中央装置6に提供する情報には、例えば、車両5が生成した車車間通信情報などが含まれる。
【0095】
情報処理部75は、メモリ77が記憶する信号制御指令及び信号動作状態情報に基づいて、交通信号制御機12Aと同様の制御動作をエミュレートすることができる。
例えば、情報処理部75は、信号制御指令に含まれる信号制御パラメータ(サイクル、スプリット及びオフセットなど)などに基づいて、信号制御プランを作成可能である。情報処理部75は、信号制御指令で指定される端末感応制御の種別に基づいて、交通信号制御機12Aと同種の端末感応制御を実行することもできる。
【0096】
情報処理部75は、作成した信号制御プランに基づいて、車両向けの信号情報を生成する。情報処理部75による「信号情報の生成処理」の内容については、後述する。
情報処理部75は、車両向けの信号情報を生成すると、生成した信号情報を含む下りフレームを生成し、生成した下りフレームを車両側通信部73に出力する。車両側通信部73は、入力された信号情報を含む下りフレームを通信装置30に送信する。
【0097】
同期処理部76は、所定の同期方式により、中央装置6などの他の通信ノードと時刻同期を図るための処理部である。
同期処理部76の同期方式は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機が取得した1PPS(Pulse Per Second)信号に時刻を同期させるGPS同期や、NTP(Network Time Protocol)及びPTP(Precision Time Protocol)などの通信フレームを用いた同期方式を採用し得る。
【0098】
通信処理部74は、同期処理部76が生成するローカル時刻に従って、通信フレームの送信タイミングなどを決定する。
情報処理部75は、同期処理部76が生成するローカル時刻に従って、作成した信号制御プランのサイクル開始時刻Tsなどを決定する。
【0099】
灯色監視部78は、灯色センサ79に接続されている。灯色センサ79は、例えば、灯器駆動部22から信号灯器11に流れる電流を検出する電流計よりなる。
灯色監視部78は、灯色センサ79が検出する電流値に基づいて、信号灯器11の現在灯色を判定する。例えば、灯色監視部78は、赤信号灯の電流がオンである間は、現在灯色の判定結果を赤色と判定する。他の灯色の場合も同様である。
【0100】
灯色センサ79は、動画撮影が可能な画像センサ(例えばCCDカメラ)であってもよい。この場合、灯色監視部78は、灯色センサ79から入力された画像データに含まれる灯器部分のRGB値などに基づいて、信号灯器11の現在灯色を判定すればよい。
【0101】
灯色監視部78は、現在灯色の判定結果を情報処理部75に出力する。情報処理部75は、現在灯色の判定結果を、信号制御プランの補正や交通信号制御機12Aの動作異常の有無の判定などに利用する。
例えば、情報処理部75は、現在灯色の変化タイミングに基づいて、信号制御プランにおける階梯の継続時間を補正する。また、情報処理部75は、現在灯色の遷移状態の異常(東西方向と南北方向の双方が青信号など)を検出した場合には、交通信号制御機12Aの識別情報と異常の内容を含む中央装置6宛ての通信フレームを生成し、生成した通信フレームを通信処理部74に出力する。
【0102】
〔信号情報の生成処理の内容〕
情報処理部75が実行する信号情報の生成処理には、以下の処理1~4が含まれる。情報処理部75は、以下の処理1~4を十分に短い所定の演算周期(例えば100m秒)ごとに実行し、信号情報をほぼリアルタイムに更新する。
情報処理部75は、信号情報を車両側通信部73に出力する場合、出力時点において最新(直近)の信号情報を出力する。
【0103】
処理1) 信号制御プランの作成
情報処理部75は、メモリ77に記憶された信号制御指令(
図9参照)及び信号動作状態情報(
図10参照)から、次回サイクルに適用する信号制御プランを作成する。
信号制御プランには、1サイクルに含まれる複数の階梯、各階梯の継続時間(例えば秒数)、及びサイクル開始時刻Tsなどが含まれる(
図11参照)。
【0104】
情報処理部75は、信号制御指令に含まれる階梯番号、スプリット1~6の基準値、+変動値、-変動値、サイクル長、及び、各階梯と各現示との関係を表す定数などに基づいて、信号制御プランに含める複数の階梯と、各階梯の継続時間を求める。
【0105】
処理2) 可変階梯の継続時間の算出
情報処理部75は、信号制御指令に含まれる感応許可から、交通信号制御機12Aが端末感応制御(車両感知器による感知情報に基づいて可変階梯を変化させる制御)を実施中か否かを判定する。
情報処理部75は、端末感応制御を実行中である場合は、信号制御指令に含まれる感応許可により指定される種別の端末感応制御(例えば、ジレンマ感応、バス感応又はギャップ感応など)を実行し、可変階梯の継続時間に反映させる。
【0106】
処理3) 階梯の継続時間の補正
情報処理部75は、自身が算出した階梯の継続時間(第1時間)と、信号動作状態情報から算出した階梯の実行時間(第2時間)とに所定値以上の微差が生じた場合は、階梯変化時に送信される実行階梯情報の受信タイミングに基づいて第1時間を補正し、信号制御プランに含まれる各階梯の継続時間を第2時間に合わせる。
【0107】
情報処理部75は、灯色監視部78から入力される現在灯色の判定結果に基づいて、自身が算出した階梯の継続時間を補正してもよい。
例えば、情報処理部75は、階梯の切り替わり時点と現在灯色の変化時点とに所定値以上の微差が生じた場合には、その時間差分だけ階梯の継続時間を増加又は減少させる。
【0108】
処理4) 信号情報の作成
情報処理部75は、算出した階梯ごとの継続時間に基づいて、所定のフォーマットの信号情報(例えば
図12)を作成する。信号情報には、各流入路における灯色、及び現時点以後の灯色ごとの表示予定時間(現時点からの残秒数)などが含まれる。
【0109】
〔信号制御指令と信号動作状態情報のフォーマット〕
図9は、信号制御指令のフォーマットの一例を示す図である。
図10は、信号動作状態情報のフォーマットの一例を示す図である。
図9及び
図10のフォーマットは、社団法人新交通管理システム協会(UTMS協会)が発行する、「U形交通信号制御機 U形通信アプリケーション規格」に規定されたフォーマットである。従って、
図9及び
図10のフォーマットに含まれるデータ内容は、当該規格書に記載されている。
【0110】
〔信号制御プランの具体例〕
図11は、路側中継装置70が作成する信号制御プランの一例を示すテーブルである。
図11の例では、1サイクルが次の8つの階梯(ステップ)から構成されている。
流入路R1は、第1方向(例えば東西方向)に延びる、歩行者灯器が設置された流入路である。流入路R2は、第1方向と交差する第2方向(例えば南北方向)に延びる、歩行者灯器が設置されていない流入路である。
【0111】
1PG:流入路R1の車両灯器と歩行者灯器の双方が青
1PF:流入路R1の車両灯器が青でかつ歩行者灯器が青点滅
1PR:流入路R1の車両灯器が青でかつ歩行者灯器が赤
1Y :流入路R1の車両灯器が黄でかつ歩行者灯器が赤
1AR:流入路R1及び流入路2の双方が赤(全赤)
2G :流入路R2の車両灯器が青
2Y :流入路R2の車両灯器が黄
2R :流入路R2の車両灯器が赤
【0112】
図11の例では、8つの階梯のうち、1PGと1PRの継続時間は、他の階梯と異なり予め確定しておらず、範囲を持つ時間として算出されている。これは、1PGと1PRが、端末感応制御などによって変動し得る可変階梯であることを意味する。
【0113】
〔信号情報のフォーマット〕
図12は、車両向けの信号情報のフォーマットの一例を示す図である。
具体的には、
図12Aは、信号情報のデータ構造を示す図であり、
図12Bは、信号情報のヘッダ部及びデータ部に格納されるデータ値とデータの内容を示す説明図である。
図12Bの信号情報は、
図10の信号制御プランにおける流入路R1に関する信号情報である。
【0114】
図12Aに示すように、車両向けの信号情報は、ヘッダ部、データ部、及びフッタ部を含むデータ構造となっている。
ヘッダ部には、信号情報を示す識別子、信号情報のサイズ、及び提供対象の灯色数(図例では3つ)が含まれる。フッタ部にはCRC値などが格納される。データ部には、ヘッダ部で定義された灯色数分の灯色(1)~(3)の表示予定時間(図例では秒数)が格納される。
【0115】
図12Bにおいて、灯色(1)~(3)のデータ値(コード)と実際の信号灯色の対応関係は、次の通りである。
コードが「01」の信号灯色(1)=青信号
コードが「02」の信号灯色(2)=黄信号
コードが「03」の信号灯色(3)=赤信号
【0116】
図12Bに示すように、流入路R1において、灯色(1)(=青信号)の表示予定秒数の最短時間は40秒であり、最長時間は70秒である。
灯色(1)の最小保証時間には、実行中の階梯(1PG)以降の階梯において、車両灯器として同じ表示を行う場合の最短時間の合計値が格納される。
図12Bの例では、1PFと1PRの最短時間の合計値として10秒が格納されている。
【0117】
流入路R1において、灯色(2)(=黄信号)の表示予定秒数の最短時間及び最長時間は、いずれも5秒である。
流入路R1において、灯色(3)(=赤信号)の表示予定秒数の最短時間及び最長時間は、いずれも55秒である。このように、最短時間と最長時間が一致する灯色の表示予定秒数は確定している。なお、表示予定時間は、100m秒又は10m秒単位などで表現してもよく、フォーマット自体も
図12に示す形式に限定されない。
【0118】
〔異常監視システムの全体構成〕
図13は、本実施形態に係る異常監視システムの全体構成の一例を示す概略図である。
図13に示すように、本実施形態の異常監視システムは、中央装置6、少なくとも1つの路側中継装置70、当該路側中継装置70に接続された交通信号制御機12A及び通信装置30などを備える。
【0119】
路側中継装置70には、3つの通信回線8~10がそれぞれ接続されるため、通信回線8,9側の通信機器を運用する事業者と、通信回線10側の通信機器を運用する事業者とが異なる場合がある。
具体的には、通信装置30がセルラー通信の基地局14である場合、中央装置6及び交通信号制御機12Aを運用する事業者(例えば都道府県警)と、基地局14を運用する事業者(例えば電気通信事業者)とが異なる。
【0120】
従って、路側中継装置70を設置したあと、信号情報の提供サービスに影響する何らかの異常が発生した場合には、異常の箇所及び内容を、事業者ごとに容易に判定できるようにすることが好ましい。
そこで、路側中継装置70の情報処理部75は、通信に影響する所定の異常を検出すると、異常の内容などを含む中央装置6宛ての異常通知メッセージMを生成し、生成したメッセージMを含む通信フレームを通信処理部74に出力する。通信処理部74に入力された異常通知メッセージMは、上位側通信部71に出力され、上位側通信部71によって中央装置6に送信される。
【0121】
情報処理部75が検出する異常には、自装置の異常(第1異常)、交通信号制御機12の異常(第2異常)、及び、車両側通信部73と通信する通信機器(通信装置30や基地局など)の異常(第3異常)のうちの少なくとも1つが含まれる。
第1異常には、例えば、自装置のCPU、タイマ又は電源の異常などが含まれる。第2異常は、例えば、信号機側通信部72が受信する信号動作状態情報などから検出できる。第3異常は、例えば、車両側通信部73が通信装置30から受信する通信フレームに含まれる、異常を申告するメッセージなどから検出できる。
【0122】
中央装置6宛ての異常通知メッセージMには、異常の内容と、異常の発生期間の他、異常が発生した通信機器の識別情報(以下、「機器ID)という。)が含まれる。機器IDは、例えば、通信機器のMAC(Media Access Control)アドレスや製造番号などを採用し得る。
異常の内容には、例えば、通信機器の故障、通信機器に接続された制御対象の故障、回線異常、通信機器を含むネットワークの異常など種々の内容が想定される。
【0123】
例えば、情報処理部75は、交通信号制御機12Bから受信した動作状態情報が、交通信号制御機12Bの「タイマ異常」を示す場合は、交通信号制御機12Bの機器ID、タイマ異常、及びタイマ異常の発生期間を含む異常通知メッセージMを生成する。
情報処理部75は、車両側通信部73が、基地局14の「アンテナ異常」を示すメッセージを受信した場合は、当該メッセージに含まれる基地局14の機器ID、アンテナ異常、及びアンテナ異常の発生期間を含む異常通知メッセージMを生成する。
【0124】
中央装置6の記憶部64は、管理テーブルTAを記憶しており、中央装置6の制御部61は、記憶された管理テーブルTAを管理する。管理テーブルTAには、「機器」、「内容」、「発生期間」、及び「事業者」などの項目が含まれる。
機器の項目は、異常が発生した通信機器の種別を記録する項目である。内容の項目は、当該通信機器の異常の内容を記録する項目である。発生期間の項目は、当該通信機器の異常の発生期間を記録する項目である。事業者の項目は、当該通信機器を運用する事業者の種別を記録する項目である。
【0125】
中央装置6の記憶部64には、機器ID、通信機器の種別及び事業者の種別の対応関係を記録した対応テーブル(図示せず)も格納されている。
中央装置6の制御部61は、異常通知メッセージMに含まれる機器IDをキーとして対応テーブルを検索し、異常が発生した通信機器の種別と、当該通信機器を運用する事業者の種別を判定する。
【0126】
中央装置6の制御部61は、異常通知メッセージMに含まれる機器IDに対応する通信機器の種別を、管理テーブルTAの機器の項目に記録する。
同様に、制御部61は、異常通知メッセージMに含まれる異常の内容を、管理テーブルTAの内容の項目に記録する。制御部61は、異常通知メッセージMに含まれる異常の発生期間を、管理テーブルTAの発生期間の項目に記録する。制御部61は、異常通知メッセージMに含まれる機器IDに対応する事業者の種別を、管理テーブルの事業者の項目に記録する。
【0127】
このように、本実施形態の異常監視システムによれば、中央装置6の制御部61が、信号情報の提供に関連する通信機器の異常を管理するための、例えば
図13に記載の管理テーブルTAを自動的に作成することができる。
このため、交通管制センターのオペレータは、管理テーブルTAを表示部62に表示することにより、異常が発生した通信機器の種別ごとに、異常の内容、異常の発生期間、及び当該通信機器を運用する事業者の種別を即座に判断できる。従って、オペレータは、異常発生の事実及び内容の連絡などの対応を迅速に行うことができる。
【0128】
また、管理テーブルTAに含まれる異常の発生期間を、事業者の種別ごとに所定期間(例えば月次)で集計するようにすれば、信号情報の提供に関係する各事業者の評価を行うことができる。
信号情報の提供に関連する通信機器に異常がある場合は、不正確な信号情報が提供される可能性がある。従って、情報処理部75は、上述の異常を検出した場合には、中央装置60への通知に加えて、信号情報の出力を停止することが好ましい。
【0129】
情報処理部75は、信号情報の精度に関連する所定の異常を検出した場合に限り、信号情報の出力を停止することにしてもよい。所定の異常には、例えば次の場合が含まれる。
1) 生成した信号情報の表示予定秒数と、現在灯色の判定結果から求まる実際の表示秒数の差が所定値(例えば1秒)を超える場合
2) 現在灯色の判定結果から、東西方向と南北方向の双方が青信号、或いは、青信号から赤信号への遷移などを検出した場合
【0130】
〔路側中継装置の変形例〕
図14は、路側中継装置90の内部構成の別例を示すブロック図である。
図14の路側中継装置(信号変換アダプタ)90は、中央装置6と交通信号制御機12Aの双方の伝送方式が「UD形伝送方式」である場合に適した装置である。
中央装置6と交通信号制御機12Aの双方の伝送方式が同じである場合、当該伝送方式がIP通信に対応しておれば、中央装置6と交通信号制御機12Aとの間でやり取りされる通信フレームついて、プロトコル変換を伴う中継処理を行う必要がない。
【0131】
そこで、路側中継装置90は、少なくとも3つの物理ポートP1~P3を有するスイッチ80を備える。スイッチ80は、例えばL2スイッチ又はL3スイッチよりなる。
ポートP1には、中央装置6に通じる通信回線8Aが接続される。ポートP2には、交通信号制御機12Aに通じる通信回線8Bが接続される。ポートP3には、通信処理部74に通じる通信回線8Cが接続される。通信回線8A~8Cは、いずれもUD形伝送方式で用いられる通信回線8よりなる。なお、通信処理部74は、通信回線8Cを接続可能なPHY部を有する。
【0132】
スイッチ80には、物理ポートP1~P3間の経路情報が予め設定されている。この経路情報は、次の通りである。
ポートP1に入力された信号:ポートP2,P3に出力
ポートP2に入力された信号:ポートP1,P3に出力
ポートP3に入力された信号:ポートP1に出力
【0133】
従って、中央装置6が送信元である交通信号制御機12A宛ての下りフレームは、交通信号制御機12Aだけでなく通信処理部74にも出力される。
また、交通信号制御機12Aが送信元である中央装置6宛ての上りフレームは、中央装置6だけでなく通信処理部74にも出力される。通信処理部74が送信元である中央装置6宛ての上りフレームは、中央装置6にだけ送信される。
【0134】
このように、通信処理部74は、スイッチ80の経路制御により、中央装置6と交通信号制御機12Aとの間でやり取りされる通信フレームを取得(傍受)することができる。
通信処理部74は、取得した下りフレームに信号制御指令が含まれる場合は、当該信号制御指令を下りフレームから取り出して情報処理部75に出力する。
通信処理部74は、取得した上りフレームに信号動作状態情報が含まれる場合は、当該情報を上りフレームから取り出して情報処理部75に出力する。
【0135】
なお、
図14の路側中継装置90において、スイッチ80は、中央装置6用の通信回線(第1回線)8Aが接続される第1通信部と、交通信号制御機12A用の通信回線(第2回線)8Bが接続される第2通信部に相当する。
また、
図14の路側中継装置90においても、車両側通信部73は、通信装置30用の通信回線(第3回線)10が接続される第3通信部に相当する。
更に、
図13の異常監視システムにおいて、路側中継装置70の代わりに、
図14の路側中継装置90を採用することにしてもよい。
【0136】
〔その他の変形例〕
上述の実施形態(変形例を含む。)は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本開示の権利範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0137】
図8の路側中継装置70において、交通信号制御機12Aの伝送方式は、「M形伝送方式」又は「T形伝送方式」であってもよい。M形又はT形伝送方式の交通信号制御機12Aは、歩進制御タイプを採用しており、デーブル制御方式に対応していない。
このため、中央装置6は、歩進指令を交通信号制御機12Aに送信し、信号制御指令を交通信号制御機12Aに送信しない。そこで、中央装置6が、交通信号制御機12Aを遠隔で制御するための信号制御指令を含む路側中継装置70宛ての下りフレームを生成し、生成した下りフレームを通信回線8に送出することにすればよい。
【0138】
図8及び
図14の路側中継装置70,90において、通信処理部74が、車両側通信部73に接続されておらず、上位側通信部71と車両側通信部73との通信について、プロトコル変換などを伴う中継を行わない処理部であってもよい。
この場合の路側中継装置70,90においても、情報処理部75から入力された車両向けの信号情報を車両側通信部73が通信装置30に送信するので、少なくとも信号情報の出力機能は維持される。
【符号の説明】
【0139】
1 交通信号機
2 路側センサ
3 路側通信機
4 車載通信機
5 車両
6 中央装置
7 ルータ
8 通信回線(第1回線)
8A 通信回線(第1回線)
8B 通信回線(第2回線)
8C 通信回線
9 通信回線(第2回線)
10 通信回線(第3回線)
11 信号灯器
12 交通信号制御機
12A 旧制御機
12B 新制御機
13 制御線
14 基地局
21 制御部
22 灯器駆動部
23 通信部
24 記憶部
30 通信装置
60 中央装置
61 制御部
62 表示部
63 通信部
64 記憶部
65 操作部
70 路側中継装置(信号変換アダプタ)
71 上位側通信部(第1通信部)
72 信号機側通信部(第2通信部)
73 車両側通信部(第3通信部)
74 通信処理部
75 情報処理部
76 同期処理部
77 メモリ
78 灯色監視部
79 灯色センサ
80 スイッチ(第1通信部、第2通信部)
90 路側中継装置(信号変換アダプタ)