(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240925BHJP
B60L 50/70 20190101ALI20240925BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20240925BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
B60L50/70
H01M8/2475
(21)【出願番号】P 2022008042
(22)【出願日】2022-01-21
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 大祐
(72)【発明者】
【氏名】河村 周治
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-069634(JP,A)
【文献】特開2005-079002(JP,A)
【文献】国際公開第2019/004031(WO,A1)
【文献】特開2018-147863(JP,A)
【文献】特開2017-212084(JP,A)
【文献】特開2019-145318(JP,A)
【文献】特開2019-192329(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0191005(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113442743(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 50/70 - 50/75
H01M 8/04 - 8/0668
H01M 8/2475
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池モジュールであって、
燃料電池スタックと、
複数の主梁で多面体を構成しているフレーム構造の容器であって、前記燃料電池スタックを収容している容器と、
を備えており、
前記容器は
、異なる前記主梁をつなぐ補強梁を備えているとともに、側面視において縦の長さが横の長さと相違し、
少なくとも1本の前記主梁が、
当該燃料電池モジュールを当該燃料電池モジュール以外の構造体に取り付けるためのボルトを固定するのに用いられる締結点であって前記主梁の長手方向に沿って並ぶ複数の締結点を有して
いるとともに、当該燃料電池モジュールが少なくとも1個の前記締結点にて前記ボルトで前記構造体に固定されており、
前記補強梁を延長した線と前記主梁が交差する点が、隣り合う前記締結点の間に位置する、燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記容器の異なる面のそれぞれに前記締結点が設けられている、請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
前記少なくとも1本の主梁は、第1方向に沿って延びており、複数の前記締結点の半分以上が前記第1方向における前記燃料電池スタックの両端の間に配置されている、請求項1または2に記載の燃料電池モジュール。
【請求項4】
前記少なくとも1本の主梁は、第1方向に沿って延びており、
前記容器は、前記第1方向と直交する第2方向に沿って延びている3本以上の梁を備えており、
前記燃料電池スタックは、前記3本以上の梁のうち、隣り合う2本の梁の間に配置されている、請求項1または2に記載の燃料電池モジュール。
【請求項5】
燃料電池モジュールであって、
燃料電池スタックと、
複数の主梁で多面体を構成しているフレーム構造の容器であって、前記燃料電池スタックを収容している容器と、
前記容器に収容されており、前記燃料電池スタックを制御する制御器と、
を備えており、
前記容器は側面視において縦の長さが横の長さと相違し、
少なくとも1本の前記主梁が、当該燃料電池モジュールを当該燃料電池モジュール以外の構造体に取り付けるためのボルトを固定するのに用いられる締結点であって前記主梁の長手方向に沿って並ぶ複数の締結点を有しているとともに、当該燃料電池モジュールが少なくとも1個の前記締結点にて前記ボルトで前記構造体に固定されており、
前記制御器は、前記容器に収容される部品の中で前記燃料電池スタックの次に重い部品であって前記制御器の筐体と同じ第1金属のブロックを介して前記容器に固定されている、燃料電池モジュール。
【請求項6】
燃料電池モジュールであって、
燃料電池スタックと、
複数の主梁で多面体を構成しているフレーム構造の容器であって、前記燃料電池スタックを収容している容器と、
前記容器に収容されており、前記燃料電池スタックを制御する制御器と、
前記容器に収容されており、前記燃料電池スタックに空気を供給するエアコンプレッサと、
を備えており、
前記容器は側面視において縦の長さが横の長さと相違し、
少なくとも1本の前記主梁が、当該燃料電池モジュールを当該燃料電池モジュール以外の構造体に取り付けるためのボルトを固定するのに用いられる締結点であって前記主梁の長手方向に沿って並ぶ複数の締結点を有しているとともに、当該燃料電池モジュールが少なくとも1個の前記締結点にて前記ボルトで前記構造体に固定されており、
前記制御器は、前記容器に収容される部品の中で前記燃料電池スタックと前記エアコンプレッサの次に重い部品であって前記制御器の筐体と同じ第1金属のブロックを介して前記容器に固定されている、燃料電池モジュール。
【請求項7】
前記容器は異なる前記主梁をつなぐ補強梁を備えており、
前記少なくとも1本の主梁は、第1方向に沿って延びており、
前記容器は、前記第1方向と直交する第2方向に沿って延びている3本以上の梁を備えており、
前記燃料電池スタックは、前記3本以上の梁のうち、隣り合う2本の梁の間に配置されている、請求項5または6に記載の燃料電池モジュール。
【請求項8】
前記容器は異なる前記主梁をつなぐ補強梁を備えており、
前記補強梁を延長した線と前記主梁が交差する点が、隣り合う前記締結点の間に位置する、請求項5または6に記載の燃料電池モジュール。
【請求項9】
前記制御器は、前記ブロックと、前記第1金属とは異なる第2金属の板で前記容器に固定されている、請求項
5から8のいずれか1項に記載の燃料電池モジュール。
【請求項10】
前記締結点は、前記主梁に溶接されたナットである、請求項1から
9のいずれか1項に記載の燃料電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、燃料電池モジュールが開示されている。燃料電池モジュールは、燃料電池スタックと、燃料電池スタックの運転に必要なデバイスが容器に収容されている。容器は、複数の梁で構成されたフレーム構造を有している。特許文献1が提供する技術は、(1)保管場所の使用効率の向上、(2)梱包を解かずとも容易に器具へ固定可能であること、を目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池モジュールは、自動車などの構造体に収容され、構造体の中の電気デバイスの電源として利用される。本明細書は、構造体に固定し易い燃料電池モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示す燃料電池モジュールは、燃料電池スタックと、燃料電池スタックを収容する容器を備える。容器は、複数の主梁で多面体を構成するフレーム構造を有している。フレーム構造の容器はシャシと呼ばれることがある。容器は側面視において縦の長さが横の長さと相違する。少なくとも1本の主梁が、主梁の長手方向に沿って並ぶ複数の締結点を有している。締結点は、燃料電池モジュールを他の構造体に取り付けるためのボルトを固定するのに用いられる。燃料電池モジュールを構造体に搭載する際、構造体に固定するのに複数の締結点の中から構造体に適した締結点を選択することができる。本明細書が開示する燃料電池モジュールは、構造体に固定し易い。締結点の典型は、主梁に溶接されたナットである。なお、容器の異なる面のそれぞれに締結点が設けられているとよい。
【0006】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施例の燃料電池モジュールの斜視図である。
【
図3】
図2の破線IIIでカットした主梁の断面図である。
【
図10】第2実施例の燃料電池モジュールにおけるブラケット付近の拡大斜視図である。
【
図13】FCモジュール2cの下フレーム320の平面図である。
【
図14】
図13のXIV-XIV線でカットした下フレームの断面図である。
【
図15】第4実施例のFCモジュール2dの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施例)図面を参照して第1実施例の燃料電池モジュール2を説明する。
図1に燃料電池モジュール2の斜視図を示す。
図2に、燃料電池モジュール2の側面図を示す。説明の便宜上、図中の座標系の+X方向を前と定義し、+Z方向を上と定義する。Y方向を側方と定義する。以下では、説明の便宜のため、「燃料電池」を「FC」と表記する。
【0009】
FCモジュール2(燃料電池モジュール2)は、直方体の容器100を有しており、様々なデバイスが容器100に収容されている。容器100に収容される主なデバイスには、FCスタック3、電力制御ユニット4、コンプレッサ5が含まれる。容器100には他のデバイスも収容されるが、本実施例では主なデバイスの配置に着目し、他のデバイスの図示は省略した。容器100に含まれるデバイスの中でFCスタック3が最も重く、次に電力制御ユニット4が重い。あるいは、電力制御ユニット4は、FCスタック3とコンプレッサ5の次に重い場合がある。
【0010】
FCスタック3からは2本のパイプ6、7が前方(+X方向)へ延びている。パイプ6、7は、燃料ガス(あるいは空気、あるいは、冷却液)をFCスタック3へ給排する。電力制御ユニット4は、FCスタックを制御し、また、FCスタック3の出力電力を制御する。具体的には、電力制御ユニット4は、FCスタック3で発電した電力(直流電力)の電圧を変えたり、直流電力を交流に変えたりする電力変換装置である。コンプレッサ5は、FCスタック3へ空気(酸素)を送る。コンプレッサ5に接続されるパイプの図示は省略した。FCスタック3を運転するのに必要なデバイスは補機と総称され、電力制御ユニット4とコンプレッサ5は補機の一つである。
【0011】
容器100の全体形状は、直方体である。容器100は、複数の主梁で多面体を構成しているフレーム構造を有している。容器100は、直方体の12辺のそれぞれに相当する主梁111a~111d、121a~121d、131a~131dと、隣り合う主梁を連結する補強梁141~146を含む。主梁のうち、直方体の上面の四辺に相当する主梁を上主梁111a~111dと称する。主梁のうち、直方体の下面の四辺に相当する主梁を下主梁121a~121dと称する。
図1では、下主梁121b、121cは他のデバイスに隠れて見えない。主梁のうち、直方体の縦の四辺に相当する主梁を縦主梁131a~131dと称する。
図1では、縦主梁131cは他のデバイスに隠れて見えない。
【0012】
説明の便宜上、容器100の上面に配置される主梁と補強梁で構成される部分を上フレーム110と称し、それ以外の主梁と補強梁で構成される部分を下フレーム120と称する。隣り合う主梁はボルトで連結される。補強梁141-146は、主梁で構成される直方体のフレーム構造の強度を高める。以下では、主梁と補強梁をまとめて単純に「梁」と称する場合がある。
【0013】
図2に示すように、FCモジュール2の容器100は、縦の長さHLと横の長さWLが相違する。横の長さWLが縦の長さHLよりも長い。
【0014】
いくつかの主梁には、締結点10が設けられている。
図1では、容器100の上面に設けられる複数の締結点10のいくつかには、符号10を付していない。
図2の破線IIIに沿ってカットした主梁121aの断面を
図3示す。
図3は、締結点10の断面を示している。
図3に示されているように、主梁121aは、L形鋼材で作られている。他の主梁もL形鋼材で作られている。
【0015】
締結点10は、主梁121aに設けられた孔11と、孔11と同芯になるように主梁121aに固定されたナット12で構成される。ナット12は、主梁121aに溶接されている。容器100は複数の締結点10を備えるが、全ての締結点10は、
図3の構造を有している。締結点10は、いずれかの主梁に設けられている。
【0016】
FCモジュール2は、自動車などの構造体に搭載される。締結点10は、FCモジュール2を構造体に固定するのに用いられる。FCモジュール2の容器100が複数の締結点10を備えていることで、構造体の形状やサイズに合わせて複数の締結点10の中から適切な締結点10を選択し、選択した締結点10を使ってFCモジュール2を構造体に固定することができる。実施例のFCモジュール2は、構造体に固定し易い。
【0017】
図1に示すように、容器100の前面と左側面と上面のそれぞれに複数の締結点10が設けられている。
図1では、上面に設けられている締結点のいくつかには符号10を省略した。
図1では見えていない後面と右側面と下面のそれぞれにも複数の締結点10が設けられている。
【0018】
図2に示す長さWSLは、FCスタック3のX方向の長さを示している。符号A1がFCスタック3のX方向における左端を示しており、符号A2はFCスタック3のX方向における右端を示している。主梁111aは、X方向に並ぶ6個の締結点10を備えている。それら6個の締結点10のうち、右側の4個の締結点10aは、X方向におけるFCスタック3の両端(位置A1と位置A2)の間に配置されている。主梁111aは、6個の締結点10を有しており、それら6個の締結点10のうち、半分以上の4個の締結点10aが、X方向でFCスタック3の両端の間に配置されている。反対側の主梁111cにも同様に6個の締結点が設けられている。
【0019】
FCスタック3は、容器100に収容されるデバイスのうち最も重量が大きい。重量の大きいFCスタック3の周囲に多数の締結点10を配置することで、FCモジュール2を安定に構造体に固定することができる。
【0020】
図2における一点鎖線L1は、補強梁144をその長手方向に延長した線である。補強梁144を延長した線(一点鎖線L1)と、補強梁144が連結されている主梁121aとの交点P1は、主梁121において隣り合う締結点10b、10cの間に位置する。
図2における一点鎖線L2は、補強梁146をその長手方向に延長した線である。補強梁146を延長した線(一点鎖線L2)と、補強梁146が連結されている主梁121aとの交点P2も、隣り合う締結点10b、10cの間に位置する。
【0021】
補強梁144、146を延長した線と主梁121aが交差する点P1、P2が、隣り合う締結点10b、10cの間に位置する。この構造により、補強梁144、146がしっかりと容器100のフレーム構造を補強する。
【0022】
容器100を上下に二分した分解斜視図を
図4に示す。なお、
図4では締結点に符号10を付していない。また、
図5以降の図では、理解を助けるために、締結点10の図示を省略した。
図4は、上フレーム110を下フレーム120から分離した分解斜視図であるが、上フレーム110に含まれる上主梁111b、111dは、上フレーム110から分離して下フレーム120に連結された状態で示してある。FCスタック3は下フレーム120に固定される。電力制御ユニット4とコンプレッサ5は上フレーム110に懸架される。そして、電力制御ユニット4の下方をパイプ6、7が通過している。
【0023】
電力制御ユニット4は、複数のブラケット151、153等で上フレーム110に懸架される。別言すれば、電力制御ユニット4は、複数のブラケット151、153等で上フレーム110に吊り下げられる。ブラケット151、153等は、金属板で作られており、容器100(上フレーム110または下フレーム120)に対してデバイス(電力制御ユニット4など)を固定する金具である。
図5-
図7に、
図4に示した上フレーム110の正面図、側面図、後面図を示す。
図5が正面図であり、
図6が側面図であり、
図7が後面図である。上フレーム110には、電力制御ユニット4とともにコンプレッサ5が懸架される。
図5と
図7では、理解を助けるために上フレーム110から上主梁111b、111dを外した図を示している。それゆえ、
図5では、平行な一対の上主梁111a、111cを連結する補強梁141が正面に見えている。
図7では、平行な一対の上主梁111a、111cを連結する補強梁142が正面に見えている。
【0024】
図5-
図7に示すように、電力制御ユニット4は、複数のブラケット151-156により上フレーム110に懸架されている。2本のブラケット151が電力制御ユニット4の前面を上フレーム110の補強梁141に連結しており、ブラケット152が2本のブラケット151を連結している(
図5)。縦方向に平行に延びる2本のブラケット151を横方向(Y方向)に延びるブラケット152が連結しているので、ブラケット151、152は、電力制御ユニット4の横方向(Y方向)の揺れを抑える。
【0025】
2本のブラケット155が電力制御ユニット4の後面を上フレーム110の補強梁142に連結しており、ブラケット156が2本のブラケット155を連結している(
図7)。縦方向に平行に延びる2本のブラケット155を横方向(Y方向)に延びるブラケット156が連結しているので、ブラケット155、156は、電力制御ユニット4の横方向(Y方向)の揺れを抑える。
【0026】
2本のブラケット153が電力制御ユニット4の側面を上フレーム110の上主梁111aに連結しており、ブラケット154が2本のブラケット153を連結している(
図6)。縦方向に平行に延びる2本のブラケット153を前後方向(X方向)に延びるブラケット154が連結しているので、ブラケット153、154は、電力制御ユニット4の前後方向(X方向)の揺れを抑える。
【0027】
なお、実施例のブラケット151と152(153と154、155と156)は主梁または補強梁にボルトで連結されている。それらのブラケットは主梁または補強梁に溶接されていてもよい。また、コンプレッサ5も複数のブラケットを介して上フレーム110に懸架されている。
【0028】
図4に示されているように、コンプレッサ5は電力制御ユニット4に対向する面に凹部5a(窪み)を有している。
図8にFCモジュール2の上面図を示し、
図8のIX-IX線に沿った断面を
図9に示す。
図9は、コンプレッサ5の凹部5aを横断する断面を示している。
図9に示されているように、電力制御ユニット4のコンプレッサ5に対向する面に凸部4aが設けられており、電力制御ユニット4とコンプレッサ5は、凸部4aと凹部5aが嵌合するように配置されている。
【0029】
第1実施例の燃料電池モジュール2のいくつかの特徴と利点を以下に列挙する。容器100はフレーム構造であり、直方体の各辺に相当する12本の主梁111a~111d、121a~121d、131a~131dと、隣り合う主梁を連結する補強梁141~146を備える。容器100は、側面視において縦の長さが横の長さと相違する。少なくとも1本の主梁(主梁111a)が、主梁111aの長手方向(X方向)に沿って並ぶ複数の締結点10を有している。容器100の異なる面のそれぞれに締結点10が設けられている。複数の締結点10を備えることで、FCモジュール2を構造体に固定するのに都合がよい。
【0030】
少なくとも1本の主梁(主梁111a)は、X方向に沿って延びており、複数の締結点10の半分以上(締結点10a)がX方向におけるFCスタック3の両端の間に配置されている。
【0031】
補強梁144(146)を延長した線L1(L2)と主梁121aが交差する点P1(P2)が、隣り合う締結点10b、10cの間に位置する。締結点10b、10cが補強梁144、146の強度を損なうことがない。
【0032】
電力制御ユニット4が上フレーム110に懸架されており、電力制御ユニット4の下をFCスタック3の配管(パイプ6、7)が通過している。この構造により、電力制御ユニット4を容器100の中に空間効率よく収めることができる。電力制御ユニット4を容器100の下面に配置し、その上に配管を通すと、配管が屈曲することになり、空間効率が悪化するとともに、配管を流れる流体の圧力損失が増す。
【0033】
電力制御ユニット4の側方にコンプレッサ5が配置されている。コンプレッサ5の電力制御ユニット4に対向する面には凹部5aが設けられている。電力制御ユニット4のコンプレッサ5に対向する面には凸部4aが設けられている。電力制御ユニット4とコンプレッサ5は、凸部4aと凹部5aが嵌合するように配置されている。この構造により、電力制御ユニット4とコンプレッサ5を空間効率よくフレーム構造の容器100に収めることができる。
【0034】
凹部5aと凸部4aは逆であってもよい。また、コンプレッサ5に代えて別の補機が電力制御ユニット4の側方に配置されてもよい。その場合、電力制御ユニット4と別の補機の一方に凹部が設けられ、他方に凸部が設けられ、凹部と凸部が嵌合するように電力制御ユニット4と別の補機が容器100の中に配置されていればよい。別の補機も上フレーム110に懸架される。
【0035】
補強梁145は、縦主梁131a-131dと平行に延びている。補強梁145と縦主梁131a、131bは、下主梁121aに連結されている。下主梁121aはX方向(第1方向)に延びており、縦主梁131a、131bと補強梁145は、X方向に直交するY方向(第2方向)に延びている。FCスタック4は、縦主梁131bと補強梁145の間に配置されている。
【0036】
上記の特徴は、縦主梁131a、131bと補強梁145を合わせて「梁」と総称すると、次の通り表現できる。容器(100)は、異なる主梁(111aと121a)をつなぐ補強梁(145)を備えている。少なくとも1本の主梁(121a)は、第1方向(X方向)に沿って延びている。容器(100)は、第1方向と直交する第2方向(Y方向)に沿って延びている3本以上の梁(主梁131a、131b、補強梁145)を備える。FCスタック3は、3本以上の梁(主梁131a、131b、補強梁145)のうち、隣り合う2本の梁(主梁131bと補強梁145)の間に配置されている。
【0037】
上記の特徴によれば、重い部品であるFCスタック3の付近に多くの梁(主梁または補強梁)を配置することで、容器100がFCスタック3を確実に保護することができる。後述する容器400(
図15)も、上記の特徴と同じ特徴を有している。
【0038】
(第2実施例)
図10、11に、第2実施例のFCモジュール2aの部分斜視図を示す。
図10は、電力制御ユニット204を上フレーム210に懸架するブラケット(第1ブラケット251と第2ブラケット252)の付近の拡大図である。
図11は、
図10の分解図である。電力制御ユニット204は、第1ブラケット251と第2ブラケット252に加えて別のブラケットでも上フレーム210に懸架されているが、別のブラケットは図示を省略した。
【0039】
なお、FCモジュール2aの容器も、第1実施例のFCモジュール2と同様にフレーム構造を有している。容器は、直方体の12辺に相当する主梁111a~111d、121a~121d、131a~131dと、隣り合う主梁を連結する複数の補強梁で構成される。
【0040】
第1ブラケット251は、L字に屈曲しており、第2ブラケット252は平板形状である。第1ブラケット251の一端に設けられた第1孔251aをボルト901が通過し、ボルト901が上フレーム210に固定される。ボルト901により第1ブラケット251が上フレーム210に連結される。第1ブラケット251の他端に設けられた第2孔251bをボルト902が通過し、ボルト902が第2ブラケット252に連結される。ボルト902により第1ブラケット251が第2ブラケット252に連結される。第2ブラケット252の一端に設けられた孔252aをボルト903が通過し、ボルト903が電力制御ユニット204のタブ206に固定される。
【0041】
孔の軸線がY方向に延びている第1孔251aの直径はボルト901の直径よりも大きい。それゆえ、第1ブラケット251は上フレーム210に対してXZ平面内で動くことができる。すなわち、上フレーム210に対する第1ブラケット251の位置は、XZ平面内で調整が可能である。
【0042】
孔の軸線がZ方向に延びている第2孔251bの直径はボルト902の直径よりも大きい。それゆえ、第2ブラケット252は第1ブラケット251に対してXY平面内で動くことができる。すなわち、第1ブラケット251に対する第2ブラケット252の位置は、XY平面内で調整可能である。XY平面は、XZ平面に対して直交する平面である。
【0043】
上フレーム210に懸架される電力制御ユニット204の位置は、第1ブラケット251と第2ブラケット252によって、XYZの夫々の方向に調整が可能である。特に、第1孔251aと第2孔251bは、共に、電力制御ユニット204のX方向の位置を調整可能である。それゆえ、電力制御ユニット204はX方向の調整幅が大きい。X方向は、矩形の上フレーム210の長手方向に相当する。すなわち、第1ブラケット251と第2ブラケット252を介して上フレーム210に懸架される電力制御ユニット204の位置調整において、その長手方向の調整範囲が短手方向の調整範囲よりも大きい。
【0044】
図12を参照して第1ブラケットの変形例(第1ブラケット253)を用いたFCモジュール2bを説明する。
図12は、第1ブラケット253の第1孔253aと第2孔253bを通りYZ平面に平行な平面でカットしたFCモジュール2bの断面図である。
【0045】
第1孔253aは前述した第1ブラケット251の第1孔251aと同様にY方向を向いている。従って、第1孔253aとボルト901のクリアランスにより、電力制御ユニット204は上フレーム210に対してXZ平面内で動くことができる。
【0046】
一方、第1ブラケット253は、直角よりも小さい角度Thで屈曲している。第2孔253bの開口面(XY’平面)は、Z軸に対して角度Thだけ傾いている。それゆえ、第2孔253bとボルト902のクリアランスにより、電力制御ユニット204は上フレーム210に対してXY’平面内で動くことができる。
【0047】
第2実施例のFCモジュール2a、2bでは、フレーム内の電力制御ユニット204の位置の微調整が容易である。
【0048】
(第3実施例)
図13、14を参照しつつ第3実施例のFCモジュール2cを説明する。
図13は、FCモジュール2cの下フレーム320の平面図である。
図14は、
図13のXIV-XIV線でカットした下フレーム320の断面図である。
【0049】
下フレーム320は、容器の底の四辺に対応する4本の下主梁321a~321dと、4本の縦主梁331a~331dと、補強梁322、323で構成される。補強梁322、323は、平行な一対の下主梁321a、321cを連結する。
【0050】
第3実施例のFCモジュール2cでは、電力制御ユニット304が下フレーム320に固定されている。
図13では、下フレーム320に固定されるFCスタックの図示は省略した。
【0051】
電力制御ユニット304は、金属ブロック341とブラケット342を介して下フレーム320の補強梁322、323に固定されている。金属ブロック341は、電力制御ユニット304の筐体と同じ金属(アルミニウム)で作られている。補強梁322に金属ブロック341が固定されており、その金属ブロック341に、電力制御ユニット304がボルト351で固定されている。
【0052】
ブラケット342は、鉄の板で作られている。別言すれば、ブラケット342は、金属ブロック341とは異なる金属で作られている。ブラケット342の一端がボルト352とナット354で電力制御ユニット304に固定されている。ブラケット342の他端がボルト353とナット355で補強梁323に固定されている。
【0053】
第3実施例のFCモジュール2cの構造の利点を説明する。電力制御ユニット304が金属ブロック341を介して下フレーム320に固定されている。電力制御ユニット304は、FCモジュール2cの部品のうち、FCスタック3の次に重い。あるいは、電力制御ユニット304は、FCスタック3とコンプレッサ5の次に重い。金属ブロック341は、重い電力制御ユニット304をしっかりと支えることができる。また、この構造により、電力制御ユニット304は振動し難い。
【0054】
電力制御ユニット304はブラケット342を介して下フレーム320に固定されている。ブラケット342は金属ブロック341に比べて剛性が低い。この構造により、ボルトで固定する前の電力制御ユニット304とブラケット342の間に隙間があってもブラケット342は隙間を狭めるように変形する。ブラケット342が変形することで電力制御ユニット304と下フレーム320の間の位置ずれを吸収できる。
【0055】
(第4実施例)
図15を参照しつつ第4実施例のFCモジュール2dを説明する。
図15はFCモジュール2dの側面図である。FCモジュール2dは、容器400を備えている。容器400はフレーム構造の直方体であり、FCスタック3とコンプレッサ401を収容する。
【0056】
容器400は、上主梁111a、下主梁121a、121b、121d、縦主梁131a、131b、3本の補強梁145、146、403を備える。
図15では、他の主梁と補強梁は見えていない。
【0057】
補強梁403は、下主梁121aと左側の縦主梁131aを連結する。補強梁403は、リング状の中央部403aと、3本の腕403b、403c、403dで構成される。3本の腕403b~403dは、中央部403aから放射状に延びている。腕403bの先端が下主梁121aにボルトで固定されている。腕403cの先端と腕403dの先端がボルトで縦主梁131aに固定されている。
【0058】
コンプレッサ401の側面にはパイプ402が突出しており、パイプ402の上端が中央部403aのリングの内側に位置する。補強梁403は、パイプ402との干渉を避けるように、リング状の中央部403aを有している。
【0059】
本明細書が開示するFCモジュール2は、FCスタック3と、FCスタック3の出力電力を制御する電力制御ユニット4と、FCスタック3と電力制御ユニット4を収容する容器100を備える。容器100はフレーム構造を有しており、上フレーム110と下フレーム120に分けられる。電力制御ユニット4は、上フレーム110に懸架されており、電力制御ユニット4の下をFCスタック3に接続されているパイプ6、7が通過している。FCモジュール2は、電力制御ユニット4を上フレーム110に懸架して電力制御ユニット4の下方に空間を確保し、その空間にFCスタック3のパイプ6、7を通す。FCモジュール2は、FCスタック3とそのパイプ6、7、および、電力制御ユニット4を空間効率よく容器100に収めている。
【0060】
電力制御ユニット4は複数のブラケットを介して上フレーム110に懸架されている。特に、複数のブラケットは、次の特徴を有する第1ブラケット251と第2ブラケット252を備えている。第1ブラケット251は、その一端が上フレーム110に連結される。第2ブラケット252は、その一端が第1ブラケット251の他端に連結され、他端が電力制御ユニット4に連結される。上フレーム110に対する第1ブラケット251の取り付け位置は第1平面内(XZ平面内)で調整可能であり、第1ブラケット251に対する第2ブラケット252の取り付け位置は第1平面に直交する第2平面内(XY平面内)で調整可能である。第1ブラケット251と第2ブラケット252の組み合わせにより、容器内における電力制御ユニット4の位置を微調整することができる。
【0061】
電力制御ユニット4の隣りに補機が配置されており、電力制御ユニット4と補機の一方に凸部が設けられており他方に凹部が設けられており、凸部と凹部が嵌合するように、電力制御ユニット4と補機が配置されている。補機とは、FCスタック3を運転するために必要なデバイスの総称であり、FCスタック3に空気を送り込むためのコンプレッサ5がその一例である。凸部と凹部が嵌合するように電力制御ユニット4と補機(コンプレッサ5)を配置することで、さらに空間効率が向上する。
【0062】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。補強梁の位置は、実施例で例示した位置に限られない。補強梁の形状も実施例で示した形状に限られない。電力制御ユニット4、204、304が、制御器の一例に相当する。
【0063】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0064】
2、2a、2b、2c、2d:燃料電池モジュール 3:燃料電池スタック 4、204、304:電力制御ユニット 4a:凸部 5:コンプレッサ 5a:凹部 6、7:パイプ 100、400:容器 110、210:上フレーム 111a~111d、121a~121d、131a~131d:主梁 120:下フレーム 141~146:補強梁 151~156、251、252、253、342:ブラケット 206:タブ 341:金属ブロック 901、902、903:ボルト