(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F01M 13/04 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
F01M13/04 E
(21)【出願番号】P 2022032302
(22)【出願日】2022-03-03
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅巳
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-067008(JP,A)
【文献】特開2021-113521(JP,A)
【文献】特開2006-068190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室からクランクケースに漏出したブローバイガスを、吸気通路に還流させて処理するブローバイガス処理装置を備えた内燃機関であり、
前記ブローバイガス処理装置は、オイルセパレータと、接続配管と、圧力センサと、を備えており、
前記オイルセパレータは、シリンダヘッドカバーに設けられて内部に主室と副室とが形成されており、前記副室を形成する継手部と前記副室を前記主室に繋ぐ絞り部とを備えており、
前記副室は、隔壁によって区画された第1副室及び第2副室であり、
前記隔壁には前記第1副室と前記第2副室とを繋ぐ連通孔が形成されており、
前記第1副室は、前記絞り部を介して前記主室に繋がっており、
前記継手部には、前記第1副室に繋がる第1接続口、及び、前記第2副室に繋がる第2接続口が形成されており、
前記第1接続口は、前記接続配管を介して前記吸気通路に繋がり、
前記第2接続口は、前記圧力センサに繋がって
おり、
前記オイルセパレータの前記主室は、前記シリンダヘッドカバーの内側に位置しており、
前記オイルセパレータの前記継手部は、前記シリンダヘッドカバーの外側に位置しており、
前記継手部内の前記第1副室及び前記第2副室は、前記シリンダヘッドカバーに沿って並ぶように位置している内燃機関。
【請求項2】
前記連通孔及び前記第1接続口は、それらの軸線が一致しないように形成されている
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記連通孔及び前記絞り部は、それらの軸線が一致しないように形成されている
請求項1又は2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記隔壁は、前記継手部の内壁と繋がっている
請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記絞り部及び前記第1接続口は、それらの軸線が一致するように形成されている
請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記絞り部から前記連通孔までの距離は、前記絞り部から前記第1接続口までの距離よりも長い
請求項1~5のいずれか一項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブローバイガス処理装置を備えた内燃機関が開示されている。ブローバイガス処理装置は、内燃機関の燃焼室からクランクケースに漏出したブローバイガスを、シリンダヘッドカバーから吸気通路に還流させて処理するためのものである。ブローバイガス処理装置は、配管継手及び接続配管を備えている。
【0003】
上記配管継手は、内燃機関のシリンダヘッドカバーに設けられている。配管継手は、上記接続配管を介して内燃機関の吸気通路に繋がっている。配管継手の内部には絞り部が設けられている。これにより、接続配管は、配管継手の絞り部を介して、シリンダヘッドカバー内部と連通している。シリンダヘッドカバーの内部と吸気通路とは、配管継手及び接続配管によって連通されている。配管継手にはユニオン部が設けられている。ユニオン部は、接続継手における接続配管が接続されている部分と絞り部との間に位置している。ユニオン部には圧力センサが接続されている。
【0004】
接続配管が配管継手から外れたり、吸気通路から外れたりした場合には、圧力センサで検出している圧力値が急変する。そのため、圧力センサで検出している圧力値を監視することにより、接続配管が外れたことを検知することができる。また、接続配管が損傷した場合にも、圧力センサで検出している圧力値が急変する。そのため、圧力センサで検出している圧力値を監視することにより、接続配管の損傷も検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、内燃機関の運転中には、吸気通路で吸気の脈動が生じるとともに、クランクケース内でピストンの往復動に伴うガスの脈動が生じる。これらの脈動が接続継手の内部に伝播すると、圧力センサによって検出される圧力値が上記脈動の影響によっても変動する。その結果、接続配管の外れや損傷といった異常を適切に検知することができなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する内燃機関は、燃焼室からクランクケースに漏出したブローバイガスを吸気通路に還流させて処理するブローバイガス処理装置を備える。ブローバイガス処理装置は、オイルセパレータと、接続配管と、圧力センサと、を備える。オイルセパレータは、シリンダヘッドカバーに設けられ、内部に主室と副室とが形成されている。オイルセパレータは、副室を形成する継手部と、その副室を主室に繋ぐ絞り部と、を備える。副室は、隔壁によって区画された第1副室及び第2副室とされる。隔壁には第1副室と第2副室とを繋ぐ連通孔が形成される。第1副室は、上記絞り部を介して前記主室に繋がっている。継手部には、第1副室に繋がる第1接続口、及び、第2副室に繋がる第2接続口が形成される。第1接続口は、接続配管を介して吸気通路に繋がる。第2接続口は、圧力センサに繋がっている。
【0008】
上記構成によれば、圧力センサは、第2副室及び連通孔を介して第1副室と接続される。このため、第1副室まで脈動が伝播したとしても、その脈動が第1副室から連通孔及び第2副室を通過する際に緩和される。したがって、圧力センサが検出する圧力値に上記脈動の影響による変動が生じることを抑制できる。その結果、圧力センサの検出した圧力値を監視することにより、適切に接続配管の異常を検知することができる。また、第1副室と第2副室とは、継手部内を隔壁で区画することによって形成されている。このため、大きなスペースをとることなく上記脈動を緩和するための第2副室が設けられる。したがって、上記脈動を緩和するための構造を小さいスペースで実現することができる。
【0009】
上記内燃機関において、オイルセパレータの主室は、シリンダヘッドカバーの内側に位置するものとされる。このオイルセパレータの継手部は、シリンダヘッドカバーの外側に位置するものとされる。継手部内の第1副室及び第2副室は、シリンダヘッドカバーに沿って並ぶように位置するものとされる。
【0010】
上記構成によれば、第1副室と第2副室とがシリンダヘッドカバーに沿って並ぶように位置しているため、第1副室及び第2副室を内部に形成する継手部のシリンダヘッドカバーからの突出量を小さく抑えることができる。
【0011】
上記内燃機関において、連通孔及び第1接続口は、それらの軸線が一致しないように形成されているものとすることが考えられる。
この構成によれば、内燃機関における吸気の脈動が接続配管及び第1接続口を介して第1副室に伝播したとしても、その脈動が連通孔を介して第2副室に伝播しにくくなる。したがって、圧力センサが検出する圧力値に上記脈動の影響による変動が生じることをより効果的に抑制できる。
【0012】
上記内燃機関において、連通孔及び絞り部は、それらの軸線が一致しないように形成されているものとすることが考えられる。
この構成によれば、内燃機関におけるクランクケース内でのガスの脈動が主室及び絞り部を介して第1副室に伝播したとしても、その脈動が連通孔を介して第2副室に伝播しにくくなる。したがって、圧力センサが検出する圧力値に上記脈動の影響による変動が生じることをより効果的に抑制できる。
【0013】
上記内燃機関において、隔壁は、継手部の内壁と繋がっているものとすることが考えられる。
この構成によれば、隔壁によって継手部を補強することができるため、継手部の振動及びその振動に伴う音の発生を抑制することができる。
【0014】
上記内燃機関において、絞り部及び第1接続口は、それらの軸線が一致するように形成されているものとすることが考えられる。
この構成によれば、第1副室内における絞り部と第1接続口との間でのガスの流れを円滑にすることができる。これにより、上記脈動が連通孔を介して第2副室に伝播しにくくなる。したがって、圧力センサが検出する圧力値に上記脈動の影響による変動が生じることをより効果的に抑制できる。
【0015】
上記内燃機関において、絞り部から連通孔までの距離は、絞り部から第1接続口までの距離よりも長くすることが考えられる。
この構成によれば、絞り部と第1接続口との間でのガスの流れに対し、第2副室をより遠くに離すことができる。これにより、上記脈動が連通孔を介して第2副室に伝播しにくくなる。したがって、圧力センサが検出する圧力値に上記脈動の影響による変動が生じることをより効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】第2セパレータの他の例を示す断面図である。
【
図5】第2セパレータの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、内燃機関の第1実施形態について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1に示すように、内燃機関90は、シリンダブロック91、シリンダヘッド97、シリンダヘッドカバー98、クランクケース95、オイルパン96を備えている。
【0018】
シリンダブロック91には、複数のシリンダ92が形成されている。各シリンダ92には、クランクケース95に収容されているクランクシャフトの回転と連動して往復動するピストン94がそれぞれ収容されている。
【0019】
シリンダヘッド97には、内燃機関90の吸気バルブ及び排気バルブが組み付けられている。また、シリンダヘッド97に取り付けられているシリンダヘッドカバー98は、吸気バルブ及び排気バルブを駆動するカムシャフトを覆っている。シリンダヘッドカバー98は、樹脂材料によって成形されている。シリンダヘッドカバー98におけるシリンダヘッド97側には、バッフルプレートが取り付けられている。
【0020】
オイルパン96は、内燃機関90の各部の潤滑及び油圧駆動機構に用いられるオイルを貯留する。
内燃機関90は、シリンダ92とピストン94とシリンダヘッド97とによって区画されている燃焼室93を備えている。内燃機関90は、燃焼室93に吸気を導入する吸気通路71を備えている。そして、内燃機関90は、燃焼室93で燃焼された混合気を排気として排出する排気通路78を備えている。
【0021】
内燃機関90は、過給機80を備えている。過給機80のタービン82は、排気通路78に配置されている。そして、タービン82と連結されているコンプレッサ81が吸気通路71に配置されている。
【0022】
内燃機関90の吸気通路71におけるコンプレッサ81よりも上流側には、エアクリーナ72が設けられている。そして、吸気通路71におけるコンプレッサ81よりも下流側には、インタークーラー73が設けられている。また、吸気通路71におけるインタークーラー73よりも下流側にはスロットルバルブ74が設けられている。さらに吸気通路71におけるスロットルバルブ74よりも下流側には、インテークマニホールド75が設けられている。インテークマニホールド75は、シリンダヘッド97に接続されている。
【0023】
インテークマニホールド75を通過した吸気は、シリンダヘッド97に形成されている吸気ポート76を介して燃焼室93に導入される。また、シリンダヘッド97には、燃焼室93から排気を排出する排気ポート77が形成されている。燃焼室93から排出された排気は、排気ポート77を介して排気通路78に排出される。内燃機関90は、ブローバイガス処理装置30を備えている。
【0024】
<ブローバイガス処理装置30について>
ブローバイガス処理装置30は、クランクケース95と吸気通路71とを連通するブローバイガス通路49を備えており、燃焼室93からクランクケース95に漏出したブローバイガスを吸気通路71に還流させる。
【0025】
ブローバイガス処理装置30のブローバイガス通路49には第1セパレータ43が設けられている。第1セパレータ43は、ブローバイガスに含有するオイルを同ブローバイガスから分離するためのものである。第1セパレータ43は、シリンダヘッドカバー98に位置している。第1セパレータ43は、ブローバイガス放出管47によって吸気通路71のインテークマニホールド75と接続されている。ブローバイガス放出管47としては、ゴム製のホース又は樹脂製のパイプ等を用いることができる。ブローバイガス放出管47には、第1セパレータ43とインテークマニホールド75との連通を開閉するPCVバルブ48が設けられている。PCVバルブ48は、インテークマニホールド75内の圧力が第1セパレータ43内の圧力よりも低いときに開弁して第1セパレータ43とインテークマニホールド75とを連通させる。
【0026】
ブローバイガス処理装置30は、クランクケース95内のブローバイガスを第1セパレータ43に導入するための吸引通路41を備えている。吸引通路41は、シリンダブロック91及びシリンダヘッド97に形成されている。吸引通路41には、吸引通路41を通過するブローバイガスからオイルを分離するプレセパレータ42が設けられている。
【0027】
ブローバイガス処理装置30は、吸気通路71からクランクケース95内に新気を導入する接続配管31を備えている。接続配管31としては、ゴム製のホース又は樹脂製のパイプ等を用いることができる。接続配管31の一端は、吸気通路71におけるエアクリーナ72とコンプレッサ81との間に接続されている。接続配管31の他端は、オイルセパレータとしての第2セパレータ32に接続されている。第2セパレータ32は、シリンダヘッドカバー98に設けられている。第2セパレータ32は、シリンダヘッドカバー98とバッフルプレートとによって区画されている。
【0028】
第2セパレータ32は、接続配管31を接続する継手部10を備えている。継手部10には、接続配管31内の圧力を検出する圧力センサ54が接続通路60を介して接続されている。圧力センサ54の検出信号は、内燃機関90の制御装置に入力される。制御装置は、圧力センサ54の検出信号に基づいて接続配管31内の圧力を検出し、当該圧力の変動が規定範囲を超えて大きくなった場合に接続配管31の異常を検出する。
【0029】
シリンダブロック91には、クランクケース95と連通する連通路99が形成されている。接続配管31と第2セパレータ32と連通路99とを介して、吸気通路71とクランクケース95とが接続されている。以下では、接続配管31を含み吸気通路71とクランクケース95とを接続する通路を「新気導入通路」ということもある。
【0030】
ブローバイガス処理装置30は、過給機80の駆動に伴って負圧を発生させるエゼクタ50を備えている。エゼクタ50は、第1セパレータ43に接続されているエゼクタ本体51を備えている。エゼクタ本体51には、吸気通路71におけるコンプレッサ81とインタークーラー73との間に接続されている第1吸気循環路52と、吸気通路71におけるエアクリーナ72とコンプレッサ81との間に接続されている第2吸気循環路53と、が接続されている。第2吸気循環路53と吸気通路71との接続部分は、接続配管31と吸気通路71との接続部分よりも下流側に位置している。エゼクタ本体51は、第1吸気循環路52を介して供給された吸気を第2吸気循環路53側に噴射するノズル部51Aを備えている。エゼクタ本体51におけるノズル部51Aよりも第2吸気循環路53側には、気体の流路が徐々に拡大されるディフューザ部51Bが設けられている。エゼクタ50は、エゼクタ本体51と第1吸気循環路52と第2吸気循環路53とによって構成されている。
【0031】
内燃機関90が過給域で運転されておらずインテークマニホールド75内の圧力が第1セパレータ43内の圧力よりも低いときには、PCVバルブ48が開弁して第1セパレータ43内のブローバイガスが吸気通路71に導入される。このとき、吸引通路41を介してクランクケース95内のブローバイガスが第1セパレータ43に引き込まれる。さらに、新気導入通路を介して、吸気通路71からクランクケース95内に吸気が引き込まれる。
【0032】
一方、内燃機関90が過給域で運転されているときには、吸気通路71におけるコンプレッサ81の下流側から第1吸気循環路52に流入した吸気がエゼクタ本体51及び第2吸気循環路53を介してコンプレッサ81の上流側に戻される。吸気がエゼクタ本体51のノズル部51Aを通過する際にエゼクタ本体51の内部に負圧が発生する。このときエゼクタ50は、第1セパレータ43を介してクランクケース95内のブローバイガスを吸引する。そして、エゼクタ50は、ディフューザ部51Bを通過したブローバイガスを、第2吸気循環路53を介して吸気通路71に放出する。
【0033】
なお、内燃機関90が過給域で運転されているときには、燃焼室93からクランクケース95に漏出するブローバイガスの圧力が比較的高い。吸気通路71における接続配管31が接続されている部分の内圧よりもクランクケース95内の圧力の方が高い場合には、新気導入通路を介してクランクケース95内のブローバイガスが吸気通路71に流入する。また、内燃機関90が過給域で運転されていないときであっても、例えばスロットルバルブ74が全開である場合には、燃焼室93からクランクケース95に漏出したブローバイガスが新気導入通路を介して吸気通路71に流入することもある。
【0034】
<第2セパレータ32について>
図2に示すように、第2セパレータ32におけるシリンダヘッドカバー98内に位置する箇所の内部には主室12が形成されている。第2セパレータ32の継手部10は、シリンダヘッドカバー98外に位置している。継手部10は、シリンダヘッドカバー98に対し溶着されている。継手部10の内部には第1副室13及び第2副室14が形成されている。第1副室13と第2副室14とは、隔壁11によって区画されている。隔壁11には第1副室13と第2副室14とを繋ぐ連通孔15が形成されている。第1副室13は、シリンダヘッドカバー98を貫通する絞り部16を介して、主室12に繋がっている。
【0035】
継手部10には、第1副室13に繋がる第1接続口66、及び、第2副室14に繋がる第2接続口67が形成されている。第1接続口66には上記接続配管31(
図1)が接続されている。したがって、第1副室13は、第1接続口66及び接続配管31を介して、吸気通路71に接続されている。第2接続口67には上記接続通路60が接続されている。したがって、第2副室14は、第2接続口67及び接続通路60を介して、圧力センサ54に繋がっている。
【0036】
<第1副室13及び第2副室14について>
図2に示すように、隔壁11は、継手部10における上端部の内壁10aから下方に向けて、すなわちシリンダヘッドカバー98に向けて突出している。隔壁11は、継手部10の内壁10aと繋がっている。隔壁11の突出方向の先端とシリンダヘッドカバー98との間には隙間が形成されている。この隙間が上記連通孔15となっている。このように隔壁11を形成することにより、継手部10内の第1副室13及び第2副室14がシリンダヘッドカバー98に沿って並ぶように位置する。
【0037】
連通孔15及び第1接続口66は、それらの軸線L1,L2が一致しないように形成されている。また、連通孔15と絞り部16は、それらの軸線L1,L3が一致しないように形成されている。絞り部16から連通孔15までの距離は、絞り部16から第1接続口66までの距離よりも長くされている。絞り部16及び第1接続口66は、それらの軸線L3,L2が一致するように形成されている。
【0038】
シリンダヘッドカバー98における第2副室14に位置する面は、連通孔15に向かって下るように傾斜している。これにより、第2副室14内に入った水やオイルといった流体が連通孔15に向けて流される。更に、その流体は、連通孔15から第2副室14の外に排出される。連通孔15における流体の流通断面積は、圧力センサ54によって検出したい圧力範囲に応じて定められるとともに、第2副室14から流体を排出させることが可能な値に定められる。連通孔15における流体の流通断面積は、第1副室13における流体の流通断面積よりも小さくされるとともに、第2副室14における流体の流通断面積よりも小さくされる。
【0039】
次に、本実施形態の内燃機関90の作用について説明する。
ブローバイガス処理装置30を備えた内燃機関90のシリンダヘッドカバー98には、オイルセパレータとして機能する第2セパレータ32の継手部10が設けられている。継手部10の第1接続口66には接続配管31が接続されている。接続配管31は、第1接続口66を介して継手部10内の第1副室13と繋がっている。第1副室13は、継手部10内の連通孔15及び第2副室14、並びに接続通路60を介して圧力センサ54と繋がっている。第1副室13における圧力センサ54と繋がる位置は、第2セパレータ32の絞り部16よりも上記第1接続口66寄りの位置となる。このため、接続配管31の外れや損傷といった異常が発生したとき、継手部10の第1接続口66が大気開放されることに伴い、圧力センサ54の検出値が大気圧に近づくように変動しやすくなる。こうした圧力センサ54の検出値の変動によって上記異常を検出することができる。
【0040】
内燃機関90の運転中には、吸気通路71で吸気の脈動が生じるとともに、クランクケース95内でピストン94の往復動に伴うガスの脈動が生じる。これらの脈動は、継手部10の第1副室13に伝播する。圧力センサ54は、接続通路60、第2接続口67、第2副室14、及び連通孔15を介して、第1副室13に繋がっている。このため、上記脈動が第1副室13から圧力センサ54に向かう際には、第2副室14で上記脈動が緩和される。したがって、圧力センサ54によって検出される圧力値が、上記脈動の影響によって変動することを抑制できる。その結果、接続配管31の外れや損傷といった異常を、圧力センサ54が検出した圧力値の監視によって適切に検知することができなくなることを抑制できる。
【0041】
第1副室13と第2副室14とは、継手部10内を隔壁11で区画することによって形成されている。このため、大きなスペースをとることなく上記脈動を緩和するための第2副室14が設けられる。したがって、上記脈動を緩和するための構造を小さいスペースで実現することができる。
【0042】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1-1)圧力センサ54が検出する圧力値に上記脈動の影響による変動が生じることを抑制でき、且つ、上記脈動を緩和するための構造を小さいスペースで実現することができる。
【0043】
(1-2)継手部10は、シリンダヘッドカバー98に対し溶着されている。継手部10の内部に形成された第1副室13と第2副室14とは、シリンダヘッドカバー98に沿って並ぶように位置している。このため、継手部10のシリンダヘッドカバー98からの突出量を小さく抑えることができる。
【0044】
(1-3)継手部10の連通孔15及び第1接続口66は、それらの軸線L1,L2が一致しないように形成されている。このため、内燃機関90における吸気の脈動が接続配管31及び第1接続口66を介して第1副室13に伝播したとしても、その脈動が連通孔15を介して第2副室14に伝播しにくくなる。したがって、圧力センサ54が検出する圧力値に上記脈動の影響による変動が生じることをより効果的に抑制できる。
【0045】
(1-4)連通孔15及び絞り部16は、それらの軸線L1,L3が一致しないように形成されている。このため、内燃機関90におけるクランクケース95内でのガスの脈動が主室12及び絞り部16を介して第1副室13に伝播したとしても、その脈動が連通孔15を介して第2副室14に伝播しにくくなる。したがって、圧力センサ54が検出する圧力値に上記脈動の影響による変動が生じることをより効果的に抑制できる。
【0046】
(1-5)隔壁11は継手部10の内壁10aと繋がっているため、その隔壁11によって継手部10を補強することができる。したがって、継手部10の振動及びその振動に伴う音の発生を抑制することができる。
【0047】
(1-6)絞り部16及び第1接続口66は、それらの軸線L3,L2が一致するように形成されている。このため、第1副室13内における絞り部16と第1接続口66との間でのガスの流れを円滑にすることができる。これにより、上記脈動が連通孔15を介して第2副室14に伝播しにくくなる。したがって、圧力センサ54が検出する圧力値に上記脈動の影響による変動が生じることをより効果的に抑制できる。
【0048】
(1-7)絞り部16から連通孔15までの距離は、絞り部16から第1接続口66までの距離よりも長くされている。このため、絞り部16と第1接続口66との間でのガスの流れに対し、第2副室14をより遠くに離すことができる。これにより、上記脈動が連通孔15を介して第2副室14に伝播しにくくなる。したがって、圧力センサ54が検出する圧力値に上記脈動の影響による変動が生じることをより効果的に抑制できる。
【0049】
(1-8)シリンダヘッドカバー98における第2副室14に位置する面は、連通孔15に向かって下るように傾斜している。これにより、第2副室14内に入った水やオイルといった流体を連通孔15に向けて流し、その連通孔15から第2副室14の外に排出することができる。
【0050】
(1-9)連通孔15は、隔壁11の端部とシリンダヘッドカバー98との間に形成されている。シリンダヘッドカバー98の内側には、内燃機関90の運転時に暖かいオイルが飛散する。このため、低温時に水分の凍結によって連通孔15が閉塞されることを抑制できる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、内燃機関の第2実施形態について、
図3を参照して説明する。
図3は、この実施形態の内燃機関90における第2セパレータ32を示している。
図3から分かるように、この第2セパレータ32における継手部10の内部は、
図3の左右方向に延びる隔壁11によって第1副室13と第2副室14とに区画されている。隔壁11は継手部10の内壁10aに繋がっている。第1副室13は、隔壁11よりもシリンダヘッドカバー98寄りに位置している。第1副室13は、絞り部16と繋がっている。第2副室14は、隔壁11よりもシリンダヘッドカバー98から離れて位置している。
【0052】
隔壁11には連通孔15が隔壁11を貫通するように形成されている。隔壁11は、連通孔15に向かって下るように傾斜している。言い換えれば、連通孔15が隔壁11の最下点に位置している。
【0053】
継手部10には第1接続口66及び第2接続口67が形成されている。第1接続口66は第1副室13に繋がり、第2接続口67は第2副室14に繋がっている。連通孔15及び第1接続口66は、それらの軸線L1,L2が一致しないように形成されている。また、連通孔15と絞り部16は、それらの軸線L1,L3が一致しないように形成されている。絞り部16から連通孔15までの距離は、絞り部16から第1接続口66までの距離よりも長くされている。
【0054】
本実施形態によれば、第1実施形態の(1-1)、(1-3)~(1-5)、及び(1-7)と同様の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(2-1)隔壁11は、連通孔15に向かって下るように傾斜している。これにより、第2副室14内に入った水やオイルといった流体を連通孔15に向けて流し、その連通孔15から第2副室14の外に排出することができる。
【0055】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0056】
・第1実施形態において、連通孔15は、隔壁11の突出方向の先端とシリンダヘッドカバー98との隙間によって形成されるものでなくてもよい。例えば、隔壁11はシリンダヘッドカバー98に接触し、連通孔15は隔壁11を貫通するものとする。この場合、連通孔15を複数形成してもよい。そして、複数の連通孔15のうちの少なくとも一つを、第2副室14から第1副室13に水やオイルといった液体を排出することが可能なものとする。
【0057】
・第1実施形態において、隔壁11は、シリンダヘッドカバー98から
図2の上方に向けて突出し、継手部10の内壁10aに対し接触するものであってもよい。この場合、連通孔15は、上述したように隔壁11を貫通するものとされる。
【0058】
・第1実施形態において、シリンダヘッドカバー98における第2副室14に位置する面は、必ずしも連通孔15に向かって下るように傾斜している必要はない。
・第2実施形態において、隔壁11は、必ずしも連通孔15に向かって下るように傾斜している必要はない。
【0059】
・第2実施形態において、継手部10の連通孔15及び第1接続口66は、それらの軸線L1,L2が一致していてもよい。
・第1及び第2実施形態において、絞り部16から連通孔15までの距離は、必ずしも絞り部16から第1接続口66までの距離よりも長くされている必要はない。例えば、
図4に示すように、絞り部16から連通孔15までの距離が、絞り部16から第1接続口66までの距離よりも短くされていてもよい。この場合、絞り部16及び第1接続口66の軸線L3,L2が一致するように、絞り部16及び第1接続口66が形成されていることが好ましい。
【0060】
・第1実施形態において、
図5に示すように、絞り部16及び第1接続口66は、それらの軸線L3,L2が一致していなくてもよい。この場合、絞り部16から連通孔15までの距離が、絞り部16から第1接続口66までの距離よりも長くされていることが好ましい。
【0061】
・第2実施形態において、連通孔15の第1副室13側の開口部を第1副室13内に延ばしたり、第2副室14側の開口部を第2副室14内に延ばしたりしてもよい。これらの場合、連通孔15をガスが通過する際の抵抗が大きくなるため、ガスの脈動が第1副室13から第2副室14に伝わりにくくなる。また、連通孔15の第1副室13側の開口部のみ第1副室13内に延ばす場合、そのことに伴って第2副室14から第1副室13への水やオイル等の流体の排出性が悪くなることを抑制できる。
【0062】
・第1及び第2実施形態における内燃機関90は過給機80を備えているが、過給機80は必須の構成ではない。過給機80を備えていない内燃機関90であっても、上記実施形態と同様に圧力センサ54によって接続配管31の異常を検出することができる。過給機80を備えていない内燃機関90であっても、スロットルバルブ74が全開である場合には燃焼室93からクランクケース95に漏出したブローバイガスが新気導入通路を介して吸気通路71に流入することもある。
【0063】
・第1及び第2実施形態における内燃機関90では、内燃機関90が過給域で運転されているときにエゼクタ50によって負圧を生じさせて吸気通路71にブローバイガスを放出するように構成しているが、エゼクタ50を省略することもできる。この場合、内燃機関90が過給域で運転されているときには、新気導入通路を介してブローバイガスを吸気通路71に放出することができる。
【0064】
・第1及び第2実施形態における第1セパレータ43を第2セパレータ32と同様の構成とし、その第1セパレータ43にブローバイガス放出管47を取り付ける継手部の第2副室に圧力センサ54を繋ぐようにしてもよい。この場合には、ブローバイガス放出管47の異常を圧力センサ54で検出することになる。
【符号の説明】
【0065】
10…継手部
10a…内壁
11…隔壁
12…主室
13…第1副室
14…第2副室
15…連通孔
16…絞り部
30…ブローバイガス処理装置
31…接続配管
32…第2セパレータ
41…吸引通路
42…プレセパレータ
43…第1セパレータ
47…ブローバイガス放出管
48…PCVバルブ
49…ブローバイガス通路
54…圧力センサ
60…接続通路
66…第1接続口
67…第2接続口
71…吸気通路
90…内燃機関
91…シリンダブロック
95…クランクケース
97…シリンダヘッド
98…シリンダヘッドカバー
99…連通路