(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ロータリドアおよび空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B60H1/00 102J
(21)【出願番号】P 2022036298
(22)【出願日】2022-03-09
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 洋至
(72)【発明者】
【氏名】藤原 栄司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 俊明
【審査官】葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-016791(JP,A)
【文献】特開平09-099725(JP,A)
【文献】特開2015-116883(JP,A)
【文献】特開2007-137140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00- 3/06
F16K 1/00- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が流れる通風路(21、61)を形成するケース(20、60)に設けられた開口(23~25、66~68)を開閉するロータリドアにおいて、
前記ケース内の前記通風路で所定の軸心(Ax、CL)まわりに回転可能に設けられるドア基板(31)と、
前記ドア基板の回転の前記軸心に垂直かつ前記軸心を中心とした仮想円における径方向外側から前記ドア基板に取り付けられる天板(33)と、
前記天板のうち径方向外側の面を覆うシール部材(34)であって、前記シール部材のうち前記仮想円における周方向の端部が前記天板の周方向の端部で前記天板の径方向内側に折り返された状態で前記天板に貼り付けられる前記シール部材と、
前記ドア基板に固定され、前記シール部材のうち前記天板の径方向内側に折り返された部位(341)の全部または一部を前記天板との間に挟む板部材(32)と、を備え
、
前記天板と前記板部材は、前記軸心に垂直な断面視において、前記シール部材を挟む部位が同心の円弧形状である、ロータリドア。
【請求項2】
空気が流れる通風路(21、61)を形成するケース(20、60)に設けられた開口(23~25、66~68)を開閉するロータリドアにおいて、
前記ケース内の前記通風路で所定の軸心(Ax、CL)まわりに回転可能に設けられるドア基板(31)と、
前記ドア基板の回転の前記軸心に垂直かつ前記軸心を中心とした仮想円における径方向外側から前記ドア基板に取り付けられる天板(33)と、
前記天板のうち径方向外側の面を覆うシール部材(34)であって、前記シール部材のうち前記仮想円における周方向の端部が前記天板の周方向の端部で前記天板の径方向内側に折り返された状態で前記天板に貼り付けられる前記シール部材と、
前記ドア基板に固定され、前記シール部材のうち前記天板の径方向内側に折り返された部位(341)の全部または一部を前記天板との間に挟む板部材(32)と、を備え
、
前記天板は、複数個設けられ、
前記シール部材は、複数の前記天板に対応して複数個設けられ、
前記板部材は、複数の前記天板および複数の前記シール部材に対応して複数個設けられている、ロータリドア。
【請求項3】
空気が流れる通風路(21、61)を形成するケース(20、60)に設けられた開口(23~25、66~68)を開閉するロータリドアにおいて、
前記ケース内の前記通風路で所定の軸心(Ax、CL)まわりに回転可能に設けられるドア基板(31)と、
前記ドア基板の回転の前記軸心に垂直かつ前記軸心を中心とした仮想円における径方向外側から前記ドア基板に取り付けられる天板(33)と、
前記天板のうち径方向外側の面を覆うシール部材(34)であって、前記シール部材のうち前記仮想円における周方向の端部が前記天板の周方向の端部で前記天板の径方向内側に折り返された状態で前記天板に貼り付けられる前記シール部材と、
前記ドア基板に固定され、前記シール部材のうち前記天板の径方向内側に折り返された部位(341)の全部または一部を前記天板との間に挟む板部材(32)と、を備え
、
前記板部材は、板厚方向に通じる穴(321)を有している、ロータリドア。
【請求項4】
空気が流れる通風路(21、61)を形成するケース(20、60)に設けられた開口(23~25、66~68)を開閉するロータリドアにおいて、
前記ケース内の前記通風路で所定の軸心(Ax、CL)まわりに回転可能に設けられるドア基板(31)と、
前記ドア基板の回転の前記軸心に垂直かつ前記軸心を中心とした仮想円における径方向外側から前記ドア基板に取り付けられる天板(33)と、
前記天板のうち径方向外側の面を覆うシール部材(34)であって、前記シール部材のうち前記仮想円における周方向の端部が前記天板の周方向の端部で前記天板の径方向内側に折り返された状態で前記天板に貼り付けられる前記シール部材と、
前記ドア基板に固定され、前記シール部材のうち前記天板の径方向内側に折り返された部位(341)の全部または一部を前記天板との間に挟む板部材(32)と、を備え
、
前記板部材のうち前記径方向外側を向く面には、前記シール部材の折り返された部位に押し込まれる突起部(324)が設けられている、ロータリドア。
【請求項5】
前記ドア基板と前記板部材とは、一体に形成されている、請求項1
ないし4のいずれか1つに記載のロータリドア。
【請求項6】
前記ドア基板は、前記軸心方向の一方側に設けられる第1ドア基板(311)と、前記軸心方向の他方側に設けられる第2ドア基板(312)とを有しており、
前記板部材のうち前記軸心方向の一方の部位が前記第1ドア基板に接続され、前記板部材のうち前記軸心方向の他方の部位が前記第2ドア基板に接続されている、請求項1
ないし5のいずれか1つに記載のロータリドア。
【請求項7】
前記ドア基板または前記天板の一方に設けられた爪部(331)と、前記ドア基板または前記天板の他方に設けられた係止溝(315)とが係止されることで、前記ドア基板と前記天板とが固定される構成となっている、請求項1ないし
6のいずれか1つに記載のロータリドア。
【請求項8】
前記天板と前記板部材との距離をG、前記シール部材の板厚をTとすると、
0<G≦T の関係を有している、請求項1ないし
7のいずれか1つに記載のロータリドア。
【請求項9】
1個の前記天板に対して複数の前記板部材(322、323)が設けられている、請求項1ないし8のいずれか1つに記載のロータリドア。
【請求項10】
請求項1ないし
9のいずれか1つに記載の前記ロータリドア(30、40、50)と、
空気が流れる前記通風路を形成すると共に前記ロータリドアを回転可能に収容する前記ケースと、
前記通風路を流れる空気の温度を調整する温度調整部(70、80)と、を備える空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリドア、および、それを備えた空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空調装置のケースの内側で所定の軸心まわりに回転可能に設けられ、ケースに設けられた開口を開閉することで空気の流れを切り替えるロータリドアが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のロータリドアは、回転の軸心方向の一方に設けられる円盤状の第1ドア基板と、軸心方向の他方に設けられる円盤状の第2ドア基板と、その第1ドア基板の外周部と第2ドア基板の外周部に亘って取り付けられる天板を備えている。天板は、軸心を中心に円周方向に延びる板状に形成されている。その天板には、径方向外側からシート状のシール部材が貼り付けられている。シール部材は、天板のうち径方向外側の面を覆うと共に、天板の回転方向の端部で天板の径方向内側に折り返されている。
【0004】
なお、特許文献1では、「ドア基板」は「ドア側壁」と称され、「天板」は「ドア基盤」と称され、「シール部材」は「フィルム」と称されている。また、「軸心方向」とは回転の軸心が延びる方向をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のロータリドアは、回転時におけるケースの内壁面とシール部材との摺動による摩擦力、または、シール部材の折り返された部位が折り返し前の形状に戻ろうとする自身の弾性力などにより、天板からシール部材が剥がれる恐れがある。そのため、このロータリドアは、汎用性の低いものとなっていた。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、シール部材の剥がれを防ぎ、汎用性を向上することの可能なロータリドア、および、そのロータリドアを備える空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1ないし4に係る発明によると、ロータリドアは、空気が流れる通風路(21、61)を形成するケース(20、60)に設けられた開口(23~25、66~68)を開閉するものであり、ドア基板(31)、天板(33)、シール部材(34)、板部材(32)を備える。ドア基板は、ケース内の通風路で所定の軸心(Ax、CL)まわりに回転可能に設けられる。天板は、ドア基板の回転の軸心に垂直かつ軸心を中心とした仮想円における径方向外側からドア基板に取り付けられる。シール部材は、天板のうち径方向外側の面を覆うと共に、そのシール部材のうち前記仮想円における周方向の端部が天板の周方向の端部で天板の径方向内側に折り返された状態で天板に貼り付けられる。板部材は、ドア基板に固定され、シール部材のうち天板の径方向内側に折り返された部位(341)の全部または一部を天板との間に挟む構成となっている。
さらに、請求項1に係る発明によると、天板と板部材は、軸心に垂直な断面視において、シール部材を挟む部位が同心の円弧形状である。
請求項2に係る発明によると、天板は、複数個設けられ、シール部材は、複数の天板に対応して複数個設けられ、板部材は、複数の天板および複数のシール部材に対応して複数個設けられている。
請求項3に係る発明によると、板部材は、板厚方向に通じる穴(321)を有している。
請求項4に係る発明によると、板部材のうち径方向外側を向く面には、シール部材の折り返された部位に押し込まれる突起部(324)が設けられている。
【0009】
これによれば、シール部材のうち天板の径方向内側に折り返された部位(以下、「シール部材の折返し部」という)を、天板とは反対側から板部材が押さえる構成となる。そのため、ロータリドアの回転時におけるケースの内壁面とシール部材との摺動による摩擦力、または、シール部材の折返し部が折り返し前の形状に戻ろうとする弾性力などに対し、天板からシール部材が剥がれることを防ぐことが可能である。したがって、このロータリドアは、天板からシール部材が剥がれることが無く、汎用性を向上することができる。
【0010】
また、シール部材と板部材との摩擦力、および、ケースの内壁面とシール部材との摩擦力により、基板に対する天板の周方向のがたつきを抑えることが可能である。これにより、ケースの開口部を開閉する際のロータリドアの位置精度を向上し、ケースの開口部からの空気漏れを防ぐことができる。
【0011】
請求項10に係る発明によれば、空調装置は、請求項1ないし9のいずれか1つに記載のロータリドア(30、40、50)と、空気が流れる通風路を形成すると共にロータリドアを回転可能に収容するケースと、通風路を流れる空気の温度を調整する温度調整部(70、80)とを備える。
【0012】
これによれば、空調装置は、請求項1に記載のロータリドアを備えることで、ケース内でロータリドアが回転しにくくなることを防ぎ、ロータリドアの位置精度を向上することが可能である。その結果、空調装置は、ロータリドアのロックによる温度調整の不良や吹き出し温度のフィーリング悪化を防ぐと共に、ロータリドアからの異音の発生も防ぐことができる。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係るロータリドアを備えた空調装置の断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るロータリドアの分解斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係るロータリドアの軸心方向の中央部において軸心に垂直な断面図である。
【
図5】第1実施形態に係るロータリドアの作動を説明するための説明図である。
【
図6】第1実施形態に係るロータリドアの作動を説明するための説明図である。
【
図7】第1実施形態に係るロータリドアの作動を説明するための説明図である。
【
図8】第2実施形態に係るロータリドアの斜視図である。
【
図9】第3実施形態に係るロータリドアの斜視図である。
【
図10】第4実施形態に係るロータリドアの斜視図である。
【
図11】第4実施形態に係るロータリドアの軸心方向の中央部において軸心に垂直な断面図である。
【
図12】第5実施形態に係るロータリドアの斜視図である。
【
図13】第6実施形態に係るロータリドアの斜視図である。
【
図14】第7実施形態に係るロータリドアの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に、本発明のロータリドアを適用した車両用空調装置の空調ユニット10を示す。なお、本発明のロータリドアは、空調ユニット10のリヤモジュールケース20内に配置される後席用エアミックスドア30に適用される。なお、本発明のロータリドアは、それに限らず、前席用エアミックスドア40、前席用モード切替ドア50などに適用してもよい。なお、
図1において、上、下、前、後を示す矢印は、車両用空調装置を車両に搭載した際の車両上下方向および車両前後方向を示している。
【0017】
車両用空調装置が備える空調ユニット10は、例えば車室内のインストルメントパネルの内側に配置されている。空調ユニット10は、空調ケース60、冷却用熱交換器70、加熱用熱交換器80、前席用エアミックスドア40、前席用モード切替ドア50、リヤモジュールケース20、後席用エアミックスドア30などを備えている。
【0018】
空調ケース60は、空調ユニット10の外郭を構成し、その内側に車室内へ送風する空気の通風路61を形成すると共に、その通風路61の途中に冷却用熱交換器70、加熱用熱交換器80、前席用エアミックスドア40、前席用モード切替ドア50などを収容している。空調ケース60は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)により成形されている。
【0019】
空調ケース60内の通風路61において前方の領域には、空気導入口62が設けられている。空気導入口62の車両幅方向一方側には、不図示の送風ユニットが配置されており、空気導入口62には、その送風ユニットから送出される空気が導入される。
【0020】
冷却用熱交換器70は、空調ケース60内において空気導入口62の車両後方側に配置されている。冷却用熱交換器70は、不図示の圧縮機、コンデンサ、膨張弁等とともに周知の冷凍サイクル装置を構成するエバポレータであり、その冷凍サイクルを循環する冷媒を蒸発させることで、冷却用熱交換器70を通過する空気を冷却する。
【0021】
加熱用熱交換器80は、空調ケース60内において冷却用熱交換器70の車両後方側に配置されるヒータコアであり、エンジン冷却水との熱交換により加熱用熱交換器80を通過する空気を加熱する。なお、加熱用熱交換器80として、ヒータコアに代えて、又はそれと共に、PCTヒータ、コンデンサ等を用いてもよい。なお、本実施形態の冷却用熱交換器70と加熱用熱交換器80は、空調ケース60内の通風路61を流れる空気の温度を調整する「温度調整部」の一例に相当する。
【0022】
空調ケース60内において冷却用熱交換器70と加熱用熱交換器80との間の通風路61には、冷却用熱交換器70を通過した冷風が流れる冷風通路63が形成されている。また、空調ケース60において加熱用熱交換器80の車両後方側の通風路61には、加熱用熱交換器80を通過した暖風が流れる暖風通路64が形成されている。
【0023】
空調ケース60内において冷風通路63と暖風通路64の上方には、前席用エアミックスドア40と前席用モード切替ドア50が設けられている。前席用エアミックスドア40と前席用モード切替ドア50はいずれもロータリドアであり、所定の軸心Axを中心としてそれぞれが個別に回転可能に設けられている。前席用エアミックスドア40と前席用モード切替ドア50は、軸心Axを中心に円周方向に延びる板状に形成されている。なお、前席用エアミックスドア40には、軸心Ax方向に延びる凹凸形状が円周方向に並んで設けられている。そして、前席用エアミックスドア40と前席用モード切替ドア50の内側には円筒状のドア内側空間65が形成されている。
【0024】
前席用エアミックスドア40は、軸心Axを中心として所定角度範囲で回転することで、冷風通路63とドア内側空間65との開口面積、および、暖風通路64とドア内側空間65との開口面積との比率を変えることが可能である。これにより、空調ユニット10から車室内の前席空間に吹き出される空気温度を調整することが可能である。なお、
図1では、前席用エアミックスドア40が冷風通路63を全開し、暖風通路64を全閉したマックスクール状態を示している。図示は省略するが、前席用エアミックスドア40を所定角度回転させることで、暖風通路64を全開し冷風通路63を全閉するマックスホット状態、および、マックスクールとマックスホットとの中間の状態も実施可能である。
【0025】
空調ケース60のうち前席用モード切替ドア50の径方向外側の部位には、デフロスタ吹出開口部66、フェイス吹出開口部67、フット吹出開口部68が、車両前方側からこの順に軸心Axを中心とした円周方向に設けられている。デフロスタ吹出開口部66は、車室内の窓ガラスの内表面に向けて空調風を吹き出す吹出口に連通する吹出開口部である。フェイス吹出開口部67は、前席に着座する乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す吹出口に連通する吹出開口部である。フット吹出開口部68部は、前席に着座する乗員の下半身に向けて空調風を吹き出す吹出開口部である。
【0026】
前席用モード切替ドア50は、第1モード切替ドア51と第2モード切替ドア52とを有している。前席用モード切替ドア50は、軸心Axを中心として所定角度範囲で回転することで、第1モード切替ドア51と第2モード切替ドア52により、デフロスタ吹出開口部66、フェイス吹出開口部67、フット吹出開口部68の開口面積をそれぞれ変えることが可能である。
【0027】
なお、
図1では、第1モード切替ドア51がデフロスタ吹出開口部66を全閉し、第2モード切替ドア52がフット吹出開口部68を全閉し、フェイス吹出開口部67が全開したフェイスモードを示している。なお、図示は省略するが、前席用モード切替ドア50を所定角度回転させることで、デフロスタモード、バイレベルモード、フットモード等も実施可能である。デフロスタモードは、デフロスタ吹出開口部66を全開し、フェイス吹出開口部67とフット吹出開口部68を全閉するモードである。バイレベルモードは、デフロスタ吹出開口部66を全閉し、フェイス吹出開口部67とフット吹出開口部68を開くモードである。フットモードは、デフロスタ吹出開口部66とフェイス吹出開口部67を全閉し、フット吹出開口部68を全開するモードである。
【0028】
リヤモジュールケース20と後席用エアミックスドア30は、空調ユニット10から車両の後席空間へ吹き出す空気の温度を調整するためのリヤモジュールを構成している。リヤモジュールケース20は、リヤモジュールの外郭を構成し、その内側に空調ケース60内から車両の後席空間へ送風する空気の通風路21を形成すると共に、その通風路21の途中に後席用エアミックスドア30を収容している。なお、本実施形態のリヤモジュールケース20および空調ケース60は、ロータリドア(具体的には、後席用エアミックスドア30、前席用モード切替ドア50、前席用エアミックスドア40)を回転可能に収容する「ケース」の一例に相当する。
【0029】
リヤモジュールケース20のうち後席用エアミックスドア30を収容する部位(以下、「リヤモジュールケース20のドア収容部22」という)は、略円筒形状に形成されている。リヤモジュールケース20のドア収容部22には、その円筒形状の周方向に暖風開口部23、冷風開口部24、後席用吹出開口部25が設けられている。暖風開口部23は、リヤ用暖風バイパス通路26を経由して空調ケース60内の暖風通路64に連通している。冷風開口部24は、リヤ用冷風バイパス通路27を経由して空調ケース60内の冷風通路63に連通している。後席用吹出開口部25は、後席用ダクト28を経由して後席空間に空調風を吹き出す吹出口に連通している。
【0030】
後席用エアミックスドア30は、ロータリドアであり、リヤモジュールケース20のドア収容部22の内側で所定の軸心CLを中心として回転可能に設けられている。
図2に示すように、後席用エアミックスドア30は、ドア基板31、板部材32、天板33、シール部材34等を備えている。なお、以下の説明では、後席用エアミックスドア30の回転の軸心CLに垂直かつ軸心CLを中心とした仮想円における径方向を単に「径方向」といい、その仮想円における周方向を単に「周方向」ということがある。
【0031】
第1実施形態では、ドア基板31は、軸心CL方向の一方に設けられる第1ドア基板311と、軸心CL方向の他方に設けられる第2ドア基板312を有している。ドア基板31のうち軸心CLを含む部位には、ドア基板31から軸心CL方向に突出する回転軸313が設けられている。この回転軸313に対し、不図示の電動モータからトルクが作用することで、ドア基板31は軸心CLを中心として回転する。なお、第1ドア基板311と第2ドア基板312とは、軸部材314により接続されている。なお、この軸部材314は廃することも可能である。
【0032】
板部材32は、軸心CLを中心に円周方向に延びる板状に形成されており、その円周上に1個以上設けられている。本実施形態では、2個の板部材32が設けられている。板部材32のうち軸心CL方向の一方の部位は第1ドア基板311に接続され、板部材32のうち軸心CL方向の他方の部位は第2ドア基板312に接続されている。詳細には、ドア基板31と板部材32と軸部材314とは樹脂射出成形により一体に形成され、ロータリドア本体部300を構成している。ドア基板31と板部材32と軸部材314とを一体に形成することで、ロータリドア本体部300の剛性を高めることができ、さらに、組み付け工数及び部品点数の増加を防ぐことができる。
【0033】
天板33は、軸心CLを中心に円周方向に延びる板状に形成され、板部材32に対応する位置において、径方向外側からドア基板31に取り付けられる。本実施形態では、2個の板部材32に対応して、2個の天板33がドア基板31に取り付けられている。天板33のうち軸心CL方向の一端と他端にはそれぞれ、径方向内側に延びる3個の爪部331が設けられている。一方、第1ドア基板311と第2ドア基板312にはそれぞれ爪部331に対応する位置に3個の係止溝315が設けられている。天板33に設けられた爪部331を、ドア基板31に設けられた係止溝315に係止することで、天板33とドア基板31とを容易に固定できる構成となっている。また、このような固定方法を採用することで、後席用エアミックスドア30を軽量化すると共に、組み付け工数等の製造コストを低減できる。
【0034】
なお、
図2~
図4に示すように、天板33の周方向の一方の端部332は、周方向の一方と径外方向との間の方向に向かって延びるように湾曲している。天板33の周方向の他方の端部333は、周方向の他方と径外方向との間の方向に向かって延びるように湾曲している。天板33は、その周方向の両端部を除く中央の部位が、軸心CLを中心に円周方向に延びる板状に形成されている。その天板33の中央の部位と板部材32とは、軸心CLに垂直な断面視において、同心の円弧状に形成されている。なお、本明細書において同心とは、実質的に同心であればよく、天板33の円弧の中心と板部材32の円弧の中心とが完全に一致している状態に加えて、製造公差等により僅かにずれている状態も含むものである。
【0035】
シール部材34は、柔らかい薄板状のパッキンであり、例えば、板状のウレタンの外側をナイロンのメッシュで覆ったものなどが使用される。本実施形態では、2個の天板33に対応して、2個のシール部材34が天板33に貼り付けられる。シール部材34は、天板33のうち径方向外側の面を覆うと共に、そのシール部材34のうち前記仮想円における周方向の端部が天板33の周方向の端部で天板33の径方向内側に折り返された状態で天板33に貼り付けられる。シール部材34と天板33とは、例えば両面テープまたは粘着剤などにより貼り付けられる。
【0036】
天板33にシール部材34が貼り付けられた状態で天板サブアッシー330が構成される。そして、その天板サブアッシー330を構成する天板33の爪部331を、ロータリドア本体部300の径方向外側から、そのロータリドア本体部300を構成するドア基板31の係止溝315に係止することで、後席用エアミックスドア30が作られる。
【0037】
図3および
図4は、天板サブアッシー330(即ち、天板33とシール部材34)と、ロータリドア本体部300(即ち、ドア基板31と板部材32)とを組み付けた状態の断面図である。詳細には、
図3は、後席用エアミックスドア30の軸心CL方向の中央部において軸心CLに垂直な断面図であり、
図4は、
図3のIV部分の拡大図である。
【0038】
図3および
図4に示すように、シール部材34のうち天板33の径方向内側に折り返された部位(以下、「シール部材34の折返し部341」という)は、天板33と板部材32との間に挟まれている。即ち、板部材32は、シール部材34の折返し部341の全部または一部を天板33との間に挟む構成となっている。この構成により、後席用エアミックスドア30の回転時にリヤモジュールケース20のドア収容部22の内壁面とシール部材34との摺動により発生する摩擦力よって天板33からシール部材34が剥がれることが防がれる。また、シール部材34の折返し部341が折り返し前の形状に戻ろうとするシール部材34自身の弾性力に対しても、天板33からシール部材34が剥がれることが防がれる。
【0039】
ここで、天板33と板部材32の位置関係は、次のようなっている。即ち、天板33と板部材32との距離をG、シール部材34の板厚をTとすると、0<G≦T の関係を有している。これにより、シール部材34の折返し部341を天板33と板部材32によって確実に挟み込むことで、シール部材34が天板33から剥がれることを防ぐことができる。なお、好ましくは、T/2≦G≦T の関係としてもよい。こうすることで、シート部材に過大な応力が作用することを抑制できる。
【0040】
本実施形態の後席用エアミックスドア30は、板部材32、天板33、シール部材34のセットが、周方向の2か所に設けられている。これにより、後席用エアミックスドア30は、軸心CLを中心として回転することで、リヤモジュールケース20のドア収容部22に設けられた複数の開口部(具体的には、暖風開口部23、冷風開口部24、後席用吹出開口部25)を同時に開閉し、また、その開口面積を変えることが可能である。これにより、後席用吹出開口部25から後席用ダクト28を経由して後席空間に吹き出される空気温度を調整することができる。
【0041】
次に、後席用エアミックスドア30の作動について説明する。
【0042】
図5は、車両の後席空間へ吹き出す空気温度をマックスクールとする状態を示している。この状態で、後席用エアミックスドア30は、冷風開口部24と後席用吹出開口部25の両方を全開し、暖風開口部23を全閉する。これにより、空調ケース60内の冷風通路63を流れる冷風は、リヤ用冷風バイパス通路27を経由して後席用エアミックスドア30の内側空間29に流入し、後席用吹出開口部25から後席用ダクト28を経由して後席空間に吹き出される。
【0043】
図6は、車両の後席空間へ吹き出す空気温度をマックスホットとする状態を示している。この状態で、後席用エアミックスドア30は、暖風開口部23と後席用吹出開口部25の両方を全開し、冷風開口部24を全閉する。これにより、空調ケース60内の暖風通路64を流れる暖風は、リヤ用暖風バイパス通路26を経由して後席用エアミックスドア30の内側空間29に流入し、後席用吹出開口部25から後席用ダクト28を経由して後席空間に吹き出される。
【0044】
なお、図示は省略するが、車両の後席空間へ吹き出す空気温度をマックスクールとマックスホットの中間温度とする場合、後席用エアミックスドア30は、冷風開口部24の開口面積と暖風開口部23の開口面積との比率を調整すると共に、後席用吹出開口部25を全開する。これにより、リヤ用冷風バイパス通路27とリヤ用暖風バイパス通路26からそれぞれ後席用エアミックスドア30の内側空間29に流入した冷風と暖風が混合され、その空気が後席用吹出開口部25から後席用ダクト28を経由して後席空間に吹き出される。
【0045】
図7は、車両の後席空間への空気の吹き出しを停止する状態を示している。この状態で、後席用エアミックスドア30は、後席用吹出開口部25を全閉し、暖風開口部23および冷風開口部24の少なくとも一方(本実施形態では暖風開口部23)を全閉する。これにより、後席用吹出開口部25から後席空間への空気の吹き出しが停止すると共に、空調ケース60内の暖風通路64と冷風通路63においてリヤモジュールケース20を経由した空気の流れも遮断される。
【0046】
上記
図5~
図7を参照して説明したように、後席用エアミックスドア30は、リヤモジュールケース20のドア収容部22内で所定の軸心CLを中心として回転する。その際、後席用エアミックスドア30のシール部材34の外周表面とリヤモジュールケース20の内壁面とが摺動する。そして、後席用エアミックスドア30は、車両の後席空間へ吹き出す空気温度を調整するため、所定の開口部を閉じると共に別の開口部を開く、或いは、開口部の開口面積を調整する。その際、後席用エアミックスドア30のシール部材34の外周表面がリヤモジュールケース20の内壁面に押し当てられることにより空気の漏れが防がれる。
【0047】
上述したように、後席用エアミックスドア30のシール部材34には、後席用エアミックスドア30の回転時におけるリヤモジュールケース20の内壁面とシール部材34との摺動による摩擦力、又は、シール部材34の折返し部341が折り返し前の形状に戻ろうとする自身の弾性力が作用する。ここで、上述した特許文献1に記載のロータリドアは、本実施形態で説明した板部材32を備えていない構成である。そのため、仮に、そのような特許文献1のロータリドアの構成を、本実施形態の後席用エアミックスドア30に適用すると、天板33からシール部材34が剥がれることが懸念される。天板33からシール部材34が剥がれると、例えば、その剥がれたシール部材34の一部がリヤモジュールケース20の内壁と後席用エアミックスドア30との摺動部に入り込むことや、シール部材34が裏返ってシール部材34の粘着面がリヤモジュールケース20の内壁に貼り付く恐れがある。その場合、リヤモジュールケース20内で後席用エアミックスドア30が回転しにくくなることや、狙いのドア位置にならないといった不具合が生じる。その結果、後席用エアミックスドア30のロックによる温度調整不良、後部座席の吹出温度のフィーリング悪化、後席用エアミックスドア30からの異音の発生などが懸念される。
【0048】
そのような問題に対し、本実施形態の後席用エアミックスドア30(以下、「ロータリドア」という)は、次の作用効果を奏するものである。
(1)本実施形態では、ドア基板31に固定された板部材32が、シール部材34の折返し部341の全部または一部を天板33との間に挟む構成となっている。
これによれば、シール部材34の折返し部341を、板部材32が天板33とは反対側から押さえることで、シール部材34の形状が維持される。そのため、ロータリドアの回転時におけるリヤモジュールケース20の内壁面とシール部材34との摺動時の摩擦力、または、シール部材34の折返し部341が元に戻ろうとする弾性力など対し、シール部材34が天板33から剥がれることを防ぐことができる。したがって、このロータリドアは、シール部材34の剥がれを防ぎ、汎用性を向上することができる。
【0049】
また、シール部材34と板部材32との摩擦力、および、リヤモジュールケース20の内壁面とシール部材34との摩擦力により、ドア基板31に対する天板33の周方向のがたつきを抑えることが可能である。これにより、リヤモジュールケース20の開口部23~25を開閉する際のロータリドアの位置精度を向上し、リヤモジュールケース20の開口部23~25からの空気漏れを防ぐことができる。
【0050】
さらに、本実施形態のロータリドアは、シール部材34の剥がれが確実に防がれているので、リヤモジュールケース20の内壁とロータリドアとの摺動部にシール部材34が入り込むことや、リヤモジュールケース20の内壁にシール部材34の粘着面が貼り付くことが防がれる。そのため、リヤモジュールケース20内でロータリドアが回転しにくくなることや、狙いのドア位置にならないことが防がれる。したがって、本実施形態のロータリドアは、ドアロックによる温度調整不良、後部座席の吹出温度のフィーリング悪化、ロータリドアからの異音の発生などを防止することができる。
【0051】
(2)本実施形態では、ドア基板31と板部材32とは、一体に形成されている。
これによれば、板部材32の追加によっても部品点数および組み付け工数が増加することが無いので、製造コストを低減できる。
【0052】
(3)本実施形態では、ドア基板31は、第1ドア基板311と第2ドア基板312とを有している。そして、板部材32のうち軸心CL方向の一方の部位が第1ドア基板311に接続され、板部材32のうち軸心CL方向の他方の部位が第2ドア基板312に接続されている。
これによれば、第1ドア基板311と第2ドア基板312と板部材32により構成されるロータリドア本体部300の剛性を高めることが可能である。そのため、リヤモジュールケース20の開口部23~25を開閉する際のロータリドアの位置精度を向上できる。
【0053】
(4)本実施形態では、天板33に設けられた爪部331と、ドア基板31に設けられた係止溝315とが係止されることで、ドア基板31と天板33とが固定される構成となっている。
これによれば、ドア基板31と天板33とを簡素な構成で容易に固定することが可能である。そのため、ロータリドアを軽量化すると共に、組み付け工数等の製造コストを低減できる。
ところで、爪部331と係止溝315との係止構造によってドア基板31と天板33とを固定した構成では、その係止構造に僅かな隙(言い換えれば、遊び)が必要となるので、天板33のがたつきが懸念される。そのような懸念に対し、本実施形態では、上述したように、シール部材34と板部材32との摩擦力、および、リヤモジュールケース20の内壁面とシール部材34との摩擦力により、ドア基板31に対する天板33の周方向のがたつきを抑えることが可能である。これにより、ケースの開口部23~25を開閉する際のロータリドアの位置精度を向上し、リヤモジュールケース20の開口部23~25からの空気漏れを防ぐことができる。
【0054】
(5)本実施形態では、天板33と板部材32との距離G、シール部材34の板厚Tは、 0<G≦T の関係を有している。
これによれば、シール部材34の折返し部341を天板33と板部材32によって確実に挟み込むことで、シール部材34が天板33から剥がれることを防ぐことができる。
【0055】
(6)本実施形態では、天板33と板部材32は、軸心CLに垂直な断面視において、シール部材34を挟む部位が同心の円弧形状である。
これによれば、シール部材34と板部材32とが接する面積を大きくすることでシール部材34と板部材32との摩擦力を増大し、シール部材34が天板33から剥がれることを確実に防ぐことができる。また、シール部材34と板部材32とを容易に組み付けることができる。
なお、本明細書において同心とは、上記の効果を奏する程度に実質的に同心であればよく、天板33の円弧の中心と板部材32の円弧の中心とが完全に一致している状態に加えて、製造公差等により僅かにずれている状態も含むものである。
【0056】
(7)本実施形態では、1個のロータリドアに対し、複数の天板33と、複数の天板33のそれぞれに対応する複数のシール部材34と、複数の天板33および複数のシール部材34に対応する複数の板部材32とが設けられている。
これによれば、1個のロータリドアによって、リヤモジュールケース20に設けられた複数の開口部23~25を同時に開閉することができる。
【0057】
(8)本実施形態の車両用空調装置は、上記構成のロータリドアと、通風路21、61を形成すると共にロータリドアを回転可能に収容するケース20、60と、そのケース20、60内の通風路21、61を流れる空気の温度を調整する温度調整部(例えば、冷却用熱交換器70、加熱用熱交換器80)とを備える。
これによれば、この車両用空調装置は、上記ロータリドアの構成を、例えば後席用エアミックスドア30、前席用エアミックスドア40、前席用モード切替ドア50に適用することで、ケース20、60内でロータリドアが回転しにくくなることを防ぎ、ロータリドアの位置精度を向上することが可能である。その結果、車両用空調装置は、ロータリドアのロックによる温度調整の不良や吹き出し温度のフィーリング悪化を防ぐと共に、ロータリドアからの異音の発生も防ぐことができる。
【0058】
(第2~第7実施形態)
第2~第7実施形態は、第1実施形態に対してロータリドアの構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0059】
なお、第2~第7実施形態の説明で参照する
図8~10、12~14では、ロータリドアを構成する1個以上の天板サブアッシー330(即ち、天板33とシール部材34)のうち、図面上側に配置される天板サブアッシー330を省略している。
【0060】
(第2実施形態)
図8に示すように、第2実施形態のロータリドアが備える板部材32は、板厚方向(即ち、径方向)に通じる穴321を有している。この穴321は、板部材32の外縁部を除き、中央部に設けられている。なお、穴321の形状、位置、大きさ、数等は任意に設定することができる。
【0061】
以上説明した第2実施形態の構成によれば、板部材32に使用される材料を低減し、ロータリドアを軽量化することができる。また、材料費を低減することができる。
【0062】
(第3実施形態)
図9に示すように、第3実施形態のロータリドアは、1個の天板33に対して複数の板部材322、323が設けられている。具体的には、1個の天板33に対して2個の板部材322、323が設けられている。2個の板部材322、323のうち、一方の板部材322は第1ドア基板311に固定されており、他方の板部材323は第2ドア基板312に固定されている。一方の板部材322と他方の板部材323とは、軸心CL方向に離れた位置に設けられている。
【0063】
以上説明した第3実施形態の構成によっても、板部材322、323に使用される材料を低減し、ロータリドアを軽量化することができる。また、材料費を低減することができる。
【0064】
(第4実施形態)
図10および
図11に示すように、第4実施形態のロータリドアは、板部材32のうち径方向外側を向く面に、突起部324が設けられている。突起部324は、シール部材34の折返し部341に対応する位置で、軸方向に延び、周方向に並んで設けられている。また、突起部324は、軸心CL方向から視て、三角形状に形成されており、その三角形状の頂点の1つを径方向外側に配置している。
図11に示すように、天板サブアッシー330(即ち、天板33とシール部材34)と、ロータリドア本体部300(即ち、ドア基板31と板部材32)とが組み付けられた状態で、突起部324は、シール部材34の折返し部341に押し込まれる。
【0065】
以上説明した第4実施形態の構成によれば、シール部材34が天板33から剥がれることを簡素な構成でより確実に防ぐことができる。
【0066】
(第5実施形態)
図12に示すように、第5実施形態のロータリドアは、1個のドア基板31と板部材32によりロータリドア本体部300が構成されている。ドア基板31のうち軸心CLを含む部位には、ドア基板31から軸心CL方向に延びる軸部材314が設けられており、その軸部材314の端部に回転軸313が設けられている。
【0067】
以上説明した第5実施形態のように、ロータリドアは、1個のドア基板31を備える構成としてもよい。
【0068】
(第6実施形態)
図13に示すように、第6実施形態のロータリドアは、ドア基板31が、軸心CL方向から視て2本の直線316、317と、その2本の直線316、317の端部同士を接続する2つの円弧318、319により形成される形状とされている。なお、ドア基板31の有する2個の円弧318、319に対応する位置には、板部材32が設けられている。
【0069】
以上説明した第6実施形態のように、ロータリドアが備えるドア基板31は、円盤状に限らず、任意の形状とすることができる。
【0070】
(第7実施形態)
図14に示すように、第7実施形態のロータリドアは、ドア基板31が、軸心CL方向から視て略扇状とされている。なお、略扇状のドア基板31において外周の円弧320に対応する位置には、板部材32が設けられている。
【0071】
以上説明した第7実施形態のように、ロータリドアが備えるドア基板31は、円盤状に限らず、例えば扇状等、任意の形状とすることができる。
【0072】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、後席用エアミックスドア30が、ドア基板31、板部材32、天板33、シール部材34等を備える構成としたが、それに限らない。それと同様の構成を、前席用モード切替ドア50、前席用エアミックスドア40などの各種ロータリドアに適用してもよい。
【0073】
(2)上記各実施形態では、ロータリドアは、1個または2個のドア基板31を備える構成としたが、それに限らず、3個以上のドア基板31を備える構成としてもよい。
また、板部材32、天板33、シール部材34についても、1個のロータリドアに対し、1個または複数個備える構成としてもよい。
【0074】
(3)上記各実施形態では、天板33とドア基板31の固定方法に関し、天板33に爪部331を設け、ドア基板31に係止溝315を設ける構成としたが、それに限らず、例えば、ドア基板31に爪部331を設け、ドア基板31に係止溝315を設ける構成としてもよい。また、天板33とドア基板31の固定方法は、例えば嵌合、圧入、接着、ねじ止め等、種々の方法を採用してもよい。
【0075】
(4)上記各実施形態では、ドア基板31と板部材32を樹脂射出成形により一体に形成したが、それに限らず、ドア基板31と板部材32は、それぞれの部材を別個に形成し、溶着、接着、嵌合、圧入、ねじ止め等の方法で固定してもよい。
【0076】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0077】
20:リヤモジュールケース、21:通風路、30:後席用エアミックスドア(ロータリドア)、31:ドア基板、32:板部材、33:天板、34:シール部材、341:折返し部、40:前席用エアミックスドア(ロータリドア)、50:前席用モード切替ドア(ロータリドア)、60:空調ケース、61:通風路、Ax:軸心、CL:軸心。