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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】荷卸し装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 59/02 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B65G59/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022054058
(22)【出願日】2022-03-29
(65)【公開番号】P2023146715
(43)【公開日】2023-10-12
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】清川 渉
(72)【発明者】
【氏名】味生 淳
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-006510(JP,A)
【文献】特開2020-040788(JP,A)
【文献】特開2000-198542(JP,A)
【文献】特開2021-187597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置部の上に段積みされた複数の物品である段積み物品群から、最上段に属する複数の前記物品である対象物品群を分離する荷卸し装置であって、
前記対象物品群の上面を吸着して前記対象物品群を保持する吸着部を備えた吸着装置と、前記載置部と前記吸着部とを相対的に昇降させる昇降装置と、前記吸着装置及び前記昇降装置を制御する制御装置と、を備え、
前記吸着部における前記対象物品群の上面に接する面を吸着面として、
前記吸着面に対して下側に特定距離だけ離間した位置において前記吸着面と平行状に設定された検出面に交差した前記物品を検出する物品検出装置を更に備え、
前記制御装置は、
前記対象物品群の上面と前記吸着面との距離である相対距離を演算するための制御用情報を取得して前記相対距離を求め、
前記吸着部が前記物品を吸着しておらず前記相対距離を減少させるように前記昇降装置を動作させている吸着用接近中状態で、前記相対距離が前記特定距離よりも判定しきい値以上大きいにも拘らず前記物品検出装置が前記物品を検出した場合には、前記昇降装置を停止させる、荷卸し装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記吸着用接近中状態であって、前記相対距離が前記特定距離と前記判定しきい値との合計未満で前記物品検出装置が前記物品を検出した場合には、前記吸着面が前記対象物品群の上面に接してから前記昇降装置を停止させ、前記吸着部に前記対象物品群の上面を吸着させ、その後、前記載置部の上面と前記吸着面との距離を増加させるように前記昇降装置を動作させて、前記段積み物品群から前記対象物品群を分離する、請求項1に記載の荷卸し装置。
【請求項3】
前記吸着部は、上下方向に弾性変形自在に構成され、
前記制御装置が前記昇降装置を停止させる停止指令を出力してから実際に前記昇降装置が停止するまでの間における前記相対距離の減少量を停止必要距離とし、前記吸着部の上下方向の弾性変形可能量を弾性変形代として、
前記特定距離は、前記停止必要距離から前記弾性変形代を差し引いた距離以上に設定されている、請求項1又は2に記載の荷卸し装置。
【請求項4】
上下方向の寸法が最も大きい前記物品の上下方向の寸法を最大上下寸法として、
前記制御装置は、前記吸着部が前記物品を吸着していない場合に、前記相対距離が前記最大上下寸法と前記特定距離との合計より大きい状態から前記相対距離を次第に減少させるように前記昇降装置を動作させる吸着用接近処理を実行することで前記吸着用接近中状態とし、少なくとも前記吸着用接近処理の実行中に前記物品検出装置を有効にする、請求項1から3のいずれか一項に記載の荷卸し装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記吸着部による前記対象物品群の吸着を解除した後であって前記相対距離を増加させるように前記昇降装置を動作させている吸着解除後離間中状態で、前記相対距離が前記特定距離よりも前記判定しきい値以上大きいにも拘らず前記物品検出装置が前記物品を検出した場合には、前記昇降装置を停止させる、請求項1から4のいずれか一項に記載の荷卸し装置。
【請求項6】
前記昇降装置は、前記吸着部を少なくとも上下方向に移動させ、
前記物品検出装置は、前記吸着部と一体的に昇降するように連結されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の荷卸し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載置部の上に段積みされた複数の物品である段積み物品群から、最上段に属する複数の前記物品である対象物品群を分離する荷卸し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような荷卸し装置の一例が、特開2002-128275号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示す符号は特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1の荷卸し装置(ピッキング装置1)は、クランプ機構(2)と昇降装置(リフター10)とを備えている。昇降装置には、パレット(P)を介して複数の物品(商品6)が段積みされており、最上段又は上から複数段の物品群がクランプ機構(2)によりピッキングされる。具体的には、昇降装置(10)の上昇により任意の段の物品群が、クランプ機構(2)の押圧具(7)に対応する位置に配置される。そして、この任意の段の物品群が2対の押圧具(7)により挟持される。その状態で昇降装置(10)が下降すると、最上段から任意の段までの物品群が、それより下の段の物品群から分離される。
【0004】
ところで、複数の物品が積付けられた段積み物品群では、荷崩れ防止のために、隣り合う物品同士が、糊等で接着されている場合がある。このような場合、押圧具(7)に挟持された物品群のうちの一部の物品が、それより下の段積み物品群から分離されずに、昇降装置上に残留してしまうことがある。特許文献1の荷卸し装置では、押圧具(7)の下側に残留センサー(22)を設けることで、分離されずに残留した物品を検出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-128275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の荷卸し装置では、上記のようにクランプ機構(2)を備えており、任意の段の物品群を側方から挟持するように構成されている。一方、荷卸し装置には、最上段の物品群の上面を吸着部により吸着して、最上段の物品群をそれより下の段積み物品群から分離するように構成されたものもある。このような荷卸し装置では、最上段の一部の物品が分離せずに残留した場合、次の荷卸し動作において、段積み物品群に対して上側から接近する吸着部と残留した物品とが衝突する虞がある。また、このような一部の物品の残留が生じた場合以外にも、例えば、最上段の物品群と吸着部との位置関係を示す情報に誤りがある場合、すなわち、認識している段積み物品群の段数や、物品の高さ等に誤りがある場合にも、同様の問題が生じ得る。
【0007】
そこで、最上段の物品群を吸着してそれより下の段積み物品群から分離する荷卸し装置において、最上段の物品を適切に検出して荷卸し動作に反映させることができる技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る荷卸し装置は、載置部の上に段積みされた複数の物品である段積み物品群から、最上段に属する複数の前記物品である対象物品群を分離する荷卸し装置であって、
前記対象物品群の上面を吸着して前記対象物品群を保持する吸着部を備えた吸着装置と、前記載置部と前記吸着部とを相対的に昇降させる昇降装置と、前記吸着装置及び前記昇降装置を制御する制御装置と、を備え、
前記吸着部における前記対象物品群の上面に接する面を吸着面として、
前記吸着面に対して下側に特定距離だけ離間した位置において前記吸着面と平行状に設定された検出面に交差した前記物品を検出する物品検出装置を更に備え、
前記制御装置は、
前記対象物品群の上面と前記吸着面との距離である相対距離を演算するための制御用情報を取得して前記相対距離を求め、
前記吸着部が前記物品を吸着しておらず前記相対距離を減少させるように前記昇降装置を動作させている吸着用接近中状態で、前記相対距離が前記特定距離よりも判定しきい値以上大きいにも拘らず前記物品検出装置が前記物品を検出した場合には、前記昇降装置を停止させる。
【0009】
本構成によれば、吸着面に対して下側に特定距離だけ離間した位置において吸着面と平行状に設定された検出面に交差した物品を検出する物品検出装置を備えているため、吸着部が物品を吸着しておらず、対象物品群の上面と吸着部とが接近している吸着用接近中状態で、吸着部に接近する物品を適切に検出することができる。そして、制御用情報に基づいて演算される相対距離が特定距離よりも判定しきい値以上大きいにも関わらず物品検出装置が物品を検出した場合、すなわち、物品が存在しないはずの位置に物品が存在した場合に、昇降装置を停止させることができる。従って、吸着部と当該物品とが衝突して吸着部及び物品の少なくとも一方が破損する可能性を低減できる。
このように本構成によれば、最上段の物品を適切に検出して荷卸し動作に反映させることができる。
【0010】
荷卸し装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】物品移載設備の平面図
図2】荷卸し装置及び段積み物品群の正面図
図3】物品検出装置及び光軸を模式的に示す平面図
図4】吸着装置及び段積み物品群を模式的に示す正面図
図5】荷卸し動作が正常に行われる場合における、吸着用接近中状態の吸着装置及び段積み物品群を模式的に示す正面図
図6】荷卸し動作が正常に行われる場合における、対象物品群を吸着した状態の吸着装置及び段積み物品群を模式的に示す正面図
図7】荷卸し動作が正常に行われる場合における、吸着解除後離間中状態の吸着装置及び段積み物品群を模式的に示す正面図
図8】荷卸し動作が異常となる場合における、吸着装置及び段積み物品群を模式的に示す正面図
図9】荷卸し動作が異常となる場合における、吸着用接近中状態の吸着装置及び段積み物品群を模式的に示す正面図
図10】荷卸し動作が異常となる場合における、吸着解除後離間中状態の吸着装置及び段積み物品群を模式的に示す正面図
図11】制御ブロック図
図12】制御装置による制御を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.全体概要
以下に、荷卸し装置1を物品移載設備に適用した例について図面に基づいて説明する。本実施形態では、図1に示すように、物品移載設備は、荷卸し装置1と、搬送装置6と、自動倉庫(不図示)と、を備えている。本例では、荷卸し装置1は、自動倉庫から出庫された複数の物品Wを、第1規定位置31から第2規定位置32に移載する。搬送装置6は、自動倉庫から出庫された複数の物品Wを第1規定位置31に搬送し、第2規定位置32にある複数の物品Wを、物品移載設備の外部へ搬出する。なお、本例では、第1規定位置31と第2規定位置32とが並ぶ方向を移載方向Xとし、移載方向Xの一方側を移載方向第1側X1とし、移載方向Xの他方側を移載方向第2側X2とする。また、上下方向視で移載方向Xに直交する方向を直交方向Yとする。図示の例では、第1規定位置31は、第2規定位置32に対して移載方向第1側X1に配置されている。
【0013】
本例では、図1及び図2に示すように、搬送装置6は、第1コンベヤ6aと第2コンベヤ6bとを備えている。第1コンベヤ6aは、自動倉庫から第1規定位置31に複数の物品Wを搬送する。また、第1コンベヤ6aは、第1規定位置31において荷卸し装置1により移載されずに残った物品Wを、第1規定位置31から自動倉庫へ搬送する。第2コンベヤ6bは、第1規定位置31から第2規定位置32に移載された複数の物品Wを、第2規定位置32から物品移載設備の外部へ搬出する。なお、第2コンベヤ6bによる物品Wの搬送先が自動倉庫であっても良い。
【0014】
図1図2図4、及び図7に示すように、第1規定位置31には、パレットP上に段積みされた複数の物品W(以下、段積み物品群Wtと称する。)が配置される。同様に、第2規定位置32にも、パレットP上に段積みされた複数の物品Wが配置される。パレットPに載置された段積み物品群Wtは、第1コンベヤ6aにより第1規定位置31に搬送される。そして、荷卸し装置1は、第1規定位置31の段積み物品群Wtのうちの必要な段数の物品Wを分離し、第2規定位置32のパレットPの上に移載する。すなわち、第2規定位置32においては、荷卸し装置1によりパレットP上に複数の物品Wが積み付けられることで、段積み物品群Wtが形成される。ここでは、物品Wは、蓋を備える容器であり、例えば、食品や飲料水、機械部品等の様々な物が収容される。本実施形態では、1つの段積み物品群Wtに属する複数の物品Wは、それぞれ同じ形状及び寸法の容器である。図示の例では、物品Wは、段ボール箱である。
【0015】
2.荷卸し装置
図4図5、及び図6に示すように、荷卸し装置1は、載置部3の上に段積みされた複数の物品Wである段積み物品群Wtから、最上段に属する複数の物品Wである対象物品群Wsを分離する。本実施形態では、荷卸し装置1は、対象物品群Wsを、それより下の段積み物品群Wtに対して相対的に持ち上げる。これにより、荷卸し装置1は、対象物品群Wsを、それより下の段積み物品群Wtから分離する。ここで、本実施形態では、対象物品群Wsは、段積み物品群Wtのうちの、最上段に属する全ての物品Wとされている。本例では、荷卸し装置1は、第1規定位置31において、対象物品群Wsを、それより下の段積み物品群Wtに対して相対的に持ち上げる。本実施形態では、載置部3は、パレットPとされている。なお、載置部3は、段積み物品群Wtが載置される載置面を形成するものであれば良く、例えば、リフタの昇降台やコンベヤの搬送面等であっても良い。つまり、物品Wは、必ずしもパレットPに載置されていなくても良い。図示の例では、載置部3としてのパレットPは、第1規定位置31において、第1コンベヤ6aの上に載置されている。また本実施形態では、第2規定位置32の第2コンベヤ6bの上にもパレットPが載置されている。以下では、荷卸し装置1の具体的な構成について説明する。
【0016】
図1図2、及び図11に示すように、荷卸し装置1は、対象物品群Wsの上面11を吸着して対象物品群Wsを保持する吸着部21を備えた吸着装置2と、載置部3と吸着部21とを相対的に昇降させる昇降装置4と、吸着装置2及び昇降装置4を制御する制御装置100と、を備えている。
【0017】
2-1.昇降装置
本実施形態では、図2図4図5図6、及び図7に示すように、昇降装置4は、吸着部21を少なくとも上下方向に移動させるように構成されている。これにより、昇降装置4は、対象物品群Wsに含まれる物品Wを吸着した吸着部21を、載置部3に対して持ち上げることができる。本例では、図1及び図2に示すように、昇降装置4は、ロボット40に含まれている。図示の例では、ロボット40は、台座部41と回転部42とロボットアーム46(第1アーム43、第2アーム44)とを備えている。台座部41は、架台39に固定されている。回転部42は、台座部41に上下方向に沿う軸心周りに回転自在に支持されている。第1アーム43の基端部が、回転部42に揺動自在に連結されている。第2アーム44の基端部が、第1アーム43の先端部に揺動自在に連結されている。そして、吸着装置2が第2アーム44の先端部に連結されている。このように、本実施形態では、昇降装置4(ロボット40)は、載置部3(段積み物品群Wt)を昇降させるのではなく、吸着装置2を昇降させることにより、載置部3と吸着部21とを相対的に昇降させる。
【0018】
2-2.吸着装置
本実施形態では、図2に示すように、吸着装置2は、吸着部21と、吸着支持部22と、連結部23と、を備えている。本例では、吸着支持部22は、吸着部21を支持している。本例では、吸着支持部22は、平面的に並ぶように配置された複数の吸着部21(吸着パッド)を上側から支持している。そして、連結部23は、吸着支持部22をロボット40に接続している。図示の例では、連結部23の基端部が、ロボット40の第2アーム44の先端部に揺動自在に連結されている。連結部23の先端部は、吸着支持部22の上側を向く面に固定されている。吸着部21及び吸着支持部22は一体として、ロボット40の回転部42の回転と、第1アーム43、第2アーム44、及び連結部23の揺動とにより、規定範囲内(図示の例では、ロボットアーム46の移動可能範囲内)において自在に移動できる。これにより、荷卸し装置1は、吸着部21により保持した対象物品群Wsを、第1規定位置31から第2規定位置32に移載できる。なお、吸着装置2が吸着支持部22及び連結部23を備えておらず、吸着部21が第2アーム44の先端部に直接連結されている構成としても良い。
【0019】
本実施形態では、図2図3、及び図4に示すように、複数の吸着部21が、吸着支持部22に支持されている。より具体的には、複数の吸着部21のそれぞれが、吸着支持部22の下側を向く面に沿って平面的に並ぶように設けられている。本実施形態では、吸着部21は、上下方向に弾性変形自在に構成されている。本例では、吸着部21は、吸着パッドである。つまり、吸着部21は、上下方向に伸縮可能な蛇腹形状に形成されている。この場合、吸着部21としての吸着パッドの下面が、対象物品群Wsの上面11に接する吸着面21aとなる。従って、本例では、吸着パッドの撓みに応じて、吸着面21aの位置が吸着支持部22や物品検出装置5に対して変動する。なお、本実施形態では複数の吸着部21が平面的に配列されているため、当該複数の吸着部21の下面の集合により吸着面21aが形成されている。吸着部21には、不図示のチューブを介してバルブ(不図示)及びポンプ等の吸引装置(不図示)が接続されている。制御装置100は、バルブを制御することで、吸着部21の状態を、物品Wを吸着する吸着状態と物品Wを吸着しない吸着解除状態とに切り換える。なお、本例では、複数の吸着部21のそれそれは、互いに同じ構造を有している。
【0020】
2-3.物品検出装置
図3図4図5、及び図11に示すように、荷卸し装置1は、物品検出装置5を更に備えている。図5図9、及び図10に示すように、物品検出装置5は、吸着部21における対象物品群Wsの上面11に接する面を吸着面21aとして、吸着面21aに対して下側に特定距離Lだけ離間した位置において吸着面21aと平行状に設定された検出面13に交差した物品Wを検出する。本実施形態では、物品検出装置5は、吸着支持部22に対する相対位置が固定されている。そのため、吸着部21の撓みを考慮しなければ、物品検出装置5と吸着部21との相対位置も固定されている。従って、物品検出装置5は、吸着部21と一体的に昇降するように連結されている。このように、物品検出装置5は、吸着部21と一体的に、少なくとも上下方向に移動して、吸着面21aに対して下側に特定距離Lだけ離間した位置において検出面13に交差した物品Wを検出する。本例では、特定距離Lは、吸着部21の撓みがない状態での吸着面21aを基準とした距離である。特定距離Lの詳細については、後述する。
【0021】
本例では、図3に示すように、物品検出装置5は、透過型の光センサ50を用いて構成されている。従って、この光センサ50は、投光部51及び受光部52を備えている。複数の投光部51と複数の受光部52とは、複数の吸着部21を挟んで両側に分かれて配置されている。図示の例では、複数の投光部51と複数の受光部52とは、複数の吸着部21に対して移載方向Xの両外側に分かれて配置されている。また、物品検出装置5は、一対の検出支持部53を備えている。そして、複数の投光部51及び受光部52が、一対の検出支持部53を介して吸着支持部22に固定されている。
【0022】
図3に示すように、複数の投光部51と複数の受光部52とのそれぞれは、検出面13に沿う複数本の光軸Rを形成するように配置される。本例では、図3に示すように、複数本の光軸Rは、検出面13において、移載方向Xに沿うように配置されている。ここでは、複数の光軸Rが、直交方向Yに互いに間隔を空けて並ぶように配置されている。図示の例では、光軸Rは6本であるが、6本より少なくても良いし、6本より多くても良い。また、図示の例とは異なり、複数本の光軸Rが、直交方向Yに沿って配置されるように、複数の投光部51及び複数の受光部52が、複数の吸着部21に対して直交方向Yの両外側に配置されていても良い。なお、本例では、物品検出装置5は、透過型の光センサ50とされているが、投光部と受光部とが一体化した反射型の光センサ50を移載方向Xの一方側に設け、移載方向Xの他方側に反射板を設けるようにしても良い。また、例えば、物品検出装置5は、撮像装置や超音波センサ等、光センサ以外のセンサを用いて構成しても良い。
【0023】
2-4.高さ検出装置
本例では、図1及び図11に示すように、荷卸し装置1は、高さ検出装置7を備えている。高さ検出装置7は、段積み物品群Wtの高さを検出するための装置である。本実施形態では、高さ検出装置7は、第1コンベヤ6aによる搬送経路の途中に配置され、第1コンベヤ6aによって第1規定位置31に搬送される段積み物品群Wtの高さを検出する。従って、この高さ検出装置7により検出されるのは、段積み物品群Wtから物品W(対象物品群Ws)が分離される前の初期状態の高さである。そして、この段積み物品群Wtの初期状態の高さを示す初期状態高さ情報は、制御装置100に出力される。これにより、制御装置100は、第1規定位置31に搬送された段積み物品群Wtの初期状態高さ情報(制御用情報101)を取得する。荷卸し装置1は、当該高さ情報に基づいて、段積み物品群Wtのうちの対象物品群Wsに対応する位置に、吸着部21を配置する。
【0024】
2-5.制御装置
本実施形態では、図11に示すように、制御装置100は、後述する演算処理や各制御を実行するように構成されている。制御装置100は、CPU等の演算処理装置を備えると共にメモリ等の周辺回路を備え、これらのハードウェアと、演算処理装置等のハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により、制御装置100の各機能が実現される。本例では、制御装置100は、吸着装置2、昇降装置4を含むロボット40、物品検出装置5、及び高さ検出装置7を制御する。
【0025】
図11に示すように、制御装置100は、対象物品群Wsの上面11と吸着面21aとの距離である相対距離Mを演算するための制御用情報101を取得して相対距離Mを求める。制御装置100は、吸着装置2、ロボット40、物品検出装置5、及び高さ検出装置7のそれぞれから制御用情報101を取得する。本実施形態では、制御装置100は、ロボット40(昇降装置4)から吸着部21の吸着面21aの上下方向の位置を示す吸着面位置情報を制御用情報101として取得する。この吸着面位置情報は、ロボット40の制御情報としての第2アーム44の先端部の位置と、当該先端部から吸着面21aまでの距離(定数)とから求められる。また、制御装置100は、物品検出装置5からの検出情報、具体的には光センサ50による物品Wの検出の有無の情報を制御用情報101として取得する。更に、制御装置100は、上述したように、段積み物品群Wtの初期状態の高さを示す初期状態高さ情報を制御用情報101として取得する。また、制御装置100は、物品移載設備において複数の段積み物品群Wtの情報を管理する管理システム110から、第1規定位置31にある段積み物品群Wtの段数を示す段数情報を制御用情報101として取得する。なお、制御装置100は、この他に、段積み物品群Wtを構成する物品Wの数、物品Wの寸法、物品Wの種類等の情報を管理システム110から取得するように構成されていても良い。
【0026】
そして、図4及び図11に示すように、制御装置100は、相対距離Mを、第1規定位置31に搬送された段積み物品群Wtの初期状態高さ情報、段数情報、及び吸着面位置情報に基づいて算出する。この際、制御装置100は、段積み物品群Wtの初期状態高さを初期段数で除算した値を物品高さHとし、物品高さHに分離済段数を乗算した値を分離済高さとして、初期状態高さから分離済高さを差し引いた値を現時点の段積み物品群Wtの上下方向の寸法として算出する。ここで、初期段数は、段積み物品群Wtの初期状態の段数であり、段数情報に含まれる。分離済段数は、初期状態の段積み物品群Wtから荷卸し装置1により既に分離した対象物品群Wsの段数(以下「分離済段数」という)である。分離済段数の情報は、制御装置100が備える荷卸し装置1の動作履歴から取得される。そして、制御装置100は、吸着面位置情報から載置部3の上面と吸着面21aとの上下方向の距離を取得し、当該距離から上記のように算出した現時点の段積み物品群Wtの上下方向の寸法を減算した値を、相対距離Mとして算出する。
【0027】
なお、制御用情報101は、制御装置100よりも上位の制御装置や制御システムから取得される構成としても良い。以下では、荷卸し動作における、制御装置100の制御について具体的に説明する。なお、図4図7は、正常状態での荷卸し動作を示している。図8図10は、異常が発生した状態での荷卸し動作を示している。
【0028】
図9に示すように、制御装置100は、吸着部21が物品Wを吸着しておらず相対距離Mを減少させるように昇降装置4を動作させている吸着用接近中状態で、相対距離Mが特定距離Lよりも判定しきい値Q以上大きいにも拘らず物品検出装置5が物品Wを検出した場合には、昇降装置4を停止させる。本実施形態では、上下方向の寸法が最も大きい物品Wの上下方向の寸法を最大上下寸法として、制御装置100は、吸着部21が物品Wを吸着していない場合に、相対距離Mが最大上下寸法と特定距離Lとの合計より大きい状態から相対距離Mを次第に減少させるように昇降装置4を動作させる吸着用接近処理を実行することで吸着用接近中状態とする。本例では、制御装置100は、ロボット40(昇降装置4)を制御して、複数の吸着部21を、第1規定位置31における第1基準位置Eに移動させる(図4及び図8参照)。ここで、第1基準位置Eは、第1規定位置31のパレットP(或いは、パレットP上の段積み物品群Wt)と上下方向視で重複する位置であって、相対距離Mが最大上下寸法と特定距離Lとの合計より規定の余裕距離だけ大きい位置である。言い換えると、第1基準位置Eは、段積み物品群Wtの最上段である対象物品群Wsの上面11から、最大上下寸法と特定距離Lと余裕距離との合計距離だけ高い位置である。また、第1基準位置Eでは、吸着面21aは対象物品群Wsの上面11に平行状に配置される。なお、最大上下寸法は、段積み物品群Wtを構成する物品Wとして、上下方向の寸法が最も大きい物品Wの上下方向の寸法である。ここで、余裕距離は、ロボット40(昇降装置4)による吸着面21aの上下方向の位置誤差の最大値よりも大きく設定されると好適である。本例では、ロボット40(昇降装置4)による吸着面21aの上下方向の位置誤差の最大値と、高さ検出装置7により検出される段積み物品群Wtの高さの検出値の誤差の最大値との合計に相当する値に設定されている。余裕距離をこのように設定することにより、対象物品群Wsの上に存在しないはずの物品W(以下「異常物品Wa」)が存在した場合であって、ロボット40(昇降装置4)の上下方向の位置誤差が下側に最大となった場合であっても、吸着部21を第1基準位置Eに配置した状態で、当該異常物品Waよりも上側に物品検出装置5の検出面13が配置されることになる。従って、物品検出装置5が異常物品Waを検出していない状態から吸着用接近処理の実行を開始することができる。
【0029】
そして、図4及び図5に示すように、制御装置100は、第1基準位置Eから、複数の吸着部21を下降させることで、これらの吸着部21を段積み物品群Wtの上面(対象物品群Wsの上面11)へ接近させる。この状態が吸着用接近中状態であり、吸着用接近中状態では相対距離Mが減少する。そして、制御装置100は、吸着用接近中状態で、相対距離Mが特定距離Lよりも判定しきい値Q以上大きいにも拘らず物品検出装置5が物品Wを検出した場合には、吸着部21の下降を停止させるようにロボット40(昇降装置4)を制御する。このように検出される物品Wは、対象物品群Wsの上に存在しないはずの異常物品Waである。本例では、このようにロボット40(昇降装置4)の下降を停止した場合、荷卸し動作が異常となったものとして、異常の報知を行う。異常の報知は、例えば、異常発報音をスピーカやブザーから出力する、異常表示灯を点灯させる、ユーザが操作する端末に異常情報を通知する、等により行われる。このように構成されているため、対象物品群Wsに属する一部の物品Wが、それより下の段の段積み物品群Wtから分離せずに残留してしまった場合でも、次の荷卸し動作において残留した物品Wを検出して吸着部21の下降を停止できる。従って、吸着部21と異常物品Waとが衝突する事態を回避できる。また、制御用情報101に誤りがあった場合にも、このような事態を回避できる。例えば、初期段数が「M段」であり、荷卸し装置1による分離済段数が正しくは「N段」であるところ「N+1段」との誤った情報として制御装置100が認識していた場合、制御装置100は、段積み物品群Wtの段数を実際の「M-N段」よりも少ない「M-N-1段」と認識する。そのような場合であっても、制御装置100は、荷卸し動作において、「M-N段」(最上段)目の物品Wを検出して吸着部21の下降を停止できる。従って、吸着部21と異常物品Waとが衝突する事態を回避できる。なお、制御装置100が認識する分離済段数が誤った値となる要因としては、例えば、停電等の異常事態の後の復旧処理に起因する場合等が考えられる。
【0030】
上記のように、本実施形態では、第1規定位置31の段積み物品群Wtの上下方向の位置は変化させず、吸着部21(より詳しくは吸着部21及び吸着支持部22)を段積み物品群Wtの側へ下降させることで、吸着用接近中状態となる。そして、本実施形態では、制御装置100は、少なくとも吸着用接近処理の実行中に物品検出装置5を有効にする。より具体的には、制御装置100は、第1基準位置Eから吸着部21の吸着面21aが下降し始める時期に、物品検出装置5の光センサ50を有効にする。
【0031】
ここで、判定しきい値Qは、ロボット40(昇降装置4)による吸着面21aの上下方向の位置誤差の最大値よりも大きく設定されると好適である。本例では、ロボット40(昇降装置4)による吸着面21aの上下方向の位置誤差の最大値と、高さ検出装置7により検出される段積み物品群Wtの高さの検出値の誤差の最大値との合計に相当する値に設定されている。また、上下方向の寸法が最も小さい物品Wの上下方向の寸法を最小上下寸法として、判定しきい値Qは、当該最小上下寸法未満になるように設定されている。これにより、物品検出装置5が、適正に段積みされている対象物品群Wsを、誤って、異常物品Waとして検出して、制御装置100がロボット40(昇降装置4)を停止させる事態を回避できる。
【0032】
本実施形態では、制御装置100が昇降装置4を停止させる停止指令を出力してから実際に昇降装置4が停止するまでの間における相対距離Mの減少量を停止必要距離とし、吸着部21の上下方向の弾性変形可能量を弾性変形代として、特定距離Lは、停止必要距離から弾性変形代を差し引いた距離以上に設定されている。これにより、物品検出装置5が異常物品Waを検出した後、実際に昇降装置4が停止した状態で、異常物品Waの上面が吸着部21に接触せず、或いは、吸着部21に接触していても当該吸着部21の弾性変形代の範囲内に収まるようにできる。従って、吸着部21及び吸着支持部22により異常物品Waを押し潰すことを回避できる。本例では、特定距離Lは、停止必要距離から弾性変形代を差し引いた距離に設定されている。この距離は、吸着部21及び吸着支持部22により異常物品Waを押し潰すことを回避できる最小の特定距離Lである。本実施形態では、異常物品Waが存在しない正常状態であっても、物品検出装置5が物品Wを検出した場合には、吸着部21が対象物品群Wsに衝突しないように、制御装置100は、吸着部21の速度を低下させ、低速で吸着部21を対象物品群Wsに接近させる。そのため、特定距離Lが長くなるに従って、荷卸し動作のサイクルタイムが長くなる。特定距離Lを、必要最低限の距離に設定することで、荷卸し動作のサイクルタイムを短く抑え易くなる。また、本例では、上下方向の寸法が最も小さい物品Wの上下方向の寸法を最小上下寸法として、特定距離Lは、当該最小上下寸法未満に設定されている。
【0033】
図4図5、及び図6に示すように、本実施形態では、制御装置100は、吸着用接近中状態であって、相対距離Mが特定距離Lと判定しきい値Qとの合計未満で物品検出装置5が物品Wを検出した場合には、吸着面21aが対象物品群Wsの上面11に接してから昇降装置4を停止させ、吸着部21に対象物品群Wsの上面11を吸着させ、その後、載置部3の上面と吸着面21aとの距離を増加させるように昇降装置4を動作させて、段積み物品群Wtから対象物品群Wsを分離する。対象物品群Wsの上に異常物品Waが存在せず、荷卸し動作が正常に行われる場合には、このような正常時動作となる。本例では、第1規定位置31において、ロボット40(昇降装置4)が一定速度で吸着部21を下降させている吸着用接近中状態で、物品検出装置5が、相対距離Mが特定距離Lと判定しきい値Qとの合計未満で物品Wを検出した場合、制御装置100は、吸着部21の下降速度を低下させる。そして、吸着面21aが対象物品群Wsの上面11に当接したら、制御装置100は、吸着部21の下降を停止させる。そして、制御装置100は、吸着部21(吸着パッド)に対象物品群Wsに属する全ての物品Wの上面11を吸着させ、その後、複数の吸着部21を上昇させるようにロボット40(昇降装置4)を動作させる。これにより、対象物品群Wsがそれより下の段積み物品群Wtに対して持ち上げられて分離される。
【0034】
そして、図6に示すように、制御装置100は、段積み物品群Wtから分離した対象物品群Wsを保持した状態で、吸着部21の吸着面21aが、第2規定位置32の第2基準位置Fに配置されるように、吸着部21(より詳細には複数の吸着部21及び吸着支持部22)を移動させる。第2基準位置Fは、第2規定位置32にあるパレットP(或いは当該パレットPに載置された段積み物品群Wt)よりも上側の位置である。そして、制御装置100は、対象物品群Wsを保持した状態で、吸着部21を下降させる。そして、対象物品群Wsの下面12が、パレットPの上面又は、パレットPに既に載置されている段積み物品群Wtの上面に当接した場合に吸着部21の下降を停止させる。次に、制御装置100は、吸着部21による吸着を解除するように、吸着装置2を制御する。その後、制御装置100は、吸着部21及び吸着支持部22を上昇させる。そして、荷卸し動作を継続させる場合は、制御装置100は、複数の吸着部21及び吸着支持部22を、第1基準位置Eに移動させるようにロボット40(昇降装置4)を制御する。
【0035】
本実施形態では、図10に示すように、制御装置100は、吸着部21による対象物品群Wsの吸着を解除した後であって相対距離Mを増加させるように昇降装置4を動作させている吸着解除後離間中状態で、相対距離Mが特定距離Lよりも判定しきい値Q以上大きいにも拘らず物品検出装置5が物品Wを検出した場合には、昇降装置4を停止させる。本例では、上記のとおり、制御装置100は、複数の吸着部21による対象物品群Wsの吸着を解除した後に、吸着部21を上昇させる。ここで、相対距離Mが特定距離Lよりも判定しきい値Q以上大きいにも拘らず、物品検出装置5が物品Wを検出した場合、対象物品群Wsに属する少なくとも一部の物品Wが、吸着部21に吸着されたままとなっていると推測される。すなわち、対象物品群Wsの一部の物品Wが、第2規定位置32のパレットP上に載置されていないと推測される。そこで、制御装置100は、吸着部21及び吸着支持部22の上昇を停止させるようにロボット40(昇降装置4)を制御する。本例では、このようにロボット40(昇降装置4)の上昇を停止した場合、荷卸し動作が異常となったものとして、異常の報知を行う。異常の報知は、例えば、異常発報音をスピーカやブザーから出力する、異常表示灯を点灯させる、ユーザが操作する端末に異常情報を通知する、等により行われる。
【0036】
3.荷卸し方法
以下では、本実施形態における荷卸し方法について、図12に示すフローチャートに基づいて説明する。本例では、荷卸し装置1により、第1規定位置31の段積み物品群Wtから対象物品群Wsを分離し、第2規定位置32に対象物品群Wsを移載する。
【0037】
制御装置100は、先ず、吸着装置2、ロボット40(昇降装置4)、及び高さ検出装置7から制御用情報101を取得する(S1)。そして、制御装置100は、吸着部21を第1基準位置Eから次第に下降させる吸着接近処理を実行する(S2)。例えば、図4図8に示す状態から吸着部21を次第に下降させる。制御装置100は、吸着接近中状態を維持しつつ、物品検出装置5による物品Wの検出の有無を判定する(S3)。制御装置100は、物品検出装置5により物品Wを検出しない場合(S3:Nо)、引き続き吸着接近処理を実行して吸着接近中状態を維持する(S2)。制御装置100は、物品検出装置5により物品Wを検出した場合(S3:Yes)、相対距離Mが特定距離Lと判定しきい値Qとの合計未満(M<L+Q)であるか否かを判定する(S4)。そして、制御装置100は、相対距離Mが特定距離Lと判定しきい値Qとの合計未満ではないと判定した場合(S4:Nо)、すなわち、相対距離Mが特定距離Lと判定しきい値Qとの合計以上であると判定した場合、吸着部21の下降を停止させる(S15)。図8に示す例では、吸着接近中状態において、相対距離Mが特定距離Lに判定しきい値Qを加えた距離よりも大きい状態(M>L+Q)で、物品検出装置5の検出面13が、残留した物品Wの上面よりも上方に位置している状態を示している。その状態から吸着部21を次第に下降させると、図9に示すような状態となる。図9は、相対距離Mが特定距離Lに判定しきい値Qを加えた距離よりも大きい状態(M>L+Q)で、物品検出装置5が、対象物品群Wsの上側に残留した物品Wを検出した状態を示している。
【0038】
そして、制御装置100は、物品検出装置5により物品Wを検出した際に、相対距離Mが特定距離Lと判定しきい値Qとの合計未満であると判定した場合(S4:Yes)、正常時動作を実行する。すなわち、制御装置100は、吸着部21の下降速度を低下させ、低速で吸着部21を対象物品群Wsに接近させる(S5)。図5の例は、相対距離Mが特定距離Lと判定しきい値Qとの合計未満(M<L+Q)で物品検出装置5により物品Wを検出した状態を示している。
【0039】
その後、制御装置100は、吸着部21の吸着面21aが、対象物品群Wsの上面11に当接したか否かを判定する(S6)。制御装置100は、吸着面21aが上面11に当接していないと判定した場合(S6:Nо)、吸着部21をそのまま低速で下降させる。一方、制御装置100は、吸着面21aが上面11に当接したと判定した場合(S6:Yes)、吸着部21を停止させる。そして、制御装置100は、吸着部21を吸着解除状態から吸着状態に切り換えて、対象物品群Wsを吸着させるように吸着装置2を制御する(S7)。その後、制御装置100は、吸着部21を上昇させて、対象物品群Wsをそれより下の段積み物品群Wtから分離する(S8)。図6は、対象物品群Wsがそれより下の段積み物品群Wtから分離された状態を示している。
【0040】
その後、制御装置100は、吸着保持した対象物品群Wsを、第2規定位置32のパレットPの上(或いはパレットPに段積みされた段積み物品群Wtの上)に移動させる(S9)。そして、対象物品群WsがパレットP又はパレットP上の段積み物品群Wtの上に載せられると、制御装置100は、吸着部21を吸着状態から吸着解除状態に切り換える(S10)。その後、制御装置100は、吸着解除後離間処理を実行する(S11)。具体的には、制御装置100は、吸着部21を上昇させて、吸着部21を対象物品群Ws(或いは段積み物品群Wt)から離間させる。
【0041】
そして、制御装置100は、吸着解除後離間処理を実行しつつ、相対距離Mが特定距離Lと判定しきい値Qとの合計以上(M≧L+Q)であるか否かを判定する(S12)。制御装置100は、相対距離Mが特定距離Lと判定しきい値Qとの合計以上となるまで(S12:Nо)、吸着解除後離間中状態を維持する(S12)。制御装置100は、相対距離Mが特定距離Lと判定しきい値Qとの合計以上であると判定した場合(S12:Yes)、物品検出装置5による物品Wの検出の有無を判定する(S13)。制御装置100は、物品検出装置5により物品Wを検出した場合(S13:Yes)、吸着部21からの物品Wの分離が適切に行われていないと判断して、吸着部21の上昇を停止させる(S15)。図10は、相対距離Mが特定距離Lに判定しきい値Qを加えた値よりも大きい状態(M>L+Q)であり、且つ、吸着部21に吸着されたままの物品Wが検出された状態の例を示している。また、制御装置100は、物品検出装置5により物品Wを検出しない場合、図4に示すように、吸着部21を初期位置、ここでは第1基準位置Eへ移動させる(S14)。図7の二点鎖線は、相対距離Mが特定距離Lと判定しきい値Qとの合計以上であって、物品検出装置5により物品Wが検出されない状態を示している。このように、相対距離Mが特定距離Lと判定しきい値Qとの合計以上で物品検出装置5により物品Wが検出されなければ、対象物品群Wsに属する全ての物品Wが、第2規定位置32において吸着部21から分離されたと推定される。以上により、制御装置100は、対象物品群Wsの移載処理を終了する。
【0042】
4.その他の実施形態
次に、荷卸し装置のその他の実施形態について説明する。
【0043】
(1)上記の実施形態では、載置部3(段積み物品群Wt)の上下方向の位置を固定したまま、吸着部21を昇降させることにより、載置部3と吸着部21とを相対的に昇降させる構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、例えば、吸着部21の上下方向の位置を固定したまま、載置部3(段積み物品群Wt)を昇降させることにより、載置部3と吸着部21とを相対的に昇降させる構成としても良い。この場合、例えば、第1規定位置31にリフタを設置し、当該リフタ上に載置部3としてのパレットP及び段積み物品群Wtを載置し、これらを昇降させる構成とすることができる。
【0044】
(2)上記の実施形態では、制御装置100は、吸着用接近中状態であって、相対距離Mが特定距離Lと判定しきい値Qとの合計未満で物品検出装置5が物品Wを検出した場合には、吸着面21aが対象物品群Wsの上面11に接してから昇降装置4を停止させる正常時動作を行う構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されない。例えば、ロボット40(昇降装置4)による吸着面21aの上下方向の位置誤差が無視できる程度に小さい場合には、判定しきい値Qをゼロに設定しても良い。その場合、制御装置100は、吸着用接近中状態であって、相対距離Mが特定距離L未満(M<L)で物品検出装置5が物品Wを検出した場合に、正常時動作を行う構成としても良い。
【0045】
(3)上記の実施形態では、吸着部21が吸着パッド等の上下方向に弾性変形自在な構成である場合を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、吸着部21が上下方向に変形しない構成としても良い。例えば、吸着部21は、蛇腹形状ではなく、吸着面21aが撓まない吸着パッドとしても良い。また例えば、物品Wが鉄などの磁性材料で構成された部分を有している場合、吸着部21は、磁力により物品Wを吸着する構成であっても良い。この場合、吸着部21は、永久磁石又は電磁石を備えた構成とされると好適である。
【0046】
(4)上記の実施形態では、制御装置100は、吸着部21が物品Wを吸着していない場合において、相対距離Mが最大上下寸法と特定距離Lとの合計より大きい状態から相対距離Mを次第に減少させるように昇降装置4を動作させる構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、相対距離Mを次第に減少させる始めの状態を、相対距離Mが最大上下寸法と特定距離Lとの合計以下の状態に設定しても良い。このようにした場合であっても、相対距離Mを次第に減少させる始めの状態が、対象物品群Wsの上に存在する異常物品Waに吸着部21が干渉しない状態であれば良い。
【0047】
(5)上記の実施形態では、制御装置100は、吸着解除後離間中状態で、相対距離Mが特定距離Lよりも判定しきい値Q以上大きいにも拘らず物品検出装置5が物品Wを検出した場合には、昇降装置4を停止させる構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、制御装置100は、吸着解除後離間中状態では、物品検出装置5による物品Wの検出をしないように設定しても良い。
【0048】
(6)上記の実施形態では、ロボット40は、ロボットアーム46(第1アーム43、第2アーム44、及び第3アーム45)を備えており、これにより吸着部21を規定の空間内に移動自在にする構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されることなく、ロボット40は、吸着部21を移載方向X、直交方向Y、及び上下方向の3方向のそれぞれに移動させる移動機構を備えた3軸ロボットを用いて構成されていても良い。
【0049】
(7)上記の実施形態では、昇降装置4がロボット40に含まれている構成を例として説明したが、これには限定されない。昇降装置4は、吸着部21の昇降のみを行う上下方向の移動機構(リフタ)により構成されていても良い。また、上記のとおり、昇降装置4は、載置部3(段積み物品群Wt)の昇降のみを行う上下方向の移動機構(リフタ)により構成されていても良い。或いは、昇降装置4は、吸着部21及び載置部3の双方の昇降を行う上下方向の移動機構により構成されていても良い。
【0050】
(8)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0051】
5.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した荷卸し装置の概要について説明する。
【0052】
本開示に係る荷卸し装置は、載置部の上に段積みされた複数の物品である段積み物品群から、最上段に属する複数の前記物品である対象物品群を分離する荷卸し装置であって、
前記対象物品群の上面を吸着して前記対象物品群を保持する吸着部を備えた吸着装置と、前記載置部と前記吸着部とを相対的に昇降させる昇降装置と、前記吸着装置及び前記昇降装置を制御する制御装置と、を備え、
前記吸着部における前記対象物品群の上面に接する面を吸着面として、
前記吸着面に対して下側に特定距離だけ離間した位置において前記吸着面と平行状に設定された検出面に交差した前記物品を検出する物品検出装置を更に備え、
前記制御装置は、
前記対象物品群の上面と前記吸着面との距離である相対距離を演算するための制御用情報を取得して前記相対距離を求め、
前記吸着部が前記物品を吸着しておらず前記相対距離を減少させるように前記昇降装置を動作させている吸着用接近中状態で、前記相対距離が前記特定距離よりも判定しきい値以上大きいにも拘らず前記物品検出装置が前記物品を検出した場合には、前記昇降装置を停止させる。
【0053】
本構成によれば、吸着面に対して下側に特定距離だけ離間した位置において吸着面と平行状に設定された検出面に交差した物品を検出する物品検出装置を備えているため、吸着部が物品を吸着しておらず、対象物品群の上面と吸着部とが接近している吸着用接近中状態で、吸着部に接近する物品を適切に検出することができる。そして、制御用情報に基づいて演算される相対距離が特定距離よりも判定しきい値以上大きいにも関わらず物品検出装置が物品を検出した場合、すなわち、物品が存在しないはずの位置に物品が存在した場合に、昇降装置を停止させることができる。従って、吸着部と当該物品とが衝突して吸着部及び物品の少なくとも一方が破損する可能性を低減できる。
このように本構成によれば、最上段の物品を適切に検出して荷卸し動作に反映させることができる。
【0054】
ここで、前記制御装置は、前記吸着用接近中状態であって、前記相対距離が前記特定距離と前記判定しきい値との合計未満で前記物品検出装置が前記物品を検出した場合には、前記吸着面が前記対象物品群の上面に接してから前記昇降装置を停止させ、前記吸着部に前記対象物品群の上面を吸着させ、その後、前記載置部の上面と前記吸着面との距離を増加させるように前記昇降装置を動作させて、前記段積み物品群から前記対象物品群を分離すると好適である。
【0055】
本構成によれば、段積み物品群の最上段に残留した物品がなく、制御用情報も正しい場合に、適切に対象物品群をそれより下の段積み物品群から分離させることができる。
【0056】
また、前記吸着部は、上下方向に弾性変形自在に構成され、
前記制御装置が前記昇降装置を停止させる停止指令を出力してから実際に前記昇降装置が停止するまでの間における前記相対距離の減少量を停止必要距離とし、前記吸着部の上下方向の弾性変形可能量を弾性変形代として、
前記特定距離は、前記停止必要距離から前記弾性変形代を差し引いた距離以上に設定されていると好適である。
【0057】
本構成によれば、制御装置が昇降装置の停止指令を出力してから直ぐに昇降装置が停止できない場合であっても、吸着部と残留した物品とが衝突して吸着部及び物品の少なくとも一方が破損する可能性を低減できる。
【0058】
また、上下方向の寸法が最も大きい前記物品の上下方向の寸法を最大上下寸法として、
前記制御装置は、前記吸着部が前記物品を吸着していない場合に、前記相対距離が前記最大上下寸法と前記特定距離との合計より大きい状態から前記相対距離を次第に減少させるように前記昇降装置を動作させる吸着用接近処理を実行することで前記吸着用接近中状態とし、少なくとも前記吸着用接近処理の実行中に前記物品検出装置を有効にすると好適である。
【0059】
本構成によれば、制御用情報に基づく対象物品群の上に存在しないはずの物品があった場合であっても、当該物品と吸着部との衝突を回避しつつ、吸着部を対象物品群に次第に接近させることができる。そして、吸着部を対象物品群に接近させている吸着用接近中状態で、当該物品の有無や制御用情報の異常の有無を適切に検出することができる。
【0060】
また、前記制御装置は、前記吸着部による前記対象物品群の吸着を解除した後であって前記相対距離を増加させるように前記昇降装置を動作させている吸着解除後離間中状態で、前記相対距離が前記特定距離よりも前記判定しきい値以上大きいにも拘らず前記物品検出装置が前記物品を検出した場合には、前記昇降装置を停止させると好適である。
【0061】
本構成によれば、吸着解除後離間中状態であるにも拘らず、少なくとも一部の物品が吸着部から分離できていない状態となっていることを適切に検出して、昇降装置を停止させることができる。従って、物品が吸着部に吸着されたまま、次の対象物品群の吸着のために吸着用接近中状態に切り換わり、吸着部に吸着されたままの物品と次の対象物品群に属する物品とが衝突することを適切に回避できる。
【0062】
また、前記昇降装置は、前記吸着部を少なくとも上下方向に移動させ、
前記物品検出装置は、前記吸着部と一体的に昇降するように連結されていると好適である。
【0063】
本構成によれば、吸着部を上下方向に移動させることで、段積み物品群自体を昇降させることなく、対象物品群をそれより下の段積み物品群から分離させることができる。従って、段積み物品群を上下方向に移動させる場合に比べて、荷卸し装置の大型化を抑制し易い。また、物品検出装置は、吸着部と一体的に上下方向に移動するため、吸着部の昇降に伴って残留した物品の有無を適切に検出することができる。
【0064】
本開示に係る荷卸し装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0065】
2 :吸着装置
3 :載置部
4 :昇降装置
5 :物品検出装置
11 :上面
13 :検出面
21 :吸着部
21a :吸着面
100 :制御装置
101 :制御用情報
L :特定距離
M :相対距離
Q :判定しきい値
W :物品
Ws :対象物品群
Wt :段積み物品群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12