(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】センサ制御装置、センサ制御方法、センサ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 17/894 20200101AFI20240925BHJP
【FI】
G01S17/894
(21)【出願番号】P 2022067211
(22)【出願日】2022-04-14
【審査請求日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2021088763
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】上杉 浩
(72)【発明者】
【氏名】柳井 謙一
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/075404(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111722621(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0025889(US,A1)
【文献】国際公開第2019/039279(WO,A1)
【文献】特開2020-165677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ(1b)を有し、車両(5)の外界に設定される検出エリア(AL)へ照明光を投射し、前記検出エリアからの反射光を検出する光学センサ(10)を、制御するセンサ制御装置(1)であって、
前記プロセッサは、
前記光学センサにより検出された前記反射光に基づく物理量として、前記検出エリアに存在する物標までの離間距離を表す距離画像(ID)を、取得することと、
前記光学センサにより検出された前記反射光に基づく物理量として、前記検出エリアからの受光強度を表す強度画像(II)を、取得することと、
前記検出エリアのうち、環境光量(Lc)が暗環境範囲(Rd)内となる暗環境エリア(αd)に対して、前記強度画像の解像度を前記距離画像の解像度以上に設定することと、
発光による前記照明光に対して前記距離画像を取得する距離画像取得期間とは前後して前記強度画像を取得する強度画像取得期間において、前記暗環境エリアに対する前記照明光の発光量(Li)を、前記暗環境範囲内の前記環境光量及び前記強度画像の解像度に応じて調整することとを
、実行するように構成され
、
前記暗環境エリアに対する前記発光量を調整することは、
前記暗環境範囲内での前記環境光量の不足を補完するように、前記暗環境エリアに対する前記発光量を調整することを、含むセンサ制御装置。
【請求項2】
前記暗環境エリアに対する前記発光量を調整することは、
前記受光強度が飽和強度以下となるように、前記暗環境エリアに対する前記発光量を調整することを、含む請求項
1に記載のセンサ制御装置。
【請求項3】
前記暗環境エリアに対する前記発光量を調整することは、
前記強度画像を取得する今回フレームでの、前記暗環境エリアに対する前記照明光の発光回数を調整することを、含む請求項1
又は2に記載のセンサ制御装置。
【請求項4】
前記暗環境エリアに対する前記発光量を調整することは、
前記強度画像を取得する今回フレームでの、前記暗環境エリアに対する前記照明光の発光パワーを調整することを、含む請求項1
又は2に記載のセンサ制御装置。
【請求項5】
前記検出エリアのうち、前記環境光量が明環境範囲(Rb)内となる明環境エリア(αb)に対して、前記強度画像の解像度を前記距離画像の解像度以上に設定することと、
前記強度画像取得期間において、前記明環境エリアに対する前記照明光の前記発光量を、零に調整することとを、
さらに実行するように構成される請求項1
又は2に記載のセンサ制御装置。
【請求項6】
前記強度画像の解像度を設定することは、
前記暗環境エリアに対して、前記強度画像の解像度を前記距離画像の解像度以上、且つ前記明環境エリアに対する場合の解像度以下に設定することを含む請求項
5に記載のセンサ制御装置。
【請求項7】
前記強度画像の解像度を設定することは、
前記暗環境エリアに対して、前記強度画像の解像度を前記距離画像の解像度と等しく設定することを、含む請求項1
又は2に記載のセンサ制御装置。
【請求項8】
前記強度画像の解像度を設定することは、
前記強度画像を取得した前回フレームでの前記受光強度及び前記発光量に基づき、前記強度画像を取得する今回フレームでの前記暗環境範囲内の前記環境光量を予測することを、含む請求項1
又は2に記載のセンサ制御装置。
【請求項9】
前記強度画像に基づき観測される前記物標までの、前記離間距離を前記距離画像から抽出することを、
さらに実行するように構成される請求項1
又は2に記載のセンサ制御装置。
【請求項10】
前記強度画像を取得することは、
前記暗環境エリアに対して調整された前記発光量が前記光学センサの発光上限量(Lm)を超過する場合に、前記強度画像における前記暗環境エリアからの前記受光強度を当該発光上限量に基づき補正することを、含む請求項1
又は2に記載のセンサ制御装置。
【請求項11】
前記強度画像の解像度を設定することは、
前記暗環境エリアに対して調整された前記発光量が前記光学センサの発光上限量(Lm)を超過する場合に、前記強度画像における前記暗環境エリアに対しての解像度を当該発光上限量に基づき再設定することを、含む請求項1
又は2に記載のセンサ制御装置。
【請求項12】
車両(5)の外界に設定される検出エリア(AL)へ照明光を投射し、前記検出エリアからの反射光を検出する光学センサ(10)を、制御するためにプロセッサ(1b)により実行されるセンサ制御方法であって、
前記光学センサにより検出された前記反射光に基づく物理量として、前記検出エリアに存在する物標までの離間距離を表す距離画像(ID)を、取得することと、
前記光学センサにより検出された前記反射光に基づく物理量として、前記検出エリアからの受光強度を表す強度画像(II)を、取得することと、
前記検出エリアのうち、環境光量(Lc)が暗環境範囲(Rd)内となる暗環境エリア(αd)に対して、前記強度画像の解像度を前記距離画像の解像度以上に設定することと、
発光による前記照明光に対して前記距離画像を取得する距離画像取得期間とは前後して前記強度画像を取得する強度画像取得期間において、前記暗環境エリアに対する前記照明光の発光量(Li)を、前記暗環境範囲内の前記環境光量及び前記強度画像の解像度に応じて調整することとを
、含み、
前記暗環境エリアに対する前記発光量を調整することは、
前記暗環境範囲内での前記環境光量の不足を補完するように、前記暗環境エリアに対する前記発光量を調整することを、含むセンサ制御方法。
【請求項13】
記憶媒体(1a)に記憶され、車両(5)の外界に設定される検出エリア(AL)へ照明光を投射し、前記検出エリアからの反射光を検出する光学センサ(10)を、制御するためにプロセッサ(1b)に実行させる命令を含むセンサ制御プログラムであって、
前記命令は、
前記光学センサにより検出された前記反射光に基づく物理量として、前記検出エリアに存在する物標までの離間距離を表す距離画像(ID)を、取得させることと、
前記光学センサにより検出された前記反射光に基づく物理量として、前記検出エリアからの受光強度を表す強度画像(II)を、取得させることと、
前記検出エリアのうち、環境光量(Lc)が暗環境範囲(Rd)内となる暗環境エリア(αd)に対して、前記強度画像の解像度を前記距離画像の解像度以上に設定させることと、
発光による前記照明光に対して前記距離画像を取得する距離画像取得期間とは前後して前記強度画像を取得する強度画像取得期間において、前記暗環境エリアに対する前記照明光の発光量(Li)を、前記暗環境範囲内の前記環境光量及び前記強度画像の解像度に応じて調整させることとを
、含み、
前記暗環境エリアに対する前記発光量を調整させることは、
前記暗環境範囲内での前記環境光量の不足を補完するように、前記暗環境エリアに対する前記発光量を調整させることを、含むセンサ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学センサを制御するセンサ制御技術に、関する。
【背景技術】
【0002】
車両の外界に設定される検出エリアへ照明光を投射し、検出エリアからの反射光を検出する光学センサは、広く知られている。このような光学センサを制御するために特許文献1に開示されるセンサ制御技術は、検出エリアに存在する物標までの離間距離を表す距離画像の解像度と、検出エリアからの背景光強度を表す背景光画像の解像度とを、画素サイズの調整により可変設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示のセンサ制御技術において、例えば夜間等の暗環境では、照射光に対する反射光が受光されない期間に、受光強度を確保すべく、解像度の低下した背景光画像が取得されてしまう。その結果、検出能力として、背景光画像から物標を特定する分解能を、低下させる懸念があった。
【0005】
本開示の課題は、検出能力を高めるセンサ制御装置を、提供することにある。本開示の別の課題は、検出能力を高めるセンサ制御方法を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、検出能力を高めるセンサ制御プログラムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、
プロセッサ(1b)を有し、車両(5)の外界に設定される検出エリア(AL)へ照明光を投射し、検出エリアからの反射光を検出する光学センサ(10)を、制御するセンサ制御装置(1)であって、
プロセッサは、
光学センサにより検出された反射光に基づく物理量として、検出エリアに存在する物標までの離間距離を表す距離画像(ID)を、取得することと、
光学センサにより検出された反射光に基づく物理量として、検出エリアからの受光強度を表す強度画像(II)を、取得することと、
検出エリアのうち、環境光量(Lc)が暗環境範囲(Rd)内となる暗環境エリア(αd)に対して、強度画像の解像度を距離画像の解像度以上に設定することと、
発光による照明光に対して距離画像を取得する距離画像取得期間とは前後して強度画像を取得する強度画像取得期間において、暗環境エリアに対する照明光の発光量(Li)を、暗環境範囲内の環境光量及び強度画像の解像度に応じて調整することとを、実行するように構成され、
暗環境エリアに対する発光量を調整することは、
暗環境範囲内での環境光量の不足を補完するように、暗環境エリアに対する発光量を調整することを、含む。
【0008】
本開示の第二態様は、
車両(5)の外界に設定される検出エリア(AL)へ照明光を投射し、検出エリアからの反射光を検出する光学センサ(10)を、制御するためにプロセッサ(1b)により実行されるセンサ制御方法であって、
光学センサにより検出された反射光に基づく物理量として、検出エリアに存在する物標までの離間距離を表す距離画像(ID)を、取得することと、
光学センサにより検出された反射光に基づく物理量として、検出エリアからの受光強度を表す強度画像(II)を、取得することと、
検出エリアのうち、環境光量(Lc)が暗環境範囲(Rd)内となる暗環境エリア(αd)に対して、強度画像の解像度を距離画像の解像度以上に設定することと、
発光による照明光に対して距離画像を取得する距離画像取得期間とは前後して強度画像を取得する強度画像取得期間において、暗環境エリアに対する照明光の発光量(Li)を、暗環境範囲内の環境光量及び強度画像の解像度に応じて調整することとを、含み、
暗環境エリアに対する発光量を調整することは、
暗環境範囲内での環境光量の不足を補完するように、暗環境エリアに対する発光量を調整することを、含む。
【0009】
本開示の第三態様は、
記憶媒体(1a)に記憶され、車両(5)の外界に設定される検出エリア(AL)へ照明光を投射し、検出エリアからの反射光を検出する光学センサ(10)を、制御するためにプロセッサ(1b)に実行させる命令を含むセンサ制御プログラムであって、
命令は、
光学センサにより検出された反射光に基づく物理量として、検出エリアに存在する物標までの離間距離を表す距離画像(ID)を、取得させることと、
光学センサにより検出された反射光に基づく物理量として、検出エリアからの受光強度を表す強度画像(II)を、取得させることと、
検出エリアのうち、環境光量(Lc)が暗環境範囲(Rd)内となる暗環境エリア(αd)に対して、強度画像の解像度を距離画像の解像度以上に設定させることと、
発光による照明光に対して距離画像を取得する距離画像取得期間とは前後して強度画像を取得する強度画像取得期間において、暗環境エリアに対する照明光の発光量(Li)を、暗環境範囲内の環境光量及び強度画像の解像度に応じて調整させることとを、含み、
暗環境エリアに対する発光量を調整させることは、
暗環境範囲内での環境光量の不足を補完するように、暗環境エリアに対する発光量を調整させることを、含む。
【0010】
第一~第三態様の検出エリアからの反射光検出によると、検出エリアに存在する物標までの離間距離を表す距離画像と、検出エリアからの受光強度を表す強度画像とが、取得される。そこで検出エリアのうち、環境光量が暗環境範囲内となる暗環境エリアに対しては、強度画像の解像度が距離画像の解像度以上に設定されることに加え、それら暗環境範囲内での環境光量及び強度画像の解像度に応じて照明光の発光量が調整される。これによれば、強度画像の解像度を高めても、環境光量の不足する暗環境エリアに対して当該解像度に適した発光量が反映され得る強度画像では、受光強度不足を解消することができる。故に、検出能力として強度画像における物標の分解能を、高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一実施形態による検出システムの全体構成を示す模式図である。
【
図2】第一実施形態による光学センサの詳細構成を示す模式図である。
【
図3】第一実施形態による投光器を示す模式図である。
【
図4】第一実施形態による受光器を示す模式図である。
【
図5】第一実施形態による検出フレームを示すタイムチャートである。
【
図6】第一実施形態によるセンサ制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】第一実施形態による距離画像を説明するための模式図である。
【
図8】第一実施形態による距離画像を説明するための模式図である。
【
図9】第一実施形態による距離画像を説明するための模式図である。
【
図10】第一実施形態による距離画像を説明するための模式図である。
【
図11】第一実施形態による距離画像を説明するための模式図である。
【
図12】第一実施形態による検出エリアの区分エリアを示す模式図である。
【
図13】第一実施形態による強度画像を説明するための模式図である。
【
図14】第一実施形態による強度画像を説明するための模式図である。
【
図15】第一実施形態による強度画像を説明するための模式図である。
【
図16】第一実施形態による強度画像を説明するための模式図である。
【
図17】第一実施形態による強度画像を説明するための模式図である。
【
図18】第一実施形態によるセンサ制御方法を示すフローチャートである。
【
図19】第二実施形態によるセンサ制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図20】第二実施形態によるセンサ制御方法を示すフローチャートである。
【
図21】第三実施形態によるセンサ制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図22】第三実施形態によるセンサ制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態を図面に基づき複数説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。また、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0013】
図1に示すように本開示の第一実施形態は、光学センサ10及びセンサ制御装置1を含んで構成される検出システム2に関する。検出システム2は、車両5に搭載される。
【0014】
車両5は、自動運転制御モードにおいて定常的、又は一時的に自動走行可能となっている。ここで自動運転制御モードは、条件付運転自動化、高度運転自動化、又は完全運転自動化といった、作動時のシステムが全ての運転タスクを実行する自律運転制御により、実現されてもよい。自動運転制御モードは、運転支援、又は部分運転自動化といった、乗員が一部又は全ての運転タスクを実行する高度運転支援制御において、実現されてもよい。自動運転制御モードは、それら自律運転制御と高度運転支援制御とのいずれか一方、組み合わせ、又は切り替えにより実現されてもよい。
【0015】
尚、以下の説明では断り書きがない限り、前、後、上、下、左、及び右の各方向は、水平面上の車両5を基準として定義される。また水平方向とは、車両5の方向基準となる水平面に対して、平行方向を示す。さらに鉛直方向とは、車両5の方向基準となる水平面に対して、上下方向でもある垂直方向を示す。
【0016】
光学センサ10は、自動制御運転モードを含む車両5の運転制御に活用可能な画像を取得する、所謂LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)である。光学センサ10は、例えば前方部、左右の側方部、後方部、及び上方のルーフ等のうち、車両5の少なくとも一箇所に配置される。
図2に示すように光学センサ10においては、互いに直交する三軸としてのX軸、Y軸、及びZ軸により、三次元直交座標系が定義されている。ここで特に本実施形態では、X軸及びZ軸がそれぞれ車両5の相異なる水平方向に沿って設定され、またY軸が車両5の鉛直方向に沿って設定される。尚、
図2においてY軸に沿う一点鎖線よりも左側部分(後述の透光カバー12側)は、実際には当該一点鎖線よりも右側部分(後述のユニット21,41側)に対して垂直な断面を図示している。
【0017】
光学センサ10は、車両5の外界のうち、配置箇所に応じた検出エリアALへと向けて、照明光を投射する。光学センサ10は、投射時の照明光が検出エリアALの物標により反射されることで入射してくる戻り光を、当該エリアALからの反射光として検出する。光学センサ10は、照明光の非投射時における外光が検出エリアALの物標により反射されることで入射してくる光も、当該エリアALからの反射光として検出する。
【0018】
光学センサ10は、反射光を検出することで、検出エリアAL内の物標を観測する。ここで特に本実施形態における観測とは、光学センサ10から物標までの離間距離、及び物標からの反射光の反射強度を、センシングすることを意味する。車両5に適用される光学センサ10において代表的な観測対象物標は、例えば歩行者、サイクリスト、人間以外の動物、及び他車両等の移動物体のうち、少なくとも一種類であってもよい。車両5に適用される光学センサ10において代表的な観測対象物標は、例えばガードレール、道路標識、道路脇の構造物、及び道路上の落下物等の静止物体のうち、少なくとも一種類であってもよい。
【0019】
光学センサ10は、筐体11、投光ユニット21、走査ユニット31、及び受光ユニット41を含んで構成されている。筐体11は、光学センサ10の外装を構成している。筐体11は、箱状に形成され、遮光性を有している。筐体11は、投光ユニット21、走査ユニット31、及び受光ユニット41を内部に収容している。筐体11において開口状の光学窓には、透光カバー12が設けられている。透光カバー12は、板状に形成され、上述の照明光及び反射光に対して透光性を有している。透光カバー12は、照明光及び反射光の双方を透過可能に、筐体11の光学窓を閉塞している。
【0020】
投光ユニット21は、投光器22、及び投光光学系26を備えている。投光器22は、筐体11内に配置されている。
図3に示すように投光器22は、複数のレーザ発振素子24が基板上においてアレイ状に配列されることで、形成されている。各レーザ発振素子24は、Y軸に沿って単列に配列されている。各レーザ発振素子24は、PN接合層において発振されたレーザ光を共振させる共振器構造、及びPN接合層を挟んでレーザ光を繰り返し反射させるミラー層構造により、位相の揃ったコヒーレント光なレーザ光を発する。各レーザ発振素子24は、センサ制御装置1からの制御信号に従うことにより互いに共同して、照明光を構成するレーザ光をそれぞれパルス状に生成する。こうした照明光となるレーザ光には、外界の人間から視認困難な近赤外域の光が、選択される。
【0021】
投光器22は、擬似的に長方形輪郭をもって規定される投光窓25を、基板の片面側に形成している。投光窓25は、各レーザ発振素子24におけるレーザ発振開口の集合体として、構成されている。各レーザ発振素子24のレーザ発振開口から投射されるレーザ光は、検出エリアAL(
図2参照)においてはY軸に沿った長手のライン状に擬制される照明光として、投光窓25から投射される。照明光には、Y軸方向において各レーザ発振素子24の配列間隔に応じた非発光部が、含まれていてもよい。この場合でも、検出エリアALにおいては回折作用によって巨視的に非発光部の解消されたライン状の照明光が、形成されるとよい。
【0022】
図2に示すように投光光学系26は、投光器22からの照明光を、走査ユニット31の走査ミラー32へ向かって投光する。投光光学系26は、照明光の光路上における投光器22及び走査ミラー32の間に、配置されている。投光光学系26は、例えば集光、コリメート、及び整形等のうち、少なくとも一種類の光学作用を発揮する。投光光学系26は、Z軸に沿った投光光軸を、形成する。投光光学系26は、発揮する光学作用に応じたレンズ形状の投光レンズ27を、投光光軸上に少なくとも一つ有している。投光光学系26の投光光軸上には、投光器22が位置決めされている。投光器22において投光窓25の中心から射出される照明光は、投光光学系26の投光光軸に沿って導光される。
【0023】
走査ユニット31は、走査ミラー32、及び走査モータ35を備えている。走査ミラー32は、投光ユニット21の投光光学系26から投射された照明光を検出エリアALへ向けて走査し、検出エリアALからの反射光を受光ユニット41の受光光学系42へ向けて反射する。走査ミラー32は、照明光の光路上における透光カバー12及び投光光学系26の間、且つ反射光の光路上における透光カバー12及び受光光学系42の間に配置されている。
【0024】
走査ミラー32は、基材の片面である反射面33に反射膜が蒸着されることで、板状に形成されている。走査ミラー32は、Y軸に沿う回転中心線まわりに回転可能に、筐体11によって支持されている。走査ミラー32は、回転中心線まわりの回転により、反射面33の法線方向を調整可能となっている。走査ミラー32は、機械的又は電気的なストッパにより有限となる駆動範囲内において、揺動運動する。
【0025】
走査ミラー32は、投光ユニット21と受光ユニット41とに共通に設けられている。即ち走査ミラー32は、照明光と反射光とに共通に設けられている。これにより走査ミラー32は、照明光の反射に利用する投光反射面部と、反射光の反射に利用する受光反射面部とを、反射面33においてY軸方向にずらして形成している。
【0026】
投射光は、走査ミラー32の回転に応じた法線方向の反射面33のうち投光反射面部から反射作用を受けることで、透光カバー12を透過して検出エリアALを時間的及び空間的に走査する。このとき検出エリアALに対する照明光の走査は、水平方向での走査に実質制限される。照明光及び外光は、検出エリアALに存在する物標によって反射されることで、光学センサ10へと入射する。こうした反射光は、透光カバー12を透過して、走査ミラー32の回転に応じた法線方向の反射面33のうち受光反射面部から反射作用を受けることで、受光ユニット41の受光光学系42へと導光される。ここで走査ミラー32の回転運動速度に対しては、照明光及びそれに対する反射光の速度が十分に大きい。これにより照射光に対する反射光は、当該照射光と略同一回転角度の走査ミラー32において照明光と逆行するように、受光光学系42へ導光されることとなる。
【0027】
走査モータ35は、筐体11内において走査ミラー32の周囲に、配置されている。走査モータ35は、例えばボイスコイルモータ、ブラシ付きDCモータ、又はステッピングモータ等である。走査モータ35は、センサ制御装置1からの制御信号に従って、走査ミラー32を有限の駆動範囲内において回転駆動(即ち、揺動駆動)する。
【0028】
受光ユニット41は、受光光学系42、及び受光器45を備えている。受光光学系42は、走査ミラー32によって反射された反射光を、受光器45へ向かって導光する。受光光学系42は、反射光の光路上における走査ミラー32及び受光器45の間に、配置されている。受光光学系42は、Y軸方向において投光光学系26よりも下方に、位置決めされている。受光光学系42は、受光器45に対して反射光を結像させるように、光学作用を発揮する。受光光学系42は、Z軸に沿った受光光軸を、形成する。受光光学系42は、発揮する光学作用に応じたレンズ形状の受光レンズ43を、受光光軸上に少なくとも一つ有している。走査ミラー32の反射面33のうち受光反射面部から反射されてくる、検出エリアALからの反射光は、走査ミラー32の駆動範囲内において受光光学系42の受光光軸に沿って導光される。
【0029】
受光器45は、受光光学系42によって結像される、検出エリアALからの反射光を検出することで、検出信号を出力する。受光器45は、筐体11内において走査ミラー32とは受光光学系42を挟んだ反対側に、配置されている。受光器45は、Y軸方向において投光器22よりも下方、且つ受光光学系42の受光光軸上に位置決めされている。
【0030】
図4に示すように受光器45は、複数の受光要素46が基板上においてアレイ状に配列されることで、形成されている。各受光要素46は、X軸及びY軸の各々に沿って二列以上ずつ並ぶように、配列されている。各受光要素46は、それぞれ多数の受光素子から構成されている。各受光要素46の受光素子は、例えばシングルフォトンアバランシェダイオード(以下、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)という)等のフォトダイオードを主体として、構築されている。各受光要素46は、受光素子の前段にマイクロレンズアレイが積層されて一体的に、構築されていてもよい。
【0031】
受光器45は、長方形輪郭の受光面47を、基板の片面側に形成している。受光面47は、各受光要素46における入射面の集合体として、構成されている。受光面47の長方形輪郭に対する幾何学中心は、受光光学系42の受光光軸上に、又は受光光学系42の受光光軸から僅かにずれて、位置合わせされている。各受光要素46は、受光光学系42から受光面47へ入射した反射光を、それぞれの受光素子により受光する。ここで、長方形輪郭を呈する受光面47のアスペクト比は、長辺側がY軸に沿っている。これにより、検出エリアALにおいてライン状に擬制される照明光に対応して、当該照明光に対する反射光は、ライン状に拡がったビームとして各受光要素46の受光素子により受光されることとなる。
【0032】
図2に示すように受光器45は、デコーダ48を一体的に有している。デコーダ48は、受光面47における反射光の受光に応じて各受光要素46の生成する電気パルスを、サンプリング処理によって順次読み出す。デコーダ48は、順次読み出された電気パルスを、
図5に示す検出フレーム(即ち、検出サイクル)FS毎の検出信号として、センサ制御装置1へと出力する。ここで検出フレームFSは、車両5の起動中において所定時間間隔で繰り返される。こうしたデコーダ48の検出信号を受けてセンサ制御装置1では、走査ミラー32の回転に伴う各受光要素46での受光によって検出した反射光に基づく物理量に応じて、検出エリアAL内での物標観測結果を表す画像が生成される。
【0033】
図1に示すセンサ制御装置1は、例えばLAN(Local Area Network)、ワイヤハーネス、及び内部バス等のうち、少なくとも一種類を介して光学センサ10に接続される。センサ制御装置1は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成される。センサ制御装置1を構成する専用コンピュータは、光学センサ10を制御することに特化した、センサECU(Electronic Control Unit)であってもよい。この場合にセンサECUは、筐体11内に収容されていてもよい。
【0034】
センサ制御装置1を構成する専用コンピュータは、車両5の運転制御を統合する、統合ECUであってもよい。センサ制御装置1を構成する専用コンピュータは、車両5の運転制御における運転タスクを判断する、判断ECUであってもよい。センサ制御装置1を構成する専用コンピュータは、車両5の運転制御を監視する、監視ECUであってもよい。センサ制御装置1を構成する専用コンピュータは、車両5の運転制御を評価する、評価ECUであってもよい。
【0035】
センサ制御装置1を構成する専用コンピュータは、車両5の走行経路をナビゲートする、ナビゲーションECUであってもよい。センサ制御装置1を構成する専用コンピュータは、車両5の自己状態量を推定する、ロケータECUであってもよい。センサ制御装置1を構成する専用コンピュータは、車両5の走行アクチュエータを制御する、アクチュエータECUであってもよい。センサ制御装置1を構成する専用コンピュータは、車両5において表示及び音声での情報提示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。センサ制御装置1を構成する専用コンピュータは、車両5との間で通信可能な外部センタ又はモバイル端末を構築する、少なくとも一つの外部コンピュータであってもよい。
【0036】
センサ制御装置1を構成する専用コンピュータは、メモリ1a及びプロセッサ1bを、少なくとも一つずつ有している。メモリ1aは、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサ1bは、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。
【0037】
プロセッサ1bは、メモリ1aに記憶されたセンサ制御プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これによりセンサ制御装置1は、光学センサ10を制御するための機能ブロックを、複数構築する。このようにセンサ制御装置1では、光学センサ10を制御するためにメモリ1aに記憶されたセンサ制御プログラムが複数の命令をプロセッサ1bに実行させることで、複数の機能ブロックが構築される。センサ制御装置1により構築される複数の機能ブロックには、
図6に示すように距離画像取得部100、強度画像取得部110、解像度設定部120、発光量調整部130、及び物標観測部140が含まれる。
【0038】
距離画像取得部100は、
図5に示す検出フレームFS毎の距離画像取得期間TDにおいて投光器22の発光を制御することで、照射光のパルスを所定回数分、光学センサ10から検出エリアALへ照射させる。距離画像取得部100は、距離画像取得期間TDにおいて照射光パルス毎に光学センサ10の検出した反射光に基づく物理量として、検出エリアALに存在する物標までの離間距離を表すように、デコーダ48からの検出信号に基づく距離画像IDを取得する。このとき距離画像取得部100は、取得する距離画像IDの解像度を、
図7~12に示すように距離画像IDを構成する複数画素PD毎の縦方向及び横方向での各サイズSDによって、設定する。
【0039】
具体的には距離画像IDに関して、画素PDの縦方向は車両5のY軸方向に対応し、画素PDの横方向は車両5のX軸方向に対応している。そこで距離画像取得部100は、各画素PDに対応させる受光要素46のY軸方向での数を
図7,8の如く減少させるほど、各画素PDの縦方向でのサイズSDを
図9,10の如く減少させることで、当該縦方向での距離画像IDの解像度が高くする。また距離画像取得部100は、各画素PDに対応させる受光要素46のX軸方向での数を
図7,8の如く減少させるほど、横方向でのサイズSDを
図9,10の如く減少させることで、当該横方向での距離画像IDの解像度を高くする。こうしてサイズSDによって決まる距離画像IDの解像度は、
図12に示すように複数に区分される検出エリアALの各区分エリアα間において、
図9,10に示すように全て同一であってもよい。あるいは
図11に示すように、複数の相異なるサイズSDのうちいずれかが検出エリアALの各区分エリアα毎に選択されることで、距離画像IDにおいて当該複数の解像度が混在していてもよい。
【0040】
図6に示す強度画像取得部110は、
図5に示す検出フレームFS毎に距離画像取得期間TDよりも前となる強度画像取得期間TIにおいて投光器22の発光を制御することで、照射光のパルスを発光時間間隔tで発光回数Ln分、光学センサ10から検出エリアALへ照射させる。強度画像取得部110では、強度画像取得期間TI中に照射光の発光量を零にする(実質的に照射光の照射は中止)場合があるため、照射光のパルス発生回数となる発光回数Lnは、0以上の整数に調整される。強度画像取得部110は、断続的な照射光パルスに対して強度画像取得期間TI中は継続露光される光学センサ10の検出した反射光に基づく物理量として、検出エリアALからの反射強度となる光学センサ10の受光強度を表すように、デコーダ48からの検出信号に基づく強度画像IIを取得する。このとき強度画像取得部110は、取得する強度画像IIの解像度を、
図13~17に示すように強度画像IIを構成する複数画素PI毎の縦方向及び横方向での各サイズSIによって、設定する。
【0041】
具体的には強度画像IIに関して、画素PIの縦方向は車両5のY軸方向に対応し、画素PIの横方向は車両5のX軸方向に対応している。そこで強度画像取得部110は、各画素PIに対応させる受光要素46のY軸方向での数を
図13,14の如く減少させるほど、縦方向でのサイズSIを
図15,16の如く減少させることで、当該縦方向での強度画像IIの解像度を高くする。また強度画像取得部110は、各画素PIに対応させる受光要素46のX軸方向での数を
図13,14の如く減少させるほど、横方向でのサイズSIを
図15,16の如く減少させることで、当該横方向での強度画像IIの解像度を高くする。こうしてサイズSIによって決まる強度画像IIの解像度は、
図12に示す検出エリアALの各区分エリアα間において、
図15,16に示すように全て同一であってもよい。あるいは
図17に示すように、複数の相異なるサイズSIのうちいずれかが検出エリアALの各区分エリアα毎に選択されることで、強度画像IIにおいて当該複数の解像度が混在していてもよい。
【0042】
図6に示す解像度設定部120は、今回の検出フレームFSにおいて強度画像II及び距離画像IDが順次取得されるのに先立ち、検出エリアALの各区分エリアα毎に環境光量Lcを予測して、各区分エリアαを識別する。具体的に解像度設定部120は、前回の検出フレームFSにおいて取得された強度画像IDを、メモリ1aの画像記憶部1aiから読み出す。そのために、強度画像II及び距離画像IDのうち少なくとも前者は、各検出フレームFSでの取得毎に画像記憶部1aiに記憶される。それと共に解像度設定部120は、前回の検出フレームFSにおいて後述の如く各区分エリアα毎に調整されることとなった照明光の発光量Li(
図5参照)を、メモリ1aの発光記憶部1alから読み出す。そのために発光量Liは、各検出フレームFSでの調整毎に発光記憶部1alに記憶される。尚、以下の説明では、今回の検出フレームFSを単に今回フレームFS、また前回の検出フレームFSを単に前回フレームFS、というものとする。
【0043】
解像度設定部120は、読み出した前回フレームFSでの強度画像IDにおいて各区分エリアα毎に含まれる複数画素PIの受光強度と、読み出した前回フレームFSでの各区分エリアα毎の発光量Liとに基づき、今回フレームFSにおける環境光量Lcを予測する。解像度設定部120は、こうして各区分エリアα毎に予測される環境光量Lcに基づくことで、当該予測光量Lcが明環境範囲Rb内となる区分エリアαを、
図16,17の如く今回フレームFSでの明環境エリアαbと識別する。一方で解像度設定部120は、予測光量Lcが暗環境範囲Rd内となる区分エリアαを、
図15,17の如く今回フレームFSでの暗環境エリアαdと識別する。尚、
図16は、検出エリアAL全域が明環境エリアαbとなる場合、また
図15は、検出エリアAL全域が暗環境エリアαdとなる場合を、それぞれ示している。
【0044】
ここで、解像度設定部120における暗環境範囲Rdと明環境範囲Rbとは、閾光量を境界として定義される。この定義下では、暗環境範囲Rdが閾光量以下且つ明環境範囲Rbが閾光量超過、又は暗環境範囲Rdが閾光量未満且つ明環境範囲Rbが閾光量以上に、規定される。また閾光量は、例えば夜間及び暗所等において区分エリア内画素PIに対応する全受光要素46の受光光量として、照明光なしでの物標観測には不足することになる光量を踏まえて、規定される。
【0045】
図6に示す解像度設定部120は、今回フレームFSにおいて強度画像II及び距離画像IDが順次取得されるのに先立ち、それら画像II,IDの今回フレームFSでの解像度を、設定する。具体的に解像度設定部120は、
図9,11,16,17の如く明環境エリアαbに対しては、今回フレームFSにおける強度画像IIの解像度を、今回フレームFSにおける距離画像IDの解像度以上に、設定する。そこで解像度設定部120は、縦方向及び横方向における各サイズSI,SDについて、vを1以上の実数変数として、明環境サイズ条件式v・SI≦SDを満たすように、解像度設定をする。
【0046】
一方で解像度設定部120は、
図10,11,15,17の如く暗環境エリアαdに対しては、今回フレームFSにおける強度画像IIの解像度を、今回フレームFSにおける距離画像IDの解像度以上、且つ明環境エリアαbに対する場合の解像度以下に設定する。そこで解像度設定部120は、縦方向及び横方向における各サイズSI,SDについて、vを1以上の実数変数として、暗環境サイズ条件式v・SI=SDを満たすように、解像度設定をする。ここで、特にv=1の場合はSI=SDを満たすように、強度画像II及び距離画像IDの解像度が設定される。即ち、v=1の場合における強度画像IIの解像度は、距離画像IDの解像度と等しく設定されることになる。
【0047】
尚、このような解像度設定部120による解像度設定においては、固定のサイズSDに対して、又は予測の環境光量Lcに応じた可変のサイズSDに対して、上述のサイズ条件式を満たすようにサイズSIが可変設定されてもよい。あるいは、解像度設定部120による解像度設定においては、予測の環境光量Lcに応じた可変のサイズSIに対して、上述のサイズ条件式を満たす固定又は可変のサイズSDが、設定されてもよい。
【0048】
図6に示す発光量調整部130は、今回フレームFSにおいて強度画像II及び距離画像IDが順次取得されるのに先立ち、今回フレームFSでの走査ミラー32の回転に応じて各区分エリアα毎に投射される照明光の、発光量Liを調整する。具体的に発光量調整部130は、解像度設定部120により識別された明環境エリアαbに対する照明光の発光量Liを、零に調整する。このとき発光量調整部130は、発光回数Lnを零に設定する。尚、
図15の如く検出エリアAL全域が暗環境エリアαdとなる場合には、明環境エリアαbに対する発光量Liの調整はスキップされる。
【0049】
一方で発光量調整部130は、解像度設定部120により識別された暗環境エリアαdに対する照明光の発光量Liを、解像度設定部120により予測された暗環境範囲Rd内の環境光量Lcと、解像度設定部120によりサイズSIの設定された強度画像IIの解像度とに応じて、調整する。尚、
図16の如く検出エリアAL全域が明環境エリアαbとなる場合には、暗環境エリアαdに対する発光量Liの調整はスキップされる。
【0050】
発光量調整部130は、強度画像IIの設定解像度に対して、暗環境範囲Rd内での環境光量Lcの不足を補完するように、暗環境エリアαdへの発光量Liを調整する。このとき、強度画像IIが取得される今回フレームFSに対して、
図5に示す発光回数Ln及び発光パワーLpのうち少なくとも一方が調整される。ここで特に本実施形態では、まず、解像度設定部120により設定された解像度の強度画像IIにおいて、暗環境エリア内画素PIに対応する全受光要素46の受光光量として、物標観測に必要な必要受光光量Lrが取得される。そこで発光量Liは、解像度設定部120により予測された暗環境範囲Rd内での環境光量Lcとの総和が、発光量調整部130により取得された必要受光光量Lr以上となるように、可変設定される。即ち発光量Liは、暗環境発光条件式Li+Lc≧Lrを満たすように、調整される。
【0051】
但し、発光量調整部130によって調整される発光量Liは、上述の暗環境発光条件式を満たす限りにおいて、暗環境エリア内画素PIに対応する各受光要素46の受光強度が飽和強度以下となるように、制限される。そのために、暗環境エリア内画素PIに対応する各受光要素46の受光強度が飽和強度以下となる範囲での必要受光光量Lrが、発光量Liの調整に当たって取得されることとなる。ここで飽和強度とは、各受光要素46の受光強度に関する上限値を意味する。例えば各受光要素46を構成する受光素子がSPADである場合、各受光要素46におけるSPADの応答数に応じた受光強度が取得されることから、飽和強度とは各受光要素46におけるSPADの総数に応じた受光強度となる。
【0052】
こうした発光量Liの調整に当たっては、発光時間間隔tは固定される前提下、暗環境発光条件式Li+Lc≧Lrを満たす発光量Liと、デフォルトの発光パワーLpに対する乗算により
図5の如く当該発光量Liを与える発光回数Lnとが、演算される。その結果、発光回数Lnと発光時間間隔tとの乗算値となる発光期間TLが強度画像取得期間TI以下(即ち、TL≦TI)となる場合には、発光回数Ln及び発光パワーLpが確定される。一方で、発光期間TLが強度画像取得期間TI超過(即ち、TL>TI)となる場合には、発光パワーLpが所定量インクリメント(即ち、増大)されることで、Li+Lc≧Lr且つTL≦TIが満たされるまで、発光量Li及び発光回数Lnの再演算が繰り返される。
【0053】
図6に示す物標観測部140は、今回フレームFSに取得された強度画像IIに基づく画像認識処理により、検出エリアAL内において観測される観測対象物標を、複数特定する。物標観測部140は、車両5から各観測対象物標までの離間距離を、今回フレームFSに取得された距離画像IDから抽出する。このとき、画像II,ID間において観測対象物標に対応する受光要素46同士のマッチングにより、距離画像IDにおいて当該受光要素46に対応する離間距離の値が、抽出される。こうして抽出された離間距離は、例えば車両5の運転制御に関わるECU等へ与えられることで、自動制御運転モードを含む車両5の運転制御に活用可能となる。
【0054】
ここまで説明した距離画像取得部100、強度画像取得部110、解像度設定部120、発光量調整部130、及び物標観測部140の共同により、センサ制御装置1が光学センサ10を制御するセンサ制御方法のフロー(以下、制御フローという)を、
図18に従って以下に説明する。本制御フローは、検出フレームFS毎に繰り返し実行される。尚、本制御フローにおける各「S」は、センサ制御プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味する。
【0055】
S101において解像度設定部120は、前回フレームFSでの強度画像IIにおいて各区分エリアα毎に、含まれる複数画素PIの受光強度と、前回フレームFSでの照明光の発光量Liとに基づき、今回フレームFSでの環境光量Lcを予測する。S102において解像度設定部120は、S101での予測光量Lcが明環境範囲Rb内の明環境エリアαbと、当該予測光量Lcが暗環境範囲Rd内の暗環境エリアαdとを、それぞれ識別する。
【0056】
S103において解像度設定部120は、今回フレームFSにおける強度画像IIの解像度及び距離画像IDの解像度を、それぞれ設定する。このとき解像度設定部120は、S102により明環境エリアαbが識別された場合に当該識別エリアαbに対しては、今回フレームFSにおける強度画像IIの解像度を、今回フレームFSにおける距離画像IDの解像度以上に、設定する。一方で解像度設定部120は、S102により暗環境エリアαdが識別された場合に当該識別エリアαdに対しては、今回フレームFSにおける強度画像IIの解像度を、今回フレームFSにおける距離画像IDの解像度以上、且つ明環境エリアαbに対する場合の解像度以下に設定する。
【0057】
S104において発光量調整部130は、今回フレームFSに走査ミラー32の回転に応じて各区分エリアα毎に投射される照明光の、発光量Liを調整する。このとき発光量調整部130は、S102により明環境エリアαbが識別された場合に当該識別エリアαbに対しては、発光量Liを零に調整する。一方で発光量調整部130は、S102により暗環境エリアαdが識別された場合に当該識別エリアαdに対する照明光の発光量Liを、S101により予測された暗環境範囲Rd内の環境光量Lcと、S103により設定された強度画像IIの解像度に応じて、調整する。
【0058】
S105において強度画像取得部110は、強度画像取得期間TIに照明光パルスを断続的に照射させることで、強度画像IIを取得する。このとき強度画像取得部110は、S104により調整された発光量Liとなるように、照明光パルスの発光回数Ln及び発光パワーLpを制御する。S106において距離画像取得部100は、距離画像取得期間TDに照射光パルスの所定回数を照射させることで、距離画像IDを取得する。S107において物標観測部140は、S105により取得された強度画像IIに基づき観測される観測対象物標までの離間距離を、S106により取得された距離画像IDから抽出する。以上により、今回フレームFSでの本制御フローが終了する。
【0059】
(作用効果)
以上説明した第一実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0060】
第一実施形態の検出エリアALからの反射光検出によると、検出エリアALに存在する物標までの離間距離を表す距離画像IDと、検出エリアALからの受光強度を表す強度画像IIとが、取得される。そこで検出エリアALのうち、環境光量Lcが暗環境範囲Rd内となる暗環境エリアαdに対しては、強度画像IIの解像度が距離画像IDの解像度以上に設定されることに加え、それら暗環境範囲Rd内での環境光量Lc及び強度画像IIの解像度に応じて照明光の発光量Liが調整される。これによれば、強度画像IIの解像度を高めても、環境光量Lcの不足する暗環境エリアαdに対して当該解像度に適した発光量Liが反映され得る強度画像IIでは、受光強度不足を解消することができる。故に、検出能力として強度画像IIにおける物標の分解能を、高めることが可能である。
【0061】
第一実施形態によると、暗環境範囲Rd内での環境光量Lcの不足を補完するように、暗環境エリアαdに対する発光量Liが調整される。これによれば、発光量Liを適正化して強度画像IIにおける受光強度不足を、暗環境エリアαdに対して解消することができる。故に、高い物標分解能の確保に貢献することが可能となる。
【0062】
第一実施形態によると、受光強度が飽和強度以下となるように、暗環境エリアαdに対する発光量Liが調整される。これによれば、発光量Liを適正化して強度画像IIにおける受光強度の飽和を、暗環境エリアαdに対して予防することができる。故に、高い物標分解能の確保に貢献することが可能となる。
【0063】
第一実施形態によると、強度画像IIを取得する今回フレームFSでの、暗環境エリアαdに対する照明光の発光パワーLpが調整される。このような発光パワーLpの調整によれば、発光量Liを適正化して強度画像IIにおける受光強度不足を、暗環境エリアαdに対して解消することができる。故に、高い物標分解能の確保に貢献することが可能となる。
【0064】
第一実施形態によると、強度画像IIを取得する今回フレームFSでの、暗環境エリアαdに対する照明光の発光回数Lnが調整される。このような発光回数Lnの調整によれば、発光量Liを適正化して強度画像IIにおける受光強度不足を、暗環境エリアαdに対して解消することができる。故に、高い物標分解能の確保に貢献することが可能となる。
【0065】
第一実施形態によると、検出エリアALのうち、環境光量Lcが明環境範囲Rb内となる明環境エリアαbに対しては、強度画像IIの解像度が距離画像IDの解像度以上に設定されることに加え、照明光の発光量Liが零に調整される。これによれば、環境光量Lcを自然に確保し得る明環境エリアαbには、照明光なしでも強度画像IIの高い解像度によって、高い物標分解能を確保することが可能となる。
【0066】
第一実施形態によると、暗環境エリアαdに対しては、強度画像IIの解像度が距離画像IDの解像度以上、且つ明環境エリアαbに対する場合の解像度以下に設定され、それに応じて照明光の発光量Liが調整されることになる。これによれば、強度画像IIの解像度を暗環境エリアαdに合わせて可及的に高めつつも、当該解像度に適した発光量Liが暗環境エリアαdに対して反映され得る強度画像IIにおいて、受光強度不足を解消することができる。故に、高い物標分解能の確保に貢献することが可能となる。
【0067】
第一実施形態によると、暗環境エリアαdに対しては、強度画像IIの解像度が距離画像IDの解像度と等しく設定され、それに応じて照明光の発光量Liが調整されてもよい。これによれば、強度画像IIの解像度を必要最小限に高めつつも、当該解像度に適した発光量Liが暗環境エリアαdに対して反映され得る強度画像IIにおいて、受光強度不足を解消することができる。故に、高い物標分解能の確保に貢献することが可能となる。
【0068】
第一実施形態によると、強度画像IIを取得した前回フレームFSでの受光強度及び発光量Liに基づき、強度画像IIを取得する今回フレームFSでの暗環境範囲Rd内の環境光量Lcが予測される。これによれば、予測の環境光量Lcに応じた発光量Liを適正に調整して、強度画像IIにおける受光強度不足を暗環境エリアαdに対して解消することができる。故に、高い物標分解能の確保に貢献することが可能となる。
【0069】
第一実施形態によると、強度画像IIに基づき観測される物標までの、離間距離が距離画像IDから取得される。これによれば、強度画像IIに基づき高分解能で観測され得る物標に関して、離間距離を正確に取得することができるので、当該物標分解能だけでなく、距離精度も含めて検出能力を高めることが可能となる。
【0070】
(第二実施形態)
図19,20に示すように第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0071】
第二実施形態の制御フローにおいてS105に代わるS2105では、S104の発光量調整部130により調整された発光量Liを、強度画像取得部2110が取得する。その結果、光学センサ10における投光器22の性能上(即ち、仕様上)での発光上限量Lmを調整発光量Liは超過した暗環境エリアαdの存在する場合にS2105において強度画像取得部2110は、CL=Lr/(Lm+Lc)にて表される補正係数CLを、強度画像IIにおける当該暗環境エリアαdからの受光強度に乗算することで、補正された強度画像IIを取得する。尚、検出エリアAL全域に対して発光量Liが発光上限量Lm以下に調整された場合のS2105において強度画像取得部2110は、こうした補正なしに強度画像IIを取得する。
【0072】
このように第二実施形態によると、距離画像ID以上の解像度設定と発光量Liの調整とでは、強度画像IIの取得における環境光量Lcの不足が光学センサ10の性能限界に起因して補完しきれない状況が、懸念される。しかし、こうした懸念状況として、暗環境エリアαdに対する調整発光量Liが光学センサ10の発光上限量Lmを超過することになっても、第二実施形態により取得の強度画像IIにおいて暗環境エリアαdからの受光強度は、当該発光上限量Lmに基づき補正され得る。故に、強度画像IIにおける受光強度不足を画像データ上で補償して、高い物標分解能の確保に貢献することが可能となる。
【0073】
(第三実施形態)
図21,22に示すように第三実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0074】
第三実施形態の制御フローにおいてS104に続くS3104では、S104の発光量調整部130により調整された発光量Liを、解像度設定部3120が取得する。その結果、光学センサ10における投光器22の性能上(即ち、仕様上)での発光上限量Lmを調整発光量Liが超過した暗環境エリアαdの存在する場合には、制御フローがS3104から、S103に代わるS3103へと戻る。こうして戻った場合のS3103において解像度設定部3120は、発光上限量Lm超過に発光量Liが調整された暗環境エリアαdに対して、強度画像IIにおける縦方向及び横方向での各サイズSIを、Lm+Lc=Lr及びLr∝SIの関係式に従って補正することで、強度画像IIの解像度を再設定する。これにより、強度画像IIの解像度を再設定したS3103に続くS104では、発光量Liが発光上限量Lmに調整される。尚、検出エリアAL全域に対して発光量Liが発光上限量Lm以下に調整された場合のS104からは、制御フローがS105へとそのまま進むこととなる。
【0075】
このような第三実施形態によると、距離画像ID以上の解像度設定と発光量Liの調整とでは、強度画像IIの取得における環境光量Lcの不足が光学センサ10の性能限界に起因して補完しきれない状況が、懸念される。しかし、こうした懸念状況として、暗環境エリアαdに対する調整発光量Liが光学センサ10の発光上限量Lmを超過することになっても、第三実施形態による強度画像IIの取得前に暗環境エリアαdに対しての解像度は、当該発光上限量Lmに基づき再設定され得る。これによれば、強度画像IIにおける受光強度不足を抑えて、高い物標分解能の確保に貢献することが可能となる。
【0076】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0077】
変形例においてセンサ制御装置1を構成する専用コンピュータは、デジタル回路、及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして含んでいてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
【0078】
変形例の強度画像取得期間TIにおいて照明光を投射する投光器は、距離画像取得期間TDにおいて照明光を投射する投光器22とは、別に設けられていてもよい。変形例の各検出フレームFSにおいて、距離画像取得期間TDよりも後に強度画像取得期間TIが設定されてもよく、それに応じてS106の後にS105が実行されてもよい。変形例において、物標観測部140及びS107は省かれてもよい。
【0079】
変化例による暗環境エリアαdに対しての発光量Liの調整では、まず、発光パワーLpが固定される前提下、Li+Lc≧Lrを満たす発光量Liと、デフォルトの発光時間間隔tにて当該発光量Liを与える発光回数Lnとが、演算されてもよい。その結果、発光回数Ln及び発光時間間隔tに基づく発光期間TLが強度画像取得期間TI以下(即ち、TL≦TI)となる場合には、発光回数Ln及び発光時間間隔tが確定されるとよい。一方で、発光期間TLが強度画像取得期間TI超過(即ち、TL>TI)となる場合には、発光時間間隔tが所定量デクリメント(即ち、減少)されることで、Li+Lc≧Lr且つTL≦TIが満たされるまで、発光量Li及び発光回数Lnの再演算が繰り返されるとよい。
【0080】
変化例による暗環境エリアαdに対しての発光量Liの調整では、まず、Li+Lc≧Lrを満たす発光量Liと、デフォルトの発光パワーLp及びデフォルトの発光時間間隔tで当該発光量Liを与える発光回数Lnとが、演算されてもよい。その結果、発光回数Ln及び発光時間間隔tに基づく発光期間TLが強度画像取得期間TI以下(即ち、TL≦TI)となる場合には、発光回数Ln、発光パワーLp及び発光時間間隔tが確定されるとよい。一方で、発光回数Ln及び発光時間間隔tに基づく発光期間TLが強度画像取得期間TI超過(即ち、TL>TI)となる場合には、発光パワーLpの所定量インクリメントと発光時間間隔tの所定量デクリメントとのうち少なくとも一方により、Li+Lc≧Lr且つTL≦TIが満たされるまで、発光量Li及び発光回数Lnの再演算が繰り返されるとよい。
【0081】
変化例の解像度設定部120,3120及びS101において環境光量Lcは、例えば照明光の非発光時における受光強度等に基づき、直接的に取得されてもよい。変化例の解像度設定部120,3120及びS103,S3103において、暗環境エリアαdに対する強度画像IIの解像度は、明環境エリアαbに対する場合の解像度以上に設定されてもよい。変形例の解像度設定部120,3120及びS102においては、検出エリアAL全域を単一の区分エリアαとして、明環境エリアαb及び暗環境エリアαdの識別が実行されてもよい。
【0082】
変化例では、強度画像IIが物標の検出以外の目的、例えば暗環境エリアαdにおける物標の分布、及び物標のうち反射強度が顕著に高い強反射物の存在等のうち、少なくとも一種類を事前把握する目的から、取得されてもよい。そこで変形例の解像度設定部120,3120及びS103,3103において、物標検出の目的に利用されるタイミングでの強度画像IIの解像度は上述の各実施形態に準じて距離画像IDの解像度以上に設定される一方、物標検出以外の目的に利用される強度画像IIの解像度は距離画像IDの解像度未満に設定されてもよい。
【0083】
(付言)
本明細書には、以下に列挙する複数の技術的思想と、それらの複数の組み合わせが開示されている。
【0084】
(技術的思想1)
プロセッサ(1b)を有し、車両(5)の外界に設定される検出エリア(AL)へ照明光を投射し、検出エリアからの反射光を検出する光学センサ(10)を、制御するセンサ制御装置(1)であって、
プロセッサは、
光学センサにより検出された反射光に基づく物理量として、検出エリアに存在する物標までの離間距離を表す距離画像(ID)を、取得することと、
光学センサにより検出された反射光に基づく物理量として、検出エリアからの受光強度を表す強度画像(II)を、取得することと、
検出エリアのうち、環境光量(Lc)が暗環境範囲(Rd)内となる暗環境エリア(αd)に対して、強度画像の解像度を距離画像の解像度以上に設定することと、
暗環境エリアに対する照明光の発光量(Li)を、暗環境範囲内の環境光量及び強度画像の解像度に応じて調整することとを、
実行するように構成されるセンサ制御装置。
【0085】
(技術的思想2)
暗環境エリアに対する発光量を調整することは、
暗環境範囲内での環境光量の不足を補完するように、暗環境エリアに対する発光量を調整することを、含む技術的思想1に記載のセンサ制御装置。
【0086】
(技術的思想3)
暗環境エリアに対する発光量を調整することは、
受光強度が飽和強度以下となるように、暗環境エリアに対する発光量を調整することを、含む技術的思想2に記載のセンサ制御装置。
【0087】
(技術的思想4)
暗環境エリアに対する発光量を調整することは、
強度画像を取得する今回フレームでの、暗環境エリアに対する照明光の発光回数を調整することを、含む技術的思想1~3のいずれか一項に記載のセンサ制御装置。
【0088】
(技術的思想5)
暗環境エリアに対する発光量を調整することは、
強度画像を取得する今回フレームでの、暗環境エリアに対する照明光の発光パワーを調整することを、含む技術的思想1~4のいずれか一項に記載のセンサ制御装置。
【0089】
(技術的思想6)
検出エリアのうち、環境光量が明環境範囲(Rb)内となる明環境エリア(αb)に対して、強度画像の解像度を距離画像の解像度以上に設定することと、
明環境エリアに対する照明光の発光量を、零に調整することとを、
さらに実行するように構成される技術的思想1~5のいずれか一項に記載のセンサ制御装置。
【0090】
(技術的思想7)
強度画像の解像度を設定することは、
暗環境エリアに対して、強度画像の解像度を距離画像の解像度以上、且つ明環境エリアに対する場合の解像度以下に設定することを含む技術的思想6に記載のセンサ制御装置。
【0091】
(技術的思想8)
強度画像の解像度を設定することは、
暗環境エリアに対して、強度画像の解像度を距離画像の解像度と等しく設定することを、含む技術的思想1~7のいずれか一項に記載のセンサ制御装置。
【0092】
(技術的思想9)
強度画像の解像度を設定することは、
強度画像を取得した前回フレームでの受光強度及び発光量に基づき、強度画像を取得する今回フレームでの暗環境範囲内の環境光量を予測することを、含む技術的思想1~8のいずれか一項に記載のセンサ制御装置。
【0093】
(技術的思想10)
強度画像に基づき観測される物標までの、離間距離を距離画像から抽出することを、
さらに実行するように構成される技術的思想1~9のいずれか一項に記載のセンサ制御装置。
【0094】
(技術的思想11)
強度画像を取得することは、
暗環境エリアに対して調整された発光量が光学センサの発光上限量(Lm)を超過する場合に、当該発光上限量に基づき強度画像の受光強度を補正することを、含む技術的思想1~10のいずれか一項に記載のセンサ制御装置。
【0095】
(技術的思想12)
強度画像の解像度を設定することは、
暗環境エリアに対して調整された発光量が光学センサの発光上限量(Lm)を超過する場合に、当該発光上限量に基づき強度画像の解像度を再設定することを、含む技術的思想1~11のいずれか一項に記載のセンサ制御装置。
【0096】
(技術的思想13)
車両(5)の外界に設定される検出エリア(AL)へ照明光を投射し、検出エリアからの反射光を検出する光学センサ(10)を、制御するためにプロセッサ(1b)により実行されるセンサ制御方法であって、
光学センサにより検出された反射光に基づく物理量として、検出エリアに存在する物標までの離間距離を表す距離画像(ID)を、取得することと、
光学センサにより検出された反射光に基づく物理量として、検出エリアからの受光強度を表す強度画像(II)を、取得することと、
検出エリアのうち、環境光量(Lc)が暗環境範囲(Rd)内となる暗環境エリア(αd)に対して、強度画像の解像度を距離画像の解像度以上に設定することと、
暗環境エリアに対する照明光の発光量(Li)を、暗環境範囲内の環境光量及び強度画像の解像度に応じて調整することとを、
含むセンサ制御方法。
【0097】
(技術的思想14)
記憶媒体(1a)に記憶され、車両(5)の外界に設定される検出エリア(AL)へ照明光を投射し、検出エリアからの反射光を検出する光学センサ(10)を、制御するためにプロセッサ(1b)に実行させる命令を含むセンサ制御プログラムであって、
命令は、
光学センサにより検出された反射光に基づく物理量として、検出エリアに存在する物標までの離間距離を表す距離画像(ID)を、取得させることと、
光学センサにより検出された反射光に基づく物理量として、検出エリアからの受光強度を表す強度画像(II)を、取得させることと、
検出エリアのうち、環境光量(Lc)が暗環境範囲(Rd)内となる暗環境エリア(αd)に対して、強度画像の解像度を距離画像の解像度以上に設定させることと、
暗環境エリアに対する照明光の発光量(Li)を、暗環境範囲内の環境光量及び強度画像の解像度に応じて調整させることとを、
を含むセンサ制御プログラム。
【符号の説明】
【0098】
1:センサ制御装置、1a:メモリ、1b:プロセッサ、5:車両、10:光学センサ、AL:検出エリア、ID:距離画像、II:強度画像、Lc:環境光量、Li:発光量、Lm:発光上限量、Rb:明環境範囲、Rd:暗環境範囲、αb:明環境エリア、αd:暗環境エリア