(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】移動体の制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20240925BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20240925BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240925BHJP
【FI】
G08G1/09 V
B60W30/10
G05D1/43
G08G1/09 F
(21)【出願番号】P 2022080430
(22)【出願日】2022-05-16
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦野 博充
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 翔
(72)【発明者】
【氏名】原田 将弘
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-033612(JP,A)
【文献】国際公開第2014/013985(WO,A1)
【文献】特開2021-179688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
B60W 30/10
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローカル操作又はリモート装置によるリモート操作に基づいて移動体を制御する移動体の制御装置であって、
1又は複数のプロセッサと、
前記リモート装置から受信したリモート操作情報と、前記リモート操作情報が前記リモート装置から送信された送信時刻情報と、前記リモート操作情報を前記移動体が受信した受信時刻情報と、前記移動体による外部認識情報と、が格納された記憶装置と、
を備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記リモート操作情報の受信中、前記送信時刻情報、前記受信時刻情報及び前記外部認識情報に基づいて、前記リモート操作情報に基づいた前記移動体の制御を実行するか否かを判定する判定処理を行い、
前記判定処理では、
前記送信時刻情報、前記受信時刻情報及び前記外部認識情報に基づいて、前記リモート操作情報が前記リモート装置から送信された送信時刻から当該リモート操作情報を前記移動体が受信する受信時刻までの
時間を均等分割することで得られた刻み時間帯における外部状況の変化度合いが
時系列順に評価され、
前記変化度合いが許容範囲内にあると評価された場合、前記リモート操作情報に基づいた前記移動体の制御の実行が許可され、そうでないと評価された場合、前記リモート操作情報に基づいた前記移動体の制御の実行が禁止される
ことを特徴とする移動体の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体の制御装置であって、
前記判定処理では、更に、
前記送信時刻から前記受信時刻までの経過時間が計算され、
前記経過時間が所定時間未満の場合、前記変化度合いの評価が行われ、前記経過時間が前記所定時間以上の場合、前記リモート操作情報に基づいた前記移動体の制御の実行が禁止される
ことを特徴とする移動体の制御装置。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の移動体の制御装置であって、
前記外部認識情報は、前記移動体の周囲の物体の認識情報を含み、
前記物体の認識情報は、前記移動体から前記物体までの距離の情報、前記移動体に対する前記物体の相対位置の情報、前記移動体に対する前記物体の相対速度の情報、及び前記物体の総数の情報の少なくとも一つの情報を含み、
前記物体の認識情報が前記距離の情報の場合、前記変化度合いは前記
刻み時間帯の開始時刻と終了時刻における距離の差に基づいて評価され、
前記物体の認識情報が前記相対位置の情報の場合、前記変化度合いは前記開始時刻の相対位置と終了時刻におけるそれとの一致の度合いに基づいて評価され、
前記物体の認識情報が前記相対速度の情報の場合、前記変化度合いは前記開始時刻の相対速度と終了時刻における相対速度の差に基づいて評価され、
前記物体の認識情報が前記総数の情報の場合、前記開始時刻の総数と終了時刻におけるそれとの一致の度合いに基づいて評価される
ことを特徴とする移動体の制御装置。
【請求項4】
請求項
1又は2に記載の移動体の制御装置であって、
前記外部認識情報は、前記移動体の周囲の物体の認識情報を含み、
前記記憶装置には、前記リモート操作における注視対象物体の特定情報が更に格納され、
前記外部状況の変化度合いの評価が、前記送信時刻情報、前記受信時刻情報及び前記注視対象物体の認識情報に基づいて行われる
ことを特徴とする移動体の制御装置。
【請求項5】
請求項
1又は2に記載の移動体の制御装置であって、
前記ローカル操作は、基本操作と、前記基本操作と前記リモート操作との間の遷移を行う遷移操作と、を含む
ことを特徴とする移動体の制御装置。
【請求項6】
ローカル操作又はリモート装置によるリモート操作に基づいて移動体を制御する移動体の制御方法であって、
前記リモート装置から受信したリモート操作情報と、前記リモート操作情報が前記リモート装置から送信された送信時刻情報と、前記リモート操作情報を前記移動体が受信した受信時刻情報と、前記移動体による外部認識情報と、を取得するステップと、
前記リモート操作情報の受信中、前記送信時刻情報、前記受信時刻情報及び前記外部認識情報に基づいて、前記リモート操作情報に基づいた前記移動体の制御を実行するか否かを判定する判定処理を行うステップと、
を含み、
前記判定処理を行うステップは、
前記送信時刻情報、前記受信時刻情報及び前記外部認識情報に基づいて、前記リモート操作情報が前記リモート装置から送信された送信時刻から当該リモート操作情報を前記移動体が受信する受信時刻までの
時間を均等分割することで得られた刻み時間帯における外部状況の変化度合いを
時系列順に評価するステップと、
前記変化度合いが許容範囲内にあると評価された場合、前記リモート操作情報に基づいた前記移動体の制御の実行を許可し、そうでないと評価された場合、前記リモート操作情報に基づいた前記移動体の制御の実行を禁止するステップと、
を含むことを特徴とする移動体の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ローカル操作又はリモート操作に基づいて移動体を制御する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、自動運転車両から遠隔指示装置に対する遠隔指示要求を送信し、遠隔指示装置から送信された遠隔指示に基づいて自動運転車両の走行を制御する技術が開示されている。この技術では、遠隔指示装置と自動運転車両との間において通信遅延が生じているか否かを判定する。通信遅延が生じていると判定された場合、遠隔指示要求に応じて送信された遠隔指示を拒絶する。これにより、自動運転車両の走行を適切に制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠隔指示装置が自動運転車両に遠隔指示を送信した時刻から、自動運転車両がこの遠隔指示を受信した時刻までの自動運転車両の周辺状況の変化について考える。このとき、特許文献1の技術においては、周辺状況の変化が小さいときであっても、通信遅延が生じていると判定された場合は、遠隔指示が拒絶されてしまう。そうすると、遠隔指示に従った自動運転車両の制御が断続的となることで自動運転車両の乗り心地が悪化する可能性がある。従って、通信遅延が生じた場合であっても遠隔指示等のリモート操作情報に基づいた自動運転車両の制御を継続するための技術改良が望まれる。
【0005】
本開示の1つの目的は、通信遅延が生じた場合であってもリモート操作情報に基づいた移動体の制御を継続して実行することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点は、ローカル操作又はリモート装置によるリモート操作に基づいて移動体を制御する移動体の制御装置であり、次の特徴を有する。
前記制御装置は、
1又は複数のプロセッサと、
前記リモート装置から受信したリモート操作情報と、前記リモート操作情報が前記リモート装置から送信された送信時刻情報と、前記リモート操作情報を前記移動体が受信した受信時刻情報と、前記移動体による外部認識情報と、が格納された記憶装置と、
を備える。
前記1又は複数のプロセッサは、
前記リモート操作情報の受信中、前記送信時刻情報、前記受信時刻情報及び前記外部認識情報に基づいて、前記リモート操作情報に基づいた前記移動体の制御を実行するか否かを判定する判定処理を行う。
前記判定処理では、
前記送信時刻情報、前記受信時刻情報及び前記外部認識情報に基づいて、前記リモート操作情報が前記リモート装置から送信された送信時刻から当該リモート操作情報を前記移動体が受信する受信時刻までの時間を均等分割することで得られた刻み時間帯における外部状況の変化度合いが時系列順に評価され、
前記変化度合いが許容範囲内にあると評価された場合、前記リモート操作情報に基づいた前記移動体の制御の実行が許可され、そうでないと評価された場合、前記リモート操作情報に基づいた前記移動体の制御の実行が禁止される。
【0007】
第2の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記判定処理では、更に、
前記送信時刻から前記受信時刻までの経過時間が計算され、
前記経過時間が所定時間未満の場合、前記変化度合いの評価が行われ、前記経過時間が前記所定時間以上の場合、前記リモート操作情報に基づいた前記移動体の制御の実行が禁止される。
【0009】
第3の観点は、第1又は第2の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記外部認識情報は、前記移動体の周囲の物体の認識情報を含む。
前記物体の認識情報は、前記移動体から前記物体までの距離の情報、前記移動体に対する前記物体の相対位置の情報、前記移動体に対する前記物体の相対速度の情報、及び前記物体の総数の情報の少なくとも一つの情報を含む。
前記判定処理では、
前記物体の認識情報が前記距離の情報の場合、前記変化度合いは前記刻み時間帯の開始時刻と終了時刻における距離の差に基づいて評価され、
前記物体の認識情報が前記相対位置の情報の場合、前記変化度合いは前記開始時刻の相対位置と終了時刻におけるそれとの一致の度合いに基づいて評価され、
前記物体の認識情報が前記相対速度の情報の場合、前記変化度合いは前記開始時刻の相対速度と終了時刻における相対速度の差に基づいて評価され、
前記物体の認識情報が前記総数の情報の場合、前記開始時刻の総数と終了時刻におけるそれとの一致の度合いに基づいて評価される。
【0010】
第4の観点は、第1又は第2の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記外部認識情報は、前記移動体の周囲の物体の認識情報を含む。
前記記憶装置には、前記リモート操作における注視対象物体の特定情報が更に格納される。
前記外部状況の変化度合いの評価は、前記送信時刻情報、前記受信時刻情報及び前記注視対象物体の認識情報に基づいて行われる。
【0011】
第5の観点は、第1又は第2の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記ローカル操作は、基本操作と、前記基本操作と前記リモート操作との間の遷移を行う遷移操作と、を含む。
【0012】
第6の観点は、ローカル操作又はリモート装置によるリモート操作に基づいて移動体を制御する移動体の制御方法であり、次の特徴を有する。
前記制御方法は、
前記リモート装置から受信したリモート操作情報と、前記リモート操作情報が前記リモート装置から送信された送信時刻情報と、前記リモート操作情報を前記移動体が受信した受信時刻情報と、前記移動体による外部認識情報と、を取得するステップと、
前記リモート操作情報の受信中、前記送信時刻情報、前記受信時刻情報及び前記外部認識情報に基づいて、前記リモート操作情報に基づいた前記移動体の制御を実行するか否かを判定する判定処理を行うステップと、
を含む。
前記判定処理を行うステップは、
前記送信時刻情報、前記受信時刻情報及び前記外部認識情報に基づいて、前記リモート操作情報が前記リモート装置から送信された送信時刻から当該リモート操作情報を前記移動体が受信する受信時刻までの時間を均等分割することで得られた刻み時間帯における外部状況の変化度合いを時系列順に評価するステップと、
前記変化度合いが許容範囲内にあると評価された場合、前記リモート操作情報に基づいた前記移動体の制御の実行を許可し、そうでないと評価された場合、前記リモート操作情報に基づいた前記移動体の制御の実行を禁止するステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0013】
第1の観点によれば、リモート操作情報の受信中、判定処理が行われる。判定処理では、送信時刻情報、受信時刻情報及び外部認識情報に基づいて、リモート操作情報がリモート装置から送信された送信時刻から当該リモート操作情報を移動体が受信する受信時刻までの時間を均等分割することで得られた刻み時間帯における外部状況の変化度合いが時系列順に評価される。また、変化度合いが許容範囲内にあると評価された場合、リモート操作情報に基づいた移動体の制御の実行が許可され、そうでないと評価された場合、リモート操作情報に基づいた移動体の制御の実行が禁止される。つまり、第1の観点によれば、外部状況の変化度合いの評価が行われ、肯定的な評価結果が得られた場合にはリモート操作情報に基づいて移動体の制御が実行される。従って、通信遅延が生じた場合であってもリモート操作情報に基づいた移動体の制御を継続して実行することが可能となる。更に、リモート操作情報が受信されている間、刻み時間帯における外部状況の変化度合いが評価される。従って、送信時刻と受信時刻との間の一部区間(ある刻み時間帯)における外部状況の変化度合いが許容範囲外となる場合であっても、適切に判定処理を行うことができる。
【0014】
送信時刻から受信時刻までの経過時間が想定よりも長い場合は、受信したリモート操作情報が古い情報であることを意味する。そのため、このような古い情報を用いて移動体の制御を行うことは適切でない。この点、第2の観点によれば、経過時間が所定時間以上の場合にリモート操作情報に基づいた移動体の実行が禁止され、経過時間が所定時間未満の場合に外部状況の変化度合いの評価が行われる。従って、経過時間が適切である場合において、リモート操作情報に基づいて移動体の制御を実行することが可能となる。
【0016】
第3の観点によれば、移動体から移動体の周囲の物体までの距離の情報、当該移動体に対する当該物体の相対位置の情報、当該移動体に対する当該物体の相対速度の情報、及び当該物体の総数の情報の少なくとも一つの情報に基づいて、外部状況の変化度合いの評価を行うことが可能となる。
【0017】
第4の観点によれば、判定処理において、注視対象物体の認識情報に絞って外部状況の変化度合いの評価が行われる。従って、判定処理の負荷を軽減することができる。
【0018】
第5の観点によれば、ローカル操作には、基本操作と、基本操作とリモート操作との間の遷移を行う遷移操作と、が含まれる。これにより、ローカル操作とリモート操作の切り替えが行われる場合、ローカル操作とリモート操作との間には、遷移操作が設定される。従って、ローカル操作からリモート操作への切り替え、又はリモート操作からローカル操作への切り替えが急に行われないようにすることができ、移動体の走行安全性の確保が維持される。
【0019】
第6の観点によれば、第1の観点と同じ効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】リモート装置と制御装置との間の通信時間を説明するための概念図である。
【
図3】移動体の外部状況の変化度合いを説明するための概念図である。
【
図4】実施の形態1に係る制御装置の判定処理の結果例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態1に係る制御装置の情報処理装置の処理例を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態1の変形例に係る制御装置の判定処理の評価例を示す図である。
【
図8】実施の形態1の変形例に係る制御装置の情報処理装置の処理例をフローチャートである。
【
図9】実施の形態2に係る制御装置の情報処理装置の処理例を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態3に係る制御装置の判定処理の評価例を示す図である。
【
図11】実施の形態4に係る制御装置の判定処理の結果に基づいた操作情報の切り替え例を示した図である。
【
図12】実施の形態4に係る制御装置の判定処理の結果に基づいた操作情報の切り替え例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態に係る移動体の制御装置及び制御方法について説明する。なお、実施形態に係る移動体の制御方法は、実施形態に係る移動体の制御装置のコンピュータ処理により実現される。
【0022】
1.実施の形態1
1―1.概要
1-1-1.リモート操作システム
図1は、リモート操作システムの概略図である。
図1に示されるリモート操作システム1は、移動体10、リモート装置20、及び管理装置30を含んでいる。実施形態に係る移動体の制御装置(以下、単に「制御装置」とも称す。)100は、移動体10に搭載されており、リモート操作システム1の一部を構成する。
【0023】
移動体10としては、車両、ロボット、等が例示される。また、ロボットとしては、物流ロボット、作業ロボット、等が例示される。制御装置100は、走行アクチュエータを有している。走行アクチュエータの制御は、例えば、ローカル操作情報に基づいて行われる。ローカル操作情報は、制御装置100が自律的に生成される。制御装置100が自律的に生成したローカル操作情報は、自動運転情報とも称される。ローカル操作情報は、移動体10のドライバの手動操作に基づいて制御装置100により生成されてもよい。
【0024】
走行アクチュエータの制御は、リモート操作情報OPEに基づいて行われてもよい。リモート操作情報OPEは、リモートオペレータOの操作入力に基づいてリモート装置20により生成される。リモート操作情報OPEには、リモート運転の情報、リモート指示の情報、及びリモート支援の情報の少なくとも一つが含まれる。
【0025】
リモート運転とは、リモートオペレータOが移動体10から離れた位置においてリモート装置20を操作することである。従って、リモート運転の情報としては、リモートオペレータOによる操作入力に応じて生成された操作量(例えば、操舵角、加速度、車速、等)の情報、等が例示される。尚、リモート運転は、制御装置100により移動体10が自動走行している場合だけでなく、移動体10のドライバの操作により移動体10が走行している場合にも行われる。
【0026】
リモート指示とは、リモートオペレータOがドライバの操作に基づいた移動体10の走行を指示すること、又は、移動体10の自動走行のための制御を行うことである。例えば、移動体10が路面状態の悪い追い越し車線に車線変更を行うとき、リモートオペレータOが移動体10に対して「道なりに直進しろ」等の車線変更の禁止指示を行う。また、例えば、逆光等により移動体10が信号機の灯火色を認識できないとき、リモートオペレータOが移動体10に対して「信号機の灯火色は青色だ」等の認識指示を行う。従って、リモート指示の情報としては、リモートオペレータOが移動体10に対する指示(例えば、「道なりに直進しろ」、「信号機の灯火色は青色だ」、等)の情報、等が例示される。
【0027】
リモート支援とは、ドライバの操作に基づいた移動体10の走行を支援し、又は、移動体10の自動走行のための制御を行うことである。例えば、信号の無い交差点を移動体10が右折する際、同時に右折する対向車両を認識した場合について考える。このとき、移動体10が自動走行の場合、移動体10は、自車両が先に右折するか、又は、対向車両が先に右折するかを自律的に判断できないことが想定される。このため、リモート支援では、リモートオペレータOによる発進許可や発進待ち等の通知、又はリモートオペレータOによるリモート運転の支援が行われる。従って、リモート支援の情報としては、リモートオペレータOによる通知(例えば、「発進許可」、「発進待ち」、等)の情報、操作量の情報、等が例示される。
【0028】
リモート装置20は、リモートオペレータOが移動体10をリモート操作する際に使用する端末装置である。リモート装置20をリモート操作HMI(Human Machine Interface)と言うこともできる。
【0029】
管理装置30は、リモート操作システム1の管理を行う。例えば、管理装置30は、移動体10に対するリモートオペレータOの割り当てを行う。典型的には、管理装置30は、クラウド上の管理サーバである。管理サーバは、分散処理を行う複数のサーバにより構成されていてもよい。移動体10、リモートオペレータO、及び管理装置30は、通信ネットワークを介して互いに通信可能である。
【0030】
1-1-2.リモート操作
移動体10には、カメラを含む各種センサが搭載されている。カメラは、移動体10の周囲の状況を撮像し、移動体10の周囲の状況を示す画像情報を取得する。移動体情報VCLは、各種センサにより得られる情報であり、カメラにより得られる画像情報を含む。制御装置100は、リモート装置20と通信を行い、移動体情報VCLをリモート装置20に送信する。制御装置100は、管理装置30を介して、移動体情報VCLをリモート装置20に送信してもよい。
【0031】
リモート装置20は、制御装置100から送信された移動体情報VCLを受け取る。リモート装置20は、移動体情報VCLをリモートオペレータOに提示する。具体的には、リモート装置20は、表示装置を備えており、画像情報等を表示装置に表示する。
【0032】
リモートオペレータOは、制御装置100又は管理装置30からリモート操作の要求があった場合、表示装置に表示された情報をみて、移動体10の周囲の状況を認識し、移動体10のリモート操作を行ってもよい。制御装置100からリモート操作が要求されるケースとしては、例えば、移動体10の自動走行が困難と判断されたとき、等が例示される。管理装置30からリモート操作が要求されるケースとしては、例えば、天候情報に基づいて予測された走行ルート上の路面状態を移動体10が自動走行した場合に走行安全性の問題が起こり得ると判断されたとき、等が例示される。
【0033】
リモートオペレータOは、制御装置100又は管理装置30からリモート操作の要求がない場合であっても、表示装置に表示された情報をみて、移動体10の周囲の状況を認識し、移動体10のリモート操作を行ってもよい。リモートオペレータOが移動体10のリモート操作を行うケースとしては、例えば、移動体10の走行状態(例えば、走行安定性、等)が所定の基準値未満であると評価されたとき、等が例示される。
【0034】
リモート装置20は、制御装置100と通信を行い、リモート操作情報OPEを制御装置100に送信する。リモート装置20は、管理装置30を介して、リモート操作情報OPEを制御装置100に送信してもよい。
【0035】
制御装置100は、リモート操作情報OPEを受信する。制御装置100は、リモート操作情報OPEに基づいて移動体10の走行アクチュエータを制御する。
【0036】
1-1-3.リモート操作情報に基づいた移動体制御の適否判定
図2は、リモート装置20と制御装置100との間の通信時間を説明するための概念図である。具体的には、リモート操作情報OPEがリモート装置20から送信された送信時刻を時刻T0とし、リモート操作情報OPEを制御装置100が受信した受信時刻を時刻T1とする。このとき、時刻T0と時刻T1との間には時間差がある。つまり、リモート装置20と制御装置100との間の通信には通信遅延が存在する。従って、リモート操作情報OPEに基づいた走行アクチュエータの制御には、このような通信遅延が考慮される必要がある。尚、送信時刻は、リモート装置20がリモート操作情報OPEを生成したときの時刻であってもよい。
【0037】
通信遅延が長い場合、リモート操作情報OPEに基づいて走行アクチュエータの制御を行うことは適切でないと考えられる。しかしながら、通信遅延が長い場合であっても、移動体10の周囲に移動体10の移動の障害となり得る物体(静止物体、及び移動物体を含む)が存在していないケースが想定される。このようなケースでは、リモート操作情報OPEに基づいた移動体10の制御を行っても問題とならず、寧ろ、この制御の実行を中断することが別の問題に繋がることも考えられる。そこで、本実施の形態では、リモート操作情報OPEに基づいた走行アクチュエータの制御が実行可能である否かを判定する「判定処理」が行われる。
【0038】
判定処理には、時刻T0から時刻T1までの時間帯における移動体10の外部状況の変化度合いを評価する処理が含まれる。外部状況は、移動体10による外部認識情報に基づいて把握される。外部認識情報には、移動体10に搭載されたセンサ(カメラ、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、等)で取得された情報に基づいて認識された移動体10の周囲の物体の認識情報が含まれる。物体の認識情報としては、移動体10から物体までの距離の情報、移動体10に対する物体の相対位置の情報、移動体10に対する物体の相対速度の情報、及び、移動体10の周囲に存在する物体の総数が例示される。また、外部認識情報は、カメラで取得されたカメラ画像情報における画素の色の認識情報を含んでいてもよいし、LiDARで取得された点群情報における点群の距離の認識情報を含んでいてもよい。
【0039】
図3は、移動体10の外部状況の変化度合いを説明するための概念図である。
図3には、時刻T0(送信時刻)から時刻T1(受信時刻)までの時間帯における移動体10の外部状況の変化度合いの例が示されている。具体的には、
図3の左図は、時刻T0から時刻T1までの時間帯における移動体10から物体までの距離の変化度合いを示している。
図3の右図は、時刻T0から時刻T1までの時間帯における移動体10から物体までの距離の変化度合いを示している。更に、
図3の右図は、時刻T0から時刻T1までの時間帯における移動体10の周囲に存在する物体の総数の変化度合いを示している。
図3の左図に示される例では、時刻T0から時刻T1までの時間帯における移動体10の外部状況の変化度合いが顕著に見られないことから、変化度合いが小さいと考えられる。一方、
図3の右図に示される例では、時刻T0から時刻T1までの時間帯における移動体10の外部状況の変化度合いが顕著に見られることから、変化度合いが大きいと考えられる。
【0040】
変化度合いが小さい場合、リモート操作情報OPEに基づいて走行アクチュエータの制御を行うことは適切であると考えられる。一方、変化度合いが大きい場合、リモート操作情報OPEに基づいて走行アクチュエータの制御を行うことは適切でないと考えられる。従って、判定処理では、時刻T0から時刻T1までの時間帯における外部状況の変化度合いが許容範囲内か否かの評価が行われる。判定処理では、移動体10から所定の距離未満に含まれる物体の認識情報に基づいて評価が行われてもよい。また、判定処理では、物体の認識情報に含まれる物体の距離の情報と、物体の相対速度の情報に基づいて計算された衝突余裕時間(TTC:Time To Collision)を用いた評価が行われてもよい。
【0041】
更に、判定処理では、過去の評価結果に基づいて評価が行われてもよい。例えば、外部状況の変化度合いが許容範囲外と評価された時間帯の間にリモート操作情報OPEがリモート装置20から送信された場合を考える。この場合、当該時間帯における外部状況の変化度合いが大きいことから、リモート操作情報OPEを移動体10が受信する受信時刻に関わらず、外部状況の変化度合いが許容範囲外に存在すると評価されてもよい。
【0042】
図4は、実施の形態1に係る制御装置100の判定処理の結果例を示す図である。上述した判定処理において、外部状況の変化度合いが許容範囲内であると評価された場合、リモート操作情報OPEに基づいた移動体10の制御の実行が許可される。リモート操作情報OPEに基づいた移動体10の制御の実行が許可された場合、例えば、
図4に示されるように、走行モードとしては、リモート操作情報OPEが選択される。従って、リモート操作情報OPEに基づいて移動体10の制御の実行が許可されていた場合はその状態が継続され、リモート操作情報OPEに基づいて移動体10の制御の実行が禁止されていた場合はその状態が変更される。
【0043】
一方、上述した判定処理において、外部状況の変化度合いが許容範囲外であると評価された場合、リモート操作情報OPEに基づいた移動体の制御の実行が禁止される。リモート操作情報OPEに基づいた移動体の制御の実行が禁止された場合、例えば、
図4に示されるように、走行モードとしては、ローカル操作情報が選択される。従って、ローカル操作情報に基づいて移動体10の制御の実行が許可されていた場合はその状態が継続され、リモート操作情報OPEに基づいて移動体10の制御の実行が許可されていた場合はその状態が変更される。
【0044】
以下、実施の形態1に係る制御装置100について更に詳しく説明する。
【0045】
1-2.具体例
1-2-1.構成例
図5は、制御装置100の構成例を示すブロック図である。制御装置100は、通信装置60、センサ群70、走行アクチュエータ80、及び情報処理装置90を備えている。
【0046】
通信装置60は、移動体10の外部と通信を行う。例えば、通信装置60は、リモート装置20や管理装置30と通信を行う。
【0047】
センサ群70は、認識センサ、移動体状態センサ、位置センサ、等を含んでいる。認識センサは、移動体10の周辺の状況を認識(検出)する。認識センサとしては、カメラ、LiDAR、レーダ、等が例示される。移動体状態センサは、移動体10の状態を検出する。移動体状態センサは、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサ、等を含んでいる。位置センサは、移動体10の位置及び方位を検出する。例えば、位置センサは、GNSS(Global Navigation Satellite System)を含んでいる。
【0048】
走行アクチュエータ80は、操舵アクチュエータ81、駆動アクチュエータ82及び制動アクチュエータ83を含んでいる。操舵アクチュエータ81は、移動体10のタイヤを転舵する。操舵アクチュエータ81としては、EPS(Electric Power Steering)アクチュエータが例示される。駆動アクチュエータ82は、駆動力を発生させる。駆動アクチュエータ82としては、エンジンのスロットルバルブ、モータ等が例示される。制動アクチュエータ83は、制動力を発生させる。制動アクチュエータ83としては、モータ、油圧ブレーキ等が例示される。
【0049】
情報処理装置90は、移動体10を制御するコンピュータである。情報処理装置90は、1又は複数のプロセッサ91(以下、単にプロセッサ91と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置92(以下、単に記憶装置92と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ91は、各処理を実行する。例えば、プロセッサ91は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。記憶装置92は、プロセッサ91による処理に必要な各種情報を格納する。記憶装置92としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。情報処理装置90は、1又は複数のECU(Electronic Control Unit)を含んでいてもよい。
【0050】
移動体制御プログラムPROGは、プロセッサ91によって実行されるコンピュータプログラムである。プロセッサ91が移動体制御プログラムPROGを実行することにより、情報処理装置90の機能が実現される。移動体制御プログラムPROGは、記憶装置92に格納される。あるいは、移動体制御プログラムPROGは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録されてもよい。
【0051】
情報処理装置90は、センサ群70を用いて、移動体10の運転環境を示す運転環境情報ENVを取得する。運転環境情報ENVは、記憶装置92に格納される。
【0052】
運転環境情報ENVは、認識センサによる認識結果を示す外部認識情報を含む。例えば、外部認識情報は、カメラによって撮像される画像情報を含む。外部認識情報は、画像情報における画素の色の認識情報や、LiDARで取得された点群情報にける点群の距離の認識情報を含んでいてもよい。外部認識情報は、移動体10の周囲の物体(静止物体、及び移動体物体を含む)に関する物体の認識情報を含んでいてもよい。物体としては、白線、信号、標識、路側構造物、歩行者、他車両(先行車両、駐車車両、等)、等が例示される。物体の認識情報には、移動体10から物体までの距離の情報、移動体10に対する物体の相対位置の情報、移動体10に対する物体の相対速度の情報、移動体10の周囲に存在する物体の総数、等が含まれる。
【0053】
また、運転環境情報ENVは、移動体状態センサによって検出される移動体状態を示す移動体状態情報を含む。更に、運転環境情報ENVは、移動体10の位置及び方位を示す移動体位置情報を含む。移動体位置情報は、位置センサにより得られる。地図情報と外部認識情報を用いた自己位置推定処理(Localization)により、高精度な移動体位置情報が取得されてもよい。
【0054】
情報処理装置90は、移動体10の走行を制御する移動体走行制御を実行する。移動体走行制御は、操舵制御、駆動制御、及び制動制御を含む。制御装置100は、走行アクチュエータ80(操舵アクチュエータ81、駆動アクチュエータ82、及び制動アクチュエータ83)を制御することによって移動体走行制御を実行する。
【0055】
移動体走行制御は、移動体10の走行を制御するローカル操作及びリモート操作に適用される。ローカル操作には、手動操作、自動運転制御、等が含まれる。自動運転制御は、運転環境情報ENVに基づいて実行される。
【0056】
自動運転制御の一例は次の通りである。制御装置100は、運転環境情報ENVに基づいて、移動体10の走行プランを生成する。更に、制御装置100は、運転環境情報ENVに基づいて、移動体10が走行プランに従って走行するために必要な目標トラジェクトリを生成する。目標トラジェクトリは、目標位置及び目標速度を含んでいる。そして、制御装置100は、移動体10が目標トラジェクトリに追従するように移動体走行制御を行う。
【0057】
ローカル操作における移動体走行制御では、走行プランに対応する目標状態と、移動体10の現在の状態との間の偏差(例えば、位置偏差、速度偏差、ヨー角偏差、加速度偏差など)が計算される。ローカル操作における移動体走行制御では、また、この偏差が減少するように移動体10が有する走行アクチュエータ80の制御指令値(ローカル操作情報とも称す)が計算される。つまり、制御指令値は、移動体10の現在の状態を目標状態に制御するための指令値である。そして、制御指令値に基づいて走行アクチュエータ80が制御される。
【0058】
リモート操作における移動体走行制御では、各種情報に含まれるリモート操作の制御指令値(リモート操作情報OPEとも称す)に基づいて走行アクチュエータ80が制御される。
【0059】
1-2-2.処理例の詳細
図6は、情報処理装置90の処理例を示すフローチャートである。
図6に示されるルーチンは、所定の周期で繰り返し実行される。
【0060】
ステップS100において情報処理装置90は、記憶装置92に格納されている各種情報の取得を行う。その後、処理は、ステップS101に進む。各種情報としては、リモート操作情報OPEがリモート装置20から送信された送信時刻情報、リモート操作情報OPEを移動体10が受信した受信時刻情報、運転環境情報ENV、目標トラジェクトリを生成するための走行ルートの情報、等が例示される。運転環境情報ENVには、外部認識情報、移動体状態情報、及び移動体位置情報が含まれる。外部認識情報には、物体の認識情報、等が含まれる。物体の認識情報には、移動体に対する物体までの距離の情報、移動体に対する物体の相対位置の情報、移動体に対する物体の相対速度の情報、及び物体の総数の情報の少なくとも一つの情報が含まれる。
【0061】
ステップS101において、情報処理装置90は、リモート操作情報OPEの受信中において、送信時刻情報、受信時刻情報及び外部認識情報に基づいて、リモート操作情報OPEがリモート装置20から送信された送信時刻から当該リモート操作情報OPEを移動体10が受信する受信時刻までの時間帯における外部状況の変化度合いを評価する。その後、処理はステップS102に進む。
【0062】
ステップS102において、情報処理装置90は、外部状況の変化度合いが許容範囲内か否かの評価を行う。具体的な評価例としては、次の通り示される。物体の認識情報が距離の情報の場合、変化度合いは時間帯の開始時刻と終了時刻における距離の差に基づいて評価される。物体の認識情報が相対位置の情報の場合、変化度合いは開始時刻の相対位置と終了時刻におけるそれとの一致の度合いに基づいて評価される。物体の認識情報が相対速度の情報の場合、変化度合いは開始時刻の相対速度と終了時刻における相対速度の差に基づいて評価される。物体の認識情報が総数の情報の場合、開始時刻の総数と終了時刻におけるそれとの一致の度合いに基づいて評価される。
【0063】
変化度合いが許容範囲内であると判定された場合(ステップS102;Yes)、処理はステップS103に進む。それ以外の場合(ステップS102;No)、処理はステップS104に進む。
【0064】
ステップS103において、情報処理装置90は、リモート操作情報OPEに基づいた制御の実行を許可する。その後、処理はステップS105に進む。
【0065】
ステップS104において、情報処理装置90は、リモート操作情報OPEに基づいた制御の実行を禁止する。その後、処理はステップS106に進む。
【0066】
ステップS105において、情報処理装置90は、リモート操作情報OPEに基づいて走行アクチュエータ80の動作を制御する。
【0067】
ステップS106において、情報処理装置90は、ローカル操作情報に基づいて走行アクチュエータ80の動作を制御する。
【0068】
1-3.効果
実施の形態1に係る制御装置100では、リモート操作情報OPEの受信中、送信時刻情報、受信時刻情報及び外部認識情報に基づいて、リモート操作情報OPEに基づいた移動体の制御を実行するか否かを判定する判定処理が行われる。判定処理では、送信時刻情報、受信時刻情報及び外部認識情報に基づいて、送信時刻から受信時刻までの時間帯における外部状況の変化度合いが評価される。また、変化度合いが許容範囲内であると評価された場合、リモート操作情報OPEに基づいた移動体10の制御の実行が許可される。一方、変化度合いが許容範囲外にあると評価された場合、リモート操作情報OPEに基づいた移動体10の制御の実行が禁止される。これにより、リモートオペレータOによるリモート操作情報OPEが受信された場合、外部状況の変化度合いが評価される。外部状況の変化度合いが許容範囲内であると評価された場合、リモート操作情報OPEに基づいた移動体10の制御の実行が許可され、リモート操作情報OPEに基づいた走行アクチュエータ80の動作が制御される。従って、通信遅延が生じた場合であってもリモート操作情報OPEに基づいた移動体10の制御を継続して実行することが可能となる。
【0069】
1-4.変形例
上述した制御装置100では、判定処理において、送信時刻から受信時刻までの時間帯(以下、「第1区間」と称す。)に基づいて、外部状況の変化度合いが評価される。つまり、第1区間の間に挟まれた時刻における外部状況の変化度合いは評価されない。そこで、実施の形態1の変形例に係る制御装置100では、第1区間よりも短い時間帯を示す第2区間に基づいて、外部状況の変化度合いの評価が行われる。第2区間は、例えば、第1区間を均等分割することで得られた刻み時間帯である。つまり、第2区間は、任意の時間帯に変えることが可能な刻み時間帯であり、第2区間の集合が合計された時間帯が第1区間となる。尚、第1区間を均等分割することができないとき、第2区間の集合は、第2区間ごとに刻み時間帯が異なっていてもよい。
【0070】
図7は、変形例に係る制御装置100の評価例を示す図である。
図7の上段は、上述した制御装置100における外部状況の変化度合いの評価に用いられる時間帯(第1区間)を示している。
図7の中段及び下段は、変形例に係る制御装置100における外部状況の変化度合いの評価に用いられる時間帯(第2区間)を示している。第2区間の集合は、例えば、
図7に示されるように、時刻T0と時刻T01との間の第2区間、時刻T01と時刻T02との間の第2区間、時刻T02と時刻T03との間の第2区間、時刻T03と時刻T04との間の第2区間、で示される。
【0071】
変形例に係る制御装置100では、先頭の第2区間から時系列順に外部状況の変化度合いの評価が行われる。具体的には、
図7に示されるように、先頭の第2区間における物体情報の変化度合いが許容範囲内であるか否かの評価が行われ、変化度合いが許容範囲内であると評価された場合、リモート操作情報OPEに基づいた移動体10の制御の実行が許可される。その後、次の第2区間における外部状況の変化度合いが評価される。つまり、
図7に示される時刻T0から時刻T1までの第2区間の集合のうち、外部状況の変化度合いが許容範囲外であると評価される第2区間が見つかるまで、外部状況の変化度合いの評価が継続して行われる。最終的に、最後の第2区間における外部状況の変化度合いが許容範囲内であると評価された場合、時刻T0から時刻T1までの第2区間の集合(つまり、第1区間)における外部状況の変化度合いの評価が完了される。
【0072】
一方、変化度合いが許容範囲外であると評価された場合、リモート操作情報OPEに基づいた移動体の制御の実行が禁止され、次の第2区間における外部状況の変化度合いは評価されない。
【0073】
時刻T1以降、新たなリモート操作情報OPEを受信している場合、新たな送信時刻から新たな送信時刻までの新たな時間帯における外部状況の変化度合いの評価は、上述した評価と同様の評価が行われる。尚、新たな時間帯と、上述した第1区間が重なる場合、並列して評価が行われるような構成であってもよい。
【0074】
このように、変形例に係る制御装置100では、判定処理において、送信時刻から受信時刻までの時間を均等分割することで得られた刻み時間帯における外部状況の変化度合いが時系列順に評価される。これにより、リモート操作情報OPEの受信中、刻み時間帯における外部状況の変化度合いが評価される。従って、送信時刻と受信時刻との間の一部区間(ある刻み時間帯)における外部状況の変化度合いが許容範囲外となる場合であっても、適切に判定処理を行うことができる。
【0075】
図8は、変形例に係る制御装置100の情報処理装置90の処理例を示すフローチャートである。
図8に示されるルーチンは、所定の周期で繰り返し実行される。
【0076】
ステップS200において、情報処理装置90は、記憶装置92に格納されている各種情報の取得を行う。その後、処理は、ステップS201に進む。各種情報は、上述したステップS100と同じ内容のため、説明を省略する。
【0077】
ステップS201において、情報処理装置90は、リモート操作情報OPEの受信中において、送信時刻から受信時刻までの第1区間を均等分割した第2区間の集合のうち、先頭の第2区間を選択する。その後、処理はステップS202に進む。
【0078】
ステップS202において、情報処理装置90は、送信時刻情報、受信時刻情報及び外部認識情報に基づいて、選択した第2区間における外部状況の変化度合いを評価する。その後、処理はステップS203に進む。
【0079】
ステップS203において、情報処理装置90は、外部状況の変化度合いが許容範囲内か否かの判定を行う。具体的な評価例は、上述したステップS102と同じ内容のため、説明を省略する。
【0080】
外部状況の変化度合いが許容範囲内であると評価された場合(ステップS203;Yes)、処理はステップS204に進む。それ以外の場合(ステップS203;No)、処理はステップS207に進む。
【0081】
ステップS204において、情報処理装置90は、第2区間の集合のうち、全ての第2区間において変化度合いの評価が完了しているか否かの判定を行う。
【0082】
全ての第2区間において変化度合いの評価が完了していると判定された場合(ステップS204;Yes)、処理はステップS206に進む。それ以外の場合(ステップS204;No)、処理はステップS205に進む。
【0083】
ステップS205において、情報処理装置90は、変化度合いの評価に用いられていない先頭の第2区間を選択する。その後、処理はステップS202に進む。尚、ステップS206~S209においては、上述したステップS103~S106と同じ内容のため説明を省略する。
【0084】
2.実施の形態2
実施の形態1に係る制御装置100では、通信遅延が生じた場合であっても、外部状況の変化度合いが許容範囲内である場合、リモート操作情報OPEに基づいた移動体の制御が継続される。実施の形態2では、通信遅延が生じている時間について考える。通信遅延が生じている時間が想定よりも長い場合、リモート操作情報OPEに基づいた移動体の制御が継続されない方がよい。そこで、実施の形態2に係る制御装置100によれば、上述した通信遅延が所定の時間よりも長い場合、リモート操作情報OPEに基づいた移動体の制御が継続されないようにする。つまり、実施の形態2に係る制御装置100の「判定処理」には、通信遅延の時間を計算する処理と、計算された通信遅延の時間を評価する処理と、が含まれる。
【0085】
これにより、リモート操作情報OPEの受信中、送信時刻から受信時刻までの経過時間が想定よりも長い場合、外部状況の変化度合いの評価が行われない。従って、経過時間が想定よりも長い場合であっても、リモート操作情報に基づいた移動体の制御が継続されないようにすることが可能となる。
【0086】
図9は、実施の形態2に係る制御装置100の情報処理装置90の処理例を示すフローチャートである。
図9に示されるルーチンは、所定の周期で繰り返し実行される。
【0087】
ステップS300において、情報処理装置90は、記憶装置92に格納されている各種情報の取得を行う。その後、処理は、ステップS301に進む。各種情報は、上述したステップS100と同じ内容のため、説明を省略する。
【0088】
ステップS301において、情報処理装置90は、送信時刻情報、及び受信時刻情報に基づいて、送信時刻から受信時刻までの経過時間を計算する。その後、処理はステップS302に進む。
【0089】
ステップS302において、情報処理装置90は、経過時間が所定時間未満であるか否かの判定を行う。
【0090】
経過時間が所定時間未満であると判定された場合(ステップS302;Yes)、処理はステップS303に進む。それ以外の場合(ステップS302;No)、処理はステップS306に進む。尚、ステップS303~S308においては、上述したステップS101~S106と同じ内容のため説明を省略する。
【0091】
3.実施の形態3
実施の形態1に係る制御装置100では、判定処理において、注視対象物体に着目せずに外部状況の変化度合いの評価が行われる。実施の形態3に係る制御装置100によれば、判定処理において、注視対象物体に着目して外部状況の変化度合いの評価が行われる。注視対象物体とは、リモート操作を判断する要因となった物体のことである。
【0092】
実施の形態3に係る制御装置100の構成例について述べる。制御装置100に含まれる情報処理装置90における記憶装置92には、リモート操作における注視対象物体の特定情報が格納される。注視対象物体の特定情報には、例えば、注視対象物体が存在するエリアを示す注視対象物体エリアの情報、等が含まれる。注視対象物体エリアの情報としては、移動体10の左前方、右前方、前方(左前方及び右前方を含む)、左後方、右後方、及び後方(左後方及び右後方を含む)の少なくとも一つの方向の情報、等が例示される。具体的には、
図10に示されるように、車線変更時では、注視対象物体が存在するエリアとして移動体10の右後方の方向が示され、交差点進入時では注視対象物体が存在するエリアとして移動体10の前方の方向が示される。
【0093】
実施の形態1では、判定処理における外部状況の変化度合いの評価には、物体の認識情報が用いられる。実施の形態3によれば、判定処理における外部状況の変化度合いの評価には、物体の認識情報及び注視対象物体の特定情報に基づいて生成された注視対象物体の認識情報が用いられる。
【0094】
このように、実施の形態3に係る制御装置100によれば、判定処理において、注視対象物体の認識情報に絞って外部状況の変化度合いの評価が行われる。従って、判定処理の負荷を軽減することができる。
【0095】
4.実施の形態4
実施の形態1に係る制御装置100では、外部状況の変化度合いが許容範囲外であると評価された場合、ローカル操作情報に基づいて移動体10の制御が行われる。ここで、ローカル操作情報とリモート操作情報OPEとの切り替えについて考える。ローカル操作情報に基づいた移動体の制御からリモート操作情報OPEに基づいた移動体の制御に切り替えを行う際、ローカル操作情報からリモート操作情報OPEに急に切り替えが行われてしまう。リモート操作情報OPEに基づいた移動体の制御からローカル操作情報に基づいた移動体の制御に切り替えを行う際も同様に、リモート操作情報OPEからローカル操作情報に急に切り替えが行われてしまう。
【0096】
そこで、実施の形態4に係る制御装置100では、ローカル操作とリモート操作の切り替えが行われる際、ローカル操作の中に、ローカル操作とリモート操作との間の遷移を行う遷移操作が行われる。つまり、ローカル操作情報には、基本操作情報と、遷移操作情報とが含まれる。遷移操作情報としては、減速走行、退避走行、等の走行安全性に配慮した移動体10の制御を行うための操作情報が例示される。
【0097】
図11及び
図12は、実施の形態4に係る制御装置100の判定処理の結果に基づいた操作情報の切り替え例を示した図である。
図11の上段は、リモート操作情報OPEの受信中、全ての区間(区間とは、送信時刻から受信時刻までの時間帯のことである。)における外部状況の変化度合いが許容範囲内であると評価された場合の操作情報の切り替え例である。
図11の下段は、リモート操作情報OPEの受信中、全ての区間における外部状況の変化度合いが許容範囲外であると評価された場合の操作情報の切り替え例である。
【0098】
図11の上段に示される例では、制御装置100は、リモート操作情報OPEの受信前、移動体の制御に用いられる操作情報には、基本操作情報が設定される。その後、リモート操作情報OPEの受信が開始された場合、移動体の制御に用いられる操作情報には、基本操作情報から遷移操作情報に切り替えが行われ、遷移操作情報が設定される。最初の区間(例えば、
図11に示される時刻T0から時刻T1までの時間帯)における外部状況の変化度合いの評価が行われている間、移動体の制御に用いられる操作情報には、遷移操作情報が継続して設定される。
【0099】
その後、最初の区間における外部状況の変化度合いが許容範囲内であると評価された場合、移動体の制御に用いられる操作情報には、遷移操作情報からリモート操作情報OPEに切り替えが行われ、リモート操作情報OPEが設定される。それ以降の区間(例えば、
図11に示される時刻T2から時刻T3までの時間帯、及び時刻T4から時刻T5までの時間帯)において、外部状況の変化度合いが許容範囲内であると評価された場合、移動体の制御に用いられる操作情報には、リモート操作情報OPEが継続して設定される。
【0100】
一方、
図11の下段に示される例では、最初の区間(例えば、
図11に示される時刻T0から時刻T1までの時間帯)における外部状況の変化度合いが許容範囲外であると評価された場合、移動体の制御に用いられる操作情報には、遷移操作情報が継続して設定される。それ以降の区間においても、外部状況の変化度合いが許容範囲外であると評価された場合、移動体の制御に用いられる操作情報には、遷移操作情報が継続して設定される。
【0101】
図12の上段及び下段は、リモート操作情報OPEの受信中、全ての区間のうち、ある区間における外部状況の変化度合いが許容範囲内であると評価された場合と、別の区間における外部状況の変化度合いが許容範囲外であると評価された場合と、を含む操作情報の切り替え例を示している。
【0102】
図12の上段に示される例では、最初の区間(例えば、
図12に示される時刻T0から時刻T1までの時間帯)における外部状況の変化度合いが許容範囲外であると評価された場合、移動体の制御に用いられる操作情報には遷移操作情報が設定される。この状態において、次の区間(例えば、
図12に示される時刻T2から時刻T3までの区間)における外部状況の変化度合いが許容範囲内であると評価された場合、移動体の制御に用いられる操作情報には、遷移操作情報からリモート操作情報OPEに切り替えが行われ、リモート操作情報OPEが設定される。
【0103】
一方、
図12の下段に示される例では、最初の区間における外部状況の変化度合いが許容範囲内であると評価された場合、移動体の制御に用いられる操作情報にはリモート操作情報OPEが設定される。この状態において、次の区間における外部状況の変化度合いが許容範囲外であると評価された場合、移動体の制御に用いられる操作情報には、リモート操作情報OPEから遷移操作情報に切り替えが行われ、遷移操作情報が設定される。
【0104】
尚、
図11及び
図12に示されるように、リモート操作情報OPEの受信中から未受信に切り替わった後、移動体の制御に用いられる操作情報には、遷移操作情報が設定され、その後、基本操作情報にリセットされる。基本操作情報へのリセットは、自動でリセットされてもよいし、あるいは、移動体10のドライバからの許諾によってリセットされてもよい。更に、移動体の制御に用いられる操作情報が、遷移操作情報から他の操作情報に切り替わる際、又は他の操作情報から遷移操作情報に切り替わる際、その旨を移動体10の乗員に対して通知をおこなってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 リモート操作システム
10 移動体
20 リモート装置
30 管理装置
60 通信装置
70 センサ群
80 走行アクチュエータ
81 操舵アクチュエータ
82 駆動アクチュエータ
83 制動アクチュエータ
90 情報処理装置
91 プロセッサ
92 記憶装置
100 移動体の制御装置
OPE リモート操作情報
PROG 移動体制御プログラム
VCL 移動体情報
ENV 運転環境情報