(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】防犯システム、防犯方法、及び防犯プログラム
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/24 20060101AFI20240925BHJP
H05B 47/125 20200101ALI20240925BHJP
B60Q 5/00 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
B60Q1/24 A
H05B47/125
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 640Z
B60Q5/00 610Z
B60Q5/00 660Z
(21)【出願番号】P 2022103791
(22)【出願日】2022-06-28
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦野 博充
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0119005(US,A1)
【文献】特開2009-057014(JP,A)
【文献】国際公開第2021/250796(WO,A1)
【文献】特開2017-024647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/24
H05B 47/125
B60Q 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客を輸送する車両の降車客に対する防犯サービスを提供する防犯システムであって、
前記車両の周囲の環境状況の認識及び前記降車客を含む人物の認識を行う認識センサと、
照明装置と、
情報処理装置と、
を備え、
情報処理装置は、
前記認識センサの認識結果に基づいて、前記降車客に対する安全度合いが所定レベル以上か否かを評価することと、
前記安全度合いが前記所定レベル未満の場合、前記安全度合いに応じて設定された時間、前記車両を停車させたまま前記降車客の位置に前記照明装置から照明を照射する照明制御を実行することと、
所定の終了条件が満たされたことを受けて前記照明制御を終了することと、を実行するように構成されている
ことを特徴とする防犯システム。
【請求項2】
請求項1に記載の防犯システムであって、
前記認識センサは前記車両に搭載され、
前記照明装置は前記車両に搭載され、
前記情報処理装置は前記車両に搭載されている
ことを特徴とする防犯システム。
【請求項3】
請求項1に記載の防犯システムであって、
前記認識センサは、
前記車両に搭載された第1認識センサと、
前記車両と通信可能なインフラ装置が備える第2認識センサと、を含み、
前記情報処理装置は、
前記第1認識センサの第1認識結果、及び前記第2認識センサの第2認識結果の少なくとも一方に基づいて、前記安全度合いが前記所定レベル以上か否かを評価する、ように構成されている、
ことを特徴とする防犯システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の防犯システムであって、
前記所定の終了条件は、前記安全度合いが前記所定レベル以上となったこと、前記車両から前記降車客までの距離が所定の距離以上となったこと、前記認識センサにより前記降車客が認識されなくなったこと、及び、前記降車客が一定時間以上降車した場所に留まること、の少なくとも一つを含む
ことを特徴とする防犯システム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の防犯システムであって、
前記環境状況の認識は、明るさ度合いの情報を取得することと、繁華度合いの情報を取得することと、の少なくとも一つを含み、
前記人物の認識は、前記降車客に関する情報を取得することと、前記降車客の行動に関する情報を取得することと、前記降車客の周辺人物に関する情報を取得することと、前記周辺人物の行動に関する情報を取得することと、の少なくとも一つを含む
ことを特徴とする防犯システム。
【請求項6】
請求項5に記載の防犯システムであって、
前記情報処理装置は、前記明るさ度合いの情報と、前記繁華度合いの情報と、前記降車客に関する情報と、前記降車客の行動に関する情報と、前記降車客の周辺人物に関する情報と、前記周辺人物の行動に関する情報とのうち、少なくとも2つの組み合わせに基づいて、前記安全度合いを評価するように構成されている
ことを特徴とする防犯システム。
【請求項7】
乗客を輸送する車両の降車客に対する防犯サービスを提供する防犯方法であって、
前記車両の周囲の環境状況の認識及び前記降車客を含む人物の認識を行う認識センサの認識結果に基づいて、前記降車客に対する安全度合いが所定レベル以上か否かを評価することと、
前記安全度合いが前記所定レベル未満の場合、前記安全度合いに応じて設定された時間、前記車両を停車させたまま前記降車客の位置に照明装置から照明を照射する照明制御を実行することと、
所定の終了条件が満たされたことを受けて前記照明制御を終了することと、
を含むことを特徴とする防犯方法。
【請求項8】
乗客を輸送する車両の降車客に対する防犯サービスを提供する防犯プログラムであって、
前記車両の周囲の環境状況の認識及び前記降車客を含む人物の認識を行う認識センサの認識結果に基づいて、前記降車客に対する安全度合いが所定レベル以上か否かを評価することと、
前記安全度合いが前記所定レベル未満の場合、前記安全度合いに応じて設定された時間、前記車両を停車させたまま前記降車客の位置に照明装置から照明を照射する照明制御を実行することと、
所定の終了条件が満たされたことを受けて前記照明制御を終了することと、
をコンピュータに実行させるように構成されている、
ことを特徴とする防犯プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客を輸送する車両の降車客に対する防犯サービスを提供する防犯システム、防犯方法、及び防犯プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両に既設されている車両周辺に存在する人の位置を検知するセンサと車両周辺を照射する照明灯とを用いて、車両乗降時における車両周辺の視認性と防犯効果を向上させることができる車両照明装置が開示されている。この技術では、車両周辺に存在する人の位置が検出された場合、人の移動先位置に対応する照明が照射される。
【0003】
なお、本開示に関連する技術分野の技術水準を示す文献としては、特許文献1の他にも特許文献2及び特許文献3を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-057014号公報
【文献】特開2017-024647号公報
【文献】特開2017-068394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、MaaS(Mobility as a Service)車両のように不特定の乗客を輸送する車両では、降車客に対する防犯サービスの提供が望まれる。上記従来技術において人の移動先位置に照射される照明も一種の防犯サービスである。しかし、従来技術をMaaS車両のような乗客を輸送する車両に適用する場合、降車客に対する防犯サービスを適切に提供することができないおそれがある。なぜなら、MaaS車両のような乗員を輸送する車両は運行スケジュールに従って走行するため、降車客の位置に照明を照射している途中で防犯サービスの提供が切断されてしまうからである。
【0006】
本開示の1つの目的は、乗客を輸送する車両において、降車客に対する防犯サービスの提供を適切に行うことのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点は、乗客を輸送する車両の降車客に対する防犯サービスを提供する防犯システムであり、次の特徴を有する。
防犯システムは、車両の周囲の環境状況の認識及び降車客を含む人物の認識を行う認識センサと、照明装置と、情報処理装置と、を備える。
情報処理装置は、認識センサの認識結果に基づいて、降車客に対する安全度合いが所定レベル以上か否かを評価することと、安全度合いが所定レベル未満の場合、安全度合いに応じて設定された時間、車両を停車させたまま降車客の位置に照明装置から照明を照射する照明制御を実行することと、所定の終了条件が満たされたことを受けて照明制御を終了することと、を実行するように構成されている。
【0008】
第2の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
認識センサは車両に搭載され、照明装置は車両に搭載され、情報処理装置は車両に搭載されている。
【0009】
第3の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
認識センサは、車両に搭載された第1認識センサと、車両と通信可能なインフラ装置が備える第2認識センサと、を含む。
情報処理装置は、第1認識センサの第1認識結果、及び第2認識センサの第2認識結果の少なくとも一方に基づいて、安全度合いが所定レベル以上か否かを評価するように構成されている。
【0010】
第4の観点は、第1乃至第3の観点のいずれか一つの観点に加えて、次の特徴を更に有する。
所定の終了条件は、安全度合いが所定レベル以上となったこと、車両から降車客までの距離が所定の距離以上となったこと、認識センサにより降車客が認識されなくなったこと、及び、降車客が一定時間以上降車した場所に留まること、の少なくとも一つを含む。
【0011】
第5の観点は、第1乃至第3の観点のいずれか一つの観点に加えて、次の特徴を更に有する。
環境状況の認識は、明るさ度合いの情報を取得することと、繁華度合いの情報を取得することと、の少なくとも一つを含む。
人物の認識は、降車客に関する情報を取得することと、降車客の行動に関する情報を取得することと、降車客の周辺人物に関する情報を取得することと、周辺人物の行動に関する情報を取得することと、の少なくとも一つを含む。
【0012】
第6の観点は、第5の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
情報処理装置は、明るさ度合いの情報と、繁華度合いの情報と、降車客に関する情報と、降車客の行動に関する情報と、降車客の周辺人物に関する情報と、周辺人物の行動に関する情報とのうち、少なくとも2つの組み合わせに基づいて、安全度合いを評価するように構成されている。
【0013】
第7の観点は、乗客を輸送する車両の降車客に対する防犯サービスを提供する防犯方法であり、次の特徴を有する。
防犯方法は、車両の周囲の環境状況の認識及び降車客を含む人物の認識を行う認識センサの認識結果に基づいて、降車客に対する安全度合いが所定レベル以上か否かを評価することと、安全度合いが所定レベル未満の場合、安全度合いに応じて設定された時間、車両を停車させたまま降車客の位置に照明装置から照明を照射する照明制御を実行することと、所定の終了条件が満たされたことを受けて照明制御を終了することと、を含む。
【0014】
第8の観点は、乗客を輸送する車両の降車客に対する防犯サービスを提供する防犯プログラムであり、次の特徴を有する。
防犯プログラムは、車両の周囲の環境状況の認識及び降車客を含む人物の認識を行う認識センサの認識結果に基づいて、降車客に対する安全度合いが所定レベル以上か否かを評価することと、安全度合いが所定レベル未満の場合、安全度合いに応じて設定された時間、車両を停車させたまま降車客の位置に照明装置から照明を照射する照明制御を実行することと、所定の終了条件が満たされたことを受けて照明制御を終了することと、をコンピュータによって実行させるように構成されている。
【発明の効果】
【0015】
本開示の防犯システム、防犯方法、及び防犯プログラムによれば、降車客に対する安全度合いが評価され、安全度合いに応じて設定された時間、車両を停車させたまま降車客の位置に照明装置から照明を照射する照明制御が防犯サービスとして提供される。従って、乗客を輸送する車両において、降車客に対する防犯サービスの提供を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1に係る防犯システムにおける照明制御の実行例を示す説明図である。
【
図2】実施形態1に係る防犯システムにおける降車客に対する安全度合いの評価例を示す説明図である。
【
図3】実施形態1に係る防犯システムにおける照明制御の実行例を示す説明図である。
【
図4】実施形態1に係る防犯システムにおける照明制御の終了例を示す説明図である。
【
図5】実施形態1に係る防犯システムの構成例を示すブロック図である。
【
図6】実施形態1に係る防犯システムにおける情報処理装置の機能例を示すブロック図である。
【
図7】実施形態1に係る防犯システムにおける情報処理装置の処理例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態2に係る防犯システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態に係る防犯システム、防犯方法、及び防犯プログラムについて説明する。なお、実施形態に係る防犯方法及び防犯プログラムは、実施形態に係る防犯システムのコンピュータ処理により実現される。
【0018】
実施形態1
1.照明制御
1―1.概要
乗員の輸送を行う輸送サービスにドライバレス車両を使用することにより、車両操作を行うドライバの人件費を削減することができ、安価な輸送サービスの提供に繋がる。しかし、従来の輸送サービスを提供する車両のドライバが担ってきた役割には、車両操作だけではなく、乗客に対する乗車料金の徴収、乗車案内、等の車掌の役割も含まれる。このように従来の輸送サービスを提供する車両では、車両操作以外の車掌の役割を担うドライバが乗車していることにより、暗黙的に防犯効果が得られていたことが考えられる。
【0019】
一方で、ドライバレス車両では、車掌の役割を担うドライバが乗車していないことから、ドライバが乗車する車両と同様の防犯効果が得られないことが想定される。従って、ドライバレス車両を用いた安価な輸送サービスを乗客の安全及び安心を損なうことなく提供するためには、乗客に対する防犯サービスの提供が併せて必要であると考えられる。
【0020】
ここで、どのような防犯サービスの提供がドライバレス車両を使用した輸送サービスに相応しいかについて検討する。一定の防犯効果を得るためには、少なくとも、降車後の乗客(以降、「降車客」と称す)の位置に照明を照射することは必要と考えられる。降車客の位置に照明を照射し、降車客の周りを明るくすることで、降車客に不審者が近寄り難くすることができる。そして、車掌の役割を担うドライバが乗車していないドライバレス車両において防犯効果を高めるためには、しばらくの間、車両を停車させた状態にしておくことが大切であると考えられる。車両を停車させておくことは、降車客に安心感を与えることに加えて不審者に対する牽制にもなるからである。以上のことから、ドライバレス車両に適した防犯サービスとしては、車両を停車させたまま降車客の位置に照明装置から照明を照射することが相応しい。なお、照明装置としては、車両に搭載された照明装置、乗降場所等に設置されたインフラ装置が備える照明装置、等が例示される。
【0021】
次に、防犯サービスを提供する時間について考える。ドライバレス車両は運行スケジュールに従って走行を行うことから、防犯サービスを提供することが可能な時間は有限であることが示せる。更に、降車客を取り巻く状況はその時々によって変化することが想定される。従って、降車客を取り巻く状況に応じて防犯サービスを提供する時間が決定されるようにし、当該時間の中で車両を停車させたまま降車客の位置に照明装置から照明を照射する制御(以下、「照明制御」と称す)が行われるようにすることが望ましい。降車客を取り巻く状況としては、例えば、車両の周囲の明るさの状況、車両の周囲の人通りの状況、降車客の周辺人物に関する状況、等が挙げられる。
【0022】
本実施形態では、照明制御を行う時間は降車客に対する安全度合いに応じて設定される。安全度合いは降車客を取り巻く状況に基づいて評価される。安全度合いの評価の詳細については後述する。降車客に対する安全度合いに応じて照明制御の時間を設定することにより、ドライバレス車両による安価な輸送サービスを提供しながら、降車客にとって安全且つ安心な防犯サービスを提供することが可能となる。
【0023】
尚、降車客を取り巻く状況は、防犯サービスが行われている間、時々刻々と変化することが想定される。更に、降車客を取り巻く状況以外にも降車客の行動状況も変化することが考えれられる。これらの状況が変化することによって、降車客に対する防犯サービスの提供を途中から行わなくても良いケースが生じすることが想定される。この場合、降車客に対する防犯サービスの提供を途中で終了してもよい。防犯サービスの提供を終了する条件が満たされる場合、照明制御を終了する処理が行われる。防犯サービスの提供を行わなくても良いケースとしては、降車客に対する安全度合いが防犯サービスの提供が不要なレベルまで達したケース、車両から降車客までの距離が一定距離以上となったケース、降車客が建物や路地裏等の中に入り車両又はインフラ装置に備えるセンサ等により降車客が認識されなくなったケース、等が例示される。
【0024】
以下、上述の照明制御を実行するための防犯システム(実施形態1に係る防犯システム)について詳しく説明する。
【0025】
1-2.具体例
防犯システムの具体例について
図1、
図2、
図3、及び
図4を用いて説明する。
図1及び
図3は、防犯システムにおける照明制御の実行例を示す説明図である。
図2は、防犯システムにおける降車客に対する安全度合いの評価例を示す説明図である。
図4は、防犯システムにおける照明制御の終了例を示す説明図である。
【0026】
図1には、車両2から降車した降車客P1に対する照明制御の実行例が示されている。本実施形態に係る車両2は、運転者が乗車していないドライバレス車両である。ドライバレス車両は、自律的に走行する自動運転車両と、遠隔オペレータによって遠隔運転される遠隔運転車両を含む。ただし、自動運転車両には、遠隔オペレータによって遠隔監視される車両と、必要に応じて遠隔支援される車両が含まれる。なお、本開示が適用される車両はドライバレス車両だけでなく運転手が乗車する手動運転車両に適用することも可能である。車両2が乗降場所に停車した後、車両2に搭載されている認識センサ(以下、第1認識センサ10と称す)及び、乗降場所に設置されているインフラ装置3に備える認識センサ(以下、第2認識センサ50と称す)の少なくとも一方により、車両2から降車した1以上の降車客P1が検出される。また、第1認識センサ10及び第2認識センサ50の少なくとも一方により、降車客P1の周辺に存在する1以上の周辺人物P2が検出される。ただし、
図1では、説明を分かりやすくするため、降車客P1と周辺人物P2はともに1人であるとする。第1認識センサ10及び第2認識センサ50としては、カメラ、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。
【0027】
降車客P1の検出方法としては、降車客P1が車両2から降車するときの行動(例えば、乗車料金の支払い等)をした後、第1認識センサ10及び第2認識センサ50の少なくとも一方により車両2から降車した人物が認識された場合、当該人物を降車客P1と判定してもよい。あるいは、車両2から降車するときの人物の向きは正面方向を向いているので、一定時間以上、第1認識センサ10及び第2認識センサ50の少なくとも一方により顔認識された人物を降車客P1と判定してもよい。
【0028】
車両2は、
図1に示すように、車両2の周囲を照らすことのできる照明装置(以下、第1照明装置30と称す)を含み、インフラ装置3も車両2と同様に、車両2の周囲を照らすことのできる照明装置(以下、第2照明装置60と称す)を含んでいる。インフラ装置3は降車客P1が降車する場所の付近に設置された設備であって、例えば、バス停の建造物、照明塔、電柱を含む。インフラ装置3は、車両2が実行する照明制御の補助を行う。具体的には、インフラ装置3に含まれる第2認識センサ50により認識された降車客P1を含む人物の情報を車両2に提供し、車両2から指令を受けた位置に第2照明装置60から照明を照射する。車両2とインフラ装置3は、通信ネットワークを介して互いに通信可能である。
【0029】
降車客P1及び周辺人物P2が検出された後、降車客P1に対する防犯サービスの提供時間を決定するための評価が行われる。具体的には、
図2に示されるように、車両2の周囲の環境状況の認識情報と、人物の認識情報に基づいて、降車客P1に対する安全度合いが評価される。
【0030】
車両2の周囲の環境状況の認識情報は、車両2の周囲の明るさ度合いの情報と、車両2の周囲の人通りの多さ、すなわち、繁華度合いの情報とを含む。これらの情報は、第1認識センサ10及び第2認識センサ50の少なくとも一方により認識される。より具体的には、明るさ度合いの情報は、照度センサ又はカメラにより認識され、繁華度合いの情報は、カメラ及びLiDARの少なくとも一方により認識される。つまり、上述した第1認識センサ10及び第2認識センサ50には、更に、照度センサが含まれる。
【0031】
一方、人物の認識情報は、降車客P1に関する情報、降車客P1の行動に関する情報、降車客P1の周辺人物P2に関する情報、及び周辺人物P2の行動に関する情報を含む。降車客P1に関する情報には、降車客P1の人数が含まれる。降車客P1の行動に関する情報には、降車客P1間の相対距離が含まれる。降車客P1の周辺人物P2に関する情報には、周辺人物P2の人数が含まれる。周辺人物P2の行動に関する情報には、降車客P1と周辺人物P2との間の相対距離が含まれる。これらの情報は、第1認識センサ10及び第2認識センサ50の少なくとも一方により認識される。
【0032】
降車客P1に対する安全度合いは、明るさ度合いの情報と、繁華度合いの情報と、降車客P1に関する情報と、降車客P1の行動に関する情報と、周辺人物P2に関する情報と、周辺人物P2の行動に関する情報とのうち、少なくとも2つの組み合わせに基づいて評価される。安全度合いの評価では、複数に分類された安全度合いのレベルのいずれに該当するかが判定される。
図2に示される例では、安全度合いのレベルは5つのレベルに分類される。安全度合いのレベルが高い程、降車客P1を取り巻く状況の安全性は高いことが考えられる。一方、安全度合いのレベルが低い程、降車客P1を取り巻く状況の安全性は低いことが考えられる。
【0033】
安全度合いの各レベルの詳細について説明する。
図2に示すように、車両2の周囲の環境状況が日中等の明るい状況である場合、降車客P1を取り巻く状況の安全性は高いことから、この場合における安全度合いのレベルは最も高いレベル5に設定される。車両2の周囲の環境状況が夜間、トンネル内等の暗い状況であり、かつ、人通りが多い状況である場合、降車客P1を取り巻く状況の安全性は高いもののレベル5よりも安全性は低いことから、この場合における安全度合いのレベルはレベル4に設定される。
【0034】
なお、安全度合いのレベルがレベル5又はレベル4のときは、降車客P1を取り巻く状況の安全性が車両2の周囲の環境状況のみによって確保されることが期待できる。一方で、降車客P1を取り巻く状況の安全性が車両2の周囲の環境状況のみでは確保できない場合が考えられる。例えば、車両2の周囲の環境状況が夜間、トンネル内等の暗い状況、かつ、人通りが少ない状況の場合である。従って、安全度合いがレベル4未満のレベルでは、第1認識センサ10及び第2認識センサ50の少なくとも一方により認識される人物の情報がレベルの判定に用いられる。安全度合いがレベル4未満のときの各レベルは、具体的には次のように設定される。
【0035】
第1認識センサ10及び第2認識センサ50の少なくとも一方により認識された人物の認識数が1であり、かつ、その認識数に該当する人物が降車客P1である場合、安全度合いのレベルはレベル3に設定される。第1認識センサ10及び第2認識センサ50の少なくとも一方により認識された人物の認識数が2以上であり、かつ、その認識数に降車客P1が含まれる場合、安全度合いのレベルはレベル2に設定される。第1認識センサ10及び第2認識センサ50の少なくとも一方により認識された人物の認識数が2以上であり、かつ、その認識数に含まれる2以上の降車客P1の中に不審行動を行う人物が含まれる場合、安全度合いのレベルはレベル1に設定される。また、第1認識センサ10及び第2認識センサ50の少なくとも一方により認識された人物の認識数が2以上であり、かつ、その認識数に含まれる1以上の周辺人物P2の中に不審行動を行う人物が含まれる場合も、安全度合いのレベルはレベル1に設定される。
【0036】
降車客P1に対する安全度合いが評価された後、安全度合いに応じた防犯サービスの提供要否及び提供時間が決定される。
図2に示される例では、安全度合いがレベル4以上の場合、防犯サービスの提供が不要と判断され、降車客P1に対する防犯サービスの提供は行われない。一方、安全度合いがレベル4未満の場合、防犯サービスの提供が必要と判断され、降車客P1に対する防犯サービスの提供が行われる。この場合、更に、安全度合いに応じた防犯サービスの提供時間が決定される。具体的には、
図2に例示されているように、安全度合いが低い程、防犯サービスの提供時間が長くなるように決定される。尚、安全度合いのレベルは
図2に示すように5つの分類に限定されなくてもよい。例えば、安全度合いのレベルが2つに分類される仕組みであってもよい。より具体的には、十分な照度が得られる明るい場所、又は人通りの多い場所をレベル2とし、それ以外の場所をレベル1とする分類をおこなってもよい。
【0037】
降車客P1に対する安全度合いに応じた防犯サービスの提供時間が決定された後、当該提供時間帯において上述した照明制御が実行される。具体的には、
図3に示されるように、車両2を停車させたまま降車客P1の位置に、少なくとも車載の第1照明装置30から照明を照射する照明制御が実行される。照明制御に用いられる照明装置としては、
図3の左図に示すように、第1照明装置30を用いてもよい。あるいは、
図3の右図に示すように、第1照明装置30及び第2照明装置60の2つを用いてもよい。なお、
図3は、
図2に示される降車客P1に対する安全度合いがレベル1の場合の防犯サービスにおける照明制御の実行例を示したものである。
【0038】
ここで、降車客P1の位置に照明を照射する方法について考える。降車客P1の位置は時々刻々と変化するため、時間の経過と共に降車客P1の位置が変化した場合であっても、当該位置に照明を照射できるように照明装置は構成されている。照明装置の構成としては、例えば、照明の向きを制御できるような構成でもよいし、あるいは、降車客P1の位置に対応する照明を照射できるように異なる向きの照明を複数配置した構成でもよい。照明の向きを制御する方法としては、例えば、照明の機構部に、照明の向きを左右方向に変えることのできる旋回部と、照明の向きを上下方向に角度を変えることのできる俯仰部を設け、当該旋回部の旋回角及び当該俯仰部の俯仰角を制御する方法が挙げられる。
【0039】
降車客P1に対する安全度合いに応じた照明制御の実行中、降車客P1に対する安全度合いが一定以上(
図2に示すレベル4以上)となれば、照明制御を継続せずに終了してもよい。あるいは、第1照明装置30又は第2照明装置60による照明の照射可能範囲に降車客P1が存在しない場合、照明制御を継続せずに終了してもよい。あるいは、降車客P1が建物や路地裏等の中に入り、第1認識センサ10又は第2認識センサ50により降車客P1が認識されなくなった場合、照明制御を継続せずに終了してもよい。あるいは、降車客P1が待ち合わせや乗り換え等により、一定時間以上乗降場所に留まる場合、照明制御を継続せずに終了してもよい。従って、照明制御の実行中、所定の終了条件が満たされる場合、照明制御が終了される。このことから、所定の終了条件には、安全度合いが所定レベル以上となったこと、車両2から降車客P1までの距離が所定の距離以上となったこと、第1認識センサ10又は第2認識センサ50により降車客P1が認識されなくなったこと、及び、降車客P1が一定時間以上降車した場所(つまり、乗降場所)に留まること、のうち少なくとも一つが含まれる。
【0040】
更に、降車客P1に対する安全度合いに応じた照明制御の実行中、遠隔オペレータによる遠隔監視が行われてもよい。この場合、第1認識センサ10及び第2認識センサ50の少なくとも一方のセンサにより取得された情報が遠隔オペレータに送信される。
【0041】
図4は、終了条件を満たす場合の例を示した図である。
図4の左図には、安全度合いが所定レベル以上となった場合の例が示されている。具体的には、降車客P1に対する安全度合いが
図2に示すレベル1の状態(例えば、降車客P1の後を追う周辺人物P2が存在すると評価された状態)からレベル2の状態(例えば、降車客P1の後を追う周辺人物P2が存在しないと評価された状態)に変化する場合の例が示されている。この場合、照明制御の経過時間が、レベル2で規定されている防犯サービスの提供時間を超えるとき、終了条件が満たされる。
【0042】
一方、
図4の右図には、第1認識センサ10又は第2認識センサ50により降車客P1が検出されなくなった場合の例が示されている。具体的には、降車客P1に対する安全度合いが
図2に示すレベル1のまま降車客P1が建物等の中に入る場合の例が示されている。この場合、第1認識センサ10又は第2認識センサ50により降車客P1が検出されなくなったとき、終了条件が満たされる。
【0043】
以上のような防犯システムの照明制御を行うことによって、降車客に対する安全度合いに応じて設定された時間、車両を停車させたまま降車客の位置に照明装置から照明を照射することが可能となる。その結果、乗客を輸送する車両において、降車客に対する防犯サービスの提供を適切に行うことが可能となり、ドライバレス車両による安価な輸送サービスを提供しながら、降車客にとって安全且つ安心な防犯サービスの提供が実現される。
【0044】
2.防犯システム
2-1.構成例
図5は、実施形態1に係る防犯システム1の構成例を示すブロック図である。防犯システム1は、車両2及びインフラ装置3を含む。車両2は、第1認識センサ10、情報処理装置20、第1照明装置30、及びインフラ装置3と通信可能な第1通信装置40を備えている。インフラ装置3は、第2認識センサ50、第2照明装置60、及び車両2と通信可能な第2通信装置70を備えている。第1認識センサ10及び第2認識センサ50は、カメラ、LiDAR、レーダ、照度センサを含んでいる。
【0045】
情報処理装置20は、各種情報処理を行う。例えば、情報処理装置20は、ECU(Electronic Control Unit)等が挙げられる。情報処理装置20は、1又は複数のプロセッサ21(以下、単にプロセッサ21と呼ぶ)と、1又は複数の記憶装置22(以下、単に記憶装置22と呼ぶ)と、を含んでいる。プロセッサ21は、各種処理を実行する。例えば、プロセッサ21は、CPU(Central Processing Unit)が挙げられる。記憶装置22としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。プロセッサ21がコンピュータプログラムである防犯プログラムを実行することによって、防犯システム1の機能が実現される。防犯プログラムは、記憶装置22に格納される。防犯プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録されてもよい。防犯プログラムは、ネットワーク経由で提供されてもよい。
【0046】
第1通信装置40は、第2認識センサ50による人物の認識情報をインフラ装置3から受信する。また、第1通信装置40は、第2照明装置60における照明の照射位置の情報をインフラ装置3に送信する。第2通信装置70は、上述した人物の認識情報を車両2に送信し、上述した第2照明装置に関する情報を車両2から受信する。
【0047】
2-2.機能例
図6は、実施形態1に係る防犯システム1における情報処理装置20の機能例を示すブロック図である。情報処理装置20は、機能ブロックとして、情報取得部100、安全度合い評価部110、照明制御部120、及び照明制御終了判定部130を備えている。これらの機能ブロックは、プロセッサ21が防犯プログラムを実行することによって実現される。
【0048】
情報取得部100は、第1認識センサ10及び第2認識センサ50の少なくとも一方による認識結果を取得するように構成されている。第1認識センサ10による認識結果を第1認識結果と称し、第2認識センサ50による認識結果を第2認識結果と称す。第1及び第2認識結果には、車両2の周囲の環境状況の認識情報と、人物の認識情報が含まれる。車両2の周囲の環境状況の認識情報と、人物の認識情報は、記憶装置22に格納される。車両2の周囲の環境状況の認識情報は、例えば、照度センサによって取得された明るさ度合いの情報や、カメラによって撮像されたカメラ画像に基づいて認識された繁華度合いの情報を含む。明るさ度合いは、カメラ画像における画素の色情報に基づいて評価されてもよい。繁華度合いは、カメラ画像から検出された人物の総数の情報基づいて評価されてもよい。
【0049】
人物の認識情報は、例えば、降車客P1の人数の情報と、降車客P1間の相対距離の情報と、降車客P1の周辺人物P2の人数の情報と、降車客P1と周辺人物P2との間の相対距離の情報と、を含んでいる。これらの情報は、カメラによって撮像されたカメラ画像の情報、LiDARで取得された点群情報、レーダで取得された物体の検出位置の情報、等に基づいて認識されてもよい。
【0050】
安全度合い評価部110は、車両2の周囲の環境状況の認識情報と、人物の認識情報とに基づいて、降車客P1に対する安全度合いを評価するように構成されている。更に、安全度合い評価部110は、安全度合いが所定レベル未満か否かを判定し、安全度合いに応じた照明制御の時間を設定するように構成されている。照明制御の詳細については、上述した内容と同じため、説明を省略する。
【0051】
照明制御部120は、上述した安全度合い評価部110において設定された時間に基づいて、照明制御を実行するように構成されている。
【0052】
照明制御終了判定部130は、照明制御の実行中、所定の終了条件を満たすか否かを判定するように構成されている。終了条件の詳細については、上述した内容と同じため、説明を省略する。
【0053】
2-3.処理例
図7は、情報処理装置20の処理例を示すフローチャートである。
図7に示されるルーチンは、所定の周期で繰り返し実行される。
【0054】
ステップS100において、情報処理装置20は、記憶装置22に格納されている各種情報の取得を行う。その後、処理は、ステップS101に進む。各種情報としては、車両2の周囲の環境状況の認識情報、人物の認識情報、等が例示される。
【0055】
ステップS101において、情報処理装置20は、車両2の周囲の環境状況の認識情報と、人物の認識情報に基づいて、降車客P1に対する安全度合いの評価を行う。その後、処理は、ステップS102に進む。
【0056】
ステップS102において、情報処理装置20は、降車客P1に対する安全度合いが所定レベル未満か否かを判定する。
【0057】
降車客P1に対する安全度合いが所定レベル未満の場合(ステップS102;Yes)、処理はステップS103に進む。それ以外の場合(ステップS102;No)、処理はステップS107に進む。
【0058】
ステップS103において、情報処理装置20は、降車客P1に対する安全度合いに応じた時間を設定する。その後、処理は、ステップS104に進む。
【0059】
ステップS104において、情報処理装置20は、照明制御を実行する。その後、処理は、ステップS105に進む。
【0060】
ステップS105において、情報処理装置20は、照明制御の終了条件を満たすか否かを判定する。
【0061】
照明制御の終了条件を満たす場合(ステップS105;Yes)、処理はステップS106に進む。それ以外の場合(ステップS105;No)、処理はステップS105に戻る。
【0062】
ステップS106において、情報処理装置20は、照明制御を終了する。その後、処理はステップS107に進む。
【0063】
ステップS107において、情報処理装置20は、車両2の運行再開を実行する。
【0064】
実施形態2
実施形態1に係る防犯システム1では、車両2とインフラ装置3との協働によって降車客P1に対する照明制御が実行される。しかし、防犯システム1は、インフラ装置3を含まずに車両2のみで構成されてもよい。従って、実施形態2では、
図8に示されるように、車両2のみで防犯システム1が構成され、車両2のみによって降車客P1に対する照明制御が実行される。
【0065】
その他の実施形態
1.具体例1
実施形態1及び2では、車両2の周囲を照らすことのできる第1照明装置30及び第2照明装置60を用いることにより照明制御の実行が行われる。その他の実施形態では、更に、車両2に搭載されている降車時の足元を照らす第3照明装置を用いることにより照明制御の実行が行われてもよい。これにより、降車客P1に対する防犯効果をより向上させることが期待できる。
【0066】
2.具体例2
実施形態1及び2では、降車客P1に対する照明制御を実行することが述べられている。その他の実施形態によれば、照明制御の実行中、更に、車載の通知装置(例えば、スピーカ等)により車両2に搭乗している乗客に現況について通知してもよい。通知内容としては、「車外安全確認中です。安全が確認されるまでしばらくお待ちください。」、「出発時間調整中です。今しばらくお待ちください。」等が例示される。これにより、照明制御実行中に車両2の中で待機している乗客の不快感を軽減させることが期待できる。
【0067】
3.具体例3
実施形態1及び2では、車両2が乗降場所に停車した後、安全度合いの評価に応じて照明制御の時間が設定される。しかし、車両2の周囲の環境状況の認識履歴情報があれば、少なくとも乗降場所ごとの到着時刻における安全度合いのレベルが
図2に示すレベル4以上か否かを事前に評価することができる。その他の実施形態によれば、車両2の周囲の環境状況の認識履歴情報に基づいて乗降場所ごとの安全度合いのレベルがレベル4以上か否かの評価が行われる。安全度合いのレベルがレベル4未満と評価された乗降場所では車両2の停車時間が長くなるように運行スケジュールが計画される。この運行スケジュールに基づいて、車両2を運行させることにより、運行スケジュールと運行実績の乖離を小さくすることができ、車両2を利用する乗客の予定に支障を与えないようにすることが可能となる。
【符号の説明】
【0068】
1 防犯システム
2 車両
3 インフラ装置
10 第1認識センサ
20 情報処理装置
21 プロセッサ
22 記憶装置
30 第1照明装置
40 第1通信装置
50 第2認識センサ
60 第2照明装置
70 第2通信装置
100 情報取得部
110 安全度合い評価部
120 照明制御部
130 照明制御終了判定部
P1 降車客
P2 周辺人物