(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】電気機器
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20240925BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240925BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/583 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20240925BHJP
【FI】
B60R16/02 610B
B60R16/02 610J
B60K1/04 Z
H01M50/249
H01M50/209
H01M50/204 101
H01M50/583
H01M50/289
(21)【出願番号】P 2022167791
(22)【出願日】2022-10-19
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 広隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 直人
(72)【発明者】
【氏名】菱田 光
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0110146(US,A1)
【文献】特開2020-35711(JP,A)
【文献】特開2004-345454(JP,A)
【文献】特開2021-170590(JP,A)
【文献】特開平7-156826(JP,A)
【文献】特開2010-30385(JP,A)
【文献】特開2016-201963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60K 1/04
H01M 50/20-50/298
50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電気機器であって、
台座と、
前記台座上に位置する第1電気ユニットと、
第1上壁と前記第1上壁から前記台座に向けて延びる側壁とを有し、前記台座上の前記第1電気ユニットを覆うカバー部材と、
前記台座と前記カバー部材の前記側壁との間に位置するシール部材と、
前記台座に固定されているとともに、前記第1上壁の上方に位置する第2上壁を有するブラケットと、
前記ブラケットの前記第2上壁の上面に位置する第2電気ユニットと、
前記カバー部材の前記第1上壁と前記ブラケットの前記第2上壁との間に位置するとともに、圧縮変形している弾性部材と、
を備え、
前記圧縮変形している弾性部材の復元力によって、前記カバー部材の前記側壁と前記台座が前記シール部材を介して圧接している、
電気機器。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記台座に複数の締結具を用いて固定されている、請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記第1電気ユニットと前記カバー部材の前記第1上壁との間に、緩衝部材が設けられている、請求項1に記載の電気機器。
【請求項4】
前記第1電気ユニットは、ヒューズボックスである、請求項1に記載の電気機器。
【請求項5】
前記電気機器は、少なくとも一つの電池セルをさらに備える電池パックであり、
前記少なくとも一つの電池セルは、前記第1電気ユニット及び前記第2電気ユニットを介して、前記車両の走行用モータと電気的に接続される、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、台座と、台座上に位置する電気ユニットと、上壁と上壁から台座に向けて延びる側壁とを有し、台座上の電気ユニットを覆うカバー部材と、を備える電気機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電気機器において、カバー部材には、カバー部材を台座に固定させるための締結部材が通過する貫通孔が形成されている。この場合、カバー部材の外部の水が、貫通孔を介して、カバー部材の内部に浸入し得る。そして、カバー部材の内部に浸入した水が、カバー部材に覆われている電気ユニットに接触してしまう虞がある。
【0005】
本明細書では、カバー部材を台座上に固定させることができ、かつ、カバー部材の内部に水が浸入することを抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の第1の態様では、車両に搭載される電気機器は、台座と、前記台座上に位置する第1電気ユニットと、第1上壁と前記第1上壁から前記台座に向けて延びる側壁とを有し、前記台座上の前記第1電気ユニットを覆うカバー部材と、前記台座と前記カバー部材の前記側壁との間に位置するシール部材と、前記台座に固定されているとともに、前記第1上壁の上方に位置する第2上壁を有するブラケットと、前記ブラケットの前記第2上壁の上面に位置する第2電気ユニットと、前記カバー部材の前記第1上壁と前記ブラケットの前記第2上壁との間に位置するとともに、圧縮変形している弾性部材と、を備える。前記圧縮変形している弾性部材の復元力によって、前記カバー部材の前記側壁と前記台座が前記シール部材を介して圧接している。
【0007】
上記の構成によると、圧縮変形している弾性部材の復元力によって、カバー部材を台座上に固定させることができる。このため、締結部材を利用することなく、カバー部材を台座上に固定させることができる。従って、締結部材が貫通する孔をカバー部材の第1上壁に形成しなくてもよい。また、台座とカバー部材の側壁との間には、シール部材が配置される。従って、カバー部材を台座上に固定させることができ、かつ、カバー部材の内部に水が浸入することを抑制することができる。
【0008】
本技術の第2の態様では、上記第1の態様において、前記ブラケットは、前記台座に複数の締結具を用いて固定されていてもよい。
【0009】
上記の構成によると、ブラケットを台座上にしっかりと固定させることができる。また、締結力を調整することによって、弾性部材の復元力を調整することができる。これにより、シール部材の弾性変形量を調整することができる。
【0010】
本技術の第3の態様では、上記第1又は第2の態様において、前記第1電気ユニットと前記カバー部材の前記第1上壁との間に、緩衝部材が設けられていてもよい。
【0011】
第1電気ユニットとカバー部材の第1上壁とが直接的に接触している状態において、電気機器が動作すると、異音が発生する可能性がある。上記の構成によると、第1電気ユニットとカバー部材の第1上壁とが直接的に接触しない。従って、異音が発生することを抑制することができる。
【0012】
本技術の第4の態様では、上記第1の態様から第3の態様のいずれか一つにおいて、前記第1電気ユニットは、ヒューズボックスであってもよい。
【0013】
ヒューズボックスに水が接触することは望ましくない。上記の構成によると、ヒューズボックスに水が接触することを抑制することができる。
【0014】
本技術の第5の態様では、上記第1の態様から第4の態様のいずれか一つにおいて、前記電気機器は、少なくとも一つの電池セルをさらに備える電池パックであってもよい。前記少なくとも一つの電池セルは、前記第1電気ユニット及び前記第2電気ユニットを介して、前記車両の走行用モータと電気的に接続されてもよい。
【0015】
車両用の電池パックは、車両のボデー内に水が浸入し得る環境で使用される。このため、カバー部材の外部に水が付着することが想定される。上記の構成によると、カバー部材の内部に水が浸入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例の電池パック2を模式的に示す平面図。
【
図2】
図1の破線II-IIに沿った断面の一部を模式的に示す断面図。
【
図3】前方右方上方から見た実施例のカバー部材22を模式的に示す斜視図。
【
図4】後方左方下方から見た実施例のカバー部材22を模式的に示す斜視図。
【
図5】前方右方上方から見た実施例のブラケット24を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施例)
図面を参照して、実施例の電池パック2について説明する。本実施例の電池パック2は、例えば電動車に採用され、車輪を駆動する走行用モータに電力を供給する。ここでいう電動車には、特に限定されないが、バッテリ式電動車、ハイブリッド電動車、プラグインハイブリッド電動車、燃料電池電動車が含まれる。電池パック2は、電動車のフロア下に配置される。
【0018】
図1に示すように、電池パック2は、トレイ10と、電池セルケース12と、電気ユニットケース14と、を備える。電池セルケース12は、トレイ10上に配置されている。電気ユニットケース14は、電池セルケース12の左右方向の中央部に接続されている。電気ユニットケース14は、電池セルケース12から前方に延びている。
【0019】
電池セルケース12は、複数の電池セルを収容する。本実施例の電池セルは、直方体形状のNiMH電池セルである。なお、電池セルは、リチウムイオン電池セル等であってもよい。複数の電池セルは、電池セルケース12内において、上下方向に積層される。
【0020】
図2に示すように、電気ユニットケース14内には、ヒューズボックス20と、カバー部材22と、ブラケット24と、ジャンクションボックス26と、が収容されている。
【0021】
ヒューズボックス20は、電気ユニットケース14の台座14A上に配置されている。台座14Aは、電気ユニットケース14の底壁を構成する。ヒューズボックス20には、高電圧ワイヤーハーネスが電気的に接続される。なお、「高電圧」とは、直流60Vを超える作動電圧、又は、交流30V(実効値)を超える作動電圧を意味する。
【0022】
カバー部材22は、ヒューズボックス20を覆っている。カバー部材22は、第1上壁30と、右壁32と、左壁34と、後壁36と、前壁38(
図3参照)と、を備える。右壁32、左壁34、後壁36、及び、前壁38は、第1上壁30から電気ユニットケース14の台座14Aに向けて延びている。なお、以下では、右壁32、左壁34、後壁36及び、前壁38を総称して、「側壁40」と記載することがある。第1上壁30の下端は、ヒューズボックス20の上面20Aよりも上方に配置されている。第1上壁30とヒューズボックス20の上面20Aとの間には、不織布からなる緩衝部材42が配置されている。
【0023】
側壁40は、側壁40の下部から外側に延びるフランジ部44を備える。台座14Aと、側壁40と、の間には、シール部材46が配置される。シール部材46は、エーテル系ウレタンからなる。
図4に示すように、左壁34の前後方向の両端部には、上方に窪んだ形状を有するワイヤーハーネス接続孔48が形成されている。ワイヤーハーネス接続孔48には、ワイヤーハーネス接続孔48に対応する形状を有するハーネス連結部材が挿入される。電池セルケース12内の複数の電池セルと電気的に接続される高電圧ワイヤーハーネスは、ワイヤーハーネス接続孔48を通過する。
【0024】
図5に示すように、ブラケット24は、第2上壁60と、右前脚部62と、左前脚部64と、右後脚部66と、左後脚部68(
図2参照)と、備える。第2上壁60は、平板形状を有している。右前脚部62、左前脚部64、右後脚部66、及び、左後脚部68は、第2上壁60から電気ユニットケース14の台座14A(
図2参照)に向けて延びている。以下では、右前脚部62、左前脚部64、右後脚部66、及び、左後脚部68を総称して、「脚部70」と記載することがある。脚部70は、脚部70の下部から外側に延びるフランジ部72を備える。フランジ部72には、ネジ穴74が形成されている。電気ユニットケース14の台座14Aには、脚部70の4個のネジ穴74に対応するネジ穴が形成されている。
図2に示すように、ブラケット24は、ボルト76及びナット78によって台座14Aに固定される。
【0025】
ブラケット24の脚部70の上下方向の長さは、カバー部材22の側壁40の上下方向の長さよりも長い。このため、ブラケット24及びカバー部材22が電気ユニットケース14の台座14Aに載置されている状態において、ブラケット24の第2上壁60は、カバー部材22の第1上壁30よりも上方に位置する。上下方向において、ブラケット24の第2上壁60と、カバー部材22の第1上壁30と、の間には、3個の弾性部材80が設けられている。
図3に示すように、3個の弾性部材80は、第1上壁30の右部の前後方向の中央部付近、及び、第1上壁30の左部の前後方向の両端部付近に設けられている。本実施例では、弾性部材80は、シール部材46と同じ材料からなるが、シール部材46と異なる材料からなっていてもよい。
図2に示すように、ブラケット24及びカバー部材22が電気ユニットケース14の台座14Aに載置されている状態において、弾性部材80は圧縮変形している。また、ブラケット24は、ボルト76及びナット78によって台座14Aに固定される。このため、圧縮変形している弾性部材80の復元力がカバー部材22に作用して、カバー部材22が、シール部材46を介して、台座14Aに圧接される。
【0026】
上述のように、電池パック2(「電気機器」の一例)は、台座14Aと、台座14A上に位置するヒューズボックス20(「第1電気ユニット」の一例)と、第1上壁30と、第1上壁30から台座14Aに向けて延びる側壁40と、を有し、台座14A上のヒューズボックス20を覆うカバー部材22と、台座14Aとカバー部材22の側壁40との間に位置するシール部材46と、台座14Aに固定されているとともに、第1上壁30の上方に位置する第2上壁60を有するブラケット24と、ブラケット24の第2上壁60の上面に位置するジャンクションボックス26(「第2電気ユニット」の一例)と、カバー部材22の第1上壁30とブラケット24の第2上壁60との間に位置するとともに、圧縮変形している弾性部材80と、を備える。圧縮変形している弾性部材80の復元力によって、カバー部材22の側壁40と台座14Aがシール部材46を介して圧接している。
【0027】
上記の構成によると、圧縮変形している弾性部材80の復元力によって、カバー部材22を台座14A上に固定させることができる。このため、締結部材を利用することなく、カバー部材22を台座14A上に固定させることができる。従って、締結部材が貫通する孔をカバー部材22の第1上壁30に形成しなくてもよい。また、台座14Aとカバー部材22の側壁40との間には、シール部材46が配置される。従って、カバー部材22を台座14A上に固定させることができ、かつ、カバー部材22の内部に水が浸入することを抑制することができる。
【0028】
また、ヒューズボックス20に水が接触することは望ましくない。上記の構成によると、ヒューズボックス20に水が接触することを抑制することができる。
【0029】
また、車両用の電池パック2は、水が車両のボデー内に浸入し得る環境で使用される。このため、カバー部材22の外部に水が付着することが想定される。上記の構成によると、カバー部材22の内部に水が浸入することを抑制することができる。
【0030】
また、ブラケット24は、台座14Aに複数のボルト76及びナット78(「締結具」の一例)を用いて固定されている。
【0031】
上記の構成によると、ブラケット24を台座14A上にしっかりと固定させることができる。また、締結力を調整することによって、弾性部材80の復元力を調整することができる。これにより、シール部材46の弾性変形量を調整することができる。
【0032】
また、ヒューズボックス20とカバー部材22の第1上壁30との間に、緩衝部材42が設けられている。
【0033】
ヒューズボックス20とカバー部材22の第1上壁30とが直接的に接触している状態において、電池パック2が動作すると、異音が発生する可能性がある。上記の構成によると、ヒューズボックス20とカバー部材22の第1上壁30とが直接的に接触しない。従って、異音が発生することを抑制することができる。
【0034】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0035】
(第1変形例)ブラケット24は、溶接、接着などを利用して、台座14Aに固定されてもよい。
【0036】
(第2変形例)ヒューズボックス20とカバー部材22の第1上壁30との間に緩衝部材42が設けられていなくてもよい。
【0037】
(第3変形例)「第1電気ユニット」及び「第2電気ユニット」の組み合わせは、ヒューズボックス20及びジャンクションボックス26の組み合わせに限定されない。例えば、ジャンクションボックス26、ヒューズボックス20が、それぞれ、「第1電気ユニット」、「第2電気ユニット」の一例であってもよい。
【0038】
(第4変形例)「電気機器」は、電池パック2に限定されず、電力制御ユニット(PCU)等であってもよい。
【0039】
本明細書、又は、図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書又は図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0040】
2:電池パック、10:トレイ、12:電池セルケース、14:電気ユニットケース、14A:台座、20:ヒューズボックス、20A:上面、22:カバー部材、24:ブラケット、26:ジャンクションボックス、30:第1上壁、32:右壁、34:左壁、36:後壁、38:前壁、40:側壁、42:緩衝部材、44:フランジ部、46:シール部材、48:ワイヤーハーネス接続孔、60:第2上壁、62:右前脚部、64:左前脚部、66:右後脚部、68:左後脚部、70:脚部、72:フランジ部、74:ネジ穴、76:ボルト、78:ナット、80:弾性部材