(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】蓄電セル及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240925BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240925BHJP
H01M 50/183 20210101ALI20240925BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20240925BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20240925BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20240925BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/04 Z
H01M50/183
H01G11/80
H01G11/52
H01G11/12
(21)【出願番号】P 2022575601
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2022000693
(87)【国際公開番号】W WO2022154005
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2021003409
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100190470
【氏名又は名称】谷澤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】岡本 夕紀
(72)【発明者】
【氏名】神谷 亮太
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-133323(JP,A)
【文献】特開2019-149341(JP,A)
【文献】特開2005-5163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/04
H01M 50/183
H01G 11/80
H01G 11/52
H01G 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1集電体、及び前記第1集電体の一方面に設けられた正極活物質層を有する正極と、
第2集電体、及び前記第2集電体の一方面に設けられ、前記正極活物質層と対向する負極活物質層を有する負極と、
前記正極活物質層と前記負極活物質層が対向する対向方向において、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の間に配置されたセパレータと、
前記対向方向から見て、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の周囲を取り囲むように前記第1集電体及び前記第2集電体の間に配置され、前記第1集電体及び前記第2集電体の間の空間に電解質を封止する枠状の封止部と、を有し、
前記封止部は、
前記正極活物質層から離間して前記第1集電体の一方面に接合された第1樹脂層と、
前記負極活物質層から離間して前記第2集電体の一方面に接合された第2樹脂層と、
前記対向方向において前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層の間に設けられ、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層のそれぞれと溶着された第3樹脂層と、
前記第1樹脂層の外縁部、前記第2樹脂層の外縁部、及び、前記第3樹脂層の外縁部が溶着により互いに一体化されて形成されてなる溶着領域と、を有し、
前記対向方向から見て、前記溶着領域の内縁は、前記第1樹脂層と前記第1集電体との接合領域の内縁、及び、前記第2樹脂層と前記第2集電体との接合領域の内縁よりも外側に位置しており、
前記第3樹脂層は、前記対向方向から見て、前記溶着領域よりも内側に、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層に溶着されていない部分を有している、
蓄電セル。
【請求項2】
前記対向方向から見て、前記第1樹脂層の内縁及び前記第2樹脂層の内縁は、それぞれ前記第3樹脂層の内縁よりも内側に位置している、
請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記対向方向から見て、前記第1樹脂層と前記第1集電体との接合領域の内縁及び前記第2樹脂層と前記第2集電体との接合領域の内縁は、それぞれ前記第3樹脂層の内縁よりも内側に位置している、
請求項1又は2に記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記対向方向から見て、前記溶着領域は、前記第1樹脂層と前記第1集電体との接合領域、及び、前記第2樹脂層と前記第2集電体との接合領域と重なっている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項5】
前記対向方向から見て、前記溶着領域の内縁は、前記第1集電体の外縁及び前記第2集電体の外縁よりも外側に位置する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項6】
前記第1樹脂層と前記第1集電体との接合領域は、前記第1樹脂層と前記第1集電体の前記一方面との界面の全体により構成され、
前記第2樹脂層と前記第2集電体との接合領域は、前記第2樹脂層と前記第2集電体の前記一方面との界面の全体により構成されている、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項7】
前記対向方向において、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層の厚さは、それぞれ前記第3樹脂層の厚さ以下である、
請求項1~
6のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項8】
前記第1樹脂層又は前記第2樹脂層は、前記空間に面するように前記第3樹脂層から露出している露出部を含み、
前記セパレータの端部は、前記露出部に固定されている、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の蓄電セルが前記対向方向において積層された積層体を備え、
前記対向方向において隣り合う前記蓄電セルの一方の前記第1集電体と他方の前記第2集電体とは電気的に接続されている、
蓄電装置。
【請求項10】
前記第1樹脂層は、前記対向方向から見て、前記第1集電体の外側まで設けられており、
前記第2樹脂層は、前記対向方向から見て、前記第2集電体の外側まで設けられており、
前記対向方向で互いに隣り合う前記第1集電体及び前記第2集電体にそれぞれ設けられた前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層は、前記対向方向から見て、前記第1集電体及び前記第2集電体の外側で互いに溶着されている、
請求項
9に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電セル及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、集電体と、集電体の一方の面に形成された正極層と、集電体の他方の面に形成された負極層と、を備える双極型電極が絶縁層を介して積層されてなる双極型電池が記載されている。この双極型電池では、集電体の一方面及び他方面の周縁部にそれぞれ樹脂層が接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電池では、集電体は、樹脂層との接合領域において樹脂層により変位が拘束されている。このため、セル内で圧力の異常上昇が生じた場合、集電体は、接合領域の内縁を起点として接合領域の内側で膨らむように変形する。接合領域の内縁には、集電体の変形による応力が集中する。このような応力集中によれば、集電体と樹脂層との接合が弱まり、集電体から樹脂層が剥離するおそれがある。その結果、封止性が低下するおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、封止性の低下を抑制可能な蓄電セル及び蓄電装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る蓄電セルは、第1集電体、及び第1集電体の一方面に設けられた正極活物質層を有する正極と、第2集電体、及び第2集電体の一方面に設けられ、正極活物質層と対向する負極活物質層を有する負極と、正極活物質層と負極活物質層が対向する対向方向において、正極活物質層及び負極活物質層の間に配置されたセパレータと、対向方向から見て、正極活物質層及び負極活物質層の周囲を取り囲むように第1集電体及び第2集電体の間に配置され、第1集電体及び第2集電体の間の空間に電解質を封止する枠状の封止部と、を有し、封止部は、正極活物質層から離間して第1集電体の一方面に接合された第1樹脂層と、負極活物質層から離間して第2集電体の一方面に接合された第2樹脂層と、対向方向において第1樹脂層及び第2樹脂層の間に設けられ、第1樹脂層及び第2樹脂層のそれぞれと溶着された第3樹脂層と、を有し、対向方向から見て、第1樹脂層と第3樹脂層との溶着領域の内縁は、第1樹脂層と第1集電体との接合領域の内縁よりも外側に位置しており、対向方向から見て、第2樹脂層と第3樹脂層との溶着領域の内縁は、第2樹脂層と第2集電体との接合領域の内縁よりも外側に位置している。
【0007】
上記蓄電セルでは、封止部は、第1集電体の一方面に接合された第1樹脂層と、第2集電体の一方面に接合された第2樹脂層と、第1樹脂層及び第2樹脂層の間に設けられ、第1樹脂層及び第2樹脂層のそれぞれと溶着された第3樹脂層と、を有している。対向方向から見て、第1樹脂層と第3樹脂層との溶着領域の内縁は、第1樹脂層と第1集電体との接合領域の内縁よりも外側に位置していると共に、第2樹脂層と第3樹脂層との溶着領域の内縁は、第2樹脂層と第2集電体との接合領域の内縁よりも外側に位置している。このため、第1集電体及び第2集電体の変形により生じる応力の一部は、第1樹脂層と第1集電体との接合領域の内縁、及び第2樹脂層と第2集電体との接合領域の内縁から、第1樹脂層と第3樹脂層との溶着領域の内縁、及び第2樹脂層と第3樹脂層との溶着領域の内縁にそれぞれ移動する。このように応力を分散させることができるので、封止部が第1集電体及び第2集電体から剥離することを抑制できる。その結果、封止性の低下を抑制できる。また、第1樹脂層及び第2樹脂層は、正極活物質層及び負極活物質層から離間して設けられている。このため、例えば、充放電にともなう様々な電気化学反応によって蓄電セル内で発生するガスを収容可能な余剰空間を確保することができる。
【0008】
対向方向から見て、第1樹脂層の内縁及び第2樹脂層の内縁は、それぞれ第3樹脂層の内縁よりも内側に位置していてもよい。この場合、第3樹脂層の内縁が第1樹脂層の内縁及び第2樹脂層の内縁と同じ位置である場合と比べて、余剰空間を更に確保し易い。
【0009】
対向方向から見て、第1樹脂層と第1集電体との接合領域の内縁及び第2樹脂層と第2集電体との接合領域の内縁は、それぞれ第3樹脂層の内縁よりも内側に位置していてもよい。
【0010】
対向方向から見て、第1樹脂層と第3樹脂層との溶着領域は、第1樹脂層と第1集電体との接合領域と重なっており、対向方向から見て、第2樹脂層と第3樹脂層との溶着領域は、第2樹脂層と第2集電体との接合領域と重なっていてもよい。
【0011】
第1樹脂層と第1集電体との接合領域は、第1樹脂層と第1集電体の一方面との界面の全体により構成され、第2樹脂層と第2集電体との接合領域は、第2樹脂層と第2集電体の一方面との界面の全体により構成されていてもよい。この場合、封止部が第1集電体及び第2集電体から剥離することを効果的に抑制できる。
【0012】
対向方向において、第1樹脂層及び第2樹脂層の厚さは、それぞれ第3樹脂層の厚さ以下であってもよい。この場合、第1集電体及び第2集電体の変形により生じる応力は、第1樹脂層と第1集電体との接合領域の内縁、及び第2樹脂層と第2集電体との接合領域の内縁よりも、第1樹脂層と第3樹脂層との溶着領域の内縁、及び第2樹脂層と第3樹脂層との溶着領域の内縁に強く付加され易い。第1樹脂層と第3樹脂層との溶着強度は、第1集電体と第1樹脂層との接合強度よりも強い。第2樹脂層と第3樹脂層との溶着強度は、第2集電体と第2樹脂層との接合強度よりも強い。すなわち、第1集電体及び第2集電体の変形により生じる応力が分散されると共に、その分散された応力を接合強度が強い部分に集中させることができるので、封止性の低下を効果的に抑制することができる。
【0013】
第1樹脂層又は第2樹脂層は、空間に面するように第3樹脂層から露出している露出部を含み、セパレータの端部は、露出部に固定されていてもよい。この場合、セパレータを第3樹脂層と第1樹脂層との溶着領域、及び、第3樹脂層と第2樹脂層との溶着領域から離間させることができる。これらの溶着領域にセパレータが接していると、セパレータに含浸された電解質により溶着領域が膨潤され、溶着強度が低下するおそれがある。セパレータをこれらの溶着領域から離間させる構成によれば、このように溶着強度が低下するおそれがない。
【0014】
本開示に係る蓄電装置は、上記蓄電セルが積層された積層体を備え、対向方向において隣り合う蓄電セルの一方の第1集電体と他方の第2集電体とは電気的に接続されている。
【0015】
上記蓄電装置では、上記蓄電セルが積層方向に直列接続されているので、出力を稼ぎながら、封止性を向上させることができる。
【0016】
第1樹脂層は、対向方向から見て、第1集電体の外側まで設けられており、第2樹脂層は、対向方向から見て、第2集電体の外側まで設けられており、対向方向で互いに隣り合う第1集電体及び第2集電体にそれぞれ設けられた第1樹脂層及び第2樹脂層は、対向方向から見て、第1集電体及び第2集電体の外側で互いに溶着されていてもよい。この場合、第1集電体及び第2集電体の縁部全体を第1樹脂層及び第2樹脂層で覆うことができるので、第3樹脂層が第1集電体及び第2集電体と接しない。よって、第3樹脂層の構成材料として、第1集電体及び第2集電体に対する接合強度が低い材料を選択することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、封止性の低下を抑制可能な蓄電セル及び蓄電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る蓄電装置を示す概略的な断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される蓄電セルの概略的な断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示される蓄電装置の製造方法を説明する概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、第1変形例に係る蓄電装置を示す概略的な断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示される蓄電セルの概略的な断面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示される蓄電装置の製造方法を説明する概略的な断面図である。
【
図7】
図7は、第2変形例に係る蓄電装置を示す概略的な断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示される蓄電セルの概略的な断面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示される蓄電装置の製造方法を説明する概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0020】
図1は、一実施形態に係る蓄電装置を示す概略的な断面図である。
図1に示される蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリに用いられる蓄電モジュールである。蓄電装置1は、例えばニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の二次電池である。蓄電装置1は、電気二重層キャパシタであってもよいし、全固体電池であってもよい。本実施形態では、蓄電装置1がリチウムイオン二次電池である場合を例示する。
【0021】
蓄電装置1は、複数の蓄電セル2がスタック(積層)されたセルスタック3(積層体)を備える。
図2は、
図1に示される蓄電セルの概略的な断面図である。
図2は、
図1の一部拡大図である。
図1及び
図2に示されるように、各蓄電セル2は、正極11と、負極12と、セパレータ13と、封止部14と、を備える。正極11及び負極12は、互いに対向して配置されている。正極11及び負極12の対向方向Dは、複数の蓄電セル2の積層方向と一致している。正極11及び負極12は、対向方向Dから見て、例えば矩形状の電極である。
【0022】
正極11は、集電体21(第1集電体)と、正極活物質層23とを備える。集電体21は、互いに反対を向く第1面21a及び第2面21bと、縁部21cとを有している。第1面21aには、正極活物質層23が設けられている。第2面21bには、正極活物質層23が設けられていない。縁部21cには、第1面21a側及び第2面21b側のいずれにおいても、正極活物質層23が設けられていない。換言すると、第1面21aは、正極活物質層23が設けられていない領域を縁部21cに有している。縁部21cは、対向方向Dから見て、集電体21において正極活物質層23が設けられた領域の外側に位置している。
【0023】
負極12は、集電体22(第2集電体)と、負極活物質層24とを備える。集電体22は、互いに反対を向く第1面22a及び第2面22bと、縁部22cとを有している。第1面22aには、負極活物質層24が設けられている。負極活物質層24は、正極活物質層23と対向方向Dにおいて対向する。第2面22bには、負極活物質層24が設けられていない。縁部22cには、第1面22a側及び第2面22b側のいずれにおいても、負極活物質層24が設けられていない。換言すると、第1面22aは、負極活物質層24が設けられていない領域を縁部22cに有している。縁部22cは、対向方向Dから見て、集電体22において負極活物質層24が設けられた領域の外側に位置している。
【0024】
正極11及び負極12は、正極活物質層23及び負極活物質層24が対向方向Dにおいて互いに対向するように配置されている。本実施形態では、正極活物質層23及び負極活物質層24は、いずれも対向方向Dから見て矩形状に形成されている。負極活物質層24は、正極活物質層23よりも一回り大きく形成されている。対向方向Dから見て、正極活物質層23の全体が負極活物質層24の外縁よりも内側に位置している。
【0025】
ある一つの蓄電セル2の集電体21の第2面21bと、別の蓄電セル2の集電体22の第2面22bとが互いに接するように、複数の蓄電セル2がスタックされることによって、セルスタック3が構成される。これにより、複数の蓄電セル2が電気的に直列に接続される。積層方向において互いに隣り合う蓄電セル2,2では、一方の蓄電セル2の集電体21と、他方の蓄電セル2の集電体22とが互いに接しており、互いに電気的に接続される。
【0026】
セルスタック3では、積層方向において互いに隣り合う蓄電セル2,2により、互いに接する集電体21及び集電体22を1つの集電体とする疑似的なバイポーラ電極10が形成される。積層方向におけるセルスタック3の一端には、集電体21を含む終端電極(本実施形態では正極終端電極)が配置される。積層方向におけるセルスタック3の他端には、集電体22を含む終端電極(本実施形態では負極終端電極)が配置される。
【0027】
集電体21,22は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、正極活物質層23及び負極活物質層24に電流を流し続けるための化学的に不活性な電気伝導体である。集電体21,22を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料や非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。集電体21,22は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。集電体21,22の表面に、メッキ処理又はスプレーコート等の公知の方法により被覆層を形成してもよい。集電体21,22は、例えば、板状、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態に形成されていてもよい。集電体21,22を金属箔とする場合、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔又はステンレス鋼箔等が用いられる。集電体21,22は、上記金属の合金箔又はクラッド箔であってもよい。集電体21,22が箔状の場合、集電体21,22の厚さは1μm以上100μm以下の範囲内であってもよい。集電体21,22は、例えばアルミニウム箔の片面に銅メッキすることにより一体化されていてもよい。また、集電体21,22は、貼り合わせにより一体化されていてもよい。本実施形態では、集電体21はアルミニウム箔であり、集電体22は銅箔である。
【0028】
正極活物質層23は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等が挙げられる。複合酸化物の組成には、例えば鉄、マンガン、チタン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。複合酸化物としては、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、LiCoO2、LiNiMnCoO2等が挙げられる。
【0029】
負極活物質層24は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば黒鉛、人造黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。
【0030】
正極活物質層23及び負極活物質層24には、活物質のほか、結着剤及び導電助剤が含まれ得る。結着剤は、活物質又は導電助剤を互いに繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たす。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。導電助剤は、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等の導電性材料であり、電気伝導性を高めることができる。粘度調整溶媒には、例えば、N-メチル-2-ピロリドン等が用いられる。
【0031】
正極活物質層23及び負極活物質層24を第1面21a,22aに形成するには、例えばロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法等の従来から公知の方法が用いられる。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を混合してスラリー状の活物質層形成用組成物を製造し、当該活物質層形成用組成物を第1面21a,22aに塗布後、乾燥する。溶剤は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水である。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮してもよい。
【0032】
セパレータ13は、対向方向Dにおいて、正極11及び負極12の間に配置されている。セパレータ13は、正極11及び負極12の間に介在している。セパレータ13は、蓄電セル2をスタックした際に隣り合う正極11及び負極12を隔離することで、両極の接触による電気的短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる部材である。セパレータ13は、互いに対向する正極活物質層23及び負極活物質層24の間に配置されている。
【0033】
セパレータ13は、対向方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24よりも一回り大きく、かつ集電体21,22よりも一回り小さい矩形状をなしている。セパレータ13の端部13aは、対向方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24の外側に配置されている。セパレータ13の端部13aは、対向方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24のいずれとも重ならない。
【0034】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13は、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布である。セパレータ13を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステルなどが挙げられる。セパレータ13は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。多層構造の場合、セパレータ13は、例えば、基材層及び一対の接着層を含み、一対の接着層により正極活物質層23及び負極活物質層24に接着固定されてもよい。セパレータ13は、耐熱層となるセラミック層を含んでもよい。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されていてもよい。
【0035】
セパレータ13に含浸される電解質としては、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液)、又はポリマーマトリックス中に保持された電解質を含む高分子ゲル電解質などが挙げられる。セパレータ13に電解質が含浸される場合、その電解質塩として、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2等の公知のリチウム塩を使用できる。また、非水溶媒として、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。なお、これら公知の溶媒材料を二種以上組合せて用いてもよい。
【0036】
封止部14は、集電体21及び集電体22の間の空間Sを封止する部材である。封止部14は、対向方向Dから見て枠状であり、正極活物質層23及び負極活物質層24の周囲を取り囲むように、集電体21の第1面21a及び集電体22の第1面22aの間に配置されている。蓄電セル2では、集電体21、集電体22、及び封止部14により空間Sが画定されている。空間Sには、電解質(不図示)が収容されている。封止部14は、空間Sに電解質を封止している。封止部14は、集電体21及び集電体22の間に配置されることにより、集電体21と集電体22との間の間隔を保持するスペーサとしても機能している。封止部14は、集電体21の縁部21cと集電体22の縁部22cとに接着(接合)されている。封止部14は、対向方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24から離間している。封止部14は、電気絶縁性を有する。
【0037】
封止部14は、第1樹脂層15、第2樹脂層16、及び第3樹脂層17を有している。第1樹脂層15、第2樹脂層16、及び第3樹脂層17は、対向方向Dから見てそれぞれ枠状である。第1樹脂層15は、正極活物質層23から離間して、第1面21aに設けられている。第1樹脂層15は第1面21aに接合されている。第1樹脂層15と集電体21との接合領域A1は、第1樹脂層15と第1面21aとの界面により構成されている。本実施形態では、接合領域A1は、第1樹脂層15と第1面21aとの界面の全体により構成されている。対向方向Dから見て、接合領域A1の内縁P1は、第1樹脂層15の内縁15aと一致し、接合領域A1の外縁は、第1面21aの外縁21dと一致している。第2樹脂層16は、負極活物質層24から離間して、第1面22aに設けられている。第2樹脂層16は第1面22aに接合されている。第2樹脂層16と集電体22との接合領域A2は、第2樹脂層16と第1面22aとの界面により構成されている。本実施形態では、接合領域A2は、第2樹脂層16と第1面22aとの界面の全体により構成されている。対向方向Dから見て、接合領域A2の内縁P3は、第2樹脂層16の内縁16aと一致し、接合領域A2の外縁は、第1面22aの外縁22dと一致している。ている。第3樹脂層17は、第1樹脂層15と第2樹脂層16との間に設けられ、第1樹脂層15及び第2樹脂層16のそれぞれと溶着されている。
【0038】
対向方向Dから見て第1樹脂層15の内縁15a及び第2樹脂層16の内縁16aは、それぞれ第3樹脂層17の内縁17aよりも内側に位置している。内縁15a,16aは内縁17aよりも、例えば1mm以上内側に位置している。すなわち、第1樹脂層15は、空間Sに面するように第3樹脂層17から露出した露出部15cを含み、露出部15cの幅は、1mm以上である。第2樹脂層16は、空間Sに面するように第3樹脂層17から露出した露出部16cを含み、露出部16cの幅は、1mm以上である。露出部15c,16cの幅は、例えば、4mmである。なお、露出部15c,16cの幅は、対向方向Dから見て、内縁15a,16aに直交する方向における露出部15c,16cの長さである。
【0039】
第3樹脂層17は、対向方向Dから見て、第1樹脂層15の内縁15aよりも外側において第1樹脂層15に溶着されている。第3樹脂層17は、対向方向Dから見て、第2樹脂層16の内縁16aよりも外側において第2樹脂層16に溶着されている。本実施形態では、第3樹脂層17と第1樹脂層15との溶着領域6は、対向方向Dから見て、第1樹脂層15の外縁15bから第3樹脂層17の内縁17aまで至っている。対向方向Dから見て、溶着領域6の内縁P2は、接合領域A1の内縁P1よりも外側に位置している。第3樹脂層17と第2樹脂層16との溶着領域7は、対向方向Dから見て、第2樹脂層16の外縁16bから第3樹脂層17の内縁17aまで至っている。対向方向Dから見て、溶着領域7の内縁P4は、接合領域A2の内縁P3よりも外側に位置している。対向方向Dから見て、溶着領域6は、接合領域A1と重なっている。対向方向Dから見て、溶着領域7は、接合領域A2と重なっている。
【0040】
セパレータ13の端部13aは、第3樹脂層17の内縁17aよりも内側で第2樹脂層16に固定されている。つまり、端部13aは、露出部16cに固定されている。端部13aは、例えば、スポット溶着等により、部分的に露出部16cに接着(溶着)されている。端部13aは、例えば、2mmの幅で露出部16cに固定されている。
【0041】
対向方向Dから見て、第1樹脂層15は、正極活物質層23から離間し、内縁15aは、正極活物質層23の外側に位置している。対向方向Dから見て、第2樹脂層16は、負極活物質層24から離間し、内縁16aは、負極活物質層24の外側に位置している。本実施形態では、対向方向Dから見て、第1樹脂層15は、負極活物質層24からも離間しているが、第1樹脂層15は、正極活物質層23から離間していれば、負極活物質層24と重なっていてもよい。
【0042】
第1樹脂層15は、第1面21aの外縁21dまで設けられている。第3樹脂層17は、第1面21aとは接していない。本実施形態では、第1樹脂層15の外縁15bは、第1面21aの外縁21dと一致しているが、第1樹脂層15は、外縁21dの外側まで延在していてもよい。第2樹脂層16は、第1面22aの外縁22dまで設けられている。第3樹脂層17は、第1面22aとは接していない。本実施形態では、第2樹脂層16の外縁16bは、第1面22aの外縁22dと一致しているが、第2樹脂層16は、外縁22dの外側まで延在していてもよい。
【0043】
対向方向Dにおいて、第1樹脂層15の厚さt1及び第2樹脂層16の厚さt2は、例えば、第3樹脂層17の厚さt3以下であり、厚さt3よりも薄くてもよい。厚さt1は、第1樹脂層15における、集電体21と第3樹脂層17とにより挟まれた部分の厚さである。厚さt2は、第2樹脂層16における、集電体22と第3樹脂層17とにより挟まれた部分の厚さである。厚さt3は、第3樹脂層17における、第1樹脂層15と第2樹脂層16とにより挟まれた部分の厚さである。厚さt1及び厚さt2は、例えば、厚さt3の1/10以上1/2以下である。本実施形態では、厚さt1及び厚さt2は、互いに同等であるが、互いに異なっていてもよい。なお、厚さt1及び厚さt2は、厚さt3よりも厚くてもよい。
【0044】
第1樹脂層15、第2樹脂層16、及び第3樹脂層17は、例えば、酸変性ポリエチレン(酸変性PE)、酸変性ポリプロピレン(酸変性PP)、ポリエチレン、又は、ポリプロピレン等の耐電解質性を有する樹脂材料により構成される。第1樹脂層15、第2樹脂層16、及び第3樹脂層17を構成する樹脂材料は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、第1樹脂層15及び第2樹脂層16は、酸変性ポリエチレン又は酸変性ポリプロピレンにより形成されている。第3樹脂層17は、ポリエチレン又はポリプロピレンにより形成されている。
【0045】
酸変性ポリエチレン及び酸変性ポリプロピレンは、酸変性されていないポリエチレン及び酸変性されていないポリプロピレンと比較して、金属に接着し易い。集電体21が金属からなる場合、第1樹脂層15を酸変性ポリエチレン又は酸変性ポリプロピレンにより構成することで、集電体21に対する第1樹脂層15の接着強度(接合強度)を向上させることができる。同様に、集電体22が金属からなる場合、第2樹脂層16を酸変性ポリエチレン又は酸変性ポリプロピレンにより構成することで、集電体22に対する第2樹脂層16の接着強度(接合強度)を向上させることができる。
【0046】
本実施形態では、セルスタック3の積層方向に配列された複数の封止部14が、溶着により互いに一体化されて矩形の筒状部材4を形成している。筒状部材4は、セルスタック3の積層方向の一端に配置された集電体21から、積層方向の他端に配置された集電体22まで積層方向に延在している。筒状部材4は、溶着領域8を有している。溶着領域8は、複数の封止部14の外縁部が溶着により互いに一体化されて形成される。溶着領域8は、略一定の厚さで対向方向Dに沿って延在している。溶着領域8の外側面は、筒状部材4の外側面となる。本実施形態では、溶着領域8は、溶着領域6の外縁部及び溶着領域7の外縁部を含んでいる。つまり、溶着領域6及び溶着領域7は、溶着領域8の一部を構成している。溶着領域8は、対向方向Dから見て、集電体21,22と重なる部分を有している。
【0047】
図3を参照して、蓄電装置1の製造方法の一例を説明する。
図3は、
図1に示される蓄電装置の製造方法を説明する概略的な断面図である。まず、正極11、負極12、第1樹脂層15となる樹脂層31、第2樹脂層16となる樹脂層32、及び、第3樹脂層17となる樹脂層33をそれぞれ準備する。樹脂層31,32,33は、例えば、射出成形により形成される。続いて、正極11に樹脂層31を取付けると共に、負極12に樹脂層32を取付ける。具体的には、集電体21の縁部21cにおける第1面21aに、樹脂層31を接着する。集電体22の縁部22cにおける第1面22aに、樹脂層32を接着する。続いて、セパレータ13を負極12の第1面22a上に配置し、樹脂層32にセパレータ13の端部13aをスポット溶着により接着固定する。
【0048】
続いて、
図3に示されるように、樹脂層31が取り付けられた正極11と、樹脂層32及びセパレータ13が取り付けられた負極12との間に、樹脂層33を挟み込み、樹脂層33を樹脂層31及び樹脂層32に溶着することにより、溶着領域6及び溶着領域7を形成する。これにより、空間S(
図2参照)が形成される。その後、樹脂層33の外縁に熱板を押し当てることにより、積層方向で隣り合う樹脂層33同士を溶着し、溶着領域8を形成する。この結果、複数の封止部14が一体化されてなる筒状部材4を備える蓄電装置1が得られる。
【0049】
以下では、蓄電セル2及び蓄電装置1の作用効果について説明する。蓄電セル2では、使用により空間Sの内圧が高まると、集電体21,22が変形しようとする。これにより、集電体21,22は、対向方向Dにおいて互いに離間するように外側に膨らもうとする。蓄電セル2を蓄電装置1で用いる場合、隣接する蓄電セル2との圧力差によっても集電体21,22が変形しようとする。蓄電セル2では、特に、内圧の異常上昇が生じた場合、集電体21,22が大きく変形する。
【0050】
集電体21,22の縁部21c,22cには、封止部14が接合されている。このため、縁部21c,22cでは、集電体21,22の変形が封止部14により拘束される。集電体21,22は、接合領域A1,A2の内縁P1,P3を境界として、集電体21,22が容易に変形する内側の領域と、集電体21,22の変形が封止部14により拘束される外側の領域とを有する。このため、集電体21,22の変形による応力は、変形の起点となる接合領域A1,A2の内縁P1,P3に集中し易い。
【0051】
封止部14は、集電体21の第1面21aに接合された第1樹脂層15と、集電体22の第1面22aに接合された第2樹脂層16と、第1樹脂層15及び第2樹脂層16のそれぞれに溶着された第3樹脂層17と、を有している。第3樹脂層17は、対向方向Dから見て、第1樹脂層15の内縁15aよりも外側において第1樹脂層15に溶着されている。対向方向Dから見て、溶着領域6の内縁P2は、接合領域A1の内縁P1よりも外側に位置している。したがって、集電体21には、第1樹脂層15だけが設けられている領域が存在する。この領域では、第1樹脂層15、第2樹脂層16及び第3樹脂層17が全て設けられた領域に比べて、集電体21の変形が拘束され難い。このため、集電体21の変形により生じる応力の一部は、接合領域A1の内縁P1から、溶着領域6の内縁P2に移動する。
【0052】
同様に、第3樹脂層17は、対向方向Dから見て、第2樹脂層16の内縁16aよりも外側において第2樹脂層16に溶着されている。対向方向Dから見て、溶着領域7の内縁P4は、接合領域A2の内縁P3よりも外側に位置している。したがって、集電体22には、第2樹脂層16だけが設けられている領域が存在する。この領域では、第1樹脂層15、第2樹脂層16及び第3樹脂層17が全て設けられた領域に比べて、集電体22の変形が拘束され難い。このため、集電体22の変形により生じる応力の一部は、接合領域A2の内縁P3から、溶着領域7の内縁P4に移動する。
【0053】
特許文献1に記載の電池では、樹脂層が一層からなり、樹脂層の内側端面が段差を有していない。よって、集電体の変形により生じる応力は、分散されることなく、樹脂層と集電体との接合領域の内縁に集中する。金属箔からなる集電体と樹脂からなる封止部との接合強度は、樹脂部材同士の接合強度よりも低くなる傾向がある。蓄電セル2では、上述のように集電体21,22の変形により生じる応力を、樹脂部材同士が接合される部分である内縁P2,P4に分散させることができるので、封止部14が内縁P1,P3を起点として集電体21,22から剥離(開裂)することを抑制できる。よって、封止性の低下を抑制可能となる。封止部14が完全に剥離しない場合でも、封止部14の耐圧は、蓄電セル2の使用時間が長くなるにつれて徐々に劣化する。蓄電セル2では応力が分散されることにより、封止部14の耐圧が劣化する速度を低減させることができる。したがって、封止部14の耐圧が空間Sの内圧を下回るまでにかかる時間(耐圧寿命)を延ばすことができる。これにより、電池寿命を延ばすことができる。加えて、蓄電セル2では、集電体21,22が内縁P1,P3を起点として損傷することも抑制できる。更に、蓄電セル2では応力が分散されて耐圧強度が向上する結果、第1樹脂層15及び第2樹脂層16の幅(具体的には、第1樹脂層15及び第2樹脂層16における集電体21,22に溶着されている部分の幅)を小さくすることが可能である。
【0054】
第1樹脂層15は、正極活物質層23から離間して第1面21a上に設けられている。このため、第1樹脂層15が第1面21a上で正極活物質層23と接する位置まで設けられている場合に比べて、空間Sを広く保つことができる。同様に、第2樹脂層16は、負極活物質層24から離間して第1面22a上に設けられている。このため、第2樹脂層16が第1面22a上で負極活物質層24と接する位置まで設けられている場合に比べて、例えば、充放電にともなう様々な電気化学反応によって蓄電セル2内で発生するガスを収容可能な余剰空間を確保することができる。この結果、蓄電セル2の長期耐圧(クリープ耐圧)を向上させることができる。
【0055】
対向方向Dから見て、接合領域A1の内縁P1及び接合領域A2の内縁P3は、それぞれ第3樹脂層17の内縁17aよりも内側に位置している。このため、第3樹脂層17の内縁17aが、接合領域A1の内縁P1及び接合領域A2の内縁P3のそれぞれと同じ位置である場合と比べて、余剰空間を更に確保し易い。
【0056】
対向方向Dから見て、溶着領域6は、接合領域A1と重なっている。対向方向Dから見て、溶着領域7は、接合領域A2と重なっている。
【0057】
接合領域A1は、第1樹脂層15と集電体21の第1面21aとの界面の全体により構成されている。第1樹脂層15と集電体21との接着性が高まるので、封止部14による封止性を高めることができる。接合領域A2は、第2樹脂層16と集電体22の第1面22aとの界面の全体により構成されている。第2樹脂層16と集電体22との接着性が高まるので、封止部14による封止性を高めることができる。
【0058】
対向方向Dにおいて、第1樹脂層15の厚さt1及び第2樹脂層16の厚さt2は、それぞれ第3樹脂層17の厚さt3以下である。このように厚さt1が薄いので、集電体21における露出部15cしか設けられていない領域では、集電体21の変形が更に拘束され難い。これにより、集電体21の変形により生じる応力は、内縁P1よりも内縁P2に強く付加され易い。互いに樹脂からなる第1樹脂層15と第3樹脂層17との溶着強度は、金属箔からなる集電体21と第1樹脂層15との接合強度よりも強い。すなわち、集電体21及び集電体22の変形により生じる応力が分散されると共に、その分散された応力を接合強度が強い部分(内縁P2)に集中させることができるので、封止性の低下が効果的に抑制される。
【0059】
同様に、対向方向Dにおいて、厚さt2が薄いので、集電体22における露出部16cしか設けられていない領域では、集電体22の変形が更に拘束され難い。これにより、集電体22の変形により生じる応力は、内縁P3よりも内縁P4に強く付加さ易い。互いに樹脂からなる第2樹脂層16と第3樹脂層17との溶着強度は、金属箔からなる集電体22と第2樹脂層16との接合強度よりも強い。すなわち、集電体21及び集電体22の変形により生じる応力が分散されると共に、その分散された応力を接合強度が強い部分(内縁P4)に集中させることができるので、封止性の低下が効果的に抑制される。
【0060】
厚さt1及び厚さt2は、それぞれ厚さt3の1/10以上である。このため、内縁P2及び内縁P4に過度に応力が集中することを抑制できる。第3樹脂層17が第1樹脂層15及び第2樹脂層16のそれぞれに十分強く溶着され、第1樹脂層15及び第2樹脂層16のそれぞれから剥離しなかったとしても、厚さt1,t2が薄すぎると、対向方向Dから見て内縁17aと重なる位置で、第1樹脂層15及び第2樹脂層16のそれぞれが集電体21,22から剥離するおそれがある。
【0061】
セパレータ13の端部13aは、第3樹脂層17の内縁17aよりも内側で第2樹脂層16の露出部16cに固定されている。このため、セパレータ13を溶着領域6,7から離間させることができる。例えば、仮に、これらの溶着領域6,7にセパレータ13が接していると、セパレータ13に含浸された電解質により溶着領域6,7が膨潤され、溶着領域6,7の溶着強度が低下するおそれがある。蓄電セル2は、セパレータ13をこれらの溶着領域6,7から離間させる構成を有しているので、このように溶着強度が低下するおそれがない。セパレータ13を第3樹脂層17と第1樹脂層15又は第2樹脂層16との間に挟み込む必要がない。よって、第3樹脂層17の全体を第1樹脂層15及び第2樹脂層16に溶着することができる。また、セパレータ13が固定されているので、セパレータ13の位置ずれが抑制される。これにより、集電体21,22が互いに接触し、集電体21,22の間で電気的短絡が生じることが抑制される。
【0062】
第1樹脂層15は、第1面21aの外縁21dまで設けられている。第2樹脂層16は、第1面22aの外縁22dまで設けられている。第1樹脂層15及び第2樹脂層16は、金属箔からなる集電体21の第1面21a及び金属箔からなる集電体22の第1面22aと接合されるため、酸変性ポリエチレン又は酸変性ポリプロピレンのように、金属箔からなる集電体21,22に対して高い接合強度を有する材料で形成する必要がある。これに対し、第3樹脂層17は、第1面21a,22aとは接合されないため、酸変性ポリエチレン及び酸変性ポリプロピレン以外の材料で形成することができる。
【0063】
酸変性ポリエチレン及び酸変性ポリプロピレンは、酸変性されていないポリエチレン及び酸変性されていないポリプロピレンと比較して、金属に対する接着性が高いものの、電解液が透過し易い材料である。本実施形態では、第1樹脂層15及び第2樹脂層16は、酸変性ポリエチレン又は酸変性ポリプロピレンにより形成され、第3樹脂層17は、ポリエチレン又はポリプロピレンにより形成されている。よって、封止部14では、第1樹脂層15及び第2樹脂層16により集電体21,22に対する接合強度を向上させると共に、第3樹脂層17により電解液の漏れを抑制することができる。
【0064】
蓄電装置1は、蓄電セル2が積層されたセルスタック3を備える。このため、封止性の低下を抑制することができる。
【0065】
(第1変形例)
図4は、第1変形例に係る蓄電装置を示す概略的な断面図である。
図5は、
図4に示される蓄電セルの概略的な断面図である。
図5は、
図4の一部拡大図である。
図4及び
図5に示されるように、第1変形例に係る蓄電装置1Aは、複数の蓄電セル2Aを備える。蓄電セル2Aと蓄電セル2(
図2参照)との相違点は、主に封止部14及びセパレータ13である。蓄電セル2Aにおいても、第3樹脂層17は、対向方向Dから見て、第1樹脂層15の内縁15aよりも外側において第1樹脂層15に溶着されている。第3樹脂層17は、対向方向Dから見て、第2樹脂層16の内縁16aよりも外側において第2樹脂層16に溶着されている。しかしながら、蓄電セル2Aでは、溶着領域6,7が内縁17aまで至っておらず、溶着領域6,7の全体が溶着領域8に含まれている。対向方向Dから見て、第3樹脂層17のうち、溶着領域8よりも内側の部分は、第1樹脂層15及び第2樹脂層16に溶着(接着)されていない。
【0066】
蓄電セル2Aでは、第1樹脂層15は、対向方向Dから見て、集電体21の外縁21dの外側まで設けられている。第2樹脂層16は、対向方向Dから見て、集電体22の外縁22dの外側まで設けられている。蓄電装置1Aにおいて、対向方向Dで互いに隣り合う集電体21及び集電体22にそれぞれ設けられた第1樹脂層15及び第2樹脂層16は、対向方向Dから見て、集電体21及び集電体22の外側で互いに溶着されている。
【0067】
蓄電セル2Aでは、セパレータ13は、露出部16cに固定されていない。セパレータ13は、端部13aが第3樹脂層17と第1樹脂層15又は第2樹脂層16との間に挟み込まれることにより、封止部14に固定されている。第1変形例では、端部13aは、溶着領域8よりも内側で、第3樹脂層17と第2樹脂層16との間に挟み込まれている。更に、端部13aは、例えば、スポット溶着等により、部分的に第3樹脂層17の第2樹脂層16側の面に固定されている。端部13aは、第1樹脂層15又は第2樹脂層16に溶着固定されていてもよい。端部13aは、第1樹脂層15、第2樹脂層16、及び第3樹脂層17に溶着固定されていなくてもよく、セパレータ13は、単に、端部13aが第1樹脂層15と第3樹脂層17との間、又は、第2樹脂層16と第3樹脂層17との間に挟み込まれることにより、封止部14に固定されていてもよい。
【0068】
図6を参照して、蓄電装置1Aの製造方法の一例を説明する。
図6は、
図4に示される蓄電装置の製造方法を説明する概略的な断面図である。まず、蓄電装置1の製造方法と同様に、正極11、負極12、第1樹脂層15となる樹脂層31、
第2樹脂層16となる樹脂層32、及び
、樹脂層33をそれぞれ準備し、正極11に樹脂層31を取付けると共に、負極12に樹脂層32を取付ける。このとき、樹脂層31,32を集電体21,22の外側まで延在させる。続いて、樹脂層33にセパレータ13の端部13aをスポット溶着により固定する。続いて、
図6に示されるように、樹脂層31が取り付けられた正極11と、樹脂層32及びセパレータ13が取り付けられた負極12との間に、セパレータ13が取り付けられた樹脂層33を挟み込む。正極11と負極12との間に樹脂層33を挟み込んだ状態で、樹脂層31,32,33の外縁に熱板を押し当てたり、樹脂層31,32,33の外縁を赤外加熱装置などで加熱したりすることにより、樹脂層31,32,33を溶着し、溶着領域6,7を含む溶着領域8を形成する。このとき、対向方向Dで隣り合う樹脂層31,32は、集電体21,22の外側で互いに溶着される。この結果、複数の封止部14が一体化されてなる筒状部材4を備える蓄電装置1Aが得られる。
【0069】
蓄電セル2Aにおいても、第3樹脂層17は、対向方向Dから見て、第1樹脂層15の内縁15aよりも外側において第1樹脂層15に溶着されている。対向方向Dから見て、溶着領域6の内縁P5は、接合領域A1の内縁P1よりも外側に位置している。したがって、集電体21には、第1樹脂層15だけが設けられている領域が存在する。ここで、「設けられている」とは、接着等により集電体21に直接的又は間接的に固定され、集電体21の変形を拘束する状態で設けられていることを意味する。つまり、第3樹脂層17の内縁部のように、集電体21に固定されることなく、単に集電体21上に配置されている場合は、該当しない。
【0070】
蓄電セル2Aにおいて、集電体21における第1樹脂層15だけが設けられている領域は、第1樹脂層15の内縁15aから溶着領域6の内縁P5までの領域である。この領域では、溶着領域6のように、第1樹脂層15、第2樹脂層16及び第3樹脂層17が全て設けられた領域に比べて、集電体21の変形が拘束され難い。このため、集電体21の変形により生じる応力の一部は、接合領域A1の内縁P1から、溶着領域6の内縁P5に移動する。なお、溶着領域6の内縁P5は、対向方向Dから見て、接合領域A1に重ならない集電体21の外縁21dの外側に設けられてもよい。
【0071】
同様に、第3樹脂層17は、対向方向Dから見て、第2樹脂層16の内縁16aよりも外側において第2樹脂層16に溶着されている。対向方向Dから見て、溶着領域7の内縁P6は、接合領域A2の内縁P3よりも外側に位置している。したがって、集電体22には、第2樹脂層16だけが設けられている領域が存在する。上述のように、「設けられている」とは、接着等により集電体22に直接的又は間接的に固定され、集電体22の変形を拘束する状態で設けられていることを意味する。つまり、第3樹脂層17の内縁部のように、集電体22に固定されることなく、単に集電体22上に配置されている場合は、該当しない。
【0072】
蓄電セル2Aにおいて、集電体22における第2樹脂層16だけが設けられている領域は、第2樹脂層16の内縁16aから溶着領域7の内縁P6までの領域である。この領域では、溶着領域7のように、第1樹脂層15、第2樹脂層16及び第3樹脂層17が全て設けられた領域に比べて、集電体22の変形が拘束され難い。このため、集電体22の変形により生じる応力の一部は、接合領域A2の内縁P3から、溶着領域7の内縁P6に移動する。なお、溶着領域7の内縁P6は、対向方向Dから見て、接合領域A2に重ならない集電体22の外縁22dの外側に設けられてもよい。
【0073】
蓄電セル2Aにおいても、このように集電体21,22の変形により生じる応力を分散させることができるので、封止部14が内縁P1,P3を起点として集電体21,22から剥離(開裂)することを抑制できる。蓄電セル2Aでは、第1樹脂層15及び第2樹脂層16は、対向方向Dから見て、集電体21及び集電体22の外側で互いに溶着されている。このため、集電体21の縁部21c及び集電体22の縁部22cの全体を第1樹脂層15及び第2樹脂層16で覆うことができる。よって、第3樹脂層17が集電体21及び集電体22と接しない。これにより、第3樹脂層17の構成材料として、集電体21及び集電体22に対する接着強度が低い材料を選択することができる。
【0074】
(第2変形例)
図7は、第2変形例に係る蓄電装置を示す概略的な断面図である。
図8は、
図7に示される蓄電セルの概略的な断面図である。
図8は、
図7の一部拡大図である。
図1に示される蓄電装置1では、上述のように、互いに別部材である集電体21及び集電体22を1つの集電体とする疑似的なバイポーラ電極10が形成される。これに対し、
図7に示される第2変形例に係る蓄電装置1Bは、一部材として形成された集電体40を有するバイポーラ電極10Bを備える。
図7及び
図8に示されるように、集電体40は、互いに反対を向く第1面40a及び第2面40bと、縁部40cとを有している。バイポーラ電極10Bは、第1面40aに設けられた正極活物質層23、及び、第2面40bに設けられた負極活物質層24を更に有する。バイポーラ電極10Bでは、1つの集電体40は、第1面40aに設けられた正極活物質層23と共に正極11を構成し、第2面40bに設けられた負極活物質層24と共に負極12を構成している。より具体的には、1つの集電体40の第1面40aが正極活物質層23と共に正極11を構成し、第2面40bが負極活物質層24と共に負極12を構成している。すなわち、各バイポーラ電極10Bでは、1つの集電体40が正極11及び負極12に共有され、正極11を構成する第1集電体として機能すると共に、負極12を構成する第2集電体として機能している。蓄電セル2Bは、対向方向Dで隣り合う蓄電セル2Bと1つの集電体40を共有している点で、蓄電セル2(
図1参照)と相違している。
【0075】
集電体40は、集電体21,22と同様に、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、正極活物質層23及び負極活物質層24に電流を流し続けるための化学的に不活性な電気伝導体である。集電体40の構成は、例えば、集電体21,22の構成と同じである。ここでは、集電体40として、2枚の異なる金属箔であるアルミニウム箔及び銅箔を貼り合せて一体化した集電体を用いている。第1面40aはアルミニウム箔の表面により構成され、第2面40bは銅箔の表面により構成されている。
【0076】
集電体40の縁部40cには、第1面40a側及び第2面40b側のいずれにおいても、活物質層が設けられていない。換言すると、第1面40a及び第2面40bは、活物質層が設けられていない領域を縁部40cに有している。縁部40cは、対向方向Dから見て、集電体40において正極活物質層23又は負極活物質層24が設けられた領域の外側に位置している。
【0077】
バイポーラ電極10Bでは、接合領域A1は、第1樹脂層15と第1面40aとが接合された領域であり、第1樹脂層15と第1面40aとの界面により構成されている。バイポーラ電極10Bでは、接合領域A2は、第2樹脂層16と第2面40bとが接合された領域であり、第2樹脂層16と第2面40bとの界面により構成されている。
【0078】
蓄電装置1Bは、複数のバイポーラ電極10Bと、正極終端電極として機能する1つの正極11と、負極終端電極として機能する1つの負極12とが積層されてなる。このような電極が積層されることにより、蓄電装置1Bでは、複数の蓄電セル2Bがスタックされた状態が実現されている。
【0079】
蓄電セル2Bは、蓄電セル2Aと同様に、以下の点でも蓄電セル2と相違している。すなわち、溶着領域6,7が内縁17aまで至っておらず、溶着領域6,7の全体が溶着領域8に含まれている。正極11では、対向方向Dから見て、第1樹脂層15は、集電体21の第1面21aの外縁21d(
図5参照)の外側まで設けられている。バイポーラ電極10Bでは、対向方向Dから見て、第1樹脂層15は、集電体40の第1面40aの外縁40dの外側まで設けられ、第2樹脂層16は、集電体40の第2面40bの外縁40eの外側まで設けられている。負極12では、対向方向Dから見て、第2樹脂層16は、集電体22の第1面22aの外縁22d(
図5参照)の外側まで設けられている。また、バイポーラ電極10Bにおいて、集電体40の第1面40aに設けられた第1樹脂層15のうち、対向方向Dから見て第1面40aの外縁40dの外側に延在する部分と、第2面40bに設けられた第2樹脂層16のうち、対向方向Dから見て第2面40bの外縁40eの外側に延在する部分とは、互いに溶着されている。
【0080】
図7~
図9を参照して、蓄電装置1Bの製造方法の一例を説明する。
図9は、
図7に示される蓄電装置の製造方法を説明する概略的な断面図である。まず、蓄電装置1Aの製造方法と同様に、正極終端電極となる正極11、負極終端電極となる負極12、第1樹脂層15となる樹脂層31、第2樹脂層16となる樹脂層32、及び、樹脂層33をそれぞれ準備し、正極11に樹脂層31を取付けると共に、負極12に樹脂層32を取付ける。このとき、樹脂層31の外縁を、対向方向Dから見て集電体21の外縁21dの外側まで延在させると共に、樹脂層32の外縁を、対向方向Dから見て集電体22の外縁22dの外側まで延在させる。蓄電装置1Bの製造方法では、更に複数のバイポーラ電極10Bを準備し、集電体40の第1面40aの縁部40cに樹脂層31を取り付けると共に、集電体40の第2面40bの縁部40cに樹脂層32を取り付ける。このとき、樹脂層31の外縁を、対向方向Dから見て集電体40の外縁40dの外側まで延在させると共に、樹脂層32の外縁を、対向方向Dから見て集電体40の外縁40eの外側まで延在させる。続いて、セパレータ13を負極12の第1面22a上、及び、バイポーラ電極10Bの第2面40b上にそれぞれに配置し、各樹脂層32にセパレータ13の端部13aをスポット溶着により接着固定する。
【0081】
続いて、樹脂層32及びセパレータ13が取り付けられた負極12、樹脂層31,32及びセパレータ13が取り付けられた複数のバイポーラ電極10B、及び、樹脂層31が取り付けられた正極11を対向方向Dにおいて積層する。このとき、隣り合う電極間(すなわち、隣り合う負極12及びバイポーラ電極10B間、隣り合う一対のバイポーラ電極10B間、並びに、隣り合うバイポーラ電極10B及び正極11間)に樹脂層33を挟み込み、樹脂層31,32,33の外縁に熱板を押し当てたり、樹脂層31,32,33の外縁を赤外加熱装置などで加熱したりすることにより、樹脂層31,32,33の外縁を溶着し、溶着領域6,7を含む溶着領域8を形成する。これにより、空間Sが形成される。対向方向Dで隣り合う樹脂層31,32は、対向方向Dから見て集電体40の外縁40d,40eの外側で互いに溶着される。この結果、複数の封止部14が一体化されてなる筒状部材4を備える蓄電装置1Bが得られる。
【0082】
蓄電セル2Bにおいても、第3樹脂層17は、対向方向Dから見て、第1樹脂層15の内縁15aよりも外側において第1樹脂層15に溶着されている。対向方向Dから見て、溶着領域6の内縁P5は、接合領域A1の内縁P1よりも外側に位置している。したがって、集電体21の第1面21a及び集電体40の第1面40aには、第1樹脂層15だけが設けられている領域が存在する。この領域では、第1樹脂層15、第2樹脂層16及び第3樹脂層17が全て設けられた領域に比べて、集電体21,40の変形が拘束され難い。このため、集電体21,40の変形により生じる応力の一部は、接合領域A1の内縁P1から、溶着領域6の内縁P5に移動する。なお、溶着領域6の内縁P5は、対向方向Dからみて、接合領域A1に重ならない集電体40の外縁40dの外側に設けられてもよい。
【0083】
同様に、第3樹脂層17は、対向方向Dから見て、第2樹脂層16の内縁16aよりも外側において第2樹脂層16に溶着されている。対向方向Dから見て、溶着領域7の内縁P6は、接合領域A2の内縁P3よりも外側に位置している。したがって、集電体22の第1面22a及び集電体40の第2面40bには、第2樹脂層16だけが設けられている領域が存在する。この領域では、第1樹脂層15、第2樹脂層16及び第3樹脂層17が全て設けられた領域に比べて、集電体22,40の変形が拘束され難い。このため、集電体22,40の変形により生じる応力の一部は、接合領域A2の内縁P3から、溶着領域7の内縁P6に移動する。なお、溶着領域7の内縁P6は、対向方向Dからみて、接合領域A2に重ならない集電体40の外縁40eの外側に設けられてもよい。
【0084】
蓄電セル2Bにおいても、このように集電体21,22,40の変形により生じる応力を分散させることができるので、封止部14が内縁P1,P3を起点として集電体21,22から剥離(開裂)することを抑制できる。
【0085】
本開示は上記実施形態及び上記変形例に限定されない。上記実施形態及び上記変形例を適宜組み合わせてもよい。蓄電セル2,2A,2Bでは、露出部15c及び露出部16cの幅は同等であるが、端部13aが固定されている露出部16cの幅は、露出部15cの幅より広くてもよい。すなわち、対向方向Dから見て、第2樹脂層16の内縁16aは、第1樹脂層15の内縁15aよりも内側に位置していてもよい。この場合、露出部16cの幅が広いので、セパレータ13を安定して露出部16cに固定することができる。また、露出部15cの幅が狭いので、空間Sを更に広く保つことができる。
【0086】
蓄電セル2,2Bにおいて、セパレータ13の端部13aは、第3樹脂層17の内縁17aよりも内側で第2樹脂層16に固定されているが、第1樹脂層15に固定されていてもよい。すなわち、端部13aは、露出部16cでなく、露出部15cに溶着されていてもよい。この場合、対向方向Dから見て、内縁15aは、内縁16aよりも内側に位置していてもよい。露出部15cの幅が広いので、セパレータ13を安定して露出部15cに固定することができる。また、露出部16cの幅が狭いので、空間Sを広く保つことができる。
【0087】
蓄電セル2において、第1樹脂層15は、第1面21aの外縁21dまで設けられていなくてもよく、第2樹脂層16は第1面22aの外縁22dまで設けられていなくてもよい。この場合であっても、例えば、酸変性ポリエチレン又は酸変性ポリプロピレンにより第3樹脂層17を形成すれば、封止部14と集電体21,22との間の接着強度の低下を抑制することができる。蓄電セル2Aでは、第1樹脂層15は、第1面21aの外側まで設けられていなくてもよく、第2樹脂層16は、第1面22aの外側まで設けられていなくてもよい。
【0088】
蓄電セル2では、対向方向Dから見て、溶着領域8は、集電体21,22と重なる部分を有さず、溶着領域6,7から離間していてもよい。蓄電セル2では、溶着領域8が設けられていなくてもよい。つまり、筒状部材4では、複数の封止部14が溶着により一体化されていなくてもよい。この場合、蓄電装置1は、例えば、筒状部材4に積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材を更に備え、これにより、複数の蓄電セル2が積層された状態を安定して維持する構成としてもよい。
【0089】
蓄電セル2Aでは、第3樹脂層17の内縁17aは、対向方向Dから見て、第1樹脂層15の内縁15a及び第2樹脂層16の内縁16aと一致していてもよいし、第1樹脂層15の内縁15a及び第2樹脂層16の内縁16aよりも内側に位置していてもよい。
【0090】
蓄電セル2Bでは、セパレータ13は、端部13aが第3樹脂層17と第1樹脂層15又は第2樹脂層16との間に挟み込まれることにより、封止部14に固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1,1A,1B…蓄電装置、2,2A,2B…蓄電セル、3…セルスタック(積層体)、6,7,8…溶着領域、11…正極、12…負極、13…セパレータ、13a…端部、14…封止部、15…第1樹脂層、15a…内縁、15b…外縁、15c…露出部、16…第2樹脂層、16a…内縁、16b…外縁、16c…露出部、17…第3樹脂層、17a…内縁、21…集電体、21a…第1面、21d…外縁、22…集電体、22a…第1面、22d…外縁、23…正極活物質層、24…負極活物質層、40…集電体、40a…第1面、40b…第2面、40d,40e…外縁、A1,A2…接合領域、S…空間、P1,P2,P3,P4、P5,P6…内縁。