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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】金属被覆ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/09 20060101AFI20240925BHJP
   B32B 15/095 20060101ALI20240925BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20240925BHJP
   C08J 7/043 20200101ALI20240925BHJP
   C08L 75/06 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B32B15/09 Z
B32B15/095
C08G18/44
C08J7/043 A CFD
C08L75/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023037989
(22)【出願日】2023-03-10
(62)【分割の表示】P 2019103516の分割
【原出願日】2019-06-03
(65)【公開番号】P2023076487
(43)【公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高木 紀志
(72)【発明者】
【氏名】瀧井 功
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝也
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/068112(WO,A1)
【文献】特開2008-300724(JP,A)
【文献】特開2007-096164(JP,A)
【文献】特開2012-162691(JP,A)
【文献】特開2011-156848(JP,A)
【文献】国際公開第2008/099891(WO,A1)
【文献】特開平07-211584(JP,A)
【文献】杉山敦史、吉野正洋,電磁波対策のめっき技術,表面技術,日本,表面技術協会,2017年,68巻、4号,191頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
C08J7/04-7/06
C09D11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルム基材の少なくとも一方の面に塗布層とめっき処理による金属被覆層とを順に有する金属被覆ポリエステルフィルムであって、前記塗布層が、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂、架橋剤、及びポリエステル樹脂を含有する組成物が硬化されて形成されており、前記ポリエステル樹脂が5-ナトリウムスルホイソフタル酸共重合ポリエステルであり、
前記架橋剤が、3官能以上のブロックイソシアネート基を有する化合物である、
金属被覆ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂が、分岐構造を有する請求項1に記載の金属被覆ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂が、ポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分が合成、重合されてなり、前記合成、重合する際のポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分の質量比(ポリカーボネートポリオール成分の質量/ポリイソシアネート成分の質量)が0.5~3である請求項1または2に記載の金属被覆ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂及び架橋剤の固形分の総和を100質量%とするとき、架橋剤の含有率が5質量%以上50質量%以下である請求項1~のいずれかに記載の金属被覆ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂及び架橋剤の固形分の総和を100質量%とするとき、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂の含有率が5質量%以上50質量%以下である請求項1~のいずれかに記載の金属被覆ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂及び架橋剤の固形分の総和を100質量%とするとき、ポリエステル樹脂含有率が10質量%以上70質量%以下である請求項1~のいずれかに記載の金属被覆ポリエステルフィルム。
【請求項7】
電磁波シールド用、回路用又はミラー用に用いられる請求項1~のいずれかに記載の金属被覆ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属被覆ポリエステルフィルムに関する。易接着性の塗布層を有する積層ポリエステルフィルムの塗布層上に金属被覆した金属被覆ポリエステルフィルム関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルムの表面にめっき処理を施して、金属被覆層を設ける技術がある。
しかし、これらは透明性や後加工性が不足するため、用途が限定されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
そこで、ポリエステルフィルムの表面に、めっき処理を施して、金属被覆層を設ける技術もある。しかし、これらは金属層とフィルムとの密着が、特に高温高湿度下での密着が不足していた(例えば、特許文献4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-149666号公報
【文献】特開2013-184425号公報
【文献】特開2015-061763号公報
【文献】特開2009-194071号公報
【文献】特開2014-160129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、高温高湿度下での金属被覆層とフィルムとの密着性に優れた金属被覆ポリエステルフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、ポリエステルフィルム基材の少なくとも一方の面に塗布層を有しており、前記塗布層が架橋剤、ポリエステル樹脂及び、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含有する組成物が硬化されてなり、更に前記塗布層上にめっき処理による金属被覆層を設ける場合に本発明の課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
1. ポリエステルフィルム基材の少なくとも一方の面に塗布層とめっき処理による金属被覆層とを順に有する金属被覆ポリエステルフィルムであって、前記塗布層が、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂、架橋剤、及びポリエステル樹脂を含有する組成物が硬化されて形成されており、前記ポリエステル樹脂が5-ナトリウムスルホイソフタル酸共重合ポリエステルである金属被覆ポリエステルフィルム。
2. 前記ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂が、分岐構造を有する上記第1に記載の金属被覆ポリエステルフィルム。
3. 前記架橋剤が、3官能以上のブロックイソシアネート基を有する化合物である上記第1又は第2に記載の金属被覆ポリエステルフィルム。
4. 前記ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂が、ポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分が合成、重合されてなり、前記合成、重合する際のポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分の質量比(ポリカーボネートポリオール成分の質量/ポリイソシアネート成分の質量)が0.5~3である上記第1~第3のいずれかに記載の金属被覆ポリエステルフィルム。
5. 前記ポリエステル樹脂、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂及び架橋剤の固形分の総和を100質量%とするとき、架橋剤の含有率が5質量%以上50質量%以下である上記第1~第4のいずれかに記載の金属被覆ポリエステルフィルム。
6. 前記ポリエステル樹脂、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂及び架橋剤の固形分の総和を100質量%とするとき、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂の含有率が5質量%以上50質量%以下である上記第1~第5のいずれかに記載の金属被覆ポリエステルフィルム。
7. 前記ポリエステル樹脂、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂及び架橋剤の固形分の総和を100質量%とするとき、ポリエステル樹脂含有率が10質量%以上70質量%以下である上記第1~第6のいずれかに記載の金属被覆ポリエステルフィルム。
8. 電磁波シールド用、回路用又はミラー用に用いられる上記第1~第7のいずれかに記載の金属被覆ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属被覆ポリエステルフィルムは、導電性金属を有し、金属被覆層の高温高湿度下での密着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(ポリエステルフィルム基材)
本発明においてポリエステルフィルム基材を構成するポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのほか、前記のようなポリエステル樹脂のジオール成分又はジカルボン酸成分の一部を以下のような共重合成分に置き換えた共重合ポリエステル樹脂であり、例えば、共重合成分として、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを挙げることができる。
【0010】
本発明においてポリエステルフィルム基材のために好適に用いられるポリエステル樹脂は、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートから選ばれるものである。これらのポリエステル樹脂の中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。また、これらのポリエステル樹脂から構成されたポリエステルフィルム基材は二軸延伸ポリエステルフィルムであることが好ましく、耐薬品性、耐熱性、機械的強度などを向上させることができる。
【0011】
ポリエステル樹脂の製造の際に用いられる重縮合のための触媒としては特に限定されないが、三酸化アンチモンが安価で、かつ優れた触媒活性をもつ触媒であるため好適である。また、ゲルマニウム化合物、又はチタン化合物を用いることも好ましい。さらに好ましい重縮合触媒としては、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する触媒、アルミニウム及び/又はその化合物とリン化合物を含有する触媒、リン化合物のアルミニウム塩を含有する触媒が挙げられる。
【0012】
また、本発明におけるポリエステルフィルム基材は、その層構成について特に限定されるものではなく、単層のポリエステルフィルムであってもよいし、相互に成分が異なる2層構成でもよく、外層と内層を有する、少なくとも3層からなるポリエステルフィルム基材であってもよい。
【0013】
(塗布層)
本発明において、ポリエステルフィルム上の塗布層は、めっき処理による金属被覆層との密着性を向上させるために、その少なくとも片面に、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂、架橋剤、及びポリエステル樹脂を含有する組成物が硬化されて形成されている塗布層が積層されていることが好ましい。前記の塗布層は、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂やポリエステル樹脂が架橋剤によって架橋された構造となり硬化されて形成されていると考えられるが、その架橋された化学構造そのものを表現することが困難であるため、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂、架橋剤、及びポリエステル樹脂を含有する組成物が硬化されて形成されていると表現している。塗布層は、ポリエステルフィルムの両面に設けてもよく、ポリエステルフィルムの片面のみに設け、他方の面には異種の樹脂被覆層を設けてもよい。前記ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂は、分子鎖に分岐構造を有することが更に好ましい。
【0014】
以下、塗布層の各組成について詳説する。
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂)
本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂は、少なくともポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分に由来するウレタン結合部分を有することが好ましく、分岐構造を有することが更に好ましい。本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂は、必要に応じて鎖延長剤を含むものである。ここでいう分岐構造とは、分子鎖を構成する前記のようないずれかの原料成分の末端官能基数が3個以上存在することによって、合成、重合された後に枝分かれ上の分子鎖構造を形成することによって好適に導入されるものである。
【0015】
本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂は、その分岐構造によって、分子鎖中の末端官能基数は3~6個であると、樹脂が水溶液中に安定して分散し、ブロッキング耐性を向上できて好ましい。
【0016】
本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を合成、重合する際のポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分の質量比(ポリカーボネートポリオール成分の質量/ポリイソシアネート成分の質量)の下限は好ましくは0.5であり、より好ましくは0.6であり、さらに好ましくは0.7であり、特に好ましくは0.8であり、最も好ましくは1.0である。0.5以上であると、UVインキへの密着性を向上でき好ましい。本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を合成、重合する際のポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分の質量比の上限は好ましくは3.0であり、より好ましくは2.2であり、さらに好ましくは2.0であり、特に好ましくは1.7であり、最も好ましくは1.5である。3.0以下であるとブロッキング耐性を向上でき好ましい。
【0017】
本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を合成、重合するために用いるポリカーボネートポリオール成分には、耐熱、耐加水分解性に優れる脂肪族系ポリカーボネートポリオールを含有することが好ましい。脂肪族系ポリカーボネートポリオールとしては、脂肪族系ポリカーボネートジオール、脂肪族系ポリカーボネートトリオールなどが挙げられるが、好適には脂肪族系ポリカーボネートジオールを用いることができる。本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を合成、重合するために用いる脂肪族系ポリカーボネートジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジオール類の1種または2種以上と、例えば、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲンなどのカーボネート類とを反応させることにより得られる脂肪族系ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0018】
本発明における前記のポリカーボネートポリオールの数平均分子量としては、好ましくは1000~3000である。より好ましくは1200~2900、最も好ましくは1500~2800である。1000以上であると、金属被覆層との密着性を向上でき好ましい。3000以下であると、ブロッキング耐性を向上でき好ましい。
【0019】
本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂の合成、重合に用いるポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。前記の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類、または、脂肪族ジイソシアネート類等を使用した場合、黄変の問題がなく好ましい。また、強硬な塗膜になり過ぎず、ポリエステルフィルム基材の熱収縮による応力を緩和でき、接着性が良好となり好ましい。
【0020】
鎖延長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6-ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。
【0021】
ウレタン樹脂中に分岐構造を形成させるためには、例えば、前記のポリカーボネートポリオール成分、ポリイソシアネート、鎖延長剤を適切な温度、時間を設けて反応させたのち、3官能以上の水酸基あるいはイソシアネート基を有する化合物を添加し、さらに反応を進行させる方法が好ましく採用され得る。
【0022】
3官能以上の水酸基を有する化合物の具体例としては、カプロラクトントリオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ヘキサントリオール、1,2,3-ヘキサントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、1,3,4-ヘキサントリオール、1,3,4-ペンタントリオール、1,3,5-ヘキサントリオール、1,3,5-ペンタントリオール、ポリエーテルトリオールなどが挙げられる。前記のポリエーテルトリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等のアルコール、ジエチレントリアミン等のような、活性水素を3個有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アミレンオキシド、グリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、t-ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のモノマーの1種又は2種以上を付加重合することによって得られる化合物が挙げられる。
【0023】
3官能以上のイソシアネート基を有する化合物の具体例としては、1分子中に少なくとも3個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であればよい。本発明において3官能以上のイソシアネート化合物は、2個のイソシアネート基を有する、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等のイソシアネートモノマーを変性したビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートは、例えば1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、および4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートは、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香脂肪族ジイソシアネートは、例えばキシリレンジイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートは、例えば3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、および1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
ビュレット体とは、イソシアネートモノマーが自己縮合して形成したビュレット結合を有する自己縮合物であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体などが挙げられる。
ヌレート体とは、イソシアネートモノマーの3量体であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
アダクト体とは、上記イソシアネートモノマーと3官能以上の低分子活性水素含有化合物とを反応させてなる、3官能以上のイソシアネート化合物をいい、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、などが挙げられる。
【0024】
3官能以上の官能基数を有する鎖延長剤としては、上記鎖延長剤の説明中のトリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の3官能以上の水酸基を有するアルコール類などが該当する。
【0025】
本発明における塗布層は、水系の塗布液を用い後述のインラインコート法により設けることが好ましい。そのため、本発明のウレタン樹脂は水溶性又は水分散性を持つことが望ましい。なお、前記の「水溶性又は水分散性」とは、水、または水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して分散することを意味する。
【0026】
ウレタン樹脂に水分散性を付与させるためには、ウレタン分子骨格中にスルホン酸(塩)基又はカルボン酸(塩)基を導入(共重合)することができる。耐湿性を維持するために、弱酸性であるカルボン酸(塩)基を導入するのが好適である。また、ポリオキシアルキレン基などのノニオン性基を導入することもできる。
【0027】
ウレタン樹脂にカルボン酸(塩)基を導入するためには、例えば、ポリオール成分として、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボン酸基を有するポリオール化合物を共重合成分として導入し、塩形成剤により中和する。塩形成剤の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミンなどのトリアルキルアミン類、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリンなどのN-アルキルモルホリン類、N-ジメチルエタノールアミン、N-ジエチルエタノールアミンなどのN-ジアルキルアルカノールアミン類が挙げられる。これらは単独で使用できるし、2種以上併用することもできる。
【0028】
水分散性を付与するために、カルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物を共重合成分として用いる場合は、ウレタン樹脂中のカルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物の組成モル比は、ウレタン樹脂の全ポリイソシアネート成分を100モル%としたときに、3~60モル%であることが好ましく、5~40モル%であることが好ましい。前記組成モル比が3モル%以上の場合は、水分散性が得られて好ましい。また、前記組成モル比が60モル%以下の場合は、耐水性が保たれ耐湿熱性が得られて好ましい。
【0029】
本発明のウレタン樹脂は、強硬性向上のため末端にブロックイソシアネート構造を有してもよい。
【0030】
(架橋剤)
本発明において、塗布層形成用組成物が含有する架橋剤としてはブロックイソシアネートが好ましく、3官能以上のブロックイソシアネートがさらに好ましく、4官能以上のブロックイソシアネートが特に好ましい。これらによりブロッキング耐性、ハードコート層との密着性が向上する。イソシアネート官能基数は8官能以下が好ましく、6官能以下がより好ましい。
【0031】
前記ブロックイソシアネートのNCO当量の下限は好ましくは100であり、より好ましくは120であり、さらに好ましくは130であり、特に好ましくは140であり、最も好ましくは150である。NCO当量が100以上であると塗膜割れが発生するおそれがなく好ましい。NCO当量の上限は好ましくは500であり、より好ましくは400であり、さらに好ましくは380であり、特に好ましくは350であり、最も好ましくは300である。NCO当量が500以下であると、ブロッキング耐性が保たれて好ましい。
【0032】
前記ブロックイソシアネートのブロック剤の沸点の下限は好ましくは150℃であり、より好ましくは160℃であり、さらに好ましくは180℃であり、特に好ましくは200℃であり、最も好ましくは210℃である。ブロック剤の沸点が高い程、塗布液の塗布後の乾燥工程やインラインコート法の場合はフィルム製膜工程における熱付加によってもブロック剤の揮発が抑制され、微小な塗布面凹凸の発生が抑制され、フィルムの透明性が向上する。ブロック剤の沸点の上限は特に限定しないが、生産性の点から300℃程度が上限であると思われる。沸点は分子量と関係するため、ブロック剤の沸点を高くするためには、分子量の大きなブロック剤を用いることが好ましく、ブロック剤の分子量は50以上が好ましく、60以上がより好ましく、80以上がさらに好ましい。
【0033】
ブロック剤の解離温度のブロック剤の解離温度の上限は好ましくは200℃であり、より好ましくは180℃であり、さらに好ましくは160℃であり、特に好ましくは150℃であり、最も好ましくは120℃である。ブロック剤は塗布液の塗布後の乾燥工程やインラインコート法の場合はフィルム製膜工程における熱付加により官能基と解離し、再生イソシアネート基が生成される。そのため、ウレタン樹脂などとの架橋反応が進行し、接着性が向上する。ブロックイソシアネートの解離温度が上記温度以下である場合は、ブロック剤の解離が十分進行するため、接着性、特に耐湿熱性が良好となる。
【0034】
本発明のブロックイソシアネートに用いる解離温度が120℃以下、かつ、ブロック剤の沸点が150℃以上であるブロック剤としては、重亜硫酸塩系化合物:重亜硫酸ソーダなど、ピラゾール系化合物:3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ブロモー3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロー3,5-ジメチルピラゾールなど、活性メチレン系:マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル)、メチルエチルケトン等。トリアゾール系化合物:1,2,4-トリアゾールなどが挙げられる。なかでも、耐湿熱性、黄変の点から、ピラゾール系化合物が好ましい。
【0035】
本発明のブロックイソシアネートの前駆体である3官能以上のポリイソシアネートは、イソシアネートモノマーを導入して好適に得ることができる。例えば、2個のイソシアネート基を有する芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、又は脂環族ジイソシアネート等のイソシアネートモノマーを変性したビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体等が挙げられる。
ビュレット体とは、イソシアネートモノマーが自己縮合して形成したビュレット結合を有する自己縮合物であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体などが挙げられる。
ヌレート体とは、イソシアネートモノマーの3量体であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
アダクト体とは、イソシアネートモノマーと3官能以上の低分子活性水素含有化合物とを反応させてなる、3官能以上のイソシアネート化合物をいい、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、などが挙げられる。
【0036】
前記のイソシアネートモノマーとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,4-ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4′-ジイソシアネート、2,2′-ジフェニルプロパン-4,4′-ジイソシアネート、3,3′-ジメチルジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、4,4′-ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′-ジメトキシジフェニル-4,4′-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類が挙げられる。透明性、接着性、耐湿熱性の点から、脂肪族、脂環式イソシアネートやこれらの変性体が好ましく、黄変がなく高い透明性が要求される光学用として好ましい。
【0037】
本発明におけるブロックイソシアネートは、水溶性、または、水分散性を付与するために前駆体であるポリイソシアネートに親水基を導入することができる。親水基としては、(1)ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩やジアルキルアミノアルキルアミンの四級アンモニウム塩など、(2)スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩など、(3)アルキル基で片末端封鎖されたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。親水性部位を導入した場合は(1)カチオン性、(2)アニオン性、(3)ノニオン性となる。なかでも、他の水溶性樹脂はアニオン性のものが多いため、容易に相溶できるアニオン性やノニオン性が好ましい。また、アニオン性は他の樹脂との相溶性に優れ、ノニオン性はイオン性の親水基をもたないため、耐湿熱性を向上させるためにも好ましい。
【0038】
アニオン性の親水基としては、ポリイソシアネートに導入するための水酸基、親水性を付与するためのカルボン酸基を有するものが好ましい。例えば、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、オキシ酪酸、オキシ吉草酸、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、カルボン酸基を有するポリカプロラクトンが挙げられる。カルボン酸基を中和するには、有機アミン化合物が好ましい。例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミンなどの炭素数1から20の直鎖状、分岐状の1,2または3級アミン、モルホリン、N-アルキルモルホリン、ピリジンなどの環状アミン、モノイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの水酸基含有アミンなどが挙げられる。
【0039】
ノニオン性の親水基としては、アルキル基で片末端封鎖されたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドの繰り返し単位が3~50が好ましく、より好ましくは、5~30である。繰り返し単位が小さい場合は、樹脂との相溶性が悪くなり、ヘイズが上昇し、大きい場合は、高温高湿度下の接着性が低下する場合がある。本発明のブロックイソシアネートは水分散性向上のために、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性界面活性剤を添加することができる。例えばポリエチレングリコール、多価アルコール脂肪酸エステル等のノニオン系、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系、アルキルアミン塩、アルキルベタイン等のカチオン系、カルボン酸アミン塩、スルホン酸アミン塩、硫酸エステル塩等の界面活性剤などが挙げられる。
【0040】
また、水以外にも水溶性の有機溶剤を含有することができる。例えば、反応に使用した有機溶剤やそれを除去し、別の有機溶剤を添加することもできる。
【0041】
(ポリエステル樹脂)
本発明における塗布層を形成するのに用いるポリエステル樹脂は、直鎖上のものであってもよいが、より好ましくは、ジカルボン酸と、分岐構造を有するジオールとを構成成分とするポリエステル樹脂であることが好ましい。ここで言うジカルボン酸は、その主成分がテレフタル酸、イソフタル酸又は2,6-ナフタレンジカルボン酸である他アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が、挙げられる。また、分岐したグリコールとは枝分かれしたアルキル基を有するジオールであって、例えば、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、及び2,2-ジ-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。
【0042】
ポリエステル樹脂は、上記のより好ましい態様である分岐したグリコール成分は全グリコール成分の中に、好ましくは10モル%以上の割合で、さらに好ましくは20モル%以上の割合で含有されるものと言える。10モル%以上であると、結晶性が高くなり過ぎず、塗布層の接着性が良好となり好ましい。全グリコール成分の中のグリコール成分上限は、好ましくは80モル%以下であり、より好ましくは70質量%である。80モル%以下であると、副生成物であるオリゴマー濃度が増加しづらく、塗布層の透明性が良好であり好ましい。上記化合物以外のグリコール成分としてはエチレングリコールが最も好ましい。少量であれば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールまたは1,4-シクロヘキサンジメタノールなどを用いても良い。
【0043】
上記ポリエステル樹脂の構成成分としてのジカルボン酸としては、テレフタル酸又はイソフタル酸であるのが最も好ましい。上記ジカルボン酸の他に、共重合ポリエステル系樹脂に水分散性を付与させるため、5-スルホイソフタル酸等を1~10モル%の値囲で共重合させるのが好ましく、例えば、スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等を挙げることができる。ナフタレン骨格を有するジカルボン酸を含有するポリエステル樹脂を使用してもよいが、UVインキへの密着性が低下を抑制するために、その量的割合は全カルボン酸成分中で5モル%以下であることが好ましく、使用しなくともよい。
【0044】
塗布液中のポリエステル樹脂、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂及び架橋剤の固形分の総和を100質量%とするとき、架橋剤の含有率の下限は好ましくは5質量%であり、より好ましくは7質量%であり、さらに好ましくは10質量%であり、最も好ましくは質量12%である。5質量%以上であると、ブロッキング耐性を向上でき好ましい。架橋剤の含有率の上限は好ましくは50質量%であり、より好ましくは40質量%であり、さらに好ましくは35質量%であり、最も好ましくは30質量%である。50質量%以下であると透明性が高くなり、好ましい。
【0045】
塗布液中のポリエステル樹脂、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂及び架橋剤の固形分の総和を100質量%とするとき、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂の含有率の下限は好ましくは5質量%である。5質量%以上であると、UVインキへの密着性を向上でき好ましい。ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂の含有率の上限は好ましくは50質量%であり、より好ましくは40質量%であり、さらに好ましくは30質量%であり、最も好ましくは20質量%である。ウレタン樹脂の含有率は50質量%以下であると、ブロッキング耐性を向上でき好ましい。
【0046】
塗布液中のポリエステル樹脂、ウレタン樹脂及び架橋剤の固形分の総和を100質量%とするとき、ポリエステル樹脂含有率の下限は好ましくは10質量%であり、より好ましくは20質量%であり、さらに好ましくは30質量%であり、特に好ましくは35質量%であり、最も好ましくは40質量%である。ポリエステル樹脂の含有率は10質量%以上であると、塗布層とポリエステルフィルム基材の密着性が良好となり好ましい。ポリエステル樹脂の含有率の上限は好ましくは70質量%であり、より好ましくは67質量%であり、さらに好ましくは65質量%であり、特に好ましくは62質量%であり、最も好ましくは60質量%である。ポリエステル樹脂の含有率が70質量%以下であると、耐湿熱性が良好となり好ましい。
【0047】
(添加剤)
本発明における塗布層中には、本発明の効果を阻害しない範囲において公知の添加剤、例えば界面活性剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の粒子、帯電防止剤、核剤等を添加しても良い。
【0048】
本発明においては、塗布層の耐ブロッキング性をより向上させるために、塗布層に粒子を添加することも好ましい態様である。本発明において塗布層中に含有させる粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレーなど或いはこれらの混合物であり、更に、他の一般的無機粒子、例えばリン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウムその他と併用、等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。
【0049】
塗布層中の粒子の平均粒径(走査型電子顕微鏡(SEM)による個数基準の平均粒径。以下同じ)は、0.04~2.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.1~1.0μmである。不活性粒子の平均粒径が0.04μm以上であると、フィルム表面への凹凸の形成が容易となるため、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が向上し、貼り合せの際の加工性が良好であって好ましい。一方、不活性粒子の平均粒径が2.0μm以下であると、粒子の脱落が生じ難く好ましい。塗布層中の粒子濃度は、固形成分中1~20質量%であることが好ましい。
【0050】
粒子の平均粒径の測定方法は、積層ポリエステルフィルムの断面の粒子を走査型電子顕微鏡で観察を行い、粒子30個を観察し、その平均値をもって平均粒径とする方法で行った。
【0051】
本発明の目的を満たすものであれば、粒子の形状は特に限定されるものでなく、球状粒子、不定形の球状でない粒子を使用できる。不定形の粒子の粒径は円相当径として計算することができる。円相当径は、観察された粒子の面積をπで除し、平方根を算出し2倍した値である。
【0052】
(積層ポリエステルフィルムの製造)
本発明においては、ポリエステルフィルム基材上に塗布層を有する積層ポリエステルフィルムを製造し、その後に前記塗布層上にめっき処理により金属被覆層を設けることが好ましい。以下、ポリエステルフィルム基材上に塗布層を有するものを「積層ポリエステルフィルム」ということがある。積層ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する場合がある)フィルム基材を用いた例を挙げて説明するが、当然これに限定されるものではない。
【0053】
PET樹脂を十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、Tダイから約280℃の溶融PET樹脂を回転冷却ロールにシート状に溶融押出しし、静電印加法により冷却固化して未延伸PETシートを得る。前記未延伸PETシートは、単層構成でもよいし、共押出し法による複層構成であってもよい。
【0054】
得られた未延伸PETシートを一軸延伸、もしくは二軸延伸を施すことで結晶配向化させる。例えば二軸延伸の場合は、80~120℃に加熱したロールで長手方向に2.5~5.0倍に延伸して、一軸延伸PETフィルムを得たのち、フィルムの端部をクリップで把持して、80~180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、幅方向に2.5~5.0倍に延伸する。また、一軸延伸の場合は、テンター内で2.5~5.0倍に延伸する。延伸後引き続き、熱処理ゾーンに導き、熱処理を行ない、結晶配向を完了させる。
【0055】
熱処理ゾーンの温度の下限は好ましくは170℃であり、より好ましくは180℃である。熱処理ゾーンの温度が170℃以上であると硬化が十分となり、液体の水存在下でのブロッキング性が良好となり好ましく、乾燥時間を長くする必要がない。一方、熱処理ゾーンの温度の上限は好ましくは230℃であり、より好ましくは200℃である。熱処理ゾーンの温度が230℃以下であると、フィルムの物性が低下するおそれがなく好ましい。
【0056】
塗布層はフィルムの製造後、もしくは製造工程において設けることができる。特に、生産性の点からフィルム製造工程の任意の段階、すなわち未延伸あるいは一軸延伸後のPETフィルムの少なくとも片面に、塗布液を塗布し、塗布層を形成することが好ましい。
【0057】
この塗布液をPETフィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工することができる。
【0058】
本発明において塗布層の厚みは、0.001~2.00μmの範囲で適宜設定することができるが、加工性と接着性とを両立させるには0.01~1.00μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.02~0.80μm、さらに好ましくは0.05~0.50μmである。塗布層の厚みが0.001μm以上であると、接着性が良好であり好ましい。塗布層の厚みが2.00μm以下であると、ブロッキングを生じ難く好ましい。
【0059】
本発明における積層ポリエステルフィルムのヘイズの上限は好ましくは1.5%であり、より好ましくは1.3%であり、さらに好ましくは1.2%であり、特に好ましくは1.0%である。ヘイズは低いほど好ましく、理想的には0%が最も好ましいと言えるが、0.1%以上でも構わず、0.3%以上でも実用上問題ない。めっき処理による金属被覆層を設ける前の積層ポリエステルフィルムが1.5%以下のヘイズを有することは、積層ポリエステルフィルムの塗布層表面が平滑であることと関連して、塗布層にめっき処理による金属被覆層を設けた金属被覆ポリエステルフィルムに美しい光沢を与えることができて好ましい。
【0060】
(金属被覆ポリエステルフィルム)
本発明における金属被覆層は、めっき処理により得られる。めっき処理は、特許文献1から5に記載の方法など公知の方法を用いることができる。導電性を持たせるために電解めっきに使用される金属は、金、銀、銅、亜鉛、鉄などが使用できる。価格や機能面から銅が好ましい。
【0061】
積層ポリエステルフィルムが塗布層を有することで、特に金属被覆層と積層ポリエステルフィルムとの間の高温高湿度下での密着性が優れるものである。めっき処理により金属被覆層を積層ポリエステルフィルムの塗布層上に設けた後に、85℃85RH%下で24時間放置した後に、23℃65RH%下に12時間放置し、セロテープ(登録商標)はく離試験を行った場合に、金属被覆層が剥がれることなく十分な密着強度を有する。
【0062】
なお、「めっき処理による金属被覆層」という表現は、所謂プロダクトバイプロセス表現との見方があるかもしれないが、この表現は「塗布層」などと同様に、構造、特性を表すものとして一般に概念が定着しているものと考えられ、得られた物の構造、特性を表す別の簡潔な表現方法がないため、本発明においてかかる表現を用いている。
【0063】
本発明の金属被覆ポリエステルフィルムは、金属被覆層が導電性を有するため、電磁波シールド用、回路用に使用される。また、その美しい光沢からミラー用に使用することも可能である。
【実施例
【0064】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。まず、以下に本発明で用いた評価方法について説明する。
【0065】
(1)ヘイズ
ポリエステルフィルム基材上に塗布層を有し、金属被覆層を設ける前の積層ポリエステルフィルムのヘイズは、JISK 7136:2000に準拠し、濁度計(日本電色製、NDH5000)を用いて測定した。
【0066】
(2)高温高湿度下での金属被覆層の密着性
金属被覆ポリエステルフィルムを試料とし、85℃85RH%下で24時間放置後、引き続き23℃65RH%下に放置した。次いで、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、金属被覆層を貫通して塗布層に達する100個のマス目状の切り傷を金属被覆層面につける。次いで、セロハン粘着テープ(ニチバン製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に付着させる。その後、垂直にセロハン粘着テープを金属被覆ポリエステルフィルムの金属被覆層面から引き剥がして、金属被覆ポリエステルフィルムの金属被覆層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式から金属被覆層と積層ポリエステルフィルムの塗布層との密着性を求める。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数える。金属被覆層の密着性は100(%)を合格とする。
高温高湿度下での金属被覆層の密着性(%)=100-(剥がれたマス目の数)
【0067】
(3)ポリカーボネートポリオールの数平均分子量の測定方法
ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂をプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)により測定すると、4.1ppm付近にOCOO結合に隣接するメチレン基由来のピークが観測される。また、当該ピークより0.2ppm程高磁場に、ポリイソシアネートとポリカーボネートポリオールとの反応で生じたウレタン結合に隣接するメチレン基由来のピークが観測される。これら2種類のピークの積分値とポリカーボネートポリオールを構成するモノマーの分子量からポリカーボネートポリオールの数平均分子量を算出した。
【0068】
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂A-1の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、水添m-キシリレンジイソシアネート27.5質量部、ジメチロールプロパン酸6.5質量部、数平均分子量1800のポリヘキサメチレンカーボネートジオール61質量部、ネオペンチルグリコール5質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、トリメチロールプロパン2.2質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において1時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン5.17質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分34質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-1)を調製した。
【0069】
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂A-2の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート25質量部、ジメチロールプロパン酸5質量部、数平均分子量2600のポリヘキサメチレンカーボネートジオール52質量部、ネオペンチルグリコール6質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、ヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA、3官能)10質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において1時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。その後、反応液温度を50℃に下げ、メチルエチルケトオキシム4質量部を滴下した。この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン5.17質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分35質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-2)を調製した。
【0070】
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂A-3の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート22質量部、数平均分子量700のポリエチレングリコールモノメチルエーテル20質量部、数平均分子量2100のポリヘキサメチレンカーボネートジオール53質量部、ネオペンチルグリコール5質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、ヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA、3官能)9質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において1時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。その後、反応液温度を50℃に下げ、メチルエチルケトオキシム4質量部を滴下した。この反応液を40℃にまで降温した後、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分35質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-3)を調製した。
【0071】
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂A-4の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート22質量部、ジメチロールブタン酸3質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール74質量部、ネオペンチルグリコール1質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、トリメチロールプロパン2質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において1時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分34質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-4)を調製した。
【0072】
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂A-5の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート47質量部、数平均分子量700のポリエチレングリコールモノメチルエーテル21質量部、数平均分子量1200のポリヘキサメチレンカーボネートジオール20質量部、ネオペンチルグリコール12質量部及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、トリメチロールプロパン2.5質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において1時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分34質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-5)を調製した。
【0073】
(ポリカーボネートポリオール成分を含有しないウレタン樹脂A-Xの重合)
テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、およびネオペンチルグリコールを構成成分とする分子量5000のポリエステルポリオール75重量部、水添m-キシリレンジイソシアネート30質量部、エチレングリコール7重量部、およびジメチロールプロピオン酸6重量部及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン5.17質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分34質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-X)を調製した。
【0074】
(ブロックイソシアネート架橋剤B-1の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)66.04質量部、N-メチルピロリドン17.50質量部に3,5-ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)23.27質量部を滴下し、窒素雰囲気下、70℃で1時間保持した。その後、ジメチロールプロパン酸8.3質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、N,N-ジメチルエタノールアミン5.59質量部、水132.5質量部を加え、固形分40質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(B-1)を得た。当該ブロックイソシアネート架橋剤の官能基数は4、NCO当量は280である。
【0075】
(ブロックイソシアネート架橋剤B-2の重合)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)100質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量750)30質量部を仕込み、窒素雰囲気下、70℃で4時間保持した。その後、反応液温度を50℃に下げ、メチルエチルケトオキシム49質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、水210質量部を加え固形分40質量%のオキシムブロックイソシアネート架橋剤(B-2)を得た。当該ブロックイソシアネート架橋剤の官能基数は3、NCO当量は170である。
【0076】
(カルボジイミドB-3の重合)
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネート168質量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(M400、平均分子量400)220質量部を仕込み、120℃で1時間、攪拌し、更に4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート26質量部とカルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド3.8質量部(全イソシアネートに対して2質量%)を加え、窒素気流下185℃で更に5時間撹拌した。反応液の赤外スペクトルを測定し、波長220~2300cm-1の吸収が消失したことを確認した。60℃まで放冷し、イオン交換水を567質量部加え、固形分40質量%のカルボジイミド水性樹脂液(B-3)を得た。
【0077】
(ポリエステル樹脂の重合 C-1)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート194.2質量部、ジメチルイソフタレート184.5質量部、ジメチル-5-ナトリウムスルホイソフタレート14.8質量部、ジエチレングリコール233.5質量部、エチレングリコール136.6質量部、およびテトラ-n-ブチルチタネート0.2質量部を仕込み、160℃から220℃の温度で4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(C-1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂(C-1)は、淡黄色透明であった。共重合ポリエステル樹脂(C-1)の還元粘度を測定したところ,0.70dl/gであった。DSCによるガラス転移温度は40℃であった。
【0078】
(ポリエステル水分散体の調整 Cw-1)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(C-1)15質量部、エチレングリコールn-ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水70質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分15質量%の乳白色のポリエステル水分散体(Cw-1)を作製した。
【0079】
(実施例1)
(1)塗布液の調整
水とイソプロパノールの混合溶媒に、下記の塗剤を混合し、ウレタン樹脂溶液(A-1)/架橋剤(B-1)/ポリエステル水分散体(Cw-1)の固形分質量比が25/26/49になる塗布液を作成した。

ウレタン樹脂溶液(A-1) 3.55質量部
架橋剤(B-1) 3.16質量部
ポリエステル水分散体(Cw-1) 16.05質量部
粒子 0.47質量部
(平均粒径200nmの乾式法シリカ、 固形分濃度3.5質量%)
粒子 1.85質量部
(平均粒径40~50nmのシリカゾル、固形分濃度30質量%)
界面活性剤 0.30質量部
(シリコーン系、固形分濃度10質量%)
【0080】
(2)積層ポリエステルフィルムの製造
フィルム原料ポリマーとして、固有粘度(溶媒:フェノール/テトラクロロエタン=60/40)が0.62dl/gで、かつ粒子を実質上含有していないPET樹脂ペレットを、133Paの減圧下、135℃で6時間乾燥した。その後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、表面温度20℃に保った回転冷却金属ロール上で急冷密着固化させ、未延伸PETシートを得た。
【0081】
この未延伸PETシートを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸延伸PETフィルムを得た。
【0082】
次いで、室温で5時間以上静置した前記塗布液をロールコート法でPETフィルムの両面に塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。なお、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.15g/m(乾燥後の塗布層厚み150nm)になるように調整した。引続いてテンターで、120℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、230℃で5秒間加熱し、さらに100℃で10秒間3%の幅方向の弛緩処理を行ない、100μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
【0083】
引き続き、A4サイズの積層ポリエステルフィルムをヒドラジンを含有する水溶液に浸漬し、触媒付与をOPC-80キャタリストM(奥野製薬社製)で行い、十分水洗した後に促進処理をOPC-555(奥野製薬社製)で行った。以上の前処理の後に、硫酸銅水和物とホルムアルデヒドを有する液中で、65℃30分の無電解銅めっき処理を行った。さらに過硫酸アンモニウムと硫酸を含有する水溶液で水洗した後に、硫酸銅水和物と硫酸を含有する浴槽で電気銅めっきを行うことで、約20μm厚みの銅被覆層を塗布層上に設け、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0084】
(実施例2)
ウレタン樹脂を(A-2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。
【0085】
(実施例3)
ウレタン樹脂を(A-3)に変更した以外は、実施例1と同様にして、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。
【0086】
(実施例4)
架橋剤を(B-2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。
【0087】
(実施例5)
ウレタン樹脂を(A-2)に、架橋剤を(B-2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。
【0088】
(実施例6)
ウレタン樹脂を(A-3)に、架橋剤を(B-2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。
【0089】
(実施例7)
水とイソプロパノールの混合溶媒に、下記の塗剤を混合し、ウレタン樹脂溶液(A-2)/架橋剤の合計(B-1、B-2)/ポリエステル水分散体(Cw-1)の固形分質量比が25/25/50になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。

ウレタン樹脂溶液(A-1) 3.55質量部
架橋剤(B-1) 2.10質量部
架橋剤(B-2) 1.00質量部
ポリエステル水分散体(Cw-1) 16.20質量部
粒子 0.47質量部
(平均粒径200nmの乾式法シリカ、 固形分濃度3.5質量%)
粒子 1.85質量部
(平均粒径40~50nmのシリカゾル、固形分濃度30質量%)
界面活性剤 0.30質量部
(シリコーン系、固形分濃度10質量%)
【0090】
(実施例8)
ウレタン樹脂を(A-2)に変更した以外は、実施例7と同様にして、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。
【0091】
(実施例9)
水とイソプロパノールの混合溶媒に、下記の塗剤を混合し、ウレタン樹脂溶液(A-1)/架橋剤(B-1)/ポリエステル水分散体(Cw-1)の固形分質量比が22/10/68になるになるように変更した以外は、実施例1と同様にして、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。

ウレタン樹脂溶液(A-1) 2.71質量部
架橋剤(B-1) 1.00質量部
ポリエステル水分散体(Cw-1) 19.05質量部
粒子 0.47質量部
(平均粒径200nmの乾式法シリカ、 固形分濃度3.5質量%)
粒子 1.85質量部
(平均粒径40~50nmのシリカゾル、固形分濃度30質量%)
界面活性剤 0.30質量部
(シリコーン系、固形分濃度10質量%)
【0092】
(実施例10)
ウレタン樹脂を(A-2)に変更した以外は、実施例9と同様にして、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。
【0093】
(実施例11)
ウレタン樹脂を(A-3)に変更した以外は、実施例9と同様にして、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。
【0094】
(実施例12)
架橋剤を(B-3)に変更した以外は、実施例9と同様にして、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。
【0095】
(実施例13)
ウレタン樹脂を(A-4)に変更した以外は、実施例9と同様にして、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。
【0096】
(実施例14)
ウレタン樹脂を(A-5)に変更した以外は、実施例9と同様にして、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。
【0097】
(比較例1)
ウレタン樹脂を(A-X)に変更した以外は、実施例1と同様にして、金属被覆ポリエステルフィルムを得た。
【0098】
(実施例15)
積層ポリエステルフィルムを実施例1と同様にして得た。その後、金属被覆層を次の方法で得た以外は、実施例1と同様の方法で金属被覆ポリエステルフィルムを得た。
前記の塗布層を設けた積層ポリエステルフィルムを1wt%硝酸銀水溶液中に浸漬し、その後純水で洗浄し、さらに風乾して、無電解めっき触媒前駆体(銀イオン)を付与した。その後、0.14wt%のNaOHと0.25wt%のホルマリンとを含むアルカリ水溶液(pH12)に1分間浸漬、その後純水で洗浄し、以下の電気めっき処理を行った。 電気めっき液は、ダインシルバーブライトPL50(大和化成社製)を用い、水酸化カリウムによりpH7.8に調整したのもので、そこに浸漬し、0.5A/dm2にて15秒間めっきし、その後、純水で洗浄し、さらに風乾した。銀被覆層の厚みは、約0.2μmであった。
【0099】
表1に示すように、各実施例においては、高温個室下における金属被覆層の密着性に優れた金属被覆ポリエステルフィルムが得られた。金属被覆層を設ける前の積層ポリエステルフィルムのヘイズが低いので、金属被覆層を設けた後の金属被覆ポリエステルフィルムは美しい光沢を有するものであった。一方、比較例1では、ポリエステルフィルム基材上の塗布層を形成する組成物がポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含有しないためか、高温高湿度下における金属被覆層の密着性において満足できるものではなかった。
【0100】
表1に各実施例、比較例の評価結果を整理する。
【0101】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、導電性を有し、高温高湿度下における金属被覆層の密着性に優れ、美しい光沢有する金属被覆ポリエステルフィルムを提供することが可能となり、電磁波シールド用、回路用またはミラー用などの分野において好適に使用できる金属被覆ポリエステルフィルムの提供が可能となった。