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特許7559867積層体、並びにこれを用いて作製したカード体及び冊子体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】積層体、並びにこれを用いて作製したカード体及び冊子体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20240925BHJP
   B42D 25/36 20140101ALI20240925BHJP
   B42D 25/24 20140101ALI20240925BHJP
   B42D 25/41 20140101ALI20240925BHJP
   B41M 5/26 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B32B27/18 A
B42D25/36
B42D25/24
B42D25/41
B32B27/18 Z
B41M5/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023078606
(22)【出願日】2023-05-11
(62)【分割の表示】P 2021501491の分割
【原出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2023113664
(43)【公開日】2023-08-16
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】元井 拓実
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159767(WO,A1)
【文献】特開2013-240885(JP,A)
【文献】特開2009-023341(JP,A)
【文献】特開2009-279906(JP,A)
【文献】特開2009-279905(JP,A)
【文献】特開2011-079285(JP,A)
【文献】特開2008-149537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B42D 15/02、25/00-25/485
B41M 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表基材と、蛍光画像層と、レーザ発色基材と、熱転写画像層と、をこの順に備え、
前記レーザ発色基材が、耐光性向上材を含み、
前記耐光性向上材が紫外線吸収剤であることを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記表基材が、耐光性向上材を含まない、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記熱転写画像層の、前記レーザ発色基材が設けられた面とは反対の面側に白色層を更に備える、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記熱転写画像層と、前記白色層との間に、ポリカーボネート系樹脂を含む中間層をさらに備える、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記白色層の面側に、ICモジュール保持層をさらに備える、請求項3又は4に記載の積層体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体から作製された、カード体。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体から作製された、冊子体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、並びにこれを用いて作製したカード体及び冊子体に関する。
【背景技術】
【0002】
IDentity(ID)カードは、集積回路(IC)チップを含むICモジュール保持層を備え、例えば、社員証、学生証等の個人の身分を証明するために用いられている。また、近年電子パスポート等の冊子体には、非接触ICチップを有する個人情報や顔写真を搭載したデータページが備わっている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、表基材、表レーザ発色基材、表白色層、ICモジュール保持層、裏白色層、裏レーザ発色基材及び裏基材を備えるIDカードであって、表基材表面に熱転写画像が形成された、IDカードが提案されている。
【0004】
特許文献1において提案されるIDカードは、表基材表面に形成された熱転写画像が、日光等の影響により、変褪色したり、経時的に劣化してしまう等という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-1087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、熱転写画像の経時的劣化を効果的に防止し、耐光性を向上することができる、IDカード等のカード体やパスポートのデータページ等の冊子体の作製に用いられる積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の積層体は、表基材と、レーザ発色基材と、熱転写画像層と、白色層と、裏基材と、を備え、レーザ発色基材が、耐光性向上材を含むことを特徴とする。
【0008】
一実施形態において、表基材が、レーザ発色基材側の面に、蛍光画像層を備え、記表基材は、耐光性向上材を含まない。
【0009】
一実施形態において、本発明の積層体は、熱転写画像層と、白色層との間に、ポリカーボネート系樹脂を含む中間層をさらに備える。
【0010】
一実施形態において、本発明の積層体は、白色層と、裏基材との間に、ICモジュール保持層をさらに備える。
【0011】
本発明のカード体は、上記積層体から作製されたことを特徴とする。
【0012】
本発明の冊子体は、上記積層体から作製されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の積層体によれば、熱転写画像の経時的な劣化を効果的に防止し、耐光性を向上することができるIDカード等のカード体や、パスポート等の冊子体を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の積層体の平面図である。
図2図2は、図1の積層体のA-A線模式断面図である。
図3図3は、本発明の積層体の平面図である。
図4図4は、図2の積層体のB-B線模式断面図である。
図5図5は、積層体の製造に用いられる積層体製造システムを示す概略図である。
図6図6は、本発明の積層体を用いて作製したカード体の正面図である。
図7図7は、本発明の積層体を用いて作製したパスポートのデータページの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<積層体>
本発明の積層体100は、図1および2に示すように、表基材101と、レーザ発色基材102と、熱転写画像層103と、白色層104と、裏基材105と、を備えてなる。なお、積層体100は、非接触ICカードの構成の一例である。図1は、積層体を表基材101側から正面に観察する場合の平面図である。図2は、図1の積層体をA-A線で切断する場合の断面図である。熱転写画像103は、表面に露出しているわけではないため、破線で示している。
【0016】
一実施形態において、積層体100は、図2に示すように、熱転写画像層103と、白色層104との間に、中間層106を備えていてもよい。
【0017】
一実施形態において、積層体100は、図3および4に示すように、白色層104と、裏基材105との間に、ICモジュール保持層107を備えていてもよい。図3は、表基材101側から正面に観察する場合の平面図である。図4は、図3の積層体をB-B線で切断する場合の断面図である。
【0018】
一実施形態において、積層体100は、図4に示すように、表基材101のレーザ発色基材102側表面に、蛍光画像層108を備えていてもよい。蛍光画像層108の蛍光インクは可視光下では通常観察できないが、図4では蛍光画像層108がどのように積層されているのかを表現するために、一点鎖線で蛍光画像層のインクを示している。紫外線の等の不可視光を照射すると、一点鎖線で示している蛍光画像層108の部分が可視光で発光する。蛍光画像層108を備えることにより、表基材101側から紫外線などの不可視光を照射すると、蛍光画像層の発光を確認することができ、積層体100自体の偽造を防止することができる。蛍光画像層には、絵柄や模様等、形状は問わない。
【0019】
本発明の積層体100は、図4に示すように、ICモジュール保持層107と、裏基材105との間に、第2の白色層109をさらに備えていてもよい。また、白色層の104と109は、オフセット印刷等の公知の印刷方法によって、券面の絵柄や模様、文字、図、記号といったものを表現する券面印刷用のインキが印刷されていてもよい(図示せず)。これにより、積層体を表面から観察した際に絵柄や模様を確認することができる。また、表基材101と、レーザ発色基材102との間に、光回折構造を有するホログラム画像138をさらに備えていてもよい。ホログラム画像を備えることにより、偽造防止性を向上することができる。
また、本発明の積層体100は、裏基材105と第2の白色層109との間に第2のレーザ発色基材を備えていてもよい(図示せず)。
【0020】
また、本発明の積層体100は、任意の層間、例えば、表基材101とレーザ発色基材102との間に、ホログラム画像が設けられていてもよい。ホログラムを設けることにより、積層体100の偽造を防止することができる。
【0021】
以下、積層体が備える各層について、詳細に説明する。
【0022】
<表基材及び裏基材>
表基材及び裏基材は、樹脂材料を含むことができる。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル系樹脂、ナイロン6及びナイロン6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール及びポリビニルピロリドン(PVP)等のビニル系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート及びポリメチルメタアクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド及びポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、セロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)等のセルロース系樹脂、ポリスチレン(PS)等のポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、並びにアイオノマー系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、透明性及び耐熱性の観点から、ポリカーボネート系樹脂が好ましく、ポリカーボネートがより好ましい。ポリカーボネートは、紫外線(特に365nm)を通しにくい性質がある。
また、表基材及び裏基材は、本発明の特性を損なわない範囲において、充填材、可塑材、帯電防止材、無機微粒子、有機微粒子、離型材、分散材等の添加材を含むことができる。
【0023】
一実施形態において、表基材は、そのレーザ発色基材側表面に蛍光画像が形成されていることを特徴とする。この場合には、表基材は、耐光性向上材を含まないことが好ましい。表基材が、耐光性向上材を含まないことにより、蛍光照射時における蛍光画像の発光をより良好なものとすることができる。
蛍光画像は、表基材の全面に形成されていてもよく、一部に形成されていてもよい。蛍光画像が一部に形成されている場合、その形成箇所は2以上であってもよい。
なお、この蛍光画像は、裏基材にも形成されていてもよい。
また、蛍光画像に限らず、オフセット印刷等の公知の印刷技術で絵柄や有彩色、無色透明、有色透明のインキを印刷することができる。レーザ発色基材を色付けすることにより、熱転写画像の形成位置をカモフラージュすることが可能であり、偽造防止にも成りえる。
【0024】
表基材及び裏基材は、インフレーション法又はTダイ法等の従来公知の方法を利用することにより作製することができる。また、第1の表基材及び第1の裏基材は、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
【0025】
<レーザ発色基材>
レーザ発色基材は、上記耐光性向上材を含むことを特徴とする。レーザ発色基材が耐光性向上材を含むことにより、レーザ発色基材下に設けられた、熱転写画像層の経時的劣化を防止することができる。
積層体が、第2のレーザ発色基材を備える場合、第2のレーザ発色基材は、上記耐光性向上材を含んでいてもよく、含まなくてもよい。
【0026】
本発明において、レーザ発色基材とは、レーザ光線を照射することにより発色するレーザ発色材を含み、文字や模様等のレーザ画像を形成することのできる層のことをいう。
【0027】
レーザ発色材としては、例えば、染料、顔料といった着色材や粘土類等を使用することができる。より具体的には、炭素(カーボン)、黄色酸化鉄、無機鉛化合物、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、水銀、コバルト、銅、ビスマス及びニッケル等の金属化合物、真珠光沢顔料、珪素化合物、雲母類、カオリン類、珪砂、珪藻土、タルク、酸化チタン被覆雲母類、二酸化錫被覆雲母類、並びにアンチモン被覆雲母類等が挙げられる。
レーザ発色基材は、レーザ発色材を2種以上含むことができる。
【0028】
また、耐光性向上材は、紫外光や可視光による画像の変退色を抑制する作用を持つものであれば特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系光安定材(HALS)、紫外線吸収材、酸化防止材及び消光材等が挙げられる。
【0029】
紫外線吸収材としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サルシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、並びに酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セレン及び酸化セリウム等の金属酸化物を挙げることができる。
酸化防止材としては、ヒンダードフェノール等のフェノール系化合物、クロマン系化合物、クラマン系化合物、ハイドロキノン誘導体、ベンゾトリアゾール系化合物(紫外線吸収能を有しないもの)、スピロインダン系化合物等を挙げることができる。
消光材としては、例えば、ニッケル、コバルト等の無機金属錯体等を挙げることができる。
【0030】
レーザ発色基材は、上記した樹脂材料を含むことができる。また、レーザ発色基材の表面又は裏面の片方あるいは両方にはオフセット印刷等の公知の印刷技術で絵柄や有彩色、有色透明のインキを印刷することができる。レーザ発色基材を色付けすることにより、熱転写画像の形成位置をカモフラージュすることが可能であり、偽造防止にも成りえる。
【0031】
レーザ発色基材の厚さは、30μm以上、70μm以下であることが好ましく、40μm以上、60μm以下であることがより好ましい。
【0032】
レーザ発色基材は、インフレーション法又はTダイ法等の従来公知の方法を利用することにより作製し、これを従来公知の接着剤等を使用することにより表基材又は裏基材上に積層することができる。また、レーザ発色基材は、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
また、レーザ発色基材は、上記した材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等の公知の手段により、表基材又は裏基材上に塗布して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0033】
<熱転写画像層>
本発明の積層体は、レーザ発色基材と、白色層との間に、熱転写画像層を備える。この熱転写画像層により顔写真や、模様等を形成することができる。
熱転写画像層は、白色層の全体を覆うように設けられていてもよく、一部を覆うように設けられていてもよい。また、一実施形態において、本発明の積層体は、レーザ発色基材と、白色層との間に、1又は2以上の熱転写画像層を備える。
熱転写画像層は、従来公知の方法により形成することができ、具体的には、熱転写シート及び熱転写プリンターを使用することにより形成することができる。
【0034】
<白色層>
本発明の積層体は、レーザ発色基材と、熱転写画像層の下側、レーザ照射側ではない方に白色層を備える。これにより、熱転写画像層の視認性を向上することができる。また、本発明の積層体が、ICモジュール保持層を備える場合、ICモジュール保持層に含まれるICチップを見えにくくすることができ、より遮蔽することができる。また、白色層の表面又は裏面の両面にはオフセット印刷等の公知の印刷技術で絵柄や有彩色のインキを印刷することができる。ICモジュール保持層を備える場合、ICモジュール層に含まれるICチップをより見えにくくすることができ、さらに熱転写画像層が形成されている境目をカモフラージュして偽造を防止することや見た目を華やかにすることができる。
なお、本発明の積層体は、裏基材と、ICモジュール保持層との間に第2の白色層を備えることができる。
【0035】
一実施形態において、白色層は、白色顔料を含む。白色顔料としては、二酸化チタン、二酸化ジルコニア、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸バリウム、シリカ及びアルミナ等が挙げられる。白色層は、白色顔料を2種以上含むことができる。
また、白色層は、上記樹脂材料を含む。
【0036】
白色層の厚さは、50μm以上、200μm以下であることが好ましく、80μm以上、160μm以下であることがより好ましい。白色層の厚さを上記数値範囲内とすることにより、熱転写画像層等の視認性をより向上することができると共に、ICモジュール保持層に含まれるICチップの視認性を低下することができ、より遮蔽することができる。
【0037】
白色層は、インフレーション法又はTダイ法等の従来公知の方法を利用することにより作製し、これを従来公知の接着剤等を使用することによりレーザ発色基材上に積層することができる。また、白色層は、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
また、白色層は、上記した材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等の公知の手段により、レーザ発色基材上に塗布して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。
【0038】
<中間層>
本発明の積層体は、中間層106を備えることができる。中間層106は、一実施形態より、熱転写画像層103と、白色層104との間に備えられていてもよい層である。中間層106は、熱プレス加工で積層体100を製造する際に、製造工程中で熱転写画像103を白色層104上へ直接形成することができないときに設けられる。中間層106は、無色透明でも有色透明でもよく、有彩色を有していてもよい。直接形成出来ない場合とは、白色層104にオフセット印刷やシルクスクリーン印刷等でインキが印刷されている場合である。もし、熱プレス加工での製造で、白色層と熱転写画像層との間に中間層が無いと、白色層と熱転写画像は剥離してしまったり、熱転写画像が乱れたり、品質が低下した形態の製品となってしまうことがある。このため、中間層106を設ける形態でもよい。一方、熱プレス加工を伴わない製造方法の場合は、中間層106を設けなくてもよい。
また、中間層106を設ける積層体100に対して最後にレーザ発色印字を施す際、レーザ発色印字に伴う熱が白色層まで届く現象がある。中間層が設けられていないと、白色層まで熱が伝わり、白色層にインキが印刷されている場合に、印刷されているインキが焦げてしまい、製品の品質を損なうことがある。よって、白色層にインキが印刷されているとき、中間層を備えることにより、印刷インキの焦げを防止することができる。
【0039】
中間層は、上記樹脂材料を含むことができ、透明性及び耐熱性の観点からは、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。
【0040】
中間層の厚さは、10μm以上、100μm以下であることが好ましく、30μm以上80μm以下であることが好ましい。これにより、積層体の加工適正を維持しつつ、強度を向上することができる。
【0041】
<ICモジュール保持層>
一実施形態において、本発明の積層体100は、ICモジュール保持層107を備え、ICモジュール保持層107は、基板107aと、基板107bと、これら基板の間に、リードフレーム107c、ICチップが封止されたモールド107d、及びアンテナ107eを保持する樹脂層107fとを備える。
【0042】
<蛍光画像層>
一実施形態において、本発明の積層体が備える表基材のレーザ発色基材側表面には、蛍光画像層が設けられる。
蛍光画像層は、表基材の全体を覆うように設けられていてもよく、一部を覆うように設けられていてもよい。また、一実施形態において、本発明の積層体は、表基材表面に、1又は2以上の蛍光画像層を備える。
蛍光画像層を備え、かつ耐光性を有するレーザ発色基材を備える積層体は、耐光性の低い熱転写画像(顔写真等)をレーザ発色基材で被っているため、蛍光画像を視るために紫外線を照射したとしても熱転写画像に影響を及ぼすことがなく、積層体を有するユーザは、より長期に渡って積層体を使用し続けることができる。つまり、レーザ発色基材での偽造防止性と蛍光画像層での偽造防止性とを有し、熱転写画像で長期間本人確認が可能となる。
【0043】
蛍光画像層は、表基材へ従来公知の蛍光インキを用いて印刷を行うことにより形成することができる。一般的に、蛍光インキは可視光下で無色透明な色であるが、有色透明でもよい。また、蛍光画像層には、紫外線に反応する蛍光インキだけでなく、不可視光である赤外光に反応するインキを用いて印刷してもよい。
【0044】
<積層体の製造方法>
積層体の製造方法を、図5を参照し、以下に説明する。該製造方法は、あくまで一例であり、これに限定されるものではない。
【0045】
積層体製造システム110は、中間層、白色層、ICモジュール保持層、及び裏基材を備える積層シート111を積層して投入する積層シート投入部112と、積層シート投入部112の積層シート111の搬送方向下流側に設けられた中間転写シート113を供給する中間転写シート供給部114と、中間転写シート113を加熱押圧するホットスタンプ115とを備えている。この加熱加温により、中間転写シート113が備える転写層116を積層シートが備える中間層上へ転写させ、熱転写画像層107を形成することができる。この際、ホットスタンプ115の加熱温度は、例えば、120℃以上、200℃以下、加圧力は0.1kg/cm以上、1000kg/cm以下に設定される。
【0046】
より詳細には、中間転写シート供給部114は、中間転写シート113を巻出す巻出ロール117aと、中間転写シート113を巻取る巻取ロール117bとを有する。
【0047】
また、積層体製造システム110は、中間転写シート供給部114の下流側に、レーザ発色基材102を積層するレーザ発色基材シート供給部118を備える。
【0048】
このレーザ発色基材シート供給部118は、レーザ発色基材シート119を巻出す巻出ロール120aを有し、巻出ロール120aから巻出されたレーザ発色基材シート119は、積層シート111上で打抜き刃120b、120cにより打抜かれた後、積層シート111上へ積層され、レーザ発色基材102が形成される。
【0049】
また、積層体製造システム110は、レーザ発色基材シート供給部118の下流側に、レーザ発色基材102上に、表基材101を積層する表基材シート供給部121を備える。
【0050】
この表基材シート供給部121は、積層面に蛍光画像106が形成された表基材シート122を巻出す巻出ロール123aを有し、巻出ロール123aから巻出された表基材シート122は、積層シート111上で打抜き刃123b、123cにより打抜かれた後、レーザ発色基材102上に積層される(図5参照)。
【0051】
さらに、積層体製造システム110は、また表基材シート供給部121の下流側にレーザ発色基材102と表基材101を積層シート111に対して加熱押圧して、これらをより強固に接合する接合装置124を備える。
【0052】
この接合装置124は、一対の下方ローラ125、126間に掛け渡された下方コンベア127と、一対の上方ローラ128、129間に掛け渡された上方コンベア130とを備える。また上方コンベア130側には、加熱盤131及び冷却盤132を備える。
【0053】
さらに、下方コンベア127及び上方コンベア130には、いずれもプレス板(図示せず)が取り付けられており、下方コンベア127のプレス板と上方コンベア130のプレス板との間で積層シート111を挟持して搬送する。
【0054】
レーザ発色基材102及び表基材101の接合後、打抜き刃133を有する打抜きユニット134において、積層シート111はその周縁が打抜かれ、本発明の積層体100が得られる。
【0055】
また、積層体製造システム110は、打抜きユニット134の下流側に、レーザ発色基材102に対して、レーザ光を照射して、レーザ画像を形成するレーザ光照射装置135を備える。
【0056】
また、積層体製造システム110は、積層シート111が備えるICモジュール保持層104に対して所有者の個人情報を書き込むICモジュール書込部136A及び/又は136Bを備える。
【0057】
<用途>
本発明の積層体は、ICカード、IDカード等のカード体及びパスポート等の冊子体を構成するデータページ等の各種証明書に適用することができる。
【0058】
例えば、本発明の積層体からなるカード体やデータページは、図6及び7に示すように、顔写真等が形成された熱転写画像層を有する。
また、カード体及びデータページは、文字等のレーザ画像102Aを有する。さらに、カード体は、ホログラム画像138を有する。
また、図6に示すように、カード体には、リードフレーム107cが埋め込まれていてもよい。
さらに、図7に示すように、データページは、冊子体とする際に使用されるヒンジ部139を備えていてもよい。
【実施例
【0059】
次に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0060】
<実施例1>
白色顔料を含む、厚さ500μmのポリカーボネート製フィルムを白色層として準備した。この白色層の一方の面に、中間層として、厚さ50μmの透明なポリカーボネート製フィルムを積層した。
【0061】
中間層の白色層の面とは反対の面に、熱転写シート及び熱転写プリンターを用いて、熱転写画像層を形成した。
【0062】
熱転写画像層を形成した中間層状に、厚さ50μmの透明な、レーザ発色基材(三菱ケミカル(株)製)を積層した。レーザ発色基材は、樹脂材料として、ポリカーボネートを、レーザ発色材として、カーボンを、耐光性向上材として、紫外線吸収剤を含むものであった。
【0063】
レーザ発色基材上に、厚さ105μmの透明なポリカーボネート製フィルムを積層し、表基材とした。
【0064】
さらに、白色層の中間層の面とは反対の面に、厚さ105μmの透明なポリカーボネート製フィルムを積層し、裏基材とし、図1および2に示す積層体を得た。
【0065】
<比較例1>
レーザ発色基材に耐光性向上材を含有させなかった以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
【0066】
<<耐光性試験>>
カードの耐光性試験は、日本工業規格JIS L0843のキセノンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法(2006年5月20日発行の規格)に基づき実施した。
装置には、アトラス・サンテストXLS+(卓上キセノン耐光性試験機、株式会社東洋精機製作所)を使用した。アトラス・サンテストXLS+は、キセノンランプを備え、波長は300-400nm、照射強度は50W/m、ブラックパネル温度は60℃である。
使用する際は、JIS L0843の基準に対応するため、当社で調整した以下の表1にある照射時間、積算照射量を基準に使用した。
下記表1のhは全照射時間、kJ/mは積算照射量を示す。また、BW試験布とは、JIS L0843の試験片の調整で用いられるブルーウール(BW)布のことであり、アトラス・サンテストXLS+とJIS L0843との相関を取るために使用したものである。また、BW試験布の1級から7級の表記は、JIS L0843で定められた耐光性の級数と同じ程度で退色してしまう専用の布の級数を表している。なお、パスポートの顔写真の耐光性を評価する場合にもJIS L0843が用いられるが、ICAO(国際民間航空機関、International Civil Aviation Organization)のIC旅券規格DOC9303によると、JIS L0843試験において3級以上で合格品と判断されることが知られている。
【表1】
【0067】
積層体の耐光性について、複数人による目視によりその褪色の程度について評価した。評価結果を表2にまとめた。○は退色が無いと判断した結果であり、×は退色が確認できた結果を示す。退色の有無の確認・判断は、2人で蛍光灯下で観察し、実施した。どちらか一方が退色有りと判断したものは×とした。表2から、本実施例1の積層体は、耐光性を7級以上有することがわかる。よって、検査で蛍光画像等を観察するために紫外線を照射したとしても熱転写画像に影響を及ぼすことがなく、長期間使用し続けることが可能である。
【0068】
【表2】
【符号の説明】
【0069】
100:積層体、101:表基材、102:レーザ発色基材、103:熱転写画像層、104:白色層、105:裏基材、106:中間層、107:ICモジュール保持層、107a及び107b:基板、107c:リードフレーム、107d:ICチップが封止されたモールド、107e:アンテナ、107f:樹脂層、105:裏基材、106:熱転写画像、108:蛍光画像層、109:第2の白色層、110:積層体製造システム、111:積層シート、112:積層シート投入部、113:中間転写シート、114:中間転写シート供給部、115:ホットスタンプ:116:転写層、117a:巻出ロール、117b:巻取ロール、118:レーザ発色基材シート供給部、119:レーザ発色基材シート、120a:巻出ロール、120b及び120c:打抜き刃、121:表基材シート供給部、122:表基材シート、123a:巻出ロール、123b及び123c:打抜き刃、124:接合装置、125及び126:下方ローラ、127:下方コンベア、128及び129上方ローラ、130:上方コンベア、131:加熱盤、132:冷却盤、133:打抜き刃、134:打抜きユニット、135:レーザ光照射装置、136A及び136B:ICモジュール書込部、137:レーザ画像、138:ホログラム画像、139:ヒンジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7