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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】磁気記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/70 20060101AFI20240925BHJP
   G11B 5/706 20060101ALI20240925BHJP
   G11B 5/73 20060101ALI20240925BHJP
   G11B 5/78 20060101ALI20240925BHJP
   G11B 5/584 20060101ALI20240925BHJP
   G11B 15/43 20060101ALI20240925BHJP
   G11B 21/10 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G11B5/70
G11B5/706
G11B5/73
G11B5/78
G11B5/584
G11B15/43
G11B21/10 W
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023080869
(22)【出願日】2023-05-16
(62)【分割の表示】P 2021181300の分割
【原出願日】2019-04-01
(65)【公開番号】P2023101000
(43)【公開日】2023-07-19
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/042738
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018070356
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】弁理士法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100160440
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】寺川 潤
(72)【発明者】
【氏名】山鹿 実
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 克紀
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-224365(JP,A)
【文献】特開2011-096312(JP,A)
【文献】特開平09-320031(JP,A)
【文献】特開2002-367150(JP,A)
【文献】国際公開第2011/112181(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/62 - 5/82
G11B 5/84 - 5/858
G11B 5/584
G11B 15/43
G11B 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の磁気記録媒体であって、
基体と、
前記基体上に設けられ、磁性粉を含む磁性層と
を備え、
前記磁性粉は、六方晶フェライト、ε酸化鉄またはCo含有スピネルフェライトを含み、
前記磁性層は5本以上のサーボバンドを有し、
前記磁気記録媒体の平均厚みが、5.6μm以下であり、
前記磁性層の平均厚みが、90nm以下であり、
前記基体の平均厚みをTB、前記磁気記録媒体の平均厚みをTLとしたとき、(TL-TB)/TBの値が、0.41以下であり、
前記磁性粉の平均アスペクト比が、1.0以上3.0以下であり、
前記磁気記録媒体の長手方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc2が、1000Oe以上であり、
前記磁気記録媒体の垂直方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc1と、前記磁気記録媒体の長手方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc2とが、Hc2/Hc1≦0.8の関係を満たし、
前記磁気記録媒体の長手方向のヤング率は、8.3GPa以下である磁気記録媒体。
【請求項2】
前記基体の平均厚みをTB、前記磁気記録媒体の平均厚みをTLとしたとき、(TL-TB)/TBの値が、0.39以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記基体の平均厚みをTB、前記磁気記録媒体の平均厚みをTLとしたとき、(TL-TB)/TBの値が、0.37以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記基体の平均厚みをTB、前記磁気記録媒体の平均厚みをTLとしたとき、(TL-TB)/TBの値が、0.35以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記基体の平均厚みが、4.2μm以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記磁気記録媒体は、前記磁気記録媒体の長手方向におけるテンションを増減させることで、前記磁気記録媒体の幅を調整可能に構成されている請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
前記磁性層の表面の面積に対する複数の前記サーボバンドの総面積の割合が、4.0%以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項8】
前記サーボバンドの数が、5+4n(但し、nは正の整数である。)以上である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項9】
前記サーボバンドの幅が、95μm以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項10】
前記保磁力Hc2が、2000Oe以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項11】
前記基体の平均厚みが、3.8μm以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項12】
前記六方晶フェライトが、BaおよびSrのうちの少なくとも1種を含む請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項13】
前記磁性層の平均厚みが、70nm以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項14】
前記保磁力Hc1と、前記保磁力Hc2とが、Hc2/Hc1≦0.7の関係を満たす請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項15】
前記磁性粉の平均アスペクト比は、1.0以上2.5以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項16】
前記磁性粉の平均アスペクト比は、1.0以上2.1以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項17】
前記磁性粉の平均アスペクト比は、1.0以上1.8以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項18】
前記基体と前記磁性層の間に下地層をさらに備える請求項1に記載の磁気記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データストレージ用メディアとしてテープ状の磁気記録媒体が注目されている。この磁気記録媒体では、種々の特性向上が検討されており、それらの特性向上のうちの一つとして電磁変換特性の向上がある。
【0003】
特許文献1~3には、バリウムフェライト磁性粉の分散性を高めて、電磁変換特性を向上する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-298333号公報
【文献】特開2002-373413号公報
【文献】特開2009-99240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、電磁変換特性を向上することができる磁気記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本開示は、
テープ状の磁気記録媒体であって、
基体と、
基体上に設けられ、磁性粉を含む磁性層と
を備え、
磁性粉は、六方晶フェライト、ε酸化鉄またはCo含有スピネルフェライトを含み、
磁性層は5本以上のサーボバンドを有し、
磁気記録媒体の平均厚みが、5.6μm以下であり、
磁性層の平均厚みが、90nm以下であり、
基体の平均厚みをTB、磁気記録媒体の平均厚みをTLとしたとき、(TL-TB)/TBの値が、0.41以下であり、
磁性粉の平均アスペクト比が、1.0以上3.0以下であり、
磁気記録媒体の長手方向における磁気記録媒体の保磁力Hc2が、1000Oe以上であり、
磁気記録媒体の垂直方向における磁気記録媒体の保磁力Hc1と、磁気記録媒体の長手方向における磁気記録媒体の保磁力Hc2とが、Hc2/Hc1≦0.8の関係を満たし、
磁気記録媒体の長手方向のヤング率は、8.3GPa以下である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電磁変換特性を向上することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果またはそれらと異質な効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1の実施形態に係る磁気記録媒体の断面図である。
図2図2Aは、データバンドおよびサーボバンドのレイアウトの概略図である。図2Bは、データバンドの拡大図である。
図3】磁性粒子の断面図である。
図4】M-Hループの一例を示すグラフである。
図5】SFD曲線の一例を示すグラフである。
図6】記録再生装置の概略図である。
図7】変形例における磁性粒子の断面図である。
図8】変形例における磁気記録媒体の断面図である。
図9図9Aは、波長λでデータ信号を記録した場合のMFM像を示す。図9Bは、最短記録波長L’でデータ信号を記録した場合のMFM像を示す。
図10】引張試験における磁気記録媒体の長手方向の伸び率と、荷重との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態について以下の順序で説明する。
1 第1の実施形態
1.1 磁気記録媒体の構成
1.2 磁気記録媒体の製造方法
1.3 記録再生装置の構成
1.4 効果
1.5 変形例
2 第2の実施形態
【0010】
<1 第1の実施形態>
[1.1 磁気記録媒体の構成]
まず、図1を参照して、第1の実施形態に係る磁気記録媒体10の構成について説明する。磁気記録媒体10は、長尺状の基体11と、基体11の一方の主面上に設けられた下地層12と、下地層12上に設けられた磁性層13と、基体11の他方の主面上に設けられたバック層14とを備える。なお、下地層12およびバック層14は、必要に応じて備えられるものであり、無くてもよい。
【0011】
磁気記録媒体10は長尺のテープ状を有し、記録再生の際には長手方向に走行される。なお、磁性層13の表面が、磁気ヘッドが走行される表面となる。磁気記録媒体10は、記録用ヘッドとしてリング型ヘッドを備える記録再生装置で用いられることが好ましい。なお、本明細書において、“垂直方向”とは、磁気記録媒体10の表面に対して垂直な方向(磁気記録媒体10の厚み方向)を意味し、“長手方向”とは、磁気記録媒体10の長手方向(走行方向)を意味する。
【0012】
(基体)
基体11は、下地層12および磁性層13を支持する非磁性支持体である。基体11は、長尺のフィルム状を有する。基体11の平均厚みの上限値は、好ましくは4.2μm以下、より好ましくは3.8μm以下、さらにより好ましくは3.4μm以下である。基体11の平均厚みの上限値が4.2μm以下であると、1データカートリッジ内に記録できる記録容量を一般的な磁気記録媒体よりも高めることができる。基体11の平均厚みの下限値は、好ましくは3μm以上、より好ましくは3.2μm以上である。基体11の平均厚みの下限値が3μm以上であると、基体11の強度低下を抑制することができる。
【0013】
基体11の平均厚みは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気記録媒体10を準備し、それを250mmの長さに切り出し、サンプルを作製する。続いて、サンプルの基体11以外の層(すなわち下地層12、磁性層13およびバック層14)をMEK(メチルエチルケトン)または希塩酸等の溶剤で除去する。次に、測定装置としてMitsutoyo社製レーザーホロゲージを用いて、サンプル(基体11)の厚みを5点以上の位置で測定し、それらの測定値を単純に平均(算術平均)して、基体11の平均厚みを算出する。なお、測定位置は、サンプルから無作為に選ばれるものとする。
【0014】
基体11は、例えば、ポリエステル類、ポリオレフィン類、セルロース誘導体、ビニル系樹脂、およびその他の高分子樹脂のうちの少なくとも1種を含む。基体11が上記材料のうちの2種以上を含む場合、それらの2種以上の材料は混合されていてもよいし、共重合されていてもよいし、積層されていてもよい。
【0015】
ポリエステル類は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PCT(ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、PEB(ポリエチレン-p-オキシベンゾエート)およびポリエチレンビスフェノキシカルボキシレートのうちの少なくとも1種を含む。
【0016】
ポリオレフィン類は、例えば、PE(ポリエチレン)およびPP(ポリプロピレン)のうちの少なくとも1種を含む。セルロース誘導体は、例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、CAB(セルロースアセテートブチレート)およびCAP(セルロースアセテートプロピオネート)のうちの少なくとも1種を含む。ビニル系樹脂は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)およびPVDC(ポリ塩化ビニリデン)のうちの少なくとも1種を含む。
【0017】
その他の高分子樹脂は、例えば、PA(ポリアミド、ナイロン)、芳香族PA(芳香族ポリアミド、アラミド)、PI(ポリイミド)、芳香族PI(芳香族ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)、芳香族PAI(芳香族ポリアミドイミド)、PBO(ポリベンゾオキサゾール、例えばザイロン(登録商標))、ポリエーテル、PEK(ポリエーテルケトン)、ポリエーテルエステル、PES(ポリエーテルサルフォン)、PEI(ポリエーテルイミド)、PSF(ポリスルフォン)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PC(ポリカーボネート)、PAR(ポリアリレート)およびPU(ポリウレタン)のうちの少なくとも1種を含む。
【0018】
(磁性層)
磁性層13は、信号を記録するための記録層である。磁性層13は、例えば、磁性粉および結着剤を含む。磁性層13が、必要に応じて、潤滑剤、帯電防止剤、研磨剤、硬化剤、防錆剤および非磁性補強粒子等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0019】
磁性層13は、図2Aに示すように、複数のサーボバンドSBと複数のデータバンドDBとを予め有していることが好ましい。複数のサーボバンドSBは、磁気記録媒体10の幅方向に等間隔で設けられている。隣り合うサーボバンドSBの間には、データバンドDBが設けられている。サーボバンドSBには、磁気ヘッドのトラッキング制御をするためのサーボ信号が予め書き込まれている。データバンドDBには、ユーザデータが記録される。
【0020】
磁性層13の表面の面積Sに対する複数のサーボバンドSBの総面積SSBの割合R(=(SSB/S)×100)の上限値は、高記録容量を確保する観点から、好ましくは4.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらにより好ましくは2.0%以下である。一方、磁性層13の表面の面積Sに対する複数のサーボバンドSBの総面積SSBの割合Rの下限値は、5以上のサーボトラックを確保する観点から、好ましくは0.8%以上である。
【0021】
磁性層13の表面の面積Sに対する複数のサーボバンドSBの総面積SSBの割合Rは以下のようにして求められる。まず、磁性層13の表面を磁気力顕微鏡(Magnetic Force Microscope:MFM)を用いて観察し、MFM像を取得する。続いて、取得されたMFM像を用いて、サーボバンド幅WSBおよびサーボバンドSBの本数を測定する。次に、以下の式から割合Rを求める。
割合R[%]=(((サーボバンド幅WSB)×(サーボバンド本数))/(磁気記録媒体10の幅))×100
【0022】
サーボバンドSBの数の下限値は、好ましくは5以上、より好ましくは5+4n(但し、nは正の整数である。)以上、さらにより好ましくは9+4n以上である。サーボバンドSBの数が5以上であると、磁気記録媒体10の幅方向の寸法変化によるサーボ信号への影響を抑制し、よりオフトラックが少ない安定した記録再生特性を確保できる。サーボバンドSBの数の上限値は特に限定されるものではないが、例えば33以下である。
【0023】
サーボバンドSBの数は以下のようにして確認可能である。まず、磁性層13の表面を磁気力顕微鏡(MFM)を用いて観察し、MFM像を取得する。次に、MFM像を用いてサーボバンドSBの数をカウントする。
【0024】
サーボバンド幅WSBの上限値は、高記録容量を確保する観点から、好ましくは95μm以下、より好ましくは60μm以下、さらにより好ましくは30μm以下である。サーボバンド幅WSBの下限値は、好ましくは10μm以上である。10μm未満のサーボバンド幅WSBのサーボ信号を読み取り可能な記録ヘッドは製造が困難である。
【0025】
サーボバンド幅WSBの幅は以下のようにして求められる。まず、磁性層13の表面を磁気力顕微鏡(MFM)を用いて観察し、MFM像を取得する。次に、MFM像を用いてサーボバンド幅WSBの幅を測定する。
【0026】
磁性層13は、図2Bに示すように、データバンドDBに複数のデータトラックTkを形成可能に構成されている。データトラック幅Wの上限値は、トラック記録密度を向上し、高記録容量を確保する観点から、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは1.6μm以下、さらにより好ましくは0.95μm以下、特に好ましくは0.51μm以下である。データトラック幅Wの下限値は、磁性粒子サイズを考慮すると、好ましくは0.02μm以上である。
【0027】
磁性層13は、磁化反転間距離の最小値Lとデータトラック幅Wが好ましくはW/L≦200、より好ましくはW/L≦60、さらにより好ましくはW/L≦45、特に好ましくはW/L≦30となるように、データを記録可能に構成されている。磁化反転間距離の最小値Lが一定値であり、磁化反転間距離の最小値Lとトラック幅WがW/L>200であると(すなわちトラック幅Wが大きいと)、トラック記録密度が上がらないため、記録容量を十分に確保できなくなる虞がある。また、トラック幅Wが一定値であり、磁化反転間距離の最小値Lとトラック幅WがW/L>200であると(すなわち磁化反転間距離の最小値Lが小さいと)、ビット長さが小さくなり、線記録密度が上がるが、スペーシングロスの影響により、SNRが著しく悪化してしまう虞がある。したがって、記録容量を確保しながら、SNRの悪化を抑えるためには、上記のようにW/LがW/L≦60の範囲にあることが好ましい。但し、W/Lは上記範囲に限定されるものではなく、W/L≦23またはW/L≦13であってもよい。W/Lの下限値は特に限定されるものではないが、例えば1≦W/Lである。
【0028】
磁性層13は、高記録容量を確保する観点から、磁化反転間距離Lの最小値が好ましくは50nm以下、より好ましくは48nm以下、さらにより好ましくは44nm以下、特に好ましくは40nm以下となるように、データを記録可能に構成されている。磁化反転間距離Lの最小値の下限値は、磁性粒子サイズを考慮すると、好ましくは20nm以上である。
【0029】
磁性層13の平均厚みの上限値は、好ましくは90nm以下、特に好ましくは80nm以下、より好ましくは70nm以下、さらにより好ましくは50nm以下である。磁性層13の平均厚みの上限値が90nm以下であると、記録ヘッドとしてリング型ヘッドを用いた場合に、磁性層13の厚み方向に均一に磁化を記録できるため、電磁変換特性(例えばC/N(Carrier to Noise Ratio))を向上することができる。
【0030】
磁性層13の平均厚みの下限値は、好ましくは30nm以上、より好ましくは35nm以上である。磁性層13の平均厚みの上限値が30nm以上であると、再生ヘッドとしてはMR型ヘッドを用いた場合に、出力を確保できるため、電磁変換特性(例えばC/N)を向上することができる。
【0031】
磁性層13の平均厚みは以下のようにして求められる。まず、磁気記録媒体10を、その主面に対して垂直に薄く加工して試料片を作製し、その試験片の断面を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)により観察を行う。以下に、装置および観察条件を示す。
装置:TEM(日立製作所製H9000NAR)
加速電圧:300kV
倍率:100,000倍
次に、得られたTEM像を用い、磁気記録媒体10の長手方向に少なくとも10点以上の位置で磁性層13の厚みを測定した後、それらの測定値を単純に平均(算術平均)して磁性層13の平均厚みを求める。なお、測定位置は、試験片から無作為に選ばれるものとする。
【0032】
(磁性粉)
磁性粉は、ε酸化鉄を含有するナノ粒子(以下「ε酸化鉄粒子」という。)の粉末を含む。ε酸化鉄粒子は、微粒子でも高保磁力を得ることができる硬磁性粒子である。ε酸化鉄粒子に含まれるε酸化鉄は、垂直方向に優先的に結晶配向していることが好ましい。
【0033】
ε酸化鉄粒子は、球状もしくはほぼ球状を有しているか、または立方体状もしくはほぼ立方体状を有している。ε酸化鉄粒子が上記のような形状を有しているため、磁性粒子としてε酸化鉄粒子を用いた場合、磁性粒子として六角板状のバリウムフェライト粒子を用いた場合に比べて、磁気記録媒体10の厚み方向における粒子同士の接触面積を低減し、粒子同士の凝集を抑制することができる。したがって、磁性粉の分散性を高め、より優れた電磁変換特性(例えばC/N)を得ることができる。
【0034】
ε酸化鉄粒子は、コアシェル型構造を有する。具体的には、ε酸化鉄粒子は、図3に示すように、コア部21と、このコア部21の周囲に設けられた2層構造のシェル部22とを備える。2層構造のシェル部22は、コア部21上に設けられた第1シェル部22aと、第1シェル部22a上に設けられた第2シェル部22bとを備える。
【0035】
コア部21は、ε酸化鉄を含む。コア部21に含まれるε酸化鉄は、ε-Fe結晶を主相とするものが好ましく、単相のε-Feからなるものがより好ましい。
【0036】
第1シェル部22aは、コア部21の周囲のうちの少なくとも一部を覆っている。具体的には、第1シェル部22aは、コア部21の周囲を部分的に覆っていてもよいし、コア部21の周囲全体を覆っていてもよい。コア部21と第1シェル部22aの交換結合を十分なものとし、磁気特性を向上する観点からすると、コア部21の表面全体を覆っていることが好ましい。
【0037】
第1シェル部22aは、いわゆる軟磁性層であり、例えば、α-Fe、Ni-Fe合金またはFe-Si-Al合金等の軟磁性体を含む。α-Feは、コア部21に含まれるε酸化鉄を還元することにより得られるものであってもよい。
【0038】
第2シェル部22bは、酸化防止層としての酸化被膜である。第2シェル部22bは、α酸化鉄、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素を含む。α酸化鉄は、例えばFe、FeおよびFeOのうちの少なくとも1種の酸化鉄を含む。第1シェル部22aがα-Fe(軟磁性体)を含む場合には、α酸化鉄は、第1シェル部22aに含まれるα-Feを酸化することにより得られるものであってもよい。
【0039】
ε酸化鉄粒子が、上述のように第1シェル部22aを有することで、熱安定性を確保するためにコア部21単体の保磁力Hcを大きな値に保ちつつ、ε酸化鉄粒子(コアシェル粒子)全体としての保磁力Hcを記録に適した保磁力Hcに調整できる。また、ε酸化鉄粒子が、上述のように第2シェル部22bを有することで、磁気記録媒体10の製造工程およびその工程前において、ε酸化鉄粒子が空気中に暴露されて、粒子表面に錆び等が発生することにより、ε酸化鉄粒子の特性が低下することを抑制することができる。したがって、磁気記録媒体10の特性劣化を抑制することができる。
【0040】
磁性粉の平均粒子サイズ(平均最大粒子サイズ)は、好ましくは22nm以下、より好ましくは8nm以上22nm以下、さらにより好ましくは12nm以上22nm以下である。磁気記録媒体10では、記録波長の1/2のサイズの領域が実際の磁化領域となる。このため、磁性粉の平均粒子サイズを最短記録波長の半分以下に設定することで、良好なS/Nを得ることができる。したがって、磁性粉の平均粒子サイズが22nm以下であると、高記録密度の磁気記録媒体10(例えば44nm以下の最短記録波長で信号を記録可能に構成された磁気記録媒体10)において、良好な電磁変換特性(例えばC/N)を得ることができる。一方、磁性粉の平均粒子サイズが8nm以上であると、磁性粉の分散性がより向上し、より優れた電磁変換特性(例えばC/N)を得ることができる。
【0041】
磁性粉の平均アスペクト比が、好ましくは1.0以上3.0以下、より好ましくは1.0以上2.5以下、さらにより好ましくは1.0以上2.1以下、特に好ましくは1.0以上1.8以下である。磁性粉の平均アスペクト比が1.0以上3.0以下の範囲内であると、磁性粉の凝集を抑制することができると共に、磁性層13の形成工程において磁性粉を垂直配向させる際に、磁性粉に加わる抵抗を抑制することができる。したがって、磁性粉の垂直配向度を高めることができる。よって、電磁変換特性(例えばC/N)を向上することができる。
【0042】
上記の磁性粉の平均粒子サイズおよび平均アスペクト比は、以下のようにして求められる。まず、測定対象となる磁気記録媒体10をFIB(Focused Ion Beam)法等により加工して薄片を作製し、TEMにより薄片の断面観察を行う。次に、撮影したTEM写真から50個のε酸化鉄粒子を無作為に選び出し、各ε酸化鉄粒子の長軸長DLと短軸長DSを測定する。ここで、長軸長DLとは、ε酸化鉄粒子の輪郭に接するように、あらゆる角度から引いた2本の平行線間の距離のうち最大のもの(いわゆる最大フェレ径)を意味する。一方、短軸長DSとは、ε酸化鉄粒子の長軸と直交する方向におけるε酸化鉄粒子の長さのうち最大のものを意味する。
【0043】
続いて、測定した50個のε酸化鉄粒子の長軸長DLを単純に平均(算術平均)して平均長軸長DLaveを求める。このようにして求めた平均長軸長DLaveを磁性粉の平均粒子サイズとする。また、測定した10個のε酸化鉄粒子の短軸長DSを単純に平均(算術平均)して平均短軸長DSaveを求める。そして、平均長軸長DLaveおよび平均短軸長DSaveからε酸化鉄粒子の平均アスペクト比(DLave/DSave)を求める。
【0044】
磁性粉の平均粒子体積は、好ましくは5600nm以下、より好ましくは250nm以上5600nm以下、さらにより好ましくは900nm以上5600nm以下である。磁性粉の平均粒子体積が5600nm以下であると、磁性粉の平均粒子サイズを22nm以下とする場合と同様の効果が得られる。一方、磁性粉の平均粒子体積が250nm以上であると、磁性粉の平均粒子サイズを8nm以上とする場合と同様の効果が得られる。
【0045】
ε酸化鉄粒子が球状またはほぼ球状を有している場合には、磁性粉の平均粒子体積は以下のようにして求められる。まず、上記の磁性粉の平均粒子サイズの算出方法と同様にして、平均長軸長DLaveを求める。次に、以下の式により、磁性粉の平均体積Vを求める。
V=(π/6)×DLave
【0046】
ε酸化鉄粒子が立方体状またはほぼ立方体状を有している場合には、磁性粉の平均体積は以下のようにして求められる。まず、上記の磁性粉の平均粒子サイズの算出方法と同様にして、平均長軸長DLaveを求める。次に、以下の式により、磁性粉の平均体積Vを求める。
V=DLave
【0047】
(結着剤)
結着剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル-塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル-塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル-塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル-塩化ビニル共重合体、メタクリル酸エステル-エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース)、スチレンブタジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
【0048】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0049】
上記の全ての結着剤には、磁性粉の分散性を向上させる目的で、-SOM、-OSOM、-COOM、P=O(OM)(但し、式中Mは水素原子またはリチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属を表す)や、-NR1R2、-NR1R2R3で表される末端基を有する側鎖型アミン、>NR1R2で表される主鎖型アミン(但し、式中R1、R2、R3は水素原子または炭化水素基を表し、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン元素イオン、無機イオンまたは有機イオンを表す。)、さらに-OH、-SH、-CN、エポキシ基等の極性官能基が導入されていてもよい。これら極性官能基の結着剤への導入量は、10-1~10-8モル/gであるのが好ましく、10-2~10-6モル/gであるのがより好ましい。
【0050】
(潤滑剤)
潤滑剤としては、例えば、炭素数10~24の一塩基性脂肪酸と、炭素数2~12の1価~6価アルコールのいずれかとのエステル、これらの混合エステル、ジ脂肪酸エステル、トリ脂肪酸エステル等が挙げられる。潤滑剤の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ペンチル、ステアリン酸ヘプチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル等が挙げられる。
【0051】
(帯電防止剤)
帯電防止剤としては、例えば、カーボンブラック、天然界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0052】
(研磨剤)
研磨剤としては、例えば、α化率90%以上のα-アルミナ、β-アルミナ、γ-アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α-酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカ-バイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、2硫化モリブデン、磁性酸化鉄の原料を脱水、アニール処理した針状α酸化鉄、必要によりそれらをアルミおよび/またはシリカで表面処理したもの等が挙げられる。
【0053】
(硬化剤)
硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)と活性水素化合物との付加体等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)と活性水素化合物との付加体等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらポリイソシアネートの重量平均分子量は、100~3000の範囲であることが望ましい。
【0054】
(防錆剤)
防錆剤としては、例えばフェノール類、ナフトール類、キノン類、窒素原子を含む複素環化合物、酸素原子を含む複素環化合物、硫黄原子を含む複素環化合物等が挙げられる。
【0055】
(非磁性補強粒子)
非磁性補強粒子として、例えば、酸化アルミニウム(α、βまたはγアルミナ)、酸化クロム、酸化珪素、ダイヤモンド、ガーネット、エメリー、窒化ホウ素、チタンカーバイト、炭化珪素、炭化チタン、酸化チタン(ルチル型またはアナターゼ型の酸化チタン)等が挙げられる。
【0056】
(下地層)
下地層12は、非磁性粉および結着剤を含む非磁性層である。下地層12が、必要に応じて、潤滑剤、帯電防止剤、硬化剤および防錆剤等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0057】
下地層12の平均厚みは、好ましくは0.6μm以上2.0μm以下、より好ましくは0.8μm以上1.4μm以下である。なお、下地層12の平均厚みは、磁性層13の平均厚みと同様にして求められる。但し、TEM像の倍率は、下地層12の厚みに応じて適宜調整される。
【0058】
(非磁性粉)
非磁性粉は、例えば無機粒子粉または有機粒子粉の少なくとも1種を含む。また、非磁性粉は、カーボンブラック等の炭素粉を含んでいてもよい。なお、1種の非磁性粉を単独で用いてもよいし、2種以上の非磁性粉を組み合わせて用いてもよい。無機粒子は、例えば、金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物または金属硫化物等を含む。非磁性粉の形状としては、例えば、針状、球状、立方体状、板状等の各種形状が挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。
【0059】
(結着剤)
結着剤は、上述の磁性層13と同様である。
【0060】
(添加剤)
潤滑剤、帯電防止剤、硬化剤および防錆剤はそれぞれ、上述の磁性層13と同様である。
【0061】
(バック層)
バック層14は、結着剤および非磁性粉を含む。バック層14が、必要に応じて潤滑剤、硬化剤および帯電防止剤等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。結着剤および非磁性粉は、上述の下地層12と同様である。
【0062】
非磁性粉の平均粒子サイズは、好ましくは10nm以上150nm以下、より好ましくは15nm以上110nm以下である。非磁性粉の平均粒子サイズは、上記の磁性粉の平均粒子サイズと同様にして求められる。非磁性粉が、2以上の粒度分布を有する非磁性粉を含んでいてもよい。
【0063】
バック層14の平均厚みの上限値は、好ましくは0.6μm以下である。バック層14の平均厚みの上限値が0.6μm以下であると、磁気記録媒体10の平均厚みが5.6μm以下である場合でも、下地層12や基体11の厚みを厚く保つことができるので、磁気記録媒体10の記録再生装置内での走行安定性を保つことができる。バック層14の平均厚みの下限値は特に限定されるものではないが、例えば0.2μm以上である。
【0064】
バック層14の平均厚みは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気記録媒体10を準備し、それを250mmの長さに切り出し、サンプルを作製する。次に、測定装置としてMitsutoyo社製レーザーホロゲージを用いて、サンプルの厚みを5点以上で測定し、それらの測定値を単純に平均(算術平均)して、磁気記録媒体10の平均厚みt[μm]を算出する。なお、測定位置は、サンプルから無作為に選ばれるものとする。続いて、サンプルのバック層14をMEK(メチルエチルケトン)または希塩酸等の溶剤で除去する。その後、再び上記のレーザーホロゲージを用いてサンプルの厚みを5点以上で測定し、それらの測定値を単純に平均(算術平均)して、バック層14を除去した磁気記録媒体10の平均厚みt[μm]を算出する。なお、測定位置は、サンプルから無作為に選ばれるものとする。その後、以下の式よりバック層14の平均厚みt[μm]を求める。
[μm]=t[μm]-t[μm]
【0065】
(磁気記録媒体の平均厚み)
磁気記録媒体10の平均厚み(平均全厚)の上限値が、好ましくは5.6μm以下、より好ましくは5.0μm以下、特に好ましくは4.6μm以下、さらにより好ましくは4.4μm以下である。磁気記録媒体10の平均厚みが5.6μm以下であると、1データカートリッジ内に記録できる記録容量を一般的な磁気記録媒体よりも高めることができる。磁気記録媒体10の平均厚みの下限値は特に限定されるものではないが、例えば3.5μm以上である。
【0066】
磁気記録媒体10の平均厚みは、上述のバック層14の平均厚みの求め方において説明した手順により求められる。
【0067】
(垂直方向における保磁力Hc1)
垂直方向における保磁力Hc1の上限値が、3000Oe以下、より好ましくは2900Oe以下、さらにより好ましくは2850Oe以下である。保磁力Hc1が大きいことは、熱擾乱および反磁界の影響を受けにくくなり好ましいが、保磁力Hc1が3000Oeを超えると、記録ヘッドでの飽和記録が困難となる虞があり、それによって記録できない部分が存在しノイズが増加し、結果として電磁変換特性(例えばC/N)が悪化してしまう。
【0068】
垂直方向における保磁力Hc1の下限値が、好ましくは2200Oe以上、より好ましくは2400Oe以上、さらにより好ましくは2600Oe以上である。保磁力Hc1が2200Oe以上であると、熱擾乱の影響および反磁界の影響による、高温環境下における電磁変換特性(例えばC/N)の低下を抑制することができる。
【0069】
上記の保磁力Hc1は以下のようにして求められる。まず、長尺状の磁気記録媒体10から測定サンプルを切り出し、振動試料型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer:VSM)を用いて測定サンプルの垂直方向(厚み方向)に測定サンプル全体のM-Hループを測定する。次に、アセトンまたはエタノール等を用いて塗膜(下地層12、磁性層13およびバック層14等)を払拭し、基体11のみを残してバックグラウンド補正用のサンプルとし、VSMを用いて基体11の垂直方向(厚み方向)に基体11のM-Hループを測定する。その後、測定サンプル全体のM-Hループから基体11のM-Hループを引き算して、バックグラウンド補正後のM-Hループを得る。得られたM-Hループから保磁力Hc1を求める。なお、上記のM-Hループの測定はいずれも、25℃にて行われるものとする。また、M-Hループを磁気記録媒体10の垂直方向に測定する際の“反磁界補正”は行わないものとする。
【0070】
(長手方向における保磁力Hc2)
長手方向における保磁力Hc2の上限値が、好ましくは2000Oe以下、より好ましくは1900Oe以下、さらにより好ましくは1800Oe以下である。長手方向における保磁力Hc2が2000Oe以下であると、記録ヘッドからの垂直方向の磁界により感度良く磁化が反応するため、良好な記録パターンを形成することができる。
【0071】
長手方向における保磁力Hc2の下限値が、好ましくは1000Oe以上である。長手方向における保磁力Hc2が1000Oe以上であると、記録ヘッドからの漏れ磁束による減磁を抑制することができる。
【0072】
上記の保磁力Hc2は、測定サンプル全体およびバックグラウンド補正用のサンプルのM-Hループを磁気記録媒体10の長手方向(走行方向)に対応する方向に測定すること以外は、垂直方向における保磁力Hc1と同様にして求められる。
【0073】
(Hc2/Hc1)
垂直方向における保磁力Hc1と、長手方向における保磁力Hc2の比Hc2/Hc1が、Hc2/Hc1≦0.8、好ましくはHc2/Hc1≦0.75、より好ましくはHc2/Hc1≦0.7、さらにより好ましくはHc2/Hc1≦0.65、特に好ましくはHc2/Hc1≦0.6の関係を満たす。保磁力Hc1、Hc2がHc2/Hc1≦0.8の関係を満たすことで、磁性粉の垂直配向度を高めることができる。したがって、磁化遷移幅を低減し、かつ信号再生時に高出力の信号を得ることができるので、電磁変換特性(例えばC/N)を向上することができる。なお、上述したように、Hc2が小さいと、記録ヘッドからの垂直方向の磁界により感度良く磁化が反応するため、良好な記録パターンを形成することができる。
【0074】
比Hc2/Hc1がHc2/Hc1≦0.8である場合、磁性層13の平均厚みが90nm以下であることが特に有効である。磁性層13の平均厚みが90nmを超えると、記録ヘッドとしてリング型ヘッドを用いた場合に、磁性層13の下部領域(下地層12側の領域)が長手方向に磁化されてしまい、磁性層13を厚み方向に均一に磁化することができなくなる虞がある。したがって、比Hc2/Hc1をHc2/Hc1≦0.8としても(すなわち、磁性粉の垂直配向度を高めても)、電磁変換特性(例えばC/N)を向上することができなくなる虞がある。
【0075】
Hc2/Hc1の下限値は特に限定されるものではないが、例えば0.5≦Hc2/Hc1である。
【0076】
なお、Hc2/Hc1は磁性粉の垂直配向度を表しており、Hc2/Hc1が小さいほど磁性粉の垂直配向度が高くなる。以下に、本実施形態において、磁性粉の垂直配向度を示す指標としてHc2/Hc1を用いる理由について説明する。
【0077】
従来、一般的には磁性粉の垂直配向度を示す指標(パラメータ)としては、角形比SQ(=(Mr/Ms)×100、但し、Mr(emu):残留磁化、Ms(emu):飽和磁化)が用いられてきた。しかしながら、本発明者らの知見によれば、角形比SQという指標は、以下の理由により磁性粉の垂直配向度を示す指標としては適当でない。
(1)角形比SQは、磁性粉の保磁力Hcの値により変動してしまう。例えば、図5に示すように、磁性粉の保磁力Hcが大きくなると、見かけ上、角形比SQも大きい値となる。
(2)角形比SQは、過分散によるM-Hループの歪みの影響を受ける。
【0078】
そこで、本実施形態においては、より適切に磁性粉の配向度を示す指標として、Hc2/Hc1を用いる。保磁力Hc1、Hc2は磁性粉の配向方向によって単純に変化するため、Hc2/Hc1が磁性粉の配向度を示す指標としてより適切である。
【0079】
(SFD)
磁気記録媒体10のSFD(Switching Field Distribution)曲線において、メインピーク高さXと磁場ゼロ付近のサブピークの高さYとのピーク比X/Yが、好ましくは3.0以上、より好ましくは5.0以上、さらにより好ましくは7.0以上、特に好ましくは10.0以上、最も好ましくは20.0以上である(図5参照)。ピーク比X/Yが3.0以上であると、実際の記録に寄与するε酸化鉄粒子の他にε酸化鉄特有の低保磁力成分(例えば軟磁性粒子や超常磁性粒子等)が磁性粉中に多く含まれることを抑制できる。したがって、記録ヘッドからの漏れ磁界により、隣接するトラックに記録された磁化信号が劣化することを抑制できるので、より優れた電磁変換特性(例えばC/N)を得ることができる。ピーク比X/Yの上限値は特に限定されるものではないが、例えば100以下である。
【0080】
上記のピーク比X/Yは、以下のようにして求められる。まず、上記の保磁力Hc1の測定方法と同様にして、バックグラウンド補正後のM-Hループを得る。次に、得られたM-HループからSFDカーブを算出する。SFDカーブの算出には測定機に付属のプログラムを用いてもよいし、その他のプログラムを用いてもよい。算出したSFDカーブがY軸(dM/dH)を横切る点の絶対値を「Y」とし、M-Hループで言うところの保磁力Hc1近傍に見られるメインピークの高さを「X」として、ピーク比X/Yを算出する。
【0081】
(活性化体積Vact
活性化体積Vactが、好ましくは8000nm以下、より好ましくは6000nm以下、さらにより好ましくは5000nm以下、特に好ましくは4000nm以下、最も好ましくは3000nm以下である。活性化体積Vactが8000nm以下であると、磁性粉の分散状態が良好になるため、ビット反転領域を低減することができ、記録ヘッドからの漏れ磁界により、隣接するトラックに記録された磁化信号が劣化することを抑制できる。したがって、より優れた電磁変換特性(例えばC/N)を得ることができる。
【0082】
上記の活性化体積Vactは、Street&Woolleyにより導出された下記の式により求められる。
act(nm)=k×T×Χirr/(μ×Ms×S)
(但し、k:ボルツマン定数(1.38×10-23J/K)、T:温度(K)、Χirr:非可逆磁化率、μ:真空の透磁率、S:磁気粘性係数、Ms:飽和磁化(emu/cm))
【0083】
上記式に代入される非可逆磁化率Χirr、飽和磁化Msおよび磁気粘性係数Sは、VSMを用いて以下のようにして求められる。なお、VSMによる測定方向は、垂直方向とする。また、VSMによる測定は、長尺状の磁気記録媒体10から切り出された測定サンプルに対して25℃にて行われるものとする。また、M-Hループを垂直方向に測定する際の“反磁界補正”は行わないものとする。
【0084】
(非可逆磁化率Χirr
非可逆磁化率Χirrは、残留磁化曲線(DCD曲線)の傾きにおいて、残留保磁力Hr付近における傾きと定義される。まず、磁気記録媒体10全体に-1193kA/m(15kOe)の磁界を印加し、磁界をゼロに戻し残留磁化状態とする。その後、反対方向に約15.9kA/m(200Oe)の磁界を印加し再びゼロに戻し残留磁化量を測定する。その後も同様に、先ほどの印加磁界よりもさらに15.9kA/m大きい磁界を印加しゼロに戻す測定を繰り返し行い、印加磁界に対して残留磁化量をプロットしDCD曲線を測定する。得られたDCD曲線から、磁化量ゼロとなる点を残留保磁力Hrとし、さらにDCD曲線を微分し、各磁界におけるDCD曲線の傾きを求める。このDCD曲線の傾きにおいて、残留保磁力Hr付近の傾きがΧirrとなる。
【0085】
(飽和磁化Ms)
まず、上記の保磁力Hc1の測定方法と同様にして、バックグラウンド補正後のM-Hループを得る。次に、得られたM-Hループの飽和磁化Ms(emu)の値と、測定サンプル中の磁性層13の体積(cm)から、Ms(emu/cm)を算出する。なお、磁性層13の体積は測定サンプルの面積に磁性層13の平均厚みを乗ずることにより求められる。磁性層13の体積の算出に必要な磁性層13の平均厚みの算出方法は、上述した通りである。
【0086】
(磁気粘性係数S)
まず、磁気記録媒体10(測定サンプル)全体に-1193kA/m(15kOe)の磁界を印加し、磁界をゼロに戻し残留磁化状態とする。その後、反対方向に、DCD曲線より得られた残留保磁力Hrの値と同等の磁界を印加する。磁界を印加した状態で1000秒間、磁化量を一定の時間間隔で継続的に測定する。このようにして得られた、時間tと磁化量M(t)の関係を以下の式に照らし合わせて、磁気粘性係数Sを算出する。
M(t)=M0+S×ln(t)
(但し、M(t):時間tの磁化量、M0:初期の磁化量、S:磁気粘性係数、ln(t):時間の自然対数)
【0087】
[1.2 磁気記録媒体の製造方法]
次に、上述の構成を有する磁気記録媒体10の製造方法について説明する。まず、非磁性粉および結着剤等を溶剤に混練、分散させることにより、下地層形成用塗料を調製する。次に、磁性粉および結着剤等を溶剤に混練、分散させることにより、磁性層形成用塗料を調製する。磁性層形成用塗料および下地層形成用塗料の調製には、例えば、以下の溶剤、分散装置および混練装置を用いることができる。
【0088】
上述の塗料調製に用いられる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、乳酸エチル、エチレングリコールアセテート等のエステル系溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2-エトキシエタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、適宜混合して用いてもよい。
【0089】
上述の塗料調製に用いられる混練装置としては、例えば、連続二軸混練機、多段階で希釈可能な連続二軸混練機、ニーダー、加圧ニーダー、ロールニーダー等の混練装置を用いることができるが、特にこれらの装置に限定されるものではない。また、上述の塗料調製に用いられる分散装置としては、例えば、ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、スパイクミル、ピンミル、タワーミル、パールミル(例えばアイリッヒ社製「DCPミル」等)、ホモジナイザー、超音波分散機等の分散装置を用いることができるが、特にこれらの装置に限定されるものではない。
【0090】
次に、下地層形成用塗料を基体11の一方の主面に塗布して乾燥させることにより、下地層12を形成する。続いて、この下地層12上に磁性層形成用塗料を塗布して乾燥させることにより、磁性層13を下地層12上に形成する。なお、乾燥の際に、例えばソレノイドコイルにより、磁性粉を基体11の厚み方向に磁場配向させる。また、乾燥の際に、例えばソレノイドコイルにより、磁性粉を基体11の走行方向(長手方向)に磁場配向させたのちに、基体11の厚み方向に磁場配向させるようにしてもよい。このような磁場配向処理をすることで、比Hc2/Hc1を低くすることができる。したがって、磁性粉の垂直配向度を向上することができる。磁性層13の形成後、基体11の他方の主面にバック層14を形成する。これにより、磁気記録媒体10が得られる。
【0091】
比Hc2/Hc1は、例えば、磁性層形成用塗料の塗膜に印加される磁場の強度、磁性層形成用塗料中における固形分の濃度、磁性層形成用塗料の塗膜の乾燥条件(乾燥温度および乾燥時間)を調整することにより所望の値に設定される。塗膜に印加される磁場の強度は、磁性粉の保磁力の2倍以上3倍以下であることが好ましい。比Hc2/Hc1をさらに高めるためには、磁性層形成用塗料中における磁性粉の分散状態を向上させることが好ましい。また、比Hc2/Hc1をさらに高めるためには、磁性粉を磁場配向させるための配向装置に磁性層形成用塗料が入る前の段階で、磁性粉を磁化させておくことも有効である。なお、上記の比Hc2/Hc1の調整方法は単独で使用されてもよいし、2以上組み合わされて使用されてもよい。
【0092】
その後、得られた磁気記録媒体10を大径コアに巻き直し、硬化処理を行う。最後に、磁気記録媒体10に対してカレンダー処理を行った後、所定の幅(例えば1/2インチ幅)に裁断する。以上により、目的とする細長い長尺状の磁気記録媒体10が得られる。
【0093】
[1.3 記録再生装置の構成]
次に、図6を参照して、上述の構成を有する磁気記録媒体10の記録および再生を行う記録再生装置30の構成について説明する。
【0094】
記録再生装置30は、磁気記録媒体カートリッジ10Aを装填可能な構成を有している。ここでは、説明を容易とするために、記録再生装置30が、1つの磁気記録媒体カートリッジ10Aを装填可能な構成を有している場合について説明するが、記録再生装置30が、複数の磁気記録媒体カートリッジ10Aを装填可能な構成を有していてもよい。
【0095】
記録再生装置30は、ネットワーク43を介してサーバ41およびパーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)42等の情報処理装置に接続されており、これらの情報処理装置から供給されたデータを磁気記録媒体カートリッジ10Aに記録可能に構成されている。
【0096】
記録再生装置30は、図6に示すように、スピンドル31と、記録再生装置30側のリール32と、スピンドル駆動装置33と、リール駆動装置34と、複数のガイドローラ35と、ヘッドユニット36と、通信インターフェース(以下、I/F)37と、制御装置38とを備える。
【0097】
スピンドル31は、磁気記録媒体カートリッジ10Aを装着可能に構成されている。磁気記録媒体カートリッジ10Aは、例えば、LTO(Linear Tape Open)規格に準拠しており、カートリッジケース10Bに磁気記録媒体10を巻装した単一のリール10Cを回転可能に収容している。磁気記録媒体10には、サーボ信号としてハの字状のサーボパターンが予め記録されている。リール32は、磁気記録媒体カートリッジ10Aから引き出された磁気記録媒体10の先端を固定可能に構成されている。
【0098】
スピンドル駆動装置33は、スピンドル31を回転駆動させる装置である。リール駆動装置34は、リール32を回転駆動させる装置である。磁気記録媒体10に対してデータの記録または再生を行う際には、スピンドル駆動装置33とリール駆動装置34とが、スピンドル31とリール32とを回転駆動させることによって、磁気記録媒体10を走行させる。ガイドローラ35は、磁気記録媒体10の走行をガイドするためのローラである。
【0099】
ヘッドユニット36は、磁気記録媒体10にデータ信号を記録するための複数の記録ヘッドと、磁気記録媒体10に記録されているデータ信号を再生するための複数の再生ヘッドと、磁気記録媒体10に記録されているサーボ信号を再生するための複数のサーボヘッドとを備える。記録ヘッドとしては例えばリング型ヘッドを用いることができるが、記録ヘッドの種類はこれに限定されるものではない。
【0100】
通信I/F37は、サーバ41およびPC42等の情報処理装置と通信するためのものであり、ネットワーク43に対して接続される。
【0101】
制御装置38は、記録再生装置30の全体を制御する。例えば、制御装置38は、サーバ41およびPC42等の情報処理装置の要求に応じて、情報処理装置から供給されるデータ信号をヘッドユニット36により磁気記録媒体10に記録する。また、制御装置38は、サーバ41およびPC42等の情報処理装置の要求に応じて、ヘッドユニット36により、磁気記録媒体10に記録されたデータ信号を再生し、情報処理装置に供給する。
【0102】
[1.4 効果]
第1の実施形態に係る磁気記録媒体10では、(1)磁性層13の平均厚みが、90nm以下であり、(2)磁性粉の平均アスペクト比が、1.0以上3.0以下であり、(3)垂直方向における保磁力Hc1が、3000Oe以下であり、(4)垂直方向における保磁力Hc1と、長手方向における保磁力Hc2とが、Hc2/Hc1≦0.8の関係を満たす。これにより、電磁変換特性(例えばC/N)を向上することができる。
【0103】
[1.5 変形例]
(変形例1)
上述の第1の実施形態では、ε酸化鉄粒子が2層構造のシェル部22を有している場合について説明したが、図7に示すように、ε酸化鉄粒子が単層構造のシェル部23を有していてもよい。この場合、シェル部23は、第1シェル部22aと同様の構成を有する。但し、ε酸化鉄粒子の特性劣化を抑制する観点からすると、上述した第1の実施形態におけるように、ε酸化鉄粒子が2層構造のシェル部22を有していることが好ましい。
【0104】
(変形例2)
上述の第1の実施形態では、ε酸化鉄粒子がコアシェル構造を有している場合について説明したが、ε酸化鉄粒子が、コアシェル構造に代えて添加剤を含んでいてもよいし、コアシェル構造を有すると共に添加剤を含んでいてもよい。この場合、ε酸化鉄粒子のFeの一部が添加剤で置換される。ε酸化鉄粒子が添加剤を含むことによっても、ε酸化鉄粒子全体としての保磁力Hcを記録に適した保磁力Hcに調整できるため、記録容易性を向上することができる。添加剤は、鉄以外の金属元素、好ましくは3価の金属元素、より好ましくはAl、GaおよびInのうちの少なくとも1種、さらにより好ましくはAlおよびGaのうちの少なくとも1種である。
【0105】
具体的には、添加剤を含むε酸化鉄は、ε-Fe2-x結晶(但し、Mは鉄以外の金属元素、好ましくは3価の金属元素、より好ましくはAl、GaおよびInのうちの少なくとも1種、さらにより好ましくはAlおよびGaのうちの少なくとも1種である。xは、例えば0<x<1である。)である。
【0106】
(変形例3)
磁性粉が、ε酸化鉄粒子の粉末に代えて、六方晶フェライトを含有するナノ粒子(以下「六方晶フェライト粒子」という。)の粉末を含むようにしてもよい。六方晶フェライト粒子は、例えば、六角板状またはほぼ六角板状を有する。六方晶フェライトは、好ましくはBa、Sr、PbおよびCaのうちの少なくとも1種、より好ましくはBaおよびSrのうちの少なくとも1種を含む。六方晶フェライトは、具体的には例えばバリウムフェライトまたはストロンチウムフェライトであってもよい。バリウムフェライトは、Ba以外にSr、PbおよびCaのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。ストロンチウムフェライトは、Sr以外にBa、PbおよびCaのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
【0107】
より具体的には、六方晶フェライトは、一般式MFe1219で表される平均組成を有する。但し、Mは、例えばBa、Sr、PbおよびCaのうちの少なくとも1種の金属、好ましくはBaおよびSrのうちの少なくとも1種の金属である。Mが、Baと、Sr、PbおよびCaからなる群より選ばれる1種以上の金属との組み合わせであってもよい。また、Mが、Srと、Ba、PbおよびCaからなる群より選ばれる1種以上の金属との組み合わせであってもよい。上記一般式においてFeの一部が他の金属元素で置換されていてもよい。
【0108】
磁性粉が六方晶フェライト粒子の粉末を含む場合、磁性粉の平均粒子サイズは、好ましくは30nm以下、より好ましくは12nm以上25nm以下、さらにより好ましくは15nm以上22nm以下である。磁性粉の平均粒子サイズが30nm以下であると、高記録密度の磁気記録媒体10において、良好な電磁変換特性(例えばC/N)を得ることができる。一方、磁性粉の平均粒子サイズが12nm以上であると、磁性粉の分散性がより向上し、より優れた電磁変換特性(例えばC/N)を得ることができる。磁性粉が六方晶フェライト粒子の粉末を含む場合、磁性粉の平均アスペクト比は上述の第1の実施形態と同様である。
【0109】
なお、磁性粉の平均粒子サイズおよび平均アスペクト比は以下のようにして求められる。まず、測定対象となる磁気記録媒体10をFIB法等により加工して薄片を作製し、TEMにより薄片の断面観察を行う。次に、撮影したTEM写真から、水平方向に対して75度以上の角度で配向した磁性粉を50個無作為に選び出し、各磁性粉の最大板厚DAを測定する。続いて、測定した50個の磁性粉の最大板厚DAを単純に平均(算術平均)して平均最大板厚DAaveを求める。
【0110】
次に、磁気記録媒体10の磁性層13の表面をTEMにより観察を行う。次に、撮影したTEM写真から50個の磁性粉を無作為に選び出し、各磁性粉の最大板径DBを測定する。ここで、最大板径DBとは、磁性粉の輪郭に接するように、あらゆる角度から引いた2本の平行線間の距離のうち最大のもの(いわゆる最大フェレ径)を意味する。続いて、測定した50個の磁性粉の最大板径DBを単純に平均(算術平均)して平均最大板径DBaveを求める。このようにして求めた平均最大板径DBaveを磁性粉の平均粒子サイズとする。次に、平均最大板厚DAaveおよび平均最大板径DBaveから磁性粉の平均アスペクト比(DBave/DAave)を求める。
【0111】
磁性粉が六方晶フェライト粒子の粉末を含む場合、磁性粉の平均粒子体積は、好ましくは5900nm以下、より好ましくは500nm以上3400nm以下、さらにより好ましくは1000nm以上2500nm以下である。磁性粉の平均粒子体積が5900nm以下であると、磁性粉の平均粒子サイズを30nm以下とする場合と同様の効果が得られる。一方、磁性粉の平均粒子体積が500nm以上であると、磁性粉の平均粒子サイズを12nm以上とする場合と同様の効果が得られる。
【0112】
なお、磁性粉の平均粒子体積は以下のようにして求められる。まず、上記の磁性粉の平均粒子サイズの算出方法と同様にして、平均最大板厚DAaveおよび平均最大板径DBaveを求める。次に、以下の式により、磁性粉の平均粒子体積Vを求める。
V=3√3/8×DAave×DBave
【0113】
(変形例4)
磁性粉は、ε酸化鉄粒子の粉末に代えて、Co含有スピネルフェライトを含有するナノ粒子(以下「コバルトフェライト粒子」という。)の粉末を含むようにしてもよい。コバルトフェライト粒子は、一軸異方性を有することが好ましい。コバルトフェライト粒子は、例えば、立方体状またはほぼ立方体状を有している。Co含有スピネルフェライトが、Co以外にNi、Mn、Al、CuおよびZnのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
【0114】
Co含有スピネルフェライトは、例えば以下の式(1)で表される平均組成を有する。
CoFe ・・・(1)
(但し、式(1)中、Mは、例えば、Ni、Mn、Al、CuおよびZnのうちの少なくとも1種の金属である。xは、0.4≦x≦1.0の範囲内の値である。yは、0≦y≦0.3の範囲内の値である。但し、x、yは(x+y)≦1.0の関係を満たす。zは3≦z≦4の範囲内の値である。Feの一部が他の金属元素で置換されていてもよい。)
【0115】
磁性粉がコバルトフェライト粒子の粉末を含む場合、磁性粉の平均粒子サイズは、好ましくは25nm以下、より好ましくは8nm以上23nm以下である。磁性粉の平均粒子サイズが25nm以下であると、高記録密度の磁気記録媒体10において、良好な電磁変換特性(例えばC/N)を得ることができる。一方、磁性粉の平均粒子サイズが8nm以上であると、磁性粉の分散性がより向上し、より優れた電磁変換特性(例えばC/N)を得ることができる。磁性粉がコバルトフェライト粒子の粉末を含む場合、磁性粉の平均アスペクト比は上述の第1の実施形態と同様である。また、磁性粉の平均粒子サイズおよび平均アスペクト比の算出方法も上述の第1の実施形態と同様にして求められる。
【0116】
磁性粉の平均粒子体積は、好ましくは15000nm以下、より好ましくは500nm以上12000nm以下である。磁性粉の平均粒子体積が15000nm以下であると、磁性粉の平均粒子サイズを25nm以下とする場合と同様の効果が得られる。一方、磁性粉の平均粒子体積が500nm以上であると、磁性粉の平均粒子サイズを8nm以上とする場合と同様の効果が得られる。なお、磁性粉の平均粒子体積は、上述の第1の実施形態における磁性粉の平均粒子体積の算出方法(ε酸化鉄粒子が立方体状またはほぼ立方体状を有している場合の平均粒子体積の算出方法)と同様である。
【0117】
(変形例5)
磁気記録媒体10が、図8に示すように、基体11の少なくとも一方の表面に設けられたバリア層15をさらに備えるようにしてもよい。バリア層15は、基体11が有する環境に応じた寸法変化を抑制するための層である。例えば、その寸法変化を及ぼす原因の一例として、基体11の吸湿性があるが、バリア層15を設けることにより基体11への水分の侵入速度を低減することができる。バリア層15は、例えば、金属または金属酸化物を含む。金属としては、例えば、Al、Cu、Co、Mg、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、Ba、Pt、AuおよびTaのうちの少なくとも1種を用いることができる。金属酸化物としては、例えば、上記金属を1種または2種以上含む金属酸化物を用いることができる。より具体的には例えば、Al、CuO、CoO、SiO、Cr、TiO、TaおよびZrOのうちの少なくとも1種を用いることができる。また、バリア層15が、ダイヤモンド状炭素(Diamond-Like Carbon:DLC)またはダイヤモンド等を含むようにしてもよい。
【0118】
バリア層15の平均厚みは、好ましくは20nm以上1000nm以下、より好ましくは50nm以上1000nm以下である。バリア層15の平均厚みは、磁性層13の平均厚みと同様にして求められる。但し、TEM像の倍率は、バリア層15の厚みに応じて適宜調整される。
【0119】
(変形例6)
上述の第1の実施形態に係る磁気記録媒体10をライブラリ装置に用いるようにしてもよい。この場合、ライブラリ装置は、上述の第1の実施形態における記録再生装置30を複数備えるものであってもよい。
【0120】
<2 第2の実施形態>
(磁気記録媒体の伸縮性およびテンションコントロール)
以下、磁気記録媒体10の伸縮性および記録再生装置30による磁気記録媒体10のテンションコントロールについて説明する。LTO規格では、データの高密度記録化の要請により、記録トラック数が急激に増加している。このような場合、記録トラック幅が狭くなってしまい、磁気記録媒体10の幅のわずかな変動が問題となる場合がある。
【0121】
例えば、記録再生装置30によって、磁気記録媒体10に所定のデータが記憶され、その後(例えば、一定期間保管後)、記録再生装置30により、磁気記録媒体10に記録されたデータが再生されるとする。このような場合、データ再生時の磁気記録媒体10の幅が、磁気記録媒体10のデータ記録時の幅に比べてわずかにでも変動してしまうと、オフトラック(データリードヘッドが誤った記録トラック上に位置してしまうこと)が発生してしまう場合がある。このため、磁気記録媒体10に記録されたデータが正確に再生できずにエラーが発生してしまう可能性がある。
【0122】
磁気記録媒体10の幅の変動の原因としては、例えば、温度の変動、湿度の変動等が挙げられる。一般的には、磁気記録媒体10を伸縮しないように磁気記録媒体10を設計することで、磁気記録媒体10の幅の変動に対応するといった手法が用いられる。しかしながら、磁気記録媒体10を全く伸縮しないようにことは現実的には不可能である。
【0123】
そこで、本実施形態では、磁気記録媒体10を伸縮し難くするのではなく、逆に、ある程度磁気記録媒体10を伸縮しやすくし、また、記録再生装置30側で磁気記録媒体10のテンション(磁気記録媒体10の搬送方向)をコントロールする(増減させる)といった手法が用いられる。すなわち、本実施形態では、磁気記録媒体10は、長手方向におけるテンションを増減させることで、磁気記録媒体10の幅を調整可能に構成されている。
【0124】
具体的には、記録再生装置30は、データ信号の再生時において、必要に応じて(磁気記録媒体10の幅が広がっている場合)、磁気記録媒体10の長手方向のテンションを高くすることで磁気記録媒体10の幅を小さくする。また、記録再生装置30は、データ信号の再生時において、必要に応じて(磁気記録媒体10の幅が狭まっている場合)、磁気記録媒体10の長手方向のテンションを低くすることで磁気記録媒体10の幅を大きくする。なお、記録再生装置30は、データ信号の再生時だけでなく、データ信号の記録時においても磁気記録媒体10の長手方向のテンションをコントロールしてもよい。
【0125】
このような方法によれば、例えば、温度等により磁気記録媒体10の幅が変動したしまったときに、必要に応じて磁気記録媒体10の幅を調整することで、磁気記録媒体10の幅を一定にすることが可能となる。従って、オフトラックを抑制することができ、磁気記録媒体10に記録されたデータを正確に再生することが可能であると考えられる。
【0126】
(磁気記録媒体を長手方向に1%伸ばしたときの荷重)
磁気記録媒体10を長手方向に1%伸ばしたときの荷重[N](以下、単に「長手1%伸び荷重」という。)は、好ましくは0.6N以下、より好ましくは0.58N以下、さらにより好ましくは0.55N以下、特に好ましくは0.5N以下、最も好ましくは0.45N以下である。長手1%伸び荷重が0.6N以下であると、磁気記録媒体10の伸縮性が高くなるため、テンションコントロールによる磁気記録媒体10の幅の調整が容易となる。したがって、(例えば、45℃で一ヶ月のような加速劣化環境下で)温度等により磁気記録媒体10の幅が変動したしまったとしても、磁気記録媒体10の幅を調整することで、磁気記録媒体10の幅を一定にすることが可能となる。したがって、オフトラックを抑制することができ、磁気記録媒体10に記録されたデータを正確に再生することが可能となる。
【0127】
また、磁気記録媒体10の幅のわずかな変動に対処することが可能となるので、結果として、磁気記録媒体10の記録トラック数を増やすことができ、データの高密度記録化を実現することができる。
【0128】
上記の長手1%伸び荷重は、以下のようにして求められる。まず、テープ幅が12.65mmの磁気記録媒体10を100mmの長さ(長手方向)に切断することで、幅12.65mm、長さ100mmの磁気記録媒体10のサンプルが用意される。そして、このサンプルが測定機にセットされ、測定機によりサンプルが長手方向に伸ばされてそのときの荷重が測定される。測定機としては、島津製作所製のAUTO GRAPH AG-100Dが用いられる。また、測定温度は、室温とされ、引っ張り速度は10mm/minとされる。
【0129】
図10は、長手方向の伸び率[%]と、荷重[N]との関係を示す図である。図10に示すように、伸び率と、荷重との関係は、サンプルがほとんど伸びていない場合には(伸び率が0に近いとき)非線形となっており、サンプルがある程度伸びた場合には線形に近くなっている。したがって、長手1%伸び荷重の値は、非線形である箇所の値ではなく、線形に近い箇所の値が用いられる。
【0130】
具体的には、磁気記録媒体10の長手方向の引張試験において、磁気記録媒体10の伸び率0.5%のときの荷重をσ0.5[N]とし、磁気記録媒体10の伸び率1.5%のときの荷重をσ1.5[N]としたとき、長手1%伸び荷重は、以下の式により表される。
長手1%伸び荷重[N]=σ1.5-σ0.5
【0131】
この長手1%伸び荷重は、外力による磁気記録媒体10の長手方向における伸縮のし難さを示す値であり、この値が大きいほど磁気記録媒体10は外力により長手方向に伸縮し難く、この値が小さいほど磁気記録媒体10は外力により長手方向に伸縮しやすい。
【0132】
なお、長手1%伸び荷重は、磁気記録媒体10の長手方向に関する値であるが、磁気記録媒体10の幅方向の伸縮のし難さとも相関がある。つまり、この長手1%伸び荷重の値が大きいほど磁気記録媒体10は外力により幅方向に伸縮し難く、この値が小さいほど磁気記録媒体10は外力により幅方向に伸縮しやすい。
【0133】
磁気記録媒体10が幅方向に伸縮しやすい方がテンションコントロールにより磁気記録媒体10の幅を調整しやすいので、長手1%伸び荷重は、小さい方が有利である。
【0134】
(磁気記録媒体10の長手方向の収縮率)
磁気記録媒体10の長手方向の収縮率(以下、単に「長手収縮率」という。)は、好ましくは0.1%以下であり、より好ましくは0.09%以下、0.08%以下、0.07%以下、0.06%以下または0.05%以下である。長手収縮率が0.1%以下であると、温度等により磁気記録媒体10の幅が変動し難くなる(例えば、45℃で一ヶ月のような長期の加速劣化環境下でも)。したがって、オフトラックを抑制することができ、磁気記録媒体10に記録されたデータを正確に再生することが可能となる。
【0135】
なお、本実施形態においては、磁気記録媒体10は、外力が加えられたとき(テンションコントロール)には、比較的に容易に伸縮するが、一方で、温度変動などの環境変化によって磁気記録媒体10が容易には伸縮しないように構成される。
【0136】
上記の長手収縮率は、以下のようにして求められる。まず、磁気記録媒体10が50mmの長さ(長手方向)に切断されて磁気記録媒体10のサンプルが用意される。そして、このサンプルの磁性層13の表面において長手方向に15mm離れた位置に針で2点の圧痕がつけられる。
【0137】
次に、トプコン社製の測定顕微鏡TMU-220ESおよび座標測定機CA-1Bが用いられて、2点の圧痕間の距離L1が室温で測定される。その後、サンプルに対して張力が掛からない状態(テンションフリー)で、60℃、10%RH状態の恒温槽内で72時間保管(エイジング)される。その後、サンプルが恒温槽から取り出されて室温環境で1時間放置され、上記と同様の方法で2点の圧痕間の距離L2が測定される。
【0138】
そして、距離L1(エイジング前)と距離L2(エイジング後)とに基づいて、以下の式により長手収縮率[%]が求められる。
長手収縮率={(L1-L2)/L1}×100
【0139】
この長手収縮率は、テンションフリーの状態での熱による磁気記録媒体10の長手方向における伸縮のし易さを示す値であり、この値が大きいほど熱により磁気記録媒体10は長手方向に伸縮し易く、この値が小さいほど熱により磁気記録媒体10は長手方向に伸縮しにくい。
【0140】
なお、長手収縮率は、磁気記録媒体10の長手方向に関する値であるが、磁気記録媒体10の幅方向の伸縮のし易さとも相関がある。つまり、この長手収縮率の値が大きいほど磁気記録媒体10は熱により幅方向に伸縮し易く、この値が小さいほど熱により磁気記録媒体10は幅方向に伸縮し難い。
【0141】
上述のように、テンションコントロールの観点からは、磁気記録媒体10は伸縮した方が有利である。一方、温度変化などの環境変化によって磁気記録媒体10が伸縮してしまうのはオフトラックを誘発してしまうため好ましくない。したがって、長手収縮率は、小さい方が有利である。
【0142】
((TL-TB)/TB)
基体11の平均厚みをTB、磁気記録媒体10の平均厚みをTLとしたとき、(TL-TB)/TBの値は、好ましくは0.41以下、より好ましくは0.39以下、さらにより好ましくは0.37以下、特に好ましくは0.35以下である。(TL-TB)/TBの値が0.41以下であると、外力による磁気記録媒体10の伸縮性がさらに高くなるため、テンションコントロールによる磁気記録媒体10の幅の調整がさらに容易となる。したがって、オフトラックをさらに適切に抑制することができ、磁気記録媒体10に記録されたデータをさらに正確に再生することが可能となる。
【0143】
(TL-TB)/TBの分母は、基体11の平均厚みTBを表しており、分子は、塗膜(磁性層13、下地層12およびバック層14)の平均厚み(TL-TB)を表している。なお、塗膜の平均厚みは、磁気記録媒体10の平均厚みTLから基体11の平均厚みTBを引いた値とされている。つまり、(TL-TB)/TBは、基体11の平均厚みTBに対する、塗膜の平均厚み(TL-TB)の割合を意味している。ここで、塗膜は、基体11に比べると外力により伸縮し難い。仮に、基体11の平均厚みTBを固定して、塗膜の平均厚み(TL-TB)を大きくすると、(TL-TB)/TBの値は、大きくなるが、この場合、磁気記録媒体10は、伸縮し難くなることになる。
【0144】
(TL-TB)/TBの値は、外力による磁気記録媒体10の伸縮し難さと相関があり、この値が大きくなるほど外力により磁気記録媒体10が伸縮し難くなり、この値が小さくなるほど外力により磁気記録媒体10が伸縮し易くなる。したがって、テンションコントロールの観点から、(TL-TB)/TBの値は、小さい方が有利である。
【0145】
(磁気記録媒体の長手方向のヤング率)
磁気記録媒体10の長手方向のヤング率は、好ましくは8.5GPa以下、より好ましくは8.3GPa以下、さらに好ましくは7.9GPa以下、特に好ましくは7.5GPa以下、最も好ましくは7.1GPa以下である。磁気記録媒体10の長手方向のヤング率が8.5GPa以下であると、外力による磁気記録媒体10の伸縮性がさらに高くなるため、テンションコントロールによる磁気記録媒体10の幅の調整がさらに容易となる。したがって、オフトラックをさらに適切に抑制することができ、磁気記録媒体10に記録されたデータをさらに正確に再生することが可能となる。
【0146】
磁気記録媒体10の長手方向のヤング率は、外力による磁気記録媒体10の長手方向における伸縮のし難さを示す値であり、この値が大きいほど外力により磁気記録媒体10は長手方向に伸縮し難く、この値が小さいほど外力により磁気記録媒体10は長手方向に伸縮しやすい。
【0147】
なお、磁気記録媒体10の長手方向のヤング率は、磁気記録媒体10の長手方向に関する値であるが、磁気記録媒体10の幅方向の伸縮のし難さとも相関がある。つまり、この値が大きいほど磁気記録媒体10は外力により幅方向に伸縮し難く、この値が小さいほど磁気記録媒体10は外力により幅方向に伸縮しやすい。したがって、テンションコントロールの観点から、磁気記録媒体10の長手方向のヤング率は、小さい方が有利である。
【0148】
上記の磁気記録媒体10の長手方向のヤング率は、引っ張り試験機(島津製作所製、AG-100D)を用いて測定される。磁気記録媒体10を180mmの長さにカットして測定サンプルを準備する。上記引っ張り試験機に測定サンプルの幅(1/2インチ)を固定できる冶具を取り付け、測定サンプルの上下を固定する。距離は100mmにする。測定サンプルをチャック後、測定サンプルを引っ張る方向に応力を徐々にかけていく。引っ張り速度は0.1mm/minとする。この時の応力の変化と伸び量から、以下の式を用いてヤング率を計算する。
E=(ΔN/S)/(Δx/L) ×10-3
ΔN:応力の変化(N)
S:試験片の断面積(mm
Δx:伸び量(mm)
L:つかみ治具間距離(mm)
応力の範囲としては0.5Nから1.0Nとし、この時の応力変化(ΔN)と伸び量(Δx)を計算に使用する。
【0149】
(基体11の長手方向のヤング率)
基体11の長手方向のヤング率は、好ましくは8.0GPa以下、より好ましくは7.8GPa以下、さらにより好ましくは7.4GPa以下、特に好ましくは7.0GPa以下、最も好ましくは6.4GPa以下である。基体11の長手方向のヤング率が8.0GPa以下であると、外力による磁気記録媒体10の伸縮性がさらに高くなるため、テンションコントロールによる磁気記録媒体10の幅の調整がさらに容易となる。したがって、オフトラックをさらに適切に抑制することができ、磁気記録媒体10に記録されたデータをさらに正確に再生することが可能となる。
【0150】
上記の基体11の長手方向のヤング率は、次のようにして求められる。まず、磁気記録媒体10から下地層12、磁性層13およびバック層14を除去し、基体11を得る。この基体11を用いて、上記の磁気記録媒体10の長手方向のヤング率と同様の手順で基体11の長手方向のヤング率を求める。
【0151】
基体11の厚さは、磁気記録媒体10の全体の厚さの半分以上を占めている。したがって、基体11の長手方向のヤング率は、外力による磁気記録媒体10の伸縮し難さと相関があり、この値が大きいほど磁気記録媒体10は外力により幅方向に伸縮し難く、この値が小さいほど磁気記録媒体10は外力により幅方向に伸縮しやすい。
【0152】
なお、基体11の長手方向のヤング率は、磁気記録媒体10の長手方向に関する値であるが、磁気記録媒体10の幅方向の伸縮のし難さとも相関がある。つまり、この値が大きいほど磁気記録媒体10は外力により幅方向に伸縮し難く、この値が小さいほど磁気記録媒体10は外力により幅方向に伸縮しやすい。したがって、テンションコントロールの観点から、基体11の長手方向のヤング率は、小さい方が有利である。
【0153】
(磁気記録媒体の平均厚み)
磁気記録媒体10の平均厚みTLが、好ましくは5.6μm以下、より好ましくは5.0μm以下、さらにより好ましくは4.6μm以下、特に好ましくは4.4μm以下である。磁気記録媒体10の平均厚みTLが5.6μm以下であると、外力による磁気記録媒体10の伸縮性がさらに高くなるため、テンションコントロールによる磁気記録媒体10の幅の調整がさらに容易となる。したがって、オフトラックをさらに適切に抑制することができ、磁気記録媒体10に記録されたデータをさらに正確に再生することが可能となる。
【0154】
上記の磁気記録媒体10の平均厚みは、第1の実施形態にて説明した磁気記録媒体10の平均厚みの測定方法と同様にして求められる。
【0155】
磁気記録媒体10の平均厚みは、外力による磁気記録媒体10の伸縮しやすさと相関があり、磁気記録媒体10の平均厚みが薄くなるほど外力により磁気記録媒体10が伸縮し易くなり、厚くなるほど外力により磁気記録媒体10が伸縮し難くなる。したがって、テンションコントロールの観点から、磁気記録媒体10の平均厚みは、薄い方が有利である。
【0156】
(基体の平均厚み)
基体11の平均厚みTBが、好ましくは4.2μm以下、より好ましくは3.8μm以下、さらにより好ましくは3.4μm以下である。基体11の平均厚みTBが4.2μm以下であると、外力による磁気記録媒体10の伸縮性がさらに高くなるため、テンションコントロールによる磁気記録媒体10の幅の調整がさらに容易となる。したがって、オフトラックをさらに適切に抑制することができ、磁気記録媒体10に記録されたデータをさらに正確に再生することが可能となる。
【0157】
基体11の平均厚みは、第1の実施形態にて説明した基体11の平均厚みの測定方法と同様にして求められる。
【0158】
基体11の厚さは、磁気記録媒体10の全体の厚さの半分以上を占めている。したがって、この基体11の平均厚みは、外力による磁気記録媒体10の伸縮しやすさと相関があり、基体11の平均厚みが薄くなるほど外力により磁気記録媒体10が伸縮し易くなり、厚くなるほど外力により磁気記録媒体10が伸縮し難くなる。したがって、テンションコントロールの観点から、基体11の平均厚みは、薄い方が有利である。
【0159】
(記録再生装置)
制御装置38は、磁気記録媒体10に対するデータの記録時に、隣接する2本のサーボバンドSBから読み取られるサーボ信号の再生波形から、隣接する2本のサーボバンドSB間の距離(磁気記録媒体10の幅方向における距離)d1を求める。そして、求めた距離を制御装置38が有する記憶部に記憶する。
【0160】
制御装置38は、磁気記録媒体10からのデータの再生時に、隣接する2本のサーボバンドSBから読み取られるサーボ信号の再生波形から、隣接する2本のサーボバンドSB間の距離(磁気記録媒体10の幅方向における距離)d2を求める。それと共に、制御装置38は、記憶部から、磁気記録媒体10に対するデータの記録時に求めた、隣接する2本のサーボバンドSB間の距離d1を読み出す。制御装置38は、磁気記録媒体10に対するデータの記録時に求めたサーボバンドSB間の距離d1と、磁気記録媒体10からのデータの再生時に求めたサーボバンドSB間の距離d2との差分Δdが規定の範囲内になるように、スピンドル駆動装置33およびリール駆動装置34の回転を制御し、磁気記録媒体10の長手方向にかかるテンションを調整する。このテンション調整の制御は、例えばフィードバック制御により行われる。
【0161】
なお、制御装置38が、磁気記録媒体10に対するデータの記録時にサーボバンドSB間の距離d1を求める代わりに、磁気記録媒体10の長手方向のテンションを調整するときに基準となる既知のサーボバンドSB間の間隔d3を予め記憶部に記憶していてもよい。この場合には、制御装置38は、記憶部に予め記憶されているサーボバンドSB間の距離d3と、磁気記録媒体10からのデータの再生時に求めたサーボバンドSB間の距離d2との差分Δdが規定の範囲内になるように、スピンドル駆動装置33およびリール駆動装置34の回転を制御し、磁気記録媒体10の長手方向にかかるテンションを調整する。
【実施例
【0162】
以下、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0163】
本実施例において、ベースフィルム(基体)の平均厚み、磁性層の平均厚み、下地層の平均厚み、バック層の平均厚み、磁気テープ(磁気記録媒体)の平均厚み、磁性粉の平均アスペクト比、磁性粉の平均粒子サイズ、磁性粉の平均粒子体積、垂直方向における磁気テープの保磁力Hc1、長手方向における磁気テープの保磁力Hc2およびサーボバンド幅WSBは、上述の第1の実施形態にて説明した測定方法により求められたものである。
【0164】
本実施例において、磁気テープの長手1%伸び荷重、磁気テープの長手収縮率、磁気テープの平均厚みTL、ベースフィルムの平均厚みTB、(TL-TB)/TB、磁気テープの長手方向のヤング率、ベースフィルムの長手方向のヤング率は、上述の第2の実施形態にて説明した測定方法により求められたものである。
【0165】
[実施例1~9、比較例1~6]
(磁性層形成用塗料の調製工程)
磁性層形成用塗料を以下のようにして調製した。まず、下記配合の第1組成物をエクストルーダで混練した。次に、ディスパーを備えた攪拌タンクに、混練した第1組成物と、下記配合の第2組成物を加えて予備混合を行った。続いて、さらにサンドミル混合を行い、フィルター処理を行い、磁性層形成用塗料を調製した。
【0166】
(第1組成物)
磁性粉:100質量部
塩化ビニル系樹脂(シクロヘキサノン溶液30質量%):10質量部
(重合度300、Mn=10000、極性基としてOSOK=0.07mmol/g、2級OH=0.3mmol/gを含有する。)
酸化アルミニウム粉末:5質量部
(α-Al、平均粒径0.2μm)
カーボンブラック:2質量部
(東海カーボン社製、商品名:シーストTA)
なお、磁性粉としては、表1に示すものを用いた。
【0167】
(第2組成物)
塩化ビニル系樹脂:1.1質量部
(樹脂溶液:樹脂分30質量%、シクロヘキサノン70質量%)
n-ブチルステアレート:2質量部
メチルエチルケトン:121.3質量部
トルエン:121.3質量部
シクロヘキサノン:60.7質量部
【0168】
最後に、上述のようにして調製した磁性層形成用塗料に、硬化剤として、ポリイソシアネート(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製):4質量部と、ミリスチン酸:2質量部とを添加した。
【0169】
(下地層形成用塗料の調製工程)
下地層形成用塗料を以下のようにして調製した。まず、下記配合の第3組成物をエクストルーダで混練した。次に、ディスパーを備えた攪拌タンクに、混練した第3組成物と、下記配合の第4組成物を加えて予備混合を行った。続いて、さらにサンドミル混合を行い、フィルター処理を行い、下地層形成用塗料を調製した。
【0170】
(第3組成物)
針状酸化鉄粉末:100質量部
(α-Fe、平均長軸長0.15μm)
塩化ビニル系樹脂:55.6質量部
(樹脂溶液:樹脂分30質量%、シクロヘキサノン70質量%)
カーボンブラック:10質量部
(平均粒径20nm)
【0171】
(第4組成物)
ポリウレタン系樹脂UR8200(東洋紡績製):18.5質量部
n-ブチルステアレート:2質量部
メチルエチルケトン:108.2質量部
トルエン:108.2質量部
シクロヘキサノン:18.5質量部
【0172】
最後に、上述のようにして調製した下地層形成用塗料に、硬化剤として、ポリイソシアネート(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製):4質量部と、ミリスチン酸:2質量部とを添加した。
【0173】
(バック層形成用塗料の調製工程)
バック層形成用塗料を以下のようにして調製した。下記原料を、ディスパーを備えた攪拌タンクで混合を行い、フィルター処理を行うことで、バック層形成用塗料を調製した。
カーボンブラック(旭社製、商品名:#80):100質量部
ポリエステルポリウレタン:100質量部
(日本ポリウレタン社製、商品名:N-2304)
メチルエチルケトン:500質量部
トルエン:400質量部
シクロヘキサノン:100質量部
【0174】
(成膜工程)
上述のようにして作製した塗料を用いて、メディア構成1の磁気テープを以下のようにして作製した。まず、支持体として、長尺状を有する、平均厚み4.0μmのPENフィルム(ベースフィルム)を準備した。次に、PENフィルムの一方の主面上に下地層形成用塗料を塗布し、乾燥させることにより、PENフィルムの一方の主面上に平均厚み1.0~1.1μmの下地層を形成した。次に、下地層上に磁性層形成用塗料を塗布し、乾燥させることにより、下地層上に平均厚み60~100nmの磁性層を形成した。なお、磁性層形成用塗料の乾燥の際に、ソレノイドコイルにより、磁性粉をPENフィルムの厚み方向に磁場配向させた。具体的には、ソレノイドコイルにより、磁性粉をPENフィルムの走行方向(長手方向)に一旦磁場配向させたのちに、PENフィルムの厚み方向に磁場配向させた。また、磁性層形成用塗料の乾燥条件(乾燥温度および乾燥時間)を調整し、垂直方向における保磁力Hc1を2450~3100Oe、長手方向における保磁力Hc2を1820~2080Oe、Hc2/Hc1=0.65~0.85に設定した。
【0175】
続いて、下地層、および磁性層が形成されたPENフィルムの他方の主面上にバック層形成用塗料を塗布し、乾燥させることにより、平均厚み0.4μmのバック層を形成した。そして、下地層、磁性層、およびバック層が形成されたPENフィルムに対して硬化処理を行った。その後、カレンダー処理を行い、磁性層表面を平滑化した。
【0176】
(裁断の工程)
上述のようにして得られた磁気テープを1/2インチ(12.65mm)幅に裁断した。これにより、長尺状を有する、平均厚み5.6μmの磁気テープが得られた。
【0177】
(サーボ信号およびデータ信号の書き込み)
上述のようにして得られた長尺状の磁気テープにサーボ信号およびデータ信号を以下のようにして書き込んだ。まず、サーボライタを用いて、磁気テープにサーボ信号を書き込むことにより、サーボバンド幅WSBが96μmである5本のサーボバンドを形成した。なお、サーボ信号の書き込みにより、各サーボバンドには、ハの字の磁気パターンの列が形成された。
【0178】
次に、記録再生装置を用いて、サーボバンド間のデータバンドにデータ信号を書き込んだ。この際、記録トラック幅Wが2.9μm、記録波長λが0.208μmの単一記録波長となるように記録再生装置を制御した。なお、データ信号の記録波長λ[nm]は、最短記録波長で記録された際の磁化反転間距離L[nm](=0.052μm)の4倍(すなわち、最短記録波長L’=2×Lであり、記録波長λ=(L’の2倍長))とした。記録ヘッドにはギャップ長0.2μmのリングヘッドを用いた。
【0179】
ここで、記録波長λを最短記録波長L’の2倍にしているのは、以下の理由による。すなわち、短波長を用いた記録再生系では、C/Nとしては一般的に最短記録波長の2倍の記録波長で記録再生した際の出力/ノイズの比を用いることが多い。また、2倍の記録波長でのC/Nは、最短記録波長でのC/Nよりもエラーレートとの相関性が高い。更に、最短記録波長でC/N計測を行った場合、記録再生系の波長特性によっては、テープノイズが記録再生系のシステムノイズに隠れてしまい、メディアのノイズ特性を正しく反映しない場合もある。特に高線記録密度記録の場合、メディアのノイズ特性を正しく反映しない場合が多い。
【0180】
磁化反転間距離の最小値Lとデータトラック幅Wは、以下のようにして求められた。まず、磁性層13の表面を磁気力顕微鏡(MFM)を用いて観察し、MFM像を取得した。図9A図9Bに、MFM像の一例を示す。次に、取得したMFM像から、磁気テープの幅方向における磁化パターン列の寸法を測定し、トラック幅W[nm]とした。また、磁気テープの長手方向における明部と明部の距離または暗部と暗部の距離をλ[nm]とした。その後、λ[nm]の半分の値をL’[nm]とし、更にL’[nm]の半分をL[nm]とした。
【0181】
[実施例10]
以下の点以外は実施例1と同様にしてメディア構成2の磁気テープを得た。すなわち、記録トラック幅Wが1.5μm、記録波長λが0.192μmの単一記録波長となるように記録再生装置を制御した。なお、データ信号の記録波長λ[nm]は、最短記録波長で記録された際の磁化反転間距離L[nm](=0.048μm)の4倍とした。
【0182】
[実施例11]
以下の点以外は実施例2と同様にしてメディア構成3の磁気テープを得た。すなわち、支持体として平均厚み3.6μmのPENフィルムを用い、磁気テープの平均厚みを5.2μmとした。また、記録トラック幅Wが0.95μm、記録波長λが0.168μmの単一記録波長となるように記録再生装置を制御した。なお、データ信号の記録波長λ[nm]は、最短記録波長で記録された際の磁化反転間距離L[nm](=0.042μm)の4倍とした。
【0183】
[実施例12]
以下の点以外は実施例8と同様にしてメディア構成4の磁気テープを得た。すなわち、支持体として平均厚み3.6μmのPENフィルムを用い、磁気テープの平均厚みを5.2μmとした。また、サーボバンド幅WSBが96μmである9本のサーボバンドを形成した。また、記録トラック幅Wが0.51μm、記録波長λが0.156μmの単一記録波長となるように記録再生装置を制御した。なお、データ信号の記録波長λ[nm]は、最短記録波長で記録された際の磁化反転間距離L[nm](=0.039μm)の4倍とした。
【0184】
[実施例13]
以下の点以外は実施例8と同様にしてメディア構成5の磁気テープを得た。すなわち、支持体として平均厚み3.1μmのPENフィルムを用い、磁気テープの平均厚みを4.5μmとした。また、サーボバンド幅WSBが96μmである9本のサーボバンドを形成した。また、記録トラック幅Wが0.83μm、記録波長λが0.156μmの単一記録波長となるように記録再生装置を制御した。なお、データ信号の記録波長λ[nm]は、最短記録波長で記録された際の磁化反転間距離L[nm](=0.039μm)の4倍とした。
【0185】
[実施例14]
以下の点以外は実施例9と同様にしてメディア構成6の磁気テープを得た。すなわち、支持体として平均厚み3.1μmのPENフィルムを用い、磁気テープの平均厚みを4.5μmとした。また、サーボバンド幅WSBが96μmである9本のサーボバンドを形成した。また、記録トラック幅Wが0.63μm、記録波長λが0.152μmの単一記録波長となるように記録再生装置を制御した。なお、データ信号の記録波長λ[nm]は、最短記録波長で記録された際の磁化反転間距離L[nm](=0.038μm)の4倍とした。
【0186】
[実施例15]
以下の点以外は実施例1と同様にしてメディア構成1の磁気テープを得た。すなわち、磁性層形成用塗料の塗布厚を調整し、下地層上に平均厚み90nmの磁性層を形成した。また、磁性層形成用塗料の分散条件および磁性層形成用塗料の乾燥条件(乾燥温度および乾燥時間)を調整し、垂直方向における保磁力Hc1を2990Oe、長手方向における保磁力Hc2を1500Oe、Hc2/Hc1=0.50に設定した。
【0187】
[実施例16]
以下の点以外は実施例1と同様にしてメディア構成1の磁気テープを得た。すなわち、磁性層形成用塗料の乾燥条件(乾燥温度および乾燥時間)を調整し、垂直方向における保磁力Hc1を2690Oe、長手方向における保磁力Hc2を2150Oe、Hc2/Hc1=0.80に設定した。
【0188】
[実施例17]
以下の点以外は実施例6と同様にしてメディア構成1の磁気テープを得た。すなわち、磁性層形成用塗料の塗布厚を調整し、下地層上に平均厚み90nmの磁性層を形成した。また、磁性層形成用塗料の乾燥条件(乾燥温度および乾燥時間)を調整し、垂直方向における保磁力Hc1を2900Oe、長手方向における保磁力Hc2を1950Oe、Hc2/Hc1=0.67に設定した。
【0189】
[実施例18、比較例7~9]
表2に示すように磁気テープの各パラメータおよびPENフィルム(ベースフィルム)の各パラメータを設定したこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを得た。
【0190】
(C/N)
まず、ループテスター(Microphysics社製)を用いて、磁気テープの再生信号を取得した。以下に、再生信号の取得条件について示す。
head:GMR head
speed:2m/s
signal:単一記録周波数(10MHz)
記録電流:最適記録電流
【0191】
次に、再生信号をスペクトラムアナライザ(spectrum analyze)によりで取り込み、10MHzの再生出力値と、10MHz±1MHzのノイズの平均値を計測し、それらの差をC/Nとした。その結果を、比較例1のC/Nを0dBとする相対値で表1に示した。なお、C/Nが1.5dB以上であると、短波長・狭トラック密度にも耐えうるメディアを実現できる。
【0192】
(テープ幅の変化量の判定)
まず、1/2インチ幅の磁気テープを組み込んだカートリッジサンプルを準備した。当該カートリッジサンプルには、カートリッジケース内に設けられたリールに上記磁気テープが巻き付けられて収容された。なお、磁気テープには、ハの字の磁気パターンの列を、互いに既知の間隔(以下、「予め記録した際の既知の磁気パターン列の間隔」という。)で、長手方向に平行に2列以上予め記録した。次に、カートリッジサンプルを記録再生装置で往復走行をさせた。そして、往復走行時に上記のハの字の磁気パターン列の2列以上を同時に再生し、それぞれの列の再生波形の形状から、走行時の磁気パターン列の間隔を連続的に計測した。尚、走行時には、この計測された磁気パターン列の間隔情報に基づき、スピンドル駆動装置とリール駆動装置の回転駆動を制御し、磁気パターン列の間隔が規定の幅、またはほぼ規定の幅となるように、磁気テープの長手方向のテンションを自動で調整するようにした。この磁気パターン列の間隔の1往復分全ての計測値を「計測された磁気パターン列の間隔」とし、これと「予め走行した際の既知の磁気パターン列の間隔」の差分の最大値を「テープ幅の変化」とした。
【0193】
また、記録再生装置による往復走行は、恒温恒湿槽中で行った。往復走行の速度は5m/secであった。往復走行中の温湿度は、上記の往復走行とは独立に、温度範囲10℃~45℃、相対湿度範囲10%~80%で、予め組まれた環境変化プログラム(10℃10%→29℃80%→10℃10%を2回繰り返す。10℃10%から29℃80%へ2時間で変化させ、且つ、29℃80%→10℃10%へ2時間で変化させる。)に従って、徐々に且つ繰り返し変化させた。
【0194】
この評価を、「予め組まれた環境変化プログラム」が終了するまで繰り返した。評価終了後、各往復時に得られた「テープ幅の変化」それぞれの絶対値全てを用いて平均値(単純平均)を計算し、その値をそのテープの「実効的なテープ幅の変化量」とした。この「実効的なテープ幅の変化量」の理想からの乖離(小さい程望ましい)に従った判定を各テープに対して行い、8段階の判定値をそれぞれ付与した。なお、評価“8”が最も望ましい判定結果を示し、評価“1”が最も望ましくない判定結果を示すものとした。上記8段階のいずれかの評価を有する磁気テープは、テープ走行時に以下の状態が観察される。
8:何も異常が発生しない
7:走行時に、軽度のエラーレートの上昇がみられる
6:走行時に、重度のエラーレートの上昇がみられる
5:走行時に、サーボ信号が読めず軽度(1~2回)の再読み込みがかかる
4:走行時に、サーボ信号が読めず中度(10回以内)の再読み込みがかかる
3:走行時に、サーボ信号が読めず重度(10回超)の再読み込みがかかる
2:サーボが読めず、システムエラーで時々停止する
1:サーボが読めず、システムエラーで即時に停止する
【0195】
表1は、実施例1~18、比較例1~9の磁気テープの磁気特性および評価結果を示す。
【表1】
【0196】
表2は、実施例1~18、比較例1~9の磁気テープの評価結果を示す。
【表2】
【0197】
表3は、実施例1~18、比較例1~9の磁気テープで採用したメディア構成を示す。
【表3】
【0198】
表1、表3から以下のことがわかる。
実施例1~5、15、16では、(1)磁性層の平均厚みが、90nm以下であり、(2)磁性粉の平均アスペクト比が、1.0以上3.0以下であり、(3)垂直方向における保磁力Hc1が、3000Oe以下であり、(4)垂直方向における保磁力Hc1と、長手方向における保磁力Hc2とが、Hc2/Hc1≦0.8の関係を満たす。これにより、良好なC/Nを得ることができる。
磁性粉としてε酸化鉄粒子粉またはCo含有スピネルフェライト粒子粉を用いた実施例6、7、17でも、磁性粉として六方晶フェライト粒子粉を用いた実施例1~5と同様に、上記の(1)~(4)の構成を満たすことで、良好なC/Nを得ることができる。
磁性粉として超微粒子粉を用いた実施例8、9でも、上記の(1)~(4)の構成を満たすことで、良好なC/Nを得ることができる。
実施例1~9、15~17よりも記録密度を向上させた実施例10~14でも、上記の(1)~(4)の構成を満たすことで、良好なC/Nを得ることができる。
【0199】
比較例1では、磁性粉の平均アスペクト比が3.0を超えている、すなわち上記の(2)の構成を満たしていないため、磁性粉がスタッキングし、良好なC/Nを得ることができない。
比較例2では、磁性層の平均厚みが90nmを超えている、すなわち上記の(1)の構成を満たしていないため、短波長の特性が劣化し、良好なC/Nを得ることができない。
比較例3では、Hc2/Hc1が0.8を超える、すなわち上記の(4)の構成を満たしていないため、磁性粉の垂直配向度が低い。したがって、良好なC/Nを得ることができない。
比較例4では、垂直方向における保磁力Hc1が、3000Oeを超えている、すなわち上記の(3)の構成を満たしていないため、記録ヘッドでの飽和記録が困難となる。したがって、良好なC/Nを得ることができない。
磁性粉としてε酸化鉄またはCo含有スピネルフェライトを用いた比較例5、6でも、磁性粉として六方晶フェライトを用いた比較例1~4と同様に、上記の(1)~(4)の構成を満たしていないと、良好なC/Nを得ることができない。
【0200】
実施例1、11、比較例7~9等の判定結果から、(1)磁性層の平均厚みが、90nm以下であり、(2)磁性粉の平均アスペクト比が、1.0以上3.0以下であり、(3)垂直方向における保磁力Hc1が、3000Oe以下であり、(4)垂直方向における保磁力Hc1と、長手方向における保磁力Hc2とが、Hc2/Hc1≦0.8の関係を満たし、(5)磁気テープの長手1%伸び荷重が0.6N以下であると、「実効的なテープ幅の変化量」の理想からの乖離を抑制することができることがわかる。
【0201】
以上、本開示の実施形態およびその変形例について具体的に説明したが、本開示は、上述の実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0202】
例えば、上述の実施形態およびその変形例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値等を用いてもよい。また、化合物等の化学式は代表的なものであって、同じ化合物の一般名称であれば、記載された価数等に限定されない。
【0203】
また、上述の実施形態およびその変形例の構成、方法、工程、形状、材料および数値等は、本開示の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0204】
また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載された数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載された数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値または下限値は、他の段階の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。本明細書に例示した材料は、特に断らない限り、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0205】
また、本開示は以下の構成を採用することもできる。
(1)
テープ状の磁気記録媒体であって、
基体と、
前記基体上に設けられ、磁性粉を含む磁性層と
を備え、
前記磁性層の平均厚みが、90nm以下であり、
前記磁性粉の平均アスペクト比が、1.0以上3.0以下であり、
前記磁気記録媒体の垂直方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc1が、3000Oe以下であり、
前記保磁力Hc1と、前記磁気記録媒体の長手方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc2とが、Hc2/Hc1≦0.8の関係を満たし、
前記磁気記録媒体の長手方向の引張試験において、前記磁気記録媒体における伸び率0.5%のときの荷重をσ0.5とし、前記磁気記録媒体における伸び率1.5%のときの荷重をσ1.5としたとき、σ1.5-σ0.5の値が、0.6N以下である磁気記録媒体。
(2)
前記磁気記録媒体は、60℃で72時間保管されたとき、前記磁気記録媒体の長手方向の収縮率が0.1%以下である(1)に記載の磁気記録媒体。
(3)
前記基体の平均厚みをTB、前記磁気記録媒体の平均厚みをTLとしたとき、(TL-TB)/TBの値が、0.41以下である(1)または(2)に記載の磁気記録媒体。
(4)
前記磁気記録媒体の長手方向のヤング率は、8.5GPa以下である(1)から(3)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(5)
前記基体の長手方向のヤング率は、8.0GPa以下である(1)から(4)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(6)
前記磁気記録媒体は、前記磁気記録媒体の長手方向におけるテンションを増減させることで、前記磁気記録媒体の幅を調整可能に構成されている(1)から(5)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(7)
前記磁性層が、複数のサーボバンドを有し、
前記磁性層の表面の面積に対する複数の前記サーボバンドの総面積の割合が、4.0%以下である(1)から(6)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(8)
前記サーボバンドの数が、5以上である(7)に記載の磁気記録媒体。
(9)
前記サーボバンドの数が、5+4n(但し、nは正の整数である。)以上である(7)または(8)に記載の磁気記録媒体。
(10)
前記サーボバンドの幅が、95μm以下である(7)から(9)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(11)
前記磁性層が、複数のデータトラックを形成可能に構成され、
前記データトラックの幅が、3.0μm以下である(1)から(10)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(12)
前記磁性層が、磁化反転間距離の最小値Lとデータトラックの幅Wの比率W/LがW/L≦200の関係を満たすように、データを記録可能に構成されている(1)から(11)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(13)
前記磁性層が、磁化反転間距離の最小値Lが48nm以下となるように、データを記録可能に構成されている(1)から(12)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(14)
前記保磁力Hc2が、2000Oe以下である(1)から(13)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(15)
前記磁気記録媒体の平均厚みが、5.6μm以下である(1)から(14)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(16)
前記基体の平均厚みが、4.2μm以下である(1)から(15)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(17)
前記磁気記録媒体の平均厚みが、5.6μm以下であり、
前記磁性層が、複数のサーボバンドを有し、前記サーボバンドの数が、5以上であり、
前記磁性層が、複数のデータトラックを形成可能に構成され、前記データトラックの幅が、1.6μm以下であり、磁化反転間距離の最小値Lが、50nm以下であり、前記磁化反転間距離の最小値Lと前記データトラックの幅Wの比率W/LがW/L≦30の関係を満たす(1)から(16)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(18)
前記磁性粉が、六方晶フェライト、ε酸化鉄またはCo含有スピネルフェライトを含む(1)から(17)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(19)
前記六方晶フェライトが、BaおよびSrのうちの少なくとも1種を含み、
前記ε酸化鉄が、AlおよびGaのうちの少なくとも1種を含む(18)に記載の磁気記録媒体。
(20)
前記磁性層の平均厚みが、80nm以下である(1)から(19)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(21)
前記磁性層の平均厚みが、70nm以下である(1)から(20)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(22)
前記保磁力Hc1と、前記保磁力Hc2とが、Hc2/Hc1≦0.7の関係を満たす(1)から(21)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(23)
前記保磁力Hc1が、2200Oe以上である(1)から(22)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(24)
テープ状の磁気記録媒体であって、
基体と、
前記基体上に設けられ、磁性粉を含む磁性層と
を備え、
前記磁性層の平均厚みが、90nm以下であり、
前記磁性粉の平均アスペクト比が、1.0以上3.0以下であり、
前記磁気記録媒体の垂直方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc1が、3000Oe以下であり、
前記保磁力Hc1と、前記磁気記録媒体の長手方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc2とが、Hc2/Hc1≦0.8の関係を満たし、
前記磁気記録媒体は、60℃で72時間保管されたとき、前記磁気記録媒体の長手方向の収縮率が0.1%以下である磁気記録媒体。
(25)
テープ状の磁気記録媒体であって、
基体と、
前記基体上に設けられ、磁性粉を含む磁性層と
を備え、
前記磁性層の平均厚みが、90nm以下であり、
前記磁性粉の平均アスペクト比が、1.0以上3.0以下であり、
前記磁気記録媒体の垂直方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc1が、3000Oe以下であり、
前記保磁力Hc1と、前記磁気記録媒体の長手方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc2とが、Hc2/Hc1≦0.8の関係を満たし、
前記基体の平均厚みをTB、前記磁気記録媒体の平均厚みをTLとしたとき、(TL-TB)/TBの値が、0.41以下である磁気記録媒体。
(26)
テープ状の磁気記録媒体であって、
基体と、
前記基体上に設けられ、磁性粉を含む磁性層と
を備え、
前記磁性層の平均厚みが、90nm以下であり、
前記磁性粉の平均アスペクト比が、1.0以上3.0以下であり、
前記磁気記録媒体の垂直方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc1が、3000Oe以下であり、
前記保磁力Hc1と、前記磁気記録媒体の長手方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc2とが、Hc2/Hc1≦0.8の関係を満たし、
前記磁気記録媒体の長手方向のヤング率は、8.5GPa以下である磁気記録媒体。
(27)
テープ状の磁気記録媒体であって、
基体と、
前記基体上に設けられ、磁性粉を含む磁性層と
を備え、
前記磁性層の平均厚みが、90nm以下であり、
前記磁性粉の平均アスペクト比が、1.0以上3.0以下であり、
前記磁気記録媒体の垂直方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc1が、3000Oe以下であり、
前記保磁力Hc1と、前記磁気記録媒体の長手方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc2とが、Hc2/Hc1≦0.8の関係を満たし、
前記基体の長手方向のヤング率は、8.0GPa以下である磁気記録媒体。
(28)
テープ状の磁気記録媒体であって、
基体と、
前記基体上に設けられ、磁性粉を含む磁性層と
を備え、
前記磁性層の平均厚みが、90nm以下であり、
前記磁性粉の平均アスペクト比が、1.0以上3.0以下であり、
前記磁気記録媒体の垂直方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc1が、3000Oe以下であり、
前記保磁力Hc1と、前記磁気記録媒体の長手方向における前記磁気記録媒体の保磁力Hc2とが、Hc2/Hc1≦0.8の関係を満たし、
前記磁気記録媒体は、前記磁気記録媒体の長手方向におけるテンションを増減させることで、前記磁気記録媒体の幅を調整可能に構成されている磁気記録媒体。
【符号の説明】
【0206】
10 磁気記録媒体
10A 磁気記録媒体カートリッジ
10B カートリッジケース
10C リール
11 基体
12 下地層
13 磁性層
14 バック層
15 バリア層
21 コア部
22 シェル部
22a 第1シェル部
22b 第2シェル部
30 記録再生装置
31 スピンドル
32 リール
33 スピンドル駆動装置
34 リール駆動装置
35 ガイドローラ
36 ヘッドユニット
37 通信インターフェース
38 制御装置
41 サーバ
42 パーソナルコンピュータ
43 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10