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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ヘッドカバー
(51)【国際特許分類】
   F02F 7/00 20060101AFI20240925BHJP
   F01M 11/00 20060101ALI20240925BHJP
   F02B 77/13 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
F02F7/00 P
F01M11/00 Z
F02B77/13 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023084372
(22)【出願日】2023-05-23
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 一成
(72)【発明者】
【氏名】宝 龍馬
(72)【発明者】
【氏名】上平 和季
(72)【発明者】
【氏名】葛西 歩
(72)【発明者】
【氏名】北村 和大
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-094233(JP,A)
【文献】中国実用新案第210264947(CN,U)
【文献】特開2000-220549(JP,A)
【文献】実開昭55-146841(JP,U)
【文献】特開2012-002210(JP,A)
【文献】特開平05-060014(JP,A)
【文献】特開平07-042527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00- 42/00
7/00
F01M 11/00- 13/06
F02B 61/00- 79/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのシリンダーヘッドを覆うヘッドカバーであって、
平板であるカバー本体の上面から前記カバー本体の厚さよりも大きく突出しており突出面にて重量物を支持する円筒形状の支持部と、
前記上面において前記支持部の外周面から互いに直交するように放射状に延出しており、前記支持部の外周面及び前記上面の両方に接している複数の上面リブと、
を備える、ヘッドカバー。
【請求項2】
記上面リブは、前記支持部から離れるほど高さが低くなるように、傾斜している、
請求項1に記載のヘッドカバー。
【請求項3】
前記上面リブは、
前記ヘッドカバーの長手方向に平行に前記支持部から延出している2つのリブと、
前記長手方向に直交する直交方向に平行に前記支持部から延出している2つのリブと、を含む、
請求項1に記載のヘッドカバー。
【請求項4】
前記上面の反対側の裏面に所定間隔で形成された複数の裏面リブを更に備える、
請求項1に記載のヘッドカバー。
【請求項5】
前記裏面リブは、長手方向において所定間隔で形成された複数の第1裏面リブを含む、
請求項4に記載のヘッドカバー。
【請求項6】
前記裏面リブは、前記長手方向と直交する直交方向に所定間隔で形成された複数の第2裏面リブを含む、
請求項5に記載のヘッドカバー。
【請求項7】
前記第裏面リブの高さは、前記直交方向の中央部で低く、かつ前記直交方向の端部で高くなっている、
請求項6に記載のヘッドカバー。
【請求項8】
前記裏面リブは、前記ヘッドカバーを平面視した際に前記上面リブと同じ位置に形成されている、
請求項4に記載のヘッドカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのヘッドカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンには、シリンダーヘッドの上面を覆っているヘッドカバーが設けられている。特許文献1では、振動発生を抑制すべく、ヘッドカバーの上面部に設けられた2つの凸部の間を連結するリブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-54912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの動作を円滑に行うための部品等の重量物を、ヘッドカバーの上面に載置することが提案されている。この場合には、ヘッドカバーが重量物を支持する必要があるため、ヘッドカバーの剛性を高くすることが望ましい。しかし、特許文献1に開示された構造では、重量物を適切に支持することが困難である。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、重量物を支持するヘッドカバーの高剛性を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、エンジンのシリンダーヘッドを覆うヘッドカバーであって、カバー本体の上面に設けられ、重量物を支持する支持部と、前記上面において前記支持部から放射状に延出している複数の上面リブと、を備える、ヘッドカバーを提供する。
【0007】
また、前記支持部は、前記上面から突出しており、前記上面リブは、前記支持部から離れるほど高さが低くなるように、傾斜していることとしてもよい。
【0008】
また、前記上面リブは、前記ヘッドカバーの長手方向に平行に前記支持部から延出している2つのリブと、前記長手方向に直交する直交方向に平行に前記支持部から延出している2つのリブと、を含むこととしてもよい。
【0009】
また、前記上面の反対側の裏面に所定間隔で形成された複数の裏面リブを更に備えることとしてもよい。
【0010】
また、前記裏面リブは、長手方向において所定間隔で形成された複数の第1裏面リブを含むこととしてもよい。
【0011】
また、前記裏面リブは、前記長手方向と直交する直交方向に所定間隔で形成された複数の第2裏面リブを含むこととしてもよい。
【0012】
また、前記第2裏面リブの高さは、前記直交方向の中央部で低く、かつ前記直交方向の端部で高くなっていることとしてもよい。
【0013】
また、前記裏面リブは、前記ヘッドカバーを平面視した際に前記上面リブと同じ位置に形成されていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、重量物を支持するヘッドカバーの高剛性を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ヘッドカバー1の構成を示す模式図である。
図2】ヘッドカバー1の平面図である。
図3】ヘッドカバー1の底面図である。
図4図2のA-A矢視図である。
図5図2のB-B矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<ヘッドカバーの構成>
本実施形態に係るヘッドカバーの構成について、図1図5を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、ヘッドカバー1の構成を示す模式図である。図2は、ヘッドカバー1の平面図である。図3は、ヘッドカバー1の底面図である。図4は、図2のA-A矢視図である。図5は、図2のB-B矢視図である。
【0018】
ヘッドカバー1は、車両等のエンジンに設けられている。ヘッドカバー1は、複数の気筒を有するエンジンのシリンダーヘッドを覆う。具体的には、ヘッドカバー1は、シリンダーヘッドに設けられた動弁機構(吸気バルブと排気バルブを開閉させる機構)を覆っている。ヘッドカバー1は、エンジン内のピストンの動作音と燃焼室での燃焼音とを低減する機能を有する。
【0019】
ヘッドカバー1には、図1に示すように、重量物50が載置可能となっている。重量物50は、一例としてオイルセパレータである。オイルセパレータは、エンジンの潤滑油中に混入した気体(空気やガス)を分離する装置である。本実施形態のヘッドカバー1は、詳細は後述するが、重量物50が載置されるヘッドカバー1の高剛性を実現できる構造を有している。
【0020】
ヘッドカバー1は、図1及び図2に示すように、カバー本体10と、支持部20と、上面リブ31~34を有する。
【0021】
カバー本体10は、ヘッドカバー1の本体を成す部分であり、ここでは矩形の平板状に形成されている。カバー本体10は、ここでは鋳物である。カバー本体10の上面12に、重量物50が載置される。上面12の反対側の裏面14が、シリンダーヘッドを覆う。裏面14は、図3に示すように、側壁16a~16dによって囲まれている。側壁16a~16dは、裏面14の法線方向に突出するように形成されている。
【0022】
支持部20は、重量物50が載置される台座であり、重量物50を支持する。支持部20は、図1に示すように、カバー本体10の上面12に設けられている。具体的には、支持部20は、図2に示すように、上面12において短手方向の中央に位置している。支持部20は、ここでは円筒状に形成されており、上面12から突出している。支持部20の高さは、カバー本体10の厚さよりも大きい。支持部20は、カバー本体10と一体で形成されている。
【0023】
上面リブ31~34は、図2に示すように、上面12において支持部20から放射状に延出しているリブである。すなわち、上面リブ31~34は、上面12と支持部20の外周面21とに接するように、形成されている。上面リブ31~34は、平板状に形成されている。
【0024】
上面リブ31、32は、図2に示すように、ヘッドカバー1の長手方向に平行に支持部20から延出している。上面リブ31は、支持部20から上面12の長手方向の一端部に亘って形成されている。上面リブ32は、支持部20から上面12の長手方向の他端部に亘って形成されている。
【0025】
上面リブ33、34は、図2に示すように、長手方向に直交する短手方向(直交方向)に平行に支持部20から延出している。上面リブ33は、支持部20から上面12の短手方向の一端部に亘って形成されている。上面リブ34は、支持部20から上面12の短手方向の他端部に亘って形成されている。このため、4つの上面リブ31~34は、支持部20の周方向において90度間隔で設けられている。
【0026】
上記のように、支持部20から延出する上面リブ31~34を設けることで、カバー本体10の剛性を高めることができる。このため、支持部20に重量物50が載置されても、重量物50からの荷重によってカバー本体10が変形することを抑制できる。また、上面リブ33、34が支持部20から上面12の端部まで形成していることで、カバー本体10の剛性を広範囲に亘って高めることができる。
【0027】
上面リブ31~34は、支持部20の近い位置ほど高さが大きいように、形成されている。具体的には、上面リブ31~34は、支持部20から離れるほど高さが低くなるように、傾斜している。上面リブ31~34は、ここでは、一定の角度で高さが低くなるように傾斜していてもよい。すなわち、上面リブ31~34は、図1に示すように三角形状を成している。
【0028】
通常、カバー本体10においては、重量物50に近い位置ほどエンジンの振動による重量物50の慣性力を受けて、カバー本体10を変形させようとする曲げモーメントが大きくなる。そこで、上面リブ31~34が上述した三角形状を成すことによって、カバー本体10において曲げモーメントが大きい部位の剛性を高めることができる。この結果、重量物50によるカバー本体10の変形を抑制できる。
【0029】
なお、上記では、上面リブ31~34の高さが、支持部20から離れるほど低くなることとしたが、これに限定されない。例えば、上面リブ31~34の高さは、一定であってもよい。また、上記では、4つの上面リブ31~34が上面12に設けられているが、これに限定されない。例えば、3つの上面リブ又は5つ以上の上面リブが、上面12に設けられていてもよい。また、上記では、4つの上面リブ31~34(複数の上面リブ)が周方向において等間隔で設けられているが、これに限定されない。例えば、複数の上面リブが不等間隔で設けられていてもよい。
【0030】
本実施形態においては、上面リブ31~34に加えて、上面12の反対側の裏面14にも裏面リブが設けられている。裏面リブは、裏面14に所定間隔で形成されている。裏面リブとして、図3に示すように、第1裏面リブ42a~42dと第2裏面リブ44a~44dが設けられている。
【0031】
第1裏面リブ42a~42dは、図3に示すように、長手方向において所定間隔で形成されている。第1裏面リブ42a~42dは、短手方向に平行なリブである。第1裏面リブ42a~42dは、裏面14の短手方向の一端から他端に亘って形成されている。具体的には、第1裏面リブ42a~42dは、短手方向の一端側の側壁16aと他端側の側壁16bとを繋ぐように形成されている。4つの第1裏面リブ42a~42dのうちの第1裏面リブ42cは、短手方向において支持部20を通過する位置に形成されている。
第1裏面リブ42a~42dは、シミュレーション結果から、カバー本体10が変形しやすい箇所に設けられている。
【0032】
第2裏面リブ44a~44dは、図3に示すように、短手方向において所定間隔で形成されている。第2裏面リブ44a~44dは、長手方向に平行なリブである。第2裏面リブ44a~44dは、裏面14の長手方向の一端から他端に亘って形成されている。具体的には、第2裏面リブ44a~44dは、長手方向の一端側の側壁16cと他端側の側壁16dとを繋ぐように形成されている。4つの第2裏面リブ44a~44dのうちの第2裏面リブ44b、44cは、長手方向において支持部20を通過する位置に形成されている。
【0033】
第1裏面リブ42a~42dと第2裏面リブ44a~44dは、図3に示すように、互いに交差している。具体的には、第1裏面リブ42a~42dと第2裏面リブ44a~44dは、裏面14を格子状に分割するように、互いに直交している。裏面14を格子状に分割することで、裏面14を細分化できる(細かい領域に分割できる)。この結果、仮にヘッドカバー1が振動して燃焼音等を増幅する際に、細分化された領域単位で振動するため、騒音を低減できたり、騒音の周波数を調節できる。
【0034】
第1裏面リブ42a~42dと第2裏面リブ44a~44dのうちの一部のリブは、ヘッドカバー1を平面視した際に上面リブ31~34と同じ位置に形成されている。具体的には、第1裏面リブ42cは、上面リブ33、34と同じ位置に形成されている。また、第2裏面リブ44cは、上面リブ31、32と同じ位置に形成されている。そして、第1裏面リブ42cが上面リブ33、34と連結しており、第2裏面リブ44cが上面リブ31、32を連結している。これにより、第1裏面リブ42cと上面リブ33、34による断面二次モーメントと、第2裏面リブ44cと上面リブ31、32による断面二次モーメントとを大きくすることができる。この結果、カバー本体10の曲げを効果的に抑制できる。
【0035】
本実施形態において、第2裏面リブ44a~44dの高さは一定であるが、第1裏面リブ42a~42dの高さは一定ではない。第1裏面リブ42a~42dの高さは、短手方向の中央部で低く、かつ短手方向の端部で高くなっている。具体的には、第1裏面リブ42a~42dは、図4及び図5に示すようにアーチ状に形成されている。第1裏面リブ42a~42dをアーチ状に形成することによって、シリンダーヘッドに設けられた動弁機構等に第1裏面リブ42a~42dが干渉することを防止できる。
【0036】
また、第1裏面リブ42a~42dをアーチ状に形成することで、以下のような効果が奏される。
第1裏面リブ42a~42dが、本実施形態とは異なり高さが一定である場合には、カバー本体10が重量物50から受ける上下方向の荷重は、曲げモーメントの荷重として第1裏面リブ42a~42dに伝達される。これにより、カバー本体10の撓み変形を誘発し、カバー本体10が騒音の発生源となる。
これに対して、本実施形態のように第1裏面リブ42a~42dがアーチ状である場合には、カバー本体10が重量物50から受ける上下方向の荷重は、カバー本体10の長手方向の圧縮力(又は引っ張り力)に変換される。この結果、騒音の原因となるカバー本体10の撓み変形を抑制できる。別言すれば、カバー本体10の撓み変形に起因する騒音を抑制できる。
【0037】
第1裏面リブ42a~42d及び第2裏面リブ44a~44dは、カバー本体10と一体で形成されているが、これに限定されない。例えば、第1裏面リブ42a~42d及び第2裏面リブ44a~44dは、カバー本体10とは別部材から成り、カバー本体10に固定されていてもよい。
【0038】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態のヘッドカバー1は、カバー本体10の上面12に設けられ重量物50を支持する支持部20と、上面12において支持部20から放射状に延出している複数の上面リブ31~34とを備える。
支持部20から放射状に延出する上面リブ31~34を設けることで、カバー本体10の剛性を高めることができる。このため、支持部20に重量物50に載置されても、カバー本体10の強度が高いため、重量物50からの荷重によってカバー本体10が変形することを抑制できる。
【0039】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0040】
1 ヘッドカバー
10 カバー本体
12 上面
14 裏面
20 支持部
31~34 上面リブ
42a~42d 第1裏面リブ
44a~44d 第2裏面リブ
50 重量物
【要約】
【課題】重量物を支持するヘッドカバーの高剛性を実現する。
【解決手段】エンジンのシリンダーヘッドを覆うヘッドカバー1は、カバー本体10の上面12に設けられ、重量物50を支持する支持部20と、上面12において支持部20から放射状に延出している複数の上面リブ31~34とを備える。
【選択図】図1


図1
図2
図3
図4
図5