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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】洗車機
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/06 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B60S3/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023124236
(22)【出願日】2023-07-31
(62)【分割の表示】P 2020198051の分割
【原出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2023134850
(43)【公開日】2023-09-27
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛大
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-070387(JP,A)
【文献】特開2019-156074(JP,A)
【文献】特開2004-074938(JP,A)
【文献】特開2008-213663(JP,A)
【文献】特開2008-254554(JP,A)
【文献】特開2008-037170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/00- 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に対向するスタンド部を有して被洗浄車両に対して前後方向に相対移動しつつ前記被洗浄車両に対して洗車処理を行う洗車機本体と、
前記スタンド部に配置され前記洗車機本体に進入した前記被洗浄車両の形状を検知して取得した形状情報に基づいて前記被洗浄車両の移動を検知する形状検知部と、
前記洗車機本体及び前記形状検知部の動作を制御する制御部と、を有し、
前記形状検知部は、前記洗車機本体が予め決められた1の検査位置にあるときに前記形状検知部が取得した前記形状情報を比較車両位置情報とし、前記比較車両位置情報を受け取ると、以前に受け取った前記比較車両位置情報に基づいて決定された基準車両位置情報と比較し、変化量が一定の範囲よりも大きいときに前記被洗浄車両が移動したと判定する洗車機。
【請求項2】
前記形状検知部は、対になった投光側と受光側の素子をそれぞれ前記スタンド部に上下方向に複数並べて配置して前記洗車機本体に進入した被洗浄車両を側面投影して前記被洗浄車両の形状情報を検知し、
前記形状情報は、前記形状検知部が検知した形状の最上部の高さを含み、
前記制御部は、前記比較車両位置情報に含まれる高さと前記基準車両位置情報に含まれる高さとを比較する請求項1に記載の洗車機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄車両の洗車を行う洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の洗車機は特許文献1に開示される。この洗車機は車両に対して前後方向に往復移動する門型の洗車機本体を備えている。洗車機本体には回転ブラシ及び噴射ノズルが設けられる。洗車機本体が前後方向に移動し、噴射ノズルから洗浄水を噴射して回転ブラシが車両に回転摺動して車両の洗浄が行われる。
【0003】
また、洗車機は、車両の後端を検知する第1の車両検知センサと、車両を検知しない第2の車両検知センサとを有し、第1の車両検知センサまたは第2の車両検知センサの検知状態が変化したときに、車両が移動したと判断し、洗車機本体を停止させる。このようにすることで、洗車中の車両が移動したか否か判断できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4922789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の洗車機では、車両の移動を判断するために、第1の車両検知センサおよび第2の車両検知センサが必要であり、洗車機の構成が複雑になる。また、第1の車両検知センサが車両を検知している状態で、第2の車両検知センサが車両を検知すると、車両が移動したと判断するが、第1の車両検知センサと第2の車両検知センサの位置によっては、過剰に移動と判断してしまったり、逆に移動を判断できなかったりする恐れがある。
【0006】
本発明は、特殊な構成を用いることなく、洗車処理時の被洗浄車両の移動を検知し、被洗浄車両と洗車機との異常接触、洗浄不良を抑制することができる洗車機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の洗車機は、左右方向に対向するスタンド部を有して被洗浄車両に対して前後方向に相対移動しつつ前記被洗浄車両に対して洗車処理を行う洗車機本体と、前記スタンド部に配置され前記洗車機本体に進入した前記被洗浄車両の形状を検知して形状情報を取得する形状検知部と、前記洗車機本体及び前記形状検知部の動作を制御する制御部と、を有する。前記制御部は、前記洗車機本体が予め決められた検査位置にあるときに前記形状検知部が取得した前記形状情報を比較情報とし、前記比較情報を受け取ると、以前に受け取った前記比較情報に基づいて決定された基準情報と比較し、変化量が一定の範囲よりも大きいときに前記被洗浄車両が移動したと判定する。
【0008】
このように構成することで、特殊な機器を用いることなく、洗車処理中における被洗浄車両の移動を検知することが可能である。
【0009】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記形状検知部は、対になった投光側と受光側の素子をそれぞれ前記スタンド部に上下方向に複数並べて配置して前記洗車機本体に進入した被洗浄車両を側面投影して前記被洗浄車両の形状情報を検知し、前記形状情報は、前記形状検知部が検知した形状の最上部の高さを含み、前記制御部は、前記比較情報に含まれる高さと前記基準情報に含まれる高さとを比較する。このように構成することで、比較が簡単であり、制御部の処理を減らすことが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の洗車機によると、特殊な構成を用いることなく、洗車処理時の被洗浄車両の移動を検知し、被洗浄車両と洗車機との異常接触、洗浄不良を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態の洗車機を示す正面図である。
図2】本発明の第1実施形態の洗車機を示す側面図である。
図3】本発明の第1実施形態の洗車機の概略配置を示すブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態の洗車機の形状検知部の概略正面図である。
図5】本発明の第1実施形態の洗車機の第1往路工程を示す側面図である。
図6】本発明の第1実施形態の洗車機の第1復路工程を示す側面図である。
図7】本発明の第1実施形態の洗車機の第2往路工程を示す側面図である。
図8】本発明の第1実施形態の検査位置にある洗車機本体を示す側面図である。
図9】本発明の第1実施形態の洗車機の被洗浄車両の比較情報を検知している状態を示す概略図である。
図10】本発明の第2実施形態の洗車機を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明にかかる洗車機100を示す正面図である。図2図1に示す洗車機100の側面図である。図3は、洗車機100の概略構成を示すブロック図である。洗車機100は、洗車機本体10と、レール60とを備える。洗車機本体10は、左右の対向する2つのスタンド部10dと、スタンド部10dの上端を連結する天井部10cと、を有した門型に形成される。
【0013】
レール60は、地面G上に左右一対設けられ、スタンド部10dの底面に設けられた車輪10eがレール60上に配される。これにより、洗車機本体10はレール60上に立設され、走行モータ101(図3参照)の駆動によりレール60上を走行して被洗浄車両CAに対して前後方向に移動する。走行モータは、制御部70と接続されており、制御部70からの指示に基づいて作動する。
【0014】
ここで、制御部70について説明する。制御部70は、CPU、MPU等の演算回路を有する。制御部70は、回路自体が演算を行う構成であってもよい。制御部70には、記憶回路が含まれる。記憶回路は、例えば、不揮発性の記憶素子であるROM、情報の読み書きが可能なRAM等を含む構成を挙げることができる。なお、制御部70は、例えば、記憶回路から読み込まれたプログラムを演算回路で動作させる構成であってもよい。
【0015】
洗車機本体10に対する進入経路に沿って配されるリモートパネルRpを有する。使用者は、リモートパネルRpを介して被洗浄車両CAの洗車に関する各種条件を設定できる。また、洗車機本体10の一方のスタンド部10dの入口面10a側の面には、操作パネルCpが配される。操作パネルCpはリモートパネルRpと同様、洗車に関する各種条件の設定が可能である。図3に示すように、リモートパネルRpおよび操作パネルCpは制御部70に接続される。
【0016】
リモートパネルRpおよび操作パネルCpで設定できる各種条件としては、車両の形状(セダン、ワゴン、1BOX、ミニバン等)、洗車処理の方法(水洗い、シャンプー洗い、ワックス・コーティングの有無等)、装備品(フロントガード、フェンダーポール、サイドアンダーミラー、リアワイパー、ルーフスポイラ、ルーフキャリア等)の有無等を挙げることができる。
【0017】
洗車機本体10には、被洗浄車両CA上に摺動してブラッシングする複数の回転ブラシが設けられる。回転ブラシには、トップブラシ31と、サイドブラシ32と、が含まれる。
【0018】
洗車機本体10のスタンド部10dの入口面10a側の端部には、形状検知部40が設けられる。形状検知部40は、被洗浄車両CAの形状を検知する。形状検知部40は、制御部70に接続されて、形状の情報を形状情報として制御部70に送信する。なお、形状検知部40は、スタンド部10dの入口面10a側の端面に限定されない。形状検知部40による被洗浄車両CAの形状情報に基づいて、トップ送風ノズル21及びトップブラシ31が昇降される。そのため、最初に移動する方向である、前後方向において、トップ送風ノズル21及びトップブラシ31よりも前方に配置されることが好ましい。形状検知部40については後述する。
【0019】
トップブラシ31は、天井部10cに昇降可能に設けられて左右方向に配した回転軸で回転し、被洗浄車両CAの上面を洗浄する。さらに説明すると、トップブラシ31は、形状検知部40により検知した被洗浄車両CAに沿って昇降して被洗浄車両CAの上面を洗浄する。図3に示すように、トップブラシ31は、制御部70に接続されており、制御部70の指示に基づいて回転および昇降する。
【0020】
サイドブラシ32は、両スタンド部10dの出口面10b側にそれぞれ左右方向に進退可能に設けられて上下方向に配した回転軸で回転し、被洗浄車両CAの両側面を洗浄する。さらに、サイドブラシ32は形状検知部40により検知した被洗浄車両CAの前後面に沿って左右に移動し、被洗浄車両CAの前後面も洗浄する。図3に示すように、サイドブラシ32は、制御部70に接続されており、制御部70の指示に基づいて回転及び左右方向に移動する。
【0021】
なお、両スタンド部10dの下部に、被洗浄車両CAの下部を洗浄する一対のロッカーブラシを備えてもよい。
【0022】
洗車機本体10には気流を発生するブロア20が配される。ブロア20には被洗浄車両CAに向けて空気流を送出する複数の送風ノズルが接続される。送風ノズルはトップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22を含む。図3に示すように、ブロア20は、制御部70に接続されており、制御部70の指示に基づいて動作する。
【0023】
トップ送風ノズル21は天井部10cに昇降可能に設けられる。トップ送風ノズル21は、被洗浄車両CAの上面及び後面に送風し、被洗浄車両CAの上面及び後面を乾燥させる。トップ送風ノズル21は、形状検知部40により検知した被洗浄車両CAに沿って昇降して被洗浄車両CAの上面及び後面に空気を吹き付ける。トップ送風ノズル21は、制御部70に接続されており、制御部70の指示に基づいて昇降する。
【0024】
サイド送風ノズル22は両スタンド部10dに配される。サイド送風ノズル22は、送風により被洗浄車両CAの側面を乾燥させる。
【0025】
スタンド部10dには洗剤やコーティング剤等の各種液剤を貯液した複数の貯液タンク(不図示)を収納するタンク収納部50が配される。タンク収納部50の上方には市水及び各貯液タンクからの液剤を分配する分配配管部51が設けられる。分配配管部51には液剤ノズル11、水ノズル12、13及び15がそれぞれ電磁弁52、53、54,55(図3参照)を介して導出される。電磁弁52、53、54,55は、制御部70に接続されており、制御部70の指示に基づいて開閉制御される。
【0026】
液剤ノズル11は天井部10cの左右方向の複数箇所に設けられるとともに、図示しないが、両スタンド部10dに設けられる。また、液剤ノズル11は入口面10aとトップブラシ31との間に配され、洗剤の水溶液を噴射する。
【0027】
水ノズル12、13、15は天井部10cの左右方向の複数箇所に設けられるとともに、図示しないが、両スタンド部10dに設けられる。水ノズル12は液剤ノズル11と入口面10aとの間に配される。水ノズル13はトップブラシ31と出口面10bとの間に配される。水ノズル15は水ノズル13と出口面10bとの間に配される。
【0028】
水ノズル12、13、15は被洗浄車両CAに対して市水から成る洗浄水を噴射する。水ノズル12、13、15により被洗浄車両CAの水洗いによる洗浄を行うとともに、水洗による洗剤のすすぎを行う。本実施形態の洗車機100では、車両の洗剤および市水による洗浄を行う構成を示しているが、液剤ノズル11からコーティング剤を噴射して、被洗浄車両CAの表面のコーティングを行う構成であってもよい。この場合、水ノズル12、13、15は、コーティング剤の水洗によるすすぎを行う。液剤ノズル11として、洗剤を噴出するノズルと、コーティング剤を噴出するノズルとの両方を備えていてもよい。
【0029】
形状検知部40について図面を参照して説明する。図4は、形状検知部40の概略正面図である。形状検知部40は、洗車機本体10の両スタンド部10dのトップブラシ31よりも入口面10a側に設けられる。例えば、形状検知部40は光を利用したラインセンサであり、洗車機本体10に進入する被洗浄車両CAを側面投影した車両形状を検知する。形状検知部40は一方のスタンド部10dに設けられる投光部41と他方のスタンド部10dに設けられる受光部42とを備えている。
【0030】
投光部41及び受光部42には水平方向に対向して対になった素子43及び素子44がそれぞれ設けられる。素子43及び素子44は複数設けられ、上下方向(Z方向)に所定のピッチTz(本実施形態では20mm)で並べて配置される。
【0031】
投光側の素子43から出射された光束Bは光路上に被洗浄車両CAが存在しない場合に受光側の素子44により受光され、被洗浄車両CAが存在する場合に遮られる。これにより、検知する毎に、被洗浄車両CAの上端の位置、すなわち、地面から上端までの位置を検知する。洗車機本体10を移動させつつ、被洗浄車両CAの上端までの位置を連結することで、被洗浄車両CAの側面視において上端の形状、すなわち、側面形状を取得することができる。つまり、形状検知部40から制御部70に送られる形状情報には、検知時における被洗浄車両CAの上端の地面Gからの高さの情報が含まれる。
【0032】
また、投光側の素子43は水平に対向する受光側の素子44を含む複数の受光側の素子44に向けて投光する。本実施形態では投光側の上端及び下端の素子43から2個の受光側の素子44に向けて投光し、その他の素子43から3個の受光側の素子44に向けて投光している。このため、受光側の素子44は水平に対向する素子43を含む複数(本実施形態では2個または3個)の投光側の素子43からの光を受光する。このようにすることで、被洗浄車両CAの側面形状を精度よく検知することが可能である。
【0033】
なお、形状検知部40として、投光側の素子43と受光側の素子44とを対向して配置するラインセンサを採用しているが、これに限定されない。洗車機本体10に進入した被洗浄車両CAの形状を精度よく検知できるセンサを広く採用することができる。
【0034】
洗車機100において、制御部70は、形状検知部40からの形状情報に基づいて、トップ送風ノズル21及びトップブラシ31の昇降を制御する。つまり、制御部70は、形状情報に基づいて、トップ送風ノズル21を、被洗浄車両CAに接触せず、水滴を吹き飛ばす空気を吹き付けることができるように被洗浄車両CAに接近させる。同様に、形状情報に基づいて、トップブラシ31が被洗浄車両CAの上面を摺動するように被洗浄車両CAに接近させる。
【0035】
そのため、形状検知部40が検知する被洗浄車両CAに基づく形状情報として、検知した形状の最上部の位置(例えば、地面Gからの高さ)を挙げることができる。なお、形状情報はこれらの情報に限定されるものではなく、これら以外の情報が含まれていてもよい。制御部70は、形状情報を取得した位置(例えば、洗車機本体10の初期位置P1からの距離)と関連付けて記憶する。このようにすることで、洗車機本体10は、記憶した形状情報に基づいて、トップ送風ノズル21及びトップブラシ31を被洗浄車両CAの上面に沿って適切に昇降させることができる。
【0036】
上記構成の洗車機100において、ユーザが運転して被洗浄車両CAをリモートパネルRpの面前で停車させ、被洗浄車両CAの洗車条件の設定を被洗浄車両CA内から行う。洗車条件を設定した後、ユーザは予め決められた停車位置Sp1に被洗浄車両CAを停車させる。このとき、洗車機本体10は、初期位置P1に位置している。停車位置Sp1は、例えば、停車位置Sp1に停車した被洗浄車両CAの前輪Wh1の中心軸Axが、初期位置P1にある洗車機本体10の入口面10aから距離L1となる位置に設定されているが、これに限定されない。被洗浄車両CAの前面と洗車機本体10の入口面10aまでの距離で停車位置Sp1を決定してもよい。
【0037】
リモートパネルRpの操作により、ユーザは、水洗いコース、シャンプーコース、コーティングコースを選択することができる。水洗いコースは回転ブラシを回転して水ノズル12、13、15から市水の洗浄水を噴射し、被洗浄車両CAを水洗いする。シャンプーコースは回転ブラシを回転して液剤ノズル11から洗剤を含む洗浄水を噴射し、被洗浄車両CAを洗浄する。この時、水ノズル12、13から市水の洗浄水を噴射して被洗浄車両CAの予備洗浄及び洗剤のすすぎが行われる。コーティングコースはシャンプーコースと同様に被洗浄車両CAを洗浄した後、被洗浄車両CAにコーティング剤を塗布する。
【0038】
図5図7はシャンプーコースの洗車状態を示す側面図である。シャンプーコースを選択して洗車が開始されると、図5に示すように洗車機本体10が被洗浄車両CAの後方(矢印E1)に所定の走行速度(例えば、5m/min)で移動して第1往路工程が行われる。第1往路工程では形状検知部40により被洗浄車両CAの形状を検知しつつ、回転する各回転ブラシが被洗浄車両CAの前後面、側面及び上面を洗浄する。
【0039】
制御部70は、形状情報を取得した位置(例えば、洗車機本体10の初期位置P1からの距離)と関連付けて記憶する。そして、制御部70は、記憶した形状情報に基づいて、トップ送風ノズル21及びトップブラシ31を被洗浄車両CAの上面に沿って適切に昇降させることができる。なお、洗車機本体10の位置情報は、例えば、走行モータ101の動作に基づいて取得してもよいし、別途、位置情報を検知する検知部を備えていてもよい。
【0040】
洗車機本体10は、被洗浄車両CAの前後に往復移動しつつ、被洗浄車両CAの車体面の洗車処理を行う。そして、洗車機本体10は、最初に被洗浄車両CAの後方(E1)に移動する(第1往路工程)。そのため、制御部70は、第1往路工程において、被洗浄車両CAの形状を検知して、形状情報を検知した位置情報と関連付けて記憶する。このようにすることで、被洗浄車両CAの形状情報の取得は、第1往路工程でのみで実行すればよい。
【0041】
第1往路工程において、トップブラシ31に先行する液剤ノズル11から洗剤を含む洗浄液S2が噴射される。また、液剤ノズル11に先行する水ノズル12から市水の洗浄水S1が噴射される。これにより、洗浄水S1により濡れた被洗浄車両CAの車体面にトップブラシ31及びサイドブラシ32が摺動し、洗剤を含む洗浄液S2による洗浄が行われる。制御部70は、トップブラシ31に先行する形状検知部40からの形状情報に基づいて、トップブラシ31を昇降させることで、トップブラシ31が正確に被洗浄車両CAの上面を摺動する。
【0042】
また、第1往路工程では、トップブラシ31及びサイドブラシ32に後行する水ノズル13、15から市水の洗浄水S1が噴射される。これにより、被洗浄車両CAの車両面を洗浄した洗剤の一部が洗い流される。
【0043】
被洗浄車両CAの後面まで洗浄が終了すると、図6に示すように洗車機本体10反転して被洗浄車両CAの前方(矢印E2)に移動する第1復路工程が行われる。第1復路工程では回転ブラシが回転しながら水ノズル12、13、15から市水の洗浄水S1が噴射される。これにより、洗浄水S1で被洗浄車両CAの車両面を水洗いして洗剤を洗い流す、すすぎ洗浄が行われる。第1往路工程および第1復路工程が洗浄工程である。なお、第1復路工程において、制御部70は、第1往路工程で取得した被洗浄車両CAの形状情報に基づいて、トップブラシ31を昇降させることで、トップブラシ31を被洗浄車両CAの上面に摺動させる。
【0044】
被洗浄車両CAの前面まで洗浄が終了すると第1復路工程が終了し、回転ブラシの回転が停止される。そして、図7に示すように、洗車機本体10が反転して被洗浄車両CAの後方(矢印E1)に移動する第2往路工程が行われる。第2往路工程では、トップ送風ノズル21およびサイド送風ノズル22から空気流K1を送出し、被洗浄車両CAを乾燥させる。つまり、第2往路工程は、乾燥工程を形成する。
【0045】
以上示したように、洗車機100は、被洗浄車両CAにシャンプーコースで洗車処理を行う場合、洗車機本体10は、被洗浄車両CAの前後を1往復半移動して洗車処理を行う。例えば、コーティングコースの場合、シャンプーコースのみの場合よりも多くの回数、洗車機本体10は被洗浄車両CAに対して移動して、コーティング剤を被洗浄車両CAの車両面に塗布する。
【0046】
洗車機100では、ユーザが被洗浄車両CAから下車した状態で、洗車処理が行われることが多い。一方で、ユーザが被洗浄車両CAに乗車した状態で、洗車処理を実行する場合もある。このとき、ユーザが洗車機100の洗車処理が終了する前に、被洗浄車両CAを移動させてしまう場合がある。
【0047】
洗車機100において、制御部70は、第1往路工程で検知した被洗浄車両CAの形状情報に基づいて、トップ送風ノズル21及びトップブラシ31を昇降させるため、洗車処理が終了する前に、被洗浄車両CAが移動すると、正確な位置にトップ送風ノズル21及びトップブラシ31を昇降させることができなくなる。これにより、洗車時の洗い残しが発生したり、トップ送風ノズル21が被洗浄車両CAと接触したり、トップブラシ31が必要以上に強く被洗浄車両CAと接触したり、等の不具合が発生する原因となる。
【0048】
そこで、洗車機100において、制御部70は、形状検知部40から送られる形状情報を利用して、被洗浄車両CAの移動を検知している。そして、制御部70は、被洗浄車両CAが移動していると判断した場合、洗車機本体10のすべての動作を停止する。以下に、制御部70による洗車処理時における被洗浄車両CAの移動の検知について図面を参照して説明する。
【0049】
図8は、被洗浄車両CAの移動を検知するための検査位置P2にある洗車機本体10を示す側面図である。図9は、被洗浄車両CAの比較情報を検知している状態を示す概略図である。
【0050】
洗車機本体10が第1往路工程において移動しているとき、形状検知部40は、定期的に被洗浄車両CAの形状を検知し、形状情報を制御部70に送信している。制御部70は、洗車機本体10の被洗浄車両CAに対する後方(矢印E1)への移動量に対して、形状情報から取得した被洗浄車両CAの上端の高さTの変化を確認する。そして、制御部70は、洗車機本体10の移動量に対して、被洗浄車両CAの上端の変化量が大きい部分を比較部分Cmに設定する。
【0051】
そして、制御部70は、比較部分Cmの形状情報から取得した上端の高さTを比較情報Tcとして取得する。また、制御部70は、形状検知部40が比較部分Cmの形状情報を検知するときの洗車機本体10の位置、つまり、比較情報Tcを検知するときの洗車機本体10の位置を、検査位置P2とする。制御部70は、検査位置P2の初期位置P1に対する位置を記憶回路に記憶させる。
【0052】
つまり、第1往路工程において、洗車機本体10が検査位置P2にあるときに形状検知部40が検知した形状情報から取得した上端の高さTを比較情報Tcとして取得する。取得した比較情報Tcは、現在、洗車処理の対象である被洗浄車両CAにおいて、最初に取得された比較情報Tcである。そのため、制御部70は、最初に取得した比較情報Tcを、基準情報Tsとして記憶する(図9参照)。
【0053】
ここで、比較部分Cmの決定方法について説明する。形状検知部40は、左右に配置された投光部41からの光を受光部42で受光して、被洗浄車両CAの上端の位置を取得する。そのため、被洗浄車両CAの形状の変化が小さい部分では、被洗浄車両CAの上端の変化をうまく検知することが困難な場合がある。
【0054】
例えば、図1等に示す被洗浄車両CAの前部のボンネット部分のように、洗車機本体10の移動方向に対する上下方向の変化が少ない部分では、形状情報の変化を検知することが困難な場合がある。そこで、このような形状の被洗浄車両CAの場合、制御部70は、比較部分Cmとして、ボンネット部分よりも後方の上方に立設されるフロントガラスGfの一部、例えば、フロントガラスGfの前後方向の中央部分を比較部分Cmとする。
【0055】
最初の形状情報の取得時に、比較部分Cmを決定し、比較部分Cmに基づいて検査位置P2を決定している。このように構成することで、被洗浄車両CAが図1に示すようなセダンタイプとは異なる、例えば、フロントガラスGfが前面に配置される1BOXタイプの場合でも、適切な検査位置を決定することが可能である。なお、リモートパネルRp又は操作パネルCpに対するユーザからの入力に基づいて決定された車種に基づいて、制御部70が比較部分Cmおよび検査位置P2を決定してもよい。
【0056】
洗車機100において、基準情報Tsを検知した後も、第1往路工程が継続され、上述した洗車工程を継続する。そして、第1復路工程において、洗車機本体10が検査位置P2に到達したときに、制御部70は、形状検知部40にて被洗浄車両CAの比較部分Cmの形状を検知し、比較情報Tcを取得する。
【0057】
例えば、図9に示すように、被洗浄車両CAが後方Sp11に移動している場合、被洗浄車両CAが停車位置Sp1にあるときの比較部分Cmよりも前方のフロントガラスGfが検知される。そのため、比較情報TcAとして、基準情報Tsよりも小さい値が取得される。また、被洗浄車両CAが前方Sp12に移動している場合、被洗浄車両CAが停車位置Sp1にあるときの比較部分Cmよりも後方のフロントガラスGfが検知される。そのため、比較情報TcBとして、基準情報Tsよりも大きい値が取得される。
【0058】
このことを利用して、制御部70は、比較情報Tcと基準情報Tsとの差分値ΔT(=|Ts-Tc|)を算出し、差分値ΔTと閾値とを比較する。そして、制御部70は、差分値ΔTが閾値以下の場合、被洗浄車両CAは移動していないと判断する。制御部70は、被洗浄車両CAが移動していないと判断したとき、洗車処理を継続する。
【0059】
一方で、第1復路工程において、被洗浄車両CAが移動していると判断したとき、制御部70は、洗車機本体10の移動を停止するとともに、開いている電磁弁52、53、54,55を閉じる。これと同時に、制御部70は、回転ブラシを停止するとともに被洗浄車両CAから離間させる。なお、ブロア20が動作しているとき、ブロア20を停止させるとともに、トップ送風ノズル21を被洗浄車両CAから離間させる。
【0060】
そして、洗車機100に配置されている、通知部(不図示)を利用して、被洗浄車両CAが移動していることを、ユーザに通知する。なお、通知部として、光、音声による通知、画面に表示する通知等を挙げることができる。また、回転ブラシ及びトップ送風ノズル21を被洗浄車両CAから離間させずに、洗車機本体10を停止させるだけであってもよいし、回転ブラシ及びトップ送風ノズル21を被洗浄車両CAと干渉しない位置まで移動させた後、洗車処理を継続してもよい。
【0061】
なお、被洗浄車両CAの移動が検知された後の動作については、ユーザによりリモートパネルRpの操作が行われたのち、洗車処理を継続するようにしてもよいし、洗車処理を終了し、被洗浄車両CAが洗車機100の外部に移動されるまで、洗車処理を行わないようにしてもよい。
【0062】
本実施形態において、被洗浄車両CAのフロントガラスGfの一部を比較部分Cmとしている。これにより、被洗浄車両CAの移動の認識が容易になる。しかしながら、これに限定されず、被洗浄車両CAの前面CFを比較部分Cmとしてもよい。このようにする場合、被洗浄車両CAの形状の検知の最初の形状情報を基準情報とするため、基準情報の設定が容易である。また、フロントガラスGfが寝ている被洗浄車両CAの場合であっても、比較部分Cmを確実に設定することが可能である。
【0063】
また、本実施形態において、基準情報Tsとして最初に取得した比較情報Tcを採用しているが、これに限定されない。例えば、洗車機本体10が往路工程又は復路工程で移動する毎に、比較情報Tcを取得し、被洗浄車両CAが移動していないと判断されたとき、基準情報Tsを最新の比較情報Tcで更新してもよい。このようにすることで、洗車機本体10の移動時の誤差による、被洗浄車両CAの移動検出の誤検出を減らすことができる。
【0064】
本実施形態において、形状検出部としてラインセンサを採用しているがこれに限定されない。例えば、撮像素子を用いて、被洗浄車両CAの側面の画像を撮像し、その撮像画像を用いて、被洗浄車両CAの移動を検知するようにしてもよい。このようにする場合であっても、検査位置を設定し、検査位置で撮像した画像データを比較して、被洗浄車両の移動を検知することが可能である。
【0065】
本実施形態において、制御部70は、洗車機本体10が被洗浄車両CAの後方に移動するときを基準として、被洗浄車両CAの移動を検知しているがこれに限定されない。前方に移動するときを基準として、被洗浄車両CAの移動を検知してもよい。
【0066】
本実施形態では、ボンネットが水平方向に延びるセダンタイプの被洗浄車両CAを例に説明しているため、比較部分CmとしてフロントガラスGfの中間部分を採用しているが、これに限定されない。例えば、ミニバンのような、前後方向の移動に対して上下方向の変化が大きいボンネットを有する車種の場合、ボンネットの位置部を比較部分Cmとしてもよい。
【0067】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態の洗車機100を示す側面図である。本実施形態において、洗車機100の構成は、第1実施形態と同じ構成である。図10に示すように、洗車機100では、停車位置Sp1に被洗浄車両CAが停車したとき、被洗浄車両CAの前方の一部が、洗車機本体10のスタンド部10dの間に位置する。
【0068】
このような状態において、制御部70は、初期位置P1を検査位置とする。このようにすることで、洗車処理の開始直後に基準情報Tsを取得できる。これにより、比較部分Cmの位置決定の処理を省略でき、制御を簡略化できる。なお、洗車機本体10が初期位置P1にあるとき、スタンド部10dの間に配置される状態であっても、第1実施形態のように、初期位置P1から一定距離離れた検査位置P2を設定して、被洗浄車両CAの移動を検知してもよい。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によると、被洗浄車両の洗車を行う洗車機に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
100 洗車機
101 走行モータ
10 洗車機本体
10a 入口面
10b 出口面
10c 天井部
10d スタンド部
10e 車輪
11 液剤ノズル
12 水ノズル
13 水ノズル
15 水ノズル
20 ブロア
21 トップ送風ノズル
22 サイド送風ノズル
31 トップブラシ
32 サイドブラシ
40 形状検知部
41 投光部
42 受光部
43 素子
44 素子
50 タンク収納部
51 分配配管部
52、53、54,55 電磁弁
60 レール
70 制御部
CA 被洗浄車両
Cp 操作パネル
Rp リモートパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10