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特許7559907エレベータシステムおよびエレベータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】エレベータシステムおよびエレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B66B3/00 L
B66B3/00 M
B66B3/00 S
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023191814
(22)【出願日】2023-11-09
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友宏
(72)【発明者】
【氏名】立岡 利茂弥
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-116574(JP,A)
【文献】特開2019-089638(JP,A)
【文献】特開2016-216202(JP,A)
【文献】特開2015-003809(JP,A)
【文献】特開2016-199385(JP,A)
【文献】特開2016-169096(JP,A)
【文献】特開2023-074380(JP,A)
【文献】特開2021-127251(JP,A)
【文献】特開2022-014735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00- 1/52
B66B 3/00- 3/02
B66B 11/00-11/08
B66B 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかご内、および、前記エレベータのドアが開状態における乗場を撮像する撮像部と、
前記撮像部による撮像画像の中から、所定の対象物体を画像認識により検出する対象認識部と、
前記対象認識部によって検出された前記対象物体の、前記撮像画像内での位置を特定する位置特定部と、
前記位置特定部によって特定された前記対象物体の位置に応じて、前記エレベータの動作を制御する動作制御部と、を備え、
前記対象認識部は、
検出した前記対象物体に応じたバウンディングボックスを生成し、
前記位置特定部は、
前記撮像画像内を複数の部分画像領域に分割するとともに、
(1)前記該部分画像領域に含まれる前記バウンディングボックスの頂点の数、
および、
(2)前記該部分画像領域に含まれる前記バウンディングボックスの面積、
の少なくともいずれかに基づいて、前記対象物体の前記撮像画像内での位置を特定するエレベータシステム。
【請求項2】
エレベータのかご内、および、前記エレベータのドアが開状態における乗場を撮像する撮像部と、
前記撮像部による撮像画像の中から、所定の対象物体を画像認識により検出する対象認識部と、
前記対象認識部によって検出された前記対象物体の、前記撮像画像内での位置を特定する位置特定部と、
前記位置特定部によって特定された前記対象物体の位置に応じて、前記エレベータの動作を制御する動作制御部と、を備え、
前記動作制御部は、
前記位置特定部によって特定された前記対象物体の位置に応じて、前記対象物体が、(1)全体的に前記かご内に含まれている、(2)前記かご内と前記乗場との両方にまたがって存在している、および(3)前記かご内に全体的にも部分的にも存在していない、のいずれであるかを認識する、エレベータシステム。
【請求項3】
前記対象認識部は、検出した前記対象物体に応じたバウンディングボックスを生成し、
前記位置特定部は、前記撮像画像内を複数の部分画像領域に分割するとともに、該部分画像領域と、前記対象認識部によって生成された前記バウンディングボックスとの位置関係に基づいて、前記対象物体の前記撮像画像内での位置を特定する、請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記撮像部は、前記かご内の上部に設置されており、該撮像部のレンズと前記かごの床面の中心とを結ぶ直線と、前記かごの床面の中心における前記かごの床面の法線とがなす角度が20度以内となっており、
前記動作制御部は、前記位置特定部によって特定された前記対象物体の位置に応じて、前記対象物体が前記かご内に存在しているか否かを認識する、請求項1または2に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記動作制御部は、前記位置特定部によって特定された前記対象物体の位置に応じて、前記対象物体が、(1)全体的に前記かご内に含まれている、(2)前記かご内と前記乗場との両方にまたがって存在している、および(3)前記かご内に全体的にも部分的にも存在していない、のいずれであるかを認識する、請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記撮像部は、前記かご内の上部に設置されており、該撮像部のレンズから、前記かご内と前記乗場との境界の中心に向けての直線と、前記境界の中心における前記かごの床面の法線とがなす角度が20度以内となっている、請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記動作制御部は、前記対象物体が前記かご内と前記乗場との両方にまたがって存在していると判定した場合に、直前の前記対象物体の存在位置の判定結果に基づいて、前記乗場から前記かご内へ移動中であるか、前記かご内から前記乗場へ移動中であるかを判定する、請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記動作制御部は、(1)前記ドアの開閉動作、(2)前記かご内および前記乗場の少なくともいずれか一方に対する表示動作または音声出力動作、および、(3)前記かご内および前記乗場の少なくともいずれか一方における操作ボタンの有効・無効切替動作、の少なくともいずれか一つを制御する、請求項1または2に記載のエレベータシステム。
【請求項9】
前記動作制御部は、乗車前の利用者による前記エレベータの呼び指示が行われている場合に、該呼び指示の内容と、前記位置特定部によって特定された前記対象物体の位置との関係に応じて、前記エレベータの動作を制御する、請求項1または2に記載のエレベータシステム。
【請求項10】
前記対象認識部によって検出された前記対象物体の種類、前記種類ごとの数、および、前記位置特定部によって特定された位置に基づき、前記かご内の混雑度を算出する混雑度算出部をさらに備える、請求項1または2に記載のエレベータシステム。
【請求項11】
1または複数のコンピュータにより実行されるエレベータ制御方法あって、
エレベータのかご内、および、前記エレベータのドアが開状態における乗場を撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップによる撮像画像の中から、所定の対象物体を画像認識により検出する対象認識ステップと、
前記対象認識ステップによって検出された前記対象物体の、前記撮像画像内での位置を特定する位置特定ステップと、
前記位置特定ステップによって特定された前記対象物体の位置に応じて、前記エレベータの動作を制御する動作制御ステップと、を有し、
前記対象認識ステップにおいて、検出した前記対象物体に応じたバウンディングボックスを生成し、
前記位置特定ステップにおいて、
前記撮像画像内を複数の部分画像領域に分割するとともに、
(1)前記該部分画像領域に含まれる前記バウンディングボックスの頂点の数、
および、
(2)前記該部分画像領域に含まれる前記バウンディングボックスの面積、
の少なくともいずれかに基づいて、前記対象物体の前記撮像画像内での位置を特定するエレベータ制御方法。
【請求項12】
1または複数のコンピュータにより実行されるエレベータ制御方法あって、
エレベータのかご内、および、前記エレベータのドアが開状態における乗場を撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップによる撮像画像の中から、所定の対象物体を画像認識により検出する対象認識ステップと、
前記対象認識ステップによって検出された前記対象物体の、前記撮像画像内での位置を特定する位置特定ステップと、
前記位置特定ステップによって特定された前記対象物体の位置に応じて、前記エレベータの動作を制御する動作制御ステップと、を有し、
前記動作制御ステップにおいては、
前記位置特定ステップにおいて特定された前記対象物体の位置に応じて、前記対象物体が、(1)全体的に前記かご内に含まれている、(2)前記かご内と前記乗場との両方にまたがって存在している、および(3)前記かご内に全体的にも部分的にも存在していない、のいずれであるかを認識するエレベータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータシステムおよびエレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータのかご呼びボタンや、かご内の操作盤に、車椅子利用の乗客が操作するための車椅子用ボタンが設けられている。車椅子用ボタンが操作された場合には、ドアを開状態とする時間を通常よりも延長することによって、車椅子利用の乗客の安全性を高める制御が行われる。
【0003】
また、例えば特許文献1には、かご内およびエレベータホールの乗降口領域を撮影して車椅子の存在を認識し、認識結果に応じてドアの開状態の時間を制御するドア制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-156028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のドア制御装置では、撮影画像の中に車椅子が認識されたか否かに応じてドアの開閉制御を行っているのみである。よって、車椅子の利用者のより詳細な状況を認識することはできず、制御として不十分であるという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、車椅子の利用者など、所定の対象物体の状況に応じて、より適切なエレベータの動作制御を行うことが可能なエレベータシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るエレベータシステムは、エレベータのかご内、および、前記エレベータのドアが開状態における乗場を撮像する撮像部と、前記撮像部による撮像画像の中から、所定の対象物体を画像認識により検出する対象認識部と、前記対象認識部によって検出された前記対象物体の、前記撮像画像内での位置を特定する位置特定部と、前記位置特定部によって特定された前記対象物体の位置に応じて、前記エレベータの動作を制御する動作制御部と、を備える。
【0008】
上記の構成によれば、エレベータのかご内および乗場の状態が撮像された撮像画像において、対象物体がどの位置に存在するかが特定される。よって、かご内と乗場との両方を含んだ領域内の対象物体の存在位置に応じてエレベータの動作制御を変更することができる。よって、対象物体の状況に応じた、より適切なエレベータの動作制御を行うことが可能となる。
【0009】
本発明の他の態様に係るエレベータシステムでは、前記対象認識部は、検出した前記対象物体に応じたバウンディングボックスを生成し、前記位置特定部は、前記撮像画像内を複数の部分画像領域に分割するとともに、該部分画像領域と、前記対象認識部によって生成された前記バウンディングボックスとの位置関係に基づいて、前記対象物体の前記撮像画像内での位置を特定してもよい。
【0010】
上記の構成によれば、バウンディングボックスと部分画像領域との位置関係を確認することによって、比較的簡易に対象物体の撮像画像内での位置を特定することができる。
【0011】
本発明の他の態様に係るエレベータシステムでは、前記撮像部は、前記かご内の上部に設置されており、該撮像部のレンズと前記かごの床面の中心とを結ぶ直線と、前記かごの床面の中心における前記かごの床面の法線とがなす角度が20度以内となっており、前記動作制御部は、前記位置特定部によって特定された前記対象物体の位置に応じて、前記対象物体が前記かご内に存在しているか否かを認識してもよい。
【0012】
上記の構成によれば、対象物体がかご内のどの位置に存在していても、上方から撮像する撮像部からの該対象物体に対する撮像角度の変化範囲を低く抑えることができる。よって、対象物体の認識精度を高めることができるので、対象物体がかご内に存在しているか否かの判断をより的確に行うことが可能となる。
【0013】
本発明の他の態様に係るエレベータシステムでは、前記動作制御部は、前記位置特定部によって特定された前記対象物体の位置に応じて、前記対象物体が、(1)全体的に前記かご内に含まれている、(2)前記かご内と前記乗場との両方にまたがって存在している、および(3)前記かご内に全体的にも部分的にも存在していない、のいずれであるかを認識してもよい。
【0014】
上記の構成によれば、対象物体がかご内に存在しているか否かで動作を変更するだけでなく、対象物体がかご内と乗場との両方にまたがって存在している場合にも動作を変更することが可能となる。よって、対象物体の位置に応じた、よりきめ細かな動作制御を実現できる。
【0015】
本発明の他の態様に係るエレベータシステムでは、前記撮像部は、前記かご内の上部に設置されており、該撮像部のレンズから、前記かご内と前記乗場との境界の中心に向けての直線と、前記境界の中心における前記かごの床面の法線とがなす角度が20度以内となっていてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、対象物体がかご内と乗場との両方にまたがって存在している場合に、上方から撮像する撮像部からの該対象物体に対する撮像角度の変化範囲を低く抑えることができる。よって、対象物体の認識精度を高めることができるので、対象物体が、かご内、境界領域、および、それ以外のいずれに存在するかの判断をより的確に行うことが可能となる。
【0017】
本発明の他の態様に係るエレベータシステムでは、前記動作制御部は、前記対象物体が前記かご内と前記乗場との両方にまたがって存在していると判定した場合に、直前の前記対象物体の存在位置の判定結果に基づいて、前記乗場から前記かご内へ移動中であるか、前記かご内から前記乗場へ移動中であるかを判定してもよい。
【0018】
上記の構成によれば、対象物体が乗場からかご内へ移動中であるか、かご内から乗場へ移動中であるかに応じて、適切なエレベータの動作制御を行うことが可能となる。
【0019】
本発明の他の態様に係るエレベータシステムでは、前記動作制御部は、(1)前記ドアの開閉動作、(2)前記かご内および前記乗場の少なくともいずれか一方に対する表示動作または音声出力動作、および、(3)前記かご内および前記乗場の少なくともいずれか一方における操作ボタンの有効・無効切替動作、の少なくともいずれか一つを制御してもよい。
【0020】
上記の構成によれば、対象物体の検出結果に応じて、ドアの開閉動作を変化させたり、利用者に対して情報を提示したり、操作ボタンの有効・無効を切り替えたりすることができるので、利用者の状態に応じた、より適切なエレベータ動作を行うことが可能となる。
【0021】
本発明の他の態様に係るエレベータシステムでは、前記動作制御部は、乗車前の利用者による前記エレベータの呼び指示が行われている場合に、該呼び指示の内容と、前記位置特定部によって特定された前記対象物体の位置との関係に応じて、前記エレベータの動作を制御してもよい。
【0022】
上記の構成によれば、呼び指示の内容と対象物体の位置との関係に応じて、その状況に適したエレベータの動作を行わせることが可能となる。
【0023】
本発明の他の態様に係るエレベータシステムでは、前記対象認識部によって検出された前記対象物体の種類、前記種類ごとの数、および、前記位置特定部によって特定された位置に基づき、前記かご内の混雑度を算出する混雑度算出部をさらに備えていてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、対象物体の種類と種類ごとの数を考慮して、かご内の混雑度を算出するので、単純に乗車人数のみや重量のみを基準に混雑度を算出する場合と比較して、より実情に合った混雑度を算出することができる。
【0025】
本発明の一態様に係るエレベータ制御方法では、1または複数の情報処理装置により実行されるエレベータ制御方法あって、エレベータのかご内、および、前記エレベータのドアが開状態における乗場を撮像する撮像ステップと、前記撮像ステップによる撮像画像の中から、所定の対象物体を画像認識により検出する対象認識ステップと、前記対象認識ステップによって検出された前記対象物体の、前記撮像画像内での位置を特定する位置特定ステップと、前記位置特定ステップによって特定された前記対象物体の位置に応じて、前記エレベータの動作を制御する動作制御ステップと、を有する。
【0026】
本発明の各態様に係るエレベータ制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記エレベータ制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記エレベータ制御装置をコンピュータにて実現させるエレベータ制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、車椅子の利用者など、所定の対象物体の状況に応じて、より適切なエレベータの動作制御を行うことが可能なエレベータシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態1に係るエレベータシステムの機能ブロック図である。
図2】上記エレベータシステムの構成例を示す模式図である。
図3】上記エレベータシステムの撮像部の撮像画像を示す図である。
図4】上記エレベータシステムの撮像部の設置位置を詳細に説明する図である。
図5】対象物体の検出方法の一例を示す図である。
図6】対象物体の位置の特定例を示す図である。
図7】エレベータシステムの動作の一例を示すフロー図である。
図8】対象物体の位置の特定の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。ただし、以下の説明は本発明に係るエレベータシステム1の一例であり、本発明の技術的範囲は以下の説明および図示例に限定されるものではない。
【0030】
〔エレベータシステムの概要〕
図2はエレベータシステム1の構成例を示す模式図である。図3はエレベータシステム1の撮像部40の撮像画像Gを示す図である。図2および図3に示すように、エレベータシステム1は、かご21内の天井付近に設置された撮像部40により、エレベータ20のドア24の開状態におけるエレベータ20のかご21内および乗場50を含む撮像画像Gを撮像する。エレベータシステム1は、撮像画像G内において特定された対象物体Mの位置に応じてエレベータ20の動作を制御する。
【0031】
これにより、エレベータシステム1は、かご21内と乗場50との両方を含んだ領域内の対象物体Mの存在位置に応じてエレベータ20の動作制御を変更することを可能とする。その結果、車椅子の利用者など、所定の対象物体Mの状況に応じて、より適切なエレベータ20の動作制御を行うエレベータシステム1を実現することができる。
【0032】
<エレベータシステム>
エレベータシステム1は、対象物体Mの位置に応じてエレベータ20の動作制御を行う。図1は本発明の実施形態1に係るエレベータシステム1の機能ブロック図である。図1および図2に示すように、エレベータシステム1は、エレベータ制御装置10と、エレベータ20と、乗場操作盤51と、報知部52と、を備えている。
【0033】
乗場操作盤51は、乗場50に設置され、かご21の呼びを登録可能な操作盤である。乗場操作盤51による呼び登録の入力は、例えば、乗場50に設置された通信装置(図示無)によりエレベータ制御装置10に送信される。
【0034】
報知部52は、乗場50に設置され、後述する動作制御部115の制御により各種情報を報知する。報知部52は、各種情報を表示する表示装置であってもよく、音声を出力する音声出力装置であってもよい。
【0035】
(エレベータ)
エレベータ20は、かご21と、かご内操作盤22と、報知部23と、ドア24と、撮像部40と、を備えている。かご21は乗場50に停止する。乗場50は複数存在するが各乗場50は同様の構成を有するため、図1及び図2では一つの乗場50のみを示している。また、本実施形態では、エレベータシステム1は、1つのエレベータ20のみを備えるものとして説明するが、上記に限らない。エレベータシステム1は複数のエレベータ20を備えていてもよく、エレベータ群を備えるものであってもよい。
【0036】
かご内操作盤22は、かご21内に設置され、かご21の呼びを登録可能な操作盤である。かご内操作盤22による呼び登録の入力は、例えば、かご21に設置された通信装置(図示無)によりエレベータ制御装置10に送信される。
【0037】
報知部23は、かご21内に設置され、後述する動作制御部115の制御により各種情報を報知する。報知部23は、各種情報を表示する表示装置であってもよく、音声を出力する音声出力装置であってもよい。
【0038】
ドア24はかご21と乗場50との間において、かご21側と乗場50側との両側に設置されている。ドア24は、後述する動作制御部115の制御により開閉される。かご21が停車している乗場50において、かご21側と当該乗場50側とに設置されているドア24は、同時に開閉を制御される。
【0039】
(撮像部)
撮像部40は、図2に示すように、かご21内の天井付近に設置される。図2の2001は、撮像部40がかご21内の中央付近の位置P1に設置されている例を示し、図2の2002は、撮像部40がかご21内のドア24付近の位置P2に設置されている例を示す。
【0040】
図3は、位置P1に設置されたエレベータシステム1の撮像部40が撮像する撮像画像Gを示す図である。撮像部40は、図3に示すように、エレベータ20のかご21内、および、エレベータ20のドア24が開状態における乗場50を撮像する。撮像部40は、ドア24の開状態において所定間隔ごとに撮像画像Gを撮像する。
【0041】
図4はエレベータシステム1の撮像部40の設置位置を詳細に説明する図である。図4の4001では、撮像部40は、かご21内の上部において位置P1に設置されている。位置P1は、直線L1と法線N1との成す角度θ1が20度以内となる位置である。直線L1は、撮像部40のレンズと、かご60の床面211の中心P11と、を結ぶ直線である。法線N1は、かご21の床面211の中心P11における床面211の法線である。
【0042】
撮像部40が位置P1に配置されることで、対象物体Mがかご21内のどの位置に存在していても、上方から撮像する撮像部40からの対象物体Mに対する撮像角度の変化範囲を低く抑えることができる。
【0043】
図4の4002では、撮像部40は、かご21内の上部においてドア24付近の位置P2に設置されている。位置P2は、直線L2と法線N2とのなす角度θ2が20度以内となる位置である。直線L2は、撮像部40のレンズから、かご21内の床面211と乗場50との境界S1の中心P21に向かう直線である。法線N2は、境界S1の中心P21における床面211の法線である。
【0044】
撮像部40が位置P2に配置されることで、対象物体Mがかご21内と乗場50との両方にまたがって存在している場合に、上方から撮像する撮像部40からの対象物体Mに対する撮像角度の変化範囲を低く抑えることができる。
【0045】
また、撮像部40は、撮像部40の撮像画角の中心軸(撮像部40のレンズの光軸)と、撮像部40のレンズと中心P11とを結ぶ直線L1と、のなす角度が20度以内となるように、かご21内の上部に配置されていてもよい。これにより、かご21内に存在する対象物体Mに対する撮像方向と、撮像画角の中心軸とがなす角度を低く抑えることができる。よって、撮像部40のレンズによる広角ひずみの影響が少ない撮像画像G内の位置で、かご21内に存在する対象物体Mを撮像することができる。
【0046】
さらに、撮像部40は、撮像部40の撮像画角の中心軸と、撮像部40のレンズから境界S1の中心P21に向けての直線L2とがなす角度が20度以内となるように、かご21内の上部に配置されていてもよい。これにより、撮像部40のレンズによる広角ひずみの影響が少ない撮像画像G内の位置で、かご21内と乗場50との両方にまたがって存在している対象物体Mを撮像することができる。
【0047】
(エレベータ制御装置)
エレベータ制御装置10は、エレベータ20の運行を統括的に制御する。エレベータ制御装置10は、制御部11と、記憶部12と、を備えている。記憶部12は、エレベータ制御装置10が実行する各種のプログラム、およびプログラムによって使用されるデータを格納する。制御部11はエレベータ20や乗場50の各部を統括的に制御する。制御部11の機能は、記憶部12に記憶されたプログラムを、CPU(Central Processing Unit)が実行することで実現されてよい。
【0048】
制御部11は、情報取得部111と、対象認識部112と、位置特定部113と、混雑度算出部114と、動作制御部115と、を備えている。
【0049】
情報取得部111は、各種情報を取得する。情報取得部111は、撮像部40から撮像画像Gと、かご内操作盤22および乗場操作盤51に入力された情報とを少なくとも取得する。
【0050】
(対象認識部)
対象認識部112は、撮像部40による撮像画像Gの中から、所定の対象物体Mを画像認識により検出する。撮像画像Gにおける、対象物体Mの検出方法として、例えば、深層学習を用いて対象物体Mを検出する方法等がある。その場合、対象認識部112は、例えば、YOLOアルゴリズムなどの物体検出アルゴリズムを用いて撮像画像Gから対象物体Mを検出する。
【0051】
対象認識部112は、対象物体Mの属性(種類)を検出する。対象物体Mの属性は、例えば、通常の利用者、視覚障害者、台車、車椅子利用者、ロボット、ペット、ベビーカーおよびショッピングカート等である。対象認識部112による対象物体Mの検出は、対象物体Mの属性ごとに行われる。対象認識部112は、例えば、車椅子利用者やロボット等の特定の属性を有する対象物体Mのみを検出してもよい。
【0052】
対象認識部112は、検出した対象物体Mに応じたバウンディングボックスBを生成する。例えば、対象認識部112は、検出した対象物体Mを囲うようバウンディングボックスBを生成する。なお、以下ではバウンディングボックスを境界矩形と称する場合がある。
【0053】
(対象物体の同一判定)
対象認識部112は、ある時点T-1の撮像画像G(T-1)で検出した対象物体Mを、ある時点T-1から所定時間経過した時点Tの撮像画像G(T)において検出する。ここで、符号の括弧書きは時点を示す。検出方法については特に限定されず、種々の方法を用いることができる。同一判定を用いた検出方法の例について、異なる時点の境界矩形の重なり領域が最大となる境界矩形を同一の対象物体Mの境界矩形であると判定する例を以下に説明する。
【0054】
図5は対象物体Mの検出方法の例を示す図である。図5において、境界矩形B1および境界矩形B2はそれぞれ異なる対象物体M1および対象物体M2について形成されたバウンディングボックスである。図5の5001は、時点T-1および時点Tでの境界矩形B1および境界矩形B2を説明する図である。図5の5002は、時点T-1および時点Tでの境界矩形B1および境界矩形B2の重なりを説明する図であり、図5の5003は、時点Tでの境界矩形B(T)の同一判定の概念を説明する図である。
【0055】
対象認識部112は、時点T-1で、異なる対象物体M1(T-1)および対象物体M2(T-1)を検出し、それぞれについて境界矩形B1(T-1)および境界矩形B2(T-1)を形成する。また、対象認識部112は、時点Tで、異なる対象物体M1(T)および対象物体M2(T)を検出し、それぞれについて境界矩形B1(T)および境界矩形B2(T)を形成する。
【0056】
次に、対象認識部112は、時点Tでの境界矩形B1(T)および境界矩形B2(T)において、面積が大きい境界矩形B1(T)から順に同一判定を行う。対象認識部112は、図5の5002に示すように、境界矩形B1(T)と境界矩形B1(T-1)との重なり領域J1、および、境界矩形B1(T)と境界矩形B2(T-1)との重なり領域J2とを特定する。
【0057】
続いて、対象認識部112は、重なり領域J1の面積と、重なり領域J2の面積とを比較する。図5の5003に示す場合では、重なり領域J1の面積が、重なり領域J2の面積よりも大きく、重なり領域J1の面積が最大となるため、対象認識部112は、境界矩形B1(T-1)が境界矩形B1(T)と同一体であると判定し、対象物体M1(T)と対象物体M1(T-1)とが同一体であると判定する。これにより、対象認識部112は、時点T-1の対象物体M1(T-1)に続く時点Tにおける対象物体M1(T)を検出する。
【0058】
境界矩形B1(T)と境界矩形B1(T-1)とが同一体であると判定されたため、次の境界矩形B2(T)の同一判定は、境界矩形B2(T-1)のみで行われる。したがって、境界矩形B2(T)と境界矩形B2(T-1)とが重なる領域J3(図5の5002参照)の面積が最大となり、対象認識部112は、境界矩形B2(T)と境界矩形B2(T-1)とが同一体であると判定し、対象物体M2(T)と対象物体M2(T-1)とが同一体であると判定する。これにより、対象認識部112は、時点T-1の対象物体M2(T-1)に続く時点Tにおける対象物体M2(T)を検出する。
【0059】
撮像画像G(T-1)に同一体が存在しない場合、対象認識部112は、撮像画像G(T-2)に対して同様の処理を行ってもよい。撮像画像G(T-1)および撮像画像G(T-2)に同一体が存在しない場合、対象認識部112は、検出した対象物体Mを新規の対象物体Mとして扱ってもよい。
【0060】
(位置特定部)
位置特定部113は、対象認識部112によって検出された対象物体Mの、撮像画像G内での位置を特定する。位置特定部113は、撮像画像G内を複数の部分画像領域に分割するとともに、該部分画像領域と、対象認識部112によって生成されたバウンディングボックスBとの位置関係に基づいて、対象物体Mの撮像画像G内での位置を特定する。これにより、バウンディングボックスBと部分画像領域との位置関係を確認することによって、比較的簡易に対象物体Mの撮像画像G内での位置を特定することができる。
【0061】
図6は、位置P2に設置されている撮像部40が撮像した撮像画像Gにおいて、対象物体Mの位置の特定例を示す図である。
【0062】
図6に示すように、位置特定部113は、撮像画像G内を、例えば、第1部分画像領域R1と第2部分画像領域R2とに分割する。第1部分画像領域R1は、撮像画像Gにおいてかご21内に対応する領域であり、第2部分画像領域R2は、撮像画像Gにおいて乗場50に対応する領域である。なお、第1部分画像領域R1と第2部分画像領域R2とは、撮像画像G内で予め設定されていてもよく、画像認識等により、かご21および乗場50を判定して、自動で分割するものであってもよい。
【0063】
位置特定部113は、撮像画像G内で検出された対象物体Mが、以下の(1)から(3)のいずれの位置であるかを特定する。(1)対象物体Mが、全体的に第1部分画像領域R1に含まれている位置(第1位置)、(2)対象物体Mが、第1部分画像領域R1内と第2部分画像領域R2との両方にまたがっている位置(第2位置)、および(3)対象物体Mが、第1部分画像領域R1内に全体的にも部分的にも存在していない位置(第3位置)。
【0064】
位置特定部113は、図6の6001に示すように、バウンディングボックスBが全体的に第1部分画像領域R1に含まれている場合、対象物体Mが第1位置に位置すると特定する。位置特定部113は、図6の6002に示すように、バウンディングボックスBが第1部分画像領域R1内と第2部分画像領域R2との両方にまたがっている場合、対象物体Mが第2位置に位置すると特定する。位置特定部113は、図6の6003に示すように、バウンディングボックスBが第1部分画像領域R1内に全体的にも部分的にも存在していない場合、対象物体Mが第3位置に位置すると特定する。
【0065】
なお、位置P1に設置されている撮像部40が撮像した撮像画像Gにおいても、上記と同様に対象物体Mの位置を特定可能である。位置P1に設置されている撮像部40が撮像した撮像画像Gに基づいて対象物体Mの位置を特定する場合、位置特定部113は、撮像画像G内を第1部分画像領域R1と第2部分画像領域R2とに分割し(図3参照)、第1位置および第3位置を特定するのみであってもよい。
【0066】
(動作制御部)
動作制御部115は、位置特定部113によって特定された対象物体Mの位置に応じて、エレベータ20の動作を制御する。これにより、かご21内と乗場50との両方を含んだ領域内の対象物体Mの存在位置に応じてエレベータ20の動作制御を変更することができる。よって、対象物体Mの状況に応じた、より適切なエレベータ20の動作制御を行うことが可能となる。
【0067】
動作制御部115は、位置特定部113によって特定された対象物体Mの位置に応じて、対象物体Mがかご21内に存在しているか否かを認識する。具体的には、動作制御部115は、位置特定部113によって特定された対象物体Mの位置に応じて、対象物体Mが上記第1位置から上記第3位置のいずれであるかを認識する。
【0068】
これにより、対象物体Mがかご21内に存在しているか否かで動作を変更するだけでなく、対象物体Mがかご21内と乗場50との両方にまたがって存在している場合にも動作を変更することが可能となる。よって、対象物体Mの位置に応じた、よりきめ細かな動作制御を実現できる。
【0069】
位置P2に設置された撮像部40による撮像画像Gにより上記認識を行うことにより、対象物体Mが、かご21と乗場50との境界領域および、それ以外のいずれに存在するかの判断をより的確に行うことが可能となる。撮像部40が位置P2にあることにより、対象物体Mがかご21内と乗場50との両方にまたがって存在している場合、および、かご21内と乗場50との境界S1の近傍に存在している場合に、上方から撮像する撮像部40からの対象物体Mに対する撮像角度の変化範囲を低く抑えることができる。これにより、撮像角度の相違による撮像画像Gにおける対象物体Mの形状の変化を小さくすることができ、第2位置近傍における対象物体Mの認識精度を高めることができるからである。
【0070】
また、位置P1に設置された撮像部40による撮像画像Gにより上記認識を行うことにより、対象物体Mがかご21内に存在しているか否かの判断をより的確に行うことが可能となる。撮像部40が位置P1にあることにより、対象物体Mがかご21内のどの位置に存在していても撮像部40からの対象物体Mに対する撮像角度の変化範囲を低く抑えることができる。これにより、撮像角度の相違による撮像画像Gにおける対象物体Mの形状の変化を小さくすることができ、対象物体Mの認識精度を高めることができるからである。
【0071】
なお、以下において、上記第1位置に対応にする認識を認識I、上記第2位置に対応にする認識を認識IIおよび上記第3位置に対応にする認識を認識IIIと称する場合がある。
【0072】
動作制御部115は、以下の(A)から(C)の少なくともいずれか一つを制御する。(A)ドア24の開閉動作、(B)かご21内および乗場50の少なくともいずれか一方に対する表示動作または音声出力動作、および、(C)かご21内および乗場50の少なくともいずれか一方における操作ボタンの有効・無効切替動作。
【0073】
これにより、対象物体Mの検出結果に応じて、ドア24の開閉動作を変化させたり、利用者に対して情報を提示したり、操作ボタンの有効・無効を切り替えたりすることができるので、利用者の状態に応じた、より適切なエレベータ動作を行うことが可能となる。
【0074】
例えば、ドア24が開状態において、認識Iが所定時間以上認識されない場合、すなわち、所定時間以上かご21に誰も乗車しない場合、動作制御部115はドア24を閉状態にする。これにより、無用なドア24の開状態を軽減することができるのでエレベータ20を効率よく運行させることができる。
【0075】
また、動作制御部115は、認識Iから認識IIIに加え、対象物体Mの属性に基づきエレベータ20の動作を制御してもよい。例えば、属性が車椅子利用者である対象物体Mについて認識IIIを認識した場合、動作制御部115は、ドア24の開状態を延長してもよい。また、属性が車椅子利用者である対象物体Mについて認識Iを認識した場合、動作制御部115は、当該車椅子利用者が乗車した階でかご内操作盤22により登録された行先階を車椅子呼びとして登録してもよい。
【0076】
さらに、対象物体Mについて認識Iを認識した場合、動作制御部115は、当該対象物体Mが乗車したエレベータ20の各乗場50の報知部52に対象物体Mの属性を示す表示を表示してもよい。例えば、属性がロボットである対象物体Mについて認識Iを認識した場合、動作制御部115は、当該ロボットが乗車したエレベータ20の各乗場50の報知部52において「ロボット乗車中」を示す表示を表示してもよい。対象物体Mの属性が、車椅子利用者およびペットの場合も同様である。
【0077】
動作制御部115は、対象物体Mがかご21内と乗場50との両方にまたがって存在していると判定した場合に、直前の対象物体Mの存在位置の判定結果に基づいて、乗場50からかご21内へ移動中であるか、かご21内から乗場50へ移動中であるかを判定してもよい。これにより、対象物体Mが乗場50からかご21内へ移動中であるか、かご21内から乗場50へ移動中であるかに応じて、適切なエレベータの動作制御を行うことが可能となる。
【0078】
例えば、対象物体Mが認識IIであると認識された場合において、当該認識がなされる基となる撮像画像Gの直前の撮像画像Gにおける対象物体Mが、認識IIIとして認識されている場合、動作制御部115は当該対象物体Mが「乗場50からかご21内へ移動中」であると認識する。
【0079】
対象物体Mが認識IIであると認識された場合において、当該認識がなされる基となる撮像画像Gの直前の撮像画像Gにおける対象物体Mが、認識Iとして認識されている場合、動作制御部115は当該対象物体Mが「かご21内から乗場50へ移動中」であると認識する。
【0080】
動作制御部115は、対象物体Mが「乗場50からかご21内へ移動中」であると認識した場合、ドア24の開状態を延長してもよい。動作制御部115は、対象物体Mが「乗場50からかご21内へ移動中」であると認識が所定時間以上継続した場合は、注意を促す「乗車をお急ぎ下さい」との音声等を報知部23に報知させてもよい。
【0081】
また、かご内操作盤22が非接触呼びボタンを有している場合、動作制御部115は下記のエレベータ20の動作制御を行ってもよい。動作制御部115は、属性が視覚障害者である対象物体Mが「乗場50からかご21内へ移動中」であると認識された場合、非接触呼びボタンを無効とし、当該対象物体Mが「かご21内から乗場50へ移動中」であると認識された場合、非接触呼びボタンを有効としてもよい。これにより、視覚障害者の利用者による非接触呼びボタンの誤操作を防止することができる。
【0082】
動作制御部115は、乗車前の利用者によるエレベータ20の呼び指示が行われている場合に、該呼び指示の内容と、位置特定部113によって特定された対象物体Mの位置との関係に応じて、エレベータ20の動作を制御してもよい。ここで、「呼び指示」は、例えば、乗場50に設置された上下ボタンにより呼び登録を行う「乗場呼び」、および、スマートフォンや乗場50に設置された操作盤で事前に呼び登録を行う「行先階登録(仮呼び登録)」を含む。これにより、呼び指示の内容と対象物体Mの位置との関係に応じて、その状況に適したエレベータ20の動作を行わせることが可能となる。
【0083】
例えば、乗場呼びにより乗場50にかご21が停車し、ドア24が開状態で所定時間以上継続して認識IIIを認識している場合、動作制御部115は、以下の動作制御を行ってもよい。
【0084】
すなわち、上記の場合、動作制御部115は、報知部52により行先方向を伴う注意喚起を乗場50に報知してもよい。具体的には、乗場操作盤51により上方向の乗場呼びが行われた乗場50にかご21が停車し、ドア24が開状態で所定時間以上継続して認識IIIを認識している場合、動作制御部115は、報知部52において「上に参ります。ご注意ください。」との音声による報知を行ってもよい。
【0085】
また、上記の場合、動作制御部115は、当該乗場呼びの方向とエレベータ20の移動方向とが同じであれば、乗車を促す報知をし、当該乗場呼びの方向とエレベータ20の移動方向とが異なれば、誤乗車を注意する報知をしてもよい。
【0086】
乗場呼びにより乗場50にかご21が停車し、ドア24が開状態で所定時間以上継続して認識IIIを認識しない場合、動作制御部115は、ドア24を閉状態としてもよい。
【0087】
行先階登録呼びがされた乗車階の乗場50にかご21が停車し、対象物体Mが「乗場50からかご21内へ移動中」であると認識した場合、動作制御部115は、当該行先階登録呼びを本登録としてもよい。これにより、乗場操作盤51による行先階登録呼びが行われた段階では、入力された行先階は仮登録とし、実際にその乗場50からかご21に利用者が乗り込んだことが確認できた時点で、入力された行先階が本登録される、という制御を行うことが可能となる。行先階登録呼びが本登録された場合、動作制御部115は当該行先階登録呼びによる呼び登録の行先階までかご21を運行する。
【0088】
行先階登録呼びにおける乗車階の乗場50にかご21が停車し、対象物体Mが「乗場50からかご21内へ移動中」であると認識しなかった場合、動作制御部115は、当該行先階登録呼びを本登録として登録しなくてもよい。
【0089】
(混雑度算出部)
混雑度算出部114は、対象認識部112によって検出された対象物体Mの種類、種類ごとの数、および、位置特定部113によって特定された位置に基づき、かご21内の混雑度を算出する。これにより、対象物体Mの種類と種類ごとの数を考慮して、かご21内の混雑度を算出するので、単純に乗車人数のみや重量のみを基準に混雑度を算出する場合と比較して、より実情に合った混雑度を算出することができる。なお、混雑度を算出する場合は、対象認識部112において、特定の属性の対象物体Mのみを検出するのではなく、複数種類の属性の対象物体Mを検出することが望ましい。
【0090】
混雑度算出部114は、混雑度により報知部23および報知部52の少なくともいずれかに、満員等の注意喚起の報知を行う。
【0091】
混雑度は、例えば、かご21の床面積に対する対象物体Mの占有面積率で算出される。混雑度算出部114は、対象物体Mの属性により占有面積を算出し、かご21の床面積に対する対象物体Mの占有面積率を算出する。混雑度算出部114は、対象物体Mの属性が台車や車椅子である場合は、通常の利用者よりも占有面積を大きく算出し、混雑度を算出する。
【0092】
例えば、混雑度算出部114は、第2位置に位置する対象物体Mに対する動作制御部115による「乗場50からかご21内へ移動中」、および、「かご21内から乗場50へ移動中」の判定に基づき、混雑度を算出する。具体的には、混雑度算出部114は、(1)第2位置に位置し、「乗場50からかご21内へ移動中」と判定された対象物体Mの占有面積を加算し、(2)第2位置に位置し、「かご21内から乗場50へ移動中」と判定された対象物体Mの占有面積を減算する、ことで混雑度を算出してもよい。
【0093】
これにより、第1位置に位置していると特定された対象物体Mの種類および種類ごとの数に基づき混雑度を算出するよりも早く満員等の報知を行うことが可能となるので、例えば、対象物体Mが乗車途中であっても注意喚起が可能となる。
【0094】
(エレベータ制御装置の処理動作)
図7は、エレベータシステム1の動作の一例を示すフロー図である。まず、撮像部40が、エレベータ20のかご21内、および、エレベータ20のドア24の開状態における乗場50を撮像する(ステップS1、撮像ステップ)。次に、対象認識部112は、撮像部40が撮像した撮像画像Gから所定の対象物体Mを画像認識により検出する(ステップS2、対象認識ステップ)。
【0095】
位置特定部113は、検出した対象物体Mに応じたバウンディングボックスBを生成し(ステップS3)、撮像画像G内を第1部分画像領域R1と第2部分画像領域R2と分割する(ステップS4)。
【0096】
さらに、位置特定部113は、バウンディングボックスBが第1部分画像領域R1に入っているか否かを判定する(ステップS5)。バウンディングボックスBが第1部分画像領域R1に入っていると判定された場合(ステップS5でYES)、位置特定部113は、バウンディングボックスBが全体的に第1部分画像領域R1に含まれているか否かを判定する(ステップS6)。
【0097】
バウンディングボックスBが全体的に第1部分画像領域R1に含まれていると判定された場合(ステップS6でYES)、位置特定部113は対象物体Mが全体的にかご21内に含まれていると特定する(ステップS7、位置特定ステップ)。そして、動作制御部115は、対象物体Mが全体的にかご21内に含まれていると認識する(ステップS8)。
【0098】
バウンディングボックスBが第1部分画像領域R1に入っていないと判定された場合(ステップS5でNO)、位置特定部113は、対象物体Mが第1部分画像領域R1に全体的にも部分的にも存在していないと特定する(ステップS11、位置特定ステップ)。そして、動作制御部115は対象物体Mが第1部分画像領域R1に全体的にも部分的にも存在していないと認識する(ステップS12)。
【0099】
バウンディングボックスBが第1部分画像領域R1に入っているが全体的には第1部分画像領域R1に含まれていないと判定された場合(ステップS6でNO)、位置特定部113は、対象物体Mが第1部分画像領域R1と第2部分画像領域R2との両方にまたがって存在していると特定する(ステップS9、位置特定ステップ)。そして、動作制御部115は対象物体Mが第1部分画像領域R1と第2部分画像領域R2との両方にまたがって存在していると認識する(ステップS10)。
【0100】
ステップS8、ステップS10およびステップS12により、位置特定部113の対象物体Mの位置の特定に基づく対象物体Mの認識が動作制御部115で行われると、動作制御部115は、対象物体Mの位置に応じてエレベータ20の動作を制御する(ステップS13、動作制御ステップ)。
【0101】
〔変形例〕
本発明の変形例について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。上述の実施形態では位置特定部113は、バウンディングボックスBと部分画像領域との位置関係を確認することによって、対象物体Mの撮像画像G内での位置を特定する例について説明したが上記に限らない。図8に示すように、位置特定部113は以下の例により対象物体Mの撮像画像G内での位置を特定してもよい。図8は、対象物体Mの位置の特定の変形例を示す図である。なお、図8の撮像画像Gは、位置P2に設置された撮像部40によるものである。
【0102】
(頂点の数により特定)
図8の8001は、対象物体Mの位置を特定する他の例を説明する図である。図8の8001に示すように、位置特定部113は、第1部分画像領域R1に含まれるバウンディングボックスBの頂点Vの数により、対象物体Mの位置を特定してもよい。この場合、位置特定部113は、バウンディングボックスBの頂点Vを算出し、第1部分画像領域R1に含まれる頂点Vの数により対象物体Mの位置を特定してもよい。
【0103】
例えば、位置特定部113は、4点の頂点Vが第1部分画像領域R1に含まれる場合は、対象物体Mが第1位置であると特定し、1点から3点の頂点Vが第1部分画像領域R1に含まれる場合は、対象物体Mが第2位置であると特定する。頂点Vが全く第1部分画像領域R1に含まれていない場合、位置特定部113は対象物体Mが第3位置であると特定する。
【0104】
(面積により特定)
図8の8002は、対象物体Mの位置を特定するさらに他の例を説明する図である。図8の8002に示すように、位置特定部113は、第1部分画像領域R1に含まれるバウンディングボックスBの面積E2により、対象物体Mの位置を特定してもよい。この場合、位置特定部113は、バウンディングボックスB全体の面積E1と、バウンディングボックスBと第1部分画像領域R1とが重なる領域の面積E2とを算出し、面積E1と面積E2との比較により対象物体Mの位置を特定してもよい。
【0105】
例えば、位置特定部113は、面積E1に対する面積E2の比が所定値より大きい場合、対象物体Mが第1位置であると特定してもよく、面積E1に対する面積E2の比が所定値以下の場合、対象物体Mが第3位置であると特定してもよい。所定値は、例えば、60%としてもよい。
【0106】
また、位置特定部113は、第1所定値と第2所定値の2つの所定値を設定し、以下のように位置を特定してもよい。例えば、位置特定部113は、面積E1に対する面積E2の比が第1所定値より大きい場合、対象物体Mが第1位置であると特定してもよい。位置特定部113は、面積E1に対する面積E2の比が第2所定値より大きく、第1所定値以下である場合、対象物体Mが第2位置であると特定してもよい。位置特定部113は、面積E1に対する面積E2の比が第2所定値以下である場合、対象物体Mが第3位置であると特定してもよい。ここで、第1所定値は、第2所定値よりも大きい値である。
【0107】
(中心点の位置により特定)
図8の8001に示すように、位置特定部113は、撮像画像GにおけるバウンディングボックスBの中心点Cの位置により、対象物体Mの位置を特定してもよい。この場合、位置特定部113は、バウンディングボックスBの中心点Cを算出し、中心点Cが第1部分画像領域R1に含まれるか否かを判定する。
【0108】
例えば、位置特定部113は、中心点Cが第1部分画像領域R1に含まれる場合、対象物体Mが第1位置であると特定し、中心点Cが第1部分画像領域R1に含まれていない場合、対象物体Mが第3位置であると特定する。
【0109】
〔ソフトウェアによる実現例〕
エレベータ制御装置10(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置として1または複数のコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部11に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0110】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0111】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0112】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0113】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0114】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1 エレベータシステム
20 エレベータ
24 ドア
40 撮像部
50 乗場
112 対象認識部
113 位置特定部
114 混雑度算出部
115 動作制御部
211 床面
B バウンディングボックス
G 撮像画像
L1、L2 直線
M、M1、M2 対象物体
N1、N2 法線
P11 かごの床面の中心
P21 かご内と乗場との境界の中心
R1 第1部分画像領域(部分画像領域)
R2 第2部分画像領域(部分画像領域)
S1 境界
θ1、θ2 角度
【要約】
【課題】車椅子の利用者など、所定の対象物体の状況に応じて、より適切なエレベータの動作制御を行うことが可能なエレベータシステムを提供する。
【解決手段】エレベータシステム(1)は、エレベータ(20)のかご(21)内、および、エレベータ(20)のドア(24)が開状態における乗場(50)を撮像する撮像部(40)と、撮像画像(G)の中から所定の対象物体(M)を画像認識により検出する対象認識部(112)と、対象物体(M)の撮像画像(G)内での位置を特定する位置特定部(113)と、対象物体(M)の位置に応じて、エレベータ(20)の動作を制御する動作制御部(115)と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8