(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/14 20060101AFI20240925BHJP
C09D 4/00 20060101ALI20240925BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D4/00
C09D4/02
(21)【出願番号】P 2023193180
(22)【出願日】2023-11-13
【審査請求日】2024-06-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西垣 早希
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 泰寿
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-215543(JP,A)
【文献】特許第6421401(JP,B1)
【文献】特開2021-134326(JP,A)
【文献】特開2021-147494(JP,A)
【文献】特開2018-197320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、エチレン性不飽和化合物と、開始剤と、重合禁止剤とを含み、
前記樹脂は、アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂を含み、
前記アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量は、5~30質量%であり、
前記エチレン性不飽和化合物は、アクリロイルモルホリンまたはビニルカプロラクタムの少なくともいずれか一方を含み、
前記アクリロイルモルホリンまたはビニルカプロラクタムの少なくともいずれか一方の含有量の合計は、41質量%以上であり、
前記重合禁止剤は、ピペリジン誘導体を含み、
前記ピペリジン誘導体の含有量は、0.05~1質量%であり、
25℃における粘度は、40~380mPa・sである、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物。
【請求項2】
前記アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量は、15~25質量%である、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型コーティング組成物。
【請求項3】
25℃における粘度は、40~299mPa・sである、請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型コーティング組成物。
【請求項4】
電子写真方式で印刷された印刷物に付与されるための、請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型コーティング組成物。
【請求項5】
請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型コーティング組成物が、電子写真方式で印刷された印刷物に付与された、被コーティング印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物に関する。より詳細には、本発明は、印刷物(特に電子写真方式で印刷された印刷物)に対して付与される際に、環境への負荷が小さく、優れた密着性を示し、優れた光沢性を付与し得る、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式で印刷された印刷物は、印刷面の保護や、美粧性を付与するために、ラミネート加工が施される。これに対し、コスト削減やさらなる美粧性を付与するために、活性エネルギー線硬化型のオーバープリントワニスが開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のワニスは、印刷物(特に電子写真方式で印刷された印刷物)に対して付与される際に、密着性が充分でなく、かつ、充分な光沢性を付与することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、印刷物(特に電子写真方式で印刷された印刷物)に対して付与される際に、環境への負荷が小さく、優れた密着性を示し、優れた光沢性を付与し得る、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の活性エネルギー線硬化型コーティング組成物には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)樹脂と、エチレン性不飽和化合物と、開始剤と、重合禁止剤とを含み、前記樹脂は、アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂を含み、前記アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量は、5~30質量%であり、前記エチレン性不飽和化合物は、アクリロイルモルホリンまたはビニルカプロラクタムの少なくともいずれか一方を含み、前記アクリロイルモルホリンまたはビニルカプロラクタムの少なくともいずれか一方の含有量の合計は、41質量%以上であり、前記重合禁止剤は、ピペリジン誘導体を含み、前記ピペリジン誘導体の含有量は、0.05~1質量%であり、25℃における粘度は、40~380mPa・sである、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物。
【0008】
このような構成によれば、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、印刷物(特に電子写真方式で印刷された印刷物)に対して付与される際に、環境への負荷が小さく、優れた密着性を示し、優れた光沢性を付与し得る。
【0009】
(2)前記アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量は、15~25質量%である、(1)記載の活性エネルギー線硬化型コーティング組成物。
【0010】
このような構成によれば、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、印刷物(特に電子写真方式で印刷された印刷物)に対して付与される際に、より優れた密着性を示し、より優れた光沢性を付与し得る。
【0011】
(3)25℃における粘度は、40~299mPa・sである、(1)または(2)記載の活性エネルギー線硬化型コーティング組成物。
【0012】
このような構成によれば、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、レベリング性が優れ、塗工しやすい。
【0013】
(4)電子写真方式で印刷された印刷物に付与されるための、(1)~(3)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型コーティング組成物。
【0014】
このような構成によれば、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、電子写真方式で印刷された印刷物に対して付与される際に、環境への負荷が小さく、優れた密着性を示し、優れた光沢性を付与し得る。
【0015】
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型コーティング組成物が、電子写真方式で印刷された印刷物に付与された、被コーティング印刷物。
【0016】
このような構成によれば、被コーティング印刷物は、優れた密着性を示し、優れた光沢性を示す。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、印刷物(特に電子写真方式で印刷された印刷物)に対して付与される際に、環境への負荷が小さく、優れた密着性を示し、優れた光沢性を付与し得る、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<活性エネルギー線硬化型コーティング組成物>
本発明の一実施形態の活性エネルギー線硬化型コーティング組成物(以下、コーティング組成物ともいう)は、樹脂と、エチレン性不飽和化合物と、開始剤と、重合禁止剤とを含む。樹脂は、アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂を含む。アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量は、5~30質量%である。エチレン性不飽和化合物は、アクリロイルモルホリンまたはビニルカプロラクタムの少なくともいずれか一方を含む。アクリロイルモルホリンまたはビニルカプロラクタムの少なくともいずれか一方の含有量の合計は、41質量%以上である。重合禁止剤は、ピペリジン誘導体を含む。ピペリジン誘導体の含有量は、0.05~1質量%である。25℃における粘度は、40~380mPa・sである。以下、それぞれについて説明する。
【0019】
(樹脂)
樹脂は、アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂を含む。アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂は、アミノ基を有するスチレン(メタ)アクリル樹脂であれば、公知の技術で得られるものを任意に用い得る。具体的には、アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂は、アミノ基を有するα、β-不飽和二重結合基含有化合物、スチレン系化合物およびα、β-不飽和二重結合基含有化合物(スチレン系化合物を除く)との共重合体、カルボン酸基を有するスチレンアクリル共重合体とエチレンイミンとを反応(アミノエチル化)させたもの等である。これらの中でも、アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂は、アミノ基を有するα、β-不飽和二重結合基含有化合物、スチレン系化合物およびα、β-不飽和二重結合基含有化合物(スチレン系化合物を除く)との共重合体が好ましい。
【0020】
アミノ基を有するα、β-不飽和二重結合基含有化合物は、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステル類、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド類等である。
【0021】
スチレン系化合物は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルスチレン等である。
【0022】
α、β-不飽和二重結合基含有化合物は、上記したアミノ基を有するアクリル酸エステルおよびスチレン系単量体以外であれば特に限定されない。一例を挙げると、α、β-不飽和二重結合基含有化合物は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等である。
【0023】
アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、3000以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましい。また、アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、30000以下であることが好ましく、20000以下であることがより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であることにより、コーティング組成物は、紙への浸み込みを抑制し、適度な粘度により良好な塗工性を得る。また、コーティング組成物は、密着性を向上させ得る。なお、本実施形態において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC)測定法により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量である。GPCの具体的な測定は、装置として、東ソー(株)製HLC-8020、カラムとして東ソー(株)製TSKgel SuperHM-M、溶離液としてテトラヒドロフランを使用し、標準ポリスチレンの分子量との比較により算出し得る。
【0024】
アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂のアミン価は、10mgKOH/g以上であることが好ましく、30mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、アミン価は、130mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以下であることがより好ましい。なお、本実施形態において、アミン価は、ASTM D2074の方法に準拠し、測定した全アミン価(mgKOH)である。
【0025】
アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂のガラス転移点(Tg)は、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。また、Tgは、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。Tgが上記範囲内であることにより、コーティング組成物は、硬化性が向上し、硬化後の柔軟性を高め、密着性を向上させ得る。なお、本実施形態において、Tgは、樹脂を構成する単量体のホモポリマーのTgから計算してもよいし、実験的に測定してもよい。単量体のホモポリマーのTgから算出する方法は、例えば、FOXの式から算出する方法である。また、実験的に測定する方法は、示差走査熱量計を用いてDSC曲線を測定する方法である。
【0026】
アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量は、5質量%以上であればよく、15質量%以上であることが好ましい。また、アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量は、30質量%以下であればよく、25質量%以下であることが好ましい。アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量が5質量%未満である場合、コーティング組成物は、紙への浸み込み、ハジキ(円形に凸凹が発生するという現象)といった塗工不良が発生し、密着性が低下する。一方、アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量が30質量%を超える場合、コーティング組成物は、レベリング不良が発生し、密着性が低下する。アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、コーティング組成物は、印刷物(特に電子写真方式で印刷された印刷物)に対して付与される際に、より優れた密着性を示し、より優れた光沢性を付与し得る。
【0027】
樹脂全体の説明に戻り、本実施形態の樹脂は、上記したアミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂以外のその他の樹脂を含んでもよい。その他の樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、その他の樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アリル樹脂、石油樹脂、エポキシ樹脂等である。
【0028】
その他の樹脂が含まれる場合において、その他の樹脂の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、その他の樹脂の含有量は、5~15質量%である。
【0029】
(エチレン性不飽和化合物)
エチレン性不飽和化合物は、アクリロイルモルホリンまたはビニルカプロラクタムの少なくともいずれか一方を含む。
【0030】
アクリロイルモルホリンまたはビニルカプロラクタムの少なくともいずれか一方の含有量の合計は、41質量%以上であればよく、50質量%以上であることが好ましい。アクリロイルモルホリンまたはビニルカプロラクタムの少なくともいずれか一方の含有量の合計が41質量%未満である場合、コーティング組成物は、密着性が低下する。
【0031】
エチレン性不飽和化合物全体の説明に戻り、本実施形態の樹脂は、上記したアクリロイルモルホリンおよびビニルカプロラクタム以外のその他のエチレン性不飽和化合物を含んでもよい。その他のエチレン性不飽和化合物は特に限定されない。一例を挙げると、その他のエチレン性不飽和化合物は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)等の単官能(メタ)アクリレート、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド等のフタルイミド、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレ-ト、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのネオペンチルグリコールに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに2モルのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに4モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1モルのトリメチロールプロパンに3モル以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたトリ(メタ)アクリレート等の三官能(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の四官能以上の多官能(メタ)アクリレート等である。
【0032】
その他のエチレン性不飽和化合物が含まれる場合において、その他のエチレン性不飽和化合物の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、その他のエチレン性不飽和化合物の含有量は、5~50質量%である。
【0033】
(開始剤)
開始剤は、活性エネルギー線の照射を受けてラジカルを発生させる成分であり、コーティング組成物を硬化させるために配合される。
【0034】
開始剤は特に限定されない。一例を挙げると、開始剤は、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス-2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンジル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等である。
【0035】
開始剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、開始剤の含有量は、コーティング組成物中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、開始剤の含有量は、コーティング組成物中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。開始剤の含有量が上記範囲内であることにより、コーティング組成物は、充分に硬化しやすい。
【0036】
(重合禁止剤)
重合禁止剤は、ピペリジン誘導体を含む。ピペリジン誘導体は特に限定されない。一例を挙げると、ピペリジン誘導体は、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4-第三オクチルアミノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンとの線状もしくは環状縮合物、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサメチレンジアミンと4-モルホリノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンとの線状もしくは環状縮合物、2-クロロ-4,6-ジ(4-n-ブチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)-1,3,5-トリアジンと1,2-ビス(3-アミノプロピルアミノ)エタンの縮合物、2-クロロ-4,6-ジ(4-n-ブチルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)-1,3,5-トリアジンと1,2-ビス(3-アミノプロピルアミノ)エタンとの縮合物、N,N’-ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4-クロロヘキシルアミノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンとの縮合生成物、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル等である。
【0037】
ピペリジン誘導体の含有量は、0.05質量%以上であればよく、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、ピペリジン誘導体の含有量は、1質量%以下であればよく、0.8質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。ピペリジン誘導体の含有量が0.05質量%未満である場合、コーティング組成物は、蛍光灯下でゲル化する、経時で粘度が上昇する。一方、ピペリジン誘導体の含有量が1質量%を超える場合、コーティング組成物は、硬化性が低下する。
【0038】
重合禁止剤全体の説明に戻り、本実施形態の重合禁止剤は、上記したピペリジン誘導体以外のその他の重合禁止剤を含んでもよい。その他の重合禁止剤は特に限定されない。一例を挙げると、その他の重合禁止剤は、ニトロソ系化合物、フェノール系化合物、キノン系化合物等である。
【0039】
その他の重合禁止剤が含まれる場合において、その他の重合禁止剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、その他の重合禁止剤の含有量は、0.05~1質量%である。
【0040】
(任意成分)
本実施形態のコーティング組成物は、上記成分のほか、適宜、任意成分を含んでもよい。任意成分は特に限定されない。一例を挙げると、任意成分は、レベリング剤、抗菌剤、帯電防止剤、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、ワックス、スリップ剤等である。
【0041】
コーティング組成物全体の説明に戻り、活性エネルギー線は特に限定されない。一例を挙げると、活性エネルギー線は、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線のような電離放射線、マイクロ波、高周波等であり、可視光線、赤外線、およびレーザー光線等であってもよい。
【0042】
紫外線を発生するものは、LED、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、ヘリウム・カドミウムレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、およびアルゴンレーザー等である。
【0043】
本実施形態のコーティング組成物の25℃における粘度は、40mPa・s以上であればよく、60mPa・s以上であることが好ましい。また、粘度は、380mPa・s以下であればよく、299mPa・s以下であることが好ましい。コーティング組成物は、粘度が上記範囲内であることにより、レベリング性が優れ、塗工しやすい。なお、本実施形態において、粘度は、25℃において、レオメーター(Discovery HR-2、TA instruments社製)を用いて、せん断速度100s-1の粘度を読み取ることで測定し得る。
【0044】
本実施形態のコーティング組成物が付与される対象物は特に限定されない。一例を挙げると、対象物は、電子写真方式で印刷された印刷物、インクジェット方式で印刷された印刷物、オフセット印刷された印刷物、フレキソ印刷された印刷物、プラスチック、紙、カルトン等である。これらの中でも、本実施形態のコーティング組成物は、電子写真方式で印刷された印刷物に対して好適に付与される。すなわち、電子写真方式で印刷された印刷物は、たとえばオフセット印刷物と比較して、ワックスやシリコーン成分が多いという違いがある。そのため、電子写真方式で印刷された印刷物は、オフセット印刷物よりも、コーティング組成物の密着性が劣りやすく、光沢性を付与させにくい。しかしながら、本実施形態のコーティング組成物は、環境への負荷が小さく、優れた密着性を示し、優れた光沢性を付与し得る。なお、本実施形態において、「電子写真方式で印刷された印刷物」とは、ドラムにトナーを静電接着させ、出力素材に転写させる方式で印刷した印刷物全般を含む。
【0045】
印刷物の基材は特に限定されない。一例を挙げると、基材は、アート紙、コート紙、キャスト紙などの塗工紙や上質紙、中質紙等の非塗工紙、ユポ紙などの合成紙、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)のようなプラスチックフィルム等である。
【0046】
コーティング組成物は、塗工後に活性エネルギー線を照射すると短時間で硬化し皮膜が形成できるため、製造コストが削減されやすい。さらに、コーティング組成物は、有機溶剤を含まず、VOCを大気中に放出しないため、環境への負荷が小さい。
【0047】
本実施形態のコーティング組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、コーティング組成物は、上記した各成分を、適宜混合し、攪拌機を用いて攪拌することにより調製し得る。
【0048】
本実施形態のコーティング組成物を、印刷物(特に電子写真方式で印刷された印刷物)に付与する方法は特に限定されない。一例を挙げると、コーティング組成物は、バーコート、グラビアコート、フレキソコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方法により、印刷物に塗工し得る。
【0049】
付与されたコーティング組成物は、活性エネルギー線が照射されることにより硬化し得る。活性エネルギー線の照射条件は特に限定されない。照射条件は、塗工されたコーティング組成物が充分に硬化し得る条件であればよい。
【0050】
得られる硬化膜の膜厚は特に限定されない。一例を挙げると、膜厚は、4μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましい。また、膜厚は、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。
【0051】
以上、本実施形態によれば、コーティング組成物は、印刷物(特に電子写真方式で印刷された印刷物)に対して付与される際に、環境への負荷が小さく、優れた密着性を示し、優れた光沢性を付与し得る。その結果、得られる被コーティング組成物は、優れた密着性を示し、優れた光沢性を示す。
【実施例】
【0052】
以下、実施例と比較例とにより本発明をより詳細に説明する。本発明は、これら実施例に限定されない。なお、表中の各数値は質量%基準によるものである。
【0053】
使用した原料は、以下の通りである。
<樹脂>
以下の表1に記載の成分および特性からなるアミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂1~2、アミン変性(メタ)アクリル樹脂およびスチレン(メタ)アクリル樹脂を用いた。なお、表1中の略語は以下のとおりである。
DM N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
St スチレン
BA ブチルアクリレート
2-HEA 2-エチルヘキシルアクリレート
BMA ブチルメタクリレート
CHMA シクロヘキシルメタクリレート
MMA メチルメタクリレート
【0054】
(アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂1の合成例1)
窒素ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備え付けた反応容器に、メチルエチルケトン(MEK)90.1部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器を110℃に加温してN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート33.0部、スチレン57.0部、ブチルアクリレート10.0部、さらに重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル(V-601、和光純薬工業社製)9.0%の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V-601を0.9部添加し、110℃で1時間反応させた。その後、MEKを減圧除去し、アミン変性スチレン-アクリルポリマー1(重量平均分子量9800、アミン価118mgKOH/g)を得た。
【0055】
アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂2、アミン変性(メタ)アクリル樹脂およびスチレン(メタ)アクリル樹脂も表1に記載した原料と量に変更した以外は、合成例1と同様の方法で各樹脂を得た。
【0056】
【0057】
<樹脂>
バイロン220:ポリエステル樹脂(東洋紡社製、非晶性ポリエステル樹脂、分子量3,000、水酸基価50mgKOH/g、Tg53℃)
ネオポリマーS:石油樹脂(ENEOS社製、芳香族系(C9)炭化水素樹脂、分子量1,100、軟化点92℃)
UN-7770:ウレタンオリゴマー(根上工業社製、エステル構造を有するウレタンオリゴマー、分子量20,000、Tg-41℃)
<エチレン性不飽和化合物>
ACMO:アクリロイルモルホリン(KJケミカルズ社製、単官能モノマー)
VCAP:ビニルカプロラクタム(BASFジャパン社製、単官能モノマー)
ビスコート160:ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業社製、単官能アクリレート)
LA:ラウリルアクリレート(大阪有機化学工業社製、単官能アクリレート)
TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート(大阪有機化学工業社製、二官能アクリレート)
A-NOD-N:1,9-ノナンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、二官能アクリレート)
<開始剤>
DAIDO UV-CURE 819:フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)(大同化成工業社製)
<光増感剤>
チノパールOBCO:2,5-ビス(5’-t-ブチルベンズオキサゾリル-2’)チオフェン(BASFジャパン社製)
Chemark DETX:2,4-ジエチルチオキサントン(CHEMARK CHEMICAL社製)
<重合禁止剤>
ポリストップ7300P:ピペリジン誘導体(伯東社製)
TEMPO:2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(サンケミカル社製)
H-BHT:ジブチルヒドロキシトルエン(本州化学工業社製)
TBHQ FINE:t-ブチルヒドロキノン(楠本化成社製)
Q-1301:N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム(和光純薬工業社製)
アデカスタブ260:4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)(ADEKA社製)
【0058】
<実施例1>
表2に記載の処方に従い、各成分を混合し、60℃30分ディスパーで攪拌混合することにより、実施例1のコーティング組成物を調製した。得られたコーティング組成物について、以下の評価方法により、粘度、塗工性、密着性、硬化性および蛍光灯安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0059】
<実施例2~11、比較例1~20>
表2~表4に記載の処方に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、コーティング組成物を調製し、評価した。結果を表2~表4に示す。
【0060】
<塗料性能確認条件>
(粘度)
TA Instruments社製レオメーターDiscovery HR-2を用いて、25℃、せん断速度100s-1の条件にて測定した。
(蛍光灯安定性)
25℃、3波長形昼白色蛍光灯下にて、1m(825ルクス)でのゲル化の有無を、以下の評価基準にしたがって、評価した。
○:コーティング組成物は、5時間以上ゲル化しなかった。
△○:コーティング組成物は、3時間以上5時間未満でゲル化した。
△:コーティング組成物は、1時間以上3時間未満でゲル化した。
×:コーティング組成物は、1時間未満でゲル化した。
【0061】
<塗膜性能確認条件>
(試験片の作成条件)
当分野において汎用されている下記3社の印刷機を用いて、電子写真方式により印刷物1~3をそれぞれ作製した。得られたそれぞれの電子写真方式印刷物1~3に対し、バーコーター#5を用いてコーティング組成物を塗工し、LED-UV(385nm) UVA積算光量300mJ/cm2という条件で、紫外線を照射し、硬化させた。
電子写真方式印刷物1(HP社製印刷機使用)
電子写真方式印刷物2(RICOH社製印刷機使用)
電子写真方式印刷物3(CANON社製印刷機使用)
(塗工性)
印刷物に対し、バーコーター#5を用いてコーティング組成物を塗工し、レベリングが良好であるか、以下の評価基準に従って評価した。
○:平滑であり、レベリングが良好であった。
△○:僅かに、フロー目(塗工方向に沿って塗工筋(凹凸)が発生する現象)、ハジキ(円形に凸凹が発生する現象)の発生、紙への浸み込みがあった。
△:ややフロー目、ハジキの発生、紙への浸み込みがあった。
×:全面にフロー目、ハジキの発生、紙への浸み込みがあり、レベリング性が劣った。
(光沢値)
日本電色工業社製VG8000型グロスメーターを用いて、試験片の塗工面の60°反射光沢値を求めた。
(硬化性)
上記方法で作成した試験片について、以下の評価基準にしたがって、指触乾燥性を評価した。
○:塗膜は、タックがなかった。
△○:塗膜は、僅かにタックがあった。
△:塗膜は、タックがあった。
×:塗膜は、触った際の指の痕が残った。
(密着性)
上記方法で作成した試験片について、各種印刷物1~3(HP、RICOH、CANON社製印刷機使用)に対する密着性を、試験片に幅12mmの粘着テープ(ニチバン株式会社、セロハンテープ)を貼り付け、これを試験片に対して90°方向に剥がすことにより、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:塗膜は、剥離しなかった。
△○:塗膜は、塗膜残存率が70%以上であった。
△:塗膜は、塗膜残存率が30~69%であった。
×△:塗膜は、塗膜残存率が1~29%であった。
×:塗膜は、全面が剥離した。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
表2~表4に記載のとおり、本発明の実施例1~11のコーティング組成物は、優れた密着性を示し、優れた光沢性を付与し得ることがわかった。
【要約】
【課題】印刷物(特に電子写真方式で印刷された印刷物)に対して付与される際に、環境への負荷が小さく、優れた密着性を示し、優れた光沢性を付与し得る、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物を提供する。
【解決手段】樹脂と、エチレン性不飽和化合物と、開始剤と、重合禁止剤とを含み、樹脂は、アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂を含み、アミン変性スチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量は、5~30質量%であり、エチレン性不飽和化合物は、アクリロイルモルホリンまたはビニルカプロラクタムの少なくともいずれか一方を含み、アクリロイルモルホリンまたはビニルカプロラクタムの少なくともいずれか一方の含有量の合計は、41質量%以上であり、重合禁止剤は、ピペリジン誘導体を含み、ピペリジン誘導体の含有量は、0.05~1質量%であり、25℃における粘度は、40~380mPa・sである、活性エネルギー線硬化型コーティング組成物。
【選択図】なし