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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】エレベータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20240925BHJP
   B66B 3/02 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B66B1/18 E
B66B3/02 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023218160
(22)【出願日】2023-12-25
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 豪
(72)【発明者】
【氏名】小村 章
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-32449(JP,A)
【文献】特開2023-181793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの乗場呼びが割り当てられている乗りかごを着目かごとして、その着目かごに、当該ロボットの乗場呼びが示す出発階より後に到着することになる行先階が、利用者のかご呼びとして登録されているか否かを判断する第1判断処理と、
前記第1判断処理にて前記着目かごに利用者のかご呼びが登録されていると判断した場合に、そのかご呼びが示す利用者の行先階を着目行先階として、当該着目行先階に前記着目かごが到着する第1到着予想時間と、その利用者を前記ロボットの出発階にて別の乗りかごに乗り換えさせると仮定したときに当該別の乗りかごが前記着目行先階に到着する第2到着予想時間と、を比較することにより、前記別の乗りかごへの乗換えによって前記着目行先階への利用者の到着が早まるか否かを判断する第2判断処理と、
前記第2判断処理にて前記着目行先階への利用者の到着が早まると判断した場合に、前記着目かご内の前記利用者に対し、前記ロボットの出発階での前記別の乗りかごへの乗換えを案内する案内処理と、
を行う、エレベータの制御装置。
【請求項2】
前記ロボットの出発階から前記着目行先階までの全ての階に前記別の乗りかごが停止すると仮定したときに当該別の乗りかごが前記着目行先階に到着する予想時間を、前記第2到着予想時間として算出する算出処理、
を更に行う、請求項1に記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
前記第1判断処理では、前記着目かごに利用者のかご呼びが登録されているか否かを判断する際に、当該かご呼びとして、前記ロボットの乗場呼びが示す行先階より後に到着することになる行先階が登録されているか否かを判断し、
その第1判断処理にて前記着目かごに利用者のかご呼びが登録されていると判断した場合に、前記第2判断処理において、そのかご呼びが示す利用者の行先階を着目行先階として、前記別の乗りかごへの乗換えによって当該着目行先階への利用者の到着が早まるか否かを判断する、請求項1に記載のエレベータの制御装置。
【請求項4】
ロボットのかご呼びが登録されている乗りかごを着目かごとして、その着目かごに、当該ロボットのかご呼びが示す行先階より後に到着することになる行先階が、利用者のかご呼びとして登録されているか否かを判断する第1判断処理と、
前記第1判断処理にて前記着目かごに利用者のかご呼びが登録されていると判断した場合に、そのかご呼びが示す利用者の行先階を着目行先階として、当該着目行先階に前記着目かごが到着する第1到着予想時間と、その利用者を前記ロボットの行先階にて別の乗りかごに乗り換えさせると仮定したときに当該別の乗りかごが前記着目行先階に到着する第2到着予想時間と、を比較することにより、前記別の乗りかごへの乗換えによって前記着目行先階への利用者の到着が早まるか否かを判断する第2判断処理と、
前記第2判断処理にて前記着目行先階への利用者の到着が早まると判断した場合に、前記着目かご内の前記利用者に対し、前記ロボットの行先階での前記別の乗りかごへの乗換えを案内する案内処理と、
を行う、エレベータの制御装置。
【請求項5】
前記ロボットの行先階から前記着目行先階までの全ての階に前記別の乗りかごが停止すると仮定したときに当該別の乗りかごが前記着目行先階に到着する予想時間を、前記第2到着予想時間として算出する算出処理、
を更に行う、請求項4に記載のエレベータの制御装置。
【請求項6】
前記第2判断処理にて前記着目行先階への利用者の到着が早まると判断した場合に、前記別の乗りかごへの乗換え階と前記着目行先階とをそれぞれ新たな出発階及び行先階とした1つの乗場呼びを当該別の乗りかごに割り当て、その一方で、前記着目かごに登録されている当該利用者のかご呼びを、その着目かごから削除する、呼び登録処理、
を更に行う、請求項1~5の何れかに記載のエレベータの制御装置。
【請求項7】
前記第2判断処理にて前記着目行先階への利用者の到着が早まると判断した場合に、前記別の乗りかごへの乗換え階と前記着目行先階とをそれぞれ新たな出発階及び行先階とした1つの乗場呼びを当該別の乗りかごに割り当て、前記着目かごに登録されている当該利用者のかご呼びについては、その着目かごから削除せずにそのまま残す、呼び登録処理、
を更に行う、請求項1~5の何れかに記載のエレベータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者とロボットの両方が利用するエレベータの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータとして、行先階登録装置において利用者による行先階の登録が行われるごとに、その利用者についての乗りかごへの乗場呼びの割当てを行うものが存在する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-55976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ロボットが、建物内で従来は人が行っていた様々な作業(掃除、監視、搬送など)に活用されることが多くなってきている。それに伴い、建物内におけるロボットの階間移動にエレベータが利用されることが増えてきており、利用者とロボットの両方がエレベータを利用するケースが増えてきている。
【0005】
一方、ロボットは、利用者に比して乗降に時間を要する。このため、利用者と共にロボットがエレベータを利用する環境下において、利用者の搬送中に途中の階でロボットが乗車してくる場合や、利用者の搬送中に途中の階でロボットが降車していく場合には、利用者にとっては、ロボットが乗降に時間を要した分だけ自身の行先階への到着が遅れることになる。
【0006】
そこで本発明の目的は、利用者の搬送中に途中の階でロボットが乗車又は降車する場合において、その利用者にとっての行先階への到着をできるだけ早められるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の制御装置は、第1判断処理と、第2判断処理と、案内処理と、を行う(態様1)。制御装置は、第1判断処理において、ロボットの乗場呼びが割り当てられている乗りかごを着目かごとして、その着目かごに、当該ロボットの乗場呼びが示す出発階より後に到着することになる行先階が、利用者のかご呼びとして登録されているか否かを判断する。制御装置は、第1判断処理にて着目かごに利用者のかご呼びが登録されていると判断した場合、第2判断処理において、そのかご呼びが示す利用者の行先階を着目行先階として、当該着目行先階に着目かごが到着する第1到着予想時間と、その利用者をロボットの出発階にて別の乗りかごに乗り換えさせると仮定したときに当該別の乗りかごが着目行先階に到着する第2到着予想時間と、を比較することにより、別の乗りかごへの乗換えによって着目行先階への利用者の到着が早まるか否かを判断する。制御装置は、第2判断処理にて着目行先階への利用者の到着が早まると判断した場合、案内処理において、着目かご内の利用者に対し、ロボットの出発階での別の乗りかごへの乗換えを案内する。
【0008】
上記第1判断処理にて「利用者のかご呼びが登録されている」と判断された場合には、その利用者を、そのまま着目かごで当該利用者の行先階(着目行先階)まで搬送したとすると、その利用者は、途中の階(ロボットの出発階)でロボットが乗車してくることを経験しなければならなくなり、当該利用者にとっては、途中の階でロボットが乗車に時間を要した分だけ自身の行先階(着目行先階)への到着が遅れることになる。このような場合でも、上記態様1によれば、ロボットの出発階での乗換えによって着目行先階への利用者の到着を早めることができる別の乗りかごがあれば、それを見付け出すことができ、その別の乗りかごへの乗換えを着目かご内の利用者へ案内することが可能になる。そして、着目かご内の利用者は、案内に従って乗換えを行うことにより、そのまま着目かごで移動するよりも早く自身の行先階に到着できるようになる。
【0009】
上記態様1に係る制御装置は、算出処理を更に行ってもよい(態様2)。この算出処理では、制御装置は、ロボットの出発階から着目行先階までの全ての階に別の乗りかごが停止すると仮定したときに当該別の乗りかごが着目行先階に到着する予想時間を、第2到着予想時間として算出する。
【0010】
上記第2判断処理において、別の乗りかごへの乗換えによって「着目行先階への利用者の到着が早まる」と判断された場合であって、乗換えのための新たな乗場呼びがその別の乗りかご(乗換かご)に割り当てられたとしても、その後、その乗換かごには更に別の乗場呼び(ロボットの出発階から着目行先階までの間の階で乗車しようとする利用者の乗場呼び)の割当てが発生するおそれがある。そのような割当てが発生した場合には、乗換かごについての着目行先階への実際の到着時間が第2到着予想時間よりも遅くなる(又は、長くなる)といったケースが起こり得る。上記態様2によれば、事後的に生じる乗場呼びによって最も停止回数が多くなった場合を想定して第2到着予想時間が算出されるため、その第2到着予想時間との比較によって「着目行先階への利用者の到着が早まる」と第2判断処理にて判断できた場合には、着目行先階への利用者の到着を、乗換えによって確実に早めることができるようになる。
【0011】
上記態様1又は2に係る制御装置は、第1判断処理及び第2判断処理において次のような処理を行ってもよい(態様3)。制御装置は、第1判断処理において、着目かごに利用者のかご呼びが登録されているか否かを判断する際に、当該かご呼びとして、ロボットの乗場呼びが示す行先階より後に到着することになる行先階が登録されているか否かを判断してもよい。そして、制御装置は、その第1判断処理にて着目かごに「利用者のかご呼びが登録されている」と判断した場合に、第2判断処理において、そのかご呼びが示す利用者の行先階を着目行先階として、別の乗りかごへの乗換えによって当該着目行先階への利用者の到着が早まるか否かを判断してもよい。
【0012】
上記態様3の第1判断処理にて「利用者のかご呼びが登録されている」と判断された場合には、その利用者を、そのまま着目かごで当該利用者の行先階(着目行先階)まで搬送したとすると、その利用者は、ロボットの乗車と降車を両方経験しなければならなくなり、当該利用者にとっては、途中の階でロボットが乗車と降車に時間を要した分だけ自身の行先階(着目行先階)への到着が著しく遅れることになる。一方、そのような場合には、第1到着予想時間は、ロボットの乗車時間と降車時間の両方を考慮して算出されることになり、それが故に長くなる。従って、上記態様3では、乗換えによって着目行先階への利用者の到着を早めることができる別の乗りかごが見付かりやすくなる。その結果として、着目行先階への利用者の到着が、乗換えによって早まりやすくなる。
【0013】
本発明に係る第2の制御装置は、第1判断処理と、第2判断処理と、案内処理と、を行う(態様4)。制御装置は、第1判断処理において、ロボットのかご呼びが登録されている乗りかごを着目かごとして、その着目かごに、当該ロボットのかご呼びが示す行先階より後に到着することになる行先階が、利用者のかご呼びとして登録されているか否かを判断する。制御装置は、第1判断処理にて着目かごに利用者のかご呼びが登録されていると判断した場合、第2判断処理において、そのかご呼びが示す利用者の行先階を着目行先階として、当該着目行先階に着目かごが到着する第1到着予想時間と、その利用者をロボットの行先階にて別の乗りかごに乗り換えさせると仮定したときに当該別の乗りかごが着目行先階に到着する第2到着予想時間と、を比較することにより、別の乗りかごへの乗換えによって着目行先階への利用者の到着が早まるか否かを判断する。制御装置は、第2判断処理にて着目行先階への利用者の到着が早まると判断した場合、案内処理において、着目かご内の利用者に対し、ロボットの行先階での別の乗りかごへの乗換えを案内する。
【0014】
上記第1判断処理にて「利用者のかご呼びが登録されている」と判断された場合には、その利用者を、そのまま着目かごで当該利用者の行先階(着目行先階)まで搬送したとすると、その利用者は、途中の階(ロボットの行先階)でロボットが降車していくことを経験しなければならなくなり、当該利用者にとっては、途中の階でロボットが降車に時間を要した分だけ自身の行先階(着目行先階)への到着が遅れることになる。このような場合でも、上記態様4によれば、ロボットの行先階での乗換えによって着目行先階への利用者の到着を早めることができる別の乗りかごがあれば、それを見付け出すことができ、その別の乗りかごへの乗換えを着目かご内の利用者へ案内することが可能になる。そして、着目かご内の利用者は、案内に従って乗換えを行うことにより、そのまま着目かごで移動するよりも早く自身の行先階に到着できるようになる。
【0015】
上記態様4に係る制御装置は、算出処理を更に行ってもよい(態様5)。この算出処理では、制御装置は、ロボットの行先階から着目行先階までの全ての階に別の乗りかごが停止すると仮定したときに当該別の乗りかごが着目行先階に到着する予想時間を、第2到着予想時間として算出する。
【0016】
上記第2判断処理において、別の乗りかごへの乗換えによって「着目行先階への利用者の到着が早まる」と判断された場合であって、乗換えのための新たな乗場呼びがその別の乗りかご(乗換かご)に割り当てられたとしても、その後、その乗換かごには更に別の乗場呼び(ロボットの行先階から着目行先階までの間の階で乗車しようとする利用者の乗場呼び)の割当てが発生するおそれがある。そのような割当てが発生した場合には、乗換かごについての着目行先階への実際の到着時間が第2到着予想時間よりも遅くなる(又は、長くなる)といったケースが起こり得る。上記態様5によれば、事後的に生じる乗場呼びによって最も停止回数が多くなった場合を想定して第2到着予想時間が算出されるため、その第2到着予想時間との比較によって「着目行先階への利用者の到着が早まる」と第2判断処理にて判断できた場合には、着目行先階への利用者の到着を、乗換えによって確実に早めることができるようになる。
【0017】
上記態様1~5の何れかに係る制御装置は、第2判断処理にて着目行先階への利用者の到着が早まると判断した場合に、呼び登録処理を更に行ってもよい(態様6)。この呼び登録処理では、制御装置は、別の乗りかごへの乗換え階と着目行先階とをそれぞれ新たな出発階及び行先階とした1つの乗場呼びを当該別の乗りかごに割り当て、その一方で、着目かごに登録されている当該利用者のかご呼びを、その着目かごから削除する。
【0018】
上記態様6によれば、着目かごが、乗換えのために降車した利用者の行先階に到着してしまう、といった無駄を減らすことが可能になる。
【0019】
上記態様1~5の何れかに係る制御装置は、第2判断処理にて着目行先階への利用者の到着が早まると判断した場合に、呼び登録処理を別の方法で行ってもよい(態様7)。この呼び登録処理では、制御装置は、別の乗りかごへの乗換え階と着目行先階とをそれぞれ新たな出発階及び行先階とした1つの乗場呼びを当該別の乗りかごに割り当て、着目かごに登録されている当該利用者のかご呼びについては、その着目かごから削除せずにそのまま残す。
【0020】
上記態様7によれば、乗換えの案内後も着目かごでの移動を希望した利用者を、その利用者の行先階(着目行先階)にて降車させることが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、利用者の搬送中に途中の階でロボットが乗車又は降車する場合において、その利用者にとっての行先階への到着をできるだけ早められるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係るエレベータの全体構成を示した概念図である。
図2】第1実施形態で用いられる(A)装置管理データDp及び(B)ロボット管理データDrをそれぞれ例示した概念図である。
図3】第1実施形態において群管理制御装置が行う制御処理を示したフローチャートである。
図4】第1実施形態で実行される第1指令処理を示したフローチャートである。
図5】第1実施形態で実行される第2指令処理を示したフローチャートである。
図6】第1実施形態で実行される乗換案内処理を示したフローチャートである。
図7】第2変形例で実行される第2指令処理を示したフローチャートである。
図8】第3変形例で実行される乗換案内処理を示したフローチャートである。
図9】第2実施形態で実行される第2指令処理を示したフローチャートである。
図10】第2実施形態で実行される乗換案内処理を示したフローチャートである。
図11】第5変形例で実行される乗換案内処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[1]第1実施形態
[1-1]エレベータの全体構成
図1は、第1実施形態に係るエレベータの全体構成を示した概念図である。本実施形態では、エレベータは、利用者だけでなく、そのエレベータが設置される建物内で様々な作業(掃除、監視、搬送など)を行うロボットHにも利用される。そして、本実施形態のエレベータは、乗りかごGと、行先階登録装置1と、エレベータ制御装置2と、群管理制御装置3と、ロボット管理装置4と、を備える。以下、各部の構成について具体的に説明する。
【0024】
<行先階登録装置>
行先階登録装置1は、エレベータの利用者が行先階Fdを登録するための装置であり、エレベータの各停止階に設置される。
【0025】
行先階登録装置1において利用者が行先階Fdを登録した場合、その行先階Fdは群管理制御装置3へ送信される。これにより、利用者についての呼び登録(利用者についての乗りかごGへの乗場呼びの割当て)が、群管理制御装置3に対して依頼される。このとき、行先階登録装置1は、行先階Fdの送信元が、ロボットHではなくて行先階登録装置1であり、且つ、どの行先階登録装置1であるのかを群管理制御装置3に認識させるべく、その行先階Fdと共に、自身の装置情報Pdも群管理制御装置3へ送信する。
【0026】
<エレベータ制御装置>
エレベータ制御装置2は、乗りかごGごとに設けられ、自身に対応付けられた乗りかごGの動作を制御する。
【0027】
<群管理制御装置>
群管理制御装置3は、エレベータ制御装置2を通じて乗りかごGを一元的に管理する装置であり、記憶部31と制御部32とを備える(図1参照)。そして本実施形態では、群管理制御装置3は、利用者の搬送中に途中の階でロボットHが乗車又は降車する場合において、その利用者にとっての行先階Fdへの到着をできるだけ早められるようにするべく、それを可能にするための制御処理を実行する。尚、群管理制御装置3が行う制御処理の詳細については後述する。
【0028】
記憶部31は、ROMやRAMなどの記憶デバイスで構成される部分であり、記憶部31には、群管理制御装置3が行う制御処理に必要な情報が保存される。本実施形態では、そのような情報として装置管理データDpが記憶部31に保存される。装置管理データDpは、行先階登録装置1ごとに、当該行先階登録装置1に関連する複数の情報を互いに紐付けて管理するためのデータベースである。
【0029】
図2(A)は、第1実施形態で用いられる装置管理データDpを例示した概念図である。この図に例示された装置管理データDpでは、行先階登録装置1ごとに、当該行先階登録装置1を他の装置と識別するための装置情報Pdと、その行先階登録装置1の設置階Fsと、が互いに対応付けられた状態で記録される。
【0030】
これにより、群管理制御装置3は、各行先階登録装置1から行先階Fdと共に装置情報Pdを受信した場合に、その装置情報Pdから、当該行先階登録装置1(行先階Fdの登録があった行先階登録装置1)の設置階Fsを特定することが可能になる。そして本実施形態では、その行先階登録装置1の設置階Fsが、当該行先階登録装置1にて行先階Fdを登録した利用者の出発階Fc(乗車階)として利用される。
【0031】
制御部32は、群管理制御装置3が行う制御処理を実現する部分である。本実施形態では、制御部32は、CPUやMPUなどの処理デバイスで構成される。そして、その制御部32がプログラムを実行することにより、上記の制御処理がソフトウェアで実現される。
【0032】
ここで、上記のプログラムは、群管理制御装置3にインストールされたものであり、インストール前においては、携帯可能な記憶媒体(例えば、フラッシュメモリ等)に読取可能な状態で保存されていてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能な状態で保存されていてもよい。尚、群管理制御装置3が行う制御処理は、プログラムの実行によってソフトウェアで実現される場合に限らず、群管理制御装置3に構築された処理回路(制御部32)によってハードウェアで実現されてもよい。
【0033】
<ロボット管理装置>
ロボット管理装置4は、本実施形態のエレベータが設置される建物内で利用されるロボットHを一元的に管理する装置であり、記憶部41と制御部42とを備える(図1参照)。
【0034】
記憶部41は、ROMやRAMなどの記憶デバイスで構成される部分であり、記憶部41には、ロボット管理装置4が行う制御処理に必要な情報が保存される。本実施形態では、そのような情報としてロボット管理データDrが記憶部41に保存される。ロボット管理データDrは、ロボットHごとに、当該ロボットHに関連する複数の情報を互いに紐付けて管理するためのデータベースである。
【0035】
図2(B)は、第1実施形態で用いられるロボット管理データDrを例示した概念図である。この図に例示されたロボット管理データDrでは、ロボットHごとに、当該ロボットHを他のロボットHと識別するためのロボット情報Phと、そのロボットHの乗車時間Tc、降車時間Td、及び現在階Fpと、が互いに対応付けられた状態で記録される。
【0036】
ここで、ロボットHごとに対応付けられる乗車時間Tcは、そのロボットHが自身の出発階Fcにて乗場から乗りかごGへ乗り込むときに要する時間(例えば、過去の履歴から得られる平均時間など)である。ロボットHごとに対応付けられる降車時間Tdは、そのロボットHが自身の行先階Fdにて乗りかごGから乗場へ降りるときに要する時間(例えば、過去の履歴から得られる平均時間など)である。ロボットHの乗車時間Tc及び降車時間Tdは何れも、利用者が乗車や降車に要する時間に比べて長くなることが一般的である。ロボットHごとに対応付けられる現在階Fpは、そのロボットHが配されている階であり、当該ロボットHが階間移動するごとに更新される。
【0037】
より具体的には、乗車時間Tcは、群管理制御装置3がロボット管理装置4へ乗車開始信号Sx1を送信してから、群管理制御装置3がロボット管理装置4から乗車完了信号Sx2を受信するまでにかかる時間(例えば、過去の履歴から得られる平均時間など)である。また、降車時間Tdは、群管理制御装置3がロボット管理装置4へ降車開始信号Sy1を送信してから、群管理制御装置3がロボット管理装置4から降車完了信号Sy2を受信するまでにかかる時間(例えば、過去の履歴から得られる平均時間など)である。尚、乗車開始信号Sx1、乗車完了信号Sx2、降車開始信号Sy1、及び降車完了信号Sy2の送受信のタイミングなどについては、後述する。
【0038】
また図2(B)の例では、乗車時間Tc及び降車時間Tdは、Tc>Tdの関係となるように設定されている。尚、乗車時間Tc及び降車時間Tdは、ロボットHの性能、乗りかごGや乗場の構成などに応じて、Tc=Tdの関係で設定されてもよいし、Tc<Tdの関係となるように設定されてもよい。Tc=Tdの関係で設定される場合、ロボット管理データDrには、ロボットHごとに、そのロボットHの乗車時間Tcと降車時間Tdとに共通して用いられる1つの時間だけが対応づけられてもよい。
【0039】
制御部42は、ロボット管理装置4が行う制御処理を実現する部分である。本実施形態では、ロボット管理装置4が行う制御処理の1つとして、以下のような処理が制御部42によって実現される。
【0040】
各ロボットHは、階間移動が必要になった場合、移動先となる行先階Fdをロボット管理装置4へ送信する。このとき、そのロボットHは、行先階Fdの送信元がどのロボットHであるのかをロボット管理装置4に認識させるべく、その行先階Fdと共に、自身のロボット情報Phもロボット管理装置4へ送信する。
【0041】
また、各ロボットHは、階間移動が必要になった場合、現在階Fpから乗りかごGに乗車して行先階Fdへ移動することになる。換言すれば、各ロボットHの現在階Fpは、当該ロボットHが階間移動するときの出発階Fc(乗車階)になる。
【0042】
そこで、ロボット管理装置4が各ロボットHから行先階Fd及びロボット情報Phを受信した場合、ロボット管理装置4は、そのロボットHの出発階Fc(乗車階)を特定するべく、ロボット管理データDrを用いて、受信したロボット情報Phに対応付けられている現在階Fpを抽出する。このとき、ロボット管理装置4は、そのロボットHの乗車時間Tc及び降車時間Tdも抽出する。
【0043】
そして、ロボット管理装置4は、抽出した現在階Fp、乗車時間Tc、及び降車時間Tdを、当該現在階FpについてはロボットHの出発階Fc(=Fp)として、ロボットHから受信した行先階Fd及びロボット情報Phと共に群管理制御装置3へ送信する。これにより、ロボットHについての呼び登録(ロボットHについての乗りかごGへの乗場呼びの割当て)が、群管理制御装置3に対して依頼される。
【0044】
このような制御処理を実現する制御部42は、本実施形態ではCPUやMPUなどの処理デバイスで構成される。そして、その制御部42がプログラムを実行することにより、上述した制御処理がソフトウェアで実現される。
【0045】
ここで、上記のプログラムは、ロボット管理装置4にインストールされたものであり、インストール前においては、携帯可能な記憶媒体(例えば、フラッシュメモリ等)に読取可能な状態で保存されていてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能な状態で保存されていてもよい。尚、ロボット管理装置4が行う制御処理は、プログラムの実行によってソフトウェアで実現される場合に限らず、ロボット管理装置4に構築された処理回路(制御部42)によってハードウェアで実現されてもよい。
【0046】
[1-2]群管理制御装置が行う制御処理
図3は、第1実施形態において群管理制御装置3が行う制御装置を示したフローチャートである。この制御処理は、行先階登録装置1又はロボット管理装置4から群管理制御装置3に対して呼び登録の依頼があった場合に開始される。また、その制御処理が終了する前に別の呼び登録の依頼があった場合には、その別の依頼に対する制御処理が新たに開始され、それによって複数の制御処理が並列で行われることになる。従って、利用者とロボットHの両方がエレベータを利用するケースでは、行先階登録装置1からの呼び登録の依頼に対する制御処理と、ロボット管理装置4からの呼び登録の依頼に対する制御処理とが並列で行われることになる。
【0047】
以下では、呼び登録の依頼があるごとに群管理制御装置3が受信する情報を纏めて「受信情報Pr」と称す。具体的には、この受信情報Prは、呼び登録の依頼が行先階登録装置1からの依頼(利用者についての呼び登録の依頼)であった場合には、行先階Fd及び装置情報Pdを含んだものになり、呼び登録の依頼がロボット管理装置4からの依頼(ロボットHについての呼び登録の依頼)であった場合には、出発階Fc、行先階Fd、乗車時間Tc、降車時間Td、及びロボット情報Phを含んだものになる。
【0048】
制御処理が開始されると、群管理制御装置3は、受信した呼び登録の依頼が行先階登録装置1とロボット管理装置4のどちらからの依頼であるのかを判断するべく、装置情報Pdとロボット情報Phのどちらの情報が受信情報Pr内に含まれているのかを判断する(ステップS10)。
【0049】
群管理制御装置3は、ステップS10にて「装置情報Pd」が含まれていると判断した場合には、その判断を以て、受信した呼び登録の依頼は行先階登録装置1からの依頼であると判断できる。この場合、群管理制御装置3は、装置管理データDpを用いて、受信情報Pr内の装置情報Pdに対応付けられている設置階Fsを抽出し、それを利用者の出発階Fcとした上で、その出発階Fcと受信情報Pr内の行先階Fd(利用者の行先階Fd)を1つの乗場呼びCg1として、何れか1つの乗りかごG(以下、「着目かごGk」と称す)に割り当てる(利用者についての割当て(呼び登録処理)。ステップS11)。
【0050】
ステップS11の後、群管理制御装置3は、乗場呼びCg1が示す出発階Fc及び行先階Fdに着目かごGkを停止させるための処理として、以下に説明する第1指令処理を実行する。
【0051】
図4は、第1実施形態で実行される第1指令処理を示したフローチャートである。第1指令処理では、群管理制御装置3は、乗場呼びCg1が示す出発階Fc(利用者の出発階Fc)が着目かごGkの次の停止階になったタイミングで、その出発階Fcに着目かごGkを停止させるための指令を着目かごGkへ送信する(ステップS101)。
【0052】
ステップS101の後、群管理制御装置3は、乗場呼びCg1が示す出発階Fcに着目かごGkが到着したか否かを判断する(ステップS102)。また、群管理制御装置3は、ステップS102にて「到着した(Yes)」と判断できるまで、当該ステップS102を繰り返し実行する。
【0053】
群管理制御装置3は、ステップS102にて「到着した(Yes)」と判断した場合、乗場呼びCg1が示す行先階Fd(利用者の行先階Fd)を用いて、当該行先階Fdを、かご呼びCg2として着目かごGkに登録する(利用者についてのかご呼び登録。ステップS103)。一方、乗場呼びCg1は、その乗場呼びCg1が示す行先階Fdが着目かごGkへのかご呼びCg2の登録に用いられることにより、その役目を終えることになる。そこで、群管理制御装置3は、役目を終えた乗場呼びCg1を着目かごGkから削除する。
【0054】
ステップS103の後、群管理制御装置3は、利用者の出発階Fcから着目かごGkを出発させるべく、そのための指令を着目かごGkへ送信する(ステップS104)。
【0055】
その後、群管理制御装置3は、かご呼びCg2が示す行先階Fdが着目かごGkの次の停止階になったタイミングで、その行先階Fdに着目かごGkを停止させるための指令を着目かごGkへ送信する(ステップS105)。
【0056】
ステップS105の後、群管理制御装置3は、かご呼びCg2が示す行先階Fdに着目かごGkが到着したか否かを判断する(ステップS106)。また、群管理制御装置3は、ステップS106にて「到着した(Yes)」と判断できるまで、当該ステップS106を繰り返し実行する。
【0057】
群管理制御装置3は、ステップS106にて「到着した(Yes)」と判断した場合、その到着によってかご呼びCg2はその役目を終えるため、当該かご呼びCg2を着目かごGkから削除する(ステップS107)。その後、群管理制御装置3は、第1指令処理を終了させて制御処理(図3)に戻り、それから当該制御処理を終了させる。
【0058】
このような第1指令処理は、行先階登録装置1にて利用者が行先階Fdを登録した場合に一般的に行われる制御である。
【0059】
一方、群管理制御装置3は、ステップS10(図3参照)にて「ロボット情報Ph」が含まれていると判断した場合には、その判断を以て、受信した呼び登録の依頼はロボット管理装置4からの依頼であると判断できる。この場合、群管理制御装置3は、受信情報Pr内の出発階Fc及び行先階Fdを1つの乗場呼びCh1として、何れか1つの乗りかごG(以下、「着目かごGk」と称す)に割り当てる(ロボットHについての割当て(呼び登録処理)。ステップS12)。尚、以下では説明を簡単にするために、ロボットHについては各乗りかごGに対して多くても1つの割当てしか行われないものとする。
【0060】
ステップS12の後、群管理制御装置3は、乗場呼びCh1が示す出発階Fc及び行先階Fdに着目かごGkを停止させるための処理として、第2指令処理を実行する。
【0061】
図5は、第1実施形態で実行される第2指令処理を示したフローチャートである。第2指令処理では、群管理制御装置3は、乗場呼びCh1が示す出発階Fc(ロボットHの出発階Fc)が着目かごGkの次の停止階になったタイミングで、その出発階Fcに着目かごGkを停止させるための指令を着目かごGkへ送信する(ステップS201)。
【0062】
ステップS201の後、群管理制御装置3は、乗場呼びCh1が示す出発階Fc(ロボットHの出発階Fc)に着目かごGkが到着する直前であるか否かを判断する(ステップS202)。一例として、群管理制御装置3は、乗場呼びCh1が示す出発階Fcに停止するために着目かごGkが減速を開始したか否かを判断することにより、着目かごGkが到着する直前であるか否かを判断することができる。そして、群管理制御装置3は、ステップS202にて「直前である(Yes)」と判断できるまで、当該ステップS202を繰り返し実行する。
【0063】
群管理制御装置3は、ステップS202にて「直前である(Yes)」と判断した場合、着目かごGkに利用者のかご呼びCg2が登録されているか否かを判断する(ステップS203)。具体的には、群管理制御装置3は、乗場呼びCh1が示す出発階Fc(ロボットHの出発階Fc)より後に到着することになる行先階Fdが、利用者のかご呼びCg2として着目かごGkに登録されているか否か、を判断する(第1判断処理)。
【0064】
ここで、そのような利用者のかご呼びCg2が着目かごGkに登録されている場合には、その利用者を、そのまま着目かごGkで当該利用者の行先階Fdまで搬送したとすると、その利用者は、途中の階(ロボットHの出発階Fc)でロボットHが乗車してくることを経験しなければならなくなり、当該利用者にとっては、途中の階でロボットHが乗車に時間を要した分だけ自身の行先階Fdへの到着が遅れることになる。
【0065】
そこで、そのような利用者にとっての行先階Fdへの到着をできるだけ早められるようにするべく、群管理制御装置3は、ステップS203にて「登録されている(Yes)」と判断した場合には、乗場呼びCh1が示す出発階Fc(ロボットHの出発階Fc)より後に到着することになる行先階Fdを示している利用者のかご呼びCg2の全てに対して、それぞれに、以下に説明する乗換案内処理を実行する。
【0066】
図6は、第1実施形態で実行される乗換案内処理を示したフローチャートである。以下では、この乗換案内処理で対象になっているかご呼びCg2が示す利用者の行先階Fdを「着目行先階Fdx」と呼ぶことにする。
【0067】
乗換案内処理では、群管理制御装置3は、着目行先階Fdxまで利用者がそのまま着目かごGkで移動した場合の到着時間を予想するべく、当該着目行先階Fdxに着目かごGkが到着する第1到着予想時間T1を算出する(算出処理。ステップS301)。具体的には、群管理制御装置3は、乗場呼びCh1が示す出発階FcでのロボットHの乗車時間Tc(受信情報Pr内の乗車時間Tc)を考慮し、更には必要に応じて(着目行先階Fdxが、乗場呼びCh1が示す行先階Fd(ロボットHの行先階Fd)より後に到着することになる利用者の行先階Fdである場合には)、乗場呼びCh1が示す行先階FdでのロボットHの降車時間Td(受信情報Pr内の降車時間Td)を考慮して、第1到着予想時間T1を算出する。このとき、群管理制御装置3は、第1到着予想時間T1として、着目行先階Fdxに着目かごGkが到着する予想時刻を算出してもよいし、ロボットHの出発階Fc(乗場呼びCh1が示す出発階Fc)に着目かごGkが到着してから、着目行先階Fdxに着目かごGkが到着するまでにかかる予想時間を算出してもよい。
【0068】
より具体的には、群管理制御装置3は、ロボットHの出発階Fcに着目かごGkが到着する予想時刻を起点として、その後、その着目かごGkが着目行先階Fdxに到着するまでに要することになる移動時間及び停止時間をそれぞれ考慮して、第1到着予想時間T1を算出する。そして、群管理制御装置3は、ロボットHの出発階Fcでの着目かごGkの停止時間を求める際に、当該ロボットHの乗車時間Tc(受信情報Pr内の乗車時間Tc)を考慮する。また、群管理制御装置3は、ロボットHの行先階Fdでの着目かごGkの停止時間を求める際に、当該ロボットHの降車時間Td(受信情報Pr内の降車時間Td)を考慮する。
【0069】
ステップS301に加えて、群管理制御装置3は、ロボットHの出発階Fcで利用者が別の乗りかごGに乗り換えて自身の行先階Fd(着目行先階Fdx)まで移動した場合の到着時間を予想するべく、着目かごGk以外の各乗りかごG(別の乗りかごG)についての第2到着予想時間T2を算出する(算出処理。ステップS302)。ここで、第2到着予想時間T2は、ロボットHの出発階Fcにて別の乗りかごGに利用者を乗り換えさせると仮定したときに、着目行先階Fdxに当該別の乗りかごGが到着する予想時間である。このとき、群管理制御装置3は、第2到着予想時間T2として、着目行先階Fdxに別の乗りかごGが到着する予想時刻を算出してもよいし、ロボットHの出発階Fc(乗場呼びCh1が示す出発階Fc)に着目かごGkが到着する予想時刻を起点として、着目行先階Fdxに別の乗りかごGが到着するまでに経過する予想時間を算出してもよい。
【0070】
より具体的には、群管理制御装置3は、ロボットHの出発階Fcと着目行先階Fdxとに別の乗りかごGを停止させると仮定したときに当該別の乗りかごGが要することになる移動時間及び停止時間をそれぞれ考慮して、第2到着予想時間T2を算出する。
【0071】
ステップS301及びS302の実行後、群管理制御装置3は、着目かごGk以外の乗りかごG(別の乗りかごG)ごとに、第1到着予想時間T1と第2到着予想時間T2とを比較することにより、当該別の乗りかごGへの乗換えによって着目行先階Fdxへの利用者の到着が早まるか否かを判断する(第2判断処理)。具体的には、群管理制御装置3は、以下に説明するステップS303及びS304を実行する。
【0072】
ステップS303では、群管理制御装置3は、着目かごGk以外の乗りかごGごとに、第2到着予想時間T2が第1到着予想時間T1より早くなる(又は、小さくなる)か否かを判断し、「早くなる(Yes)」と判断できた乗りかごGを乗換候補にする。このようにして、群管理制御装置3は、着目かごGk以外の乗りかごG(別の乗りかごG)の中から、第2到着予想時間T2が第1到着予想時間T1より早くなる(又は、小さくなる)乗りかごGだけを乗換候補として抽出する。このようにして抽出された乗りかごG(乗換候補)は、ロボットHの出発階Fcで利用者に乗換えを実行させることで、その利用者にとっての着目行先階Fdxへの到着を早めることができる。
【0073】
ステップS304では、群管理制御装置3は、ステップS303の実行によって乗換候補を抽出できたか否かを判断する。
【0074】
群管理制御装置3は、ステップS304にて「抽出できた(Yes)」と判断した場合には、その判断を以て、抽出した乗りかごG(別の乗りかごG)のそれぞれについて、その乗りかごGへの乗換えによって「着目行先階Fdxへの利用者の到着が早まる」と判断できたことになる。この場合、群管理制御装置3は、ロボットHの出発階Fc(利用者にとっての乗換え階)と利用者の着目行先階Fdxとをそれぞれ新たな出発階Fc及び行先階Fdにした1つの乗場呼びCg1を、ステップS303で抽出した乗換候補のうちの何れか1つの乗りかごG(以下、「乗換かごGx」と称す)に割り当てる(呼び登録処理。ステップS305)。このとき、群管理制御装置3は、乗換候補のうちの、最も早く着目行先階Fdxに到着する乗りかごG(換言すれば、第2到着予想時間T2が最も早い(又は短い)乗りかごG)を、乗換かごGxとすることができる。
【0075】
そして、群管理制御装置3は、ステップS305にて乗換かごGxへの新たな乗場呼びCg1の割当てを行った場合には、第2指令処理(図5)と並行して、当該新たな乗場呼びCg1が示す出発階Fc及び行先階Fdに乗換かごGxを停止させるべく、その乗換かごGxに対して第1指令処理を実行する(図4参照)。
【0076】
また、群管理制御装置3は、ステップS305にて乗換かごGxへの新たな乗場呼びCg1の割当てを行う一方で、乗換えの対象になった利用者について着目かごGkに登録されたままになっているかご呼びCg2を、その着目かごGkから削除する。これにより、着目かごGkが、乗換えのために降車した利用者の行先階Fd(着目行先階Fdx)に到着してしまう、といった無駄を減らすことが可能になる。
【0077】
ステップS305の後、群管理制御装置3は、ロボットHの出発階Fcでの乗換えを利用者に実行させるべく、着目かごGk内の利用者に対し、ロボットHの出発階Fcでの乗換えを案内する(案内処理。ステップS306)。このとき、群管理制御装置3は、乗換えの案内がどの行先階Fdへ向かっている利用者に対するものであるのかという情報と、乗換え階がどの階であるのかという情報と、乗換かごGxがどの乗りかごGであるのかという情報と、を利用者に対して伝えることができる。その後、群管理制御装置3は、乗換案内処理を終了させて第2指令処理(図5)へ戻る。
【0078】
一方、群管理制御装置3は、ステップS304にて「抽出できなかった(No)」と判断した場合には、その判断を以て、着目かごGk以外の乗りかごG(別の乗りかごG)の何れについても、それらの乗りかごGへの乗換えでは「着目行先階Fdxへの当該利用者の到着は早まらない」と判断できたことになる。この場合、群管理制御装置3は、ステップS305及びS306を実行せずに乗換案内処理を終了させて第2指令処理(図5)へ戻る。
【0079】
このような乗換案内処理によれば、ロボットHの出発階Fcでの乗換えによって着目行先階Fdxへの利用者の到着を早めることができる別の乗りかごGがあれば、それを見付け出すことができ、その別の乗りかごGへの乗換えを着目かごGk内の利用者へ案内することが可能になる。そして、着目かごGk内の利用者は、案内に従って乗換えを行うことにより、そのまま着目かごGkで移動するよりも早く自身の行先階Fdに到着できるようになる。また、ロボットHの出発階Fcにて乗換えを利用者に実行させることにより、その階でロボットHが乗車を完了するまでの時間を利用して、乗換えによって行先階Fdへの到着が早まることを利用者に理解させる(換言すれば、乗換えを利用者に決断させる)ための十分な時間を確保できるようになる。
【0080】
その後、第2指令処理(図5参照)では、群管理制御装置3は、乗場呼びCh1が示す出発階Fc及び行先階Fd(ロボットHの出発階Fc及び行先階Fd)に着目かごGkを停止させるべく、以下の処理を引き続き実行する。
【0081】
群管理制御装置3は、ステップS203にて「登録されていない(No)」と判断した後、又は、ステップS203にて「登録されている(Yes)」と判断して、登録されている全てのかご呼びCg2に対してそれぞれに乗換案内処理を実行した後、乗場呼びCh1が示す出発階Fc(ロボットHの出発階Fc)に着目かごGkが到着したか否かを判断する(ステップS204)。また、群管理制御装置3は、ステップS204にて「到着した(Yes)」と判断できるまで、当該ステップS204を繰り返し実行する。
【0082】
群管理制御装置3は、ステップS204にて「到着した(Yes)」と判断した場合、到着した着目かごGkへの乗車をロボットHに開始させるべく、乗車開始信号Sx1を、そのロボットHのロボット情報Ph(受信情報Pr内のロボット情報Ph)と共にロボット管理装置4へ送信する(ステップS205)。
【0083】
ロボット管理装置4は、群管理制御装置3から乗車開始信号Sx1を受信した場合、それと共に受信したロボット情報Phで特定されるロボットHに、着目かごGkへの乗車を開始させる。その後、ロボットHは、乗車が完了したときに、着目かごGkへの乗車完了をロボット管理装置4に通知する。そして、ロボット管理装置4は、ロボットHから乗車完了の通知を受けた場合に、そのロボットHのロボット情報Phと共に、ロボットHの乗車完了を知らせるための乗車完了信号Sx2を群管理制御装置3へ返信する。
【0084】
その後、群管理制御装置3は、ロボット管理装置4から乗車完了信号Sx2を受信したか否かを判断する(ステップS206)。また、群管理制御装置3は、ステップS206にて「受信した(Yes)」と判断できるまで、当該ステップS206を繰り返し実行する。尚、このとき、ロボットHに何らかのトラブル(動力系の故障やバッテリーの電力不足など)が発生し、ロボットHが着目かごGkへの乗車を完了することができないといった事態が生じ得る。そこで、群管理制御装置3は、乗車完了信号Sx2を受信できずに(ステップS206で「受信した(Yes)」と判断できずに)所定時間が経過した場合には、乗場呼びCh1を着目かごGkから削除して制御処理を終了させてもよい。
【0085】
そして、群管理制御装置3は、ステップS206にて「受信した(Yes)」と判断した場合に、乗場呼びCh1が示す行先階Fd(ロボットHの行先階Fd)を用いて、当該行先階Fdを、かご呼びCh2として着目かごGkに登録する(ロボットHについてのかご呼び登録。ステップS207)。一方、乗場呼びCh1は、その乗場呼びCh1が示す行先階Fdが着目かごGkへのかご呼びCh2の登録に用いられることにより、その役目を終えることになる。そこで、群管理制御装置3は、役目を終えた乗場呼びCh1を着目かごGkから削除する。
【0086】
ステップS207の後、群管理制御装置3は、ロボットHの出発階Fcから着目かごGkを出発させるべく、そのための指令を着目かごGkへ送信する(ステップS208)。
【0087】
その後、群管理制御装置3は、かご呼びCh2が示す行先階Fd(ロボットHの行先階Fd)が着目かごGkの次の停止階になったタイミングで、その行先階Fdに着目かごGkを停止させるための指令を着目かごGkへ送信する(ステップS209)。
【0088】
ステップS209の後、群管理制御装置3は、かご呼びCh2が示す行先階Fd(ロボットHの行先階Fd)に着目かごGkが到着したか否かを判断する(ステップS210)。また、群管理制御装置3は、ステップS210にて「到着した(Yes)」と判断できるまで、当該ステップS210を繰り返し実行する。
【0089】
群管理制御装置3は、ステップS210にて「到着した(Yes)」と判断した場合、到着した着目かごGkからの降車をロボットHに開始させるべく、降車開始信号Sy1を、そのロボットHのロボット情報Ph(受信情報Pr内のロボット情報Ph)及びそのときの着目かごGkの到着階(ロボットHの降車階)と共にロボット管理装置4へ送信する(ステップS211)。
【0090】
ロボット管理装置4は、群管理制御装置3から降車開始信号Sy1を受信した場合、それと共に受信したロボット情報Phで特定されるロボットHに、着目かごGkからの降車を開始させる。その後、ロボットHは、降車が完了したときに、着目かごGkからの降車完了をロボット管理装置4に通知する。そして、ロボット管理装置4は、ロボットHから降車完了の通知を受けた場合に、そのロボットHのロボット情報Phと共に、ロボットHの降車完了を知らせるための降車完了信号Sy2を群管理制御装置3へ返信する。また、ロボット管理装置4は、ロボット管理データDrに記録されている当該ロボットHの現在階Fpを、群管理制御装置3から受信した着目かごGkの到着階(ロボットHの降車階)を用いて更新する。
【0091】
かご呼びCh2は、ロボットHの行先階Fdへの着目かごGkの到着によってその役目を終えるため、群管理制御装置3は、当該かご呼びCh2を着目かごGkから削除する(ステップS212)。
【0092】
その後、群管理制御装置3は、ロボット管理装置4から降車完了信号Sy2を受信したか否かを判断する(ステップS213)。また、群管理制御装置3は、ステップS213にて「受信した(Yes)」と判断できるまで、当該ステップS213を繰り返し実行する。そして、群管理制御装置3は、ステップS213にて「受信した(Yes)」と判断した場合に、第2指令処理を終了させて制御処理(図3)に戻り、それから当該制御処理を終了させる。
【0093】
[1-3]変形例
[1-3-1]第1変形例
第1変形例は、上述した第1実施形態の変形例である。
【0094】
上述した第1実施形態では、乗換案内処理(図6参照)内の第2判断処理(ステップS303及びS304)において、別の乗りかごGへの乗換えによって「着目行先階Fdxへの利用者の到着が早まる」と判断された場合であって、乗換えのための新たな乗場呼びCg1がその別の乗りかごG(乗換かごGx)に割り当てられたとしても、その後、その乗換かごGxには更に別の乗場呼びCg1(ロボットHの出発階Fcから着目行先階Fdxまでの間の階で乗車しようとする利用者の乗場呼びCg1)の割当てが発生するおそれがある。そのような割当てが発生した場合には、乗換かごGxについての着目行先階Fdxへの実際の到着時間が第2到着予想時間T2よりも遅くなる(又は、長くなる)といったケースが起こり得る。
【0095】
そこで本変形例では、群管理制御装置3は、乗換案内処理(図6参照)において、そのように事後的に生じ得る乗場呼びCg1を考慮して乗換かごGxを見付け出す。具体的には、群管理制御装置3は、乗換案内処理(図6参照)内の算出処理(ステップS302)において、着目かごGk以外の各乗りかごG(別の乗りかごG)についての第2到着予想時間T2を算出するときに、第2到着予想時間T2として、ロボットHの出発階Fcから着目行先階Fdxまでの全ての階に別の乗りかごGが停止すると仮定したときに当該別の乗りかごGが着目行先階Fdxに到着する予想時間を算出する。そして、この第2到着予想時間T2を用いて、第2判断処理(ステップS303及びS304)を行う。
【0096】
第1変形例によれば、事後的に生じる乗場呼びCg1によって最も停止回数が多くなった場合を想定して第2到着予想時間T2が算出されるため、その第2到着予想時間T2との比較によって「着目行先階Fdxへの利用者の到着が早まる」と第2判断処理にて判断できた場合には、着目行先階Fdxへの利用者の到着を、乗換えによって確実に早めることができるようになる。
【0097】
[1-3-2]第2変形例
第2変形例は、上述した第1実施形態の変形例である。図7は、第2変形例で実行される第2指令処理を示したフローチャートである。
【0098】
本変形例の第2指令処理では、群管理制御装置3は、ステップS202にて「直前である(Yes)」と判断した場合に行う第1判断処理において、着目かごGkに利用者のかご呼びCg2が登録されているか否かを判断する際に、当該かご呼びCg2として、乗場呼びCh1が示す行先階Fd(ロボットHの行先階Fd)より後に到着することになる行先階Fdが登録されているか否かを判断する(ステップS220)。
【0099】
ここで、そのような利用者のかご呼びCg2が着目かごGkに登録されている場合には、その利用者を、そのまま着目かごGkで当該利用者の行先階Fdまで搬送したとすると、その利用者は、ロボットHの乗車と降車を両方経験しなければならなくなり、当該利用者にとっては、途中の階でロボットHが乗車と降車に時間を要した分だけ自身の行先階Fdへの到着が著しく遅れることになる。
【0100】
そこで本変形例では、そのような利用者だけを乗換案内の対象にするべく、群管理制御装置3は、上述した第1判断処理(ステップS220)を実行する。そして、そのような利用者のかご呼びCg2に対して行う乗換案内処理(図6参照)では、算出処理(ステップS301)において、第1到着予想時間T1は、ロボットHの乗車時間Tcと降車時間Tdの両方を考慮して算出されることになり、それが故に長くなる。従って、第2判断処理(ステップS303及びS304)において、乗換えによって着目行先階Fdxへの利用者の到着を早めることができる別の乗りかごG(乗換候補)が見付かりやすくなる。その結果として、着目行先階Fdxへの利用者の到着が、乗換えによって早まりやすくなる。
【0101】
尚、このようにロボットHの乗車と降車を両方経験しなければならない利用者だけを乗換案内の対象にする構成については、上述した第1変形例にも適用できる。
【0102】
[1-3-3]第3変形例
第3変形例は、上述した第1実施形態の変形例である。図8は、第3変形例で実行される乗換案内処理を示したフローチャートである。
【0103】
本変形例の乗換案内処理では、群管理制御装置3は、ステップS305にて乗換かごGxへの新たな乗場呼びCg1の割当てを行う場合、乗換えの対象になった利用者について着目かごGkに登録されたままになっているかご呼びCg2については、その着目かごGkから削除せずにそのまま残す。これにより、乗換えの案内後も着目かごGkでの移動を希望した利用者を、その利用者の行先階Fd(着目行先階Fdx)にて降車させることが可能になる。
【0104】
尚、このように乗換えの対象になった利用者のかご呼びCg2を着目かごGkから削除せずにそのまま残す構成については、上述した第1変形例及び第2変形例にも適用できる。
【0105】
[2]第2実施形態
利用者にとっての行先階Fdへの到着をできるだけ早められるようにするべく、第1実施形態では、ロボットHの出発階Fcでの乗換えを可能にしたのに対し、第2実施形態では、ロボットHの行先階Fdでの乗換えを可能にする。そのための構成として、第2実施形態では、群管理制御装置3が実行する第2指令処理及び乗換案内処理の構成が第1実施形態とは異なる。以下、具体的に説明する。
【0106】
[2-1]群管理制御装置が行う制御処理
図9は、第2実施形態で実行される第2指令処理を示したフローチャートである。本実施形態の第2指令処理では、群管理制御装置3は、ステップS231(上述した図5のステップS201と同じ処理)を実行した後、ステップS232~S236(上述した図5のステップS204~S208と同じ処理)し、それから、かご呼びCh2が示す行先階Fd(ロボットHの行先階Fd)が着目かごGkの次の停止階になったタイミングで、その行先階Fdに着目かごGkを停止させるための指令を着目かごGkへ送信する(ステップS237)。
【0107】
ステップS237の後、群管理制御装置3は、かご呼びCh2が示す行先階Fd(ロボットHの行先階Fd)に着目かごGkが到着する直前であるか否かを判断する(ステップS238)。一例として、群管理制御装置3は、かご呼びCh2が示す行先階Fdに停止するために着目かごGkが減速を開始したか否かを判断することにより、着目かごGkが到着する直前であるか否かを判断することができる。そして、群管理制御装置3は、ステップS238にて「直前である(Yes)」と判断できるまで、当該ステップS238を繰り返し実行する。
【0108】
群管理制御装置3は、ステップS238にて「直前である(Yes)」と判断した場合、着目かごGkに利用者のかご呼びCg2が登録されているか否かを判断する(ステップS239)。具体的には、群管理制御装置3は、かご呼びCh2が示す行先階Fd(ロボットHの行先階Fd)より後に到着することになる行先階Fdが、利用者のかご呼びCg2として着目かごGkに登録されているか否か、を判断する(第1判断処理)。
【0109】
ここで、そのような利用者のかご呼びCg2が着目かごGkに登録されている場合には、その利用者を、そのまま着目かごGkで当該利用者の行先階Fdまで搬送したとすると、その利用者は、途中の階(ロボットHの行先階Fd)でロボットHが降車していくことを経験しなければならなくなり、当該利用者にとっては、途中の階でロボットHが降車に時間を要した分だけ自身の行先階Fdへの到着が遅れることになる。
【0110】
そこで、そのような利用者にとっての行先階Fdへの到着をできるだけ早められるようにするべく、群管理制御装置3は、ステップS239にて「登録されている(Yes)」と判断した場合には、かご呼びCh2が示す行先階Fd(ロボットHの行先階Fd)より後に到着することになる行先階Fdを示している利用者のかご呼びCg2の全てに対して、それぞれに、以下に説明する乗換案内処理を実行する。
【0111】
図10は、第2実施形態で実行される乗換案内処理を示したフローチャートである。以下では、この乗換案内処理で対象になっているかご呼びCg2が示す利用者の行先階Fdを「着目行先階Fdx」と呼ぶことにする。
【0112】
乗換案内処理では、群管理制御装置3は、着目行先階Fdxまで利用者がそのまま着目かごGkで移動した場合の到着時間を予想するべく、当該着目行先階Fdxに着目かごGkが到着する第1到着予想時間T1を算出する(算出処理。ステップS331)。具体的には、群管理制御装置3は、かご呼びCh2が示す行先階FdでのロボットHの降車時間Td(受信情報Pr内の降車時間Td)を考慮して、第1到着予想時間T1を算出する。このとき、群管理制御装置3は、第1到着予想時間T1として、着目行先階Fdxに着目かごGkが到着する予想時刻を算出してもよいし、ロボットHの行先階Fd(かご呼びCh2が示す行先階Fd)に着目かごGkが到着してから、着目行先階Fdxに着目かごGkが到着するまでにかかる予想時間を算出してもよい。
【0113】
より具体的には、群管理制御装置3は、ロボットHの行先階Fdに着目かごGkが到着する予想時刻を起点として、その後、その着目かごGkが着目行先階Fdxに到着するまでに要することになる移動時間及び停止時間をそれぞれ考慮して、第1到着予想時間T1を算出する。そして、群管理制御装置3は、ロボットHの行先階Fdでの着目かごGkの停止時間を求める際に、当該ロボットHの降車時間Td(受信情報Pr内の降車時間Td)を考慮する。
【0114】
ステップS331に加えて、群管理制御装置3は、ロボットHの行先階Fdで利用者が別の乗りかごGに乗り換えて自身の行先階Fd(着目行先階Fdx)まで移動した場合の到着時間を予想するべく、着目かごGk以外の各乗りかごG(別の乗りかごG)についての第2到着予想時間T2を算出する(算出処理。ステップS332)。ここで、第2到着予想時間T2は、ロボットHの行先階Fdにて別の乗りかごGに利用者を乗り換えさせると仮定したときに、着目行先階Fdxに当該別の乗りかごGが到着する予想時間である。このとき、群管理制御装置3は、第2到着予想時間T2として、着目行先階Fdxに別の乗りかごGが到着する予想時刻を算出してもよいし、ロボットHの行先階Fd(かご呼びCh2が示す行先階Fd)に着目かごGkが到着する予想時刻を起点として、着目行先階Fdxに別の乗りかごGが到着するまでに経過する予想時間を算出してもよい。
【0115】
より具体的には、群管理制御装置3は、ロボットHの行先階Fdと着目行先階Fdxとに別の乗りかごGを停止させると仮定したときに当該別の乗りかごGが要することになる移動時間及び停止時間をそれぞれ考慮して、第2到着予想時間T2を算出する。
【0116】
ステップS331及びS332の実行後、群管理制御装置3は、着目かごGk以外の乗りかごG(別の乗りかごG)ごとに、第1到着予想時間T1と第2到着予想時間T2とを比較することにより、当該別の乗りかごGへの乗換えによって着目行先階Fdxへの利用者の到着が早まるか否かを判断する(第2判断処理)。具体的には、群管理制御装置3は、以下に説明するステップS333及びS334を実行する。
【0117】
ステップS333では、群管理制御装置3は、着目かごGk以外の乗りかごGごとに、第2到着予想時間T2が第1到着予想時間T1より早くなる(又は、小さくなる)か否かを判断し、「早くなる(Yes)」と判断できた乗りかごGを乗換候補にする。このようにして、群管理制御装置3は、着目かごGk以外の乗りかごG(別の乗りかごG)の中から、第2到着予想時間T2が第1到着予想時間T1より早くなる(又は、小さくなる)乗りかごGだけを乗換候補として抽出する。このようにして抽出された乗りかごG(乗換候補)は、ロボットHの行先階Fdで利用者に乗換えを実行させることで、その利用者にとっての着目行先階Fdxへの到着を早めることができる。
【0118】
ステップS334では、群管理制御装置3は、ステップS333の実行によって乗換候補を抽出できたか否かを判断する。
【0119】
群管理制御装置3は、ステップS334にて「抽出できた(Yes)」と判断した場合には、その判断を以て、抽出した乗りかごG(別の乗りかごG)のそれぞれについて、その乗りかごGへの乗換えによって「着目行先階Fdxへの利用者の到着が早まる」と判断できたことになる。この場合、群管理制御装置3は、ロボットHの行先階Fd(利用者にとっての乗換え階)と利用者の着目行先階Fdxとをそれぞれ新たな出発階Fc及び行先階Fdにした1つの乗場呼びCg1を、ステップS333で抽出した乗換候補のうちの何れか1つの乗りかごG(以下、「乗換かごGx」と称す)に割り当てる(呼び登録処理。ステップS335)。このとき、群管理制御装置3は、乗換候補のうちの、最も早く着目行先階Fdxに到着する乗りかごG(換言すれば、第2到着予想時間T2が最も早い(又は短い)乗りかごG)を、乗換かごGxとすることができる。
【0120】
そして、群管理制御装置3は、ステップS335にて乗換かごGxへの新たな乗場呼びCg1の割当てを行った場合には、第2指令処理(図9)と並行して、当該新たな乗場呼びCg1が示す出発階Fc及び行先階Fdに乗換かごGxを停止させるべく、その乗換かごGxに対して第1指令処理を実行する(図4参照)。
【0121】
また、群管理制御装置3は、ステップS335にて乗換かごGxへの新たな乗場呼びCg1の割当てを行う一方で、乗換えの対象になった利用者について着目かごGkに登録されたままになっているかご呼びCg2を、その着目かごGkから削除する。これにより、着目かごGkが、乗換えのために降車した利用者の行先階Fd(着目行先階Fdx)に到着してしまう、といった無駄を減らすことが可能になる。
【0122】
ステップS335の後、群管理制御装置3は、ロボットHの行先階Fdでの乗換えを利用者に実行させるべく、着目かごGk内の利用者に対し、ロボットHの行先階Fdでの乗換えを案内する(案内処理。ステップS336)。このとき、群管理制御装置3は、乗換えの案内がどの行先階Fdへ向かっている利用者に対するものであるのかという情報と、乗換え階がどの階であるのかという情報と、乗換かごGxがどの乗りかごGであるのかという情報と、を利用者に対して伝えることができる。その後、群管理制御装置3は、乗換案内処理を終了させて第2指令処理(図9)へ戻る。
【0123】
一方、群管理制御装置3は、ステップS334にて「抽出できなかった(No)」と判断した場合には、その判断を以て、着目かごGk以外の乗りかごG(別の乗りかごG)の何れについても、それらの乗りかごGへの乗換えでは「着目行先階Fdxへの当該利用者の到着は早まらない」と判断できたことになる。この場合、群管理制御装置3は、ステップS335及びS336を実行せずに乗換案内処理を終了させて第2指令処理(図9)へ戻る。
【0124】
このような乗換案内処理によれば、ロボットHの行先階Fdでの乗換えによって着目行先階Fdxへの利用者の到着を早めることができる別の乗りかごGがあれば、それを見付け出すことができ、その別の乗りかごGへの乗換えを着目かごGk内の利用者へ案内することが可能になる。そして、着目かごGk内の利用者は、案内に従って乗換えを行うことにより、そのまま着目かごGkで移動するよりも早く自身の行先階Fdに到着できるようになる。また、ロボットHの行先階Fdにて乗換えを利用者に実行させることにより、その階でロボットHが降車を完了するまでの時間を利用して、乗換えによって行先階Fdへの到着が早まることを利用者に理解させる(換言すれば、乗換えを利用者に決断させる)ための十分な時間を確保できるようになる。
【0125】
その後、第2指令処理(図9参照)では、群管理制御装置3は、かご呼びCg2が示す行先階Fd(ロボットHの行先階Fd)に着目かごGkを停止させるべく、以下の処理を引き続き実行する。
【0126】
群管理制御装置3は、ステップS239にて「登録されていない(No)」と判断した後、又は、ステップS239にて「登録されている(Yes)」と判断して、登録されている全てのかご呼びCg2に対してそれぞれに乗換案内処理を実行した後、ステップS240~S243(上述した図5のステップS210~213と同じ処理)を実行してから第2指令処理を終了させて制御処理(図3)に戻り、それから当該制御処理を終了させる。
【0127】
[2-2]変形例
[2-2-1]第4変形例
第4変形例は、上述した第2実施形態の変形例である。
【0128】
上述した第2実施形態では、乗換案内処理(図10参照)内の第2判断処理(ステップS333及びS334)において、別の乗りかごGへの乗換えによって「着目行先階Fdxへの利用者の到着が早まる」と判断された場合であって、乗換えのための新たな乗場呼びCg1がその別の乗りかごG(乗換かごGx)に割り当てられたとしても、その後、その乗換かごGxには更に別の乗場呼びCg1(ロボットHの行先階Fdから着目行先階Fdxまでの間の階で乗車しようとする利用者の乗場呼びCg1)の割当てが発生するおそれがある。そのような割当てが発生した場合には、乗換かごGxについての着目行先階Fdxへの実際の到着時間が第2到着予想時間T2よりも遅くなる(又は、長くなる)といったケースが起こり得る。
【0129】
そこで本変形例では、群管理制御装置3は、乗換案内処理(図10参照)において、そのように事後的に生じ得る乗場呼びCg1を考慮して乗換かごGxを見付け出す。具体的には、群管理制御装置3は、乗換案内処理(図10参照)内の算出処理(ステップS332)において、着目かごGk以外の各乗りかごG(別の乗りかごG)についての第2到着予想時間T2を算出するときに、第2到着予想時間T2として、ロボットHの行先階Fdから着目行先階Fdxまでの全ての階に別の乗りかごGが停止すると仮定したときに当該別の乗りかごGが着目行先階Fdxに到着する予想時間を算出する。そして、この第2到着予想時間T2を用いて、第2判断処理(ステップS333及びS334)を行う。
【0130】
第4変形例によれば、事後的に生じる乗場呼びCg1によって最も停止回数が多くなった場合を想定して第2到着予想時間T2が算出されるため、その第2到着予想時間T2との比較によって「着目行先階Fdxへの利用者の到着が早まる」と第2判断処理にて判断できた場合には、着目行先階Fdxへの利用者の到着を、乗換えによって確実に早めることができるようになる。
【0131】
[2-2-2]第5変形例
第5変形例は、上述した第2実施形態の変形例である。図11は、第5変形例で実行される乗換案内処理を示したフローチャートである。
【0132】
本変形例の乗換案内処理では、群管理制御装置3は、ステップS335にて乗換かごGxへの新たな乗場呼びCg1の割当てを行う場合、乗換えの対象になった利用者について着目かごGkに登録されたままになっているかご呼びCg2については、その着目かごGkから削除せずにそのまま残す。これにより、乗換えの案内後も着目かごGkでの移動を希望した利用者を、その利用者の行先階Fd(着目行先階Fdx)にて降車させることが可能になる。
【0133】
尚、このように乗換えの対象になった利用者のかご呼びCg2を着目かごGkから削除せずにそのまま残す構成については、上述した第4変形例にも適用できる。
【0134】
[3]他の変形例
[3-1]第6変形例
第1実施形態及び第2実施形態で説明した制御処理は、適宜組み合わせて実行されてもよい。換言すれば、上述した制御処理は、着目かごGkがロボットHの出発階Fcに到着する直前に着目かごGk内の利用者に対して乗換案内を行い、且つ、着目かごGkがロボットHの行先階Fdに到着する直前にも着目かごGk内の利用者に対して乗換案内を行う、というものに適宜変形されてもよい。
【0135】
[3-2]第7変形例
上述した実施形態及び変形例の何れにおいても、群管理制御装置3は、ロボット管理装置4が行う制御処理をも実行するものに適宜変形されてもよい。この場合、群管理制御装置3が、各ロボットHから行先階Fd及びロボット情報Phを受信することになる。
【0136】
上述の実施形態及び変形例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態や変形例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0137】
また、上述の実施形態や変形例からは、発明の対象として、群管理制御装置3に限らず、当該群管理制御装置3で実行される制御処理やプログラムなどが個々に抽出されてもよいし、それらの一部が部分的に抽出されてもよい。また、群管理制御装置3を備えたエレベータの一部又は全部が、発明の対象として抽出されてもよい。
【符号の説明】
【0138】
1 行先階登録装置
2 エレベータ制御装置
3 群管理制御装置
4 ロボット管理装置
G 乗りかご
H ロボット
31、41 記憶部
32、42 制御部
Dp 装置管理データ
Dr ロボット管理データ
Fc 出発階
Fd 行先階
Fp 現在階
Fs 設置階
Gk 着目かご
Gx 乗換かご
Pd 装置情報
Ph ロボット情報
Pr 受信情報
T1 第1到着予想時間
T2 第2到着予想時間
Tc 乗車時間
Td 降車時間
Cg1、Ch1 乗場呼び
Cg2、Ch2 かご呼び
Fdx 着目行先階
Sx1 乗車開始信号
Sx2 乗車完了信号
Sy1 降車開始信号
Sy2 降車完了信号
【要約】
【課題】利用者の搬送中に途中の階でロボットが乗車又は降車する場合において、その利用者にとっての行先階への到着をできるだけ早められるようにする。
【解決手段】制御装置は、ロボットの乗場呼びが割り当てられている乗りかご(着目かご)に利用者のかご呼びが登録されていると判断した場合、そのかご呼びが示す利用者の行先階(着目行先階)に着目かごが到着する第1到着予想時間と、その利用者をロボットの出発階(又は行先階)にて別の乗りかごに乗り換えさせると仮定したときに当該別の乗りかごが着目行先階に到着する第2到着予想時間と、を比較することにより、別の乗りかごへの乗換えによって着目行先階への利用者の到着が早まるか否かを判断する。そして、制御装置は、着目行先階への利用者の到着が早まると判断した場合、着目かご内の利用者に対し、ロボットの出発階(又は行先階)での別の乗りかごへの乗換えを案内する。
【選択図】図1
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11