(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】液晶アンテナ及び液晶アンテナの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/34 20060101AFI20240925BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20240925BHJP
H01Q 21/20 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H01Q3/34
H01Q13/08
H01Q21/20
(21)【出願番号】P 2023510230
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045690
(87)【国際公開番号】W WO2022209036
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2021057212
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】高田 紘也
(72)【発明者】
【氏名】若藤 健司
(72)【発明者】
【氏名】奥村 藤男
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-504811(JP,A)
【文献】特表2021-501532(JP,A)
【文献】特開昭64-016002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/34
H01Q 13/08
H01Q 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した液晶パネルを備え、
前記液晶パネルは、
液晶層と、
前記液晶層を含む誘電率可変素子によって位相を変調された信号を送受信する複数のアンテナ素子と、
を有する、
フェーズドアレイ型の液晶アンテナ。
【請求項2】
前記液晶層は、湾曲している、
請求項1に記載の液晶アンテナ。
【請求項3】
前記液晶パネルは、円筒形状を有する、
請求項1または2に記載の液晶アンテナ。
【請求項4】
前記液晶パネルは、
複数の分割列を含み、
複数の前記分割列をつなげることにより、前記円筒形状を有する、
請求項3に記載の液晶アンテナ。
【請求項5】
各分割列から放出されるビームの放出方向は、隣接する前記分割列の前記放出方向と異なる、
請求項4に記載の液晶アンテナ。
【請求項6】
前記液晶パネルから放出される電波のビームの放出方向は、前記液晶パネルの外面の略法線方向を含む、
請求項1
または2に記載の液晶アンテナ。
【請求項7】
前記液晶パネルは、
前記誘電率可変素子として、渦巻き配線及び接地配線を有し、
前記アンテナ素子として、パッチアンテナ素子を有し、
前記渦巻き配線と、接地配線との間にバイアス電圧を印加することにより、前記液晶層の誘電率を変化させる、
請求項1
または2に記載の液晶アンテナ。
【請求項8】
前記液晶パネルは、
複数の進行波管をさらに有し、
前記誘電率可変素子として、メタサーフェース層を有し、
前記アンテナ素子として、前記メタサーフェース層に形成された開口部を有し、
記液晶層及び前記メタサーフェース層の共振条件を変化させ、前記進行波管からの電波を前記信号として前記開口部から漏れさせる、
請求項1
または2に記載の液晶アンテナ。
【請求項9】
前記誘電率可変素子は、薄膜トランジスタを含む、
請求項1
または2に記載の液晶アンテナ。
【請求項10】
液晶層と、前記液晶層を含む誘電率可変素子によって位相を変調された信号を送受信する複数のアンテナ素子と、を有する平面状の液晶パネルを形成するステップと、
前記液晶パネルを湾曲させるステップと、
を備えたフェーズドアレイ型の液晶アンテナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶アンテナ及び液晶アンテナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~4には、液晶層を用いた液晶アンテナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2014-531843号公報
【文献】特表2019-505119号公報
【文献】特開2020-096278号公報
【文献】特開2020-126235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶アンテナは、液晶ディスプレイに用いられる技術を活用することができるため、液晶ディスプレイと同様に、比較的安価に製造されている。また、液晶アンテナは、軽量で薄型のものが製造されている。
【0005】
しかしながら、液晶アンテナは、平面状であり、フロントホール等の360°対応のアンテナとするためには、90°対応の平面状のアンテナを4台必要とする。具体的には、例えば、4台の平面状のアンテナを、角筒の4側面に配置することにより、360°対応のアンテナとすることができる。そのような配置にした場合には、角筒の角部近傍で送受信する電波が弱くなる。また、それぞれのアンテナは、多素子アンテナなので、重量が大きくなるとともに、コストが増大する。さらに、アンテナ同士がぶつからないように設置しなければならないので、大きなスペースを必要とする。
【0006】
本開示の目的は、上述した課題を鑑み、送受信方向を水平方向において、360°対応にすることができ、小型及び軽量でコストを低減することができる液晶アンテナ及び液晶アンテナの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態に係る液晶アンテナは、湾曲した液晶パネルを備え、前記液晶パネルは、液晶層と、前記液晶層を含む誘電率可変素子によって位相を変調された信号を送受信する複数のアンテナ素子と、を有する、フェーズドアレイ型である。
【0008】
一実施の形態に係る液晶アンテナの製造方法は、液晶層と、前記液晶層を含む誘電率可変素子によって位相を変調された信号を送受信する複数のアンテナ素子と、を有する平面状の液晶パネルを形成するステップと、前記液晶パネルを湾曲させるステップと、を備えたフェーズドアレイ型の液晶アンテナの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態によれば、送受信方向を水平方向において、360°対応にすることができ、小型及び軽量でコストを低減することができる液晶アンテナ及び液晶アンテナの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る液晶アンテナを例示した断面図である。
【
図2】実施形態1に係る液晶アンテナを例示した上面図である。
【
図3】実施形態1に係る液晶パネルの一部を例示した拡大図である。
【
図4】実施形態1に係る液晶パネルの内部の一部を例示した拡大図である。
【
図5】実施形態1に係る液晶パネルの一部を例示した断面図であり、
図3及び
図4におけるV―V線の断面を示す。
【
図6】実施形態1に係る液晶パネルを例示した断面図である。
【
図7】実施形態1に係る液晶アンテナの液晶パネルから放出される電波のビームを例示した上面図である。
【
図8】実施形態1に係る液晶アンテナの液晶パネルから放出される電波のビームを例示した側面図である。
【
図9】実施形態1に係る液晶アンテナの液晶パネルから放出される電波のビームを例示した上面図である。
【
図10】実施形態1に係る液晶アンテナの製造方法を例示した工程図である。
【
図11】実施形態1に係る液晶アンテナの製造方法を例示した工程図である。
【
図12】実施形態1に係る液晶アンテナの製造方法を例示した工程図である。
【
図13】実施形態1に係る液晶アンテナを電柱及び街灯の柱に配置した場合を例示した図である。
【
図14】実施形態1に係る液晶パネルの分割列を例示した上面図である。
【
図15】実施形態1に係る液晶パネルの分割列を例示した斜視図である。
【
図16】実施形態2に係る液晶アンテナを例示した斜視図である。
【
図17】実施形態2に係る液晶パネルの一部を例示した拡大図である。
【
図18】実施形態2に係る液晶パネルの一部を例示した断面図であり、
図17におけるXVIII―XVIII線の断面を示す。
【
図19】実施形態2に係る液晶パネルを例示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
(実施形態1)
実施形態1に係る液晶アンテナを説明する。まず、<液晶アンテナの構成>を説明する。その後、<液晶パネルの構成>を説明し、さらに、<ビームの放出方向>及び<ビームの形成>を説明した後で、<液晶アンテナの製造方法>を説明する。
【0013】
<液晶アンテナの構成>
図1は、実施形態1に係る液晶アンテナを例示した断面図である。
図2は、実施形態1に係る液晶アンテナを例示した上面図である。
図1及び
図2に示すように、液晶アンテナ1は、液晶パネル100を備えている。液晶パネル100は、湾曲している。例えば、液晶パネル100は、円筒形状を有している。
【0014】
ここで、液晶アンテナ1の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸系を導入する。円筒形状の液晶パネル100の中心軸方向をZ軸方向とし、Z軸に直交する面内の2方向をX軸方向及びY軸方向とする。例えば、Z軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする。また、+Z軸方向を上方とし、-Z軸方向を下方とする。なお、鉛直方向、水平面、上方及び下方は、液晶アンテナ1の説明の便宜のための方向であり、実際に、液晶アンテナ1を使用する向きを示すものではない。
【0015】
液晶パネル100は、円筒形状における側面101に、Z軸方向に沿ったつなぎ目102を有してもよい。例えば、液晶パネル100は、液晶パネル100の元となる横長の平面状のパネルを、Z軸方向に延びた中心軸の周りに湾曲させ、短辺同士をつなぎ目102でつなげることにより形成されてもよい。例えば、フレキシブル液晶パネルを備えたディスプレイの形成技術を用いることにより、湾曲させる変形が可能な液晶パネル100を形成することができる。液晶の場合には、折り曲げによる分子配列の変形等が表示に影響するため、有機EL(Electro Luminescence)と同等程度にフレキシブルにすることは困難であるが、ある程度まで湾曲させることはできる。液晶パネル100は、湾曲するように変形させても、固定されている場合には使用可能である。
【0016】
円筒形状の液晶パネル100における側面101を外面103とも呼ぶ。液晶アンテナ1は、液晶パネル100の外面103から法線方向に電波が放出されるように形成されている。
【0017】
液晶アンテナ1は、液晶パネル100の他、液晶パネル100に信号を供給する部材を組み合わせた構造を有している。例えば、液晶アンテナ1は、液晶パネル100の他に、天板310、底板320、支柱330、信号分配器340及び信号線350を備えてもよい。
【0018】
天板310は、円板状であり、円筒形状の液晶パネル100における上方の開口に蓋として配置されている。
図2では、天板310は省略されている。底板320は、円筒形状の液晶パネル100における下方の開口を塞ぐように配置されている。支柱330は、底板320を下方から支えるように配置されている。
【0019】
信号分配器340は、例えば、底板320上に配置されている。なお、信号分配器340は、液晶パネル100上に配置させてもよい。信号分配器340と液晶パネル100とは、信号線350で接続されている。信号分配器340は、液晶パネル100に信号線350を介して信号を供給する。液晶パネル100にTFT(Thin Film Transistor、薄膜トランジスタ)を用いる場合には、信号分配器340は、液晶パネル100に供給する信号以外に、TFTを駆動する信号等も供給する。
【0020】
<液晶パネルの構成>
図3は、実施形態1に係る液晶パネル100の一部を例示した拡大図である。
図4は、実施形態1に係る液晶パネル100の内部の一部を例示した拡大図である。
図5は、実施形態1に係る液晶パネル100の一部を例示した断面図であり、
図3及び
図4におけるV―V線の断面を示す。
【0021】
図3~
図5に示すように、液晶パネル100は、液晶層110、複数のパッチアンテナ素子120、複数のDCブロッキング構造121、スロット122、接地配線123、前面基板124、後面基板125、スペーサ126、渦巻き配線127を有している。液晶層110は、前面基板124と後面基板125との間において、スペーサ126に挟まれた空間内に配置されている。液晶層110は、誘電率を変化させることができる。例えば、液晶層110の誘電率は、接地配線123と、渦巻き配線127との間にバイアス電圧を印加することにより変化させることができる。これにより、スロット122を介した電磁結合により、パッチアンテナ素子120から電波を放出させる。または、パッチアンテナ素子120によって電波を受信する。
【0022】
したがって、液晶パネル100は、誘電率可変素子として、渦巻き配線127及び接地配線123を有し、アンテナ素子として、パッチアンテナ素子120を有している。この場合に、渦巻き配線127と、接地配線123との間にバイアス電圧を印加することにより、液晶層110の誘電率を変化させる。複数のパッチアンテナ素子120は、液晶層110を含む誘電率可変素子によって位相を変調された信号を送受信する。液晶アンテナ1は、フェーズドアレイ型のアンテナである。例えば、渦巻き配線127と接地配線123との間にバイアス電圧を印加する素子などの誘電率可変素子は、TFTを含んでもよい。これにより、液晶層110の応答速度を向上させることができる。なお、
図3~5のようなDCブロッキング構造121及び渦巻き配線127を有する構成は、あくまで例示であり、フェーズドアレイ型のアンテナをこのような構成に限定しているわけではなく、例えば、メアンダ構造等のように、DCブロッキングの必要ない構成でもよい。
【0023】
図6は、実施形態1に係る液晶パネル100を例示した断面図である。
図6に示すように、液晶層110は、湾曲してもよい。例えば、前面基板124と後面基板125との間に形成された液晶層110は、前面基板124及び後面基板125とともに湾曲してもよい。また、液晶パネル100における液晶層110以外の部材も湾曲してもよい。
【0024】
<ビームの放出方向>
図7は、実施形態1に係る液晶アンテナ1の液晶パネル100から放出される電波のビームを例示した上面図である。
図8は、実施形態1に係る液晶アンテナ1の液晶パネル100から放出される電波のビームを例示した側面図である。
図7及び
図8に示すように、液晶パネル100から放出される電波のビームBMの放出方向は、液晶パネル100の外面103の略法線方向を含む。
図7に示すように、上方から見て、液晶パネル100の外面103から法線方向へビームが放出されている。よって、水平方向へのステアリングはわずかで済む。すなわち、法線方向に放出される複数のビームBMは、XY平面内における360°の方向をカバーしている。よって、XY平面内で各ビームBMの方向を変化させることは、あったとしてもわずかでよい。なお、電波の受信は、電波の放出方向を逆にすることと同様である。
【0025】
Z軸方向のステアリングを十分機能させることができれば、Z軸方向に平行な面内においても、カバーする領域を広範囲とすることができる。しかしながら、例えば、携帯端末の基地局として、液晶アンテナ1を使用する場合には、下方へのステアリングで十分な場合もある。
【0026】
図8に示すように、本実施形態では、液晶パネル100を、Z軸方向において複数の分割段104に分割してもよい。複数の分割段104から放出される複数のビームBMは、Z軸方向に平行な面内において、広範囲の領域をカバーすることができる。よって、ビームBMのステアリングを変化させる場合もわずかで済む。例えば、各分割段104によって、ビームの方向を決めておけば、さらにステアリングはわずかで済む。
【0027】
<ビームの形成>
図9は、実施形態1に係る液晶アンテナ1の液晶パネル100から放出される電波のビームBMを例示した上面図である。
図9に示すように、液晶パネル100は、Z軸方向に延びた複数の分割列105a~105eを含んでもよい。なお、分割列を総称して、分割列105と呼び、特定の分割列を、分割列105aのようにa~eの符号を付して呼ぶ。また、分割列105の個数は、5つに限らない。
【0028】
液晶パネル100は、複数の分割列105a~105eを、液晶パネル100の円周に沿って並べてつなげることにより、円筒形状としてもよい。この場合に、1つの分割列105から1つのビームBMを放出するようにしてもよい。これにより、各分割列105から放出されるビームBMの放出方向は、隣接する分割列105の放出方向と異なるようにすることができる。したがって、各分割列105が送受信する電波の指向性を向上させることができる。
【0029】
また、複数の分割列105a~105cによって、ビームBM1を形成し、複数の分割列105b~105d等によってビームBM2を形成してもよい。このような構成により、単一の分割列105が送受信可能な範囲よりも広範囲の送受信を可能にすることができる。例えば、液晶アンテナ1を携帯端末の基地局とした場合に、携帯端末を保持する者は、液晶アンテナ1に対して移動する。このとき、携帯端末の移動に追随するように、携帯端末と通信する分割列105を、通信状態を維持したまま、分割列105a~105cに渡って円滑に移行させることができる。
【0030】
また、一つの信号に対して、複数の分割列105a~eを使用することにより、アンテナ面積を大きくし、感度を向上させることができる。
【0031】
<液晶アンテナの製造方法>
次に、液晶アンテナ1の製造方法を説明する。
図10~
図12は、実施形態1に係る液晶アンテナの製造方法を例示した工程図である。
図10に示すように、まず、液晶パネル100の元となる横長の平面状の液晶パネルPNLを形成する。液晶パネルPNLは、液晶層110と、液晶層110を含む誘電率可変素子によって位相を変調された信号を送受信する複数のアンテナ素子と、を有する。液晶パネルPNLを形成する際に、液晶パネルPNLは、誘電率可変素子として、渦巻き配線127及び接地配線123を有するようにし、アンテナ素子として、パッチアンテナ素子120を有するようにしてもよい。そして、渦巻き配線127と、接地配線123との間にバイアス電圧を印加することにより、液晶層110の誘電率を変化させるようにする。また、誘電率可変素子は、TFTを含むようにしてもよい。
【0032】
次に、
図11に示すように、Z軸方向に延びた中心軸の周りで液晶パネルPNLを湾曲させる。液晶パネルPNLを湾曲させる際に、液晶層110を湾曲させてもよい。また、液晶パネルPNLを湾曲させる際に、液晶パネルPNLから放出される電波のビームBMの放出方向を、液晶パネルPNLの外面の略法線方向を含むようにしてもよい。
【0033】
次に、
図12に示すように、液晶パネル100の短辺同士をつなぎ目102でつなげることにより、液晶パネルPNLを円筒形状にしてもよい。そして、液晶パネル100に信号を供給する部材を組み合わせた構造を取り付けることにより、
図1及び
図2に示したような液晶アンテナ1を製造することができる。このようにして、1台で電波の送受信方向を水平方向において360°対応の液晶アンテナ1を製造することができる。
【0034】
なお、液晶パネルPNLを円筒形状にする際に、液晶パネルPNLは、複数の分割列105を含むようにし、複数の分割列105をつなげることにより、円筒形状にしてもよい。また、液晶パネルPNLを円筒形状にする際に、各分割列105から放出されるビームBMの放出方向を、隣接する分割列105の放出方向と異なるようにしてもよい。
【0035】
図13は、実施形態1に係る液晶アンテナ1を電柱及び街灯の柱に配置した場合を例示した図である。
図13に示すように、液晶アンテナ1を電柱401及び街灯402の支柱に配置してもよい。この場合には、液晶パネル100は、電柱401及び街灯402の支柱の周りに配置される。液晶パネル100は、中心部に空間があり、支柱等に巻き付けるように設置することが可能である。よって、ビルの屋上等に設置する以外に、電柱401及び街灯402の支柱に設置することができる。また、液晶パネル100は、軽量であるので、電柱401や街灯402の強度に与える影響を抑制することができる。なお、液晶パネル100は、電柱401及び街灯402の他、電信柱、信号灯等のように、地上から鉛直方向に突出した柱状の構造物の周りに配置されてもよい。
【0036】
図14は、実施形態1に係る液晶パネルの分割列を例示した上面図である。
図15は、実施形態1に係る液晶パネルの分割列を例示した斜視図である。
図14及び
図15に示すように、液晶パネル100は、半円筒状に分割された2つの分割列105f及び105gを有してもよい。分割列105f及び105gは、円筒形状を、中心軸を含む平面で分割した半円筒形状を有している。分割列105f及び105gの中心軸に直交する断面は、180°の円周を有する半円である。液晶パネル100は、複数の分割列105f及び105gをつなぎ目102でつなげることにより、円筒形状を有している。
【0037】
図14及び
図15では、円筒形状の外面103において、2カ所につなぎ目102を有している。なお、液晶パネル100は、2つの分割列105f及び105gを有する代わりに、断面が120°の円周を有する1/3円の分割列を3つ、つなげたものでもよいし、断面が90°の円周を有する1/4円の分割列を4つ、つなげたものでもよい。
【0038】
なお、液晶アンテナ1を、既存の電柱401や街灯402の支柱に装着する場合には、これらの先端から挿入させて装着させることが困難である。よって、
図14及び
図15に示したような分割列105により装着させることが望ましい。また、分割列105の場合には、内面を含めて、表面を覆うことが容易であり、防水構造にすることが容易である。また、液晶パネルPNLを現場で湾曲させることを不要とすることができる。
【0039】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の液晶アンテナ1は、湾曲した液晶パネル100を有している。よって、電波の送受信方向を、水平方向において、360°対応にすることができる。例えば、湾曲した液晶パネル100の略法線方向をビームBMの放出方向としているので、水平方向における360°に対応することができる。よって、各ビームBMのステアリング方向の変化を小さくように設計することができる。また、ステアリング方向の変化量を小さくすることは、動作の高速化に寄与する。
【0040】
また、液晶ディスプレイの形成技術を用いているので、小型、薄型及び軽量であるのでコストを低減することができる。小型、薄型及び軽量の利点を活かして、電柱401、街灯402の支柱等への設置が容易である。なお、液晶パネル100を円筒形状で説明したが、必ずしも円筒形状には限らない。例えば、車両に取り付ける際に、湾曲した車両のボディーに合うように湾曲させてもよい。フレキシブルな形状にできるので、必要に応じてどのような曲面にも形成することができる。
【0041】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る液晶アンテナを説明する。
図16は、実施形態2に係る液晶アンテナを例示した斜視図である。
図17は、実施形態2に係る液晶パネル200の一部を例示した拡大図である。
図18は、実施形態2に係る液晶パネル200の一部を例示した断面図であり、
図17におけるXVIII―XVIII線の断面を示す。
【0042】
図16~
図18に示すように、液晶アンテナ2は、液晶パネル200を有している。実施形態2の液晶パネル200は、液晶層210、メタサーフェース層230、複数の進行波管240を有している。メタサーフェース層230は、液晶層210の外面201側に配置され、液晶層210と同心円状に積層している。複数の進行波管240は、液晶層210の内側に配置されている。各進行波管240は、Z軸方向に延び、液晶パネル200の円周に沿って並んでいる。液晶層210は、例えば、図示しないTFT等で誘電率を制御される。
【0043】
メタサーフェース層230は、外面201から液晶層210に貫通する複数の開口部220を有している。液晶パネル200は、誘電率可変素子として、メタサーフェース層230を有し、アンテナ素子として、メタサーフェース層230に形成された開口部220を有している。そして、液晶パネル200は、液晶層210及びメタサーフェース層230の共振条件を変化させ、進行波管240からの電波を信号として開口部220から漏れさせる。このようにして、液晶パネル200は、液晶層210を含む誘電率可変素子によって位相を変調された信号を送受信する。
【0044】
液晶パネル200は、各進行波管240上の液晶層210及びメタサーフェース層230の部分を含む複数の分割列を有してもよい。これにより、実施形態1と同様に、各分割列から放出されるビームの放出方向を、隣接する分割列の放出方向と異なるようにしてもよい。また、液晶アンテナ2を携帯端末の基地局とした場合に、複数の分割列は、携帯端末の移動に追随するように、順次、携帯端末と通信する分割列を移行させてもよい。
【0045】
図19は、実施形態2に係る液晶パネル200を例示した断面図である。
図19に示すように、液晶層210は、湾曲してもよい。例えば、メタサーフェース層230と進行波管240との間に形成された液晶層210は、メタサーフェース層230及び進行波管240とともに湾曲してもよい。また、液晶パネル200における液晶層210、メタサーフェース層230及び進行波管240以外の部材も、湾曲してもよい。
【0046】
本実施形態によれば、メタサーフェース層230を有する液晶パネル200でも湾曲させることができ、電波の送受信方向を、水平方向において、360°対応にすることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1の記載に含まれている。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施形態1及び2の各構成を組みわせたものも、本実施形態の技術的範囲に含まれる。
【0048】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0049】
(付記1)
湾曲した液晶パネルを備え、
前記液晶パネルは、
液晶層と、
前記液晶層を含む誘電率可変素子によって位相を変調された信号を送受信する複数のアンテナ素子と、
を有する、
フェーズドアレイ型の液晶アンテナ。
(付記2)
前記液晶層は、湾曲している、
付記1に記載の液晶アンテナ。
(付記3)
前記液晶パネルは、円筒形状を有する、
付記1または2に記載の液晶アンテナ。
(付記4)
前記液晶パネルは、複数の分割列を含み、複数の前記分割列をつなげることにより、前記円筒形状を有する、
付記3に記載の液晶アンテナ。
(付記5)
各分割列から放出されるビームの放出方向は、隣接する前記分割列の前記放出方向と異なる、
付記4に記載の液晶アンテナ。
(付記6)
前記液晶パネルから放出される電波のビームの放出方向は、前記液晶パネルの外面の略法線方向を含む、
付記1~5のいずれか1項に記載の液晶アンテナ。
(付記7)
前記液晶パネルは、
前記誘電率可変素子として、渦巻き配線及び接地配線を有し、
前記アンテナ素子として、パッチアンテナ素子を有し、
前記渦巻き配線と、接地配線との間にバイアス電圧を印加することにより、前記液晶層の誘電率を変化させる、
付記1~6のいずれか1項に記載の液晶アンテナ。
(付記8)
前記液晶パネルは、
複数の進行波管をさらに有し、
前記誘電率可変素子として、メタサーフェース層を有し、
前記アンテナ素子として、前記メタサーフェース層に形成された開口部を有し、
記液晶層及び前記メタサーフェース層の共振条件を変化させ、前記進行波管からの電波を前記信号として前記開口部から漏れさせる、
付記1~6のいずれか1項に記載の液晶アンテナ。
(付記9)
前記誘電率可変素子は、薄膜トランジスタを含む、
付記1~8のいずれか1項に記載の液晶アンテナ。
(付記10)
前記液晶パネルは、電柱、電信柱、街灯及び信号灯の少なくともいずれかの周りに配置された、
付記1~9のいずれか1項に記載の液晶アンテナ。
(付記11)
液晶層と、前記液晶層を含む誘電率可変素子によって位相を変調された信号を送受信する複数のアンテナ素子と、を有する平面状の液晶パネルを形成するステップと、
前記液晶パネルを湾曲させるステップと、
を備えたフェーズドアレイ型の液晶アンテナの製造方法。
(付記12)
前記液晶パネルを湾曲させるステップにおいて、
前記液晶層を湾曲させる、
付記11に記載の液晶アンテナの製造方法。
(付記13)
前記液晶パネルを円筒形状にするステップと、
をさらに備えた、
付記11または12に記載の液晶アンテナの製造方法。
(付記14)
前記液晶パネルを円筒形状にするステップにおいて、
前記液晶パネルは、複数の分割列を含むようにし、複数の前記分割列をつなげることにより、前記円筒形状にする、
付記13に記載の液晶アンテナの製造方法。
(付記15)
前記液晶パネルを円筒形状にするステップにおいて、
各分割列から放出されるビームの放出方向を、隣接する前記分割列の前記放出方向と異なるようにする、
付記14に記載の液晶アンテナの製造方法。
(付記16)
前記液晶パネルを湾曲させるステップにおいて、
前記液晶パネルから放出される電波のビームの放出方向を、前記液晶パネルの外面の略法線方向を含むようにする、
付記11~15のいずれか1項に記載の液晶アンテナの製造方法。
(付記17)
前記液晶パネルを形成するステップにおいて、
前記液晶パネルは、
前記誘電率可変素子として、渦巻き配線及び接地配線を有するようにし、
前記アンテナ素子として、パッチアンテナ素子を有するようにし、
前記渦巻き配線と、接地配線との間にバイアス電圧を印加することにより、前記液晶層の誘電率を変化させるようにする、
付記11~16のいずれか1項に記載の液晶アンテナの製造方法。
(付記18)
前記液晶パネルを形成するステップにおいて、
前記液晶パネルは、
複数の進行波管をさらに有するようにし、
前記誘電率可変素子として、メタサーフェース層を有するようにし、
前記アンテナ素子として、前記メタサーフェース層に形成された開口部を有するようにし、
記液晶層及前記メタサーフェース層の共振条件を変化させ、前記進行波管からの電波を前記信号として前記開口部から漏れさせる、
付記11~16のいずれか1項に記載の液晶アンテナの製造方法。
(付記19)
前記液晶パネルを形成するステップにおいて、
前記誘電率可変素子は、薄膜トランジスタを含むようにする、
付記11~18のいずれか1項に記載の液晶アンテナの製造方法。
(付記20)
前記液晶パネルを円筒形状にするステップにおいて、
電柱、電信柱、街灯及び信号灯の少なくともいずれかの周りにおいて、複数の前記分割列をつなげることにより、前記円筒形状にする、
付記14に記載の液晶アンテナの製造方法。
【0050】
この出願は、2021年3月30日に出願された日本出願特願2021-057212を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0051】
1 液晶アンテナ
100 液晶パネル
101 側面
102 つなぎ目
103 外面
104 分割段
105、105a、105b、105c、105d、105e 分割列
105f、105g 分割列
110 液晶層
120 パッチアンテナ素子
121 DCブロッキング構造
122 スロット
123 接地配線
124 前面基板
125 後面基板
126 スペーサ
127 渦巻き配線
200 液晶パネル
201 外面
210 液晶層
220 開口部
230 メタサーフェース層
240 進行波管
310 天板
320 底板
330 支柱
340 信号分配器
350 信号線
401 電柱
402 街灯
BM、BM1、BM2 ビーム
PNL 液晶パネル