(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】地図生成装置、地図生成方法及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20240925BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G01C21/26 A
(21)【出願番号】P 2023525677
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2022019681
(87)【国際公開番号】W WO2022255032
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2021093642
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大輝
(72)【発明者】
【氏名】堀畑 智
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-076904(JP,A)
【文献】特開2020-030362(JP,A)
【文献】特開2020-030277(JP,A)
【文献】特開2017-156704(JP,A)
【文献】特開2019-075132(JP,A)
【文献】特開2018-185700(JP,A)
【文献】特開2019-067368(JP,A)
【文献】特開2019-202618(JP,A)
【文献】特開2020-038365(JP,A)
【文献】特開2016-177625(JP,A)
【文献】特開2014-142965(JP,A)
【文献】特開2018-087763(JP,A)
【文献】特開2009-176223(JP,A)
【文献】特開2012-118027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データ上で車両走行軌跡に基づいた車両中心線が存在する一方で区画線が一部存在しない箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定する生成対象箇所設定部(9a)と、
前記仮想区画線の生成対象箇所におい
て車線中心線上に起点を設定する起点設定部(9b)と、
前記起点が設定され
た車線中心線に対して並設されている区画線上であって車両進行方向に対して前記起点よりも前方又は後方のうち一方に始点を設定する始点設定部(9c)と、
前記起点が設定された前記車線中心線に対して並設されている区画線上であって車両進行方向に対して前記起点よりも前方又は後方のうち他方に終点を設定する終点設定部(9d)と、
始点側及び終点側の両側で前記区画線とオーバーラップするように当該始点と当該終点とを接続して仮想区画線を生成する仮想区画線生成部(9e)と、
前記区画線と前記仮想区画線とを接続する区画線接続部(9f)と、を備える地図生成装置。
【請求項2】
前記起点設定部は、前記仮想区画線の生成対象箇所が交差点内であり、前記交差点に停止線が敷設されている場合に、前記車線中心線と前記停止線とが交差する地点に前記起点を設定する請求項1に記載した地図生成装置。
【請求項3】
前記起点設定部は、前記仮想区画線の生成対象箇所が交差点内であり、前記交差点に横断歩道が敷設されている場合に、前記車線中心線と前記横断歩道とが交差する地点に前記起点を設定する請求項1に記載した地図生成装置。
【請求項4】
前記起点設定部は、前記仮想区画線の生成対象箇所が車線の分岐地点又は合流地点を含む箇所である場合に、前記車線中心線の分岐地点又は合流地点に前記起点を設定する請求項1に記載した地図生成装置。
【請求項5】
前記始点設定部は、前記起点を基準として前記車線中心線が複数から一となる方向に当該起点から第1所定距離だけ離れた地点に前記始点を設定し、
前記終点設定部は、前記起点を基準として前記車線中心線が一から複数となる方向に当該起点から第2所定距離だけ離れた地点に前記終点を設定する請求項2から4の何れか一項に記載した地図生成装置。
【請求項6】
前記起点設定部は、前記仮想区画線の生成対象箇所が車線の両側又は片側の区画線が途切れている地点を含む箇所である場合に、車線中心線上であって当該区画線が途切れている地点から車線幅方向に対応する地点に前記起点を設定する請求項1に記載した地図生成装置。
【請求項7】
前記始点設定部は、前記起点を基準として前記車線中心線の両側に区画線が存在する方向に当該起点から第1所定距離だけ離れた地点に前記始点を設定し、
前記終点設定部は、前記起点を基準として前記車線中心線の両側に区画線が存在する方向とは反対方向であって前記車線中心線の両側に区画線が出現する出現点から第2所定距離だけ離れた地点に前記終点を設定する請求項6に記載した地図生成装置。
【請求項8】
前記仮想区画線生成部は、一の区画線に対して複数の仮想区画線を生成した場合に、前記複数の仮想区画線を統合して一の仮想区画線を生成する請求項1から7の何れか一項に記載した地図生成装置。
【請求項9】
前記区画線と前記仮想区画線との接続区間に対してスムージング処理を行うスムージング処理部(9g)を備える請求項1から8の何れか一項に記載した地図生成装置。
【請求項10】
前記仮想区画線が反映された前記地図データを車載機に配信する地図データ配信部(9h)を備える請求項1から9の何れか一項に記載した地図生成装置。
【請求項11】
地図生成装置(3)の制御部(9)において、
地図データ上で車両走行軌跡に基づいた車両中心線が存在する一方で区画線が一部存在しない箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定することと、
前記仮想区画線の生成対象箇所におい
て車線中心線上に起点を設定することと、
前記起点が設定され
た車線中心線に対して並設されている区画線上であって車両進行方向に対して前記起点よりも前方又は後方のうち一方に始点を設定することと、
前記起点が設定された前記車線中心線に対して並設されている区画線上であって車両進行方向に対して前記起点よりも前方又は後方のうち他方に終点を設定することと、
始点側及び終点側の両側で前記区画線とオーバーラップするように当該始点と当該終点とを接続して仮想区画線を生成することと、
前記区画線と前記仮想区画線とを接続することと、を含む地図生成方法。
【請求項12】
地図データ上で車両走行軌跡に基づいた車両中心線が存在する一方で区画線が一部存在しない箇所が仮想区画線の生成対象箇所として設定され、前記仮想区画線の生成対象箇所におい
て車線中心線上に起点が設定され、前記起点が設定され
た車線中心線に対して並設されている区画線上であって車両進行方向に対して前記起点よりも前方又は後方のうち一方に始点が設定され、前記起点が設定された前記車線中心線に対して並設されている区画線上であって車両進行方向に対して前記起点よりも前方又は後方のうち他方に終点が設定され、始点側及び終点側の両側で前記区画線とオーバーラップするように当該始点と当該終点とが接続されて仮想区画線が生成され、前記区画線と前記仮想区画線とが接続された地図データを記憶する記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年6月3日に出願された日本出願番号2021-093642号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、地図生成装置、地図生成方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば自動運転等の運転支援を行うには高精度の地図データが必要である。特許文献1,2では、道路の路面上にペイントされている区画線が途切れている区間で当該区画線の切れ目である末端同士を接続して仮想区画線を生成し、その生成した仮想区画縁を介して区画線を接続する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-87763号公報
【文献】国際公開第2018/87763号
【発明の概要】
【0005】
区画線の末端は、区画線がペイントされている道路を走行する車両から認識可能な点と、その道路に対して交差する交差道路を走行する車両から認識可能な点との境界付近に生成される。そのため、交差点の形状によっては区画線の末端の位置が走路から外れている場合があり、その場合に区画線の末端同士を接続しても、必ずしも車両制御に使用可能な仮想区画線が生成されるわけではない。即ち、区画線の末端の位置が走路から外れている場合に、区画線の末端同士を接続して仮想区画線を生成し、その生成した仮想区画線に基づいて走路を算出しても、蛇行した走路を算出することになり、操舵が不安定となる要因となる。
【0006】
一方で、これらの末端の位置が走路から外れている区画線を車両走行用に修正することで、蛇行しない走路を算出可能となる。しかしながら、車両の自車位置を特定する際には現実世界の区画線が必要になるので、走路を算出するために区画線を修正することは望ましくない。このような事情から、車両制御を適切に行うには走路算出と自車位置特定の両方を可能な属性を持つ地図データが必要になる。
【0007】
本開示は、走路算出と自車位置特定の両方を可能な属性を持つ地図データを適切に生成することを目的とする。
【0008】
本開示の一態様によれば、生成対象箇所設定部は、地図データ上で車両走行軌跡に基づいた車両中心線が存在する一方で区画線が一部存在しない箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定する。起点設定部は、仮想区画線の生成対象箇所において車線中心線上に起点を設定する。始点設定部は、起点が設定された車線中心線に対して並設されている区画線上であって車両進行方向に対して起点よりも前方又は後方のうち一方に始点を設定する。終点設定部は、起点が設定された車線中心線に対して並設されている区画線上であって車両進行方向に対して起点よりも前方又は後方のうち他方に終点を設定する。仮想区画線生成部は、始点側及び終点側の両側で区画線とオーバーラップするように当該始点と当該終点とを接続して仮想区画線を生成する。区画線接続部(9f)は、区画線と仮想区画線とを接続する。
【0009】
仮想区画線の生成対象箇所において車線中心線上に起点を設定し、起点を設定した車線中心線に対して並設されている区画線上であって車両進行方向に対して起点よりも前方及び後方に始点及び終点を設定する。始点側及び終点側の両側で区画線とオーバーラップするように当該始点と当該終点とを接続して仮想区画線を生成し、区画線と仮想区画線とを接続するようにした。区画線の末端同士を接続して仮想区画線を生成する従来とは異なり、区画線と仮想区画線とがオーバーラップする区間を設けることで、そのオーバーラップする区間の付近において仮想区画線と現実世界の区画線との両方の属性を持つ地図データを生成することができる。これにより、走路算出と自車位置特定の両方を可能な属性を持つ地図データを適切に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示についての上記目的及びその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
【
図1】
図1は、一実施形態の地図生成システムの全体構成を示す機能ブロック図であり、
【
図2】
図2は、仮想区画線の生成対象箇所を示す図(その1)であり、
【
図3】
図3は、仮想区画線の生成対象箇所を示す図(その2)であり、
【
図4】
図4は、仮想区画線の生成対象箇所を示す図(その3)であり、
【
図5】
図5は、仮想区画線の生成対象箇所を示す図(その4)であり、
【
図10】
図10は、始点及び終点を示す図(その1) であり、
【
図21】
図21は、仮想区画線生成処理を示すフローチャートであり、
【
図22】
図22は、地図データ配信処理を示すフローチャートであり、
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、道路交通法で車両の左側通行が規定されている国や地域を対象とする。
図1に示すように、地図生成システム1は、車両に搭載されている車載機2と、ネットワーク側に配置されているサーバ3とが例えばインターネット等を含む通信ネットワーク4を介してデータ通信可能に構成されている。車載機2が搭載されている車両は、自動運転機能を有する車両であっても良いし、自動運転機能を有しない車両であっても良い。自動運転機能を有する車両は、自動運転と手動運転とを逐次切り替えて走行する。車載機2とサーバ3とは複数対1の関係にあり、サーバ3は複数の車載機2との間でデータ通信可能である。サーバ3は地図生成装置に相当する。
【0012】
車載機2は、車両に搭載されている各種センサや各種電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)から車両周辺に関する周辺情報、車両走行に関する走行情報、車両位置に関する位置情報を入力する。車載機2は、周辺情報として、車載カメラにより撮影された車両進行方向のカメラ画像、例えばミリ波センサ等のセンサにより車両周囲が検知されたセンサ情報、レーダにより車両周囲が検知されたレーダ情報、ライダ(LiDAR:Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)により車両周囲が検知されたライダ情報等を入力する。カメラ画像には、道路上に設置されている信号機、交通標識、看板、道路の路面上にペイントされている区画線、交差点の停止線、横断歩道、交差点内のダイヤモンド形状マーク等が含まれる。車載機2は、周辺情報として、カメラ画像、センサ情報、レーダ情報、ライダ情報のうち少なくとも一つを入力すれば良い。
【0013】
車載機2は、走行情報として、車速センサにより検知された車速情報を入力する。車載機2は、位置情報として、GPS(Global Positioning System)衛星から送信されたGPS信号に基づいて測位されたGPS位置座標を入力する。GPS位置座標は車両位置を示す座標である。衛星測位システムとしては、GPSに限らず、GLONASS、Galileo、BeiDou、IRNSS等の多様なGNSS(Global Navigation Satellite System)を採用することができる。
【0014】
車載機2は、制御部5と、データ通信部6と、プローブデータ記憶部7と、地図データ記憶部8とを備える。制御部5は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びI/O(Input/Output)を有するマイクロコンピュータにより構成されている。マイクロコンピュータは、非遷移的実体的記憶媒体に格納されているコンピュータプログラムを実行することで、コンピュータプログラムに対応する処理を実行し、車載機2の動作全般を制御する。マイクロコンピュータはプロセッサと同じ意味である。車載機2において、非遷移的実体的記憶媒体は、ハードウェアを他のコンピュータ資源と共有していても良い。プローブデータ記憶部7及び地図データ記憶部8は、それぞれ対応するデータ用に独立して設けられた非遷移的実態的記憶媒体を主体として構成されていても良い。
【0015】
サーバ3は、制御部9と、データ通信部10と、プローブデータ記憶部11と、地図データ記憶部12とを備える。制御部9は、CPU、ROM、RAM及びI/Oを有するマイクロコンピュータにより構成されている。マイクロコンピュータは、非遷移的実体的記憶媒体に格納されているコンピュータプログラムを実行することで、コンピュータプログラムに対応する処理を実行し、サーバ3の動作全般を制御する。サーバ3においても、非遷移的実体的記憶媒体は、ハードウェアを他のコンピュータ資源と共有していても良い。プローブデータ記憶部11及び地図データ記憶部12は、それぞれ対応するデータ用に独立して設けられた非遷移的実態的記憶媒体を主体として構成されていても良い。
【0016】
車載機2において、制御部5は、周辺情報、走行情報及び位置情報を入力すると、その入力した各種情報からプローブデータを生成し、その生成したプローブデータをプローブデータ記憶部7に記憶させる。プローブデータは、周辺情報、走行情報及び位置情報を含んで構成されるデータであり、道路上に設置されている信号機、交通標識、看板、区画線、交差点の停止線、横断歩道、交差点内のダイヤモンド形状マーク等の位置、色、特徴、相対的な位置関係等を示すデータを含む。又、プローブデータは、車両が走行中の道路に関する道路形状、道路特徴、道路幅等を示すデータも含む。
【0017】
制御部5は、例えば所定時間が経過したこと、又は車両の走行距離が所定距離に到達したことを契機とし、プローブデータ記憶部7に記憶されているプローブデータを読出し、その読出したプローブデータをデータ通信部6からサーバ3に送信させる。制御部5は、上記した時間や車両の走行距離を契機とすることに代えて、サーバ3がプローブデータ送信要求を車載機2に所定周期で送信する構成であれば、サーバ3から送信されたプローブデータ送信要求がデータ通信部6により受信されたことを契機とし、プローブデータ記憶部7に記憶されているプローブデータを読出し、その読出したプローブデータをデータ通信部6からサーバ3に送信させても良い。又、制御部5は、例えばイグニッションオン時に前回のイグニッションオン時からイグニッションオフ時までのトリップで蓄積されたプローブデータをデータ通信部6からサーバ3に送信させても良いし、イグニッションオフ時に今回のイグニッションオン時からイグニッションオフ時までのトリップで蓄積されたプローブデータをデータ通信部6からサーバ3に送信させても良い。制御部5は、プローブデータをデータ通信部6からサーバ3に送信させる際に、地図を管理する上で予め決められたエリアの単位であるセグメント単位でプローブデータをデータ通信部6からサーバ3に送信させても良いし、セグメント単位とは無関係な所定エリアの単位でプローブデータをデータ通信部6からサーバ3に送信させても良い。
【0018】
地図データ記憶部8は、運転支援を実現するための高精度な地図データを記憶している。地図データ記憶部8に記憶されている地図データには、三次元地図情報、地物情報、道路の属性値情報等が含まれている。三次元地図情報は、道路形状や構造物の特徴点の点群を含む情報である。地物情報は、区画線、交差点の停止線、横断歩道、交差点内のダイヤモンド形状マーク等の形状や位置に関する情報である。道路の属性値情報は、道路の車線に関する情報であり、車線数、右折専用車線の有無等に関する情報である。地図データ記憶部8に記憶されている地図データは、後述するサーバ3の地図データ記憶部12に記憶されている地図データが当該サーバ3から車載機2にダウンロードされることで逐次更新される。
【0019】
サーバ3において、地図データ記憶部12は、運転支援を実現するための高精度な地図データを記憶している。地図データ記憶部12に記憶されている地図データは、車載機2の地図データ記憶部8に記憶されている地図データよりも大容量のデータであり、広域なエリアの情報を反映しているデータである。制御部9は、車載機2から送信されたプローブデータを受信し、その受信したプローブデータをプローブデータ記憶部11に記憶させる。制御部9は、プローブデータ記憶部11に記憶されているプローブデータを読出し、その読出したプローブデータを、地図データ記憶部12に記憶されている地図データに逐次反映させて当該地図データを逐次更新する。即ち、地図データ記憶部12に記憶されている地図データは、複数のプローブデータが逐次反映されて生成される統合地図データでる。
【0020】
道路の路面上には区画線がペイントされているが、区画線が途切れている区間がある。区画線の末端同士を接続して仮想区画線を生成する手法があるが、交差点の形状によっては区画線の末端の位置が走路から外れている場合がある。その場合に、区画線の末端同士を接続して仮想区画線を生成しても、その生成した仮想区画線に基づいて適切な走路を算出することができない。一方で、これらの末端の位置が走路から外れている区画線を車両走行用に修正すること考えられるが、車両の自車位置を特定する際に現実世界の区画線が必要になるので、走路を算出するために区画線を修正することは望ましくない。このような事情から、本実施形態では、走路算出と自車位置特定の両方を可能な属性を持つ地図データを適切に生成することを目的とし、サーバ3は以下に示す機能を有する。以下、サーバ3の機能について説明する。
【0021】
サーバ3において、制御部9は、生成対象箇所設定部9aと、起点設定部9bと、始点設定部9cと、終点設定部9dと、仮想区画線生成部9eと、区画線接続部9fと、スムージング処理部9g、地図データ配信部9hとを有する。これらの各部9a~9hは地図生成プログラムにより実行される機能の一部に相当する。即ち、制御部9は、地図生成プログラムの一部を実行することで各部9a~9hの機能を行う。
【0022】
生成対象箇所設定部9aは、地図データ記憶部12に記憶されている地図データ上で車両走行軌跡に基づいた車両中心線が存在する一方で区画線が一部存在しない箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定する。具体的には、生成対象箇所設定部9aは、
図2に示すような交差点内、
図3に示すような車線の分岐地点を含む箇所、
図4に示すような車線の合流地点を含む箇所、
図5に示すような区画線が途切れている地点を含む箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定する。
【0023】
起点設定部9bは、仮想区画線の生成対象箇所において車線中心線上に起点を設定する。具体的には、
図2に示した交差点内を仮想区画線の生成対象箇所として設定し、その交差点に停止線が敷設されている場合には、
図6に示すように、起点設定部9bは、例えば交差点に対して東方向から進入して西方向に退出する車線が2車線であるので、各車線中心線と停止線とが交差する地点に起点o1,o2を設定する。交差点によっては停止線が敷設されておらず、停止線を兼用する横断歩道が敷設されている場合もあるので、その場合、起点設定部9bは、各車線中心線と横断歩道とが交差する地点に起点を設定する。
【0024】
図3に示した車線の分岐地点を含む箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定した場合には、
図7に示すように、起点設定部9bは、車線中心線が分岐している地点に起点o11を設定する。
図4に示した車線の合流地点を含む箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定した場合には、
図8に示すように、起点設定部9bは、車線中心線が合流している地点に起点o21を設定する。
図5に示した区画線が途切れている地点を含む箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定した場合には、
図9に示すように、起点設定部9bは、区画線が途切れている地点から車線幅方向に対応する地点に起点o31を設定する。
【0025】
始点設定部9cは、起点が設定された車線中心線に対して並設されている区画線上であって車両進行方向に対して起点よりも前方又は後方のうち一方に始点を設定する。終点設定部9dは、起点が設定された車線中心線に対して並設されている区画線上であって車両進行方向に対して起点よりも前方又は後方のうち他方に終点を設定する。この場合、区間線上であって起点から車線幅方向に対応する地点から始点や終点までの区間が、後述する区画線と仮想区画線とがオーバーラップする区間となる。即ち、区間線上であって起点から車線幅方向に対応する地点から始点や終点までの距離が相対的に長ければ、オーバーラップする区間が相対的に長くなり、当該距離が相対的に短ければ、オーバーラップする区間が相対的に短くなる。
【0026】
具体的には、
図2に示した交差点内を仮想区画線の生成対象箇所として設定した場合には、
図10に示すように、始点設定部9cは、区画線上であって車両進行方向に対して起点o1,o2よりも後方に始点s1~s3を設定する。終点設定部9dは、区画線上であって車両進行方向に対して起点o1,o2よりも前方に終点f1~f6を設定する。
図3に示した車線の分岐地点を含む箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定した場合には、
図11に示すように、始点設定部9cは、区画線上であって車両進行方向に対して起点o11よりも後方に始点s11,s12を設定する。終点設定部9dは、区画線上であって車両進行方向に対して起点011よりも前方に終点f11を設定する。
【0027】
図4に示した車線の合流地点を含む箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定した場合には、
図12に示すように、始点設定部9cは、区画線上であって車両進行方向に対して起点o21よりも前方に始点s21,s22を設定する。終点設定部9dは、区画線上であって車両進行方向に対して起点o21よりも後方に終点f21を設定する。
図5に示した区画線が途切れている地点を含む箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定した場合には、
図13に示すように、始点設定部9cは、区画線上であって車両進行方向に対して起点o31よりも後方に始点s31を設定する。終点設定部9dは、区画線上であって車両進行方向に対して起点よりも前方に終点f31を設定する。
【0028】
換言すると、
図10から
図12では、始点設定部9cは、起点o1,o2,o11,o21を基準として車線中心線が複数から一となる方向に当該起点o1,o2,o11,o21から第1所定距離だけ離れた地点に始点s1~s3,s11,s12,s21,s22を設定する。終点設定部9dは、起点o1,o2,o11,o21を基準として車線中心線が一から複数となる方向に当該起点o1,o2,o11,o21から第2所定距離だけ離れた地点に終点f1~f6,f11,f21を設定する。
【0029】
図13では、始点設定部9cは、起点o31を基準として車線中心線の両側に区画線が存在する方向に当該起点o31から第1所定距離だけ離れた地点に始点s31を設定する。終点設定部9dは、起点o31を基準として車線中心線の両側に区画線が存在する方向とは反対方向であって車線中心線の両側に区画線が出現する出現点から第2所定距離だけ離れた地点に終点f31を設定する。
【0030】
仮想区画線生成部9eは、始点側及び終点側の両側で区画線とオーバーラップするように当該始点と当該終点とを接続して仮想区画線を生成する。具体的には、
図2に示した交差点内を仮想区画線の生成対象箇所として設定した場合には、
図14に示すように、仮想区画線生成部9eは、始点s1と終点f1とを接続する仮想区画線v1、始点s2と終点f2とを接続する仮想区画線v2、始点s3と終点f3とを接続する仮想区画線v3、始点s1と終点f4とを接続する仮想区画線v4、始点s2と終点f5とを接続する仮想区画線v5、始点s2と終点f6とを接続する仮想区画線v6を生成する。
【0031】
図3に示した車線の分岐地点を含む箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定した場合には、
図15に示すように、仮想区画線生成部9eは、始点s11と終点f11とを接続する仮想区画線v11、始点s12と終点f11とを接続する仮想区画線v12を生成する。
図4に示した車線の合流地点を含む箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定した場合には、
図16に示すように、仮想区画線生成部9eは、始点s21と終点f21とを接続する仮想区画線v21、始点s22と終点f21とを接続する仮想区画線v22を生成する。
図5に示した区画線が途切れている地点を含む箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定した場合には、
図17に示すように、仮想区画線生成部9eは、始点s31と終点f31とを接続する仮想区画線v31を生成する。
【0032】
仮想区画線生成部9eは、このようにして仮想区画線を生成すると、その生成した仮想区画線に仮想区画線IDを付与する。例えば仮想区画線v1について説明すると、
図18に示すように、仮想区画線生成部9eは、始点s1を設定した区画線に区画線ID「101」が付与されており、終点f1を設定した区画線に区画線ID「111」が付与されている場合には、仮想区画線v1に仮想区画線ID「101111」を付与する。
【0033】
又、仮想区画線生成部9eは、一の区画線に対して複数の仮想区画線を生成すると、複数の仮想区画線を統合して一の仮想区画線を生成する。
図19に示すように、仮想区画線生成部9eは、始点s1と終点f1とを接続する仮想区画線v1として2本の仮想区画線v1a,v1bを生成すると、その生成した2本の仮想区画線v1a,v1bを平均化して統合し、仮想区画線v1を生成する。仮想区画線生成部9eは、一の区画線に対して3本以上の仮想区画線を生成した場合も、その生成した3本以上の仮想区画線を平均化して統合する。仮想区画線生成部9eは、他の仮想区画線についても、一の区画線に対して複数の仮想区画線を生成すると、複数の仮想区画線を統合して一の仮想区画線を生成する。
【0034】
区画線接続部9fは、区画線と仮想区画線とがオーバーラップする区間において区画線と仮想区画線とを接続する。例えば仮想区画線v1について説明すると、
図20に示すように、区画線接続部9fは、区画線と仮想区画線とがオーバーラップする区間において区画線と仮想区画線とを接続する。スムージング処理部9gは、区画線と仮想区画線との接続区間に対して所定の関数を用いてスムージング処理を行う。区画線接続部9fは、他の仮想区画線についても、同様にスムージング処理を行う。
【0035】
地図データ配信部9hは、地図データの配信条件が成立すると、地図データを地図データ記憶部12から読出し、その読出した地図データをデータ通信部10から車載機2に配信させる。即ち、地図データ配信部9hは、その読出した地図データに上記した仮想区画線が反映されていれば、その仮想区画線が反映されている地図データをデータ通信部10から車載機2に配信させる。又、仮想区画線が反映されている地図データは記憶媒体に格納され、その記憶媒体から地図データが読出されることで、その地図データに反映されている仮想区画線が活用可能となる。
【0036】
次に、上記した構成の作用について
図21から
図22を参照して説明する。サーバ3において、制御部9は、仮想区画線を生成する仮想区画線生成処理、地図データを車載機2に配信する地図データ配信処理を行う。
【0037】
(1)仮想区画線生成処理
制御部9は、仮想区画線生成処理の開始条件が成立し、仮想区画線生成処理を開始すると、仮想区画線の生成対象箇所を設定する(S1、生成対象箇所設定手順)。制御部9は、その設定した仮想区画線の生成対象箇所において車線中心線上に起点を設定する(S2、起点設定手順)。
【0038】
制御部9は、起点を設定すると、以下に示すS5からS7を、1つの起点に対して車線中心線の本数分処理し(S4)、起点を変更し、起点の点数分処理する(S3)。制御部9は、起点を設定した車線中心線に対して並設されている区画線上に始点を設定し(S5、始点設定手順)、その区画線上に終点を設定する(S6、終点設定手順)。制御部9は、始点側及び終点側の両側で区画線とオーバーラップするように当該始点と当該終点とを接続して仮想区画線を生成し、その生成した仮想区画線に仮想区画線IDを付与する(S7、仮想区画線生成手順)。
【0039】
制御部9は、S5からS7を、1つの起点に対して全ての車線中心線の本数分処理し、起点を変更し、全ての起点の点数分処理すると、一の区画線に対して複数の仮想区画線を生成したか否かを判定する(S8)。制御部9は、一の区画線に対して複数の仮想区画線を生成したと判定すると(S8:YES)、複数の仮想区画線を統合して一の仮想区画線を生成する(S9)。制御部9は、区画線と仮想区画線とがオーバーラップする区間において区画線と仮想区画線とを接続し(S10、区画線接続手順)、区画線と仮想区画線との接続区間に対して所定の関数を用いてスムージング処理を行い(S11)、仮想区画線生成処理を終了し、次の仮想区画線生成処理の開始条件の成立を待機する。
【0040】
(2)地図データ配信処理
制御部9は、例えば車載機2から送信された地図データの送信要求をデータ通信部10により受信したことで地図データ配信処理の開始条件が成立すると、地図データ配信処理を開始し、地図データの送信要求を送信した車載機2を搭載している車両位置周辺の地図データを地図データ記憶部12から読出す(B11)。制御部9は、その読出した地図データをデータ通信部10から車載機2に配信させ(B12)、地図データ配信処理を終了し、次の地図データ配信処理の開始条件の成立を待機する。即ち、地図データ配信部9eは、その読出した地図データに仮想区画線を反映させていれば、その仮想区画線が反映されている地図データをデータ通信部10から車載機2に配信させる。
【0041】
これ以降、車載機2において、制御部5は、サーバ3から配信された地図データをデータ通信部6により受信すると、その地図データに基づいて車両制御を行う。即ち、制御部5は、仮想区画線が反映されている地図データを用い、区画線が存在する箇所では、現実世界の区画線に基づいて車両の自車位置を特定し、区画線が存在しない交差点内、分岐地点を含む箇所、合流地点を含む箇所、区画線が途切れている地点を含む箇所では、仮想区画線に基づいて走路を算出する。
【0042】
以上は、交差点内、分岐地点を含む箇所、合流地点を含む箇所、区画線が途切れている地点を含む箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定する場合を説明したが、制御部9は、上記した以外の箇所を仮想区画線の生成対象箇所として設定することができる。
【0043】
図23及び
図24に示すように、分岐と合流が混在するT字路では、制御部9は、分岐している箇所及び合流している箇所の何れに起点を設定しても良い。制御部9は、分岐している地点に起点o41を設定する場合には、起点o41に基づいて始点s41、終点f41を設定し、仮想区画線v41を生成する。制御部9は、合流している地点に起点o42を設定する場合には、
図24に示すように、起点o42に基づいて始点s42、終点f42を設定し、仮想区画線v42を生成する。
【0044】
図25に示すように、環状交差点では、制御部9は、上記した交差点のパターンを適用して起点o51を設定し、区画線が途切れている地点を含む箇所のパターンを適用して起点o52,o53を設定し、分岐地点を含む箇所のパターンを適用して起点o54を設定する。制御部9は、各起点o51~o54に基づいて各始点s51~s54、終点f51~f54を設定し、各仮想区画線v51~v54を生成する。
図25では、交差点に対して南方向から進入して西方向、北方向、東方向の何れかに退出する場合を例示したが、交差点に対して西方向、北方向、東方向の何れかから進入した場合も同様である。
【0045】
以上に説明したように本実施形態によれば、次に示す作用効果を得ることができる。
サーバ3において、仮想区画線の生成対象箇所において車線中心線上に起点を設定し、区画線上に始点及び終点を設定し、始点側及び終点側の両側で区画線とオーバーラップするように当該始点と当該終点とを接続して仮想区画線を生成し、区画線と仮想区画線とを接続するようにした。区画線の末端同士を接続して仮想区画線を生成する従来とは異なり、区画線と仮想区画線とがオーバーラップする区間を設けることで、そのオーバーラップする区間の付近において仮想区画線と現実世界の区画線との両方の属性を持つ地図データを生成することができる。これにより、走路算出と自車位置特定の両方を可能な属性を持つ地図データを適切に生成することができる。現実世界の区画線に基づいて車両の自車位置を適切に特定することができ、仮想区画線に基づいて走路を適切に算出することができる。車両の自車位置を適切に特定し、走路を適切に算出することで、安全安心な車両制御を担保することができる。
【0046】
仮想区画線の生成対象箇所として交差点内を適用することで、交差点内において安全安心な車両制御を担保することができる。仮想区画線の生成対象箇所として車線の分岐地点や合流地点を適用することで、車線の分岐地点や合流地点において安全安心な車両制御を担保することができる。仮想区画線の生成対象箇所として区画線が途切れている地点を適用することで区画線が途切れている地点において安全安心な車両制御を担保することができる。
【0047】
一の区画線に対して複数の仮想区画線を生成すると、複数の仮想区画線を統合して一の仮想区画線を生成するようにした。一の区画線に対して複数の仮想区画線が存在することが原因で車両制御が不安定になる虞を未然に回避することができ、安定した車両制御を担保することができる。
【0048】
区画線と仮想区画線との接続区間に対してスムージング処理を行うようにした。区画線と仮想区画線との接続区間において円滑な車両制御を担保することができる。
【0049】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0050】
道路交通法で車両の左側通行が規定されている国や地域を対象とする場合を例示したが、道路交通法で車両の右側通行が規定されている国や地域を対象としても良い。
仮想区画線生成処理において複数の仮想区画線を統合して一の仮想区画線を生成する場合に、例えば始点s1と終点f1とを接続する仮想区画線v1として3本の仮想区画線v1a,v1b,v1cを生成すると、3本の仮想区画線v1a,v1b,v1cを纏めて平均化して仮想区画線v1を生成しても良いし、2本の仮想区画線v1a,v1bを平均化して仮想区画線v1abを生成し、その生成した仮想区画線v1ab,v1cを平均化して仮想区画線v1を生成しても良い。即ち、2本の仮想区画線の平均化を繰返して最終的に1本の仮想区画線を生成しても良い。
【0051】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。