(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】エレベーター装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/02 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B66B7/02 D
(21)【出願番号】P 2023543583
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2021031391
(87)【国際公開番号】W WO2023026438
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠治
(72)【発明者】
【氏名】宮川 健
(72)【発明者】
【氏名】山田 智己
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/140673(WO,A1)
【文献】特表2018-535167(JP,A)
【文献】特開2012-86960(JP,A)
【文献】特開2005-35680(JP,A)
【文献】特開2016-155628(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0023533(US,A1)
【文献】特開平4-226289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路の内部に固定されたブラケットと、
前記ブラケットにフランジ部で接するガイドレールと、
一端部が前記ブラケットに固定され、他端部が前記ガイドレールの前記フランジ部に前記ブラケットとは反対側で隣接し、前記他端部において前記フランジ部を向く押圧面を有するレールクリップと、
前記レールクリップの前記他端部に設けられ、前記押圧面から突出したクサビガイドと、
前記フランジ部と前記クサビガイドとの間に配置され、前記フランジ部に接する第1面と前記クサビガイドに接する第2面とを有するクサビと、
を備え、
前記レールクリップは、前記クサビガイドと前記クサビとを介して前記ガイドレールを前記ブラケットに押し付け、
前記クサビにおいて、前記第2面が前記第1面に対して傾斜し、前記ガイドレールの長手方向の下側へ向かうにつれて前記第1面と前記第2面との距離が小さくなるエレベーター装置。
【請求項2】
前記クサビガイドは、前記クサビの前記第2面に接するガイド面を有し、
前記ガイド面は、前記ガイドレールの長手方向の下側へ向かうにつれて前記レールクリップの前記押圧面との距離が大きくなる請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項3】
前記第2面は、前記ガイドレールの長手方向に沿った谷型を形成する一対の拘束面を有し、
前記ガイド面は、前記ガイドレールの長手方向に沿った山型を形成するよう湾曲し、前記一対の拘束面の各々に接する請求項2に記載のエレベーター装置。
【請求項4】
前記クサビガイドは、前記レールクリップの前記押圧面を赤道面とした半球面を有する請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項5】
前記第2面は、前記ガイドレールの長手方向に沿った谷型を形成する一対の拘束面を有し、
前記半球面は、前記一対の拘束面の各々に接する請求項4に記載のエレベーター装置。
【請求項6】
前記レールクリップの他端部に設けられ、前記クサビに対して前記ガイドレールの長手方向の上側で前記押圧面から突出する第1ストッパと、
前記レールクリップの他端部に設けられ、前記クサビに対して前記ガイドレールの長手方向の下側で前記押圧面から突出する第2ストッパと、
を備えた請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のエレベーター装置。
【請求項7】
前記第1ストッパは、前記ガイドレールの長手方向において前記第2ストッパから前記クサビの長さよりも離れた距離に存在する請求項6に記載のエレベーター装置。
【請求項8】
前記第1ストッパおよび前記第2ストッパのうちいずれか一方と前記クサビとに着脱自在にねじ込まれる締結用ボルト、
を更に備えた請求項6または請求項7に記載のエレベーター装置。
【請求項9】
前記ブラケットと前記レールクリップとの間に配置されたクサビホルダを更に備え、
前記クサビホルダは、
前記レールクリップと共に前記ブラケットに取り付けられた取付部と、
前記取付部から前記クサビの側に伸びた第1ガイド部と、
前記第1ガイド部の前記クサビを向く面から延び、前記クサビに対して前記ガイドレールの長手方向の上側に位置する第1ストッパ部と、
前記第1ガイド部の前記クサビを向く面から延び、前記クサビに対して前記ガイドレールの長手方向の下側に位置する第2ストッパ部と、
を有する請求項1または請求項2に記載のエレベーター装置。
【請求項10】
前記クサビホルダは、
前記第1ストッパ部の端部から前記第2ストッパ部の端部にわたる第2ガイド部、
を更に有し、
前記クサビは、前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間に配置された請求項9に記載のエレベーター装置。
【請求項11】
前記第1ストッパ部および前記第2ストッパ部のうちいずれか一方と前記クサビとに着脱自在にねじ込まれる締結用ボルト、
を更に備えた請求項9または請求項10に記載のエレベーター装置。
【請求項12】
前記クサビホルダは、
前記クサビホルダの側面から前記レールクリップの方向に延びた延出部と、前記延出部の端部から前記レールクリップの側に延びて前記レールクリップに対して前記クサビとは反対側に隣接するカバー部と、を有するクリップカバー、
を有する請求項9から請求項11のいずれか一項に記載のエレベーター装置。
【請求項13】
前記クサビの前記第2面と前記クサビガイドとの間の静止摩擦係数が、前記フランジ部と前記クサビの前記第1面との間の静止摩擦係数よりも小さい請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のエレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーター装置を開示する。当該エレベーター装置によれば、ガイドレール支持具は、ブラケットと共にガイドレールを支持する支持力を容易に調整し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエレベーター装置において、支持力は、ガイドレールの自重を支えることができる力よりも大きい必要がある。一方で、支持力は、昇降路の内壁の変形による力のひずみが発生した場合に、当該力のひずみを解消する方向にブラケットがガイドレールに対して移動し得る力よりも小さい必要がある。このため、ガイドレールを取り付ける際、支持力を調整する作業に時間がかかる。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、ガイドレールの取り付け作業を容易にすることができるエレベーター装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーター装置は、昇降路の内部に固定されたブラケットと、前記ブラケットにフランジ部で接するガイドレールと、一端部が前記ブラケットに固定され、他端部が前記ガイドレールの前記フランジ部に前記ブラケットとは反対側で隣接し、前記他端部において前記フランジ部を向く押圧面を有するレールクリップと、前記レールクリップの前記他端部に設けられ、前記押圧面から突出したクサビガイドと、前記フランジ部と前記クサビガイドとの間に配置され、前記フランジ部に接する第1面と前記クサビガイドに接する第2面とを有するクサビと、を備え、前記レールクリップは、前記クサビガイドと前記クサビとを介して前記ガイドレールを前記ブラケットに押し付け、前記クサビにおいて、前記第2面が前記第1面に対して傾斜し、前記ガイドレールの長手方向の下側へ向かうにつれて前記第1面と前記第2面との距離が小さくなる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、エレベーター装置は、フランジ部とクサビガイドとの間に配置され、フランジ部に接する第1面とクサビガイドに接する第2面とを有するクサビを備える。当該クサビにおいて、第2面が第1面に対して傾斜し、ガイドレールの長手方向の下側へ向かうにつれて第1面と第2面との距離が小さくなる。このため、ガイドレールの取り付け作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1におけるエレベーター装置の概要を示す図である。
【
図2】実施の形態1におけるエレベーター装置のブラケットとガイドレールの一部とレール支持ユニットの斜視図である。
【
図3】実施の形態1におけるエレベーター装置のレール支持ユニットの分解斜視図である。
【
図4】実施の形態1におけるエレベーター装置のレール支持ユニットを分解した斜視図である。
【
図5】実施の形態1におけるエレベーター装置のクサビホルダの斜視図である。
【
図6】実施の形態1におけるエレベーター装置のレール支持ユニットの一部の分解斜視図である。
【
図7】実施の形態1におけるエレベーター装置のレール支持ユニットの一部の斜視図である。
【
図8】実施の形態1におけるエレベーター装置の要部を模式的に表した図である。
【
図9】実施の形態1におけるエレベーター装置の要部を模式的に表した図である。
【
図10】実施の形態1におけるエレベーター装置の要部を模式的に表した図である。
【
図11】実施の形態1におけるエレベーター装置のガイドレールに与えられる摩擦力の変化を示す図である。
【
図12】実施の形態1におけるエレベーター装置のガイドレールに与えられる摩擦力の変化を示す図である。
【
図13】実施の形態2におけるエレベーター装置のクサビホルダの斜視図である。
【
図14】実施の形態2におけるエレベーター装置のブラケットとガイドレールの一部とレール支持ユニットの斜視図である。
【
図15】実施の形態3におけるエレベーター装置のブラケットとガイドレールの一部とレール支持ユニットの斜視図である。
【
図16】実施の形態3におけるエレベーター装置のレール支持ユニットの分解斜視図である。
【
図17】実施の形態3におけるエレベーター装置のレール支持ユニットの一部の分解斜視図である。
【
図18】実施の形態3におけるエレベーター装置のレール支持ユニットの一部の斜視図である。
【
図19】実施の形態3におけるエレベーター装置の変形例のレール支持ユニットの一部の分解斜視図である。
【
図20】実施の形態3におけるエレベーター装置の変形例のレール支持ユニットの一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1におけるエレベーター装置の概要を示す図である。
【0011】
図1のエレベーター装置1において、昇降路2は、図示されない建築物の各階を貫く。
【0012】
複数のブラケット3は、昇降路2の内部において、上下方向に間隔をあけてそれぞれ配置される。例えば、複数のブラケット3の各々は、図示されない梁を介して昇降路2の内壁に固定される。
【0013】
一対のガイドレール4の各々は、複数のレールが繋がれることで形成される。一対のガイドレール4の各々は、昇降路2において長手方向が鉛直方向を向く。一対のガイドレール4の各々は、フランジ部4aと頭部4bとを備える。一対のガイドレール4の各々は、フランジ部4aにおいて複数のブラケット3に接する。一対のガイドレール4の各々において、頭部4bは、昇降路2の中心方向を向く。
【0014】
複数のレール支持ユニット5は、複数のブラケット3にそれぞれ固定される。複数のレール支持ユニット5の各々は、一対のガイドレール4のいずれか一方におけるフランジ部4aを複数のブラケット3のいずれかに押し付ける。複数のレール支持ユニット5の各々は、対応するブラケット3と共に当該ガイドレール4を鉛直方向に支持する。複数のレール支持ユニット5は、ガイドレール4がブラケット3から離れる方向へ移動することを妨げる。
【0015】
かご6は、昇降路2の内部に設けられる。かご6は、かご枠7と防振ゴム8とかご室9と複数のガイド装置10とを備える。例えば、かご枠7は、四方枠である。かご枠7は、一対のガイドレール4の間において、一対のガイドレール4の各々に隣接する。防振ゴム8は、かご枠7の下側の枠体の上面に設けられる。かご室9は、防振ゴム8の上に設けられる。かご室9は、防振ゴム8を介してかご枠7に支持される。複数のガイド装置10の各々は、かご枠7における上側の枠体または下側の枠体に固定される。複数のガイド装置10は、一対のガイドレール4のうちいずれかの頭部4bにそれぞれ隣接する。
【0016】
かご6は、複数のガイド装置10を介して一対のガイドレール4に案内されながら昇降路2の内部を上下に移動する。
【0017】
一対のガイドレール4の各々は、複数のブラケット3を介して昇降路2の内部の梁に支えられる。この際、ガイドレール4は、複数のブラケット3と複数のレール支持ユニット5とによって、自重を支持される。複数のブラケット3の各々は、ガイドレール4がブラケット3を基準として下方向に移動することを抑制する。このため、ガイドレール4の下部において、ガイドレール4の自重に起因した軸圧縮応力の発生が抑制される。その結果、当該軸圧縮応力によるガイドレール4の座屈の発生が抑制される。
【0018】
一般的に、建築物において、竣工時からの居住空間の重量が増加することが原因で、各階床がそれぞれ沈下していく。この際、昇降路2の内壁は、鉛直方向に圧縮される。複数のブラケット3の間隔は、竣工時に比べて小さくなる。複数のブラケット3の各々は、ガイドレール4が相対的に上方向へ移動するような静止摩擦力または動摩擦力をガイドレール4に対して与える。即ち、複数のブラケット3の各々は、ガイドレール4に対して長手方向の圧縮応力を与える。レール支持ユニット5は、ブラケット3に対してガイドレール4が上方向へ移動した場合、ガイドレール4をブラケット3に押し付ける力が弱くなるよう構成される。このため、ガイドレール4がブラケット3に対して相対的に上方向に移動することを容易にする。
【0019】
次に、
図2と
図3とを用いて、ガイドレール4がブラケット3とレール支持ユニット5とに支持される構造を説明する。
図2は実施の形態1におけるエレベーター装置のブラケットとガイドレールの一部とレール支持ユニットの斜視図である。
図2は、複数のブラケット3のうちの1つを示す。
図2は、複数のレール支持ユニット5のうち2つを示す。
図3は実施の形態1におけるエレベーター装置のレール支持ユニットの分解斜視図である。
図3には、ブラケット3が省略される。
図3において、ガイドレール4の長手方向の紙面手前側が、昇降路2の下側である。
【0020】
図2に示されるように、ガイドレール4の長手方向に垂直な断面においてガイドレール4の形状は、T字型である。
【0021】
複数のレール支持ユニット5は、ガイドレール4の頭部4bを挟んだ両側に設けられる。複数のレール支持ユニット5の各々は、同じ構成を備えるため、1つのレール支持ユニット5について説明する。レール支持ユニット5は、レールクリップ11とクサビホルダ12と固定ボルト13とを備える。
【0022】
レールクリップ11は、板状の鋼材が曲げられることで形成される。例えば、レールクリップ11の断面は、Z字型である。レールクリップ11は、固定部11aと湾曲部11bと押圧部11cとを備える。
【0023】
固定部11aは、レールクリップ11の一端部である。固定部11aは、図示されない固定用の穴を備える。湾曲部11bは、固定部11aの端から斜めに延びる。押圧部11cは、レールクリップ11の他端部である。押圧部11cは、湾曲部11bの固定部11aとは反対側の端から固定部11aと平行に延びる。押圧部11cのガイドレール4の側の端部は、フランジ部4aに対してブラケット3と反対側でフランジ部4aに隣接する。押圧部11cは、押圧面11dを有する。押圧面11dは、押圧部11cの当該端部におけるフランジ部4aを向く面である。
【0024】
クサビホルダ12は、ブラケット3とレールクリップ11との間に配置される。クサビホルダ12の一部は、フランジ部4aとレールクリップ11の押圧部11cとの間に配置される。クサビホルダ12は、図示されない固定用の穴を備える。
【0025】
固定ボルト13は、レールクリップ11の固定用の穴とクサビホルダ12の固定用の穴とを貫通して、ブラケット3にねじ込まれる。即ち、固定ボルト13は、レールクリップ11とクサビホルダ12とを共締めすることで、これらをブラケット3に固定する。
【0026】
図3に示されるように、レール支持ユニット5は、クサビガイド14とクサビ15とを更に備える。
【0027】
クサビガイド14は、レールクリップ11の押圧部11cにおける押圧面11dに設けられる。クサビガイド14は、押圧面11dからフランジ部4aの側に突出する。例えば、クサビガイド14は、ボルトによってレールクリップ11に取り付けられる。
【0028】
クサビ15は、フランジ部4aとクサビガイド14との間に配置される。クサビ15は、クサビホルダ12に周囲を囲まれるように配置される。
【0029】
レール支持ユニット5が設置された状態において、クサビ15は、フランジ部4aとクサビガイド14とにそれぞれ接する。この状態において、レールクリップ11の湾曲部11bと押圧部11cとは、固定部11aを支点としてフランジ部4aから離れる方向にたわむ。レールクリップ11の全体が板バネとして作用することで、押圧部11cには、フランジ部4aの側への弾性力が働く。当該弾性力が発生することで、押圧部11cは、クサビガイド14とクサビ15とを介して、フランジ部4aに対しブラケット3への方向の支持力Fを与える。フランジ部4aは、ブラケット3に支持力Fで押し付けられる。フランジ部4aとブラケット3との間には、支持力Fに由来する静止摩擦力が発生する。フランジ部4aは、ブラケット3との間に発生する静止摩擦力によって上下方向に支持される。
【0030】
固定ボルト13がブラケット3にねじ込まれる部分の長さが長いほど、レールクリップ11のたわみ量が大きくなる。レールクリップ11のたわみ量が大きくなるほど、支持力Fが大きくなる。このため、ブラケット3が支持される力が大きくなる。なお、固定ボルト13には、レールクリップ11に与える力を調整することで、レールクリップ11のたわみ量を調整するためのバネが設けられてもよい。
【0031】
次に、
図4と
図5とを用いて、クサビホルダ12を説明する。
図4は実施の形態1におけるエレベーター装置のレール支持ユニットを分解した斜視図である。
図4において、レールクリップ11とクサビガイド14とは描写されない。
図4において、ガイドレール4の長手方向の紙面下側が、昇降路2の下側である。
図5は実施の形態1におけるエレベーター装置のクサビホルダの斜視図である。
【0032】
図4に示されるように、クサビホルダ12は、取付部12aと第1ガイド部12bと第1ストッパ部12cと第2ストッパ部12dと第2ガイド部12eとを有する。レール支持ユニット5が設置された状態において、第1ガイド部12bと第1ストッパ部12cと第2ストッパ部12dと第2ガイド部12eとは、クサビ15を囲む。
【0033】
取付部12aは、
図4には図示されないブラケット3に接する。取付部12aには、固定ボルト13が通される。
【0034】
第1ガイド部12bは、取付部12aからフランジ部4aの側に延びる。即ち、第1ガイド部12bは、クサビ15の側に延びる。
【0035】
第1ストッパ部12cは、第1ガイド部12bのクサビ15を向く面から垂直に延びる。第1ストッパ部12cは、クサビ15に対してガイドレール4の長手方向の上側に位置する。
【0036】
第2ストッパ部12dは、第1ガイド部12bのクサビ15を向く面から垂直に延びる。第2ストッパ部12dは、クサビ15に対してガイドレール4の長手方向の下側に位置する。例えば、第2ストッパ部12dは、ガイドレール4の長手方向におけるクサビ15の長さの2倍の距離だけ第1ストッパ部12cから離れた位置に設けられる。
【0037】
第2ガイド部12eは、第1ストッパ部12cの第1ガイド部12bとは反対側の端部から第2ストッパ部12dの第1ガイド部12bとは反対側の端部にわたって設けられる。第2ガイド部12eは、第1ガイド部12bからクサビ15の幅だけ離れた位置に設けられる。
【0038】
第1ガイド部12bと第1ストッパ部12cと第2ストッパ部12dと第2ガイド部12eとは、スリット空間12fを形成する。スリット空間12fにおいて、クサビ15は、ガイドレール4の長手方向へ移動可能に配置される。スリット空間12fにおいて、第1ストッパ部12cおよび第2ストッパ部12dのうち少なくとも一方とクサビ15との間には、隙間が形成される。例えば、ガイドレール4の長手方向における当該隙間の最大長さは、当該長手方向におけるクサビ15の寸法長さに等しい。
【0039】
スリット空間12fにおいて、第1ガイド部12bおよび第2ガイド部12eのうち少なくとも一方とクサビ15との間には、微小な隙間が形成されるまたは隙間が形成されない。第1ガイド部12bおよび第2ガイド部12eは、ガイドレール4の長手方向へクサビ15の移動を案内する。即ち、第1ガイド部12bおよび第2ガイド部12eは、第1ガイド部12bと第2ガイド部12eとを結ぶ方向へのクサビ15の移動を拘束する。
【0040】
図5は、ブラケット3に取り付けられる前の状態のクサビホルダ12を示す。クサビホルダ12には、締結用ボルト16が設けられる。
【0041】
締結用ボルト16は、クサビホルダ12の第2ストッパ部12dに設けられたネジ穴とクサビ15に設けられたネジ穴とにねじ込まれる。締結用ボルト16は、クサビホルダ12に対してクサビ15を着脱自在に締結する。締結用ボルト16は、クサビホルダ12に対するクサビ15の相対位置を固定する。締結用ボルト16は、クサビ15にねじ込まれる長さが調整されることで、クサビホルダ12に対するクサビ15の相対位置を変化させる。
【0042】
例えば、レール支持ユニット5が設置される際に、クサビホルダ12は、締結用ボルト16がクサビホルダ12とクサビ15とを締結した状態でブラケット3に固定される。クサビホルダ12とクサビ15との相対位置が固定された状態において、
図5には図示されないレールクリップ11の支持力Fが調整される。レールクリップ11の支持力Fが調整された後、締結用ボルト16は、レール支持ユニット5から取り外される。クサビ15は、
図5には図示されないガイドレール4の長手方向に移動可能となる。
【0043】
次に、
図6と
図7とを用いて、クサビガイド14とクサビ15とを説明する。
図6は実施の形態1におけるエレベーター装置のレール支持ユニットの一部の分解斜視図である。
図6において、紙面下側が、ガイドレール4の長手方向の下側である。
図7は実施の形態1におけるエレベーター装置のレール支持ユニットの一部の斜視図である。
図7において、紙面手前側が、ガイドレール4の長手方向の下側である。
【0044】
図6に示されるように、クサビガイド14は、設置面14aとガイド面14bとを有する。
【0045】
設置面14aは、レールクリップ11の押圧面11dに接する。設置面14aは、押圧面11dに平行である。
【0046】
ガイド面14bは、平らな面である。ガイド面14bは、設置面14aとは反対を向く。ガイド面14bは、設置面14aに対して傾斜する。即ち、ガイド面14bは、押圧面11dに対して傾斜する。ガイド面14bと設置面14aとがなす角度は、ガイド面14bと押圧面11dとがなす角度に等しい。クサビガイド14の厚さであるガイド面14bと押圧面11dとの距離は、ガイドレール4の長手方向における下側へ向かうにつれて大きくなる。
【0047】
例えば、クサビ15は、六面体である。クサビ15は、第1面15aと第2面15bとを有する。第1面15aは、平らな面である。第2面15bは、第1面15aとは反対を向く。第2面15bは、第1面15aに対して傾斜する。第2面15bと第1面15aとがなす角度は、ガイド面14bと押圧面11dとがなす角度に等しい。
【0048】
レール支持ユニット5が設置された状態において、クサビ15は、第1面15aが
図6には図示されないフランジ部4aと接する姿勢で配置される。この状態において、クサビ15の厚さである第1面15aと第2面15bとの距離は、ガイドレール4の長手方向における下側へ向かうにつれて小さくなる。
【0049】
図7に示されるように、レール支持ユニット5が設置された状態において、クサビ15の第2面15bは、クサビガイド14のガイド面14bと接する。この状態において、第1面15aは、押圧面11dと平行である。
【0050】
次に、
図8を用いて、ガイドレール4とレール支持ユニット5との相対位置が変化した場合に、ガイドレール4に与えられる力を説明する。
図8は実施の形態1におけるエレベーター装置の要部を模式的に表した図である。
図8において、紙面下側が、ガイドレール4の長手方向の下側である。
【0051】
図8は、ブラケット3とフランジ部4aとレール支持ユニット5との断面を模式的に示す。クサビ15と第1ストッパ部12cとの間には、隙間が存在する。クサビ15と第2ストッパ部12dとの間には、隙間が存在する。
図8には、模擬バネSが示される。模擬バネSは、レールクリップ11のたわみ量に比例する支持力Fを表現するために描写される。
【0052】
図8に示されるように、ガイドレール4が取り付けられた状態において、レールクリップ11は、クサビガイド14とクサビ15とを介してフランジ部4aに支持力Fを与える。
【0053】
クサビガイド14のガイド面14bとクサビ15の第2面15bとは、面接触する。ガイド面14bと第2面15bとの接触部分の静止摩擦係数は、μ1である。
【0054】
フランジ部4aとクサビ15の第1面15aとは面接触する。フランジ部4aと第1面15aとの接触部分の静止摩擦係数は、μ2である。μ2は、μ1に対して十分に大きい。支持力Fが発生する場合、フランジ部4aと第1面15aとの間に発生する最大静止摩擦力の大きさは、μ2*Fである。
【0055】
ブラケット3とガイドレール4のフランジ部4aとは面接触する。ブラケット3とフランジ部4aとの接触部分の静止摩擦係数は、μ3である。μ3は、μ1に対して十分に大きい。支持力Fが発生する場合、ブラケット3とフランジ部4aとの間に発生する最大静止摩擦力の大きさは、μ3*Fである。
【0056】
図8に示される状態から、ガイドレール4が自重によってブラケット3に対して下方向へ動く場合、ガイドレール4は、ブラケット3から上向きの静止摩擦力を受ける。クサビ15は、ガイドレール4と共に下方向へ移動し得る。クサビガイド14とクサビ15との間の摩擦力が無視され得るため、ガイドレール4とクサビ15との間の静止摩擦力は、ガイドレール4の自重を上方向へ支持する力に寄与しない。このため、
図8において、ガイドレール4の自重のうちの分散自重Mは、最大でμ3*Fの大きさの力によって支持される。分散自重Mは、ガイドレール4の自重のうち1つのレール支持ユニット5が負担する重さである。例えば、分散自重Mは、ガイドレール4の自重を複数のレール支持ユニット5の数で割った重さである。レール支持ユニット5は、ガイドレール4の自重のうち対応する長さの分散自重Mを支持する。
【0057】
ある瞬間の最大静止摩擦力μ3*Fの値が分散自重Mの値より小さい場合、ガイドレール4は、ブラケット3に対して下方向に移動する。クサビ15とガイドレール4との間の静止摩擦力によって、クサビ15は、ガイドレール4に追従して下方向に移動する。クサビガイド14とクサビ15との間に発生する静止摩擦力が無視され得るため、クサビ15は、クサビガイド14に対して下方向に移動する。クサビガイド14は、クサビ15の第2面15bの傾斜に沿って、フランジ部4aから離れる方向へ移動する。レールクリップ11の押圧部11cは、クサビガイド14に追従してフランジ部4aから離れる方向に移動する。このため、支持力Fは、大きくなる。即ち、ガイドレール4を上方に支持する最大静止摩擦力μ3*Fは、大きくなる。ガイドレール4が下方向へ準静的に移動すると仮定した場合、ガイドレール4は、分散自重Mの値とμ3*Fの値とが等しくなる位置で停止する。
【0058】
図8に示される状態から、建築物の階床の沈下によって、ブラケット3は、ガイドレール4に対して下方向へ移動しようとする。即ち、ガイドレール4がブラケット3に対して上方向へ移動しようとする。ガイドレール4がブラケット3に対して上方向へ動く場合、ガイドレール4は、ブラケット3から下向きの静止摩擦力を受ける。クサビガイド14とクサビ15との間の摩擦力が無視され得るため、ガイドレール4とクサビ15との間の静止摩擦力は、ガイドレール4に与えられる下方向の力に寄与しない。このため、
図8において、ブラケット3に対してガイドレール4が上方向に移動することを妨げる力の最大値は、μ3*Fである。
【0059】
ある瞬間の最大静止摩擦力μ3*Fの値がガイドレール4に与えられる下方向の力より小さい場合、ガイドレール4は、ブラケット3に対して上方向に移動する。クサビ15とガイドレール4との間の静止摩擦力によって、クサビ15は、ガイドレール4に追従して上方向に移動する。クサビガイド14とクサビ15との間に発生する静止摩擦力が無視され得るため、クサビ15は、クサビガイド14に対して上方向に移動する。クサビガイド14は、クサビ15の第2面15bの傾斜に沿って、フランジ部4aに近づく方向へ移動する。レールクリップ11の押圧部11cは、クサビガイド14に追従してフランジ部4aに近づく方向へ移動する。このため、支持力Fは、小さくなる。即ち、ガイドレール4を上方に支持する最大静止摩擦力μ3*Fは小さくなる。
【0060】
この際、階床の沈下によるひずみが解消されるため、ブラケット3がガイドレール4に対して下方向へ移動しようとする力は、ガイドレール4の移動に伴って小さくなる。ガイドレール4が上方向へ準静的に移動すると仮定した場合、ガイドレール4は、ブラケット3がガイドレール4に対して下方向へ移動しようとする力の値とμ3*Fの値とが等しくなる位置で停止する。
【0061】
次に、
図9を用いて、ガイドレール4が下方向に一定距離を移動した場合に、ガイドレール4に加わる力を説明する。
図9は実施の形態1におけるエレベーター装置の要部を模式的に表した図である。
図9において、紙面下側が、ガイドレール4の長手方向の下側である。
【0062】
図9に示されるように、クサビ15の上側の端面は、位置Aに存在する。クサビ15と第1ストッパ部12cとの間には、隙間が存在する。当該隙間の距離は、dである。クサビ15は、第2ストッパ部12dと接する。なお、
図9における位置Bは、第1ストッパ部12cとクサビ15とが接するクサビ15の位置である。
【0063】
図9に示される状態において、第2ストッパ部12dは、クサビ15の下方向への移動を拘束する。クサビ15は、更に下方向へは移動しない。この場合、レールクリップ11が与える支持力は、最大値であるFmaxである。
【0064】
この状態から、ガイドレール4が自重によってブラケット3に対して下方向へ動く(Relative downward motion)場合、ガイドレール4は、ブラケット3から上向きの静止摩擦力を受ける。ガイドレール4は、クサビ15から上向きの静止摩擦力を受ける。このため、ガイドレール4は、最大で(μ2+μ3)*Fmaxの大きさの上方向の力を受ける。
【0065】
図9に示される状態から、ガイドレール4がブラケット3に対して上方向へ動く場合、ガイドレール4は、ブラケット3から最大でμ3*Fmaxの下方向の力を受ける。ガイドレール4は、クサビ15から下方向の力を受けない。
【0066】
次に、
図10を用いて、ガイドレール4が上方向に一定距離を移動した場合に、ガイドレール4に加わる力を説明する。
図10は実施の形態1におけるエレベーター装置の要部を模式的に表した図である。
図10において、紙面下側が、ガイドレール4の長手方向の下側である。
【0067】
図10に示されるように、クサビ15の上側の端面は、位置Bに存在する。クサビ15は、第1ストッパ部12cと接する。クサビ15と第2ストッパ部12dとの間には、隙間が存在する。当該隙間の距離は、dである。
【0068】
図10に示される状態において、第1ストッパ部12cは、クサビ15の上方向への移動を拘束する。クサビ15は、更に上方向へは移動しない。この場合、レールクリップ11が与える支持力は、最小値であるFminである。
【0069】
この状態から、ガイドレール4が自重によってブラケット3に対して上方向へ動く(Relative upward motion)場合、ガイドレール4は、ブラケット3から下向きの静止摩擦力を受ける。ガイドレール4は、クサビ15から下向きの静止摩擦力を受ける。このため、ガイドレール4は、最大で(μ2+μ3)*Fminの大きさの下方向の力を受ける。
【0070】
図10に示される状態から、ガイドレール4がブラケット3に対して下方向へ動く場合、ガイドレール4は、ブラケット3から最大でμ3*Fminの上方向の力を受ける。ガイドレール4は、クサビ15から上方向の力を受けない。
【0071】
次に、
図11と
図12とを用いて、ブラケット3に対するガイドレール4の相対位置とガイドレール4が受ける摩擦力との関係を説明する。
図11は実施の形態1におけるエレベーター装置のガイドレールに与えられる摩擦力の変化を示す図である。
図12は実施の形態1におけるエレベーター装置のガイドレールに与えられる摩擦力の変化を示す図である。
【0072】
図11に示されるグラフは、ガイドレール4がブラケット3に対して下方向へ動こうとするときの、1つのレール支持ユニット5によってガイドレール4に発生する摩擦力(Friction force)の値と、レール支持ユニット5に対するガイドレール4の相対変位量(Rail relative desplacement)と、の関係を表す。
図11において、ガイドレール4の相対変位量の正方向は、ガイドレール4がブラケット3に対して下方向に変位する方向である。
【0073】
グラフにおいて、Aは、クサビ15が位置Aに存在するときのガイドレール4の相対変位量である。Bは、クサビ15が位置Bに存在するときのガイドレール4の相対変位量である。支持力Fの値は、ガイドレール4の相対変位量に比例して増加する。相対変位量がAとなった状態で相対変位量が増加する場合、ガイドレール4には、一定値(μ2+μ3)*Fmaxの摩擦力が生じる。
【0074】
レール支持ユニット5を設置する場合、レール支持ユニット5がガイドレール4の分散自重Mを支持可能なように、レールクリップ11の支持力Fが設定される。この際、レールクリップ11は、以下の式(1)を満たすFminおよびFmaxを取り得る値に設定される。
【0075】
μ3*Fmin<M<(μ2+μ3)*Fmax (1)
【0076】
図12に示されるグラフは、ガイドレール4がブラケット3に対して上方向へ動こうとするときの、1つのレール支持ユニット5によってガイドレール4に発生する摩擦力(Friction force)の値と、レール支持ユニット5に対するガイドレール4の相対変位量(Rail relative desplacement)と、の関係を表す。
図12において、ガイドレール4の相対変位量の正方向は、ガイドレール4がブラケット3に対して上方向に変位する方向である。
【0077】
グラフにおいて、Aは、クサビ15が位置Aに存在するときのガイドレール4の相対変位量である。Bは、クサビ15が位置Bに存在するときのガイドレール4の相対変位量である。支持力Fの値は、ガイドレール4の相対変位量に比例して減少する。相対変位量がBとなった状態で相対変位量が増加する場合、ガイドレール4には、一定値(μ2+μ3)*Fminの摩擦力が生じる。
【0078】
レール支持ユニット5を設置する場合、建築物の階間の沈下が発生したとしてもガイドレール4に加わる圧縮力がガイドレール4を支持する力よりも十分に小さくなるように、レールクリップ11の支持力Fが設定される。すなわち、「ガイドレール4を支持する力>>階間の沈下による圧縮力」が常に成立する。ここで、当該圧縮力の最大値は、(μ2+μ3)*Fminとなる。このため、レールクリップ11の支持力Fは、以下の式(2)を常に満たすFminを取り得る値に設定される。
【0079】
(μ2+μ3)*Fmin<M<(μ2+μ3)*Fmax (2)
【0080】
レール支持ユニット5を設置する場合、レールクリップ11は、式(2)を満たすように設置される。なお、レール支持ユニット5は、圧縮力である(μ2+μ3)*Fminがなるべく小さくなるように設置される。こうすることで、複数の階において階間の沈下が発生し、複数の階で発生した圧縮力がガイドレール4の一部に重畳した場合でも、重畳した圧縮力の値をなるべく小さくすることができる。
【0081】
以上で説明した実施の形態1によれば、エレベーター装置1は、ブラケット3とガイドレール4とレールクリップ11とクサビガイド14とクサビ15とを備える。ガイドレール4の長手方向の下側へ向かうにつれて第1面15aと第2面15bとの間の距離が小さくなる。クサビ15は、ガイドレール4と共に上側または下側に移動し得る。クサビ15が下側に移動した場合、レールクリップ11がガイドレール4を支持する力が大きくなる。クサビが上側に移動した場合、レールクリップ11がガイドレール4を支持する力が小さくなる。このため、ガイドレール4を取り付ける際に、レールクリップ11の支持力は、一定の幅を許容して設定され得る。その結果、ガイドレール4の取り付け作業を容易にすることができる。また、レールクリップ11の適切な支持力は、ブラケット3の表面状態、ガイドレール4の表面状態、ガイドレール4の寸法精度、等の条件の影響を受ける。実施の形態1のエレベーター装置1によれば、当該条件が異なったとしても、レールクリップ11の支持力は、一定の幅を許容して設定され得る。その結果、ガイドレール4の取り付け作業の作業時間を削減することができる。
【0082】
この際、レール支持ユニット5は、ガイドレール4の分散自重Mを支持し得るよう設けられる。このため、特にガイドレール4の下部において、ガイドレール4の荷重が軸圧縮応力として作用することを抑制できる。その結果、当該軸圧縮応力で座屈しないようにガイドレール4の断面積を大きくする必要がなくなる。即ち、ガイドレール4のサイズを小さくすることができる。ガイドレール4の材料費などの、ガイドレール4の設置に必要なコストを削減することができる。また、ガイドレール4は、ブラケット3に対して下方向よりも上方向へ容易に移動できる。建築物の階間の沈下によって、ブラケット3とガイドレール4との間に応力が発生した場合、ガイドレール4は、ブラケット3に対して比較的容易に上方向へ移動できる。即ち、当該応力を容易に解消することができる。その結果、当該応力によってガイドレール4に圧縮応力が蓄積することを抑制できる。その結果、ガイドレール4のサイズを小さくすることができる。
【0083】
また、クサビガイド14は、レールクリップ11の押圧面11dに対して傾斜するガイド面14bを有する。このため、例えば、クサビガイド14とクサビ15との間の静止摩擦力および動摩擦力の値がばらつくことを抑制できる。クサビガイド14は、クサビ15を安定した状態で案内することができる。
【0084】
また、エレベーター装置1は、クサビホルダ12を備える。クサビホルダ12は、第1ストッパ部12cと第2ストッパ部12dとを有する。クサビ15と第1ストッパ部12cとの間およびクサビ15と第2ストッパ部12dとの間のうち少なくとも一方には、隙間が形成される。クサビ15は、第1ストッパ部12cと第2ストッパ部12dとの間をガイドレール4の長手方向に移動できる。クサビ15は、ガイドレール4の長手方向において、第1ストッパ部12cまたは第2ストッパ部12dに移動を拘束される。このため、クサビ15がガイドレール4の長手方向に外れることを抑制することができる。具体的には、クサビ15が大きく移動することで、クサビ15がクサビガイド14に食い込むこと、またはクサビ15がクサビガイド14から抜け気味になることを抑制できる。その結果、ガイドレール4に生じる摩擦力が過少または過大になることを抑制し、当該摩擦力を適切な範囲で管理することができる。
【0085】
また、クサビホルダ12は、第1ガイド部12bと第2ガイド部12eとを有する。第1ガイド部12bと第2ガイド部12eとは、ブラケット3からレールクリップ11への方向に垂直な方向であって、ガイドレール4の長手方向に垂直な方向へのクサビ15の移動を拘束する。このため、クサビ15がレール支持ユニット5から脱落することを抑制できる。
【0086】
また、エレベーター装置1は、締結用ボルト16を備える。締結用ボルト16は、ガイドレール4の取り付け作業の際に、クサビ15が移動することを抑制する。このため、当該作業の際にクサビ15が脱落することを抑制できる。また、例えば、レールクリップ11の支持力Fを調整する際に、クサビ15が移動することを抑制する。このため、レールクリップ11の支持力Fを調整する作業を正確かつ容易に行うことができる。
【0087】
また、クサビガイド14とクサビ15との間の静止摩擦係数μ1は、フランジ部4aとクサビ15との間の静止摩擦係数μ2よりも十分に小さい。このため、ガイドレール4が移動した場合、クサビ15は、容易にガイドレール4に追従して移動し得る。
【0088】
なお、一対のガイドレール4は、かご6に対して、
図1ではない位置に配置されてもよい。一対のガイドレール4は、かご6の背面、側面のいずれの面の方向に設けられてもよい。
【0089】
なお、クサビガイド14は、レールクリップ11にプレス成型が施されることで設けられてもよい。この場合、クサビガイド14は、レールクリップ11と一体成型されてもよい。
【0090】
なお、締結用ボルト16は、第2ストッパ部16dではなく、第1ストッパ部16cにねじ込まれてもよい。
【0091】
なお、エレベーター装置1は、レールが設置されたエレベーター装置であれば、どのようなローピング形式のエレベーター装置であってもよい。エレベーター装置は、レールが設置されたエレベーター装置であれば、かごが自走する形式のエレベーター装置であってもよい。また、レール支持ユニット5は、ガイドレール4が斜めに設置される斜行エレベーター装置に適用されてもよい。
【0092】
実施の形態2.
図13は実施の形態2におけるエレベーター装置のクサビホルダの斜視図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0093】
図13に示されるように、実施の形態2において、クサビホルダ12は、一対のクリップカバー20を更に備える。
【0094】
一対のクリップカバー20の一方は、第1ストッパ部12cから第2ガイド部12eにわたって設けられる。一対のクリップカバー20の他方は、第2ストッパ部12dから第2ガイド部12eにわたって設けられる。一対のクリップカバー20の形状は、クサビホルダ12に対して対称である。以下では、一対のクリップカバー20のうち一方について説明する。
【0095】
例えば、クリップカバー20の材質は、
図13には図示されないレールクリップ11と同じ材質である。クリップカバー20は、延出部20aとカバー部20bとを有する。延出部20aは、第1ストッパ部12cおよび第2ガイド部12eの側面から、レールクリップ11の側に延びる。カバー部20bは、延出部20aのレールクリップ11の側の端部から伸びる。カバー部20bは、レールクリップ11に対してクサビ15とは反対側で隣接する。即ち、クリップカバー20の断面形状は、L字型である。
【0096】
次に、クリップカバー20がレール支持ユニット5に取り付けられた状態を説明する。
図14は実施の形態2におけるエレベーター装置のブラケットとガイドレールの一部とレール支持ユニットの斜視図である。
【0097】
図14に示されるように、レール支持ユニット5が取り付けられた状態において、レールクリップ11は、一対のクリップカバー20の各々と接しない状態で、一対のクリップカバー20の間に配置される。
【0098】
一対のクリップカバー20の各々の形状は、レールクリップ11のたわみ量がレールクリップ11の弾性変形の範囲内である場合、レールクリップ11とカバー部20bとが接触しない形状に設定される。例えば、一対のクリップカバー20の各々の形状は、レールクリップ11が弾性変形から塑性変形に移行するたわみ量となった場合に、レールクリップ11とカバー部20bとが接触する形状に設定される。
【0099】
例えば、地震の発生によってガイドレール4に過剰な負荷が加わった場合、ガイドレール4は、レールクリップ11の押圧部11cに対してブラケット3とは反対方向の力を与える。ガイドレール4が変形してブラケット3とは反対方向の力が過大になった場合、レールクリップ11は、押圧部11cがブラケット3から離れる方向に大きく変形する。この際、クリップカバー20は、レールクリップ11が塑性変形することを抑制する。
【0100】
以上で説明した実施の形態2によれば、エレベーター装置1は、クリップカバー20を有する。このため、仮に当該レールクリップ11の変形が塑性変形となった場合、クサビ15には支持力Fが与えられない。この場合、クサビ15は、クサビホルダ12のスリット空間12fから外れて落下する。クリップカバー20は、クサビ15が落下することを抑制することができる。
【0101】
なお、一対のクリップカバー20の各々の形状は、レールクリップ11のたわみ量がレールクリップ11の弾性変形の範囲内である場合に、レールクリップ11とカバー部20bとが接触する形状に設定されてもよい。この場合、クリップカバー20の各々は、レール支持ユニット5がフランジ部4aに与える支持力Fを増大することができる。
【0102】
なお、クリップカバー20は、第2ガイド部12eから延出してもよい。
【0103】
なお、クサビホルダ12の第1ストッパ部12c、第2ストッパ部12dおよび第2ガイド部12eのうちの少なくとも1つがフランジ部4aに接してもよい。この場合、クサビホルダ12は、地震などの災害が発生した場合に、ガイドレール4が大きく変形することを抑制できる。
【0104】
実施の形態3.
図15は実施の形態3におけるエレベーター装置のブラケットとガイドレールの一部とレール支持ユニットの斜視図である。
図16は実施の形態3におけるエレベーター装置のレール支持ユニットの分解斜視図である。
図17は実施の形態3におけるエレベーター装置のレール支持ユニットの一部の分解斜視図である。
図17において、紙面下側が、ガイドレール4の長手方向の下側である。
図18は実施の形態3におけるエレベーター装置のレール支持ユニットの一部の斜視図である。なお、実施の形態1または実施の形態2の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0105】
図15に示されるように、実施の形態3において、レール支持ユニット5は、実施の形態1におけるクサビホルダ12ではなく、クリップホルダ30を備える。
【0106】
クリップホルダ30は、取付部30aと第1ガイド部30bとを備える。取付部30aは、クサビホルダ12の取付部12aに相当する。第1ガイド部30bは、クサビホルダ12の第1ガイド部12bに相当する。即ち、クリップホルダ30は、実施の形態1におけるクサビホルダ12から第1ストッパ部12cと第2ストッパ部12dと第2ガイド部12eが取り外された形状を有する。
【0107】
図16に示されるように、実施の形態3において、レール支持ユニット5は、クサビガイド31とクサビ32と第1ストッパ33と第2ストッパ34とを備える。
【0108】
図17に示されるように、クサビガイド31は、レールクリップ11の押圧面11dから突出する。例えば、クサビガイド31は、設置面31aにおいて押圧面11dに接する。クサビガイド31は、ガイド面31bを有する。ガイド面31bの形状は、実施の形態1のクサビガイド14のガイド面14bの形状と異なる。ガイド面31bは、
図17には図示されないガイドレール4の長手方向に沿った山型を形成するように湾曲する。ガイド面31bは、ガイド面14bと同様に設置面31aに対して傾斜する。
【0109】
クサビ32は、第1面32aと第2面32bとを有する。第1面32aは、平らな面である。第2面32bは、ガイドレール4の長手方向に沿った谷型を形成するように折れ曲がる。第2面32bは、実施の形態1のクサビ15の第2面15bと同様に、第1面32aに対して傾斜する。
【0110】
第1ストッパ33は、押圧面11dから突出する。例えば、第1ストッパ33は、押圧面11dにボルトによって固定される。第1ストッパ33は、クサビ32に対してガイドレール4の長手方向の上側に位置する。
【0111】
第2ストッパ34は、押圧面11dから突出する。例えば、第2ストッパ34は、押圧面11dにボルトによって固定される。第2ストッパ34は、クサビ32に対してガイドレール4の長手方向の下側に位置する。第2ストッパ34は、ガイドレール4の長手方向において、クサビ32の寸法長さよりも離れた位置に存在する。
【0112】
図18に示されるように、クサビ32における第2面32bには、一対の拘束面32cが形成される。一対の拘束面32cは、
図18には図示されないガイドレール4の長手方向に沿った谷型を形成する。即ち、ガイドレール4の長手方向に垂直な断面におけるクサビ32の形状は、一対の拘束面32cで形成されたV字型である。
【0113】
レール支持ユニット5が設置された状態において、クサビガイド31のガイド面31bは、一対の拘束面32cの各々に接する。一対の拘束面32cは、ガイドレール4の長手方向に垂直な方向であって、かつフランジ部4aから押圧面11dへの方向に垂直な方向へのクサビ32の相対移動を拘束する。即ち、一対の拘束面32cは、クサビ32をガイドレール4の長手方向へ案内する。
【0114】
以上で説明した実施の形態3によれば、エレベーター装置1は、クサビガイド31とクサビ32とを備える。ガイド面31bは、一対の拘束面32cの各々に接する。一対の拘束面32cは、ブラケット3からレールクリップ11への方向に垂直な方向であって、ガイドレール4の長手方向に垂直な方向へのクサビ32の移動を拘束する。このため、例えば、実施の形態1におけるクサビホルダ12を省略した簡易な構成で、クサビ32がレール支持ユニット5から脱落することを抑制できる。また、レール支持ユニット5を取り付ける際に、クサビ32が囲われていないため、クサビ32の位置を容易に調整することができる。また、クサビガイド31とクサビ32との表面精度を管理することで、クサビガイド31とクサビ32との間の静止摩擦係数を小さくすることができる。
【0115】
なお、レール支持ユニット5には、実施の形態1における締結用ボルト16が設けられてもよい。この場合、締結用ボルト16は、第1ストッパ33および第2ストッパ34のうちいずれか一方とクサビ32とにねじ込まれる。締結用ボルト16は、第1ストッパ33および第2ストッパ34に対するクサビ32の相対位置を固定し得る。
【0116】
なお、第1ストッパ33および第2ストッパ34は、レールクリップ11と一体成型されてもよい。また、第1ストッパ33と第2ストッパ34とがレールクリップ11に取り付けられた状態で、ガイドレール4の取り付け作業においてレール支持ユニット5に取り付けられてもよい。このため、第1ストッパ33および第2ストッパ34をレールクリップ11に取り付ける作業を省略することができる。
【0117】
なお、ガイドレール4の長手方向に垂直な面におけるクサビ32の断面は、V字型でなくU字型、およびW字型などの波型であってもよい。例えば、クサビ32の断面がW字型である場合、第2面32bには一対の拘束面32cが2組形成される。この場合、クサビガイド31のガイド面31bの形状は、第2面32bの形状に合わせた形状であってもよい。
【0118】
次に、実施の形態3におけるクサビガイドの変形例を説明する。
図19は実施の形態3におけるエレベーター装置の変形例のレール支持ユニットの一部の分解斜視図である。
図19において、紙面下側が、ガイドレール4の長手方向の下側である。
図20は実施の形態3におけるエレベーター装置の変形例のレール支持ユニットの一部の斜視図である。
【0119】
図19に示されるように、変形例において、レール支持ユニット5は、クサビガイド35を有する。
【0120】
クサビガイド35の形状は、半球である。クサビガイド35は、設置面35aとガイド面35bとを有する。設置面35aの形状は円である。設置面35aは、クサビガイド35の半球における赤道面である。ガイド面35bの形状は、半球の表面である。
【0121】
図20に示されるように、ガイド面35bは、クサビ32における一対の拘束面32cの各々と接する。
【0122】
以上で説明した実施の形態3の変形例によれば、エレベーター装置1は、クサビガイド35を備える。クサビガイド35は、半球面を有する。このため、例えば、実施の形態3のクサビガイド31と比較して、レール支持ユニット5を簡素な構成とすることができる。
【0123】
なお、ガイドレール4の長手方向に垂直な面におけるクサビ32の断面は、V字型でなくU字型、およびW字型などの波型であってもよい。例えば、クサビ32の断面がW字型である場合、第2面32bには一対の拘束面32cが2組形成される。この場合、2つのクサビガイド35が設けられてもよい。
【0124】
なお、クサビガイド35の形状は、断面が楕円となる形状であってもよい。この場合、クサビガイド35に対してクサビ32が回転することを抑制することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上のように、本開示におけるエレベーター装置は、ガイドレールを備えるエレベーターに利用できる。
【符号の説明】
【0126】
1 エレベーター装置、 2 昇降路、 3 ブラケット、 4 ガイドレール、 4a フランジ部、 4b 頭部、 5 レール支持ユニット、 6 かご、 7 かご枠、 8 防振ゴム、 9 かご室、 10 ガイド装置、 11 レールクリップ、 11a 固定部、 11b 湾曲部、 11c 押圧部、 11d 押圧面、 12 クサビホルダ、 12a 取付部、 12b 第1ガイド部、 12c 第1ストッパ部、 12d 第2ストッパ部、 12e 第2ガイド部、 12f スリット空間、 13 固定ボルト、 14 クサビガイド、 14a 設置面、 14b ガイド面、 15 クサビ、 15a 第1面、 15b 第2面、 16 締結用ボルト、 20 クリップカバー、 20a 延出部、 20b カバー部、 30 クリップホルダ、 30a 取付部、 30b 第1ガイド部、 31 クサビガイド、 31a 設置面、 31b ガイド面、 32 クサビ、 32a 第1面、 32b 第2面、 32c 拘束面、 33 第1ストッパ、 34 第2ストッパ、 35 クサビガイド、 35a 設置面、 35b ガイド面