(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】送光装置および通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/112 20130101AFI20240925BHJP
【FI】
H04B10/112
(21)【出願番号】P 2023543602
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2021031475
(87)【国際公開番号】W WO2023026462
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】高田 紘也
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 藤男
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/004324(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168598(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/188766(WO,A1)
【文献】特開平10-163982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/112
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射された光が照射される複数の変調領域が設定される変調部を有し、照射された前記光の位相を、前記変調部に設定された複数の前記変調領域の各々で変調する空間光変調器と、
前記空間光変調器の前記変調部に設定された複数の前記変調領域の各々で変調された変調光の光路に配置され、複数の前記変調領域の各々で変調された前記変調光を互いに異なる偏光状態に変換する波長板と、
互いに異なる偏光状態に変換された前記変調光が照射される曲面状の反射面を有し、互いに異なる偏光状態に変換された前記変調光を、前記反射面の曲率に応じた投射角で反射する曲面ミラーと、を備える送光装置。
【請求項2】
複数の前記変調領域の境界のうち少なくともいずれかに配置され、複数の前記変調領域の各々で変調された前記変調光が混ざり合うことを防ぐ隔壁を備える請求項1に記載の送光装置。
【請求項3】
前記光源は、
第1出射器と第2出射器とによって構成され、
前記空間光変調器の前記変調部は、
前記第1出射器から出射された光が照射される第1変調領域と、前記第2出射器から出射された光が照射される第2変調領域とに分割される請求項1または2に記載の送光装置。
【請求項4】
前記光源は、
第1出射器、第2出射器、第3出射器、および第4出射器によって構成され、
前記空間光変調器の前記変調部は、
前記第1出射器および前記第2出射器から出射された光の各々が照射されるサブ領域を含む第1変調領域と、前記第3出射器および前記第4出射器から出射された光の各々が照射されるサブ領域を含む第2変調領域とに分割される請求項1または2に記載の送光装置。
【請求項5】
前記波長板は、
1/2波長板を含み、前記第1変調領域および前記第2変調領域のうちいずれか一方で変調された前記変調光の光路上に設置される請求項3または4に記載の送光装置。
【請求項6】
前記波長板は、
1/4波長板を含み、前記第1変調領域で変調された前記変調光の光路上に設置され、前記第1変調領域で変調された前記変調光を、偏光方向が第1回転方向の円偏光に変換する第1波長板と、
1/4波長板を含み、前記第2変調領域で変調された前記変調光の光路上に設置され、前記第2変調領域で変調された前記変調光を、偏光方向が第2回転方向の円偏光に変換する第2波長板と、によって構成され、
前記第1回転方向と前記第2回転方向とは回転方向が反対である請求項3または4に記載の送光装置。
【請求項7】
前記空間光変調器は、
前記第1変調領域が設定される第1空間光変調器と、前記第2変調領域が設定される第2空間光変調器とによって構成され、
前記第1空間光変調器と前記第2空間光変調器とは、偏光方向が互いに垂直になるように配置される請求項3乃至6のいずれか一項に記載の送光装置。
【請求項8】
前記光源は、
異なる波長帯の光を出射する複数の出射器によって構成される請求項1乃至7のいずれか一項に記載の送光装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の送光装置と、
通信対象から送光された空間光信号を受光する受光装置と、
前記通信対象に向けて送光する空間光信号を形成するためのパターンを前記送光装置の空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域の各々に設定し、前記パターンが設定された前記変調部に光が照射されるように前記送光装置の光源を制御するとともに、前記受光装置によって受光された前記空間光信号に由来する信号を取得する制御装置と、を備える通信装置。
【請求項10】
前記受光装置は、
他の前記通信装置から送光された前記空間光信号を集光する集光器と、
前記集光器によって集光された前記空間光信号のうち受光対象の光信号を受光する複数の受光素子と、
複数の前記受光素子に対応付けて配置され、対応付けられた前記受光素子の受光対象の前記光信号を選択的に通過させる受光フィルタと、を有する請求項9に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間光を用いた通信を実現する送光装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
光空間通信においては、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う。光ファイバを用いた光通信では、偏光を用いた光信号の多重化方式が実現されている。光空間通信においても、多重化された空間光信号を送光し、多重化された空間光信号を分離して受信できれば、通信量を倍増できる。
【0003】
特許文献1には、位相変調型空間光変調素子を用いた通信装置について開示されている。特許文献1のシステムは、送信機と受信装置を含む。特許文献1の受信装置は、送信機から発せられた円偏波の信号光を、位相変調型空間光変調素子の偏光方向に合致する方向の直線偏波の信号光に変換する。特許文献1の装置は、送信機の位置を示す位置情報に基づいて位相画像を生成する。特許文献1の装置は、生成された位相画像を位相変調型空間光変調素子に供給する。特許文献1の装置は、位相変調型空間光変調素子で直線偏波の信号光を回折して集光し、回折して集光した直線偏波の信号光を受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、位相変調型空間光変調素子を用いた投射装置では、変調素子によって偏光方向が決定される。そのため、特許文献1の投射装置は、多重化された空間光信号の投射領域が重なってしまった場合、それらの空間光信号を分離することができなかった。すなわち、特許文献1の手法では、多重化された空間光信号を送受光できなかった。
【0006】
本開示の目的は、多重化された空間光信号を用いた光空間通信を実現できる送光装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の送光装置は、光源と、光源から出射された光が照射される複数の変調領域が設定される変調部を有し、照射された光の位相を、変調部に設定された複数の変調領域の各々で変調する空間光変調器と、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域の各々で変調された変調光の光路に配置され、複数の変調領域の各々で変調された変調光を互いに異なる偏光状態に変換する波長板と、互いに異なる偏光状態に変換された変調光が照射される曲面状の反射面を有し、互いに異なる偏光状態に変換された変調光を、反射面の曲率に応じた投射角で反射する曲面ミラーと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、多重化された空間光信号を用いた光空間通信を実現できる送光装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る通信装置に含まれる送光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図3】第1の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の内部構成を上方の視座から見た一例を示す概念図である。
【
図4】第1の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の空間光変調器の変調部に設定される変調領域の一例について説明するための概念図である。
【
図5】第1の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の空間光変調器の変調部に設定されるパターンの一例について説明するための概念図である。
【
図6】第1の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の内部構成を上方の視座から見た別の一例を示す概念図である。
【
図7】第1の実施形態の通信装置に含まれる送光装置から投射される投射光について説明するための概念図である。
【
図8】第1の実施形態に係る通信装置に含まれる受光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図9】第1の実施形態に係る通信装置に含まれる受光装置による空間光信号の受光の一例を示す概念図である。
【
図10】第1の実施形態に係る通信装置に含まれる受光装置の受光素子に対応付けられたフィルタの一例について説明するための概念図である。
【
図11】第1の実施形態に係る通信装置に含まれる受光装置の受光素子に対応付けられたフィルタの別の一例について説明するための概念図である。
【
図12】第1の実施形態に係る通信装置に含まれる受光装置の受信回路の構成の一例を示すブロック図である。
【
図13】第2の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図14】第2の実施形態に係る通信装置に含まれる送光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図15】第2の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の内部構成を上方の視座から見た一例を示す概念図である。
【
図16】第2の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の空間光変調器の変調部に設定された変調領域に照射される光の照射範囲の一例について説明するための概念図である。
【
図17】第2の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の内部構成を上方の視座から見た別の一例を示す概念図である。
【
図18】第2の実施形態の通信装置に含まれる送光装置が投射する投射光について説明するための概念図である。
【
図19】第2の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の第1空間光変調器および第2空間光変調器の変調部に設定された変調領域を分割する一例について説明するための概念図である。
【
図20】第3の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図21】第3の実施形態に係る通信装置に含まれる送光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図22】第3の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の内部構成を上方の視座から見た一例を示す概念図である。
【
図23】第3の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の第1空間光変調器および第2空間光変調器の変調部の偏光方向の一例について説明するための概念図である。
【
図24】第3の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の内部構成を上方の視座から見た別の一例を示す概念図である。
【
図25】第3の実施形態の通信装置に含まれる送光装置が投射する投射光について説明するための概念図である。
【
図26】第3の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の第1空間光変調器および第2空間光変調器の変調部に設定された変調領域に照射される光の照射範囲の一例について説明するための概念図である。
【
図27】第3の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の第1空間光変調器および第2空間光変調器の変調部に設定された変調領域を分割する一例について説明するための概念図である。
【
図28】第4の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図29】第4の実施形態に係る通信装置に含まれる送光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図30】第4の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の内部構成を上方の視座から見た一例を示す概念図である。
【
図31】第4の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の空間光変調器の変調部に設定された変調領域に照射される光の照射範囲の一例について説明するための概念図である。
【
図32】第4の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の内部構成を上方の視座から見た別の一例を示す概念図である。
【
図33】第4の実施形態の通信装置に含まれる送光装置が投射する投射光について説明するための概念図である。
【
図34】第4の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の空間光変調器の構成の一例について説明するための概念図である。
【
図35】第4の実施形態に係る通信装置に含まれる受光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図36】第4の実施形態に係る通信装置に含まれる受光装置の受光素子に対応付けられたフィルタの一例について説明するための概念図である。
【
図37】第4の実施形態の通信装置に含まれる送光装置の空間光変調器の変調部に設定された変調領域に照射される光の照射範囲の一例について説明するための概念図である。
【
図38】第4の実施形態の通信装置に含まれる送光装置を用いて、偏光多重と波長多重とを組み合わせた効果について説明するための概念図である。
【
図39】第5の実施形態に係る送光装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図40】各実施形態の制御や処理を実現するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0011】
以下の実施形態の説明に用いる全図において、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、光や信号の向きを限定するものではない。また、図面中の光の軌跡を示す線は、概念的なものであり、実際の光の進行方向や状態を正確に表すものではない。例えば、図面においては、空気と物質との界面における屈折や反射、回折、拡散などによる光の進行方向や状態の変化を省略したり、光束を一本の線で表現したりすることもある。
【0012】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う光空間通信を行う。
【0013】
(構成)
図1は、本実施形態の通信装置1の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の通信装置1は、送光装置10、受光装置16、および制御装置19を備える。以下においては、送光装置10、受光装置16、および制御装置19について、個別に説明する。
【0014】
〔送光装置〕
まず、送光装置10の構成について、図面を参照しながら説明する。
図2~
図3は、送光装置10の構成の一例を示す概念図である。送光装置10は、光源11、空間光変調器13、波長板14、および曲面ミラー15を備える。空間光変調器13は、変調部130を有する。空間光変調器13の変調部130には、第1変調領域131と第2変調領域132が設定される。
図2は、送光装置10の内部構成を横方向から見た側面図である。
図3は、送光装置10の内部構成を上方向から見た上面図である。
図3においては、光源11と空間光変調器13を図示し、波長板14と曲面ミラー15は省略する。
図2~
図3は、概念的なものであり、各構成要素間の位置関係や、光の進行方向などを正確に表したものではない。
【0015】
光源11は、第1出射器111-1、第2出射器111-2、第1レンズ112-1、および第2レンズ112-2を含む。第1出射器111-1と第2出射器111-2は、光源11から空間光変調器13までの光路において、互いの出射軸が交差しないように配置される。
【0016】
第1出射器111-1は、制御装置19の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光101-1を、第1レンズ112-1に向けて出射する。第1出射器111-1が出射するレーザ光101-1は、偏光である。第1レンズ112-1は、第1出射器111-1から出射されるレーザ光101-1の光路上に配置される。第1レンズ112-1は、第1出射器111-1から出射されたレーザ光101-1を、空間光変調器13の変調部130の第1変調領域131の大きさに合わせて拡大する。第1レンズ112-1によって拡大された光102-1は、第1変調領域131に向けて進行する。
【0017】
第2出射器111-2は、制御装置19の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光101-2を、第2レンズ112-2に向けて出射する。第2出射器111-2が出射するレーザ光101-2は、偏光である。空間光変調器13の変調部130に照射される光の偏光方向は、同じであることが求められる。そのため、第1出射器111-1の出射するレーザ光101-1の偏光方向と、第2出射器111-2の出射するレーザ光101-2の偏光方向とは、同一になるように設定される。第2レンズ112-2は、第2出射器111-2から出射されるレーザ光101-2の光路上に配置される。第2レンズ112-2は、第2出射器111-2から出射されたレーザ光101-2を、空間光変調器13の変調部130の第2変調領域132の大きさに合わせて拡大する。第2レンズ112-2によって拡大された光102-2は、第2変調領域132に向けて進行する。
【0018】
第1出射器111-1および第2出射器111-2の各々から出射されるレーザ光101-1~2の波長は、特に限定されず、用途に応じて選定されればよい。レーザ光101-1~2の波長は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、同じ空間光変調器13に向けて光102-1~2を照射するため、レーザ光101-1~2の偏光方向は同一である。例えば、第1出射器111-1および第2出射器111-2は、可視や赤外の波長帯のレーザ光101-1~2を出射する。例えば、800~900ナノメートル(nm)の近赤外線であれば、レーザクラスを上げられるので、他の波長帯よりも1桁くらい感度を向上できる。例えば、1.55マイクロメートル(μm)の波長帯の赤外線ならば、高出力のレーザ光源を用いることができる。1.55μmの波長帯の赤外線のレーザ光源としては、アルミニウムガリウムヒ素リン(AlGaAsP)系レーザ光源や、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)系レーザ光源などを用いることができる。レーザ光101-1~2の波長が長い方が、回折角を大きくでき、高いエネルギーに設定できる。
【0019】
空間光変調器13は、変調部130を有する。変調部130には、第1変調領域131と第2変調領域132が設定される。第1変調領域131には、光102-1が照射される。光102-1は、第1変調領域131で変調されて、変調光103-1として出射される。第2変調領域132には、光102-2が照射される。光102-2は、第2変調領域132で変調されて、変調光103-2として出射される。
【0020】
第1変調領域131と第2変調領域132の間には、隔壁135が配置される。隔壁135は、変調部130の面に対して垂直に立てられる。隔壁135は、第1変調領域131で変調された変調光103-1と、第2変調領域132で変調された変調光103-2とが、変調部130で変調された直後に混じり合わないように、変調部130を二分する。第1変調領域131および第2変調領域132の各々には、制御装置19の制御に応じて、投射光105によって表示される画像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。空間光変調器13を用いる場合、回折現象を利用するため、回折格子と同じように高次の像が発生する。高次の像は、電力が低くなるために鮮明ではなくなるが、完全に視認されないようにすることは難しい。隔壁135は、被投射面に表示されうる高次の像の発生を防止する。
【0021】
例えば、空間光変調器13は、強誘電性液晶やホモジーニアス液晶、垂直配向液晶などを用いた空間光変調器によって実現される。例えば、空間光変調器13は、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)によって実現できる。また、空間光変調器13は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)によって実現されてもよい。位相変調型の空間光変調器13では、投射光105を投射する箇所を順次切り替えるように動作させることによって、エネルギーを像の部分に集中することができる。そのため、位相変調型の空間光変調器13を用いる場合、光源11の出力が同じであれば、その他の方式と比べて画像を明るく表示させることができる。
【0022】
図4は、空間光変調器13の変調部130に設定される第1変調領域131と第2変調領域132の一例である。第1変調領域131には、変調光103-1によって形成される画像に対応するパターン(位相画像)が設定される。第2変調領域132には、変調光103-2によって形成される画像に対応する位相画像が設定される。例えば、変調光103-1および変調光103-2のうちいずれか一方しか画像の表示に用いられない場合、画像の表示に用いられる変調光103を出射する方の変調領域だけに、位相画像が設定されてもよい。
【0023】
空間光変調器13の変調部130に割り当てられた第1変調領域131および第2変調領域132の各々は、複数の領域に分割される(タイリングとも呼ぶ)。例えば、第1変調領域131および第2変調領域132の各々は、所望のアスペクト比の四角形の領域(タイルとも呼ぶ)に分割される。複数のタイルの各々は、複数の画素によって構成される。第1変調領域131および第2変調領域132に設定された複数のタイルの各々には、位相画像がタイリングされる。例えば、複数のタイルの各々には、予め生成された位相画像が設定される。複数のタイルの各々には、投射される画像に対応する位相画像が設定される。
【0024】
複数のタイルに位相画像が設定された状態で、変調部130に光102が照射されると、各タイルの位相画像に対応する画像を形成する変調光103が出射される。変調部130に設定されるタイルが多いほど、鮮明な画像を表示させることができるが、各タイルの画素数が低下すると解像度が低下する。そのため、変調部130に設定されるタイルの大きさや数は、用途に応じて設定される。
【0025】
図5は、空間光変調器13の変調部130の第1変調領域131および第2変調領域132に設定されるパターンの一例を示す概念図である。第1変調領域131および第2変調領域132の各々には、合成画像1303が設定される。合成画像1303は、所望の画像を形成するための位相画像1301と、所望の画像を形成する光を集光させる仮想レンズ画像1302とが合成されたパターンである。光の波面は、回折と同様に、位相制御によって制御できる。位相が球状に変化すると、波面に球状の差ができてレンズ効果が発生する。仮想レンズ画像1302は、空間光変調器13の変調部130に照射される光102の位相を球状に変化させ、所定の焦点距離の位置(集光点とも呼ぶ)に集光するレンズ効果を発生させる。第1変調領域131および第2変調領域132の各々で変調された変調光103-1~2の集光点は、曲面ミラー15の反射面150に設定される。
【0026】
仮想レンズ画像1302によって集光された像は、曲面ミラー15の反射面150に結像される。例えば、予め生成させておいた合成画像1303を、記憶部(図示しない)に記憶させておけばよい。なお、
図5は、一例であって、位相画像1301や仮想レンズ画像1302、合成画像1303のパターンを限定するものではない。
【0027】
第1変調領域131で変調された変調光103-1と、第2変調領域132で変調された変調光103-2とは、変調部130からの出射直後は、隔壁135によって隔てられる。変調光103-1~2は、変調部130から出射された後に、互いに混じり合うようにも設定できるし、互いに混じり合わないようにも設定できる。変調部130から出射された後の変調光103-1~2の混合状況は、光源11からの光102の出射方向を調整することで設定できる。
【0028】
波長板14は、空間光変調器13と曲面ミラー15の間に配置される。
図2の例では、波長板14は、隔壁135によって、変調部130の面に対して略平行に配置される。例えば、波長板14は、直交する偏光成分の間に位相差を発生させる複屈折素子によって実現される。
【0029】
例えば、波長板14は、1/2波長板である。1/2波長板は、特定の偏光方向を有する。1/2波長板は、特定の偏光方向の直線偏光と、特定の偏光方向に直交する偏光方向の直線偏光との間に、1/2波長の整数倍の位相差を与える。送光装置10から直線偏光を出射する場合、変調光103-1および変調光103-2のうち一方の光路上に、1/2波長板を含む波長板14が配置される。送光装置10から直線偏光を出射する場合、変調光103-1および変調光103-2のうち他方の光路上に、波長板14は配置されない。その結果、変調光103-1の偏光方向と、変調光103-2の偏光方向とが直交する。
【0030】
例えば、波長板14は、1/4波長板である。1/4波長板は、直交する偏光成分の間に90度の位相差を発生させる。1/4波長板は、直線偏光を円偏光に変換したり、円偏光を直線偏光に変換したりする。送光装置10から円偏光を出射する場合、変調光103-1および変調光103-2の各々の光路上には、光軸が互いに直交する1/4波長板を含む波長板14が配置される。1/4波長板を含む波長板14は、直線偏光である変調光103-1と変調光103-2を、回転方向が互いに反対の円偏光に変換する。その結果、変調光103-1の回転方向と、変調光103-2の回転方向とが反対向きになる。
【0031】
図6は、送光装置10の内部構成を上方から見た概念図である。
図6においては、光源11を省略する。
図6は、概念的なものであり、各構成要素間の位置関係や、光の進行方向などを正確に表したものではない。波長板14は、第1波長板141と第2波長板142によって構成される。例えば、送光装置10から直線偏光の空間光信号を送光する場合、第1波長板141は1/2波長板であり、第2波長板142は省略される。例えば、送光装置10から円偏光の空間光信号を送光する場合、第1波長板141と第2波長板142とは、光軸が互いに直交する1/4波長板で構成される。
【0032】
第1波長板141は、第1変調領域131に対応付けて配置される。第1変調領域131で変調された変調光103-1は、曲面ミラー15の反射面150に到達するまでの間で、第1波長板141を通過する。変調光103-1は、第1波長板141を通過する際に、第1波長板141の偏光特性に応じた偏光状態になる(光104-1)。光104-1は、曲面ミラー15の反射面150において、第1変調領域131に設定された位相画像に応じた像を結像させる。
【0033】
第2波長板142は、第2変調領域132に対応付けて配置される。第2変調領域132で変調された変調光103-2は、曲面ミラー15の反射面150に到達するまでの間で、第2波長板142を通過する。例えば、直線偏光の空間光信号が送光される場合、第2波長板142は省略される。変調光103-2は、第2波長板142を通過する際に、第2波長板142の偏光特性に応じた偏光状態になる(光104-2)。直線偏光の空間光信号が送光される場合、光104-2の偏光状態は変更されないため、変調光103-2と光104-2の偏光状態は同一である。光104-2は、曲面ミラー15の反射面150において、第2変調領域132に設定された位相画像に応じた像を結像させる。
【0034】
第1波長板141を通過した変調光103-1と、第2波長板142を通過した変調光103-2とは、互いに異なる偏光状態になる。すなわち、波長板14を通過した変調光103-1~2は、互いに異なる偏光状態の光104-1~2になる。
【0035】
例えば、送光装置10から直線偏光を送光する場合、第1波長板141を1/2波長板とする。第1波長板141の側を通過する変調光103-1の偏光方向は、90度回転される。第2波長板142の側を通過する変調光103-2は、同じ偏光方向のまま進行する。例えば、第2波長板142の側には、何も設置されない。例えば、第2波長板142の側には、偏光状態に影響を与えない透明なガラスやプラスチックの材質で構成された部材が配置されてもよい。第1波長板141を通過した光104-1の偏光方向と、第2波長板142を通過した光104-2の偏光方向とは、互いに直交する。そのため、第1波長板141を通過した光104-1に由来する空間光信号と、第2波長板142を通過した光104-2に由来する空間光信号とは、分離可能である。
【0036】
例えば、送光装置10から円偏光を送光する場合、第1波長板141および第2波長板142として、光軸が互いに直交する1/4波長板が用いられる。第1波長板141を通過した光104-1と、第2波長板142を通過した光104-2とは、回転方向が反対の円偏光に変換される。そのため、第1波長板141を通過した光104-1に由来する空間光信号と、第2波長板142を通過した光104-2に由来する空間光信号とは、空間光信号の受信側で分離可能である。
【0037】
曲面ミラー15は、曲面状の反射面150を有する反射鏡である。曲面ミラー15の反射面150は、投射光105の投射角に合わせた曲率を有する。
図2の例の場合、曲面ミラー15の反射面150は、円柱の側面の形状を有する。例えば、曲面ミラー15の反射面150は、球面でもよい。例えば、曲面ミラー15の反射面150は、自由曲面であってもよい。例えば、曲面ミラー15の反射面150は、単一の曲面ではなく、複数の曲面を組み合わせた形状であってもよい。例えば、曲面ミラー15の反射面150は、曲面と平面を組み合わせた形状であってもよい。
【0038】
曲面ミラー15は、空間光変調器13の変調部130に反射面150を向けて、変調光103の光路上に配置される。曲面ミラー15の反射面150には、空間光変調器13の変調部130で変調された変調光103のうち、波長板14を通過した光104が照射される。光104は、光104-1と光104-2によって構成される。光104-1は、空間光変調器13の変調部130の第1変調領域131で変調された変調光103-1のうち、第1波長板141の側を通過した光である。光104-2は、空間光変調器13の変調部130の第2変調領域132で変調された変調光103-2のうち、第2波長板142の側を通過した光である。光104-1および光104-2のうち少なくともいずれかは、波長板14を通過することで、偏光状態が変換される。すなわち、光104-1と光104-2は、偏光状態が異なる。
【0039】
曲面ミラー15の反射面150で反射された光(投射光105)は、反射面150の曲率に応じた拡大率で拡大されて、投射される。
図7は、反射面150で反射された投射光105の投射の一例を示す概念図である。
図7は、概念的なものであり、光の進行方向などを正確に表したものではない。投射光105は、曲面ミラー15の反射面150における光104の照射範囲の曲率に応じて、水平方向(
図7の紙面の上下方向)に沿って拡大される。反射面150には、光104を構成する光104-1~2の各々が照射される。光104-1~2の各々は、反射面150で個別に反射される。光104-1は、反射面150で反射され、投射光105-1として投射される。光104-2は、反射面150で反射され、投射光105-2として投射される。光104-1~2の各々は、反射面150の曲率に応じた投射角で、投射光105-1~2の各々として投射される。
図7の例では、投射光105-1~2の各々の投射範囲が重なっているが、投射光105-1~2の偏光状態が異なるため、空間光信号の受光側で投射光105-1~2を分離できる。
【0040】
例えば、変調光103や光104、投射光105の光路上に、遮蔽器(図示しない)や0次光除去器(図示しない)が配置されてもよい。
【0041】
例えば、遮蔽器は、波長板14と曲面ミラー15との間に配置される。言い換えると、遮蔽器は、空間光変調器13の変調部130によって変調された変調光103のうち、波長板14を通過した光104の光路上に配置される。遮蔽器は、所望の画像を形成する光を通過させる部分にスリット状の開口が形成されたアパーチャである。例えば、遮蔽器は、光104に含まれる不要な光成分を遮蔽し、投射光105の表示領域の外縁を規定する枠体である。遮蔽器は、所望の画像を形成する光を通過させ、不要な光成分を遮蔽する。例えば、遮蔽器は、光104に含まれる0次光やゴースト像を遮蔽する。
【0042】
例えば、0次光除去器は、光吸収部材を支持する部材で支持された光吸収部材を含む。光吸収部材は、支持部材によって、変調光103や光104、投射光105に含まれる0次光の光路上に固定される。例えば、支持部材は、ガラスやプラスチックなどのように光104が透過する材質で構成される。例えば、光吸収部材には、カーボンなどの黒体が用いられる。使用されるレーザ光101の波長が固定されている場合には、レーザ光101の波長の光を選択的に吸収する材質の光吸収部材が用いられることが好ましい。
【0043】
〔受光装置〕
次に、受光装置16の構成について図面を参照しながら説明する。
図8は、受光装置16の構成について説明するための概念図である。受光装置16は、集光器161、複数の受光素子17-1~M、複数の受光フィルタ170-1~M、および受信回路18を備える(Mは、2以上の自然数)。複数の受光素子17-1~Mは、二つの受光素子17が対をなすように配置される。対をなす二つの受光素子17は、隣接して配置される。対をなす二つの受光素子17には、同一の送信元から送光された、偏光多重された光信号が受光される。
図8は、受光装置16の内部構成を上方向から見た平面図である。なお、受信回路18の位置については、特に限定を加えない。受信回路18は、受光装置16の内部に配置されてもよいし、受光装置16の外部に配置されてもよい。また、制御装置19に受信回路18の機能を含めてもよい。
【0044】
集光器161は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。集光器161の入射面には、空間光信号が入射する。集光器161によって集光された光信号は、複数の受光素子17-1~Mの配置された領域に向けて集光される。例えば、集光器161は、入射した空間光信号を集光するレンズである。例えば、集光器161は、入射した空間光信号を、複数の受光素子17-1~Mの受光部に向けて導光する光線制御素子である。例えば、集光器161は、レンズや光線制御素子を組み合わせた構成であってもよい。集光器161は、複数の受光素子17-1~Mの配置された領域に向けて空間光信号を集光できれば、その構成については特に限定しない。例えば、集光器161によって集光される光信号を、複数の受光素子17-1~Mの受光部に向けて導光する機構が、追加されてもよい。
【0045】
図9は、受光装置16によって受光される光の軌跡の一例について説明するための概念図である。
図9は、受光装置16の内部構成を、斜め前方から見た斜視図である。
図9には、複数の受光素子が一列に配置される例をあげる。複数の受光素子は、空間光信号の到来方向に合わせて、任意の配列で配置できる。
図9の例では、異なる方向から到来する空間光信号A及び空間光信号Bが集光器161に入射する。空間光信号A及び空間光信号Bに由来する光信号は、集光器161によって集光されて、複数の受光素子17-1~Mの配置された領域に向けて集光される。集光器161によって集光された光信号は、隣接して配置された対をなす受光素子17に向けて進行する。対をなす受光素子17には、同一の送信元から送光された、偏光多重された光信号が受光される。
図9の例では、空間光信号Aに由来する光信号が受光素子17-1~2に向けて進行し、空間光信号Bに由来する光信号が受光素子17-M-1~Mに向けて進行する。空間光信号Aおよび空間光信号Bに由来する光信号は、対をなす二つの受光素子17の各々に対応付けて配置された受光フィルタ170に到達する。
【0046】
複数の受光フィルタ170-1~Mの各々は、複数の受光素子17-1~Mの前段に配置される。複数の受光フィルタ170-1~Mの各々は、複数の受光素子17-1~Mの受光部の各々に対応付けて配置される。例えば、複数の受光フィルタ170-1~Mの各々は、複数の受光素子17-1~Mの受光部に、重ねて配置される。受光フィルタ170-1~Mは、受光対象の空間光信号の偏光状態に応じて選択される。複数の受光フィルタ170-1~Mのいずれかに到達した光信号のうち、受光フィルタ170の偏光方向の光信号が、その受光フィルタ170を通過する。例えば、受光対象の空間光信号が直線偏光の場合、受光フィルタ170は偏光板を含む。直線偏光の場合、対をなす二つの受光素子17の各々に対応付けられた二つの受光フィルタ170の各々の偏光方向は、互いに直交する。対をなす二つの受光素子17の各々に対応付けられた二つの受光フィルタ170の各々は、偏光方向が互いに反対の空間光信号に由来する光信号を通過させる。例えば、受光対象の空間光信号が円偏光の場合、受光フィルタ170は1/4波長板を含む。円偏光の場合、対をなす二つの受光素子17の各々に対応付けられた二つの受光フィルタ170の各々は、光軸が互いに直交する1/4波長板を含む。光軸が互いに直交する1/4波長板を含む二つの受光フィルタ170の各々は、回転方向が互いに反対の空間光信号に由来する光信号を通過させる。
【0047】
図10は、受光対象の空間光信号が直線偏光の場合に用いられる受光フィルタ170の一例について説明するための概念図である。
図10には、対をなす二つの受光素子17-1~2の各々に対応付けられた、二つの受光フィルタ170-1~2を例に挙げて説明する。
図10の例では、二つの受光素子17-1~2は、間隔を空けて配置されているが、実際には隣接して配置される。
【0048】
受光素子17-1の受光対象の光信号の偏光方向は、
図10の紙面において上下方向である。受光素子17-1に対応付けられた受光フィルタ170-1は、
図10の紙面において上下方向の偏光方向を有する偏光板を含む。受光素子17-1に対応付けられた受光フィルタ170-1は、
図10の紙面において上下方向の偏光方向の光信号を通過させる。受光フィルタ170-1を通過した光信号は、受光素子17-1によって受光される。
【0049】
受光素子17-2の受光対象の光信号の偏光方向は、
図10の紙面に対して左右方向である。受光素子17-2に対応付けられた受光フィルタ170-2は、
図10の紙面において左右方向の偏光方向を有する偏光板を含む。受光素子17-2に対応付けられた受光フィルタ170-2は、
図10の紙面において左右方向の偏光方向の光信号を通過させる。受光フィルタ170-2を通過した光信号は、受光素子17-2によって受光される。受光フィルタ170-2と受光フィルタ170-1の偏光方向は、互いに直交する。すなわち、受光素子17-1と受光素子17-2とは、同一の送信元から送光された空間光信号に由来する、偏光方向が互いに直交する偏光多重された光信号を受光する。
【0050】
図11は、受光対象の空間光信号が円偏光の場合に用いられる受光フィルタ170の一例について説明するための概念図である。
図11には、対をなす二つの受光素子17-1~2の各々に対応付けられた、受光フィルタ170-10と受光フィルタ170-20とを例に挙げて説明する。
図11の例では、二つの受光素子17-1~2は、間隔を空けて配置されているが、実際には隣接して配置される。
【0051】
受光素子17-1の受光対象の光信号の偏光方向は、
図11の紙面において右回り(時計回り)である。受光素子17-1に対応付けられた受光フィルタ170-10は、波長板170-11と偏光板170-12によって構成される。波長板170-11は、入射した右回りの円偏光の光信号を直線偏光に変換する。偏光板170-12は、波長板170-11によって変換された直線偏光のうち、
図10の紙面において上下方向の偏光方向の直線偏光を通過させる。受光フィルタ170-10を通過した偏光成分の光信号は、受光素子17-1によって受光される。
【0052】
受光素子17-2の受光対象の光信号の偏光方向は、
図11の紙面において左回り(反時計回り)である。受光素子17-2に対応付けられた受光フィルタ170-20は、フィルタ170-21とフィルタ170-22によって構成される。フィルタ170-21は、入射した左回りの円偏光の光信号を直線偏光に変換する。フィルタ170-22は、フィルタ170-21によって変換された直線偏光のうち、
図10の紙面において上下方向の偏光方向の直線偏光を通過させる。受光フィルタ170-20を通過した偏光成分の光信号は、受光素子17-2によって受光される。すなわち、受光素子17-1と受光素子17-2とは、同一の送信元から送光された空間光信号に由来する、偏光方向が互いに逆方向の円偏光として偏光多重された光信号を受光する。
【0053】
複数の受光素子17-1~Mの各々は、複数の受光フィルタ170-1~Mの各々の後段に配置される。複数の受光素子17-1~Mは、二つずつの受光素子17が対をなすように配置される。
図8の場合、受光素子17-1と受光素子17-2が対をなし、受光素子17-3と受光素子17-4が対をなし、受光素子17-M-1と受光素子17-Mが対をなす。対をなす二つの受光素子17は、隣接して配置される。複数の受光素子17-1~Mの各々は、複数の受光フィルタ170-1~Mの各々を通過した光信号を受光する受光部を有する。複数の受光素子17-1~Mの各々の受光部には、受光フィルタ170が設置される。対をなす二つの受光素子17には、偏光状態が互いに異なる受光フィルタ170が設置される。複数の受光素子17-1~Mの各々は、複数の受光フィルタ170-1~Mの各々を介して、集光器161の出射面と受光部が対面するように配置される。複数の受光素子17-1~Mの各々の受光部は、複数の受光フィルタ170-1~Mの各々に対面するように配置される。複数の受光フィルタ170-1~Mの各々を通過した光信号は、複数の受光素子17-1~Mの各々の受光部で受光される。対をなす二つの受光素子17は、偏光状態が互いに異なる受光フィルタ170を通過した光信号を受光する。複数の受光素子17-1~Mの各々は、受光された光信号を電気信号(以下、信号とも呼ぶ)に変換する。複数の受光素子17-1~Mの各々は、変換後の信号を、受信回路18に出力する。例えば、複数の受光素子17-1~Mのうち対をなす二つの受光素子17ごとに、受信回路18と接続される。例えば、複数の受光素子17-1~Mの各々は、受信回路18と個別に接続される。例えば、複数の受光素子17-1~Mのいくつかをまとめたグループごとに、受信回路18と接続されるように構成されてもよい。
【0054】
受光素子17は、受光対象の空間光信号の波長領域の光を受光する。例えば、受光素子17は、可視領域の光に感度を有する。例えば、受光素子17は、赤外領域の光に感度を有する。受光素子17は、例えば1.5μm(マイクロメートル)帯の波長の光に感度を有する。なお、受光素子17が感度を有する光の波長帯は、1.5μm帯に限定されない。受光素子17が受光する光の波長帯は、受光対象の空間光信号の波長に合わせて、任意に設定できる。受光素子17が受光する光の波長帯は、例えば0.8μm帯や、1.55μm帯、2.2μm帯に設定されてもよい。また、受光素子17が受光する光の波長帯は、例えば0.8~1μm帯であってもよい。波長帯が短い方が、大気中の水分による吸収が小さいので、降雨時における光空間通信には有利である。また、受光素子17は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、空間光信号に由来する光信号を読み取ることができない。そのため、受光素子17よりも前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタが設置されてもよい。
【0055】
例えば、受光素子17は、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの素子によって実現できる。例えば、受光素子17は、アバランシェフォトダイオードによって実現される。アバランシェフォトダイオードによって実現された受光素子17は、高速通信に対応できる。なお、受光素子17は、光信号を電気信号に変換できさえすれば、フォトダイオードやフォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード以外の素子によって実現されてもよい。通信速度を向上させるために、受光素子17の受光部は、できるだけ小さい方が好ましい。例えば、受光素子17の受光部は、一辺が5mm(ミリメートル)程度の正方形の受光面を有する。例えば、受光素子17の受光部は、直径0.1~0.3mm程度の円形の受光面を有する。受光素子17の受光部の大きさや形状は、空間光信号の波長帯や通信速度などに応じて選定されればよい。
【0056】
受信回路18は、複数の受光素子17-1~Mの各々から出力された信号を取得する。受信回路18は、複数の受光素子17-1~Mの各々からの信号を増幅する。受信回路18は、増幅された信号をデコードし、通信対象からの信号を解析する。例えば、受信回路18は、複数の受光素子17-1~Mのうち対をなす二つの受光素子17ごとに信号を解析する。例えば、受信回路18は、複数の受光素子17-1~Mごとの信号をまとめて解析する。複数の受光素子17-1~Mごとの信号をまとめて解析する場合は、単一の通信対象と通信するシングルチャンネルの受光装置16を実現できる。例えば、受信回路18は、複数の受光素子17-1~Mごとに、個別に信号を解析する。複数の受光素子17-1~Mごとに個別に信号を解析する場合、複数の通信対象と同時に通信するマルチチャンネルの受光装置16を実現できる。受信回路18によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。受信回路18によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0057】
〔受信回路〕
次に、受光装置16が備える受信回路18の詳細構成の一例について図面を参照しながら説明する。
図12は、受信回路18の構成の一例を示すブロック図である。
図12の例では、受光素子17の数をM個とする(Mは自然数)。なお、
図12は、受信回路18の構成の一例であって、受信回路18の構成を限定するものではない。
【0058】
受信回路18は、複数の第1処理回路181-1~M、制御回路182、セレクタ183、および複数の第2処理回路185-1~Nを有する(M、Nは自然数)。第1処理回路181は、複数の受光素子17-1~Mのいずれか一つに対応付けられる。第1処理回路181は、複数の受光素子17-1~Mに含まれる複数の受光素子17をまとめたグループごとに構成されてもよい。
【0059】
例えば、第1処理回路181は、ハイパスフィルタ(図示しない)を含む。ハイパスフィルタは、受光素子17からの信号を取得する。ハイパスフィルタは、取得した信号のうち、空間光信号の波長帯に相当する高周波成分の信号を選択的に通過させる。ハイパスフィルタは、太陽光などの環境光に由来する信号をカットする。例えば、ハイパスフィルタの代わりに、空間光信号の波長帯の信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタを構成してもよい。受光素子17は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、光信号は読み取り不能となる。そのため、受光素子17の受光部の前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタが設置されてもよい。
【0060】
例えば、第1処理回路181は、増幅器(図示しない)を含む。増幅器は、ハイパスフィルタから出力された信号を取得する。増幅器は、取得された信号を増幅する。増幅器による信号の増幅率には、特に限定を加えない。
【0061】
例えば、第1処理回路181は、出力モニタ(図示しない)を含む。出力モニタは、増幅器の出力値をモニタする。出力モニタは、増幅器によって増幅された信号のうち、所定の出力値を超える信号をセレクタ183に出力する。セレクタ183に出力された信号のうち受信対象の信号は、制御回路182の制御に応じて、複数の第2処理回路185-1~Nのいずれかに割り当てられる。受信対象の信号は、通信対象の通信装置(図示しない)からの空間光信号である。空間光信号の受光に用いられない受光素子17からの信号は、第2処理回路185に出力されない。
【0062】
例えば、第1処理回路181は、出力モニタ(図示しない)として積分器(図示しない)を含んでもよい。積分器は、ハイパスフィルタから出力された信号を取得する。積分器は、取得された信号を積分する。積分器は、積分された信号を制御回路182に出力する。積分器は、受光素子17が受光する空間光信号の強度を測定するために配置される。ビーム径が絞られていない状態で受光される空間光信号は、ビーム径が絞られている場合と比べて強度が微弱であるため、増幅器のみで増幅された信号の電圧測定は困難である。積分器を用いれば、例えば、数ミリ秒~数十ミリ秒の期間の信号を積分することによって、電圧測定できるレベルまで信号の電圧を大きくすることができる。
【0063】
制御回路182は、複数の第1処理回路181-1~Mの各々から出力された信号を取得する。言い換えると、制御回路182は、複数の受光素子17-1~Mの各々が受光した光信号に由来する信号を取得する。例えば、制御回路182は、互いに隣接し合う複数の受光素子17からの信号の読み取り値を比較する。制御回路182は、比較結果に応じて、信号強度が最大の受光素子17を選択する。制御回路182は、選択された受光素子17に由来する信号を、複数の第2処理回路185-1~Nのいずれかに割り当てるように、セレクタ183を制御する。例えば、制御回路182は、対をなす二つの受光素子17からの信号が同じ第2処理回路185に分配されるように、セレクタ183を制御する。
【0064】
通信対象の位置が予め特定されている場合は、空間光信号の到来方向を推定する処理を行わず、受光素子17-1~Mから出力された信号を、予め設定されたいずれかの第2処理回路185に出力すればよい。一方、通信対象の位置が予め特定されていない場合は、受光素子17-1~Mから出力された信号の出力先の第2処理回路185を選択すればよい。例えば、制御回路182が受光素子17を選択することによって、空間光信号の到来方向を推定できる。すなわち、制御回路182が受光素子17を選択することは、空間光信号の送信元の通信装置を特定することに相当する。また、制御回路182によって選択された受光素子17からの信号を複数の第2処理回路のいずれかに割り当てることは、特定された通信対象と、その通信対象からの空間光信号を受光する受光素子17とを対応付けることに相当する。すなわち、制御回路182は、複数の受光素子17-1~Mによって受光された光信号に基づいて、その光信号(空間光信号)の送信元の通信装置を特定できる。
【0065】
セレクタ183には、複数の第1処理回路181-1~Mの各々に含まれる増幅器によって増幅された信号が入力される。セレクタ183は、制御回路182の制御に応じて、入力された信号のうち受信対象の信号を、複数の第2処理回路185-1~Nのうちいずれかに出力する。受信対象ではない信号は、セレクタ183から出力されない。
【0066】
複数の第2処理回路185-1~Nには、制御回路182によって割り当てられた、複数の受光素子17-1~Nのいずれかからの信号が入力される。例えば、複数の第2処理回路185-1~Nの各々には、対をなす二つの受光素子17からの信号が入力される。複数の第2処理回路185-1~Nの各々は、入力された信号をデコードする。複数の第2処理回路185-1~Nの各々は、デコードされた信号に何らかの信号処理を加えるように構成してもよい。複数の第2処理回路185-1~Nの各々は、外部の信号処理装置等(図示しない)に出力するように構成されてもよい。
【0067】
制御回路182によって選択された受光素子17に由来する信号をセレクタ183で選択することにより、1つの通信対象に対して1つの第2処理回路185が割り当てられる。すなわち、制御回路182は、複数の受光素子17-1~Mが受光する、複数の通信対象からの偏光多重された空間光信号に由来する信号を、複数の第2処理回路185-1~Nのいずれかに割り当てる。これにより、受光装置16は、複数の通信対象からの偏光多重された空間光信号に由来する信号を、個別のチャネルで同時に読み取ることが可能になる。例えば、複数の通信対象と同時に通信するために、複数の通信対象からの空間光信号を単一のチャネルにおいて時分割で読み取ってもよい。本実施形態の手法では、複数の通信対象からの空間光信号を、複数のチャネルにおいて同時に読み取るので、単一のチャネルを用いる場合と比べて伝送速度が速い。
【0068】
例えば、粗い精度の1次スキャンで空間光信号の到来方向を特定し、特定された方向に関して細かい精度の2次スキャンを行って、通信対象の正確な位置を特定するように構成されてもよい。通信対象との間で通信可能な状況になれば、通信対象との信号のやりとりによって、その通信対象の正確な位置を確定できる。なお、通信対象の位置が予め特定されている場合は、その通信対象の位置を特定する処理を省略できる。
【0069】
〔制御装置〕
制御装置19は、光源11および空間光変調器13を制御する。例えば、制御装置19は、プロセッサとメモリを含むマイクロコンピュータによって実現される。制御装置19は、空間光変調器13の変調部130に設定されたタイリングのアスペクト比に合わせて、投射される画像に対応する位相画像を変調部130に設定する。例えば、制御装置19は、画像表示や通信、測距など、用途に応じた画像に対応する位相画像を変調部130に設定する。投射される画像の位相画像は、記憶部(図示しない)に予め記憶させておけばよい。投射される画像の形状や大きさには、特に限定を加えない。
【0070】
制御装置19は、投射光105によって形成される画像に対応するパターン(位相画像)を、空間光変調器13の変調部130に設定する。制御装置19は、空間光変調器13の変調部130に割り当てられたタイルごとに、位相画像を設定する。制御装置19は、空間光変調器13の変調部130に照射される光102の位相と、変調部130で反射される変調光103の位相との差分を決定づけるパラメータが変化するように空間光変調器13を駆動することで、変調部130に位相画像を設定する。空間光変調器13の変調部130に照射される光102の位相と、変調部130で反射される変調光103の位相との差分を決定づけるパラメータは、例えば、屈折率や光路長などの光学的特性に関するパラメータである。例えば、制御装置19は、空間光変調器13の変調部130に印可する電圧を変化させることによって、変調部130の光学的特性を調節する。位相変調型の空間光変調器13の変調部130に照射された光102の位相分布は、変調部130の光学的特性に応じて変調される。制御装置19による空間光変調器13の駆動方法は、空間光変調器13の変調方式に応じて決定される。
【0071】
制御装置19は、表示される画像に対応する位相画像が変調部130に設定された状態で、光源11の出射器111を駆動させる。制御装置19は、空間光信号を送光するタイミングに合わせて、光源11に含まれる第1出射器111-1と第2出射器111-2を個別に駆動させる。その結果、空間光変調器13の変調部130に位相画像が設定されたタイミングに合わせて、光源11から出射された光102-1~2が、空間光変調器13の変調部130の第1変調領域131および第2変調領域132の各々に設定されたサブ領域に照射される。空間光変調器13の変調部130の第1変調領域131および第2変調領域132の各々に設定されたサブ領域に照射された光102-1~2は、各々のサブ領域に設定された位相画像に応じて変調される。空間光変調器13の変調部130において変調された変調光103は、曲面ミラー15の反射面150に向けて出射される。
【0072】
また、制御装置19は、受光装置16によってデコードされた信号や、信号処理が加えられた信号を、受光装置16から取得する。受光装置16から取得される信号は、偏光多重された空間光信号に由来する。制御装置19は、受光装置16から取得した信号に応じた処理を実行する。受光装置16から取得した信号に応じて制御装置19が実行する処理については、特に限定しない。例えば、制御装置19は、受光装置16から取得した信号に応じて、通信対象の通信装置(図示しない)に対する信号を生成する。制御装置19は、生成された信号に対応する空間光信号を送光するように、送光装置10を制御する。例えば、制御装置19は、受光装置16から取得した信号を、外部の信号処理装置等(図示しない)に出力してもよい。
【0073】
以上のように、本実施形態の通信装置は、送光装置、受光装置、および制御装置を備える。送光装置は、光源、空間光変調器、波長板、および曲面ミラーを備える。光源は、第1出射器と第2出射器とによって構成される。第1出射器と第2出射器は、空間光変調器の変調部に向けて、光を出射する。空間光変調器は、光源から出射された光が照射される複数の変調領域が設定される変調部を有する。空間光変調器の変調部は、第1出射器から出射された光が照射される第1変調領域と、第2出射器から出射された光が照射される第2変調領域とに分割される。空間光変調器は、照射された光の位相を、変調部に設定された第1変調領域および第2変調領域の各々で変調する。波長板は、空間光変調器の変調部に設定された第1変調領域および第2変調領域の各々で変調された変調光を、互いに異なる偏光状態に変換する。曲面ミラーは、空間光変調器の変調部に設定された第1変調領域および第2変調領域で変調された変調光が照射される曲面状の反射面を有する。曲面ミラーは、変調光を反射面で反射し、反射面の曲率に応じて投射角が拡大された投射光を投射する。受光装置は、他の通信装置から送光された空間光信号を受光する。制御装置は、他の通信装置に向けて送光する空間光信号を形成するためのパターンを送光装置の空間光変調器の変調部に設定された第1変調領域および第2変調領域の各々に設定する。制御装置は、パターンが設定された変調部に光が照射されるように光源を制御する。制御装置は、受光装置によって受光された空間光信号に由来する信号を取得する。
【0074】
以上のように、本実施形態の送光装置は、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域の各々で変調された変調光を、互いに異なる偏光状態に変換する。本実施形態の送光装置から投射される投射光は、互いに異なる偏光状態に変換された光成分を含む。そのため、本実施形態の送光装置は、偏光状態ごとに異なる複数の空間光信号を同時に送光できる。すなわち、本実施形態によれば、多重化された空間光信号を用いた光空間通信を実現できる。
【0075】
本実施形態の一態様の送光装置は、複数の変調領域の境界のうち少なくともいずれかに配置され、複数の変調領域の各々で変調された変調光が混ざり合うことを防ぐ隔壁を備える。本態様によれば、隔壁で隔てられた変調領域で変調された変調光が、変調直後に混じり合わないため、それらの変調光によって形成されうる高次光の生成を防止できる。
【0076】
本実施形態の一態様において、波長板は、1/2波長板を含む。波長板は、第1変調領域および第2変調領域のうちいずれかで変調された変調光の光路上に設置される。本態様によれば、第1変調領域で変調された変調光と、第2変調領域で変調された変調光とを互いに異なる偏光状態に変換することによって、分離可能な投射光を送光できる。
【0077】
本実施形態の一態様において、波長板は、第1波長板と第2波長板とによって構成される。第1波長板は、1/4波長板を含む。第1波長板は、第1変調領域で変調された変調光の光路上に設置される。第1波長板は、第1変調領域で変調された変調光を、偏光方向が第1回転方向の円偏光に変換する。第2波長板は、1/4波長板を含む。第2波長板は、第2変調領域で変調された変調光の光路上に設置される。第2波長板は、第2変調領域で変調された変調光を、偏光方向が第2回転方向の円偏光に変換する。第1回転方向と第2回転方向とは回転方向が反対である。本態様によれば、第1変調領域で変調された変調光と、第2変調領域で変調された変調光とを、回転方向が反対の円偏光に変換することによって、分離可能な投射光を送光できる。
【0078】
本実施形態の一態様の受光装置は、集光器、複数の受光素子、および複数の受光フィルタを有する。集光器は、他の通信装置から送光された空間光信号を集光する。複数の受光素子は、集光器によって集光された空間光信号を受光する。複数の受光フィルタの各々は、複数の受光素子の各々に対応付けて配置される。複数の受光フィルタの各々は、対応付けられた受光素子の受光対象の空間光信号を選択的に通過させる。本態様によれば、複数の受光素子の各々の受光対象の光信号が、複数の受光素子ごとに選択的に受光されるように構成できる。
【0079】
本実施形態の一態様の受光フィルタは、対応付けられた受光素子の受光対象の偏光方向の直線偏光を選択的に通過させる偏光板を含む。本態様によれば、受光対象の偏光方向の直線偏光を、空間光信号から分離して受光できる。
【0080】
本実施形態の一態様の受光フィルタは、1/4波長板と偏光板とを含む。1/4波長板は、対応付けられた受光素子の受光対象の回転方向の円偏光を直線偏光に変換する。偏光板は、1/4波長板によって変換された直線偏光のうち偏光方向が特定方向の前記直線偏光を選択的に通過させる。本態様によれば、受光対象の回転方向の円偏光を、空間光信号から分離して受光できる。
【0081】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、四つの光源を用いて、複数の通信対象と偏光多重通信を行う。
【0082】
(構成)
図13は、本実施形態の通信装置2の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の通信装置2は、送光装置20、受光装置26、および制御装置29を備える。受光装置26は、第1の実施形態の受光装置16と同様の構成である。制御装置29は、詳細は異なるものの、第1の実施形態の制御装置19とほぼ同様の構成である。以下においては、第1の実施形態とは異なる送光装置20について、詳細に説明する。
【0083】
〔送光装置〕
送光装置20の構成について、図面を参照しながら説明する。
図14~
図15は、送光装置20の構成の一例を示す概念図である。送光装置20は、光源21、空間光変調器23、波長板24、および曲面ミラー25を備える。空間光変調器23は、変調部230を有する。空間光変調器23の変調部230には、第1変調領域231と第2変調領域232が設定される。第1変調領域231および第2変調領域232には、二つずつのサブ領域(第1サブ領域、第2サブ領域)が設定される。
図14は、送光装置20の内部構成を横方向から見た側面図である。
図15は、送光装置20の内部構成を上方向から見た上面図である。
図15においては、光源21と空間光変調器23を図示し、波長板24と曲面ミラー25は省略する。
図14~
図15は、概念的なものであり、各構成要素間の位置関係や、光の進行方向などを正確に表したものではない。
【0084】
光源21は、複数の出射器と複数のレンズを含む。複数の出射器は、第1出射器211-1、第2出射器211-2、第3出射器211-3、および第4出射器211-4によって構成される。複数のレンズは、第1レンズ212-1、第2レンズ212-2、第3レンズ212-3、および第4レンズ212-4によって構成される。第1出射器211-1、第2出射器211-2、第3出射器211-3、および第4出射器211-4は、空間光変調器23までの光路において、互いの出射軸が交差しないように配置される。
【0085】
第1出射器211-1は、制御装置29の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光201-1を、第1レンズ212-1に向けて出射する。第1出射器211-1が出射するレーザ光201-1は、偏光である。第1レンズ212-1は、第1出射器211-1から出射されるレーザ光201-1の光路上に配置される。第1レンズ212-1は、第1出射器211-1から出射されたレーザ光201-1を、空間光変調器23の変調部230の第1変調領域231の第1サブ領域の大きさに合わせて拡大する。第1レンズ212-1によって拡大された光202-1は、第1変調領域231の第1サブ領域に向けて進行する。
【0086】
第2出射器211-2は、制御装置29の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光201-2を、第2レンズ212-2に向けて出射する。第2出射器211-2が出射するレーザ光201-2は、偏光である。第2レンズ212-2は、第2出射器211-2から出射されるレーザ光201-2の光路上に配置される。第2レンズ212-2は、第2出射器211-2から出射されたレーザ光201-2を、空間光変調器23の変調部230の第1変調領域231の第2サブ領域の大きさに合わせて拡大する。第1サブ領域と第2サブ領域とは、第1変調領域231の異なる位置に設定される。第2レンズ212-2によって拡大された光202-2は、第1変調領域231の第2サブ領域に向けて進行する。光202-1と光202-2は、同じ第1変調領域231に含まれる、異なるサブ領域に照射される。
【0087】
第3出射器211-3は、制御装置29の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光201-3を、第3レンズ212-3に向けて出射する。第3出射器211-3から出射されるレーザ光201-3は、偏光である。第3レンズ212-3は、第3出射器211-3から出射されるレーザ光201-3の光路上に配置される。第3レンズ212-3は、第3出射器211-3から出射されたレーザ光201-3を、空間光変調器23の変調部230の第2変調領域232の第1サブ領域の大きさに合わせて拡大する。第3レンズ212-3によって拡大された光202-3は、第2変調領域232の第1サブ領域に向けて進行する。
【0088】
第4出射器211-4は、制御装置29の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光201-4を、第4レンズ212-4に向けて出射する。第4出射器211-4が出射するレーザ光201-4は、偏光である。空間光変調器23の変調部230に照射される光の偏光方向は、同一に設定されることが求められる。そのため、レーザ光201-1~4の偏光方向は、変調部230において同一になるように設定される。第4レンズ212-4は、第4出射器211-4から出射されるレーザ光201-4の光路上に配置される。第4レンズ212-4は、第4出射器211-4から出射されたレーザ光201-4を、空間光変調器23の変調部230の第2変調領域232の第2サブ領域の大きさに合わせて拡大する。第1サブ領域と第2サブ領域とは、第2変調領域232の異なる位置に設定される。第4レンズ212-4によって拡大された光202-4は、第2変調領域232の第2サブ領域に向けて進行する。光202-3と光202-4は、同じ第2変調領域232に含まれる、異なるサブ領域に照射される。
【0089】
第1出射器211-1、第2出射器211-2、第3出射器211-3、および第4出射器211-4の各々から出射されるレーザ光201-1~4の波長は、特に限定されず、用途に応じて選定されればよい。レーザ光201-1~4の波長は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、同じ空間光変調器23に向けて光202-1~4を照射するため、変調部230に照射されるレーザ光201-1~4の偏光方向は同一である。例えば、第1出射器211-1、第2出射器211-2、第3出射器211-3、および第4出射器211-4は、可視や赤外の波長帯のレーザ光201-1~4を出射する。例えば、800~900ナノメートル(nm)の近赤外線であれば、レーザクラスを上げられるので、他の波長帯よりも1桁くらい感度を向上できる。例えば、1.55マイクロメートル(μm)の波長帯の赤外線ならば、高出力のレーザ光源を用いることができる。1.55μmの波長帯の赤外線のレーザ光源としては、アルミニウムガリウムヒ素リン(AlGaAsP)系レーザ光源や、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)系レーザ光源などを用いることができる。レーザ光201-1~4の波長が長い方が、回折角を大きくでき、高いエネルギーに設定できる。
【0090】
空間光変調器23は、第1の実施形態の空間光変調器13と同様の構成である。空間光変調器23は、変調部230を有する。変調部230には、第1変調領域231と第2変調領域232が設定される。第1変調領域231および第2変調領域232の各々は、少なくとも二つのサブ領域に分割される。第1変調領域231には、光202-1~2が照射される。光202-1~2は、第1変調領域231の異なるサブ領域に照射される。光202-1~2は、第1変調領域231の異なるサブ領域で変調されて、変調光203-1~2として出射される。第2変調領域232には、光202-3~4が照射される。光202-3~4は、第2変調領域232の異なるサブ領域に照射される。光202-3~4は、第2変調領域232の異なるサブ領域で変調されて、変調光203-3~4として出射される。
【0091】
第1変調領域231と第2変調領域232の間には、隔壁235が配置される。隔壁235は、変調部230の表面に対して垂直に立てられる。隔壁235は、第1変調領域231で変調された変調光203-1~2と、第2変調領域232で変調された変調光203-3~4とが、変調部230で変調された直後に混じり合わないように、変調部230を二分する。第1変調領域231および第2変調領域232の各々には、制御装置29の制御に応じて、投射光205によって表示される画像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。空間光変調器23を用いる場合、回折現象を利用するため、回折格子と同じように高次の像が発生する。高次の像は、電力が低くなるために鮮明ではなくなるが、視認されてしまう。隔壁235は、被投射面に表示されうる高次の像の発生を防止する。
【0092】
図16は、空間光変調器23の変調部230に設定される第1変調領域231と第2変調領域232の一例である。
図16の例では、第1変調領域231および第2変調領域232の各々に、サブ領域が二つずつ設定される。
図16のように、第1変調領域231と第2変調領域232に、光202の照射範囲が二つずつ設定されれば、二つの通信対象と同時に偏光多重通信を行うことができる。
【0093】
図16において、第1変調領域231には、光源21から出射された光202-1~2が照射される。第1変調領域231には、光202-1に対応する第1サブ領域2311と、光202-2に対応する第2サブ領域2312とが割り当てられる。第1変調領域231の第1サブ領域2311には、光202-1を変調光203-1に変換するためのパターン(位相画像)が設定される。第1変調領域231の第1サブ領域2311には、変調光203-1によって形成される画像に対応する位相画像が設定される。第1変調領域231の第2サブ領域2312には、光202-2を変調光203-2に変換するための位相画像が設定される。第1変調領域231の第2サブ領域2312には、変調光203-2によって形成される画像に対応する位相画像が設定される。
【0094】
図16において、第2変調領域232には、光源21から出射された光202-3~4が照射される。第2変調領域232には、光202-3に対応する第1サブ領域2321と、光202-4に対応する第2サブ領域2322とが割り当てられる。第2変調領域232の第1サブ領
域2321には、光202-3を変調光203-3に変換するための位相画像が設定される。第2変調領域232の第1サブ領域2321には、変調光203-3によって形成される画像に対応する位相画像が設定される。第2変調領域232の第2サブ領域2322には、光202-4を変調光203-4に変換するための位相画像が設定される。第2変調領域232の第2サブ領域2322には、変調光203-4によって形成される画像に対応する位相画像が設定される。
【0095】
空間光変調器23の変調部230に割り当てられた第1変調領域231および第2変調領域232の各々は、複数の領域に分割される(タイリングとも呼ぶ)。例えば、第1変調領域231および第2変調領域232の各々は、所望のアスペクト比の四角形の領域(タイルとも呼ぶ)に分割される。複数のタイルの各々は、複数の画素によって構成される。第1変調領域231および第2変調領域232に設定された複数のタイルの各々には、位相画像がタイリングされる。例えば、複数のタイルの各々には、予め生成された位相画像が設定される。複数のタイルの各々には、投射される画像に対応する位相画像が設定される。
【0096】
複数のタイルに位相画像が設定された状態で、変調部230に光202が照射されると、各タイルの位相画像に対応する画像を形成する変調光203が出射される。変調部230に設定されるタイルが多いほど、鮮明な画像を表示させることができるが、各タイルの画素数が低下すると解像度が低下する。そのため、変調部230に設定されるタイルの大きさや数は、用途に応じて設定される。
【0097】
第1変調領域231で変調された変調光203-1~2と、第2変調領域232で変調された変調光203-3~4とは、変調部230からの出射直後は、隔壁235によって隔てられる。変調光203-1~2と変調光203-3~4は、変調部230から出射された後に、互いに混じり合うようにも設定できるし、互いに混じり合わないようにも設定できる。変調部230から出射された後の変調光203-1~4の混合状況は、光源21からの光202の出射方向を調整することで設定できる。
【0098】
波長板24は、第1の実施形態の波長板14と同様の構成である。波長板24は、空間光変調器23と曲面ミラー25の間に配置される。
図14の例では、波長板24は、隔壁235によって、変調部230の面に対して略平行に配置される。送光装置20から直線偏光を出射する場合、波長板24として1/2波長板が用いられる。送光装置20から円偏光を出射する場合、波長板24として1/4波長板が用いられる。
【0099】
図17は、送光装置20の内部構成を上方から見た概念図である。
図17においては、光源21を省略する。
図17は、概念的なものであり、各構成要素間の位置関係や、光の進行方向などを正確に表したものではない。波長板24は、第1波長板241と第2波長板242によって構成される。第1波長板241と第2波長板242は、異なる偏光特性を有する。
【0100】
第1波長板241は、第1変調領域231に対応付けて配置される。第1変調領域231で変調された変調光203-1~2は、曲面ミラー25の反射面250に到達するまでの間で、第1波長板241を通過する。第1波長板241を通過した変調光203-1~2は、第1波長板241の偏光特性に応じた光204-1~2になる。第1波長板241を通過した光204-1~2は、曲面ミラー25の反射面250において、第1変調領域231のサブ領域に設定された位相画像に応じた像を結像させる。
【0101】
第2波長板242は、第2変調領域232に対応付けて配置される。第2変調領域232で変調された変調光203-3~4は、曲面ミラー25の反射面250に到達するまでの間で、第2波長板242を通過する。第2波長板242を通過した変調光203-3~4は、第2波長板242の偏光特性に応じた光204-3~4になる。第2波長板242を通過した光204-3~4は、曲面ミラー25の反射面250において、第2変調領域232のサブ領域に設定された位相画像に応じた像を結像させる。
【0102】
第1波長板241を通過した変調光203-1~2の偏光状態と、第2波長板242を通過した変調光203-3~4の偏光状態とは、互いに異なる。すなわち、波長板24を通過した変調光203-1~2と変調光203-3~4とは、互いに異なる偏光状態の光204-1~2と光204-3~4になる。
【0103】
例えば、送光装置20から直線偏光を送光する場合、第1波長板241を1/2波長板とする。例えば、第2波長板242の側には、何も設置されない。第1波長板241の側を通過する変調光203-1~2の偏光方向は、90度回転される。第2波長板242の側を通過する変調光203-3~4は、同じ偏光方向のまま進行する。例えば、第2波長板242の側には、偏光状態に影響を与えない透明なガラスやプラスチックの材質で構成された部材が配置されてもよい。第1波長板241の側を通過した光204-1~2の偏光方向と、第2波長板242の側を通過した光204-3~4の偏光方向とは、互いに直交する。そのため、第1波長板241の側を通過した光204-1~2に由来する投射光205と、第2波長板242の側を通過した光204-3~4に由来する投射光205とは、空間光信号の受信側で分離可能である。
【0104】
例えば、送光装置20から円偏光を送光する場合、第1波長板241と第2波長板242とを、光軸が互いに直交する1/4波長板とする。第1波長板241を通過した光204-1~2と、第2波長板242を通過した光204-3~4とは、回転方向が反対の円偏光に変換される。そのため、第1波長板241を通過した光204-1~2に由来する空間光信号と、第2波長板242を通過した光204-3~4に由来する空間光信号とは、空間光信号の受信側で分離可能である。
【0105】
曲面ミラー25は、第1の実施形態の曲面ミラー15と同様の構成である。曲面ミラー25は、曲面状の反射面250を有する反射鏡である。曲面ミラー25の反射面250は、投射光205の投射角に合わせた曲率を有する。
図14の例の場合、曲面ミラー25の反射面250は、円柱の側面の形状を有する。例えば、曲面ミラー25の反射面250は、球面でもよい。例えば、曲面ミラー25の反射面250は、自由曲面であってもよい。例えば、曲面ミラー25の反射面250は、単一の曲面ではなく、複数の曲面を組み合わせた形状であってもよい。例えば、曲面ミラー25の反射面250は、曲面と平面を組み合わせた形状であってもよい。
【0106】
曲面ミラー25は、空間光変調器23の変調部230に反射面250を向けて配置される。言い換えると、曲面ミラー25は、変調光203-1~4の光路上に配置される。曲面ミラー25の反射面250には、空間光変調器23の変調部230で変調された変調光203-1~4のうち、波長板24を通過した光204-1~4が照射される。光204-1~2は、空間光変調器23の変調部230の第1変調領域231で変調された変調光203-1~2のうち、第1波長板241の側を通過した光である。光204-3~4は、空間光変調器23の変調部230の第2変調領域232で変調された変調光203-3~4のうち、第2波長板242の側を通過した光である。光204-1~4のうち少なくともいずれかは、波長板24を通過することで、偏光状態が変わる。すなわち、光204-1~2と光204-3~4とは、互いに異なる偏光状態になる。
【0107】
曲面ミラー25の反射面250で反射された光(投射光205)は、反射面250の曲率に応じた拡大率で拡大されて、投射される。
図18は、反射面250で反射された投射光205の投射の一例を示す概念図である。
図18は、概念的なものであり、光の進行方向などを正確に表したものではない。投射光205は、曲面ミラー25の反射面250における光204の照射範囲の曲率に応じて、水平方向(
図18の紙面の上下方向)に沿って拡大される。反射面250には、光204を構成する光204-1~4の各々が照射される。光204-1~4の各々は、反射面250で個別に反射される。光204-1は、反射面250で反射され、投射光205-1として投射される。光204-2は、反射面250で反射され、投射光205-2として投射される。光204-3は、反射面250で反射され、投射光205-3として投射される。光204-4は、反射面250で反射され、投射光205-4として投射される。光204-1~4の各々は、反射面250の曲率に応じた投射角で、投射光205-1~4の各々として投射される。
【0108】
例えば、変調光203や光204、投射光205の光路上に、遮蔽器(図示しない)や0次光除去器(図示しない)が配置されてもよい。遮蔽器や0次光除去器については、第1の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0109】
図19は、空間光変調器23の変調部230に設定される第1変調領域231と第2変調領域232の別の一例である。
図19の例では、第1変調領域231および第2変調領域232の各々が四分割される。
図19の例では、第1変調領域231および第2変調領域232の各々に、四つのサブ領域が設定される。
【0110】
図19において、第1変調領域231には、光源21から出射された光202-1~2が照射される。第1変調領域231には、第1サブ領域2311、第2サブ領域2312、第3サブ領域2313、および第4サブ領域2314が割り当てられる。すなわち、第1変調領域231は、四つのサブ領域に分割される。四つのサブ領域の各々には、互いに異なる位相画像が設定される。第1サブ領域2311および第3サブ領域2313には、光202-1が照射される。第2サブ領域2312および第4サブ領域2314には、光202-2が照射される。
【0111】
図19において、第2変調領域232には、光源21から出射された光202-3~4が照射される。第2変調領域232には、第1サブ領域2321、第2サブ領域2322、第3サブ領域2323、および第4サブ領域2324が割り当てられる。すなわち、第2変調領域232は、四つのサブ領域に分割される。四つのサブ領域の各々には、互いに異なる位相画像が設定される。第1サブ領域2321および第3サブ領域2323には、光202-3が照射される。第2サブ領域2322および第4サブ領域2324には、光202-4が照射される。
図19のように、第1変調領域231および第2変調領域232の各々を四分割し、光202の照射範囲を二つずつ設定すれば、四つの通信対象と同時に偏光多重通信を行うことができる。
【0112】
以上のように、本実施形態の通信装置は、送光装置、受光装置、および制御装置を備える。送光装置は、光源、空間光変調器、波長板、および曲面ミラーを備える。光源は、第1出射器、第2出射器、第3出射器、および第4出射器によって構成される。第1出射器、第2出射器、第3出射器、および第4出射器は、空間光変調器の変調部に向けて、光を出射する。空間光変調器は、光源から出射された光が照射される複数の変調領域が設定される変調部を有する。空間光変調器の変調部は、第1変調領域と第2変調領域に分割される。第1変調領域は、第1出射器および第2出射器から出射された光の各々が照射される領域を含む。第2変調領域は、第3出射器および第4出射器から出射された光の各々が照射される領域を含む。空間光変調器は、照射された光の位相を、変調部に設定された第1変調領域および第2変調領域の各々で変調する。波長板は、空間光変調器の変調部に設定された第1変調領域および第2変調領域の各々で変調された変調光を、互いに異なる偏光状態に変換する。曲面ミラーは、空間光変調器の変調部に設定された第1変調領域および第2変調領域で変調された変調光が照射される曲面状の反射面を有する。曲面ミラーは、変調光を反射面で反射し、反射面の曲率に応じて投射角が拡大された投射光を投射する。受光装置は、他の通信装置から送光された空間光信号を受光する。制御装置は、他の通信装置に向けて送光する空間光信号を形成するためのパターンを送光装置の空間光変調器の変調部に設定された第1変調領域および第2変調領域の各々に設定する。制御装置は、パターンが設定された変調部に光が照射されるように光源を制御する。制御装置は、受光装置によって受光された空間光信号に由来する信号を取得する。
【0113】
以上のように、本実施形態の送光装置は、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域の各々で変調された変調光を、互いに異なる偏光状態に変換する。本実施形態の送光装置から投射される投射光は、互いに異なる偏光状態に変換された光成分を含む。そのため、本実施形態の送光装置は、偏光状態ごとに異なる複数の空間光信号を同時に送光できる。すなわち、本実施形態によれば、多重化された空間光信号を用いた光空間通信を実現できる。また、本実施形態の送光装置は、第1の実施形態の送光装置の2倍の出射器を含む。そのため、本実施形態の通信装置によれば、第1の実施形態と比べて、より多くの通信対象と通信できる。
【0114】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、二つの空間光変調器を用いて、複数の通信対象と偏光多重通信を行う。
【0115】
(構成)
図20は、本実施形態の通信装置3の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の通信装置3は、送光装置30、受光装置36、および制御装置39を備える。受光装置36は、第1の実施形態の受光装置16と同様の構成である。制御装置39は、詳細は異なるものの、第1の実施形態の制御装置39とほぼ同様の構成である。以下においては、第1の実施形態とは異なる送光装置30について、詳細に説明する。
【0116】
〔送光装置〕
送光装置30の構成について、図面を参照しながら説明する。
図21~
図22は、送光装置30の構成の一例を示す概念図である。送光装置30は、光源31、第1空間光変調器331、第2空間光変調器332、波長板34、および曲面ミラー35を備える。第1空間光変調器331は、変調部3310を有する。第2空間光変調器332は、変調部3320を有する。第1空間光変調器331と第2空間光変調器332は、同様の構成である。第1空間光変調器331と第2空間光変調器332は、互いの長辺が垂直になるように配置される。すなわち、第1空間光変調器331と第2空間光変調器332は、偏光方向が互いに直交するように配置される。
図21は、送光装置30の内部構成を横方向から見た側面図である。
図22は、送光装置30の内部構成を上方向から見た上面図である。
図22においては、光源31、第1空間光変調器331、および第2空間光変調器332を図示し、波長板34と曲面ミラー35は省略する。
図21~
図22は、概念的なものであり、各構成要素間の位置関係や、光の進行方向などを正確に表したものではない。
【0117】
光源31は、第1出射器311-1、第2出射器311-2、第1レンズ312-1、および第2レンズ312-2を含む。第1出射器311-1と第2出射器311-2は、第1空間光変調器331および第2空間光変調器332までの光路において、互いの出射軸が交差しないように配置される。
【0118】
第1出射器311-1は、制御装置39の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光301-1を、第1レンズ312-1に向けて出射する。第1出射器311-1から出射されるレーザ光301-1は、偏光である。第1レンズ312-1は、第1出射器311-1から出射されるレーザ光301-1の光路上に配置される。第1レンズ312-1は、第1出射器311-1から出射されたレーザ光301-1を、第1空間光変調器331の変調部3310の大きさに合わせて拡大する。第1レンズ312-1によって拡大された光302-1は、第1空間光変調器331の変調部3310に向けて進行する。
【0119】
第2出射器311-2は、制御装置39の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光301-2を、第2レンズ312-2に向けて出射する。第2出射器311-2から出射されるレーザ光301-2は、偏光である。本実施形態において、第1空間光変調器331と第2空間光変調器332は、偏光方向が互いに直交するように配置される。そのため、第1出射器311-1の出射するレーザ光301-1の偏光方向と、第2出射器311-2の出射するレーザ光301-2の偏光方向とは、互いに直交するように設定される。第2レンズ312-2は、第2出射器311-2から出射されるレーザ光301-2の光路上に配置される。第2レンズ312-2は、第2出射器311-2から出射されたレーザ光301-2を、第2空間光変調器332の変調部3320の大きさに合わせて拡大する。第2レンズ312-2によって拡大された光302-2は、第2空間光変調器332の変調部3320に向けて進行する。
【0120】
第1出射器311-1および第2出射器311-2の各々から出射されるレーザ光301-1~2の波長は、特に限定されず、用途に応じて選定されればよい。レーザ光301-1~2の波長は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、偏光方向が互いに直交するように配置された第1空間光変調器331と第2空間光変調器332に向けて光302-1~2を照射するため、レーザ光301-1~2の偏光方向も直交する。例えば、第1出射器311-1および第2出射器311-2は、可視や赤外の波長帯のレーザ光301-1~2を出射する。例えば、800~900ナノメートル(nm)の近赤外線であれば、レーザクラスを上げられるので、他の波長帯よりも1桁くらい感度を向上できる。例えば、1.55マイクロメートル(μm)の波長帯の赤外線ならば、高出力のレーザ光源を用いることができる。1.55μmの波長帯の赤外線のレーザ光源としては、アルミニウムガリウムヒ素リン(AlGaAsP)系レーザ光源や、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)系レーザ光源などを用いることができる。レーザ光301-1~2の波長が長い方が、回折角を大きくでき、高いエネルギーに設定できる。
【0121】
第1空間光変調器331は、第1の実施形態の空間光変調器13と同様の構成である。第1空間光変調器331は、変調部3310を有する。変調部3310には、光302-1が照射される。第1~第2の実施形態と同様に、変調部3310には、二つ以上の変調領域やサブ領域が設定されてもよい。変調部3310には、光302-1が照射される。光302-1は、変調部3310で変調されて、変調光303-1として出射される。
【0122】
第2空間光変調器332は、第1の実施形態の空間光変調器13と同様の構成である。第1空間光変調器331と第2空間光変調器332は、同じスペックでもよいし、異なるスペックでもよい。本実施形態においては、第1空間光変調器331と第2空間光変調器332が同じスペックの例をあげる。第2空間光変調器332は、変調部3320を有する。変調部3320には、光302-2が照射される。第1~第2の実施形態と同様に、変調部3320には、二つ以上の変調領域やサブ領域が設定されてもよい。変調部3320には、光302-2が照射される。光302-2は、変調部3320で変調されて、変調光303-2として出射される。
【0123】
第1空間光変調器331と第2空間光変調器332とは、長辺が互いに垂直になるように配置される。第1空間光変調器331の変調部3310の表面と、第2空間光変調器332の変調部3320の表面とは、同じ向きに向けて配置される。第1空間光変調器331と第2空間光変調器332とは、間隔を空けて配置されてもよいし、間隔を空けずに配置されてもよい。第1空間光変調器331と第2空間光変調器332との間に、隔壁(図示しない)が配置されてもよい。例えば、隔壁は、第1空間光変調器331の変調部3310の表面と、第2空間光変調器332の変調部3320の表面とに対して垂直に立てられる。
【0124】
図23は、第1空間光変調器331と第2空間光変調器332の配置例を示す概念図である。第1空間光変調器331と第2空間光変調器332は、長辺が垂直になるように配置される。
図23の例では、第1空間光変調器331と第2空間光変調器332が同じスペックであるものとする。すなわち、
図23のように配置される場合、第1空間光変調器331の変調部3310の偏光方向と、第2空間光変調器332の変調部3320の偏光方向とは直交する。第1空間光変調器331の変調部3310には、変調光303-1によって形成される画像に対応するパターン(位相画像)が設定される。第2空間光変調器332の変調部3320には、変調光303-2によって形成される画像に対応する位相画像が設定される。
図23のように、第1空間光変調器331と第2空間光変調器332とが、長辺が垂直になるように配置されれば、二つの通信対象と同時に偏光多重通信を行うことができる。
【0125】
第1空間光変調器331の変調部3310と、第2空間光変調器332の変調部3320とは、複数の領域に分割される(タイリングとも呼ぶ)。例えば、変調部3310および変調部3320の各々は、所望のアスペクト比の四角形の領域(タイルとも呼ぶ)に分割される。複数のタイルの各々は、複数の画素によって構成される。変調部3310および変調部3320に設定された複数のタイルの各々には、位相画像がタイリングされる。例えば、複数のタイルの各々には、予め生成された位相画像が設定される。複数のタイルの各々には、投射される画像に対応する位相画像が設定される。
【0126】
複数のタイルに位相画像が設定された状態で、変調部3310および変調部3320に光302が照射されると、各タイルの位相画像に対応する画像を形成する変調光303が出射される。変調部3310および変調部3320に設定されるタイルが多いほど、鮮明な画像を表示させることができるが、各タイルの画素数が低下すると解像度が低下する。そのため、変調部3310および変調部3320に設定されるタイルの大きさや数は、用途に応じて設定される。
【0127】
変調部3310で変調された変調光303-1と、変調部3320で変調された変調光303-2とは、出射された後に、互いに混じり合うようにも設定できるし、互いに混じり合わないようにも設定できる。変調部3310および変調部3320から出射された後の変調光303-1~2の混合状況は、光源31からの光302の出射方向を調整することで設定できる。
【0128】
波長板34は、第1空間光変調器331および第2空間光変調器332と、曲面ミラー35との間に配置される。波長板34は、光302-1~2が入射せず、第1空間光変調器331および第2空間光変調器332で変調された変調光303-1~2が入射する位置に配置される。例えば、波長板34は、第1~第2の実施形態の隔壁によって、変調部3310および変調部3320の面に対して略平行に配置されてもよい。送光装置30から円偏光を出射する場合、波長板34として1/4波長板が用いられる。第1空間光変調器331で変調された変調光303-1と、第2空間光変調器332で変調された変調光303-2とは、偏光方向が直交するため、単一の波長板34(1/4波長板)を挿入すれば、互いに逆回転の円偏光が得られる。送光装置30から直線偏光を出射する場合、波長板34は配置されない。第1空間光変調器331で変調された変調光303-1と、第2空間光変調器332で変調された変調光303-2とは、偏光方向が直交するため、波長板34が無くても、互いに直交する直線偏光が得られる。
【0129】
図24は、送光装置30の内部構成を上方から見た概念図である。
図24においては、光源31を省略する。
図24は、概念的なものであり、各構成要素間の位置関係や、光の進行方向などを正確に表したものではない。
【0130】
第1空間光変調器331の変調部3310で変調された変調光303-1は、曲面ミラー35の反射面350に到達するまでの間で、波長板34を通過する。波長板34を通過した変調光303-1は、波長板34の偏光特性に応じた光304-1になる。波長板34を通過した光304-1は、曲面ミラー35の反射面350において、第1空間光変調器331の変調部3310に設定された位相画像に応じた像を結像させる。
【0131】
第2空間光変調器332の変調部3320で変調された変調光303-2は、曲面ミラー35の反射面350に到達するまでの間で、波長板34を通過する。波長板34を通過した変調光303-2は、波長板34の偏光特性に応じた光304-2になる。波長板34を通過した光304-2は、曲面ミラー35の反射面350において、第2空間光変調器332の変調部3320に設定された位相画像に応じた像を結像させる。
【0132】
波長板34を通過した光304-1~2の偏光状態は、互いに異なる。すなわち、波長板34は、変調光303-1~2を、互いに異なる偏光状態の光304-1~2にする。波長板34を通過した光304-1~2は、偏光状態が異なるため、空間光信号の受信側で分離可能である。
【0133】
曲面ミラー35は、第1の実施形態の曲面ミラー15と同様の構成である。曲面ミラー35は、曲面状の反射面350を有する反射鏡である。曲面ミラー35の反射面350は、投射光305の投射角に合わせた曲率を有する。
図21の例の場合、曲面ミラー35の反射面350は、円柱の側面の形状を有する。例えば、曲面ミラー35の反射面350は、球面でもよい。例えば、曲面ミラー35の反射面350は、自由曲面であってもよい。例えば、曲面ミラー35の反射面350は、単一の曲面ではなく、複数の曲面を組み合わせた形状であってもよい。例えば、曲面ミラー35の反射面350は、曲面と平面を組み合わせた形状であってもよい。
【0134】
曲面ミラー35は、第1空間光変調器331の変調部3310および第2空間光変調器332の変調部3320に、反射面350を向けて配置される。言い換えると、曲面ミラー35は、変調光303-1~2の光路上に配置される。曲面ミラー35の反射面350には、第1空間光変調器331の変調部3310および第2空間光変調器332の変調部3320で変調された変調光303-1~2のうち、波長板34を通過した光304-1~2が照射される。光304-1は、第1空間光変調器331の変調部3310で変調された変調光303-1のうち、波長板34を通過した光である。光304-2は、第2空間光変調器332の変調部3320で変調された変調光303-2のうち、波長板34を通過した光である。
【0135】
曲面ミラー35の反射面350で反射された光(投射光305)は、反射面350の曲率に応じた拡大率で拡大されて、投射される。
図25は、反射面350で反射された投射光305の投射の一例を示す概念図である。
図25は、概念的なものであり、光の進行方向などを正確に表したものではない。投射光305は、曲面ミラー35の反射面350における光304の照射範囲の曲率に応じて、水平方向(
図25の紙面の上下方向)に沿って拡大される。反射面350には、光304を構成する光304-1~2の各々が照射される。光304-1~2の各々は、反射面350で個別に反射される。光304-1は、反射面350で反射され、投射光305-1として投射される。光304-2は、反射面350で反射され、投射光305-2として投射される。光304-1~2の各々は、反射面350の曲率に応じた投射角で、投射光305-1~2の各々として投射される。
図25の例では、投射光305-1~2の各々の投射範囲が重なっているが、投射光305-1~2の偏光状態が異なるため、空間光信号の受信側で分離することができる。
【0136】
例えば、変調光303や光304、投射光305の光路上に、遮蔽器(図示しない)や0次光除去器(図示しない)が配置されてもよい。遮蔽器や0次光除去器については、第1の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0137】
図26は、第1空間光変調器331の変調部3310と第2空間光変調器332の変調部3320に、照射範囲を四つずつ設定する例である。
図26の例では、八つの出射器311(図示しない)から独立して出射されたレーザ光301に基づく光302が、変調部3310および変調部3320に照射されるものとする。変調部3310および変調部3320の各々には、四つの出射器311(図示しない)から出射されたレーザ光301に基づく光302が照射される。
図26には、光302の照射範囲を楕円で示す。
図26のように、変調部3310および変調部3320の各々に照射範囲が四つずつ設定される。それぞれの照射範囲に異なる位相画像が設定されることで、四つの通信対象と同時に偏光多重通信を行うことができる。
【0138】
図27は、第1空間光変調器331の変調部3310と第2空間光変調器332の変調部3320に、照射範囲を四つずつ設定する別の一例である。
図27の例では、八つの出射器311(図示しない)から独立して出射されたレーザ光301に基づく光302が、変調部3310および変調部3320に照射されるものとする。変調部3310および変調部3320の各々には、四つの出射器311(図示しない)から出射されたレーザ光301に基づく光302が照射される。
図27には、光302の照射範囲を楕円で示す。
図27の例では、変調部3310および変調部3320の各々を八分割する。八分割された変調部3310の各々の領域には、照射される光302によって形成される画像に対応するパターン(位相画像)が設定される。八分割された変調部3320の各々の領域にも、照射される光302によって形成される画像に対応する位相画像が設定される。
図27の例では、短軸方向の二つの領域に、同一の光302が照射される。
図27のように、変調部3310および変調部3320の各々が八分割され、それぞれの照射範囲に異なる位相画像が設定されれば、八つの通信対象と同時に偏光多重通信を行うことができる。
【0139】
以上のように、本実施形態の通信装置は、送光装置、受光装置、および制御装置を備える。送光装置は、光源、空間光変調器、波長板、および曲面ミラーを備える。光源は、第1出射器と第2出射器によって構成される。第1出射器と第2出射器は、空間光変調器の変調部に向けて、光を出射する。空間光変調器は、第1空間光変調器と第2空間光変調器によって構成される。第1空間光変調器と第2空間光変調器とは、偏光方向が互いに非平行になるように配置される。第1空間光変調器と第2空間光変調器は、光源から出射された光が照射される変調領域が設定される変調部を有する。第1空間光変調器の変調部には、第1変調領域が設定される。第2空間光変調器の変調部には、第2変調領域が設定される。第1空間光変調器および第2空間光変調器は、照射された光の位相を、各々の変調部で変調する。波長板は、第1空間光変調器の変調部に設定された第1変調領域で変調された変調光と、第2空間光変調器の変調部に設定された第2変調領域で変調された変調光とを、互いに異なる偏光状態に変換する。曲面ミラーは、第1変調領域および第2変調領域で変調された変調光が照射される曲面状の反射面を有する。曲面ミラーは、変調光を反射面で反射し、反射面の曲率に応じて投射角が拡大された投射光を投射する。受光装置は、他の通信装置から送光された空間光信号を受光する。制御装置は、他の通信装置に向けて送光する空間光信号を形成するためのパターンを送光装置の第1空間光変調器および第2空間光変調器の変調部に設定する。制御装置は、パターンが設定された第1空間光変調器および第2空間光変調器の変調部に光が照射されるように光源を制御する。制御装置は、受光装置によって受光された空間光信号に由来する信号を取得する。
【0140】
本実施形態の送光装置は、第1空間光変調器および第2空間光変調器の変調部に設定された変調領域で変調された変調光を、互いに異なる偏光状態に変換する。本実施形態の送光装置から投射される投射光は、互いに異なる偏光状態に変換された光成分を含む。そのため、本実施形態の送光装置は、偏光状態ごとに異なる複数の空間光信号を同時に送光できる。すなわち、本実施形態によれば、多重化された空間光信号を用いた光空間通信を実現できる。また、本実施形態の送光装置によれば、第1空間光変調器および第2空間光変調器の偏光方向が互いに異なるため、単一の1/4波長板を用いて、右回り/左回りの円偏光を送光できる。さらに、本実施形態の送光装置によれば、複数の出射器から出射された光を、第1空間光変調器および第2空間光変調器の変調部に割り振ることによって、より多くの通信対象と通信できる。
【0141】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、複数の波長帯の空間光信号を用いて光空間通信を行う。
【0142】
(構成)
図28は、本実施形態の通信装置4の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の通信装置4は、送光装置40、受光装置46、および制御装置49を備える。以下においては、送光装置40および受光装置46について、個別に説明する。制御装置49は、詳細は異なるものの、第1の実施形態の制御装置19と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0143】
〔送光装置〕
まず、送光装置40の構成について、図面を参照しながら説明する。
図29~
図30は、送光装置40の構成の一例を示す概念図である。送光装置40は、光源41、空間光変調器43、および曲面ミラー45を備える。空間光変調器43は、変調部430を有する。空間光変調器43の変調部430には、第1変調領域431と第2変調領域432が設定される。第1変調領域431および第2変調領域432には、サブ領域(第1サブ領域、第2サブ領域)が二つずつ設定される。
図29は、送光装置40の内部構成を横方向から見た側面図である。
図30は、送光装置40の内部構成を上方向から見た上面図である。
図30においては、光源41と空間光変調器43を図示し、曲面ミラー45は省略する。
図29~
図30は、概念的なものであり、各構成要素間の位置関係や、光の進行方向などを正確に表したものではない。
【0144】
光源41は、複数の出射器と複数のレンズを含む。複数の出射器は、第1出射器411-1、第2出射器411-2、第3出射器411-3、および第4出射器411-4によって構成される。第1出射器411-1、第2出射器411-2、第3出射器411-3、および第4出射器411-4は、互いに異なる波長帯の光を出射する。複数のレンズは、第1レンズ412-1、第2レンズ412-2、第3レンズ412-3、および第4レンズ412-4によって構成される。第1出射器411-1、第2出射器411-2、第3出射器411-3、および第4出射器411-4は、空間光変調器43までの光路において、互いの出射軸が交差しないように配置される。複数の出射器から出射される光は、空間光変調器43の変調部430に割り当てられた異なる変調領域(サブ領域)に設定された異なる位相画像で変調され、同じ方向に向けて投射される。
【0145】
第1出射器411-1は、制御装置49の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光401-1を、第1レンズ412-1に向けて出射する。レーザ光401-1の波長帯はL1である。第1出射器411-1が出射するレーザ光401-1は、偏光である。第1レンズ412-1は、第1出射器411-1から出射されるレーザ光401-1の光路上に配置される。第1レンズ412-1は、第1出射器411-1から出射されたレーザ光401-1を、空間光変調器43の変調部430の第1変調領域431の第1サブ領域の大きさに合わせて拡大する。第1レンズ412-1によって拡大された光402-1は、第1変調領域431の第1サブ領域に向けて進行する。
【0146】
第2出射器411-2は、制御装置49の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光401-2を、第2レンズ412-2に向けて出射する。レーザ光401-2の波長帯はL2である。第2出射器411-2から出射されるレーザ光401-2、は偏光である。第2レンズ412-2は、第2出射器411-2から出射されるレーザ光401-2の光路上に配置される。第2レンズ412-2は、第2出射器411-2から出射されたレーザ光401-2を、空間光変調器43の変調部430の第1変調領域431の第2サブ領域の大きさに合わせて拡大する。第1サブ領域と第2サブ領域とは、第1変調領域431の異なる位置に設定される。第2レンズ412-2によって拡大された光402-2は、第1変調領域431の第2サブ領域に向けて進行する。光402-1と光402-2は、同じ第1変調領域431に含まれる、異なるサブ領域に照射される。
【0147】
第3出射器411-3は、制御装置49の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光401-3を、第3レンズ412-3に向けて出射する。レーザ光401-3の波長帯はL3である。第3出射器411-3から出射されるレーザ光401-3は、偏光である。第3レンズ412-3は、第3出射器411-3から出射されるレーザ光401-3の光路上に配置される。第3レンズ412-3は、第3出射器411-3から出射されたレーザ光401-3を、空間光変調器43の変調部430の第2変調領域432の第1サブ領域の大きさに合わせて拡大する。第3レンズ412-3によって拡大された光402-3は、第2変調領域432の第1サブ領域に向けて進行する。
【0148】
第4出射器411-4は、制御装置49の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光401-4を、第4レンズ412-4に向けて出射する。レーザ光401-2の波長帯はL4である。第4出射器411-4から出射されるレーザ光401-4は、偏光である。空間光変調器43の変調部430に照射される光の偏光方向は、同一に設定されることが求められる。そのため、レーザ光401-1~4の偏光方向は、変調部430において同一になるように設定される。第4レンズ412-4は、第4出射器411-4から出射されるレーザ光401-4の光路上に配置される。第4レンズ412-4は、第4出射器411-4から出射されたレーザ光401-4を、空間光変調器43の変調部430の第2変調領域432の第2サブ領域の大きさに合わせて拡大する。第1サブ領域と第2サブ領域とは、第2変調領域432の異なる位置に設定される。第4レンズ412-4によって拡大された光402-4は、第2変調領域432の第2サブ領域に向けて進行する。光402-3と光402-4は、同じ第2変調領域432に含まれる、異なるサブ領域に照射される。
【0149】
第1出射器411-1、第2出射器411-2、第3出射器411-3、および第4出射器411-4の各々から出射されるレーザ光401-1~4の波長帯は、互いに異なる。本実施形態では、同じ空間光変調器43に向けて光402-1~4を照射するため、変調部430に照射されるレーザ光401-1~4の偏光方向は同一である。例えば、第1出射器411-1、第2出射器411-2、第3出射器411-3、および第4出射器411-4は、可視や赤外の波長帯のレーザ光401-1~4を出射する。例えば、800~900ナノメートル(nm)の近赤外線であれば、レーザクラスを上げられるので、他の波長帯よりも1桁くらい感度を向上できる。例えば、1.55マイクロメートル(μm)の波長帯の赤外線ならば、高出力のレーザ光源を用いることができる。1.55μmの波長帯の赤外線のレーザ光源としては、アルミニウムガリウムヒ素リン(AlGaAsP)系レーザ光源や、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)系レーザ光源などを用いることができる。レーザ光401-1~4の波長が長い方が、回折角を大きくでき、高いエネルギーに設定できる。
【0150】
空間光変調器43は、第1の実施形態の空間光変調器13と同様の構成である。空間光変調器43は、変調部430を有する。変調部430には、第1変調領域431と第2変調領域432が設定される。第1変調領域431および第2変調領域432の各々は、少なくとも二つのサブ領域に分割される。第1変調領域431には、光402-1~2が照射される。光402-1~2は、第1変調領域431の異なるサブ領域に照射される。光402-1~2は、第1変調領域431の異なるサブ領域で変調されて、変調光403-1~2として出射される。第2変調領域432には、光402-3~4が照射される。光402-3~4は、第2変調領域432の異なるサブ領域に照射される。光402-3~4は、第2変調領域432の異なるサブ領域で変調されて、変調光403-3~4として出射される。
【0151】
第1変調領域431と第2変調領域432の間には、隔壁435が配置される。隔壁435は、変調部430の面に対して垂直に立てられる。隔壁435は、第1変調領域431で変調された変調光403-1~2と、第2変調領域432で変調された変調光403-3~4とが、変調部430で変調された直後に混じり合わないように、変調部430を二分する。第1変調領域431および第2変調領域432に割り当てられる複数のサブ領域の各々には、制御装置49の制御に応じて、光402-1~4を変調光403-1~4に変調するためのパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。空間光変調器43を用いる場合、回折現象を利用するため、回折格子と同じように高次の像が発生する。高次の像は、電力が低くなるために鮮明ではなくなるが、完全に視認されないようにすることは難しい。隔壁435は、被投射面に表示されうる高次の像の発生を防止する。
【0152】
図31は、空間光変調器43の変調部430に設定される第1変調領域431と第2変調領域432の一例である。
図31には、第1変調領域431と第2変調領域432に照射される光402-1~4の照射領域の内部に、照射される光402-1~4の波長帯(L1、L2、L3、L4)を示す。第1変調領域431に割り当てられる二つのサブ領域の各々には、変調光403-1~2によって形成される画像に対応する位相画像が設定される。第2変調領域432に割り当てられる二つのサブ領域の各々には、変調光403-3~4によって形成される画像に対応する位相画像が設定される。第1変調領域431と第2変調領域432に割り当てられる複数のサブ領域に設定される位相画像は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図31のように、互いに異なる四つの波長帯の光402-1~4を用いれば、四つの通信対象と同時に波長多重通信を行うことができる。
【0153】
空間光変調器43の変調部430に割り当てられた第1変調領域431および第2変調領域432の各々は、複数の領域に分割される(タイリングとも呼ぶ)。例えば、第1変調領域431および第2変調領域432の各々は、所望のアスペクト比の四角形の領域(タイルとも呼ぶ)に分割される。複数のタイルの各々は、複数の画素によって構成される。第1変調領域431および第2変調領域432の各々に設定された少なくとも二つのサブ領域に含まれる複数のタイルの各々には、位相画像がタイリングされる。例えば、複数のタイルの各々には、予め生成された位相画像が設定される。複数のタイルの各々には、投射される画像に対応する位相画像が設定される。
【0154】
複数のタイルに位相画像が設定された状態で、変調部430に光402が照射されると、各タイルの位相画像に対応する画像を形成する変調光403が出射される。変調部430に設定されるタイルが多いほど、鮮明な画像を表示させることができるが、各タイルの画素数が低下すると解像度が低下する。そのため、変調部430に設定されるタイルの大きさや数は、用途に応じて設定される。
【0155】
第1変調領域431で変調された変調光403-1~2と、第2変調領域432で変調された変調光403-3~4とは、変調部430からの出射直後は、隔壁435によって隔てられる。変調光403-1~2と変調光403-3~4は、変調部430から出射された後に、互いに混じり合うようにも設定できるし、互いに混じり合わないようにも設定できる。変調部430から出射された後の変調光403-1~4の混合状況は、光源41からの光402の出射方向を調整することで設定できる。
【0156】
図32は、送光装置40の内部構成を上方から見た概念図である。
図32においては、光源41を省略する。
図32は、概念的なものであり、各構成要素間の位置関係や、光の進行方向などを正確に表したものではない。第1変調領域431で変調された変調光403-1~2は、曲面ミラー45の反射面450において、第1変調領域431のサブ領域に設定された位相画像に対応する像を結像させる。第2変調領域432で変調された変調光403-3~4は、曲面ミラー45の反射面450において、第2変調領域432のサブ領域に設定された位相画像に対応する像を結像させる。変調光403-1~4は、互いに異なる波長帯の光である。
【0157】
曲面ミラー45は、空間光変調器43の変調部430に反射面450を向けて配置される。言い換えると、曲面ミラー45は、変調光403-1~4の光路上に配置される。曲面ミラー45の反射面450には、空間光変調器43の変調部430で変調された変調光403-1~4が照射される。
【0158】
曲面ミラー45の反射面450で反射された光(投射光405)は、反射面450の曲率に応じた拡大率で拡大されて、投射される。
図33は、反射面450で反射された投射光405の投射の一例を示す概念図である。
図33は、概念的なものであり、光の進行方向などを正確に表したものではない。投射光405は、曲面ミラー45の反射面450における変調光403の照射範囲の曲率に応じて、水平方向(
図33の紙面の上下方向)に沿って拡大される。反射面450には、変調光403-1~4の各々が照射される。変調光403-1~4の各々は、反射面450で個別に反射される。変調光403-1は、反射面450で反射され、投射光405-1として投射される。変調光403-2は、反射面450で反射され、投射光405-2として投射される。変調光403-3は、反射面450で反射され、投射光405-3として投射される。変調光403-4は、反射面450で反射され、投射光405-4として投射される。変調光403-1~4の各々は、反射面450の曲率に応じた投射角で、投射光405-1~4の各々として投射される。
図33の例では、投射光405-1~4の各々の投射範囲が重なっているが、投射光405-1~4の波長帯が互いに異なるため、分離することができる。なお、投射光405-1~4の各々は、投射範囲が重ならない異なる向きに向けて投射されてもよい。
【0159】
例えば、変調光403や投射光405の光路上に、遮蔽器(図示しない)や0次光除去器(図示しない)が配置されてもよい。遮蔽器や0次光除去器については、第1の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0160】
図34は、二つの空間光変調器43(第1空間光変調器43-1、第2空間光変調器43-2)を用いる例である。
図34の例では、八つの光源41(図示しない)から、八つの波長帯の光402-1~8を、二つの空間光変調器43(第1空間光変調器43-1、第2空間光変調器43-2)に照射する。第1空間光変調器43-1の変調部4310には、光402-1~4が照射される。第1空間光変調器43-1の変調部4310は、光402-1~4の各々に対応付けられたサブ領域に分割される。第2空間光変調器43-2の変調部4320には、光402-5~8が照射される。第2空間光変調器43-2の変調部4320は、光402-5~8の各々に対応付けられたサブ領域に分割される。
図34には、第1空間光変調器43-1と第2空間光変調器43-2に照射される光402-1~8の照射領域の内部に、光402-1~8の波長帯(L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8)を示す。第1空間光変調器43-1の変調部4310および第2空間光変調器43-2の変調部4320に設定された複数のサブ領域には、光402-1~8に対応する位相画像が設定される。変調部4310および変調部4320の複数のサブ領域に位相画像が設定された状態で、光402-1~8が各々に対応付けられたサブ領域に照射されることで、変調光403-1~8が出射される。
【0161】
また、
図34の例では、第1空間光変調器43-1に隔壁435-1が設けられ、第2空間光変調器43-2に隔壁435-2が設けられる。
図34のように、二つの空間光変調器43(第1空間光変調器43-1、第2空間光変調器43-2)を用いて、二つの空間光変調器43の各々に四つずつの波長帯の光402を照射すれば、八つの通信対象と同時に波長多重通信を行うことができる。例えば、八つの波長帯の光402の光のうち二つずつを同じ通信対象との間で用いる場合は、四つの通信対象と同時に波長多重通信を行うことができる。
【0162】
〔受光装置〕
次に、受光装置46の構成について図面を参照しながら説明する。
図35は、受光装置46の構成について説明するための概念図である。受光装置46は、集光器461、複数の受光素子47-1~M、複数の受光フィルタ470-1~M、および受信回路48を備える(Mは、2以上の自然数)。複数の受光素子47-1~Mは、二つの受光素子47が対をなすように配置される。対をなす二つの受光素子47は、隣接して配置される。対をなす二つの受光素子47には、同一の送信元から送光された、偏光多重された光信号が受光される。
図35は、受光装置46の内部構成を上方向から見た平面図である。なお、受信回路48の位置については、特に限定を加えない。受信回路48は、受光装置46の内部に配置されてもよいし、受光装置46の外部に配置されてもよい。また、制御装置49に受信回路48の機能を含めてもよい。
【0163】
集光器461は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。集光器461の入射面には、空間光信号が入射する。集光器461によって集光された光信号は、複数の受光素子47-1~Mの配置された領域に向けて集光される。例えば、集光器461は、入射した空間光信号を集光するレンズである。例えば、集光器461は、入射した空間光信号を、複数の受光素子47-1~Mの受光部に向けて導光する光線制御素子である。例えば、集光器461は、レンズや光線制御素子を組み合わせた構成であってもよい。集光器461は、複数の受光素子47-1~Mの配置された領域に向けて空間光信号を集光できれば、その構成については特に限定しない。例えば、集光器461によって集光される光信号を、複数の受光素子47-1~Mの受光部に向けて導光する機構が追加されてもよい。
【0164】
複数の受光フィルタ470-1~Mの各々は、複数の受光素子47-1~Mの前段に配置される。複数の受光フィルタ470-1~Mの各々は、複数の受光素子47-1~Mの受光部の各々に対応付けて配置される。例えば、複数の受光フィルタ470-1~Mの各々は、複数の受光素子47-1~Mの受光部に、重ねて配置される。受光フィルタ470-1~Mは、受光対象の空間光信号の波長帯に応じて選択される。例えば、受光対象の空間光信号の波長帯がL1の場合、L1の波長帯の光を選択的に通過させる帯域通過フィルタを含む受光フィルタ470が選択される。例えば、受光対象の空間光信号の波長帯がL2の場合、L2の波長帯の光を選択的に通過させる帯域通過フィルタを含む受光フィルタ470が選択される。例えば、受光対象の空間光信号の波長帯がL3の場合、L3の波長帯の光を選択的に通過させる帯域通過フィルタを含む受光フィルタ470が選択される。例えば、受光対象の空間光信号の波長帯がL4の場合、L4の波長帯の光を選択的に通過させる帯域通過フィルタを含む受光フィルタ470が選択される。複数の受光フィルタ470-1~Mの各々の波長特性に応じて、複数の受光フィルタ470-1~Mの各々に対応する波長帯の光信号が、複数の受光素子47-1~Mの受光部に受光される。
【0165】
受光素子47は、第1の実施形態の受光素子17と同様の構成である。複数の受光素子47-1~Mの各々は、複数の受光フィルタ470-1~Mの各々の後段に配置される。複数の受光素子47-1~Mは、二つずつの受光素子47が対をなすように配置される。
図35の場合、受光素子47-1と受光素子47-2が対をなし、受光素子47-3と受光素子47-4が対をなし、受光素子47-M-1と受光素子47-Mが対をなす。対をなす二つの受光素子47は、隣接して配置される。複数の受光素子47-1~Mの各々は、複数の受光フィルタ470-1~Mの各々を通過した光信号を受光する受光部を有する。複数の受光素子47-1~Mの各々の受光部には、受光フィルタ470が設置される。対をなす二つの受光素子47には、偏光状態が互いに異なる受光フィルタ470が設置される。複数の受光素子47-1~Mの各々は、複数の受光フィルタ470-1~Mの各々を介して、集光器461の出射面と受光部が対面するように配置される。複数の受光素子47-1~Mの各々の受光部は、複数の受光フィルタ470-1~Mの各々に対面するように配置される。複数の受光フィルタ470-1~Mの各々を通過した光信号は、複数の受光素子47-1~Mの各々の受光部で受光される。対をなす二つの受光素子47は、偏光状態が互いに異なる受光フィルタ470を通過した、偏光状態と波長帯が互いに異なる光信号を同時に受光する。複数の受光素子47-1~Mの各々は、受光された光信号を電気信号(以下、信号とも呼ぶ)に変換する。複数の受光素子47-1~Mの各々は、変換後の信号を、受信回路48に出力する。例えば、複数の受光素子47-1~Mのうち対をなす二つの受光素子47ごとに、受信回路48と接続される。例えば、複数の受光素子47-1~Mの各々は、受信回路48と個別に接続される。例えば、複数の受光素子47-1~Mのいくつかをまとめたグループごとに、受信回路48と接続されるように構成されてもよい。
【0166】
受信回路48は、第1の実施形態の受信回路18と同様の構成である。受信回路48は、複数の受光素子47-1~Mの各々から出力された信号を取得する。受信回路48は、複数の受光素子47-1~Mの各々からの信号を増幅する。受信回路48は、増幅された信号をデコードし、通信対象からの信号を解析する。例えば、受信回路48は、複数の受光素子47-1~Mのうち対をなす二つの受光素子47ごとに信号を解析する。例えば、受信回路48は、複数の受光素子47-1~Mごとの信号をまとめて解析する。複数の受光素子47-1~Mごとの信号をまとめて解析する場合は、単一の通信対象と通信するシングルチャンネルの受光装置46を実現できる。例えば、受信回路48は、複数の受光素子47-1~Mごとに、個別に信号を解析する。複数の受光素子47-1~Mごとに個別に信号を解析する場合、複数の通信対象と同時に通信するマルチチャンネルの受光装置46を実現できる。受信回路48によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。受信回路48によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0167】
〔波長多重+偏光多重〕
次に、波長多重と偏光多重を組み合わせる例について図面を参照しながら説明する。
図36は、波長多重と偏光多重を組み合わせる場合の、受光フィルタ470の構成例について説明するための概念図である。
図36には、対をなす二つの受光素子47-1~2の各々に対応付けられた、受光フィルタ470-1と受光フィルタ470-2とを例に挙げて説明する。
図36の例では、二つの受光素子47-1~2は、間隔を空けて配置されているが、実際には隣接して配置される。
【0168】
受光素子47-1の受光対象の光信号の偏光方向は、
図36の紙面において右回り(時計回り)である。受光素子47-1に対応付けられた受光フィルタ470-1は、波長板470-11、偏光板470-12、および帯域通過フィルタ470-13によって構成される。波長板470-11は、入射した右回りの円偏光の光信号を直線偏光に変換する。偏光板470-12は、波長板470-11によって変換され直線偏光のうち、
図36の紙面に対して上下方向の偏光方向の直線偏光を通過させる。帯域通過フィルタ470-13は、受光対象の波長帯の光を選択的に通過させる。受光フィルタ470-1を通過した偏光成分の光信号は、受光素子47-1によって受光される。
【0169】
受光素子47-2の受光対象の光信号の偏光方向は、
図36の紙面において左回り(反時計回り)である。受光素子47-2に対応付けられた受光フィルタ470-2は、波長板470-21、偏光板470-22、および帯域通過フィルタ470-23によって構成される。波長板470-21は、入射した左回りの円偏光の光信号を直線偏光に変換する。偏光板470-22は、波長板470-21によって変換され直線偏光のうち、
図36の紙面に対して上下方向の偏光方向の直線偏光を通過させる。帯域通過フィルタ470-23は、受光対象の波長帯の光を選択的に通過させる。受光フィルタ470-2を通過した偏光成分の光信号は、受光素子47-2によって受光される。すなわち、受光素子47-1と受光素子47-2とは、同一の送信元から送光された、偏光方向が互いに逆方向の円偏光であり、波長帯が異なる空間光信号に由来する光信号を受光する。
【0170】
図37は、波長多重通信と偏光多重通信を組み合わせる例における、空間光変調器43の変調部430の領域分けについて説明するための概念図である。
図37の例では、空間光変調器43の変調部430に、第1変調領域431と第2変調領域432が設定される。第1変調領域431および第2変調領域432の各々は、二つずつのサブ領域(第1サブ領域、第2サブ領域)に分割される。
図37には、第1変調領域431と第2変調領域432に照射される光402-1~4の照射領域の内部に、照射される光402-1~4の波長帯(L1、L3、L2、L4)を示す。
【0171】
第1変調領域431には、光源41から出射された光402-1~2が照射される。第1変調領域431には、光402-1に対応する第1サブ領域4311と、光402-2に対応する第2サブ領域4312とが割り当てられる。第1変調領域431の第1サブ領域4311には、光402-1を変調光403-1に変換するためのパターン(位相画像)が設定される。第1変調領域431の第1サブ領域4311には、変調光403-1によって形成される画像に対応する位相画像が設定される。第1変調領域431の第2サブ領域4312には、光402-2を変調光403-2に変換するための位相画像が設定される。第1変調領域431の第2サブ領域4312には、変調光403-2によって形成される画像に対応する位相画像が設定される。第1変調領域431で変調された変調光403-1~2は、左回りの円偏光に変換する波長板(図示しない)を通過させる。
【0172】
第2変調領域432には、光源41から出射された光402-3~4が照射される。第2変調領域432には、光402-3に対応する第1サブ領域4321と、光402-4に対応する第2サブ領域4322とが割り当てられる。第2変調領域432の第1サブ領
域4321には、光402-3を変調光403-3に変換するための位相画像が設定される。第2変調領域432の第1サブ領域4321には、変調光403-3によって形成される画像に対応する位相画像が設定される。第2変調領域432の第2サブ領域4322には、光402-4を変調光403-4に変換するための位相画像が設定される。第2変調領域432の第2サブ領域4322には、変調光403-4によって形成される画像に対応する位相画像が設定される。第2変調領域432で変調された変調光403-3~4は、右回りの円偏光に変換する波長板(図示しない)を通過させる。
図37の例では、第1変調領域431に変調光403-1~2の照射範囲を設定し、第2変調領域432に変調光403-3~4の照射範囲を設定する。そして、第1変調領域431で変調された変調光403-1~2と、第2変調領域432で変調された変調光403-3~4とを、回転方向が反対の円偏光に変換する。
【0173】
図38は、波長多重と偏光多重を組み合わせることによって得られる効果について説明するための概念図である。
図38(A)は、信号光に含まれる波長帯を示す。信号光には、波長帯L1、波長帯L2、波長帯L3、波長帯L4の光が含まれる。
図38(B)は、帯域通過フィルタ波長板との組み合わせの一例を示す概念図である。帯域通過フィルタは、波長帯L3を中心とする分布のある波長帯の光を通過させるフィルタ特性を有する。帯域通過フィルタのみを用いる場合、通過する光量は少ないものの、波長帯L3に近接する波長帯L2や波長帯L4の光が通過する。
図38(C)は、帯域通過フィルタと波長板とが組み合わせられたフィルタを通過する透過光の波長の一例を示す概念図である。
図37のように空間光変調器43の変調部430を領域分けすれば、近接する波長帯の光の偏光方向を交互に異なるように設定できる。そのため、近接する波長帯の光のクロストークが起こりにくくなる。すなわち、
図37のように空間光変調器43の変調部430を領域分けすれば、波長多重と偏光多重を組み合わせることができる。波長多重と偏光多重を組み合わせれば、波長多重によって起こりやすい波長帯のクロストークを抑圧できる。
【0174】
以上のように、本実施形態の通信装置は、送光装置、受光装置、および制御装置を備える。送光装置は、光源、空間光変調器、波長板、および曲面ミラーを備える。光源は、異なる波長帯の光を出射する複数の出射器によって構成される。複数の出射器は、空間光変調器の変調部に向けて、光を出射する。空間光変調器は、光源から出射された光が照射される複数の変調領域が設定される変調部を有する。空間光変調器の変調部は、第1変調領域と第2変調領域とに分割される。空間光変調器は、照射された光の位相を、変調部に設定された第1変調領域および第2変調領域の各々で変調する。波長板は、空間光変調器の変調部に設定された第1変調領域および第2変調領域の各々で変調された変調光を、互いに異なる偏光状態に変換する。曲面ミラーは、空間光変調器の変調部に設定された第1変調領域および第2変調領域で変調された変調光が照射される曲面状の反射面を有する。曲面ミラーは、変調光を反射面で反射し、反射面の曲率に応じて投射角が拡大された投射光を投射する。受光装置は、他の通信装置から送光された空間光信号を受光する。制御装置は、他の通信装置に向けて送光する空間光信号を形成するためのパターンを送光装置の空間光変調器の変調部に設定された第1変調領域および第2変調領域の各々に設定する。制御装置は、パターンが設定された変調部に光が照射されるように光源を制御する。制御装置は、受光装置によって受光された空間光信号に由来する信号を取得する。
【0175】
以上のように、本実施形態の送光装置は、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域の各々で変調された複数の波長帯の変調光を、互いに異なる偏光状態に変換する。本実施形態の送光装置から投射される投射光は、互いに異なる偏光状態に変換された複数の波長帯の光を含む。そのため、本実施形態の送光装置は、偏光状態ごとに異なる複数の波長帯の空間光信号を同時に送光できる。すなわち、本実施形態によれば、波長多重通信と偏光多重通信と組み合わせた光空間通信を実現できる。
【0176】
本実施形態の一態様の受光装置は、集光器、複数の受光素子、および複数の受光フィルタを有する。集光器は、他の通信装置から送光された空間光信号を集光する。複数の受光素子は、集光器によって集光された空間光信号を受光する。複数の受光フィルタの各々は、複数の受光素子の各々に対応付けて配置される。複数の受光フィルタの各々は、対応付けられた受光素子の受光対象の波長帯の光を選択的に通過させる帯域通過フィルタを含む。複数の受光フィルタの各々は、対応付けられた受光素子の受光対象の波長帯の空間光信号を選択的に通過させる。本態様によれば、複数の受光素子の各々の受光対象の波長帯の光信号が、複数の受光素子ごとに選択的に受光されるように構成できる。
【0177】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る送光装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、第1~第4の実施形態の送光装置を簡略化した構成である。
図39は、本実施形態の送光装置50の一例を示すブロック図である。送光装置50は、光源51、空間光変調器53、波長板54、および曲面ミラー55を備える。
【0178】
光源51は、空間光変調器53の変調部530に向けて、光502を出射する。空間光変調器53は、光源51から出射された光502が照射される複数の変調領域が設定される変調部530を有する。空間光変調器53は、照射された光502の位相を、変調部530に設定された複数の変調領域の各々で変調する。波長板54は、空間光変調器53の変調部530に設定された複数の変調領域の各々で変調された変調光503の光路に配置される。波長板54は、複数の変調領域の各々で変調された変調光503を互いに異なる偏光状態に変換する。曲面ミラー55は、互いに異なる偏光状態に変換された変調光503が照射される曲面状の反射面550を有する。曲面ミラー55は、互いに異なる偏光状態に変換された変調光503を、反射面550の曲率に応じた投射角で反射する。
【0179】
以上のように、本実施形態の送光装置は、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域の各々で変調された変調光を、互いに異なる偏光状態に変換する。本実施形態の送光装置から投射される投射光は、互いに異なる偏光状態に変換された光成分を含む。そのため、本実施形態の送光装置は、偏光状態ごとに異なる複数の空間光信号を同時に送光できる。すなわち、本実施形態によれば、多重化された空間光信号を用いた光空間通信を実現できる。
【0180】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、
図40の情報処理装置90を一例として挙げて説明する。なお、
図40の情報処理装置90は、各実施形態の制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0181】
図40のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。
図40においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0182】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを、主記憶装置92に展開する。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、情報処理装置90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、各実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0183】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。例えば、主記憶装置92は、揮発性メモリによって実現される。揮発性メモリの一例として、DRAM(Dynamic Random Access Memory)があげられる。例えば、主記憶装置92には、不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。不揮発性メモリの一例として、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)があげられる。
【0184】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0185】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0186】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成としてもよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0187】
また、情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0188】
また、情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体からのデータやプログラムの読み込み、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。ドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0189】
以上が、本発明の各実施形態に係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、
図40のハードウェア構成は、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る制御や処理コンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0190】
各実施形態の構成要素は、任意に組み合わせてもよい。また、各実施形態の構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよいし、回路によって実現されてもよい。
【0191】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0192】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
光源と、
前記光源から出射された光が照射される複数の変調領域が設定される変調部を有し、照射された前記光の位相を、前記変調部に設定された複数の前記変調領域の各々で変調する空間光変調器と、
前記空間光変調器の前記変調部に設定された複数の前記変調領域の各々で変調された変調光の光路に配置され、複数の前記変調領域の各々で変調された前記変調光を互いに異なる偏光状態に変換する波長板と、
互いに異なる偏光状態に変換された前記変調光が照射される曲面状の反射面を有し、互いに異なる偏光状態に変換された前記変調光を、前記反射面の曲率に応じた投射角で反射する曲面ミラーと、を備える送光装置。
(付記2)
複数の前記変調領域の境界のうち少なくともいずれかに配置され、複数の前記変調領域の各々で変調された前記変調光が混ざり合うことを防ぐ隔壁を備える付記1に記載の送光装置。
(付記3)
前記光源は、
第1出射器と第2出射器とによって構成され、
前記空間光変調器の前記変調部は、
前記第1出射器から出射された光が照射される第1変調領域と、前記第2出射器から出射された光が照射される第2変調領域とに分割される付記1または2に記載の送光装置。
(付記4)
前記光源は、
第1出射器、第2出射器、第3出射器、および第4出射器によって構成され、
前記空間光変調器の前記変調部は、
前記第1出射器および前記第2出射器から出射された光の各々が照射されるサブ領域を含む第1変調領域と、前記第3出射器および前記第4出射器から出射された光の各々が照射されるサブ領域を含む第2変調領域とに分割される付記1または2に記載の送光装置。
(付記5)
前記波長板は、
1/2波長板を含み、前記第1変調領域および前記第2変調領域のうちいずれか一方で変調された前記変調光の光路上に設置される付記3または4に記載の送光装置。
(付記6)
前記波長板は、
1/4波長板を含み、前記第1変調領域で変調された前記変調光の光路上に設置され、前記第1変調領域で変調された前記変調光を、偏光方向が第1回転方向の円偏光に変換する第1波長板と、
1/4波長板を含み、前記第2変調領域で変調された前記変調光の光路上に設置され、前記第2変調領域で変調された前記変調光を、偏光方向が第2回転方向の円偏光に変換する第2波長板と、によって構成され、
前記第1回転方向と前記第2回転方向とは回転方向が反対である付記3または4に記載の送光装置。
(付記7)
前記空間光変調器は、
前記第1変調領域が設定される第1空間光変調器と、前記第2変調領域が設定される第2空間光変調器とによって構成され、
前記第1空間光変調器と前記第2空間光変調器とは、偏光方向が互いに垂直になるように配置される付記3乃至6のいずれか一つに記載の送光装置。
(付記8)
前記光源は、
異なる波長帯の光を出射する複数の出射器によって構成される付記1乃至7のいずれか一つに記載の送光装置。
(付記9)
付記1乃至8のいずれか一つに記載の送光装置と、
通信対象から送光された空間光信号を受光する受光装置と、
前記通信対象に向けて送光する空間光信号を形成するためのパターンを前記送光装置の空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域の各々に設定し、前記パターンが設定された前記変調部に光が照射されるように前記送光装置の光源を制御するとともに、前記受光装置によって受光された前記空間光信号に由来する信号を取得する制御装置と、を備える通信装置。
(付記10)
前記受光装置は、
他の前記通信装置から送光された前記空間光信号を集光する集光器と、
前記集光器によって集光された前記空間光信号のうち受光対象の光信号を受光する複数の受光素子と、
複数の前記受光素子に対応付けて配置され、対応付けられた前記受光素子の受光対象の前記光信号を選択的に通過させる受光フィルタと、を有する付記9に記載の通信装置。
(付記11)
前記受光フィルタは、
対応付けられた前記受光素子の受光対象である前記光信号の偏光方向の直線偏光を、選択的に通過させる偏光板を含む付記10に記載の通信装置。
(付記12)
前記受光フィルタは、
対応付けられた前記受光素子の受光対象である前記光信号を円偏光から直線偏光に変換する1/4波長板と、前記1/4波長板によって変換された前記直線偏光のうち偏光方向が特定方向の前記直線偏光を選択的に通過させる偏光板とを含む付記10に記載の通信装置。
(付記13)
前記受光フィルタは、
対応付けられた前記受光素子の受光対象の波長帯の前記光信号を選択的に通過させる帯域通過フィルタを含む付記10乃至12のいずれか一つに記載の通信装置。
【符号の説明】
【0193】
1、2、3、4 通信装置
10、20、30、40、50 送光装置
11、21、31、41 光源
13、23、43 空間光変調器
14、24、34、54 波長板
15、25、35、45 曲面ミラー
16、26、36、46 受光装置
17、47 受光素子
18、48 受信回路
19、29、39、49 制御装置
135、235、435 隔壁
141、241 第1波長板
142、242 第2波長板
161、461 集光器
170、470 受光フィルタ
181 第1処理回路
182 制御回路
183 セレクタ
185 第2処理回路
331 第1空間光変調器
332 第2空間光変調器
1811 ハイパスフィルタ
1813 増幅器
1815 積分器