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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】生化学用前処理装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20240925BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G01N35/10 G
G01N35/00 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023546767
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016644
(87)【国際公開番号】W WO2023037639
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021146134
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 弘貴
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-98960(JP,A)
【文献】特開2012-21805(JP,A)
【文献】特開2003-83986(JP,A)
【文献】特開2005-207850(JP,A)
【文献】特開平6-3364(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178291(WO,A1)
【文献】特開2022-70138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器を複数保持する容器保持部と、チップを複数保持する第1チップ保持部と、使用された後の前記チップである使用済チップを複数保持する第2チップ保持部と、前記チップの脱着が可能なチップ脱着部と、前記チップ脱着部を変位可能に支持する支持機構と、前記チップ脱着部及び前記支持機構を内部に収容するとともに、前記第2チップ保持部を取付可能な取付位置が内部に形成された本体とを備え、前記チップ脱着部に装着された前記チップを介して液体を吸引及び吐出する分注動作が少なくとも1回以上実施される分注処理を実行する生化学用前処理装置の制御方法であって、
前記チップ脱着部の変位に伴う当該チップ脱着部への負荷を検出する負荷検出ステップと、
前記チップが装着されていない状態の前記チップ脱着部を前記取付位置に向かうように変位させ、当該チップ脱着部と前記第2チップ保持部との衝突に起因する負荷が前記負荷検出ステップで検出されない場合に、前記第2チップ保持部の取付異常を検出する取付異常検出ステップとを含む、生化学用前処理装置の制御方法。
【請求項2】
液体を収容する容器を複数保持する容器保持部と、チップを複数保持する第1チップ保持部と、使用された後の前記チップである使用済チップを複数保持する第2チップ保持部と、前記チップの脱着が可能なチップ脱着部と、前記チップ脱着部を変位可能に支持する支持機構と、前記チップ脱着部及び前記支持機構を内部に収容するとともに、前記第2チップ保持部を取付可能な取付位置が内部に形成された本体とを備え、前記チップ脱着部に装着された前記チップを介して液体を吸引及び吐出する分注動作が少なくとも1回以上実施される分注処理を実行する生化学用前処理装置であって、
前記チップ脱着部の変位に伴う当該チップ脱着部への負荷を検出する負荷検出処理部と、
前記チップが装着されていない状態の前記チップ脱着部を前記取付位置に向かうように変位させ、当該チップ脱着部と前記第2チップ保持部との衝突に起因する負荷が前記負荷検出処理部で検出されない場合に、前記第2チップ保持部の取付異常を検出する取付異常検出処理部とを備える、生化学用前処理装置。
【請求項3】
前記チップ脱着部を変位させることで、当該チップ脱着部に前記チップを装着させるチップ装着処理部と、
前記チップ脱着部に装着された前記チップを介して液体を吸引及び吐出する前記分注動作が実施された後に、当該チップの先端部が所定のチップ衝突部に向かうように、前記チップ脱着部を変位させ、前記チップと前記チップ衝突部との衝突に起因する負荷が前記負荷検出処理部で検出されない場合に、前記チップ脱着部からの前記チップの脱落を検出する脱落検出処理部とをさらに備える、請求項2に記載の生化学用前処理装置。
【請求項4】
前記チップ脱着部に前記チップを装着させるときに、当該チップ脱着部への当該チップの装着に起因する負荷が前記負荷検出処理部で検出された場合に、前記チップ脱着部に対する前記チップの装着を検出する装着検出処理部をさらに備える、請求項3に記載の生化学用前処理装置。
【請求項5】
前記装着検出処理部により前記チップ脱着部に対する前記チップの装着が検知されない場合、又は、前記脱落検出処理部により前記チップ脱着部からの前記チップの脱落が検出された場合に、その旨を報知する報知処理部をさらに備える、請求項4に記載の生化学用前処理装置。
【請求項6】
前記チップ衝突部は、前記チップの先端部を挿入可能な貫通孔の周縁部を含み、
前記脱落検出処理部は、前記チップの先端部を前記貫通孔に挿入するように、前記チップ脱着部を変位させ、前記チップと前記貫通孔の周縁部との衝突に起因する負荷が前記負荷検出処理部で検出されない場合に、前記チップ脱着部からの前記チップの脱落を検出する、請求項3に記載の生化学用前処理装置。
【請求項7】
前記チップ衝突部は、前記第2チップ保持部又は当該第2チップ保持部の上方に位置している、請求項3に記載の生化学用前処理装置。
【請求項8】
前記第2チップ保持部は、複数の前記使用済チップを立てた状態で保持するための保持構造を上部に有する、請求項2に記載の生化学用前処理装置。
【請求項9】
前記保持構造は、傾斜面と、当該傾斜面に形成され、前記使用済チップを摺接可能に保持するガイドとを含む、請求項8に記載の生化学用前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学用前処理装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1で開示されるような遺伝子解析装置では、ノズルの先端に分注チップを装着した状態で液体の分注が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-175004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記遺伝子解析装置では、少なくとも生体由来の液体試料を分注するため、液体の分注毎に分注チップを交換し、各種液体のコンタミネーションが生じることを防止する。
【0005】
また、このような遺伝子解析装置は、液体の分注に使用された分注チップを一時的に保持するための廃棄ボックスを備える。さらに、廃棄ボックスは、分注チップを筐体外に廃棄するために、筐体からの取り外し及び装置への取り付けが可能とされる。
【0006】
たとえば、廃棄ボックスが筐体から取り外された状態で、一連の分注が行われると、その一連の分注で使用された分注チップが、筐体内において無造作に配置される。
【0007】
このような場合、分注チップの先端部に付着している液体が筐体内の様々な箇所に付着してしまう可能性がある。その場合、分注チップの先端部に付着している液体によるコンタミネーションが生じる可能性がある。
【0008】
また、このような場合、筐体内に無造作に配置されたチップが装置の駆動系に干渉する可能性がある。その場合、装置が故障する可能性がある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、分注処理を実行する際に、使用済チップを保持する保持部の取付異常を予め検出することができる生化学用前処理装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、液体を収容する容器を複数保持する容器保持部と、チップを複数保持する第1チップ保持部と、使用された後の前記チップである使用済チップを複数保持する第2チップ保持部と、前記チップの脱着が可能なチップ脱着部と、前記チップ脱着部を変位可能に支持する支持機構と、前記チップ脱着部及び前記支持機構を内部に収容するとともに、前記第2チップ保持部を取付可能な取付位置が内部に形成された本体とを備え、前記チップ脱着部に装着された前記チップを介して液体を吸引及び吐出する分注動作が少なくとも1回以上実施される分注処理を実行する生化学用前処理装置の制御方法であって、負荷検出ステップと、取付異常検出ステップとを含む。前記負荷検出ステップでは、前記チップ脱着部の変位に伴う当該チップ脱着部への負荷を検出する。前記取付異常検出ステップでは、前記チップが装着されていない状態の前記チップ脱着部を前記取付位置に向かうように変位させ、当該チップ脱着部と前記第2チップ保持部との衝突に起因する負荷が前記負荷検出ステップで検出されない場合に、前記第2チップ保持部の取付異常を検出する。
【0011】
本発明の第2の態様は、液体を収容する容器を複数保持する容器保持部と、チップを複数保持する第1チップ保持部と、使用された後の前記チップである使用済チップを複数保持する第2チップ保持部と、前記チップの脱着が可能なチップ脱着部と、前記チップ脱着部を変位可能に支持する支持機構と、前記チップ脱着部及び前記支持機構を内部に収容するとともに、前記第2チップ保持部を取付可能な取付位置が内部に形成された本体とを備え、前記チップ脱着部に装着された前記チップを介して液体を吸引及び吐出する分注動作が少なくとも1回以上実施される分注処理を実行する生化学用前処理装置であって、負荷検出処理部と、取付異常検出処理部とを備える。前記負荷検出処理部は、前記チップ脱着部の変位に伴う当該チップ脱着部への負荷を検出する。取付異常検出処理部は、前記チップが装着されていない状態の前記チップ脱着部を前記取付位置に向かうように変位させ、当該チップ脱着部と前記第2チップ保持部との衝突に起因する負荷が前記負荷検出処理部で検出されない場合に、前記第2チップ保持部の取付異常を検出する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、分注処理を実行する際に、使用済チップを保持する保持部の取付異常を予め検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の前処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】本実施形態の前処理装置の構成の一例の一部を示す分解斜視図である。
図3】本実施形態の前処理装置の内部構成の一例を示す概略断面図である。
図4】本実施形態のテーブルの構成の一例を示す平面図である。
図5】本実施形態の第2チップ保持部の構成の一例を示す分解斜視図である。
図6】本実施形態の第2チップ保持部及びカバー部材の構成の一例の一部を示す斜視図である。
図7】本実施形態の前処理装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図8】本実施形態のチップ装着処理を説明するための概略断面図である。
図9A】本実施形態のチップ取外し処理を説明するための概略断面図である。
図9B】本実施形態のチップ取外し処理を説明するための概略断面図である。
図9C】本実施形態のチップ取外し処理を説明するための概略断面図である。
図10】本実施形態の取付異常検出処理を説明するための概略断面図である。
図11】本実施形態の脱落検出処理を説明するための概略断面図である。
図12】本実施形態の前処理装置の電気的構成を具体的に示すブロック図である。
図13】本実施形態のCPUの全体処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.前処理装置の周辺構成
図1は、本実施形態の前処理システム10の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、前処理システム10は、前処理装置12及びユーザ端末14を含む。
【0015】
前処理装置12は、生化学的な検査や分析を行うために必要とされる液体に対して予め処理を施すための生化学用前処理装置である。具体的には、チップ42(図3参照)を介して液体の吸引及び吐出が可能な装置である。
【0016】
ユーザ端末14は、少なくともCPU、外部と通信を行うための通信部及び不揮発性メモリ等を備える装置であって、デスクトップPC、ノート(ラップトップ)PC又はタブレットPC等である。
【0017】
前処理装置12及びユーザ端末14は、ネットワーク16を介して接続される。ここでのネットワーク16としては、LAN(Local Area Network)やインターネットなどがある。また、前処理装置12及びユーザ端末14は、直接接続されてもよい。
【0018】
2.前処理装置の全体構成
図2は、本実施形態の前処理装置12の構成の一例の一部を示す分解斜視図である。前処理装置12は、本体20及びテーブル22を備える。本体20は、中空状の筐体により構成されている。
【0019】
また、テーブル22は、容器保持部24及び第1チップ保持部26を備える。テーブル22では、容器保持部24及び第1チップ保持部26が一体となるように構成されている。
【0020】
さらにまた、前処理装置12は、第2チップ保持部28を備える。図2では、第2チップ保持部28は、テーブル22から分離された状態で図示されているが、この第2チップ保持部28は、テーブル22の空間30に収容された状態で使用される。
【0021】
すなわち、空間30内には、第2チップ保持部28を取付可能な取付位置が存在する。なお、第2チップ保持部28の取付位置は、具体的に、第2チップ保持部28がテーブル22に取り付けられている仮定とした場合に、第2チップ保持部26が存在する位置である。
【0022】
また、図2では、テーブル22は、本体20から分離された状態で図示されているが、このテーブル22は、本体20の空間32内に内蔵されている。さらに、空間32を区画する壁には、開口部34が設けられている。
【0023】
第2チップ保持部28については、開口部34を介して、テーブル22から取り外すこと及びテーブル22に取り付けることができる。
【0024】
また、上述したように、テーブル22は、本体20に内蔵されるため、第2チップ保持部28については、本体20から取り外すこと及び本体20に取り付けることができるともいえる。さらに、第2チップ保持部28の取付位置については、本体20内部に形成されているとも言える。
【0025】
図3は、本実施形態の前処理装置12の内部構成の一例を示す概略断面図である。図3に示すように、容器保持部24は、液体を収容する容器を複数保持する。また、容器保持部24は、試料容器保持部24a、試薬容器保持部24b及び反応容器保持部24cを含む。
【0026】
試料容器保持部24aは、液体試料を収容する試料容器36を複数保持する。液体試料は、生体から採取される試料であり、唾液又は血液等を例示することができる。試薬容器保持部24bは、液体試薬を収容する試薬容器38を複数保持する。反応容器保持部24cは、液体試料及び液体試薬が混合されている混合液を収容する反応容器40を複数保持する。第1チップ保持部26は、チップ42を複数保持する。
【0027】
また、図3に示す前処理装置12は、本体20内に電気的に制御可能な分注機構44を備える。分注機構44は、液体を吸引及び吐出する機構であって、シリンジ44a、チップ脱着部44b及びプランジャ44cを備える。シリンジ44aは、円筒状の部材であって、プランジャ44cが摺動可能に挿入されている。
【0028】
チップ脱着部44bは、シリンジ44aよりも小径の円筒状の部材であって、チップ42の脱着が可能とされる。チップ脱着部44bとしては、たとえば、シリンジ44aの内部に連通する細長い円筒状のノズルが用いられる。
【0029】
チップ42は、下端に向かって徐々に先細りする細長い円錐状の下側部分421と、下側部分421の上端から上方に向かって連続する円筒状の上側部分422とが、一体的に形成された構成を有している。下側部分421の上端の外径は、上側部分422の下端の外径よりも小さい。これにより、チップ42の外周面には、下側部分421と上側部分422との境界位置に段差が形成されている。チップ42は、その上端からチップ脱着部44bの下端部が圧入されることにより、チップ脱着部44bに取り付けられる。
【0030】
また、図示は省略するが、分注機構44は、モータ等のアクチュエータ、プランジャ44cと連結される連結部材及びアクチュエータの駆動力をZ方向(垂直方向)の動きとしてその連結部材に伝達する伝達機構等を備える。
【0031】
分注機構44によれば、プランジャ44cのストローク量に応じた量の液体を吸引及び吐出することができる。なお、上述した分注機構44は、あくまで一例であって、チップ脱着部44bを備え、液体を吸引及び吐出することができるのであれば、分注機構44の構成は特に限定されない。
【0032】
さらに、図3に示すように、前処理装置12は、本体20内に電気的に制御可能な支持機構46を備える。支持機構46は、分注機構44を変位可能に支持する機構であって、モータ等のアクチュエータ、分注機構44を構成するコンポーネントを支持する支持部材46a及びアクチュエータの駆動力を垂直方向の動きとして支持部材46aに伝達する伝達機構等を備える。
【0033】
支持機構46によれば、分注機構44を支持しつつ、垂直方向に変位させることができる。つまり、支持機構46によれば、チップ脱着部44bを支持しつつ、垂直方向に変位させることができる。
【0034】
なお、上述した支持機構46は、あくまで一例であって、チップ脱着部44b等を支持しつつ、垂直方向に変位させることができるのであれば、支持機構46の構成は特に限定されない。また、支持機構46は、分注機構44をXY方向(水平方向)にも変位可能とするように構成されてもよい。
【0035】
さらに、図3に示すように、前処理装置12は、本体20内に電気的に制御可能な保持機構48を備える。保持機構48は、テーブル22を変位可能に保持する機構であって、モータ等のアクチュエータ、テーブル22を保持する保持部材等を備える。また、保持機構48は、アクチュエータの駆動力をX方向及びY方向の動きとして保持部材に伝達する伝達機構を備える。
【0036】
保持機構48によれば、テーブル22を保持しつつ、水平方向に変位させることができる。なお、上述した保持機構48は、あくまで一例であって、テーブル22を保持しつつ、水平方向に変位させることができるのであれば、テーブル22の構成は特に限定されない。また、保持機構48は、テーブル22を垂直方向にも変位可能とするように構成されてもよい。
【0037】
また、図3に示すように、前処理装置12は、本体20内に負荷吸収機構50を備える。負荷吸収機構50は、チップ脱着部44bの変位を許容することで、そのチップ脱着部44bへの負荷を吸収する機構である。なお、チップ脱着部44bにかかる負荷は、具体的に、チップ脱着部44bからシリンジ44aに向かう方向の力である。
【0038】
負荷吸収機構50は、付勢部材50a、固定部材50b及び変位部材50cを備える。付勢部材50aは、たとえば、圧縮コイルばねであって、固定部材50b及び変位部材50cの間に設けられる。また、付勢部材50aの一端は、固定部材50bに取り付けられ、他端は、変位部材50cに取り付けられる。図3に示す例では、付勢部材50aは、固定部材50b及び変位部材50cの間において、シリンジ44aの外周を覆うように設けられる。
【0039】
固定部材50bは、支持部材46aに対して位置が固定される部材である。また、付勢部材50aの一端は、固定部材50bに取り付けられていることから、付勢部材50aの一端の位置は固定される。図3に示す例では、固定部材50bは、シリンジ44aの外径よりも大きい径の貫通孔を有し、その貫通孔をシリンジ44aが貫通している。
【0040】
変位部材50cは、シリンジ44aの外周に設けられる部材である。また、付勢部材50aの他端は、変位部材50cに取り付けられていることから、付勢部材50aの他端の位置は、チップ脱着部44bからシリンジ44aに伝達される負荷に伴って変位する。
【0041】
負荷吸収機構50によれば、チップ脱着部44bへの負荷が生じると、チップ脱着部44bとともに変位部材50cが変位しつつ、付勢部材50aが圧縮される。すなわち、負荷吸収機構50によれば、チップ脱着部44bへの負荷が吸収される。
【0042】
一方で、チップ脱着部44bへの負荷が消失すると、付勢部材50aが圧縮される前の状態に戻るため、変位部材50c及びチップ脱着部44bが、チップ脱着部44bへの負荷が生じる前の位置まで変位する。
【0043】
なお、上述した負荷吸収機構50は、あくまで一例であって、チップ脱着部44bの変位を許容することで、そのチップ脱着部44bへの負荷を吸収することができるのであれば、負荷吸収機構50の構成は特に限定されない。たとえば、付勢部材50aは、圧縮コイルばねに限らず、他の弾性体により構成されていてもよい。
【0044】
また、前処理装置12は、本体20内に負荷検出部52を備える。負荷検出部52は、チップ脱着部44bの変位に基づいて、そのチップ脱着部44bへの負荷を検出する。負荷検出部52は、変位部材52a及び負荷検出センサ52bを備える。
【0045】
変位部材52aは、変位部材50cと同様に、シリンジ44aの外周に設けられる部材であって、チップ脱着部44bからシリンジ44aに伝達される負荷に起因して変位する。
【0046】
負荷検出センサ52bは、物体の変位を検出するセンサであって、たとえば、フォトセンサ又は近接センサ等が用いられる。ただし、負荷検出センサ52bとしては、チップ脱着部44bへの負荷を検出することができれば、他の光学的センサ、機械的センサ又は電気的センサなどの各種センサを用いることができる。
【0047】
変位部材52aは、チップ脱着部44bへの負荷に応じて変位し、負荷検出センサ52bは、変位部材52aの変位を検出する。したがって、負荷検出部52によれば、チップ脱着部44bへの負荷を検出することができる。
【0048】
図3に示す例では、負荷検出センサ52bとして、フォトセンサを用いており、フォトセンサの発光部52c及び受光部52dが対向して配置される。チップ脱着部44bに負荷がかかると、発光部52cから受光部52dに向かって発せられる光が、変位部材52aによって遮断される。したがって、チップ脱着部44bへの負荷を検出することができる。
【0049】
図4は、本実施形態のテーブル22の構成の一例を示す平面図である。上述したように、試料容器保持部24aは、試料容器36を複数保持し、試薬容器保持部24bは、試薬容器38を複数保持し、反応容器保持部24cは、反応容器40を複数保持し、第1チップ保持部26は、チップ42を複数保持する。
【0050】
なお、第1チップ保持部26は、チップ42が挿通される第1貫通孔26aを有する。第1貫通孔26aの径は、チップ42の最小の外径よりも大きく、かつ、チップ42の最大の外径よりも小さい。具体的には、第1貫通孔26aの径は、チップ42の下側部分421の上端の外径よりも大きく、チップ42の上側部分422の下端の外径よりも小さい。図4に示す例では、第1貫通孔26aに挿通されているチップ42は、下側部分421と上側部分422との境界位置に形成された段差が第1貫通孔26aの周縁部に引っ掛かることで保持されている。
【0051】
また、テーブル22には、カバー部材54が設けられる。このカバー部材54は、薄い板状の部材であって、テーブル22内の空間30を覆う。つまり、第2チップ保持部28がテーブル22に取り付けられている場合、カバー部材54は、その第2チップ保持部28を覆う。
【0052】
カバー部材54には、第2貫通孔56及び第3貫通孔58が設けられ、これらは一体とされている。また、カバー部材54には、第3貫通孔58を通過しようとするチップ42を引っ掛けるための引っ掛け部60が複数設けられている。
【0053】
引っ掛け部60のY方向の幅は、チップ脱着部44bの外径よりも大きく、チップ42の最大の外径(上側部分422の上端の外径)よりも小さい。つまり、引っ掛け部60は、チップ脱着部44bの変位を妨げない。
【0054】
さらに、カバー部材54には、チップ脱着部44bに装着されているチップ42を衝突させるためのチップ衝突部64が設けられる。
【0055】
チップ衝突部64は、カバー部材54に形成された第4貫通孔62の周縁部を含む。第4貫通孔62には、上方からチップ42の先端部(下側部分421)を挿入可能である。なお、テーブル22において、チップ衝突部64が設けられる位置は、特に限定されない。
【0056】
第4貫通孔62の径は、チップ42の最小の外径よりも大きく、かつ、チップ42の最大の外径よりも小さい。具体的には、第4貫通孔62の径は、チップ42の下側部分421の上端の外径よりも大きく、チップ42の上側部分422の下端の外径よりも小さい。したがって、第4貫通孔62にチップ42が挿入されると、途中で下側部分421と上側部分422との境界位置に形成された段差がチップ衝突部64と衝突することになる。
【0057】
図5は、本実施形態の第2チップ保持部28の構成の一例を示す分解斜視図である。第2チップ保持部28は、トレイ部28a及びそのトレイ部28aを覆う天板部28bから構成されている。
【0058】
なお、図5では、天板部28bは、トレイ部28aから分離された状態で示されるが、天板部28bは、磁石等の脱着機構により、トレイ部28aへの取り付け及びトレイ部28aからの取り外しが適宜に可能とされる。
【0059】
天板部28bには、第5貫通孔66及び凸部68が設けられる。さらに、天板部28bは、チップ42を保持するための保持構造70を有する。したがって、天板部28bがトレイ部28aに取り付けられている場合、第2チップ保持部28は、上部に保持構造70等を有する。
【0060】
第2チップ保持部28がテーブル22に取り付けられている場合、第5貫通孔66の中心軸は、垂直方向において、第4貫通孔62の中心軸と重なる。また、チップ衝突部64にチップ42が衝突しているとき、そのチップ42の下側部分421は、第5貫通孔66に挿通される。
【0061】
凸部68は、チップ脱着部44bを衝突させるために設けられる。なお、凸部68の形状等は特に限定されない。ただし、第2チップ保持部28は、テーブル22への取り付け及びテーブル22からの取り外しが行われるため、凸部68の長さは、これらの妨げにならない長さとされる。また、第2チップ保持部28がテーブル22に取り付けられている場合、凸部68は、垂直方向において、第2貫通孔56と重なる。
【0062】
保持構造70は、使用済の複数のチップ42を立てた状態で保持するための構造である。保持構造70は、ガイド70aを含む。第2チップ保持部28がテーブル22に取り付けられている場合、ガイド70aは、垂直方向において、第3貫通孔58と重なる。
【0063】
ガイド70aは、所定の方向に延びる貫通孔であって、ガイド70aの幅は、チップ42の最小の外径よりも大きく、かつ、チップ42の最大の外径よりも小さい。具体的には、ガイド70aの幅は、チップ42の下側部分421の上端の外径よりも大きく、チップ42の上側部分422の下端の外径よりも小さい。したがって、ガイド70aに挿通されているチップ42は、下側部分421と上側部分422との境界位置に形成された段差がガイド70aの周縁部に引っ掛かった状態で保持される。
【0064】
また、保持構造70は、傾斜面70bを含み、ガイド70aについては、その傾斜面70bに形成されている。したがって、ガイド70aで保持されるチップ42に重力が作用すると、そのチップ42が傾斜面70bに沿ってガイド70aを下っていく。このことから、ガイド70aについては、使用済のチップ42を摺接可能に保持すると言える。
【0065】
このような保持構造70によれば、立てた状態のチップ42を傾斜面70bに沿って摺接させ、そのチップ42をガイド70aの長手方向の端部で保持することができる。
【0066】
図6は、本実施形態の第2チップ保持部28及びカバー部材54の構成の一例の一部を示す斜視図である。また、図6では、第2チップ保持部28が、テーブル22に取り付けられている。
【0067】
第2チップ保持部28が、テーブル22へ取り付けられている場合、ガイド70aの一部は、垂直方向において、第3貫通孔58及び引っ掛け部60と重なる。本実施形態では、ガイド70aにおいて、第3貫通孔58及び引っ掛け部60と重なる部分は、引っ掛け位置72とされる。
【0068】
また、本実施形態の引っ掛け位置72には、保持位置74が含まれる。保持位置74は、ガイド70aの長手方向の端部に位置している。つまり、チップ脱着部44bから取り外されてガイド70aに挿通された使用済のチップ42は、引っ掛け位置72を保持位置74に向かって摺接し、その保持位置74で保持される。
【0069】
なお、保持構造70には、ガイド70aに挿通された使用済のチップ42を保持位置74に固定するための固定具(図示は省略)が含まれても良い。固定具は、例えば突起又は留め具等により構成され、保持位置74で立てた状態で保持されるチップ42と当接する。固定具は、保持位置74で保持されるチップ42と当接するのであれば、形状等は特に限定されない。
【0070】
なお、図4図6に示す第3貫通孔58、引っ掛け部60、ガイド70a及び傾斜面70b等は、あくまで一例である。図6に示す例では、ガイド70aの両端部が保持位置74とされるが、たとえば、ガイド70aの数を増やし、各ガイド70aの一方の端部だけが保持位置74とされるように構成されてもよい。また、この場合、引っ掛け部60の位置及び傾斜面70bの数等も適宜変更される。
【0071】
3.前処理装置の電気的構成
図7は、本実施形態の前処理装置12の電気的構成の一例を示すブロック図である。図7に示すように、前処理装置12は、分注機構44、支持機構46、保持機構48及び負荷検出センサ52b等以外に、制御部100、動作制御回路110、通信部112及び報知部114を備える。
【0072】
また、制御部100、負荷検出センサ52b、動作制御回路110、通信部112及び報知部114の各々は、バス等の配線108を介して、互いに電気的に接続される。また、動作制御回路110は、分注機構44、支持機構46、保持機構48に電気的に接続される。
【0073】
制御部100は、前処理装置12の全体的な制御を担う。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)102を備える。また、制御部100は、CPU102が直接的にアクセス可能なRAM(Random Access Memory)104および記憶部106を備える。
【0074】
CPU102は、前処理装置12の各コンポーネントを制御する。RAM104は、CPU102のワーク領域およびバッファ領域として用いられる。記憶部106は、不揮発性メモリであり、たとえば、記憶部106としてHDD(Hard Disc Drive)またはSSD(Solid State Drive)等が用いられる。
【0075】
記憶部106には、前処理装置12の各コンポーネントを制御するための制御プログラムおよび制御プログラムの実行に必要とされるデータ(実行用データ)等が記憶される。なお、記憶部106がRAM104を含むように構成されてもよい。
【0076】
動作制御回路110は、分注機構44、支持機構46及び保持機構48等を駆動させるための電圧を生成し、これらに電圧を適宜に印加する。
【0077】
通信部112は、外部と通信するための手段である。本実施形態では、通信部112は、ネットワーク16を介して、ユーザ端末14と通信可能に接続される。
【0078】
報知部114は、ユーザに対する報知を行うための手段である。報知部114としては、視覚的に報知するための、発光部材及びディスプレイ等を用いることができる。また、報知部114としては、聴覚的に報知するためのスピーカなども用いることができる。
【0079】
4.分注処理の概要
前処理装置12では、任意のタイミングで分注処理を実行することができる。分注処理では、チップ脱着部44bに装着されたチップ42を介して液体を吸引及び吐出する分注動作が少なくとも1回以上実施される。
【0080】
また、本実施形態では、分注処理に併せて、チップ装着処理及びチップ取外し処理が実行される。チップ装着処理では、第1チップ保持部26で保持されているチップ42がチップ脱着部44bに装着される。チップ取外し処理では、チップ脱着部44bに装着されているチップ42を取り外して保持位置74に配置する。
【0081】
これらの処理では、テーブル22の位置(水平方向の位置)及びチップ脱着部44bの位置(垂直方向の位置)は、適宜に変位される。
【0082】
チップ装着処理では、チップ脱着部44bを第1チップ保持部26、具体的には、第1貫通孔26aに向かうように変位させる。なお、チップ脱着部44bの変位とは、チップ脱着部44bの相対的な変位を意味している。
【0083】
したがって、チップ脱着部44bを第1貫通孔26aに向かうように変位させる場合、チップ脱着部44b自体が変位してもよいし、チップ脱着部44bに対して第1チップ保持部26が変位してもよい。
【0084】
本実施形態では、テーブル22を水平方向に変位させることにより、第1貫通孔26aの上方にチップ脱着部44bを位置合わせした後、チップ脱着部44bを下方に変位させることにより、チップ脱着部44bを第1貫通孔26aに向かわせるようになっている。
【0085】
図8は、本実施形態のチップ装着処理を説明するための概略断面図である。チップ装着処理では、チップ脱着部44bを第1チップ保持部26の第1貫通孔26aの上方から下方に向かって停止位置まで変位させる。
【0086】
チップ装着処理に係る停止位置は、第1チップ保持部26の第1貫通孔26aでチップ42が保持されている場合に、チップ脱着部44bにチップ42が装着される位置である。
【0087】
つまり、第1貫通孔26aでチップ42が保持されている場合、チップ脱着部44bが停止位置まで変位することで、チップ脱着部44bへのチップ42の装着に起因する負荷がチップ脱着部44bにかかる。このとき、チップ脱着部44bへの負荷が負荷検出部52で検出される。
【0088】
一方で、第1貫通孔26aでチップ42が保持されていない場合、チップ脱着部44bが停止位置まで変位してもチップ脱着部44bにチップ42が装着されない。つまり、チップ脱着部44bへの負荷が負荷検出部52で検出されない。
【0089】
したがって、本実施形態では、チップ脱着部44bへの負荷の有無に基づいて、チップ脱着部44bにチップ42が装着されたかどうかを判断することができる。
【0090】
図9A図9Cは、本実施形態のチップ取外し処理を説明するための概略断面図である。チップ取外し処理では、初めに、チップ脱着部44bが下方に変位することにより、図9Aに示すようにチップ42の下側部分421がガイド70aに挿入される。
【0091】
また、チップ42の下側部分421がガイド70aに挿入されると、テーブル22の位置が水平方向に変位し、図9Bに示すようにチップ42が引っ掛け位置72に位置される。
【0092】
次に、チップ脱着部44bがテーブル22から離間する。すると、引っ掛け部60がチップ42の上端面に引っ掛かることによって、チップ脱着部44bからチップ42が取り外され、そのチップ42は、保持位置74に向かって摺接する。つまり、チップ42は、図9Cに示すように保持位置74で保持される。
【0093】
本実施形態では、たとえば、前処理装置12が分注処理の実行指示を受けると、チップ装着処理によりチップ脱着部44bにチップ42が装着される。
【0094】
また、チップ脱着部44bにチップ42が装着されると、分注動作が実施される。分注動作としては、試料容器36内の液体試料を吸引して反応容器40内に吐出する動作、試薬容器38内の液体試薬を吸引して別の試薬容器38内に吐出することにより液体試薬を混合する動作、混合された液体試薬を試薬容器38内から吸引して反応容器40内に吐出する動作などが挙げられる。
【0095】
分注動作が実施されると、チップ取外し処理によりその分注動作において使用されたチップ40がチップ脱着部44bから取り外され、保持位置74で保持される。すなわち、保持位置74では、使用された後のチップ42である使用済チップ42aが保持される。
【0096】
分注処理において分注動作が複数回行われる場合は、分注動作毎に、チップ42の装着及びチップ40の取り外しが行われる。
【0097】
ただし、分注動作を複数回行う場合であって、液体試料におけるコンタミネーションが生じないのであれば、前回の分注動作において使用したチップ42を継続して使用しても良い。たとえば、複数種類の液体試薬同士を混合する場合等は、チップ42を継続して使用しても良い。
【0098】
また、分注処理において使用されるチップ42の複数の保持位置74への配置順序(チップ配置順序)は予め定められる。予め設定される配置順序は、一定の順序であってもよいし、ユーザが任意に設定可能であってもよい。
【0099】
このように、第2チップ保持部28は、チップ42、具体的には、使用済チップ42aを複数保持することができる。また、第2チップ保持部28に保持された使用済チップ42aは、第2チップ保持部28を本体20から取り外すことにより廃棄できる。
【0100】
さらに、本実施形態では、第2チップ保持部28が保持構造70を有していることから、チップ脱着部44bから取り外されたチップ40が第2チップ保持部26のトレイ部28a内で無造作に保持されることが防止される。
【0101】
このことから、本実施形態では、チップ取外し処理において、チップ脱着部44bの変位に伴うチップ42の変位がトレイ部28a内の使用済チップ42aにより妨げられるのを防止することができる。
【0102】
すなわち、保持構造70によれば、チップ取外し処理において、チップ脱着部44bに装着されているチップ42を確実に取り外すことができる。また、保持構造70によれば、チップ取外し処理において、前処理装置12の駆動系に使用済チップ42aが干渉し、その前処理装置12が故障するのを防止することができる。
【0103】
5.取付異常検出処理の概要
このような前処理装置12では、たとえば、第2チップ保持部28が本体20に取り付けられることなく、分注処理が実行されると、チップ脱着部44bから取り外されたチップ42は、第2チップ保持部28で保持されない。つまり、チップ脱着部44bから取り外されたチップ42は、本体20内で無造作に配置される。
【0104】
このような場合、チップ42の先端部に付着している液体が本体20内の様々な箇所に付着してしまう可能性がある。つまり、チップ42の先端部に付着している液体によるコンタミネーションが生じる可能性がある。
【0105】
また、このような場合、チップ脱着部44bから取り外されたチップ42が前処理装置12の駆動系に干渉し、その前処理装置12が故障する可能性もある。
【0106】
したがって、本実施形態では、分注処理が実行されるとき、その分注処理よりも先に取付異常検出処理を実行し、第2チップ保持部28の取付異常を検出する。具体的には、分注処理が実行されるとき、その分注処理において最初に使用されるチップ42がチップ脱着部44bに装着されるよりも先に取付異常検出処理を実行する。取付異常には、第2チップ保持部28が本体20に取り付けられていないこと、あるいは、第2チップ保持部28が本体20に対して誤った方向又は位置に取り付けられていること等が該当する。
【0107】
取付異常検出処理では、チップ42が装着されていないチップ脱着部44bを第2チップ保持部28の取付位置に向かうように変位させる。
【0108】
本実施形態では、テーブル22を水平方向に変位させることにより、第2貫通孔56の上方にチップ脱着部44bを位置合わせした後、チップ脱着部44bを下方に変位させることにより、チップ脱着部44bを取付位置に向かわせるようになっている。
【0109】
図10は、本実施形態の取付異常検出処理を説明するための概略断面図である。なお、図10に示す例では、第2チップ保持部28がテーブル22に取り付けられている。
【0110】
取付異常検出処理では、チップ脱着部44bを第2貫通孔56の上方から取付位置に向かって停止位置まで変位させる。
【0111】
取付異常検出処理に係る停止位置は、本体20に第2チップ保持部28が取り付けられている場合に、チップ脱着部44bが第2保持部28と衝突する位置である。
【0112】
つまり、本体20に第2チップ保持部28が取り付けられている場合、チップ脱着部44bが停止位置まで変位することで、チップ脱着部44bと第2チップ保持部28との衝突に起因する負荷がチップ脱着部44bにかかる。このとき、チップ脱着部44bへの負荷が負荷検出部52で検出される。
【0113】
一方で、本体20に第2チップ保持部28が取り付けられていない場合、チップ脱着部44bが停止位置まで変位しても、チップ脱着部44は、第2チップ保持部28と衝突しない。つまり、チップ脱着部44bへの負荷が負荷検出部52で検出されない。
【0114】
したがって、取付異常検出処理では、チップ脱着部44bへの負荷の有無に基づいて、第2チップ保持部28の取付異常の有無を判断することができる。
【0115】
本実施形態では、チップ脱着部44bと第2チップ保持部28との衝突に起因する負荷が負荷検出部52で検出されると、第2チップ保持部28の取付異常が検出されない。一方で、チップ脱着部44bと第2チップ保持部28との衝突に起因する負荷が負荷検出部52で検出されないと、第2チップ保持部28の取付異常が検出される。
【0116】
また、本実施形態では、第2チップ保持部28がトレイ部28a及び天板部28bから構成されるため、取付異常検出処理に係る停止位置は、第2チップ保持部28が本体20に取り付けられている場合に、チップ脱着部44bが第2チップ保持部28の天板部28bと衝突する位置であってもよい。
【0117】
この場合、天板部28bがトレイ部28aに取り付けられていると、負荷検出部52で負荷が検出される。一方で、天板部28bがトレイ部28aに取り付けられていないと、負荷検出部52で負荷が検出されない。すなわち、この場合、トレイ部28aだけの第2チップ保持部28が本体20に取り付けられていることも取付異常として検出することができる。
【0118】
また、取付異常検出処理に係る停止位置は、第2チップ保持部28が本体20に取り付けられている場合に、チップ脱着部44bが第2チップ保持部28の凸部68と衝突する位置であってもよい。つまり、図10に示すように、第2チップ保持部28の一部である凸部68に、チップ脱着部44bが衝突するような構成であってもよい。
【0119】
この場合、天板部28bがトレイ部28aに正常に取り付けられていると、つまり、図10に示すように天板部28bがトレイ部28aに取り付けられていると、負荷検出部52で負荷が検出される。一方で、天板部28bがトレイ部28aに異常に取り付けられていると、負荷検出部52で負荷が検出されない。すなわち、この場合、天板部28bがトレイ部28aに異常に取り付けられていることも取付異常として検出することができる。
【0120】
なお、天板部28bがトレイ部28aに異常に取り付けられているとは、具体的に、天板部28bが上下反転してトレイ部28aに取り付けられている状態及び天板部28bが左右反転してトレイ部28aに取り付けられている状態等を指す。
【0121】
本実施形態では、このように、第2チップ保持部28の取付異常が検出されると、その旨が報知部114により報知される。また、第2チップ保持部28の取付異常が検出された旨の報知は、ユーザ端末14でも行われる。なお、第2チップ保持部28の取付異常が検出された旨の報知は、報知部114又はユーザ端末14のいずれか一方のみで行われてもよい。
【0122】
また、本実施形態では、第2チップ保持部28の取付異常が検出される場合は、分注処理が取り消される。一方で、第2チップ保持部28の取付異常が検出されない場合は、分注処理は取り消されない。
【0123】
取付異常検出処理によれば、第2チップ保持部28が本体20の取付位置に取り付けられていないことを第2チップ保持部28の取付異常として検出することができる。これにより、チップ脱着部44bから取り外されたチップ42が本体20内で無造作に配置されるのを防止することができる。
【0124】
つまり、取付異常検出処理によれば、チップ脱着部44bから取り外されたチップ42の先端部に付着している液体によるコンタミネーションを防止しつつ、そのチップ42が前処理装置12の駆動系に干渉し、その前処理装置12が故障するのを防止することができる。
【0125】
6.脱落検出処理の概要
また、このような前処理装置12では、チップ42がチップ脱着部44bに装着されてから、そのチップ脱着部44bから取り外されるまでの間にチップ42がチップ脱着部44bから脱落する可能性がある。
【0126】
チップ42がチップ脱着部44bに装着されてから、そのチップ脱着部44bから取り外されるまでの間にチップ42が脱落すると、そのチップ42が前処理装置12の駆動系に干渉し、その前処理装置12が故障する可能性がある。
【0127】
特に、チップ脱着部44bに装着されてから分注動作が実施されるまでに、チップ脱着部44bからチップ42が脱落すると、分注動作が不良となる。
【0128】
さらに、分注動作が実施されてからチップ脱着部44bからチップ42が取り外されるまでの間にそのチップ42が脱落した場合、チップ42の先端部に液体が付着していることから、その液体によるコンタミネーションが生じる可能性がある。
【0129】
つまり、チップ42がチップ脱着部44bに装着されてから、そのチップ脱着部44bから取り外されるまでの間にチップ42が脱落すると、様々な問題が生じる可能性がある。
【0130】
したがって、本実施形態では、分注処理に併せて、チップ脱着部44bからのチップ42の脱落を検出する脱落検出処理を実行する。
【0131】
脱落検出処理では、チップ42の先端部がチップ衝突部64に向かうようにチップ脱着部44bを変位させる。
【0132】
本実施形態では、テーブル22を水平方向に変位させることにより、チップ衝突部64の上方にチップ42が装着されているチップ脱着部44bを位置合わせした後、チップ脱着部44bを下方に変位させることにより、チップ42の先端部をチップ衝突部64に向かわせるようになっている。
【0133】
図11は、本実施形態の脱落検出処理を説明するための概略断面図である。脱落検出処理では、チップ42が装着されているチップ脱着部44bをチップ衝突部64の上方から下方に向かって停止位置まで変位させる。
【0134】
脱落検出処理に係る停止位置は、チップ脱着部44bにチップ42が装着されている場合に、そのチップ42がチップ衝突部64と衝突する位置である。
【0135】
つまり、チップ脱着部44bにチップ42が装着されている場合、チップ脱着部44bが停止位置まで変位することで、チップ42とチップ衝突部64との衝突に起因する負荷がチップ脱着部44bにかかる。このとき、チップ脱着部44bへの負荷が負荷検出部52で検出される。
【0136】
一方で、チップ脱着部44bにチップ42が装着されていない場合、チップ脱着部44bを停止位置まで変位しても、チップ42とチップ衝突部64が衝突しない。つまり、チップ脱着部44bへの負荷が負荷検出部52で検出されない。
【0137】
したがって、脱落検出処理では、チップ脱着部44bへの負荷の有無に基づいて、チップ脱着部44bにチップ42が装着されているか否かを判断することができる。
【0138】
本実施形態では、チップ脱着部44bに装着されているチップ42とチップ衝突部64との衝突に起因する負荷が負荷検出部52で検出されると、チップ脱着部44bからのチップ42の脱落が検出されない。一方で、チップ脱着部44bに装着されているチップ42とチップ衝突部64との衝突に起因する負荷が負荷検出部52で検出されないと、チップ脱着部44bからのチップ42の脱落が検出される。
【0139】
本実施形態では、分注動作が実施されると、チップ取外し処理によりチップ脱着部44bからチップ42が取り外されるよりも先に、チップ42が装着されているチップ脱着部44bをチップ衝突部64に向かうように変位させる。
【0140】
脱落検出処理によって、チップ脱着部44bからのチップ42の脱落が検出されると、その旨が上述したように報知される。また、この場合、分注処理が取消される。
【0141】
一方で、脱落検出処理によって、チップ脱着部44bにチップ42が装着されていることが検出される場合、チップ取外し処理によりそのチップ42がチップ脱着部44bから取り外される。
【0142】
脱落検出処理によれば、チップ脱着部44bからのチップ42の脱落を検出することができる。また、このことから、分注動作の不良を事前に防ぐことができる。
【0143】
また、脱落検出処理によれば、チップ脱着部44bからチップ42が脱落したとしても、その直後にチップ42の脱落を検出することができる。
【0144】
このことから、チップ42がチップ脱着部44bから脱落したとしても、チップ42の先端部に付着している液体によるコンタミネーションを防止できる場合がある。また、チップ42の先端部に付着している液体によるコンタミネーションが生じたとしても、そのことによる影響を抑制することができる。
【0145】
また、チップ脱着部44bからチップ42が脱落したとしても、その直後にチップ42の脱落を検出することができるのであれば、そのチップ42が前処理装置12の駆動系に干渉するのを防止できる場合がある。また、チップ42が前処理装置12の駆動系に干渉したとしても、前処理装置12が故障する前にその前処理装置12の駆動系を停止することができる。
【0146】
また、脱落検出処理では、第4貫通孔62の周縁部にチップ42の先端部以外の箇所を衝突させるため、チップ42の先端部の変形が防止される。
【0147】
さらに、第4貫通孔62の周縁部にチップ42の先端部以外の箇所を衝突させることで、そのチップ42の先端部に付着している液体が第4貫通孔62の周縁部に付着するのを防止することができる。つまり、チップ42の先端部に付着している液体によるコンタミネーションが生じるのを抑制することができる。
【0148】
なお、脱落検出処理では、先端部に液体が付着したチップ42をチップ衝突部64に衝突させるため、コンタミネーションを防止するという観点から、そのチップ衝突部64は、容器保持部24及び第1チップ保持部26から離れた位置に設けられるのが好ましい。
【0149】
本実施形態では、上述したように、第2チップ保持部28が使用済チップ42aを保持する。また、第2チップ保持部28は、本体20から取り外し適宜に洗浄することが可能である。つまり、チップ42の先端部に付着している液体が第2チップ保持部28に付着したとしても、その液体によるコンタミネーション等は生じにくい。
【0150】
したがって、本実施形態では、図11に示すように、チップ衝突部64を第2チップ保持部28の上方に設けることで、チップ42とチップ衝突部64とが衝突するとき、そのチップ42の先端部が第2チップ保持部28を向くようにしている。このことによれば、チップ42とチップ衝突部64とを衝突させつつ、チップ42の先端部に付着している液体によるコンタミネーションが生じるのを抑制することができる。
【0151】
また、チップ衝突部64は、第2チップ保持部28の上方の代わりに、第2チップ保持部28の天板部28bに設けられてもよい。この場合、チップ42の先端部が第2チップ保持部28のトレイ部28aに挿入されるため、上述したような効果が得られる。ただし、この場合、第4貫通孔62の径は、チップ42の最大の外径よりも大きい。また、第5貫通孔66の径は、チップ42の最小の外径よりも大きく、かつ、チップ42の最大の径よりも小さい。
【0152】
7.装着検出処理の概要
また、本実施形態では、分注処理に併せて、チップ42がチップ脱着部44bに装着されたことを検出する装着検出処理が実行されてもよい。
【0153】
上述したように、チップ装着処理により、チップ脱着部44bにチップ42が装着されるとき、チップ脱着部44bへのチップ42の装着に起因する負荷が負荷検出部52で検出される。また、チップ脱着部44bにチップ42が装着されないときは、負荷検出部52で負荷が検出されない。
【0154】
装着検出処理では、チップ脱着部44bへのチップ42の装着に起因する負荷の有無に基づいて、チップ脱着部44bにチップ42が装着されたかどうかを判断する。
【0155】
本実施形態では、チップ脱着部44bへのチップ42の装着に起因する負荷が負荷検出部52で検出されると、チップ脱着部44bへのチップ42の装着が検出される。一方で、チップ脱着部44bへのチップ42の装着に起因する負荷が負荷検出部52で検出されないと、チップ脱着部44bへのチップ42の装着が検出されない。
【0156】
本実施形態では、装着検出処理により、チップ脱着部44bへのチップ42の装着が検出された場合、分注動作が実施される。一方で、チップ脱着部44bへのチップ42の未装着が検出されると、その旨が上述したように報知される。また、この場合、分注処理が取消される。
【0157】
装着検出処理によれば、チップ脱着部44bへのチップ42の装着が検出されたときに、分注動作を実施することができる。このことから、装着検出処理によれば、チップ脱着部44bにチップ42が装着されなかったことに起因して、分注動作の不良が生じるのを防止することができる。
【0158】
8.液体クロマトグラフの具体的な電気的構成
図12は、本実施形態の前処理装置12の電気的構成を具体的に示すブロック図である。なお、図12では、記憶部106の図示は省略する。
【0159】
RAM104には、記憶部106から予め読み出された実行用データが記憶される。また、機器及びセンサ等を用いて取得した取得データが記憶部106に記憶される際に、その取得データがRAM104に一時的に記憶される。
【0160】
図12に示す例では、RAM104には、制御用データ120、配置順序データ122及び報知用データ124が記憶されている。
【0161】
制御用データ120は、前処理装置12の動作を制御するのに必要な各種データである。配置順序データ122は、チップ配置順序に対応するデータである。
【0162】
報知用データ124は、報知部114等を用いて報知するのに必要なデータである。また、報知用データ124は、報知の方式に対応したデータである。報知用データ124は、たとえば、音声データ、メッセージデータ、発光パターンを示すデータ等である。
【0163】
RAM104には、記憶部106から予め読み出された制御プログラム(図示は省略)が記憶され、CPU102がその制御プログラムを実行すると、制御部100は、動作処理部126、負荷検出処理部134、取付異常検出処理部136、装着検出処理部138、脱落検出処理部140、取消処理部144、報知処理部146、通信処理部148として機能する。
【0164】
また、動作処理部126には、チップ装着処理部128、分注処理部130及びチップ取外し処理部132が含まれる。動作処理部126は、制御用データ120を用いて、前処理装置12の動作を制御する。
【0165】
チップ装着処理部128は、前処理装置12の動作を制御することで、チップ脱着部44bを第1チップ保持部26に向かうように変位させ、チップ脱着部44bにチップ42を装着する。
【0166】
分注処理部130は、前処理装置12の動作を制御することで、分注動作を少なくとも1回以上実施する。
【0167】
チップ取外し処理部132は、前処理装置12の動作を制御することで、チップ脱着部44bに装着されているチップ42を取り外し、そのチップ42を保持位置74に配置する。なお、チップ取外し処理部132は、前処理装置12の動作を制御する際、配置順序データ122を参照する。
【0168】
負荷検出処理部134は、負荷検出センサ52bを用いて、チップ脱着部44bへの負荷を検出する。
【0169】
取付異常検出処理部136は、動作処理部126で、チップ42が装着されていないチップ脱着部44bを取付位置に向かうように変位させる。
【0170】
また、取付異常検出処理部136は、チップ脱着部44bと第2チップ保持部28との衝突に起因する負荷が負荷検出処理部134で検出されない場合に、第2チップ保持部28の取付異常を検出する。
【0171】
さらに、取付異常検出処理部136は、チップ脱着部44bと第2チップ保持部28との衝突に起因する負荷が負荷検出処理部134で検出される場合に、第2チップ保持部28の取付異常を検出しない。
【0172】
装着検出処理部138は、チップ装着処理部128でチップ脱着部44bにチップ42を装着させるとき、チップ脱着部44bへのチップ42の装着に起因する負荷が負荷検出処理部134で検出された場合に、チップ脱着部44bに対するチップ42の装着を検出する。
【0173】
また、装着検出処理部138は、チップ装着処理部128でチップ脱着部44bにチップ42を装着させるときに、チップ脱着部44bへのチップ42の装着に起因する負荷が負荷検出処理部134で検出されない場合に、チップ脱着部44bに対するチップ42の未装着を検出する。
【0174】
脱落検出処理140は、分注動作が実施された後に、動作処理部126で、チップ脱着部44bに装着されているチップ42の先端部がチップ衝突部64に向かうように、チップ脱着部44bを変位させる。
【0175】
また、脱落検出処理140は、チップ脱着部44bに装着されているチップ42とチップ衝突部64との衝突に起因する負荷が負荷検出処理部134で検出されない場合に、チップ脱着部44bからのチップ42の脱落を検出する。
【0176】
さらに、脱落検出処理140は、チップ脱着部44bに装着されているチップ42とチップ衝突部64との衝突に起因する負荷が負荷検出処理部134で検出される場合に、チップ脱着部44bにチップ42が装着されていることを検出する。
【0177】
取消処理部144は、取付異常検出処理部136で、第2チップ保持部28の取付異常が検出される場合に分注処理を取り消す。また、取消処理部144は、装着検出処理部138で、チップ脱着部44bに対するチップ42の装着が検出されない場合に分注処理を取り消す。さらに、取消処理部144は、脱落検出処理140で、チップ脱着部44bからのチップ42の脱落が検出される場合に分注処理を取り消す。
【0178】
報知処理部146は、取付異常検出処理部136で、第2チップ保持部28の取付異常が検出される場合に、その旨を報知する。また、報知処理部146は、装着検出処理部138で、チップ脱着部44bに対するチップ42の装着が検出されない場合に、その旨を報知する。さらに、報知処理部146は、脱落検出処理140で、チップ脱着部44bからのチップ42の脱落が検出される場合に、その旨を報知する。
【0179】
また、報知処理部146は、通信処理部148を用いて、ユーザ端末14でも各種の報知を行う。なお、通信処理部148は、通信部112を用いて、ユーザ端末14と通信する。
【0180】
10.フロー
図13は、本実施形態のCPU102の全体処理の一例を示すフロー図である。全体処理は、たとえば、前処理装置12が、ユーザ端末14から分注処理の実行を指示するコマンドを受信すると、開始される。
【0181】
ステップS1では、チップ脱着部44bを第2チップ保持部28の取付位置に向かうように変位させ、第2チップ保持部28の取付異常を検出したかどうかを判断する。
【0182】
ステップS1で“YES”であれば、つまり、第2チップ保持部28の取付異常を検出したのであれば、ステップS5に進む。一方で、ステップS1で“NO”であれば、つまり、第2チップ保持部28の取付異常を検出していないのであれば、ステップS2に進む。
【0183】
ステップS2では、チップ脱着部44bを第1チップ保持部26に向かうように変位させ、チップ脱着部44bにチップ42が装着されたかどうかを判断する。
【0184】
ステップS2で“NO”であれば、つまり、チップ脱着部44bにチップ42が装着されていないのであれば、ステップS5に進む。一方で、ステップS2で“YES”であれば、つまり、チップ脱着部44bにチップ42が装着されたのであれば、ステップS3に進む。
【0185】
ステップS3では、分注動作を実施し、ステップS4では、チップ衝突部64にチップ脱着部44bを変位させ、チップ42がチップ脱着部44bから脱落したかどうかを判断する。
【0186】
ステップS4で“NO”であれば、つまり、チップ42がチップ脱着部44bから脱落していないのであれば、ステップS7に進む。一方で、ステップS4で“YES”であれば、つまり、チップ42がチップ脱着部44bから脱落したのであれば、ステップS5に進む。
【0187】
ステップS5では、適宜に報知処理を行い、ステップS6では、分注処理を取消す。ステップS6で分注処理が取消されると、全体処理が終了する。
【0188】
ステップS7では、チップ脱着部44bからチップ42を取り外し、ステップS8では、次の分注動作を実施するかどうかを判断する。
【0189】
ステップS8で“NO”であれば、つまり、次の分注動作を実施しないのであれば、全体処理が終了する。一方で、ステップS8で“YES”であれば、つまり、次の分注動作を実施するのであれば、ステップS2に戻る。
【0190】
また、上述の実施形態で示したフロー図の各ステップは、同じ結果が得られるのであれば、処理される順番は適宜変更することが可能である。
【0191】
11.変形例
以上の実施形態では、取付異常検出処理において、チップ42が装着されていないチップ脱着部44bを第2チップ保持部28に衝突させることを例に挙げて説明した。
【0192】
変形例では、チップ装着処理によりチップ42がチップ脱着部44bに装着された後に、取付異常検出処理が実行してもよい。つまり、変形例の取付異常検出処理では、チップ脱着部44bに装着されているチップ42を第2チップ保持部28に向かうように変位させてもよい。
【0193】
また、変形例に係る第2チップ保持部28は、チップ42の先端部の変形を防止するための変形防止構造(図示は省略)を有していてもよい。
【0194】
変形防止構造の一例として、第2チップ保持部28の凸部68の上面には、チップ42の先端部を収容する凹部が設けられてもよい。なお、この凹部の径は、チップ42の最小の外径よりも大きく、かつ、チップ42の最大の外径よりも小さい。
【0195】
このような変形防止構造によれば、チップ42の先端部以外の箇所、たとえば、下側部分421と上側部分422との境界位置に形成された段差と凸部68とを衝突させることができる。つまり、チップ脱着部44bに装着されているチップ42と凸部68との衝突に起因するチップ42の変形を防止することができる。
【0196】
したがって、変形例の取付異常検出処理では、チップ42を変形させることなく、第2チップ保持部28の取付異常を検出することができる。
【0197】
また、変形例では、凸部68の代わりに、変形防止構造としての役割を担う貫通孔が設けられてもよい。なお、この貫通孔の径は、チップ42の最小の外径よりも大きく、かつ、チップ42の最大の外径よりも小さい。
【0198】
このような場合、取付異常検出処理では、上述したように、チップ42を変形させることなく、第2チップ保持部の取付異常を検出することができる。
【0199】
12.態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0200】
(第1項)一態様に係る生化学用前処理装置の制御方法は、
液体を収容する容器を複数保持する容器保持部と、チップを複数保持する第1チップ保持部と、使用された後の前記チップである使用済チップを複数保持する第2チップ保持部と、前記チップの脱着が可能なチップ脱着部と、前記チップ脱着部を変位可能に支持する支持機構と、前記チップ脱着部及び前記支持機構を内部に収容するとともに、前記第2チップ保持部を取付可能な取付位置が内部に形成された本体とを備え、前記チップ脱着部に装着された前記チップを介して液体を吸引及び吐出する分注動作が少なくとも1回以上実施される分注処理を実行する生化学用前処理装置の制御方法であって、
前記チップ脱着部の変位に伴う当該チップ脱着部への負荷を検出する負荷検出ステップと、
前記チップが装着されていない状態の前記チップ脱着部を前記取付位置に向かうように変位させ、当該チップ脱着部と前記第2チップ保持部との衝突に起因する負荷が前記負荷検出ステップで検出されない場合に、前記第2チップ保持部の取付異常を検出する取付異常検出ステップとを含んでもよい。
【0201】
第1項に記載の生化学用前処理装置の制御方法によれば、チップが装着されていない状態のチップ脱着部を用いて、第2チップ保持部が取付位置に取り付けられていないことを検出することができる。これにより、チップ脱着部から取り外されたチップが本体内で無造作に配置されるのを防止することができる。また、このことから、チップ脱着部から取り外されたチップの先端部に付着している液体によるコンタミネーションを防止しつつ、そのチップが前処理装置の駆動系に干渉し、その前処理装置が故障するのを防止することができる。
【0202】
(第2項)一態様に係る生化学用前処理装置は、
液体を収容する容器を複数保持する容器保持部と、チップを複数保持する第1チップ保持部と、使用された後の前記チップである使用済チップを複数保持する第2チップ保持部と、前記チップの脱着が可能なチップ脱着部と、前記チップ脱着部を変位可能に支持する支持機構と、前記チップ脱着部及び前記支持機構を内部に収容するとともに、前記第2チップ保持部を取付可能な取付位置が内部に形成された本体とを備え、前記チップ脱着部に装着された前記チップを介して液体を吸引及び吐出する分注動作が少なくとも1回以上実施される分注処理を実行する生化学用前処理装置であって、
前記チップ脱着部の変位に伴う当該チップ脱着部への負荷を検出する負荷検出処理部と、
前記チップが装着されていない状態の前記チップ脱着部を前記取付位置に向かうように変位させ、当該チップ脱着部と前記第2チップ保持部との衝突に起因する負荷が前記負荷検出処理部で検出されない場合に、前記第2チップ保持部の取付異常を検出する取付異常検出処理部とを備えてもよい。
【0203】
第2項に記載の生化学用前処理装置によれば、チップが装着されていない状態のチップ脱着部を用いて、第2チップ保持部が取付位置に取り付けられていないことを検出することができる。これにより、チップ脱着部から取り外されたチップが本体内で無造作に配置されるのを防止することができる。また、このことから、チップ脱着部から取り外されたチップの先端部に付着している液体によるコンタミネーションを防止しつつ、そのチップが前処理装置の駆動系に干渉し、その前処理装置が故障するのを防止することができる。
【0204】
(第3項)第2項に記載の生化学用前処理装置において、
前記チップ脱着部を変位させることで、当該チップ脱着部に前記チップを装着させるチップ装着処理部と、
前記チップ脱着部に装着された前記チップを介して液体を吸引及び吐出する前記分注動作が実施された後に、当該チップの先端部が所定のチップ衝突部に向かうように、前記チップ脱着部を変位させ、前記チップと前記チップ衝突部との衝突に起因する負荷が前記負荷検出処理部で検出されない場合に、前記チップ脱着部からの前記チップの脱落を検出する脱落検出処理部とをさらに備えてもよい。
【0205】
第3項に記載の生化学用前処理装置によれば、分注動作が実施された後に、チップ脱着部からのチップの脱落を検出することができる。これにより、分注動作の不良を事前に防ぐことができる。また、分注動作が実施された後に、チップ脱着部からのチップの脱落を検出することができるのであれば、チップがチップ脱着部から脱落したとしても、チップの先端部に付着している液体によるコンタミネーションを防止することが可能となる。また、チップの先端部に付着している液体によるコンタミネーションが生じたとしても、そのことによる影響を抑制することができる。さらに、分注動作が実施された後に、チップ脱着部からのチップの脱落を検出することができるのであれば、そのチップが前処理装置の駆動系に干渉するのを防止することが可能となる。また、チップが前処理装置の駆動系に干渉したとしても、前処理装置が故障する前に駆動系を停止することができる。
【0206】
(第4項)第3項に記載の生化学用前処理装置において、
前記チップ脱着部に前記チップを装着させるときに、当該チップ脱着部への当該チップの装着に起因する負荷が前記負荷検出処理部で検出された場合に、前記チップ脱着部に対する前記チップの装着を検出する装着検出処理部をさらに備えてもよい。
【0207】
第4項に記載の生化学用前処理装置によれば、チップ脱着部へのチップの装着が検出されたときに、分注動作を実施することができる。このことから、チップ脱着部にチップが装着されなかったことに起因して、分注動作の不良が生じるのを防止することができる。
【0208】
(第5項)第4項に記載の生化学用前処理装置において、
前記装着検出処理部により前記チップ脱着部に対する前記チップの装着が検知されない場合、又は、前記脱落検出処理部により前記チップ脱着部からの前記チップの脱落が検出された場合に、その旨を報知する報知処理部をさらに備えてもよい。
【0209】
第5項に記載の生化学用前処理装置によれば、第1チップ保持部へのチップの設置、又は、分注処理の再実行をユーザに促すことができる。
【0210】
(第6項)第3項から第5項のいずれか一項に記載の生化学用前処理装置において、
前記チップ衝突部は、前記チップの先端部を挿入可能な貫通孔の周縁部を含み、
前記脱落検出処理部は、前記チップの先端部を前記貫通孔に挿入するように、前記チップ脱着部を変位させ、前記チップと前記貫通孔の周縁部との衝突に起因する負荷が前記負荷検出処理部で検出されない場合に、前記チップ脱着部からの前記チップの脱落を検出してもよい。
【0211】
第6項に記載の生化学用前処理装置によれば、貫通孔の周縁部にチップの先端部以外の箇所を衝突させるため、チップの先端部の変形が防止される。また、貫通孔の周縁部にチップの先端部以外の箇所を衝突させることから、チップの先端部に付着している液体が貫通孔の周縁部に付着するのを防止することができる。つまり、チップの先端部に付着している液体によるコンタミネーションが生じるのを抑制することができる。
【0212】
(第7項)第3項から第6項のいずれか一項に記載の生化学用前処理装置において、
前記チップ衝突部は、前記第2チップ保持部又は当該第2チップ保持部の上方に位置してもよい。
【0213】
第7項に記載の生化学用前処理装置によれば、チップの先端部に付着している液体が、第2チップ保持部以外の箇所に飛散することを抑制できる。
【0214】
(第8項)第2項から第7項のいずれか一項に記載の生化学用前処理装置において、
前記第2チップ保持部は、複数の前記使用済チップを立てた状態で保持するための保持構造を上部に有してもよい。
【0215】
第8項に記載の生化学用前処理装置によれば、使用済チップが第2チップ保持部内で無造作に保持されるのを防止することができる。したがって、チップ脱着部からのチップの取外しが、第2チップ保持部内で無造作に保持される使用済チップにより妨げられるのを防止することができる。このことから、チップ脱着部からのチップの取り外しを確実に行いつつ、前処理装置の駆動系に使用済チップが干渉し、その前処理装置が故障するのを防止することができる。
【0216】
(第9項)第8項のいずれか一項に記載の生化学用前処理装置において、
前記保持構造は、傾斜面と、当該傾斜面に形成され、前記使用済チップを摺接可能に保持するガイドとを含んでもよい。
【0217】
第9項に記載の生化学用前処理装置によれば、立てた状態のチップを傾斜面に沿って摺接させ、そのチップを保持することができる。
【符号の説明】
【0218】
12 前処理装置
20 本体
22 容器保持部
26 第1チップ保持部
28 第2チップ保持部
42 チップ
42a 使用済チップ
44b チップ脱着部
46 支持機構
62 貫通孔
64 チップ衝突部
70 保持構造
70a ガイド
70b 傾斜面
128 チップ装着処理部
134 負荷検出処理部
136 取付異常検出処理部
140 脱落検出処理部
146 報知処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13