(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】バッテリ管理装置
(51)【国際特許分類】
B60L 58/24 20190101AFI20240925BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240925BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240925BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20240925BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240925BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20240925BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20240925BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20240925BHJP
【FI】
B60L58/24
B60L53/14
B60L15/20 J
G01C21/36
H02J7/00 P
H02J7/04 L
G16Y10/40
G16Y40/10
(21)【出願番号】P 2023550434
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(86)【国際出願番号】 JP2022030697
(87)【国際公開番号】W WO2023053745
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2021159156
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼田 将成
(72)【発明者】
【氏名】大船 悠
(72)【発明者】
【氏名】福井 康晃
(72)【発明者】
【氏名】梯 伸治
【審査官】柳幸 憲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-044887(JP,A)
【文献】特開2013-184519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/24
B60L 53/14
B60L 15/20
G01C 21/36
H02J 7/00
H02J 7/04
G16Y 10/40
G16Y 40/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(A)に搭載される走行用のバッテリ(B)の状態を管理するバッテリ管理装置であって、
前記バッテリの温度調整を行う温度調整部(42)と、
前記車両が目的地へ向かって将来的に走行する際の充電計画に基づく前記バッテリの充電が可能な充電設備に関する情報を含む環境情報を取得する環境情報取得部(10a)と、
前記環境情報取得部で取得した前記環境情報に基づいて、前記車両が前記充電設備に到着した際の前記バッテリのバッテリ温度を推定する温度推定部(10b)と、
前記車両の走行及び前記温度調整部の作動を行って前記車両が前記充電設備に到着した際に、効率よく前記バッテリの充電を行うことができる目標バッテリ温度を設定する目標温度設定部(10c)と、
前記温度推定部により推定された前記バッテリ温度と、前記目標温度設定部で設定された前記目標バッテリ温度とを用いて、前記車両が前記充電設備へ走行する際の走行速度の調整量を定める走行速度調整部(10d)
と、
前記環境情報取得部で取得された前記環境情報に基づいて、前記車両の走行及び前記温度調整部の作動を行って前記車両が前記充電設備に到着するまでに要する所要時間を推定する所要時間推定部(10e)を有し、
前記走行速度調整部は、現在における前記バッテリ温度と前記目標温度設定部で設定された前記目標バッテリ温度との乖離と、前記所要時間推定部で推定された前記所要時間とを用いて、前記車両が前記充電設備へ走行する際の走行速度の調整量を定めるバッテリ管理装置。
【請求項2】
前記走行速度調整部は、前記所要時間推定部で推定された前記所要時間が短い程、前記車両の走行速度を大きく減速するように調整する
請求項1に記載のバッテリ管理装置。
【請求項3】
前記走行速度調整部は、現在における前記バッテリ温度と前記目標温度設定部で設定された前記目標バッテリ温度との乖離が大きい程、前記車両の走行速度を大きく減速するように調整する
請求項1又は2に記載のバッテリ管理装置。
【請求項4】
前記所要時間推定部は、前記車両の走行及び前記温度調整部の作動を行って前記車両が前記充電設備に到着するまでに要する前記所要時間について、現時点における前記車両の前記走行速度に基づく前記所要時間と、調整された前記走行速度に基づく前記所要時間を推定し、
現時点における前記車両の前記走行速度で走行した場合の前記充電設備における充電時間と、調整された前記走行速度で走行した場合の前記充電設備における充電時間とを推定する充電時間推定部(10f)と、
現時点における前記車両の前記走行速度で走行した場合の前記所要時間及び前記充電時間を合算した合計時間と、調整された前記走行速度で走行した場合の前記合計時間を推定する合計時間推定部(10g)と、を有し、
前記走行速度調整部は、調整された前記走行速度で走行した場合の前記合計時間が現時点における前記合計時間よりも短くなるように、前記車両が前記充電設備へ走行する際の前記走行速度の調整量を定める
請求項1ないし3の何れか1つに記載のバッテリ管理装置。
【請求項5】
前記充電計画として定められた走行経路に複数の前記充電設備が配置されている場合に、前記充電設備ごとに、前記合計時間推定部による前記合計時間の推定を行い、
前記走行速度調整部は、前記合計時間推定部による前記合計時間の推定結果を用いて、前記目的地へ前記車両が到着する目的地到着時間が最も短くなるように、前記バッテリの充電を行う前記充電設備の選択及び前記走行速度の調整を行う
請求項4に記載のバッテリ管理装置。
【請求項6】
前記走行速度調整部は、前記温度推定部により推定された前記バッテリ温度と、前記目標温度設定部で設定された前記目標バッテリ温度との差に応じて、前記車両が前記充電設備へ走行する際の走行速度の調整量を定める請求項1ないし5の何れか1つに記載のバッテリ管理装置。
【請求項7】
前記車両の乗員に対して情報を伝達する情報伝達部(70)を有し、
前記走行速度調整部は、前記車両の前記走行速度に関する調整結果を、前記情報伝達部へ出力する
請求項1ないし6の何れか1つに記載のバッテリ管理装置。
【請求項8】
前記走行速度調整部は、前記車両の前記走行速度に関する調整結果を、前記車両の前記走行速度に関する制御の目標値に設定する
請求項1ないし7の何れか1つに記載のバッテリ管理装置。
【請求項9】
前記走行速度調整部(10d)で前記車両の前記走行速度が調整される条件を満たし、且つ、前記温度調整部(42)の温調性能を調整可能である場合に、前記車両が前記充電設備に到着した際に前記目標バッテリ温度になるように、前記車両の走行と同時に行われる前記温度調整部の温調性能を調整する温調性能調整部(10h)を有する
請求項1ないし8の何れか1つに記載のバッテリ管理装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年9月29日に出願された日本特許出願2021-159156号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、車両に搭載された走行用のバッテリを管理するバッテリ管理装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、車両に搭載された走行用のバッテリに対しては、バッテリの性能を充分に発揮させる為に、様々な観点での管理が行われている。例えば、特許文献1に記載されたバッテリ管理装置では、将来的な充電設備までの走行情報に基づいて、充電設備での充電に先んじで、バッテリの温度調整を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
ここで、このようなバッテリ管理装置は、車両に搭載された走行用のバッテリに対して適用される為、バッテリの状態も車両の走行負荷の影響を受けることが想定される。特許文献1のように、充電設備におけるバッテリの充電に先んじて事前にバッテリの温度調整を行う構成であっても、車両の走行負荷の影響によっては、目標とする状態にバッテリの温度調整を行うことができない場合がある。
【0006】
例えば、車両の走行負荷が大きすぎる場合、走行負荷に起因するバッテリの発熱量が大きくなり、車両の温度調整部による冷却性能を上回ってしまうと、目標とする状態までバッテリを冷却することができない。
【0007】
又、車両の高速走行にて走行負荷が増大する場合には、高速走行により充電設備への到着時間が短くなることが考えられる。この場合、温度調整部による温調時間が短くなることになる為、目標とする状態までバッテリを冷却することができないことが想定される。
【0008】
目標とする状態までバッテリを冷却することができない場合、充電設備での充電に際して、バッテリの自己発熱の影響を鑑みて、充電設備での充電電流に制限がかかることが想定される。充電電流が制限された場合、充電設備におけるバッテリの充電に多大な時間が必要になる為、バッテリの充電完了までに要する時間のロスが大きくなってしまう。
【0009】
本開示は、上記点に鑑み、車両に搭載された走行用のバッテリを管理するバッテリ管理装置に関し、充電設備での充電完了までに要する時間を短縮可能なバッテリ管理装置を提供することを目的とする。
【0010】
温度調整部は、バッテリの温度調整を行う。環境情報取得部は、車両が目的地へ向かって将来的に走行する際の充電計画に基づくバッテリの充電が可能な充電設備に関する情報を含む環境情報を取得する。温度推定部は、環境情報取得部で取得した環境情報に基づいて、車両が充電設備に到着した際のバッテリ温度を推定する。目標温度設定部は、車両の走行及び温度調整部の作動を行って車両が充電設備に到着した際に、効率よくバッテリの充電を行うことができる目標バッテリ温度を設定する。走行速度調整部は、温度推定部により推定されたバッテリ温度と、目標温度設定部で設定された目標バッテリ温度とを用いて、車両が充電設備へ走行する際の走行速度の調整量を定める。そして、バッテリ管理装置は、環境情報取得部で取得された環境情報に基づいて、車両の走行及び温度調整部の作動を行って車両が充電設備に到着するまでに要する所要時間を推定する所要時間推定部(10e)を有する。走行速度調整部は、現在におけるバッテリ温度と目標温度設定部で設定された目標バッテリ温度との乖離と、所要時間推定部で推定された所要時間とを用いて、車両が充電設備へ走行する際の走行速度の調整量を定める。
【0011】
温度調整部は、バッテリの温度調整を行う。環境情報取得部は、車両が目的地へ向かって将来的に走行する際の充電計画に基づくバッテリの充電が可能な充電設備に関する情報を含む環境情報を取得する。温度推定部は、環境情報取得部で取得した環境情報に基づいて、車両が充電設備に到着した際のバッテリ温度を推定する。目標温度設定部は、車両の走行及び温度調整部の作動を行って車両が充電設備に到着した際に、効率よくバッテリの充電を行うことができる目標バッテリ温度を設定する。走行速度調整部は、温度推定部により推定されたバッテリ温度と、目標温度設定部で設定された目標バッテリ温度とを用いて、車両が充電設備へ走行する際の走行速度の調整量を定める。
【0012】
バッテリ管理装置によれば、車両の走行及び温度調整部の作動を行って車両が充電設備へ走行する際に、走行速度調整部によって、充電設備へ向かう走行速度を調整することができる。走行速度が調整されることで、温度調整部の作動時間を適切に確保することができる為、充電設備に到着した際のバッテリ温度を、目標バッテリ温度となるように調整することができ、充電設備におけるバッテリの充電完了までの所要時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示についての上記目的及びその他の目的、特徴や利点は、添付図面を参照した下記詳細な説明から、より明確になる。添付図面において、
【
図1】
図1は、第1実施形態のバッテリ管理装置が適用される車両の構成図であり、
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るエネルギマネージャの概略構成を示すブロック図であり、
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るバッテリ管理プログラムのフローチャートであり、
【
図4】
図4は、第1実施形態における減速量決定テーブルの一例を示す説明図であり、
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る走行速度調整処理がバッテリ温度に及ぼす影響を示す説明図であり、
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る走行速度調整処理がバッテリの充電率に及ぼす影響を示す説明図であり、
【
図7】
図7は、第2実施形態に係るバッテリ管理プログラムのフローチャートであり、
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る走行速度調整処理がバッテリ温度に及ぼす影響を示す説明図であり、
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る走行速度調整処理がバッテリの充電率に及ぼす影響を示す説明図であり、
【
図10】
図10は、第3実施形態における第1運用パターンでの合計所要時間の一例を示す説明図であり、
【
図11】
図11は、第3実施形態における第2運用パターンでの合計所要時間の一例を示す説明図であり、
【
図12】
図12は、第3実施形態における第3運用パターンでの合計所要時間の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0015】
(第1実施形態)
先ず、本開示における第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。第1実施形態においては、本開示に係るバッテリ管理装置を、車両Aに搭載されたエネルギマネージャ1として実現している。
【0016】
図1に示すように、車両Aは、走行用のバッテリBを搭載しており、バッテリBの電力で走行するBEV(Battery Electric Vehicle)である。エネルギマネージャ1は、統括制御部10、バッテリマネージャ20、運動マネージャ30、熱マネージャ40、情報通知部50を有しており、バッテリBの状態を管理する。
【0017】
ここで、エネルギマネージャ1は、処理部、RAM、記憶部、入出力インターフェース、及びこれらを接続するバス等を備えた車載コンピュータによって実現されている。処理部は、RAMと結合された演算処理のためのハードウェアである。処理部は、RAMへのアクセスにより、後述する各機能部の機能を実現させる種々の処理を実行する。記憶部は、不揮発性の記憶媒体を含む構成である。記憶部には、処理部によって実行される種々のプログラム(バッテリ管理プログラム等)が格納されている。エネルギマネージャ1の具体的構成及び各機能部については、後に詳細に説明する。
【0018】
そして、車両Aには、エネルギマネージャ1と共に、通信モジュール60、ナビゲーション装置70、ユーザ入力部80、複数の消費ドメインDEc、給電ドメインDEs及び充電システム21等が搭載されている。
【0019】
通信モジュール60は、車両Aに搭載される通信モジュール(Data Communication Module)である。通信モジュール60は、LTE(Long Term Evolution)及び5G等の通信規格に沿った無線通信により、車両Aの周囲の基地局との間で電波を送受信する。通信モジュール60の搭載により、車両Aは、ネットワークNWに接続可能なコネクテッドカーとなる。
【0020】
通信モジュール60は、ネットワークNWを通じて、クラウドサーバ100及びステーションマネージャ90等との間で情報を送受信できる。クラウドサーバ100は、クラウド上に設置された情報配信サーバであり、例えば、気象情報及び道路交通情報等を配信する。
【0021】
ステーションマネージャ90は、充電管理センタCTcに設置された演算システムである。ステーションマネージャ90は、特定の地域に設置された多数の充電ステーションCSと、ネットワークNWを通じて、通信可能に接続されている。ステーションマネージャ90は、各充電ステーションCSについてのステーション情報を把握している。ステーション情報には、充電ステーションCSの設置場所、使用中か否かを示す使用可否情報、及び充電器の充電能力情報等が含まれている。充電能力情報は、例えば、急速充電可能か否か、対応する充電の規格、及び急速充電の最大出力等である。ステーション情報は環境情報の一例である。
【0022】
充電ステーションCSは、車両Aに搭載される走行用のバッテリBを充電するインフラ施設であり、充電設備に相当する。各充電ステーションCSは、電力網を通じて供給される交流電力、又は太陽光発電システム等から供給される直流電力を用いて、バッテリBを充電する。充電ステーションCSは、例えば、ショッピングモール、コンビニエンスストア及び公共施設等の各駐車場に設置されている。
【0023】
ナビゲーション装置70は、ユーザによって設定された目的地までの走行経路を案内する車載装置である。ナビゲーション装置70は、画面表示及び音声再生等により、交差点、分岐ポイント及び合流ポイント等にて、直進、右左折及び車線変更等の誘導を行う。ナビゲーション装置70は、ナビ情報として、目的地までの距離、各走行区間での車速、高低差等の情報を、環境情報として、エネルギマネージャ1に提供可能である。
【0024】
ユーザ入力部80は、車両Aの乗員であるユーザによる入力操作を受け付ける操作デバイスである。ユーザ入力部80には、例えば、ナビゲーション装置70を操作するユーザ操作、温調制御(後述する)の起動及び停止の切り替えを行うユーザ操作、車両Aに関連する種々の設定値を変更するユーザ操作等が入力される。ユーザ入力部80は、ユーザ操作に基づく入力情報を、エネルギマネージャ1に提供可能である。
【0025】
例えば、ステアリングホイールのスポーク部に設けられたステアスイッチ、センターコンソール等に設置されたスイッチ及びダイヤル、並びにドライバの発話を検出する音声入力装置等が、ユーザ入力部80として車両Aに搭載される。又、ナビゲーション装置70のタッチパネル等がユーザ入力部80として機能してもよい。更に、スマートフォン及びタブレット端末等のユーザ端末が、有線又は無線によってエネルギマネージャ1に接続されることで、ユーザ入力部80として機能してもよい。
【0026】
消費ドメインは、バッテリB等の電力の使用により、種々の車両機能を実現する車載機器群である。一つの消費ドメインは、少なくとも一つのドメインマネージャを含んでおり、ドメインマネージャによって電力の消費を管理されるひと纏まりの車載機器群によって構成される。そして、複数の消費ドメインには、走行制御ドメイン及び温調制御ドメインが含まれている。
【0027】
走行制御ドメインは、車両Aの走行を制御する消費ドメインである。走行制御ドメインには、モータジェネレータMG、インバータINV、ステア制御システムSCS、ブレーキ制御システムBCS、及び運動マネージャ30が含まれている。
【0028】
モータジェネレータMGは、車両Aを走行させるための駆動力を発生させる駆動源である。インバータINVは、モータジェネレータMGによる力行及び回生を制御する。ステア制御システムSCSは、車両Aの操舵を制御する。ブレーキ制御システムBCSは、車両Aに生じさせる制動力を制御する。
【0029】
インバータINVは、モータジェネレータMGによる力行時において、バッテリBより供給される直流電力を三相交流電力に変換し、モータジェネレータMGに供給する。インバータINVは、交流電力の周波数、電流及び電圧を調節可能であり、モータジェネレータMGの発生駆動力を制御する。一方、モータジェネレータMGによる回生時において、インバータINVは、交流電力を直流電力に変換し、バッテリBに供給する。
【0030】
運動マネージャ30は、インバータINV、ステア制御システムSCS、ブレーキ制御システムBCSを統合的に制御し、ドライバの運転操作に従った車両Aの走行を実現させる。運動マネージャ30は、走行制御ドメインのドメインマネージャとして機能し、モータジェネレータMG、インバータINV、ステア制御システムSCS及びブレーキ制御システムBCSのそれぞれによる電力の消費を総合的に管理する。
【0031】
又、運動マネージャ30は、車速制御部30aを有している。車速制御部30aは、インバータINV、ステア制御システムSCS、ブレーキ制御システムBCSを統合的に制御して、車両Aの走行速度を制御する。
【0032】
そして、温調制御ドメインは、車両Aの居室空間の空気調和と、バッテリBの温度調整とを実施する消費ドメインである。温調制御ドメインには、空調装置41、温調システム42、及び熱マネージャ40が含まれている。尚、空調装置41は、一台の車両Aに対して、複数設置されていてもよい。
【0033】
空調装置41は、バッテリBからの供給電力を利用して、居室空間の暖房、冷房及び換気等を行う電動式の車両用空調装置である。空調装置41は、冷凍サイクル装置、送風ファン、電気ヒータ及び室内空調ユニット等を備えている。空調装置41は、冷凍サイクル装置の圧縮機、電気ヒータ及び室内空調ユニット等を制御し、暖気及び冷気を生成可能である。空調装置41は、送風ファンの作動により、生成した暖気又は冷気を、空調風として、居室空間に供給する。
【0034】
温調システム42は、バッテリBの冷却又は加熱を行うシステムである。温調システム42は、バッテリBと共に、モータジェネレータMG及びインバータINV等の冷却又は加熱を行ってもよい。温調システム42は、空調装置41によって加熱又は冷却させた熱媒体の循環により、電動走行系の温度を所定の温度範囲内に維持させる。
【0035】
一例として、温調システム42は、熱媒体回路、電動ポンプ、ラジエータ、チラー及び液温センサ等によって構成されている。熱媒体回路は、バッテリB、モータジェネレータMG及びインバータINV等の電動走行系の各構成を巡るように設置された配管を主体として構成される。電動ポンプは、熱媒体回路の配管内に充填された熱媒体を循環させる。熱媒体に移動したバッテリBの排熱は、ラジエータによって外気に放出されるか、又はチラーによって空調装置41の冷媒に放出される。液温センサは、熱媒体の温度を計測する。従って、温調システム42は温度調整部の一例に相当する。
【0036】
そして、熱マネージャ40は、空調装置41及び温調システム42の作動を制御する車載コンピュータである。熱マネージャ40は、居室空間の空調設定温度と、居室空間に設置された温度センサの計測温度とを比較し、空調装置41の空調作動を制御する。又、熱マネージャ40は、液温センサによる計測結果を参照し、空調装置41及び温調システム42の温調作動を制御する。
【0037】
即ち、熱マネージャ40は、熱ドメインのドメインマネージャとして機能する。そして、熱マネージャ40は、温調制御部40aを有しており、温調制御部40aは、空調装置41及び温調システム42のそれぞれによる電力の消費を総合的に管理する。
【0038】
給電ドメインは、消費ドメインへの電力供給を可能にするための車載機器群である。給電ドメインは、消費ドメインと同様に、少なくとも一つのドメインマネージャを含んでおり、充電回路、バッテリB及びバッテリマネージャ20を有している。
【0039】
充電回路は、バッテリマネージャ20との協働により、各消費ドメインとバッテリBとの間における電力の流れを統合的に制御するジャンクションボックスとして機能する。充電回路は、バッテリBからの電力供給と、バッテリBへの充電とを実施する。
【0040】
バッテリBは、電力を充放電可能な二次電池である。バッテリBは、多数の電池セルを含む組電池により構成されている。電池セルとしては、例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、及び全固体電池等を採用することができる。バッテリBに蓄えられた電力は、主に車両Aの走行と居室空間の空調とに利用することができる。
【0041】
バッテリマネージャ20は、給電ドメインのドメインマネージャとして機能する車載コンピュータである。バッテリマネージャ20は、電源管理部20aを有しており、充電回路から各消費ドメインに供給される電力を管理する。又、バッテリマネージャ20は、バッテリBについての残量情報を、環境情報としてエネルギマネージャ1の統括制御部10に通知する。
【0042】
充電システム21は、給電ドメインに電力を供給し、バッテリBの充電を可能にする。充電システム21には、充電ステーションCSにて、外部の充電器が電気的に接続される。充電システム21は、充電ケーブルを通じて供給される充電用の電力を、充電回路に出力する。
【0043】
普通充電を行う場合、充電システム21は、普通充電用の充電器から供給される交流電力を直流電力に変換し、充電回路に供給する。一方、急速充電を行う場合、充電システム21は、急速充電用の充電器から供給される直流電力を、充電回路に出力する。充電システム21は、急速充電用の充電器と通信する機能を有しており、充電器の制御回路と連携して、充電回路に供給する電圧を制御する。
【0044】
図1に示すように、第1実施形態に係るエネルギマネージャ1は、統括制御部10、バッテリマネージャ20、運動マネージャ30、熱マネージャ40、情報通知部50を有している。上述したように、バッテリマネージャ20、運動マネージャ30、熱マネージャ40は、それぞれ特定機能(例えば、車両の走行機能や温調機能)に係る制御を司る車載コンピュータであり、エネルギマネージャ1の一部を構成している。
【0045】
そして、統括制御部10は、バッテリマネージャ20、運動マネージャ30、熱マネージャ40から出力された種々の情報を用いて、各消費ドメインによる電力の使用を統合的に管理する。統括制御部10は、車載コンピュータにより構成され、エネルギマネージャ1の一部を構成している。統括制御部10は、エネルギマネージャ1における制御処理の主要な役割を果たす。
【0046】
情報通知部50は、バッテリマネージャ20等の種々の情報を用いて特定された情報を通知する為のドメインマネージャとして機能する車載コンピュータであり、エネルギマネージャ1の一部を構成している。情報通知部50には、車両Aのユーザに情報を通知する為の消費ドメインが接続されている。例えば、ナビゲーション装置70のディスプレイやスピーカ、車室内最前部の計器盤(即ち、インストルメントパネル)に配置された表示部等が情報通知部50に接続されている。
【0047】
従って、情報通知部50は、統括制御部10で特定された情報(例えば、後述する推奨走行速度に係る情報)を、ナビゲーション装置70のディスプレイ等に表示することができる。又、情報通知部50は、統括制御部10で特定された情報を、ナビゲーション装置70のスピーカから、音声出力することができる。ナビゲーション装置70のディスプレイやスピーカ等は、情報伝達部の一例に相当する。
【0048】
尚、車載コンピュータであるエネルギマネージャ1への電力供給は、車両Aが非走行可能状態(例えば、イグニッションオフの状態)であっても継続されている。その為、エネルギマネージャ1は、放置期間においても、制御実行の必要があれば、各機能部を起動して所定の処理を実行できる。
【0049】
ここで、エネルギマネージャ1の統括制御部10では、消費ドメイン及び給電ドメインとして接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されている。
図2に示すように、統括制御部10において、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェア及びソフトウェア)がそれぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
【0050】
例えば、統括制御部10のうち、車両Aが目的地へ向かって将来的に走行する走行経路及び走行経路上に配置されバッテリBを充電可能な充電設備(即ち、充電ステーションCS)に関する情報を含む環境情報を取得する構成は、環境情報取得部10aに相当する。
【0051】
環境情報には、車両Aの目的地におけるバッテリBの状態に影響を与える情報が含まれている。目的地としては、車両Aが放置される駐車場又は待機場、或いは充電ステーションCS等を定めることができる。バッテリBの状態は、例えば残量及び温度等である。
【0052】
環境情報には、車両Aの外部より提供される情報が含まれており、例えば、ステーションマネージャ90及びクラウドサーバ100等より配信されるセンタ情報を挙げることができる。センタ情報には、充電ステーションCSの充電器に関する使用可否情報及び充電能力情報が含まれている。又、環境情報には、気象情報及び道路交通情報等が含まれている。気象情報には、ナビゲーション装置70に設定された走行経路上の外気温、日射量、路面からの輻射熱量、及び降雨や降雪の有無等を示す情報等が含まれている。
【0053】
更に、環境情報には、バッテリBの状態に影響する情報のうちで、車両Aの内部にて生成される情報が含まれている。例えば、ナビゲーション装置70、給電ドメイン及び消費ドメイン等より提供される情報は、環境情報の一例に相当する。ナビゲーション装置70から提供される情報としては、目的地までの距離、各区間の車速及び高低差に加えて、例えば、信号機の数(停車回数)等の情報が含まれている。
【0054】
そして、環境情報のうち、給電ドメインから提供される情報には、給電ドメインの状態を示すステータス情報が含まれている。ステータス情報には、バッテリBの残量情報及び温度情報等が含まれている。残量情報は、例えば、充電率(States Of Charge)の値を含んでいる。
【0055】
又、運動マネージャ30から提供される情報には、例えば、ドライバの運転傾向を示す情報が含まれており、具体的には、ドライバのアクセル開度及びブレーキ踏力の傾向を示す情報が少なくとも含まれている。
【0056】
そして、ユーザ入力部80から提供される情報を環境情報として取得してもよい。この場合、車両Aに乗車中のユーザがユーザ入力部80に入力した情報であってもよく、車両Aの外部にいるユーザがユーザ入力部80として機能するユーザ端末に入力した情報であってもよい。更に、エネルギマネージャ1等のシステム側からの問い合わせに対しユーザがリアルタイムに入力した情報であってもよく、ユーザの過去の操作によって記録された設定値を示す情報であってもよい。
【0057】
又、環境情報のうち、消費ドメインから提供される情報としては、各消費ドメインの状態を示すステータス情報を挙げることができる。例えば、ステータス情報には、居室空間の空調の設定温度(以下、「空調要求情報」)及び現在温度を示す空調情報、熱媒体回路における熱媒体の温度情報、モータジェネレータMG及びインバータINV等の状態(例えば、現在温度等)を示す情報等が含まれる。
【0058】
尚、環境情報としては、現在の実測値を含む情報に限定されるものではなく、将来の推定値を含む情報を含めることができる。具体的には、車両Aには、将来的な使用スケジュールが設定可能である。使用スケジュールは、車両Aを放置後の走行スケジュール、高負荷での走行スケジュール、充電スケジュール、バッテリBが高温な状態での放置後の走行スケジュール、及び低温下での放置後の走行スケジュール等を含めることができる。
【0059】
図2に示すように、統括制御部10のうち、環境情報取得部10aで取得した環境情報に基づいて、車両Aが充電ステーションCSに到着した際のバッテリBのバッテリ温度Tbを推定する構成は、温度推定部10bに相当する。具体的には、温度推定部10bは、ナビゲーション装置70から提供される走行経路に関する情報、ステーションマネージャ90から提供されるセンタ情報、クラウドサーバ100から提供される気象情報及び道路交通情報を用いて、バッテリ温度Tbを推定する。
【0060】
そして、統括制御部10の内、車両AがバッテリBの温調を行いつつ走行して、所定の充電ステーションCSに到着した場合に、効率よくバッテリBの充電を行うことができる目標バッテリ温度TbOを設定する構成は、目標温度設定部10cに相当する。
【0061】
ここで、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電において、バッテリBは、充電ステーションCSにて電力供給を受けることで自己発熱することが知られている。バッテリ温度Tbが高温になりすぎるとバッテリB自体の劣化要因となる為、予め定められたバッテリ温度上限値TbUよりも高温になると、充電ステーションCSから供給される充電電流の大きさが通常よりも低く制御される。
【0062】
この場合、充電電流が低く抑えられてしまう為、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電に要する充電時間が、バッテリ温度上限値TbUより低い通常状態よりも長期化してしまい、バッテリBに対する充電の効率が低下してしまう。
【0063】
目標温度設定部10cは、充電に伴うバッテリ温度Tbの上昇と、バッテリBに定められたバッテリ温度上限値TbUとの関係から、バッテリBの充電完了時点のバッテリ温度Tbがバッテリ温度上限値TbU以下になるように、目標バッテリ温度TbOを定める。
【0064】
又、統括制御部10の内、充電ステーションCS到着時のバッテリ温度Tbと、目標バッテリ温度TbOとを用いて、車両Aが充電ステーションCS設備へ走行する際の走行速度を調整する構成は、走行速度調整部10dに相当する。
【0065】
上述したように、充電ステーションCSへ向かって走行する際には、温調システム42によるバッテリBの温調と同時に、バッテリBに蓄えられた電力が出力される。即ち、充電ステーションCSまでの移動中には、車両Aの走行に伴うバッテリ温度Tbの上昇と、温調システム42によるバッテリ温度Tbの調整(冷却)が並行して行われる。
【0066】
車両Aの走行負荷が大きい程、走行に伴うバッテリ温度Tbの上昇が大きくなると考えられる。従って、温調システム42の冷却能力よりも、車両Aの走行負荷が大きい場合には、温調システム42によりバッテリBを充分に冷却することができず、充電ステーションCS到着時のバッテリ温度Tbが目標バッテリ温度TbOよりも高くなる場合が想定される。
【0067】
走行速度調整部10dは、車両Aの走行負荷を調整すると同時に、温調システム42によるバッテリBの温度調整の実行期間を確保する為に、充電ステーションCSへ向かう走行速度を調整する。走行速度は、走行速度調整部10dによって、少なくとも、充電ステーションCS到着時のバッテリ温度Tbが目標バッテリ温度TbOよりも低くなるように調整される。
【0068】
そして、統括制御部10の内、取得した環境情報に基づいて、車両Aの走行及び温調システム42の作動を行って車両Aが所定の充電ステーションCSに到着するまでに要する所要時間を推定する構成は、所要時間推定部10eに相当する。
【0069】
又、統括制御部10の内、充電ステーションCSに到着した場合の充電時間を、様々な環境情報に基づいて推定する構成は、充電時間推定部10fに相当する。充電時間推定部10fでは、現時点における走行速度で充電ステーションCSに到着した場合の充電時間と、走行速度調整部10dで調整された走行速度で走行して充電ステーションCSに到着した場合の充電時間とが推定される。
【0070】
充電時間推定部10fは、走行経路に関する情報、センタ情報、気象情報及び道路交通情報、バッテリBの残量情報等を用いて、現時点における走行速度で走行した場合における充電ステーションCS到着時のバッテリBの残量情報を推定する。そして、充電時間推定部10fは、到着した充電ステーションCSの情報と、到着時のバッテリBの残量情報に基づいて、到着した充電ステーションCSにおける充電時間を推定する。
【0071】
同様に、充電時間推定部10fは、走行経路に関する情報、センタ情報、気象情報及び道路交通情報、バッテリBの残量情報等に加えて、走行速度調整部10dで調整された走行速度の情報を用いて、速度調整を行った場合のバッテリBの残量情報を推定する。そして、充電時間推定部10fは、充電ステーションCSの情報とバッテリBの残量情報に基づいて、走行速度を調整した場合の充電時間を推定する。
【0072】
そして、統括制御部10の内、現時点における車両Aの走行速度で走行した場合のバッテリBの充電完了までに要する合計時間と、走行速度調整部10dで調整された走行速度で走行した場合の合計時間を推定する構成は、合計時間推定部10gに相当する。
【0073】
合計時間推定部10gは、所要時間推定部10e及び充電時間推定部10fで推定された所要時間及び充電時間を合算することで、現時点における走行速度で走行した場合と、走行速度調整部10dで走行速度を調整した場合の合計時間を推定する。
【0074】
現時点における走行速度で走行した場合の合計時間は、現時点で定められている走行速度で走行していることを前提として推定された所要時間と充電時間の合計である。又、走行速度調整部10dで走行速度が調整された場合の合計時間は、走行速度調整部10dで調整された走行速度で走行していることを前提として推定された所要時間と充電時間の合計により求められる。
【0075】
又、統括制御部10の内、走行速度調整部10dで車両Aの走行速度が調整される条件を満たし、且つ、温調システム42の温調性能を調整可能である場合に、温調システム42の温調性能を調整する構成は、温調性能調整部10hに相当する。温調性能調整部10hは、車両Aが充電ステーションCSに到着した際のバッテリ温度Tbが目標バッテリ温度TbOになるように、温調システム42の温調性能を調整する。
【0076】
続いて、第1実施形態に係るバッテリ管理プログラムの処理内容について、
図3~
図6を参照して説明する。第1実施形態に係るバッテリ管理プログラムは、温調システム42によるバッテリBの温度調整を行いつつ、車両Aが走行する場合に、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電に要する充電時間をできるだけ短くする為に実行される。
【0077】
尚、第1実施形態に係るバッテリ管理プログラムは、上述したように、エネルギマネージャ1の記憶部に格納されており、処理部を構成する統括制御部10によって読み出されて実行される。又、以下の説明においては、車両Aの走行に関する目的地が設定されているものとし、ナビゲーション装置70によって、現在地から目的地へ向かう走行経路が定められているものとする。そして、ナビゲーション装置70により設定された走行経路上には、少なくとも充電ステーションCSが含まれているものとする。
【0078】
図3に示すように、先ず、ステップS1では、ナビゲーション装置70、クラウドサーバ100等から取得した環境情報を用いて、充電ステーションCSに車両Aが到着した時点の状況を推定する。例えば、充電ステーションCSに到着した時点におけるバッテリBの充電率(残量情報)は、現時点におけるバッテリBの残量情報、道路交通情報、気象情報等を、環境情報として参照することで推定することができる。又、充電ステーションCSに到着した時点におけるバッテリ温度Tbは、現時点におけるバッテリ温度Tb、道路交通情報、気象情報、バッテリBの内部抵抗、温調システム42の温調可能能力等を、環境情報として参照することで推定することができる。環境情報を用いて、充電ステーションCS到着時のバッテリB等の状況を特定した後、ステップS2に移行する。
【0079】
尚、この場合における温調システム42の温調可能能力は、予め定められた標準的な能力制限の範囲内に制限されている。具体的には、温調システム42の温調可能能力は、冷凍サイクル装置の構成機器の最大能力により制限され、圧縮機の回転数上限値により制限される。
【0080】
ステップS2では、ステップS1の到着時状況に係る充電ステーションCSにおける目標バッテリ温度TbOが算出される。目標バッテリ温度TbOは、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電が行われている間、バッテリBに定められているバッテリ温度上限値TbUよりもバッテリ温度Tbが低くなるように定められる。
【0081】
即ち、目標バッテリ温度TbOは、充電ステーションCSでの充電に伴うバッテリBの自己発熱を鑑みて、充電完了時点で、バッテリ温度Tbがバッテリ温度上限値TbU以下になるように定められる。目標バッテリ温度TbOの算出に際して、環境情報として、例えば、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電予定量、充電ステーションCSにおける充電器の規格等を含むセンタ情報、バッテリBの内部抵抗等を示す情報を用いることができる。
【0082】
ステップS3に移行すると、現時点の走行速度で充電ステーションCSまで走行した場合において、充電ステーションCS到着時点のバッテリ温度Tbが目標バッテリ温度TbOとなる為に必要なバッテリ温調量を算出する。バッテリ温調量の算出に際し、車両Aの走行によるバッテリBの発熱量や、温調システム42による温調可能能力は凡その数値として推定することができる。この為、目標バッテリ温度TbOまで冷却する為に、温調システム42による温度調整の実行期間を特定することができる。
【0083】
ステップS4においては、ステップS1で推定された到着時バッテリ温度と、ステップS2で算出された目標バッテリ温度TbOとを比較する。到着時バッテリ温度と、目標バッテリ温度TbOとを比較することで、充電ステーションCSに到着するまでの温調システム42による温調実行時間が、目標バッテリ温度TbOにする為に十分であるか否かを判断することができる。
【0084】
ステップS5に移行すると、ステップS4における到着時バッテリ温度と目標バッテリ温度TbOとの比較結果に基づいて、温調システム42による温調実行時間が不足しているか否かが判断される。
【0085】
到着時バッテリ温度が目標バッテリ温度TbOよりも高い場合、バッテリBを目標バッテリ温度TbOまで冷却できていないことを意味する為、温調実行時間が不足しているものと判断することができる。温調実行時間が不足していると判断された場合、ステップS6に処理を移行する。一方、到着時バッテリ温度が目標バッテリ温度TbO以下である場合、温調実行時間が十分であることを意味する為、ステップS1に処理を戻す。
【0086】
ステップS6においては、温調システム42の温調性能を向上可能であるか否かが判断される。上述したように、温調システム42の温調性能は、通常、冷凍サイクル装置の構成機器に定められている最大能力によって制限されており、例えば、圧縮機の回転数の最大値によって制限されている。
【0087】
圧縮機の回転数の最大値は、品質保証の為に定められている場合が多く、短期間であれば最大値以上の回転数で運転することも可能である場合がある。つまり、短期間の間ではあるが、最大値以上の回転数で圧縮機を作動させることで、温調システム42の温調性能を一時的に向上させることも可能である。
【0088】
この為、ステップS6では、温調システム42の温調性能を一時的に向上させることによって、到着時バッテリ温度が目標バッテリ温度TbO以下になるか否かの判断も行われる。この場合でも、到着時バッテリ温度が目標バッテリ温度TbOよりも高い場合、ステップS7に移行し、そうでない場合は、ステップS8に移行する。
【0089】
ステップS7では、現在地から充電ステーションCSへ向かう際の車両Aの走行速度を、到着時バッテリ温度が目標バッテリ温度TbOになるように調整する。具体的に、ステップS7では、エネルギマネージャ1の記憶部に格納されている減速量決定テーブルに基づいて、走行速度の調整が行われる。ステップS7の処理を実行する統括制御部10は、走行速度調整部10dとして機能する。
【0090】
図4に示すように、減速量決定テーブルは、バッテリ温度差と、充電ステーションCSまでの距離に対して、走行速度の減速量を対応付けて構成されている。バッテリ温度差は、到着時バッテリ温度から目標バッテリ温度TbOを減算した値を意味し、目標バッテリ温度TbOに対する到着時バッテリ温度の乖離量である。充電ステーションCSまでの距離は、現在地から充電ステーションCSまでの距離を意味する。充電ステーションCSまでの距離は、充電ステーションCSに到着するまでの時間に置き換えることもできる。
【0091】
そして、減速量決定テーブルには、標準的な減速量を示す線Dbと、更に大きな減速量を示す線Daが定められており、何れも、バッテリ温度差及び充電ステーションCSまでの距離が大きい程、より大きな減速量になるように定められている。目標バッテリ温度TbOに対する到着時バッテリ温度の乖離量(バッテリ温度差)が大きい程、走行速度の減速量が大きく定められる為、現在地から充電ステーションCSの到着までに要する時間を長くすることができる。この結果、温調システム42によるバッテリBの温調実行時間を長くすることができるので、到着時バッテリ温度を目標バッテリ温度TbOにすることができる。
【0092】
そして、ステップS7では、決定された走行速度の減速量を用いて、現在設定されている走行速度の目標値を更新する。具体的には、現在設定されている走行速度の目標値から、決定された減速量を減算して、新たな走行速度の目標値に設定する。
【0093】
この時、情報通知部50を介して、新たに設定された走行速度の目標値を、ユーザに通知する構成とすることができる。ユーザに対する通知方法は、画像出力や音声出力等の様々な手法を採用することができる。例えば、ナビゲーション装置70のディスプレイに表示しても良いし、車両Aに搭載されたオーディオシステムを介して、走行速度の目標値に関する情報を音声出力しても良い。
【0094】
ステップS7において、走行速度を調整して温調実行時間を確保することで、充電ステーションCS到着時のバッテリ温度Tbが、目標バッテリ温度TbOになるように制御することができる。これにより、充電ステーションCSにてバッテリBの充電を行ったとしても、バッテリ温度Tbがバッテリ温度上限値TbUを超えることはなく、充電ステーションCSの性能を充分に活用したバッテリBの充電を行うことができる。つまり、充電ステーションCSの性能を充分に活かすことができ、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電時間を短期化することができる。
【0095】
そして、ステップS8に移行すると、現在地から充電ステーションCSまでの間に行われる温調システム42の温調性能が調整される。温調システム42による温調性能(冷却性能)を向上させることで、温調実行時間が不足している状態でも、到着時バッテリ温度が目標バッテリ温度TbOになるように、温調システム42によるバッテリBの温度調整を行うことができる。ステップS8を実行する統括制御部10は、温調性能調整部10hとして機能する。
【0096】
そして、この場合においても、充電ステーションCSにてバッテリBの充電を行ったとしても、バッテリ温度Tbがバッテリ温度上限値TbUを超えることはない為、充電ステーションCSの性能を充分に活用したバッテリBの充電を行うことができる。つまり、充電ステーションCSの性能を充分に活かすことができ、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電時間を短期化することができる。
【0097】
続いて、第1実施形態に係るバッテリ管理プログラムの効果について、
図5、
図6を参照して説明する。尚、
図5は、走行速度の調整の有無がバッテリ温度Tbの変化に与える影響を示しており、走行速度の調整が行われなかった場合のバッテリ温度Tbを破線で示し、走行速度が減速調整された場合のバッテリ温度Tbを示す。そして、
図6は、走行速度の調整の有無が充電率の変化に与える影響を示しており、走行速度の調整が行われなかった場合のバッテリBの充電率を破線で示し、走行速度が減速調整された場合のバッテリBの充電率を示す。
【0098】
更に、
図5、
図6における時間t0~時間t5は、それぞれ同じ時間を示している。時間t0は、第1実施形態に係るバッテリ管理プログラムによる制御開始時点を示しており、t0を現時点とした制御が行われる。
【0099】
先ず、走行速度調整が行われなかった場合のバッテリ温度Tb、バッテリBの充電率の変化について説明する。時間t0にて制御が開始されると、車両Aは、充電ステーションCSへ走行すると同時に、温調システム42によりバッテリBの冷却が行われる。
【0100】
この時、バッテリBには、車両Aの走行に伴う出力による自己発熱が生じると共に、温調システム42による冷却が行われ、充電ステーションCSへ向かって走行していくと同時に、バッテリ温度Tbは低下していく。
図6の破線で示すように、バッテリBの充電率についても、車両Aの走行に伴う出力及び温調システム42の作動に伴う出力によって、充電ステーションCSに向かって走行していくと同時に低下していく。
【0101】
時間t1は、走行速度の調整が行われなかった場合に、車両Aが充電ステーションCSに到着し、充電ステーションCSにおける充電が開始された時点を示している。
図5の破線で示すように、走行速度が調整されなかった場合、温調実行時間が不足しているため、時間t1におけるバッテリ温度Tb(即ち、到着時バッテリ温度)は、目標バッテリ温度TbOよりも高い。
【0102】
時間t1において、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電が開始されると、
図6に示すように、バッテリBの充電率が上昇していく。この時、
図5に示すように、バッテリBに対する充電電流の供給と、バッテリBの内部抵抗とにより、バッテリ温度Tbも充電時間の経過に伴って上昇していく。
【0103】
時間t2は、充電ステーションCSでの充電により、バッテリ温度Tbがバッテリ温度上限値TbUに到達した時点を示している。この時、
図6の破線からわかるように、バッテリBの充電率の変化は、バッテリ温度Tbがバッテリ温度上限値TbUに到達する前後で異なる傾きを示しており、バッテリ温度上限値TbUに到達した後は、充電率の傾きは緩やかになっている。これは、バッテリBのバッテリ温度Tbがバッテリ温度上限値TbUを超えないように、充電ステーションCSで供給される充電電流が制限されることに起因している。
【0104】
この為、時間t2から時間t5までの間では、単位時間当たりの充電率の増加は、時間t1から時間t2までの期間よりも緩やかになる。そして、時間t5において、バッテリBの充電率が100%になるまでは、時間t1から時間t5までの充電時間が必要になることがわかる。
【0105】
続いて、走行速度の減速調整が行われた場合のバッテリ温度Tb、バッテリBの充電率の変化について説明する。時間t0にて制御が開始されると、車両Aは、走行速度の調整が行われなかった場合と同様に、充電ステーションCSへ走行すると同時に、温調システム42によりバッテリBの冷却が行われる。
【0106】
この時、
図5における実線と破線からわかるように、充電ステーションCSへ向かって走行している間におけるバッテリ温度Tbの低下度合は、走行速度の減速調整が行われた場合の方が、走行速度の調整が行われなかった場合よりも大きい。これは、走行速度の減速調整を行ったことで、車両Aの走行に伴うバッテリBの出力が小さくなり、温調システム42により、効率よくバッテリBを冷却できるためである。
【0107】
そして、走行速度の減速調整が行われた場合、時間t2の時点では、充電ステーションCSに到着せず、時間t3の時点で充電ステーションCSに到着する。
図5の実線で示すように、走行速度の減速調整を行った場合、時間t3において、充電ステーションCSに到着し、その時点のバッテリ温度Tbは、目標バッテリ温度TbOを示す。
【0108】
時間t3において、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電が開始されると、
図6の実線で示すように、バッテリBの充電率が上昇していく。この時、
図5の実線で示すように、バッテリBに対する充電電流の供給と、バッテリBの内部抵抗とにより、バッテリ温度Tbも充電時間の経過に伴って上昇していく。
【0109】
ここで、時間t3における目標バッテリ温度TbOは、充電完了時点(例えば、充電率が100%になる時点)のバッテリ温度Tbがバッテリ温度上限値TbU以下となるように定められている。この為、時間t3以後のバッテリ温度Tb及び充電率の変化は、最も効率の良い状態で一定である。
【0110】
そして、
図6の実線で示すように、時間t4になった時点で、バッテリBの充電率が100%になり、バッテリBの充電を完了する。上述したように、時間t4において、バッテリ温度Tbは、バッテリ温度上限値TbU以下となっている。
【0111】
上述の例によれば、走行速度の調整が行われなかった場合、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電時間は、時間t2から時間t5までである。一方、走行速度の減速調整が行われた場合、充電ステーションCSへの到着及び充電の開始は、走行速度の調整が行われなかった場合の時間t2よりも遅い時間t3であるが、充電時間は、時間t3から時間t4までである。
【0112】
即ち、第1実施形態に係るエネルギマネージャ1によれば、バッテリ管理プログラムによる走行速度の調整を行うことで、充電ステーションCSにおけるバッテリBの効率の良い充電を実現して、充電ステーションCSにおける充電時間を短期化することができる。
【0113】
以上説明したように、第1実施形態に係るエネルギマネージャ1によれば、車両Aの走行及び温調システム42の作動を行って車両Aが充電ステーションCSへ走行する際に、ステップS7にて、充電ステーションCSへ向かう走行速度を調整することができる。走行速度が調整されることで、温調システム42の作動時間を適切に確保することができる為、充電ステーションCSに到着した際のバッテリ温度を、目標バッテリ温度TbOとなるように調整することができる。これにより、充電ステーションCSにおける充電性能を効率よく活用することができるので、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電完了までの所要時間を短縮することができる。
【0114】
又、エネルギマネージャ1によれば、
図4に示すように、到着時バッテリ温度と目標バッテリ温度TbOの差によるバッテリ温度差に応じて、充電ステーションCSまでの走行速度の調整量を定めている。これにより、充電ステーションCSに到着した時点のバッテリ温度Tbが目標バッテリ温度TbOにする為に必要な温調システム42の作動時間を確保可能な走行時間及び温調システム42の作動時間を特定することができ、適切な調整量を定めることができる。
【0115】
そして、
図4に示すように、充電ステーションCSまでの走行速度の調整量は、バッテリ温度差と、充電ステーションCSまでの距離とを対応付けた減速量決定テーブルを用いて決定される。充電ステーションCSまでの距離は、充電ステーションCSまでに要する所要時間に対応する。従って、エネルギマネージャ1は、より適切に走行速度の調整量を決定することができ、より確実に、充電ステーションCSにおける充電時間の短縮化を図ることができる。
【0116】
又、
図4に示すように、充電ステーションCSまでの所要時間に対応する充電ステーションCSまでの距離が長い程、大きく減速させるように走行速度の調整量が決定されている。これにより、充電ステーションCSまでの所要時間及び充電ステーションCSまでの距離に応じて、走行速度が適切に調整されることになる為、より確実に、充電ステーションCSにおける充電時間の短縮化を図ることができる。
【0117】
そして、
図4に示すように、到着時バッテリ温度と目標バッテリ温度TbOの乖離度を示すバッテリ温度差が大きい程、大きく減速させるように走行速度の調整量が決定されている。これにより、到着時バッテリ温度と目標バッテリ温度との乖離の大きさに応じて、走行速度が適切に調整されることになる為、より確実に、充電ステーションCSにおける充電時間の短縮化を図ることができる。
【0118】
又、エネルギマネージャ1によれば、ステップS7において、走行速度の調整結果が情報通知部50を介して、ユーザに伝達される。これにより、ユーザは、充電ステーションCSまでの走行速度に関する情報を把握することができるので、調整結果を踏まえた運転操作を行うことができる。
【0119】
そして、エネルギマネージャ1によれば、ステップS7において、走行速度の調整結果を、充電ステーションCSまでの走行速度に関する制御の目標値に設定することができる。これにより、充電ステーションCSまでの走行に関する制御が、充電時間の短縮化に適した内容になる為、充電ステーションCSにおいて効率の良い充電を実現することができる。
【0120】
又、エネルギマネージャ1によれば、ステップS8において、現在地から充電ステーションCSまでに行われる温調システム42による温度調整に関して、温調システム42の温調性能(冷却性能)を向上させることができる。これにより、車両Aの走行速度を調整することなく、到着時バッテリ温度が目標バッテリ温度TbOになるように調整することができる。つまり、エネルギマネージャ1は、温調システム42の温調性能の観点から、充電ステーションCSにおける充電時間の短縮化を図ることができる。
【0121】
(第2実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第2実施形態について、
図7~
図9を参照して説明する。第2実施形態では、充電ステーションCSにおける充電時間だけでなく、現在地か充電ステーションCSまでの所要時間を含めた合計所要時間Ttの短縮化を目的としたバッテリ管理プログラムが実行される。その他、エネルギマネージャ1の基本的構成等については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。尚、合計所要時間Ttは合計時間の一例に相当する。
【0122】
第2実施形態に係るバッテリ管理プログラムの処理内容について、
図7~
図9を参照して説明する。第2実施形態に係るバッテリ管理プログラムは、温調システム42によるバッテリBの温度調整を行いつつ、車両Aが走行する場合に、現時点から充電ステーションCSでの充電完了までに要する合計所要時間をできるだけ短くする為に実行される。
【0123】
尚、合計所要時間Ttは、現時点から充電ステーションCSまでの走行に要する所要時間と、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電に要する充電時間の合計により求められる。又、第2実施形態に係るバッテリ管理プログラムの実行に関する前提条件は、第1実施形態と同様である為、再度の説明は省略する。
【0124】
図7に示すように、ステップS11では、ナビゲーション装置70、クラウドサーバ100等から取得した環境情報を用いて、充電ステーションCSに車両Aが到着した時点の状況を推定する。即ち、ステップS11では、第1実施形態におけるステップS1と同様の処理が行われる。
【0125】
ステップS12においては、ステップS11の到着時状況に係る充電ステーションCSにおける目標バッテリ温度TbOが算出される。目標バッテリ温度TbOの算出処理の内容は、第1実施形態におけるステップS1と同様である為、再度の説明を省略する。
【0126】
ステップS13に移行すると、現時点の走行速度で充電ステーションCSまで走行した場合において、充電ステーションCS到着時点のバッテリ温度Tbが目標バッテリ温度TbOとなる為に必要なバッテリ温調量が決定される。ステップS13の処理内容は、上述したステップS3と同様である。
【0127】
ステップS14では、先ず、現時点で定められている走行速度で充電ステーションCSへ走行した場合の合計所要時間Ttを推定する。現時点の走行速度で走行した場合に、現在地から充電ステーションCSに到着するまでに要する所要時間は、ナビゲーション装置70から提供される地図情報、クラウドサーバ100から提供される道路交通情報等を用いることで推定される。そして、現時点の走行速度で走行した場合の充電ステーションCSにおける充電時間は、ステップS11で特定した到着時状況に係るバッテリBの残量情報、センタ情報に含まれる充電ステーションCSの情報を用いて特定できる。こうして求められた現時点の走行速度に係る所要時間と充電時間を合計することで、現時点の走行速度に係る合計所要時間Tt(以下、基準合計所要時間Ttcという)を求めることができる。
【0128】
続いて、現時点で定められている走行速度から減速した設定で走行した場合の合計所要時間Tt(以下、減速時合計所要時間Ttdという)を推定する。エネルギマネージャ1は、現時点で定められている走行速度から、予め定められている値の分だけ減速した走行速度で走行するものと仮定して、減速時における所要時間と、減速時における充電時間を推定する。
【0129】
減速時の所要時間は、現時点で設定されている走行速度を基準として定められる減速時の走行速度と、ナビゲーション装置70から提供される地図情報、クラウドサーバ100から提供される道路交通情報等を用いることで推定される。そして、減速時の充電時間は、減速設定における充電ステーションCS到着時のバッテリBの残量情報、センタ情報に含まれる充電ステーションCSの情報を用いて特定できる。減速設定における残量情報は、走行速度の仮定が異なる点を除いて、上述のステップS11と同様の手法によって推定できる。こうして求められた減速時の走行速度に係る所要時間と充電時間を合計することで、減速時合計所要時間Ttdを求めることができる。
【0130】
更に、現時点で定められている走行速度から増速した設定で走行した場合の合計所要時間Tt(以下、増速時合計所要時間Ttaという)を推定する。エネルギマネージャ1は、現時点で定められている走行速度から、予め定められている値の分だけ増速した走行速度で走行するものと仮定して、増速時における所要時間と、増速時における充電時間を推定する。
【0131】
増速時の所要時間は、現時点で設定されている走行速度を基準として定められる増速時の走行速度と、ナビゲーション装置70から提供される地図情報、クラウドサーバ100から提供される道路交通情報等を用いることで推定される。そして、増速時の充電時間は、増速設定における充電ステーションCS到着時のバッテリBの残量情報、センタ情報に含まれる充電ステーションCSの情報を用いて特定できる。増速設定における残量情報は、走行速度の仮定が異なる点を除いて、上述のステップS11と同様の手法によって推定できる。こうして求められた増速時の走行速度に係る所要時間と充電時間を合計することで、増速時合計所要時間Ttaを求めることができる。現時点の走行速度に係る基準合計所要時間Ttc、減速時合計所要時間Ttd、増速時合計所要時間Ttaを推定した後、ステップS15に処理を進める。
【0132】
ステップS15では、ステップS14で推定した基準合計所要時間Ttc、減速時合計所要時間Ttd、増速時合計所要時間Ttaを比較して、現在地から充電ステーションCSへ向かう走行速度の設定を評価する。即ち、3種類の走行速度の設定のうち、最も合計所要時間Ttが短く、バッテリBの充電完了が早くなる設定を特定する。
【0133】
ステップS16では、ステップS15における評価結果を用いて、走行速度の調整が必要であるか否かを判断する。即ち、基準合計所要時間Ttcが、減速時合計所要時間Ttd又は増速時合計所要時間Ttaよりも長いか否かが判断される。
【0134】
基準合計所要時間Ttcが、減速時合計所要時間Ttd又は増速時合計所要時間Ttaよりも長いということは、走行速度の減速又は増速が必要であることを意味する為、ステップS17に処理を移行する。
【0135】
一方、基準合計所要時間Ttcが、3種類の合計所要時間Ttのうちで最も短い場合、現時点で設定されている走行速度の設定が、最も合計所要時間Ttが短くなる設定であることを意味する。この場合、現時点における走行速度の設定を調整する必要はない為、ステップS11に処理を戻す。
【0136】
ステップS17では、基準合計所要時間Ttcが減速時合計所要時間Ttdよりも長いか否かを判断する。この場合、現時点で設定されている走行速度よりも、走行速度の減速調整を行った方が、充電ステーションCSの充電完了までに要する時間を短くできることを意味する為、ステップS18に処理を進める。
【0137】
一方、基準合計所要時間Ttcが減速時合計所要時間Ttdよりも長くない場合には、ステップS19に処理を移行する。上述したように、ステップS16において、基準合計所要時間Ttcが減速時合計所要時間Ttd及び増速時合計所要時間Ttaよりも短い場合は、ステップS11に戻るように構成されている。従って、ステップS17の判断処理において、ステップS19に移行する場合は、基準合計所要時間Ttcが増速時合計所要時間Ttaよりも長い場合に相当する。
【0138】
ステップS18では、現時点で設定されている走行速度よりも減速した方が、合計所要時間の短縮につながる為、走行速度減速処理を実行する。走行速度減速処理では、現時点に係る走行速度の設定を、減速時合計所要時間Ttdに係る走行速度に更新する。この時、車両Aの走行制御に関する目標値も更新され、新たに更新された走行速度に関する通知も行われる。走行速度減速処理を終了すると、ステップS11に処理を戻す。
【0139】
そして、ステップS19においては、現時点で設定されている走行速度よりも増速した方が、合計所要時間の短縮につながる為、走行速度増速処理を実行する。走行速度増速処理では、現時点に係る走行速度の設定を、増速時合計所要時間Ttaに係る走行速度に更新する。この時、車両Aの走行制御に関する目標値も更新され、新たに更新された走行速度に関する通知も行われる。走行速度増速処理を終了すると、ステップS11に処理を戻す。
【0140】
第2実施形態に係るエネルギマネージャ1は、バッテリ管理プログラムのステップS11~ステップS19の処理を繰り返すことで、現在地から充電ステーションCSへの走行速度を、合計所要時間Ttが最も短くなる最適な設定にすることができる。
【0141】
続いて、第2実施形態に係るバッテリ管理プログラムの効果について、
図8、
図9を参照して説明する。尚、
図8は、走行速度の調整がバッテリ温度Tbの変化に与える影響を示しており、走行速度の調整が行われなかった場合のバッテリ温度を基準時バッテリ温度Tbnと示している。又、走行速度の減速調整が行われた場合のバッテリ温度を減速時バッテリ温度Tbdと示し、走行速度の増速調整が行われた場合のバッテリ温度を増速時バッテリ温度Tbaと示している。
【0142】
そして、
図9は、走行速度の調整が充電率の変化に与える影響を示しており、走行速度の調整が行われなかった場合のバッテリBの充電率を基準時充電率Crnと示している。又、走行速度の減速調整が行われた場合のバッテリBの充電率を減速時充電率Crdと示し、走行速度の増速調整が行われた場合のバッテリBの充電率を増速時充電率Craと示している。
【0143】
更に、
図8、
図9における時間t0、時間tsc、時間tsd、時間tsa、時間tfc、時間tfd、時間tfaは、それぞれ同じ時間を示している。時間t0は、第2実施形態に係るバッテリ管理プログラムによる制御開始時点を示している。
【0144】
先ず、走行速度調整が行われなかった場合のバッテリ温度Tb、バッテリBの充電率の変化について説明する。時間t0にて制御が開始されると、車両Aは、充電ステーションCSへ走行すると同時に、温調システム42によりバッテリBの冷却が行われる。
【0145】
この時、バッテリBには、車両Aの走行に伴う出力による自己発熱が生じると共に、温調システム42による冷却が行われ、充電ステーションCSへ向かって走行していくと同時に、バッテリ温度Tbは低下していく。
図9に示すように、バッテリBの充電率についても、車両Aの走行に伴う出力及び温調システム42の作動に伴う出力によって、充電ステーションCSに向かって走行していくと同時に低下していく。
【0146】
時間tscは、走行速度の調整が行われなかった場合に、車両Aが充電ステーションCSに到着し、充電ステーションCSにおける充電が開始された時点を示している。この場合の到着時バッテリ温度は、目標バッテリ温度TbOに到達している。
【0147】
時間tscにて、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電が開始されると、
図9に示すように、基準時充電率Crnが上昇していく。この時、
図8に示すように、バッテリBに対する充電電流の供給と、バッテリBの内部抵抗とにより、基準時バッテリ温度Tbnも充電時間の経過に伴って上昇していく。
【0148】
時間tfcでは、走行速度の調整が行われなかった場合の基準時充電率Crnが100%になり、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電を完了する。時間tfcにおいて、基準時バッテリ温度Tbnは、バッテリ温度上限値TbU以下を示すので、充電時間をできるだけ短くすることができている。
【0149】
図8、
図9に示す例において、走行速度の調整が行われなかった場合の充電時間は、時間tscから時間tfcの間で示され、基準合計所要時間Ttcは、時間t0から時間tfcの間によって表される。
【0150】
次に、走行速度の減速調整が行われた場合のバッテリ温度Tb、バッテリBの充電率の変化について説明する。時間t0にて制御が開始されると、車両Aは、走行速度の調整が行われなかった場合と同様に、充電ステーションCSへ走行すると同時に、温調システム42によりバッテリBの冷却が行われる。
【0151】
この時、走行速度が減速調整されており、バッテリBに対する負荷が小さくなっている為、減速時バッテリ温度Tbdの単位時間当たりの低下度合は、基準時バッテリ温度Tbnよりも大きくなる。この為、充電ステーションCSに到着する前の時点で、減速時バッテリ温度Tbdは、目標バッテリ温度TbOに到達する。その後、目標バッテリ温度TbOを維持するように温調システム42の作動が制御され、充電ステーションCSに到着する。
【0152】
時間tsdは、走行速度の減速調整が行われた場合の充電ステーションCSの到着時点であり、且つ、バッテリBの充電開始時点を意味する。この場合も、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電が開始され、時間の経過に伴って、減速時充電率Crdが上昇していく。この時、
図9に示すように、バッテリBに対する充電電流の供給と、バッテリBの内部抵抗とにより、減速時バッテリ温度Tbdも充電時間の経過に伴って上昇していく。
【0153】
到着時バッテリ温度が目標バッテリ温度TbOになっているため、バッテリ温度Tbがバッテリ温度上限値TbUになることに起因する充電電流の制限を受けることなく、充電ステーションCSの性能を充分に活用して、バッテリBの充電を行うことができる。
【0154】
時間tfdは、走行速度の減速調整が行われた場合におけるバッテリBの充電が完了した時点を示す。
図8、
図9に示すように、時間tfdにおける減速時充電率Crdは100%を示し、減速時バッテリ温度Tbdは、バッテリ温度上限値TbU以下の値を示している。
【0155】
図8、
図9に示す例において、走行速度の減速調整が行われた場合の充電時間は、時間tsdから時間tfdの間で示され、減速時合計所要時間Ttdは、時間t0から時間tfdの間によって表される。
【0156】
続いて、走行速度の増速調整が行われた場合のバッテリ温度Tb、バッテリBの充電率の変化について説明する。時間t0にて制御が開始されると、車両Aは、走行速度の調整が行われなかった場合と同様に、充電ステーションCSへ走行すると同時に、温調システム42によりバッテリBの冷却が行われる。
【0157】
この時、走行速度が増速調整されており、バッテリBに対する負荷が大きくなっている為、増速時バッテリ温度Tbaの単位時間当たりの低下度合は、基準時バッテリ温度Tbn、減速時バッテリ温度Tbdよりも小さくなる。又、走行速度を増速調整することで、現在地から充電ステーションCSまでの所要時間も短くなる為、増速時バッテリ温度Tbaが目標バッテリ温度TbOになるように冷却される前に、車両Aが充電ステーションCSに到着する。
【0158】
時間tsaは、走行速度の増速調整が行われた場合の充電ステーションCSの到着時点であり、且つ、バッテリBの充電開始時点を意味する。この場合も、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電が開始され、時間の経過に伴って、増速時充電率Craが上昇していく。この時、
図9に示すように、バッテリBに対する充電電流の供給と、バッテリBの内部抵抗とにより、増速時バッテリ温度Tbaも充電時間の経過に伴って上昇していく。
【0159】
ここで、走行速度の増速調整が行われた場合、到着時バッテリ温度は目標バッテリ温度TbOよりも高い状態である。この為、充電ステーションCSにおけるバッテリBの充電に伴い、増速時バッテリ温度Tbaが上昇していくと、増速時充電率Craが100%になる前に、バッテリ温度上限値TbUに達してしまう。
【0160】
増速時バッテリ温度Tbaがバッテリ温度上限値TbUに到達した時点で、充電ステーションCSにて、バッテリBへ供給される充電電流が制限される。この為、
図9に示すように、増速時充電率Craの単位時間当たりの増加量は、増速時バッテリ温度Tbaがバッテリ温度上限値TbUに到達した時点から緩やかになる。制限された充電電流によるバッテリBの充電の結果、増速時充電率Craが100%になると、この場合におけるバッテリBの充電を完了する。
図8、
図9においては、この時点を時間tfaで示している。
【0161】
従って、走行速度の増速調整が行われた場合の充電時間は、時間tsaから時間tfaの間で示され、増速時合計所要時間Ttaは、時間t0から時間tfaの間によって表される。
【0162】
図8、
図9に示す例においては、現在地から充電ステーションCSに到着するまでの所要時間が最も短いのは、走行速度の増速調整を行った場合である。又、それぞれの場合において、バッテリBへの充電が完了した時点を比較すると、時間tfa、時間tfc、時間tfdの順に遅くなっていることがわかる。即ち、
図8、
図9に示す例の場合、現在地から充電ステーションCSまでの走行速度を増速調整した場合が、充電ステーションCSへの移動及びバッテリBの充電を、最もはやく完了することができる。
【0163】
以上説明したように、第2実施形態に係るエネルギマネージャ1によれば、環境情報を利用して、様々な走行速度の調整を行った場合の合計所要時間Ttを推定し、推定結果を比較することで、充電完了までの時間が最も短く走行速度の調整を実現できる。又、第2実施形態においては、走行速度の調整態様として、減速調整に加えて、増速調整も今日呂することができるので、より適切な態様で、バッテリBの充電完了までの期間を短期化することができる。
【0164】
(第3実施形態)
続いて、上述した実施形態と異なる第3実施形態について、
図10~
図12を参照して説明する。第3実施形態では、走行経路上に複数の充電ステーションCSが配置されている状況に、上述した実施形態で説明した処理内容を適用した場合について説明する。第3実施形態におけるエネルギマネージャ1等の基本的構成は、上述した実施形態と同一である。
【0165】
エネルギマネージャ1は、走行経路上に複数の充電ステーションCSが存在する場合、上述した実施形態における合計所要時間Ttの推定結果を用いた走行速度の調整を行い、各充電ステーションCSでの充電の有無を含む運用パターンの検討を行う。
【0166】
以下の説明においては、出発地から目的地へ向かう走行経路上に、第1充電ステーションCSa、第2充電ステーションCSbの2つの充電ステーションCSが存在する場合を例に挙げて、
図10~
図12を用いて説明する。
【0167】
上述の具体例の場合、走行経路上に第1充電ステーションCSa、第2充電ステーションCSbが存在する為、第1運用パターン~第3運用パターンの3種類の運用パターンが考えられる。
【0168】
第1運用パターンは、出発地から目的地へ向かう過程で、第1充電ステーションCSa及び第2充電ステーションCSbの何れにおいても、バッテリBの充電を行う場合の車両Aの運用パターンを意味する。第2運用パターンは、出発地から目的地へ向かう過程で、第1充電ステーションCSaにてバッテリBの充電を行い、第2充電ステーションCSbは通過する場合の車両Aの運用パターンである。そして、第3運用パターンは、出発地から目的地へ向かう過程で、第1充電ステーションCSaを通過して、第2充電ステーションCSbにてバッテリBの充電を行う場合の車両Aの運用パターンである。
【0169】
続いて、上述した処理内容を各運用パターンに適用した場合について、図面を参照して説明する。先ず、第1運用パターンに対して上述した処理内容を適用した場合について、
図10を参照して説明する。
【0170】
図10に示すように、第1運用パターンでは、第1充電ステーションCSaでの充電、第2充電ステーションCSbの充電が行われる。従って、先ず、出発地から第1充電ステーションCSaまでの走行に関する所要時間及び第1充電ステーションCSaでの充電時間が、上述した第2実施形態に係る処理内容を適用して推定される。
【0171】
出発地を現在地に設定して第2実施形態に係る処理内容を適用することで、出発地から第1充電ステーションCSaまでの最適な走行速度として、走行速度Vaが推定され、走行速度Vaで走行した場合の所要時間として、走行時間Traが推定される。又、環境情報を用いて、出発地から第1充電ステーションCSaへ走行速度Vaで走行した場合の到着時状況を推定することができるので、第1充電ステーションCSaにおけるバッテリBの充電時間Tcaを推定することができる。
【0172】
次に、第1充電ステーションCSaから第2充電ステーションまでの走行に関する所要時間及び第2充電ステーションCSbでの充電時間が、上述した実施形態に係る処理内容を適用して推定される。
【0173】
第1充電ステーションCSaを処理上の現在地に設定して、第2実施形態に係る処理内容を適用することで、第1充電ステーションCSaから第2充電ステーションCSbまでの最適な走行速度として、走行速度Vbが推定される。そして、走行速度Vbで走行した場合の所要時間として、走行時間Trbが推定される。又、環境情報を用いて、第1充電ステーションCSaから第2充電ステーションCSbまで走行速度Vbで走行した場合の到着時状況を推定することができるので、第2充電ステーションCSbにおけるバッテリBの充電時間Tcbを推定することができる。
【0174】
続いて、第2充電ステーションCSbを処理上の現在地に設定して、第2実施形態に係る処理内容を適用することで、第2充電ステーションCSbから目的地までの最適な走行速度として、走行速度Vcが推定される。又、走行速度Vcで走行した場合の所要時間として、走行時間Trcが推定される。
【0175】
従って、第1運用パターンに係る合計所要時間Ttは、走行時間Tra、充電時間Tca、走行時間Trb、充電時間Tcb、走行時間Trcを合算することで求められる。
【0176】
次に、第2運用パターンに対して上述した処理内容を適用した場合について、
図11を参照して説明する。
図11に示すように、第2運用パターンでは、第1充電ステーションCSaにてバッテリBの充電が行われ、第2充電ステーションCSbでは、バッテリBの充電が行われることなく、車両Aが通過する。
【0177】
従って、先ず、出発地から第1充電ステーションCSaまでの走行に関する所要時間及び第1充電ステーションCSaでの充電時間が、上述した第2実施形態に係る処理内容を適用して推定される。
【0178】
出発地を現在地に設定して第2実施形態に係る処理内容を適用することで、出発地から第1充電ステーションCSaまでの最適な走行速度として、走行速度Vdが推定され、走行速度Vdで走行した場合の所要時間として、走行時間Trdが推定される。又、環境情報を用いて、出発地から第1充電ステーションCSaへ走行速度Vdで走行した場合の到着時状況を推定することができるので、第1充電ステーションCSaにおけるバッテリBの充電時間Tccを推定することができる。
【0179】
ここで、第2運用パターンでは、第2充電ステーションCSbを通過する為、第1充電ステーションCSaから目的地までの走行に関する所要時間が、上述した実施形態に係る処理内容を適用して推定される。
【0180】
第1充電ステーションCSaを処理上の現在地に設定して、第2実施形態に係る処理内容を適用することで、第1充電ステーションCSaから目的地までの最適な走行速度として、走行速度Veが推定される。そして、走行速度Veで走行した場合の所要時間として、走行時間Treが推定される。
【0181】
従って、第2運用パターンに係る合計所要時間Ttは、出発地から第1充電ステーションCSaまでの走行時間Trd、第1充電ステーションCSaにおける充電時間Tcc、第1充電ステーションCSaから目的地までの走行時間Treを合算して求められる。
【0182】
続いて、第3運用パターンに対して上述した処理内容を適用した場合について、
図12を参照して説明する。
図12に示すように、第3運用パターンでは、第1充電ステーションCSaでは、バッテリBの充電が行われることなく、車両Aが通過し、第2充電ステーションCSbにてバッテリBの充電が行われる。
【0183】
従って、出発地から第2充電ステーションCSbまでの走行に関する所要時間及び第2充電ステーションCSbでの充電時間が、上述した第2実施形態に係る処理内容を適用して推定される。出発地を現在地に設定して第2実施形態に係る処理内容を適用することにより、出発地から第2充電ステーションCSbまでの最適な走行速度として、走行速度Vfが推定され、走行速度Vfで走行した場合の所要時間として、走行時間Trfが推定される。
【0184】
又、環境情報を用いて、出発地から第2充電ステーションCSbへ走行速度Vfで走行した場合の到着時状況を推定することができるので、第2充電ステーションCSbにおけるバッテリBの充電時間Tcdを推定することができる。
【0185】
そして、第2充電ステーションCSbを処理上の現在地に設定して、第2実施形態に係る処理内容を適用することで、第2充電ステーションCSbから目的地までの最適な走行速度として、走行速度Vgが推定される。そして、走行速度Vgで走行した場合の所要時間として、走行時間Trgが推定される。
【0186】
従って、第3運用パターンに係る合計所要時間Ttは、出発地から第2充電ステーションCSbまでの走行時間Trf、第2充電ステーションCSbにおける充電時間Tcd、第2充電ステーションCSbから目的地までの走行時間Trgを合算して求められる。
【0187】
図10~
図12に示すように、第1運用パターン~第3運用パターンの合計所要時間を推定することができるので、走行経路上に複数の充電ステーションCSがある場合に、最も合計所要時間を短くすることができる車両Aの運用パターンを特定することができる。これにより、出発地から目的地まで走行経路を走行する過程で、どこの充電ステーションCSで充電することが、合計所要時間の短縮、目的地到着時間の短縮に貢献するのかを把握することができ、車両A及びバッテリBの効率的な運用を図ることができる。
【0188】
尚、上述した具体例では、出発地から目的地までの走行経路上に、第1充電ステーションCSa、第2充電ステーションCSbが存在している構成であったが、この態様に限定されるものではない。走行経路上に存在している充電設備(充電ステーションCS)の数は、2以上であっても良い。
【0189】
以上説明したように、第3実施形態に係るエネルギマネージャ1によれば、出発地から目的地までの走行経路上に複数の充電ステーションCSが存在する場合でも、合計所要時間Ttを推定することができる。複数パターンの車両Aの運転態様を検討することが可能となる為、合計所要時間が最も短くなるように、バッテリBの充電を行う充電ステーションCSを選択することができる。
【0190】
本開示は上述の実施形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0191】
上述した実施形態にて、エネルギマネージャ1をバッテリ管理装置として適用した例について説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、車載コンピュータであるエネルギマネージャ1において、バッテリ管理プログラムを実行している為、本開示に係る技術的思想をバッテリ管理プログラムとして捉えることができる。又、本開示に係る技術的思想をバッテリ管理方法として捉えることも可能である。
【0192】
又、上述した実施形態では、温度調整部の一例として、温調システム42を採用していたが、この態様に限定されるものではない。温度調整部としては、バッテリBの温度調整が可能な装置又はシステムであれば、種々の態様を採用することができる。
【0193】
そして、上述した第1実施形態では、温度調整の態様として、バッテリの冷却に着目して説明していたが、バッテリBの暖機(加温)を行うように構成することも可能である。
【0194】
又、本開示における充電計画は、少なくとも、車両Aが目的地へ向かって将来的に走行する際に、バッテリBの充電に利用される充電設備(充電ステーションCS)を定めていれば良く、少なくとも充電設備の位置情報が環境情報に含まれていればよい。上述した実施形態のように、車両Aが目的地へ向かって将来的に走行する走行経路及び走行経路に配置されている充電設備(充電ステーションCS)が定められている態様も、充電計画の一例に相当する。
【0195】
そして、環境情報がバッテリBの充電に利用される充電設備の位置情報で構成されている場合には、以下のように処理を行うことができる。例えば、充電設備の位置情報を用いて、現在地から充電設備までの距離を特定して、走行速度(例えば、法定速度)で除算するによって、充電設備に対する車両Aの到着時刻を推定することができる。このように、充電設備に対する車両Aの到着時刻を推定することにより、上述した実施形態のステップS1、ステップS11の処理を行うことができる。
【0196】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。