(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】電力変換装置、三相電圧形インバータの制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240925BHJP
【FI】
H02M7/48 F
(21)【出願番号】P 2023553846
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2021038053
(87)【国際公開番号】W WO2023062779
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴間 義徳
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-045846(JP,A)
【文献】特開2018-014860(JP,A)
【文献】特開2012-143081(JP,A)
【文献】特開2013-038844(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008676(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの直流電圧を三相交流電圧に変換して電力系統へ出力する三相電圧形インバータと、
前記三相交流電圧おける正弦波状の三相の出力電圧指令信号である第一出力電圧指令信号の最大相と最小相との加算値を求める加算値算出部と、
前記三相の前記第一出力電圧指令信号に基づいて出力電圧指令の実効値を求める実効値算出部と、
前記実効値算出部により求められた前記実効値と、前記直流電圧の値と、前記電力系統への出力要求に応じた出力力率指令とに基づいて、前記三相電圧形インバータの電力損失が最小となる係数を決定する係数決定手段と、
前記加算値算出部により求められた前記加算値と、前記係数決定手段により決定された前記係数とを乗算して制御量を求める制御量算出部と、
前記三相の前記第一出力電圧指令信号のそれぞれから、前記制御量算出部により求められた前記制御量を減算した信号である第二出力電圧指令信号を求める出力電圧指令信号制御部と、
前記出力電圧指令信号制御部により求められた前記第二出力電圧指令信号と三角波状のキャリア信号とに基づいてゲート信号を生成するPWM制御部と、
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記実効値算出部は、前記三相の前記第一出力電圧指令信号を、d軸電圧指令信号とq軸電圧指令信号とに変換し、変換された前記d軸電圧指令信号の二乗と前記q軸電圧指令信号の二乗との和の平方根をとることによって前記実効値を求める
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置において、
前記係数決定手段は、前記実効値と、前記直流電圧の値と、前記出力力率指令と、前記三相電圧形インバータの電力損失が最小となる前記係数との関係を定めた係数テーブルに基づいて、前記実効値と、前記直流電圧の値と、前記出力力率指令との組み合わせに応じた前記係数を決定する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置において、
前記係数決定手段は、前記実効値と、前記直流電圧の値と、前記出力力率指令とを引数とする関数に基づいて、前記三相電圧形インバータの電力損失が最小となる前記係数を決定する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
直流電源からの直流電圧を三相交流電圧に変換して電力系統へ出力する三相電圧形インバータを備える電力変換装置における三相電圧形インバータの制御方法であって、
前記三相交流電圧おける正弦波状の三相の出力電圧指令信号である第一出力電圧指令信号の最大相と最小相との加算値を求める加算値算出ステップと、
前記三相の前記第一出力電圧指令信号に基づいて出力電圧指令の実効値を求める実効値算出ステップと、
前記実効値算出ステップにより求められた前記実効値と、前記直流電圧の値と、前記電力系統への出力要求に応じた出力力率指令とに基づいて、前記三相電圧形インバータの電力損失が最小となる係数を決定する係数決定ステップと、
前記加算値算出ステップにより求められた前記加算値と、前記係数決定ステップにより決定された前記係数とを乗算して制御量を求める制御量算出ステップと、
前記三相の前記第一出力電圧指令信号のそれぞれから、前記制御量算出ステップにより求められた前記制御量を減算した信号である第二出力電圧指令信号を求める出力電圧指令信号制御ステップと、
前記出力電圧指令信号制御ステップにより求められた前記第二出力電圧指令信号と三角波状のキャリア信号とに基づいてゲート信号を生成するPWM制御ステップと、
を備えることを特徴とする三相電圧形インバータの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の三相電圧形インバータの制御方法の処理をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする三相電圧形インバータの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、三相電圧形インバータの制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータの制御方式として、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御が知られている。三相電圧形インバータでは、三相におけるU相、V相、W相の各相において正弦波の電圧指令信号が生成され、これらの三相の電圧指令信号と三角波であるキャリア信号とが比較されることで、三相のPWM制御が行われている。
【0003】
ところで、三相の電圧指令信号に対して、基本波の3倍の周波数である3次調波が重畳されると、電圧指令信号の波形が変化し、ゲートパルスの様相、すなわちインバータ出力電圧のON/OFF比率が変化する。その結果、インバータにおけるスイッチング素子を有する経路及びダイオードを有する経路に流れる電流の時間比率も変化する。また、電流の経路によって電力損失に違いが生じることがあるため、最終的にはインバータの変換効率にも違いが生じることがある。
【0004】
このため、三相電圧形インバータの変換効率を向上させるため、電力損失が最小となるような3次調波の振幅が決定され、決定された当該3次調波の振幅が、三相の電圧指令信号に重畳されるインバータの制御方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、三相の電圧指令信号に対して、基本波の3倍の周波数である3次調波の振幅が重畳される従来の方式では、演算が複雑になる可能性がある。
【0007】
一方、従来、三相電圧形インバータにおいて、出力電圧範囲を広くとるために、正弦波状の出力電圧指令信号の最大相と最小相との加算値に係数を乗じたものを出力電圧指令信号から減算する手法が知られている。このとき、上記の係数が0.5とされた場合に、振幅が最も低減されることが知られている。
【0008】
図8は、従来の電力変換装置100の制御装置120における三相電圧形インバータの制御手法を説明する図である。
図8において、制御装置120は、加算値算出部121と、制御量算出部124と、出力電圧指令信号制御部125と、PWM制御部126とを有する。
【0009】
加算値算出部121は、正弦波状の三相の出力電圧指令信号Vu1,Vv1,Vw1の最大相と最小相とを選択し、選択された最大相と最小相との加算値を算出する。
【0010】
制御量算出部124は、加算値算出部121により求められた加算値に係数k(ゲインk)を乗じて出力電圧指令信号Vu1,Vv1,Vw1の制御量を求める。上述のとおり、係数k(ゲインk)が0.5である場合、振幅が最も低減される。
【0011】
出力電圧指令信号制御部125は、三相の出力電圧指令信号Vu1,Vv1,Vw1から、制御量算出部124により求められた制御量を減じた出力電圧指令信号Vu2,Vv2,Vw2を求める。
【0012】
PWM制御部126は、出力電圧指令信号制御部125により求められた出力電圧指令信号Vu2,Vv2,Vw2と、三角波であるキャリア信号とを比較して、PWM制御を行い、ゲート信号を発生させる。
【0013】
ここで、上述のとおり、出力電圧振幅をより多く得るためには、係数k(ゲインk)は、0.5が最適であるとされているが、なぜ0.5が最適なのか、その理由を説明する。例えば、太陽光発電(PV:Photovoltaics)、蓄電池(ESS:Energy Storage System)等で実際に行われている3次重畳では、3倍の周波数の正弦波ではなく、変調波そのものを加工した信号が用いられている。そのため、上記の実際に行われている3次重畳は、厳密な意味では「3次重畳」ではない。
【0014】
具体的には、三相の正弦波のうち、k×(最大相+最小相)(kは係数)を、各相から減算することで実現されている。この場合、「π/6≦θ≦π/2において、f(θ)=sinθ-k{sinθ+sin(θ+2π/3)}の振幅を最小にするkの値を求める。」という問題を解くことで、係数kの最適値が求められる。
【0015】
上記の問題中の式において、kは、係数であり、{sinθ+sin(θ+2π/3)}は、π/6≦θ≦π/2における(最大相+最小相)である。上記の式において、振幅が最小になるkを求めると、0.5という数字が出てくる。このため、係数kの最適値は、0.5となる。なお、上記の問題は、微分積分の極大値極小値問題である。すなわち、上記の問題は、f(θ)という関数があるときに、これを微分して、当該微分値が0になるようなθを求め、求めた値が最小になるようなkを求めるという2段構えの極値問題である。
【0016】
図9は、
図8に示した制御手法においてゲインkとして0.5が最適である理由を説明する図である。
図9(a)は、U相、V相、W相の正弦波、及びkが0.5であるときのk×(最大相+最小相)の状態を表す図である。
図9(b)は、kが0.5であるときのf(θ)の関数の変化の状態を表す図である。
【0017】
図9(a)において、実線の正弦波は、U相:sinθを表し、細かい破線の正弦波は、V相:sin(θ-2π/3)を表し、粗い破線の正弦波は、W相:sin(θ-4π/3)を表す。また、一点鎖線は、kが0.5であるときのk×(最大相+最小相)を表す。
【0018】
また、
図9(b)において、実線は、U相:sinθ-k×(最大相+最小相)を表し、細かい破線は、V相:sin(θ-2π/3)-k×(最大相+最小相)を表し、粗い破線は、W相:sin(θ-4π/3)-k×(最大相+最小相)を表す。
【0019】
すなわち、
図9(b)には、正弦波の出力電圧指令信号から制御量が減算された結果が表されている。
図9(b)では、頭が少し凹んだ正弦波状の形状が示されている。
図9(b)に示される例は、k=0.5である場合の例である。ここで、例えば、kを0.4、0.3、0.2・・・と減らしていった場合、正弦波の頭の凹みが減っていってしまう。一方、例えば、kを0.6、0.7、0.8・・・と増やしていった場合、逆に、正弦波の頭の凹みが増え過ぎてしまう。このため、
図9(b)で示されるk=0.5のときが最適な凹み状況となる。
【0020】
単位振幅の正弦波に、ゲインkを0.5として重畳が行われると、極大値は(√3)/2となる。これにより、理想状態である(デッドタイムなど考慮せず変調度1まで使える)とすると、2/(√3)=1.1547の基本波振幅が出力可能であるため、「実際に3次調波を加算するタイプ」の3次重畳と同等の効果が得られる。このため、上述の3倍の周波数を重畳する方法(通称3次重畳)と同等の効果が得られるものを簡易的に実現する手法として、ゲインkを0.5とする手法が採られている。
【0021】
しかし、ゲインkとして0.5が最適であるというのは、出力電圧振幅をなるべく多く稼ぐという目的において、0.5が最適であるという話である。一方、三相電圧形インバータの効率を最大にするという目的においては、必ずしもゲインkは0.5が最適であるとは限らない。
【0022】
そこで、本件開示は、3次調波の振幅が重畳される従来の方式よりも簡易な手法で、三相電圧形インバータの変換効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
一態様に係る電力変換装置は、直流電源からの直流電圧を三相交流電圧に変換して電力系統へ出力する三相電圧形インバータと、三相交流電圧おける正弦波状の三相の出力電圧指令信号である第一出力電圧指令信号の最大相と最小相との加算値を求める加算値算出部と、三相の第一出力電圧指令信号に基づいて出力電圧指令の実効値を求める実効値算出部と、実効値算出部により求められた実効値と、直流電圧の値と、電力系統への出力要求に応じた出力力率指令とに基づいて、三相電圧形インバータの電力損失が最小となる係数を決定する係数決定手段と、加算値算出部により求められた加算値と、係数決定手段により決定された係数とを乗算して制御量を求める制御量算出部と、三相の第一出力電圧指令信号のそれぞれから、制御量算出部により求められた制御量を減算した信号である第二出力電圧指令信号を求める出力電圧指令信号制御部と、出力電圧指令信号制御部により求められた第二出力電圧指令信号と三角波状のキャリア信号とに基づいてゲート信号を生成するPWM制御部と、を備えることを特徴とする。
【0024】
なお、一態様に係る電力変換装置において、実効値算出部は、三相の第一出力電圧指令信号を、d軸電圧指令信号とq軸電圧指令信号とに変換し、変換されたd軸電圧指令信号の二乗とq軸電圧指令信号の二乗との和の平方根をとることによって実効値を求めてもよい。
【0025】
また、一態様に係る電力変換装置において、係数決定手段は、実効値と、直流電圧の値と、出力力率指令と、三相電圧形インバータの電力損失が最小となる係数との関係を定めた係数テーブルに基づいて、実効値と、直流電圧の値と、出力力率指令との組み合わせに応じた係数を決定してもよい。
【0026】
また、一態様に係る電力変換装置において、係数決定手段は、実効値と、直流電圧の値と、出力力率指令とを引数とする関数に基づいて、三相電圧形インバータの電力損失が最小となる係数を決定してもよい。
【0027】
一態様に係る三相電圧形インバータの制御方法は、直流電源からの直流電圧を三相交流電圧に変換して電力系統へ出力する三相電圧形インバータを備える電力変換装置における三相電圧形インバータの制御方法であって、三相交流電圧おける正弦波状の三相の出力電圧指令信号である第一出力電圧指令信号の最大相と最小相との加算値を求める加算値算出ステップと、三相の第一出力電圧指令信号に基づいて出力電圧指令の実効値を求める実効値算出ステップと、実効値算出ステップにより求められた実効値と、直流電圧の値と、電力系統への出力要求に応じた出力力率指令とに基づいて、三相電圧形インバータの電力損失が最小となる係数を決定する係数決定ステップと、加算値算出ステップにより求められた加算値と、係数決定ステップにより決定された係数とを乗算して制御量を求める制御量算出ステップと、三相の第一出力電圧指令信号のそれぞれから、制御量算出ステップにより求められた制御量を減算した信号である第二出力電圧指令信号を求める出力電圧指令信号制御ステップと、出力電圧指令信号制御ステップにより求められた第二出力電圧指令信号と三角波状のキャリア信号とに基づいてゲート信号を生成するPWM制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【0028】
一態様に係る三相電圧形インバータの制御プログラムは、上記の三相電圧形インバータの制御方法の処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本件開示によれば、3次調波の振幅が重畳される従来の方式よりも簡易な手法で、三相電圧形インバータの変換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示した電力変換装置における制御装置の構成例を示す図である。
【
図3】
図2に示した制御装置における三相電圧形インバータの制御手法を説明する図である。
【
図4】
図3のステップS9に示した係数決定手段における係数決定手法を説明する図である。
【
図5】第2実施形態に係る電力変換装置における制御装置の構成例を示す図である。
【
図6】
図5に示した係数決定手段における係数決定手法を説明する図である。
【
図7】
図1~
図6に示した実施形態における制御装置が有する処理回路のハードウェア構成例を示す概念図である。
【
図8】従来の電力変換装置の制御装置における三相電圧形インバータの制御手法を説明する図である。
【
図9】
図8に示した制御手法においてゲインkとして0.5が最適である理由を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本件開示の電力変換装置、三相電圧形インバータの制御方法及び制御プログラムについて、図面を用いて説明する。
【0032】
<第1実施形態の構成>
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置1の構成例を示す図である。
【0033】
図1に示すとおり、電力変換装置(PCS:Power Conditioning Subsystem)1は、直流電源11と、電力系統12とに接続される。電力変換装置1は、直流電源11から供給される直流電力を、後述の三相電圧形インバータ14を介して交流電力に変換し、電力系統12に出力する。
【0034】
直流電源11は、電力変換装置1の直流端に接続され、電力変換装置1の直流端を介して電力変換装置1に直流電力を供給する。直流電源11は、例えば、太陽光パネルを備える太陽光発電装置(PV)や蓄電池(ESS)等である。なお、直流電源11は、例えば、風力発電機と交流直流コンバータ等からなる直流電源システム等であってもよい。
【0035】
電力系統12は、電力変換装置1の交流端に接続され、送電線を介して発電所や工場等(三相交流電源又は負荷等)が接続されている。電力変換装置1は、電力系統12への送電に際し、現在要求されている力率を守る必要がある。
【0036】
電力変換装置1は、平滑コンデンサ13と、三相電圧形インバータ14と、リアクトル15と、コンデンサ16と、電流計17と、電圧計18とを有する。
【0037】
平滑コンデンサ13は、直流電源11の正極側と負極側との間に接続され、端子間電圧VHの変動を平滑化するためのコンデンサである。
【0038】
三相電圧形インバータ14は、直流電源11からの直流電圧を三相交流電圧に変換して電力系統12へ出力する。例えば、三相電圧形インバータ14は、3つのレグ(U相レグ、V相レグ、W相レグ)を並列に接続した回路を有する。各レグは、スイッチング素子と還流ダイオードとを逆並列に接続したアームを2つ直列に接続して構成される。各レグは、直流電源11の正極側と負極側との間に並列に接続される。
【0039】
具体的には、U相レグは、スイッチング素子Qu1とスイッチング素子Qu2とを有する。スイッチング素子Qu1とスイッチング素子Qu2とは、直流電源11の正極側から順に直列に接続されている。スイッチング素子Qu1とスイッチング素子Qu2との中間点は、電力系統12のU相の端子に電気的に接続されている。また、スイッチング素子Qu1と還流ダイオードDu1とは、逆並列に接続されている。スイッチング素子Qu2と還流ダイオードDu2とは、逆並列に接続されている。
【0040】
V相レグは、スイッチング素子Qv1とスイッチング素子Qv2とを有する。スイッチング素子Qv1とスイッチング素子Qv2とは、直流電源11の正極側から順に直列に接続されている。スイッチング素子Qv1とスイッチング素子Qv2との中間点は、電力系統12のV相の端子に電気的に接続されている。また、スイッチング素子Qv1と還流ダイオードDv1とは、逆並列に接続されている。スイッチング素子Qv2と還流ダイオードDv2とは、逆並列に接続している。
【0041】
W相レグは、スイッチング素子Qw1とスイッチング素子Qw2とを有する。スイッチング素子Qw1とスイッチング素子Qw2とは、直流電源11の正極側から順に直列に接続されている。スイッチング素子Qw1とスイッチング素子Qw2との中間点は、電力系統12のW相の端子に電気的に接続されている。また、スイッチング素子Qw1と還流ダイオードDw1とは、逆並列に接続されている。スイッチング素子Qw2と還流ダイオードDw2とは、逆並列に接続されている。
【0042】
なお、本実施形態では各スイッチング素子Qu1~Qw2は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が採用されている。しかし、スイッチング素子は、これに限定されるものではなく、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)等であってもよい。
【0043】
リアクトル15は、三相電圧形インバータ14の各レグの中間点と電力系統12との間に設けられる平滑要素である。
【0044】
コンデンサ16は、リアクトル15とともにリップルを低減するフィルタ回路を構成している。
【0045】
電流計17は、三相電圧形インバータ14の出力電流を検出する。検出された出力電流の値は、制御装置20によって取得される。
【0046】
電圧計18は、三相電圧形インバータ14の出力電圧(線間電圧)を検出する。検出された出力電圧の値は、制御装置20によって取得される。
【0047】
制御装置20は、例えば、プログラムを実行することにより動作するCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の不図示のプロセッサを有する。制御装置20は、例えば、後述の記憶部30(
図2参照)に記憶された所定のプログラムを実行することにより不図示のプロセッサを動作させて電力変換装置1の動作を統括的に制御する。
【0048】
制御装置20は、例えば、電力変換装置1の内部又は外部に設けられ、図中配線等は省略されているが、三相電圧形インバータ14を始めとする電力変換装置1の各要素と、有線又は無線によって電気的に接続されている。なお、制御装置20は、不図示のインバータ制御回路の機能として実現されていてもよい。
【0049】
制御装置20は、不図示の電圧計によって検出される端子間電圧VHと、電流計17によって検出される出力電流と、電圧計18によって検出される線間電圧と、電力指令Pとを取得する。なお、電力指令Pは、電力系統12への出力要求に応じた指令であり、電力変換装置1の外部(例えば、上位装置等)から取得される。制御装置20は、各スイッチング素子Qu1~Qw2を駆動するゲート信号を生成する。生成されたゲート信号により三相電圧形インバータ14の動作が制御される。
【0050】
図2は、
図1に示した電力変換装置1における制御装置20の構成例を示す図である。
【0051】
制御装置20は、加算値算出部21と、実効値算出部22と、係数決定手段23と、制御量算出部24と、出力電圧指令信号制御部25と、PWM制御部26として機能する。また、制御装置20は、記憶部30を有する。
【0052】
加算値算出部21は、三相交流電圧おける正弦波状の三相の出力電圧指令信号V1を取得し、取得された三相の出力電圧指令信号V1の最大相と最小相とを選択肢し、選択された最大相と最小相との加算値を求める。
図2において、出力電圧指令信号V1は、1本の線で示されているが、実際には、U相出力電圧指令信号Vu1、V相出力電圧指令信号Vv1、及びW相出力電圧指令信号Vw1の三相に分かれている。加算値算出部21は、求められた加算値を制御量算出部24に出力する。なお、三相の出力電圧指令信号V1(U相出力電圧指令信号Vu1、V相出力電圧指令信号Vv1、W相出力電圧指令信号Vw1)は、「第一出力電圧指令信号」の一例である。
【0053】
実効値算出部22は、三相交流電圧おける正弦波状の三相の出力電圧指令信号V1(U相出力電圧指令信号Vu1、V相出力電圧指令信号Vv1、W相出力電圧指令信号Vw1)に基づいて、出力電圧指令の実効値を求める。実効値算出部22は、三相の出力電圧指令信号V1(U相出力電圧指令信号Vu1、V相出力電圧指令信号Vv1、W相出力電圧指令信号Vw1)を、d軸電圧指令信号Vdとq軸電圧指令信号Vqとに変換する。実効値算出部22は、変換されたd軸電圧指令信号Vdの二乗とq軸電圧指令信号Vqの二乗との和の平方根をとることによって実効値を求める。実効値算出部22は、求められた出力電圧指令の実効値を係数決定手段23に出力する。
【0054】
係数決定手段23は、実効値算出部22により求められた実効値と、直流電圧の値と、電力系統への出力要求に応じた出力力率指令とに基づいて、三相電圧形インバータ14の電力損失が最小となる係数kを決定する。決定された係数kは、「ゲインk」とも称される。なお、出力力率指令は、不図示の上位装置等の外部から取得される。
【0055】
係数決定手段23は、上記の実効値と、直流電圧の値と、出力力率指令と、三相電圧形インバータの電力損失が最小となる係数との関係を定めた係数テーブル23aを有する。なお、係数テーブル23aの内容は、各条件において効率が最高となるよう、予め解析や実運転データに基づいて求められている。なお、係数テーブル23aは、記憶部30によって保持されていてもよい。
【0056】
係数決定手段23は、係数テーブル23aに基づいて、上記の実効値と、直流電圧の値と、出力力率指令との組み合わせに応じた、三相電圧形インバータ14の電力損失が最小となる係数kを決定する。係数決定手段23は、決定された係数kを制御量算出部24に出力する。
【0057】
制御量算出部24は、加算値算出部21により求められた加算値と、係数決定手段23により決定された係数kとを取得し、取得された加算値と係数kとを乗算して出力電圧指令信号V1の制御量を求める。制御量算出部24は、求められた制御量を出力電圧指令信号制御部25に出力する。
【0058】
出力電圧指令信号制御部25は、三相の出力電圧指令信号V1のそれぞれから、制御量算出部24により求められた制御量を減算し、減算された信号である三相の出力電圧指令信号V2を求める。なお、
図2において、出力電圧指令信号V2は、1本の線で示されているが、実際には、U相出力電圧指令信号Vu2、V相出力電圧指令信号Vv2、及びW相出力電圧指令信号Vw2の三相に分かれている。出力電圧指令信号制御部25は、求められた出力電圧指令信号V2(U相出力電圧指令信号Vu2、V相出力電圧指令信号Vv2、W相出力電圧指令信号Vw2)をPWM制御部26に出力する。なお、三相の出力電圧指令信号V2(U相出力電圧指令信号Vu2、V相出力電圧指令信号Vv2、W相出力電圧指令信号Vw2)は、「第二出力電圧指令信号」の一例である。
【0059】
PWM制御部26は、出力電圧指令信号制御部25により求められた三相の出力電圧指令信号V2と三角波状のキャリア信号とに基づいてゲート信号を生成する。PWM制御部26は、生成されたゲート信号を三相電圧形インバータ14に出力する。
【0060】
記憶部30は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、半導体メモリ等の揮発性又は不揮発性の記憶媒体であり、例えば、制御装置20の各部の動作に必要なプログラムを記憶する。また、記憶部30は、制御装置20の各部によって、取得された値、算出された結果、及び算出に必要な係数テーブルや関数等を記憶する。記憶部30は、例えば、不図示のバス等により、制御装置20の各部と接続されている。なお、記憶部30は、制御装置20の外部に設けられ、有線又は無線で制御装置20と接続されていてもよく、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disc)等の外部記憶媒体等であっても、オンラインストレージ等であってもよい。
【0061】
<第1実施形態の制御手法>
図3は、
図2に示した制御装置20における制御手法を説明する図である。
図3の制御は、例えば、電力変換装置1の運転が開始されたときに開始される。以下、
図3に示す制御について説明する(適宜
図2も参照)。
【0062】
ステップS1において、制御装置20の加算値算出部21は、三相の出力電圧指令信号V1(U相出力電圧指令信号Vu1、V相出力電圧指令信号Vv1、W相出力電圧指令信号Vw1)の最大相を選択する。
【0063】
ステップS2において、制御装置20の加算値算出部21は、三相の出力電圧指令信号V1(U相出力電圧指令信号Vu1、V相出力電圧指令信号Vv1、W相出力電圧指令信号Vw1)の最小相を選択する。
【0064】
ステップS3において、制御装置20の加算値算出部21は、ステップS1で選択された最大相と、ステップS2で選択された最小相とを加算して、加算値を求める。
【0065】
ステップS4において、制御装置20の実効値算出部22は、三相の出力電圧指令信号V1(U相出力電圧指令信号Vu1、V相出力電圧指令信号Vv1、W相出力電圧指令信号Vw1)を三相/二相変換(dq変換)する。これにより、実効値算出部22は、三相の出力電圧指令信号V1(U相出力電圧指令信号Vu1、V相出力電圧指令信号Vv1、W相出力電圧指令信号Vw1)を、d軸電圧指令信号Vdと、q軸電圧指令信号Vqとに変換する。
【0066】
ステップS5において、制御装置20の実効値算出部22は、d軸電圧指令信号Vdの値を二乗した値を求める。
【0067】
ステップS6において、制御装置20の実効値算出部22は、q軸電圧指令信号Vqの値を二乗した値を求める。
【0068】
ステップS7において、制御装置20の実効値算出部22は、ステップS5で求められた値と、ステップS6で求められた値とを加算した値を求める。
【0069】
ステップS8において、制御装置20の実効値算出部22は、ステップS7で求められた値の平方根をとった値を求める。ステップS8で求められた値が出力電圧指令の実効値(振幅)となる。
【0070】
ステップS9において、制御装置20の係数決定手段23は、ステップS8で求められた実効値と、直流電圧の値と、電力系統12への出力要求に応じた出力力率指令とに基づいて、三相電圧形インバータ14の電力損失が最小となる係数k(ゲインk)を決定する。
【0071】
図4は、
図3のステップS9に示した係数決定手段23における係数決定手法を説明する図である。
【0072】
係数決定手段23は、出力電圧指令の実効値(振幅)と、直流電圧の値と、出力力率指令と、三相電圧形インバータの電力損失が最小となる係数との関係を定めた係数テーブル23aを有する。なお、出力力率指令は、不図示の上位装置等の外部から取得される。係数テーブル23aの内容は、各条件において効率が最高となるよう、予め解析や実運転データに基づいて求められている。
【0073】
係数決定手段23は、係数テーブル23aに定められた相関関係に基づいて、実効値と、直流電圧の値と、出力力率指令との組み合わせに応じた、三相電圧形インバータ14の電力損失が最小となるゲインkを決定する。
【0074】
図3に戻り、ステップS10において、制御装置20の制御量算出部24は、ステップS3で求められた加算値と、ステップS
9でも求められたゲインkとを乗算して制御量を求める。
【0075】
ステップS11において、制御装置20の出力電圧指令信号制御部25は、三相の出力電圧指令信号V1(U相出力電圧指令信号Vu1、V相出力電圧指令信号Vv1、W相出力電圧指令信号Vw1)のそれぞれから、ステップS10で求められた制御量を減算する。これにより、出力電圧指令信号制御部25は、出力電圧指令信号V2(U相出力電圧指令信号Vu2、V相出力電圧指令信号Vv2、W相出力電圧指令信号Vw2)を求める。
【0076】
ステップS12において、制御装置20のPWM制御部26は、ステップS11で求められた出力電圧指令信号V2(U相出力電圧指令信号Vu2、V相出力電圧指令信号Vv2、W相出力電圧指令信号Vw2)と三角波状のキャリア信号とを比較する。
【0077】
具体的には、PWM制御部26は、U相について、U相出力電圧指令信号Vu2と、所定のキャリア周波数fを有するキャリア信号C(三角波形)とを大小比較する。そして、PWM制御部26は、三角波形の方が小さいときには、上アームに係るスイッチング素子Qu1がONとなり、三角波形の方が大きいときには、下アームに係るスイッチング素子Qu2がONとなるように、ゲート信号を生成する。なお、V相、W相についても同様である。これにより、三相電圧形インバータ14の効率が最大となるゲート信号が発生する。
【0078】
<第1実施形態の作用効果>
以上、
図1~
図4に示した第1実施形態では、係数決定手段23は、係数テーブル23aに基づいて、出力電圧指令の実効値と、直流電圧の値と、出力力率指令との組み合わせに応じた三相電圧形インバータ14の電力損失が最小となるゲインkを決定する(S9)。そして、制御量算出部24は、三相の出力電圧指令信号V1の最大相と最小相との加算値と、ゲインkとを乗算して制御量を求める(S10)。そして、出力電圧指令信号制御部25は、三相の出力電圧指令信号V1から制御量を減算して、出力電圧指令信号V2を求める(S11)。そして、PWM制御部26は、出力電圧指令信号V2と三角波状のキャリア信号とに基づいてゲート信号を生成する(S12)。
【0079】
これにより、
図1~
図4に示した第1実施形態によれば、3次調波の振幅が重畳される従来の方式よりも簡易な演算で、三相電圧形インバータの効率を最大にするゲインkを求めることができる。そして、これにより、3次調波の振幅が重畳される従来の方式よりも簡易な手法で、三相電圧形インバータの変換効率を向上させることができる。
【0080】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る電力変換装置1Bにおける制御装置20Bの構成例を示す図である。
図5において、
図1~
図4に示す第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0081】
図5においては、
図2に示す第1実施形態における係数決定手段23が、係数決定手段23Bに置き換わっている。
【0082】
係数決定手段23Bは、出力電圧指令の実効値(電圧指令振幅)xと、直流電圧の値yと、出力力率指令zとを引数とする関数23bに基づいて、三相電圧形インバータ14の電力損失が最小となる係数k(ゲインk)を決定する。すなわち、係数決定手段23Bは、
図3におけるステップS9において、ステップS8で求められた実効値xと、直流電圧の値yと、電力系統12への出力要求に応じた出力力率指令zとを引数とする関数23bに基づいて、係数k(ゲインk)を決定する。係数決定手段23Bは、決定された係数kを制御量算出部24に出力する。
【0083】
図6は、
図5に示した係数決定手段23Bにおける係数決定手法を説明する図である。
【0084】
係数決定手段23Bは、出力電圧指令の実効値(電圧指令振幅)xと、直流電圧の値yと、出力力率指令zとを引数とした関数23bを有する。関数23bは、
図1~
図4に示した第1実施形態における係数テーブル23aの数値を関数で近似したもの(近似関数)である。関数23bの内容は、各条件において効率が最高となるよう、予め解析や実運転データに基づいて求められている。
【0085】
なお、関数23bは、係数決定手段23Bによって保持されていてもよく、記憶部30によって保持されていてもよい。また、関数23bは、各条件において効率が最高となるように又は係数テーブル23aの内容に基づいて、係数決定手段23Bによって、事前に演算等により求められていてもよく、その都度演算等により求められてもよい。
【0086】
<第2実施形態の作用効果>
以上、
図5~
図6に示した第2実施形態では、
図1~
図4に示した第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0087】
また、
図5~
図6に示した第2実施形態では、
図1~
図4に示した第1実施形態よりもメモリの容量を節約することができる。
【0088】
すなわち、
図1~
図4に示した実施形態における係数テーブル23aは、引数が3つあり、当該3つの引数にそれぞれ変動範囲があるため、当該それぞれ変動する3つの引数に応じた分だけ係数kの情報を保持していなければならない。このため、
図1~
図4に示した実施形態における係数テーブル23aは、通常よりも非常に多くのメモリの容量を消費してしまう。
【0089】
一方、
図5~
図6に示した実施形態では、3つの引数(x,y,z)を取得した係数決定手段23Bは、当該3つの引数(x,y,z)を関数23bに基づいて演算することにより、
図1~
図4に示した係数テーブル23aの数値を関数で近似した数値を決定する。このため、
図5~
図6に示した実施形態では、
図1~
図4に示した実施形態よりもメモリの消費を少なくすることができるため、
図1~
図4に示した実施形態よりもメモリの容量を節約することができる。
【0090】
<ハードウェア構成例>
図7は、
図1~
図6に示した実施形態における制御装置20、20Bが有する処理回路のハードウェア構成例を示す概念図である。上述した各機能は処理回路により実現される。一態様として、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ91と少なくとも1つのメモリ92とを備える。他の態様として、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア93を備える。
【0091】
処理回路がプロセッサ91とメモリ92とを備える場合、各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、メモリ92に格納される。プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
【0092】
処理回路が専用のハードウェア93を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、又はこれらを組み合わせたものである。各機能は処理回路で実現される。
【0093】
制御装置20、20Bが有する各機能は、それぞれ一部又は全部がハードウェアによって構成されてもよく、プロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。すなわち、制御装置20、20Bは、コンピュータとプログラムとによっても実現可能であり、プログラムは、記憶媒体に記憶されることも、ネットワークを通して提供されることも可能である。
【0094】
<実施形態の補足事項>
以上、
図1~
図7に示す実施形態によれば、
図1~
図4に示す第1実施形態と、
図5~
図6に示す第2実施形態とに分かれているが、これらの実施形態の一部又は全部は、直列又は並列に組み合わされてもよい。すなわち、制御装置20又は20Bは、係数決定手段23と係数決定手段23Bとが直列又は並列に組み合わされたものを有し、これらの決定手法が直列又は並列に組み合わされて係数kを決定してもよい。実施形態が組み合わされることにより、組み合わされた実施形態は、組み合わされる前の各実施形態が奏する各作用効果を奏することができる。
【0095】
また、
図1~
図7に示す実施形態では、スイッチング素子と還流ダイオードとが逆並列に接続されたアームが2つ直列に接続されたレグが3つ並列に接続された回路を有する2レベル方式の三相電圧形インバータ14を例にとって説明したが、これには限られない。本件開示は、直流から三相交流に変換する三相の電圧形インバータであれば、例えば、中性点クランプ方式の3レベルインバータや、中性点スイッチ方式の3レベルインバータにも適用可能である。
【0096】
また、
図1~
図7に示す実施形態によれば、本件開示の一態様として、電力変換装置1、1B及び電力変換装置1、1Bらが有する制御装置20、20Bを例に説明したが、これには限られない。本件開示は、制御装置20、20Bの各部における処理ステップが行われる三相電圧形インバータの制御方法としても実現可能である。
【0097】
また、本件開示は、制御装置20、20Bの各部における処理ステップをコンピュータに実行させる三相電圧形インバータの制御プログラムとしても実現可能である。
【0098】
また、本件開示は、当該制御プログラムが記憶された記憶媒体(非一時的なコンピュータ可読媒体)としても実現可能である。制御プログラムは、例えば、CD(Compact Disc)あるいはDVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のリムーバブルディスク等に記憶して頒布することができる。なお、制御プログラムは、制御装置20、20Bが有する不図示のネットワークインタフェース等を介してネットワーク上にアップロードされてもよく、ネットワークからダウンロードされ、記憶部30等に格納されてもよい。
【0099】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0100】
1,1B…電力変換装置(PCS);11…直流電源;12…電力系統;13…平滑コンデンサ;14…三相電圧形インバータ;15…リアクトル;16…コンデンサ;17…電流計;18…電圧計;20,20B…制御装置;21…加算値算出部;22…実効値算出部;23,23B…係数決定手段;24…制御量算出部;25…出力電圧指令信号制御部;26…PWM制御部;30…記憶部;91…プロセッサ;92…メモリ;93…ハードウェア;100…電力変換装置;120…制御装置;121…加算値算出部;124…制御量算出部;125…出力電圧指令信号制御部;126…PWM制御部;C…キャリア信号;Du1,Du2,Dv1,Dv2,Dw1,Dw2…還流ダイオード;f…キャリア周波数;k…係数(ゲイン);P…電力指令;Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2…スイッチング素子;V1…出力電圧指令信号(第一出力電圧指令信号);V2…出力電圧指令信号(第二出力電圧指令信号);Vd…d軸電圧指令信号;VH…端子間電圧;Vq…q軸電圧指令信号;Vu1…U相出力電圧指令信号;Vv1…V相出力電圧指令信号;Vw1…W相出力電圧指令信号;Vu2…U相出力電圧指令信号;Vv2…V相出力電圧指令信号;Vw2…W相出力電圧指令信号;x…出力電圧指令の実効値(振幅,電圧指令振幅);y…直流電圧の値;z…出力力率指令