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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20240925BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20240925BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20240925BHJP
   H10N 30/857 20230101ALI20240925BHJP
   H10N 30/88 20230101ALI20240925BHJP
【FI】
G01L1/16 Z
G06F3/041 600
H10N30/30
H10N30/857
H10N30/88
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023580286
(86)(22)【出願日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2023004158
(87)【国際公開番号】W WO2023153428
(87)【国際公開日】2023-08-17
【審査請求日】2024-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2022019248
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北田 宏明
(72)【発明者】
【氏名】加納 英和
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134452(JP,A)
【文献】特開2012-72299(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221288(WO,A1)
【文献】特開2015-41289(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0257744(US,A1)
【文献】国際公開第2015/129829(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170616(WO,A1)
【文献】特開2013-122745(JP,A)
【文献】特開2014-102804(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063782(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0269808(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-1/26,5/00-5/28,25/00
G06F 3/03,3/041-3/047
H10N 30/00-39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
上下方向に並ぶ第1上主面および第1下主面を有する第1板状部材であって、ユーザの身体の一部または操作部材が前記第1上主面に接触し、かつ、前記筐体に固定されている、第1板状部材と、
前記第1板状部材の変形を検知するセンサと、
前記上下方向に視て前記第1板状部材を囲む領域の少なくとも一部に設けられており、かつ、前記第1下主面を前記筐体に固定している第1接着部材と、
前記上下方向に並ぶ第2上主面および第2下主面を有し、かつ、前記第1下主面に固定されている第2板状部材と、
前記第2上主面を前記第1下主面に固定している第2接着部材と、
を備えており、
前記第1接着部材の貯蔵弾性率は、1MPa以上20MPa以下であ
前記第1接着部材の貯蔵弾性率は、前記第2接着部材の貯蔵弾性率よりも高い、
電子機器。
【請求項2】
前記第2板状部材の貯蔵弾性率は、0Paよりも高く、かつ、0.3MPa以下である、
請求項に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1板状部材は、前記上下方向に視て、前後方向に延びる2本の長辺、および、左右方向に延びる2本の短辺を有する矩形状を有しており、
前記第1接着部材は、前記上下方向に視て、前記2本の長辺の少なくともいずれかと重なっている、
請求項1または請求項に記載の電子機器。
【請求項4】
前記センサは、前記上下方向に視て、前記第1板状部材の前記前後方向の中央に位置している、
請求項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記センサは、前記上下方向に並ぶ第3上主面および第3下主面を有する圧電フィルムを含んでいる、
請求項1または請求項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記圧電フィルムが左右方向に伸張されたときに前記圧電フィルムが発生する電荷の極性は、前記圧電フィルムが前後方向に伸張されたときに前記圧電フィルムが発生する電荷の極性と異なる、
請求項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記センサは、左右方向に延びる長手方向を有している、
請求項1または請求項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記センサは、歪センサを含んでいる、
請求項1または請求項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記第1接着部材は、前記上下方向に視て前記第1板状部材の周囲を囲む環形状を有している、
請求項1または請求項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部材およびセンサを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子機器に関する発明としては、例えば、特許文献1に記載の押圧センサが知られている。この押圧センサは、操作面、板状部材および圧電フィルムを備えている。利用者は、操作面に触れることにより押圧操作を行う。板状部材は、押圧操作により撓む。圧電フィルムは、板状部材に貼り付けられることにより、板状部材と共に撓む。これにより、圧電フィルムの出力により、押圧力が検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/083678号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の押圧センサにおいて、ユーザが操作面を押す力の大きさを精度良く検知したいという要望がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ユーザが板状部材を押す力の大きさを精度良く検知できる電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る電子機器は、
筐体と、
上下方向に並ぶ第1上主面および第1下主面を有する第1板状部材であって、ユーザの身体の一部または操作部材が前記第1上主面に接触し、かつ、前記筐体に固定されている、第1板状部材と、
前記第1板状部材の変形を検知するセンサと、
前記上下方向に視て前記第1板状部材を囲む領域の少なくとも一部に設けられており、かつ、前記第1下主面を前記筐体に固定している第1接着部材と、
を備えており、
前記第1接着部材の貯蔵弾性率は、1MPa以上20MPa以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電子機器によれば、ユーザが板状部材を押す力の大きさを精度良く検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、電子機器1の分解斜視図である。
図2図2は、電子機器1のA-Aにおける断面図である。
図3図3は、センサ6の底面図および断面図である。
図4図4は、比較例に係る電子機器の第1板状部材2の変形量の一例を示した図である。
図5図5は、比較例に係る電子機器の第1板状部材2の左右方向の伸縮量の一例および前後方向の伸縮量の一例を示した図である。
図6図6は、比較例に係る電子機器の第1板状部材2の変形量の一例を示した図である。
図7図7は、比較例に係る電子機器の第1板状部材2の左右方向の伸縮量の一例および前後方向の伸縮量の一例を示した図である。
図8図8は、第2接着部材5の貯蔵弾性率および第1接着部材7の貯蔵弾性率とNULL点の発生有無との関係を示したグラフである。
図9図9は、電子機器1の第1板状部材2の左右方向の変形量の一例を示した図である。
図10図10は、電子機器1の第1板状部材2の左右方向の伸縮量の一例および前後方向の伸縮量の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態]
以下に、本発明の一実施形態に係る電子機器1の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、電子機器1の分解斜視図である。図2は、電子機器1のA-Aにおける断面図である。図3は、センサ6の底面図および断面図である。
【0010】
また、本明細書において、方向を以下のように定義する。電子機器1において、第1板状部材2の第1上主面US1および第1下主面LS1が並ぶ方向を上下方向と定義する。また、上下方向に視て、電子機器1の第1板状部材2の長辺が延びる方向を前後方向と定義する。上下方向に視て、電子機器1の第1板状部材2の短辺が延びる方向を左右方向と定義する。上下方向、左右方向および前後方向は、互いに直交している。なお、本明細書における方向の定義は、一例である。したがって、電子機器1の実使用時における方向と本明細書における方向とが一致している必要はない。また、図1において上下方向が反転してもよい。図1において左右方向が反転してもよい。図1において前後方向が反転してもよい。
【0011】
電子機器1は、スマートフォンやタブレット型コンピュータ等の携帯型電子端末である。電子機器1は、図1および図2に示すように、第1板状部材2、筐体3、第2板状部材4、第2接着部材5、センサ6および第1接着部材7を備えている。
【0012】
第1板状部材2は、図1に示すように、上下方向に並ぶ第1上主面US1および第1下主面LS1を有している。第1板状部材2は、上下方向に視て、前後方向に延びる2本の長辺および左右方向に延びる2本の短辺を有する矩形状を有している。ユーザの身体の一部または操作部材が、第1板状部材2の第1上主面US1に接触する。本実施形態では、第1板状部材2は、透明板である。第1板状部材2の材料は、例えば、ガラスである。
【0013】
第2板状部材4は、図1に示すように、上下方向に並ぶ第2上主面US2および第2下主面LS2を有している。第2板状部材4は、上下方向に視て、前後方向に延びる2本の長辺および左右方向に延びる2本の短辺を有する矩形状を有している。第2板状部材4は、第1板状部材2の第1下主面LS1に固定されている。第2板状部材4は、後述する第2接着部材5により第1板状部材2に固定されている。第2板状部材4の全体は、上下方向に視て、第1板状部材2と重なっている。また、第2板状部材4は、上下方向に視て、第1板状部材2の外縁からはみ出していない。第2板状部材4は、例えば、有機ELディスプレイや、液晶ディスプレイである。なお、第2板状部材4は、ユーザが第1板状部材2に触れた位置を検知するためのタッチパネルを含んでいてもよい。ただし、タッチパネルは、第1板状部材2に含まれていてもよい。
【0014】
第2接着部材5は、第2板状部材4を第1板状部材2に固定している。より詳細には、第2接着部材5は、図2に示すように、第2板状部材4の第2上主面US2を第1板状部材2の第1下主面LS1に固定している。第2接着部材5の材料は、例えば、両面テープ、熱硬化接着剤、熱可塑性接着剤またはUV(Ultra Violet)硬化接着剤である。
【0015】
筐体3は、図1に示すように、第1板状部材2より下に位置している。筐体3は、箱である。筐体3は、上下方向に視て、矩形状を有している。筐体3の長辺は、前後方向に延びている。筐体3の短辺は、左右方向に延びている。上下方向に視た筐体3の外縁は、上下方向に視た第1板状部材2の外縁と一致する。ただし、筐体3の上面は、開口している。筐体3の開口Opは、上下方向に視て、矩形状を有している。
【0016】
第1接着部材7は、第1板状部材2を筐体3に固定している。より詳細には、第1接着部材7は、第1板状部材2の第1下主面LS1を筐体3に固定している。すなわち、第1板状部材2は、筐体3に固定されている。また、第1接着部材7は、上下方向に視て、第1板状部材2を囲む領域の少なくとも一部に設けられている。また、第1接着部材7は、上下方向に視て、第1板状部材2の2本の長辺の少なくともいずれかと重なっている。本実施形態では、第1接着部材7は、図1に示すように、上下方向に視て、第1板状部材2の外縁近傍に設けられている。すなわち、第1接着部材7は、図1に示すように、上下方向に視て、第1板状部材2を囲む矩形状の枠形状を有している。したがって、第1接着部材7は、上下方向に視て、第1板状部材2の周囲を囲む環形状を有している。また、第1接着部材7は、図1に示すように、上下方向に視て、第1板状部材2の2本の長辺のそれぞれおよび第1板状部材2の2本の短辺のそれぞれと重なっている。これにより、第1接着部材7は、筐体3の開口Opの周囲と第1板状部材2の外縁近傍とを固定している。以上のような第1接着部材7は、防水性を有している。また、第1接着部材7は、電子機器1が落下により床等に衝突した場合に、第1板状部材2に加わる衝撃を吸収し、第1板状部材2の破損を抑制する。
【0017】
センサ6は、第1板状部材2の変形を検知する。センサ6は、第1板状部材2の第1下主面LS1に固定されている。本明細書において、「センサ6は、第1板状部材2の第1下主面LS1に固定されている。」とは、センサ6が第1板状部材2の第1下主面LS1に直接に固定されていてもよいし、センサ6が第1板状部材2の第1下主面LS1に固定されている他の部材に固定されていてもよい。本実施形態では、センサ6は、図1に示すように、第2板状部材4の第2下主面LS2に固定されている。また、センサ6は、上下方向に視て、矩形状を有している。センサ6は、左右方向に延びる長手方向を有している。そして、センサ6は、上下方向に視て、第1板状部材2の前後方向および左右方向の中央に位置している。上記配置では、後述する圧電フィルム14が発生する電荷は、主に圧電フィルム14の左右方向の伸縮による。これにより、例えば、センサ6の短手方向の長さが10mm以下であり、かつ、センサ6の左右方向(長手方向)の長さと前後方向(短手方向)の長さとの比(アスペクト比)は、3以上10以下であってもよい。
【0018】
ユーザが第1板状部材2を押すことによって第1板状部材2が下方向に撓むと、第2板状部材4も下方向に撓む。そして、センサ6は、第2板状部材4と共に下方向に撓む。これにより、センサ6は、ユーザが第1板状部材2を押すことにより第1板状部材2に生じる変形に応じた検知信号を出力する。以下に、図3を参照しながら、センサ6の詳細について説明する。
【0019】
センサ6は、図3に示すように、圧電フィルム14、上電極15a、下電極15b、基材16および接着層18を含んでいる。圧電フィルム14は、シート形状を有している。したがって、圧電フィルム14は、図3に示すように、上下方向に並ぶ第3上主面US3および第3下主面LS3を有している。圧電フィルム14の左右方向の長さは、圧電フィルム14の前後方向の長さより長い。すなわち、圧電フィルム14は、左右方向に延びる長手方向を有している。本実施形態では、圧電フィルム14は、上下方向に視て、左右方向に延びる長辺を有する矩形状を有している。圧電フィルム14は、圧電フィルム14の変形量に応じた電荷を発生する。本実施形態では、圧電フィルム14は、PLAフィルムである。以下に、圧電フィルム14についてより詳細に説明する。
【0020】
圧電フィルム14は、圧電フィルム14が左右方向に伸張されたときに発生する電荷の極性が、圧電フィルム14が前後方向に伸張されたときに発生する電荷の極性と逆となる特性を有している。具体的には、圧電フィルム14は、キラル高分子から形成されるフィルムである。キラル高分子とは、例えば、ポリ乳酸(PLA)、特にL型ポリ乳酸(PLLA)である。キラル高分子からなるPLLAは、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸されて分子が配向する圧電性を有する。圧電フィルム14は、d14の圧電定数を有している。圧電フィルム14の一軸延伸方向(配向方向)は、前後方向および左右方向のそれぞれに対して45度の角度を形成している。この45度は、例えば、45度±10度程度を含む角度を含む。これにより、圧電フィルム14は、圧電フィルム14が左右方向に伸張されることまたは左右方向に圧縮されることにより、電荷を発生する。圧電フィルム14が左右方向に伸張されたときに圧電フィルム14が発生する電荷の極性は、圧電フィルム14が前後方向に伸張されたときに圧電フィルム14が発生する電荷の極性と異なる。圧電フィルム14は、例えば、左右方向に伸張されると正の電荷を発生する。圧電フィルム14は、例えば、前後方向に伸張されると負の電荷を発生する。電荷の大きさは、伸張または圧縮による圧電フィルム14の変形量に依存する。より正確には、電荷の大きさは、伸張または圧縮による圧電フィルム14の変形量の微分値に比例する。
【0021】
上電極15aは、信号電極である。上電極15aから検知信号が出力される。上電極15aは、図3に示すように、圧電フィルム14の第3上主面US3に設けられている。下電極15bは、グランド電極である。下電極15bは、グランドに接続される。下電極15bは、図3に示すように、圧電フィルム14の第3下主面LS3に設けられている。
【0022】
基材16は、図3に示すように、上電極15aの上に設けられている。基材16は、圧電フィルム14、上電極15aおよび下電極15bを保持することにより、圧電フィルム14と共に変形する。基材16は、シート形状を有している。基材16は、上主面および下主面を有している。基材16の左右方向の長さは、基材16の前後方向の長さより長い。本実施形態では、基材16は、上下方向に見て、左右方向に延びる長辺を有する矩形状を有している。基材16の長辺は、圧電フィルム14の長辺、上電極15aの長辺および下電極15bの長辺より長い。基材16の短辺は、圧電フィルム14の短辺、上電極15aの短辺および下電極15bの短辺より長い。圧電フィルム14、上電極15aおよび下電極15bは、上下方向に見て、基材16の外縁に囲まれた領域内に配置されている。基材16の材料は、例えば、ポリウレタン、PETである。なお、基材16は、フレキシブル基板またはプリント配線板で形成してもよい。基材16をフレキシブル基板またはプリント配線板で形成する場合、上電極15aをフレキシブル基板内またはプリント配線板内に形成し、圧電フィルム14を後述する接着層18により基材16に固定してもよい。
【0023】
接着層18は、圧電フィルム14、上電極15aおよび下電極15bを基材16に固定する。より詳細には、接着層18は、図3に示すように、基材16の下主面に設けられている。接着層18は、基材16の下主面の一部分を覆っている。また、接着層18は、図3に示すように、上電極15aの上主面の全体を覆っている。接着層18の外縁は、上下方向に見て、基材16の外縁に囲まれている。接着層18は、上電極15aと基材16とを接着している。その結果、基材16の変形は、圧電フィルム14に伝達される。接着層18の材料は、例えば、両面テープ、熱硬化接着剤、熱可塑性接着剤である。
【0024】
接着層20は、基材16の上主面に設けられている。接着層20は、基材16を第2板状部材4の第2下主面LS2に固定している。接着層20の材料は、例えば、両面テープ、熱硬化接着剤、熱可塑性接着剤である。
【0025】
ところで、電子機器1は、ユーザが第1板状部材2を押す力の大きさを精度良く検知できる構造を有している。以下にこの構造について説明する。図4は、比較例に係る電子機器の第1板状部材2の変形量の一例を示した図である。図5は、比較例に係る電子機器の第1板状部材2の左右方向の伸縮量の一例および前後方向の伸縮量の一例を示した図である。なお、図4および図5では、ユーザは、位置P0を下方向に押した。図6は、比較例に係る電子機器の第1板状部材2の変形量の一例を示した図である。図7は、比較例に係る電子機器の第1板状部材2の左右方向の伸縮量の一例および前後方向の伸縮量の一例を示した図である。なお、図6および図7では、ユーザは、位置P1を下方向に押した。なお、図4乃至図7は、コンピュータシミュレーションの結果である。
【0026】
まず、比較例に係る電子機器と電子機器1とについて説明する。以下では、Xは、電子機器1の部品または部材である。本明細書において、部材Xの貯蔵弾性率を以下のように定義する。部材Xの貯蔵弾性率とは、部材Xを30μm圧縮したときの部材Xの貯蔵弾性率を意味する。
【0027】
比較例に係る電子機器では、第1接着部材7の貯蔵弾性率は、0.1MPaである。一方、電子機器1では、第1接着部材7の貯蔵弾性率は、1MPa以上100/3MPa以下である。
【0028】
次に、比較例に係る電子機器の問題点について説明する。比較例に係る電子機器では、ユーザが第1板状部材2を押す力の大きさを精度良く検知することが難しい。ユーザがセンサ6の真上(図1の位置P0)を下方向に押すと、第1板状部材2の位置P0が下方向に変形する。このとき、第1板状部材2は、図4に示すように、位置P0を中心とする椀形状に変形する。より詳細には、第1板状部材2は、図5に示すように、左右方向および前後方向に伸張する。第1板状部材2は、図5に示すように、左右方向に延びている。また、第1板状部材2は、図5に示すように、前後方向に延びている。第1板状部材2の左右方向の伸張量は、図5に示すように、第1板状部材2の前後方向の伸張量よりも大きくなる。上記の伸張作用により、圧電フィルム14も第1板状部材2と同様に伸張する。これにより、ユーザがセンサ6の真上(図1の位置P0)を下方向に押したときの圧電フィルム14の左右方向の伸張量は、ユーザがセンサ6の真上(図1の位置P0)を下方向に押したときの圧電フィルム14の前後方向の伸張量よりも大きい。
【0029】
一方、ユーザが第1板状部材2の左長辺(図1の位置P1)を下方向に押すと、第1板状部材2の位置P1が下方向に変形する。このとき、第1板状部材2は、図6に示すように、位置P1を中心に変形する。より詳細には、第1板状部材2は、図7に示すように、前後方向に伸張する。一方、第1板状部材2は、左右方向にはほとんど伸張しない。上記の伸張作用により、圧電フィルム14も第1板状部材2と同様に伸長する。ユーザが第1板状部材2の左長辺(図1の位置P1)を下方向に押したときの圧電フィルム14の左右方向の伸張量は、ユーザがセンサ6の真上(図1の位置P1)を下方向に押したときの圧電フィルム14の前後方向の伸張量よりも小さい。
【0030】
圧電フィルム14が左右方向に伸張されることにより発生する電荷と圧電フィルム14が前後方向に伸張されることにより発生する電荷との差が、上電極15aから出力される検知信号となる。そのため、ユーザがセンサ6の真上(図1の位置P0)を下方向に押すと、検知信号は、正である。一方、ユーザが第1板状部材2の左長辺(図1の位置P1)を下方向に押すと、検知信号は、負となる。
【0031】
圧電フィルム14が左右方向に伸張されることにより発生する電荷と圧電フィルム14が前後方向に伸張されることにより発生する電荷とが等しくなる点(図1の位置P2)が、上下方向に視た位置P0と位置P1との間の位置に存在する。ユーザが位置P2を下方向に押すと、検知信号がゼロとなる。本明細書において、NULL点とは、圧電フィルム14が左右方向に伸張されることにより発生する電荷と圧電フィルム14が前後方向に伸張されることにより発生する電荷とが等しくなることにより、検知信号がゼロとなる点(図1の位置P2)を意味する。
【0032】
以上より、比較例に係る電子機器では、検知信号がゼロとなるNULL点が発生する。よって、比較例に係る電子機器では、ユーザが第1板状部材2を押す力の大きさを精度良く検知することが難しい。
【0033】
そこで、本願発明者は、検討の結果、第1接着部材7の貯蔵弾性率を高くすると、ユーザが第1板状部材2の左長辺(図1の位置P1)を押したときに、上下方向に視た圧電フィルム14の変形の中心が位置P1から右にずれることを発見した。この検討結果を確認するために、本願発明者は、以下に示すコンピュータシミュレーションを行った。
【0034】
本願発明者は、第2接着部材5の貯蔵弾性率および第1接着部材7の貯蔵弾性率を変化させたときのNULL点の発生有無を計算した。図8は、第2接着部材5の貯蔵弾性率および第1接着部材7の貯蔵弾性率とNULL点の発生有無との関係を示したグラフである。横軸は、第2接着部材5の貯蔵弾性率を示す。縦軸は、第1接着部材7の貯蔵弾性率を示す。図9は、電子機器1の第1板状部材2の左右方向の変形量の一例を示した図である。図10は、電子機器1の第1板状部材2の左右方向の伸縮量の一例および前後方向の伸縮量の一例を示した図である。なお、図9および図10では、ユーザは、位置P1を下方向に押した。また、図9および図10では、第1接着部材7の貯蔵弾性率は、1MPaである。
【0035】
線Lは、図8に示すように、NULL点の発生有無の境界線である。したがって、図8によれば、第2接着部材5の貯蔵弾性率および第1接着部材7の貯蔵弾性率が線Lよりも上にあると、NULL点は、発生しない。一方、第2接着部材5の貯蔵弾性率および第1接着部材7の貯蔵弾性率が線Lよりも下にあると、NULL点は、発生する。したがって、第1接着部材7の貯蔵弾性率は、図8に示すように、第2接着部材5の貯蔵弾性率よりも高ければよい。また、第1接着部材7の貯蔵弾性率を1MPa以上20MPa以下とすれば、NULL点を発生しなくすることができることが分かる。
【0036】
先述のように、第1接着部材7は、防水性および衝撃吸収の機能を有している。これらの機能を優先する場合、第1接着部材7の貯蔵弾性率は、低い方がよい。具体的には、第1接着部材7の貯蔵弾性率は、5MPa以下であることが望ましい。図8に示すように、第2接着部材5の貯蔵弾性率が0Paよりも大きく、かつ、0.3MPa以下であれば、NULL点を発生しなくするための第1接着部材7の貯蔵弾性率の要件を約1MPaまで緩和することができる。従って、第2接着部材5の貯蔵弾性率は、0Paよりも高く、かつ、0.3MPa以下であることが望ましい。これにより、第1接着部材7の貯蔵弾性率を5MPa以下にすることができ、第1接着部材7の防水性および衝撃吸収機能を確保することができる。
【0037】
NULL点が発生しない場合の一例として、第1接着部材7の貯蔵弾性率が1MPaである場合について説明する。
【0038】
ユーザが第1板状部材2の左長辺(図1の位置P1)を下方向に押すと、上下方向に視た第1板状部材2の変形の中心は、図9に示すように、位置P1から右にずれる。より詳細には、第1板状部材2は、図7に示すように、左右方向に伸張する。上記の伸張作用により圧電フィルム14も第1板状部材2と同様に伸張する。
【0039】
一方、第1板状部材2は、図10に示すように、前後方向に伸縮する。上記の伸張作用により圧電フィルム14も第1板状部材2と同様に伸張する。ユーザが第1板状部材2の左長辺(図1の位置P1)を下方向に押したときの圧電フィルム14の左右方向の伸張量は、ユーザがセンサ6の真上(図1の位置P1)を下方向に押したときの圧電フィルム14の前後方向の伸張量よりも大きくなっていることが分かる。
【0040】
電子機器1では、ユーザが第1板状部材2の左長辺(図1の位置P1)を下方向に押しても、検知信号は、正である。したがって、電子機器1によれば、左長辺近傍にNULL点を発生しなくすることができる。これにより、圧電フィルム14は、第1板状部材2に生じる変形に応じた検知信号を出力することができる。したがって、センサ6が出力した検知信号に基づいて、ユーザが第1板状部材2を押す力の大きさを算出することができる。その結果、電子機器1によれば、ユーザが第1板状部材2を押す力の大きさを精度良く検知することができる。
【0041】
[その他の実施形態]
本発明に係る電子機器1は、電子機器1に限らず、その要旨の範囲において変更可能である。
【0042】
なお、電子機器1において、圧電フィルム14は、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルムであってもよい。また、圧電フィルム14は、圧電セラミックであってもよい。
【0043】
センサ6は、歪センサを含んでいてもよい。より詳細には、圧電フィルム14の左右方向の伸張量は、図7および図10に示すように、比較例に係る電子機器における圧電フィルム14の左右方向の伸張量よりも大きくなるため、センサ6が歪センサを含んでいる場合においても、電子機器1と同じ効果を奏する。
【0044】
圧電フィルム14が左右方向に伸張されたときに圧電フィルム14が発生する電荷の極性は、圧電フィルム14が前後方向に伸張されたときに圧電フィルム14が発生する電荷の極性と同じであってもよい。より詳細には、圧電フィルム14の左右方向の伸張量は、図7および図10に示すように、比較例に係る電子機器における圧電フィルム14の左右方向の伸張量よりも大きくなるため、この場合においても電子機器1と同じ効果を奏する。
【0045】
なお、第1接着部材7は、防水性を有していなくてもよい。
【0046】
なお、前後方向に延びる2本の辺が短辺であり、左右方向に延びる2本の辺が長辺であってもよい。
【0047】
なお、センサ6は、上下方向に見て、第1板状部材2の前後方向の中央以外の位置に設けられていてもよい。
【0048】
なお、第1板状部材2は、透明板でなくてもよい。第1板状部材2は、例えば、樹脂板またはプリント配線板であってもよい。また、第1板状部材2は、タッチパネルの代わりにタッチパッドを含んでいてもよい。この場合、第2板状部材4および第2接着部材5は、不要である。
【0049】
なお、センサ6は、左右方向に延びる長手方向を有していなくてもよい。センサ6は、前後方向に延びる長手方向を有していてもよい。
【0050】
なお、第2板状部材4は、タッチパネルを含んでいなくてもよい。
【0051】
なお、第1板状部材2は、矩形状を有していなくてもよい。
【0052】
なお、第2板状部材4は、矩形状を有していなくてもよい。
【0053】
なお、第1接着部材7は、上下方向に視て、第1板状部材2を囲む環形状を有していなくてもよい。
【0054】
なお、第1接着部材7は、上下方向に視て、2本の短辺の少なくともいずれかと重なっていてもよい。
【0055】
なお、電子機器1は、ユーザが押した位置を検知するタッチセンサを更に備えていてもよい。この場合、センサ6が出力した検知信号およびタッチセンサが検知した位置に基づいて、ユーザが第1板状部材2を押す力の大きさを算出することができる。その結果、電子機器1によれば、ユーザが第1板状部材2を押す力の大きさを更に精度良く検知することができる。
【0056】
なお、基材16の長辺の長さは、圧電フィルム14の長辺、上電極15aの長辺および下電極15bの長辺の長さと同じであってもよい。
【0057】
なお、基材16の短辺の長さは、圧電フィルム14の短辺、上電極15aの短辺および下電極15bの短辺の長さと同じであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1:電子機器
2:第1板状部材
3:筐体
4:第2板状部材
5:第2接着部材
6:センサ
7:第1接着部材
14:圧電フィルム
15a:上電極
15b:下電極
16:基材
18,20:接着層
LS1:第1下主面
LS2:第2下主面
LS3:第3下主面
Op:開口
US1:第1上主面
US2:第2上主面
US3:第3上主面
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10