IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-高周波拡散シート 図1
  • 特許-高周波拡散シート 図2
  • 特許-高周波拡散シート 図3
  • 特許-高周波拡散シート 図4
  • 特許-高周波拡散シート 図5
  • 特許-高周波拡散シート 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】高周波拡散シート
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240925BHJP
   H01Q 15/23 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H05K9/00 Q
H05K9/00 M
H01Q15/23
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023580912
(86)(22)【出願日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2023034590
(87)【国際公開番号】W WO2024070982
(87)【国際公開日】2024-04-04
【審査請求日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2022153140
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊明
(72)【発明者】
【氏名】八月朔日 猛
(72)【発明者】
【氏名】沼山 瑞樹
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第211378661(CN,U)
【文献】特開2021-166287(JP,A)
【文献】特表2022-535247(JP,A)
【文献】実開昭52-057547(JP,U)
【文献】特開2010-080825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01Q 15/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波領域の電磁波を拡散させるために用いられ、樹脂シートと、前記樹脂シートに積層され、電磁波遮蔽性を有する電磁波遮蔽層と、前記樹脂シートの前記電磁波遮蔽層と反対側に積層され、電磁波反射性を有する電磁波反射層とを有する積層体で構成され、
前記電磁波遮蔽層は、前記積層体の平面視においてパターニングされており、前記電磁波遮蔽層の厚さ方向に貫通する開口部を有することを特徴とする高周波拡散シート。
【請求項2】
前記電磁波遮蔽層は、前記電磁波を反射または吸収させることで前記電磁波を遮蔽する請求項1に記載の高周波拡散シート。
【請求項3】
前記電磁波遮蔽層および前記電磁波反射層は、ともに、金属薄膜層、または、金属粉とバインダー樹脂とを含んで構成される金属粉含有接着剤層である請求項2に記載の高周波拡散シート。
【請求項4】
当該高周波拡散シートは、前記電磁波反射層により反射された前記電磁波が前記電磁波遮蔽層を通過する際に、前記開口部により、前記電磁波が回折されることで、拡散するよう構成されている請求項1に記載の高周波拡散シート。
【請求項5】
前記開口部の平均幅をW[mm]、前記電磁波の波長をλ[mm]としたとき、W/λは、1.0以下である請求項1に記載の高周波拡散シート。
【請求項6】
前記電磁波遮蔽層は、その平均厚さT1が0.05μm以上70.0μm以下である請求項1に記載の高周波拡散シート。
【請求項7】
前記電磁波反射層は、その平均厚さT2が0.05μm以上70.0μm以下である請求項1に記載の高周波拡散シート。
【請求項8】
前記電磁波の周波数は、1GHz以上80GHz以下である請求項1に記載の高周波拡散シート。
【請求項9】
当該高周波拡散シートは、建築物の内部および外部のうちの少なくとも一方に、貼付して使用される請求項1に記載の高周波拡散シート。
【請求項10】
前記電磁波反射層は、前記電磁波反射層の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有しており、
前記電磁波反射層の開口率が80%~95%である請求項1に記載の高周波拡散シート。
【請求項11】
前記貫通孔の幅は、前記電磁波の波長をλ[mm]とした時、λ/10[mm]以下である請求項10に記載の高周波拡散シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波拡散シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、スマートフォン、タブレット、モバイルパソコン等の通信機器の高速化、高容量化に伴い、これら通信機器で受信する電磁波(電磁信号)として、1GHz以上80GHz以下のような高周波領域の電磁波を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような高周波領域の電磁波は、低周波領域の電磁波と比較すると、直進性(指向性)が高い。そのため、通信機器により電磁波を受信する機会も、低周波領域の電磁波に対して、低くなる。
【0004】
したがって、建築物内において通信機器により電磁波を受信する場合、直進性が高い電磁波が、その透過が許容される窓部等の透過領域を透過する前には、建築物の壁部等に衝突して吸収されることなく、反射されつつ拡散すなわち回折されて、前記通過領域を通過する機会を、再び得ることが望まれる。さらに、直進性が高い電磁波を、前記透過領域を透過させ、建物内に導入し得た後には、建築物内において通信機器により電磁波を受信する機会を増大させることを目的に、建物内の壁部やカーテン等において、電磁波を反射させつつ、拡散すなわち回折させ得ることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-190920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高周波領域の電磁波を、反射させつつ、拡散させることで、建築物内において、高周波領域の電磁波を、通信機器により受信する機会の増大を図ることができる高周波拡散シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)~(11)に記載の本発明により達成される。
(1) 高周波領域の電磁波を拡散させるために用いられ、樹脂シートと、前記樹脂シートに積層され、電磁波遮蔽性を有する電磁波遮蔽層と、前記樹脂シートの前記電磁波遮蔽層と反対側に積層され、電磁波反射性を有する電磁波反射層とを有する積層体で構成され、
前記電磁波遮蔽層は、前記積層体の平面視においてパターニングされており、前記電磁波遮蔽層の厚さ方向に貫通する開口部を有することを特徴とする高周波拡散シート。
【0008】
(2) 前記電磁波遮蔽層は、前記電磁波を反射または吸収させることで前記電磁波を遮蔽する上記(1)に記載の高周波拡散シート。
【0009】
(3) 前記電磁波遮蔽層および前記電磁波反射層は、ともに、金属薄膜層、または、金属粉とバインダー樹脂とを含んで構成される金属粉含有接着剤層である上記(2)に記載の高周波拡散シート。
【0011】
) 当該高周波拡散シートは、前記電磁波反射層により反射された前記電磁波が前記電磁波遮蔽層を通過する際に、前記開口部により、前記電磁波が回折されることで、拡散するよう構成されている上記(1)ないし()のいずれかに記載の高周波拡散シート。
【0012】
) 前記開口部の平均幅をW[mm]、前記電磁波の波長をλ[mm]としたとき、W/λは、1.0以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の高周波拡散シート。
【0013】
) 前記電磁波遮蔽層は、その平均厚さT1が0.05μm以上70.0μm以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の高周波拡散シート。
【0014】
) 前記電磁波反射層は、その平均厚さT2が0.05μm以上70.0μm以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の高周波拡散シート。
【0015】
) 前記電磁波の周波数は、1GHz以上80GHz以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載の高周波拡散シート。
【0016】
) 当該高周波拡散シートは、建築物の内部および外部のうちの少なくとも一方に、貼付して使用される上記(1)ないし()のいずれかに記載の高周波拡散シート。
【0017】
10) 前記電磁波反射層は、前記電磁波反射層の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有しており、
前記電磁波反射層の開口率が80%~95%である上記(1)ないし()のいずれかに記載の高周波拡散シート。
【0018】
11) 前記貫通孔の幅は、前記電磁波の波長をλ[mm]とした時、λ/10[mm]以下である上記(10)に記載の高周波拡散シート。
【発明の効果】
【0019】
本発明の高周波拡散シートによれば、高周波領域の電磁波が反射する際に、高周波拡散シートが有する電磁波遮蔽層が備える開口部において、電磁波を回折させることで確実に拡散させることができる。
【0020】
そのため、建築物(建屋)内において通信機器により電磁波を受信する場合、高周波領域の電磁波が、建築物が備える窓部のような電磁波の透過が許容される透過領域を透過する前には、建築物の壁部等に本発明の高周波拡散シートを貼付する。これにより、この壁部等に電磁波が衝突して吸収されることなく、反射されつつ拡散すなわち回折されることから、前記通過領域を電磁波が通過する機会を、再び得ることができる。
【0021】
さらに、高周波領域の電磁波が、前記透過領域を透過し、建物内に導入された後には、建物内の壁部やカーテン等に本発明の高周波拡散シートを貼付する。これにより、これら壁部やカーテン等において、電磁波を反射させつつ、拡散すなわち回折させることができる。
【0022】
したがって、建築物内の広範囲において、通信機器により電磁波を良好に受信することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の高周波拡散シートの第1実施形態を示す平面図である。
図2図2は、図1中に示すA-A線断面図である。
図3図3は、図1の高周波拡散シートが備える電磁波遮蔽層における開口部の他の構成を示す平面図である。
図4図4は、本発明の高周波拡散シートの第2実施形態を示す平面図である。
図5図5は、本発明の高周波拡散シートの第3実施形態を示す縦断面図である。
図6図6は、電磁波の回折の評価に用いる検査標体を示す図(図6(a)は平面図、図6(b)は図6(a)のB-B線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の高周波拡散シートについて、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
<高周波拡散シート 第1実施形態>
図1は、本発明の高周波拡散シートの第1実施形態を示す平面図、図2は、図1中に示すA-A線断面図、図3は、図1の高周波拡散シートが備える電磁波遮蔽層における開口部の他の構成を示す平面図である。なお、以下の説明では、図1図3中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図1図3中の上下方向、図2中の紙面手前奥方向をY方向、左右方向をX方向と言う。さらに、本明細書で参照する各図面では、それぞれ、左右方向および/または厚さ方向の寸法を誇張して図示しており、実際の寸法とは大きく異なる。
【0026】
本発明の高周波拡散シート10は、高周波領域の電磁波を拡散させるために用いられ、電磁波遮蔽性を有する電磁波遮蔽層11と、この電磁波遮蔽層11に積層され、電磁波反射性を有する電磁波反射層13とを備える積層体で構成される。電磁波遮蔽層11は、高周波拡散シート10(積層体)の平面視においてパターニングされており、電磁波遮蔽層11の厚さ方向に貫通する開口部15を有している。
【0027】
高周波拡散シート10をかかる構成とすること、すなわち、電磁波遮蔽性を有する電磁波遮蔽層11と、この電磁波遮蔽層11に積層された、電磁波反射性を有する電磁波反射層13とを備え、さらに、電磁波遮蔽層11を、厚さ方向に貫通する開口部15を有するものとする。これにより、高周波拡散シート10を、高周波領域の電磁波が電磁波反射層13において反射する際に、この電磁波を開口部15において確実に回折させて、拡散させることできる。そのため、建築物(建屋)内において通信機器により電磁波を受信する場合、高周波領域の電磁波が、建築物が備える窓部のような電磁波の透過が許容される透過領域を透過する前には、建築物の壁部等に高周波拡散シート10を貼付する。これにより、この壁部等に電磁波が衝突して吸収されることなく、電磁波を、電磁波反射層13において反射させつつ、電磁波遮蔽層11が備える開口部15において拡散すなわち回折させることができる。その結果、前記通過領域を電磁波が通過する機会を、再び得ることができる。
【0028】
さらに、高周波領域の電磁波が、前記透過領域を透過し、建物内に導入された後には、建物内の壁部やカーテン等に高周波拡散シート10を貼付する。これにより、これら壁部やカーテン等に電磁波が衝突して吸収されることなく、電磁波反射層13において反射させつつ、電磁波遮蔽層11が備える開口部15において拡散すなわち回折させることができる。
【0029】
したがって、建築物内の広範囲において、通信機器により電磁波を良好に受信することができるようになる。
【0030】
なお、高周波拡散シート10を、前記の通り、前記透過領域を透過する前には、建築物の壁部に対して、貼付する場合の他、建築物の屋根部、ドア部等に貼付してもよい。また、前記透過領域を透過した後には、建築物内の壁部やカーテンに対して、貼付する場合の他、建築物のドア部、ブラインド、机、棚、電気器具等に貼付しても、窓部を電磁波が反射する際に、この高周波拡散シート10により、電磁波を拡散させることができる。
【0031】
以下、開口部15を有する電磁波遮蔽層11と、電磁波反射層13とを備える高周波拡散シート10について、説明する。
【0032】
高周波拡散シート10は、本実施形態では、図1図2に示すように、電磁波遮蔽性を有する電磁波遮蔽層11と、電磁波反射性を有する電磁波反射層13と、これら電磁波遮蔽層11および電磁波反射層13を支持する樹脂シート12とを有しており、これらが下側から、電磁波反射層13と樹脂シート12と電磁波遮蔽層11との順で積層されている。
【0033】
<<樹脂シート>>
樹脂シート12(樹脂フィルム)は、本実施形態では、その上側で電磁波遮蔽層11に接合して設けられ、その下側で電磁波反射層13に接合して設けられる。樹脂シート12は、電磁波遮蔽層11および電磁波反射層13を支持し、高周波拡散シート10としての形状の安定性を維持するために高周波拡散シート10が備える樹脂シートであり、透明性を有していることが好ましい。
【0034】
この樹脂シート12としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートのようなポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマーのようなオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートのようなアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂等を主材料として構成される樹脂が挙げられ、これらの樹脂は透明性を有することから好ましく用いられる。
【0035】
また、樹脂シート12の平均厚さは、特に限定されないが、0.01mm以上100.0mm以下であることが好ましく、0.10mm以上50.0mm以下であることがより好ましい。樹脂シート12の平均厚さをかかる範囲内に設定することで、樹脂シート12により、電磁波遮蔽層11を確実に支持することができる。
【0036】
<<電磁波反射層>>
電磁波反射層13は、全体形状が開口部等を有しない層状をなして、樹脂シート12の下側に積層されており、その全領域において、電磁波を反射することを優位に遮蔽(遮断)する電磁波反射性を備える機能を有している。
【0037】
電磁波反射層13は、電磁波反射層13に入射した電磁波を、反射させることを優位に遮蔽する。これにより、高周波拡散シート10の上側から、高周波拡散シート10に入射した電磁波を、高周波拡散シート10の下側に透過するのを的確に抑制または防止しつつ、高周波拡散シート10の上側に対して優位に反射させることができる。
【0038】
この電磁波反射層13としては、例えば、金属粉含有接着剤層、金属薄膜層、金属メッシュ、ITOなどの導電性材料の表面処理等が挙げられ、後述する電磁波遮蔽層11が反射層で構成される場合と、同様の構成とすることができる。
【0039】
電磁波反射層13の平均厚さT2は、特に限定されないが、0.05μm以上、70.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上、40.0μm以下であることがより好ましい。電磁波反射層13の平均厚さT2をかかる範囲内に設定することで、高周波拡散シート10に、その上側から入射した電磁波を、高周波拡散シート10の下側に透過するのをより的確に抑制または防止しつつ、高周波拡散シート10の上側に対してより優位に反射させることができる。
【0040】
<<電磁波遮蔽層>>
電磁波遮蔽層11は、その厚さ方向に貫通する開口部15を有し、全体形状が層状をなして、樹脂シート12の上側に積層されている。また、電磁波遮蔽層11は、開口部15が形成されていない領域において、電磁波の透過を抑制または遮蔽する電磁波遮蔽性を有し、開口部15が形成されている領域において、電磁波の透過を許容する機能を有している。
【0041】
この電磁波遮蔽層11は、特に限定されず、如何なる形態で、開口部15が形成されていない領域で電磁波を遮蔽してもよく、例えば、電磁波遮蔽層11に入射した電磁波を、反射させることを優位に遮蔽(遮断)する反射層と、電磁波遮蔽層11に入射した電磁波を、吸収することを優位に遮蔽(遮断)する吸収層とが挙げられる。これらの中でも、電磁波遮蔽層11は、反射層であることが好ましい。これにより、電磁波遮蔽層11に入射した電磁波を、反射させることを優位に、電磁波を遮蔽できるため、開口部15を介して、電磁波反射層13に到達するまで透過する、電磁波の透過率の向上を図ることができる。
【0042】
なお、電磁波遮蔽層11は、上記の通り、入射した電磁波を、反射させること、または、吸収することのいずれによって電磁波を遮蔽してもよいが、本明細書においては、反射および吸収のうち反射することを優位に、電磁波を遮蔽する層を反射層と言い、吸収することを優位に、電磁波を遮蔽する層を吸収層と言うこととする。
【0043】
以下、反射層および吸収層について、それぞれ、説明する。
反射層は、反射層に入射した電磁波を、反射させることを優位に遮蔽する。
【0044】
この反射層としては、例えば、金属粉含有接着剤層、金属薄膜層、金属メッシュ、ITOなどの導電性材料の表面処理等が挙げられる。これらを単独あるいは併用してもよい。これらの中でも、金属粉含有接着剤層および金属薄膜層を用いることが好ましい。金属粉含有接着剤層および金属薄膜層は、その膜厚(厚み)を比較的薄く設定したとしても、優れた電磁波遮蔽性を発揮するため、反射層として好ましく用いられる。
【0045】
金属粉含有接着剤層としては、金属粉とバインダー樹脂とを含んで構成され、金属粉は、例えば、金、銀、銅または銀コート銅、ニッケル等が挙げられる。これらの中でも、電磁波遮蔽性に優れているという理由から、銀を用いることが好ましい。
【0046】
金属粉含有接着剤層における金属粉とバインダー樹脂との含有比率は、特に制限されないが、重量比で40:60~95:5であることが好ましく、50:50~90:10であることがより好ましい。
【0047】
金属粉含有接着剤層は、前記金属粉とバインダー樹脂との他に、さらに難燃剤、レベリング剤、粘度調整剤等を含有しても良い。
【0048】
金属薄膜層としては、金属粉含有接着剤層に含まれる金属粉で挙げた金属を主材料として構成される蒸着膜、金属箔等が挙げられる。
【0049】
吸収層は、吸収層に入射した電磁波を、吸収し、熱エネルギーに変換することを優位に遮蔽する。
【0050】
この吸収層としては、例えば、金属粉および導電性高分子材料等の導電吸収材料を主材料として構成される導電吸収層、炭素系材料および導電性高分子材料等の誘電吸収材料を主材料として構成される誘電吸収層、軟磁性金属等の磁性吸収材料を主材料として構成される磁性吸収層等が挙げられ、これらを単独あるいは併用してもよく、これら主材料とバインダー樹脂とを含んで構成される層が好ましく用いられる。
【0051】
なお、導電吸収層は、電界を印加した際に材料内部に流れる電流により、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換することで、電磁波を吸収する。また、誘電吸収層は、電磁波を誘電損失により熱エネルギーに変換することで、電磁波を吸収する。また、磁性吸収層は、過電流損、ヒステレス損、磁気共鳴等の磁性損失により、電波のエネルギーを熱に変換して消費することで、電磁波を吸収する。
【0052】
また、導電吸収材料としては、例えば、導電性高分子、ATO等の金属酸化物、導電性セラミックスが挙げられる。
【0053】
さらに、導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly-ethylenedioxythiophene)、PEDOT/PSS、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p-フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
誘電吸収材料としては、炭素系材料、導電性高分子、セラミック材料等が挙げられる。
また、炭素系材料としては、例えば、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブのようなカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、CNナノチューブ、CNナノファイバー、BCNナノチューブ、BCNナノファイバー、グラフェンや、カーボンマイクロコイル、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノウォールのような炭素等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
セラミック材料としては、チタン酸バリウム、ペロブスカイト型チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム結晶粒子、チタニア、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素および窒化アルミニウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
さらに、磁性吸収材料としては、例えば、鉄、ケイ素鋼、磁性ステンレス(Fe-Cr-Al-Si合金)、センダスト(Fe-Si-Al合金)、パーマロイ(Fe-Ni合金)、ケイ素銅(Fe-Cu-Si合金)、Fe-Si合金、Fe-Si-B(-Cu-Nb)合金のような軟磁性金属、フェライト等が挙げられる。
【0057】
また、吸収層および吸収層にバインダー樹脂が含まれる場合、このバインダー樹脂としては、各種樹脂材料を用いることができ、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性エラストマー等の熱硬化性樹脂、オレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマーのような熱可塑性エラストマー等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
反射層および吸収層の平均厚さ、すなわち、電磁波遮蔽層11の平均厚さT1は、特に限定されないが、0.05μm以上、70.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上、40.0μm以下であることがより好ましい。電磁波遮蔽層11の平均厚さT1をかかる範囲内に設定することで、開口部15が形成されていない領域において、確実に電磁波の透過を抑制または遮蔽することができる。そのため、開口部15において、この開口部15を透過する電磁波を確実に回折させることができる。
【0059】
開口部15は、図1図2に示すように、電磁波遮蔽層11の厚さ方向に貫通して設けられた貫通孔である。
【0060】
このような開口部15を設けることで、例えば、高周波領域(周波数:1GHz以上80GHz以下程度)の電磁波(平面波WA)が、高周波拡散シート10の上側から、電磁波遮蔽層11に入射されたとすると、この開口部15を介して、電磁波反射層13で電磁波が反射される。そして、この反射された電磁波が電磁波遮蔽層11を上側に向かって透過する際に、この開口部15において、電磁波が回折することで、高周波拡散シート10の上側に拡散する。したがって、建築物(建屋)内において通信機器により電磁波を受信する場合、高周波領域の電磁波が、建築物が備える窓部のような電磁波の透過が許容される透過領域を透過する前には、建築物の壁部等に高周波拡散シート10を貼付する。これにより、この壁部等に電磁波が衝突して吸収されることなく、高周波拡散シート10により電磁波を拡散させることができるため、前記通過領域を電磁波が通過する機会を、再び得ることができる。さらに、高周波領域の電磁波が、前記透過領域を透過し、建物内に導入された後には、建物内の壁部やカーテン等に高周波拡散シート10を貼付する。これにより、高周波拡散シート10により電磁波を拡散させることができる(図2参照)。そのため、建築物内の広範囲において、通信機器により高周波領域の電磁波を良好に受信することができるようになる。
【0061】
開口部15は、その幅W(平均幅)が開口部15を透過させる電磁波の波長以下に設定されていることが好ましい。すなわち、開口部15の幅Wは、電磁波の波長をλ[mm]としたとき、W/λは1.0以下であるのが好ましい。これにより、電磁波が電磁波遮蔽層11を透過する際に、開口部15により、より確実に電磁波が回折されることで、電磁波を拡散させることができる。
【0062】
かかる構成の開口部15は、図1に示すように、本実施形態では、電磁波遮蔽層11において、その数には限定されないが、本実施形態では、X方向(開口部15の短手方向)に沿って等間隔を空けて9列配置され、Y方向(開口部15の長手方向)に沿って等間隔を空けて3列配置され、合計27個(複数)形成されている。
【0063】
なお、X方向に隣接する開口部15同士の離間距離Lは、互いに同じ大きさとなっている。また、各開口部15は、本実施形態では、それぞれ、Y方向(開口部15の長手方向)に沿って直線状に延びる長尺状すなわち長方形状をなし、長さが互いに同じであり、幅Wも互いに同じである。
【0064】
各開口部15をそれぞれこのような配置、形状とすることにより、各開口部15により、電磁波遮蔽層11において、高周波領域の電磁波を、均一に回折させることができる。
【0065】
なお、開口部15は、その形状が、それぞれ、平面視において、長方形状、すなわち直線状であるが、幅Wが電磁波の波長よりも小さく設定されていれば、これに限定されず、開口部15のその他の形状としては、例えば、図3に示すような円形状をなす場合が挙げられる他、S字状、U字状、半円形状、波状のような曲線部を有する形状、V字状、X字状、L字状、H字状、T字状、W字状、コ字状のような角部を有する形状が挙げられる。また、開口部15の形状が、平面視において、図3に示すような円形状をなす場合、円の直径Dが、開口部15の形状が長方形状なす場合の幅Wに該当する。さらに、隣接する円との最短距離を、開口部15の形状が長方形状なす場合におけるX方向に隣接する開口部15同士の離間距離Lと同様に取り扱う。
【0066】
また、本実施形態において、開口部15は、同一の形状をなしており、等間隔で電磁波遮蔽層11に形成されている場合について説明したが、これに限定されず、各開口部15は、互いに異なる形状であってもよいし、電磁波遮蔽層11にランダムに配置されてもよい。また、開口部15は、電磁波遮蔽層11が複数個備える場合に限らず、少なくとも1つ電磁波遮蔽層11が備えていればよい。
【0067】
<<粘着層>>
また、高周波拡散シート10は、電磁波反射層13の樹脂シート12と反対側の面に積層された粘着層を備えてもよい。これにより、建築物(建屋)の高周波拡散シート10を貼付すべき領域に、高周波拡散シート10を容易に貼付することが可能となる。
【0068】
この粘着剤層は、特に限定されないが、例えば、主として、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤およびゴム系粘着剤等のうちの少なくとも1種からなる粘着剤で構成されることが好ましい。
【0069】
アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルで構成される樹脂、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルと、それらと共重合可能な不飽和単量体(例えば酢酸ビニル、スチレン、アクリルニトリル等)との共重合体等が挙げられる。また、これらの樹脂を2種類以上混合してもよい。
【0070】
また、ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム系、イソプレンゴム系、スチレン-ブタジエン系、再生ゴム系、ポリイソブチレン系の粘着剤や、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン等のゴムを含むブロック共重合体を主とする粘着剤等が挙げられる。
【0071】
さらに、シリコーン系粘着剤としては、例えば、ジメチルシロキサン系、ジフェニルシロキサン系の粘着剤等が挙げられる。
【0072】
また、粘着剤層には、例えば、可塑剤、粘着付与剤、増粘剤、充填剤、老化防止剤、防腐剤、防カビ剤、染料、顔料等の各種添加剤が必要に応じ添加されていてもよい。
【0073】
なお、本実施形態において、高周波拡散シート10は、樹脂シート12を、電磁波遮蔽層11と電磁波反射層13との間に1つ備える場合について説明したが、これに限定されず、樹脂シート12を、電磁波遮蔽層11の電磁波反射層13とは反対側と、電磁波反射層13の電磁波遮蔽層11とは反対側との少なくとも一方に備えてもよいし、樹脂シート12の形成が省略されてもよい。
【0074】
また、高周波拡散シート10は、電磁波遮蔽層11と樹脂シート12との間、および、樹脂シート12と粘着層との間の少なくとも一方に中間層等をさらに備えてもよい。
【0075】
<第2実施形態>
次に、本発明の高周波拡散シートの第2実施形態について説明する。
【0076】
図4は、本発明の高周波拡散シートの第2実施形態を示す平面図である。なお、図4(a)は、第2実施形態の高周波拡散シートの全体図、図4(b)は、図4(a)中の点線で囲まれた領域[B]に位置する高周波拡散シートを拡大した部分拡大平面図である。また、以下の説明では、図4中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言う。また、図4中の上下方向をY方向、左右方向をX方向と言う。
【0077】
以下、第2実施形態の高周波拡散シート10について、前記第1実施形態の高周波拡散シート10との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0078】
図4に示す高周波拡散シート10は、高周波拡散シート10が備える電磁波遮蔽層11および電磁波反射層13の構成が異なる以外は、図1に示す第1実施形態の高周波拡散シート10と同様である。
【0079】
すなわち、第2実施形態の高周波拡散シート10において、電磁波遮蔽層11は、開口部15が形成されていない領域、すなわち、電磁波の透過を抑制または遮蔽する領域において、開口部15よりも微細な大きさで形成された、電磁波遮蔽層11の厚さ方向に貫通する貫通孔16を複数有している。そして、電磁波反射層13は、その全領域、すなわち、電磁波を反射する領域において、電磁波遮蔽層11が有する貫通孔16と同一の構成をなす貫通孔を複数有している。
【0080】
ここで、本発明の高周波拡散シート10は、前述の通り、建築物(建屋)が備える壁部や、建築物内に配置されたカーテン等に貼付して使用されるが、この貼付が視認されないことを、求められることがある。すなわち、高周波拡散シート10に、透明性が求められることがある。
【0081】
そして、高周波拡散シート10において、電磁波遮蔽層11は、開口部15が形成されていない領域において、電磁波の透過を抑制または遮蔽するために、電磁波遮断性を示す材料を主材料として含有するが、この電磁波遮断性を示す材料が、半透明性または不透明性を示すことがある。また、電磁波反射層13は、その全領域において、電磁波を反射させるために、電磁波反射性を示す材料を主材料として含有するが、この電磁波反射性を示す材料が電磁波遮断性を示す材料と同様に、半透明性または不透明性を示すことがある。
【0082】
そのため、電磁波遮蔽層11および電磁波反射層13に、たとえ半透明性または不透明性を示す材料が含まれていたとしても、高周波拡散シート10に透明性を付与するために、本実施形態では、電磁波遮蔽層11は、開口部15が形成されていない領域において、開口部15よりも微細な大きさで形成された、その厚さ方向に貫通する貫通孔16を複数有している。そして、電磁波反射層13は、その全領域において、貫通孔16と同一の構成をなす貫通孔を複数有している。これにより、電磁波遮蔽層11および電磁波反射層13が半透明性または不透明性を示す材料を含有する場合であっても、それぞれ、電磁波遮蔽層11が有する貫通孔16および電磁波反射層13が有する貫通孔を介した可視光の透過が許容されることから、電磁波遮蔽層11および電磁波反射層13すなわち高周波拡散シート10に透明性を確実に付与することができる。
【0083】
なお、電磁波遮蔽層11が有する貫通孔16と、電磁波反射層13が有する貫通孔とでは、同一の構成をなすため、以下では、貫通孔16を代表に説明する。
【0084】
貫通孔16は、電磁波の透過を抑制しつつ、可視光の透過を許容し得るように、開口部15よりも微細な大きさで形成されていれば、いかなる形状および大きさを有してもよいが、図4(b)に示すように、正方形状をなす場合、貫通孔16の幅Whは、具体的には、用いられる電波の周波数が28GHzの場合は、1μm以上1000μm未満程度であればよく、50μm以上1000μm未満程度であることが好ましく、100μm以上250μm以下程度であることがより好ましい。また、この場合、貫通孔16同士の離間距離Lhは、例えば、1μm以上150μm以下程度であればよく、10μm以上150μm以下程度であることが好ましく、30μm以上75μm以下程度であることがより好ましい。正方形状をなす貫通孔16において、幅Whおよび離間距離Lhを、それぞれ、前記範囲内に設定することで、確実に、電磁波の透過を抑制しつつ、可視光の透過を許容し得る貫通孔16とすることができる。
【0085】
貫通孔16は、電磁波の透過を抑制しつつ、可視光の透過を許容し得るように、開口部15よりも微細な大きさで形成されていれば、いかなる形状および大きさを有するものであってもよいが、貫通孔16の電磁波遮蔽層11における開口率は80%~95%であることが好ましく、83%~94%であることがより好ましい。また、貫通孔16の幅は、電磁波の波長をλ[mm]とした時、λ/10[mm]以下であることが好ましく、より具体的には、用いられる電波の周波数が28GHzの場合は、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましい。前記範囲内に設定することで、確実に、電磁波の透過を抑制しつつ、可視光の透過を許容し得る貫通孔16とすることができる。
【0086】
なお、貫通孔16は、図4(b)に示すように、本実施形態では、その形状が、それぞれ、平面視において、正方形状をなすが、この形状に限定されず、貫通孔16のその他の形状としては、例えば、S字状、U字状、円形状、半円形状、波状のような曲線部を有する形状、直線状、V字状、X字状、L字状、H字状、T字状、W字状、コ字状のような角部を有する形状が挙げられる。
【0087】
また、本実施形態において、貫通孔16は、同一の形状をなす孔が、等間隔で電磁波遮蔽層11に形成されている場合について説明したが、これに限定されず、各貫通孔16は、互いに異なる形状でもよいし、電磁波遮蔽層11にランダムに配置されてもよい。
【0088】
このような第2実施形態の高周波拡散シート10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態の高周波拡散シート10と同様である。
【0089】
なお、以上のような構成をなしている、第2実施形態の高周波拡散シート10では、波長300nm以上800nm以下における可視光の光線透過率は、70%以上100%以下であることが好ましく、90%以上100%以下であることがより好ましい。これにより、高周波拡散シート10は、優れた透光性を有していると言うことができ、壁部やカーテン等の部材に貼付された高周波拡散シート10の視認性の低下を図ることができる。なお、光線透過率は、例えば、紫外可視分光光度計により測定することができる。
【0090】
<第3実施形態>
また、高周波拡散シート10は、前記第1実施形態で説明した構成の場合の他、以下に示すような構成であってもよい。
【0091】
図5は、本発明の高周波拡散シートの第3実施形態を示す縦断面図である。
なお、以下では、説明の都合上、図5の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図5中の紙面手前奥方向をY方向、左右方向をX方向と言う。
【0092】
以下、第3実施形態の高周波拡散シート10について、前記第1実施形態の高周波拡散シート10との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0093】
図5に示す高周波拡散シート10は、電磁波遮蔽層11および電磁波反射層13の樹脂シート12とは反対側に、それぞれ、さらに最外層として保護層14が形成されていること以外は前記第1実施形態の高周波拡散シート10と同様である。
【0094】
すなわち、図5に示すように、本実施形態では、高周波拡散シート10は、電磁波反射層13側の保護層14を下側として、保護層14と電磁波反射層13と樹脂シート12と電磁波遮蔽層11と保護層14とが、上側に向かってこの順で接触して積層されている。
【0095】
かかる構成をなす高周波拡散シート10において、電磁波を、上側、すなわち、樹脂シート12側から入射させることで、この入射した電磁波を、上側に反射させつつ、拡散させることができる。
【0096】
また、高周波拡散シート10において、保護層14が最外層として位置して、電磁波反射層13および電磁波遮蔽層11を保護していることから、電磁波反射層13および電磁波遮蔽層11が、その使用時に傷つくのを確実に防止することができる。
【0097】
この保護層14は、特に限定されないが、例えば、前述した金属粉含有接着剤層において、金属粉の添加が省略された層で構成することができる。
【0098】
また、保護層14は、その平均厚さが0.05μm以上、70.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上、40.0μm以下であることがより好ましい。保護層14の厚さを、かかる範囲内に設定することにより、保護層14としての機能を確実に付与することができる。
【0099】
このような第3実施形態の高周波拡散シート10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0100】
以上、本発明の高周波拡散シートについて説明したが、本発明は、これに限定されない。
【0101】
例えば、本発明の高周波拡散シートにおいて、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意の部材と置換することができ、あるいは、任意の構成の部材を付加することができる。
【0102】
また、本発明の高周波拡散シートは、前記第1~第3実施形態で示した、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせてもよい。
【実施例
【0103】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
【0104】
1.高周波拡散シートによる電磁波の拡散性の検討
1-1.フィルム等の準備
<金属箔積層樹脂フィルム>
平均厚さ0.1mmのPET基材(樹脂シート12)の両面に、それぞれ、平均厚さ12μmのアルミニウム箔を、アクリル系接着剤を介して接合することで、アルミニウム箔-PET基材-アルミニウム箔積層体を金属箔積層樹脂フィルムとして用意した。
【0105】
<枠体>
電磁波の透過を許容しない枠体100として、外形および開口部がともに正方形状をなす、アルミ板で構成される枠体(外形:200mm×200mm、開口部:100mm×100mm)を用意した。
【0106】
1-2.高周波拡散シートの作製
(サンプルNo.1A)
用意した金属箔積層樹脂フィルム(アルミニウム箔-PET基材-アルミニウム箔積層体)を、100mm×100mmの大きさに裁断した。その後、この金属箔積層樹脂フィルムが備える2枚のアルミニウム箔のうちの一方に対して金属エッチング処理することで、長さ90mm×幅W5mmの開口部15(スリット)を、離間距離L(間隔)が5mmとなるよう、合計10個アルミニウム箔に設けた。これにより、電磁波反射層13と樹脂シート12と電磁波遮蔽層11とが、この順で積層されたサンプルNo.1Aの高周波拡散シート10を作製した。
【0107】
(サンプルNo.2A~10A)
一方のアルミニウム箔に形成する開口部15の長さ、幅W、開口部15同士の離間距離Lおよび開口部15の個数のうちの少なくとも1つを、表1に示すように変更したこと以外は、前記サンプルNo.1Aと同様にして、サンプルNo.2A~10Aの高周波拡散シート10を作製した。
【0108】
(サンプルNo.11A)
アルミニウム箔に対する開口部15の形成が省略されたシートを、サンプルNo.11Aの高周波拡散シート10として用意した。
【0109】
1-3.評価
<電磁波の拡散性の確認>
<1A> まず、各サンプルNo.の高周波拡散シート10を、枠体100に対して、枠体100が備える開口部に対応するように装着することで、電磁波の回折を確認するための検査標体150を得た(図6参照)。
【0110】
<2A> 次いで、図6に示すように、枠体100の端部から面方向に内側に10mmおよび枠体100からの厚さ方向における離間距離が、10mmとなるように受信機20を配置した。
【0111】
<3A> 次いで、検査標体150の受信機20が配置されている面側から、受信機20に電磁波が入射されるのを防止しつつ、各サンプルNo.の高周波拡散シート10に対して、周波数28GHzの電磁波(平面波)を入射させ、その後、高周波拡散シート10で反射された電磁波を、受信機20を用いて受信した。そして、高周波拡散シート10による電磁波の回折(拡散)の有無を、下記に示す評価基準に基づいて評価した。
【0112】
[評価基準]
A:受信機20により電磁波を明確に受信することができる。
B:受信機20により電磁波を明確とは言えないものの十分に受信することができる。
C:受信機20により電磁波を受信できるものの、受信強度が十分とは言えない強度であった。
D:受信強度が受信機20により電磁波を受信できているとは言えない強度であった。
以上のようにして得られた評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1に示すように、高周波拡散シート10が、電磁波遮蔽層11および電磁波反射層13を有し、かつ、電磁波遮蔽層11が、厚さ方向に貫通する開口部15を備えることで、高周波拡散シート10で電磁波が反射される際に、電磁波遮蔽層11が有する開口部15により、電磁波が回折されることで拡散する結果を示した。また、開口部15の幅Wを、電磁波の波長よりも小さく設定すること、開口部15同士の離間距離Lの大きさを適宜設定することにより、電磁波をより優れた拡散性をもって拡散し得ることが明らかとなった。
【0115】
2.高周波拡散シートにおける可視光の透過性の検討
2-1.フィルム等の準備
<金属箔積層樹脂フィルム>
平均厚さ0.1mmのPET基材(樹脂シート12)の両面に、それぞれ、平均厚さ12μmのアルミニウム箔を、アクリル系接着剤を介して接合することで、アルミニウム箔-PET基材-アルミニウム箔積層体を金属箔積層樹脂フィルムとして用意した。
【0116】
<枠体>
電磁波の透過を許容しない枠体100として、外形および開口部がともに正方形状をなす、アルミ板で構成される枠体(外形:200mm×200mm、開口部:100mm×100mm)を用意した。
【0117】
2-2.高周波拡散シートの作製
(サンプルNo.1B)
用意した金属箔積層樹脂フィルム(アルミニウム箔-PET基材-アルミニウム箔積層体)を、100mm×100mmの大きさに裁断した。その後、この金属箔積層樹脂フィルムが備える2枚のアルミニウム箔のうちの一方に対してレーザー照射することで、長さ90mm×幅W5mmの開口部15(スリット)を、離間距離L(間隔)が5mmとなるよう、合計10個アルミニウム箔に設けた。その後、一方のアルミニウム箔の開口部15が形成されていない領域、および、他方のアルミニウム箔の全領域に対して、幅Wh250μmの正方形状をなす貫通孔16を、離間距離Lh50μm空けて格子状に、レーザー照射により形成した。これにより、電磁波反射層13と樹脂シート12と電磁波遮蔽層11とが、この順で積層された、サンプルNo.1Bの高周波拡散シート10を作製した。
【0118】
(サンプルNo.2B~9B)
アルミニウム箔に形成する開口部15の幅Wおよび開口部15同士の離間距離Lのうちの少なくとも一方を、表2に示すように変更したこと以外は、前記サンプルNo.1Bと同様にして、サンプルNo.2B~9Bの高周波拡散シート10を作製した。
【0119】
2-3.評価
<電磁波の拡散性の確認>
<1A> まず、各サンプルNo.の高周波拡散シート10を、枠体100に対して、枠体100が備える開口部に対応するように、装着することで、電磁波の回折を確認するための検査標体150を得た(図6参照)。
【0120】
<2A> 次いで、図6に示すように、枠体100の端部から面方向に内側に10mmおよび枠体100からの厚さ方向における離間距離が、10mmとなるように受信機20を配置した。
【0121】
<3A> 次いで、検査標体150の受信機20が配置されている面側から、受信機20に電磁波が入射されるのを防止しつつ、各サンプルNo.の高周波拡散シート10に対して、周波数28GHzの電磁波(平面波)を入射させ、その後、高周波拡散シート10で反射された電磁波を、受信機20を用いて受信した。そして、高周波拡散シート10による電磁波の回折(拡散)の有無を、下記に示す評価基準に基づいて評価した。
【0122】
[評価基準]
A:受信機20により電磁波を明確に受信することができる。
B:受信機20により電磁波を明確とは言えないものの十分に受信することができる。
C:受信機20により電磁波を受信できるものの、受信強度が十分とは言えない強度であった。
D:受信強度が受信機20により電磁波を受信できているとは言えない強度であった。
【0123】
<可視光の透過性の確認>
各サンプルNo.の高周波拡散シート10について、それぞれ、波長300nm以上800nm以下における可視光の光線透過率(%)を、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、「UV-2600i」)を用いて測定した。そして、高周波拡散シート10による可視光の透過の有無を、下記に示す評価基準に基づいて評価した。
【0124】
[評価基準]
波長300nm以上800nm以下における可視光の光線透過率が、
A:70%以上であった。
B:50%以上70%未満であった。
C:50%未満であった。
以上のようにして得られた評価結果を、それぞれ、下記の表2に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
表2に示すように、高周波拡散シート10が備える電磁波遮蔽層11が、厚さ方向に貫通する開口部15を備えることで、高周波拡散シート10で電磁波が反射される際に、電磁波遮蔽層11が有する開口部15により、電磁波が回折されることで拡散する結果を示した。なお、サンプルNo.1B~9Bにおいて、開口部15による電磁波の回折性は、電磁波遮蔽層11の開口部15が形成されていない領域における貫通孔16の形成が省略された、表1のサンプルNo.1A~10Aと同等の傾向を示した。したがって、電磁波遮蔽層11の開口部15が形成されていない領域に貫通孔16を形成したとしても、開口部15において電磁波を回折(拡散)させ得ることが判った。
【0127】
また、電磁波遮蔽層11の開口部15が形成されていない領域、および、電磁波反射層13の全領域に、貫通孔16を形成することで、高周波拡散シート10に、可視光の透過性を付与し得ることが明らかとなった。
【0128】
3.長さの異なる開口部における拡散性および透過性の検討
3-1.枠体の準備
<枠体>
電磁波の透過を許容しない枠体100として、外形および開口部がともに正方形状をなす、アルミ板で構成される枠体(外形:600mm×600mm、開口部:300mm×300mm)を用意した。
【0129】
3-2.高周波拡散シートの作製
(サンプルNo.1C)
加熱により溶融したPET基材(樹脂シート12)の両面に、それぞれ、平均厚さ12μmの銅箔を貼り合わせ、銅箔-PET基材-銅箔積層体を金属箔積層樹脂フィルムとして用意した。用意した金属箔積層樹脂フィルムを、600mm×600mmの大きさに裁断した後に、この金属箔積層樹脂フィルムが備える2枚の銅箔のうちの一方の面に対して感光性フィルムマスクを貼り合わせ露光パターニングおよび現像処理を行った。現像後に金属エッチング液により銅箔をパターニングした。以上の工程により、長さ300mm×幅W7mmの開口部15(スリット)を、離間距離L(間隔)が6mmとなるよう、合計23個銅箔に設けて樹脂シート12上に電磁波遮蔽層11を形成した。これにより、電磁波反射層13と樹脂シート12と電磁波遮蔽層11とが、この順で積層されたサンプルNo.1Cの高周波拡散シート10を作製した。
【0130】
(サンプルNo.2C)
平均厚さ0.1mmのPET基材(樹脂シート12)の双方の面上に、それぞれ、平均厚さ12μmの銅箔を、アクリル系接着剤を介して接合することで、銅箔-PET基材-銅箔積層体を金属箔積層樹脂フィルムとして用意した。用意した金属箔積層樹脂フィルムを、600mm×600mmの大きさに裁断した後に、この金属箔積層樹脂フィルムが備える2枚の銅箔のうちの一方の面に対して感光性フィルムマスクを貼り合わせ露光パターニングおよび現像処理を行った。現像後に金属エッチング液により銅箔をパターニングした。以上の工程により、長さ300mm×幅W7mmの開口部15(スリット)を、離間距離L(間隔)が6mmとなるよう、合計23個銅箔に設けて樹脂シート12上に電磁波遮蔽層11を形成した。これにより、電磁波反射層13と樹脂シート12と電磁波遮蔽層11とが、この順で積層されたサンプルNo.2Cの高周波拡散シート10を作製した。
【0131】
(サンプルNo.3C)
平均厚さ0.1mmのPET基材(樹脂シート12)を、600mm×600mmの大きさに裁断した後に、このPET基材の双方の面に銅蒸着を50nmの厚さで全面に行った。その後、一方の銅蒸着面に感光性フィルムマスクを貼り合わせ露光パターニングおよび現像処理を行った。現像後に金属エッチング処理により開口部の銅を除去し銅のパターニングを設けた。その後、感光性フォルムは除去した。以上の工程により、長さ300mm×幅W7mmの開口部15(スリット)を、離間距離L(間隔)が6mmとなるよう、合計23個設けて樹脂シート12上に電磁波遮蔽層11を形成した。これにより、電磁波反射層13と樹脂シート12と電磁波遮蔽層11とが、この順で積層されたサンプルNo.3Cの高周波拡散シート10を作製した。
【0132】
(サンプルNo.4C)
平均厚さ0.1mmのPET基材(樹脂シート12)を、600mm×600mmの大きさに裁断した後に、このPET基材の一方の面に銅蒸着処理により50nm厚みの銅箔を設けた。次いで、PET基材の他方の面に感光性フィルムマスクを貼り合わせ露光パターニングおよび現像処理を行った。現像後に開口部に銅蒸着処理により50nm厚みの蒸着層を設けた。蒸着後に感光性フォルムは除去した。以上の工程により、長さ300mm×幅W7mmの開口部15(スリット)を、離間距離L(間隔)が6mmとなるよう、合計23個設けて樹脂シート12上に電磁波遮蔽層11を形成した。これにより、電磁波反射層13と樹脂シート12と電磁波遮蔽層11とが、この順で積層されたサンプルNo.4Cの高周波拡散シート10を作製した。
【0133】
(サンプルNo.5C)
平均厚さ0.1mmのPET基材(樹脂シート12)を、600mm×600mmの大きさに裁断した後に、このPET基材の双方の面にアルミ蒸着を50nmの厚さで全面に行った。その後、一方のアルミ蒸着面に感光性フィルムマスクを貼り合わせ露光パターニングおよび現像処理を行った。現像後に金属エッチング処理により開口部のアルミを除去しアルミのパターニングを設けた。その後、感光性フォルムは除去した。以上の工程により、長さ300mm×幅W7mmの開口部15(スリット)を、離間距離L(間隔)が6mmとなるよう、合計23個設けて樹脂シート12上に電磁波遮蔽層11を形成した。これにより、電磁波反射層13と樹脂シート12と電磁波遮蔽層11とが、この順で積層されたサンプルNo.5Cの高周波拡散シート10を作製した。
【0134】
(サンプルNo.6C)
平均厚さ0.1mmのPET基材(樹脂シート12)を、600mm×600mmの大きさに裁断した後に、このPET基材の双方の面にアルミ蒸着を50nmの厚さで全面に行った。その後、一方のアルミ蒸着面に感光性フィルムマスクを貼り合わせ露光パターニングおよび現像処理を行った。現像後に金属エッチング処理により開口部のアルミを除去しアルミのパターニングを設けた。その後、感光性フォルムは除去した。以上の工程により、長さ300mm×幅W7mmの開口部15(スリット)を、離間距離L(間隔)が6mmとなるよう、合計23個設けた。更に電磁波遮蔽層11の開口部15が形成されていない領域に、幅Wh250μmの正方形状をなす貫通孔16を離間距離Lh50μmで離間して形成した電磁波遮蔽層11を樹脂シート12の一方の面上に形成した。そして、他方のアルミ蒸着面の全面に幅Wh250μmの正方形状をなす貫通孔16を離間距離Lh50μmで離間して形成した電磁波反射層13を樹脂シート12の他方の面上に形成した。これにより、サンプルNo.6Cの高周波拡散シート10を作製した。
【0135】
(サンプルNo.7C~11C)
開口部15の幅W、開口部15同士の離間距離Lおよび開口部15の個数のうちの少なくとも1つを、表3に示すように変更したこと以外は、前記サンプルNo.6Cと同様にして、サンプルNo.7C~11Cの高周波拡散シート10を作製した。
【0136】
(サンプルNo.12C)
開口部15の幅W、離間距離L、個数を、表3に示すように変更したこと以外は、前記サンプルNo.5Cと同様にして、サンプルNo.12Cの高周波拡散シート10を作製した。
【0137】
(サンプルNo.13C)
平均厚さ0.1mmのPET基材(樹脂シート12)の双方の面上に、それぞれ、平均厚さ12μmのアルミ箔を、アクリル系接着剤を介して接合することで、アルミ箔-PET基材-アルミ箔積層体を金属箔積層樹脂フィルムとして用意した。用意した金属箔積層樹脂フィルムを、600mm×600mmの大きさに裁断した後に、この金属箔積層樹脂フィルムが備える2枚のアルミ箔のうちの一方の面に対して感光性フィルムマスクを貼り合わせ露光パターニングおよび現像処理を行った。現像後に金属エッチング液によりアルミ箔をパターニングして、長さ90mm×幅W5mmの開口部15(スリット)を、離間距離L(間隔)が5mmとなるよう、合計10個アルミ箔に設けて樹脂シート12上に電磁波遮蔽層11を形成した。これにより、電磁波反射層13と樹脂シート12と電磁波遮蔽層11とが、この順で積層されたサンプルNo.13Cの高周波拡散シート10を作製した。
【0138】
(サンプルNo.14C)
開口部15の形成を省略したこと以外は、前記サンプルNo.1Cと同様にして、サンプルNo.14Cの高周波拡散シート10を作製した。
【0139】
(サンプルNo.15C)
平均厚さ0.1mmのPET基材(樹脂シート12)を、600mm×600mmの大きさに裁断した後に、このPET基材の一方の面にNi蒸着処理により50nm厚みのNi層を設けた。次いで、PET基材の他方の面に感光性フィルムマスクを貼り合わせ露光パターニングおよび現像処理を行った。現像後に感光性フィルムマスク開口部のNi蒸着処理により50nm厚みの蒸着層を設け、その後、感光性フィルムを除去した。以上の工程により、長さ300mm×幅W7mmの開口部15(スリット)を、離間距離L(間隔)が6mmとなるよう、合計23個設けて樹脂シート12上に電磁波遮蔽層11を形成した。これにより、電磁波反射層13と樹脂シート12と電磁波遮蔽層11とが、この順で積層されたサンプルNo.15Cの高周波拡散シート10を作製した。
【0140】
3-3.評価
<電磁波の拡散性の確認>
<1C> まず、各サンプルNo.の高周波拡散シート10を、枠体100に対して、枠体100が備える開口部に対応するように装着することで、電磁波の回折を確認するための検査標体150を得た(図6参照)。
【0141】
<2C> 次いで、図6に示すように、枠体100の端部から面方向に内側に10mmおよび枠体100からの厚さ方向における離間距離が、10mmとなるように受信機20を配置した。
【0142】
<3C> 次いで、検査標体150の受信機20が配置されている面側から、各サンプルNo.の高周波拡散シート10に対して、表3に示した周波数の電磁波(平面波)を入射させ、その後、高周波拡散シート10で反射された電磁波を、受信機20を用いて受信した。そして、高周波拡散シート10による電磁波の回折(拡散)の有無を、下記に示す評価基準に基づいて評価した。
【0143】
[評価基準]
A:受信機20により電磁波を明確に受信することができる。
B:受信機20により電磁波を明確とは言えないものの十分に受信することができる。
C:受信機20により電磁波を受信できるものの、受信強度が十分とは言えない強度であった。
D:受信強度が受信機20により電磁波を受信できているとは言えない強度であった。
【0144】
<可視光の透過性の確認>
各サンプルNo.の高周波拡散シート10について、それぞれ、波長300nm以上800nm以下における可視光の光線透過率(%)を、紫外可視分光光度計(島津製作所社製「UV-2600i」)を用いて測定した。そして、高周波拡散シート10による可視光の透過の有無を、下記に示す評価基準に基づいて評価した。
【0145】
[評価基準]
波長300nm以上800nm以下における可視光の光線透過率が、
A:70%以上であった。
B:50%以上70%未満であった。
C:50%未満であった。
以上のようにして得られた評価結果を、それぞれ、下記の表3に示す。
【0146】
【表3】
【0147】
表3に示すように、高周波拡散シート10が備える電磁波遮蔽層11が、厚さ方向に貫通する開口部15を備えることで、高周波拡散シート10で電磁波が反射される際に、電磁波遮蔽層11が有する開口部15により、電磁波が回折されることで拡散する結果を示した。また、開口部15の幅Wを、電磁波の波長よりも小さく設定すること、開口部15同士の離間距離Lの大きさを適宜設定することにより、電磁波をより優れた拡散性をもって拡散し得ることが明らかとなった。
【0148】
また、電磁波遮蔽層11の開口部15が形成されていない領域、および、電磁波反射層13の全領域に、貫通孔16を形成した場合には、高周波拡散シート10に、可視光の透過性を付与し得ることが明らかとなった。
【0149】
4.可視光の透過性と電磁波遮蔽性の検討
4-1.電磁波反射シートの作製
(サンプルNo.1D)
加熱により溶融したPET基材(樹脂シート12)の片面に、平均厚さ12μmの銅箔を貼り合わせ、銅箔-PET基材積層体を金属箔積層樹脂フィルムとして用意した。用意した金属箔積層樹脂フィルムを、600mm×600mmの大きさに裁断した後に、この金属箔積層樹脂フィルムが備える銅箔の面に対して感光性フィルムマスクを貼り合わせ露光パターニングおよび現像処理を行った。現像後に金属エッチング液により銅箔をパターニングした。以上の工程により、樹脂シート12上に、長さ500μm×幅W500μmの貫通孔16を、離間距離Lh(間隔)が20μmとなる電磁波反射層13を形成した。この時、電磁波反射層の開口率は92%であった。これにより、電磁波反射層13と樹脂シート12とが積層されたサンプルNo.1Dの電磁波遮蔽シートを作製した。
【0150】
(サンプルNo.2D~11D)
銅箔に形成する貫通孔16の長さ、幅、離間距離L(間隔)を表4に示すように変更したこと以外は、前記サンプルNo.1Dと同様にして、サンプル2D~11Dの電磁波反射シートを作製した。
【0151】
<可視光の透過性の確認>
各サンプルNo.の電磁波反射シートについて、それぞれ、波長300nm以上800nm以下における可視光の光線透過率(%)を、紫外可視分光光度計(島津製作所社製「UV-2600i」)を用いて測定した。そして、電磁波反射シートによる可視光の透過の有無を、下記に示す評価基準に基づいて評価した。
【0152】
[評価基準]
波長300nm以上800nm以下における可視光の光線透過率が、
A:80%以上であった。
B:60%以上70%未満であった。
C:60%未満であった。
以上のようにして得られた評価結果を、それぞれ、下記の表4に示す。
【0153】
<電磁波遮蔽性の確認>
アルミ板で構成される枠体(外形:700mm×700mm、開口部:500mm×500mm)を用意した。中央部に用意した500mm角の高周波拡散フィルム材を配置した。また、電波受信機と送信機を3m離れた位置で固定し、高周波拡散フィルムを送信機から600mm離れた位置に設置した。その状態にて送信機から28GHzのミリ波を発信し受信機にて電波強度の測定を行い、電磁波遮蔽性を算出した。
PETのみの電磁波遮蔽性は、-35dBであった。
【0154】
[評価基準]
A:PETのみの電磁波遮蔽性に対して5dB以上小さい。
B:PETのみの電磁波遮蔽性に対して3~5dB小さい。
C:PETのみの電磁波遮蔽性に対して3dB以内である。
以上のようにして得られた評価結果を、それぞれ、下記の表4に示す。
【0155】
【表4】
【0156】
表4に示すように、電磁波反射シートが備える電磁波反射層13が、厚さ方向に所定の幅、長さ、離間距離の貫通孔16を備えることで、可視光の透過性、並びに、電磁波遮蔽性を付与し得ることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の高周波拡散シートによれば、高周波領域の電磁波が反射する際に、高周波拡散シートが有する電磁波遮蔽層が備える開口部において、電磁波を回折させることで確実に拡散させることができる。そのため、建築物(建屋)内において通信機器により電磁波を受信する場合、高周波領域の電磁波が、建築物が備える窓部のような電磁波の透過が許容される透過領域を透過する前には、建築物の壁部等に本発明の高周波拡散シートを貼付する。これにより、この壁部等に電磁波が衝突して吸収されることなく、反射されつつ拡散すなわち回折されることから、前記通過領域を電磁波が通過する機会を、再び得ることができる。さらに、高周波領域の電磁波が、前記透過領域を透過し、建物内に導入された後には、建物内の壁部やカーテン等に本発明の高周波拡散シートを貼付する。これにより、これら壁部やカーテン等において、電磁波を反射させつつ、拡散すなわち回折させることができる。そのため、建築物内の広範囲において、通信機器により電磁波を良好に受信することができるようになる。したがって、本発明は、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0158】
10 高周波拡散シート
11 電磁波遮蔽層
12 樹脂シート
13 電磁波反射層
14 保護層
15 開口部
16 貫通孔
20 受信機
100 枠体
150 検査標体
D 直径
L 離間距離
Lh 離間距離
T1 平均厚さ
T2 平均厚さ
W 幅
Wh 幅
WA 平面波
図1
図2
図3
図4
図5
図6