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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】タンデム圧延システム
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/20 20060101AFI20240925BHJP
   B21B 37/00 20060101ALI20240925BHJP
   B21B 37/46 20060101ALI20240925BHJP
   B21B 37/58 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B21B37/20 110
B21B37/00 221
B21B37/20 A
B21B37/46 110Z
B21B37/46 111
B21B37/58 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024500786
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2022006245
(87)【国際公開番号】W WO2023157144
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 知幸
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-043360(JP,A)
【文献】特開平06-142739(JP,A)
【文献】特開平11-319924(JP,A)
【文献】特開平10-216817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00-37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N(N≧3)基の圧延スタンドを有し、被圧延材を連続圧延するタンデム圧延システムであって、
最終スタンドである第Nスタンドの出側において計測された前記被圧延材の速度実績値と、前記被圧延材の製品仕様に応じて予め定めた最終スタンド出側板厚目標値とを乗算して、前記最終スタンドの出側マスフローである最終目標マスフローを算出する最終目標マスフロー演算部と、
第iスタンド(1≦i≦N-2)の出側マスフローを前記最終目標マスフローと一致させるように、前記第iスタンドに設けられたアクチュエータまたは前記第iスタンドよりも上流に設けられたアクチュエータを制御する上流マスフロー制御部と、
を備え、
前記第iスタンドに設けられた前記アクチュエータは、ワークロール速度を制御するロール速度アクチュエータを含み、
前記上流マスフロー制御部は、
前記最終目標マスフローを、前記被圧延材の製品仕様に応じて予め定めた第iスタンド出側板厚目標値または前記第iスタンドの出側において計測された第iスタンド出側板厚実績値で除算して第iスタンド出側速度目標値を算出し、
前記第iスタンドの出側における前記被圧延材の速度実績値を前記第iスタンド出側速度目標値に一致させるように、前記ロール速度アクチュエータで前記第iスタンドのワークロール速度を制御すること、
を特徴とするタンデム圧延システム。
【請求項2】
前記第iスタンドに設けられた前記アクチュエータは、ロールギャップを制御するロールギャップアクチュエータを更に含み、
前記タンデム圧延システムは、前記第iスタンド出側板厚実績値を前記予め定めた第iスタンド出側板厚目標値に一致させるように、前記ロールギャップアクチュエータで前記第iスタンドの出側板厚を制御する板厚制御部を更に備えること、
を特徴とする請求項1に記載のタンデム圧延システム。
【請求項3】
前記第iスタンド出側板厚実績値は、前記第iスタンドにおけるロールギャップ実績値および圧延荷重実績値に基づいて計算されたゲージメータ板厚であること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のタンデム圧延システム。
【請求項4】
N(N≧3)基の圧延スタンドを有し、被圧延材を連続圧延するタンデム圧延システムであって、
最終スタンドである第Nスタンドの出側において計測された前記被圧延材の速度実績値と、前記被圧延材の製品仕様に応じて予め定めた最終スタンド出側板厚目標値とを乗算して、前記最終スタンドの出側マスフローである最終目標マスフローを算出する最終目標マスフロー演算部と、
第iスタンド(1≦i≦N-2)の出側マスフローを前記最終目標マスフローと一致させるように、前記第iスタンドに設けられたアクチュエータまたは前記第iスタンドよりも上流に設けられたアクチュエータを制御する上流マスフロー制御部と、
を備え、
前記第iスタンドに設けられた前記アクチュエータは、ロールギャップを制御するロールギャップアクチュエータをさらに含み、
前記タンデム圧延システムは、前記第iスタンド出側板厚実績値を前記被圧延材の製品仕様に応じて予め定めた第iスタンド出側板厚目標値と一致させるように、前記第iスタンドの前記ロールギャップアクチュエータで前記第iスタンドの出側板厚を制御する板厚制御部をさらに備え、
前記上流マスフロー制御部は、
前記最終目標マスフローを前記第iスタンドの出側において計測された前記被圧延材の第iスタンド出側速度実績値で除算して新たな第iスタンド出側板厚目標値を算出し、
前記板厚制御部が用いる前記予め定めた第iスタンド出側板厚目標値を前記新たな第iスタンド出側板厚目標値に更新すること、
を特徴とするタンデム圧延システム。
【請求項5】
N(N≧3)基の圧延スタンドを有し、被圧延材を連続圧延するタンデム圧延システムであって、
最終スタンドである第Nスタンドの出側において計測された前記被圧延材の速度実績値と、前記被圧延材の製品仕様に応じて予め定めた最終スタンド出側板厚目標値とを乗算して、前記最終スタンドの出側マスフローである最終目標マスフローを算出する最終目標マスフロー演算部と、
第iスタンド(1≦i≦N-2)の出側マスフローを前記最終目標マスフローと一致させるように、前記第iスタンドに設けられたアクチュエータまたは前記第iスタンドよりも上流に設けられたアクチュエータを制御する上流マスフロー制御部と、
を備え、
前記第iスタンドよりも上流に設けられた前記アクチュエータは、第i-1スタンド(2≦i≦N-2)に設けられたワークロール速度を制御するロール速度アクチュエータを含み、
前記タンデム圧延システムは、前記第iスタンド出側板厚実績値を前記被圧延材の製品仕様に応じて予め定めた第iスタンド出側板厚目標値に一致させるように、前記第i-1スタンドの前記ロール速度アクチュエータで前記第iスタンドの出側板厚を制御する板厚制御部をさらに備え、
前記上流マスフロー制御部は、
前記最終目標マスフローを前記第iスタンドの出側において計測された前記被圧延材の第iスタンド出側速度実績値で除算して新たな第iスタンド出側板厚目標値を算出し、
前記板厚制御部が用いる前記予め定めた第iスタンド出側板厚目標値を前記新たな第iスタンド出側板厚目標値に更新すること、
を特徴とするタンデム圧延システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンデム圧延機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のスタンドにより金属等の材料(以下、「被圧延材」と称す)を連続的に圧延する冷間圧延が知られている。冷間圧延では、被圧延材の板厚が所望の板厚となるように板厚制御が実施される。板厚制御方式としてスタンド入側の計測値に基づいてスタンド出側の板厚を制御するマスフローAGCが知られている。マスフローAGCは、スタンド入側および出側の板速度と、入側板厚とから出側板厚推定値を演算し、出側板厚偏差がゼロになるようにロールギャップ、あるいはひとつ上流スタンドの速度を変化させる。
【0003】
最終スタンド出側板厚に関する板厚制御は、被圧延材の品質に直接、影響を与えるものであるため重要である。一般に、最終スタンド出側板厚に関する板厚制御は、最終スタンド出側の板厚偏差に基づいて、最終スタンドのひとつ上流スタンドのロール速度を操作することによって行われる。ここで、「板厚偏差」は、最終スタンドの出側に設けられた板厚計により計測された板厚実績値と、予め定められた最終スタンド出側板厚目標値との偏差である。
【0004】
そのため、母材の板厚変動を上流スタンドの板厚制御で十分に低減できなかった場合、あるいは加減速による板厚変動が大きかった場合に、最終スタンド出側の板厚偏差を抑制するよう、最終スタンドのひとつ上流スタンドのロール速度を大きく操作することになる。その結果、最終スタンドのひとつ上流スタンドのロール速度が制約にかかり、制御が行えなくなる、あるいはロール速度の急激な変化により、最終スタンドとひとつ上流スタンドの間の張力が緩み、圧延が不安定になるなど、トラブルにつながることがあった。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献1では、最終スタンドのひとつ上流スタンドのロール速度だけでなく、最終スタンドのロール速度も操作し、ロール速度が制約にかかることを回避している。特許文献2では、板厚偏差の大きさに基づいて制御ゲインを調整し、ロール速度の急激な変化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本特開2002-292415号公報
【文献】日本特開2004-268084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、いずれの方法においても、最終スタンド出側の板厚偏差が大きかった場合に板厚を修正するのに時間がかかる。またロール速度の操作量は大きくなるため、最終スタンドとひとつ上流スタンドの間の張力が過大、あるいは過小となってしまう恐れがある。張力が過大となった場合は、板破断を引き起こし、張力が過小となった場合は、圧延が不安定になる。張力が過大あるいは過小となる前に、張力制御によって張力が適切な範囲に制御されることもあるが、張力制御は最終スタンドのギャップの開閉によって行われる。そのため、過大な操作をすると形状に影響を及ぼしてしまう。形状が乱れると圧延の継続が困難となることがある。このような事態を避けるため、より確実に最終スタンド出側の板厚変動を低減できることが望まれる。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、最終スタンド出側の板厚変動を低減できるタンデム圧延システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、鋭意研究を進めた結果、最終スタンド(第Nスタンド)出側における被圧延材の製品仕様を満たす最終目標マスフローを計算し、より上流スタンド(第1~第N-2スタンド)出側のマスフローを当該最終目標マスフローに一致させるように板厚を制御することを見出した。これによれば、マスフロー一定の法則を利用して、被圧延材の製品仕様に応じた最終スタンド出側板厚目標値を満たすために、上流スタンドにおいて板厚、あるいは被圧延材の速度が調整される。そのため、最終スタンド(第Nスタンド)とひとつ上流スタンド(第N-1スタンド)との板厚偏差を極力低減することができる。なお、マスフローは、被圧延材の板厚と幅と速度の積(体積流量)で表され、圧延機内での幅変化はないものとすると被圧延材の板厚と速度の積で表される。
【0010】
第1の観点は、タンデム圧延システムに関連する。
タンデム圧延システムは、N(N≧3)基の圧延スタンドを有し、被圧延材を連続圧延する。
タンデム圧延システムは、最終目標マスフロー演算部と上流マスフロー制御部を備える。
最終目標マスフロー演算部は、最終スタンドである第Nスタンドの出側において計測された前記被圧延材の速度実績値と、前記被圧延材の製品仕様に応じて予め定めた最終スタンド出側板厚目標値とを乗算して、前記最終スタンドの出側マスフローである最終目標マスフローを算出する。
上流マスフロー制御部は、第iスタンド(1≦i≦N-2)の出側マスフローを前記最終目標マスフローと一致させるように、前記第iスタンドに設けられたアクチュエータまたは前記第iスタンドよりも上流に設けられたアクチュエータを制御する。
【0011】
第2の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記第iスタンドに設けられた前記アクチュエータは、ロール速度アクチュエータを含む。
前記上流マスフロー制御部は、前記最終目標マスフローを、前記被圧延材の製品仕様に応じて予め定めた第iスタンド出側板厚目標値または前記第iスタンドの出側において計測された第iスタンド出側板厚実績値で除算して第iスタンド出側速度目標値を算出する。
前記上流マスフロー制御部は、前記第iスタンドの出側における前記被圧延材の速度実績値を前記第iスタンド出側速度目標値に一致させるように、前記ロール速度アクチュエータで前記第iスタンドのワークロール速度を制御する。
【0012】
第3の観点は、第2の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記第iスタンドに設けられた前記アクチュエータは、ロールギャップを制御するロールギャップアクチュエータをさらに含む。
前記タンデム圧延システムは、前記第iスタンド出側板厚実績値を前記予め定めた第iスタンド出側板厚目標値に一致させるように、前記ロールギャップアクチュエータで前記第iスタンドの出側板厚を制御する板厚制御部、を備える。
【0013】
第4の観点は、第2又は第3の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記第iスタンド出側板厚実績値は、前記第iスタンドにおけるロールギャップ実績値および圧延荷重実績値に基づいて計算されたゲージメータ板厚である。
【0014】
第5の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記第iスタンドに設けられた前記アクチュエータは、ロールギャップを制御するロールギャップアクチュエータを含む。
前記上流マスフロー制御部は、前記最終目標マスフローを、前記第iスタンドの出側において計測された前記被圧延材の第iスタンド出側速度実績値で除算して新たな第iスタンド出側板厚目標値を算出する。
前記上流マスフロー制御部は、前記第iスタンドの出側において計測された第iスタンド出側板厚実績値を、前記新たな第iスタンド出側板厚目標値に一致させるように、前記ロールギャップアクチュエータで前記第iスタンドのロールギャップを制御する。
【0015】
第6の観点は、第5の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記第iスタンド出側板厚実績値は、前記第iスタンドにおけるロールギャップ実績値および圧延荷重実績値に基づいて計算されたゲージメータ板厚である。
【0016】
第7の観点は、第1の観点のいずれかに加えて、次の特徴を更に有する。
前記第iスタンドよりも上流に設けられた前記アクチュエータは、第i-1スタンド(2≦i≦N-2)に設けられたワークロール速度を制御するロール速度アクチュエータを含む。
前記タンデム圧延システムは、前記第iスタンド出側板厚実績値を前記被圧延材の製品仕様に応じて予め定めた第iスタンド出側板厚目標値に一致させるように、前記第i-1スタンドの前記ロール速度アクチュエータで前記第iスタンドの出側板厚を制御する板厚制御部をさらに備える。
前記上流マスフロー制御部は、前記最終目標マスフローを前記第iスタンドの出側において計測された前記被圧延材の第iスタンド出側速度実績値で除算して新たな第iスタンド出側板厚目標値を算出する。
前記上流マスフロー制御部は、前記板厚制御部が用いる前記予め定めた第iスタンド出側板厚目標値を前記新たな第iスタンド出側板厚目標値に更新する。
【0017】
第8の観点は、第1の観点のいずれかに加えて、次の特徴を更に有する。
前記第iスタンドに設けられた前記アクチュエータは、ロールギャップを制御するロールギャップアクチュエータをさらに含む。
前記タンデム圧延システムは、前記第iスタンド出側板厚実績値を前記被圧延材の製品仕様に応じて予め定めた第iスタンド出側板厚目標値と一致させるように、前記第iスタンドの前記ロールギャップアクチュエータで前記第iスタンドの出側板厚を制御する板厚制御部をさらに備える。
前記上流マスフロー制御部は、前記最終目標マスフローを前記第iスタンドの出側において計測された前記被圧延材の第iスタンド出側速度実績値で除算して新たな第iスタンド出側板厚目標値を算出する。
前記上流マスフロー制御部は、前記板厚制御部が用いる前記予め定めた第iスタンド出側板厚目標値を前記新たな第iスタンド出側板厚目標値に更新する。
【0018】
第9の観点は、第1の観点のいずれかに加えて、次の特徴を更に有する。
前記第iスタンドに設けられた前記アクチュエータは、ワークロール速度を制御する第iロール速度アクチュエータを含む。
前記第iスタンドよりも上流に設けられた前記アクチュエータは、第i-1スタンド(2≦i≦N-2)に設けられたワークロール速度を制御する第i-1ロール速度アクチュエータを含む。
前記タンデム圧延システムは、前記第iスタンド出側板厚実績値を前記被圧延材の製品仕様に応じて予め定めた第iスタンド出側板厚目標値に一致させるように、前記第i-1ロール速度アクチュエータで前記第iスタンドの出側板厚を制御する板厚制御部をさらに備える。
前記上流マスフロー制御部は、前記最終目標マスフローを、前記被圧延材の製品仕様に応じて予め定めた第iスタンド出側板厚目標値または前記第iスタンドの出側において計測された第iスタンド出側板厚実績値で除算して第iスタンド出側速度目標値を算出する。
前記上流マスフロー制御部は、前記第iスタンドの出側における前記被圧延材の速度実績値を前記第iスタンド出側速度目標値に一致させるように、前記第iロール速度アクチュエータで前記第iスタンドのワークロール速度を制御する。
【発明の効果】
【0019】
本開示に係るタンデム圧延システムは、被圧延材の製品仕様に応じて予め定めた最終スタンド出側板厚目標値と、最終スタンド(第Nスタンド)出側の被圧延材の速度実績値との積から最終目標マスフローを計算する。そして、タンデム圧延システムは、上流スタンド(第1~第N-2スタンド)出側のマスフローを当該最終目標マスフローに一致させるように板厚を制御する。これによれば、被圧延材の製品仕様に応じた最終スタンド出側板厚目標値を満たすために、上流スタンドの出側における板厚、あるいは被圧延材の速度が調整される。すなわち、最終スタンド出側板厚を速やかに修正できる。そのため、最終スタンド出側の板厚偏差を低減でき、最終スタンド出側板厚を良好に制御できる。また最終スタンドのひとつ上流スタンドのロール周速の操作量が小さくなるため、トラブルを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1スタンド1の出側板厚をロールギャップで板厚制御している場合に、第1スタンド1の出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。
図2】第3スタンド3の出側板厚を板厚制御していない場合に、第3スタンド3の出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。
図3】第1スタンド1の出側板厚をロールギャップで板厚制御している場合に、第1スタンド1の出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。
図4】第3スタンド3の出側板厚を板厚制御していない場合に、第3スタンド3の出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。
図5図4の変形例であり、板厚計33により計測された板厚の代わりにゲージメータ板厚を代用するケースについて説明するための図である。
図6】第3スタンドの出側板厚を板厚制御していない場合に、第3スタンドの出側のマスフローをロールギャップで制御するケースについて説明するための図である。
図7図6の変形例であり、板厚計33により計測された板厚の代わりにゲージメータ板厚を代用するケースについて説明するための図である。
図8】第3スタンド3の出側板厚を速度で板厚制御している場合に、第3スタンド3の出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。
図9】第1スタンドの出側板厚をロールギャップで板厚制御している場合に、第1スタンドの出側のマスフローをロールギャップで制御するケースについて説明するための図である。
図10】第3スタンドの出側板厚をロールギャップで板厚制御している場合に、第3スタンドの出側のマスフローをロールギャップで制御するケースについて説明するための図である。
図11】第3スタンド3の出側板厚を速度で板厚制御している場合に、(板厚制御の目標値を変更しないで)第3スタンド3の出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。
図12】第3スタンド3の出側板厚を速度で板厚制御している場合に、(板厚制御の目標値を変更しないで)第3スタンド3の出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。
図13】制御装置101のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
各実施の形態の説明に先立って、図1を参照して各実施の形態のタンデム冷間圧延システムにおいて共通する基本構成について説明する。
【0023】
1.タンデム冷間圧延機の基本構成
図1に示すタンデム冷間圧延システムは、タンデム冷間圧延機100を備える。
【0024】
タンデム冷間圧延機100は、被圧延材6を連続圧延するN(N≧3)基の圧延スタンドを有する。本明細書では、「圧延スタンド」を単に「スタンド」と称する。図1には、タンデムに配置された5基のスタンド(第1スタンド1~第5スタンド5)が例示されている。各スタンドは、ワークロールとバックアップロールを備える。
【0025】
各スタンドは、ワークロール速度を制御するロール速度アクチュエータを備える。ロール速度アクチュエータは例えば電動機を含む。図1には、第1スタンド1のロール速度アクチュエータ11と、第4スタンド4のロール速度アクチュエータ14とが例示されている。
【0026】
各スタンドは、ワークロールのロールギャップ(圧下量)を制御するロールギャップアクチュエータを備える。ロールギャップアクチュエータは例えば圧下装置を含む。図1には、第1スタンド1のロールギャップアクチュエータ21が例示されている。
【0027】
板厚計30は、第1スタンド1の入側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の板厚を計測する。板厚計31は、第1スタンド1の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の板厚を計測する。板厚計35は、最終スタンドである第5スタンド5の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の板厚を計測する。
【0028】
速度計40は、第1スタンド1の入側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の搬送速度を計測する。速度計41は、第1スタンド1の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の搬送速度を計測する。速度計45は、最終スタンドである第5スタンド5の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の搬送速度を計測する。
【0029】
なお、本明細書では冷間圧延のタンデム圧延機について例示しているが、熱間圧延のタンデム圧延機であってもよい。
【0030】
2.制御装置の基本構成(板厚制御)
タンデム冷間圧延機100の制御装置101は、後述する各図に示す、速度制御装置、圧下制御装置、FF制御装置、FB制御装置、上流スタンド制御装置70などを含み、板厚制御部および上流マスフロー制御部としての機能を有する。被圧延材6は、図1の左側から右側へ向かって搬送され、板厚制御によって所望の板厚に圧延される。例えば次のような板厚制御が実施される。
【0031】
図1を参照して第1スタンド1の出側板厚をロールギャップで板厚制御する板厚制御部の構成について説明する。
FF制御装置50は、板厚計30により計測された第1スタンド入側板厚実績値と、速度計40により計測された第1スタンド入側速度実績値とを入力する。FF制御装置50は、板厚が計測された被圧延材6の位置が第1スタンド1のワークロール直下に到達するタイミングで第1スタンド入側板厚実績値に応じた操作量を出力する。
【0032】
FB制御装置51は、板厚計31により計測された第1スタンド出側板厚実績値と、速度計41により計測された第1スタンド出側速度実績値とを入力する。FB制御装置51は、第1スタンド出側板厚実績値と被圧延材6の製品仕様に応じて予め定めた第1スタンド出側板厚目標値との差にゲイン(係数)を乗算した値に相関するFB補正操作量を出力する。ここで、ゲインは、速度計41により計測された第1スタンド出側速度実績値、または、ロール速度アクチュエータ11による第1スタンド1の圧延速度が大きいほど大きく設定される。
【0033】
FF制御装置50およびFB制御装置51のそれぞれから出力された操作量は、足し合わされた後、第1圧下制御装置91へ入力される。第1圧下制御装置91は、ロールギャップアクチュエータ21を駆動して、上下ワークロール間のロールギャップを調整することにより、第1スタンド1の出側板厚を制御する。
【0034】
このように、板厚制御部は、第1スタンド出側板厚実績値を予め定めた第1スタンド出側板厚目標値に一致させるように、ロールギャップアクチュエータ21で第1スタンド1の出側板厚を制御する。
【0035】
また、高度な板厚制御方法として、入側および出側の板厚計と速度計それぞれの測定値から第1スタンド1直下の被圧延材6の板厚を推定演算し(マスフロー板厚と呼ぶ)、これに基づいて板厚を制御するマスフロー板厚制御(図示省略)がある。さらに、ロールギャップアクチュエータ21を動かすことで第1スタンド1の入側の張力が変動することを抑えるため、同時に入側張力を測定し、入側ブライドル(図示省略)を操作する多変数制御、あるいは非干渉制御が適用されることもある。これらによれば,出側に設置された板厚計までの搬送によるむだ時間を無視することができ、高応答の板厚制御を実現できる。
【0036】
次に、図1を参照して第5スタンド5の出側板厚を速度で板厚制御する板厚制御部の構成について説明する。
FB制御装置54は、板厚計35により計測された第5スタンド出側板厚実績値と、速度計45により計測された第5スタンド出側速度実績値とを入力する。FB制御装置54は、第5スタンド出側板厚実績値と被圧延材6の製品仕様に応じて予め定めた第5スタンド出側板厚目標値との差にゲイン(係数)を乗算した値に相関するFB補正操作量を出力する。ここで、ゲインは、速度計45により計測された第5スタンド出側速度実績値が大きいほど大きく設定される。
【0037】
第4速度制御装置64は、FB制御装置54から入力したFB補正操作量に基づいて、ロール速度アクチュエータ14を駆動して、第4スタンド4のワークロール速度を調整することにより、第5スタンド5の出側板厚を制御する。
【0038】
このように、板厚制御部は、第5スタンド出側板厚実績値を予め定めた第5スタンド出側板厚目標値に一致させるように、第4スタンドのロール速度アクチュエータ14で第5スタンド5の出側板厚を制御する。
【0039】
実施の形態1.
図1および図2を参照して実施の形態1について説明する。
実施の形態1では、第iスタンドの出側板厚を速度で板厚制御していない場合に、第iスタンドの出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明する。実施の形態1では、第iスタンド出側の板厚制御に用いられるアクチュエータと、第iスタンド出側の上流マスフロー制御に用いられるアクチュエータは別である(図1)。
【0040】
図1は、第1スタンド1の出側板厚をロールギャップで板厚制御している場合に、第1スタンド1の出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。
図2は、第3スタンド3の出側板厚を板厚制御していない場合に、第3スタンド3の出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。
【0041】
1-1.図1(板厚制御:ロールギャップ / 上流マスフロー制御:速度)
まず、図1に示すタンデム冷間圧延システムについて説明する。
図1に示すタンデム冷間圧延機100および制御装置101の基本構成については、上述した通りであるため説明は省略する。
【0042】
制御装置101の特徴である上流マスフロー制御について説明する。制御装置101は、上流スタンド制御装置70を含む。上流スタンド制御装置70は、最終目標マスフロー演算部71、上流マスフロー制御部72を含む。
【0043】
最終目標マスフロー演算部71は、最終スタンドである第5スタンド5(第Nスタンド)の出側において計測された被圧延材6の速度実績値と、被圧延材6の製品仕様に応じて予め定めた最終スタンド出側板厚目標値とを乗算して、最終スタンドの出側マスフローである最終目標マスフローを算出する。
ここで、速度実績値は、速度計45により計測された計測値であってもよいし、最終スタンドの出側に設置される張力計ロールまたは形状計ロールの回転速度と、該当するロールのロール径の積から計算した計算値であってもよい。
【0044】
上流マスフロー制御部72は、第iスタンド(1≦i≦N-2)の出側マスフローを最終目標マスフローと一致させるように、第iスタンドに設けられたアクチュエータを制御する。
図1における上流マスフロー制御部72は、第1スタンド1の出側マスフローを最終目標マスフローと一致させるように、第1スタンド1に設けられたロール速度アクチュエータ11を制御する。
【0045】
上流マスフロー制御部72の処理について具体的に説明する。上流マスフロー制御部72は、第1スタンド出側速度演算部80、第1スタンド速度操作部81を含む。上流マスフロー制御部72は、第1速度制御装置61を含んでもよい。
【0046】
第1スタンド出側速度演算部80は、最終目標マスフロー演算部71から最終目標マスフローを入力する。第1スタンド出側速度演算部80は、最終目標マスフローを、被圧延材6の製品仕様に応じて予め定めた第1スタンド出側板厚目標値で除算して第1スタンド出側速度目標値を算出する。
【0047】
第1スタンド速度操作部81は、速度計41から第1スタンド1の出側における被圧延材6の速度実績値を、第1スタンド出側速度演算部80から第1スタンド出側速度目標値を、入力する。第1スタンド速度操作部81は、第1スタンド1の出側における被圧延材6の速度実績値を第1スタンド出側速度目標値に一致させるように、当該速度実績値と第1スタンド出側速度目標値との差に相当する補正操作量を第1速度制御装置61へ出力する。第1速度制御装置61は、当該補正操作量に応じてロール速度アクチュエータ11で第1スタンド1のワークロール速度を制御する。
【0048】
以上説明したように、図1に示すタンデム冷間圧延システムによれば、第1スタンド1の出側のマスフローを第5スタンド5の出側の最終目標マスフローに一致させることができる。最上流スタンドの出側のマスフローを早期に調整することで、最終スタンドにおける板厚変動を低減でき、迅速かつ良好に最終スタンドの出側板厚を制御することができる。
【0049】
ところで、上述した図1の説明では、第5スタンド5の出側における被圧延材6の速度実績値を、速度計45により計測された計測値、または最終スタンドの出側に設置される張力計ロール又は形状計ロールの回転速度と該当するロールのロール径の積から計算した計算値とした。この点、以降の説明において、他のスタンド(1~4)の出側および第1スタンド1の入側における被圧延材6の速度実績値についても同様である。
【0050】
1-2.図2(板厚制御:なし / 上流マスフロー制御:速度)
次に、図2に示すタンデム冷間圧延システムについて説明する。
図2は、第3スタンドの出側板厚を板厚制御していない場合に、第3スタンドの出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。図2に示すタンデム冷間圧延機100および制御装置101の基本構成については、図1と同様であるため説明は省略する。
【0051】
図2に示すタンデム冷間圧延機100は、速度計43を備える。速度計43は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の搬送速度を計測する。
【0052】
制御装置101の特徴である上流マスフロー制御について説明する。制御装置101は、上流スタンド制御装置70を含む。上流スタンド制御装置70は、最終目標マスフロー演算部71、上流マスフロー制御部72を含む。最終目標マスフロー演算部71の処理内容は、上述した図1と同様である。
【0053】
図2における上流マスフロー制御部72は、第3スタンド3の出側マスフローを最終目標マスフローと一致させるように、第3スタンド3に設けられたロール速度アクチュエータ13を制御する。
【0054】
上流マスフロー制御部72の処理について具体的に説明する。上流マスフロー制御部72は、第3スタンド出側速度演算部82、第3スタンド速度操作部83を含む。上流マスフロー制御部72は、第3速度制御装置63を含んでもよい。
【0055】
第3スタンド出側速度演算部82は、最終目標マスフロー演算部71から最終目標マスフローを入力する。第3スタンド出側速度演算部82は、最終目標マスフローを、被圧延材6の製品仕様に応じて予め定めた第3スタンド出側板厚目標値で除算して第3スタンド出側速度目標値を算出する。
【0056】
第3スタンド速度操作部83は、速度計43から第3スタンド3の出側における被圧延材6の速度実績値を、第3スタンド出側速度演算部82から第3スタンド出側速度目標値を、入力する。第3スタンド速度操作部83は、第3スタンド3の出側における被圧延材6の速度実績値を第3スタンド出側速度目標値に一致させるように、当該速度実績値と第3スタンド出側速度目標値との差に相当する補正操作量を第3速度制御装置63へ出力する。第3速度制御装置63は、当該補正操作量に応じてロール速度アクチュエータ13で第3スタンド3のワークロール速度を制御する。
【0057】
以上説明したように、図2に示すタンデム冷間圧延システムによれば、第3スタンド3の出側のマスフローを第5スタンド5の出側の最終目標マスフローに一致させることができる。上流スタンドの出側のマスフローを早期に調整することで、最終スタンドにおける板厚変動を低減でき、迅速かつ良好に最終スタンドの出側板厚を制御することができる。
【0058】
実施の形態2.
図3乃至図5を参照して実施の形態2について説明する。
実施の形態2では、第iスタンドの出側板厚を速度で板厚制御していない場合に、第iスタンドの出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明する。この点、実施の形態1と同じである。しかしながら、実施の形態1では、第1スタンド出側速度演算部80(第3スタンド出側速度演算部82)が、第1スタンド出側板厚目標値(第3スタンド出側板厚目標値)を用いているのに対して、実施の形態2では、第1スタンド出側速度演算部80a(第3スタンド出側速度演算部82a)が板厚実績値を用いている点で異なっている。
【0059】
なお、実施の形態2では、実施の形態1と同様に、第iスタンド出側の板厚制御に用いられるアクチュエータと、第iスタンド出側の上流マスフロー制御に用いられるアクチュエータは別である(図3)。
【0060】
図3は、第1スタンド1の出側板厚をロールギャップで板厚制御している場合に、第1スタンド1の出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。
図4は、第3スタンド3の出側板厚を板厚制御していない場合に、第3スタンド3の出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。
図5は、図4の変形例であり、板厚計33により計測された板厚の代わりにゲージメータ板厚を代用するケースについて説明するための図である。
【0061】
2-1.図3(板厚制御:ロールギャップ / 上流マスフロー制御:速度)
まず、図3に示すタンデム冷間圧延システムについて説明する。図3に示すタンデム冷間圧延機100および制御装置101の基本構成については、図1と同様であるため説明は省略する。
【0062】
制御装置101の特徴である上流マスフロー制御について説明する。制御装置101は、上流スタンド制御装置70を含む。上流スタンド制御装置70は、最終目標マスフロー演算部71、上流マスフロー制御部72を含む。最終目標マスフロー演算部71の処理内容は、上述した図1と同様である。
【0063】
図3における上流マスフロー制御部72は、第1スタンド1の出側マスフローを最終目標マスフローと一致させるように、第1スタンド1に設けられたロール速度アクチュエータ11を制御する。
【0064】
上流マスフロー制御部72の処理について具体的に説明する。上流マスフロー制御部72は、第1スタンド出側速度演算部80a、第1スタンド速度操作部81を含む。上流マスフロー制御部72は、第1速度制御装置61を含んでもよい。
【0065】
第1スタンド出側速度演算部80aは、最終目標マスフロー演算部71から最終目標マスフローを、板厚計31から第1スタンド出側板厚実績値を、入力する。第1スタンド出側速度演算部80aは、最終目標マスフローを、第1スタンド1の出側において計測された第1スタンド出側板厚実績値で除算して第1スタンド出側速度目標値を算出する。
【0066】
上述した図1と同様に、第1スタンド速度操作部81は、速度計41から第1スタンド1の出側における被圧延材6の速度実績値を、第1スタンド出側速度演算部80aから第1スタンド出側速度目標値を、入力する。第1スタンド速度操作部81は、第1スタンド1の出側における被圧延材6の速度実績値を第1スタンド出側速度目標値に一致させるように、当該速度実績値と第1スタンド出側速度目標値との差に相当する補正操作量を第1速度制御装置61へ出力する。第1速度制御装置61は、当該補正操作量に応じてロール速度アクチュエータ11で第1スタンド1のワークロール速度を制御する。
【0067】
以上説明したように、図3に示すタンデム冷間圧延システムによれば、上述した図1と同様に、第1スタンド1の出側のマスフローを第5スタンド5の出側の最終目標マスフローに一致させることができる。そのため、同様の効果を発揮することができる。
【0068】
2-2.図4(板厚制御:なし / 上流マスフロー制御:速度)
次に、図4に示すタンデム冷間圧延システムについて説明する。
図4は、第3スタンド3の出側板厚を板厚制御していない場合に、第3スタンド3の出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。図4に示すタンデム冷間圧延機100および制御装置101の基本構成については、図1と同様であるため説明は省略する。
【0069】
図4に示すタンデム冷間圧延機100は、板厚計33、速度計43を備える。板厚計33は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の板厚を計測する。速度計43は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の搬送速度を計測する。
【0070】
制御装置101の特徴である上流マスフロー制御について説明する。制御装置101は、上流スタンド制御装置70を含む。上流スタンド制御装置70は、最終目標マスフロー演算部71、上流マスフロー制御部72を含む。最終目標マスフロー演算部71の処理内容は、上述した図1と同様である。
【0071】
図4における上流マスフロー制御部72は、第3スタンド3の出側マスフローを最終目標マスフローと一致させるように、第3スタンド3に設けられたロール速度アクチュエータ13を制御する。
【0072】
上流マスフロー制御部72の処理について具体的に説明する。上流マスフロー制御部72は、第3スタンド出側速度演算部82a、第3スタンド速度操作部83を含む。上流マスフロー制御部72は、第3速度制御装置63を含んでもよい。
【0073】
第3スタンド出側速度演算部82aは、最終目標マスフロー演算部71から最終目標マスフローを、板厚計33から第3スタンド出側板厚実績値を、入力する。第3スタンド出側速度演算部82aは、最終目標マスフローを、第3スタンド3の出側において計測された第3スタンド出側板厚実績値で除算して第3スタンド出側速度目標値を算出する。
【0074】
上述した図2と同様に、第3スタンド速度操作部83は、速度計43から第3スタンド3の出側における被圧延材6の速度実績値を、第3スタンド出側速度演算部82aから第3スタンド出側速度目標値を、入力する。第3スタンド速度操作部83は、第3スタンド3の出側における被圧延材6の速度実績値を第3スタンド出側速度目標値に一致させるように、当該速度実績値と第3スタンド出側速度目標値との差に相当する補正操作量を第3速度制御装置63へ出力する。第3速度制御装置63は、当該補正操作量に応じてロール速度アクチュエータ13で第3スタンド3のワークロール速度を制御する。
【0075】
以上説明したように、図4に示すタンデム冷間圧延システムによれば、上述した図2と同様に、第3スタンド3の出側のマスフローを第5スタンド5の出側の最終目標マスフローに一致させることができる。そのため、同様の効果を発揮することができる。
【0076】
2-3.図5(板厚制御:なし / 上流マスフロー制御:速度)
次に、図5に示すタンデム冷間圧延システムについて説明する。
図5は、図4の変形例であり、板厚計33により計測された板厚の代わりにゲージメータ板厚を代用するケースについて説明するための図である。図5に示すタンデム冷間圧延機100および制御装置101の基本構成については、図1と同様であるため説明は省略する。
【0077】
図5に示すタンデム冷間圧延機100は、速度計43を備える。速度計43は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の搬送速度を計測する。
【0078】
制御装置101の特徴である上流マスフロー制御について説明する。制御装置101は、上流スタンド制御装置70を含む。上流スタンド制御装置70は、最終目標マスフロー演算部71、上流マスフロー制御部72を含む。最終目標マスフロー演算部71の処理内容は、上述した図1と同様である。
【0079】
図5における上流マスフロー制御部72は、第3スタンド3の出側マスフローを最終目標マスフローと一致させるように、第3スタンド3に設けられたロール速度アクチュエータ13を制御する。
【0080】
上流マスフロー制御部72の処理について具体的に説明する。上流マスフロー制御部72は、第3スタンド出側速度演算部82a、第3スタンド速度操作部83、第3スタンドゲージメータ板厚演算部84を含む。上流マスフロー制御部72は、第3速度制御装置63を含んでもよい。
【0081】
第3スタンドゲージメータ板厚演算部84は、第3スタンド3のロールギャップ実績値および圧延荷重実績値を入力する。第3スタンドゲージメータ板厚演算部84は、次式(1)を用いてゲージメータ板厚を算出する。
h=S+P/M ・・・(1)
ここで、hは出側板厚(ゲージメータ板厚)、Sはロールギャップ実績値、Pは圧延荷重実績値、Mは予め与えられたミル定数である。
【0082】
第3スタンド出側速度演算部82aは、最終目標マスフロー演算部71から最終目標マスフローを、第3スタンドゲージメータ板厚演算部84からゲージメータ板厚を、入力する。ゲージメータ板厚は、第3スタンド出側板厚実績値に相当する。第3スタンド出側速度演算部82aおよび第3スタンド速度操作部83の処理内容は、上述した図4と同様である。
【0083】
以上説明したように、図5に示すタンデム冷間圧延システムによれば、上述した図4と同様に、第3スタンド3の出側のマスフローを第5スタンド5の出側の最終目標マスフローに一致させることができる。そのため、同様の効果を発揮することができる。
【0084】
実施の形態3.
図6および図7を参照して実施の形態3について説明する。
実施の形態3では、第iスタンドの出側板厚をロールギャップで板厚制御していない場合に、第iスタンドの出側のマスフローをロールギャップで制御するケースについて説明する。上述した実施の形態1および実施の形態2では、第iスタンドの出側のマスフローを速度で制御しているのに対して、実施の形態3では、第iスタンドの出側のマスフローをロールギャップで制御している点で異なっている。
【0085】
図6は、第3スタンドの出側板厚を板厚制御していない場合に、第3スタンドの出側のマスフローをロールギャップで制御するケースについて説明するための図である。
図7は、図6の変形例であり、板厚計33により計測された板厚の代わりにゲージメータ板厚を代用するケースについて説明するための図である。
【0086】
3-1.図6(板厚制御:なし / 上流マスフロー制御:ロールギャップ)
まず、図6に示すタンデム冷間圧延システムについて説明する。図6に示すタンデム冷間圧延機100および制御装置101の基本構成については、図1と同様であるため説明は省略する。
【0087】
図6に示すタンデム冷間圧延機100は、板厚計33、速度計43を備える。板厚計33は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の板厚を計測する。速度計43は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の搬送速度を計測する。
【0088】
制御装置101の特徴である上流マスフロー制御について説明する。制御装置101は、上流スタンド制御装置70を含む。上流スタンド制御装置70は、最終目標マスフロー演算部71、上流マスフロー制御部72を含む。最終目標マスフロー演算部71の処理内容は、上述した図1と同様である。
【0089】
図6における上流マスフロー制御部72は、第3スタンド3の出側マスフローを最終目標マスフローと一致させるように、第3スタンド3に設けられたロールギャップアクチュエータ23を制御する。
【0090】
上流マスフロー制御部72の処理について具体的に説明する。上流マスフロー制御部72は、第3スタンド出側板厚目標値演算部85、第3スタンド圧下操作量演算部86、第3スタンド圧下操作部87を含む。上流マスフロー制御部72は、第3圧下制御装置93を含んでもよい。
【0091】
第3スタンド出側板厚目標値演算部85は、最終目標マスフロー演算部71から最終目標マスフローを、速度計43から第3スタンド3の出側における被圧延材6の速度実績値を、入力する。第3スタンド出側板厚目標値演算部85は、最終目標マスフローを、第3スタンドの出側において計測された被圧延材6の第3スタンド出側速度実績値で除算して新たな第3スタンド出側板厚目標値を算出する。
【0092】
第3スタンド圧下操作量演算部86は、板厚計33から第3スタンド出側板厚実績値を、第3スタンド出側板厚目標値演算部85から新たな第3スタンド出側板厚目標値を入力する。第3スタンド圧下操作量演算部86は、第3スタンドの出側において計測された第3スタンド出側板厚実績値を新たな第3スタンド出側板厚目標値に一致させるように、第3スタンド出側板厚実績値と新たな第3スタンド出側板厚目標値との差に相当する補正操作量を算出する。第3スタンド圧下操作部87は、当該補正操作量を第3圧下制御装置93へ出力する。第3圧下制御装置93は、当該補正操作量に応じてロールギャップアクチュエータ23で第3スタンド3のロールギャップを制御する。
【0093】
以上説明したように、図6に示すタンデム冷間圧延システムによれば、第3スタンド3のロールギャップアクチュエータ23を用いて、第3スタンド3の出側のマスフローを第5スタンド5の出側の最終目標マスフローに一致させることができる。上流スタンドの出側のマスフローを早期に調整することで、最終スタンドにおける板厚変動を低減でき、迅速かつ良好に最終スタンドの出側板厚を制御することができる。
【0094】
3-2.図7(板厚制御:なし / 上流マスフロー制御:ロールギャップ)
次に、図7に示すタンデム冷間圧延システムについて説明する。
図7は、図6の変形例であり、板厚計33により計測された板厚の代わりにゲージメータ板厚を代用するケースについて説明するための図である。図7に示すタンデム冷間圧延機100および制御装置101の基本構成については、図1と同様であるため説明は省略する。
【0095】
図7に示すタンデム冷間圧延機100は、速度計43を備える。速度計43は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の搬送速度を計測する。
【0096】
制御装置101の特徴である上流マスフロー制御について説明する。制御装置101は、上流スタンド制御装置70を含む。上流スタンド制御装置70は、最終目標マスフロー演算部71、上流マスフロー制御部72を含む。最終目標マスフロー演算部71の処理内容は、上述した図1と同様である。
【0097】
図7における上流マスフロー制御部72は、第3スタンド3の出側マスフローを最終目標マスフローと一致させるように、第3スタンド3に設けられたロールギャップアクチュエータ23を制御する。
【0098】
上流マスフロー制御部72の処理について具体的に説明する。上流マスフロー制御部72は、第3スタンドゲージメータ板厚演算部84、第3スタンド出側板厚目標値演算部85、第3スタンド圧下操作量演算部86a、第3スタンド圧下操作部87を含む。上流マスフロー制御部72は、第3圧下制御装置93を含んでもよい。
【0099】
第3スタンドゲージメータ板厚演算部84の処理内容は、上述した図5と同様である。すなわち、第3スタンドゲージメータ板厚演算部84は、第3スタンド3のロールギャップ実績値および圧延荷重実績値を入力する。第3スタンドゲージメータ板厚演算部84は、上述した式(1)を用いてゲージメータ板厚を算出する。
【0100】
第3スタンド出側板厚目標値演算部85の処理内容は、上述した図6と同様である。
【0101】
第3スタンド圧下操作量演算部86aは、第3スタンドゲージメータ板厚演算部84からゲージメータ板厚を、第3スタンド出側板厚目標値演算部85から新たな第3スタンド出側板厚目標値を、入力する。ゲージメータ板厚は、第3スタンド出側板厚実績値に相当する。第3スタンド圧下操作量演算部86aは、第3スタンドの出側において計測された第3スタンド出側板厚実績値を新たな第3スタンド出側板厚目標値に一致させるように、第3スタンド出側板厚実績値と新たな第3スタンド出側板厚目標値との差に相当する補正操作量を算出する。第3スタンド圧下操作部87は、当該補正操作量を第3圧下制御装置93へ出力する。第3圧下制御装置93は、当該補正操作量に応じてロールギャップアクチュエータ23で第3スタンド3のロールギャップを制御する。
【0102】
以上説明したように、図7に示すタンデム冷間圧延システムによれば、図6と同様に、第3スタンド3のロールギャップアクチュエータ23を用いて、第3スタンド3の出側のマスフローを第5スタンド5の出側の最終目標マスフローに一致させることができる。そのため、同様の効果を発揮することができる。
【0103】
実施の形態4.
図8を参照して実施の形態4について説明する。
実施の形態4では、第iスタンドの出側板厚を速度で板厚制御している場合に、第iスタンドの出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明する。
【0104】
実施の形態4では、実施の形態1~3と異なり、第iスタンド出側の板厚制御に用いられるアクチュエータと第iスタンド出側の上流マスフロー制御に用いられるアクチュエータと、は同じである。
【0105】
4-1.図8(板厚制御:速度 / 上流マスフロー制御:速度)
図8に示すタンデム冷間圧延システムについて説明する。図8は、第3スタンド3の出側板厚を速度で板厚制御している場合に、第3スタンド3の出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。図8に示すタンデム冷間圧延機100および制御装置101の基本構成については、図1と同様であるため説明は省略する。
【0106】
図8に示すタンデム冷間圧延機100は、板厚計33、速度計43を備える。板厚計33は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の板厚を計測する。速度計43は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の搬送速度を計測する。
【0107】
図8を参照して第3スタンド3の出側板厚を速度で板厚制御する板厚制御部の構成について説明する。
制御装置101のFB制御装置52は、板厚計33により計測された第3スタンド出側板厚実績値と、速度計43により計測された第3スタンド出側速度実績値とを入力する。FB制御装置52は、第3スタンド出側板厚実績値と被圧延材6の製品仕様に応じて予め定めた第3スタンド出側板厚目標値との差にゲイン(係数)を乗算した値に相関するFB補正操作量を出力する。ここで、ゲインは、速度計43により計測された第3スタンド出側速度実績値が大きいほど大きく設定される。
【0108】
第2速度制御装置62は、FB制御装置52から入力したFB補正操作量に基づいて、第2スタンド2のロール速度アクチュエータ12を駆動して、第2スタンド2のワークロール速度を調整することにより、第3スタンド3の出側板厚を制御する。
【0109】
このように、板厚制御部は、第3スタンド出側板厚実績値を被圧延材6の製品仕様に応じて予め定めた第3スタンド出側板厚目標値に一致させるように、第2スタンド2のロール速度アクチュエータ12で第3スタンド3の出側板厚を制御する。
【0110】
制御装置101の特徴である上流マスフロー制御について説明する。制御装置101は、上流スタンド制御装置70を含む。上流スタンド制御装置70は、最終目標マスフロー演算部71、上流マスフロー制御部72を含む。最終目標マスフロー演算部71の処理内容は、上述した図1と同様である。
【0111】
実施の形態4に係る上流マスフロー制御部72は、第iスタンド(1≦i≦N-2)の出側マスフローを最終目標マスフローと一致させるように、第iスタンドよりも上流に設けられたアクチュエータを制御する。
図8における上流マスフロー制御部72は、第3スタンド3の出側マスフローを最終目標マスフローと一致させるように、第2スタンド2に設けられたロール速度アクチュエータ12を制御する。
【0112】
上流マスフロー制御部72の処理について具体的に説明する。上流マスフロー制御部72は、第3スタンド出側板厚目標値演算部85を含む。上流マスフロー制御部72は、第2速度制御装置62を含んでもよい。
【0113】
第3スタンド出側板厚目標値演算部85の処理内容は、上述した図6と同様である。すなわち、第3スタンド出側板厚目標値演算部85は、最終目標マスフロー演算部71から最終目標マスフローを、速度計43から第3スタンド3の出側における被圧延材6の速度実績値を、入力する。第3スタンド出側板厚目標値演算部85は、最終目標マスフローを、第3スタンド3の出側において計測された被圧延材6の第3スタンド出側速度実績値で除算して新たな第3スタンド出側板厚目標値を算出する。
【0114】
上流マスフロー制御部72は、FB制御装置52(板厚制御部)が用いる予め定めた第3スタンド出側板厚目標値を、新たな第3スタンド出側板厚目標値に更新する。
【0115】
FB制御装置52は、第3スタンド出側板厚実績値を新たな第3スタンド出側板厚目標値に一致させるFB補正操作量を出力する。第2速度制御装置62は、FB補正操作量に基づいて第2スタンド2のロール速度アクチュエータ12を駆動して、第3スタンド3の出側板厚を制御する。
【0116】
以上説明したように、図8に示すタンデム冷間圧延システムによれば、第iスタンド出側の板厚制御および第iスタンド出側の上流マスフロー制御に、同じアクチュエータ(第i-1スタンドのロール速度アクチュエータ)が用いられる場合に、第iスタンド出側のマスフローを最終目標マスフローに一致させることができる。上流スタンドの出側のマスフローを早期に調整することで、最終スタンドにおける板厚変動を低減でき、迅速かつ良好に最終スタンドの出側板厚を制御することができる。
【0117】
実施の形態5.
図9および図10を参照して実施の形態5について説明する。
実施の形態5では、第iスタンドの出側板厚をロールギャップで板厚制御している場合に、第iスタンドの出側のマスフローをロールギャップで制御するケースについて説明する。
【0118】
実施の形態5では、実施の形態1~3と異なり、第iスタンド出側の板厚制御に用いられるアクチュエータと第iスタンド出側の上流マスフロー制御に用いられるアクチュエータと、は同じである。
【0119】
図9は、第1スタンドの出側板厚をロールギャップで板厚制御している場合に、第1スタンドの出側のマスフローをロールギャップで制御するケースについて説明するための図である。
図10は、第3スタンドの出側板厚をロールギャップで板厚制御している場合に、第3スタンドの出側のマスフローをロールギャップで制御するケースについて説明するための図である。
【0120】
5-1.図9(板厚制御:ロールギャップ / 上流マスフロー制御:ロールギャップ)
図9に示すタンデム冷間圧延システムについて説明する。図9に示すタンデム冷間圧延機100および制御装置101の基本構成(第1スタンド1の出側板厚をロールギャップで制御する板厚制御部(FB制御装置51)の構成を含む)については、図1と同様であるため説明は省略する。
【0121】
制御装置101の特徴である上流マスフロー制御について説明する。制御装置101は、上流スタンド制御装置70を含む。上流スタンド制御装置70は、最終目標マスフロー演算部71、上流マスフロー制御部72を含む。最終目標マスフロー演算部71の処理内容は、上述した図1と同様である。
【0122】
図9における上流マスフロー制御部72は、第1スタンド1の出側マスフローを最終目標マスフローと一致させるように、第1スタンド1に設けられたロールギャップアクチュエータ21を制御する。
【0123】
上流マスフロー制御部72の処理について具体的に説明する。上流マスフロー制御部72は、第1スタンド出側板厚目標値演算部88を含む。上流マスフロー制御部72は、第1圧下制御装置91を含んでもよい。
【0124】
第1スタンド出側板厚目標値演算部88は、最終目標マスフロー演算部71から最終目標マスフローを、速度計41から第1スタンド1の出側における被圧延材6の速度実績値を、入力する。第1スタンド出側板厚目標値演算部88は、最終目標マスフローを、第1スタンド1の出側において計測された被圧延材6の第1スタンド出側速度実績値で除算して新たな第1スタンド出側板厚目標値を算出する。
【0125】
上流マスフロー制御部72は、FB制御装置51(板厚制御部)が用いる予め定めた第1スタンド出側板厚目標値を、新たな第1スタンド出側板厚目標値に更新する。
【0126】
FB制御装置51は、第1スタンド出側板厚実績値を新たな第1スタンド出側板厚目標値に一致させるFB補正操作量を出力する。第1圧下制御装置91は、FB補正操作量に基づいて第1スタンド1のロールギャップアクチュエータ21を駆動して、第1スタンド1の出側板厚を制御する。
【0127】
以上説明したように、図9に示すタンデム冷間圧延システムによれば、第iスタンド出側の板厚制御および第iスタンド出側の上流マスフロー制御に、同じアクチュエータ(第iスタンドのロールギャップアクチュエータ)が用いられる場合に、第iスタンド出側のマスフローを最終目標マスフローに一致させることができる。上流スタンドの出側のマスフローを早期に調整することで、最終スタンドにおける板厚変動を低減でき、迅速かつ良好に最終スタンドの出側板厚を制御することができる。
【0128】
5-2.図10(板厚制御:ロールギャップ / 上流マスフロー制御:ロールギャップ)
次に、図10に示すタンデム冷間圧延システムについて説明する。
図10は、第3スタンドの出側板厚をロールギャップで板厚制御している場合に、第3スタンドの出側のマスフローをロールギャップで制御するケースについて説明するための図である。図10に示すタンデム冷間圧延機100および制御装置101の基本構成については、図1と同様であるため説明は省略する。
【0129】
図10に示すタンデム冷間圧延機100は、板厚計33、速度計43を備える。板厚計33は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の板厚を計測する。速度計43は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の搬送速度を計測する。
【0130】
図10を参照して第3スタンド3の出側板厚をロールギャップで板厚制御する板厚制御部の構成について説明する。
制御装置101のFB制御装置53は、板厚計33により計測された第3スタンド出側板厚実績値と、速度計43により計測された第3スタンド出側速度実績値とを入力する。FB制御装置53は、第3スタンド出側板厚実績値と被圧延材6の製品仕様に応じて予め定めた第3スタンド出側板厚目標値との差にゲイン(係数)を乗算した値に相関するFB補正操作量を出力する。ここで、ゲインは、速度計43により計測された第3スタンド出側速度実績値が大きいほど大きく設定される。
【0131】
第3圧下制御装置93は、FB制御装置53から入力したFB補正操作量に基づいて、ロールギャップアクチュエータ23を駆動して、第3スタンド3の上下ワークロール間のロールギャップを調整することにより、第3スタンド3の出側板厚を制御する。
【0132】
制御装置101の特徴である上流マスフロー制御について説明する。制御装置101は、上流スタンド制御装置70を含む。上流スタンド制御装置70は、最終目標マスフロー演算部71、上流マスフロー制御部72を含む。最終目標マスフロー演算部71の処理内容は、上述した図1と同様である。
【0133】
図10における上流マスフロー制御部72は、第3スタンド3の出側マスフローを最終目標マスフローと一致させるように、第3スタンド3に設けられたロールギャップアクチュエータ23を制御する。
【0134】
上流マスフロー制御部72の処理について具体的に説明する。上流マスフロー制御部72は、第3スタンド出側板厚目標値演算部85を含む。上流マスフロー制御部72は、第3圧下制御装置93を含んでもよい。
【0135】
第3スタンド出側板厚目標値演算部85の処理内容は、上述した図6と同様である。すなわち、第3スタンド出側板厚目標値演算部85は、最終目標マスフロー演算部71から最終目標マスフローを、速度計43から第3スタンド3の出側における被圧延材6の速度実績値を、入力する。第3スタンド出側板厚目標値演算部85は、最終目標マスフローを、第3スタンドの出側において計測された被圧延材6の第3スタンド出側速度実績値で除算して新たな第3スタンド出側板厚目標値を算出する。
【0136】
上流マスフロー制御部72は、FB制御装置53(板厚制御部)が用いる予め定めた第3スタンド出側板厚目標値を、新たな第3スタンド出側板厚目標値に更新する。
【0137】
FB制御装置53は、第3スタンド出側板厚実績値を新たな第3スタンド出側板厚目標値に一致させるFB補正操作量を出力する。第3圧下制御装置93は、FB補正操作量に基づいて第3スタンド3のロールギャップアクチュエータ23を駆動して、第1スタンド1の出側板厚を制御する。
【0138】
以上説明したように、図10に示すタンデム冷間圧延システムによれば、第iスタンド出側における板厚制御および上流マスフロー制御に、同じアクチュエータ(第iスタンドのロールギャップアクチュエータ)が用いられる場合に、第iスタンド出側のマスフローを最終目標マスフローに一致させることができる。上流スタンドの出側のマスフローを早期に調整することで、最終スタンドにおける板厚変動を低減でき、迅速かつ良好に最終スタンドの出側板厚を制御することができる。
【0139】
実施の形態6.
図11および図12を参照して実施の形態6について説明する。
実施の形態6では、第iスタンドの出側板厚を速度で板厚制御している場合に、第iスタンドの出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明する。この点、実施の形態4と同じである。しかしながら、実施の形態4では板厚制御の目標値を変更するのに対して、実施の形態6では板厚制御の目標値を変更しない点で異なっている。
【0140】
また、実施の形態6では、実施の形態1~3と異なり、第iスタンド出側の板厚制御に用いられるアクチュエータと第iスタンド出側の板厚制御に用いられるアクチュエータと、は同じである。また、板厚制御とマスフロー制御に用いるアクチュエータ(ロール速度)は実施の形態4と同じであるが、実施の形態6では板厚制御とマスフロー制御で用いるアクチュエータのスタンドが異なる。
【0141】
図11は、第3スタンド3の出側板厚を速度で板厚制御している場合に、(板厚制御の目標値を変更しないで)第3スタンド3の出側のマスフローを速度で制御するケースについて説明するための図である。
図12は、図11の変形例であり、予め定めた第3スタンド出側板厚目標値の代わりに板厚計33により計測された第3スタンド出側板厚実績値を代用するケースについて説明するための図である。
【0142】
6-1.図11(板厚制御:速度 / 上流マスフロー制御:速度)
まず、図11に示すタンデム冷間圧延システムについて説明する。図11に示すタンデム冷間圧延機100および制御装置101の基本構成については、図1と同様であるため説明は省略する。
【0143】
図11に示すタンデム冷間圧延機100は、板厚計33、速度計43を備える。板厚計33は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の板厚を計測する。速度計43は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の搬送速度を計測する。
【0144】
図11を参照して第3スタンド3の出側板厚を速度で板厚制御する板厚制御部の構成について説明する。
制御装置101のFB制御装置52は、板厚計33により計測された第3スタンド出側板厚実績値と、速度計43により計測された第3スタンド出側速度実績値とを入力する。FB制御装置52は、第3スタンド出側板厚実績値と被圧延材6の製品仕様に応じて予め定めた第3スタンド出側板厚目標値との差にゲイン(係数)を乗算した値に相関するFB補正操作量を出力する。ここで、ゲインは、速度計43により計測された第3スタンド出側速度実績値が大きいほど大きく設定される。
【0145】
第2速度制御装置62は、FB制御装置52から入力したFB補正操作量に基づいて、第2スタンド2のロール速度アクチュエータ12を駆動して、第2スタンド2のワークロール速度を調整することにより、第3スタンド3の出側板厚を制御する。
【0146】
このように、板厚制御部は、第3スタンド出側板厚実績値を被圧延材6の製品仕様に応じて予め定めた第3スタンド出側板厚目標値に一致させるように、第2スタンド2のロール速度アクチュエータ12で第3スタンド3の出側板厚を制御する。
【0147】
制御装置101の特徴である上流マスフロー制御について説明する。制御装置101は、上流スタンド制御装置70を含む。上流スタンド制御装置70は、最終目標マスフロー演算部71、上流マスフロー制御部72を含む。最終目標マスフロー演算部71の処理内容は、上述した図1と同様である。
【0148】
図11における上流マスフロー制御部72は、第3スタンド3の出側マスフローを最終目標マスフローと一致させるように、第3スタンド3に設けられたロール速度アクチュエータ13を制御する。
【0149】
上流マスフロー制御部72の処理について具体的に説明する。上流マスフロー制御部72は、第3スタンド出側速度演算部82、第3スタンド速度操作部83を含む。上流マスフロー制御部72は、第3速度制御装置63を含んでもよい。
【0150】
第3スタンド出側速度演算部82の処理内容は、上述した図2と同様である。すなわち、第3スタンド出側速度演算部82は、最終目標マスフロー演算部71から最終目標マスフローを入力する。第3スタンド出側速度演算部82は、最終目標マスフローを、被圧延材6の製品仕様に応じて予め定めた第3スタンド出側板厚目標値で除算して第3スタンド出側速度目標値を算出する。
【0151】
第3スタンド速度操作部83の処理内容は、上述した図2と同様である。すなわち、第3スタンド速度操作部83は、速度計43から第3スタンド3の出側における被圧延材6の速度実績値を、第3スタンド出側速度演算部82から第3スタンド出側速度目標値を、入力する。第3スタンド速度操作部83は、第3スタンド3の出側における被圧延材6の速度実績値を第3スタンド出側速度目標値に一致させるように、当該速度実績値と第3スタンド出側速度目標値との差に相当する補正操作量を第3速度制御装置63へ出力する。第3速度制御装置63は、当該補正操作量に応じてロール速度アクチュエータ13で第3スタンド3のワークロール速度を制御する。
【0152】
以上説明したように、図11に示すタンデム冷間圧延システムによれば、板厚制御の目標値を変更しないで第3スタンド3の出側のマスフローを第5スタンド5の出側の最終目標マスフローに一致させることができる。上流スタンドの出側のマスフローを早期に調整することで、最終スタンドにおける板厚変動を低減でき、迅速かつ良好に最終スタンドの出側板厚を制御することができる。
【0153】
6-2.図12(板厚制御:速度 / 上流マスフロー制御:速度)
次に、図12に示すタンデム冷間圧延システムについて説明する。
図12は、図11の変形例であり、予め定めた第3スタンド出側板厚目標値の代わりに板厚計33により計測された第3スタンド出側板厚実績値を代用するケースについて説明するための図である。図12に示すタンデム冷間圧延機100および制御装置101の基本構成については、図1と同様であるため説明は省略する。
【0154】
図12に示すタンデム冷間圧延機100は、板厚計33、速度計43を備える。板厚計33は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の板厚を計測する。速度計43は、第3スタンド3の出側に設けられ、直下を通過した被圧延材6の搬送速度を計測する。
【0155】
第3スタンド3の出側板厚を速度で板厚制御する板厚制御部の構成および処理内容については、上述した図11と同様であるため説明は省略する。
【0156】
制御装置101の特徴である上流マスフロー制御について説明する。制御装置101は、上流スタンド制御装置70を含む。上流スタンド制御装置70は、最終目標マスフロー演算部71、上流マスフロー制御部72を含む。最終目標マスフロー演算部71の処理内容は、上述した図1と同様である。
【0157】
図12における上流マスフロー制御部72は、第3スタンド3の出側マスフローを最終目標マスフローと一致させるように、第3スタンド3に設けられたロール速度アクチュエータ13を制御する。
【0158】
上流マスフロー制御部72の処理について具体的に説明する。上流マスフロー制御部72は、第3スタンド出側速度演算部82a、第3スタンド速度操作部83を含む。上流マスフロー制御部72は、第3速度制御装置63を含んでもよい。
【0159】
第3スタンド出側速度演算部82aの処理内容は、上述した図4と同様である。すなわち、第3スタンド出側速度演算部82aは、最終目標マスフロー演算部71から最終目標マスフローを、板厚計33から第3スタンド出側板厚実績値を、入力する。第3スタンド出側速度演算部82aは、最終目標マスフローを、第3スタンド3の出側において計測された第3スタンド出側板厚実績値で除算して第3スタンド出側速度目標値を算出する。
【0160】
第3スタンド速度操作部83の処理内容は、上述した図2図11)と同様である。すなわち、第3スタンド速度操作部83は、速度計43から第3スタンド3の出側における被圧延材6の速度実績値を、第3スタンド出側速度演算部82aから第3スタンド出側速度目標値を、入力する。第3スタンド速度操作部83は、第3スタンド3の出側における被圧延材6の速度実績値を第3スタンド出側速度目標値に一致させるように、当該速度実績値と第3スタンド出側速度目標値との差に相当する補正操作量を第3速度制御装置63へ出力する。第3速度制御装置63は、当該補正操作量に応じてロール速度アクチュエータ13で第3スタンド3のワークロール速度を制御する。
【0161】
以上説明したように、図12に示すタンデム冷間圧延システムによれば、上述した図11と同様に、第3スタンド3の出側のマスフローを第5スタンド5の出側の最終目標マスフローに一致させることができる。そのため、同様の効果を発揮することができる。
【0162】
<ハードウェア構成例>
図13は、上述した各実施の形態における制御装置101が有する処理回路のハードウェア構成例を示す概念図である。制御装置の機能は処理回路により実現される。一態様として、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ111と少なくとも1つのメモリ112とを備える。他の態様として、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア113を備える。
【0163】
処理回路がプロセッサ111とメモリ112とを備える場合、各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、メモリ112に格納される。プロセッサ111は、メモリ112に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
【0164】
処理回路が専用のハードウェア113を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、又はこれらを組み合わせたものである。各機能は処理回路で実現される。
【0165】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、上述した実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【符号の説明】
【0166】
1 第1スタンド
2 第2スタンド
3 第3スタンド
4 第4スタンド
5 第5スタンド
6 被圧延材
11~14 ロール速度アクチュエータ
21,23 ロールギャップアクチュエータ
30,31,33,35 板厚計
40,41,43,45 速度計
50 FF制御装置
51~54 FB制御装置
61 第1速度制御装置
62 第2速度制御装置
63 第3速度制御装置
64 第4速度制御装置
70 上流スタンド制御装置
71 最終目標マスフロー演算部
72 上流マスフロー制御部
80,80a 第1スタンド出側速度演算部
81 第1スタンド速度操作部
82,82a 第3スタンド出側速度演算部
83 第3スタンド速度操作部
84 第3スタンドゲージメータ板厚演算部
85 第3スタンド出側板厚目標値演算部
86,86a 第3スタンド圧下操作量演算部
87 第3スタンド圧下操作部
88 第1スタンド出側板厚目標値演算部
91 第1圧下制御装置
93 第3圧下制御装置
100 タンデム冷間圧延機
101 制御装置
111 プロセッサ
112 メモリ
113 ハードウェア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13