(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ及びコンデンサアレイ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/048 20060101AFI20240925BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H01G9/048 F
H01G9/15
(21)【出願番号】P 2024501305
(86)(22)【出願日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2023003893
(87)【国際公開番号】W WO2023157705
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2024-07-17
(31)【優先権主張番号】P 2022022020
(32)【優先日】2022-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】土生 大樹
(72)【発明者】
【氏名】古川 剛史
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-4417(JP,A)
【文献】国際公開第2021/158879(WO,A1)
【文献】特開2008-130722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/048- H01G 9/055
H01G 9/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の主面に多孔質層を有する陽極板と、
前記多孔質層の表面上に設けられた誘電体層と、
前記誘電体層の表面上に設けられた陰極層と、
絶縁材料からなり、かつ、前記多孔質層の周縁で前記陰極層を囲む領域に設けられたマスク層と、
絶縁材料からなり、かつ、前記多孔質層における、前記陰極層によって囲まれた領域で前記マスク層と離隔して設けられた支柱層と、を備え、
前記陰極層は、前記誘電体層の表面上に設けられた固体電解質層と、前記固体電解質層の表面上に設けられた導電体層と、を含み、
前記固体電解質層は、前記誘電体層の細孔の内部を含む領域に設けられた第1固体電解質層と、前記第1固体電解質層を覆う第2固体電解質層と、を含
み、
前記陰極層と前記マスク層と前記支柱層とを含む、厚み方向に沿う断面を見たとき、
前記第1固体電解質層は、前記陽極板の最表面上の前記誘電体層の表面上において、前記マスク層に接する外側部分と、前記支柱層に接し、かつ、前記外側部分に接しない内側部分と、を含み、
前記第2固体電解質層の少なくとも一部は、前記第1固体電解質層の前記外側部分と前記内側部分との間の領域で、前記誘電体層の細孔の内部に入り込んでいる、ことを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
樹脂材料を含み、かつ、前記導電体層を覆う絶縁部を更に備える、請求項
1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記支柱層を厚み方向に貫通するスルーホール導体を更に備える、請求項1
又は2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記スルーホール導体は、前記支柱層を厚み方向に貫通する貫通孔の少なくとも内壁面上に設けられ、かつ、前記貫通孔の内壁面で前記陽極板に電気的に接続されている、請求項
3に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記導電体層は、金属フィラーを含有する金属層を含む、請求項1
又は2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
請求項1
又は2に記載の固体電解コンデンサを複数備える、ことを特徴とするコンデンサアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサ及びコンデンサアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多孔質層を表面に有し、多孔質層の壁面に形成された誘電体膜を備える弁作用金属基体と、誘電体膜上に設けられた固体電解質層とを備える固体電解コンデンサであって、固体電解質層は、多孔質層内に入り込んでいる内層と、内層の上に形成され、その少なくとも一部が多孔質層内に入り込んでいる外層とを有する、ことを特徴とする固体電解コンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の固体電解コンデンサのような、複数の異種材料の層で構成される従来の固体電解コンデンサでは、熱処理が施されると、各層の線膨張係数等の熱特性の違いにより、熱応力が発生しやすくなる。特に、従来の固体電解コンデンサでは、多孔質層と固体電解質層との間での線膨張係数等の熱特性の違いにより、多孔質層と固体電解質層との間に熱応力が加わりやすくなる。その結果、従来の固体電解コンデンサでは、柔らかい多孔質層が変形しやすくなり、これに伴って、多孔質層と固体電解質層との間でのデラミネーションが発生しやすくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、デラミネーションの発生を抑制可能な固体電解コンデンサを提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記固体電解コンデンサを有するコンデンサアレイを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の固体電解コンデンサは、少なくとも一方の主面に多孔質層を有する陽極板と、上記多孔質層の表面上に設けられた誘電体層と、上記誘電体層の表面上に設けられた陰極層と、絶縁材料からなり、かつ、上記多孔質層の周縁で上記陰極層を囲む領域に設けられたマスク層と、絶縁材料からなり、かつ、上記多孔質層における、上記陰極層によって囲まれた領域で上記マスク層と離隔して設けられた支柱層と、を備え、上記陰極層は、上記誘電体層の表面上に設けられた固体電解質層と、上記固体電解質層の表面上に設けられた導電体層と、を含み、上記固体電解質層は、上記誘電体層の細孔の内部を含む領域に設けられた第1固体電解質層と、上記第1固体電解質層を覆う第2固体電解質層と、を含む、ことを特徴とする。
【0007】
本発明のコンデンサアレイは、本発明の固体電解コンデンサを複数備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、デラミネーションの発生を抑制可能な固体電解コンデンサを提供できる。また、本発明によれば、上記固体電解コンデンサを有するコンデンサアレイを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1の固体電解コンデンサの一例を示す斜視模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す固体電解コンデンサの線分A1-A2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態2の固体電解コンデンサの一例を示す斜視模式図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す固体電解コンデンサの線分B1-B2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す固体電解コンデンサの線分C1-C2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態3の固体電解コンデンサの一例を示す断面模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態4の固体電解コンデンサの一例を示す断面模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態5のコンデンサアレイの一例を示す斜視模式図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すコンデンサアレイの線分D1-D2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態6のコンデンサアレイの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の固体電解コンデンサと本発明のコンデンサアレイとについて説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0011】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示す構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施形態2以降では、実施形態1と共通の事項についての記載は省略し、異なる点を主に説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎に逐次言及しない。
【0012】
以下の説明において、各実施形態を特に区別しない場合、単に「本発明の固体電解コンデンサ」及び「本発明のコンデンサアレイ」と言う。
【0013】
以下に示す図面は模式図であり、その寸法、縦横比の縮尺等は実際の製品と異なる場合がある。
【0014】
[実施形態1]
本発明の固体電解コンデンサは、少なくとも一方の主面に多孔質層を有する陽極板と、多孔質層の表面上に設けられた誘電体層と、誘電体層の表面上に設けられた陰極層と、絶縁材料からなり、かつ、多孔質層の周縁で陰極層を囲む領域に設けられたマスク層と、絶縁材料からなり、かつ、多孔質層における、陰極層によって囲まれた領域でマスク層と離隔して設けられた支柱層と、を備える。本発明の固体電解コンデンサにおいて、陰極層は、誘電体層の表面上に設けられた固体電解質層と、固体電解質層の表面上に設けられた導電体層と、を含む。本発明の固体電解コンデンサにおいて、固体電解質層は、誘電体層の細孔の内部を含む領域に設けられた第1固体電解質層と、第1固体電解質層を覆う第2固体電解質層と、を含む。
【0015】
以下では、本発明の固体電解コンデンサの一例を、本発明の実施形態1の固体電解コンデンサとして説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態1の固体電解コンデンサの一例を示す斜視模式図である。
図2は、
図1に示す固体電解コンデンサの線分A1-A2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。
【0017】
図1及び
図2に示す固体電解コンデンサ1は、陽極板10と、誘電体層20と、陰極層30と、マスク層40と、支柱層50と、を有している。
【0018】
陽極板10は、芯部11と、多孔質層12と、を有している。
【0019】
本明細書中、「板」には、「シート」、「箔」、「フィルム」等も含まれ、厚みによってこれらを区別しない。
【0020】
芯部11は、金属からなり、中でも弁作用金属からなることが好ましい。芯部11が弁作用金属からなる場合、陽極板10は、弁作用金属基体とも呼ばれる。
【0021】
弁作用金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム等の金属単体、これらの金属単体の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
【0022】
多孔質層12は、芯部11の少なくとも一方の主面上に設けられている。つまり、多孔質層12は、芯部11の一方の主面上のみに設けられていてもよいし、
図2に示すように芯部11の両方の主面上に設けられていてもよい。このように、陽極板10は、少なくとも一方の主面に多孔質層12を有している。これにより、陽極板10の表面積が大きくなるため、固体電解コンデンサ1の容量が向上しやすくなる。
【0023】
多孔質層12は、陽極板10の表面がエッチング処理されてなるエッチング層であることが好ましい。
【0024】
陽極板10の形状は、平板状であることが好ましく、箔状であることがより好ましい。このように、本明細書中では、「板状」に「箔状」も含まれる。また、本明細書中では、「板状」に、「シート状」、「フィルム状」等も含まれる。
【0025】
誘電体層20は、多孔質層12の表面上に設けられている。より具体的には、誘電体層20は、多孔質層12に存在する各細孔の表面(輪郭)に沿って設けられている。
【0026】
誘電体層20は、上述した弁作用金属の酸化皮膜からなることが好ましい。例えば、陽極板10がアルミニウム箔である場合、陽極板10に対して、アジピン酸アンモニウム等を含む水溶液中で陽極酸化処理(化成処理とも呼ばれる)を行うことにより、誘電体層20となる酸化皮膜が形成される。誘電体層20は多孔質層12の表面に沿って形成されるため、誘電体層20には細孔(凹部)が設けられることになる。
【0027】
陰極層30は、誘電体層20の表面上に設けられている。より具体的には、陰極層30は、誘電体層20の表面上における、マスク層40によって囲まれた領域に設けられている。
【0028】
陰極層30は、誘電体層20の表面上に設けられた固体電解質層31と、固体電解質層31の表面上に設けられた導電体層32と、を含んでいる。
【0029】
固体電解質層31は、誘電体層20の細孔の内部を含む領域に設けられた第1固体電解質層31Aと、第1固体電解質層31Aを覆う第2固体電解質層31Bと、を含んでいる。
【0030】
第1固体電解質層31Aは、誘電体層20の細孔の内部のみに設けられていてもよいし、誘電体層20の細孔の内部を充填しつつ、誘電体層20の細孔の外部に延びるように設けられていてもよい。
【0031】
第2固体電解質層31Bは、第1固体電解質層31Aを覆いつつ、誘電体層20の細孔を覆うように設けられていることが好ましい。
【0032】
第2固体電解質層31Bが誘電体層20の細孔を覆うように設けられている場合、第2固体電解質層31Bは、誘電体層20の細孔の内部に入り込んでいてもよいし、誘電体層20の細孔の内部に入り込んでいなくてもよい。
【0033】
第2固体電解質層31Bが、誘電体層20の細孔を覆いつつ、誘電体層20の細孔の内部に入り込んでいる場合、第2固体電解質層31Bと誘電体層20との接触面積が大きくなる、更には、第2固体電解質層31Bのアンカー効果により、多孔質層12と固体電解質層31との間でのデラミネーションの発生が抑制されやすくなる。
【0034】
固体電解質層31の構成材料、より具体的には、第1固体電解質層31A及び第2固体電解質層31Bの構成材料としては、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類等の導電性高分子等が挙げられる。中でも、ポリチオフェン類が好ましく、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が特に好ましい。また、導電性高分子は、ポリスチレンスルホン酸(PSS)等のドーパントを含んでいてもよい。
【0035】
第1固体電解質層31A及び第2固体電解質層31Bの構成材料は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0036】
第1固体電解質層31Aは、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等の導電性高分子の分散液を誘電体層20の表面に塗工して乾燥させる方法、3,4-エチレンジオキシチオフェン等の重合性モノマーを含む処理液を用いて、誘電体層20の表面上にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等の重合膜を形成する方法等により、誘電体層20の細孔の内部を含む所定の領域に形成される。
【0037】
第2固体電解質層31Bは、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等の導電性高分子の分散液を第1固体電解質層31Aの表面に塗工して乾燥させる方法、3,4-エチレンジオキシチオフェン等の重合性モノマーを含む処理液を用いて、第1固体電解質層31Aの表面上にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等の重合膜を形成する方法等により、第1固体電解質層31Aを覆う所定の領域に形成される。
【0038】
本発明の固体電解コンデンサにおいて、導電体層は、金属フィラーを含有する金属層を含むことが好ましい。
【0039】
導電体層32は、金属フィラーを含有する金属層を含むことが好ましい。
【0040】
金属フィラーは、銅フィラー、銀フィラー、及び、ニッケルフィラーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0041】
金属層は、例えば、金属めっき膜、金属箔等であってもよい。この場合、金属層は、銅、銀、ニッケル、及び、これらの金属の少なくとも1種を主成分とする合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属からなることが好ましい。
【0042】
本明細書中、主成分は、重量割合が最も大きい元素成分を意味する。
【0043】
導電体層32は、金属層に加えて、導電性樹脂層を更に含むことが好ましい。
【0044】
導電性樹脂層としては、例えば、銅フィラー、銀フィラー、ニッケルフィラー、及び、カーボンフィラーからなる群より選択される少なくとも1種の導電性フィラーを含有する導電性接着剤層等が挙げられる。
【0045】
なお、導電体層32は、金属層のみを含んでいてもよいし、導電性樹脂層のみを含んでいてもよいし、金属層及び導電性樹脂層の両方を含んでいてもよい。
【0046】
図1及び
図2に示す例では、導電体層32が、第2固体電解質層31Bの表面上に設けられた第1導電体層32Aと、第1導電体層32Aの表面上に設けられた第2導電体層32Bと、を含んでいる。このように、導電体層32は、複数種類の導電体層を含んでいることが好ましい。
【0047】
固体電解コンデンサでは、誘電体層の厚みが小さいために漏れ電流が問題となりやすい。これに対して、固体電解コンデンサ1では、導電体層32が第1導電体層32A及び第2導電体層32Bといった複数種類の導電体層を含んでいることにより、陰極層30に複数のバルク抵抗及び界面抵抗が存在することになるため、漏れ電流が抑制されやすくなる。
【0048】
第1導電体層32Aは、導電性フィラーを含有する導電性樹脂層であることが好ましい。
【0049】
第2導電体層32Bは、金属フィラーを含有する金属層であることが好ましい。
【0050】
導電体層32は、例えば、第1導電体層32Aとしてのカーボン層と、第2導電体層32Bとしての銅層と、を含んでいてもよい。
【0051】
カーボン層は、例えば、カーボンフィラーを含有するカーボンペーストを、スポンジ転写法、スクリーン印刷法、ディスペンサ塗布法、インクジェット印刷法等で第2固体電解質層31Bの表面に塗工することにより、所定の領域に形成される。
【0052】
銅層は、例えば、銅フィラーを含有する銅ペーストを、スポンジ転写法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法、ディスペンサ塗布法、インクジェット印刷法等でカーボン層の表面に塗工することにより、所定の領域に形成される。
【0053】
なお、第1導電体層32Aと第2固体電解質層31Bとの間には、第1固体電解質層31A及び第2固体電解質層31Bと異なる固体電解質層が介在していてもよい。
【0054】
固体電解コンデンサ1では、陽極板10、誘電体層20、及び、陰極層30により、コンデンサ部が構成されている。
【0055】
マスク層40は、絶縁材料からなる。
【0056】
マスク層40を構成する絶縁材料としては、例えば、ポリフェニルスルホン(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、シアン酸エステル樹脂、フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等)、可溶性ポリイミドシロキサン及びエポキシ樹脂からなる組成物、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、これらの誘導体又は前駆体等が挙げられる。
【0057】
マスク層40は、多孔質層12の周縁で陰極層30を囲む領域に設けられている。
【0058】
図1に示すように、マスク層40は、多孔質層12の周縁の全体に設けられていることが好ましい。なお、多孔質層12の周縁の一部には、マスク層40が設けられていない領域が存在していてもよい。
【0059】
図1及び
図2に示す例では、マスク層40が、陽極板10の最表面から内部に向かって厚み方向に延びるように設けられている。
【0060】
本明細書中、厚み方向は、固体電解コンデンサの厚み方向を意味し、例えば、
図2では上下方向で定められる。
【0061】
マスク層40は、厚み方向において、
図2に示すように芯部11に接していてもよいし、芯部11に接していなくてもよい。
【0062】
厚み方向に沿う断面を見たとき、厚み方向に直交する方向におけるマスク層40の寸法は、
図2に示すように陽極板10の最表面から内部に向かって小さくなっていてもよいし、陽極板10の最表面から内部に向かって大きくなっていてもよいし、陽極板10の最表面から内部に向かって一定であってもよい。
【0063】
厚み方向に沿う断面を見たとき、厚み方向に直交する方向におけるマスク層40の寸法は、
図2に示すように、芯部11側の端部で、芯部11と反対側の端部よりも小さくてもよいし、芯部11側の端部で、芯部11と反対側の端部よりも大きくてもよいし、芯部11側の端部と、芯部11と反対側の端部とで同じであってもよい。
【0064】
マスク層40は、多孔質層12の外部で、厚み方向において、陰極層30に重なっていてもよいし、陰極層30に重なっていなくてもよい。
【0065】
マスク層40は、例えば、絶縁材料を、多孔質層12の周縁に重なる陽極板10の最表面に塗工して、陽極板10の最表面から内部に向かって浸透させることにより、多孔質層12の周縁で、陰極層30の形成領域又は形成予定領域を囲むように形成される。
【0066】
マスク層40は、多孔質層12に対して、誘電体層20よりも前のタイミングで形成されてもよいし、誘電体層20よりも後のタイミングで形成されてもよい。
【0067】
支柱層50は、絶縁材料からなる。
【0068】
支柱層50を構成する絶縁材料としては、例えば、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、シアン酸エステル樹脂、フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等)、可溶性ポリイミドシロキサン及びエポキシ樹脂からなる組成物、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、これらの誘導体又は前駆体等が挙げられる。
【0069】
支柱層50を構成する絶縁材料は、マスク層40を構成する絶縁材料と同じであることが好ましい。なお、支柱層50を構成する絶縁材料は、マスク層40を構成する絶縁材料と異なっていてもよい。
【0070】
支柱層50は、多孔質層12における、陰極層30によって囲まれた領域でマスク層40と離隔して設けられている。言い換えれば、支柱層50は、多孔質層12における、陰極層30によって囲まれ、かつ、マスク層40によって囲まれた領域に設けられている。
図1及び
図2に示す例では、支柱層50が、厚み方向から見たときの多孔質層12の略中央部に設けられている。
【0071】
複数の異種材料の層で構成される従来の固体電解コンデンサでは、例えば、固体電解質層を熱硬化性樹脂で形成する際の熱硬化処理、固体電解コンデンサを基板に実装する際のリフロー処理等の熱処理が施されると、多孔質層と固体電解質層との間での線膨張係数等の熱特性の違いにより、多孔質層と固体電解質層との間に熱応力が加わりやすくなる。この際、多孔質層と固体電解質層との間に加わる熱応力は、厚み方向から見たときに、固体電解コンデンサの周縁から中央に向かう大きな収縮力として作用する。その結果、従来の固体電解コンデンサでは、柔らかい多孔質層が変形しやすくなり、これに伴って、多孔質層と固体電解質層との間でのデラミネーションが発生しやすくなる。このような多孔質層と固体電解質層との間でのデラミネーションは、固体電解コンデンサが厚み方向に薄い場合、厚み方向から見たときの固体電解コンデンサの面積が大きい場合等に、特に顕著に発生しやすくなる。
【0072】
これに対して、固体電解コンデンサ1では、支柱層50が設けられていることにより、多孔質層12と固体電解質層31との間に加わる熱応力が、支柱層50で分断される。より具体的には、多孔質層12と固体電解質層31との間に加わる熱応力は、厚み方向から見たときに、マスク層40から支柱層50に向かう応力と、支柱層50からマスク層40に向かう応力とに分かれて作用する。その結果、固体電解コンデンサ1では、多孔質層12と固体電解質層31との間に加わる熱応力が、マスク層40から支柱層50に向かう方向と、支柱層50からマスク層40に向かう方向とで打ち消し合いやすくなる。そのため、固体電解コンデンサ1では、多孔質層12が変形しにくくなり、これに伴って、多孔質層12と固体電解質層31との間でのデラミネーションが発生しにくくなる。特に、マスク層40及び支柱層50の近傍では、多孔質層12と固体電解質層31との間でのデラミネーションが顕著に発生しにくくなる。更に、固体電解コンデンサ1では、厚み方向に薄い場合、厚み方向から見たときの面積が大きい場合等であっても、多孔質層12と固体電解質層31との間でのデラミネーションが発生しにくくなる。
【0073】
固体電解コンデンサ1では、上述した多孔質層12と固体電解質層31との間でのデラミネーションの発生のみが抑制可能となるわけではない。例えば、固体電解コンデンサ1では、導電体層32が、金属フィラーを含有する金属層を含み、固体電解質層31と導電体層32との間の線膨張係数等の熱特性の違いが大きくなり得る場合であっても、支柱層50の作用により、固体電解質層31と導電体層32との間でのデラミネーションの発生が抑制可能となる。
【0074】
以上のように、固体電解コンデンサ1では、複数の異種材料の層で構成され、これらの層の間で線膨張係数等の熱特性の違いがあっても、複数の異種材料の層の間でのデラミネーションの発生が抑制可能となる。
【0075】
更に、固体電解コンデンサ1では、支柱層50が設けられていることにより、外力による変形が抑制される。
【0076】
図1及び
図2に示す例では、支柱層50が、陽極板10の最表面から内部に向かって厚み方向に延びるように設けられている。支柱層50は、厚み方向において、
図2に示すように芯部11に接していてもよいし、芯部11に接していなくてもよい。
【0077】
支柱層50が厚み方向において芯部11に接している場合、支柱層50が厚み方向において芯部11に接していない場合と比較して、支柱層50の存在領域を大きくすることができるため、その分、デラミネーションの発生を抑制できる。
【0078】
支柱層50が厚み方向において芯部11に接していない場合、支柱層50が厚み方向において芯部11に接している場合と比較して、支柱層50が存在する絶縁領域を小さくできるため、その分、固体電解コンデンサ1の容量の低下を抑制できる。
【0079】
厚み方向に沿う断面を見たとき、厚み方向に直交する方向における支柱層50の寸法は、
図2に示すように陽極板10の最表面から内部に向かって小さくなっていてもよいし、陽極板10の最表面から内部に向かって大きくなっていてもよいし、陽極板10の最表面から内部に向かって一定であってもよい。
【0080】
厚み方向に沿う断面を見たとき、厚み方向に直交する方向における支柱層50の寸法は、
図2に示すように、芯部11側の端部で、芯部11と反対側の端部よりも小さくてもよいし、芯部11側の端部で、芯部11と反対側の端部よりも大きくてもよいし、芯部11側の端部と、芯部11と反対側の端部とで同じであってもよい。
【0081】
支柱層50は、多孔質層12の外部で、厚み方向において、陰極層30に重なっていてもよいし、陰極層30に重なっていなくてもよい。
【0082】
厚み方向から見たときの支柱層50の平面形状は、例えば、円形状、楕円形状、多角形状等である。
【0083】
デラミネーションの発生を抑制する観点で、支柱層50の線膨張係数と陽極板10の線膨張係数との差は、好ましくは100ppm/K以下であり、特に好ましくは20ppm/K以下である。
【0084】
デラミネーションの発生を抑制する観点で、支柱層50の弾性率は、好ましくは2GPa以下であり、特に好ましくは50MPa以下である。この場合、支柱層50が熱応力の起点となりにくくなる。
【0085】
支柱層50は、例えば、絶縁材料を、マスク層40の形成領域又は形成予定領域に重ならない陽極板10の最表面に塗工して、陽極板10の最表面から内部に向かって厚み方向に浸透させることにより、多孔質層12において、陰極層30の形成領域又は形成予定領域によって囲まれ、かつ、マスク層40の形成領域又は形成予定領域と離隔するように形成される。
【0086】
支柱層50は、多孔質層12に対して、マスク層40と同じタイミングで形成されてもよいし、マスク層40と異なるタイミングで形成されてもよい。支柱層50がマスク層40と異なるタイミングで形成される場合、支柱層50は、マスク層40よりも前のタイミングで形成されてもよいし、マスク層40よりも後のタイミングで形成されてもよい。
【0087】
支柱層50は、多孔質層12に対して、誘電体層20よりも前のタイミングで形成されてもよいし、誘電体層20よりも後のタイミングで形成されてもよい。
【0088】
固体電解コンデンサ1は、例えば、以下の方法で製造される。
【0089】
まず、芯部11の両方の主面上に多孔質層12を有する陽極板10、すなわち、両方の主面に多孔質層12を有する陽極板10を準備する。そして、陽極板10に対して陽極酸化処理を行うことにより、誘電体層20となる酸化皮膜を、多孔質層12の表面上に形成する。
【0090】
次に、絶縁材料を、陽極板10の最表面に塗工して、陽極板10の最表面から内部に向かって厚み方向に浸透させることにより、多孔質層12において、マスク層40を、陰極層30の形成予定領域を囲むように形成し、更には、支柱層50を、マスク層40によって囲まれた領域でマスク層40と離隔するように形成する。
【0091】
この際、複数の固体電解コンデンサ1を効率的に製造する観点で、陰極層30を複数の領域に形成することを想定して、マスク層40及び支柱層50を各々複数形成する。なお、陰極層30を1つの領域のみに形成することを想定して、マスク層40及び支柱層50を各々1つずつ形成してもよい。
【0092】
そして、マスク層40によって囲まれ、かつ、支柱層50を囲む各領域に対して、導電性高分子の分散液を誘電体層20の表面に塗工して乾燥させる処理を複数回繰り返すことにより、第1固体電解質層31Aを、誘電体層20の細孔の内部に形成する。その後、導電性高分子の分散液を第1固体電解質層31Aの表面に塗工して乾燥させることにより、第2固体電解質層31Bを、第1固体電解質層31Aを覆うように形成する。このようにして、第1固体電解質層31A及び第2固体電解質層31Bを含む固体電解質層31を形成する。
【0093】
続いて、導電性フィラーを含有する導電性ペーストを、第2固体電解質層31Bの表面に塗工することにより、第2固体電解質層31Bの表面上に設けられた第1導電体層32Aを形成する。その後、金属フィラーを含有する金属ペーストを、第1導電体層32Aの表面に塗工することにより、第1導電体層32Aの表面上に設けられた第2導電体層32Bを形成する。このようにして、第1導電体層32A及び第2導電体層32Bを含む導電体層32を形成する。
【0094】
以上により、複数のコンデンサ部を有する固体電解コンデンサシートを作製する。
【0095】
その後、固体電解コンデンサシートを、各々のコンデンサ部が独立し、かつ、マスク層40が多孔質層12の周縁に位置するように切断して個片化することにより、固体電解コンデンサ1を製造する。
【0096】
[実施形態2]
本発明の実施形態2の固体電解コンデンサでは、本発明の実施形態1の固体電解コンデンサと異なり、陰極層とマスク層と支柱層とを含む、厚み方向に沿う断面を見たとき、第1固体電解質層が、陽極板の最表面上の誘電体層の表面上において、マスク層に接する外側部分と、支柱層に接し、かつ、外側部分に接しない内側部分と、を含み、第2固体電解質層の少なくとも一部が、第1固体電解質層の外側部分と内側部分との間の領域で、誘電体層の細孔の内部に入り込んでいる。
【0097】
図3は、本発明の実施形態2の固体電解コンデンサの一例を示す斜視模式図である。
図4は、
図3に示す固体電解コンデンサの線分B1-B2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。
【0098】
図3に示す固体電解コンデンサ2について、
図4に示すように、陰極層30とマスク層40と支柱層50とを含む、厚み方向に沿う断面を見たとき、第1固体電解質層31Aは、陽極板10の最表面上の誘電体層20の表面上(
図4では、点線で概ね示される表面上)において、マスク層40に接する外側部分31Aaと、支柱層50に接し、かつ、外側部分31Aaに接しない内側部分31Abと、を含んでいる。
【0099】
図5は、
図3に示す固体電解コンデンサの線分C1-C2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。なお、
図3中の線分C1-C2は、
図4中の線分C1-C2に対応している。
【0100】
図3に示す固体電解コンデンサ2について、
図5に示すように、陽極板10の最表面上の誘電体層20の表面上で、陰極層30とマスク層40と支柱層50とを含む、厚み方向に直交する方向に沿う断面を見たときも、第1固体電解質層31Aは、マスク層40に接する外側部分31Aaと、支柱層50に接し、かつ、外側部分31Aaに接しない内側部分31Abと、を含んでいる。
【0101】
上述したように、支柱層50の近傍では、多孔質層12と固体電解質層31との間でのデラミネーションが顕著に発生しにくくなる。固体電解コンデンサ2では、デラミネーションが発生しにくい支柱層50の近傍に、支柱層50に接する内側部分31Abを有する第1固体電解質層31Aが設けられていることにより、第1固体電解質層31Aの優れた導電性が発揮されやすくなる。そのため、固体電解コンデンサ2では、等価直列抵抗(ESR)が低下しやすくなり、更には、容量が低下しにくくなる。
【0102】
図5に示すように、第1固体電解質層31Aの外側部分31Aaは、マスク層40の内縁の全体に沿って設けられていることが好ましい。なお、第1固体電解質層31Aの外側部分31Aaは、マスク層40の内縁の一部に沿って設けられていてもよい。
【0103】
図5に示すように、第1固体電解質層31Aの内側部分31Abは、支柱層50の外縁の全体に沿って設けられていることが好ましい。なお、第1固体電解質層31Aの内側部分31Abは、支柱層50の外縁の一部に沿って設けられていてもよい。
【0104】
第1固体電解質層31Aは、陽極板10の最表面上の誘電体層20の表面上では、外側部分31Aa及び内側部分31Abに離隔された構成を有している。その一方で、第1固体電解質層31Aは、陽極板10の内部では、外側部分31Aa及び内側部分31Abから陽極板10の内部に向かって延びた部分が接続された構成を有している。
【0105】
図4に示すように、第2固体電解質層31Bの少なくとも一部は、第1固体電解質層31Aの外側部分31Aaと第1固体電解質層31Aの内側部分31Abとの間の領域で、誘電体層20の細孔の内部に入り込んでいる。第2固体電解質層31Bの少なくとも一部が誘電体層20の細孔の内部に入り込んでいると、第2固体電解質層31Bと誘電体層20との接触面積が大きくなる、更には、第2固体電解質層31Bのアンカー効果により、多孔質層12と固体電解質層31との間でのデラミネーションの発生が抑制されやすくなる。
【0106】
固体電解コンデンサ2は、例えば、以下の方法で製造される。
【0107】
まず、上述した固体電解コンデンサ1の製造方法と同様にして、両方の主面に多孔質層12を有する陽極板10に対して誘電体層20を形成し、更に、マスク層40及び支柱層50を形成する。
【0108】
そして、マスク層40によって囲まれ、かつ、支柱層50を囲む各領域に対して、導電性高分子の分散液を誘電体層20の表面に塗工して乾燥させる処理を複数回繰り返すことにより、第1固体電解質層31Aを形成する。第1固体電解質層31Aを形成する際、陽極板10の最表面上の誘電体層20の表面上において、マスク層40及び支柱層50の近傍には、誘電体層20の細孔の内部を充填しつつ、誘電体層20の細孔の外部に延びるような表層膜を形成する。この際、上述した表層膜が、陽極板10の最表面全体に形成されないように、つまり、マスク層40及び支柱層50の近傍以外の領域に形成されないように、導電性高分子の分散液の塗工量を調節する。以上により、陽極板10の最表面上の誘電体層20の表面上において、マスク層40に接する外側部分31Aaと、支柱層50に接し、かつ、外側部分31Aaに接しない内側部分31Abと、を含むように、第1固体電解質層31Aを形成する。
【0109】
その後、導電性高分子の分散液を第1固体電解質層31Aの表面に塗工して乾燥させることにより、第1固体電解質層31Aの外側部分31Aaと内側部分31Abとの間の領域で、誘電体層20の細孔の内部に少なくとも一部が入り込むように、第2固体電解質層31Bを形成する。
【0110】
続いて、上述した固体電解コンデンサ1の製造方法と同様にして、第1導電体層32A及び第2導電体層32Bを含む導電体層32を形成することにより、固体電解コンデンサシートを作製する。
【0111】
その後、固体電解コンデンサシートを、各々のコンデンサ部が独立し、かつ、マスク層40が多孔質層12の周縁に位置するように切断して個片化することにより、固体電解コンデンサ2を製造する。
【0112】
[実施形態3]
本発明の実施形態3の固体電解コンデンサは、本発明の実施形態2の固体電解コンデンサと異なり、樹脂材料を含み、かつ、導電体層を覆う絶縁部を更に備える。
【0113】
図6は、本発明の実施形態3の固体電解コンデンサの一例を示す断面模式図である。
【0114】
図6に示す固体電解コンデンサ3は、
図3、
図4、及び、
図5に示す固体電解コンデンサ2の構成に加えて、絶縁部60Aと、ビア導体70と、を更に有している。
【0115】
絶縁部60Aは、樹脂材料を含んでいる。
【0116】
絶縁部60Aに含まれる樹脂材料としては、例えば、エポキシ、フェノール、ポリイミド等が挙げられる。
【0117】
絶縁部60Aは、樹脂材料に加えて、シリカ、アルミナ等の無機フィラーを更に含んでいてもよい。
【0118】
絶縁部60Aは、導電体層32を覆っている。
図6に示す例では、絶縁部60Aが、導電体層32に加えて、マスク層40及び支柱層50を更に覆っている。
【0119】
固体電解コンデンサ3では、導電体層32を覆う絶縁部60Aが設けられていることにより、外力による変形が抑制され、これに伴って、デラミネーションの発生も抑制される。
【0120】
図6に示す例では、陽極板10の一部、特に、芯部11の端面が絶縁部60Aから露出するように、絶縁部60Aが設けられている。これにより、絶縁部60Aが設けられていても、陽極板10が絶縁部60Aの外部に接続可能となる。
【0121】
絶縁部60Aは、例えば、樹脂シートを、導電体層32を覆うように貼り付ける方法、樹脂ペーストを、導電体層32を覆うように塗工する方法等により、所定の領域に形成される。
【0122】
ビア導体70は、厚み方向において、絶縁部60Aの表面から陰極層30に達するように、より具体的には、絶縁部60Aの表面から第2導電体層32Bに達するように設けられている。これにより、陰極層30が、ビア導体70を介して絶縁部60Aの外部に電気的に導出され、絶縁部60Aの外部に電気的に接続可能となる。
【0123】
ビア導体70の構成材料としては、例えば、銀、金、銅等の低抵抗の金属が挙げられる。
【0124】
ビア導体70は、例えば、以下のようにして形成される。まず、絶縁部60Aに対して、ドリル加工、レーザー加工等を行うことにより、厚み方向において、絶縁部60Aの表面から陰極層30に達する、ここでは、絶縁部60Aの表面から第2導電体層32Bに達する孔を設ける。そして、絶縁部60Aに設けられた孔に対して、内壁面にめっき処理を行ったり、導電性ペーストを充填した後に熱処理を行ったりすることにより、ビア導体70を形成する。
【0125】
固体電解コンデンサ3は、例えば、以下の方法で製造される。
【0126】
まず、上述した固体電解コンデンサ2の製造方法と同様にして、固体電解コンデンサシートを作製する。
【0127】
次に、固体電解コンデンサシートの両方の主面に樹脂シートを貼り付けることにより、導電体層32を覆う絶縁部60Aを形成する。これにより、固体電解コンデンサアレイシートを作製する。
【0128】
そして、固体電解コンデンサアレイシートを、各々のコンデンサ部が独立し、かつ、マスク層40が多孔質層12の周縁に位置するように切断する。その後、切断によって設けられた溝を埋めるように、樹脂シートを圧着する。切断によって設けられた溝を埋めるように圧着された樹脂シートは、後述する絶縁部60Bに相当する。
【0129】
続いて、絶縁部60Aに対して、ドリル加工、レーザー加工等を行うことにより、厚み方向において、絶縁部60Aの表面から第2導電体層32Bに達する孔を設ける。そして、絶縁部60Aに設けられた孔に導電性ペーストを充填した後、熱処理を行うことにより、ビア導体70を形成する。
【0130】
ビア導体70については、固体電解コンデンサアレイシートを切断して溝を埋める工程の後に形成してもよいし、固体電解コンデンサアレイシートを切断して溝を埋める工程の前に形成してもよい。
【0131】
その後、固体電解コンデンサアレイシートを、各々のコンデンサ部が独立するように切断して個片化することにより、固体電解コンデンサ3を製造する。
【0132】
[実施形態4]
本発明の実施形態4の固体電解コンデンサは、本発明の実施形態1の固体電解コンデンサと異なり、支柱層を厚み方向に貫通するスルーホール導体を更に備える。本発明の実施形態4の固体電解コンデンサにおいて、スルーホール導体は、支柱層を厚み方向に貫通する貫通孔の少なくとも内壁面上に設けられ、かつ、貫通孔の内壁面で陽極板に電気的に接続されていることが好ましい。
【0133】
図7は、本発明の実施形態4の固体電解コンデンサの一例を示す断面模式図である。
【0134】
図7に示す固体電解コンデンサ4は、
図6に示す固体電解コンデンサ3の構成に加えて、スルーホール導体80Aを更に有している。
【0135】
スルーホール導体80Aは、支柱層50を厚み方向に貫通している。
図7に示す例では、スルーホール導体80Aが、支柱層50に加えて、陽極板10(芯部11)及び絶縁部60Aを厚み方向に貫通している。
【0136】
固体電解コンデンサ4では、支柱層50を厚み方向に貫通するスルーホール導体80Aが設けられていることにより、支柱層50に電気的な機能が付与される。
【0137】
スルーホール導体80Aは、支柱層50を厚み方向に貫通する貫通孔81Aの少なくとも内壁面上に設けられていることが好ましい。
図7に示す例では、スルーホール導体80Aが、支柱層50及び陽極板10(芯部11)を厚み方向に貫通する貫通孔81Aの内部全体に設けられている。
【0138】
スルーホール導体80Aは、貫通孔81Aの内壁面で陽極板10に電気的に接続されていることが好ましい。より具体的には、スルーホール導体80Aは、厚み方向に直交する方向において貫通孔81Aの内壁面に対向する陽極板10の端面に電気的に接続されていることが好ましい。
図7に示す例では、スルーホール導体80Aが、陽極板10の端面、特に、芯部11の端面に接続されている。これにより、陽極板10が、スルーホール導体80Aを介して外部に電気的に導出される。つまり、支柱層50に、陽極板10を外部に電気的に導出する電気的な機能が付与される。
【0139】
厚み方向から見たとき、スルーホール導体80Aは、貫通孔81Aの全周にわたって陽極板10に電気的に接続されていることが好ましい。これにより、スルーホール導体80Aと陽極板10との接続抵抗が低下しやすくなるため、固体電解コンデンサ4の等価直列抵抗が低下しやすくなる。
【0140】
スルーホール導体80Aは、例えば、以下のようにして形成される。まず、ドリル加工、レーザー加工等を行うことにより、絶縁部60A、支柱層50、及び、陽極板10(芯部11)を厚み方向に貫通する貫通孔81Aを設ける。そして、貫通孔81Aの内壁面を、銅、金、銀等の低抵抗の金属でメタライズすることにより、スルーホール導体80Aを形成する。スルーホール導体80Aを形成する際、例えば、貫通孔81Aの内壁面を、無電解銅めっき処理、電解銅めっき処理等でメタライズすることにより、加工が容易になる。なお、スルーホール導体80Aを形成する方法については、貫通孔81Aの内壁面をメタライズする方法以外に、金属、金属と樹脂との複合材料等を貫通孔81Aに充填する方法であってもよい。
【0141】
固体電解コンデンサ4は、例えば、以下の方法で製造される。
【0142】
まず、上述した固体電解コンデンサ3の製造方法と同様にして、固体電解コンデンサアレイシートを作製する。
【0143】
次に、固体電解コンデンサアレイシートを、各々のコンデンサ部が独立し、かつ、マスク層40が多孔質層12の周縁に位置するように切断する。その後、切断によって設けられた溝を埋めるように、樹脂シートを圧着する。切断によって設けられた溝を埋めるように圧着された樹脂シートは、後述する絶縁部60Bに相当する。
【0144】
そして、固体電解コンデンサアレイシートに対して、ドリル加工、レーザー加工等を行うことにより、絶縁部60A、支柱層50、及び、陽極板10(芯部11)を厚み方向に貫通する貫通孔81Aを設ける。そして、貫通孔81Aの内壁面を、銅、金、銀等の低抵抗の金属でメタライズすることにより、スルーホール導体80Aを形成する。
【0145】
スルーホール導体80Aについては、固体電解コンデンサアレイシートを切断して溝を埋める工程の後に形成してもよいし、固体電解コンデンサアレイシートを切断して溝を埋める工程の前に形成してもよい。
【0146】
続いて、絶縁部60Aに対して、ドリル加工、レーザー加工等を行うことにより、厚み方向において、絶縁部60Aの表面から第2導電体層32Bに達する孔を設ける。そして、絶縁部60Aに設けられた孔に導電性ペーストを充填した後、熱処理を行うことにより、ビア導体70を形成する。
【0147】
ビア導体70については、固体電解コンデンサアレイシートを切断して溝を埋める工程の後に形成してもよいし、固体電解コンデンサアレイシートを切断して溝を埋める工程の前に形成してもよい。
【0148】
ビア導体70については、スルーホール導体80Aを形成する工程の後に形成してもよいし、スルーホール導体80Aを形成する工程の前に形成してもよい。
【0149】
その後、固体電解コンデンサアレイシートを、各々のコンデンサ部が独立するように切断して個片化することにより、固体電解コンデンサ4を製造する。
【0150】
[実施形態5]
本発明のコンデンサアレイは、本発明の固体電解コンデンサを複数備える。
【0151】
以下では、本発明のコンデンサアレイの一例を、本発明の実施形態3の固体電解コンデンサを複数有する本発明の実施形態5のコンデンサアレイとして説明する。
【0152】
図8は、本発明の実施形態5のコンデンサアレイの一例を示す斜視模式図である。
図9は、
図8に示すコンデンサアレイの線分D1-D2に沿う断面の一例を示す断面模式図である。
【0153】
図8及び
図9に示すコンデンサアレイ101は、
図6に示す固体電解コンデンサ3を複数有している。
図8及び
図9に示す例では、コンデンサアレイ101が、2つの固体電解コンデンサ3を有している。
【0154】
上述したように、多孔質層と固体電解質層との間でのデラミネーションは、厚み方向から見たときの固体電解コンデンサの面積が大きい場合に、特に顕著に発生しやすくなる。この傾向は、固体電解コンデンサがアレイ状に配置されたコンデンサアレイにおいても同様であり、厚み方向から見たときの面積が大きくなりやすいコンデンサアレイにおいても、多孔質層と固体電解質層との間でのデラミネーションが顕著に発生しやすくなる。
【0155】
これに対して、複数の固体電解コンデンサ3がアレイ状に配置されたコンデンサアレイ101では、外力による変形が抑制されつつ、複数の異種材料の層の間でのデラミネーション、特に、多孔質層12と固体電解質層31との間でのデラミネーションが発生しにくくなる。
【0156】
また、複数の固体電解コンデンサ3をアレイ状に配置してコンデンサアレイ101とすることにより、市場の要望に対して容量及び位置が最適化された多チャンネル構成のコンデンサアレイを提供できる。
【0157】
更に、複数の固体電解コンデンサ3がアレイ状に配置されたコンデンサアレイ101を用いることにより、複数の固体電解コンデンサ3を効率的に基板に実装できる。
【0158】
複数の固体電解コンデンサ3は、平面状に配置されていてもよいし、直線状に配置されていてもよい。
【0159】
複数の固体電解コンデンサ3は、規則的に配置されていてもよいし、不規則的に配置されていてもよい。
【0160】
厚み方向から見たときの複数の固体電解コンデンサ3の面積は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよいし、一部で異なっていてもよい。
【0161】
厚み方向から見たときの複数の固体電解コンデンサ3の平面形状は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよいし、一部で異なっていてもよい。
【0162】
コンデンサアレイ101は、複数の固体電解コンデンサ3の間、ここでは、2つの固体電解コンデンサ3の間を埋める絶縁部60Bを更に有していることが好ましい。
【0163】
絶縁部60Bは、樹脂材料を含むことが好ましい。
【0164】
絶縁部60Bに含まれる樹脂材料としては、例えば、エポキシ、フェノール、ポリイミド等が挙げられる。
【0165】
絶縁部60Bは、樹脂材料に加えて、シリカ、アルミナ等の無機フィラーを更に含んでいてもよい。
【0166】
絶縁部60Bに含まれる樹脂材料は、絶縁部60Aに含まれる樹脂材料と同じであってもよいし、絶縁部60Aに含まれる樹脂材料と異なっていてもよい。
【0167】
絶縁部60Bの構成材料は、絶縁部60Aの構成材料と同じであってもよいし、絶縁部60Aの構成材料と異なっていてもよい。
【0168】
絶縁部60Bの構成材料が絶縁部60Aの構成材料と同じである場合、
図8及び
図9に示すように、絶縁部60A及び絶縁部60Bが一体化し、両者の界面が明瞭に現れないことが多い。なお、絶縁部60Aと絶縁部60Bとの界面は、明瞭に現れていてもよい。
【0169】
絶縁部60Bは、絶縁部60Aが、複数の固体電解コンデンサ3の間、ここでは、2つの固体電解コンデンサ3の間に延びて構成される部分であってもよい。つまり、絶縁部60Bは、絶縁部60Aに含まれていてもよい。
【0170】
絶縁部60Bは、例えば、樹脂シートを圧着する方法、樹脂ペーストを塗工する方法等で、複数の固体電解コンデンサ3の間、ここでは、2つの固体電解コンデンサ3の間を埋めることにより形成される。
【0171】
コンデンサアレイ101は、例えば、上述した固体電解コンデンサ3の製造過程において、固体電解コンデンサアレイシートを、所望の数のコンデンサ部、ここでは、2つのコンデンサ部が含まれるように切断して個片化することにより製造される。
【0172】
[実施形態6]
本発明の実施形態6のコンデンサアレイは、本発明の実施形態5のコンデンサアレイと異なり、本発明の実施形態4の固体電解コンデンサを含む複数の固体電解コンデンサを有している。
【0173】
図10は、本発明の実施形態6のコンデンサアレイの一例を示す断面模式図である。
【0174】
図10に示すコンデンサアレイ102は、
図7に示す固体電解コンデンサ4を有している。
【0175】
コンデンサアレイ102は、固体電解コンデンサ4に加えて、固体電解コンデンサ5を更に有している。
【0176】
コンデンサアレイ102は、固体電解コンデンサ4及び固体電解コンデンサ5からなる組を複数有していてもよい。
【0177】
固体電解コンデンサ5は、
図6に示す固体電解コンデンサ3の構成に加えて、絶縁部60C及びスルーホール導体80Bを更に有している。
【0178】
絶縁部60Cは、支柱層50を厚み方向に貫通している。
図10に示す例では、絶縁部60Cが、支柱層50に加えて、陽極板10(芯部11)を厚み方向に貫通している。
【0179】
絶縁部60Cは、樹脂材料を含むことが好ましい。
【0180】
絶縁部60Cに含まれる樹脂材料としては、例えば、エポキシ、フェノール、ポリイミド等が挙げられる。
【0181】
絶縁部60Cは、樹脂材料に加えて、シリカ、アルミナ等の無機フィラーを更に含んでいてもよい。
【0182】
絶縁部60Cに含まれる樹脂材料は、絶縁部60Aに含まれる樹脂材料と同じであってもよいし、絶縁部60Aに含まれる樹脂材料と異なっていてもよい。
【0183】
絶縁部60Cの構成材料は、絶縁部60Aの構成材料と同じであってもよいし、絶縁部60Aの構成材料と異なっていてもよい。
【0184】
絶縁部60Cの構成材料が絶縁部60Aの構成材料と同じである場合、
図10に示すように、絶縁部60A及び絶縁部60Cが一体化し、両者の界面が明瞭に現れないことが多い。なお、絶縁部60Aと絶縁部60Cとの界面は、明瞭に現れていてもよい。
【0185】
絶縁部60Cは、絶縁部60Aが、支柱層50を貫通するように延びて構成される部分であってもよい。つまり、絶縁部60Cは、絶縁部60Aに含まれていてもよい。
【0186】
絶縁部60Cに含まれる樹脂材料は、絶縁部60Bに含まれる樹脂材料と同じであってもよいし、絶縁部60Bに含まれる樹脂材料と異なっていてもよい。
【0187】
絶縁部60Cの構成材料は、絶縁部60Bの構成材料と同じであってもよいし、絶縁部60Bの構成材料と異なっていてもよい。
【0188】
絶縁部60Cは、例えば、以下のようにして形成される。まず、ドリル加工、レーザー加工等を行うことにより、絶縁部60A、支柱層50、及び、陽極板10(芯部11)を厚み方向に貫通する貫通孔を設ける。そして、樹脂シートを圧着する方法、樹脂ペーストを塗工する方法等で貫通孔を埋めることにより、絶縁部60Cを形成する。
【0189】
スルーホール導体80Bは、絶縁部60Cを厚み方向に貫通している。
図10に示す例では、スルーホール導体80Bが、絶縁部60A、支柱層50、及び、陽極板10(芯部11)を厚み方向に貫通する貫通孔の内壁面上に存在する絶縁部60Cで囲まれた領域に設けられている。
【0190】
スルーホール導体80Bは、絶縁部60Cを厚み方向に貫通する貫通孔81Bの少なくとも内壁面上に設けられていることが好ましい。
図10に示す例では、スルーホール導体80Bが、絶縁部60Cを厚み方向に貫通する貫通孔81Bの内部全体に設けられている。
【0191】
スルーホール導体80Bは、陰極層30に電気的に接続されていることが好ましい。例えば、ビア導体70の表面とスルーホール導体80Bの表面とにわたるように導電部(図示せず)が設けられていると、スルーホール導体80Bが、導電部及びビア導体70を介して陰極層30に電気的に接続されることになる。この場合、コンデンサアレイ102の小型化が可能となる。
【0192】
スルーホール導体80Bは、例えば、以下のようにして形成される。まず、ドリル加工、レーザー加工等を行うことにより、絶縁部60A、支柱層50、及び、陽極板10(芯部11)を厚み方向に貫通する貫通孔を設ける。次に、樹脂シートを圧着する方法、樹脂ペーストを塗工する方法等で貫通孔を埋めることにより、絶縁部60Cを形成する。そして、絶縁部60Cに対して、ドリル加工、レーザー加工等を行うことにより、絶縁部60Cを厚み方向に貫通する貫通孔81Bを形成する。この際、貫通孔81Bの直径を絶縁部60Cの直径よりも小さくすることにより、先に形成された貫通孔と貫通孔81Bとの間に、絶縁部60Cが存在する状態にする。その後、貫通孔81Bの内壁面を、銅、金、銀等の低抵抗の金属でメタライズすることにより、スルーホール導体80Bを形成する。スルーホール導体80Bを形成する際、例えば、貫通孔81Bの内壁面を、無電解銅めっき処理、電解銅めっき処理等でメタライズすることにより、加工が容易になる。なお、スルーホール導体80Bを形成する方法については、貫通孔81Bの内壁面をメタライズする方法以外に、金属、金属と樹脂との複合材料等を貫通孔81Bに充填する方法であってもよい。
【0193】
コンデンサアレイ102は、例えば、以下の方法で製造される。
【0194】
まず、上述した固体電解コンデンサ4の製造方法と同様にして、固体電解コンデンサアレイシートを作製する。
【0195】
次に、固体電解コンデンサアレイシートを、各々のコンデンサ部が独立し、かつ、マスク層40が多孔質層12の周縁に位置するように切断する。その一方で、ドリル加工、レーザー加工等を行うことにより、絶縁部60A、支柱層50、及び、陽極板10(芯部11)を厚み方向に貫通する貫通孔を、一部の支柱層50を対象として設ける。
【0196】
固体電解コンデンサアレイシートを切断する工程と、貫通孔を設ける工程とについては、同じタイミングで行ってもよいし、異なるタイミングで行ってもよい。これらの工程を異なるタイミングで行う場合、固体電解コンデンサアレイシートを切断する工程を、貫通孔を設ける工程よりも前に行ってもよいし、貫通孔を設ける工程よりも後に行ってもよい。
【0197】
その後、切断によって設けられた溝と貫通孔とを埋めるように、樹脂シートを圧着する。これにより、切断によって設けられた溝を埋める絶縁部60Bを形成し、更には、貫通孔を埋める絶縁部60Cを形成する。
【0198】
そして、上述した貫通孔が設けられていない支柱層50を対象として、ドリル加工、レーザー加工等を行うことにより、絶縁部60A、支柱層50、及び、陽極板10(芯部11)を厚み方向に貫通する貫通孔81Aを設ける。その一方で、上述した貫通孔が設けられた支柱層50を対象として、ドリル加工、レーザー加工等を行うことにより、絶縁部60Cを厚み方向に貫通し、かつ、上述した貫通孔よりも直径が小さい貫通孔81Bを設ける。
【0199】
貫通孔81Aを設ける工程と、貫通孔81Bを設ける工程とについては、同じタイミングで行ってもよいし、異なるタイミングで行ってもよい。これらの工程を異なるタイミングで行う場合、貫通孔81Aを設ける工程を、貫通孔81Bを設ける工程よりも前に行ってもよいし、貫通孔81Bを設ける工程よりも後に行ってもよい。
【0200】
そして、貫通孔81Aの内壁面を、銅、金、銀等の低抵抗の金属でメタライズすることにより、スルーホール導体80Aを形成する。その一方で、貫通孔81Bの内壁面を、銅、金、銀等の低抵抗の金属でメタライズすることにより、スルーホール導体80Bを形成する。
【0201】
続いて、絶縁部60Aに対して、ドリル加工、レーザー加工等を行うことにより、厚み方向において、絶縁部60Aの表面から第2導電体層32Bに達する孔を設ける。そして、絶縁部60Aに設けられた孔に導電性ペーストを充填した後、熱処理を行うことにより、ビア導体70を形成する。
【0202】
その後、絶縁部60A、絶縁部60B、絶縁部60C、ビア導体70、スルーホール導体80A、及び、スルーホール導体80Bが設けられた固体電解コンデンサアレイシートを、所望の数のコンデンサ部、ここでは、2つのコンデンサ部が含まれるように切断して個片化することにより、コンデンサアレイ102を製造する。
【0203】
本発明のコンデンサアレイは、上述した実施形態5及び実施形態6の他に、本発明の実施形態1の固体電解コンデンサを複数有する形態であってもよいし、本発明の実施形態2の固体電解コンデンサを複数有する形態であってもよい。
【0204】
本発明の固体電解コンデンサは、例えば、複合電子部品に用いられる。このような複合電子部品は、例えば、本発明の固体電解コンデンサと、本発明の固体電解コンデンサの外側に設けられ、かつ、陽極板及び陰極層の各々に電気的に接続された外部電極と、外部電極に電気的に接続された電子部品と、を有する。
【0205】
複合電子部品において、外部電極に電気的に接続される電子部品は、受動素子であってもよいし、能動素子であってもよいし、受動素子及び能動素子の両方であってもよいし、受動素子及び能動素子の複合体であってもよい。
【0206】
受動素子としては、例えば、インダクタ等が挙げられる。
【0207】
能動素子としては、メモリ、GPU(Graphical Processing Unit)、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、PMIC(Power Management IC)等が挙げられる。
【0208】
本発明の固体電解コンデンサが複合電子部品に用いられる場合、本発明の固体電解コンデンサは、例えば、上述したように、電子部品を実装するための基板として扱われる。そのため、本発明の固体電解コンデンサを全体としてシート状にし、更に、本発明の固体電解コンデンサに実装される電子部品をシート状にすることにより、電子部品を厚み方向に貫通するスルーホール導体を介して、本発明の固体電解コンデンサと電子部品とを厚み方向に電気的に接続することが可能となる。その結果、電子部品としての受動素子及び能動素子を一括のモジュールのように構成することが可能となる。
【0209】
例えば、半導体アクティブ素子を含むボルテージレギュレータと、変換された直流電圧が供給される負荷との間に本発明の固体電解コンデンサを電気的に接続することにより、スイッチングレギュレータを形成することができる。
【0210】
複合電子部品においては、本発明の固体電解コンデンサが複数個レイアウトされた固体電解コンデンサシートの一方の主面上に回路層を形成した上で、その回路層を、電子部品としての受動素子又は能動素子に電気的に接続してもよい。
【0211】
また、基板に予め設けられたキャビティ部に本発明の固体電解コンデンサを配置し、樹脂で埋め込んだ後、その樹脂上に回路層を形成してもよい。同基板の別のキャビティ部には、別の電子部品としての受動素子又は能動素子が搭載されていてもよい。
【0212】
あるいは、本発明の固体電解コンデンサをウエハ、ガラス等の平滑なキャリアに実装し、樹脂による外層部を形成した後、回路層を形成した上で、その回路層を、電子部品としての受動素子又は能動素子に電気的に接続してもよい。
【符号の説明】
【0213】
1、2、3、4、5 固体電解コンデンサ
10 陽極板
11 芯部
12 多孔質層
20 誘電体層
30 陰極層
31 固体電解質層
31A 第1固体電解質層
31Aa 第1固体電解質層の外側部分
31Ab 第1固体電解質層の内側部分
31B 第2固体電解質層
32 導電体層
32A 第1導電体層
32B 第2導電体層
40 マスク層
50 支柱層
60A、60B、60C 絶縁部
70 ビア導体
80A、80B スルーホール導体
81A、81B 貫通孔
101、102 コンデンサアレイ