(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】通信装置、波長決定方法、光トランシーバ、及び光通信システム
(51)【国際特許分類】
H04J 14/02 20060101AFI20240925BHJP
H04B 10/077 20130101ALI20240925BHJP
H04B 10/25 20130101ALI20240925BHJP
H04B 10/073 20130101ALI20240925BHJP
【FI】
H04J14/02
H04B10/077 150
H04B10/25
H04B10/073
(21)【出願番号】P 2024535925
(86)(22)【出願日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 JP2024011049
【審査請求日】2024-07-05
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2023/024830
(32)【優先日】2023-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅田 大助
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-104625(JP,A)
【文献】国際公開第2004/075422(WO,A2)
【文献】特開2020-98987(JP,A)
【文献】特表2013-544374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 14/02
H04B 10/077
H04B 10/25
H04B 10/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1芯双方向伝送の光通信を行う通信装置であって、
対向装置に対して複数種類の波長の光信号を送受信可能な光トランシーバと、
前記対向装置との通信に用いる波長を決定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
自装置から送信される光信号の反射の多寡に応じて、前記複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定する、通信装置。
【請求項2】
前記対向装置が1芯双方向伝送の光通信を行う場合は、
前記制御部は、更に、
前記対向装置から送信される光信号の反射の多寡に応じて、前記複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記反射が大きい場合は、前記複数種類の波長を上り用と下り用に区分し、
前記反射が小さい場合は、前記複数種類の波長を上りと下りで共用する、請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、
自身が測定した第1反射パワー及び、自身が測定した第1受信パワー又は所定の第1最小受信パワーと、
前記対向装置が測定した第2反射パワー及び、前記対向装置が測定した第2受信パワー又は所定の第2最小受信パワーと、に基づいて、前記反射の多寡を判定する、
請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1反射パワーに対する、前記第1受信パワー又は前記第1最小受信パワーの比率が閾値以下の場合、或いは、
前記第2反射パワーに対する、前記第2受信パワー又は前記第2最小受信パワーの比率が閾値以下の場合は、
前記複数種類の波長を区分すると決定する、請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1反射パワーに対する、前記第1受信パワー又は前記第1最小受信パワーの比率が閾値を超え、かつ、
前記第2反射パワーに対する、前記第2受信パワー又は前記第2最小受信パワーの比率が閾値を超える場合は、
前記複数種類の波長を共用すると決定する、請求項4又は請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記制御部は、
第1通信フレームのビット誤り率である第1誤り率と、第2通信フレームのビット誤り率である第2誤り率と、に基づいて、前記反射の多寡を判定し、
前記第1通信フレームは、
同じ波長の光信号の送信と受信を同時に行う場合に自身が検出するフレームであり、
前記第2通信フレームは、
同じ波長の光信号の送信と受信を同時に行う場合に前記対向装置が検出するフレームである、
請求項2に記載の通信装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第1誤り率が閾値以上の場合、或いは、
前記第2誤り率が閾値以上の場合は、
前記複数種類の波長を区分すると決定する、請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記第1誤り率が閾値未満であり、かつ、
前記第2誤り率が閾値未満である場合は、
前記複数種類の波長を共用すると決定する、請求項7又は請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
前記制御部は、
上りと下りで送信波長を同じにして実行するループバック試験の結果に基づいて、前記反射の多寡を判定する、
請求項2に記載の通信装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記ループバック試験の結果がテストフレームの欠損ありの場合は、
前記複数種類の波長を区分すると決定する、請求項10に記載の通信装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記ループバック試験の結果がテストフレームの欠損なしの場合は、
前記複数種類の波長を共用すると決定する、請求項10又は請求項11に記載の通信装置。
【請求項13】
対向装置に対して複数種類の波長の光信号を送受信可能な光トランシーバにより、1芯双方向伝送の光通信を行う通信装置が実行する波長決定方法であって、
自装置から送信される光信号の反射の多寡を判定するステップと、
前記反射の多寡の判定結果に応じて、前記複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定するステップと、を含む、波長決定方法。
【請求項14】
複数種類の波長の光信号を送信可能な光送信部と、
複数種類の波長の光信号を受信可能な光受信部と、
対向装置との通信に用いる波長を決定するプロセッサと、を備える光トランシーバであって、
前記プロセッサは、
自装置から送信される光信号の反射の多寡に応じて、前記複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定する、光トランシーバ。
【請求項15】
1芯双方向伝送の光通信を行う、複数種類の波長の光信号を送受信可能な通信装置と、
前記通信装置と光通信する、複数種類の波長の光信号を送受信可能な対向装置と、
前記通信装置及び前記対向装置に使用させる波長を管理するコントローラと、を備える光通信システムであって、
前記コントローラは、
前記通信装置から送信される光信号の反射の多寡に応じて、前記複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定する、光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信装置、波長決定方法、光トランシーバ、及び光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、100GBASE-LR4の標準仕様として、Oバンド(1260~1360nm)の4波長の波長分割多重(WDM)により、1レーン当たり25Gbits/sの光信号をシングルモードファイバに送出することが規定されている。
非特許文献2には、GE-PON(Gigabit Ethernet-Passive Optical Network)の標準仕様として、上り光信号の波長を1310nmとし、下り光信号の波長を1490nmとすることが規定されている(「Ethernet」及び「イーサネット」は登録商標)。
【0003】
非特許文献3には、副搬送波多重(SCM)方式を採用する光トランシーバが、デジタル信号処理によって1つの光源で波長の異なる複数のサブキャリアを生成し、生成したサブキャリア(光信号)を光ファイバに送出することが記載されている。
非特許文献3では、上り光信号のサブキャリアと下り光信号のサブキャリアは異なる波長帯に分けられる。従って、上り光信号と下り光信号が混信しても、デジタル信号処理によって信号光のサブキャリアのみが選択的に受信される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】IEEE Std 802.3ba-2010 [88. Physical Medium Dependent sublayer and medium, type 100GBASE-LR4 and 100G-BASE-ER4]
【文献】IEEE Std 802.3ah-2004 [59.1 Overview]
【文献】Journal of Lightwave Technology Volume:39, Issue:16, 15 August 2021
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係る装置は、1芯双方向伝送の光通信を行う通信装置であって、対向装置に対して複数種類の波長の光信号を送受信可能な光トランシーバと、前記対向装置との通信に用いる波長を決定する制御部と、を備え、前記制御部は、自装置から送信される光信号の反射の多寡に応じて、前記複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定する。
【0006】
本開示は、上記のような特徴的な構成を備えるシステム及び装置として実現できるだけでなく、かかる特徴的な構成をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現することができる。また、本開示は、システム及び装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、光通信の伝送方式のバリエーションを示す説明図である。
【
図2】
図2は、光通信システムの構成のバリエーションを示す説明図である。
【
図3】
図3は、コントローラから光トランシーバまでの制御経路のバリエーションを示す説明図である。
【
図4】
図4は、波長の第1設定処理の概要を示す説明図である。
【
図5A】
図5Aは、波長の第1設定処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図5B】
図5Bは、波長の第1設定処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、波長の第2設定処理の概要を示す説明図である。
【
図7A】
図7Aは、波長の第2設定処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図7B】
図7Bは、波長の第2設定処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、波長の第3設定処理の概要を示す説明図である。
【
図9A】
図9Aは、波長の第3設定処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図9B】
図9Bは、波長の第3設定処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、光トランシーバの内部構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、光トランシーバの内部構成の別例を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、光通信システムの接続形態(トポロジー)のバリエーションを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示が解決しようとする課題>
上述の非特許文献では、1芯双方向伝送における光信号の反射状況に応じて、複数種類の波長を上り用の波長と下り用の波長に区分したり、複数種類の波長を上りと下りで共用したりすることは、想定されていない。
本開示は、かかる従来の問題点に鑑み、複数種類の波長の区分と共用を適切に行える通信装置を提供することを目的とする。
【0009】
<本開示の効果>
本開示によれば、複数種類の波長の区分と共用を適切に行うことができる。
【0010】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態の一態様に係る装置は、1芯双方向伝送の光通信を行う通信装置であって、対向装置に対して複数種類の波長の光信号を送受信可能な光トランシーバと、前記対向装置との通信に用いる波長を決定する制御部と、を備え、前記制御部は、自装置から送信される光信号の反射の多寡に応じて、前記複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定する。
【0011】
本実施形態の通信装置によれば、制御部が、自装置から送信される光信号の反射の多寡に応じて、複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定するので、複数種類の波長の区分と共用を適切に行うことができる。
【0012】
(2) 上述の(1)の通信装置において、前記対向装置が1芯双方向伝送の光通信を行う場合は、前記制御部は、更に、前記対向装置から送信される光信号の反射の多寡に応じて、前記複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定してもよい。
このようにすれば、通信装置側における反射の多寡のみを基準とする場合に比べて、複数種類の波長を区分するか共用するかの決定をより正確に行うことができる。
【0013】
(3) 上述の(2)の通信装置において、前記制御部は、前記反射が大きい場合は、前記複数種類の波長を上り用と下り用に区分し、前記反射が小さい場合は、前記複数種類の波長を上りと下りで共用することにしてもよい。
このようにすれば、反射が大きい場合は、複数種類の波長を上り用と下り用に区分することで安定した1芯双方向伝送が可能になり、反射が小さい場合は、複数種類の波長を上りと下りで共用することで大容量の1芯双方向伝送が可能になる。
【0014】
(4) 上述の(2)又は(3)の通信装置において、前記制御部は、自身が測定した第1反射パワー及び、自身が測定した第1受信パワー又は所定の第1最小受信パワーと、前記対向装置が測定した第2反射パワー及び、前記対向装置が測定した第2受信パワー又は所定の第2最小受信パワーと、に基づいて、前記反射の多寡を判定してもよい。
この場合、自身側のパワーの測定値又は所定パワーと対向装置側のパワーの測定値又は所定パワーに基づいて伝送路における反射の多寡を判定するので、反射の多寡を正確に判定することができる。
【0015】
(5) 上述の(4)の通信装置において、前記制御部は、前記第1反射パワーに対する、前記第1受信パワー又は前記第1最小受信パワーの比率が閾値以下の場合、或いは、前記第2反射パワーに対する、前記第2受信パワー又は前記第2最小受信パワーの比率が閾値以下の場合は、前記複数種類の波長を区分すると決定してもよい。
このようにすれば、反射の影響が大きい場合において、波長の区分による1芯双方向伝送の安定化を図ることができる。
【0016】
(6) 上述の(4)又は(5)の通信装置において、前記制御部は、前記第1反射パワーに対する、前記第1受信パワー又は前記第1最小受信パワーの比率が閾値を超え、かつ、前記第2反射パワーに対する、前記第2受信パワー又は前記第2最小受信パワーの比率が閾値を超える場合は、前記複数種類の波長を共用すると決定してもよい。
このようにすれば、反射の影響が小さい場合において、波長の共用による大容量の1芯双方向伝送が可能になる。
【0017】
(7) 上述の(2)から(6)のいずれかの通信装置において、前記制御部は、第1通信フレームのビット誤り率である第1誤り率と、第2通信フレームのビット誤り率である第2誤り率と、に基づいて、前記反射の多寡を判定してもよい。ここで、前記第1通信フレームは、同じ波長の光信号の送信と受信を同時に行う場合に自身が検出するフレームであり、前記第2通信フレームは、同じ波長の光信号の送信と受信を同時に行う場合に前記対向装置が検出するフレームである。
この場合、自身側の第1誤り率と対向装置側の第2誤り率に基づいて伝送路における反射の多寡が判定されるので、光パワーを測定できなくても反射の多寡を簡便に判定することができる。
【0018】
(8) 上述の(7)の通信装置において、前記制御部は、前記第1誤り率が閾値以上の場合、或いは、前記第2誤り率が閾値以上の場合は、前記複数種類の波長を区分すると決定してもよい。
このようにすれば、反射の影響が大きいと推定される場合において、波長の区分による1芯双方向伝送の安定化を図ることができる。
【0019】
(9) 上述の(7)又は(8)の通信装置において、前記制御部は、前記第1誤り率が閾値未満であり、かつ、前記第2誤り率が閾値未満である場合は、前記複数種類の波長を共用すると決定してもよい。
このようにすれば、反射の影響が小さいと推定される場合において、波長の共用による大容量の1芯双方向伝送が可能になる。
【0020】
(10) 上述の(1)から(9)のいずれかの通信装置において、前記制御部は、上りと下りで送信波長を同じにして実行するループバック試験の結果に基づいて、前記反射の多寡を判定してもよい。
このようにすれば、例えばループバック試験のテストフレームの欠損の有無により、光パワーを測定できなくても反射の多寡を簡便に判定することができる。
【0021】
(11) 上述の(10)の通信装置において、前記制御部は、前記ループバック試験の結果がテストフレームの欠損ありの場合は、前記複数種類の波長を区分すると決定してもよい。
このようにすれば、反射の影響が大きいと推定される場合において、波長の区分による1芯双方向伝送の安定化を図ることができる。
【0022】
(12) 上述の(10)又は(11)の通信装置において、前記制御部は、前記ループバック試験の結果がテストフレームの欠損なしの場合は、前記複数種類の波長を共用すると決定してもよい。
このようにすれば、反射の影響が小さいと推定される場合において、波長の共用による大容量の1芯双方向伝送が可能になる。
【0023】
(13) 本実施形態の一態様に係る方法は、上述の(1)から(12)のいずれかの通信装置が実行する波長決定方法である。
従って、本実施形態の波長決定方法は、上述の(1)から(12)のいずれかの通信装置と同様の作用効果を奏する。
【0024】
(14) 本実施形態の別態様に係る装置は、複数種類の波長の光信号を送信可能な光送信部と、複数種類の波長の光信号を受信可能な光受信部と、対向装置との通信に用いる波長を決定するプロセッサと、を備える光トランシーバであって、前記プロセッサは、自装置から送信される光信号の反射の多寡に応じて、前記複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定する。
【0025】
本実施形態の光トランシーバによれば、プロセッサが、自装置から送信される光信号の反射の多寡に応じて、複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定するので、複数種類の波長の区分と共用を適切に行うことができる。
【0026】
(15) 本実施形態の一態様に係るシステムは、1芯双方向伝送の光通信を行う、複数種類の波長の光信号を送受信可能な通信装置と、前記通信装置と光通信する、複数種類の波長の光信号を送受信可能な対向装置と、前記通信装置及び前記対向装置に使用させる波長を管理するコントローラと、を備える光通信システムであって、前記コントローラは、前記通信装置から送信される光信号の反射の多寡に応じて、前記複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定する。
【0027】
本実施形態の通信システムによれば、コントローラが、通信装置から送信される光信号の反射の多寡に応じて、複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定するので、複数種類の波長の区分と共用を適切に行うことができる。
【0028】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0029】
〔光通信の伝送方式〕
図1は、光通信の伝送方式のバリエーションを示す説明図である。図中の「TRx」は、光トランシーバの略記である。なお、本実施形態では、通信装置1から通信装置2の方向を「下り方向」とし、この逆方向を「上り方向」とする。
図1に示すように、光通信システムの伝送方式は、以下の方式に大別される。
伝送方式1:2芯伝送
伝送方式2:1芯双方向伝送
【0030】
2芯伝送(伝送方式1)は、上り通信と下り通信を別個の光ファイバで行う伝送方式である。従って、上りと下りで同じ波長を共用しても光信号は混信しない。例えばメトロ網又はコア網では、2芯伝送が利用される。
メトロ網及びコア網では、高密度波長分割多重(DWDM)を採用するため、上りと下りで異なる波長を配置する自由度がないからである。また、伝送路の途中に光アンプを設けるため、上り伝送と下り伝送の共有化(1芯伝送)が困難だからである。
【0031】
1芯双方向伝送(伝送方式2)は、上り通信と下り通信を1芯の光ファイバで行う伝送方式である。従って、上りと下りで同じ波長を共用すると、伝送路の途中の反射により光信号が混信し得る。例えばアクセス網では、1芯双方向伝送が利用される。
1芯双方向伝送は、光ファイバの敷設コストを抑制できるので、敷設箇所が多いアクセス網に適するからである。
【0032】
1芯双方向伝送では、伝送路の途中の反射による光信号の混信を抑制するため、一般的には、上り光信号と下り光信号とで異なる波長が利用される。
図1に示すように、1芯双方向伝送(伝送方式2)における波長の割当方式は、例えば、上り通信と下り通信にそれぞれ単一の波長を割り当てる「割当方式1」と、上り通信と下り通信にそれぞれ複数の波長を割り当てる「割当方式2」とに分類できる。
【0033】
割当方式1は、上り通信用として1つの波長λ1を使用し、下り通信用として1つの波長λ2を使用する方式である。例えば、非特許文献2では、割当方式1を採用するPONの波長λ1,λ2の値が規定されている。
割当方式2は、上り通信用として複数の波長λi(i=1,2…m)を使用し、下り通信用として複数の波長λj(j=1,2……n)を使用する方式である。波長λi,λjは、所定波長帯のサブキャリアでもよい。例えば、非特許文献3には、上りと下りで別のサブキャリアを用いる光トランシーバが記載されている。
【0034】
ところで、強度変調直接検波(IMDD)方式により1芯双方向伝送を行う場合は、上り光信号と下り光信号が混信しても、波長フィルタで分離して受信できるように、上り光信号と下り光信号に別の波長が割り当てられる。
コヒーレント方式では、通常は1芯双方向伝送に向いていない。光トランシーバの小型化を実現するため、送信用光源と受信用光源(検波用の干渉光)を共通化し、送信波長と受信波長を揃えることが多いからである。
【0035】
もっとも、上り光信号と下り光信号で別の波長を割り当てるには、送信と受信でそれぞれ光源を持つ必要があり高コスト化に繋がる。従って、比較的反射が少ない光ファイバを接続する場合は、波長を分けずに同一波長で1芯双方向伝送を行うことがある。
また、コヒーレント方式であっても、副搬送波多重通信(SCM)方式を利用した光トランシーバ(例えば非特許文献3参照)では、デジタル信号処理(DSP)によって1つの光源で波長の異なる複数のサブキャリアを用いた伝送が可能である。
【0036】
すなわち、SCM方式では、上り光信号と下り光信号に異なるサブキャリアを割り当てることにより、上り光信号と下り光信号が混信しても デジタル信号処理により所望のサブキャリアの光信号を選択的に受信できる。
【0037】
〔1芯双方向伝送の課題と解決策〕
上述の通り、1芯双方向伝送において、上り通信と下り通信に別の波長(サブキャリアでもよい。)を割り当てるようにすれば、上り光信号と下り光信号が混信しても、所望の光信号のみを選択的に受信できる。
その一方で、限られた波長帯のリソースを上り通信と下り通信とで常に区分する方策では、伝送容量をさほど拡大できないという問題がある。
【0038】
本実施形態では、上記の課題を解決するため、1芯の光ファイバで繋がる通信装置間の伝送路における反射の多寡を判定し、判定結果に応じて、複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか、上りと下りで共用するかを決定することとした。
具体的には、反射が大きい場合は、光信号の混信が多いとみなし、複数種類の波長を上り用と下り用に区分する。逆に、反射が小さい場合は、光信号の混信が少ないとみなし、複数の波長を上りと下りの双方で共用する。
【0039】
このようにすれば、伝送路の途中の反射の多寡に応じて、複数種類の波長の区分と共用を適切に運用することができる。
すなわち、反射が大きい場合は、複数種類の波長を上り用と下り用に区分することで安定した1芯双方向伝送が可能になり、反射が小さい場合は、複数種類の波長を上りと下りで共用することで大容量の1芯双方向伝送が可能になる。
【0040】
〔反射の多寡の判定方式〕
反射の多寡の判定方式としては、例えば次の方式を採用し得る。
判定方式1:パワー測定方式
判定方式2:誤り率測定方式
判定方式3:テストフレーム方式
以下の判定方式の説明において、「自身」は、例えば
図1の通信装置1であり、「対向装置」は、例えば
図1の通信装置2である。
【0041】
パワー測定方式(判定方式1)は、自身が測定した受信パワーR1及び反射パワーT1と、対向装置が測定した受信パワーT2及び反射パワーR2とに基づいて、反射の多寡を判定する方式である(
図4、
図5A及び
図5B参照)。
【0042】
誤り率測定方式(判定方式2)は、反射の多寡を判定する方式である。この判定は、同じ波長の光信号の送信と受信を同時に行う場合に自身が検出する通信フレームのビット誤り率E1と、同じ波長の光信号の送信と受信を同時に行う場合に対向装置が検出する通信フレームのビット誤り率E2とに基づいて行われる(
図6、
図7A及び
図7B参照)。
【0043】
テストフレーム方式(判定方式3)は、上りと下りで送信波長を同じにして実行するループバック試験の結果(具体的にはテストフレームの欠損の有無)に基づいて、反射の多寡を判定する方式である(
図8、
図9A及び
図9B参照)。
上記の判定方式1から判定方式3の詳細については、後述する。
【0044】
〔光通信システムの構成例〕
図2は、光通信システムの構成のバリエーションを示す説明図である。
図2に示すように、光通信システムは、通信装置1と、通信装置2と、これらを管理するコントローラ3とを備える。通信装置1と通信装置2は、1芯の光ファイバ4により一対一で接続される。
【0045】
本実施形態では、通信装置1を「マスター装置」とし、通信装置2を「スレーブ装置」とするが、この対応関係は逆であってもよい。
通信装置1及び通信装置2は、機械的には実質的に同じ光通信装置であり、光トランシーバ11、スイッチ12、及び制御部13を備える。
【0046】
光トランシーバ11は、光信号と電気信号を相互に変換する光モジュールであり、例えば、MSA(Multi-Source Agreement)規格のCFP(Centum Form-factor Pluggable)型のデジタルコヒーレント光トランシーバを採用し得る。
光トランシーバ11は、SFP(Small Form Factor Pluggable)型の光トランシーバであってもよい。SFP型は、SFP、SFP+、SFP28、QSFP、QSFP28、及びそれらの上位互換のプラガブル光モジュールの総称である。
【0047】
光トランシーバ11は、対向装置との光通信に使用する光信号の波長の切り替え機能を有する。なお、光信号はサブキャリアであってもよい。光信号がサブキャリアに分かれる場合は、サブキャリアを波長として切り替え機能を有してもよい。
波長の切り替え機能を有する光トランシーバ11としては、SCM方式を利用するコヒーレント光トランシーバ11A(
図10参照)、或いは、波長多重方式を利用するマルチチャンネルのWDM(Wavelength Division Multiplexing)光トランシーバ11B(
図11参照)などを採用し得る。「チャンネル」とは、電気信号又は光信号を伝達する伝送路(光信号の場合は所定の波長)を意味し、複数の波長を束ねて1つのチャンネルとしてもよい。なお、上記の光トランシーバ11の内部構成は後述する。
【0048】
光トランシーバ11の光ポートには、光ファイバ4が接続される。光トランシーバ11は、スイッチ12の所定ポートに電気的に接続される。
スイッチ12は、例えばL2レイヤ及びL3レイヤの中継機能を有する、例えばLSI(Large Scale Integration)などの集積回路である。スイッチ12の所定ポートには、制御部13が電気的に接続される。スイッチ12と制御部13は、SoC(System on a Chip)などの1つの集積回路に実装してもよい。
【0049】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)13A及び揮発性のメモリ13Bを含む演算処理装置である。制御部13は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)を含んでもよい。
制御部13は、FPGA及びASICのうちの少なくとも1つで構成されてもよい。制御部13は、例えばイーサネットによりスイッチ12と通信し、I2C(Inter-Integrated Circuit)などのシリアル通信により光トランシーバ11と通信する。
【0050】
制御部13は、管理通信インタフェース(図示省略)を介した通信により、コントローラ3から所定の設定情報を取得可能である。制御部13は、取得した設定情報に基づいて、通信装置1及び通信装置2に対する各種の設定処理を行う。
例えば、制御部13は、光トランシーバ11の使用波長などの初期設定、スイッチ12のQoS(Quality of Service)設定、スイッチ12の各ポートの帯域設定、及びVLAN(Virtual LAN)設定などを実行し得る。
【0051】
コントローラ3は、例えば通信管理者が運用する管理用コンピュータである。
図2に示すように、通信装置1及び通信装置2とコントローラ3の接続方式には、「クラウド方式」と「近接方式」がある。
クラウド方式は、コントローラ3が、インターネットを含む広域通信網5を介して、通信装置1及び通信装置2の制御部13とそれぞれ接続される方式である。この場合、コントローラ3は、通信装置1及び通信装置2に個別に設定情報を提供できる。
【0052】
近接方式は、コントローラ3が、広域通信網5を介さずに、マスター側の通信装置1の制御部13と接続される方式である。ただし、通信装置1とコントローラ3の間にLAN(Local Area Network)を介在させてもよい。
この場合、コントローラ3は、双方の通信装置1,2の設定情報を通信装置1に送信する。通信装置1の制御部13は、通信装置2用の設定情報を、光ファイバ4を介した制御通信(
図2の破線矢印)により通信装置2に宛てて転送する。
【0053】
〔光トランシーバの制御経路〕
図3は、
図2の近接方式の場合の、コントローラ3から光トランシーバ11までの制御経路のバリエーションを示す説明図である。
図3において、制御経路P1は、通信装置1の光トランシーバ11に設定情報を伝送する場合の経路である。制御経路P2,P3は、通信装置2の光トランシーバ11に設定情報を伝送する場合の経路である。
【0054】
(制御経路P1)
通信装置1の制御部13は、コントローラ3から受信した設定情報が自機の光トランシーバ11の設定情報である場合は、I2Cなどのシリアル通信により、受信した設定情報に従って自機の光トランシーバ11を制御する。
このように、制御経路P1は、コントローラ3から通信装置1内の制御部13までの経路と、通信装置1内の制御部13から光トランシーバ11までの経路とを含む。
【0055】
(制御経路P2)
通信装置1の制御部13は、コントローラ3から受信した設定情報が通信装置2の光トランシーバ11の設定情報である場合は、受信した設定情報を含む、通信装置2宛てのイーサネットの制御フレームを生成してスイッチ12に出力する。
【0056】
制御フレームは、光ファイバ4を介したイーサネット通信により通信装置2の制御部13に伝送される。通信装置2の制御部13は、I2Cなどのシリアル通信により、受信した設定情報に従って自機の光トランシーバ11を制御する。
このように、制御経路P2は、コントローラ3から通信装置1までの経路と、通信装置1から通信装置2の制御部13までの経路と、通信装置2内の制御部13から光トランシーバ11までの経路とを含む。
【0057】
(制御経路P3)
制御経路P3は、対向するTRx同士が専用の制御チャンネル(制御用波長)を用いて制御情報を交換可能である場合の経路である。
この場合、通信装置1の制御部13は、コントローラ3から受信した設定情報が通信装置2の光トランシーバ11の設定情報である場合は、受信した設定情報を自機の光トランシーバ11に転送する。
【0058】
通信装置1の光トランシーバ11は、受信した設定情報を専用の制御チャンネルにより通信装置2の光トランシーバ11に送信する。
このように、制御経路P3は、コントローラ3から通信装置1までの経路と、通信装置1内の制御部13から光トランシーバ11までの経路と、TRx間の専用チャンネルの制御経路とを含む。
【0059】
〔波長の第1設定処理の概要〕
図4は、波長の第1設定処理の概要を示す説明図である。
図中の「Dλ」は、送信波長の初期設定値である。従って、初期状態では、通信装置1の送信波長は「λ1」であり、通信装置2の送信波長は「λ2」であるとする。このとき、通信装置1の受信波長はλ2であり、通信装置2の受信波長はλ1である。また、波長の第1設定処理は、以下に列挙する条件を前提条件とする。
【0060】
条件C11:通信装置1のTRxは、λ1で送信しかつλ2で受信するか、(λ1+λ2)で送信しかつ(λ1+λ2)で受信するかのいずれかに切り替え可能である。(λ1+λ2)は、双方の波長を使用して1つのチャンネルとすることを意味する。
条件C12:通信装置2のTRxは、λ2で送信しかつλ1で受信するか、(λ1+λ2)で送信しかつ(λ1+λ2)で受信するかのいずれかに切り替え可能である。
【0061】
条件C13:通信装置1をマスター装置とし、通信装置2をスレーブ装置とする。マスター装置は、例えば、コントローラ3と通信する通信装置、或いはゼロタッチプロビジョニングなどによりマスターに指定された通信装置である。
条件C14:制御通信とデータ通信は同じ波長を使用する。
【0062】
条件C15:通信装置1が送信する波長λ1の光信号の送信パワーと、通信装置2が送信する波長λ2の光信号の送信パワーは概ね同等である。また、反射は波長λ1,λ2に依存しない。
条件C16:制御通信の不安定化を抑制するため、反射状況の確認は上り通信と下り通信を別の波長で実施する。
条件C17:通信装置1のTRxと通信装置2のTRxは、光信号の受光パワーのモニタリングが可能である。
【0063】
図4に示すように、波長の第1設定処理は、次のステップを含む。
ステップST11:反射パワーT1の測定
ステップST12:受信パワーR1の測定
ステップST13:測定結果(T1,R1)に基づく第1判定
ステップST14:反射パワーT2の測定
ステップST15:受信パワーR2の測定
ステップST16:測定結果(T2,R2)に基づく第2判定
【0064】
反射パワーT1の測定(ステップST11)は、通信装置2が送信停止中でかつ通信装置1が波長λ1での送信実行中に、通信装置1側の受光パワー(反射パワーT1)を測定するステップである。測定は、通信装置1の制御部13が行う。
受信パワーR1の測定(ステップST12)は、通信装置1が送信停止中でかつ通信装置2が波長λ2での送信実行中に、通信装置1側の受光パワー(受信パワーR1)を測定するステップである。測定は、通信装置1の制御部13が行う。
【0065】
測定結果(T1,R1)に基づく第1判定(ステップST13)は、反射パワーT1と受信パワーR1の測定値に基づいて、波長λ1,λ2を上り用と下り用に区分するか通信装置2にも測定させるかを判定するステップである。判定は、通信装置1の制御部13が行う。
具体的には、通信装置1の制御部13は、R1/T1が所定の閾値Th以下の場合は、波長λ1,λ2を上り用と下り用に区分すると判定する。従って、通信装置1,2の送信波長は、初期設定値のまま維持される。この場合、通信装置1側での反射が大きいからである。
【0066】
通信装置1の制御部13は、R1/T1が所定の閾値Thを超える場合は、処理をステップST14に移行する。
その理由は、通信装置1側で反射が小さくても、通信装置2側における反射の多寡を判断しないと、波長λ1,λ2を上りと下りで共用すべきか否かを最終決定できないからである。
【0067】
反射パワーT2の測定(ステップST14)は、通信装置1が送信停止中でかつ通信装置2が波長λ2での送信実行中に、通信装置2側の受光パワー(反射パワーT2)を測定するステップである。測定は、通信装置2の制御部13が行い、測定値は通信装置1に通知される。
受信パワーR2の測定(ステップST15)は、通信装置2が送信停止中でかつ通信装置1が波長λ1での送信実行中に、通信装置2側の受光パワー(受信パワーR2)を測定するステップである。測定は、通信装置2の制御部13が行い、測定値は通信装置1に通知される。
【0068】
測定結果(T2,R2)に基づく第2判定(ステップST16)は、反射パワーT2と受信パワーR2の測定値に基づいて、波長λ1,λ2を上り用と下り用に区分するか共用するかを判定するステップである。判定は、通信装置1の制御部13が行う。
具体的には、通信装置1の制御部13は、R2/T2が所定の閾値Th以下の場合は、波長λ1,λ2を上り用と下り用に区分すると判定する。従って、通信装置1,2の送信波長は、初期設定値のまま維持される。この場合、通信装置2側での反射が大きいからである。
【0069】
通信装置1の制御部13は、R2/T2が所定の閾値Thを超える場合は、波長λ1,λ2を上りと下りで共用すると判定する。その理由は、双方の通信装置1,2で測定した受信パワーに基づく反射が小さければ、両者で波長λ1,λ2を共用して伝送容量を拡大しても差し支えないからである。
従って、通信装置1の制御部13は、送信波長及び受信波長をλ1とλ2の2種類とするように通信装置2に指示し、自身の送信波長及び受信波長をλ1とλ2の2種類に変更する。
【0070】
〔波長の第1設定処理の具体例〕
図5A及び
図5Bは、波長の第1設定処理の具体例を示すフローチャートである。
図5A及び
図5Bにおける「ni」(i=1~5)は、フローチャートの結節点である。「装置1」は通信装置1の略記である。「装置2」は通信装置2の略記である。破線矢印は、装置1と装置2との間で送受信される要求フレーム又は応答フレームを表す。
【0071】
(波長の初期状態)
初期化シーケンスの開始時点において、装置1は、自身の送信波長を「λ1」に設定しかつ受信波長を「λ2」に設定する(ステップS101)。
初期化シーケンスの開始時点において、装置2は、自身の送信波長を「λ2」に設定しかつ受診波長を「λ1」に設定する(ステップS201)。
【0072】
(通信装置1の処理)
初期化シーケンスが開始すると、装置1は、装置2に送信停止を要求したあと(ステップS103)、装置2からの応答を待つ(ステップS104)。
次に、送信停止の応答を受けた装置1は、装置2の送信停止後に受信パワーを測定することにより(ステップS105)、反射パワーT1を測定する(ステップS106)。
【0073】
次に、装置1は、装置2に送信開始を要求し(ステップS107)、装置2からの応答を待つ(ステップS108)。
次に、送信開始の応答を受けた装置1は、自身の送信停止を実行してから(ステップS109)、受信パワーR1を測定する(ステップS110)。
【0074】
次に、装置1は、自身の送信開始を実行してから(ステップS111)、「R1/T1>閾値」が成立する否かを判定する(ステップS112)。
ステップS112の判定結果が否定の場合(反射大の場合)、装置1は、装置2に運用開始を要求したあと(ステップS113)、装置2からの応答を待つ(ステップS114)。運用開始の応答を受けた装置1は、λ1での運用を開始する(ステップS115)。この場合、装置1の送信波長をλ1とし受信波長をλ2とする運用が開始される。
【0075】
ステップS112の判定結果が肯定の場合(反射小の場合)、装置1は、装置2に反射パワーT2の測定を要求してから(ステップS116)、自身の送信停止を実行する(ステップS117)。
次に、装置1は、装置2からの反射パワーT2の応答を待ったあと(ステップS118)、自身の送信開始を実行してから(ステップS119)、装置2に受信パワーR2の測定を要求し(ステップS120)、当該測定の応答を待つ(ステップS121)。
【0076】
なお、装置1から装置2に送信される受信パワーR2の測定要求は、具体的には、送信停止/パワー測定/送信開始の順序で、これらの処理を装置2に実行させるための制御指令である。
【0077】
受信パワーR2を含む応答を受けた装置1は、「R2/T2>閾値」が成立するか否かを判定する(ステップS122)。
ステップS122の判定結果が否定の場合(反射大の場合)、装置1は、装置2に運用開始を要求したあと(ステップS128)、装置2からの応答を待つ(ステップS129)。装置2から運用開始の応答を受けた装置1は、λ1での運用を開始する(ステップS115)。この場合、装置1の送信波長をλ1とし受信波長をλ2とする運用が開始される。
【0078】
ステップS122の判定結果が肯定の場合(反射小の場合)、装置1は、装置2に(λ1+λ2)での運用開始を要求したあと(ステップS123)、装置2からの応答を待つ(ステップS124)。
次に、装置2から応答を受けた装置1は、送受信に使用する波長を(λ1+λ2)に変更したあと(ステップS125)、変更後の波長(λ1+λ2)での運用を開始する(ステップS126)。この場合、装置1の送信波長を(λ1+λ2)とし受信波長を(λ1+λ2)とする運用が開始される。
【0079】
(通信装置2の処理)
初期化シーケンスが開始すると、装置2は、装置1からの送信停止の要求を待つ(ステップS202)。
次に、送信停止の要求を受けた装置2は、装置1に応答を返したあと(ステップS203)、自身の送信停止を実行する(ステップS204)。
【0080】
次に、装置2は、装置1からの送信開始の要求を待ち(ステップS205)、要求があった場合は自身の送信を開始して(ステップS206)、送信開始の応答を装置1に返す(ステップS207)。
次に、装置2は、装置1からの運用開始(反射大)又は反射パワー測定の要求を待つ(ステップS208)。
【0081】
装置1からの要求が運用開始(反射大)である場合は、装置2は、応答を装置1に返したあと(ステップS209)、λ2での運用を開始する(ステップS210)。この場合、装置2の送信波長をλ2とし受信波長をλ1とする運用が開始される。
装置1からの要求が反射パワー測定である場合は、装置2は、装置1の送信停止を待ってから(ステップS211)、反射パワーT2を測定し(ステップS212)、測定結果である反射パワーT2を含む応答を装置1に返す(ステップS213)。
【0082】
次に、装置2は、装置1からの受信パワー測定の要求を待つ(ステップS214)。受信パワー測定の要求を受けた装置2は、自身の送信停止(ステップS215)、受信パワーR2の測定(ステップS216)、自身の送信開始(ステップS217)を順次実行し、測定結果である受信パワーR2を含む応答を装置1に返す(ステップS218)。
次に、装置2は、装置1からの運用開始(反射大)又は運用開始(反射小)の要求を待つ(ステップS219)。
【0083】
装置1からの要求が運用開始(反射大)である場合は、装置2は、装置1に応答を返したあと(ステップS223)、λ2での運用を開始する(ステップS210)。この場合、装置2の送信波長をλ2とし受信波長をλ1とする運用が開始される。
装置1からの要求が運用開始(反射小)である場合は、装置2は、装置1に応答を返し(ステップS220)、かつ、送受信に使用する波長を(λ1+λ2)に変更したあと(ステップS221)、変更後の波長での運用を開始する(ステップS222)。この場合、装置2の送信波長を(λ1+λ2)とし受信波長を(λ1+λ2)とする運用が開始される。
【0084】
〔波長の第2設定処理の概要〕
図6は、波長の第2設定処理の概要を示す説明図である。
図中の「Dλ」は、送信波長の初期設定値である。従って、初期状態では、通信装置1の送信波長は「λ1」であり、通信装置2の送信波長は「λ2」であるとする。このとき、通信装置1の受信波長はλ2であり、通信装置2の受信波長はλ1である。また、波長の第2設定処理は、以下に列挙する条件を前提条件とする。
【0085】
条件C21:通信装置1のTRxは、λ1で送信しかつλ2で受信するか、(λ1+λ2)で送信しかつ(λ1+λ2)で受信するかのいずれかに切り替え可能である。(λ1+λ2)は、双方の波長を使用して1つのチャンネルとすることを意味する。
条件C22:通信装置2のTRxは、λ2で送信しかつλ1で受信するか、(λ1+λ2)で送信しかつ(λ1+λ2)で受信するかのいずれかに切り替え可能である。
【0086】
条件C23:通信装置1をマスター装置とし、通信装置2をスレーブ装置とする。マスター装置は、例えば、コントローラ3と通信する通信装置、或いはゼロタッチプロビジョニングなどによりマスターに指定された通信装置である。
条件C24:制御通信とデータ通信は同じ波長を使用する。
【0087】
条件C25:通信装置1が送信する波長λ1の光信号の送信パワーと、通信装置2が送信する波長λ2の光信号の送信パワーは概ね同等である。また、反射は波長λ1,λ2に依存しない。
条件C26:制御通信の不安定化を抑制するため、反射状況の確認は上り通信と下り通信を別の波長で実施する。
条件C27:通信装置1と通信装置2のTRxは、誤り訂正のエンコード及びデコードと、デコード時における訂正前のビット誤り率のモニタリングが可能である。
【0088】
図6に示すように、波長の第2設定処理は、次のステップを含む。
ステップST21:ビット誤り率E1の測定
ステップST22:測定結果(E1)に基づく第1判定
ステップST23:ビット誤り率E2の測定
ステップST24:測定結果(E2)に基づく第2判定
【0089】
ビット誤り率E1の測定(ステップST21)は、波長λ2の光信号の送信と受信を通信装置1が同時に行った場合に、通信装置1が受信する通信フレームに含まれるビット誤り率E1を測定するステップである。測定は、通信装置1の制御部13が行う。
測定結果(E1)に基づく第1判定(ステップST22)は、ビット誤り率E1の測定値に基づいて、波長λ1,λ2を上り用と下り用に区分するか通信装置2にも測定させるかを判定するステップである。判定は、通信装置1の制御部13が行う。
【0090】
具体的には、通信装置1の制御部13は、E1が所定の閾値Th以上の場合は、波長λ1,λ2を上り用と下り用に区分すると判定する。この場合、通信装置1の送信波長は、初期状態に戻される。
その理由は、同じ波長λ2の光信号の送信と受信を同時に行った場合のビット誤り率E1が比較的大きいということは、波長λ2の光信号の反射が大きいことが原因であると推定できるからである。
【0091】
通信装置1の制御部13は、E1が所定の閾値Th未満である場合は、処理をステップST23に移行する。
その理由は、光信号の伝送路の状態は、通信装置1側から見た場合と通信装置2側から見た場合とで同じとは限らないので、通信装置1側のビット誤り率E1だの測定だけでは、波長λ1,λ2を共用すべきか否かを最終決定できないからである。
【0092】
ビット誤り率E2の測定(ステップST23)は、波長λ1の光信号の送信と受信を通信装置2が同時に行った場合に、通信装置2が受信する通信フレームに含まれるビット誤り率E2を測定するステップである。測定は、通信装置2の制御部13が行い、測定値は通信装置1に通知される。
測定結果(E2)に基づく第2判定(ステップST24)は、ビット誤り率E2の測定値に基づいて、波長λ1,λ2を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを判定するステップである。判定は、通信装置1の制御部13が行う。
【0093】
具体的には、通信装置1の制御部13は、E2が所定の閾値Th以上の場合は、波長λ1,λ2を上り用と下り用に区分すると判定する。この場合、通信装置2の送信波長は、初期状態に戻される。
その理由は、同じ波長λ1の光信号の送信と受信を同時に行った場合のビット誤り率E2が比較的大きいということは、波長λ1の光信号の反射が大きいことが原因であると推定できるからである。
【0094】
通信装置1の制御部13は、E2が所定の閾値Th未満である場合は、波長λ1,λ2を上りと下りで共用すると判定する。その理由は、各波長λ1,λ2の光信号で反射が小さければ、通信装置1及び通信装置2が波長λ1,λ2を共用して伝送容量を拡大しても差し支えないからである。
従って、通信装置1の制御部13は、送信波長及び受信波長をλ1とλ2の2種類とするように通信装置2に指示し、自身の送信波長及び受信波長をλ1とλ2の2種類に変更する。
【0095】
〔波長の第2設定処理の具体例〕
図7A及び
図7Bは、波長の第2設定処理の具体例を示すフローチャートである。
図7A及び
図7Bにおける「ni」(i=6~10)は、フローチャートの結節点である。「装置1」は通信装置1の略記である。「装置2」は通信装置2の略記である。破線矢印は、装置1と装置2との間で送受信される要求フレーム又は応答フレームを表す。
【0096】
(波長の初期状態)
初期化シーケンスの開始時点において、装置1は、自身の送信波長を「λ1」に設定しかつ受信波長を「λ2」に設定する(ステップS301)。
初期化シーケンスの開始時点において、装置2は、自身の送信波長を「λ2」に設定しかつ受診波長を「λ1」に設定する(ステップS401)。
【0097】
(通信装置1の処理)
初期化シーケンスが開始すると、装置1は、自身の送信波長をλ2(装置2の波長)に設定したあと(ステップS302)、訂正前のビット誤り率E1を測定する(ステップS303)。
次に、装置1は、自身の送信波長をλ1に戻したあと(ステップS304)、「E1<閾値」が成立するか否かを判定する(ステップS305)。
【0098】
ステップS305の判定結果が否定の場合(反射大と判断)、装置1は、装置2に運用開始を要求したあと(ステップS113)、装置2からの応答を待つ(ステップS307)。運用開始の応答を受けた装置1は、λ1での運用を開始する(ステップS308)。この場合、装置1の送信波長をλ1とし受信波長をλ2とする運用が開始される。
ステップS305の判定結果が肯定の場合(反射小と判断)、装置1は、装置2にビット誤り率E2の測定を要求してから(ステップS309)、装置2からの応答を待つ(ステップS310)。
【0099】
なお、装置1から装置2に送信されるビット誤り率E2の測定要求は、具体的には、λ1への波長変更/誤り率測定/λ2への波長変更/の順序で、これらの処理を装置2に実行させるための制御指令である。
【0100】
次に、ビット誤り率E2を含む応答を受けた装置1は、「E2<閾値」が成立するか否かを判定する(ステップS311)。
ステップS311の判定結果が否定の場合(反射大と判断)、装置1は、装置2に運用開始を要求したあと(ステップS312)、装置2からの応答を待つ(ステップS317)。運用開始の応答を受けた装置1は、λ1での運用を開始する(ステップS308)。この場合、装置1の送信波長をλ1とし受信波長をλ2とする運用が開始される。
【0101】
ステップS311の判定結果が肯定の場合(反射小と判断)、装置1は、装置2に(λ1+λ2)での運用開始を要求したあと(ステップS313)、装置2からの応答を待つ(ステップS314)。
次に、装置2から応答を受けた装置1は、送受信に使用する波長を(λ1+λ2)に変更したあと(ステップS315)、変更後の波長(λ1+λ2)での運用を開始する(ステップS316)。この場合、装置1の送信波長を(λ1+λ2)とし受信波長を(λ1+λ2)とする運用が開始される。
【0102】
(通信装置2の処理)
初期化シーケンスが開始すると、装置2は、装置1からの運用開始(反射大)又は誤り率測定の要求を待つ(ステップS402)。
装置1からの要求が運用開始(反射大)である場合は、装置2は、応答を装置1に返したあと(ステップS403)、λ2での運用を開始する(ステップS404)。この場合、装置2の送信波長をλ2とし受信波長をλ1とする運用が開始される。
装置1からの要求が誤り率の測定である場合は、装置2は、自身の送信波長をλ1(装置1の波長)に設定する(ステップS405)。
【0103】
また、装置2は、ビット誤り率E2を測定し(ステップS406)、送信波長をλ2に戻した上で(ステップS407)、測定結果であるビット誤り率E2を含む応答を装置1に返す(ステップS408)。
次に、装置2は、装置1からの運用開始(反射大)又は運用開始(反射小)の要求を待つ(ステップS409)。
【0104】
装置1からの要求が運用開始(反射大)である場合は、装置2は、応答を装置1に返したあと(ステップS413)、λ2での運用を開始する(ステップS404)。この場合、装置2の送信波長をλ2とし受信波長をλ1とする運用が開始される。
装置1からの要求が運用開始(反射小)である場合は、装置2は、装置1に応答を返し(ステップS410)、かつ、送受信に使用する波長を(λ1+λ2)に変更したあと(ステップS411)、変更後の波長での運用を開始する(ステップS412)。この場合、装置2の送信波長を(λ1+λ2)とし受信波長を(λ1+λ2)とする運用が開始される。
【0105】
〔波長の第3設定処理の概要〕
図8は、波長の第3設定処理の概要を示す説明図である。
図中の「Dλ」は、送信波長の初期設定値である。従って、初期状態では、通信装置1の送信波長は「λ1」であり、通信装置2の送信波長は「λ2」であるとする。このとき、通信装置1の受信波長はλ2であり、通信装置2の受信波長はλ1である。また、波長の第3設定処理は、以下に列挙する条件を前提条件とする。
【0106】
条件C31:通信装置1のTRxは、λ1で送信しかつλ2で受信するか、(λ1+λ2)で送信しかつ(λ1+λ2)で受信するかのいずれかに切り替え可能である。(λ1+λ2)は、双方の波長を使用して1つのチャンネルとすることを意味する。
条件C32:通信装置2のTRxは、λ2で送信しかつλ1で受信するか、(λ1+λ2)で送信しかつ(λ1+λ2)で受信するかいずれかに切り替え可能である。
【0107】
条件C33:通信装置1をマスター装置とし、通信装置2をスレーブ装置とする。マスター装置は、例えば、コントローラ3と通信する通信装置、或いはゼロタッチプロビジョニングなどによりマスターに指定された通信装置である。
条件C34:制御通信とデータ通信は同じ波長を使用する。
【0108】
条件C35:通信装置1が送信する波長λ1の光信号の送信パワーと、通信装置2が送信する波長λ2の光信号の送信パワーは概ね同等である。また、反射は波長λ1,λ2に依存しない。
条件C36:制御通信の不安定化を抑制するため、反射状況の確認は上り通信と下り通信を別の波長で実施する。
条件C37:通信装置1と通信装置2の制御部13は、例えばイーサネットOAM(Operations Administration Maintenance)などに基づくループバック試験が可能である。
【0109】
図6に示すように、波長の第3設定処理は、次のステップを含む。なお、第1ループバック試験(ステップST31)は、反射以外の何らかの欠陥があるか否かを通信装置1が確認するための試験であり、反射の多寡の推定に必須の試験ではない。
ステップST31:第1ループバック試験の実行
ステップST32:第1ループバック試験結果に基づく第1判定
ステップST33:第2ループバック試験の実行
ステップST34:第2ループバック試験結果に基づく第2判定
【0110】
第1ループバック試験の実行(ステップST31)は、通信装置1が、上りと下りで送信波長を異ならせた状態でループバック試験を行うステップである。
図8では、下りのテストフレームを波長λ1(通信装置1のDλ)で送信し、上りのテストフレームを波長λ2(通信装置2のDλ)で送信する場合が例示されている。
【0111】
第1ループバック試験結果に基づく第1判定(ステップST32)は、第1ループバック試験において通信装置1が受信するテストフレームの品質(ビットエラー数など)に基づいて、異常終了するか第2ループバック試験に移行するかを判定するステップである。判定は、通信装置1の制御部13が行う。
具体的には、通信装置1の制御部13は、第1ループバック試験により受信したテストフレームに欠損がある場合は、異常終了を実行する。
なお、「テストフレームの欠損」とは、テストフレームの品質の欠陥のことであり、例えば、複数のテストフレームのフレーム欠損率が所定値以上であること、或いは、少なくとも1つのテストフレームが受信不能であることなどを意味する。
【0112】
異常終了は、何らかの異常が検出された場合に通信装置1,2間の通信を終了することである。通信装置1の制御部13は、異常の発生をコントローラ3に通知する。
その理由は、波長λ1,λ2を区分した状態でループバック試験に受からない場合は、光信号の反射と無関係の根本的な異常があるからである。
通信装置1の制御部13は、第1ループバック試験により受信したテストフレームに欠損がない場合は、処理をステップST33に移行する。
【0113】
第2ループバック試験の実行(ステップST32)は、通信装置1が、上りと下りで送信波長を同じにしてループバック試験を行うステップである。
図8では、下りのテストフレームを波長λ2(通信装置2のDλ)で送信し、上りのテストフレームを波長λ2(通信装置2のDλ)で送信する場合が例示されている。
【0114】
第2ループバック試験結果に基づく第2判定(ステップST34)は、第2ループバック試験において通信装置1が受信するテストフレームの品質(ビットエラー数など)に基づいて、波長λ1,λ2を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを判定するステップである。判定は、通信装置1の制御部13によって行われる。
【0115】
具体的には、通信装置1の制御部13は、第2ループバック試験により受信したテストフレームに欠損がある場合は、波長λ1,λ2を上り用と下り用に区分すると判定する。この場合、通信装置2の送信波長は、初期状態に戻される。
その理由は、上りと下りで波長λ2を揃えるとループバック試験に受からないということは、伝送路に光信号の反射が大きい箇所があると推定できるからである。
【0116】
通信装置1の制御部13は、第2ループバック試験により受信したテストフレームに欠損がない場合は、波長λ1,λ2を上りと下りで共用すると判定する。その理由は、上りと下りで波長λ2を揃えてもループバック試験に受かるということは、伝送路における光信号の反射は低いと推定でき、波長λ1,λ2を上りと下りで共用して伝送容量を拡大しても差し支えないからである。
従って、通信装置1の制御部13は、自身の送信波長をλ1とλ2の2種類に変更し、送信波長をλ1とλ2の2種類とするように通信装置2に指示する。
【0117】
〔波長の第3設定処理の詳細〕
図9A及び
図9Bは、波長の第3設定処理の具体例を示すフローチャートである。
図9A及び
図9Bにおける「ni」(i=11~15)は、フローチャートの結節点である。「装置1」は通信装置1の略記である。「装置2」は通信装置2の略記である。破線矢印は、装置1と装置2と間で送受信される要求フレーム又は応答フレームを表す。
【0118】
(波長の初期状態)
初期化シーケンスの開始時点において、装置1は、自身の送信波長を「λ1」に設定しかつ受信波長を「λ2」に設定する(ステップS501)。
初期化シーケンスの開始時点において、装置2は、自身の送信波長を「λ2」に設定しかつ受診波長を「λ1」に設定する(ステップS601)。
【0119】
(通信装置1の処理)
初期化シーケンスが開始すると、装置1は、装置2にループバック試験を要求したあと(ステップS502)、装置2からの応答を待つ(ステップS503)。
次に、ループバック試験の応答を受けた装置1は、装置2の構成変更に要する所定時間だけ待機したあと(ステップS504)、装置2にループバック試験のテストフレームを送信する(ステップS506)。
【0120】
次に、装置1は、装置2の構成変更に要する所定時間だけ待機したあと(ステップS506)、テストフレームの欠損の有無を判定する(ステップS507)。
ステップS506の判定結果が「あり」の場合、装置1は、装置2に異常終了を要求したあと(ステップS508)、自身も異常終了する(ステップS509)。
【0121】
ステップS506の判定結果が「なし」の場合、装置1は、装置2にループバック試験を要求したあと(ステップS512)、装置2からの応答を待つ(ステップS513)。
次に、ループバック試験の応答を受けた装置1は、自身の送信波長をλ2(装置2の波長)に変更し(ステップS514)、構成変更に要する所定時間だけ待機したあと(ステップS515)、装置2にループバック試験のテストフレームを送信する(ステップS517)。
【0122】
次に、装置1は、装置2の構成変更に要する所定時間だけ待機したあと(ステップS518)、テストフレームの欠損の有無を判定する(ステップS518)。
ステップS518の判定結果が「あり」(反射大と判断)の場合、装置1は、装置2に運用開始を要求したあと(ステップS519)、装置2からの応答を待つ(ステップS510)。その後、装置2から応答を受けた装置1は、λ1での運用を開始する(ステップS511)。この場合、装置1の送信波長をλ1とし受信波長をλ2とする運用が開始される。
【0123】
ステップS518の判定結果が「なし」(反射小と判断)の場合、装置1は、装置2に(λ1+λ2)での運用開始を要求したあと(ステップS520)、装置2からの応答を待つ(ステップS521)。
次に、装置2から応答を受けた装置1は、送受信に使用する波長を(λ1+λ2)に変更したあと(ステップS522)、変更後の波長(λ1+λ2)での運用を開始する(ステップS523)。この場合、装置1の送信波長を(λ1+λ2)とし受信波長を(λ1+λ2)とする運用が開始される。
【0124】
(通信装置2の処理)
初期化シーケンスが開始すると、装置2は、装置1からのループバック試験の要求を待つ(ステップS602)。
次に、ループバック試験の要求を受けた装置2は、装置1に応答を返したあと(ステップS603)、自身の制御構成をループバックに変更し(ステップS604)、ループバック試験のテストフレームを装置1に折り返す(ステップS605)。
【0125】
次に、装置2は、ループバックの制御構成を解除したあと(ステップS606)、装置1からの異常終了又はループバック試験の要求を待つ(ステップS607)。
装置1からの要求が異常終了である場合は、装置2は、自身の異常終了を実行する(ステップS608)。
【0126】
装置1からの要求がループバック試験である場合は、装置2は、装置1に応答を返したあと(ステップS611)、自身の制御構成をループバックに変更し(ステップS612)、ループバック試験のテストフレームを装置1に折り返す(ステップS613)。
次に、装置2は、ループバック試験の制御構成を解除したあと(ステップS614)、装置1からの運用開始(反射大)又は運用開始(反射小)の要求を待つ(ステップS615)。
【0127】
装置1からの要求が運用開始(反射大)である場合は、装置2は、応答を装置1に返したあと(ステップS609)、λ2での運用を開始する(ステップS610)。この場合、装置2の送信波長をλ2とし受信波長をλ1とする運用が開始される。
装置1からの要求が運用開始(反射小)である場合は、装置2は、装置1に応答を返し(ステップS616)、かつ、送受信に使用する波長を(λ1+λ2)に変更したあと(ステップS617)、変更後の波長での運用を開始する(ステップS618)。この場合、装置2の送信波長を(λ1+λ2)とし受信波長を(λ1+λ2)とする運用が開始される。
【0128】
〔光トランシーバの構成例1〕
図10は、光トランシーバ11の内部構成の一例を示すブロック図である。
図10の光トランシーバ11は、SCM方式を採用するコヒーレント光トランシーバ11Aである。以下、コヒーレント光トランシーバ11Aを「光トランシーバ11A」と略記する。なお、波長λ(m)は光速c(m/s)を周波数f(Hz)で除した物理量であるから、「サブキャリア」は周波数と言い換えることもできる。
【0129】
光トランシーバ11Aは、光源101、光分岐器102、第1信号処理部103、DA(Digital Analog)変換部104、光送信部105、光受信部106、AD(Analog Digital)変換部107、第2信号処理部108、光サーキュレータ109、及びプロセッサ110を備える。
光源101は、例えば半導体レーザダイオードである。レーザダイオードは、発光波長が固定でもよいし、発光波長が可変であってもよい。
【0130】
光分岐器102は、光源101の出力光を2方向に分岐する。分岐光の一方は、送信光として光送信部105に送出される。分岐光の他方は、ローカル光として光受信部106に送出される。ローカル光は、光受信部106のコヒーレント検波に用いられる。
このように、光源101は送受信処理に共用であり、送信光源及びローカル光源としての機能を併有する。従って、光トランシーバ11Aの小型化、低消費電力化、及び低コスト化を図ることができる。
【0131】
第1信号処理部103は、送信信号(電気信号)TSに応じた光送信部105の駆動信号をデジタル信号処理によって生成する。
第2信号処理部108は、AD変換部107からの入力信号に所定のデジタル信号処理を実行して受信信号(電気信号)RSを出力する。
【0132】
第1信号処理部103と第2信号処理部108は、複数のサブキャリアを送信と受信に任意に割り当てることができる。これにより、複数のサブキャリアの共用や区分が実現される。なお、第2信号処理部108のデジタル信号処理には、例えば、分散補償、サンプリング位相同期、適応等化、周波数オフセット補償、搬送波位相復元、及び誤り訂正復号のうちの少なくとも1つの処理を含んでもよい。
【0133】
DA変換部104は、第1信号処理部103が生成したデジタル駆動信号をアナログ駆動信号に変換する。アナログ駆動信号はドライバアンプなどで増幅されて光送信部105に出力される。
AD変換部107は、光受信部106から入力される信号光のパワーに応じたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換し、変換したデジタル電気信号を第2信号処理部108に出力する。
【0134】
光送信部105は、送信信号TSに応じた信号波形を有する駆動信号で駆動され、送信光を送信データ信号によって変調する。光送信部105は、変調後の光信号を多重化光信号Ooutとして出力する。
変調方式としては、多値PSK(Phase Shift Keying)、多値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などを採用し得る。また、1つの波長について偏波多重や直交周波数多重(OFDM)などの多重化が行われてもよい。
【0135】
光受信部106は、ローカル光と多重化光信号Oinを例えば90度ハイブリッドミキサなどでミキシングし、I成分とQ成分を含む複数系統の光信号に分離する。
光受信部106は、PD-TIA(Photodiode-Trans Impedance Amplifier)アレイなどの変換ユニットを含む。変換ユニットは、分離された複数の光信号を受光パワーに応じた電気信号に変換する。変換された電気信号は、AD変換部107にてデジタル信号に変換されて第2信号処理部108に出力される。
【0136】
光サーキュレータ109のポートP1には、光送信部105の出力側が接続され、ポートP2には、1芯双方向の光ファイバ4が接続され、ポートP3には、光受信部106の入力側が接続される。なお、光サーキュレータ109は、光トランシーバ11Aの筐体の外側に設けられていてもよい。
【0137】
プロセッサ110は、光トランシーバ11Aに含まれる構成要素を制御する、例えばワンチップのマイクロコントローラである。マイクロコントローラは、例えばMPU(Micro Processing Unit)、FPGAやCPLD(Complex Programmable Logic Device)などのロジック回路、或いはこれらの組み合わせによって構成され得る。
【0138】
プロセッサ110は、通信装置1,2の制御部13をマスター側とするシリアル通信が可能である。従って、プロセッサ110は、制御部13の主導の下で所定のスレーブ処理を実行可能である。
上記のスレーブ処理には、例えば、光受信部106においてモニタリングされる受光パワーを制御部13に通知する処理が含まれる。第2信号処理部108に前方誤り訂正(FEC)などの機能がある場合は、モニタリングしたビット誤り率を制御部13に通知する処理も、上記のスレーブ処理に含まれる。
【0139】
プロセッサ110は、制御部13の指示に応じて、複数のサブキャリアのうちのどれを使用するかを制御可能である。
具体的には、プロセッサ110は、制御部13から指示された送信用のサブキャリアの変調を実行させる制御信号CS1を生成し、生成した制御信号CSを光送信部105に出力する。同様に、プロセッサ110は、制御部13から指示された受信用のサブキャリアの復調を実行させる制御信号CS2を生成し、生成した制御信号CS2を光受信部106に出力する。
【0140】
〔光トランシーバの構成例2〕
図11は、光トランシーバ11の内部構成の別例を示すブロック図である。
図11の光トランシーバ11は、波長多重方式を利用したマルチチャンネルのWDM光トランシーバ11Bである。以下、WDM光トランシーバ11Bを「光トランシーバ11B」と略記する。
【0141】
ここでは、送受信の双方で4波長に対応する光トランシーバ11Bを例示するが、光トランシーバ11Bの波長数は2以上であればよい。
また、WDMは、CWDM(Coarse WDM)及びDWDM(Dense WDM)のうちのいずれであってもよい。
【0142】
図11に示すように、光トランシーバ11Aは、TOSA(Transmitter Optical Sub-Assembly)121、LDD(Laser Diode Driver)122、送信側CDR(Clock Data Recovery)123、ROSA(Receiver Optical Sub-assembly)124、TIA(Trans-Impedance Amplifier)125、受信側CDR126、光サーキュレータ127、及びプロセッサ128を備える。
【0143】
送信側CDR123は、最大で4つの電気信号TXの波形を整形可能な回路ユニットである。整形対象は、制御部13からの制御信号CS1に基づいて選択される。
波形の整形によりLDD122に入力される電気信号の品質が上がると、駆動信号の波形品質が向上する。その結果、レーザダイオードが出力する光信号の波形が整形され、光トランシーバ11Aの通信性能の向上に寄与する。
【0144】
LDD122は、最大で4つのレーザダイオードを駆動可能な回路ユニットである。駆動対象は、制御部13からの制御信号CS1に基づいて選択される。
LDD122は、送信側CDR123の電気信号TXに基づいて、TOSA121内のレーザダイオードを駆動する駆動信号を生成する。なお、LDD122は、TOSA121に内蔵されていてもよい。
【0145】
TOSA121は、送信対象の電気信号を光信号に変換する光デバイスである。すなわち、TOSA121は、駆動信号に応じて変調された光信号をレーザダイオードそれぞれから出力させる。
TOSA121は、例えば、最大で4つのチャンネルの光信号(それぞれが互いに異なるピーク波長を有する4つの光信号)を生成するための4つのレーザダイオード、及び光合波器を内蔵する。
【0146】
TOSA121のレーザダイオードは、電気信号を光信号に変換する光送信素子である。前述の通り、チャンネルは、電気信号又は光信号を伝達する伝送路を意味する。複数のチャンネルは、互いに並行に設置され、それぞれ独立な信号を伝送する複数の伝送路を意味する。
【0147】
TOSA121は、通信装置1,2内で生成される最大で4チャンネルの電気信号(入力信号)TXに基づいて、それぞれ波長の異なる光信号を生成する。
TOSA121は、生成した光信号を光合波器で合成(多重化)し、多重化光信号Ooutとして出力する。多重化光信号Ooutは、互いに異なる波長を有し、それぞれ独立した情報を伝達する最大で4つの波長λ1,λ2,λ3,λ4の光信号を含む。
【0148】
ROSA124は、受信した光信号を電気信号に変換する光デバイスである。
ROSA124は、例えば、最大で4つの波長チャンネルの光信号を受信するための4つのフォトダイオード、及び光分波器を内蔵する。
ROSA124のフォトダイオードは、光信号を電気信号に変換する光受信素子である。ROSA124は、外部から受けた多重化光信号Oinを互いに波長の異なる光信号に分波する。ROSA124は、最大で4つの波長に分波された光信号を光電流(電気信号)にそれぞれ変換する。
【0149】
TIA125は、光電流を電気信号(出力信号)RXに変換する回路ユニットである。
TIA125は、最大で4つのフォトダイオードから出力される光電流を電気信号RXにそれぞれ変換する。変換対象は、制御部13からの制御信号CS2に基づいて選択される。TIA125は、ROSA124に内蔵されてもよい。
【0150】
受信側CDR126は、最大で4つの電気信号RXの波形を整形可能な回路ユニットである。整形対象は、制御部13からの制御信号CS2に基づいて選択される。
TIA125が出力する電気信号は、受信側CDR126によってジッタが除去され、デジタル信号として扱いやすい状態で出力される。
送信側CDR123と受信側CDR126は、一体の集積回路で構成され得る。すなわち、これらのCDR123,126を送受信一体型のCDRとしてもよい。
【0151】
光サーキュレータ127のポートP1には、TOSA121の出力側が接続され、ポートP2には、1芯双方向の光ファイバ4が接続され、ポートP3には、ROSA124の入力側が接続される。なお、光サーキュレータ127は、光トランシーバ11Bの筐体の外側に設けられていてもよい。
【0152】
プロセッサ128は、光トランシーバ11Aに含まれる構成要素を制御する、例えばワンチップのマイクロコントローラである。マイクロコントローラは、例えばMPU、FPGAやCPLD(Complex Programmable Logic Device)などのロジック回路、或いはこれらの組み合わせによって構成され得る。
【0153】
プロセッサ128は、通信装置1,2の制御部13をマスター側とするシリアル通信が可能である。従って、プロセッサ128は、制御部13の主導の下で所定のスレーブ処理を実行可能である。
上記のスレーブ処理には、例えば、ROSA124においてモニタリングされる受光パワーを制御部13に通知する処理が含まれる。なお、制御部13は、前方誤り訂正(FEC)などの機能を有し、電気信号RXに基づいてビット誤り率を算出する。
【0154】
プロセッサ128は、制御部13の指示に応じて、複数(図例では4つ)の波長λ1,λ2,λ3,λ4のうちのどれを使用するかを制御可能である。
具体的には、プロセッサ128は、制御部13から指示された送信波長をイネーブルにする制御信号CS1を生成し、生成した制御信号CS1を送信側CDR123とLDD122に出力する。同様に、プロセッサ128は、制御部13から指示された受信波長をイネーブルにする制御信号CS2を生成し、生成した制御信号CS2をTIA125と受信側CDR126に出力する。
【0155】
〔第1の変形例:波長の第1設定処理の変形例〕
上述の波長の第1設定処理(
図4、
図5A及び
図5B)において、反射パワーT1,T2と、予め設定される以下の最小受信パワーL1,L2との比較結果に基づいて、波長λ1,λ2を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを判定してもよい。この場合、受信パワーR1,R2の測定は不要になる。
第1最小受信パワーL1:通信装置1が受信し得る最小の受信パワー(設定値)
第2最小受信パワーL2:通信装置2が受信し得る最小の受信パワー(設定値)
なお、通信装置1と通信装置2は対向するので、通常はL1=L2となる。
【0156】
具体的には、制御部13は、以下の処理1及び処理2を実行すればよい。
処理1:L1/T1≦Tha或いはL2/T2≦Thbの場合は、波長λ1,λ2を上り用と下り用に区分する。この場合、通信装置1及び通信装置2のいずれかにおいて、反射の影響により光信号を受信できない可能性があるからである。
処理2:L1/T1>ThaでかつL2/T2>Thbの場合は、波長λ1,λ2を上りと下りで共用する。この場合、通信装置1及び通信装置2の双方において、反射の影響が少なく光信号を適切に受信し得るからである。
【0157】
〔第2の変形例:光通信システムの接続形態のバリエーション〕
上述の実施形態において、マスター側の通信装置1の伝送方式が「1芯双方向伝送」(伝送方式1)であればよく、スレーブ側の通信装置2の伝送方式は「1芯双方向伝送」(伝送方式1)でもよいし「2芯伝送」(伝送方式2)でもよい。
【0158】
また、マスター側の通信装置1とスレーブ側の通信装置2との間の伝送路は、1芯の光ファイバ4による直結に限らず、1又は複数の光カプラや光ネットワークなどが介在する形態であってもよい。
以下、
図12を参照して、光通信システムの接続形態の変形例を説明する。
図12は、光通信システムの接続形態(トポロジー)のバリエーションを示す説明図である。
【0159】
図12の「パターン1」は、通信装置1から光カプラ201までを1芯双方向伝送とし、光カプラ201から通信装置2までを2芯伝送とする接続形態である。
具体的には、パターン1では、通信装置1に繋がる1芯の光ファイバ4が光カプラ(例えばパワースプリッタ)201により2本の1芯の光ファイバ202,202に分岐し、各光ファイバ202,202が通信装置2に接続される。なお、光カプラ201の代わりに光サーキュレータを採用し、光信号を上りと下りの双方向で多重又は分離してもよい。
【0160】
通信装置2を2芯伝送とするパターン1の場合、一方の光ファイバ202を上り用とし他方の光ファイバ202を下り用に区分すれば、通信装置2が上りと下りで同じ波長を共用しても光信号は混信しない。
このため、パターン1では、複数種類の波長を区分するか共用するかの決定は、マスター側の通信装置1が送信した光信号の反射の多寡のみで判定すれば足り、スレーブ側の通信装置2の反射の多寡を考慮する必要がない。
【0161】
従って、パターン1の場合は、波長の第1設定処理(
図4)と第2設定処理(
図5)を次のように変更すればよい。なお、第3設定処理(
図8)については、通信装置2側の測定結果を利用しないのでパターン1にも同様に適用し得る。
第1設定処理(
図4):
図4のステップST14からステップST16を省略する。ステップST13の判定結果が肯定の場合は波長を共用する。
第2設定処理(
図6):
図6のステップST23からステップST24を省略する。ステップST22の判定結果が肯定の場合は波長を共用する。
【0162】
図12の「パターン2」は、通信装置1と複数(図例では2つ)の通信装置2がODN(Optical Distribution Network)203により接続される接続形態である。
具体的には、ODN9は、通信装置1に繋がる光ファイバ4と、光ファイバ4に接続される光カプラ204と、光カプラ204から分岐する複数の光ファイバ205,205とを含み、各光ファイバ205,205に通信装置2がそれぞれ接続される。
【0163】
ODN203を含むパターン2では、1芯双方向伝送を行うスレーブ側の通信装置2が複数存在するので、マスター側の通信装置1は、複数のスレーブ側の通信装置2のうちの少なくとも1つと、複数の波長を共用するか区分するかを個別に決定すればよい。
例えば、図示の通り、通信装置1が使用可能な波長が「λ1,λ2,λ3,λ4」であり、通信装置2Aが使用可能な波長が「λ1,λ2」であり、通信装置2Bが使用可能な波長が「λ3,λ4」である場合を想定する。
【0164】
この場合、通信装置1は、通信装置2Aに対して前述の第1設定処理から第3設定処理のうちのいずれかを実行することにより、通信装置2Aとの光通信について波長λ1,λ2を上りと下りで区分するか共用するかを決定すればよい。
同様に、通信装置1は、通信装置2Bに対して前述の第1設定処理から第3設定処理のうちのいずれかを実行することにより、通信装置2Bとの光通信について波長λ3,λ4を上りと下りで区分するか共用するかを決定すればよい。
【0165】
なお、パターン2において、複数の波長λ1,λ2,λ3,λ4のうちのいずれか1つでもマスター側の通信装置1における光信号の反射が大きい場合は、すべての通信装置2A,2Bについて波長を区分することにしてもよい。
【0166】
図12の「パターン3」は、通信装置1と通信装置2との間の伝送路にAPN(All Photonics Network)206が含まれる接続形態である。
具体的には、APN206は、電気再生を行わずに光信号を転送するAPNの一例である。APN206は、例えば通信ノードを1又は複数のリング形態に構成したネットワークであり、APN206の内部では、上り光信号と下り光信号は別芯で伝送される。通信ノードとしては、例えばROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)又は光スイッチなどを採用し得る。
【0167】
もっとも、APN206の接続形態は、リング形態に限定されるものではなく、メッシュなどの任意のトポロジを採用し得る。
この場合、光信号が双方向で多重される光ファイバ4,207をAPN206と接続する部分において、光サーキュレータにより光信号の多重及び分離を実行すればよい。この点は、後述のパターン4の光ファイバ4と光ファイバ210の場合も同様である。
【0168】
図示の通り、APN206を含むパターン3では、マスター側の通信装置1については、1本の光ファイバ4によりAPN206に接続する1芯双方向伝送とすればよい。
スレーブ側の通信装置2については、1本の光ファイバ207によりAPN206に接続する1芯双方向伝送としてもよいし、2本の光ファイバ208,208によりAPN206に接続する2芯伝送としてもよい。
【0169】
本実施形態では、マスター側の通信装置1の制御部13が、複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定する処理(以下、「決定処理」という。)を行うが、パターン3では、通信装置1は、APN206の光パスの設定により、いずれかの通信装置2に接続される。
この場合、1芯で接続される通信装置2に関する決定処理は、上述の実施形態の場合と同様であり、2芯で接続される通信装置2に関する決定処理は、本変形例のパターン1の場合と同様である。
【0170】
図12の「パターン4」は、通信装置1と通信装置2との間の伝送路にAPN206とODN209が含まれる接続形態である。
具体的には、マスター側の通信装置1については、パターン3と同様に、1本の光ファイバ4によりAPN206に接続する1芯双方向伝送とされる。ODN209は、APN206に繋がる光ファイバ210と、光ファイバ210に接続される光カプラ211と、光カプラ211から分岐する複数の光ファイバ212,212とを含み、各光ファイバ212,212に通信装置2がそれぞれ接続される。なお、パターン4の決定処理は、パターン2の場合と同様である。
【0171】
〔第3の変形例:コントローラによる決定処理〕
上述の実施形態では、マスター側の通信装置1の制御部13が波長の共用可否に関する上記の決定処理を行うが、この決定処理をクラウド方式のコントローラ3(
図2参照)が代替してもよい。
【0172】
特に
図12のパターン3及びパターン4のように、伝送路にAPN206が含まれる場合には、通信装置1と通信装置2が使用する波長を、APN206内の通信ノードの波長と連携させる必要がある。
従って、通信装置1と通信装置2が使用する波長の決定処理についても、APN206で使用する波長を一括管理するクラウド方式のコントローラ3が行うのが好適である。
【0173】
この場合、コントローラ3は、まず区分した波長について通信装置1,2間の光パスを設定してから、通信装置1,2に波長の設定処理を指示する。次にコントローラ3は、結果の通知を受けて決定処理を行い、波長を共用すると決定した場合は、使われなくなった波長の光パスを解放する。
ただし、1つの波長(キャリア)内でサブキャリア分割多重を行う場合、コントローラ3は、上り用と下り用にそれぞれ1つの光パスを固定的に設定すればよい。決定処理が通信装置又は光トランシーバで行われる場合も、コントローラ3が行う光パスの設定は同様に必要である。
【0174】
コントローラ3による決定処理の代替は、例えば次のようになる。
波長の第1設定処理(
図4)の場合:
通信装置1は、反射パワーT1と受信パワーR1をコントローラ3に通知する。
コントローラ3は、通知されたデータに基づいてステップST13の判定を行う。
通信装置2は、反射パワーT2と受信パワーR2をコントローラ3に通知する。
コントローラ3は、通知されたデータに基づいてステップST16の判定を行い、決定処理の結果を通信装置に通知する。
【0175】
波長の第2設定処理(
図6)の場合:
通信装置1は、ビット誤り率E1をコントローラ3に通知する。
コントローラ3は、通知されたデータに基づいてステップST22の判定を行う。
通信装置2は、ビット誤り率E2をコントローラ3に通知する。
コントローラ3は、通知されたデータに基づいてステップST24の判定を行う。
【0176】
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
上述の実施形態において、波長の第1設定処理、第2設定処理、及び第3設定処理の少なくとも1つを、通信装置1,2の制御部13ではなく、光トランシーバ11のプロセッサ110,128が実行してもよい。
【符号の説明】
【0177】
1 通信装置(マスター装置)
2 通信装置(スレーブ装置)
3 コントローラ
4 光ファイバ
5 広域通信網
11 光トランシーバ
11A コヒーレント光トランシーバ
11B WDM光トランシーバ
12 スイッチ
13 制御部
13A CPU
13B メモリ
101 光源
102 光分岐器
103 第1信号処理部
104 DA変換部
105 光送信部
106 光受信部
107 AD変換部
108 第2信号処理部
109 光サーキュレータ
110 プロセッサ(制御部)
121 TOSA(光送信部)
122 LDD
123 送信側CDR
124 ROSA(光受信部)
125 TIA
126 受信側CDR
127 光サーキュレータ
128 プロセッサ(制御部)
201 光カプラ
202 光ファイバ
203 ODN
204 光カプラ
205 光ファイバ
206 APN
207 光ファイバ
208 光ファイバ
209 ODN
210 光ファイバ
211 光カプラ
212 光ファイバ
R1 受信パワー(第1受信パワー)
R2 受信パワー(第2受信パワー)
T1 反射パワー(第1反射パワー)
T2 反射パワー(第2反射パワー)
E1 ビット誤り率(第1誤り率)
E2 ビット誤り率(第2誤り率)
P1 制御経路
P2 制御経路
P3 制御経路
【要約】
本開示の一態様に係る装置は、1芯双方向伝送の光通信を行う通信装置であって、対向装置に対して複数種類の波長の光信号を送受信可能な光トランシーバと、前記対向装置との通信に用いる波長を決定する制御部と、を備え、前記制御部は、自装置から送信される光信号の反射の多寡に応じて、前記複数種類の波長を上り用と下り用に区分するか上りと下りで共用するかを決定する。