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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20240925BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240925BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38
H02J9/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024539325
(86)(22)【出願日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2023030497
(87)【国際公開番号】W WO2024057862
(87)【国際公開日】2024-03-21
【審査請求日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2022146724
(32)【優先日】2022-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文俊
(72)【発明者】
【氏名】栗田 了輔
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-299251(JP,A)
【文献】特開2011-160596(JP,A)
【文献】特開2004-236453(JP,A)
【文献】特開昭55-074321(JP,A)
【文献】特開2001-220963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
H02J 9/00 -11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物においてそれぞれに異なる複数の防火区画にそれぞれに設置された複数の負荷と、
前記複数の防火区画のそれぞれに設置される蓄電池を備え、商用電力系統から供給される電力を充電または前記蓄電池から前記負荷へ電力を放電する複数のパワーコンディショナと、
前記複数のパワーコンディショナの出力が集電されて前記商用電力系統に連系される受電点と、
前記受電点での電流の向きおよび大きさを参照し、前記複数のパワーコンディショナの蓄電池のそれぞれに対する充放電を制御する制御装置と、
を備えた電力システムであって、
前記制御装置は、
前記複数のパワーコンディショナの蓄電池の故障を検出し、
前記故障した蓄電池を備えるパワーコンディショナが設置された前記防火区画以外の前記パワーコンディショナから、前記故障した蓄電池を備えるパワーコンディショナが設置された前記防火区画の前記負荷へ電力を供給するよう制御する、
電力システム。
【請求項2】
前記複数の防火区画は、建築物における複数の階層であり、
前記複数の負荷は前記複数の階層のそれぞれに設置された空調機器であって、
前記制御装置は、
前記空調機器の運転時間が互いに重複しないように輪番運転するとように制御し、
前記故障した蓄電池が存在しないとき、運転中の前記空調機器と同階層に設置された前記パワーコンディショナの蓄電池の蓄電電力を、前記運転中の空調機器に供給するよう制御する、
請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記故障した蓄電池が存在するとき、前記運転中の空調機器と異なる階層に設置された前記パワーコンディショナの蓄電池の蓄電電力を、前記運転中の空調機器に供給するよう制御する、
請求項2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記故障した蓄電池と同階層の空調機器に対して、前記輪番運転の直前および直後とは異なる順番の空調機器と同階層に設置された前記パワーコンディショナの蓄電池の蓄電電力を供給するよう制御する、
請求項3に記載の電力システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記商用電力系統への逆潮流を検出すると、
前記複数のパワーコンディショナのうち、前記蓄電池から放電しているパワーコンディショナの系統連系リレーのみを解列するように制御する、
請求項2記載の電力システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記複数の階層の温度が冷房用上限温度になると、前記冷房用上限温度になった階層の前記空調機器を運転し、
前記複数の階層の温度が冷房用下限温度になると、前記運転中の空調機器を停止するように制御する、
請求項2記載の電力システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記複数の階層の温度が暖房用下限温度になると、前記暖房用下限温度になった階層の前記空調機器を運転し、
前記複数の階層の温度が暖房用上限温度になると、前記運転中の空調機器を停止するように制御する、
請求項2記載の電力システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記複数の階層の空調機器の全てが停止中のときに、前記複数の蓄電池に充電するように制御する、
請求項に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電部と複数の負荷とを備える電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電システムが記載されている。特許文献1の蓄電システムは、複数の蓄電部、および複数の電力変換部を備える。
【0003】
複数の電力変換部は、複数の蓄電部のそれぞれに対応して配置される。複数の電力変換部は、それぞれに接続する蓄電部の直流出力を交流出力に変換して負荷に供給する。
【0004】
特許文献1の蓄電システムは、負荷で電力を消費する場合、商用電力系統からの電力とともに蓄電部から放電された電力を負荷に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-85852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示すような従来の構成では、複数の蓄電部のうちの利用できない蓄電部が存在すると、利用できない蓄電部から電力供給を受けていた負荷は、商用電力系統から電力の供給を受ける。このため、商用電力系統からの受電電力が増加してしまう。
【0007】
したがって、本発明の目的は、利用できない蓄電池が存在する場合でも、電力系統からの供給電力の増加を抑制できる電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の電力システムは、複数の負荷、複数のパワーコンディショナ、受電点、および、制御装置を備える。複数の負荷は、建築物においてそれぞれに異なる複数の防火区画にそれぞれに設置される。複数のパワーコンディショナは、複数の防火区画のそれぞれに設置される蓄電池を備え、商用電力系統から供給される電力を蓄電池に充電または蓄電池から負荷へ電力を放電する。受電点は、複数のパワーコンディショナの出力が集電されて商用電力系統に連系される点である。制御装置は、受電点での電流の向きおよび大きさを参照し、複数のパワーコンディショナの蓄電池のそれぞれに対する充放電を制御する。
【0009】
制御装置は、複数のパワーコンディショナの蓄電池の故障を検出し、故障した蓄電池を備えるパワーコンディショナが設置された防火区画以外のパワーコンディショナから、故障した蓄電池を備えるパワーコンディショナが設置された防火区画の負荷へ電力を供給するよう制御する。
【0010】
この構成では、定常的にはパワーコンディショナおよび蓄電池が負荷毎に決められていても、故障した蓄電池が存在すると、他の故障していない蓄電池によって、故障した蓄電池が担当していた負荷へ電力が供給される。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、利用できない蓄電池が存在する場合でも、電力系統からの供給電力の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施形態に係る電力システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る電力システムにおける定常時の電力供給状態の一例を示す図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係る電力システムにおける蓄電池の故障発生時の電力供給状態の一例を示す図である。
図4図4は、第2の実施形態に係る電力システムの構成の一例を示す図である。
図5図5は、第2の実施形態に係る電力システムにおける輪番制御での各状態を示す図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る電力システムにおける輪番制御での各状態を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る電力システムにおける輪番制御での各状態を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る電力システムにおける輪番制御での各状態を示す図である。
図9図9は、本発明の第2の実施形態に係る電力システムにおける蓄電池の故障発生時の電力供給状態の一例を示す図である。
図10図10は、本発明の第2の実施形態に係る電力システムでの充放電シーケンスの一例を示す図である。
図11図11は、本発明の第2の実施形態に係る電力システムを採用した場合の室温の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る電力システムについて、図を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る電力システムの構成の一例を示す図である。なお、本実施形態を含む各実施形態における階層数、パワーコンディショナの個数、負荷の個数は、一例であり、複数であればこの例に限るものではない。
【0014】
(電力システム10の概略構成)
図1に示すように、電力システム10は、複数のパワーコンディショナ31-34、複数の負荷41-44、制御装置60、商用電力連系ライン500、受電点P500、および、電流センサCTを備える。
【0015】
複数のパワーコンディショナ31-34は、パワーコンディショナ31、パワーコンディショナ32、パワーコンディショナ33、および、パワーコンディショナ34を備える。複数の負荷41-44は、負荷41、負荷42、負荷43、および、負荷44を備える。
【0016】
複数のパワーコンディショナ31-34、複数の負荷41-44、および、制御装置60は、例えば複数階(図の例であれば、4階建て)を有する建築物に設置される。図の例では、パワーコンディショナ31、および、負荷41は、3階に設置され、パワーコンディショナ32、および、負荷42は、2階に設置される。パワーコンディショナ33、および、負荷43は、1階に設置され、パワーコンディショナ34、および、負荷44は、地下1階に設置される。すなわち、パワーコンディショナおよび負荷の組は、同じ建築物の異なる階層にそれぞれに設置される。制御装置60は、いずれの階層に設置されていてもよい。
【0017】
それぞれの階層は、それぞれに異なる防火区画に設定されている。すなわち、パワーコンディショナおよび負荷の組(複数組)は、それぞれに異なる防火区画に設置される。
【0018】
複数のパワーコンディショナ31-34は、受電点P500に接続し、受電点P500において複数のパワーコンディショナ31-34の出力が集電され、商用電力連系ライン500を通じて商用電力系統に連系される。
【0019】
パワーコンディショナ31は、PCS制御部310、双方向インバータ313、双方向DCDCコンバータ314、蓄電池315、および、系統連系リレー316を備える。系統連系リレー316は、受電点P500に接続される。双方向インバータ313の交流端子は、系統連系リレー316に接続され、双方向インバータ313の直流端子は、双方向DCDCコンバータ314に接続される。双方向DCDCコンバータ314は、蓄電池315に接続される。
【0020】
PCS制御部310は、制御装置60からの制御指示にしたがって、パワーコンディショナ31の各種動作の制御を行う。また、PCS制御部310は、パワーコンディショナ31の各部の動作状態を検出し、異常があれば制御装置60に送信する。
【0021】
パワーコンディショナ32は、PCS制御部320、双方向インバータ323、双方向DCDCコンバータ324、蓄電池325、および、系統連系リレー326を備える。系統連系リレー326は、受電点P500に接続される。
【0022】
パワーコンディショナ33は、PCS制御部330、双方向インバータ333、双方向DCDCコンバータ334、蓄電池335、および、系統連系リレー336を備える。系統連系リレー336は、受電点P500に接続される。
【0023】
パワーコンディショナ34は、PCS制御部340、双方向インバータ343、双方向DCDCコンバータ344、蓄電池345、および、系統連系リレー346を備える。系統連系リレー346は、受電点P500に接続される。
【0024】
パワーコンディショナ32-34の構成および制御は、パワーコンディショナ31と同様であり、説明は省略する。
【0025】
負荷41は、パワーコンディショナ31と受電点P500とを接続するラインに対して接続される。負荷42は、パワーコンディショナ32と受電点P500とを接続するラインに対して接続される。負荷43は、パワーコンディショナ33と受電点P500とを接続するラインに対して接続される。負荷44は、パワーコンディショナ34と受電点P500とを接続するラインに対して接続される。
【0026】
(制御装置60)
制御装置60は、商用電力連系ライン500に配置された電流センサCTからの出力(受電点P500での電流の向きおよび大きさ)を受け、複数のパワーコンディショナ31-34に対して、後述する各種の制御を行う。
【0027】
(定常時の制御)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る電力システムにおける定常時の電力供給状態の一例を示す図である。
【0028】
制御装置60は、電流センサCTの出力に基づいて商用電力系統から電力の供給を受けていることを検出すると、商用電力系統からの所定時間(例えば30分)当たりの供給電力(買電電力)が予め設定した上限値を超えない範囲で、蓄電池315、325、335、345による放電アシストを行いながら負荷41-44へ運転用の電力を供給するように、複数のパワーコンディショナ31-34に対して電力供給の指示を出力する。
【0029】
複数のパワーコンディショナ31-34は、制御装置60からの電力供給の指示にしたがって、負荷41-44に電力供給を行う。この際、複数のパワーコンディショナ31-34は、それぞれに同じ階層に設置された負荷41-44に対して電力供給を行う。
【0030】
より具体的には、パワーコンディショナ31のPCS制御部310は、商用電力系統からの電力(買電電力)と、蓄電池315からの放電電力とによって、負荷41の消費電力を賄えるように制御を行う。すなわち、PCS制御部310は、負荷41の消費電力に対して商用電力系統からの電力(制御装置60から指示された電力)の負荷41への割り当て分の電力で足りない電力を、蓄電池315から放電して負荷41に供給する。
【0031】
パワーコンディショナ32のPCS制御部320は、商用電力系統からの電力(買電電力)と、蓄電池325からの放電電力とによって、負荷42の消費電力を賄えるように制御を行う。すなわち、PCS制御部320は、負荷42の消費電力に対して商用電力系統からの電力(制御装置60から指示された電力)の負荷42への割り当て分の電力で足りない電力を、蓄電池325から放電して負荷42に供給する。
【0032】
パワーコンディショナ33のPCS制御部330は、商用電力系統からの電力(買電電力)と、蓄電池335からの放電電力とによって、負荷43の消費電力を賄えるように制御を行う。すなわち、PCS制御部330は、負荷43の消費電力に対して商用電力系統からの電力(制御装置60から指示された電力)の負荷43への割り当て分の電力で足りない電力を、蓄電池335から放電して負荷43に供給する。
【0033】
パワーコンディショナ34のPCS制御部340は、商用電力系統からの電力(買電電力)と、蓄電池345からの放電電力とによって、負荷44の消費電力を賄えるように制御を行う。すなわち、PCS制御部340は、負荷44の消費電力に対して商用電力系統からの電力(制御装置60から指示された電力)の負荷44への割り当て分の電力で足りない電力を、蓄電池345から放電して負荷44に供給する。
【0034】
このような制御を行うことで、電力システム10は、それぞれ異なる階層(防火区画)に設置された複数の負荷41-44と同じ階層に設置された複数のパワーコンディショナ31-34の蓄電池315、325、335、345からの電力供給を利用し、商用電力系統からの所定時間(例えば30分)当たりの供給電力(買電電力)が予め設定した上限値を超えない範囲で、複数の負荷41-44に電力を供給できる。
【0035】
ここで、建築物で1つの蓄電池を備えて、この1つの蓄電池から複数の負荷41-44に電力を供給する場合、複数の負荷41-44の消費電力を賄える容量の蓄電池が必要になる。しかしながら、電力システム10では、負荷毎に電力供給を受ける蓄電池が設置されているので、1つの蓄電池しか備えない場合よりもそれぞれの蓄電池の容量を小さくできる。言い換えれば、電力システム10では、防火区画毎に設置する蓄電池の容量を小さくできる。
【0036】
これにより、電力システム10は、蓄電池の設置の安全性条件をクリアし易く、蓄電池の設置コストを抑えることができる。
【0037】
(蓄電池の故障発生時の制御)
図3は、本発明の第1の実施形態に係る電力システムにおける蓄電池の故障発生時の電力供給状態の一例を示す図である。図3は、パワーコンディショナ34の蓄電池345が故障した場合を示すが、他のパワーコンディショナの蓄電池が故障した場合も同様の制御が可能である。
【0038】
図3に示すように、蓄電池345が故障して、負荷44への電力供給ができなくなると、PCS制御部340は、これを検出して、制御装置60に送信する。
【0039】
制御装置60は、蓄電池345を故障の情報を取得すると、パワーコンディショナ32のPCS制御部320に、負荷44への放電アシストを行うように指示する。
【0040】
PCS制御部320は、負荷42への電力供給とともに、負荷44への電力供給を行うように、蓄電池325の放電電力を増加する制御を行う。
【0041】
これにより、負荷44には、商用電力系統からの供給電力とともに、蓄電池325からの放電電力が供給され、負荷44の消費電力を不足なく賄うことができる。したがって、電力システム10は、負荷44と同じ防火区画に設置された蓄電池345が故障しても、他の防火区画に設置された蓄電池325から電力アシストを行うことができる。
【0042】
また、電力システム10は、蓄電池345の故障による負荷44の運転停止を抑制できる。さらに、電力システム10は、商用電力系統からの供給電力の急激な増加を抑制でき、所定時間当たりの商用電力系統からの供給電力が上限値を超えないように制御できる。
【0043】
なお、故障している蓄電池345への電力アシストは、故障していない蓄電池325に限るものではない。例えば、故障している蓄電池345への電力アシストは、故障していない蓄電池315や蓄電池335であってもよく、故障していない複数の蓄電池を同時に用いることができる。また、故障している蓄電池345への電力アシストは、故障していない複数の蓄電池を順番に用いることができる。
【0044】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る電力システムについて、図を参照して説明する。図4は、第2の実施形態に係る電力システムの構成の一例を示す図である。
【0045】
図4に示すように、第2の実施形態に係る電力システム10Aは、第1の実施形態に係る電力システム10に対して、負荷41-44がそれぞれ空調機器41A-44Aになった点、複数の空調機器41A-44Aを輪番で運転する点で異なり、これらの異なる構成に対応した制御において異なる。電力システム10Aの他の構成は、電力システム10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0046】
電力システム10Aは、複数のパワーコンディショナ31-34、複数の空調機器41A-44A、制御装置60、商用電力連系ライン500、受電点P500、および、電流センサCTを備える。
【0047】
空調機器41Aは、パワーコンディショナ31と同じ階層に設置される。空調機器41Aは、パワーコンディショナ31と受電点P500とを接続するラインに対して接続される。空調機器42Aは、パワーコンディショナ32と同じ階層に設置される。空調機器42Aは、パワーコンディショナ32と受電点P500とを接続するラインに対して接続される。空調機器43Aは、パワーコンディショナ33と同じ階層に設置される。空調機器43Aは、パワーコンディショナ33と受電点P500とを接続するラインに対して接続される。空調機器44Aは、パワーコンディショナ34と同じ階層に設置される。空調機器44Aは、パワーコンディショナ34と受電点P500とを接続するラインに対して接続される。
【0048】
制御装置60は、複数のパワーコンディショナ31-34への制御指示を行うとともに、複数の空調機器41A-44Aの運転制御を行う。
【0049】
(運転制御)
(定常時の制御)
図5図6図7図8は、第2の実施形態に係る電力システムにおける輪番制御での各状態を示す図である。図5は、3階の空調機器のみを運転する場合、図6は、2階の空調機器のみを運転する場合、図7は、1階の空調機器のみを運転する場合、図8は、B1階の空調機器のみを運転する場合を示す。
【0050】
図5図6図7図8に示すように、制御装置60は、複数の空調機器41A-44Aを輪番運転するように制御する。すなわち、制御装置60は、複数の空調機器41A-44Aのそれぞれの運転状態が重ならないように、順々に単独運転するように、複数の空調機器41A-44Aの運転制御を行う。
【0051】
まず、図5に示すように、制御装置60は、空調機器41Aを運転させ、複数の空調機器42A、43A、44Aを停止させる。この状態において、制御装置60は、蓄電池315を放電させて空調機器41Aの消費電力をアシストする指示をパワーコンディショナ31に与える。パワーコンディショナ31のPCS制御部310は、蓄電池315を放電制御し、空調機器41Aに電力を供給する。
【0052】
より具体的には、制御装置60は、商用電力系統からの供給電力を制御し、PCS制御部310は、空調機器41Aの消費電力に対して商用電力系統からの供給電力で足りない分の電力を、蓄電池315の放電電力で賄う。例えば、制御装置60は、空調機器41Aの消費電力が5kWhの場合、商用電力系統から3kWhを空調機器41Aに供給するように制御し、PCS制御部310は、蓄電池315の放電電力によって2kWhを空調機器41Aに供給するように制御する。
【0053】
この際、制御装置60は、複数のパワーコンディショナ32-34がそれぞれの蓄電池325、335、345からの放電を行わないように制御する。
【0054】
次に、図6に示すように、制御装置60は、空調機器42Aを運転させ、複数の空調機器41A、43A、44Aを停止させる。この状態において、制御装置60は、蓄電池325を放電させて空調機器42Aの消費電力をアシストする指示をパワーコンディショナ32に与える。パワーコンディショナ32のPCS制御部320は、蓄電池325を放電制御し、空調機器42Aに電力供給する。この際、制御装置60は、複数のパワーコンディショナ31、33、34がそれぞれの蓄電池315、335、345からの放電を行わないように制御する。
【0055】
次に、図7に示すように、制御装置60は、空調機器43Aを運転させ、複数の空調機器41A、42A、44Aを停止させる。この状態において、制御装置60は、蓄電池335を放電させて空調機器43Aの消費電力をアシストする指示をパワーコンディショナ33に与える。パワーコンディショナ33のPCS制御部330は、蓄電池335を放電制御し、空調機器43Aに電力供給する。この際、制御装置60は、複数のパワーコンディショナ31、32、34がそれぞれの蓄電池315、325、345からの放電を行わないように制御する。
【0056】
次に、図8に示すように、制御装置60は、空調機器44Aを運転させ、複数の空調機器41A、42A、43Aを停止させる。この状態において、制御装置60は、蓄電池345を放電させて空調機器44Aの消費電力をアシストする指示をパワーコンディショナ34に与える。パワーコンディショナ34のPCS制御部340は、蓄電池345を放電制御し、空調機器44Aに電力供給する。この際、制御装置60は、複数のパワーコンディショナ31、32、33がそれぞれの蓄電池315、325、335からの放電を行わないように制御する。
【0057】
この後、上述の空調機器41Aの単独運転と蓄電池315によるアシスト、空調機器42Aの単独運転と蓄電池325によるアシスト、空調機器43Aの単独運転と蓄電池335によるアシスト、空調機器44Aの単独運転と蓄電池345によるアシストを順番に行い、これを繰り返す。
【0058】
(蓄電池の故障発生時の制御)
図9は、本発明の第2の実施形態に係る電力システムにおける蓄電池の故障発生時の電力供給状態の一例を示す図である。図9は、パワーコンディショナ34の蓄電池345が故障した場合を示すが、他のパワーコンディショナの蓄電池が故障した場合も同様の制御が可能である。
【0059】
まず、複数の空調機器41A-44Aの輪番運転において、故障が発生していない蓄電池315、325、335からの電力アシストによって空調機器41A、42A、43Aを運転する場合の制御は、上述の定常時の制御と同じであり、説明は省略する。
【0060】
輪番運転において、空調機器44Aの運転期間になったとき、制御装置60は、蓄電池345の故障の検出結果を受け、他の蓄電池から空調機器44Aに電力アシストを行うように制御する。例えば、図9の場合では、制御装置60は、蓄電池325から電力アシストするようにパワーコンディショナ32に指示する。パワーコンディショナ32のPCS制御部320は、蓄電池325を放電制御し、パワーコンディショナ32は、空調機器44Aに電力を供給する。
【0061】
これにより、空調機器44Aには、商用電力系統からの供給電力とともに、蓄電池325からの放電電力が供給され、空調機器44Aの消費電力を不足なく賄うことができる。したがって、電力システム10Aは、空調機器44Aと同じ防火区画に設置された蓄電池345が故障しても、他の防火区画に設置された蓄電池325から電力アシストを行うことができる。
【0062】
また、電力システム10Aは、蓄電池345の故障による空調機器44Aの運転停止を抑制できる。これにより、電力システム10Aは、空調機器44Aで空調が制御されている空間にいる人々が不快感を感じることを抑制できる。さらに、電力システム10Aは、商用電力系統からの供給電力の急激な増加を抑制でき、所定時間当たりの商用電力系統からの供給電力が上限値を超えないように制御できる。
【0063】
(充放電シーケンス)
図10は、本発明の第2の実施形態に係る電力システムでの充放電シーケンスの一例を示す図である。図10は、1つの蓄電池(B1階の蓄電池345)が故障している場合であり、図10の各グラフの横軸は時間を示し、縦軸は蓄電池の残容量を示す。図11は、本発明の第2の実施形態に係る電力システムを採用した場合の室温の変化の一例を示す図である。図11は、空調機器によって冷房を行う場合であり、横軸は時間を示し、縦軸は室温を示す。
【0064】
電力システム10Aは、複数の空調機器41A、42A、43A、44Aを輪番運転させる。これにより、図10図11に示すように、空調機器41Aで空調された3階は、空調機器41Aの運転時Td41に室温が低下し、空調機器42Aで空調された2階は、空調機器42Aの運転時Td42に室温が低下する。空調機器43Aで空調された1階は、空調機器43Aの運転時Td43に室温が低下し、空調機器44Aで空調されたB1階は、空調機器44Aの運転時Td44に室温が低下する。
【0065】
ここで、上述のように、蓄電池345が故障して蓄電池325でアシストする場合、図10に示すように、空調機器41Aの運転時Td41には、蓄電池315の残容量が低下し、空調機器42Aの運転時Td42および空調機器44Aの運転時Td44には、蓄電池325の残容量が低下し、空調機器43Aの運転時Td43には、蓄電池335の残容量が低下する。
【0066】
このような制御を行う場合、故障していない蓄電池315、325、335は、充電制御される。より具体的には、電力システム10Aは、次の制御によって充電を行う。
【0067】
制御装置60は、図11に示すように、複数の空調機器41A-44Aの運転および停止を、それぞれの階層の室温に基づいて制御する。例えば、制御装置60は、3階の室温が冷房用上限温度tctに達すると、蓄電池315の放電アシストを用いて空調機器41Aを運転開始し、3階の室温が冷房用下限温度tcbに達すると、空調機器41Aの運転を停止し、蓄電池315の放電を停止する。なお、冷房用上限温度tctと冷房用下限温度tcbは、空調機器の設定温度(目標室温)に基づいて、所定の温度幅で設定される。この温度幅は、設定温度に対して不快感を殆ど感じない温度幅である。
【0068】
次に、制御装置60は、2階の室温が冷房用上限温度tctに達すると、蓄電池325の放電アシストを用いて空調機器42Aを運転開始し、2階の室温が冷房用下限温度tcbに達すると、空調機器42Aの運転を停止し、蓄電池325の放電を停止する。
【0069】
次に、制御装置60は、1階の室温が冷房用上限温度tctに達すると、蓄電池335の放電アシストを用いて空調機器43Aを運転開始し、1階の室温が冷房用下限温度tcbに達すると、空調機器43Aの運転を停止し、蓄電池335の放電を停止する。
【0070】
次に、制御装置60は、B1階の室温が冷房用上限温度tctに達すると、蓄電池325の放電アシストを用いて空調機器44Aを運転開始し、B1階の室温が冷房用下限温度tcbに達すると、空調機器44Aの運転を停止し、蓄電池325からの放電を停止する。
【0071】
このような輪番制御において、温度による複数の空調機器41A-44Aの運転、停止を行うことで、空調機器41Aの運転停止から空調機器42Aの運転開始までの期間(隙間時間)、空調機器42Aの運転停止から空調機器43Aの運転開始までの期間(隙間時間)、空調機器42Aの運転停止から空調機器43Aの運転開始までの期間(隙間時間)、および、空調機器44Aの運転停止から空調機器41Aの運転開始までの期間(隙間時間)が生じる。これらの期間(隙間時間)は、すべての蓄電池315、325、335の放電が停止している期間である。
【0072】
制御装置60は、このような全ての空調機器41A-44Aおよび蓄電池315、325、335が停止中の期間(隙間時間)を検出する。そして、制御装置60は、これらの期間(隙間時間)に、蓄電池315、325、335のいずれかを充電制御する。例えば、制御装置60は、図10の充電期間Tc315に蓄電池315の充電制御を行い、充電期間Tc325に蓄電池325の充電制御を行い、充電期間Tc335に蓄電池335の充電制御を行う。これにより、電力システム10Aは、放電アシストによって残容量が低下した蓄電池315、325、335の残容量を適宜回復できる。
【0073】
この際、図10に示すように、制御装置60は、空調機器42A、44Aの放電アシストを行う蓄電池325の充電期間Tc325の回数(総充電時間)を、空調機器41Aの放電アシストを行う蓄電池315の充電期間Tc315の回数(総充電時間)、および、空調機器43Aの放電アシストを行う蓄電池335の充電期間Tc335の回数(総充電時間)よりも多くする。
【0074】
これにより、電力システム10Aは、輪番制御の一周期において蓄電池315および蓄電池335よりも放電量が多い蓄電池325の残容量を効果的に回復できる。
【0075】
なお、電力アシストを行う蓄電池は、電力アシストを受ける空調機器の設置された階と異なる階の蓄電池であればよい。ただし、電力アシストを行う蓄電池は、電力アシストを受ける空調機器に対して輪番の直前および直後ではない空調機器と同じ階に設置された蓄電池であることが好ましい。これにより、電力システム10Aは、電力アシストを行う蓄電池が輪番で連続する空調機器に対して連続的に電力アシストを行うことを抑制できる。したがって、蓄電池の残容量が0になり難く、電力システム10Aは、故障した蓄電池がある場合に、より安定した電力アシストを継続できる。
【0076】
また、上述の説明では、空調機器によって冷房を行う場合を示したが、暖房を行う場合も同様の制御を適用できる。ただし、暖房の場合、制御装置60は、室温が暖房用下限温度に達すると空調機器の運転を開始し、室温が暖房用上限温度に達すると空調機器の運転を停止する。
【0077】
(解列制御)
上述の定常時の制御、および、蓄電池の故障発生時の制御において、制御装置60は、電流センサCTの出力に基づいて、商用電力系統への逆潮流を検出すると、蓄電池315、325、335、345のうち、放電している蓄電池を備えるパワーコンディショナ31-34の系統連系リレー316、326、336,346のみを解列するように制御する。この解列制御を受けたパワーコンディショナは、自装置内の系統連系リレーを解列させる。
【0078】
これにより、電力システム10、10Aは、商用電力系統への逆潮流の発生を防止できる。
【0079】
また、電力システム10、10Aでは、故障した蓄電池を備えるパワーコンディショナは、系統連系リレーを解列してもよい。
【0080】
また、電力システム10Aでは、電力アシストを行う蓄電池を備えるパワーコンディショナと異なるパワーコンディショナは、電力アシストが行われている期間に、系統連系リレーを解列してもよい。
【0081】
<1> 建築物においてそれぞれに異なる複数の防火区画にそれぞれに設置された複数の負荷と、
前記複数の防火区画のそれぞれに設置される蓄電池を備え、商用電力系統から供給される電力を充電または前記蓄電池から前記負荷へ電力を放電する複数のパワーコンディショナと、
前記複数のパワーコンディショナの出力が集電されて前記商用電力系統に連系される受電点と、
前記受電点での電流の向きおよび大きさを参照し、前記複数のパワーコンディショナの蓄電池のそれぞれに対する充放電を制御する制御装置と、
を備えた電力システムであって、
前記制御装置は、
前記複数のパワーコンディショナの蓄電池の故障を検出し、
前記故障した蓄電池を備えるパワーコンディショナが設置された前記防火区画以外の前記パワーコンディショナから、前記故障した蓄電池を備えるパワーコンディショナが設置された前記防火区画の前記負荷へ電力を供給するよう制御する、電力システム。
【0082】
<2> 前記複数の防火区画は、建築物における複数の階層であり、
前記複数の負荷は前記複数の階層のそれぞれに設置された空調機器であって、
前記制御装置は、
前記空調機器の運転時間が互いに重複しないように輪番運転するとように制御し、
前記故障した蓄電池が存在しないとき、運転中の前記空調機器と同階層に設置された前記パワーコンディショナの蓄電池の蓄電電力を、前記運転中の空調機器に供給するよう制御する、<1>の電力システム。
【0083】
<3> 前記制御装置は、
前記故障した蓄電池が存在するとき、前記運転中の空調機器と異なる階層に設置された前記パワーコンディショナの蓄電池の蓄電電力を、前記運転中の空調機器に供給するよう制御する、<2>の電力システム。
【0084】
<4> 前記制御装置は、
前記故障した蓄電池と同階層の空調機器に対して、前記輪番運転の直前および直後とは異なる順番の空調機器と同階層に設置された前記パワーコンディショナの蓄電池の蓄電電力を供給するよう制御する、<3>の電力システム。
【0085】
<5> 前記制御装置は、
前記商用電力系統への逆潮流を検出すると、
前記複数のパワーコンディショナのうち、前記蓄電池から放電しているパワーコンディショナの系統連系リレーのみを解列するように制御する、<2>乃至<4>のいずれかの電力システム。
【0086】
<6> 前記制御装置は、
前記複数の階層の温度が冷房用上限温度になると、前記冷房用上限温度になった階層の前記空調機器を運転し、
前記複数の階層の温度が冷房用下限温度になると、前記運転中の空調機器を停止するように制御する、<2>乃至<5>のいずれかの電力システム。
【0087】
<7> 前記制御装置は、
前記複数の階層の温度が暖房用下限温度になると、前記暖房用下限温度になった階層の前記空調機器を運転し、
前記複数の階層の温度が暖房用上限温度になると、前記運転中の空調機器を停止するように制御する、<2>乃至<5>のいずれかの電力システム。
【0088】
<8> 前記制御装置は、
前記複数の階層の空調機器の全てが停止中のときに、前記複数の蓄電池に充電するように制御する、<2>乃至<7>のいずれかの電力システム。
【符号の説明】
【0089】
10、10A:電力システム
31、32、33、34:パワーコンディショナ
41、42、43、44:負荷
41A、42A、43A、44A:空調機器
60:制御装置
310、320、330、340:PCS制御部
313、323、333、343:双方向インバータ
314、324、334、344:双方向DCDCコンバータ
315、325、335、345:蓄電池
316、326、336、346:系統連系リレー
500:商用電力連系ライン
CT:電流センサ
P500:受電点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11