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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/026 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
H01S5/026
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2024539752
(86)(22)【出願日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2024014403
【審査請求日】2024-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 麻美
(72)【発明者】
【氏名】外間 洋平
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真也
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-139264(JP,A)
【文献】特開平08-248248(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079112(WO,A1)
【文献】特開2000-312054(JP,A)
【文献】特開平01-186693(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0089270(US,A1)
【文献】国際公開第2023/017607(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の上に形成され、活性層を有し、レーザ光を生成し、回折格子を用いないファブリペローレーザと、
前記半導体基板の上に形成され、前記活性層に接続された吸収層を有し、前記レーザ光を変調する電界吸収変調器と、
前記レーザ光が出射されるチップ前端面に形成された低反射率膜と、
前記チップ前端面とは反対側のチップ後端面に形成された高反射率膜とを備え、
前記低反射率膜は前記高反射率膜よりも前記レーザ光の反射率が低く、
前記ファブリペローレーザと前記電界吸収変調器の接続部において前記ファブリペローレーザのメサ幅と前記電界吸収変調器のメサ幅が異なり、前記接続部で前記ファブリペローレーザのメサ幅から前記電界吸収変調器のメサ幅に急峻に変化することを特徴とする光半導体装置。
【請求項2】
前記ファブリペローレーザの前記メサ幅と前記電界吸収変調器の前記メサ幅はそれぞれ前記接続部まで変化せず一定であることを特徴とする請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
前記ファブリペローレーザは、前記活性層を含むリッジ構造のサイドを電流ブロック層で埋め込んだ埋め込み構造であり、
前記電界吸収変調器は、前記吸収層を含むハイメサ構造であり、
前記ファブリペローレーザの前記メサ幅は前記埋め込み構造の幅であり、
前記電界吸収変調器の前記メサ幅は前記ハイメサ構造の幅であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光半導体装置。
【請求項4】
半導体基板と、
前記半導体基板の上に形成され、活性層を有し、レーザ光を生成し、回折格子を用いないファブリペローレーザと、
前記半導体基板の上に形成され、前記活性層に接続された吸収層を有し、前記レーザ光を変調する電界吸収変調器とを備え、
前記活性層又は前記吸収層の導波路幅が前記ファブリペローレーザと前記電界吸収変調器の接続部に向かって変化し、前記接続部において前記活性層の導波路幅と前記吸収層の導波路幅が異なることを特徴とする光半導体装置。
【請求項5】
前記吸収層は、導波路幅が一定の直線部と、前記直線部と前記接続部の間に配置され導波路幅が前記接続部に向かって狭くなるテーパ部とを有し、
前記接続部において前記吸収層の導波路幅が前記活性層の導波路幅より狭いことを特徴とする請求項4に記載の光半導体装置。
【請求項6】
前記活性層は、導波路幅が一定の直線部と、前記直線部と前記接続部の間に配置され導波路幅が前記接続部に向かって広くなるテーパ部とを有し、
前記接続部において前記吸収層の導波路幅が前記活性層の導波路幅より狭いことを特徴とする請求項4に記載の光半導体装置。
【請求項7】
前記活性層は、導波路幅が一定の直線部と、前記直線部と前記接続部の間に配置され導波路幅が前記接続部に向かって狭くなるテーパ部とを有し、
前記接続部において前記吸収層の導波路幅が前記活性層の導波路幅より広いことを特徴とする請求項4に記載の光半導体装置。
【請求項8】
半導体基板と、
前記半導体基板の上に形成され、活性層を有し、レーザ光を生成し、回折格子を用いないファブリペローレーザと、
前記半導体基板の上に形成され、前記活性層に接続された吸収層を有し、前記レーザ光を変調する電界吸収変調器とを備え、
前記ファブリペローレーザと前記電界吸収変調器の接続部において前記ファブリペローレーザのメサ幅と前記電界吸収変調器のメサ幅が異なり、前記接続部で前記ファブリペローレーザのメサ幅から前記電界吸収変調器のメサ幅に急峻に変化し、
前記ファブリペローレーザは、前記活性層を含むリッジ構造のサイドを電流ブロック層で埋め込んだ埋め込み構造であり、
前記電界吸収変調器は、前記吸収層を含むハイメサ構造であり、
前記ファブリペローレーザの前記メサ幅は前記埋め込み構造の幅であり、
前記電界吸収変調器の前記メサ幅は前記ハイメサ構造の幅であり、
前記ファブリペローレーザの前端面の一部が前記電界吸収変調器に接続され、
前記前端面に前記レーザ光を反射する反射膜が形成されていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項9】
前記反射膜は、前記活性層と前記吸収層の間にも形成されていることを特徴とする請求項8に記載の光半導体装置。
【請求項10】
半導体基板と、
前記半導体基板の上に形成され、活性層を有し、レーザ光を生成し、回折格子を用いないファブリペローレーザと、
前記半導体基板の上に形成され、前記活性層に接続された吸収層を有し、前記レーザ光を変調する電界吸収変調器と、
前記ファブリペローレーザと前記電界吸収変調器の接続部において前記活性層と前記吸収層の間に形成され、前記活性層及び前記吸収層とは異なる屈折率を持つ導波路層と、
前記レーザ光が出射されるチップ前端面に形成された低反射率膜と、
前記チップ前端面とは反対側のチップ後端面に形成された高反射率膜とを備え、
前記低反射率膜は前記高反射率膜よりも前記レーザ光の反射率が低いことを特徴とする光半導体装置。
【請求項11】
前記レーザ光が出射されるチップ前端面に形成された低反射率膜と、
前記チップ前端面とは反対側のチップ後端面に形成された高反射率膜とを更に備え、
前記低反射率膜は前記高反射率膜よりも前記レーザ光の反射率が低いことを特徴とする請求項4~9の何れか1項に記載の光半導体装置。
【請求項12】
前記接続部でのレーザ光の反射率が10%以上であることを特徴とする請求項1,2,4~10の何れか1項に記載の光半導体装置。
【請求項13】
前記ファブリペローレーザのリッジ側面を覆う物質と前記電界吸収変調器のリッジ側面を覆う物質が異なることを特徴とする請求項1,2,4~10の何れか1項に記載の光半導体装置。
【請求項14】
前記ファブリペローレーザの前記活性層の厚さと前記電界吸収変調器の前記吸収層の厚さが異なることを特徴とする請求項1,2,4~10の何れか1項に記載の光半導体装置。
【請求項15】
前記ファブリペローレーザの前記活性層の屈折率と前記電界吸収変調器の前記吸収層の屈折率が異なることを特徴とする請求項1,2,4~10の何れか1項に記載の光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信の高速化が急速に進んでいる。特にデータセンター又はAIネットワークでは概ね2km以下の比較的短距離の通信に対して大量の高速な光変調器を必要としている。従来の超高速変調器として、電界吸収(EA:Electro-Absorption)変調器集積分布帰還型 (DFB: Distributed Bragg Reflector)レーザが多く用いられている。
【0003】
EA変調器集積DFBレーザの特性に最も影響するパラメータは、EA変調器の吸収端波長とDFBレーザ発振波長の差Δλである。EA変調器の吸収端波長の温度依存性は約0.5nm/℃で、半導体の熱膨張等に起因したエネルギーバンドの変化による。一方、DFBレーザの発振波長の温度依存性は約0.1nm/℃である。発振波長は回折格子の周期で決まるが、温度による熱膨張量と屈折率の変化は、エネルギーバンドの変化よりも小さいからである。よって、EA変調器集積DFBレーザはΔλの温度依存性が大きいため、温度調節器を使用する場合が多い。
【0004】
一方、回折格子を用いないファブリペロー(FP: Fabry-perot)レーザの発振波長の温度依存性は、エネルギーバンドとしきい値で決まり、約0.5nm/℃である。EA変調器の吸収端波長の温度依存性とほぼ同じ値であるため、Δλの温度依存性が小さくなり、特性の温度依存性も小さい。よって、EA変調器集積FPレーザには温度調節器が不要である。
【0005】
ただし、FPレーザとして動作させるためには、FPレーザとEA変調器の接続部にレーザ光を反射させる反射構造を設ける必要がある。これに対して、FPレーザとEA変調器の間に溝を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本特開2005-019533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、溝により導波路が分断された部分から光が広がりながら進行する。この光を再び導波路に結合させるには、レーザ側のモード径を制御すること、変調器側にSSC等の集光機能を付けること、その集光部分に焦点距離で光が入射することが必要である。この集光の設計と反射率の設計を両立することは難しい。また、半導体を加工する際は加工深さにばらつきが発生する。成長したエピ層の厚さのばらつきも影響する。さらに、加工と同時に深さを計測することは困難である。従って、溝の深さによる反射率制御は製造上簡単ではない。
【0008】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は特性の温度依存性が小さく製造が簡単な光半導体装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る光半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の上に形成され、活性層を有し、レーザ光を生成し、回折格子を用いないファブリペローレーザと、前記半導体基板の上に形成され、前記活性層に接続された吸収層を有し、前記レーザ光を変調する電界吸収変調器と、前記レーザ光が出射されるチップ前端面に形成された低反射率膜と、前記チップ前端面とは反対側のチップ後端面に形成された高反射率膜とを備え、前記低反射率膜は前記高反射率膜よりも前記レーザ光の反射率が低く、前記ファブリペローレーザと前記電界吸収変調器の接続部において前記ファブリペローレーザのメサ幅と前記電界吸収変調器のメサ幅が異なり、前記接続部で前記ファブリペローレーザのメサ幅から前記電界吸収変調器のメサ幅に急峻に変化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示では、ファブリペローレーザと電界吸収変調器の接続部でレーザ光を反射させる反射構造を実現することができる。反射構造により光をフィードバックさせることで、特性の温度依存性が小さいファブリペローレーザとして動作することができる。また、メサ幅の寸法制御は容易であるため、メサ幅の寸法制御による反射率制御も容易である。この結果、特性の温度依存性が小さく製造が簡単な光半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る光半導体装置を示す平面図である。
図2】実施の形態1に係る光半導体装置の共振方向に沿った断面図である。
図3】実施の形態1に係る光半導体装置を示す斜視図である。
図4】FPレーザを示す断面図である。
図5】EA変調器を示す断面図である。
図6】実施の形態1に係る光半導体装置をコア層の高さで切断した平面図である。
図7】実施の形態1に係る光半導体装置の変形例を示す平面図である。
図8】実施の形態2に係る光半導体装置をコア層の高さで切断した平面図である。
図9】EA変調器の吸収層の幅を変化させた時の光のモードの重なり積分の変化を示す図である。
図10】実施の形態3に係る光半導体装置をコア層の高さで切断した平面図である。
図11】実施の形態3に係る光半導体装置の変形例をコア層の高さで切断した平面図である。
図12】FPレーザの活性層の幅を変化させた時の光のモードの重なり積分の変化を示す図である。
図13】実施の形態4に係る光半導体装置を示す斜視図である。
図14】実施の形態4に係る光半導体装置をコア層の高さで切断した平面図である。
図15】実施の形態4に係る光半導体装置の変形例をコア層の高さで切断した平面図である。
図16】実施の形態5に係る光半導体装置を示す断面図である。
図17】実施の形態6に係る光半導体装置を示す断面図である。
図18】実施の形態6に係る光半導体装置の変形例を示す断面図である。
図19】コアの幅を変化させた時の実効屈折率の変化を示す図である。
図20】コアの幅を変化させた時の光のモードの重なり積分の変化を示す図である。
図21】FPレーザのコア層の厚さを変化させた時の光のモードの重なり積分の変化を示す図である。
図22】EA変調器のコア層の屈折率を変化させた時の光のモードの重なり積分の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態に係る光半導体装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0013】
実施の形態1
図1は、実施の形態1に係る光半導体装置を示す平面図である。ファブリペロー(FP: Fabry-perot)レーザ1と電界吸収(EA:Electro-Absorption)変調器2が1チップに集積され、接続部3において互いに接続されている。FPレーザ1及びEA変調器2はそれぞれ溝4によりメサ構造になっている。FPレーザ1の上面に電極5が形成されている。EA変調器2上面に電極6が形成されている。FPレーザ1は、接続部3とチップ後端面7の間をファブリペロー共振器として用いることで、回折格子を用いることなくレーザ光を生成する。EA変調器2はレーザ光を変調する。変調されたレーザ光はチップ前端面8から光ファイバ等に出射される。
【0014】
なお、FPレーザ1に供給する電流でレーザ光を直接的に変調すると緩和振動により高周波特性が劣化する。一方、EA変調器2はレーザ特有の帯域劣化が無い。従って、FPレーザ1が生成したレーザ光をEA変調器2で変調することにより、高速動作が可能である。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る光半導体装置の共振方向に沿った断面図である。図3は、実施の形態1に係る光半導体装置を示す斜視図である。半導体基板9の上にFPレーザ1とEA変調器2が形成されている。FPレーザ1は、半導体基板9の上に順に形成されたn型クラッド層10、活性層11、p型クラッド層12、p型コンタクト層13を有する。p型コンタクト層13の上に電極5が形成されている。EA変調器2は、半導体基板9の上に順に形成されたn型クラッド層10、吸収層14、p型クラッド層12、p型コンタクト層13を有する。p型コンタクト層13の上に電極6が形成されている。半導体基板9の下面全面に電極15が形成されている。吸収層14は、接続部3において他の層を介することなく活性層11に直接的に接続されている。即ち、活性層11と吸収層14はバットジョイントされている。
【0016】
半導体基板9は例えばn-InPからなる。活性層11は例えばInGaAsP、AlGaInAs等からなる。吸収層14は例えばInGaAsP、AlGaInAs等からなる。n型クラッド層10及びp型クラッド層12はInPからなる。p型コンタクト層13は例えばInGaAs、InGaAsP等からなる。
【0017】
図4は、FPレーザを示す断面図である。FPレーザ1は、活性層11を含むリッジ構造のサイドを電流ブロック層16で埋め込んだ埋め込み構造である。電流ブロック層16は例えばFe-InP等の半絶縁性の半導体からなる。この埋め込み構造は溝4によりメサ構造になっている。メサ構造のサイドは絶縁膜17で覆われている。絶縁膜17は例えばSiN、SiO等からなる。
【0018】
FPレーザ1のメサ幅はリッジ構造の幅と埋め込み構造の幅の合計である。左右の電流ブロック層16の幅はそれぞれ3μmである。活性層11の屈折率は3.5、幅は1.5um、厚さは200nmである。n型クラッド層10及びp型クラッド層12の屈折率は3.2、厚さは2μmである。
【0019】
図5は、EA変調器を示す断面図である。EA変調器2は、吸収層14を含むハイメサ構造である。EA変調器2のメサ幅はハイメサ構造の幅である。ハイメサ構造のサイドは絶縁膜17で覆われている。吸収層14の屈折率は3.4、幅は1.5um、厚さは200nmである。絶縁膜17の屈折率は2.0、厚みは0.5μmである。
【0020】
図6は、実施の形態1に係る光半導体装置をコア層の高さで切断した平面図である。この図は図2のI-IIに沿って装置を切断した平面図に相当する。FPレーザ1のメサ幅は8umである。EA変調器2のメサ幅は1.5umである。FPレーザ1のメサ幅とEA変調器2のメサ幅はそれぞれ接続部3まで変化せず一定である。従って、接続部3でFPレーザ1のメサ幅からEA変調器2のメサ幅に急峻に変化する。
【0021】
図7は、実施の形態1に係る光半導体装置の変形例を示す平面図である。EA変調器2の出力側にスポットサイズ変換器18(Spot Size Converter)が形成されている。スポットサイズ変換器18は、出射するレーザ光のスポットサイズを光ファイバのサイズに合うように変換する。これにより、レーザ光を光ファイバに高効率に導入することができる。
【0022】
以上説明したように、本実施の形態では、FPレーザ1とEA変調器2の接続部3でFPレーザ1のメサ幅からEA変調器2のメサ幅に急峻に変化する。これにより実効屈折率の差が大きくなるため、レーザ光を反射させる反射構造を実現することができる。反射構造により光をフィードバックさせることで、特性の温度依存性が小さいファブリペローレーザとして動作することができる。また、メサ加工時の転写マスク幅によりメサ幅を制御することができる。加工前に転写レジストの幅を計測し、所望の幅で無ければ再度転写をやり直すこともできる。よって、メサ幅の寸法制御は容易であるため、メサ幅の寸法制御による反射率制御も容易である。この結果、特性の温度依存性が小さく製造が簡単な光半導体装置を得ることができる。
【0023】
実施の形態2
図8は、実施の形態2に係る光半導体装置をコア層の高さで切断した平面図である。FPレーザ1の活性層11の導波路幅は一定である。一方、EA変調器2の吸収層14の導波路幅は、FPレーザ1とEA変調器2の接続部3に向かって変化する。具体的には、EA変調器2の吸収層14は、導波路幅が一定の直線部14aと、直線部14aと接続部3の間に配置され導波路幅が接続部3に向かって狭くなるテーパ部14bとを有する。例えばテーパ部14bの長さが共振器方向に30umであり、導波路幅が接続部3に向かって1.5umから1.0umに狭くなる。このため、接続部3において吸収層14の導波路幅が活性層11の導波路幅より狭くなる。
【0024】
図9は、EA変調器の吸収層の幅を変化させた時の光のモードの重なり積分の変化を示す図である。FPレーザ1の活性層11の幅は1500nmで一定である。EA変調器2の吸収層14の幅を変化させると、FPレーザ1とEA変調器2の重なり積分が変化する。(1-重なり積分)の成分の一部がFPレーザ1部に戻ることで、レーザ発振に必要な光の増幅率を得ることができる。
【0025】
以上説明したように、本実施の形態では、接続部3において活性層11の導波路幅と吸収層14の導波路幅が異なることにより、レーザ光を反射させる反射構造を実現することができる。反射構造により光をフィードバックさせることで、特性の温度依存性が小さいファブリペローレーザとして動作することができる。また、導波路幅の寸法制御は容易であるため、導波路幅の寸法制御による反射率制御も容易である。この結果、特性の温度依存性が小さく製造が簡単な光半導体装置を得ることができる。
【0026】
実施の形態3
図10は、実施の形態3に係る光半導体装置をコア層の高さで切断した平面図である。EA変調器2の吸収層14の導波路幅は一定である。一方、FPレーザ1の活性層11の導波路幅は、FPレーザ1とEA変調器2の接続部3に向かって変化する。具体的には、FPレーザ1の活性層11は、導波路幅が一定の直線部11aと、直線部11aと接続部3の間に配置され導波路幅が接続部3に向かって広くなるテーパ部11bとを有する。例えばテーパ部11bの長さが共振器方向に30umであり、導波路幅が接続部3に向かって1.5umから3.0umに広がる。このため、接続部3において吸収層14の導波路幅が活性層11の導波路幅より狭くなる。
【0027】
図11は、実施の形態3に係る光半導体装置の変形例をコア層の高さで切断した平面図である。FPレーザ1の活性層11は、導波路幅が一定の直線部11aと、直線部11aと接続部3の間に配置され導波路幅が接続部3に向かって狭くなるテーパ部11bとを有する。例えばテーパ部11bの長さが共振器方向に30umであり、導波路幅が接続部3に向かって1.5umから1.0umに狭くなる。このため、接続部3において吸収層14の導波路幅が活性層11の導波路幅より広くなる。
【0028】
図12は、FPレーザの活性層の幅を変化させた時の光のモードの重なり積分の変化を示す図である。EA変調器2の吸収層14の幅は1500nmで一定である。FPレーザ1の活性層11の幅を変化させると、FPレーザ1とEA変調器2の重なり積分が変化する。(1-重なり積分)の成分の一部がFPレーザ1部に戻ることで、レーザ発振のための利得を稼ぐことができる。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態では、接続部3において活性層11の導波路幅と吸収層14の導波路幅が異なることにより、レーザ光を反射させる反射構造を実現することができる。反射構造により光をフィードバックさせることで、特性の温度依存性が小さいファブリペローレーザとして動作することができる。また、導波路幅の寸法制御は容易であるため、導波路幅の寸法制御による反射率制御も容易である。この結果、特性の温度依存性が小さく製造が簡単な光半導体装置を得ることができる。
【0030】
実施の形態4
図13は、実施の形態4に係る光半導体装置を示す斜視図である。図14は、実施の形態4に係る光半導体装置をコア層の高さで切断した平面図である。FPレーザ1は、活性層11を含むリッジ構造のサイドを電流ブロック層16で埋め込んだ埋め込み構造である。一方、EA変調器2は、吸収層14を含むハイメサ構造である。FPレーザ1の前端面の一部がEA変調器2に接続されている。FPレーザ1のメサ幅はEA変調器2のメサ幅よりも広いため、FPレーザ1の前端面のうちEA変調器2に接続されていない部分が存在する。この前端面の部分にレーザ光を反射する反射膜19が形成されている。
【0031】
FPレーザ1の光のモードの一部を反射膜19で反射させてFPレーザ1に戻すことにより、FPレーザ1のミラー損失を減らし、レーザ発振に必要な利得を稼ぐことができる。また、反射膜19の形成は容易である。この結果、特性の温度依存性が小さく製造が簡単な光半導体装置を得ることができる。
【0032】
図15は、実施の形態4に係る光半導体装置の変形例をコア層の高さで切断した平面図である。反射膜19が活性層11と吸収層14の間にも形成されている。図14に示すように活性層11と吸収層14の間に反射膜19を形成しない場合、製造が容易で導波路構造が保持される。一方、図15に示すように活性層11と吸収層14の間に反射膜19を形成する場合、製造は難しくなるが、大きな反射率が得られる。
【0033】
実施の形態5
図16は、実施の形態5に係る光半導体装置を示す断面図である。FPレーザ1とEA変調器2の接続部3においてFPレーザ1の活性層11とEA変調器2の吸収層14の間に導波路層20が形成されている。導波路層20は、例えばInP等の半導体又はSiO等の絶縁膜からなり、活性層11及び吸収層14とは異なる屈折率を持つ。
【0034】
FPレーザ1の活性層11の実効屈折率は3.371、絶縁膜の導波路層20の実効屈折率は1.636である。重なり積分は95.142%である。実効屈折率の差が大きいため、コア層内の光モードも12%反射される。導波路層20の屈折率を調整することで、反射率を容易に制御することができる。また、導波路層20の形成は容易である。この結果、特性の温度依存性が小さく製造が簡単な光半導体装置を得ることができる。なお、導波路層20は屈折率の異なる複数の層を積層した構造であってもよい。また、図16では、導波路層20の上に溝が形成されている。これに限らず、導波路層20の上にInPからなるp型クラッド層12を形成してもよいし、InP以外の半導体材料からなるクラッド層を形成してもよい。
【0035】
実施の形態6
図17は、実施の形態6に係る光半導体装置を示す断面図である。レーザ光が出射されるチップ前端面に低反射率膜21が形成されている。チップ前端面とは反対側のチップ後端面に高反射率膜22が形成されている。低反射率膜21及び高反射率膜22は例えばSi層とSiO層が交互に積層されたものである。低反射率膜21は高反射率膜22よりもレーザ光の反射率が低い。これにより、EA変調器2で変調されたレーザ光がFPレーザ1に戻らないため、FPレーザ1の動作が安定して変調特性が向上する。その他の構成及び効果は実施の形態1と同様である。
【0036】
図18は、実施の形態6に係る光半導体装置の変形例を示す断面図である。EA変調器2の出力側にスポットサイズ変換器18が形成されている。この場合にも低反射率膜21及び高反射率膜22を形成することで同様の効果を得ることができる。なお、実施の形態2~5に低反射率膜21及び高反射率膜22を形成してもよい。
【0037】
通常のFPレーザでは、端面にコーティングをせず、へき開端面をそのまま反射構造として利用することがよくある。この場合、前後端面とも30%の反射率となる。後端面に90%以上の反射率のコート膜を作った場合に、上記と同じミラー損失となる反射率が10%である。従って、実施の形態1~6の接続部3の反射構造でのレーザ光の反射率が10%以上であることが好ましい。また、接続部3の反射構造の反射率に波長選択性があると、FPレーザ1の発振波長の温度依存性がEA変調器2の温度依存性とずれて温度特性が悪くなる。そこで、接続部3の反射構造は波長選択性が小さいことが好ましい。
【0038】
図19は、コアの幅を変化させた時の実効屈折率の変化を示す図である。FPレーザ1のリッジ側面の電流ブロック層16をInPとし、EA変調器2のリッジ側面の絶縁膜17をSiOとした。コア幅が同じでも実効屈折率に差がある。実効屈折率の差はFPレーザ1とEA変調器2の重なり積分と相関する。(1-重なり積分)の成分の一部がFPレーザ1部に戻ることで、レーザ発振のための利得を稼ぐことができる。従って、リッジ側面の材質の屈折率を制御すると反射率を調整できる。
【0039】
図20は、コアの幅を変化させた時の光のモードの重なり積分の変化を示す図である。リッジ側面の材質が半導体の導波路同士を接続した場合と、リッジ側面の材質が半導体の導波路と絶縁膜の導波路を接続した場合を示す。リッジ側面の材質が異なる方がレーザ発振のための利得を稼ぐ効果が高い。従って、FPレーザ1とEA変調器2の接続部3での反射率を高くするには、FPレーザ1のリッジ側面を覆う物質とEA変調器2のリッジ側面を覆う物質が異なることが好ましい。
【0040】
図21は、FPレーザのコア層の厚さを変化させた時の光のモードの重なり積分の変化を示す図である。EA変調器2の吸収層14の厚さ300nmに対してFPレーザ1の活性層11の厚さを変化させると、FPレーザ1とEA変調器2の重なり積分が変化する。従って、FPレーザ1とEA変調器2の接続部3での反射率を高くするには、FPレーザ1の活性層11の厚さとEA変調器2の吸収層14の厚さが異なることが好ましい。
【0041】
図22は、EA変調器のコア層の屈折率を変化させた時の光のモードの重なり積分の変化を示す図である。FPレーザ1の活性層11の屈折率3.56に対してEA変調器2の吸収層14の屈折率を変化させると、FPレーザ1とEA変調器2の重なり積分が変化する。従って、FPレーザ1とEA変調器2の接続部3での反射率を高くするには、FPレーザ1の活性層11の屈折率とEA変調器2の吸収層14の屈折率が異なることが好ましい。
【符号の説明】
【0042】
1 FPレーザ、2 EA変調器、3 接続部、9 半導体基板、11 活性層、11a,14a 直線部、11b,14b テーパ部、14 吸収層、16 電流ブロック層、19 反射膜、20 導波路層、21 低反射率膜、22 高反射率膜
【要約】
半導体基板(9)の上にファブリペローレーザ(1)と電界吸収変調器(2)が形成されている。ファブリペローレーザ(1)は、活性層(11)を有し、レーザ光を生成する。電界吸収変調器(2)は、活性層(11)に接続された吸収層(14)を有し、レーザ光を変調する。ファブリペローレーザ(1)と電界吸収変調器(2)の接続部(3)でファブリペローレーザ(1)のメサ幅から電界吸収変調器(2)のメサ幅に急峻に変化する。
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