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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】検知装置、検知方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20240925BHJP
   A61D 1/08 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A01K29/00 A
A61D1/08 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022555491
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2021036751
(87)【国際公開番号】W WO2022075298
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2020168448
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102717
【氏名又は名称】NTTテクノクロス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】赤野間 信行
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克敏
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-234668(JP,A)
【文献】「出産しそうな牛」AIで検知 農家の負担を軽減へ,ITmedia NEWS ,日本,2019年07月01日,第1-3頁,https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1907/01/news114.html
【文献】センサーによる見守りで、牛の見回り業務を大幅に軽減する『U-motion』,マイナビ農業,日本,2020年02月06日,第1―9頁,https://agri.mynavi.jp/2018_12_28_54330/
【文献】人工知能によるデータ分析で牛の行動をモニタリング U-motion(ユーモーション),スマート農業,日本,2019年08月26日,第1―8頁,https://smartnogyo.com/archives/2190.html
【文献】IoT・AI技術を活用し、牛の行動分析による牧場経営サービス構築を実現,DoKUMEN,2018年05月,第1―2頁,https://dokumen.tips/download/link/iotfaiecceoe-e-ccoe-.html
【文献】乳用牛の分娩予知技術,畜産技術ひょうご,第107号,日本,公益社団法人 兵庫県畜産協会,2012年09月,第16-19頁,https://hyotiku.ecweb.jp/tikusan107/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
A61D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛の分娩が近いことを検知する検知装置であって、
前記牛の尾部に装着された加速度センサ及び気圧センサでそれぞれ測定された加速度データ及び気圧データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている気圧データに基づいて、前記牛の姿勢を推定する推定部と、
前記記憶部に記憶されている加速度データと、前記推定部で推定された姿勢とに基づいて、前記牛が尾を継続的に挙げた状態で上下させる動きを特定することで、前記牛の分娩が近いことを検知する検知部と、
を有し、
前記加速度データには、水平面内で前記牛の進行方向の加速度を示す成分値が含まれ、
前記検知部は、
前記推定部で推定された姿勢に応じて、所定の時間幅における前記成分値の平均値が、所定の過去の第1の期間における前記所定の時間幅毎の前記平均値に関する所定のパーセンタイル値以上であるか否かを判定することで、前記牛が尾を継続的に挙げた状態を特定する、検知装置。
【請求項2】
前記姿勢には、前記牛が立っている状態であることを示す起立と、前記牛が横たわっている状態であることを示す横臥とが含まれ、
前記検知部は、
前記推定部で推定された姿勢が横臥である場合、更に、前記所定のパーセンタイル値が0以上であるか否かを判定することで、前記牛が尾を継続的に挙げた状態を特定する、請求項に記載の検知装置。
【請求項3】
前記検知部は、
前記所定の過去の第1の期間に含まれる前記所定の時間幅のうち、前記推定部で推定された姿勢と同一姿勢である時間幅における前記平均値に関する所定のパーセンタイル値以上であるか否かを判定する、請求項又はに記載の検知装置。
【請求項4】
前記所定の時間幅における前記成分値の極大値及び極小値の個数を算出する算出部を有し、
前記検知部は、
所定の過去の第2の期間における前記所定の時間幅毎に算出された前記個数のうち、累積対象とされた個数の累積値が所定の閾値以上であるか否かを判定することで、前記尾を上下させる動きを特定する、請求項乃至の何れか一項に記載の検知装置。
【請求項5】
前記検知部は、
前記牛が尾を継続的に挙げた状態であると特定された前記所定の時間幅において前記算出部により算出された前記個数を、累積対象とする、請求項に記載の検知装置。
【請求項6】
牛の分娩が近いことを検知する検知装置が、
前記牛の尾部に装着された加速度センサ及び気圧センサでそれぞれ測定された加速度データ及び気圧データを記憶部に記憶させる記憶手順と、
前記記憶部に記憶されている気圧データに基づいて、前記牛の姿勢を推定する推定手順と、
前記記憶部に記憶されている加速度データと、前記推定手順で推定された姿勢とに基づいて、前記牛が尾を継続的に挙げた状態で上下させる動きを特定することで、前記牛の分娩が近いことを検知する検知手順と、
を実行し、
前記加速度データには、水平面内で前記牛の進行方向の加速度を示す成分値が含まれ、
前記検知手順は、
前記推定手順で推定された姿勢に応じて、所定の時間幅における前記成分値の平均値が、所定の過去の第1の期間における前記所定の時間幅毎の前記平均値に関する所定のパーセンタイル値以上であるか否かを判定することで、前記牛が尾を継続的に挙げた状態を特定する、検知方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1乃至の何れか一項に記載の検知装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知装置、検知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
乳用牛や肥育牛を飼育する畜産農家にとって、牛の分娩管理を行うことは重要な作業の一つである。特に、分娩時には介助が必要な場合も多いため、分娩兆候を確認し、分娩予定日を適切に見積もることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-169011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、分娩兆候の確認や分娩予定時刻の見積もりは畜産農家の勘や経験で依存しているのが実情である。このため、例えば、分娩予定日の見積もりが不正確なため分娩介助に間に合わずに、死産等の分娩事故が発生する場合がある。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記の点に鑑みてなされたもので、分娩が近いことを検知する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、一実施形態に係る検知装置は、牛の分娩が近いことを検知する検知装置であって、前記牛の尾部に装着された加速度センサ及び気圧センサでそれぞれ測定された加速度データ及び気圧データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている気圧データに基づいて、前記牛の姿勢を推定する推定部と、前記記憶部に記憶されている加速度データと、前記推定部で推定された姿勢とに基づいて、前記牛が尾を継続的に挙げた状態で上下させる動きを特定することで、前記牛の分娩が近いことを検知する検知部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
分娩が近いことを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る分娩検知システムの全体構成の一例を示す図である。
図2】測定データ記憶部に記憶されている測定データの一例を示す図である。
図3】基準気圧データ記憶部に記憶されている基準気圧データの一例を示す図である。
図4A】分娩検知の概要を説明するための図(その1)である。
図4B】分娩検知の概要を説明するための図(その2)である。
図5】本実施形態に係る分娩検知処理部の機能構成の一例を示す図である。
図6】分娩検知用データ記憶部に記憶されている分娩検知用データの一例を示す図である。
図7A】本実施形態に係る分娩検知処理の流れの一例を示すフローチャート(その1)である。
図7B】本実施形態に係る分娩検知処理の流れの一例を示すフローチャート(その2)である。
図7C】本実施形態に係る分娩検知処理の流れの一例を示すフローチャート(その3)である。
図8】本実施形態に係る姿勢推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】ピーク数算出の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、牛の分娩が近いことを検知する分娩検知システム1について説明する。ただし、牛以外にも、尻尾を有する種々の家畜に対しても同様に適用可能である。
【0010】
<分娩検知システム1の全体構成>
まず、本実施形態に係る分娩検知システム1の全体構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る分娩検知システム1の全体構成の一例を示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る分娩検知システム1には、牛の分娩が近いことを検知する分娩検知装置10と、分娩を予定している牛に装着されるタグ20と、基準となる気圧を測定する基準気圧センサ30とが含まれる。
【0012】
タグ20は、牛の尻尾部分に固定して装着される機器である。1頭の牛に対して1つのタグ20が装着されている。タグ20は牛の尻尾部分の任意の箇所に装着することが可能であるが、尻尾の付け根よりもやや下の位置(例えば、牛の陰部と同程度の高さの位置)に装着されることが好ましい。また、タグ20は任意の方法で牛の尻尾部分に装着すればよいが、例えば、尻尾に巻き付けてタグ20を固定可能な装着具等により装着されればよい。
【0013】
タグ20には、当該タグ20を装着した牛の加速度(x軸、y軸及びz軸の3軸の加速度)を測定する加速度センサと、気圧を測定する気圧センサとが含まれている。タグ20は牛に対して任意の向きに装着することが可能であるが、本実施形態では、牛が尻尾を下げた際にy軸の正の方向が鉛直方向(重力方向)、牛の進行方向(水平面内における牛の前方方向)がz軸の正の方向、牛の進行方向に対して右手方向がx軸の正の方向となるようにタグ20が装着されているものとする。ただし、これは一例であって、タグ20を牛に対してどのような向きに装着したとしても、本実施形態を適用可能であることは言うまでもない。
【0014】
タグ20は、所定の時間毎(例えば、2秒毎)に、加速度センサにより測定した加速度センサ値と、気圧センサにより測定された気圧センサ値とを含む測定データを分娩検知装置10に送信する。分娩検知装置10に送信された測定データは、後述する測定データ記憶部200に蓄積(記憶)される。
【0015】
基準気圧センサ30は、牛舎内の所定の位置(例えば、牛舎内の地面上)に設置され、基準となる気圧を測定する。基準気圧センサ30は、所定の時間毎(例えば、2秒毎)に、測定した気圧を示す基準気圧センサ値を含む基準気圧データを分娩検知装置10に送信する。分娩検知装置10に送信された基準気圧データは、後述する基準気圧データ記憶部300に蓄積(記憶)される。
【0016】
分娩検知装置10は、牛の分娩が近いことを検知するコンピュータ又はコンピュータシステムである。分娩検知装置10は、分娩検知処理部100と、測定データ記憶部200と、基準気圧データ記憶部300と、分娩検知用データ記憶部400とを有する。
【0017】
分娩検知処理部100は、測定データ記憶部200に記憶されている測定データと、基準気圧データ記憶部300に記憶されている基準気圧データと、分娩検知用データ記憶部400に記憶されている分娩検知用データとを用いて、牛の分娩が近いことを検知するための処理(分娩検知処理)を実行する。なお、分娩検知処理部100は、例えば、分娩検知装置10にインストールされた1以上のプログラムが、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサに実行させる処理により実現される。
【0018】
分娩検知処理部100は、所定の時間毎(例えば、10分毎)に分娩検知処理を実行して、後述する尾挙げ行動を特定することで、牛の分娩が近いことを検知する。
【0019】
測定データ記憶部200は、タグ20から受信した測定データを記憶する。基準気圧データ記憶部300は、基準気圧センサ30から受信した基準気圧データを記憶する。分娩検知用データ記憶部400は、分娩検知処理部100により作成された分娩検知用データを記憶する。なお、測定データ、基準気圧データ及び分娩検知用データの詳細については後述する。
【0020】
測定データ記憶部200、基準気圧データ記憶部300及び分娩検知用データ記憶部400は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置等を用いて実現可能である。ただし、測定データ記憶部200、基準気圧データ記憶部300及び分娩検知用データ記憶部400のうちの少なくとも1つの記憶部が、分娩検知装置10と通信ネットワークを介して接続される記憶装置(例えば、データベースサーバ等)を用いて実現されていてもよい。
【0021】
なお、図1に示す分娩検知システム1の構成は一例であって、他の構成であってもよい。例えば、図1ではタグ20が装着されている牛が1頭示されているが、分娩を予定している牛が複数頭存在する場合には、これら複数の牛のそれぞれにタグ20が装着されていてもよい。すなわち、本実施形態に係る分娩検知システム1には複数のタグ20が含まれており、各タグ20がそれぞれ装着された各牛に関して分娩が近いことが検知されてもよい。
【0022】
また、例えば、分娩検知装置10が複数のコンピュータで構成されており、分娩検知処理部100が有する各機能が複数のコンピュータで分散して実現されていてもよい。また、分娩検知処理部100が有する各機能の一部が、分娩検知装置10と通信ネットワークを介して接続される装置(例えば、クラウドサーバ等)で実現されていてもよい。
【0023】
また、タグ20及び基準気圧センサ30から分娩検知装置10へのデータ送信方法は限定されない。例えば、タグ20及び基準気圧センサ30は、インターネット等の通信ネットワークを介して分娩検知装置10にデータ送信してもよいし、ローカルなネットワーク内で分娩検知装置10にデータ送信してもよいし、近距離無線通信等により分娩検知装置10にデータ送信してもよい。
【0024】
<測定データ記憶部200に記憶されている測定データ>
ここで、本実施形態に係る測定データ記憶部200に記憶されている測定データについて、図2を参照しながら説明する。図2は、測定データ記憶部200に記憶されている測定データの一例を示す図である。なお、分娩検知装置10は、タグ20から測定データを受信した場合、分娩検知処理部100により、当該測定データを測定データ記憶部200に記憶(蓄積)させればよい。
【0025】
図2に示すように、測定データ記憶部200には、タグ20を識別する識別情報の一例であるタグID毎に、1以上の測定データが記憶されている。なお、1頭の牛に対して1つのタグ20が装着されていることから、タグIDは、牛を識別する識別情報(例えば、牛の個体識別情報等)であってもよい。
【0026】
各測定データには、日時と、加速度センサ値と、気圧センサ値とが含まれる。日時は、例えば、測定データが作成された日時である。なお、日時は、例えば、分娩検知装置10が測定データを受信した日時としてもよいし、タグ20が測定データを送信した日時としてもよい。
【0027】
加速度センサ値は、タグ20に含まれる加速度センサにより測定された加速度の値である。加速度センサ値には、x軸方向の加速度成分を示すx成分と、y軸方向の加速度成分を示すy成分と、z軸方向の加速度成分を示すz成分とが含まれる。例えば、タグID「C001」の日時「t」における測定データには、加速度センサ値のx成分「x11」と、y成分「y11」と、z成分「z11」とが含まれる。同様に、例えば、タグID「C001」の日時「t」における測定データには、加速度センサ値のx成分「x12」と、y成分「y12」と、z成分「z12」とが含まれる。同様に、例えば、タグID「C001」の日時「t」における測定データには、加速度センサ値のx成分「x13」と、y成分「y13」と、z成分「z13」とが含まれる。
【0028】
気圧センサ値は、タグ20に含まれる気圧センサにより測定された気圧の値である。例えば、タグID「C001」の日時「t」における測定データには、気圧センサ値「p11」が含まれる。同様に、例えば、タグID「C001」の日時「t」における測定データには、気圧センサ値「p12」が含まれる。同様に、例えば、タグID「C001」の日時「t」における測定データには、気圧センサ値「p13」が含まれる。
【0029】
このように、本実施形態に係る測定データ記憶部200には、タグID毎に、日時と、加速度センサ値と、気圧センサ値とが含まれる測定データが蓄積(記憶)されている。
【0030】
<基準気圧データ記憶部300に記憶されている基準気圧データ>
次に、本実施形態に係る基準気圧データ記憶部300に記憶されている基準気圧データについて、図3を参照しながら説明する。図3は、基準気圧データ記憶部300に記憶されている基準気圧データの一例を示す図である。
【0031】
図3に示すように、基準気圧データ記憶部300には1以上の基準気圧データが記憶されており、各基準気圧データには、日時と、基準気圧センサ値とが含まれる。日時は、例えば、基準気圧データが作成された日時である。基準気圧センサ値は、基準気圧センサ30により測定された気圧の値である。なお、日時は、例えば、分娩検知装置10が基準気圧データを受信した日時としてもよいし、基準気圧センサ30が基準気圧データを送信した日時としてもよい。
【0032】
このように、本実施形態に係る基準気圧データ記憶部300には、日時と、基準気圧センサ値とが含まれる基準気圧データが蓄積(記憶)されている。
【0033】
<分娩検知の概要>
次に、本実施形態に係る分娩検知装置10による分娩検知の概要について説明する。一般に、牛の行動特性として、分娩が近くなると尻尾を挙げる行動(以下、「尾挙げ行動」ともいう。)をとることが知られている。そこで、この行動特性に着目し、本実施形態では、分娩検知装置10により尾挙げ行動を特定する(捉える)ことで、牛の分娩が近いことを検知する。
【0034】
尾挙げ行動時には、(1)通常時と比較して、継続的に尻尾を挙げた状態となり、(2)尻尾を上下させるような動きを行う、という特徴がある。これら(1)及び(2)の特徴は、加速度センサ値のz成分値の変化に特徴的に表れる。
【0035】
すなわち、図4Aに示すように、分娩時刻が近くなり継続的に尻尾を挙げた状態となると(上記の特徴(1))、加速度センサ値のz成分値は、比較的高い値を取るようになる。また、図4Bに示すように、分娩時刻が近くなり尻尾を上下させるような動きが行われると(上記の特徴(2))、加速度センサ値のz成分値は、上下に振動するようになる。
【0036】
したがって、上記の2つの特徴を検知することで、本実施形態に係る分娩検知装置10は、尾挙げ行動が行われていることを捉え、牛の分娩が近いことを検知することができる。ここで、上記の特徴(1)は分娩時刻の数時間前程度から見られ、上記の特徴(2)も分娩時刻の数時間前程度から見られる(ただし、ごく少数ではあるが、個体によっては10時間~20数時間前から上記の特徴(2)が見られる場合もある。)。
【0037】
このため、本実施形態に係る分娩検知装置10は、上記の特徴(1)及び(2)の2つの特徴を検知することで、実際に分娩が発生する数時間程度前から牛の分娩が近いこと(つまり、数時間程度以内に分娩が発生すること)を検知することができる。
【0038】
<分娩検知処理部100の機能構成>
次に、本実施形態に係る分娩検知処理部100の機能構成について、図5を参照しながら説明する。図5は、本実施形態に係る分娩検知処理部100の機能構成の一例を示す図である。
【0039】
図5に示すように、本実施形態に係る分娩検知処理部100には、取得部101と、姿勢推定部102と、ピーク算出部103と、分娩検知部104とが含まれる。
【0040】
取得部101は、所定の時間前から現在時刻までの間(例えば、直近の過去10分間)の測定データ及び基準気圧データを測定データ記憶部200及び基準気圧データ記憶部300からそれぞれ取得する。
【0041】
姿勢推定部102は、取得部101によって取得された測定データに含まれる気圧センサ値と、取得部101によって取得された基準気圧データに含まれる基準気圧センサ値とに基づいて、牛の姿勢(横臥又は起立)を推定する。これは、牛の姿勢によって上記の特徴(1)を捉える際の条件が異なるためである。なお、横臥とは牛が横たわっている状態の姿勢のことであり、起立とは牛が立っている状態の姿勢のことである。
【0042】
ピーク算出部103は、取得部101によって取得された測定データに含まれる加速度センサ値のz成分値の或る時間幅における平均値を用いて、極大値又は極小値の数を算出する。この極大値及び極小値により、上記の特徴(2)の尻尾を上下させる動きが検知される。なお、以下、加速度センサ値のz成分値の極大値を「極大ピーク」、極小値を「極小ピーク」ともいい、極大ピークと極小ピークをまとめて単に「ピーク」ともいう。
【0043】
分娩検知部104は、姿勢推定部102によって推定された姿勢と、ピーク算出部103によって算出されたピーク数と、分娩検知用データ記憶部400に記憶されている分娩検知用データとに基づいて、牛の分娩が近いか否かを判定する。そして、牛の分娩が近いと判定された場合、分娩検知部104は、例えば、分娩検知装置10と通信ネットワークを介して接続される端末(例えば、畜産農家の管理者が利用する端末等)に対して、該当の牛の分娩が近い旨を通知する。
【0044】
<分娩検知用データ記憶部400に記憶されている分娩検知用データ>
ここで、分娩検知用データ記憶部400に記憶されている分娩検知用データについて、図6を参照しながら説明する。図6は、分娩検知用データ記憶部400に記憶されている分娩検知用データの一例を示す図である。なお、分娩検知用データは分娩検知処理が実行される毎に分娩検知処理部100によって作成され、分娩検知用データ記憶部400に記憶される。図6では、一例として、10分毎に分娩検知処理が実行される場合の分娩検知用データを示している。
【0045】
図6に示すように、分娩検知用データ記憶部400には、タグID毎に、1以上の分娩検知用データが記憶されている。各分娩検知用データには、日時と、z平均値と、気圧差分中央値と、姿勢と、累積区分と、ピーク数とが含まれる。
【0046】
日時は、分娩検知処理が実行された際の直近の過去10分間の時間幅である。z平均値は、当該10分間における加速度センサ値のz成分値の平均値である。気圧差分中央値は、当該10分間における気圧センサ値と基準気圧センサ値との差分の中央値である。姿勢は、姿勢推定部102によって推定された当該10分間における牛の姿勢である。累積区分は、ピーク数を累積対象とするか否かを示す区分である。ピーク数は、ピーク算出部103によって算出された当該10分間におけるピーク数である。
【0047】
このように、本実施形態に係る分娩検知用データ記憶部400には、タグID毎に、日時と、z平均値と、気圧差分中央値と、姿勢と、累積区分と、ピーク数とが含まれる分娩検知用データが記憶される。これらの分娩検知用データは分娩検知処理が実行される毎に作成され、当該分娩検知処理が実行された際の直近の過去10分間の時間幅と、当該分娩検知処理の中に算出等されたz平均値、気圧差分中央値、姿勢、累積区分及びピーク数とが含まれることになる。なお、z平均値、気圧差分中央値、姿勢、累積区分及びピーク数等の算出方法等は後述する。
【0048】
<分娩検知処理の流れ>
次に、本実施形態に係る分娩検知処理の流れについて、図7A図7Cを参照しながら説明する。図7A図7Cは、本実施形態に係る分娩検知処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以降では、或る特定のタグIDのタグ20が装着された牛を対象として、この牛の分娩が近いときにその検知を行う場合について説明する。また、一例として、分娩検知処理は10分毎に実行されるものとし、直近の過去10分間よりも前の各日時における分娩検知用データが分娩検知用データ記憶部400に記憶されているものとする。
【0049】
まず、分娩検知処理部100の取得部101は、所定の時間前から現在時刻までの間(例えば、直近の過去10分間)における当該タグIDの測定データを測定データ記憶部200から取得する。同様に、取得部101は、所定の時間前から現在時刻までの間における基準気圧データを基準気圧データ記憶部300から取得する(ステップS101)。なお、所定の時間前としては予め決められた任意の時間前とすることが可能であるが、所定の時間前から現在時刻までの間の時間幅と、分娩検知処理が実行される時間間隔とが同様であることが好ましい。したがって、以降では、取得部101によって直近の過去10分間の測定データ及び基準気圧データが取得されたものとして説明する。
【0050】
次に、分娩検知処理部100の姿勢推定部102は、当該タグIDのタグ20を装着している牛の姿勢を推定する(ステップS102)。ここで、牛の姿勢を推定するための処理(姿勢推定処理)の流れについて、図8を参照しながら説明する。図8は、本実施形態に係る姿勢推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0051】
まず、姿勢推定部102は、上記のステップS101で取得された測定データから気圧センサ値を取得すると共に、上記のステップS101で取得された基準気圧データから基準気圧センサ値を取得する(ステップS201)。これにより、直近の過去10分間の気圧センサ値と基準気圧センサ値が得られる。
【0052】
次に、姿勢推定部102は、同一日時における気圧センサ値と基準気圧センサ値との差分を算出する(ステップS202)。すなわち、日時tにおける気圧センサ値をp、日時tにおける基準気圧センサ値をqとすれば、姿勢推定部102は、差分Δ=p-qを算出する。なお、例えば、測定データ及び基準気圧データが2秒毎に測定データ記憶部200及び基準気圧データ記憶部300にそれぞれ蓄積されている場合、i=1,・・・,300である。
【0053】
次に、姿勢推定部102は、上記のステップS204で算出された差分の中央値(以下、「第1の気圧差分中央値」という)を算出する(ステップS203)。すなわち、姿勢推定部102は、上記のステップS204で算出された各Δの中央値を第1の気圧差分中央値として算出する。なお、中央値は一例であって、これに限られず、例えば、中央値の代わりに平均値が算出されてもよい。
【0054】
次に、姿勢推定部102は、直近の過去10分間の1つ前の日時(つまり、20分前から10分前の間の10分間)における分娩検知用データに含まれる気圧差分中央値を第2の気圧差分中央値として取得する(ステップS204)。なお、直近の過去10分間の1つ前の日時における分娩検知用データに含まれる気圧差分中央値は、前回実行された分娩検知処理における姿勢推定処理のステップS203で算出された気圧差分中央値である。
【0055】
次に、姿勢推定部102は、第1の気圧差分中央値-第2の気圧差分中央値≧0.05である否かを判定する(ステップS205)。なお、0.05は姿勢推定に用いられる閾値の一例であって、0.05に限られるものではない。ただし、牛の体高等を考慮して高い精度で姿勢を推定するためには、0.05付近(例えば、0.03~0.07程度)の値とすることが好ましい。
【0056】
上記のステップS205で第1の気圧差分中央値-第2の気圧差分中央値≧0.05であると判定された場合、姿勢推定部102は、直近の過去10分間の姿勢を「横臥」であると推定する(ステップS206)。これは、気圧差分中央値が大きいほどタグ20が地面に近いことを意味するため、第1の気圧差分中央値-第2の気圧差分中央値≧0.05である場合、直近の過去10分間の1つ前の10分間では牛が起立しており、その後、牛の姿勢が横臥に変化したと考えられるためである。
【0057】
上記のステップS205で第1の気圧差分中央値-第2の気圧差分中央値≧0.05であると判定されなかった場合、姿勢推定部102は、第1の気圧差分中央値-第2の気圧差分中央値≦-0.05であるか否かを判定する(ステップS207)。なお、-0.05は姿勢推定に用いられる閾値の一例であって、-0.05に限られるものではない。ただし、牛の体高等を考慮して高い精度で姿勢を推定するためには、-0.05付近(例えば、-0.07~-0.03程度)の値とすることが好ましい。
【0058】
上記のステップS207で第1の気圧差分中央値-第2の気圧差分中央値≦-0.05であると判定された場合、姿勢推定部102は、直近の過去10分間の姿勢を「起立」と推定する(ステップS208)。これは、第1の気圧差分中央値-第2の気圧差分中央値≦-0.05である場合、直近の過去10分間の1つ前の10分間では牛が横臥しており、その後、牛の姿勢が起立に変化したと考えられるためである。
【0059】
上記のステップS207で第1の気圧差分中央値-第2の気圧差分中央値≦-0.05であると判定されなかった場合、姿勢推定部102は、直近の過去10分間の姿勢を、その1つ前の10分間の姿勢と同じと推定する(ステップS209)。これは、第1の気圧差分中央値が第2の気圧差分中央値からあまり変化しなかったことを意味し、牛の姿勢も変化しなかったと考えられるためである。
【0060】
図7A図7Cの説明に戻る。ステップS102に続いて、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、上記のステップS101で取得された測定データに含まれる加速度センサ値のz成分値を用いて、これら全てのz成分値の平均値(つまり、10分間の平均値)と、30秒毎の平均値とを算出する(ステップS103)。以下、10分間における加速度センサ値のz成分値の平均値を「10分間のz平均値」、30秒毎のz成分値の平均値を「30秒毎のz平均値」という。なお、30秒毎にz成分値の平均値を算出することは一例であって、30秒に限られず、例えば、15秒毎や20秒毎、1分毎等の任意の時間(ただし、10分よりも短い時間)毎に平均値を算出してもよい。
【0061】
次に、分娩検知処理部100のピーク算出部103は、上記のステップS103で算出された30秒毎のz平均値を用いて、ピーク数を算出する(ステップS104)。ここで、ピーク数の算出方法の一例について説明する。
【0062】
直近の過去10分間が30秒毎の時間区間L(i=0,・・・,19)に分割されたものとして、時間区間Lにおけるz成分値の平均値をz[i]とする。ただし、Li+1≧Lとする。このとき、z[i](i=0,・・・,19)が30秒毎のz平均値である。
【0063】
まず、ピーク算出部103は、予め設定されたパラメータδを用いて、連続するz[i]同士の差分を判定することでピークを特定する。
【0064】
すなわち、ピーク算出部103は、i=1,・・・,18に対して、以下の式1を満たすz[i]を極大ピークと特定する。
【0065】
z[i]-z[i-1]>δ,かつ,z[i]-z[i+1]>δ ・・・(式1)
また、ピーク算出部103は、i=1,・・・,18に対して、以下の式2を満たすz[i]を極小ピークと特定する。
【0066】
z[i-1]-z[i]>δ,かつ,z[i+1]-z[i]>δ ・・・(式2)
すなわち、z[i]から1つ前のz[i-1]を減じた値がδよりも大きく、かつ、z[i]から次のz[i+1]を減じた値がδよりも大きい場合、z[i]を極大ピークと特定する。一方で、z[i]から1つ前のz[i-1]を減じた値が-δよりも小さく、かつ、z[i]から次のz[i+1]を減じた値が-δよりも小さい場合、z[i]を極小ピークと特定する。
【0067】
そして、ピーク算出部103は、極大ピークの数と極小ピークの数との合計をピーク数として算出する。
【0068】
一例として、或る30秒毎のz平均値z[i](i=0,・・・,19)の極大ピーク及び極小ピークの様子を図9に示す。図9に示す例では、z[2]、z[8]、z[12]及びz[18]が極大ピーク、z[3]及びz[13]が極小ピークと特定されている。したがって、図9に示す例では、ピーク数は6となる。
【0069】
なお、δの値は、尻尾を上下させるような動きを極大ピーク及び極小ピークとして特定可能な任意の値に設定されるが、例えば、δ=100~200程度の値とすることが考えられる。また、上記では、式1と式2とで共通のパラメータδを用いたが、例えば、式1と式2とで異なる値のパラメータδを用いてもよい。
【0070】
ステップS104に続いて、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、12時間前から10分前までの分娩検知用データを分娩検知用データ記憶部400から取得する(ステップS105)。すなわち、分娩検知部104は、分娩検知用データ記憶部400に記憶されている分娩検知用データのうち、最新の71個の分娩検知用データを取得する。なお、12時間前から10分前までの分娩検知用データを取得することは一例であって、予め設定された任意の時間前から10分前までの分娩検知用データが取得されてもよい。
【0071】
次に、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、上記のステップS102で推定された姿勢が「起立」である否かを判定する(ステップS106)。
【0072】
上記のステップS106で姿勢が「起立」でないと判定された場合(つまり、姿勢が「横臥」である場合)、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、上記のステップS105で取得した分娩検知用データのうち、姿勢が「横臥」である分娩検知用データを抽出する(ステップS107)。
【0073】
次に、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、上記のステップS107で抽出した分娩検知用データに含まれるz平均値の上位95%の値を算出する(ステップS108)。すなわち、分娩検知部104は、上記のステップS107で抽出した分娩検知用データに含まれるz平均値を小さい順に並べたときに、初めから数えて95%に位置する値(95パーセンタイル)を算出する。以下、この値を「上位95%のz平均値」という。なお、95%は一例であって、これに限られず、上記の特徴(1)を捉えるための適切な値を設定することが可能である。例えば、比較的低い値(例えば、80%以上等)としてもよい。
【0074】
次に、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、上位95%のz平均値≧0、かつ、10分間のz平均値≧上位95%のz平均値であるか否かを判定する(ステップS109)。ここで、10分間のz平均値≧上位95%のz平均値は上記の特徴(1)を捉えるための条件である。なお、牛の行動特性として通常の横臥時(つまり、分娩が近くない場合の横臥時)は尻尾を両足の間に巻き込むように横臥することが多く、この場合、上位95%のz平均値は負の値を取ることが多い。このため、通常の横臥時と、尾挙げ行動が行われている横臥時とを区別するため、上位95%のz平均値≧0という条件も判定している。
【0075】
上記のステップS109で上位95%のz平均値≧0、かつ、10分間のz平均値≧上位95%のz平均値であると判定されなかった場合、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、直近の過去10分間を累積対象としない(ステップS110)。
【0076】
一方で、上記のステップS109で上位95%のz平均値≧0、かつ、10分間のz平均値≧上位95%のz平均値であると判定された場合、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、直近の過去10分間を累積対象とする(ステップS111)。
【0077】
上記のステップS106で姿勢が「起立」であると判定された場合、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、上記のステップS105で取得した分娩検知用データのうち、姿勢が「起立」である分娩検知用データを抽出する(ステップS112)。
【0078】
次に、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、上記のステップS112で抽出した分娩検知用データに含まれるz平均値の上位95%の値を算出する(ステップS113)。すなわち、分娩検知部104は、上記のステップS112で抽出した分娩検知用データに含まれるz平均値を小さい順に並べたときに、初めから数えて95%に位置する値(95パーセンタイル)を算出する。以下、この値を「上位95%のz平均値」という。なお、95%は一例であって、これに限られない。ただし、上記の特徴(1)を捉えるため、比較的高い値(例えば、80%以上等)とすることが好ましい。
【0079】
次に、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、10分間のz平均値≧上位95%のz平均値であるか否かを判定する(ステップS114)。
【0080】
上記のステップS114で10分間のz平均値≧上位95%のz平均値であると判定されなかった場合、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、直近の過去10分間を累積対象としない(ステップS115)。
【0081】
一方で、上記のステップS114で10分間のz平均値≧上位95%のz平均値であると判定された場合、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、直近の過去10分間を累積対象とする(ステップS116)。
【0082】
上記のステップS110、ステップS111、ステップS115又はステップS116のいずれかに続いて、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、直近の過去10分間の日時の分娩検知用データを作成し、分娩検知用データ記憶部400に記憶する(ステップS117)。この分娩検知用データには、上記のステップS103で算出された10分間のz平均値と、図8のステップS203で算出された気圧差分中央値(第1の気圧差分中央値)と、上記のステップS102で推定された姿勢と、直近の過去10分間を累積対象とするか否かを示す累積区分と、上記のステップS104で算出されたピーク数とが含まれる。
【0083】
次に、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、分娩検知用データ記憶部400に記憶されている直近1時間の分娩検知用データのうちの累積対象の分娩検知用データに含まれるピーク数を取得する(ステップS118)。すなわち、分娩検知部104は、直近1時間の分娩検知用データ、かつ、累積対象とすることを示す値「OK」が累積区分に設定されている分娩検知用データを特定し、特定した分娩検知用データに含まれるピーク数を取得する。なお、直近1時間は一例であって、直近の任意の時間(例えば、直近の数十分から直近の数時間前)としてよい。ただし、上記の特徴(2)が表れるのは分娩時刻の数時間程度前からであることが多いため、これを考慮した直近の時間幅とすることが好ましい。また、上述したように、ごく少数の個体では10時間~20数時間前から上記の特徴(2)が見られる場合もあるため、これを考慮して直近の時間幅が決定されてもよい。
【0084】
次に、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、上記のステップS118で取得されたピーク数を累積して、累積ピーク数を算出する(ステップS119)。すなわち、分娩検知部104は、上記のステップS118で取得されたピーク数の総和を累積ピーク数として算出する。
【0085】
次に、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、累積ピーク数≧閾値であるか否かを判定する(ステップS120)。ここで、当該閾値は予め設定された値であり、上記の特徴(2)の尻尾の上下に伴うz成分値の振動を捉えるための任意の値が設定されるが、例えば、5程度の値とすることが考えられる。
【0086】
上記のステップS120で累積ピーク数≧閾値であると判定されなかった場合、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、分娩検知なしとする(ステップS121)。すなわち、この場合は何も行われない。
【0087】
一方で、上記のステップS120で累積ピーク数≧閾値であると判定された場合、分娩検知処理部100の分娩検知部104は、当該タグIDのタグ20が装着された牛の分娩が近いことを検知する(ステップS122)。そして、分娩検知部104は、当該牛の分娩が近いことを示すアラートを、例えば、畜産農家の管理者が利用する端末等に通知する。なお、この際、分娩検知部104は、累積ピーク数の値に応じてアラートの強弱を変化させてもよい。例えば、累積ピーク数が当該閾値以上、かつ、或る値以下の場合は弱いアラートを通知し、累積ピーク数が当該値よりも大きい場合は強いアラートを通知する等である。これは、累積ピーク数の値が大きいほど、分娩が近いと考えられるためである。
【0088】
以上のように、本実施形態に係る分娩検知装置10は、牛の尻尾部分に装着された加速度センサの値に基づいて、分娩が近い牛の特徴的な行動である尾挙げ行動を捉えることで、当該牛の分娩が近いことを検知することができる。これにより、畜産農家等は、勘や経験等に頼ることなく高い精度で牛の分娩が近いことを知ることができるため、例えば、適切なタイミングで分娩介助を行うことが可能となり、死産等の分娩事故の発生を防止することが可能となる。
【0089】
本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から逸脱することなく、種々の変形や変更、既知の技術との組み合わせ等が可能である。
【0090】
本願は、日本国に2020年10月5日に出願された基礎出願2020-168448号に基づくものであり、その全内容はここに参照をもって援用される。
【符号の説明】
【0091】
1 分娩検知システム
10 分娩検知装置
20 タグ
30 基準気圧センサ
100 分娩検知処理部
101 取得部
102 姿勢推定部
103 ピーク算出部
104 分娩検知部
200 測定データ記憶部
300 基準気圧データ記憶部
400 分娩検知用データ記憶部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9