(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20240925BHJP
B65D 53/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B65D47/20 111
B65D53/00 100
(21)【出願番号】P 2020191323
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000234627
【氏名又は名称】シロウマサイエンス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】北山 智治
(72)【発明者】
【氏名】小倉 佑介
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0279781(US,A1)
【文献】特開2014-129126(JP,A)
【文献】特開2017-165452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能で且つ内容物が充填される樹脂製の容器本体と、内容物の出口が形成され且つ容器本体の口部に着脱可能なキャップと、容器本体の口部を密封すると共に剥離可能な密封シールと、内容物を通過させる弁出口が形成され且つキャップに装着された弁とを備え、
キャップは、容器本体の口部の外周面に取り付ける取付部と、取付部から口径方向の内側に向かって張り出すと共に容器本体の内部と外部とを仕切る仕切部であってその内周側の空間部が出口となる仕切部と、仕切部の内面側に形成され且つ弁を装着する装着部を備え、
弁は、容器本体側から加わる圧力に応じて開閉可能な弁体と、弁体の外周部から口径方向外側に張り出すと共に装着部に装着されるフランジとを備え、
キャップの仕切部には、容器本体と密封シールとの高周波溶着時における密封シールとの接触を示す転写跡が形成され、
仕切部と容器本体の口部端面との間に密封シールを挟む状態では、弁と密封シールとの間には隙間が形成され
、
フランジは、弁体の外周部から口径方向外側に張り出すフランジ本体と、フランジ本体の外周部から容器本体とは反対側に向かって突出すると共に装着部に挿入するフランジ挿入部とを備え、
装着部は、フランジ挿入部を収容すると共に容器本体側に向かって開口する溝状の収容溝と、収容溝の幅方向に陥没又は突出すると共にフランジを密封シール側から支えるストッパー部を備え、
フランジ挿入部の外周面は、その外径が容器本体とは反対側に向かって小さくなるテーパー状であり、
収容溝とフランジ挿入部の先部の外周面との間には隙間が形成されることを特徴とする容器。
【請求項2】
容器本体は、復元可能な弾性を有する外袋であって外気を内側に導く導入穴が形成された外袋と、外袋よりも酸素バリア性能が優れた酸素バリア層を含む内袋とを備え、内容物が充填された状態では外袋と内袋とが重なると共に内容物の吐出後の状態では外袋がその弾性により復元した場合に内袋が収縮した状態を保持することを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
装着部は、フランジ挿入部を口径方向の内外から案内する外案内部および内案内部を備え、
外案内部と内案内部の少なくとも一方は周方向に間隔をあけて配置される案内片を備え、
隣り合う案内片の間はフランジ挿入部を装着部に装着するときの排気口部であることを特徴とす
る請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
弾性変形可能で且つ内容物が充填される樹脂製の容器本体と、内容物の出口が形成され且つ容器本体の口部に着脱可能なキャップと、容器本体の口部を密封すると共に剥離可能な密封シールと、内容物を通過させる弁出口が形成され且つキャップに装着された弁とを備え、
キャップは、容器本体の口部の外周面に取り付ける取付部と、取付部から口径方向の内側に向かって張り出すと共に容器本体の内部と外部とを仕切る仕切部であってその内周側の空間部が出口となる仕切部と、仕切部の内面側に形成され且つ弁を装着する装着部を備え、
弁は、容器本体側から加わる圧力に応じて開閉可能な弁体と、弁体の外周部から口径方向外側に張り出すと共に装着部に装着されるフランジとを備え、
キャップの仕切部には、容器本体と密封シールとの高周波溶着時における密封シールとの接触を示す転写跡が形成され、
仕切部と容器本体の口部端面との間に密封シールを挟む状態では、弁と密封シールとの間には隙間が形成され
、
フランジは、弁体の外周部から口径方向外側に張り出すフランジ本体と、フランジ本体の外周部から容器本体とは反対側に向かって突出すると共に装着部に挿入するフランジ挿入部とを備え、
装着部は、フランジ挿入部を収容すると共に容器本体側に向かって開口する溝状の収容溝と、収容溝の幅方向に陥没又は突出すると共にフランジを密封シール側から支えるストッパー部と、フランジ挿入部を口径方向の内外から案内する外案内部および内案内部とを備え、
外案内部と内案内部の少なくとも一方は周方向に間隔をあけて配置される案内片を備え、
隣り合う案内片の間はフランジ挿入部を装着部に装着するときの排気口部であることを特徴とする容器。
【請求項5】
容器本体は、復元可能な弾性を有する外袋であって外気を内側に導く導入穴が形成された外袋と、外袋よりも酸素バリア性能が優れた酸素バリア層を含む内袋とを備え、内容物が充填された状態では外袋と内袋とが重なると共に内容物の吐出後の状態では外袋がその弾性により復元した場合に内袋が収縮した状態を保持することを特徴とする請求項4に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物が充填される樹脂製の容器本体と、容器本体の口部を密封すると共に剥離可能に接着(溶着)された密封シールを備える容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の一例として、シール材と称される密封シールを容器本体の口部に接着したものが知られている(特許文献1)。この容器は密封シールが容器本体の口部にヒートシールされており、密封シールを剥がす前(開封前)の段階において内容物の鮮度をできる限り維持できるようにしてある。
【0003】
また容器の別の例として、容器本体の口部に対し内栓と称される開閉可能な弁と、キャップ本体と称されるキャップとを順次取り付けたものが知られている(特許文献2)。この容器は弁の弾性を利用して、空気が容器本体内に逆流するのを防止し、キャップを初めて開けて内容物を弁から排出した後(開封後)の段階において、内容物の鮮度をできる限り維持できるようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-205759号公報
【文献】特開2019-85175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情を考慮して創作されたものであり、密封シールと弁とを併用し、開封前と開封後の両段階においても内容物の鮮度をできる限り維持できるようにした容器を提供することを目的とする。
【0006】
ちなみに特許文献2に開示された容器は容器本体の口部の端面に内栓の外周部を被せ、そのうえで当該口部の内部空間に内栓の弁を収容する構成を採用していることから、特許文献1に開示されているような構成(つまり容器本体の口部端面に対し密封シールを接着する構成)を採用することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の容器は、弾性変形可能で且つ内容物が充填される樹脂製の容器本体と、内容物の出口が形成され且つ容器本体の口部に着脱可能なキャップと、容器本体の口部を密封すると共に剥離可能な密封シールと、内容物を通過させる弁出口が形成され且つキャップに装着された弁とを備えることを前提とする。そしてキャップは、容器本体の口部の外周面に取り付ける取付部と、取付部から口径方向の内側に向かって張り出すと共に容器本体の内部と外部とを仕切る仕切部であってその内周側の空間部が出口となる仕切部と、仕切部の内面側に形成され且つ弁を装着する装着部を備える。また弁は、容器本体側から加わる圧力に応じて開閉可能な弁体と、弁体の外周部から口径方向外側に張り出すと共に装着部に装着されるフランジとを備える。そのうえで、キャップの仕切部には、容器本体と密封シールとの高周波溶着時における密封シールとの接触を示す転写跡が形成され、仕切部と容器本体の口部端面との間に密封シールを挟む状態では、弁と密封シールとの間には隙間が形成されていることにする。
【0008】
容器本体はその詳細な構成を問わないが、密封シールを剥がして、容器本体を押し潰して内容物を吐出させた後には、内容物が残っている状態で容器本体の外形が復元した場合にでも鮮度をできる限り維持するには、次のようにすることが望ましい。
すなわち、容器本体は、復元可能な弾性を有する外袋であって外気を内側に導く導入穴が形成された外袋と、外袋よりも酸素バリア性能(酸素透過速度)が優れた酸素バリア層を含む内袋とを備え、内容物が充填された状態では外袋と内袋とが重なると共に内容物の吐出後の状態では外袋がその弾性により復元した場合に内袋が収縮した状態を保持することである。
【0009】
またフランジの詳細な構成は問わないが、弁を装着部に取り付け易く且つ取り付けた後は装着部から外れ難くするには次のようにすることが望ましい。
すなわちフランジは、弁体の外周部から口径方向外側に張り出すフランジ本体と、フランジ本体の外周部から容器本体とは反対側に向かって突出すると共に装着部に挿入するフランジ挿入部とを備えることにする。そして装着部は、フランジ挿入部を収容する溝状の収容溝と、密封シール側への弁の移動を規制するストッパー部を備えることにする。
【0010】
またフランジ挿入部を収容溝に挿入し易くするには次のようにすることが望ましい。
すなわちフランジ挿入部の外周面をその外径が容器本体とは反対側に向かって小さくなるテーパー状にし、収容溝とフランジ挿入部の先部の外周面との間には隙間が形成されるようにすることである。
【0011】
また収容溝にフランジ挿入部を挿入するときに収容溝から空気が出ていき易くしてフランジ挿入部を挿入し易くするには次のようにすることが望ましい。
すなわち装着部は、フランジ挿入部を口径方向の内外から案内する外案内部および内案内部を備えることにする。そして外案内部と内案内部の少なくとも一方は周方向に間隔をあけて配置される案内片を備え、隣り合う案内片の間はフランジ挿入部を装着部に装着するときの排気口部にすることである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の容器は、弁の装着対象をキャップとし、且つ密封シールよりも容器本体とは反対側に弁を装着してあるので、密封シールと弁とによって開封前後の内容物の鮮度をできる限り維持できる。しかも本発明の容器は、密封シールと弁との間には隙間が形成されているので、容器本体と密封シールとの高周波溶着時に弁が溶けて損傷することを防止でき、弁を正常に機能させることができる。
【0013】
また本発明の容器は、容器本体を外袋と内袋とを備え、内容物が充填された状態では外袋と内袋とが重なると共に内容物の吐出後の状態では外袋がその弾性により復元した場合に内袋が収縮した状態になる場合には、内容物を使い切るまで鮮度をできる限り維持できる。
【0014】
また本発明の容器は、フランジがフランジ本体とフランジ挿入部とを備え、装着部が収容溝とストッパー部とを備える場合には、収容溝にフランジ挿入部を挿入するだけで弁が装着部に取り付けられ、しかもストッパー部によって密封シール側への弁の移動を規制するので、弁が装着部から外れ難くなる。
【0015】
また本発明の容器は、フランジ挿入部の外周面をその外径が容器本体とは反対側に向かって小さくなるテーパー状にし、収容溝とフランジ挿入部の先部の外周面との間には隙間が形成される場合には、フランジ挿入部を収容溝に挿入し易くなり、弁が装着部に取り付け易くなる。
【0016】
また本発明の容器は、装着部が外案内部と内案内部を備え、外案内部と内案内部の少なくとも一方に案内片を備え、隣り合う案内片の間を排気口部にする場合には、収容溝にフランジ挿入部を挿入するときに収容溝から排気口部を経て空気が出ていくので、弁が装着部に取り付け易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一実施形態の容器を示す断面図である。
【
図2】第一実施形態の容器の組み立て前の部品を示す断面図である。
【
図3】通過シールと容器本体の口部との関係を示す平面図である。
【
図4】内容物が減った容器本体から内容物を出している状態を示す断面図である。
【
図5】密封シールと容器本体の口部との関係を示す平面図である。
【
図7】(a)(b)図は成形直後の弁の一例を示す斜視図、平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第一実施形態の容器1は
図1に示すように、内容物が充填される容器本体2と、容器本体2の口部22に着脱可能に取り付けられたキャップ3と、容器本体2の口部22の端面に接着され且つ口部22の端面よりも口径方向内側から内容物を通過させる樹脂製の通過シール4と、通過シール4の表面側から容器本体2の口部22を密封する密封シール5と、キャップ3に装着された弁6とを備える。
【0019】
容器本体2は弾性変形可能であり、熱可塑性樹脂製である。容器本体2の弾性変形の程度は、手で押し潰して内容物を押し出すことができる程度である。また容器本体2は、中空の胴部21と、胴部21の一部(図では上部)から突出する筒状の口部22とを備える。口部22は本実施形態では円筒状となっており、その外周面には雄ネジ23がキャップ3を取り付けるために形成されている。容器本体2には内容物としての粘性物が充填される。粘性物の代表例としてはマヨネーズが挙げられる。
【0020】
また容器本体2は、内容物が充填された状態では外袋25に対しその内側に内袋26が重なり合う構造である。
外袋25は復元可能な弾性を有する。一方、内袋26は、外袋25よりも酸素バリア性能(酸素透過速度)が優れている。また内袋26は、厚みの外側から内側に向かって順に酸素バリア層、接着層、内層を積層した構造である。
酸素バリア層は外袋25よりも酸素バリア性能が優れた層、つまり外袋25よりも酸素を通し難い層である。
接着層は、酸素バリア層と内層を接着するための層である。
内層は酸素バリア層よりも耐水性が優れた層である。
材質としては例えば、内層と外袋25にはポリエチレンが用いられ、酸素バリア層にはEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)が用いられる。
【0021】
ちなみに容器本体2はダイレクトブロー成形によって形成される。したがって成形直後は、容器本体2の外袋25と内袋26とは専用の接着層無しに密着し一体化している。また外袋25には外気を外袋25と内袋26の間に導入するための導入穴25hが厚み方向に貫通して形成されている。図では導入穴25hは外袋25の底面に形成されている。そして内容物を充填するまでに少なくとも一度は、容器本体2は導入穴25hから外袋25と内袋26の間に空気を導いて、外袋25と内袋26を胴部21において剥離した状態とし、口部22において密着された状態を維持しておく。そして内容物が充填された状態では外袋25と内袋26とが外観上では重なり合う形にしておく。また容器本体2を押し潰して内容物を吐出した後の状態、つまり内容物の吐出後の状態では外袋25がその弾性により復元した場合に
図4に示すように外袋25と内袋26とが口部22において密着された状態を維持しながら内袋26が胴部21において収縮した状態になり、胴部21において外袋25と内袋26の間に空気が収容された状態になる。
【0022】
以下では「容器本体側」、「反容器本体側」、「口径方向」という用語を使う。
「容器本体側」とは、容器本体2の口部22に取り付ける対象物に対して内容物が充填される側であり、
図1では下側である。
「反容器本体側」とは、容器本体2とは反対側のことであり、対象物に対して内容物が出ていく側であり、
図1では上側である。
なお「容器本体側」と「反容器本体側」は、口部22に取り付ける対象物以外でも用いることにする。
「口径方向」とは、反容器本体側から口部22を見た場合に、口部22の中心に対してその中心を通過する直線が延長する方向を言う。本実施形態では、口部22の外周面と内周面とはいずれも円筒状であるので、口径方向は直径方向と一致する。また「口径方向」は口部22以外についても用いることにする。
【0023】
キャップ3は
図1,2では、いわゆるヒンジキャップである。またキャップ3は、容器本体2の口部22に着脱可能に取り付けられると共に内容物を通過させる出口3hが形成された中蓋7と、中蓋7に対し開閉可能な外蓋8とを備える。またキャップ3は、中蓋7と外蓋8とを互いの外周部において開閉可能に連結する連結部3aを備える。連結部3aは中蓋7の外周を形成する取付部71の厚みや外蓋8の外周を形成する化粧壁82の厚みよりも薄く、折れ曲がり可能なものである。キャップ3は熱可塑性樹脂製である。
【0024】
中蓋7は、容器本体2の口部22の外周面に着脱可能に取り付けられた取付部71と、取付部71の反容器本体側の内周側において容器本体2の内部(容器本体側)と外部(反容器本体側)を仕切ると共に弁6が取り付けられる仕切部72とを備える。
【0025】
取付部71は、筒状の取付壁71aと、取付壁71aの内周面に形成された雌ネジ71bとを備える。雌ネジ71bは容器本体2の口部22の雄ネジ23に螺合する。
【0026】
仕切部72は、取付壁71aのうち反容器本体側の端部においてその周方向の全周から口径方向内側に張り出す環状の仕切部本体73と、仕切部本体73の内周部から反容器本体側に突出する筒状のノズル部74と、仕切部72の内面側(容器本体側を向く面側)に形成され且つ弁6を装着する装着部75とを備える。
【0027】
仕切部本体73は反容器本体側から見て中心部に貫通穴73aがあいた環状の板である。仕切部本体73は、口径方向外側から内側に向かうにつれて反容器本体側に延びるテーパー形状となっている。また仕切部本体73は、貫通穴73aと取付部71との間において容器本体2の内部と外部とを仕切る。仕切部本体73の貫通穴73aとノズル部74の内部空間とは通じており、本実施形態では内容物が通過する出口3hを形成する。
なお装着部75については弁6と合わせて後で説明する。
【0028】
外蓋8を閉状態で説明する。外蓋8は、中蓋7を反容器本体側から覆う化粧板81と、化粧板81の外周部からその周方向に延びると共に容器本体側に向かって突出する筒状の化粧壁82と、化粧板81の中心部から容器本体側に向かって突出すると共に中蓋7の出口3hを塞ぐ外栓83とを備える。外栓83は筒状で、ノズル部74に対しその外周面を覆う状態で嵌合する。化粧壁82は取付部71に対し反容器本体側において重なり合う状態になる。
【0029】
弁6は
図2,4,7に示すように、キャップ3の出口3hと容器本体2の口部22との間において容器本体側から加わる圧力に応じて開閉可能な弁体61と、弁体61の外周部から口径方向外側に張り出すと共に装着部75に装着されるフランジ62とを備える。また弁6は弾性変形可能な樹脂製である。
【0030】
フランジ62は弁体61の外周を全周に亘って包囲する環状である。またフランジ62は、弁体61の外周部から口径方向外側に張り出すフランジ本体部63と、フランジ本体部63の外周部から反容器本体側に向かって突出すると共に装着部75に挿入するフランジ挿入部64とを備える。
【0031】
フランジ挿入部64は筒状、より詳しく言えば円筒状である。
フランジ本体部63は環状であり、より詳しく言えば外周を円形状とし、内周を多角形状(正六角形状)としてある。またフランジ本体部63の内周部に接合されるのが弁体61である。
【0032】
弁体61は、弁6を射出成形して金型から取り出した直後では少し開いた状態である。そして弁体61は、装着部75に装着されると、閉状態になる。また弁体61は、フランジ62の内周における多角形状の各辺部から延びる弁片66の集合である弁片群を備える。また弁体61は、隣り合う弁片66の間に隙間が形成されている状態が弁体61の開状態、つまり弁出口6hの開状態であり、隣り合う弁片66が接している状態が弁体61の閉状態、つまり弁出口6hの閉状態である。弁体61の閉状態において弁片66は、反容器本体側から見て三角形状であり、フランジ62の多角形状の各辺部から多角形状の中心に向かって延びる。より詳しく言えば、弁体61の閉状態において弁片66は、多角形状の各辺部から多角形状の中心に向かうにつれて反容器本体側に円弧状に膨らみながら突出する。そして閉状態において弁体61は、反容器本体側に膨らむ凸形状、より詳しく言えば中空形状で且つ半球状であり、半球状の底面側が容器本体側に向かって開口する。
【0033】
弁片66は弾性変形可能である。また弁片66はその先部から辺部に向かう方向に順番に第1板部66a、第1ヒンジ部66b、第2板部66c、第2ヒンジ部66dを備える。
第1ヒンジ部66bは第1板部66aと第2板部66cよりも薄肉であり、自分自体よりも先部側に位置する第1板部66aを変位させる支点となる。
第2ヒンジ部66dはフランジ本体部63と第2板部66cよりも薄肉であり、自分自体よりも先部側(第2板部66c、第1ヒンジ部66b、第1板部66a)をまとめて変位させる支点となる。
第2板部66cの集合である第2板部群を反容器本体側から押さえると、第2ヒンジ部66dを支点にして第1板部66a、第1ヒンジ部66b、第2板部66cが容器本体側に変位し、弁体61が閉状態になる。そして第2板部群を反容器本体側から押さえた状態で弁体61に容器本体側から圧力が加わると、第1ヒンジ部66bを支点にして第1板部66aが反容器本体側に変位し、弁体61が開状態になる。一方、弁体61に容器本体側から加わる圧力が無くなると、第1板部66aが元の形に復元し、周方向に隣り合う第1板部66a同士が隙間の無い状態に密接する。
なお弁体61が開状態の場合だけでなく閉状態の場合にも、周方向に隣り合う弁片66のうち第2ヒンジ部66d同士の間には隙間66sが形成される。
また弁体61が閉状態の場合には弁体61のうち第2板部群は環状になる。その第2板部群をその外周面と反容器本体側の面の双方から押さえた状態でフランジ挿入部64を収容するのがキャップ3の装着部75である。
【0034】
装着部75は
図2に示すように、フランジ挿入部64を収容すると共に容器本体側に向かって開口する収容溝75aと、収容溝75aの幅方向に突出すると共にフランジ62を密封シール側(反容器本体側)から支えるストッパー部75bとを備える。
【0035】
収容溝75aは、円筒状の空間部を口径方向の内側と外側及び反容器本体側から包囲する部分であり、仕切部本体73の口径方向外側と内側に間隔をあけて配置された外案内部76および内案内部77と、仕切部本体73の一部であって外案内部76と内案内部77を反容器本体側から口径方向に接合する部分とによって形成される。
【0036】
外案内部76は、筒状の外壁76aと、外壁76aの内周面のうち容器本体側の端部から口径方向内側に向かって突出するストッパー部75bとを備える。
【0037】
ストッパー部75bは環状であり、外壁76aの周方向の全周に亘って形成されている。またストッパー部75bは、弁6がキャップ3に装着された状態ではフランジ本体部63を容器本体側から支えるように配置される。
そして弁6がキャップ3に装着された状態では外壁76aの内周面とフランジ挿入部64の先部の外周面との間には隙間G1が形成される。より詳しく言えば、外壁76aに対してフランジ挿入部64の外周面は、その外径が反容器本体側に向かって小さくなるテーパー状であり、外壁76aはストッパー部75bから反容器本体側に向かってその内面側の口径を一定にしてある。したがって隙間G1は反容器本体側に向かうにつれて広がっている。
【0038】
内案内部77は、筒状の内壁77aと、内壁77aの外周面から口径方向外側に向かって突出すると共に周方向に間隔をあけて配置された案内片77bとを備える。
【0039】
内壁77aは容器本体側の先端面と内周面との角部には、弁6を装着したときに弁体61を閉状態に保持するために弁体61の第2板部66cを押さえる凹部77dを備えている。
凹部77dは、内壁77aの内周の全周に亘って形成され、環状(円環状)となっている。弁体61の閉状態を容器本体側から見ると、第2板部群の外周面が円形状となっており、凹部77dは第2板部群の当該外周面と容器本体側の面との角部を押さえる。
【0040】
案内片77bは板状で、内壁77aから突出するだけでなく仕切部本体73から容器本体側に向かって突出しており、容器本体側に対向する端面77eと、口径方向外側を向く端面、つまり外周面77fとを備える。
当該端面77eと外周面77fとの角部において、案内片77bは円弧状に形成されている。そして角部の円弧状は当該端面77eと外周面77fとを滑らかに連続する形になっている。
また当該外周面77fは反容器本体側に向かって一直線に延びる形にしてある。当該外周面77fにフランジ挿入部64の先部の内周面が接する状態になる。なおフランジ挿入部64の内周面に対し内壁77aは離れた状態になる。
一方、当該端面77eは、口径方向外側に向かうにつれて反容器本体側に向かう斜面であり、フランジ挿入部64を挿入したときに、フランジ挿入部64の先部を案内片77bの外周面77fの方に案内する。
また
図6に示すように周方向に隣り合う案内片77bの間は離れており、フランジ挿入部64を装着部75に装着するときの排気口部77hになる。
【0041】
図2に示すように外壁76aと内壁77aはいずれも仕切部本体73の内面(容器本体側の面)から容器本体側に向かって延びている。その延びた先の端面(容器本体側を向く面)の位置は、外壁76aに比べて内壁77aを反容器本体側としてある。内壁77aの端面は弁6の第2板部66cを反容器本体側から押さえる面である。一方、外壁76aの端面は密封シール5を反容器本体側から押さえる面である。また外壁76aの端面は取付部71のうち反容器本体側の端部に対して口径方向に張り出す状態となっている。外壁76aの端面に対して容器本体側には密封シール5と通過シール4が順番に配置され、外壁76aと容器本体2の口部22の間に挟まれる。
【0042】
通過シール4は環状で、環状の外周部が容器本体2の口部22の端面に接着される。また通過シール4は環状の内周面が通過口4aになり、通過口4aは容器本体2の口部22から出口3hに向かって内容物を通過させる。また通過口4aは容器本体2の口部22の端面に沿う形状で、本実施形態では
図3に示すように円形状である。通過シール4は積層構造で、通過シール4の形状を確保するための本体となる本体層、本体層を容器本体2の口部22に接着してシール性(気密性・水密性)を確保するためのシール層を備える。シール層は例えば直鎖状低密度ポリエチレンを用いる。また融点は高い方から並べると、本体、シール層の順になる。ちなみに本体層は、この例では積層構造で、複数の樹脂層を備えるものとする。
【0043】
密封シール5は、通過シール4の表面側(反容器本体側)から通過口4aを塞いで容器本体2の口部22を密封すると共に通過シール4に対して剥離可能な状態で接着される。また密封シール5は、通過シール4の表面側に接着された接着層と、接着層の表面側に接着され一体化された金属箔(例えばアルミニウム製の箔)とを備える。なお密封シール5は金属箔と接着層とを含むものであれば、金属箔と接着層の間や金属箔の表面側に別の層を備えるもであっても良い。
接着層は例えばビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、シリコン樹脂等の単体又は混合物を用いる。
金属箔は、
図5に示すように容器本体2の口部22の外形よりも大きな外形の箔本体5aと、箔本体5aの外周の一部からはみ出す形で突出する摘まみ5bとを備える。
箔本体5aの裏面(容器本体側の面)のうち少なくとも外周部には接着層が形成され、接着層に対して通過シール4が接着される。
【0044】
そして密封シール5と通過シール4との接着強度(つまり接着層による接着強度)は、通過シール4と容器本体2の口部22との接着強度(つまりシール層による接着強度)よりも弱くなっている。また密封シール5と通過シール4とは容器本体2に接着する前には接着層によって接着され、一枚のシール材となっている。
【0045】
シール材は、高周波溶着によって容器本体2の口部22に接着、より詳しく言えば溶着される。高周波溶着は次の1)~4)のようにして行われる。
1)まずキャップ3に弁6を装着する。より詳しく言えば、弁6をキャップ3の筒状の取付部71の奥側に押し込んで、弁6のフランジ挿入部64をキャップ3の装着部75の収容溝75aに挿入すると、次のようになる。
1-1)まずフランジ挿入部64の先部がストッパー部75bを通過し、フランジ本体部63の外周面がストッパー部75bに衝突する。フランジ挿入部64は、その外周面を先部に向かうにつれて外径が小さくなるテーパー状としてあるので、ストッパー部75bを通過し易い。
1-2)さらに弁6を押し込むと、フランジ本体部63が弾性によって口径方向内側に収縮してストッパー部75bを乗り越え、その直後にフランジ本体部63が復元して元の形に戻ってストッパー部75bによって中蓋7から外れないように規制され、その結果、弁6がキャップ3に装着され、自重で落下して外れないようになる。
なお弁6がキャップ3に装着されるまでの間には、フランジ挿入部64の先部が外案内部76と内案内部77の間(外壁76aと案内片77bの間)に侵入する。フランジ挿入部64の先部が筒状になっており、外案内部76も筒状であるので、侵入するときにフランジ挿入部64と外案内部76との間からは空気が通過しづらいが、内案内部77の案内片77bは口径方向に延びる形の板状なので、侵入するときにフランジ挿入部64と内案内部77との間からは、排気口部77h(周方向に隣り合う案内片77bの間)を経て空気が通過し、その空気はさらに弁体61のうち隣り合う第2ヒンジ部66dの間に形成される隙間66sを経てキャップ3の取付部71の入り口側(容器本体側)に向かう。
2)次にキャップ3にシール材を組み込む。より詳しく言えば、シール材をキャップ3の筒状の取付部71の奥側(反容器本体側)に押し込み、外壁76aの端面にシール材のうち密封シール5の金属箔側の箔本体5aを押し付けると共に摘まみ5bを取付部71の内面に沿わせた状態に曲げ、シール材をキャップ3に仮止めする。
3)その後、弁6とシール材が組み込まれたキャップ3を内容物が充填された容器本体2の口部22に取り付ける。より詳しく言えば、キャップ3の雌ネジ71bと容器本体2の口部22の雄ネジ23とを螺合させて、キャップ3を容器本体2の口部22に対して相対的に回し込み、仕切部72(外壁76aの端面)と容器本体2の口部22端面との間にシール材を挟む状態とする。
4)最後に内容物が充填された容器1を高周波溶着装置(高周波誘導加熱装置)に設置し、キャップ3の外側からシール材と容器本体2の口部22の端面とを高周波溶着する。そうすると、高周波によってシール材の密封シール5(金属箔)が加熱され、通過シール4のシール層が溶けて容器本体2の口部22の端面に接着することに加え、仕切部72の外壁76aが溶けて金属箔の表面の微妙な凹凸や金属箔の外形が仕切部72の外壁76aの端面には転写される。つまり仕切部72には
図6に示すように、容器本体2と密封シール5との高周波溶着時における密封シール5との接触を示す転写跡72aが形成される。また
図5,6に示すように転写跡72aの外形は図では歪な円形であり、金属箔の外形と一致する。また転写跡72aの表面には凹凸を示す筋72cが形成されており、金属箔の表面にも凹凸を示す筋5cが形成されている。
【0046】
仕切部72の外壁76aと容器本体2の口部22の端面との間にシール材(密封シール5)を挟む状態では、弁6とシール材との間には隙間G2が形成されている。
【0047】
本発明の第一実施形態の容器1は、弁6の装着対象をキャップ3とし、且つ密封シール5よりも反容器本体側に弁6を装着してあるので、密封シール5と弁6とによって開封前後の内容物の鮮度をできる限り維持できる。ちなみにノズル部74と外栓83との嵌合によっても開封後の鮮度をできる限り維持できる。しかも本発明の第一実施形態の容器1は、密封シール5と弁6との間には隙間G2が形成されているので、容器本体2と密封シール5との高周波溶着時に弁6が溶けて損傷することを防止でき、第1ヒンジ部66bを支点にして弁6を正常に機能(開閉)させることができる。
【0048】
また本発明の第一実施形態の容器1は、容器本体2を外袋25と内袋26とを備え、内容物が充填された状態では外袋25と内袋26とが重なると共に内容物の吐出後の状態では外袋25がその弾性により復元した場合に内袋26が収縮した状態を保持するので、内容物を使い切るまで鮮度をできる限り維持できる。
【0049】
また本発明の第一実施形態の容器1は、フランジ62がフランジ本体部63とフランジ挿入部64とを備え、装着部75が収容溝75aとストッパー部75bとを備えるので、収容溝75aにフランジ挿入部64を挿入するだけで弁6が装着部75に取り付けられ、しかもストッパー部75bによって密封シール側への弁6の移動を規制するので、弁6が装着部75から外れ難くなる。
【0050】
また本発明の第一実施形態の容器1は、フランジ挿入部64の外周面をその外径が反容器本体側に向かって小さくなるテーパー状にし、収容溝75aとフランジ挿入部64の先部の外周面との間には隙間G1が形成されるので、フランジ挿入部64を収容溝75aに挿入し易くなり、弁6が装着部75に取り付け易くなる。
【0051】
また本発明の第一実施形態の容器1は、装着部75が外案内部76と内案内部77とを備え、内案内部77に案内片77bを備え、隣り合う案内片77bの間を排気口部77hにするので、収容溝75aにフランジ挿入部64を挿入するときに空気は収容溝75aから排気口部77h、弁体61の隙間66sを経てキャップ3から出ていくので、弁6が装着部75に取り付け易くなる。
【0052】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、装着部75はストッパー部75bを収容溝75aの入口側(密封シール側)において外壁76aの内周面から収容溝75aの幅方向(口径方向内側)に突出する構成とし、フランジ62はフランジ本体部63がストッパー部75bに支えられる構成であったが、本発明ではこれに限らない。たとえば装着部75は、ストッパー部75bを外壁76aのうち収容溝75aの深さ方向における中間部において口径方向内側に突出する構成とし、フランジ62はストッパー部75bを収容するための第2のストッパー部をフランジ挿入部64の外周面に凹状に形成する構成としても良い。また装着部75はストッパー部75bを収容溝75aの深さ方向の中間部において外壁76aの内周面に対して収容溝75aの幅方向(口径方向外側)に陥没する構成とし、フランジ62はストッパー部75bに収容される第2のストッパー部をフランジ本体部63又はフランジ挿入部64の外周面から突出する構成としても良い。
【0053】
また弁体61は上記実施形態では複数の弁片66が開閉するものであったが、本発明ではこれに限らず、弾性変形可能な板状の膜に、内容物が通過するスリットが形成されたものであっても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 容器
2 容器本体
21 胴部
22 口部
23 雄ネジ
25 外袋
25h 導入穴
26 内袋
3 キャップ
3a 連結部
3h 出口
4 通過シール
4a 通過口
5 密封シール
5a 箔本体
5b 摘まみ
5c 筋
6 弁
6h 弁出口
61 弁体
62 フランジ
63 フランジ本体部
64 フランジ挿入部
66 弁片
66a 第1板部
66b 第1ヒンジ部
66c 第2板部
66d 第2ヒンジ部
66s 隙間
7 中蓋
71 取付部
71a 取付壁
71b 雌ネジ
72 仕切部
72a 転写跡
72c 筋
73 仕切部本体
73a 貫通穴
74 ノズル部
75 装着部
75a 収容溝
75b ストッパー部
76 外案内部
76a 外壁
77 内案内部
77a 内壁
77b 案内片
77d 凹部
77h 排気口部
8 外蓋
81 化粧板
82 化粧壁
83 外栓
G1 隙間
G2 隙間