(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】抗体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240925BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240925BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240925BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240925BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240925BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240925BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61K39/395 M
A61K47/26
A61K9/08
A61K47/12
A61P37/04
A61K47/22
A61P35/00
C07K16/28 ZNA
(21)【出願番号】P 2022560931
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 US2021024937
(87)【国際公開番号】W WO2021206965
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-10-05
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(73)【特許権者】
【識別番号】517054604
【氏名又は名称】フォーティ セブン, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Forty Seven, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マジェティ, ラヴィンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ワイスマン, アービング エル.
(72)【発明者】
【氏名】グエン, フォン
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-515899(JP,A)
【文献】特表2019-525902(JP,A)
【文献】特表2017-535557(JP,A)
【文献】特表2020-509025(JP,A)
【文献】特表2013-520476(JP,A)
【文献】国際公開第2019/079548(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/173431(WO,A1)
【文献】Blood,2019年,Vol.134,Suppl.1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
C07K 16/00-16/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10~20mg/mLのマグロリマブと、10mMの酢酸緩衝液と、9%w/vのスクロースと、0.01%~0.04%のポリソルベート20と、を含み、pHが4.5~5.5である、薬学的に許容される安定な液体製剤。
【請求項2】
10~20mg/mLのマグロリマブと、10mMの酢酸緩衝液と、9%w/vのトレハロースと、0.01%~0.04%のポリソルベート20と、を含み、pHが4.5~5.5である、薬学的に許容される安定な液体製剤。
【請求項3】
20mg/mLのマグロリマブを含む液体製剤中0.01%~0.02%のポリソルベート20を含む、請求項1~2のいずれかに記載の製剤。
【請求項4】
前記製剤が、2℃~8℃の温度で少なくとも
6ヶ月間安定である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記製剤が、2℃~8℃の温度で少なくとも12ヶ月間安定である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
前記製剤中のマグロリマブが、保存後にその生物学的活性の少なくとも50%を保持する、請求項
5に記載の製剤。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の製剤の単位用量を含む、製品。
【請求項8】
治療を必要とする個体を治療するための、請求項1~
6のいずれか一項に記載の抗体製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年4月6日に出願された米国特許仮出願第63/005,755号の利益及び優先権を主張し、その開示全体は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリンタンパク質は、様々な抗原に対する細胞性及び体液性反応を促進する免疫系の多官能性成分である。免疫療法の1つの形態は、自然免疫系の能力を利用する。細胞表面タンパク質CD47は、食細胞レセプタSIRPαとの結合を介して、CD47を発現する細胞の貪食をオフにすることができるキー「don’t eat-me」シグナルを提供する。食細胞上のSIRPαのCD47媒介結合を遮断することにより、標的細胞の貪食除去を高めることができる。抗CD47抗体治療はまた、マクロファージによる癌細胞の貪食を可能にすることが示されている。
【0003】
抗CD47抗体の安定な治療製剤を提供することは、臨床的に関連する治療を開発する際の重要なステップである。しかしながら、CD47は、大部分のヒト細胞においてあるレベルで見られる広く発現した抗体である。細胞表面上の標的に抗CD47抗体が結合すると、複合体の細胞への内在化を引き起こし、続いて複合体のリソソーム分解が生じ得る。典型的には、膜抗原に結合するmAbのクリアランスは、非結合標的が抗体を「吸収」してシンクとして機能するため、低用量でより速くなる(この現象は「抗原シンク」と呼ばれる)。結果として、比較的高用量の抗体を必要とし得る。
【0004】
更に、抗体は大きく複雑な分子であるため、それらの製剤は特別な問題をもたらす。タンパク質が生物学的に活性なままであるために、製剤は、タンパク質のアミノ酸の少なくともコア配列の構造完全性を無傷で維持し、同時にタンパク質の複数の官能基を分解から保護する必要がある。タンパク質の分解経路は、例えば、脱アミド化、ラセミ化、加水分解、酸化、ベータ脱離、若しくはジスルフィド交換からの化学的不安定性、又は変性、凝集、沈殿、若しくは吸着からの物理的不安定性を伴い得る。
【0005】
抗体治療薬を配合するプロセスは、凍結/解凍、撹拌/剪断、熱安定性などの製造又は保存中に遭遇し得るストレス因子に曝露されるタンパク質の対処方法を最初に理解する必要がある。抗体は、製剤の最適化を困難にする高濃度で凝集する傾向を有し、また抗体の製剤に対して現在FDAが承認している緩衝液及び賦形剤の比較的絞り込まれたリストが存在し、これらによって高濃度最適化の余地が制限され得る。
【0006】
臨床用途で抗体の安定な保存を提供する特定の製剤は、課題のままである。
【0007】
関連公開文献としては、米国特許第8,562,997号、同第9,399,682号、同第9,017,675号、同第9,382,320号、同第9,151,760号、同第8,758,750号、同第8,361,736号、同第8,709,429号、同第9,193,955号、及び同第7,514,229号、並びに国際出願US2016/049016号、同US2016/030997号、同US2016/036520号、同US2015/046976号、同US2015/044304号、同US2015/057233号、同US2015/026491号、同US2015/019954号、同US2015/010650号、同US2014/035167号、同US2014/018743号、同US2014/038485号、同US2013/021937号、及び同US2011/066580号が挙げられ、それぞれが参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
抗CD47抗体の製剤、特に、薬理学的に許容される濃度及び安定な有効期間を有する抗CD47抗体の水性及び凍結乾燥製剤が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、製剤中の抗CD47抗体は、従来の凍結乾燥には供されず、例えば、液体製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、製剤中の抗CD47抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、製剤中の抗CD47抗体は、完全長抗体である。いくつかの実施形態では、製剤中の抗CD47抗体は、IgG抗体である。いくつかの実施形態では、製剤中の抗CD47抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG4定常鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、マグロリマブである。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、配列(配列番号1)からなるHCDR1領域、配列(配列番号2)からなるHCDR2領域、配列(配列番号3)からなるHCDR3領域、配列(配列番号4)からなるLCDR1領域、配列(配列番号5)からなるLCDR2領域、及び配列(配列番号6)からなるLCDR3領域を含む。いくつかの実施形態では、そのような抗体は、ヒトIgG4定常領域配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、製剤は、液体製剤であり、10~160mg/mL、例えば、10~100mg/mL、例えば、10~80mg/mLの抗CD47抗体と、5~20mMの濃度の薬学的に許容される緩衝液と、安定剤と、界面活性剤と、を含み、製剤は約pH4~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、マグロリマブである。
【0012】
いくつかの実施形態では、製剤は、液体製剤であり、10~20mg/mLのマグロリマブと、10mMの酢酸緩衝液と、5%w/vのソルビトールと、0.01%~0.04%のポリソルベート20、例えば、0.01%~0.02%のポリソルベート20と、を含み、製剤のpHは4.5~5.5である。
【0013】
いくつかの実施形態では、製剤は、液体製剤であり、10~20mg/mLのマグロリマブと、10mMの酢酸緩衝液と、2~12%w/vのスクロース、例えば、9%w/vのスクロースと、0.01%~0.04%のポリソルベート20、例えば、0.01%~0.02%のポリソルベート20と、を含み、製剤のpHは4.5~5.5である。
【0014】
いくつかの実施形態では、製剤は、液体製剤であり、10~20mg/mLのマグロリマブと、10mMの酢酸緩衝液と、2~12%w/vのトレハロース、例えば、9%w/vのトレハロースと、0.01%~0.04%のポリソルベート20、例えば、0.01%~0.02%のポリソルベート20と、を含み、製剤のpHは4.5~5.5である。
【0015】
いくつかの実施形態では、製剤は、保存時の抗体の安定性を提供し、例えば、2~8℃ で8週間超、16週間超、24週間超、48週間超、12カ月超、2年超、3年超、4年超、5年超の期間保存後に、少なくとも50%の活性、少なくとも75%の活性、少なくとも95%の活性を維持する。12ヶ月、2年、3年、4年又は5年後の安定性は、100±50%であり得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、使用方法が提供され、方法は、有効用量の抗体製剤を必要とする患者に投与することを含み、抗体製剤は、10~80mg/mL、例えば、20~50mg/mLのマグロリマブと、10mMの酢酸緩衝液と、5%w/vのソルビトールと、0.01%~0.04%のポリソルベート20、例えば、0.01%~0.02%のポリソルベート20と、を含み、製剤のpHは4.0~5.5、例えば、4.0~5.3、例えば、4.0~5.0である。
【0017】
いくつかの実施形態では、使用方法が提供され、方法は、有効用量の抗体製剤を必要とする患者に投与することを含み、抗体製剤は、10~80mg/mL、例えば、20~50mg/mLのマグロリマブと、10mMの酢酸緩衝液と、9%w/vのスクロースと、0.01%~0.04%のポリソルベート20、例えば、0.01%~0.02%のポリソルベート20と、を含み、製剤のpHは4.0~5.5、例えば、4.0~5.3、例えば、4.0~5.0である。
【0018】
いくつかの実施形態では、使用方法が提供され、方法は、有効用量の抗体製剤を必要とする患者に投与することを含み、抗体製剤は、10~80mg/mL、例えば、20~50mg/mLのマグロリマブと、10mMの酢酸緩衝液と、9%w/vのトレハロースと、0.01%~0.04%のポリソルベート20、例えば、0.01%~0.02%のポリソルベート20と、を含み、pHは4.0~5.5、例えば、4.0~5.3、例えば、4.0~5.0である。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
安定な水性医薬製剤であって、10~100mg/mLの抗CD47抗体と、
5~20mMの濃度の緩衝液を含む薬学的に許容される賦形剤と、少なくとも1つの安定剤と、界面活性剤と、を含み、前記製剤は、約pH4~6.5のpHを有する、製剤。
(項目2)
前記緩衝液が、10~15mMの濃度で存在する、項目1に記載の製剤。
(項目3)
前記製剤中の前記緩衝液が、酢酸緩衝液又はヒスチジン緩衝液である、項目1又は2に記載の製剤。
(項目4)
前記緩衝液が、酢酸緩衝液である、項目3に記載の製剤。
(項目5)
前記pHが、pH4~pH6.5である、項目1~4のいずれか一項に記載の製剤。
(項目6)
前記pHが、pH4.7~pH5.3である、項目5に記載の製剤。
(項目7)
前記pHが、pH4.9~pH5.1である、項目5に記載の製剤。
(項目8)
前記安定剤が、2.5%~10%の濃度のソルビトールである、項目1~7のいずれか一項に記載の製剤。
(項目9)
前記安定剤が、2.5%~10%の濃度のスクロースである、項目1~7のいずれか一項に記載の製剤。
(項目10)
前記安定剤が、2%~12%の濃度のトレハロースである、項目1~7のいずれか一項に記載の製剤。
(項目11)
前記安定剤が、100~200mMの濃度のNaClである、項目1~7のいずれか一項に記載の製剤。
(項目12)
前記界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート80、又はプルロニック(登録商標)F68である、項目1~11のいずれか一項に記載の製剤。
(項目13)
前記界面活性剤が、約0.005%~約0.05%の界面活性剤の濃度のポリソルベート20である、項目12に記載の製剤。
(項目14)
前記製剤が、約2℃~約8℃の温度で少なくとも12ヶ月間安定である、項目1~13のいずれか一項に記載の製剤。
(項目15)
前記製剤が、約2℃~約8℃の温度で少なくとも16週間安定である、項目1~13のいずれか一項に記載の製剤。
(項目16)
前記製剤中の前記抗CD47抗体が、保存後にその生物学的活性の少なくとも50%を保持する、項目15に記載の製剤。
(項目17)
前記製剤中の前記抗CD47抗体が、完全長抗体である、項目1~16のいずれか一項に記載の製剤。
(項目18)
前記抗体が、ヒトIgG4定常領域配列を含む、項目17に記載の製剤。
(項目19)
前記抗体が、配列(配列番号1)からなるHCDR1領域、配列(配列番号2)からなるHCDR2領域、配列(配列番号3)からなるHCDR3領域、配列(配列番号4)からなるLCDR1領域、配列(配列番号5)からなるLCDR2領域、及び配列(配列番号6)からなるLCDR3領域を含む、ヒト化抗体である、項目17又は18に記載の製剤。
(項目20)
前記抗体が、マグロリマブである、項目1~19のいずれか一項に記載の製剤。
(項目21)
10~20mg/mLのマグロリマブと、10mMの酢酸緩衝液と、5%w/vのソルビトールと、0.01%~0.04%のポリソルベート20と、を含み、pHが4.5~5.5である、薬学的に許容される安定な液体製剤。
(項目22)
10~20mg/mLのマグロリマブと、10mMの酢酸緩衝液と、9%w/vのスクロースと、0.01%~0.04%のポリソルベート20と、を含み、pHが4.5~5.5である、薬学的に許容される安定な液体製剤。
(項目23)
10~20mg/mLのマグロリマブと、10mMの酢酸緩衝液と、9%w/vのトレハロースと、0.01%~0.04%のポリソルベート20と、を含み、pHが4.5~5.5である、薬学的に許容される安定な液体製剤。
(項目24)
項目1~23のいずれか一項に記載の製剤の単位用量を含む、製品。
(項目25)
項目1~23のいずれか一項に記載の抗体製剤の有効用量を投与することによって、それを必要とする個体を治療する方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】添加されたポリソルベート20の関数としてのマグロリマブ製剤の表面張力。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【
図5A】SE-HPLCの凝集体/プレピークの結果
【
図5B】SE-HPLCの凝集体/プレピークの結果
【
図5C】SE-HPLCの凝集体/プレピークの結果
【
図5D】SE-HPLCの凝集体/プレピークの結果
【0024】
【
図6】濃度の関数として測定されたマグロリマブの粘度
【0025】
【
図7】マグロリマブと共に試験された様々な安定化賦形剤
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の方法及び組成物の説明の前に、本発明は、言うまでもなく変化し得るため、記載される特定の方法又は組成物に限定されないことを理解されたい。本明細書に使用される専門用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、制限されることを意図せず、本発明の範囲は添付の請求項によってのみ制限されることが理解されるべきである。
【0027】
ある範囲の値が提供される場合、その間の各値(文脈により明確に示されない限り、その範囲の上限値と下限値との間の下限値の単位の10分の1まで)も、具体的に開示されると理解される。記載された範囲内の任意の記載された値又はその間の値と、他に記載された範囲内の任意の記載された値又はその間の値との間の、それぞれより小さい範囲は、本発明内に包含される。これらのより小さい範囲の上限値及び下限値は、独立してその範囲に含まれるか、又は除外される場合があり、いずれかの限界値又は両限界値がより小さい範囲に含まれる、又はいずれも含まれない各範囲もまた、記載された範囲から任意の限界値が具体的に除外され得るものとして、やはり本発明の範囲に含まれるものとする。記載された範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、これらの含まれた限界値の一方又は両方を除外する範囲もやはり本発明に含まれるものとする。
【0028】
特段の記載がない限り、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に解釈するのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様又は同等の任意の方法及び材料を、本発明を実施又は試験するために使用することが可能であるが、いくつかの可能性のあり、かつ好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用されていることに関連して方法及び/又は材料を開示及び説明するために参照により本明細書に組み込まれる。本開示は、矛盾がある限り、組み込まれた刊行物の任意の開示に優先することが理解される。
【0029】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「a」、「and」、及び「the」という単数形は、別途文脈で明確に示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「細胞」への言及は、複数のこのような細胞を含み、「ペプチド」への言及は、当業者などに公知の1つ以上のペプチド及びその等価物、例えばポリペプチドへの言及を含む。
【0030】
本明細書で論じられる刊行物は、本出願の出願日前にそれらを開示するためだけに提供される。本明細書のいかなるものも、本発明が先行発明によってそのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。更に記載される刊行物の日付は実際に公開された日付とは異なる可能性があり、これは別個に確認を要する場合がある。
【0031】
「含む(comprising)」とは、組成物/方法/キットにおいて列挙された要素は必要であるが、特許請求の範囲内で組成物/方法/キットなどを形成するために他の要素が含まれ得ることを意味する。例えば、組成物は、任意の否定的条件に包含される要素を除き、当技術分野で容易に理解されるような、安定性を促進する薬剤、溶解性を促進する薬剤、アジュバントなどを含み得る。
【0032】
「から本質的になる」とは、本発明の基本的及び新規の特性(複数可)に実質的に影響を及ぼさない特定の材料又はステップに対して記載の組成物又は方法の範囲を限定することを意味する。例えば、開示された配列「から本質的になる」抗体は、由来した配列に基づく配列の境界において、開示された配列プラス又はマイナス約5アミノ酸残基のアミノ酸配列を有し、例えば、列挙された境界アミノ酸残基よりも約5残基、4残基、3残基、2残基、若しくは約1残基少ないか、又は列挙された境界アミノ酸残基よりも約1残基、2残基、3残基、4残基、若しくは5残基多い。
【0033】
「からなる」とは、請求項に明記されていない任意の要素、ステップ、又は成分を、組成物、方法、又はキットから除外することを意味する。
【0034】
分子及び細胞生化学の一般的な方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,CSH Laboratory Press 2001)、Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed.(Ausubel et al.eds.,John Wiley & Sons 1999)、Protein Methods(Bollag et al.,John Wiley & Sons 1996)、Nonviral Vectors for Gene Therapy(Wagner et al.eds.,Academic Press 1999)、Viral Vectors(Kaplift & Loewy eds.,Academic Press 1995)、Immunology Methods Manual(I.Lefkovits ed.,Academic Press 1997)、及びCell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle & Griffiths,John Wiley & Sons 1998)などの標準的な教本に見出すことができ、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。本開示で言及される遺伝子操作のための試薬、クローニングベクター、及びキットは、BioRad、Stratagene、Invitrogen、Sigma-Aldrich、及びClonTechなどの市販供給業者から入手可能である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、特定の抗原と免疫学的に反応する免疫グロブリン分子への言及を含み、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方、例えば、四量体IgGタンパク質全体を含む。この用語はまた、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)及びヘテロコンジュゲート抗体などの遺伝子操作された形態を含む。「抗体」という用語はまた、抗原結合能力を有する断片(、例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、Fv、及びrIgG、を含む抗体の抗原結合形態を含む。この用語はまた、組換え単鎖Fvフラグメント(scFv)を指す。抗体という用語はまた、二価又は二重特異性分子、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディも含む。
【0036】
抗体はまた、様々なペプチダーゼでの消化によって生成される多くの十分に特徴付けられた断片として存在する。つまり、ペプシンは、以下の抗体のヒンジ領域のジスルフィド結合を消化して、F(ab)’2を生成し、これは、Fabの二量体であり、それ自体は、ジスルフィド結合によって、VH-CH1に結合した軽鎖である。F(ab)’2は、穏やかな条件下で還元され、ヒンジ領域内のジスルフィド結合を破壊でき、それにより、F(ab)’2二量体をFab’単量体に変換する。Fab’単量体は、ヒンジ領域の一部を有する本質的にFabである。様々な抗体断片が完全な抗体の消化に関して定義されるが、当業者は、そのような断片が、化学的又は組換えDNA法の使用によるもののいずれかで、デノボ合成され得ることを理解するであろう。したがって、本明細書で使用される場合、抗体という用語はまた、抗体全体の修飾によって産生された抗体断片、又は組換えDNA法を用いてデノボ合成されたもの(例えば、単鎖Fv)、又はファージディスプレイライブラリを使用して特定されるもののいずれかを含む。
【0037】
「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する免疫グロブリン分子である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種、例えば、マウス、ラット、又はウサギのCDRからの残基(ドナー抗体)により置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体中にも、インポートされたCDR又はフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。一般的には、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むこととなる。同可変ドメイン中、全て又は実質的に全てのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、全て又は実質的に全てのフレームワーク(FR)領域は、ヒト免疫グロブリン共通配列のフレームワーク領域である。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリン、特にIgG4 Fc領域において、その少なくとも一部分を含む。
【0038】
本明細書における「CDR」は、Chothiaら、Kabatらなどによって定義され得る。Chothia C,Lesk AM.(1987)Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins.J Mol Biol.,196(4):901-17を参照されたい。その全体は参照により組み込まれる。Kabat E.A,Wu T.T.,Perry H.M.,Gottesman K.S.and Foeller C.(1991).Sequences of Proteins of Immunological Interest.5th edit.,NIH Publication no.91-3242,US Dept.of Health and Human Services,Washington,D.C.を参照されたい。その全体は参照により組み込まれる。
【0039】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合するか、又は別の方法で分子と相互作用することができる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、一般に、アミノ酸又は炭水化物又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面群化からなり、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有し得る。エピトープは、「直線状」又は「立体構造」であり得る。「直線状エピトープ」という用語は、タンパク質と相互作用分子(抗体など)との相互作用点の全てがタンパク質の一次アミノ酸配列(連続)に沿って直線的に生じるエピトープを指す。「構造エピトープ」という用語は、不連続アミノ酸が三次元立体構造で一体となるエピトープを指す。構造エピトープでは、相互作用点は、互いに分離したタンパク質上のアミノ酸残基にわたって生じる。
【0040】
「同じエピトープに結合する」とは、抗体又は他の結合剤がCD47に結合することができ、例示の抗体と同じエピトープを有することを意味する。例示の抗体及び他の抗体のCD47に対するエピトープは、標準的なエピトープマッピング技術を使用して決定することができる。当該技術分野で既知のエピトープマッピング技術としては、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66(Glenn E.Morris,Ed.,1996)Humana Press,Totowa,N.J.が挙げられる。例えば、直線状エピトープは、例えば、固体支持体上で多数のペプチドを同時に合成することによって決定することができ、ペプチドは、タンパク質分子の部分に対応し、ペプチドが依然として支持体に結合している間にペプチドを抗体と反応させる。そのような技術は、当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許第4,708,871号、Geysen et al,(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8:3998-4002、Geysen et al,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:78-182、Geysen et al,(1986)Mol.Immunol.23:709-715に記載されている。同様に、構造エピトープは、例えば、水素/重水素交換、X線結晶学、及び二次元核磁気共鳴などによってアミノ酸の空間立体構造を決定することで容易に特定される。例えば、上記のEpitope Mapping Protocolsを参照されたい。タンパク質の抗原領域はまた、例えば、Oxford Molecular Groupから入手可能なOmigaバージョン1.0ソフトウェアプログラムを使用して計算されたものなどの標準的な抗原性及び疎水性プロットを使用して特定することができる。このコンピュータプログラムは、抗原性プロファイルを決定するために、Hopp/Woods法、Hopp et al,(1981)Proc.Natl.Acad.Sci USA 78:3824-3828を使用し、疎水性プロットのために、Kyte-Doolittle技術、Kyte et al,(1982)J.Mol.Biol.157:105-132を使用する。
製剤
【0041】
本開示の製剤は、10~160mg/mL、例えば、10~100mg/mL、例えば、10~80mg/mLの抗CD47抗体と、5~20mMの濃度の緩衝液を含む薬学的に許容される賦形剤と、安定剤と、界面活性剤と、を含み、製剤は約pH4~6.5のpHを有する。
【0042】
「薬学的に許容される」、「生理学的に許容される」、及びそれらの文法的変形の用語は、組成物、担体、希釈剤、及び試薬を指すとき、互換的に使用され、組成物の投与を妨げる程度に望ましくない生理学的効果を生成することなく、物質がヒトに投与することができることを表す。
【0043】
「薬学的に許容される賦形剤」は、一般に安全で、毒性がなく、望ましい医薬組成物を調製するのに有用であり、獣医学的使用並びにヒト薬学的使用に許容可能な賦形剤を含む、賦形剤を意味する。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体、又はエアロゾル組成物の場合、気体であり得る。様々な薬学的に許容される希釈剤、キャリア、及び賦形剤、並びに医薬組成物の調製及び使用のための技術は、本開示に照らして当業者に公知である。例示的な医薬組成物、並びに薬学的に許容される希釈剤、キャリア、及び賦形剤はまた、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(Lippincott,Williams & Wilkins 2003)、Loyd V.Allen Jr(Editor),「Remington:The Science and Practice of Pharmacy,」22nd Edition,2012,Pharmaceutical Press、Brunton、Knollman、及びHilal-Dandan、「Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics」第13版(2017年)、McGraw-Hill Education / Medical;McNally and Hastedt(Editors),「Protein Formulation and Delivery,2nd Edition,2007,CRC Press、Banga、「Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation,Processing,and Delivery Systems」第3版(2015年)、CRC Press;Lars Hovgaard、Frokjaer、及びvan de Weert(編集)、「Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins」第2版(2012年)、CRC Press;Carpenter及びManning(編集)、「Rational Design of Stable Protein Formulations:Theory and Practice」(2002年)、Springer(「Pharmaceutical Biotechnology」(第13巻));Meyer(Editor),「Therapeutic Protein Drug Products:Practical Approaches to Formulation in the Laboratory,Manufacturing,and the Clinic,2012,Woodhead Publishing、及びShire,「Monoclonal Antibodies:Meeting the Challenges in Manufacturing,Formulation,Delivery and Stability of Final Drug Product,2015,Woodhead Publishingに記載されている。
【0044】
非経口投与用の本明細書に記載の抗体を組み込んだ医薬組成物は、薬学的に許容される非経口ビヒクルを伴って、単位用量注射剤形(例えば、溶液、懸濁液、エマルジョン)に配合され、無菌及び実質的に等張(水1kg当たり250~350mOsm)であり、GMP条件下で製造され得る。医薬組成物は、単位用量形態(すなわち、単回投与のための用量)で提供することができる。医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、又は補助剤を用いて製剤化することができる。製剤は選択される投与経路に依存する。注射の場合、抗体は、水溶液、例えば、生理学的に適合性の緩衝液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、アミノ酸緩衝液(例えば、ヒスチジン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン、グルタミン、リジン、アルギニンを含むがこれらに限定されない、荷電アミノ酸)、トリス緩衝液、ハンクス液、リンガー液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミン、又は酢酸緩衝液(注射部位での不快感を低減するため)、並びに本明細書に記載の追加の緩衝液などに配合され得る。溶液は、懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤などの配合剤を含有することができる。あるいは、抗体は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、発熱性物質除去蒸留水で構成するための凍結乾燥形態であってもよい。医薬組成物の製剤化及び送達方法は、概して、治療される部位及び疾患に従って適合される。例示的な製剤としては、非経口投与に適したもの、例えば、静脈内投与、又は皮下投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
「薬学的に許容される塩及びエステル」とは、薬学的に許容され、所望の薬理学的特性を有する塩及びエステルを意味する。そのような塩には、化合物中に存在する酸性プロトンが無機塩基又は有機塩基と反応することができる塩が形成され得る塩が含まれる。好適な無機塩としては、アルカリ金属、例えば、ナトリウム及びカリウム、マグネシウム、カルシウム、及びアルミニウムと形成されるものが挙げられる。好適な有機塩としては、アミン塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、Nメチルグルカミンなどの有機塩基と形成されるものが挙げられる。そのような塩には、無機酸(例えば、塩酸及び臭化水素酸)及び有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、並びに、メタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸などのアルカン及びアレーンスルホン酸)と形成される酸付加塩も含まれる。薬学的に許容されるエステルには、化合物中に存在するカルボキシ、スルホニルオキシ、及びホスホノキシ基、例えば、C1~6アルキルエステルから形成されるエステルが含まれる。2つの酸性基が存在する場合、薬学的に許容される塩又はエステルは、一酸-一塩若しくはエステル、又は、二塩若しくはエステルであり得、同様に、3つ以上の酸性基が存在する場合、そのような基の一部又は全部が、塩化又はエステル化され得る。本発明で名付けられた化合物は、非塩化又は非エステル化形態で、又は、塩化及び/若しくはエステル化形態で存在することができ、かかる化合物の命名は、元の(非塩化及び非エステル化)化合物並びに薬学的に許容される塩及びエステルの両方を含むことが意図される。また、本発明で命名された特定の化合物は、2つ以上の立体異性体形態で存在してもよく、そのような化合物の命名は、全ての単一の立体異性体及びそのような立体異性体の全ての混合物(ラセミ体又はそうでないもの)を含むことが意図されている。本明細書で使用される場合、「緩衝液」は、その酸塩基共役成分の作用によってpHの変化に抵抗する緩衝溶液を指す。医薬製剤、特に非経口投与用の製剤に有用な緩衝液を本製剤に使用することができ、これには、限定するものではないが、酢酸緩衝液、例えば、酢酸/酢酸ナトリウム;ヒスチジン;リン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩;アスパラギン酸塩;コハク酸塩;リンゴ酸塩;フマル酸塩;グルコン酸塩;グルタミン酸塩が挙げられる。いくつかの実施形態では、緩衝液は、酢酸緩衝液である。いくつかの実施形態では、緩衝液は、ヒスチジン緩衝液である。
【0046】
いくつかの実施形態では、製剤中の緩衝液は、5~50mMの濃度である。いくつかの実施形態では、製剤中の緩衝液は、7.5~25mMの濃度である。いくつかの実施形態では、製剤中の緩衝液は、10~20mMの濃度である。いくつかの実施形態では、製剤中の緩衝液は、酢酸緩衝液又はヒスチジン緩衝液である。
【0047】
水性製剤では、緩衝液の濃度は、約5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mMであり得る。特定の実施形態では、濃度は、8~12mM、例えば、10mMである。そのような水性製剤は、必要又は所望に応じて凍結乾燥することができる。
【0048】
緩衝製剤のpHは、pH4~pH6.5であり得る。いくつかの実施形態では、pHは、pH4.5~6である。いくつかの実施形態では、pHは、pH4.7~5.3である。いくつかの実施形態では、pHは、pH4.75~pH5.25である。いくつかの実施形態では、pHは、pH4.9~pH5.1である。
【0049】
いくつかの実施形態では、製剤のpHは、約pH4.5、pH4.6、pH4.7、pH4.8、pH4.9、pH5、pH5.1、pH5.2、pH5.3、pH5.4、pH5.5である。特定の実施形態では、pHは、4.9~5.1、例えば、pH5である。
【0050】
安定剤、凍結保護物質、及び/又は凍結保護剤は、保存、移動、及び使用の条件にわたって抗体の安定性を改善するために含まれる。好適な安定剤としては、炭水化物、アミノ酸、共溶媒、酸化防止剤、キレート剤、塩、張性調整剤、イオン強度調整剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
製剤は、任意の所望の遊離アミノ酸を含むことができ、これは、L型、D型、又はこれらの型の任意の所望の混合物であり得る。一態様では、製剤に含まれ得る遊離アミノ酸としては、例えば、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン、グルタミン酸、セリン、リジン、トリプトファン、バリン、システイン、メチオニン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかのアミノ酸は、例えば、水素結合、塩架橋、酸化防止特性、若しくは疎水性相互作用を介して、又はタンパク質表面から排除することによって、製造、乾燥、凍結乾燥、及び/又は保存中の分解に対してタンパク質を安定化させることができる。アミノ酸は、張性調整剤として作用するか、又は製剤の粘度を低下させるように作用することができる。別の態様では、ヒスチジン、グリシン、及びアルギニンなどの遊離アミノ酸は、凍結保護剤として作用することができ、製剤の成分として凍結乾燥時に結晶化しない。グルタミン酸及びヒスチジンなどの遊離アミノ酸は、単独で又は組み合わせて、5~7.5のpH範囲で水溶液中の緩衝剤として作用することができる。
【0052】
本明細書における「糖類」は、一般式(CH2O)を有する化合物及びその誘導体であり、単糖類、二糖類、三糖類、多糖類、糖アルコール、還元糖、非還元糖などを含む。本明細書における糖類の例としては、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、エリスリトール、グリセロール、アラビトシリトソルビトール(arabitosylitosorbitol)、マンニトール、メリビオース、メレチトース、ラフモース(raffmose)、マンノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクルロース(lacrulose)、マルツロース、グルシトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルツロース、ソルビトールなどが挙げられる。糖類は、凍結保護剤であり得る。一態様では、結晶化しない糖類は、スクロース又はトレハロースなどの凍結保護剤である。一態様では、本明細書における糖類は、スクロース、トレハロース又はソルビトールなどの非還元二糖類である。
【0053】
「キレート剤」という用語は、2つ以上の結合を介して原子に結合する薬剤を指す。一態様では、本明細書におけるキレート剤の例としては、クエン酸塩、EDTA、EGTA、ジメルカプロール、ジエチレントリアミン五酢酸、及びN,N-ビス(カルボキシメチル)グリシンが挙げられる。別の態様では、キレート剤は、クエン酸塩又はEDTAである。
【0054】
酸化防止剤という用語は、他の分子の酸化を阻害する薬剤を指す。本明細書における酸化防止剤の例としては、クエン酸塩、リポ酸、尿酸、グルタチオン、トコフェロール、カロチン、リコピン、システイン、ホスホネート化合物、例えば、エチドロン酸、デスフェロキサミン、及びリンゴ酸塩が挙げられる。
【0055】
本開示の製剤の対象の特定の安定剤としては、例えば、約2%~約12%の濃度、例えば、約2.5%~約10%の濃度の1つ以上のソルビトール;例えば、約2%~約12%の濃度、例えば、約2.5%~約10%の濃度のスクロース;例えば、約2%~約12%の濃度、例えば、約2.5%~約10%の濃度のトレハロース;約100~200mMの濃度のNaCl;約15mM~75mMの濃度のアルギニン;又はそれらの組み合わせ、例えば、アルギニン及びソルビトール、アルギニン及びスクロース、アルギニン及びトレハロース、スクロース及びソルビトールなどが挙げられ得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、安定剤は、約2.5%w/v、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%の濃度のソルビトールである。特定の実施形態では、安定剤は、水性緩衝液中の約5%重量/体積の濃度のソルビトールである。
【0057】
「界面活性剤」は、表面活性剤を指す。界面活性剤は、主として固体/液体界面、液体/空気界面、及びタンパク質/タンパク質界面におけるタンパク質の相互作用を低減するために、製剤中に含まれる。それにより、タンパク質の表面への吸着を低減することによって粒子の形成を低減し、加えて撹拌、解放/解凍(free/thaw)、及び剪断からのストレスによる凝集を低減する。更に、タンパク質の溶解性を高めることができる。一般に、界面活性剤のカテゴリは、アニオン性、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LABS);ラウリル硫酸ナトリウム;ラウリルエーテル硫酸ナトリウム;石油スルホン酸塩;リノスルホン酸塩(linosulphonates);ナフタレンスルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩;直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩;アルコール硫酸塩;カチオン性、例えば、ステアラルコニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム;四級アンモニウム化合物;アミン化合物、非イオン性、例えば、ドデシルジメチルアミンオキシド;ココジエタノール-アミドアルコールエトキシレート;一級直鎖アルコールポリエトキシレート;アルキルフェノールエトキシレート;アルコールエトキシレート;EO/POポリオールブロックポリマー;ポリエチレングリコールエステル;脂肪酸アルカノールアミド;両性:ココアンホカルボキシグリシネート;コカミドプロピルベタイン;ベタイン;イミダゾリンである。
【0058】
上記のものに加えて、好適な非イオン性界面活性剤としては、アルカノールアミド、アミンオキシド、ブロックポリマー、エトキシル化一級及び二級アルコール、エトキシル化アルキルフェノール、エトキシル化脂肪酸エステル、ソルビタン誘導体、グリセロールエステル、プロポキシル化及びエトキシル化脂肪酸、アルコール、及びアルキルフェノール、アルキルグルコシドグリコールエステル、高分子多糖類、エトキシル化アルキルフェノールの硫酸塩及びスルホン酸塩、並びに高分子界面活性剤が挙げられる。好適なアニオン性界面活性剤としては、エトキシル化アミン及び/又はアミド、スルホコハク酸塩及び誘導体、エトキシル化アルコールの硫酸塩、アルコールの硫酸塩、スルホン酸塩及びスルホン酸誘導体、リン酸エステル、並びに高分子界面活性剤が挙げられる。
【0059】
いくつかの実施形態では、製剤の界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、又はプルロニック(登録商標)F68である。特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20である。
【0060】
界面活性剤の理想的な濃度は、少なくともタンパク質の疎水性表面を完全に飽和させる濃度になるように選択されるが、不完全に飽和させる濃度もまた利益を提供し得る。例えば、界面張力測定を使用して、界面活性剤と抗体との相互作用を評価し、界面活性剤がタンパク質の表面に完全に吸着される濃度を決定することができる。界面活性剤の量は、タンパク質濃度の増加と共に増加するが、これは製剤中のタンパク質の表面積が増加するためである。したがって、界面活性剤の濃度は、タンパク質濃度の増加と共に増加し得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、界面活性剤の濃度は、20~25mg/mLの抗体を有する液体製剤中で約0.002%~約0.02%であり、約0.0075%~約0.015%、約0.008%~約0.012%であってもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤の濃度は、約0.004%、0.006%、0.01%、0.011%、0.012%、0.013%、0.014%、0.015%である。
【0062】
いくつかの実施形態では、界面活性剤の濃度は、界面活性剤:タンパク質のモル範囲で約0.2~約2であり、約0.2以上、約0.3以上、約0.4以上、約0.5以上、約0.6以上、約2以下、約1.5以下、約1.2以下であってもよい。このような実施形態における界面活性剤は、例えば、ポリソルベートであり得る。
【0063】
「安定な」製剤は、保存後に患者に投与することができるものである。態様では、製剤は、保存時にその物理的及び化学的特性、並びにその生物学的活性を本質的に保持する。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技術は、当該技術分野で利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)に概説されている。
【0064】
安定性は、種々の異なる方法で定性的及び/又は定量的に評価することができ、これには、可溶性凝集体形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィの使用、濁度の測定による)及び目視検査による肉眼で見える粒子形成);イオン交換クロマトグラフィ(IEC)又は画像化キャピラリ等電点電気泳動(icIEF)、サイズ排除クロマトグラフィ(SE-HPLC)、CE-SDS又はSDS-PAGE分析を使用して電荷不均一性を評価し、抗体の減少及び無傷を比較することによる、光遮蔽法、マイクロフローイメージング、又は顕微鏡法による肉眼で見えない粒子形成;抗体の生物学的活性又は抗原結合機能の評価などが挙げられる。不安定性は、凝集、脱アミド化(例えば、Asn脱アミド化)、酸化(例えば、Met酸化)、異性化(例えば、Asp異性化)、クリップ/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域断片化)、コハク酸イミド形成、不対システイン(複数可)、N末端伸長、C末端プロセシング、グリコシル化の差異などのうちのいずれか1つ以上を含み得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、モノクローナル抗体の「生物学的活性」は、抗体が抗原に結合する能力を指す。これは、抗体が抗原に結合し、インビトロ又はインビボで測定することができる測定可能な生物学的反応をもたらすことを更に含み得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、安定な医薬製剤は、約2℃~約8℃の温度で、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16週間以上、及び最大3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月以上安定である。特定の実施形態では、安定な医薬製剤は、約2℃~約8℃の温度で、少なくとも約1、2、4、6、8、12ヶ月以上安定である。特定の実施形態では、安定な医薬製剤は、約2℃~約8℃の温度で、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月以上安定である。
【0067】
更なる実施形態では、製剤中の抗CD47抗体は、保存後にその生物学的活性の少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%を保持する。いくつかの実施形態では、生物学的活性は、CD47への抗体の結合によって測定される。いくつかの実施形態では、生物学的活性は、FACS CD47結合アッセイにおけるCD47への抗体の結合によって測定される。いくつかの実施形態では、生物学的活性は、当該抗CD47抗体のADCP活性によって測定される。
【0068】
別の態様では、本明細書に開示される安定な医薬製剤を保持する容器を含む製品が本明細書で提供される。ある実施形態では、当該容器は、ガラスバイアル、例えば、タイプ1ガラスバイアル、ポリマーバイアル(例えば、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG))、ポリマーバッグ若しくはパウチ(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、酢酸エチルビニル(EVA))、又は金属合金容器である。
【0069】
「投与単位」は、治療される特定の個体のための単位投与量として適した物理的に異なる単位を指す。各単位は、必要な医薬的担体を伴って所望の治療効果を生じるように計算された活性化合物の所定量を含み得る。投与単位形態に対する規格は、(a)活性化合物の固有の特性及び達成されるべき特定の治療効果、並びに、(b)そのような活性化合物を配合する当分野で固有の制限によって決定され得る。
【0070】
本製剤の投与単位は、約10~約160mg/mLの濃度で、約10~約100mg/mLの濃度で、約10~約80mg/mLの濃度で、約15~約50mg/mLの濃度で、約10~約25mg/mLの濃度で、約15~約20mg/mLの濃度で、1mL、2mL、5mL、10mL、15mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mLであってもよく、約20mg/mLの濃度であってもよい。いくつかの実施形態では、投与単位は10mLである。いくつかの実施形態では、投与単位は20mLである。いくつかの実施形態では、投与単位は30mLである。いくつかの実施形態では、投与単位は40mLである。いくつかの実施形態では、投与単位は50mLである。いくつかの実施形態では、投与単位は60mLである。
【0071】
「治療有効用量」又は「治療用量」は、所望の臨床結果をもたらす(すなわち、治療効果を達成する)のに十分な量であり、製剤の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15以上の投与単位を利用し得る。本発明の目的のために、抗CD47剤の治療有効用量は、標的細胞(例えば、標的細胞)の貪食を増加させることによって、疾患状態の進行を緩和、改善、安定化、逆行、予防、減速、又は遅延させて、例えば、血液、骨髄などの腫瘍細胞の数を減少させるのに十分な量である。したがって、治療有効用量の抗CD47剤は、標的細胞の貪食を増加させる有効用量で、標的細胞上のCD47が食細胞上のSIRPαに結合するのを低減する。
【0072】
いくつかの実施形態では、製剤中の抗CD47抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、製剤中の抗CD47抗体は、完全長抗体である。いくつかの実施形態では、製剤中の抗CD47抗体は、IgG抗体である。いくつかの実施形態では、製剤中の抗CD47抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG4定常鎖を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、配列(配列番号1)からなるHCDR1領域、配列(配列番号2)からなるHCDR2領域、配列(配列番号3)からなるHCDR3領域、配列(配列番号4)からなるLCDR1領域、配列(配列番号5)からなるLCDR2領域、及び配列(配列番号6)からなるLCDR3領域を含む。いくつかの実施形態では、そのような抗体は、ヒトIgG4定常領域配列を含む。配列番号7、8、及び9は、例示的な重鎖可変領域配列を提供し、配列番号10、11、12は、例示的な軽鎖可変領域配列を提供する。
【0074】
いくつかの実施形態では、抗体は、マグロリマブであり、IgG4重鎖定常領域を有する、配列番号8の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む。任意選択的に、IgG4定常領域は、ヒンジ領域を安定化するためのアミノ酸改変、例えば、S228Pアミノ酸置換を有する。
使用方法
【0075】
組成物は、治療的処置のために投与され得る。組成物は、標的細胞の貪食を実質的に高めるのに十分な量で患者に投与される。これを達成するのに十分な量は、全生存率の改善を提供し得る「治療有効用量」として定義される。組成物の単回又は複数回投与は、患者に必要かつ許容される投与量及び頻度に応じて投与され得る。治療に必要な特定の用量は、哺乳動物の病状及び病歴、並びに年齢、体重、性別、投与経路、効率などの他の要因に依存し得る。
【0076】
本明細書に記載の製剤は、例えば、CD47活性を阻害する製剤の有効用量に標的細胞を接触させることを含むレジメンにおいて、癌の治療又は縮小、感染の低減などに使用を見出す。癌の治療のための本発明の薬剤の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒト若しくは動物であるか、投与される他の薬剤、及び治療が予防的若しくは治療的であるかどうかを含む、多くの異なる因子に応じて変化する。通常、患者はヒトであるが、非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマなどのコンパニオンアニマル、ウサギ、マウス、ラットなどの実験動物も治療され得る。治療用量は、安全性及び有効性を最適化するために設定され得る。
【0077】
「患者」は、ヒト及び他の動物の両方、特にペット及び実験動物を含む哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギなどを含む。したがって、方法は、ヒトの治療及び獣医学的用途の両方に適用可能である。一実施形態では、患者は、哺乳動物、好ましくは霊長類である。他の実施形態では、患者はヒトである。
【0078】
「癌」、「新生物」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書では互換的に使用されて、自律的で未制御な成長を呈する細胞を指し、それらは細胞増殖に対する制御を顕著に損失していることを特徴とする異常な成長表現型を示す。本出願において検出、分析、又は治療の対象とする細胞として、前癌性(例えば、良性)、悪性、前転移性、転移性、及び非転移性細胞が挙げられる。実質的に全ての組織の癌は既知である。「癌量」という語句は、対象における癌細胞又は癌体積の量を指す。したがって、癌量を低減させるとは、対象における癌細胞又は癌体積の数値を低下させることを指す。本明細書で使用される「癌細胞」という用語は、癌細胞であるか、又は癌細胞、例えば、癌細胞のクローンに由来する任意の細胞を指す。
【0079】
癌の「病理」には、患者の健康を損なう全ての現象が含まれる。これには、異常な又は制御不能な細胞の成長、転移、隣接する細胞の正常な機能との干渉、異常なレベルでのサイトカイン又は他の分泌産物の放出、炎症又は免疫学的応答の抑制又は悪化、腫瘍、前悪性腫瘍、悪性腫瘍、周囲又は遠隔組織又は器官、例えばリンパ節の浸潤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
本明細書で使用される場合、「癌再発」及び「腫瘍再発」という用語、及びその文法的変化型は、癌の診断後の腫瘍性細胞又は癌性細胞の更なる成長を指す。特に、癌性組織において更なる癌性細胞成長が生じる場合、再発が起こり得る。「腫瘍の広がり」は同様に、腫瘍の細胞が局所的又は遠隔の組織及び器官に播種するときに生じる。したがって、腫瘍の広がりは腫瘍転移を包含する。「腫瘍浸潤」は、腫瘍成長が局所的に広がって、正常な器官機能の圧迫、破壊、又は予防によって関与する組織の機能を損なう場合に発生する。
【0081】
本明細書で使用される場合、「転移」という用語は、元の癌性腫瘍の器官に直接接続されていない器官又は身体部分における癌性腫瘍の成長を指す。転移は、元の癌性腫瘍の器官に直接接続されていない器官又は身体部分における検出不可能な数の癌性細胞の存在である、微小転移を含むと理解されるであろう。転移はまた、元の腫瘍部位からの癌細胞の出発、並びに身体の他の部分への癌細胞の移動及び/又は浸潤などのプロセスのいくつかの工程として定義することができる。
【0082】
「診断」という用語は、分子又は病状、疾患若しくは状態の特定、例えば、乳癌、前立腺癌、又は他のタイプの癌の分子サブタイプの特定を指すために本明細書で使用される。
【0083】
「予後」という用語は、卵巣癌などの腫瘍性疾患の再発、転移拡散、及び薬物耐性などの癌起因性死又は進行の可能性の予測を指すために本明細書で使用される。「予測」という用語は、観察、経験、又は科学的推論に基づく、予想又は推定の行為を指すために本明細書で使用される。一例では、医師は、原発腫瘍の外科的除去及び/又は化学療法後、癌の再発を伴わずに特定の期間にわたって患者が生存する可能性を予測することができる。
【0084】
一実施形態では、癌は、血液癌又は骨髄異形成症候群、例えば、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫などである。実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯、びまん性大細胞型B細胞、バーキット、及びマントル細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、MDSが治療される。いくつかの実施形態では、AMLが治療される。他の実施形態では、癌は、癌腫、肉腫、骨髄腫、神経膠腫などである。
【0085】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」などの用語は、効果を得る目的で、薬剤を投与すること、又は医療行為を実施することを指す。効果は、疾患若しくはその症状を完全若しくは部分的に予防するという観点から予防的であってもよく、並びに/又は疾患及び/若しくは疾患の症状の部分的若しくは完全な治癒をもたらすという観点から治療的であってもよい。本明細書で使用される場合、「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける腫瘍の治療を含み得、(a)疾患にかかりやすいがまだそれを有すると診断されていない対象に、疾患又は疾患の症状が生じるのを予防すること(例えば、原発性疾患に関係するか又はそれによって生じ得る疾患を含む)、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その進行を阻止すること、及び(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の軽減をもたらすことを含む。
【0086】
治療は、癌の治療又は改善又は予防における成功の任意の兆候を指し得、任意の客観的又は主観的なパラメータ、例えば、軽減;寛解;症状の減少、又は患者に対して疾患状態をより許容可能にすること;悪化若しくは衰弱速度の遅延;又は悪化の最終地点でより衰弱を少なくすることを含む。症状の治療又は寛解は、客観的又は主観的なパラメータに基づき得、医師による検査の結果を含む。したがって、「治療すること」という用語は、癌又は他の疾患に関連する症状の発生又は状態を軽減するか、又は遅延させるか、又は阻止するために、本発明の化合物又は薬剤を投与することを含む。「治療効果」という用語は、対象における疾患、疾患の症状、又は疾患の副作用の低減、排除、又は予防を指す。
【0087】
「併用して」、「併用療法」、及び「併用製品」とは、特定の実施形態では、第1の治療薬と本明細書で使用される化合物とを患者に同時投与することを指す。併用して投与される場合、各成分は、同時に、又は異なる時点において任意の順序で連続的に投与することができる。したがって、各成分は、所望の治療効果を提供するために、別々にかつ十分に接近して投与することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗CD47抗体製剤の治療用量は、受容者の体重1kg当たり約1~100mg/kg、例えば、約10~90mg/kg、例えば、約10~60mg/kg、より一般的には10~50mg/kgの範囲であり得る。例えば、投与量は、約20、30、40、45、50、60mg/kg体重、又は20~60、20~50、若しくは30~60mg/kgの範囲内であり得る。例示的な治療レジメンは、3日毎に1回、毎週、2週間毎、3週間毎、若しくは1ヶ月に1回、6週間毎に1回、又は3~6ヶ月毎に1回の投与を伴う。本発明の治療物は、通常、複数回投与される。単回投与間の間隔は、日、週、月、又は年であり得る。間隔はまた、患者における治療物の血中レベルを測定することによって示されるように不規則であり得る。投与量及び頻度は、患者におけるポリペプチドの半減期に応じて変化する。
【0089】
毒性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順によって、例えば、LD50(集団の50%に対する致死用量)又はLD100(集団の100%に対する致死用量)を決定することによって、決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指数である。これらの細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトでの使用において毒性が見られない投与量範囲を配合する際に使用することができる。本明細書に記載のタンパク質の投与量は、毒性がほとんど又は全くない有効用量を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。実際の配合物、投与経路、及び投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択することができる。
【0090】
本発明の製剤及び使用説明書を含むキットも本発明の範囲内である。キットは、液体抽出用の助剤、少なくとも1つの追加の試薬、例えば、化学療法薬、ESAなどを更に含むことができる。キットは、典型的には、キットの内容物の意図される使用を示すラベルを含む。ラベルという用語には、キットに添付される、又はキットと共に供給される、又は別の方法でキットに付随する任意の書き込み、又は記録された材料が含まれる。
【実施例】
【0091】
以下の実施例は、本発明の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載されており、本発明者らが本発明とみなすものの範囲を限定する意図はなく、また以下の試験が実施される全て又は唯一の試験であることを示す意図はない。使用される数(例えば、量、温度など)に関する正確性を確保する努力が払われているが、いくらかの実験誤差及び偏差を考慮する必要がある。特に示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧又は大気圧近くである。
実施例1
ヒト化5F9-G4抗体(マグロリマブ)の安定性について試験した製剤。
【0092】
最初に、pH、張性調整剤、及び界面活性剤などの様々な配合条件におけるHu5F9-g4の安定性を試験した。この試験は、製品に有効な安定性提示アッセイである、弱カチオン交換HPLC(WCX-HPLC)、サイズ排除HPLC(SE-HPLC)、及びドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)分析を使用して実施した。
【0093】
製品は、撹拌ストレスが導入されると濁りを生じる。したがって、ポリソルベート20を界面活性剤としてHu5F5-g4製剤に添加して、ストレス中に製品を安定化した。追加の急性ストレス試験により、製品は、連続した凍結/解凍サイクル、撹拌、及び広域スペクトル紫外線(UV光)曝露の影響を受けにくいことが明らかになった。
【0094】
異なる製剤中のHu5F9-g4の安定性は、凍結(-70℃)、冷蔵(5℃)、及び加速温度(例えば、25℃及び37℃)での静的保存条件下で最大8週間試験した。製剤の大部分は、温度保存中に透明のままであり、粒子を含まなかった。しかしながら、pH4.0でイオン性張性調整剤(塩化ナトリウム)が存在すると、Hu5F9-g4は濁りを生じ、37℃でわずか1週間後に有意な化学的及び物理的分解を示した。WCX-HPLC分析は、pH7±1でイオン性張性調整剤を含まずに配合した製品について、特にpH6.0及び6.5において、高温保存中の化学的不安定性を示した。Hu5F9-g4の物理的安定性は、SE-HPLC及びSDS-PAGEによって評価した。これらの試験は、リン酸緩衝液中で非イオン性張性調整剤を配合した製品について、特により高いpHにおいて、加速温度保存中に高濃度のオリゴマー又はHMW種を検出した。対照的に、SE-HPLC分析は、イオン性張性調整剤の存在下で、-70℃の保存中に、より多くのHMW種を示した。
【0095】
この試験から最良の製剤候補として、10mM酢酸緩衝液、非イオン性張性調整剤(5%ソルビトール)、及びポリソルベート20(0.01%)を含むpH5.0の製剤を選択した。この製剤は、ストレス中に化学的及び物理的安定性の両方を示した。
【0096】
選択したA5S製剤の安定性の結果を以下のように要約する。この試験における試料の大部分は、凍結/解凍、撹拌、UV光曝露、及び温度ストレス後に透明のままであり、粒子を含まなかった。したがって、製剤候補A5Sについて、肉眼で見える物理的分解は観察されなかった。選択した製剤候補の濃度は、-70℃、5℃、25℃、及び37℃での保存で8週間にわたって標的にとどまった。
【0097】
8週間の温度保存後、一部のHu5F9-g4製剤は、安定性試験中に標的よりもわずかに高いpH値を示した。それにもかかわらず、選択候補の温度保存中のpH結果は、T=0から±0.2pH単位を超えて逸脱しなかった。製剤候補の浸透圧値は、ほぼ等張であった。ソルビトールを配合した試料は、NaClを含むものよりもわずかに高張である。選択した製剤候補(A5S)の浸透圧は、314mOsmであった。
【0098】
試験した13の製剤の各々は、UV光ストレス後に同等のWCX-HPLCデータを生成した。このストレス条件中に、選択した製剤候補に有意な分解は観察されなかった。
【0099】
他の製剤と比較して、A5Sの純度パーセントは、-70℃、5℃、25℃、及び37℃での8週間の保存にわたって比較的高いままであった。
【0100】
SE-HPLC分析は、撹拌、凍結/解凍、及びUV光曝露後の各試料について、同様の純度結果を示した。したがって、選択した製剤候補は、これらの急性ストレス条件後に、考慮すべきオリゴマー化又は切断がないことが示された。
【0101】
SDS-PAGE試験は、-70℃、5℃、25℃、及び37℃での保存中に、選択した候補に有意な分解がないことを示した。25℃及び37℃の両方で8週間保存した試料のSDS-PAGE結果は、NaClを含まずにより高いpHで配合した試料にのみHMW種が検出されたことを示す。
【表1】
実施例2
最終製剤の評価
【0102】
製剤のスクリーニング。以下の様々なパラメータを有する製剤を試験した。
a.pH:4~8
b.緩衝液:10mM酢酸ナトリウム、10mMヒスチジン、及び10mMリン酸ナトリウム
c.安定剤:5%ソルビトール(非イオン性)及び150mM NaCl(イオン性)
評価した製剤を表2に示す。
【表2】
*選択した界面活性剤は、撹拌試験に基づいた
製剤を以下のストレス条件によって評価した。
a.熱安定性
b.凍結/解凍(-70℃~室温の5サイクル)
c.4時間撹拌
d.24時間周囲光曝露
【0103】
界面活性剤の評価。pH6.5のPBS中の11mg/mLのマグロリマブ(hu5F9-g4)に、0.01%w/vポリソルベート20、0.01%w/vポリソルベート80、及び0.10%F68プルロニック(登録商標)を添加した。これらの溶液を室温で4時間撹拌し、外観及び600nmでの吸光度によって濁度を評価し(表2)、SE-HPLCによって凝集体形成を評価した(表3)。濁度の測定値は、PS20及びF68がPS80よりも低い濁度をもたらしたことを示す。しかしながら、全体としては、外観の結果は、試験した3つの界面活性剤の全てがマグロリマブを粒子形成から保護したことを示した。試験した3つの界面活性剤の全てで、SE-HPLCの品質プロファイルに変化はなかった。
【表3】
【表4】
【0104】
表面張力測定を実施して、20mg/mLマグロリマブ、10mM酢酸塩、5%w/vソルビトールのpH5.0の製剤に対するポリソルベート20の相互作用を評価した。表面張力プロファイルを
図1に示す。ポリソルベート20は、約0.01mg/mL(0.001%)でタンパク質との相互作用を開始する。溶液中のタンパク質は、約0.1~0.2mg/mL(0.01%~0.02%)においてポリソルベート20で完全に飽和される。
【0105】
10mM酢酸ナトリウム、150mM NaClを含むpH4.0の製剤1は、急激な分解をもたらした。この製剤は、いずれのストレス条件試験においても、更なる評価をしなかった。
【0106】
凍結/解凍、撹拌、及び周囲光曝露試験の結果を以下の表に要約する。
【表5】
【0107】
熱安定性。製剤を-70℃、5℃、25℃、及び37℃での8週間の安定性に配置した。製剤をタンパク質濃度、pH、外観、SE-HPLC、WCX-HPLC、並びに還元及び非還元SDS-PAGEによって評価した。
【0108】
8週間後、製剤1を除く全ての製剤は、試験した全ての温度で透明であり、粒子を含まなかった。製剤1は、37℃で1週間後に濁りを帯び、試験を中止した。
【0109】
タンパク質濃度は、表6に示すように8週間後も依然として変化がなかった。
【表6】
*この試料は、1週間後の時点でもはや分析を行わなかった。
【0110】
試験の終了時にpHを測定した。概して、pHは初期時点よりも高いが、測定の誤差範囲内であった。
【表7】
*この試料は、1週間後の時点でもはや分析を行わなかった。
【0111】
様々な保存温度で最大8週間保存した全ての製剤のWCX-HPLCのメインピーク及びプレピークのプロファイルを測定し、
図2及び
図3に示した。-70℃及び5℃の保存では、8週間まで変化はない。25℃及び37℃では、メインピークの減少量が最小の製剤は、pH5及びpH6の製剤である。pH4では、ソルビトール製剤はNaCl製剤よりも安定性が高いが、pH6.5では、ソルビトール製剤はNaCl製剤よりも安定性が低い。メインピークが減少するにつれて、プレピーク/酸性種が増加しており、pH及び安定剤でも同様の安定性の傾向がある。
【0112】
様々な保存温度で最大8週間保存した全ての製剤のSE-HPLCのモノマー及び凝集体/プレピークのプロファイルを、それぞれ
図4及び
図5に示す。5℃及び25℃の保存では、8週間まで有意な変化はない。-70℃及び37℃では、モノマーが減少し、同時に凝集体が増加している。-70℃では、NaCl又はPBSを含むpH6~8の製剤は、凝集体形成がより高くなった。37℃では、リン酸緩衝液及びソルビトールを含むpH6~8の製剤は、凝集体形成の割合がより高かった。
【0113】
安定な製剤のパラメータ空間の結果を表8に要約する。
【表8】
【0114】
選択した製剤の長期安定性。開発研究に基づいて、長期試験用に選択した製剤は、pH5.0の20mg/mLマグロリマブ、10mM酢酸塩、5%w/vソルビトール、0.01%ポリソルベート20であった。この製剤は、フルロポリマー(fluropolymer)で被覆したブチル栓を備えるタイプ1ガラスバイアルに保存され、以下の表に詳述するように、SE-HPLC、icIEF、還元及び非還元CE-SDS、並びに結合によって測定するとき、5℃で少なくとも3年間安定である。
【表9】
FVP=肉眼で見える粒子を含まない
実施例3
マグロリマブの粘度測定
【0115】
マグロリマブの粘度を濃度の関数として測定した。溶液中に残っているタンパク質を120mg/mL超に濃縮し、目視で透明であった。タンパク質の粘度は低く、160mg/mLで約20cPに達する。結果を
図6に示す。
実施例4
マグロリマブ製剤の濁度評価
【0116】
異なる濃度のポリソルベート20を有するマグロリマブを用いて、振盪試験を行った。製剤中にポリソルベート20がない場合、溶液は、濁度の増加及びSEC-HPLCにより測定された凝集体の形成、並びに肉眼で見えない粒子を示した。ポリソルベート20の濃度が0.005%以上の場合、製剤の品質特性に変化はなかった。この結果は、表面張力測定データとよく相関していた。
【表10】
実施例5
マグロリマブを用いた賦形剤のスクリーニング
【0117】
様々な安定化賦形剤をマグロリマブと共に試験し、融解温度を自家蛍光によって評価した。
図7に示す融解温度及び安定性データは、試験した全ての賦形剤がマグロリマブを安定化させることを示している。融解温度は、マグロリマブが糖類賦形剤の存在下で最も安定であることを示した。
【配列表】