(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】半導体レーザダイオードの製造方法、半導体レーザダイオード
(51)【国際特許分類】
H01S 5/10 20210101AFI20240925BHJP
【FI】
H01S5/10
(21)【出願番号】P 2021013292
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2020068544
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恒輔
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 素顕
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-051445(JP,A)
【文献】特開2004-186708(JP,A)
【文献】特開2003-174228(JP,A)
【文献】特開2000-106470(JP,A)
【文献】特開平09-283861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地層と、前記下地層の上面の一部に形成され、第一半導体層、導波路層、および第二半導体層がこの順に積層されている共振領域と、前記共振領域の近傍の第一半導体層上に形成された第一電極と、前記共振領域の上に形成された第二電極と、を有し、前記共振領域の第一半導体層と前記第一電極が形成されている第一半導体層とが連続している半導体レーザダイオードの製造方法であって、
複数の前記半導体レーザダイオードを基板上に形成した後に前記基板を前記半導体レーザダイオード毎に分割する工程を含み、
前記基板上に、第一半導体層、導波路層、および第二半導体層をこの順に含む積層体を形成する工程と、
前記積層体の第二半導体層の上に前記第二電極になる層を、前記共振領域の共振器端面と前記分割する工程で分割する位置との間まで形成する電極層形成工程と、
前記電極層形成工程の後に、前記第二電極になる層の前記共振器端面より外側となる位置に形成された部分の除去と前記共振器端面の形成とを同時にまたは連続的に行う第一のエッチング工程と、
を有する半導体レーザダイオードの製造方法。
【請求項2】
前記積層体をエッチングして、前記第一半導体層を、膜厚方向で、前記共振領域となる部分を含む部分と、それ以外の部分と、に分けるメサエッチング工程を更に有し、
このエッチングで生じた前記それ以外の部分の上面に、前記第一電極を形成する請求項1記載の半導体レーザダイオードの製造方法。
【請求項3】
前記第一のエッチング工程は、マスクを用いたドライエッチング法により行い、
前記第一のエッチング工程の後に、前記マスクを外さずにアルカリ性水溶液でウエットエッチングを行う請求項1または2記載の半導体レーザダイオードの製造方法。
【請求項4】
下地層と、
前記下地層の上面の一部である下地領域の一部に形成され、第一半導体層、導波路層、および第二半導体層がこの順に積層されている共振領域と、
前記共振領域の近傍の第一半導体層上に形成された第一電極と、
前記共振領域の上に形成された第二電極と、
前記共振領域の共振器端面を構成する面および前記下地領域の上面の両方から突出する凸部と、
を有し、
前記共振領域の第一半導体層と前記第一電極が形成されている第一半導体層とが連続し、
前記凸部
の前記共振器端面から離れる側
に、平坦な面である前記下地領域の上面
が存在し、
前記凸部の先端と前記上面との間に凹部が介在しない半導体レーザダイオード。
【請求項5】
前記共振器端面と前記第二電極の前記共振領域の共振方向での端面は同一平面内にある請求項4記載の半導体レーザダイオード。
【請求項6】
前記凸部は、前記共振器端面を構成する面からの突出位置で前記下地層の上面からの突出寸法が最も大きい請求項4または5記載の半導体レーザダイオード。
【請求項7】
前記第二電極は、絶縁層を介して前記第二半導体層の上に形成され、
前記絶縁層の貫通穴に、前記第二電極と前記第二半導体層とを電気的に接続する接続体が形成され、
前記凸部は三角柱の形状を有し、前記三角柱の一つの側面が前記共振器端面を構成する第一半導体層に接し、もう一つの側面が前記下地層の上面に接し、残りの側面が斜面として上向きに存在し、
平面視で前記共振領域の共振方向と直交する方向の寸法は、前記凸部の方が前記接続体より大きい請求項4~6のいずれか一項に記載の半導体レーザダイオード。
【請求項8】
前記共振器端面および前記第二電極の前記共振領域の共振方向での端面に反射層が形成され、前記反射層の膜厚は、前記第二電極の前記端面の方が前記共振器端面よりも厚い請求項4~7のいずれか一項に記載の半導体レーザダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザダイオードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザダイオードには構造の違いにより様々な種類が存在するが、その中の一つに、共振領域内に生じさせた光を共振器端面間で共振、増幅させるファブリーペロー型の半導体レーザダイオードがある。
共振器端面の形成方法としては、結晶の劈開面に沿って切断する方法と、エッチング技術を用いる方法とがある。エッチング技術を用いる方法は、基板と基板上の窒化物半導体の劈開面が異なる場合でも適用可能で汎用性が高いことから、一般的に実用化されている。
【0003】
特許文献1および2には、エッチング技術を用いて共振器端面を形成する方法が記載されている。
特許文献1には、ドライエッチングで形成された共振器端面は、イオンによるダメージを受けて欠陥が発生した状態にあるため、共振器端面での光吸収が生じる問題があることが記載されている。また、その問題を解決するために、ドライエッチングされた端面をエッチング液でウエットエッチングすることで、共振器端面の表面鏡面度を向上させることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、第一半導体層である下地層と、下地層の上面の一部に形成され、第一半導体層、第一ガイド層、発光層、第二ガイド層、および第二半導体層がこの順に積層されている共振領域と、下地層の共振領域が形成されていない部分に形成された第一電極と、共振領域の上に形成された第二電極と、を有する半導体レーザダイオードが記載されている。
【0005】
特許文献2に記載された半導体レーザダイオードの製造方法では、基板上に、第一半導体層、第一ガイド層、発光層、第二ガイド層、および第二半導体層を含む積層体を形成した後、積層体をエッチングして共振領域となる部分とそれ以外の部分を分けている。その後、フォトリソグラフィー・エッチングにより第二半導体層の上に第二電極を形成するとともに、下地層の共振領域が形成されていない部分に第一電極を形成した後、共振器の長さの幅でレジストマスクを形成し、フォトリソグラフィー・ドライエッチングにより共振器端面を形成している。
【0006】
特許文献2に記載された方法では、第二電極を形成した後にフォトリソグラフィー・ドライエッチングにより共振器端面を形成している。よって、この方法で製造された半導体レーザダイオードでは、共振器端面と第二電極の共振領域の共振方向での端面が同一平面内になく、平面視で共振器端面の方が電極の端面より外側に存在している。
【0007】
一方、紫外線半導体レーザダイオードの実現に向けた課題の一つとして、高出力化があり、これを達成するためのアプローチの一つとして、レーザ発振の閾値電流密度を低減することが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-41585号公報
【文献】特開平11-145566号公報
【文献】特開2008-124498号公報
【文献】特開2009-295952号公報
【文献】特開2020-47635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、エッチング技術を用いて共振器端面を形成する工程を経て得られるファブリーペロー型の半導体レーザダイオードとして、レーザ発振の閾値電流密度が低減され、且つ耐久性が向上したものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様の半導体レーザダイオードの製造方法は、以下の構成(1)~(4)を有する。
(1)下地層と、前記下地層の上面の一部に形成され、第一半導体層、導波路層、および第二半導体層がこの順に積層されている共振領域と、前記共振領域の近傍の第一半導体層上に形成された第一電極と、前記共振領域の上に形成された第二電極と、を有し、前記共振領域の第一半導体層と前記第一電極が形成されている第一半導体層とが連続している(両方の第一半導体層が途切れずに繋がっている)半導体レーザダイオードの製造方法である。導波路層は発光層を含む。下地層は、基板であってもよいし、基板上に形成された第一半導体層であってもよい。
(2)複数の前記半導体レーザダイオードを基板上に形成した後に前記基板を半導体レーザダイオード毎に分割する工程を含む。
(3)基板上に、第一半導体層、導波路層、および第二半導体層をこの順に含む積層体を形成する工程を有する。
(4)前記積層体の第二半導体層の上に前記第二電極になる層を、共振領域の共振器端面と前記分割する工程で分割する位置との間まで形成する電極層形成工程と、前記電極層形成工程の後に、前記第二電極になる層の前記共振器端面より外側となる位置に形成された部分の除去と前記共振器端面の形成とを同時にまたは連続的に行う第一のエッチング工程と、を有する。
【0011】
本発明の第二態様は、第一態様の製造方法で得られた半導体レーザダイオードであって、以下の構成(11)(12)を有する。
(11)下地層と、下地層の上面の一部である下地領域の一部に形成され、第一半導体層、導波路層、および第二半導体層がこの順に積層されている共振領域と、前記共振領域の近傍の第一半導体層上に形成された第一電極と、前記共振領域の上に形成された第二電極と、共振領域の共振器端面を構成する面および前記下地領域の上面の両方から突出する凸部と、を有する。前記共振領域の第一半導体層と前記第一電極が形成されている第一半導体層とが連続している(両方の第一半導体層が途切れずに繋がっている)。
(12)前記凸部は、前記共振器端面から離れる側において、平坦な面である前記下地領域の上面に直接移行している。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第一態様の製造方法によれば、レーザ発振の閾値電流密度が低減され、且つ耐久性が向上した半導体レーザダイオードが得られることが期待できる。また、電極層形成工程の後に、第二電極になる層の共振器端面より外側となる位置に形成された部分の除去と共振器端面の形成とを同時にまたは連続的に行うエッチング工程、を有することで、分割する工程の前に各半導体レーザダイオードの特性を調べる検査を行うことができる。
【0013】
本発明の第二態様の半導体レーザダイオードは、第一態様の製造方法で得られた半導体レーザダイオードであって、共振領域の共振器端面を構成する面および下地領域の上面の両方から突出する凸部により、電流および熱が集中する部分が保護されるため、通電時のリーク電流の低減、発光効率の増加、照射パターン変動の抑制などの効果が得られることが期待できる。
つまり、本発明の第二態様の半導体レーザダイオードは、レーザ発振の閾値電流密度が低減され、且つ耐久性が向上したものとなることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態である半導体レーザダイオードの製造方法を構成する各工程を説明する図であって、各工程後の基板の平面図とそのA-A断面図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態である半導体レーザダイオードの製造方法を構成する各工程を説明する図であって、(a)と(b)は各工程後の基板の平面図とそのA-A断面図を示し、(c)は工程後の基板の平面図と正面図を示す。
【
図3】複数の窒化物半導体レーザダイオードが形成される範囲の基板を示す平面図であって、
図2(a)の状態に対応する図である。
【
図6】複数の窒化物半導体レーザダイオードが形成される範囲の基板を示す平面図であって、
図2(c)の状態に対応する図である。
【
図7】本発明の一実施形態である半導体レーザダイオードを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔本発明者らの知見〕
エッチング技術を用いて共振器端面を形成した場合には、共振器端面と第二電極の共振領域の共振方向での端面が同一平面内になく、平面視で共振器端面の方が電極の端面より外側に存在していることが、閾値電流密度を高くしている要因の一つであるとの知見を得た。
また、外部電源に接続した端子を第二電極および第一電極に接触させて各半導体レーザダイオードの特性を調べる検査を、分割する工程の前に行うことができれば、不良ウェハを除去することができ、製造コストを低減できることを見出した。
【0016】
〔実施形態〕
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
【0017】
[構成]
本実施形態のファブリーペロー型の半導体レーザダイオードの製造方法は、窒化物半導体レーザダイオードを基板上に複数形成した後に、基板を窒化物半導体レーザダイオード毎に分割する工程(以下、「分割工程」と称する。)を含む。なお、
図1、
図2、
図4、
図5は、一個の窒化物半導体レーザダイオードが形成される範囲の基板を示している。
図3および
図6は、複数の窒化物半導体レーザダイオードが形成される範囲の基板を示している。
【0018】
本実施形態の方法では、先ず、
図1(a)に示すように、基板1上に、第一半導体層21、第一ガイド層22、発光層23、第二ガイド層24、および第二半導体層25をこの順に含む積層体2を形成する。つまり、導波路層として、第一ガイド層22、発光層23、第二ガイド層24を形成する。
基板1としてサファイア基板を用い、第一半導体層21としてn-Al
xGa
(1-x)N層を形成し、第一ガイド層22としてAl
xGa
(1-x)N層を形成する。発光層23としてAl
xGa
(1-x)N層を形成し、第二ガイド層24としてAl
xGa
(1-x)N層を形成し、第二半導体層25としてp-Al
xGa
(1-x)N層を形成する。つまり、本実施形態の方法では、窒化物半導体レーザダイオードを製造する。
【0019】
次に、
図1(b)に示すように、積層体2をエッチングして、メサ部(共振領域となる部分を含む部分)31と、それ以外の部分である第一部分32および第二部分33とに分けるメサエッチング工程を行う。その結果、第一半導体層21は、膜厚方向で、メサ部31を構成する部分(メサ側部分)21aとそれ以外の部分21bに分けられる。
図1(b)には、製造する半導体レーザダイオードの共振方向Kが示されている。
次に、
図1(b)の状態の基板1上の全面に、SiO
2層である絶縁層4を形成した後、フォトリソグラフィー・エッチング工程により、第二半導体層25上の絶縁層4に第二電極用貫通穴41を設けると同時に、第一部分32上の絶縁層4に第一電極用貫通穴42を設ける。
図1(c)はこの工程後の状態を示す。
【0020】
次に、
図1(c)の状態の基板1上にレジストパターンを形成した後に、Ni/Pt/Au層を蒸着してからレジストパターンを除去するリフトオフ工程を行った後、高温熱処理を行うことで、パターニングされたNiPtAuの合金層を形成する。これにより、
図2(a)に示す状態とする。
図2(a)には、製造する半導体レーザダイオードの共振方向Kと、一対の共振器端面位置Tが示されている。
この状態を、複数の窒化物半導体レーザダイオードが形成される範囲の基板で示すと、
図3に示すように、分割線L1、L2が形成されている。各分割線L1、L2に沿う位置が上述の分割工程で分割する位置であるが、そのうち、共振方向Kと直交する分割線L2の位置を
図3に符号Eで示す。
【0021】
つまり、上述のリソグラフィー・リフトオフ工程で、
図2(a)および
図3に示すように、第二合金層(第二電極になる層)51と第一合金層(第一電極になる層)61を、それぞれ、共振方向Kで共振器端面位置Tと分割線L2の位置(分割工程で分割する位置)Eとの間まで形成する。その際に、絶縁層4の第二電極用貫通穴41内に、第二合金層51と第二半導体層25とを電気的に接続する接続体52が形成され、絶縁層4の第一電極用貫通穴42内に、第一合金層61と第二半導体層25とを電気的に接続する接続体62が形成される。
【0022】
次に、
図2(a)の状態の基板1上にNiの蒸着膜を形成した後、フォトリソグラフィー・リフトオフ工程を行うことで、
図2(b)に示すように、共振方向Kで一対の共振器端面位置T間の部分がNiのマスク7で覆われた状態にする。この状態で、第二合金層51および第一合金層61は、それぞれ、共振方向Kで共振器端面位置Tより外側の部分51a,61a以外が、Niのマスク7で覆われた状態になる。
【0023】
次に、
図2(b)の状態の基板1に対してドライエッチングを行う。このドライエッチングは、塩素ガスを用い、メサ部31が第一部分32および第二部分33との境界位置Hまでエッチングされる条件で行う。この一回の連続的なドライエッチング工程(第一のエッチング工程)で、第二合金層51の外側の部分51aおよび第一合金層61の外側の部分61aが除去されて、
図2(c)に示すように、第二電極5の端面5Aおよび第一電極6の端面6Aが生じる(つまり、第二電極5および第一電極6が形成される)とともに、メサ部31のマスク7で覆われていない部分が所定深さまで除去されて、共振器端面200が形成される。また、第一部分32のマスク7で覆われていない部分も所定深さまで除去される。その結果、共振領域310と下地層320が形成される。
【0024】
次に、ドライエッチング後の基板1をアルカリ性水溶液に浸漬してウエットエッチングを行った後、マスク7を除去して、
図2(c)に示す状態の基板1(素子前駆体10)を得る。この素子前駆体10を、
図4には
図2(c)のB-B断面図で、
図5には斜視図で示す。また、この状態を、複数の窒化物半導体レーザダイオード10Aが形成される範囲の基板で示すと、
図6に示すように、分割線L1,L2が形成されている。
次に、
図6に示す分割線L1,L2に沿って基板を分割することにより、各素子前駆体10を得る。
【0025】
次に、
図7に示すように、素子前駆体10の共振器端面200、第二電極5の端面5A、および第一電極6の端面6Aに、SiO
2とHfO
2の誘電体多層膜である反射層9をスパッタリング法で形成する。これにより、
図7に示す窒化物半導体レーザダイオード10Aが得られる。
反射層9の形成は、成膜装置の基板を設置する台に、基板面を45°傾斜させる斜面を有する治具を設置し、この治具の斜面に基板1の裏面を貼り付けて、成膜面である素子前駆体10の共振器端面200を45°の上向き面にするとともに、素子前駆体10の上面の共振方向Kでの中央部をカバーで覆った状態で行う。これにより、反射層9を、第二電極5の端面5Aおよび第一電極6の端面6Aでの膜厚が、共振器端面200での膜厚よりも厚く形成するとともに、第二電極5および第一電極6の上面に導通部Dを確保する。
【0026】
図2(c)、
図4、および
図5に示すように、素子前駆体10(つまり、窒化物半導体レーザダイオード10A)の共振器端面200は、第一半導体層21aa(第一半導体層2のメサ側部分21aの一部)、第一ガイド層22、発光層23、第二ガイド層24、および第二半導体層25の面で構成されている。また、第二電極5の共振方向Kでの端面5Aと共振器端面200とが同一平面内に存在する。さらに、第一電極6の共振方向Kでの端面6Aおよび第一半導体層21の第一部分(メサ部以外の部分)32の端面32aも、共振器端面200と同一平面内に存在する。
【0027】
さらに、窒化物半導体レーザダイオード10Aは、
図2(b)の状態の基板1に対するドライエッチングで形成された凸部81~84を有する。
凸部81は、共振器端面200を構成する第一半導体層21aaの面と、下地層320の第一上面321の両方から突出している。凸部82は、第一電極6の共振方向Kでの端面6Aと同一平面に存在する第一半導体層21の端面32aと、下地層320の第二上面322の両方から突出している。
【0028】
凸部81は三角柱の形状を有し、三角柱の一つの側面が共振器端面200を構成する第一半導体層21aaに接し、もう一つの側面が下地層320の第一上面321に接し、残りの側面が斜面として上向きに存在している。つまり、凸部81は、共振器端面200を構成する第一半導体層21aaの面からの突出位置で、下地層320の上面からの突出寸法が最も大きい。
また、凸部81の共振方向Kと直交する方向の寸法W81は、接続体52の共振方向Kと直交する方向の寸法Wより大きい。
【0029】
凸部83,84は、共振器端面200を構成する全ての層(メサ部31を構成する層)の面であって、メサ部31の斜面を示す斜線L1と、メサ部31の頂点から下地層320の第一上面321に延びる垂線L2と、第一上面321に沿う辺とからなる細長い直角三角形の面(
図2(c)の下図を参照)と、下地層320の第一上面321の三角形の面(
図2(c)の上図を参照)と、の両方から突出している。つまり、凸部83,84は、側面が細長い三角形である三角錐の形状を有する。
【0030】
また、凸部81,83,84は、共振器端面から離れる側において、平坦な面である下地層320の第一上面321に直接移行している。つまり、窒化物半導体レーザダイオード10Aは、凸部81,83,84が下地層320の共振方向における端面位置まで存在しているもの(例えば、特許文献3の
図5、特許文献4の
図2)ではないし、凸部81,83,84が凹部を介して第一上面321に移行している(凸部81,83,84の先端が第一上面321より低い位置まで下がってから第一上面321に移行している)もの(例えば、特許文献5の
図3)でもない。
【0031】
図2(b)の状態の基板1に対するドライエッチングで凸部81~84が形成される理由は、塩素ガスを用いたドライエッチングレートが材料ごとに異なることに起因する。例えば、Al
xGa
(1-x)N層を2.828nm/sでエッチングする条件下では、SiO
2層のエッチングレートが0.585nm/s、NiPtAu合金層のエッチングレートが0.507nm/sとなるような条件で成膜を行うと、凸部81~84が形成される。
ここで、
図2(b)の下図に示すように、メサ部31のマスク7で覆われていない部分を、第二合金層51の外側の部分51aの下側となっている中央部分31aと、メサ部31の傾斜面を斜辺とし境界位置Hを示す直線を底辺とした直角三角形からなる傾斜部分31bと、両者の間の長方形からなる端部分31cとに分けて考える。
【0032】
つまり、AlxGa(1-x)N層の積層体であるメサ部31のエッチングレートがNiPtAu合金層のエッチングレートの5倍以上であるため、NiPtAu合金層である部分51aが上にない端部分31cが、境界位置Hまでエッチングされた時点で、NiPtAu合金層である部分51aが上にある中央部分31aのエッチングは、共振方向Kでマスク7に最も近い位置では、境界位置Hよりも上側の位置までしか行われていない。その結果、凸部81が形成される。
【0033】
また、メサ部31の斜面にも絶縁層4が形成されているため、傾斜部分31bのエッチングは斜面の絶縁層4のエッチングの影響を受ける。つまり、斜面の絶縁層4のエッチング後にエッチングされる傾斜部分31bの部分が、傾斜部分31bの下側に行くに連れて多くなる。そして、AlxGa(1-x)N層の積層体であるメサ部31のエッチングレートが、SiO2層である絶縁層4のエッチングレートの5倍程度であるため、端部分31cが境界位置Hまでエッチングされた時点で、傾斜部分31bの共振方向Kにおける一部はエッチングされていない状態となり、凸部83,84として残る。
【0034】
また、第一部分32のマスク7で覆われていない部分は、第一合金層61の外側の部分61aの下側となっている中央部分32bと、その両側の端部分32cとに分けられる。そして、AlxGa(1-x)N層のエッチングレートがNiPtAu合金層のエッチングレートの5倍以上であるため、同時点で、NiPtAu合金層である部分61aが上にない端部分32cのエッチング深さは、NiPtAu合金層である部分61aが上にある中央部分32bのエッチング深さより深くなる。
【0035】
つまり、メサ部31の端部分31cが境界位置Hまでエッチングされた時点で、第一部分32の端部分32cは、下地層320の第一上面321より低い第二上面322までエッチングされるが、第一部分32の中央部分32bのエッチングは、共振方向Kでマスク7に最も近い位置では、第二上面322よりも上側の位置までしか行われていない。その結果、凸部82が形成される。
なお、凸部81~84の形状が三角柱、三角錐になる理由は、角部が集中的にエッチングされて削り取られるためである。
【0036】
本実施形態の窒化物半導体レーザダイオードでは第一合金層61と第二合金層51が同じ材料で形成されているが、第一合金層61と第二合金層51は異なる材料で形成されていてもよく、例えば、第一合金層61をNiPtAu合金層とし、第二合金層51をV/Al/Ti/Au層とした場合でも同様の構造が形成される。
【0037】
[作用、効果]
上述のように、本実施形態の窒化物半導体レーザダイオードの製造方法は、積層体2の第二半導体層25の上に第二合金層(第二電極になる層)51を、共振領域310の共振器端面位置Tと分割工程で分割する位置Eとの間まで形成する電極層形成工程と、電極層形成工程の後に、第二合金層(第二電極になる層)51の共振方向Kで共振器端面位置Tより外側の部分51aの除去と共振器端面200の形成を連続的に行うエッチング工程と、を有する。
【0038】
よって、本実施形態の窒化物半導体レーザダイオードの製造方法によれば、共振器端面200と第二電極5の共振方向Kでの端面5Aが同一平面内にある窒化物半導体レーザダイオード10Aを得ることができる。その結果、本実施形態の製造方法で得られた窒化物半導体レーザダイオード10Aは、レーザ発振の閾値電流密度が低減されたものとなることが期待できる。
また、本実施形態の窒化物半導体レーザダイオードの製造方法では、上述のエッチング工程を、マスク7を用いたドライエッチング法で行った後に、マスク7を外さずにアルカリ性水溶液でウエットエッチングを行うことにより、共振器端面200の平坦化度が高い窒化物半導体レーザダイオードが得られる。
【0039】
さらに、本実施形態の窒化物半導体レーザダイオードの製造方法では、
図6に示すように、基板が分割線L1,L2で分割される前の状態で、第二電極5および第一電極6の両方が隣接する素子前駆体の間で連続していないため、
図6に示す状態で、外部電源に接続した端子を第二電極5および第一電極6に接触させて各素子の特性を調べる検査を、容易に行うことができる。これに対して、第二電極5および第一電極6の少なくとも一方が隣接する素子間で連続している(例えば特許文献3に記載された方法)と、上述の検査方法では複数の素子が同時に駆動するため、正しい検査を行うことができない。本検査を分割前に行うことにより不良ウェハを除去することができ、製造コストを低減できる。また、素子を分割してしまうと検査の際に一つ一つの素子を検査装置に配置する工数が大幅に増加し、製造コストを増加させる。ウェハ状態の素子ではウェハ1枚を配置すれば良いので、大幅にコストを低減できる。
【0040】
また、本実施形態の窒化物半導体レーザダイオード10Aは、共振領域310の共振器端面200を構成する第一半導体層21aaの面および下地層320の第一上面(下地領域)321の両方から突出する凸部81を有する。この凸部81により、電流および熱が集中する部分(共振器端面200を構成する第一半導体層21aaの面)が保護されて、その部分に空気、水等による腐食が生じにくくなる。その結果、通電時のリーク電流の低減、発光効率の増加、照射パターン変動の抑制などの効果が得られることが期待できる。
【0041】
また、凸部81は、共振器端面200を構成する第一半導体層21aaの面からの突出位置で、下地層320の第一上面321からの突出寸法が最も大きく、この面から離れるに連れて突出寸法が減少してゼロになる形状であるため、凸部81による共振器端面200を構成する第一半導体層21aaの面の保護効果を高く保持しつつ、自然光発光や余分なレーザ光の反射・散乱を抑制することができる。
また、凸部81の共振方向Kと直交する方向の寸法W81が、実質的な発光部の幅に相当する接続体52の寸法W5より大きいため、実質的な発光部が凸部81により確実に保護される。
【0042】
また、本実施形態の窒化物半導体レーザダイオード10Aは、凸部82を有する。この凸部82により、第一半導体層21の第一部分32のエッチングダメージを受けている端面32aが保護されて、端面32aに空気、水等による腐食が生じにくくなる。
また、本実施形態の窒化物半導体レーザダイオード10Aは、凸部83,84を有する。この凸部83,84により、エッチングダメージを受けている共振器端面を構成する各層の幅方向両端部が保護されて、その部分に空気、水等による腐食が生じにくくなる。その結果、凸部81と類似の効果が得られることが期待できる。
【0043】
さらに、凸部81,83,84が、共振器端面から離れる側において、平坦な面である下地層320の第一上面321に直接移行していることで、以下の効果が得られることが期待できる。
つまり、凸部81,83,84が下地層320の共振方向における端面位置まで存在せずに、第一上面321が存在しているため、凸部81,83,84が外部からの物理的な衝撃による破損から保護される。例えば、組立時にチップの側面をコレットで挟む場合に凸部81,83,84が直接コレットに接触することが回避できるため、凸部81,83,84の破壊が防止される。これについては、凸部82でも同様のことが言える。
【0044】
また、凸部81,83,84が下地層320の共振方向における端面位置まで存在せずに、第一上面321が存在しているため、分割工程で素子の端面に欠けや割れ(チッピング)が生じた場合でも凸部81,83,84が破壊されることを防ぐことができる。また、半導体の発光部分から素子分割線を遠ざけることができるため、分割時の熱・衝撃による発光部の損傷を抑制することができる。なお、分割工程での素子端面に欠けや割れが生じた場合については、凸部82でも同様のことが言える。
【0045】
さらに、共振器端面から離れる側において、凸部81,83,84が凹部を介して第一上面321に移行している場合と比較して、熱の拡散性能や耐劣化性能が向上する。何故なら、これらの凸部近傍の下地は熱・電流が集中しており、外気(酸素、炭素)と反応することで半導体の劣化が生じ易いが、凹部がない方が熱は拡散しやすく、凹部がない分、表面積が小さいことで外気との反応が生じにくくなるため、劣化しにくくなる。
また、下地層320からは半導体内部からの自然光も放射されるが、下地層320の第一上面321に凹凸があると、この自然光の光取り出し効率が上がり、レーザ光のノイズとなる。そのため、凸部81,83,84が凹部を介さずに第一上面321に移行していることで、凹部を介して第一上面321に移行しているものよりも、レーザ光のノイズを低減できる。
【0046】
また、本実施形態の窒化物半導体レーザダイオード10Aは、共振器端面200および第二電極5の共振方向Kでの端面5Aに反射層9が形成され、反射層9の膜厚が第二電極5の端面5Aに形成されている部分の方が共振器端面200に形成されている部分よりも厚い。つまり、第二電極5の端面5Aには高い腐食抑制効果が付与できる厚い反射層が形成され、共振器端面200には設計値通りの膜厚の(端面5Aに形成された反射層よりも薄い)反射層が形成されることで、窒化物半導体レーザダイオードの耐久性が向上する。
【0047】
[第一態様および第二態様と実施形態との違いについて]
本実施形態の半導体レーザダイオードの製造方法では、電極層形成工程の前に、第二半導体層25の上に絶縁層4を形成する工程と絶縁層4の所定位置(電極層形成位置に対応する位置)に貫通穴41,42を設ける工程を行っている。その結果、第一電極6および第二電極5と第二半導体層25とがそれぞれ接続体62,52で接続され、絶縁層4を介したエッチング工程を行うことで、得られる半導体レーザダイオード10Aに凸部83,84が生じる。
本実施形態の半導体レーザダイオード10Aでは、凸部83,84と凸部81,82とで、共振方向K外側への突出寸法が同じであるが、この突出寸法は同じでなくてもよく、例えば、凸部83,84の突出寸法の方が凸部81,82より大きくてもよい。
【0048】
本実施形態の半導体レーザダイオードの製造方法では、
図2(b)の状態で、共振方向Kでのマスク7で覆われる範囲を、メサ部31とメサ部以外の第一部分32および第二部分33部分とで同じにしているが、第一部分32は上面全体が覆われるようにしてもよい。その場合、第一電極6は第二電極5よりも共振方向Kの寸法が長く形成され、第二上面322および凸部82は形成されない。
本実施形態の半導体レーザダイオードの製造方法では、第二合金層51および第一合金層61の共振器端面位置Tより外側の部分51a,61aの除去と共振器端面200の形成を連続的に行うエッチング工程として、マスク7を用いたドライエッチングを行っているが、
図2(a)の状態で、マスクを用いず、集束イオンビーム(FIB)を共振器端面位置Tより共振方向Kの外側にのみ照射するFIB加工を行ってもよい。
【0049】
本実施形態の半導体レーザダイオード10Aはリッジ部半導体層を有さないが、第二半導体層25の一部の上方にリッジ部半導体層を設けてもよい。リッジ部半導体層を設けることより、発光層での発光がリッジ部半導体層の下方の領域のみで行われるように制御できるため、半導体レーザダイオードの電流密度をより高くでき、レーザ発振の閾値をより低くすることができる。
【0050】
本実施形態の半導体レーザダイオードの製造方法では、積層体2をメサエッチングして、第一半導体層21を、膜厚方向で、共振領域となる部分を含む部分21aとそれ以外の部分21bとに分けて、このエッチングで生じたそれ以外の部分21bの上面に、第一電極6を形成している。つまり、第一電極6の形成面(第一半導体層からなる下地層の第二上面322)をメサエッチングで形成する。その後、メサエッチングとは異なるエッチングマスクを用いてパターニングを行った後に、下地領域の上面321がメサエッチングした端面32aの上面の位置まで到達するところまで再度エッチングを施すことにより、下地領域の上面が第一半導体層の上面となるようにしている。この再度エッチングする深さを端面32aの上面の位置に合わせずに、第一半導体層からなる下地層320よりも下側、例えば基板1までエッチングすることで、下地領域の上面が、第一半導体層の上面ではなく基板1の上面になるようにしてもよい。
【0051】
[第一態様および第二態様の構成についての補足]
(基板)
基板を形成する材料の具体例としては、Si、SiC、MgO、Ga2O3、Al2O3、ZnO、GaN、InN、AlN、あるいはこれらの混晶等が挙げられる。基板は、薄板の四角形状を有していることが組立上好ましいが、これに限らない。また、基板のオフ角は高品質の結晶を成長させる観点から0度より大きく2度より小さいことが好ましい。基板の膜厚は、上層にAlGaN層を積層させる目的であるならば特に制限されないが、50μm以上1mm以下であることが好ましい。
【0052】
基板は、半導体レーザダイオードを構成する各層として形成する薄膜の支持および結晶性の向上、外部への放熱を目的として使用される。そのため、AlGaNを高品質で成長させることが出来、熱伝導率の高い材料であるAlN基板を用いることが好ましい。
基板の結晶品質には特に制限はないが、高い発光効率を有する素子薄膜を形成するためには、貫通転位密度1×109cm-2以下が好ましく、1×108cm-2以下がより好ましい。基板の成長面は、一般的に用いられている+c面AlNとすれば、低コストなため好ましいが、-c面AlNであっても、半極性面基板であっても、非極性面基板であっても良い。p型半導体として広く用いられるIII族組成傾斜AlGaNを成長させる場合は、分極ドーピングの効果を大きくする観点から、+c面AlNであることが好ましい。
【0053】
(第一半導体層)
第一半導体層の厚さは特に制限されない。例えば、第一半導体層の抵抗を低減させるために100nm以上であってもよいし、第一半導体層の形成時のクラックの発生を抑制する観点から10μm以下であってもよい。
第一半導体層を形成する材料としては、Alx1Ga(1-x1)N(0≦x1≦1)が挙げられる。また、第一半導体層を形成する材料には、P、As又はSbといったN以外のV族元素や、In又はBといったIII族元素、C、H、F、O、Si、Cd、Zn又はBeなどの不純物が含まれていてもよい。
【0054】
なお、AlxGa(1-x)NのAl組成比xは、集束イオンビーム(FIB)装置を用いてAlGaNのa面に沿う断面を露出させて、その断面を透過型電子顕微鏡で観察し、その断面のエネルギー分散型X線解析(EDX)を行うことで特定することができる。Al組成比xは、AlとGaのモル数の和に対するAlのモル数の比率と定義でき、EDXで定量されたAl、Gaのモル数の値を用いて定義することができる。
【0055】
第一半導体層がn型半導体の場合、例えばSiを1×1019cm-3ドープすることでn型化させることが可能である。第一半導体層がp型半導体の場合、例えばMgを3×1019cm-3ドープすることでp型化させることが可能である。不純物濃度は、層全体で一様であっても、不均一であっても良く、また膜厚方向にのみ不均一でも、基板水平方向にのみ不均一であっても良い。
また、基板1と第一半導体層21aaとの間にAlN層やAlGaN層などの中間層が形成されていてもよい。その場合、この中間層を下地層320として使用してもよい。
【0056】
(導波路層)
導波路層は発光層を含む層であって、例えば、第一ガイド層、発光層、第二ガイド層がこの順に積層されたものであるが、第一ガイド層および第二ガイド層のいずれかまたは両方を含まない場合もある。
【0057】
(第一ガイド層)
第一ガイド層は、第一半導体層の第一半導体層の上に形成されている。第一ガイド層は、発光層で発光した光を発光部(第一ガイド層、発光層、第二ガイド層で構成されている部分)に閉じ込めるために、第一半導体層と屈折率差をつけている。第一ガイド層を形成する材料として、AlN、GaNの混晶が挙げられる。
第一ガイド層を形成する材料の具体例は、Alx2Ga(1-x2)N(0<x2<1)である。
第一ガイド層を形成するAlx2Ga(1-x2)NのAl組成比x2は、第一半導体層を形成するAlx1Ga(1-x1)NのAl組成比x1よりも小さくてもよい。これにより、第一ガイド層は、第一半導体層よりも屈折率が大きくなり、発光層で発光した光を発光部に閉じ込めることが可能となる。また、第一ガイド層を形成する材料には、P、As又はSbといったN以外のV族元素や、In又はBといったIII族元素、C、H、F、O、Si、Cd、Zn又はBeなどの不純物が含まれていてもよい。
【0058】
第一ガイド層がn型半導体の場合、例えばSiを1×1019cm-3ドープすることでn型化させることが可能である。第一ガイド層がp型半導体の場合、例えばMgを3×1019cm-3ドープすることでp型化させることが可能である。第一ガイド層は膜厚方向の一部分にのみドーパントを有していても良い。つまり、第一ガイド層の膜厚方向の一部分では、n型半導体とアンドープ層や、p型半導体とアンドープ層が組み合わされていても良い。第一ガイド層は、アンドープ層であってもよい。
【0059】
第一ガイド層は、組成を傾斜させた構造を有していてもよい。例えば、第一ガイド層は、Alx2Ga(1-x2)NのAl組成比x2を0.6から0.5に連続的又は階段状に変化させる層構造を有していてもよい。第一ガイド層の厚さは、特に制限されない。第一ガイド層の厚さは、発光層からの発光を効率よく発光部へ閉じ込めるために10nm以上であってもよい、また、第一ガイド層の厚さは、第一ガイド層の抵抗を低減させる観点から2μm以下であってもよい。
第一ガイド層は、光を発光部に閉じ込める目的を保持する範囲内でブロック層となるAlGaN層を有していても良い。
【0060】
(発光層)
発光層を形成する材料として、AlN、GaN、およびその混晶が挙げられる。発光層を形成する材料の具体例は、Alx3Ga(1-x3)N(0≦x3≦1)である。発光層のAlx3Ga(1-x3)NのAl組成比xは、第一電極および第二電極から注入したキャリアを効率よく発光部に閉じ込めるために、第一ガイド層のAlx2Ga(1-x2)NのAl組成比x2よりも小さくてもよい。例えば、発光層は、Al組成比x3が0.2≦x3<1の関係を満たすAlx3Ga(1-x3)Nで形成されていてもよい。
また、発光層を形成する材料には、P、As又はSbといったN以外のV族元素や、In又はBといったIII族元素、C、H、F、O、Si、Cd、Zn又はBeなどの不純物が含まれていてもよい。
【0061】
発光層がn型半導体の場合、例えばSiを1×1019cm-3ドープすることでn型化させることが可能である。発光層がp型半導体の場合、例えばMgを3×1019cm-3ドープすることでp型化させることが可能である。発光層は、アンドープ層でもよい。
発光層は、例えばAlx5Ga(1-x5)Nで形成された井戸層と、井戸層に隣接して設けられて例えばAlx4Ga(1-x4)Nで形成された障壁層を有し、井戸層及び障壁層が1つずつ交互に積層された多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造を有していてもよい。
【0062】
井戸層のAl組成比x5は、第一ガイド層および第二ガイド層のそれぞれのAl組成比x4よりも小さい。また、井戸層のAl組成比x5は、障壁層のAl組成比x4よりも小さい。障壁層のAl組成比x4は、第一ガイド層および第二ガイド層のそれぞれのAl組成比x4と同一であってもよいし、第一ガイド層および第二ガイド層のそれぞれのAl組成比x4より高くても低くてもよい。
井戸層および障壁層の平均のAl組成比が発光層のAl組成比xとなる。多重量子井戸構造の発光層を有することにより、発光層の発光効率や発光強度の向上を図ることができる。
【0063】
発光層は、例えば「障壁層/井戸層/障壁層/井戸層/障壁層」という二重量子井戸構造を有していてもよい。これら井戸層のそれぞれの膜厚は例えば4nmであってよく、これらの障壁層のそれぞれの膜厚は例えば8nmであってよく、発光層の膜厚は32nmであってもよい。多重量子井戸層の量子井戸数は1層であっても(つまり、多重量子井戸ではなく単量子井戸)、2層、3層、4層、5層であっても良い。1つの井戸層内のキャリア密度を増加させる目的から、単一井戸層であることが好ましい。
【0064】
(第二ガイド層)
第二ガイド層は、発光層の上に形成されている。第二ガイド層は、発光層で発光した光を発光部に閉じ込めるために、第二半導体層と屈折率差をつけている。第二ガイド層を形成する材料として、AlN、GaN、およびその混晶が挙げられる。第二ガイド層を形成する材料の具体例は、Alx6Ga(1-x6)N(0≦x6≦1)である。
第二ガイド層のAlx6Ga(1-x6)NのAl組成比x6は、井戸層のAlx5Ga(1-x5)NのAl組成比x5よりも大きくてもよい。これにより、発光層へキャリアを閉じ込めることが可能となる。また、第二ガイド層を形成する材料には、P、As又はSbといったN以外のV族元素や、In又はBといったIII族元素、C、H、F、O、Si、Cd、Zn又はBeなどの不純物が含まれていてもよい。
【0065】
第二ガイド層がn型半導体の場合、例えばSiを1×1019cm-3ドープすることでn型化させることが可能である。第二ガイド層がp型半導体の場合、例えばMgを3×1019cm-3ドープすることでp型化させることが可能である。第二ガイド層は、アンドープ層でもよい。第二ガイド層は、Alx6Ga(1-x6)NのAl組成比x6を傾斜させた構造を有していてもよい。例えば、第二ガイド層は、Alx6Ga(1-x6)NのAl組成比x6を0.5から0.6に連続的又は階段状に変化させる層構造を有していてもよい。
【0066】
第二ガイド層の厚さは、特に制限されない。第二ガイド層の厚さは、発光層からの発光を効率よく発光部へ閉じ込めるために10nm以上であってもよい。また、第二ガイド層の厚さは、第二ガイド層の抵抗を低減させる観点から2μm以下であってもよい。
第二ガイド層のAlx6Ga(1-x6)N(0≦x6≦1)のAl組成比x6と第一ガイド層のAlx4Ga(1-x4)N(0≦x4≦1)のAl組成比x4は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0067】
(第二半導体層)
第二半導体層がn型半導体の場合、例えばSiを1×1019cm-3ドープすることでn型化させることが可能である。第二半導体層がp型半導体の場合、例えばMgを3×1019cm-3ドープすることでp型化させることが可能である。ドーパントの濃度は基板の垂直方向に一定であっても、不均一であっても良い。基板の面内方向に一定であっても、不均一であっても良い。
第二半導体層は、AlGaNのAl組成比を傾斜させた構造を有していてもよい。第二半導体層が層構造を有する場合、第二半導体層はドーパントを有していなくてもアンドープ層であっても良い。第二半導体層は、最上層にドーピング濃度が高い層を更に有している積層構造であっても良い。
【0068】
第二半導体層は、二層以上の積層構造であっても良い。その場合、キャリアを発光層へ効率よく運搬する目的で、Al組成比は上層に向かうほど小さくなることが好ましい。
第二半導体層の形成材料のAlx7Ga(1-x7)NのAl組成比x7は0であってもよい。第二半導体層の最上層に、Alx7Ga(1-x7)NのAl組成比x7が0であるp型の(p-)GaNを用いることで、第二半導体層の上に配置される第二電極のコンタクト抵抗を下げることができる。
【0069】
(第一電極)
第一電極がn型電極の場合、第一電極を形成する材料としては、第一電極が第一半導体層に電子を注入する目的で用いられるのであれば、一般的な窒化物半導体発光素子のn型電極に対応する材料を使用することが可能である。例えば、第一電極がn型電極の場合の形成材料として、Ti、Al、Ni、Au、Cr、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wおよびその合金、又はITO等が適用される。
【0070】
第一電極がp型電極の場合、第一電極を形成する材料としては、第一電極が窒化物半導体発光素子に正孔(ホール)を注入する目的で用いられるのであれば、一般的な窒化物半導体発光素子のp型電極層と同じ材料を使用することが可能である。例えば、第一電極がp型電極の場合の形成材料として、Ni、Au、Pt、Ag、Rh、Pd、Cuおよびその合金、又はITO等が適用される。第一電極がp型電極の場合は、第一電極とリッジ部半導体層17とのコンタクト抵抗が小さいNi、Au若しくはこれらの合金、又はITOであってもよい。
【0071】
第一電極は、第一電極の全域に電流を均等に拡散させる目的で、上部にパッド電極を有していてもよい。パッド電極を形成する材料としては、例えばAu、Al、Cu、Ag又はWなどが挙げられる。このパッド電極は、導電性の観点から、これらの材料のうち導電性が高いAuで形成されていてもよい。具体的には、第一電極の構造として、例えばNi及びAuの合金で形成された第一コンタクト電極を第一半導体層上に形成し、Auで形成された第一パッド電極を第一コンタクト電極上に形成した構造が挙げられる。
第一電極は、例えば240nmの厚さに形成されている。
【0072】
(第二電極)
第二電極がn型電極の場合、第二電極を形成する材料としては、第二電極が第一半導体層に電子を注入する目的で用いられるのであれば、一般的な半導体レーザダイオードのn型電極に対応する材料を使用することが可能である。例えば、第二電極がn型電極の場合の形成材料として、Ti、Al、Ni、Au、Cr、V、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wおよびその合金、またはITO等が適用される。
【0073】
第二電極がp型電極の場合、第二電極を形成する材料としては、第二電極が窒化物半導体発光素子に正孔(ホール)を注入する目的で用いられるのであれば、一般的な窒化物半導体発光素子のp型電極層と同じ材料を使用することが可能である。例えば、第二電極がp型電極の場合の形成材料として、Ni、Au、Pt、Ag、Rh、Pd、Cuおよびその合金、またはITO等が適用される。第二電極がp型電極の場合は、第二電極と第二半導体層とのコンタクト抵抗が小さいNi、Au若しくはこれらの合金、又はITOであってもよい。
【0074】
第二電極は、第二電極の全域に電流を均等に拡散させる目的で、上部にパッド電極を有していてもよい。パッド電極を形成する材料としては、例えばAu、Al、Cu、Ag又はWなどが挙げられる。このパッド電極は、導電性の観点から、これらの材料のうち導電性が高いAuで形成されていてもよい。具体的には、第二電極の構造として、例えばTi、Al、Ni及びAuの中から選択された素材の合金で形成された第二コンタクト電極を第二半導体層上に形成し、Auで形成された第二パッド電極を第二コンタクト電極上に形成した構造が挙げられる。
第二電極は、例えば60nmの厚さに形成されている。第二電極と第一電極は異なる厚さに形成されていても、第一電極と同じ厚さに形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 基板
2 積層体
21 第一半導体層
21a 第一半導体層のメサ側部分(第一半導体層のメサ部を構成する部分)
21aa 第一半導体層の共振領域となる部分(共振器端面を構成する第一半導体層)
21b 第一半導体層の下地層になる部分
22 第一ガイド層(導波路層)
23 発光層(導波路層)
24 第二ガイド層(導波路層)
25 第二半導体層
31 メサ部(共振領域となる部分を含む部分)
32 第一部分(メサ部以外の部分)
33 第二部分(メサ部以外の部分)
4 絶縁層
5 第二電極
5A 第二電極の共振方向での端面
51 第二合金層(第二電極になる層)
51a 共振器端面位置より外側に形成された第二合金層の部分
52 接続体
6 第一電極
6A 第一電極の共振方向での端面
61 第一合金層(第一電極になる層)
61a 共振器端面位置より外側に形成された第一合金層の部分
62 接続体
7 マスク
81 凸部
82 凸部
83 凸部
84 凸部
9 反射層
200 共振器端面
310 共振領域
320 下地層
321 下地層の第一上面
322 下地層の第二上面
K 共振方向