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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】地形図表示システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 17/05 20110101AFI20240925BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G06T17/05
G09B29/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022019155
(22)【出願日】2022-02-10
(65)【公開番号】P2023116840
(43)【公開日】2023-08-23
【審査請求日】2024-03-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594152848
【氏名又は名称】株式会社コイシ
(73)【特許権者】
【識別番号】520433942
【氏名又は名称】合同会社Kiah
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】小原 文男
(72)【発明者】
【氏名】深田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】秦野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】小原 隆弘
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-266419(JP,A)
【文献】特開2007-048185(JP,A)
【文献】特開2007-170821(JP,A)
【文献】特開2011-158278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 17/05
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面の点群データを用いた地形図表示システムであって、
コンピュータが
前記点群データを用いて前記地表面を単位面に区分けする面化処理ステップと、
前記単位面についての傾斜角を算出する傾斜角処理ステップと、
前記傾斜角に応じて前記単位面に配色を施す配色処理ステップと
を有し、
前記配色処理ステップでは、複数の傾斜範囲に区分して、特定の前記傾斜範囲を他の前記傾斜範囲と区別して視認できるように前記配色を施し、
前記傾斜角処理ステップでは、
前記点群データの中から近接する3つ以上のポイントを抽出し、
抽出した3つ以上の前記ポイントによって囲まれる面を前記単位面とし、
前記単位面の法線から前記傾斜角を算出することを特徴とする地形図表示システム。
【請求項2】
前記傾斜範囲を、
歩行が可能な第1の前記傾斜範囲と、
前記歩行が難航する第2の前記傾斜範囲と、
前記歩行が不可能な第3の前記傾斜範囲と
に区分した
ことを特徴とする請求項1に記載の地形図表示システム。
【請求項3】
前記傾斜範囲を、
車両走行が可能な第1の前記傾斜範囲と、
前記車両走行が難航する第2の前記傾斜範囲と、
前記車両走行が不可能な第3の前記傾斜範囲と
に区分した
ことを特徴とする請求項1に記載の地形図表示システム。
【請求項4】
前記傾斜範囲を、
重機走行が可能な第1の前記傾斜範囲と、
前記重機走行が難航する第2の前記傾斜範囲と、
前記重機走行が不可能な第3の前記傾斜範囲と
に区分した
ことを特徴とする請求項1に記載の地形図表示システム。
【請求項5】
前記コンピュータが、
ユーザによって入力された前記傾斜角で前記傾斜範囲を特定する傾斜範囲特定ステップを有し、
前記配色処理ステップでは、前記傾斜範囲特定ステップで入力された前記傾斜範囲に対して前記配色を施す
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の地形図表示システム。
【請求項6】
前記コンピュータが
ユーザの選択によって前記傾斜範囲に施す前記配色を特定する配色特定ステップを有し、
前記配色処理ステップでは、前記配色特定ステップで選択された前記配色を用いる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の地形図表示システム。
【請求項7】
前記コンピュータが
起伏を算出する起伏処理ステップを有し、
前記起伏処理ステップでは、
前記単位面に隣接する複数の隣接単位面の前記法線について、各前記隣接単位面から得られる全ての曲率に対する平均曲率から前記起伏を算出し、
前記配色処理ステップでは、
前記傾斜角に対しては色相を異ならせ、前記起伏に対しては輝度を異ならせる
ことを特徴とする請求項1に記載の地形図表示システム。
【請求項8】
前記傾斜角処理ステップで算出される前記傾斜角が所定値以上であり、前記起伏処理ステップで算出される前記起伏が凸である前記単位面を、地震時崩壊斜面として視認できるように前記配色を施して表示する
ことを特徴とする請求項7に記載の地形図表示システム。
【請求項9】
前記面化処理ステップで用いる前記点群データは、ユーザによって選択された間引き率によって決定される
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の地形図表示システム。
【請求項10】
前記コンピュータが、
上空から計測した計測点群データを取得する計測データ取得ステップと、
前記計測点群データによって生成される地図データから、前記地表面の上に存在する立設物データを除去する地表面外データ除去ステップと
を有し、
前記面化処理ステップで用いる前記点群データは、前記地表面外データ除去ステップで前記立設物データを除去したものである
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の地形図表示システム。
【請求項11】
前記地表面外データ除去ステップでは、
前記地図データを、上空から見た平面図の状態で所定間隔ごとに切断面を設定し、
それぞれの前記切断面に対して、前記計測点群データの高さ方向の分布により、前記地表面の上に存在する前記立設物データを、前記地表面の前記点群データと区分する
ことを特徴とする請求項10に記載の地形図表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の傾斜範囲にある斜面を視認できる地形図表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、航空レーザ計測により得られた地形の点群データを受け入れ、当該点群データに基づいて地形勾配を表す勾配画像を生成するとともに、点群データに基づいて得られる標高値を強調処理し、当該強調処理された標高値を表す強調画像を生成すること、そして勾配画像と強調画像とを透過合成し、合成画像を生成し、当該生成した合成画像を出力することができる画像解析処理装置が開示されている。
特許文献2には、3次元座標で表された大量のデジタル画像データに基づく地形の凹凸部の高低及び傾斜を、等高線に代えて、色調で表現することにより視覚的に立体感を付与可能な傾斜赤色化立体画像を生成することができる視覚化処理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-18144号公報
【文献】特許第3670274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、凹凸のオーダーに応じて凹凸の状況を強調した画像を得ることができ、地形判読には適しているが、複数の傾斜範囲に区分して特定の傾斜範囲を他の傾斜範囲と区別して視認することはできない。
また、特許文献2によれば、尾根や山頂部分が白っぽく、谷や窪地が黒っぽく表現され、傾斜が急な部分ほど赤く表現されるため、このような表現の組み合わせにより、1枚でも立体感のある画像が生成でき、一目で凹凸の高低の度合い及び傾斜の度合いを把握できるが、複数の傾斜範囲に区分して特定の傾斜範囲を他の傾斜範囲と区別して視認することはできない。
【0005】
本発明は、特に土木工事の施工にあたって重要な特定の傾斜範囲にある傾斜面を視認できる地形図表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の地形図表示システムは、地表面の点群データ22aを用いた地形図表示システムであって、コンピュータが前記点群データ22aを用いて前記地表面を単位面Xに区分けする面化処理ステップと、前記単位面Xについての傾斜角を算出する傾斜角処理ステップと、前記傾斜角に応じて前記単位面Xに配色を施す配色処理ステップとを有し、前記配色処理ステップでは、複数の傾斜範囲に区分して、特定の前記傾斜範囲を他の前記傾斜範囲と区別して視認できるように前記配色を施し、前記傾斜角処理ステップでは、前記点群データ22aの中から近接する3つ以上のポイント41、42、43を抽出し、抽出した3つ以上の前記ポイント41、42、43によって囲まれる面を前記単位面Xとし、前記単位面Xの法線から前記傾斜角を算出することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の地形図表示システムにおいて、前記傾斜範囲を、歩行が可能な第1の前記傾斜範囲と、前記歩行が難航する第2の前記傾斜範囲と、前記歩行が不可能な第3の前記傾斜範囲とに区分したことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の地形図表示システムにおいて、前記傾斜範囲を、車両走行が可能な第1の前記傾斜範囲と、前記車両走行が難航する第2の前記傾斜範囲と、前記車両走行が不可能な第3の前記傾斜範囲とことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載の地形図表示システムにおいて、前記傾斜範囲を、重機走行が可能な第1の前記傾斜範囲と、前記重機走行が難航する第2の前記傾斜範囲と、前記重機走行が不可能な第3の前記傾斜範囲とに区分したことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の地形図表示システムにおいて、前記コンピュータが、ユーザによって入力された前記傾斜角で前記傾斜範囲を特定する傾斜範囲特定ステップを有し、前記配色処理ステップでは、前記傾斜範囲特定ステップで入力された前記傾斜範囲に対して前記配色を施すことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の地形図表示システムにおいて、前記コンピュータがユーザの選択によって前記傾斜範囲に施す前記配色を特定する配色特定ステップを有し、前記配色処理ステップでは、前記配色特定ステップで選択された前記配色を用いることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1に記載の地形図表示システムにおいて、前記コンピュータが起伏を算出する起伏処理ステップを有し、前記起伏処理ステップでは、前記単位面Xに隣接する複数の隣接単位面A、B、Cの前記法線について、各前記隣接単位面A、B、Cから得られる全ての曲率に対する平均曲率から前記起伏を算出し、前記配色処理ステップでは、前記傾斜角に対しては色相を異ならせ、前記起伏に対しては輝度を異ならせることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項7に記載の地形図表示システムにおいて、前記傾斜角処理ステップで算出される前記傾斜角が所定値以上であり、前記起伏処理ステップで算出される前記起伏が凸である前記単位面Xを、地震時崩壊斜面として視認できるように前記配色を施して表示することを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の地形図表示システムにおいて、前記面化処理ステップで用いる前記点群データ22aは、ユーザによって選択された間引き率によって決定されることを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の地形図表示システムにおいて、前記コンピュータが、上空から計測した計測点群データ22を取得する計測データ取得ステップと、前記計測点群データ22によって生成される地図データから、前記地表面の上に存在する立設物データ22bを除去する地表面外データ除去ステップとを有し、前記面化処理ステップで用いる前記点群データ22aは、前記地表面外データ除去ステップで前記立設物データ22bを除去したものであることを特徴とする。
請求項11記載の本発明は、請求項10に記載の地形図表示システムにおいて、前記地表面外データ除去ステップでは、前記地図データを、上空から見た平面図の状態で所定間隔ごとに切断面23を設定し、それぞれの前記切断面23に対して、前記計測点群データ22の高さ方向の分布により、前記地表面の上に存在する前記立設物データ22bを、前記地表面の前記点群データ22aと区分することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の地形図表示システムによれば、地形判読だけではなく、特に土木工事の施工にあたって重要な特定の傾斜範囲にある傾斜面を視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例による地形図表示システムの処理ステップを示すフロー図
図2図1におけるS1からS3までを示す説明図
図3】歩行の可能性を区分して視認できるように配色を施した画面イメージ
図4】車両走行の可能性を区分して視認できるように配色を施した画面イメージ
図5】重機走行の可能性を区分して視認できるように配色を施した画面イメージ
図6】本実施例における傾斜角処理及び起伏処理を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による地形図表示システムは、コンピュータが点群データを用いて地表面を単位面に区分けする面化処理ステップと、単位面についての傾斜角を算出する傾斜角処理ステップと、傾斜角に応じて単位面に配色を施す配色処理ステップとを有し、配色処理ステップでは、複数の傾斜範囲に区分して、特定の傾斜範囲を他の傾斜範囲と区別して視認できるように配色を施し、傾斜角処理ステップでは、点群データの中から近接する3つ以上のポイントを抽出し、抽出した3つ以上のポイントによって囲まれる面を単位面とし、単位面の法線から傾斜角を算出するものである。
本実施の形態によれば、地形判読だけではなく、特に土木工事の施工にあたって重要な傾斜面を視認することができる。また、点群データを用いて傾斜面を算出できる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による地形図表示システムにおいて、傾斜範囲を、歩行が可能な第1の傾斜範囲と、歩行が難航する第2の傾斜範囲と、歩行が不可能な第3の傾斜範囲とに区分したものである。
本実施の形態によれば、ヒトが歩行可能か否かを地形図で判断でき、歩行ルートの決定や施工や測量作業の可能性を判断できる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による地形図表示システムにおいて、傾斜範囲を、車両走行が可能な第1の傾斜範囲と、車両走行が難航する第2の傾斜範囲と、
車両走行が不可能な第3の傾斜範囲とに区分したものである。
本実施の形態によれば、車両が走行可能か否かを地形図で判断でき、走行ルートの決定や車両を用いた施工や測量作業の可能性を判断できる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1の実施の形態による地形図表示システムにおいて、傾斜範囲を、重機走行が可能な第1の傾斜範囲と、重機走行が難航する第2の傾斜範囲と、重機走行が不可能な第3の傾斜範囲とに区分したものである。
本実施の形態によれば、重機が走行可能か否かを地形図で判断でき、走行ルートの決定や重機を用いた施工や測量作業の可能性を判断できる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による地形図表示システムにおいて、コンピュータが、ユーザによって入力された傾斜角で傾斜範囲を特定する傾斜範囲特定ステップを有し、配色処理ステップでは、傾斜範囲特定ステップで入力された傾斜範囲に対して配色を施すものである。
本実施の形態によれば、入力された傾斜角で傾斜範囲が特定されることで、ユーザは目的に応じた傾斜面を視認することができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による地形図表示システムにおいて、コンピュータがユーザの選択によって傾斜範囲に施す配色を特定する配色特定ステップを有し、配色処理ステップでは、配色特定ステップで選択された配色を用いるものである。
本実施の形態によれば、ユーザの好みや視認性に応じて配色できる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第1の実施の形態による地形図表示システムにおいて、コンピュータが起伏を算出する起伏処理ステップを有し、起伏処理ステップでは、単位面に接する複数の隣接単位面の法線について、各隣接単位面から得られる全ての曲率に対する平均曲率から起伏を算出し、配色処理ステップでは、傾斜角に対しては色相を異ならせ、起伏に対しては輝度を異ならせるものである。
本実施の形態によれば、傾斜角とともに起伏を把握でき、例えば、地滑り面、土石流、又は風水害の発生面や被害範囲を予測することができる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態は、第7の実施の形態による地形図表示システムにおいて、傾斜角処理ステップで算出される傾斜角が所定値以上であり、起伏処理ステップで算出される起伏が凸である単位面を、地震時崩壊斜面として視認できるように配色を施して表示するものである。
本実施の形態によれば、地震時崩壊斜面を予測することができる。
【0017】
本発明の第9の実施の形態は、第1から第8のいずれかの実施の形態による地形図表示システムにおいて、面化処理ステップで用いる点群データは、ユーザによって選択された間引き率によって決定されるものである。
本実施の形態によれば、間引き率を変更することで、精度と処理速度とのいずれかを優先することができる。
【0018】
本発明の第10の実施の形態は、第1から第9のいずれかの実施の形態による地形図表示システムにおいて、コンピュータが、上空から計測した計測点群データを取得する計測データ取得ステップと、計測点群データによって生成される地図データから、地表面の上に存在する立設物データを除去する地表面外データ除去ステップとを有し、面化処理ステップで用いる点群データは、地表面外データ除去ステップで立設物データを除去したものである。
本実施の形態によれば、上空から計測した計測点群データから地表面の点群データを抽出し、特定の傾斜範囲を他の傾斜範囲と区別して視認できるように配色を施すことができる。
【0019】
本発明の第11の実施の形態は、第10の実施の形態による地形図表示システムにおいて、地表面外データ除去ステップでは、地図データを、上空から見た平面図の状態で所定間隔ごとに切断面を設定し、それぞれの切断面に対して、計測点群データの高さ方向の分布により、地表面の上に存在する立設物データを、地表面の点群データと区分するものである。
本実施の形態によれば、上空から計測した計測点群データから地表面の点群データを抽出することができる。
【実施例
【0020】
以下本発明の一実施例による地形図表示システムについて説明する。
図1は本実施例による地形図表示システムの処理ステップを示すフロー図である。
本実施例による地形図表示システムは、遠隔操作や自動制御によって飛行できる無人航空機によって計測した計測点群データ22(図2参照)を用いることができる。無人航空機による計測には、写真計測やレーザー計測を用いることができる。
コンピュータは、無人航空機によって計測した計測点群データ22を取得する計測データ取得ステップ(S1)と、計測点群データ22によって生成される地図データから、地表面の上に存在する立設物データを除去する地表面外データ除去ステップ(S2)とを有する。
地表面外データ除去ステップ(S2)において、計測点群データ22から地表面の上に存在する立設物データが除去されることで、地表面の点群データが生成され、生成された点群データは記憶される(S3)。
コンピュータは、S3で記憶された点群データを用いて、面化処理ステップ(S5)、傾斜角処理ステップ(S6)、起伏処理ステップ(S7)、及び配色処理ステップ(S10)を行うが、面化処理ステップ(S5)で用いる点群データは、ユーザによって選択された間引き率によって決定される(S4)。
面化処理ステップ(S5)では、点群データを用いて地表面を単位面に区分けする。
傾斜角処理ステップ(S6)では、単位面についての傾斜角を算出する。
起伏処理ステップ(S7)では、起伏を算出する。
配色処理ステップ(S10)では、傾斜角及び起伏に応じて単位面に配色を施す。
コンピュータは、ユーザによって入力された傾斜角で傾斜範囲を特定する傾斜範囲特定ステップ(S8)を有しており、配色処理ステップ(S10)では、傾斜範囲特定ステップ(S8)で入力された傾斜範囲に対して配色を施す。
また、コンピュータは、ユーザの選択によって傾斜範囲に施す配色を特定する配色特定ステップ(S9)を有し、配色処理ステップ(S10)では、配色特定ステップ(S9)で選択された配色を用いる。
コンピュータは、配色特定ステップ(S9)で配色した地形図を表示する(S11)。
【0021】
図2図1におけるS1からS3までを示す説明図である。
図2(a)は計測データ取得ステップ(S1)を示すイメージ図である。無人航空機21によって上空から撮像した写真などから計測点群データ22を取得する。計測点群データ22には、地表面の点群データである地表面データ22aの他に地表面上に存在する立木などの立設物データ22bが含まれている。
図2(b)は図2(a)で取得した計測点群データ22によって生成される地図データであり、上空から見た平面図の状態である。図2(b)では、計測点群データ22によって生成される地図データに対して任意の切断面23を設定した状態を示している。
図2(c)は、図2(b)に示す切断面23における計測点群データ22を示している。図2(c)に示すように、地表面データ22aの他に立設物データ22bが含まれている。
図2(d)に示すように、計測点群データ22の高さ方向の分布により、地表面の上に存在する立設物データ22bを、地表面データ22aと区分することができる。
図2(e)は、図2(d)から地表面データ22aだけを抽出した状態を示している。
図2(b)から図2(e)は、切断面23について説明したが、上空から見た平面図の状態で所定間隔ごとに切断面23を設定し、それぞれの切断面23に対して、計測点群データ22の高さ方向の分布により、地表面の上に存在する立設物データ22bを、地表面データ22aと区分し、地表面データ22aを抽出することで図2(f)に示すように、地表面データ22aだけの地図データとすることができる。
【0022】
図3は歩行の可能性を区分して視認できるように配色を施した画面イメージであり、図3(a)はユーザ設定部と配色された地形図、図3(b)はユーザ設定部の一部拡大図である。
図3では、傾斜範囲を、歩行が可能な第1の傾斜範囲と、歩行が難航する第2の傾斜範囲と、歩行が不可能な第3の傾斜範囲とに区分し、特定の傾斜範囲を他の傾斜範囲と区別して視認できるように配色を施している。
歩行が可能な第1の傾斜範囲は0度以上20度未満として水色を施している。歩行が難航する第2の傾斜範囲は20度以上45度未満として青色を施している。歩行が不可能な第3の傾斜範囲は45度以上90度未満として紫色を施している。
【0023】
図3に示すように、ヒトが歩行可能か否かを地形図で判断でき、歩行ルートの決定や施工や測量作業の可能性を判断できる。
読込間引き率部31は、ユーザによって選択される点群データの間引き率であり、間引き率を変更することで、精度と処理速度とのいずれかを優先することができる。S3で記憶されている特定エリアについての全ての点群データを選択することもできるが、間引き率を1/2や1/3に選択することもできる。
ファイル選択部32は、表示させたいエリアを選択する。
傾斜角入力部33は、ユーザが傾斜角を入力でき、ユーザの入力によって傾斜範囲を変更することができる。コンピュータは、ユーザによって入力された傾斜角で傾斜範囲を特定する。
図3に示す歩行の可能性は、あらかじめ傾斜角が設定されていることが好ましいが、ユーザによって変更できるものであってもよい。
配色選択部34は、ユーザの選択によって配色を変更でき、ユーザの選択によって傾斜範囲に施す配色を変更することができる。コンピュータは、ユーザが選択した配色で傾斜範囲に施す配色を変更する。
配色選択部34で選択できる配色は、パレット選択部35によってユーザが変更できる。
ユーザ設定部には、階調調整部36、輝度強調部37、彩度強調部38、及び高さ強調部39を有している。輝度強調部37は起伏の視認性を変更できる。
傾斜角に対しては色相を異ならせ、起伏に対しては輝度を異ならせ、彩度を画像全体の色調調整に割り当て、更に高さ強調を行うことで、傾斜角とともに起伏を把握でき、例えば、地滑り面、土石流、又は風水害の発生面や被害範囲を予測することができる。
【0024】
図4は車両走行の可能性を区分して視認できるように配色を施した画面イメージである。
図4では、傾斜範囲を、車両走行が可能な第1の傾斜範囲と、車両走行が難航する第2の傾斜範囲と、車両走行が不可能な第3の傾斜範囲とに区分し、特定の傾斜範囲を他の傾斜範囲と区別して視認できるように配色を施している。
車両走行が可能な第1の傾斜範囲は0度以上5.7度未満として水色を施している。車両走行が難航する第2の傾斜範囲は5.7度以上6度未満として青色を施している。車両走行が不可能な第3の傾斜範囲は6度以上8.5度未満として紫色を施し、更に傾斜範囲が8.5度以上には赤色を施している。
図4に示すように、車両が走行可能か否かを地形図で判断でき、走行ルートの決定や施工や測量作業の可能性を判断できる。
【0025】
図5は重機走行の可能性を区分して視認できるように配色を施した画面イメージである。
図5では、傾斜範囲を、重機走行が可能な第1の傾斜範囲と、重機走行が難航する第2の傾斜範囲と、重機走行が不可能な第3の傾斜範囲とに区分し、特定の傾斜範囲を他の傾斜範囲と区別して視認できるように配色を施している。
重機走行が可能な第1の傾斜範囲は0度以上33度未満として水色を施している。重機走行が難航する第2の傾斜範囲は33度以上40度未満として青色を施している。重機走行が不可能な第3の傾斜範囲は40度以上として紫色を施している。
図5に示すように、重機が走行可能か否かを地形図で判断でき、走行ルートの決定や施工や測量作業の可能性を判断できる。
【0026】
図6は本実施例における傾斜角処理及び起伏処理を示す図である。
図6(a)に示すように、傾斜角処理ステップ(S6)では、点群データの中から近接する3つのポイント41、42、43を抽出し、抽出した3つのポイント41、42、43によって囲まれる面を単位面Xとし、単位面Xの法線から傾斜角を算出する。
このように点群データを用いて傾斜面を算出できる。
そして図6(b)及び図6(c)に示すように、起伏処理ステップ(S7)では、単位面Xに接する複数の隣接単位面A、B、Cの法線について、各隣接単位面A、B、Cから得られる全ての曲率に対する平均曲率から起伏を算出する。
このように、傾斜角とともに起伏を把握できることで、例えば、地滑り面、土石流、又は風水害の発生面や被害範囲を予測することができる。
なお、図6では3つのポイント41、42、43を用いた場合を示したが、4つ以上のポイントを用いてもよい。
【0027】
以上のように本実施例による地形図表示システムは、特定の傾斜範囲を他の傾斜範囲と区別して視認できるように配色を施すことで、地形判読だけではなく、特に土木工事の施工にあたって重要な傾斜面を視認することができる。
また、入力された傾斜角で傾斜範囲が特定されることで、ユーザは目的に応じた傾斜面を視認することができる。
また、傾斜角処理ステップ(S6)で算出される傾斜角が所定値以上であり、起伏処理ステップ(S7)で算出される起伏が凸である単位面Xを、地震時崩壊斜面として視認できるように配色を施して表示することで、地震時崩壊斜面を予測することができる。
また、本実施例による地形図表示システムは、上空から計測した計測点群データ22から地表面データ22aを抽出し、特定の傾斜範囲を他の傾斜範囲と区別して視認できるように配色を施すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明による地形図表示システムは特に土木工事の施工に利用できる。
【符号の説明】
【0029】
22 計測点群データ
22a 地表面データ(地表面の点群データ)
22b 立設物データ
23 切断面
31 読込間引き率部
32 ファイル選択部
33 傾斜角入力部
34 配色選択部
35 パレット選択部
36 階調調整部
37 輝度強調部
38 彩度強調部
39 高さ強調部
41、42、43 ポイント
A、B、C 隣接単位面
X 単位面
図1
図2
図3
図4
図5
図6