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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】配管用エルボカバー
(51)【国際特許分類】
   F16L 57/00 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
F16L57/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023041553
(22)【出願日】2023-03-16
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】523098212
【氏名又は名称】岩田 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100180264
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 貴大
(72)【発明者】
【氏名】岩田 幸一
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247402(JP,A)
【文献】特開2001-324086(JP,A)
【文献】特開2008-095747(JP,A)
【文献】特開2015-169218(JP,A)
【文献】特開2024-041351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲した配管を被覆する配管用エルボカバーであって、
半円の円弧を形成するように曲げられた複数枚の樽型板を繋いで形成したコーナー部と、前記コーナー部の両内径側に接続する2枚の固定板と、を有し、
前記固定板は、前記コーナー部に接続する扇形部と、前記扇形部と一体的に繋がっている結合部と、を備え、
前記結合部は、前記結合部どうしを嵌め外しできる係止部分を備え、
前記結合部どうしを結合した状態のとき、前記コーナー部及び前記固定板のそれぞれの縁部分で2箇所の開口部が形成されており、前記係止部が前記開口部の一方と同一面内で係止されていることを特徴とする配管用エルボカバー。
【請求項2】
係止した前記係止部分と同一面内にある前記開口部を塞ぐ蓋部材を設け、前記結合部及び前記蓋部材の一部が切り取り可能であることを特徴とする請求項1に記載の配管用エルボカバー。
【請求項3】
配管の屈曲が直角のとき、前記扇形部の中心角が90度であって、前記結合部の形状が前記扇形部の半径を一辺とする四角形であって、前記結合部及び前記蓋部材の一部を切り取って貫通孔を形成し前記貫通孔に配管を貫通させることができることを特徴とする請求項2に記載の配管用エルボカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷暖房や給排水管などの各種配管のラッキングに用いられる配管用のカバーであって、屈曲した配管を被覆するのに用いられる配管用エルボカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ラッキングとは、冷暖房や給排水管などの配管に施工する板金工事のことであり、一般的には、各種配管に保温や保冷を目的とする保温材や断熱材を巻きつけ、その上から薄い金属で被覆することである。ラッキングによって、保温、保冷、断熱、防音などの効果が得られるだけでなく、配管の耐久性向上、省エネ、美観といった効果も期待できる。
【0003】
ラッキングに用いられるカバーとしては、配管の直線部分を被覆する四角形の金属板を丸めて形成される円筒形のカバーや、屈曲した配管を被覆するエルボカバーなどがある。なお、配管の屈曲の角度は、基本的には直角が多いが、当然、鈍角や鋭角の場合もある。
【0004】
一般的な配管用エルボカバーは、例えば、特許文献1に開示されているような構造である。図5は、従来の配管用エルボカバーを製作順に示した図である。一般的な配管用エルボカバー100は、(a)に示すような樽型板111を(b)に示すような半円形に曲げ、それを複数枚用意し、それぞれの縁部を重合した状態で重合線に沿って接合して(c)に示すようなコーナー部110を形成する。そして、このコーナー部110の内端部に扇形取付板115を接合して(d)のような配管用エルボカバー100が完成する。ここで、扇形取付板115は左右対称の形状で、開扇状部と、その扇形の要の位置から伸びた狭長板状部の先端付近に係止部分116と、を有している。そして、この配管用エルボカバー100を配管に取り付けるときは、(e)に示すように扇形取付板115の互いの狭長板状部の下端部を折り曲げて係止部分116を係止させることで、配管に巻かれた保温材等を被覆することができる。なお、樽型板111どうしや扇形取付板115との接合方法としては、従来はハンダ付けや接着剤が用いられていたが、特許文献1では、機械的接合手段によることが開示されている。なお、樽型とは、図5(a)のように長方形の長辺の間の幅が長辺の中央で少し膨らんでいる形状とする。また、コーナー部110は直角に屈曲するエルボカバーのアウトコース側の部分であり、コーナー部110の内端部というのはインコース側の部分である。また、コーナー部110は、同一の樽型板111だけで形成することもできるが、樽型板111と長方形の板を組み合わせたり、形状の異なる数種類の樽型板111を組み合わせて用いたりすることもできる。
【0005】
図6は、従来の配管用エルボカバーを直角に曲がった配管に被覆した状態を示す図である。配管用エルボカバー100は、係止部分116を係止することで、保温材等140を巻いた配管50を被覆して固定される。このとき、直角に曲がった配管50に対して45゜の方向に係止部分116が来るように配管用エルボカバー100は設けられる。また、係止部分116を係止すると、配管用エルボカバー100には直角方向に2箇所の開口部121,121が形成されるので、その開口部121,121に、円筒形のカバー130,130の端部が挿入される。なお、この円筒形のカバー130は、保温材等140の上から被覆するもので、長方形の板を丸めて円筒形を形成し、係止するものである。
【0006】
ここで示した配管用エルボカバー100では、開口部121を含む面の面外に係止部分116の一部が突出することになる。それを踏まえて、図7には、従来の配管用エルボカバーが施工できない配管の例を示している。ここでは、壁80を貫通している配管50と、壁80に沿った配管51とが直角に接合されている構造の場合を説明する。このような配管50,51の場合、壁80に沿った配管51が壁80に近すぎるため、配管用エルボカバー100の係止部分116が壁80と配管51との隙間では係止することができず、このままの形状では配管用エルボカバー100を施工できないことになる。このような場合は、現場にて、配管用エルボカバーの一部を切断するなどの加工をして、何とか施工するのだが、そのような本来とは違う取り扱い方法では、配管用エルボカバーを取り付けたときの結合力が弱くて外れやすかったり、美観的にあまり好ましくない仕上がりになることがある。また、加工作業が煩雑であり、作業の手間を増やすことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001―324086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような実情に鑑み、本願発明は、壁から突出している配管と壁に沿った配管との屈曲した接合部のように、スペースがあまり無いような配置の屈曲した配管を容易に被覆することができる配管用エルボカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の配管用エルボカバーは、屈曲した配管を被覆する配管用エルボカバーであって、半円の円弧を形成するように曲げられた複数枚の樽型板を繋いで形成したコーナー部と、そのコーナー部の両内径側に接続する2枚の固定板と、を有し、固定板は、コーナー部に接続する扇形部と、その扇形部と一体的に繋がっている結合部と、を備え、結合部は、結合部どうしを嵌め外しできる係止部分を備え、結合部どうしを結合した状態のとき、コーナー部及び固定板のそれぞれの縁部分で2箇所の開口部が形成されており、係止部が開口部の一方と同一面内で係止されていることとする。
【0010】
また、係止した係止部分と同一面内にある開口部を塞ぐ蓋部材を設け、結合部分及び蓋部材の一部が切り取り可能であることにしてもよく、さらに、配管の屈曲が直角のとき、扇形部の中心角が90度であって、結合部の形状が扇形部の半径を一辺とする四角形であることにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の配管用エルボカバーによると、壁から突出している配管と壁に沿った配管との屈曲した接合部のようにスペースがあまり無いような箇所であっても、容易に屈曲した配管を被覆することが可能な配管用エルボカバーを提供することができる。
【0012】
また、開口部をあらかじめ蓋部材で塞いでおき、現場にて、配管を貫通させる範囲又は円筒形のカバーを挿入できる範囲だけ切り取ることで、最小限の加工作業で、きれいに配管用エルボカバーを施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の配管用エルボカバーであって、(a)は結合前、(b)は結合後、(c)は結合後の正面図である。
図2】本発明の配管用エルボカバーの別の実施例である。
図3】本発明の配管用エルボカバーを直角に曲がった配管に被覆した状態を示す図である。
図4】配管用エルボカバーの別の実施例であって、(a)は結合前、(b)は結合後、(c)は結合後の正面図である。
図5】従来の配管用エルボカバーを製作順に示した図である。
図6】従来の配管用エルボカバーを直角に曲がった配管に被覆した状態を示す図である。
図7】従来の配管用エルボカバーが施工できない配管の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の配管用エルボカバーは、屈曲した配管を被覆するために用いるものであって、配管の周囲に保温材や断熱材などを巻きつけ、その外側を被覆するものである。配管用エルボカバーの素材は、アルミやステンレス鋼板などの薄い金属製とするのを基本とする。以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の配管用エルボカバーであって、(a)は結合前、(b)は結合後、(c)は結合後の正面図である。図1に例示した配管用エルボカバー1は、直角に折れ曲がった配管を被覆するものなので、2箇所の開口部21,22が形成され、一方の開口部21に対して他方の開口部22は90゜方向に開口している。この90゜に折れ曲がる外側(アウトコース側)にコーナー部10を配置し、内側(インコース側)に結合部17を備えた固定板15が配置されている。
【0016】
コーナー部10は、半円の円弧を形成するように曲げられた複数枚の樽型板11を繋いで形成されている。樽型板11は、従来の配管用エルボカバーに用いられる部材と同様に、長方形の長辺の間の幅が長辺の中央で少し膨らんでいる形状の板である。なお、屈曲の角度は、90゜以外の場合もあり、そのときは、コーナー部10を形成する樽型板11の膨らみの形状や枚数を増減させたり、樽型以外に長方形の板を組み合わせたりすることで、鋭角や鈍角の配管にも対応することができる。また、樽型板11どうしの接合方法については、重合した部分をハンダ付けや接着剤で接着するだけでなく、機械的接合などでもよく、特に限定はしない。
【0017】
コーナー部10だけだと内側が閉じられていない状態なので、コーナー部10の両内径側に固定板15を接続し、その固定板15の結合部17どうしが結合できる構造とする。なお、コーナー部10と固定板15との接合方法も、特に限定しないが、リベットを用いて留めることもできる。固定板15は、コーナー部10の樽型板11に接続する扇形部16と、その扇形部16と一体的に繋がっている結合部17からなる。そして、結合部17の先端付近には、結合部17どうしを嵌めたり外したりできる係止部分18を備えている。係止部分18の構造は特に限定せず、互いに引っ掛けあって係止できるような爪部を設けてもよいし、ベルトに用いられるような固定具を設けてもよい。
【0018】
そうして、係止部分18を係止することで結合部17どうしが結合された状態のとき、コーナー部10及び固定板15のそれぞれの縁部分で2箇所の開口部21,22が形成される。なお、ここでは便宜上、図の左端に位置する開口部を第1の開口部21とし、図の下端に位置する開口部を第2の開口部22とする。このとき、第1の開口部21を含む面と第2の開口部22を含む面とのそれぞれの法線方向がなす角度は、配管の屈曲の角度になっており、図1では90゜である。また、基本的には、それぞれの開口部21,22には円筒形のカバーが挿入されるので、開口の形状は円形が望ましい。そこで、結合部17の形状をあらかじめ円形の開口を形成するような形状にしておいてもよいし、第1の開口部21に結合部17の一部が被さる場合には、現場で結合部17の一部を切り取って開口の形状を整える加工をするとよい。なお、第2の開口部22に関しては、扇形部16や結合部17に軽く周辺から力を加えて、開口の形状が円形になるように変形させるとよい。
【0019】
図2は、本発明の配管用エルボカバーの別の実施例である。これらは、図1に示した配管用エルボカバー1の形状だと、第1の開口部21より第2の開口部22の方が開口面積が大きくなるので、それを修正したものである。(a)の実施例は、第2の開口部22に近づくほど小さい樽型板11を用いてコーナー部10を形成したものであり、(b)の実施例は、扇形部18を縦長にし、コーナー部10の第2の開口部22に接する位置にほぼ長方形の樽型板11を用いたものである。このような修正を行うことで、第1の開口部21の開口面積A1と第2の開口部22の開口面積A2を同程度にすることができる。
【0020】
また、本発明の配管用エルボカバー1の特徴としては、係止部分18が開口部の一方と同一面内で係止されていることとしている。なお、図1に示した配管用エルボカバー1は、係止部分18が第1の開口部21と同一面内で係止されている実施例である。つまり、図1(b)において、図の左端が一直線に揃っている状態である。
【0021】
図1に示した本発明の配管用エルボカバー1を用いるのに適した配管の配置について、以下説明する。図3は、本発明の配管用エルボカバーを直角に曲がった配管に被覆した状態を示す図である。具体的には、壁80を貫通して突出している配管50と壁80に沿った配管51とが直角に屈曲して接合されているところに、本発明の配管用エルボカバー1を使ってラッキングを施したものである。ここでは、壁80に沿った方向に開いている第2の開口部22には、保温材等140を内包した円筒形のカバー130が挿入されているが、第1の開口部21には配管50のみが貫通している。なお、第1の開口部21についても、現場の状況によっては、円筒形のカバー130を接続することも可能である。
【0022】
本発明の配管用エルボカバー1の係止部分18は、第1の開口部21と同一面内で係止する構造なので、壁80に沿った配管51と壁80との隙間が狭くても、係止することが可能である。したがって、従来の配管用エルボカバーではスペースが足りずに施工が難しいこのような構造でも、施工することができる。そして、第1の開口部21と係止部分18が同一面内にあるので、その面を壁80にピタリと接触させれば、保温性や美観に優れたラッキングを行うことができる。なお、壁に近くない普通に屈曲した配管であっても本発明の配管用エルボカバーの施工が可能であることは、言うまでもない。
【0023】
次に、図4は、配管用エルボカバーの別の実施例であって、(a)は結合前、(b)は結合後、(c)は結合後の正面図である。ここでは、扇形部16の中心角が90度であって、結合部17の形状が扇形部16の半径を一辺とする四角形となっている。四角形というのは、長方形や横に倒した台形など、特に限定しない。そして、このような結合部17の形状の場合、係止部分18を係止したとき、第1の開口部21の一部が結合部17で塞がれることになる。このような場合は、現場にて結合部17の一部を切り取って開口部21の大きさや形状を調整することになる。
【0024】
ここで、図3のように壁80から突出している配管50のみを第1の開口部21に通したい場合、第1の開口部21が大きすぎることがある。そこで、第1の開口部21が形成される面をあらかじめ蓋部材25で塞いでおき、現場にて、結合部17及び蓋部材25の一部を切り取って、貫通孔26を設けられる構成にしてもよい。なお、蓋部材25は、第1の開口部21においてコーナー部10の縁に接着され、下端は結合した結合部17と少し重複する程度までの長さがあればよい。図4(c)の二点鎖線は、貫通孔26を設けるための切り取り線を示しており、配管50が貫通できる大きさとなっている。なお、現場で施工する場合は、貫通孔26を形成してから配管用エルボカバー1を配管に取り付ければよい。
【0025】
以上の通り、本発明の配管用エルボカバーを用いると、一般的な配管の屈曲部だけでなく、壁と配管が近くて係止するスペースが小さい場所でも、現場での作業を最小限に抑えつつ、十分に強固で、かつ、美観の優れたラッキングを実施することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 配管用エルボカバー
10 コーナー部
11 樽型板
15 固定板
16 扇形部
17 結合部
18 係止部分
21 第1の開口部
22 第2の開口部
25 蓋部材
26 貫通孔
50,51 配管
80 壁
100 配管用エルボカバー
110 コーナー部
111 樽型板
115 扇形取付板
116 係止部分
121 開口部
130 円筒形のカバー
140 保温材等
【要約】
【課題】 壁から突出している配管と壁に沿った配管との屈曲した接合部のように、スペースがあまり無いような配置の屈曲した配管でも、容易に被覆することができる配管用エルボカバーを提供する。
【解決手段】 屈曲した配管を被覆する配管用エルボカバー1であって、半円の円弧を形成するように曲げられた複数枚の樽型板11を繋いで形成したコーナー部10と、そのコーナー部の両内径側に接続する2枚の固定板15と、を有し、固定板は、コーナー部に接続する扇形部16と、その扇形部と一体的に繋がっている結合部17と、を備え、結合部は、結合部どうしを嵌め外しできる係止部分18を備え、結合部どうしを結合した状態のとき、コーナー部及び固定板のそれぞれの縁部分で2箇所の開口部21,22が形成されており、係止部が開口部の一方と同一面内で係止されている構造とする。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7