(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】在高管理装置、在高管理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/02 20230101AFI20240925BHJP
【FI】
G06Q40/02
(21)【出願番号】P 2023122899
(22)【出願日】2023-07-27
(62)【分割の表示】P 2019205510の分割
【原出願日】2019-11-13
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】高野 昌泰
(72)【発明者】
【氏名】仁田 雅彦
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-168001(JP,A)
【文献】特開平08-315217(JP,A)
【文献】特開2016-164734(JP,A)
【文献】特開2017-151871(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031374(WO,A1)
【文献】特開平11-086089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象店舗および複数の店舗のうちから絞り込み条件により絞り込んだ少なくとも1つの比較対象店舗における現金取引に関する取引データをそれぞれ取得する取得部と、
前記取引データに基づいて、前記対象店舗および前記比較対象店舗に係る実績輸送量および現金在高の推移をそれぞれ算出する算出部と、
前記対象店舗および前記比較対象店舗に係る前記実績輸送量および前記現金在高の推移を出力する出力部と、
を備える在高管理装置。
【請求項2】
前記絞り込み条件は、単位期間あたりの出金総額、入金総額、在高総額、紙幣入金平均枚数、紙幣出金平均枚数、硬貨入金平均枚数、硬貨出金平均枚数、オペレータ人数および処理件数のうち少なくともいずれか1つのカテゴリを含む
請求項1に記載の在高管理装置。
【請求項3】
前記複数の店舗は前記カテゴリについて予めクラス化され、
前記出力部は、前記対象店舗に係る前記カテゴリのクラスを表示する
請求項2に記載の在高管理装置。
【請求項4】
前記出力部は前記絞り込み条件に合致する店舗の一覧を出力し、さらに前記店舗の一覧には前記絞り込み条件で設定されていない条件に係るカテゴリのクラスを出力する
請求項3に記載の在高管理装置。
【請求項5】
前記算出部は、現金輸送を実施するタイミングが異なる複数の輸送パターンそれぞれについて、前記対象店舗の取引データに基づいて、前記現金取引に応じた現金在高を実現するために輸送すべき現金の量である提案輸送量を算出する
請求項1に記載の在高管理装置。
【請求項6】
前記対象店舗の取引データに基づいて、将来の現金取引に係る現金の量を示す予測取引データを生成する予測部を備え、
前記算出部は、前記予測取引データに係る現金の量に基づいて前記提案輸送量を算出する
請求項5に記載の在高管理装置。
【請求項7】
コンピュータが、対象店舗および複数の店舗のうちから絞り込み条件により絞り込んだ少なくとも1つの比較対象店舗における現金取引に関する取引データをそれぞれ取得するステップと、
前記コンピュータが、前記取引データに基づいて、前記対象店舗および前記比較対象店舗に係る実績輸送量および現金在高の推移をそれぞれ算出するステップと、
前記コンピュータが、前記対象店舗および前記比較対象店舗に係る前記実績輸送量および前記現金在高の推移を出力するステップと、
を有する在高管理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
対象店舗および複数の店舗のうちから絞り込み条件により絞り込んだ少なくとも1つの比較対象店舗における現金取引に関する取引データをそれぞれ取得するステップと、
前記取引データに基づいて、前記対象店舗および前記比較対象店舗に係る実績輸送量および現金在高の推移をそれぞれ算出するステップと、
前記対象店舗および前記比較対象店舗に係る前記実績輸送量および前記現金在高の推移を出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、在高管理装置、在高管理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関のセンタ部門に在高管理サーバを設置し、各営業店での現金在高を集中して管理する現金管理システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。在高管理サーバには、通信回線を介して、各営業店に設置されたオープン出納機が接続される。オープン出納機は、それ自体に現金を収容してその入出金を管理すると共に、営業店に設けられた金庫および窓口現金機や両替機の入出金も管理する。このような現金管理システムにおいて、在高データの履歴に基づいて翌営業日の資金必要額が予測計算され、その予測額に基づいて現金輸送ルートの計算が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現金を輸送する場合、現金輸送車を用い、警備業務を行う警備員を伴う必要がある。そのため、頻繁な現金の輸送はコストがかかる。一方で、現金輸送の頻度を下げると、営業店における現金在高が多くなるため、営業店における現金在高の確認業務などの負担が大きくなる。
本開示の目的は、店舗における現金在高を効率的に管理することができる在高管理装置、在高管理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、在高管理装置は、店舗における現金取引に関する取引データを取得する取得部と、現金輸送を実施するタイミングが異なる複数の輸送パターンそれぞれについて、前記取引データに基づいて、前記現金取引に応じた現金在高を実現するために輸送すべき現金の量である提案輸送量を算出する算出部とを備える。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、在高管理方法は、在高管理装置が、店舗における現金取引に関する取引データを取得するステップと、前記在高管理装置が、現金輸送を実施するタイミングが異なる複数の輸送パターンそれぞれについて、前記取引データに基づいて、前記現金取引に応じた現金在高を実現するために輸送すべき現金の量である提案輸送量を算出するステップとを有する。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、プログラムは、コンピュータに、店舗における現金取引に関する取引データを取得するステップと、現金輸送を実施するタイミングが異なる複数の輸送パターンそれぞれについて、前記取引データに基づいて、前記現金取引に応じた現金在高を実現するために輸送すべき現金の量である提案輸送量を算出するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0008】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、在高管理装置は、店舗における現金在高を効率的に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る銀行システムの構成を示す概略図である。
【
図2】第1の実施形態に係る取引データの一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る在高管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係るオフセット決定処理を示すフローチャートである。
【
図5】第1の実施形態に係る実績輸送量と提案輸送量の比較処理を示すフローチャートである。
【
図6】第1の実施形態に係る実績輸送量と提案輸送量の比較処理に係る第1出力画面の例である。
【
図7】第1の実施形態に係る実績輸送量と提案輸送量の比較処理に係る第2出力画面の例である。
【
図8】第1の実施形態に係る将来の提案輸送量の算出処理を示すフローチャートである。
【
図9】第1の実施形態に係る店舗間における在高の比較処理を示すフローチャートである。
【
図10】第1の実施形態に係る類似店舗検索画面の例である。
【
図11】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈第1の実施形態〉
《銀行システム1の構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る銀行システム1の構成を示す概略図である。
第1の実施形態に係る銀行システム1は、本店11と、複数の営業店12とを有する。各営業店12には、窓口用貨幣入出金機(オートキャッシャー)、両替機などの現金取引を扱う現金処理機100と、当該営業店の現金在高を管理する出納機200と、営業店に必要な現金在高を予測し、現金在高の適正化を図る在高管理装置300とを備える。各現金処理機100と出納機200と在高管理装置300とは営業店12のローカルネットワークで互いに接続される。
【0011】
各営業店12は、現金在高を適正な量に保つために、本店11との間で現金輸送を行う。すなわち、営業店12は、将来の現金取引によって現金在高の不足が想定される場合に、本店11から現金を受け入れる現受を行い、将来の現金取引によって現金在高の過剰が想定される場合に、本店11へ現金を送る現送を行う。現金輸送は、警備会社によって、現金輸送車を用いてなされる。以下、現金輸送に係る金種ごとの枚数または金額を、輸送量という。
【0012】
出納機200は、オペレータによる入出金操作を受け付け、当該入出金操作に応じて当該出納機200が保持する現金の入出金を受け入れる。このとき、出納機200は、入出金操作に係る取引データを生成する。また、出納機200は、ローカルネットワークを介して、各現金処理機100から現金取引に係る取引データを収集する。これにより、出納機200の内部データベースには、営業店12全体の現金取引に係る取引データが、記憶される。
図2は、第1の実施形態に係る取引データの一例を示す図である。
取引データは、取引日時、入出金の別、取引種別、および金種ごとの取引量(取引枚数)を含む。また、取引データには、現金輸送に係る入手金を示す輸送データが含まれる。輸送データの取引種別は、現受または現送を示す。なお、他の実施形態においては、現金処理機100による取引データと輸送データとが別個に管理されてもよい。
【0013】
《在高管理装置300の構成》
図3は、第1の実施形態に係る在高管理装置300の構成を示す概略ブロック図である。
在高管理装置300は、取得部301、予測部302、オフセット決定部303、入力部304、算出部305、評価部306、出力部307を備える。
【0014】
取得部301は、出納機200の内部データベースから取引データおよび輸送データを取得する。
予測部302は、取得部301が取得した取引データに基づいて、将来の所定期間に係る取引データを示す予測取引データを生成する。予測部302は、例えば取得部301が取得した過去の取引データを学習用データセットに用いた学習により、係数が決定された学習済みモデルを用いて、予測取引データを生成する。予測取引データを生成するための学習済みモデルは、例えば、第1期間に係る日ごとの日付、出金総額および最小枚数を入力サンプルとし、第1期間の直後の第2期間に係る日ごとの日付、出金総額および最小枚数を出力サンプルとする教師あり学習によって訓練されてよい。ここで、最小枚数とは、1日の入出金による取引枚数の差分の推移のうち、最も低かった時の値、すなわち現金変動の最小値をいう。第2期間に係る日ごとの日付、出金総額および最小枚数は、予測取引データの一例である。学習モデルの例としては、ランダムフォレストモデルやニューラルネットワークモデルが挙げられる。なお、学習済みモデルは、機械学習によって決定された係数と、アルゴリズムである学習モデルとを有する。
【0015】
オフセット決定部303は、取得部301が取得した実際の取引データと予測部302が生成した予測取引データとの差の散布度に基づいて、予測取引データの予測誤差を補うための現金量のオフセット値を決定する。例えば、オフセット決定部303は、月ごとの取引データと予測取引データとの標準偏差σを算出し、3σに相当する現金の量を当該月のオフセット値に決定する。
【0016】
入力部304は、利用者の操作により入力を受け付ける。具体的には、入力部304は、実績輸送量と提案輸送量の比較指示の入力、将来の提案輸送量の算出指示の入力、現金輸送のタイミングの入力、店舗間における在高の比較指示の入力を受け付ける。実績輸送量とは、取得部301が取得した輸送データが示す輸送量である。
【0017】
算出部305は、予測部302が予測した予測取引データに基づいて、入力部304に入力された現金輸送タイミングにおける現金の輸送量を算出する。すなわち、算出部305は、提案輸送量を算出する。算出部305は、取得部301が取得した取引データに基づいて、提案輸送量および実績輸送量のそれぞれに係る現金輸送を行ったときの現金在高を算出する。
【0018】
評価部306は、実績輸送量、提案輸送量、ならびに提案輸送量および実績輸送量のそれぞれに係る現金輸送を行ったときの現金在高に基づいて、提案輸送量の適正度を示す評価値を算出する。評価値の例としては在高削減率および輸送回数削減率が挙げられる。在高削減率は、実績輸送量に基づく現金在高と提案輸送量に基づく現金在高との差を、実績輸送量に基づく現金在高で除算することで求められる。輸送回数削減率は、実績輸送量に係る輸送回数と提案輸送量に係る輸送回数との差を、実績輸送量に係る輸送回数で除算することで求められる。
【0019】
出力部307は、算出部305が算出した提案輸送量、実績輸送量、提案輸送量および実績輸送量のそれぞれに係る現金輸送を行ったときの現金在高、ならびに評価部306が算出した評価値を出力する。出力部307による出力は、例えばディスプレイへの表示、シートへの印刷、記憶媒体への記録などが挙げられる。
【0020】
《オフセットの決定処理》
以下、在高管理装置300の動作について説明する。在高管理装置300は、初回の提案輸送量の算出処理の実行前に、計算された輸送量に対するオフセット値を決定する。
図4は、第1の実施形態に係るオフセット決定処理を示すフローチャートである。
まず、在高管理装置300の取得部301は、出納機200から過去の所定期間に係る取引データを取得する(ステップS1)。取引データの取得対象の期間は、例えば1年以上であってよい。次に、予測部302は、取得した取引データに基づいて、複数の異なる期間(例えば、1か月ごと)に係る予測取引データを生成する(ステップS2)。上述した通り、予測部302は、第2期間に係る日ごとの予測取引データを生成する。オフセット決定部303は、ステップS2で生成された複数の期間に係る日ごとの予測取引データと、同じ日に係る実際の取引データとを比較し、その差を算出する(ステップS3)。オフセット決定部303は、複数の予測取引データと実際の取引データとの差に基づいて、期間ごと(例えば月ごと)のオフセット値を決定する(ステップS4)。例えば、オフセット決定部303は、各月について、日ごとの取引データと予測取引データとの差の標準偏差σを算出し、3σに相当する現金の量を当該月のオフセット値に決定する。
【0021】
《実績輸送量と提案輸送量の比較処理》
在高管理装置300は、利用者から実績輸送量と提案輸送量の比較指示の入力を受け付けると、在高管理装置300は実績輸送量と提案輸送量の比較処理を開始する。
【0022】
図5は、第1の実施形態に係る実績輸送量と提案輸送量の比較処理を示すフローチャートである。
在高管理装置300の入力部304は、輸送量の比較対象に係る対象期間、および現金輸送のタイミングのパターンの入力を受け付ける(ステップS31)。入力部304は、例えば輸送タイミング間のインターバル日数、または輸送タイミングに係る1または複数の曜日の指定により、現金輸送のタイミングのパターンの入力を受け付ける。対象期間は、過去の期間であって、予測部302によって予測される第2期間に相当する長さの期間である。例えば、予測部302が1か月分の取引データを予測する場合、対象期間の長さは1か月である。
【0023】
取得部301は、ステップS31で入力された対象期間と、その直前の所定の予測期間に係る取引データおよび輸送データを取得する(ステップS32)。例えば、予測部302が1か月分の取引データを用いてその直後の1か月分の取引データを予測する場合、取得部301は、対象期間および対象期間の直前の1か月の取引データを取得する。次に、予測部302は、ステップS32で取得した予測期間に係る取引データに基づいて、対象期間に係る予測取引データを生成する(ステップS33)。
【0024】
算出部305は、ステップS33で生成された予測取引データに基づいて、ステップS31で入力された現金輸送タイミングのパターンにおける提案輸送量を算出する(ステップS34)。例えば、算出部305は、以下の手順で提案輸送量を算出する。算出部305は、パターンによって特定される現金輸送タイミングごとに、予測取引データが示す対象期間に係る日ごとの最小枚数に基づいて、当該現金輸送タイミングから次の現金輸送タイミングまでの間における最小枚数の総和を算出する。算出部305は、算出した最小枚数の総和に当該現金輸送タイミングに係る月のオフセット値を加算した値を、提案輸送量として算出する。
算出部305は、ステップS32で取得した取引データに基づいて、ステップS34で算出した提案輸送量に係る現金輸送を行ったときの日ごとの現金在高を算出する(ステップS35)以下、提案輸送量に係る現金輸送を行ったときの現金在高を在高予測値ともいう。
【0025】
算出部305は、ステップS32で取得した取引データに基づいて、ステップS32で取得した輸送データに基づく実績輸送量に係る現金輸送を行ったときの現金在高を算出する(ステップS36)。以下、実績輸送量に係る現金輸送を行ったときの現金在高を在高実績値ともいう。
【0026】
評価部306は、ステップS35で算出した在高予測値と、ステップS36で算出した在高実績値とに基づいて評価値を算出する(ステップS37)。そして、出力部307は、ステップS34で算出した提案輸送量、ステップS35で算出した在高予測値、ステップS32で取得した輸送データに基づく実績輸送量、ステップS36で算出した在高実績値、およびステップS37で算出した評価値を表示する画面を出力する(ステップS38)。
【0027】
図6は、第1の実施形態に係る実績輸送量と提案輸送量の比較処理に係る第1出力画面の例である。第1出力画面は、実績輸送量と提案輸送量に基づく現金在高および最小枚数の推移を比較する画面である。
図7は、第1の実施形態に係る実績輸送量と提案輸送量の比較処理に係る第2出力画面の例である。第2出力画面は、実績輸送量と提案輸送量に基づく輸送タイミング、輸送量、及び現金在高の推移を比較する画面である。
【0028】
出力部307は、例えば
図6に示す第1出力画面と
図7に示す第2出力画面とを切り替え可能にディスプレイに表示する。
第1出力画面には、対象期間に係る現金在高と最小枚数の推移の実績を示す第1実績グラフ、対象期間に係る提案輸送量に基づく現金在高と最小枚数の推移、および予測取引データに基づく出金予測の推移を示す第1予測グラフ、対象期間に係る取引枚数の推移の実績を示す収支グラフ、並びに評価値としての在高削減率とを含む。利用者は、第1出力画面を視認することで、提案輸送量による在高削減率、および提案輸送量の妥当性を検討することができる。なお、第1予測グラフにおいて、各日において、最小枚数がオフセットを加算した出金予測枚数を超えなければ、提案輸送量によって現金在高の枯渇が生じないことがわかる。
【0029】
第2出力画面には、対象期間に係る現金在高と現送枚数と現受枚数の推移の実績を示す第2実績グラフ、対象期間に係る提案輸送量に基づく現金在高と現送枚数と現受枚数の推移を示す第2予測グラフ、対象期間に係る取引枚数の推移の実績を示す収支グラフ、並びに評価値としての現送回数削減率および現受回数削減率とを含む。利用者は、第2出力画面を視認することで、現金輸送頻度の妥当性を検討することができる。
【0030】
なお、在高管理装置300の入力部304は、上述の処理においてステップS1で入力された現金輸送タイミングに基づく提案輸送量の計算の後に、他の現金輸送タイミングの入力を受け付けることができる。この場合、在高管理装置300は、上述のステップS31からステップS39により、現金輸送タイミングに基づく提案輸送量の計算を行う。すなわち、在高管理装置300は、現金輸送タイミングが異なる複数の輸送パターンそれぞれについて、提案輸送量を算出することができる。これにより、利用者は、店舗ごとに適切な現金輸送タイミングを検討することができる。
【0031】
《将来の提案輸送量の算出処理》
利用者は、上述の実績輸送量と提案輸送量の比較処理において店舗ごとに適切な現金輸送タイミングを検討すると、在高管理装置300を操作し、将来の提案輸送量の算出指示を入力する。
在高管理装置300は、将来の提案輸送量の算出指示を受け付けると、在高管理装置300は将来の提案輸送量の算出処理を開始する。
【0032】
図8は、第1の実施形態に係る将来の提案輸送量の算出処理を示すフローチャートである。
在高管理装置300の入力部304は、および現金輸送のタイミングの入力を受け付ける(ステップS61)。取得部301は、ステップS61で入力された現在時刻の直前の所定の予測期間に係る取引データおよび輸送データを取得する(ステップS62)。次に、予測部302は、ステップS62で取得した予測期間に係る取引データに基づいて、対象期間に係る予測取引データを生成する(ステップS63)。
【0033】
算出部305は、ステップS63で生成された予測取引データに基づいて、ステップS61で入力された現金輸送タイミングにおける提案輸送量を算出する(ステップS64)。そして、出力部307は、ステップS64で算出した提案輸送量を表示する画面を出力する(ステップS65)。
これにより、利用者は、店舗における現金輸送タイミングおよび各タイミングごとの輸送量を決定することができる。
【0034】
《店舗間における在高の比較処理》
ところで、利用者は、管理対象の店舗の現金在高が適正な量であるか否かについて、認識することが困難である場合がある。これは、店舗ごとに立地や顧客により規模や取引件数が異なり、確保すべき現金在高が異なるためである。そこで本実施形態に係る在高管理装置300は、対象店舗と同様の条件に係る他の店舗と現金在高を比較することで、利用者に相対的な現金在高の適正さを提示する。
【0035】
図9は、第1の実施形態に係る店舗間における在高の比較処理を示すフローチャートである。
図10は、第1の実施形態に係る類似店舗検索画面の例である。
利用者による操作によって在高管理装置300が、店舗間における在高の比較指示の入力を受け付けると、入力部304は、
図10に示すような類似店舗検索画面をディスプレイに表示させ、比較対象店舗の絞り込み条件の入力を受け付ける(ステップS91)。類似店舗検索画面には、対象店舗の設定ボタンB1、絞り込み条件の設定ボタンB2、類似店舗の表示ボタンB3、店舗の一覧Lが含まれる。入力部304は、絞り込み条件の設定ボタンB2の押下により、絞り込み条件の入力を受け付ける。絞り込み条件のカテゴリの例としては、単位期間あたりの出金総額、入金総額、在高総額、紙幣入金平均枚数、紙幣出金平均枚数、硬貨入金平均枚数、硬貨出金平均枚数、平均締上時刻、平均締上時間、オペレータ人数、処理件数などが挙げられる。なお、複数の店舗は、予め各カテゴリについて例えば5段階(
図10に示す例ではL1~L5)でクラス化され、在高管理装置300はそのクラスをタグデータとして予め記憶しておく。なお、このとき、利用者は対象店舗の設定ボタンB1を押下し、在高管理装置300に対象店舗のIDを入力することで、対象店舗に係る各カテゴリクラスを閲覧することができる。
【0036】
絞り込み条件の入力後、入力部304が類似店舗の表示ボタンB3の押下を受け付けると、出力部307は、入力された条件に合致する店舗の一覧Lを出力する(ステップS92)。店舗の一覧Lには、店舗IDに加え、ステップS91で設定されていない条件に係るカテゴリのクラスが表示される。これにより、利用者は、絞り込み条件によって絞り込んだ店舗と対象店舗との相違を確認することができる。入力部304は、利用者から店舗の一覧Lのうち1つの店舗の選択を受け付ける(ステップS93)。次に、取得部301は、ステップS92で選択された店舗の出納機200から取引データおよび輸送データを取得する(ステップS94)。次に、算出部305は、取得された取引データおよび輸送データに基づいて、他の店舗に係る実績輸送量および現金在高の推移を算出する(ステップS95)。そして、出力部307は、算出した他の店舗に係る実績輸送量および現金在高の推移を出力する(ステップS96)。
【0037】
利用者は、対象店舗と同様の条件で出力された他の店舗に係る実績輸送量および現金在高の推移を、対象店舗と比較することで、相対的な輸送回数及び現金在高の適正さを検討することができる。
【0038】
〈作用・効果〉
このように、第1の実施形態によれば、在高管理装置300は、店舗における現金取引に関する取引データを取得し、現金輸送を実施するタイミングが異なる複数の輸送パターンそれぞれについて提案輸送量を算出する。
これにより、利用者は、店舗における適切な輸送パターンを検討し、店舗における現金在高を効率的に管理することができる。
【0039】
ここで、第1の実施形態に係る在高管理装置300のユースケースについて説明する。 現金を輸送するためには、現金輸送車を用い、警備業務を行う警備員を伴う必要がある。そのため、現金の輸送はコストがかかる。また、営業店における現金在高が多いと、営業店における現金在高の確認業務などの負担が大きくなる。そこで、利用者は、輸送回数を異ならせた複数の輸送パターンについて在高管理装置300に提案輸送量を算出させる。これにより、利用者は、輸送に掛かるコストと、営業店における現金在高の管理に掛かるコストとのバランスを図った輸送パターンを検討することができる。すなわち、利用者は、在高管理装置300を用いることで、輸送に掛かるコストと現金在高の管理に掛かるコストの総和が最小となるような輸送パターンを特定することができる。
【0040】
また、在高管理装置300は、取引データに基づいて、将来の現金取引に係る現金の量を示す予測取引データを生成し、予測取引データに係る現金の量に基づいて提案輸送量を算出する。これにより、利用者は、予測された将来の現金取引に基づいて適切な輸送量を決定することができる。
【0041】
また、在高管理装置300は、予測取引データに基づいて日ごとの現金変動の最小値を特定し、当該最小値にオフセット値を加算することで提案輸送量を算出する。これにより、予測取引データが含む誤差を保障しつつ、店舗における現金在高を適正化することができる。また、本実施形態において当該オフセットは、予測取引データと実際の取引データとの差の散布度に基づいて決定される。これにより、在高管理装置300は、誤差を保障する可能な適切なオフセット値を決定することができる。
【0042】
また、在高管理装置300は、提案輸送量の適正度を示す評価値を算出する。これにより、利用者は、提案輸送量を採用することによる現金在高の適正化の度合いを認識することができる。
【0043】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
上述した実施形態に係る在高管理装置300は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、在高管理装置300の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで在高管理装置300として機能するものであってもよい。このとき、在高管理装置300を構成する一部のコンピュータが出納機200の内部に搭載され、他のコンピュータが出納機200の外部に設けられてもよい。
【0044】
また、上述の実施形態に係る在高管理装置300は、利用者が提案輸送量に基づいて適切な輸送タイミングを検討するが、他の実施形態においてはこれに限られない。例えば、他の実施形態に係る在高管理装置300は、勾配降下法や遺伝的アルゴリズムなどを用いた最適化アルゴリズムにより、自動的に輸送タイミングを計算し、利用者に提示してもよい。
【0045】
また、上述の実施形態に係る在高管理装置300は、日ごとの最小枚数を算出し、これに基づいて提案輸送量を算出するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る在高管理装置300は、現金輸送タイミングから次の現金輸送タイミングまでの間における最小枚数を直接算出し、これに基づいて提案輸送量を算出してもよい。
【0046】
〈コンピュータ構成〉
図11は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、インタフェース94を備える。
上述の在高管理装置300は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。プロセッサ91の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0047】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ90は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ91によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0048】
ストレージ93の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0049】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ93に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…銀行システム 11…本店 12…営業店 100…現金処理機 200…出納機 300…在高管理装置 301…取得部 302…予測部 303…オフセット決定部 304…入力部 305…算出部 306…評価部 307…出力部