(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】再生繊維強化樹脂、再生樹脂組成物、再生樹脂成形体、及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/04 20060101AFI20240925BHJP
B02C 13/18 20060101ALI20240925BHJP
B29B 9/04 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B29B17/04 ZAB
B02C13/18
B29B9/04
(21)【出願番号】P 2024019045
(22)【出願日】2024-02-10
【審査請求日】2024-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2024007212
(32)【優先日】2024-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506251948
【氏名又は名称】宏幸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173679
【氏名又は名称】備後 元晴
(72)【発明者】
【氏名】高谷 宗良
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第117341250(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第117341093(CN,A)
【文献】特開平06-008247(JP,A)
【文献】特開2003-001140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00-17/04
B02C 13/18
B29B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車ブレード、バスタブ及び船体から選択される少なくとも1種以上に由来し、繊維強化樹脂を含有する廃プラスチック材料を、廃プラスチック材料の解体現場にて50cm角から1m角の範囲での略板状部材に切断する切断工程と、
前記略板状部材を樹脂の製造工場に輸送し、当該製造工場にて前記略板状部材を破砕して粉砕する破砕工程と、
を有し、
前記破砕工程は、前記略板状部材を複数段階で破砕及び粉砕し、粉砕物の最終的な平均粒子径を10μm以上50μm以下にする工程であり、
前記破砕工程は、
カッターミル、ローラーミル、ハンマーミル、ジョークラッシャー及びシュレッダーから選択される少なくとも1種以上の装置を用いて前記略板状部材を粗破砕する第1破砕工程と、
カッターミル、ボールミル、コンバージミル、ロッドミル及びディスクミルから選択される少なくとも1種以上の装置を用いて前記第1破砕工程後の破砕物を細破砕する第2破砕工程と、
ボールミル、ビーズミル及びジェットミルから選択される少なくとも1種以上の装置を用いて前記第2破砕工程後の破砕物を粉砕する粉砕工程と、
粉末研磨装置を用いて前記粉砕工程後の粉砕物を切断と研磨によってさらに粉砕する研磨工程と、
を含む、再生繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記第1破砕工程は、前記略板状部材を平均粒子径が20mm以上60mm以下になるように破砕する工程であり、
前記第2破砕工程は、前記第1破砕工程後の破砕物を平均粒子径が10mm以上50mm以下になるように破砕する工程である、請求項1に記載の再生繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記切断工程は、切断装置を用いて行われ、
前記切断装置は、
走行用クローラにより移動されるショベル本体と、ショベル本体に設けられたアームとを備えた油圧ショベルと、
前記アームの先端部に着脱可能に設けられ、廃プラスチック材料を所定寸法に切断する切断機構と、
前記切断機構に水を噴射する噴水機構と、
前記ショベル本体に設けられ、前記切断機構及び前記噴水機構に水を送給する送水機構とを有し、
前記切断機構は、
前記所定寸法の離隔幅で設けられ、前記廃プラスチック材料を切断する複数の切断刃と、
前記切断刃を油圧により回転駆動する駆動機構とを備える、請求項1に記載の再生繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記研磨工程で用いる粉末研磨選別装置は、
原料を粉砕する粉砕機構と、
前記原料を一定量ずつ前記粉砕機構に送給するフィーダー機構と、
前記粉砕機構で、前記原料が粉砕されることにより形成された粉末材を空気流により回収するサイクロンコレクター機構とを有し、
前記粉砕機構は、
収容体と、
前記収容体に回転自在に収容され、回転軸が中心軸に一致された円筒形状の回転体と、
前記回転体の外周面に等間隔で設けられており、前記原料を切断する刃部材と、前記刃部材の側面に形成され、前記原料を研磨する研磨部とを有した複数の切断研磨刃と、
前記回転体の前記回転軸に連結され、前記回転体を高速度で回転駆動する回転駆動機構とを有する、請求項1に記載の再生繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記廃プラスチック材料は、繊維強化樹脂と、木材成分、腐食防止塗料成分、ウレタン成分及びゴム成分から選択される少なくとも1種以上の不純物成分とを含有し、
前記再生繊維強化樹脂もまた、前記繊維強化樹脂と、前記不純物成分とを含有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の再生繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の製造方法によって得られる再生繊維強化樹脂20質量%以上30質量%以下と、可塑性樹脂65質量%以上78質量%以下とを少なくとも含む混錬対象物を、押出機で混錬する混錬工程を有する、再生樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記混錬対象物に、原料から製造されたバージン熱可塑性樹脂が含まれている、請求項6に記載の再生樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記可塑性樹脂は、風力発電所、浴室及び船内から選択される少なくとも1種以上で用いられていた樹脂を含む、請求項6に記載の再生樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項6に記載の製造方法によって得られる前記再生樹脂組成物を成形する成形工程を有する、樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生繊維強化樹脂、再生樹脂組成物、再生樹脂成形体、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂(Fiber Reinforced Plastics,FRP)は、強化繊維であるガラス繊維や炭素繊維を不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂中に分散させ、比強度や比弾性率を著しく向上させた複合材料である。FRPの中でも、特にガラス繊維強化プラスチック(Glass Fiber Reinforced Plastic,GFRP)は、高い力学特性や化学的安定性に加えて価格も安く、金属材料と比較して軽量な上に、大量生産が可能である。そのため、GFRPは、浴槽や船体材料等で多用されている。
【0003】
しかしながら、GFRPのもつ高い化学的安定性は、メリットでもあるが、デメリットでもある。GFRPを構成する不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂の一種であり、成形時に架橋反応を伴う三次元的構造を不可逆的に形成する。いったん三次元構造が形成されると、もはや通常の加熱や溶媒処理により、もとの液体状の原料に戻すことができない。そのため、寿命に達したGFRPは、リサイクルすることが難しく、産業廃棄物として焼却埋立されているのが実情である。
【0004】
とはいうものの、近年のSDGs(持続的な開発目標,Sustainable Development Goals)をはじめとした環境保護の流れから、GFRPのリサイクルに関する研究が進んではいる。GFRPのリサイクルは、マテリアルリサイクル及びケミカルリサイクルの観点から研究されている。
【0005】
マテリアルリサイクルは、廃棄された素材を物理的、機械的に加工し、別の素材の添加物として使用するリサイクルである。廃GFRP材を細かく粉砕し、セメントの充填剤として再利用する方法として実用化されている。また、微粉砕した熱硬化性廃プラスチック(廃FRP)を熱可塑性廃プラスチック(ポリプロピレン,PP)の充填剤(フィラー)として用い、射出成形用ペレットを作成し、射出成形用プラスチック材料として用いることも提案されている(非特許文献1)。
【0006】
ケミカルリサイクルは、廃GFRP材を化学的に処理することにより、不飽和ポリエステル樹脂を原料物質まで分解し、低分子化、液状化させることにより強化材であるガラス繊維を分離回収し、樹脂原料及び分離されたガラス繊維を再びGFRPの原料として再利用する方法である。しかしながら、処理コストが高いことが課題となっており、研究レベルでの検討は進んでいるものの、現状、マテリアルリサイクルほどの普及には至っていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】佐藤ら,廃FRPのリサイクル技術とその用途技術開発,平成7年度研究報告,大分県産業科学技術センター
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、浴槽や船体材料のほか、風力発電所で用いられる風車ブレードもまた、FRPが用いられる。しかしながら、風車ブレードの直径は80m程度であり、1本あたりの重量も約5トンに達する。加えて、一般に風力発電は遠隔地で行われる。そのため、解体コストと解体場所からマテリアルリサイクル工場までの輸送コストとの両面での最適化が求められる。その点で、浴槽や船体材料に比べ、風車ブレードのリサイクルは、よりいっそう困難となる。解体風車ブレードのリサイクルシステムを実現するには、既存の再生技術だけでは足りず、解体効率の点から課題を解決しなければならない。
【0009】
また、解体風車ブレードには、FRPだけでなく木くずも含まれている。そのため、セメントの充填剤として再利用するにあたっては、解体風車ブレードに含まれる木くずが障壁となり得る。効率面からいうと、木くずを除かなくて済む方がよく、木くずを除かなくて済む用途の開発が求められる。
【0010】
日本国内でみると、風力発電所は、1995年以降建設され続けて累計2,626基稼働(2022/12時点)している。一方で約20年の寿命を迎えた風力発電機の解体・撤去は、2023年に72基、その後年間100~200基に増加する。これまで、1基あたり3本の風車ブレードが用いられることから、1基あたりの風車ブレード重量は約15トンであり、日本国内だけでも年間1,500トンの廃棄を伴うと見込まれる。
【0011】
欧州連合(EU:European Union)での風力発電量は、2020年ベースで510TWhであり、日本の65倍の規模である。加えて、海上に設置した巨大な風力タービン(風車)で電気を起こす洋上風力発電が進んでおり、北海を中心とした風力発電所建設が進められている。
【0012】
そうすると、解体風車ブレードのリサイクルシステムの提供は、喫緊の課題である。
【0013】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、解体風車ブレードのリサイクルにあたっての課題を解決し、解体風車ブレードのリサイクルシステムを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、解体風車ブレードを風車の解体現場にて所定の寸法に切断し、その後、切断された切断物を再生樹脂の製造現場に輸送し、当該製造現場で切断物を粉砕することで、平均粒子径が10μm以上50μm以下の再生繊維強化樹脂を得ることができることを見出し、風車ブレードの重量の課題、風力発電立地から工場までの運搬の課題を一挙に解決でき、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0015】
本発明は、風車ブレード、バスタブ及び船体から選択される少なくとも1種以上に由来し、繊維強化樹脂を含有する廃プラスチック材料を、廃プラスチック材料の解体現場にて50cm角から1m角の範囲での略板状部材に切断する切断工程と、前記略板状部材を樹脂の製造工場に輸送し、当該製造工場にて前記略板状部材を粉砕する破砕工程と、を有し、前記破砕工程は、前記略板状部材を複数段階で粉砕し、粉砕物の最終的な平均粒子径を10μm以上50μm以下にする工程である、再生繊維強化樹脂の製造方法である。
【0016】
本発明によると、廃プラスチック材料を解体現場にて1m角以下の略板状部材に切断することから、大きさ、重量の両面で車両に積込、搬出でき、解体場所からマテリアルリサイクル工場までの輸送コストを抑えられる。また、略板状部材の大きさは、50cm角以上であることから、解体現場で破砕したブレードを迅速に排出でき、工期が不必要に長くなることもないため、解体コストを抑えられる。よって、解体コストと解体場所からマテリアルリサイクル工場までの輸送コストとの両面での最適化が可能となる。
【0017】
よって、本発明によると、風車ブレードの重量の課題、風力発電立地から工場までの運搬の課題を一挙に解決できるため、解体風車ブレードのリサイクルシステムを実現できる。
【0018】
また、本発明は、前記破砕工程が、前記略板状部材を平均粒子径が20mm以上60mm以下になるように粉砕する第1破砕工程と、前記第1破砕工程後の粉砕物を平均粒子径が10mm以上50mm以下になるように粉砕する第2破砕工程と、前記第2破砕工程後の粉砕物を平均粒子径が10μm以上50μm以下になるように粉砕する粉砕工程と、を含むことが好ましい。
【0019】
本発明によると、安定した三次元構造を有する切断物を複数段階に分けて粉砕するため、破砕装置の損傷を抑えることができる。
【0020】
また、本発明は、上記再生繊維強化樹脂20質量%以上30質量%以下と、可塑性樹脂65質量%以上78質量%以下とを少なくとも含む混錬対象物を、混錬後に押出機、または圧縮機を有する混錬成形工程を有する、再生樹脂組成物の製造方法である。また、本発明は、上記再生繊維強化樹脂20質量%以上30質量%以下と、可塑性樹脂65質量%以上78質量%以下とを少なくとも含む混錬対象物を、押出機を用いて混錬する混錬工程を有する、再生樹脂組成物の製造方法である。この方法において、前記可塑性樹脂は、風力発電所、浴室及び船内から選択される少なくとも1種以上で用いられていた樹脂を含むことが好ましい。
【0021】
再生繊維強化樹脂は、硬すぎてリサイクルしづらいという欠点を有する。しかしながら、本発明によると、再生繊維強化樹脂を可塑性樹脂と混合することで、押出機を用いて均一に混錬することが可能となり、FRPが硬すぎてリサイクルしにくいという課題を解決できる。
【0022】
また、本発明は、前記混錬対象物に、原料から製造されたバージン熱可塑性樹脂が含まれている、再生樹脂組成物の製造方法である。
【0023】
原料から製造されたバージン熱可塑性樹脂を再生繊維強化樹脂と可塑性樹脂とに混合することで、さらに熱可塑性を高めることができるため、押出機を用いて均一に混錬することが容易になり、FRPが硬すぎてリサイクルしにくいという課題を解決できる。また、本発明の目的は、使用済FRPを有効活用することで、熱可塑性樹脂成形物を安価な再生繊維強化樹脂にすることであるため、混錬対象物は熱可塑性樹脂であればバージン品でも再生品でも構わない。
【0024】
風車ブレード、バスタブ及び船体から選択される少なくとも1種以上に由来する繊維強化樹脂には、木材成分、腐食防止塗料成分、ウレタン成分及びゴム成分から選択される少なくとも1種以上の不純物成分が含まれている。本発明によると、再生繊維強化樹脂は、可塑性樹脂の充填剤(フィラー)として機能するため、再生繊維強化樹脂をセメントの充填剤として再利用する場合とは異なり、不純物成分が少量含まれていても、再生樹脂組成物に影響を及ぼすことは、ない。
【0025】
加えて、再生繊維強化樹脂は、高い強度を有することから、再生樹脂組成物の強度を高めることができ、再生繊維強化樹脂を混ぜることに付加価値を持たせることができる。また、廃プラスチック材料が風車由来である場合、再生繊維強化樹脂には木材成分が含まれており、充填剤(フィラー)に木材成分が含まれることによって可塑性樹脂の使用量を抑えられるという利点を有する。そのため、本来であれば不純物であった木材成分に利点を持たせることもできる。同様に、再生繊維強化樹脂にはウレタン成分やゴム成分が含まれる場合であっても、可塑性樹脂の使用量を抑えられるという利点をもたせることができる。
【0026】
よって、本発明によると、解体風車ブレードのリサイクルシステムを実現できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、解体風車ブレードのリサイクルにあたっての課題を解決し、解体風車ブレードのリサイクルシステムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、再生繊維強化樹脂、再生樹脂組成物、樹脂成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、粉末研磨選別装置の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための好適な形態の一例について説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0030】
(再生繊維強化樹脂の製造方法)
図1に示すように、本実施形態の再生繊維強化樹脂の製造方法は、繊維強化樹脂を含有し、原形を保ったまま運搬することが困難な廃プラスチック材料を、廃プラスチック材料の解体現場にて50cm角から1m角の範囲での略板状部材に切断する切断工程S1と、略板状部材を樹脂の製造工場に輸送し、当該製造工場にて略板状部材を粉砕し、平均粒子径を10μm以上50μm以下にする破砕工程S2とを有している。
【0031】
ここで、「繊維強化樹脂」は、繊維と樹脂の複合材料である。繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ケブラー(登録商標)繊維などが例示される。樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などが例示される。これにより、本実施形態の再生繊維強化樹脂の製造方法は、G-FRPであるガラス繊維強化樹脂(Glass-Fiber Reinforced Plastic)、C-FRPである炭素繊維強化樹脂(Carbon-Fiber Reinforced Plastic)の両繊維強化樹脂およびその素材を用いた廃棄物全てのリサイクル方法の一つである。「原形を保ったまま運搬することが困難」は、廃プラスチック材料の原形を保った状態のまま運搬するためには、重量やサイズの要因により特殊な運搬手段を要することを意味する。特殊な運搬手段とは、大型トラックや船舶などの大型輸送機器である。「廃プラスチック材料」は、風車ブレード、バスタブ及び船体から選択される少なくとも1種以上に由来した繊維強化樹脂を含有していることが好ましいが、繊維強化樹脂により形成された部材であれば、特に限定されるものではない。例えば、風車ブレード、バスタブ、船体の他、自動車部品、航空機部品、建築資材、土木資材、スポーツ用品などであってもよい。
【0032】
切断工程S1において、廃プラスチック材料を解体現場にて1m角以下の略板状部材に切断する理由は、大きさ、重量の両面で車両に積込、搬出でき、解体場所からマテリアルリサイクル工場までの輸送コストを抑えられるからであり、且つ工場破砕機械にそのまま投入可能なサイズだからである。また、略板状部材の大きさが50cm角以上である理由は、解体現場で破砕したブレードを迅速に排出でき、工期が不必要に長くなることもないため、解体コストを抑えられるからである。よって、廃プラスチック材料の解体現場にて50cm角から1m角の範囲での略板状部材に切断する場合は、解体コストと解体場所からマテリアルリサイクル工場までの輸送コストとの両面での最適化が可能となる。
【0033】
これにより、例えば、風車ブレードの重量の課題、風力発電立地から工場までの運搬の課題を一挙に解決できるため、解体風車ブレードのリサイクルシステムを容易に実現できる。即ち、重量やサイズの要因により特殊な運搬手段を要する廃プラスチック材料に対するリサイクルシステムが通常の運搬手段により容易に実現されている。なお、通常の運搬手段とは、小型/中型トラックやバンなどの小型輸送機器を用いて運搬することである。
【0034】
破砕工程S2において、50cm角から1m角の範囲での略板状部材の廃プラスチック材料を、10μm以上50μm以下の平均粒子径になるまで一気に粉砕してもよいが、複数段階に分けて徐々に粉砕してもよい。この理由は、安定した三次元構造を有する切断物である廃プラスチック材料を複数段階に分けて粉砕すると、各段階の破砕装置の負荷が軽減されるため、破砕装置の損傷を抑えることができるからである。
【0035】
例えば、破砕工程S2は、略板状部材を平均粒子径が20mm以上60mm以下になるように粉砕する第1破砕工程S21と、第1破砕工程S21後の粉砕物を平均粒子径が10mm以上50mm以下になるように粉砕する第2破砕工程S22とを有している。
【0036】
図2にも示すように、第1破砕工程S21は、廃プラスチック材料を粗粉砕する工程であり、廃プラスチック材料を大きな塊から小さな片に分解し、その後の第2破砕工程S22を効率的に行う工程である。第1破砕工程S21で使用される粗破砕機12としては、カッターミル、ローラーミル、ハンマーミル、ジョークラッシャー、シュレッダーが例示される。カッターミルは、回転するカッターによって、廃プラスチック材料を切断する構成である。ローラーミルは、回転するローラーによって、廃プラスチック材料を圧縮・破砕する構成である。ハンマーミルは、回転するハンマーによって、廃プラスチック材料を粉砕する構成である。ジョークラッシャーは、一方が固定された「固定ジョー」と、反対側で振動する「動くジョー」の2つの板を有し、エキセントリックシャフトやリンク機構を使って動くジョーを、上下に揺動し、廃プラスチック材料を固定ジョーとの間で圧縮・破砕する構成である。シュレッダーは、一連の刃またはハンマーが取り付けられた回転ドラムやディスクで構成され、高速回転する刃やハンマーによって細断する破砕装置である。
【0037】
第2破砕工程S22は、廃プラスチック材料を細粉砕する工程であり、廃プラスチック材料の粒子を第1破砕工程S21の粉砕物よりもさらに小さくし、細粉砕によって、廃プラスチック材料の内部にある繊維や樹脂、金属をさらに細かく分散させる工程である。第2破砕工程S22で使用される細破砕機13としては、カッターミル、ボールミル、コンバージミル、ロッドミル、ディスクミルが例示される。カッターミルは、粗粉砕と同様の構成である。ボールミルは、回転する筒の中に、ボールやビーズなどの媒体を充填し、その媒体によって廃プラスチック材料を粉砕する構成である。コンバージミルは、回転する筒の中に、スクリューを配置し、そのスクリューによって廃プラスチック材料を粉砕する構成である。ロッドミルは、筒状のドラム内に鋼の棒(ロッド)が水平に並べられ、ドラムの回転によってロッドが上昇し、重力によって落下する際の衝撃と摩擦で廃プラスチック材料を粉砕する構成である。ディスクミルは、二枚の円盤(ディスク)が対面して配置され、固定された一方のディスクに対して他方のディスクを回転させ、ディスク間に投入された廃プラスチック材料を粉砕する構成である。
【0038】
再生繊維強化樹脂の製造方法は、破砕工程S2の後段に設けられた粉末工程S3を有している。粉末工程S3は、破砕工程S2で粉砕された粉砕物を粉末化し、例えばプラスチックと金属との選別などのように、望ましい成分を選び出すための工程である。具体的に説明すると、粉末工程S3は、粉砕工程S31と比重選別工程S32と粉末研磨選別工程S33と静電選別工程S34とを有している。
【0039】
粉砕工程S31は、廃プラスチック材料を微粉砕する工程であり、廃プラスチック材料を平均粒子径10μm以上50μm以下の微細な粒子に粉砕する工程である。粉砕工程S31で使用される粉砕装置13としては、ボールミル、ビーズミル、ジェットミルが例示される。ボールミルやビーズミルは、回転する筒の中に、ボールやビーズなどの媒体を充填し、その媒体によって廃プラスチック材料を粉砕する構成である。ジェットミルは、高速の気流(圧縮空気や蒸気)を使用して廃プラスチック材料を衝突・研削させることで粉砕する構成である。
【0040】
比重選別工程S32は、廃プラスチック材料の比重の違いを利用して分離する工程である。例えば、プラスチック材料の種類や金属の種類によって比重が異なるため、比重選別工程S32の比重選別機16を利用することで、プラスチック材料を種類ごとに分離したり、プラスチック材料と金属とを分離することを可能にしている。
【0041】
粉末研磨選別工程S33は、粉砕工程S31で微粉砕された粉砕物が、粉末研磨選別装置17における切断と摩耗とでさらに微粉砕される工程であるとともに、微粉砕物とそれ以外の粉砕物とに分離する工程である。この工程は、粉砕の精度を向上させることができるとともに、繊維と樹脂との分離の精度を向上させることができる。これにより、微粉砕された繊維強化樹脂に、可塑性樹脂やバージン熱可塑性樹脂である熱可塑性樹脂を混合して加熱成型する場合、熱可塑性樹脂との混合性が向上するため、成形品の物理的特性、特に強度と耐久性を向上させることができる。さらに、均一な粒子サイズと均等な混合が、加熱成型時における充填性と均一な熱伝導性と流動性とを向上させ、縮みや歪みを低減させるため、成形品の外観や寸法の精度を向上させることができる。
【0042】
静電選別工程S34は、廃プラスチック材料の種類及び金属の電気特性の違いを利用して分離する工程である。例えば、プラスチック材料の種類及び金属の種類によって電気特性が異なるため、静電選別工程S34を利用することで、プラスチック材料を種類ごとに分離したり、プラスチック材料と金属とを分離することを可能にしている。
【0043】
なお、
図3に示すように、粉砕工程S31は、処理能力を向上させるように並列化されていてもよい。この場合は、第2破砕工程S22での細粉砕に要する処理が、粉砕工程S31での微粉砕に要する処理よりも短時間で完了する場合に、細粉砕された粉砕物を仕掛品として一時的に他所に保管しなくても、並列化されて処理能力が増大した複数の粉砕工程S31に連続的に流動させることができる。また、第2破砕工程S22及び粉砕工程S31が並列化されていてもよい。この場合は、第1破砕工程S21での粗粉砕に要する処理が第2破砕工程S22及び粉砕工程S31での細粉砕及び微粉砕に要する処理よりも短時間で完了する場合に、粗粉砕された粉砕物を仕掛品として一時的に他所に保管しなくても、並列化された複数の第2破砕工程S22及び粉砕工程S31に連続的に流動させることができる。
【0044】
(再生樹脂組成物の製造方法)
図1に示すように、再生繊維強化樹脂の製造工程(S1・S2・S3)の後段には、再生樹脂組成物の製造工程である混錬工程S4が設けられている。混錬工程S4は、切断工程S1と破砕工程S2とで得られた再生繊維強化樹脂20質量%以上30質量%以下と、可塑性樹脂65質量%以上78質量%以下とを少なくとも含む混錬対象物を、押出機を用いて混錬する工程である。混錬工程S4によれば、再生繊維強化樹脂は、硬すぎてリサイクルしづらいという欠点を有するが、再生繊維強化樹脂を可塑性樹脂と混合した再生樹脂組成物とすることで、押出機を用いて均一に混錬することが可能となり、FRPが硬すぎてリサイクルしにくいという課題を解決できる。
【0045】
「可塑性樹脂」は、使用済みのプラスチックから回収された熱可塑性樹脂であり、加熱により軟化し、冷却により固化する性質を持つ樹脂のことである。具体的には、汎用プラスチックとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)が例示される。また、エンジニアリングプラスチックとして、ポリアミド(PA)、ポリエステル(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニルエーテル(PPE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が例示される。
【0046】
可塑性樹脂は、例えば、容器包装、建材、繊維、玩具、自動車部品に含まれる使用済みのプラスチックを適用することができる。なお、可塑性樹脂は、風力発電所、浴室及び船内から選択される少なくとも1種以上で用いられていた廃電線を被覆する樹脂を含むことが好ましい。この場合、再生繊維強化樹脂と可塑性樹脂とを混合した再生樹脂組成物は、風車ブレード、バスタブ及び船体から選択される少なくとも1種以上に由来するため、木材成分、腐食防止塗料成分、ウレタン成分及びゴム成分から選択される少なくとも1種以上の不純物成分が含まれている。これにより、再生樹脂組成物は、可塑性樹脂の充填剤(フィラー)として機能するため、再生繊維強化樹脂をセメントの充填剤として再利用する場合とは異なり、不純物成分が少量含まれていても、再生樹脂組成物に影響を及ぼすことはない。
【0047】
加えて、再生樹脂組成物は、高い強度を有することから、再生樹脂成形体の強度を高めることができ、再生樹脂組成物を混ぜることに付加価値を持たせることができる。また、廃プラスチック材料が風車由来である場合、再生繊維強化樹脂には木材成分が含まれており、充填剤(フィラー)に木材成分が含まれることによって可塑性樹脂の使用量を抑えることができるという利点を有する。そのため、本来であれば不純物であった木材成分に利点を持たせることもできる。同様に、再生繊維強化樹脂にウレタン成分やゴム成分が含まれる場合であっても、可塑性樹脂の使用量を抑えることができるという利点を持たせることができる。
【0048】
さらに、混錬工程S4における混錬対象物は、再生繊維強化樹脂と可塑性樹脂とバージン熱可塑性樹脂とを含んでもよい。ここで、「バージン熱可塑性樹脂」は、リサイクルされていない、新しい原料から作られた熱可塑性樹脂を意味する。バージン熱可塑性樹脂は、可塑性樹脂と比較して純度が高く、他の材料や不純物が混入していないため、品質が一定している。また、バージン熱可塑性樹脂は、物理的、化学的特性が明確で、性能を予測しやすく、製造過程での挙動が安定していて加工しやすいという特徴を有している。これにより、バージン熱可塑性樹脂を再生繊維強化樹脂と可塑性樹脂とに混合した場合は、さらに熱可塑性を高めることができるため、押出機を用いて均一に混錬することが容易になり、FRPが硬すぎてリサイクルしにくいという課題を解決できる。
【0049】
バージン熱可塑性樹脂は、可塑性樹脂と同様に、加熱により軟化し、冷却により固化する性質を持つ樹脂のことである。具体的には、汎用プラスチックとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)が例示される。また、エンジニアリングプラスチックとして、ポリアミド(PA)、ポリエステル(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニルエーテル(PPE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が例示される。
【0050】
(再生樹脂成形体の製造方法)
再生樹脂組成物を製造する混錬工程S4の後段には、再生樹脂組成物を成形する成形工程S5が設けられている。成形工程S5は、混合された再生樹脂組成物を可塑性樹脂が軟化する温度まで加熱した後、成型機に投入し、プレス成型、射出成型、押出成型などの方法で所望の形状に成型する。そして、成型された製品を冷却することで、可塑性樹脂を硬化させて形状を保持させる工程である。この後、必要に応じて、トリミング、研磨、塗装などの後処理を行うことで、最終成形品とする。
【0051】
(再生繊維強化樹脂の製造システム1)
図2及び
図3に示すように、破砕工程S2及び選別工程S3は、再生繊維強化樹脂及び樹脂組成物の製造システム1に設けられている。製造システム1は、切断工程S1における廃プラスチック材料の解体現場から搬送された廃プラスチック材料の切断片が載置される第1コンベア111と、第1コンベア111の搬出端部に接続された第1破砕工程S21の粗破砕機12とを有している。粗破砕機12は、シュレッダー機構を有し、廃プラスチック材料の切断片を、50cm~100cm角程度の大きな塊から、20mm~40mm角程度の小さな片に破砕するように構成されている。
【0052】
粗破砕機12の下方には、破砕された切断片を受け止めるように、第2コンベア112の搬入端部が配置されている。第2コンベア112は、搬出端部が第2破砕工程S22の細破砕機13に接続されている。細破砕機13は、カッターミル機構を有し、廃プラスチック材料を第1破砕工程S21の破砕物よりもさらに小さな10mm~30mm角程度の破砕物とするように構成されている。細破砕機13の下方には、破砕された切断片を受け止めるように、第3コンベア113の搬入端部が配置されている。第3コンベア113の搬出端部は、キャッシュサイロ14に接続されている。キャッシュサイロ14は、細破砕機13から搬送された破砕物を一時的に保管するとともに、保管した破砕物を製造ラインの幅方向の両端部に形成された2箇所の排出口から、それぞれ排出する構成にされている。
【0053】
キャッシュサイロ14の各排出口には、一対のバケットコンベア114・114の搬入部が接続されている。バケットコンベア114・114の排出端部は、粉砕工程S31の粉砕機15・15に接続されている。粉砕機15・15は、10mm~30mm角程度の破砕物を30μm~50μm程度の粉砕物に粉砕するように構成されている。粉砕機15・15は、第1空気圧コンベア115・115を介して比重選別工程S32の比重選別機16・16に接続され、比重選別機16・16で樹脂と金属とが選別される。比重選別機16・16は、粉末研磨選別工程S33の粉末研磨選別装置17・17に接続されている。粉末研磨選別装置17・17は、粉砕物を20μm~30μm程度の粉砕物に粉砕及び選別するように構成されている。粉末研磨選別装置17・17は、スクリューコンベア117・117を介して静電選別工程S34の静電選別機18・18に接続されている。静電選別機18・18は、選別後の粉砕物を帯電させ、帯電した対象物を電界にかけ、異なる電荷を持つ粉砕物を分離するように構成されている。
【0054】
また、比重選別機16・16、粉末研磨選別装置17・17及び静電選別機18・18には、排気ダクト116・116が接続されている。排気ダクト116・116は、図示しない集塵機に接続されており、粉砕時や選別時に飛散する微小な粉塵を集塵機に送出している。
【0055】
次に、製造システム1で使用される主な機器の詳細について説明する。
(切断工程S1:切断装置2)
図4に示すように、切断装置2は、走行用クローラ24により移動されるショベル本体23と、ショベル本体23に設けられたアーム22とを備えた油圧ショベル20と、アーム22の先端部に着脱可能に設けられ、廃プラスチック材料を所定寸法に切断する切断機構21と、切断機構21に水を噴射する噴水機構25と、ショベル本体23に設けられ、噴水機構25に水を送給する送水機構26とを有している。切断機構21は、所定寸法の離隔幅で設けられ、廃プラスチック材料を切断する複数の切断刃211と、切断刃211を油圧により回転駆動する駆動機構212とを備えている。
【0056】
上記の構成によれば、切断機構21の駆動力として油圧を用いることで固いFRPを安定的に切断可能で、切断部位に水を噴射することで切断時に発生する粉塵の飛散を防止することができる。
【0057】
次に、切断機構21の詳細を
図5~
図7を用いて詳細に説明する。なお、
図5は切断機構21の右側面図、
図6は切断機構21の正面図、
図7は切断機構21の下面図である。
【0058】
図5及び
図6にも示すように、切断機構21は、アーム22の先端部であるアーム先端221に装着された装着機構213を有している。装着機構213は、アーム先端221の昇降方向を中心として旋回方向に左右対称に設けられた一対の装着板2131・2131を有している。装着板2131・2131の間隔は、装着板2131・2131の間にアーム22の先端部を挿入する寸法に設定されている。なお、アーム先端221には、リンク機構222が設けられている。リンク機構222は、アーム先端221に対して切断機構21の切断刃機構21Aを昇降方向に回動させる機能を有している。
【0059】
各装着板2131・2131は、アーム先端221に対向する上端部が凹形状に湾曲されており、アーム先端に対して切断刃機構21Aを昇降方向に回動させる際の障害にならないようにされている。各装着板2131・2131の上端部における両端部には、貫通穴2131a・2131bが形成されている。貫通穴2131a・2131bには、ピン部材2141・2142がそれぞれ挿通されている。一方のピン部材2141は、リンク機構222の従動端に形成された貫通穴222aに回転自在に挿通されている。他方のピン部材2142は、アーム先端221に形成された貫通穴221aに回転自在に挿通にされている。これにより、切断刃機構21Aは、リンク機構222の従動端が移動されることによって、アーム先端221のピン部材2142を回動中心としてアーム先端221に対して回動及び昇降されるようになっている。
【0060】
図7にも示すように、装着機構213の下部には、切断刃211を油圧により回転駆動する駆動機構212が設けられている。駆動機構212は、油圧ポンプで加圧された油圧油を利用して回転運動を発生させる油圧モータにより構成されている。駆動機構212は、加圧された油圧油をチャンバーに送り込むことで、その圧力によって回転軸2121を回転させるようになっており、油圧油の流量や圧力を制御することで、回転速度やトルクを自由に調整することが可能になっている。
【0061】
なお、駆動機構212は、一定の回転速度で切断することができるように、油圧油の流量及び圧力が制御されていることが好ましい。この場合は、切断対象の種類やサイズが異なる場合であっても、安定した切断を行うことが可能になる。具体的には、回転軸2121の回転速度を検知し、回転速度を安定化させるため、エンコーダやタコジェネレータなどの速度センサーを回転軸2121に取り付け、測定した回転速度の測定データを制御システムにフィードバックする。制御システムにおいては、速度センサーからの速度データを基に油圧ポンプから送出される油圧油の流量や圧力をPIDコントローラに入力する。そして、PIDコントローラが、目標とする回転速度と実際の回転速度との差(偏差)に基づいて、油圧モータへの入力を調整することで、油圧湯の流量や圧力を用いて回転軸2121の回転速度を制御する。
【0062】
駆動機構212としては、内部または外部のギアを使用して回転運動を生み出すギアモーター、円筒内のスロットに収められた複数のバネット(羽根)が、油圧によって放射状に動き、回転を生み出すバネットモーター、軸周りに配置された複数のピストンを油圧で動かし、回転運動を生み出すピストンモーターが例示される。
【0063】
駆動機構212の回転駆動力が伝達される切断刃機構21Aは、駆動機構212におけるアーム先端221の旋回方向(水平方向)の両端部に設けられている。切断刃機構21Aは、駆動機構212の回転軸2121が回転中心部に連結された切断刃211と、切断刃211の回転中心部よりも上部に位置し、切断刃211の周縁部を覆うカバー部材215とを有している。カバー部材215は、切断刃211により廃プラスチック材料を切断する際に粉塵が飛散することを防止するとともに、切断刃211が破損したときの破片の飛散を防止している。切断刃211・211の間隔は、廃プラスチック材料の切断間隔に設定されている。これにより、廃プラスチック材料を切断する場合は、アーム先端221の旋回移動と、切断刃機構21A・21Aの切断動作とを繰り返すことで、例えば、80cm間隔で廃プラスチック材料を切断することができる。
【0064】
なお、アーム先端221の旋回移動量は、アーム先端221に設けられたレーザーポインタで80cmなど所定間隔の2点のマークを廃プラスチック材料に照射することで作業者の目視により決定されてもよいし、アーム先端221の距離とアーム22の旋回角度とに基づいて自動で決定されてもよい。
【0065】
各切断刃機構21A・21Aには、噴水機構25が設けられている。噴水機構25は、ノズル部材251と、ノズル部材251の根元端部に設けられたホース連結部材252とを有している。ホース連結部材252は、
図4の送水配管261を介して送水機構26に連結され、送水機構26から水が送給されるようになっている。ノズル部材251は、切断刃211の回転中心部からカバー部材215までの範囲における上方位置に水平配置されている。ノズル部材251の根元部(一端部)は、カバー部材215に連結されている。ノズル部材251の自由端部(他端部)は、回転軸2121の回転中心部よりも他端側に位置されている。ノズル部材251の側面には、複数の噴水口251aが形成されている。これらの噴水口251aは、ノズル部材251の長手方向において等間隔で配置されており、水を噴射することで、廃プラスチック材料を切断するときに発生する粉塵の飛散を防止している。
【0066】
なお、これらの噴水口251aは、切断刃211の側面に沿って水を噴射するように設定されていてもよいし、切断刃211の周縁部に向かって水を噴射するように設定されていてもよい。また、噴水口251aには、ノズル部材が設けられていてもよい。ノズル部材としては、切断刃の側面に沿って均一な水幕を作り、切断作業時の冷却や切断紛の除去に有効なフラットスプレーノズル、高圧の水流を切断刃211の特定の部位に集中して噴射することで、冷却効果を高め、切断粉の洗い流しを補助するジェットノズル、微細な霧状の水を噴射し、広範囲にわたって切断刃211を冷却し、粉塵の飛散を抑制するフォグノズル、複数の小さな噴水口が一体化されたノズルで、切断刃211の広範囲を均一に冷却することが可能なシャワーノズルが例示される。
【0067】
図8に示すように、切断装置2は、噴水機構25Aがアーム22の中間部に設けられていてもよい。具体的には、切断装置2は、走行用クローラ24により移動されるショベル本体23と、ショベル本体23に設けられたアーム22とを備えた油圧ショベル20と、アーム22の先端部に着脱可能に設けられ、廃プラスチック材料を所定寸法に切断する切断機構21と、アーム22の中間部に設けられ、切断機構に水を噴射する噴水機構25Aと、ショベル本体23に設けられ、切断機構21及び噴水機構25Aに水を送給する送水機構26とを有していてもよい。上記の構成によれば、切断機構21の駆動力として水を用いながら、廃プラスチックを切断する際に、切断部位の全体に水を噴射することで切断時に発生する粉塵の飛散を防止することができる。なお、切断装置2は、アーム22の中間部に設けられた噴水機構25Aと、切断刃機構21Aに設けられた噴水機構25との両方を備えていてもよく、この場合は、全体的な粉塵の飛散防止と、局所的な粉塵の飛散防止とが行われることで、作業環境を一層良好にすることができる。
【0068】
(第1破砕工程S21:粗破砕機12)
粗破砕機12は、シュレッダー構造を有している。具体的には、粗破砕機12は、一連の刃が周囲に取り付けられた一対の回転ドラムを並列配置し、互いの回転ドラムの刃の側面同士を対向させるように重複させ、重複箇所の刃が上方から下方に向かって移動するように、回転ドラム同士を駆動機構により回転させる構成にされている。これにより、第1コンベア111により運搬された切断片が粗破砕機12に投入されると、この切断片が回転ドラム同士の回転により重複箇所に引き込まれ、刃同士の切断力により細かな切断片に粉砕される。そして、粉砕された切断片が回転ドラムの重複箇所から落下される。
【0069】
(粉末研磨選別工程S33:粉末研磨選別装置17)
図9に示すように、粉末研磨選別装置17は、粉砕工程S31で粉砕された粉砕物を切断と摩耗とでさらに微粉砕する機能を有しているとともに、微粉砕されなかった粉砕物を再び微粉砕する粉砕循環機能を有している。
【0070】
具体的に説明すると、粉末研磨選別装置17は、
図3の粉砕工程S31の粉砕機15で粉砕された粉砕物(原料)を粉砕する粉砕機構171と、原料を一定量ずつ粉砕機構171に送給するフィーダー機構172とを有している。フィーダー機構172は、粉砕機構171での粉砕前の原料を貯蔵する原料タンク1721と、原料タンク1721内の空気を排気する排気ファン1732と、原料タンク1721に貯留された粉砕物(原料)を一定量で送給する送給装置1722とを有している。原料タンク1721は、上部が円筒形状で下部が逆円錐形状に形成されており、上面中心部が排気管1737を介して排気ファン1732に接続されている。これにより、排気ファン1732により原料タンク1721内の空気を排気し、原料タンク1721内を減圧することで、粉体状態の粉砕物を流動させることにより原料タンク1721内に流入させることが可能になっている。なお、フィーダー機構172は、後述のサイクロンコレクター機構175のサイクロンコレクター機能を有している。
【0071】
フィーダー機構172の下方には、粉砕機構171が配置されている。フィーダー機構172の排出口と粉砕機構171の流入口とは、送給管1735を介して連絡されており、粉砕機構171は、フィーダー機構172から供給された粉砕物(原料)を、さらに粉砕し、微粉砕物とする機能を有している。粉砕機構171の詳細は後述する。粉砕機構171の排出口は、送給管1731を介してサイクロンコレクター機構175に接続されている。サイクロンコレクター機構175は、サイクロン本体1751と、サイクロン本体1751の上面中心部に排気管1733を介して接続された排気ファン1752と、サイクロン本体1751に貯留された粉砕物を選別装置174に一定量で送給する送給装置1753とを有している。
【0072】
これにより、サイクロンコレクター機構175は、粉砕機構171から排出された微粉砕物を含む粉砕物と空気との混合流が、サイクロン本体1751に高速で円周方向に吹き込まれ、混合流がサイクロン本体1751内を回転する。そして、遠心力によって微粉砕物を含む粉砕物粉末が外壁に押し付けられ、壁面を伝って下方に落下する一方、空気が遠心力を受けずにサイクロン本体1751の上面中心部から排出されることになる。サイクロン本体1751の下方に落下した粉末は、サイクロン本体1751の下端部に形成された排出口から、サイクロン本体1751の下方に配置された選別装置174に送給されることになる。
【0073】
選別装置174は、粉砕物を微粉砕物と微粉砕物以外とに選別する機能を有している。具体的には、選別装置174は、篩網を備えた選別装置本体1741と、選別装置本体1741を振動させる図示しない振動機構とを有している。選別装置本体1741には、選別された微粉砕物を排出する第1排出口1741aと、微粉砕物以外の粉末を排出する第2排出口1741bとを有している。これにより、選別装置本体1741は、振動機構により振動すると、篩網の目より小さい微粉砕物が篩網を通過して下方に落下し、それ以外の粉砕物が篩網上に残る。篩網から落下した微粉砕物は、第1排出口1741aから排出される一方、篩網上に残った微粉砕物以外の大きな粒径の粉砕物は、第2排出口1741bから排出されることになる。第2排出口1741bは、送給管1736を介して粉砕機構171に接続されており、微粉砕物以外の粉砕物を、粉砕機構171に戻して、再び粉砕させるようになっている。
【0074】
このように、粉末研磨選別装置17は、粉砕物を切断と摩耗とでさらに微粉砕する粉砕機構171と、粉砕機構171で微粉砕された微粉砕物を含む粉砕物を、微粉砕物とそれ以外の粉砕物、即ち、微粉砕物よりも大きな粒径の粉砕物とに選別する選別装置174と、選別装置174で選別された微粉砕物以外の粉砕物を、粉砕機構171に戻して再び微粉砕する粉砕循環経路(送給管1736)とを有している。これにより、粉末研磨選別装置17は、一度の粉砕で目標とする微粉砕度を達成できない場合でも、選別装置174で選別された微粉砕物以外の粉砕物を粉砕循環経路で循環させることで粉砕時間を延長し、より効率的に目標とする微粉砕度を得ることを可能にしているともに、微粉砕物の粒度分布の均一化を可能にしている。
【0075】
図10にも示すように、粉砕機構171は、収容体1711と、収容体1711に回転自在に収容され、回転軸が中心軸に一致された円筒形状の回転体1712と、回転体1712の外周面に等間隔で設けられた複数の切断研磨刃1713とを有している。切断研磨刃1713は、粉砕物などの原料を切断する刃部材と、刃部材の側面に形成され、原料を研磨する研磨部材とを有している。さらに、粉砕機構171は、回転体1712の回転軸に連結され、回転体1712を高速度で回転駆動する回転駆動機構1714とを有している。
【0076】
以上のように構成された粉末研磨選別装置17は、
図3の粉砕工程S31の粉砕機15で粉砕された原料を粉砕する粉砕機構171と、原料を一定量ずつ粉砕機構171に送給するフィーダー機構172と、粉砕機構171で、原料が粉砕されることにより形成された粉末材(微粉砕物、粉砕物)を空気流により回収するサイクロンコレクター機構175と、を有している。粉砕機構171は、収容体1711と、収容体1711に回転自在に収容され、回転軸が中心軸に一致された円筒形状の回転体1712と、回転体1712の外周面に等間隔で設けられており、原料を切断する刃部材と、刃部材の側面に形成され、原料を研磨する研磨部とを有した複数の切断研磨刃1713と、回転体1712の回転軸に連結され、回転体1712を高速度で回転駆動する回転駆動機構1714とを有している。
【0077】
上記の構成によれば、粉砕された原料を切断と研磨との両方で粉砕するため、FPRや接着剤等の粒度と硬度の異なる粉末を均一粒度に粉砕することができる。
【0078】
(再生繊維強化樹脂)
以上のようにして製造された再生繊維強化樹脂は、繊維強化樹脂と、木材成分、腐食防止塗料成分、ウレタン成分及びゴム成分から選択される少なくとも1種以上の不純物成分とを含有する廃プラスチック材料の粉砕物からなり、平均粒子径が10μm以上50μm以下である。
【0079】
上記の構成を有した再生繊維強化樹脂は、平均粒子径が10μm以上50μm以下と細かいため、加工時の成型性が向上する。特に射出成型や押出成型などのプロセスで、廃プラスチック材料の流動性が良くなり、製品の寸法精度や外観品質を向上させることが可能になる。
【0080】
例えば、木材成分としての木材繊維は、自然な補強材として機能し、熱伝導率を低下させ、断熱性を向上させることを可能にする。また、木材成分の添加は、成形品に自然な外観や感触を与えることを可能にする。なお、金属成分は、合成樹脂を脆くする等物性劣化の要因となるので、静電選別機で分離する。
【0081】
腐食防止塗料成分を含む場合は、耐腐食性が向上し、特に過酷な環境や化学物質にさらされる用途に適した再生繊維強化樹脂にすることができる。ウレタン成分を含む場合は、ウレタン成分が優れた衝撃吸収性と耐久性を持っているため、衝撃に強い製品や快適なグリップ感を要求される用途に適した再生繊維強化樹脂にすることができる。ゴム成分を含む場合は、ゴムが柔軟性と弾力性に優れているため、振動吸収や防音材料として有効な再生繊維強化樹脂にすることができる。
【0082】
(再生樹脂組成物)
以上のようにして製造された再生樹脂組成物は、再生繊維強化樹脂20質量%以上30質量%以下と、可塑性樹脂65質量%以上78質量%以下と、を少なくとも含有する。ここで、「可塑性樹脂」としては、架橋ポリエチレン(XLPE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)が例示される。なお、配電線は、風力発電装置を更新する場合に取り外された電線を利用することができる。
【0083】
上記の構成を有した再生樹脂組成物は、可塑性樹脂が加熱により流動性を増し、成形が容易になる特性を有するため、成形プロセスの効率化と、製品の形状やデザインの自由度を高めることができる。また、再生樹脂組成物は、再生繊維強化樹脂と可塑性樹脂の配合比率を適切に調整することで、強度と靭性を向上させることができる。さらに、可塑性樹脂の種類を適切に選択することで、耐久性を向上させることができる。
【0084】
(再生樹脂成形体)
再生樹脂組成物を含有する再生樹脂成形体は、再生樹脂組成物が軽量で強度があり、環境負荷が低いことから、様々な用途に適用することができる。具体的には、レンガ、建材ボード、合板、屋根材、窓枠、ドア、床材、壁材などの建築資材、自動車部品、家電製品の部品、産業機械の部品などの機械部品、電線・ケーブル、電子部品の筐体などの電気・電子部品、容器、バッグ、靴、家具、玩具、スポーツ用品などの日用品に適用することができる。より具体的には、太陽光発電装置の下地マットに適用することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。また、上述の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したものに過ぎず、本発明による効果は、上述の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。また、上述の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0086】
1 製造システム
2 切断装置
12 粗粉砕機
13 細粉砕機
14 キャッシュサイロ
15 粉砕機
16 比重選別機
17 粉末研磨選別装置
18 静電選別機
【要約】
【課題】解体風車ブレードのリサイクルにあたっての課題を解決し、解体風車ブレードのリサイクルシステムを実現する。
【解決手段】再生繊維強化樹脂の製造方法は、風車ブレード、バスタブ及び船体から選択される少なくとも1種以上に由来し、繊維強化樹脂を含有する廃プラスチック材料を、廃プラスチック材料の解体現場にて50cm角から1m角の範囲での略板状部材に切断する切断工程S1と、前記略板状部材を樹脂の製造工場に輸送し、当該製造工場にて前記略板状部材を粉砕する破砕工程S2と、再生繊維強化樹脂と熱可塑性樹脂を混錬・成形する工程S4,S5とを有し、前記破砕工程S2は、前記略板状部材を複数段階で粉砕し、粉砕物の最終的な平均粒子径を10μm以上50μm以下にする工程である。
【選択図】
図1