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特許7560091粘着テープ、エンドレスベルト及び粘着テープの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】粘着テープ、エンドレスベルト及び粘着テープの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/29 20180101AFI20240925BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240925BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20240925BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240925BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20240925BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240925BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J7/38
C09J7/24
B05D7/24 301F
B05D7/24 302L
B05D7/24 301P
B05D3/02 Z
B32B27/00 M
B32B27/30 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020055423
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021155515
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000211156
【氏名又は名称】中興化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】大森 貴文
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-025617(JP,A)
【文献】特開2004-083706(JP,A)
【文献】特表2009-505030(JP,A)
【文献】特開平10-315400(JP,A)
【文献】特開平6-25617(JP,A)
【文献】特開平6-298952(JP,A)
【文献】特許第3080089(JP,B1)
【文献】特開2013-248874(JP,A)
【文献】実開平5-53941(JP,U)
【文献】特開昭52-144073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレンを含む基材層と、
前記基材層の主面上の少なくとも一部に形成され、パーフルオロアルコキシアルカンからなる表面層と、
前記基材層の前記主面とは反対側の面上に形成された粘着層とを含む粘着テープ。
【請求項2】
前記表面層の厚みは0.1μm~50μmの範囲内にある請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記基材層の厚みは10μm~500μmの範囲内にある請求項1又は2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記主面と平行な方向についての引張強さは30MPa~250MPaの範囲内にある請求項1-3の何れか1項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記基材層は、ポリテトラフルオロエチレンからなる請求項1-4の何れか1項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
請求項1-5の何れか1項に記載の粘着テープを備えたエンドレスベルト。
【請求項7】
未焼成のポリテトラフルオロエチレンシートを準備することと、
前記ポリテトラフルオロエチレンシートの少なくとも一方の面上に、パーフルオロアルコキシアルカン粒子を含むディスパージョンを塗布して塗膜を形成し、塗膜を有する前記ポリテトラフルオロエチレンシートを得ることと、
前記塗膜を有する前記ポリテトラフルオロエチレンシートを焼成してポリテトラフルオロエチレンフィルムを得ることと、
焼成後の前記ポリテトラフルオロエチレンフィルムを延伸し、ポリテトラフルオロエチレンを含む基材層と、前記基材層の主面上に形成され、パーフルオロアルコキシアルカンからなる表面層とを備える積層体を得ることと、
前記基材層の前記主面とは反対側の面上に粘着層を形成することと
を含む粘着テープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ、エンドレスベルト及び粘着テープの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙やプラスチックフィルムをラミネート対象としたラミネート工程では、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの溶融した樹脂がラミネートロールに付着するという問題がある。従来、溶融した樹脂がラミネートロールに付着するのを抑制するために、離型用粘着テープが使用されている。離型用粘着テープは、例えば、ラミネートロールに直接貼り付けられるか、エンドレスベルトとなるように加工した上で、ラミネートロール上に掛けて使用される。
【0003】
離型用粘着テープとして、例えば、圧延されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂層及び粘着層を有するPTFE圧延基材テープが使用されている。PTFE樹脂層の表面が露出した粘着テープは、当該表面が離型用途で繰り返し使用されることにより摩耗する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-083706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、離型性及び耐摩耗性に優れた粘着テープ、この粘着テープを備えたエンドレスベルト、及び、粘着テープの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によると、ポリテトラフルオロエチレンを含む基材層と、基材層の主面上の少なくとも一部に形成され、パーフルオロアルコキシアルカンからなる表面層と、基材層の主面とは反対側の面に形成された粘着層とを含む粘着テープが提供される。
【0007】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る粘着テープを備えたエンドレスベルトが提供される。
【0008】
本発明の第3側面によると、未焼成のPTFEシートを準備することと、PTFEシートの少なくとも一方の面上に、PFA粒子を含むディスパージョンを塗布して、塗膜を有するPTFEシートを得ることと、塗膜を有するPTFEシートを焼成してPTFEフィルムを得ることと、焼成後のPTFEフィルムを延伸し、PTFEを含む基材層と、基材層の主面上に形成され、パーフルオロアルコキシアルカンからなる表面層とを備える積層体を得ることと、基材層の主面とは反対側の面上に粘着層を形成することとを含む粘着テープの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、離型性及び耐摩耗性に優れた粘着テープ、この粘着テープを備えたエンドレスベルト、及び粘着テープの製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る粘着テープの一例を概略的に示す断面図。
図2】実施形態に係るエンドレスベルトの一例を概略的に示す断面図。
図3】実施形態に係るエンドレスベルトの他の例を概略的に示す断面図。
図4】ラミネート装置の一部を概略的に示す側面図。
図5】ラミネート装置の一部を概略的に示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
従来、PTFE基材は、例えば以下の方法で製造されている。まず、PTFE樹脂を含んだファインパウダーを用意し、これに助剤を混合して混合物を得る。混合物を金型に充填し、加圧成型することにより予備成形品を得る。これをロッド状に押し出した後、圧延し、次いで、助剤を取り除いて未焼成のPTFEシートを得る。未焼成のPTFEシートを焼成した後、延伸してPTFE圧延基材を得ることができる。
【0012】
PTFE圧延基材は、例えば、予備成形品を押し出す際の絞り、又は、圧延に起因して、延伸方向に沿った配向を有している。それ故、PTFE圧延基材は、延伸方向に沿って裂け易いという問題がある。
【0013】
PTFE圧延基材の表面が露出した離型用テープをラミネートの離型用用途で使用した場合、ラミネートの最中に、ラミネート対象の紙などからはみ出した溶融樹脂がPTFE圧延基材表面に接着する。その後、ラミネートロールの回転によりラミネート対象が送り出されると、ラミネート対象が離型用テープから剥がれる際に、PTFE圧延基材の表面の一部が延伸方向に沿って引きちぎられて、当該表面が毛羽立つことがある。これは、上記のように離型用テープ(PTFE圧延基材)が延伸方向に沿った配向を有しているためである。その結果、続いて流れてきたラミネート対象と、溶融樹脂との間にこの毛羽が混入する可能性があるため望ましくない。
【0014】
これに対して、実施形態に係る粘着テープは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む基材層の主面上に、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)を含む表面層を有している。粘着テープはPTFEを含む基材層を備えているため、十分な引裂強度を有している。また、PFAは溶融流動性のフッ素樹脂である。それ故、PFAを含む表面層は、PTFE基材が有しているような配向性を有していない。それ故、PFAを含む表面層の表面は、優れた耐摩耗性を有する。つまり、PFAを含む表面層は、特定方向についての配向を有していないため、離型用途での使用時に、表面層とラミネート対象とが接着し、これらが剥離した場合であっても表面層に由来する毛羽が生じ難い。更に、PFAを含む表面層の表面は、PTFE基材層の表面と比較して離型性にも優れている。
【0015】
従って、実施形態に係る粘着テープは、離型性及び耐摩耗性に優れると共に、エンドレスベルトに使用した場合には優れた寿命特性を達成することができる。
【0016】
<粘着テープ>
以下、実施形態に係る粘着テープを、図面を参照しながら説明する。
図1は、粘着テープの一例を概略的に示す断面図である。
【0017】
粘着テープ1は、基材層2と、基材層2の主面上に形成された表面層3と、基材層2の主面とは反対側の面上に形成された粘着層4とを含む。基材層2と表面層3との界面、及び/又は、基材層2と粘着層4との界面には、二酸化ケイ素などのセラミックス粒子が存在していてもよい。
【0018】
基材層2は、例えばポリテトラフルオロエチレンを含んだフィルムである。基材層はガラスクロスなどの芯材(織布)を含んでいても良い。但し、基材層が芯材を含んでいると、表面層及び基材層の摩耗が進んだ際に芯材が露出し、ラミネートの際に溶融した樹脂が芯材に付着する可能性があるため好ましくない。或いは、当該粘着テープをラミネートロールに貼り付ける場合に、追従性が悪化して剥がれやすくなる可能性がある。これらの問題を回避するためには、基材層2は芯材を含んでいないことが好ましい。基材層は、ポリテトラフルオロエチレンからなっていてもよい。つまり、基材層はPTFEフィルムであり得る。基材層は、延伸方向に沿った配向を有し得る。基材層が延伸方向に沿った配向を有していると、この配向と平行な方向についての引張強さが高い。
【0019】
基材層の厚みは、例えば10μm~500μmの範囲内にあり、好ましくは20μm~200μmの範囲内にある。基材層が過度に厚いと、粘着テープの剛直性が高くなりすぎて、粘着テープとしての柔軟性がなくなるため好ましくない。この場合、例えば、後述するようなエンドレスベルトとして使用した場合に、ラミネートロールの形状に沿ってベルトが湾曲しなくなる可能性がある。或いは、粘着テープ上をラミネート対象(紙、及び、フィルム等)の端部が通過する際に、ラミネート対象が粘着テープ上を通過する部分と通過しない部分が存在するため、ラミネート後のフィルム等において、基材層の厚さに起因した段差の跡が形成されてしまうデメリットがある。基材層が過度に薄いと、引張強さが不足して粘着テープが破断しやすいため好ましくない。粘着テープをラミネートロールに直貼りする場合には、基材層は比較的薄くてもよい。しかしながら、過度に薄い基材層上に、PFAを含む表面層を備えた粘着テープを製造するのは比較的難しい。
【0020】
粘着テープは、基材層の主面と平行な方向についての引張強さが、例えば30MPa~250MPaの範囲内にあり、好ましくは50MPa~250MPaの範囲内にある。基材層の主面と平行な方向とは、例えば、基材層が一軸延伸された方向(延伸方向)を指す。引張強さがこの範囲内にあると、粘着テープをエンドレスベルトとして使用した場合に長期間の使用に耐えることができる。粘着テープの引張強さは、例えば、基材層の引張強さに大きく依存している。
【0021】
粘着テープの引張強さは、JIS K 7161:1994に準じて測定することができる。
【0022】
表面層は、基材層の主面上の少なくとも一部に設けられている。表面層はPFAを含む。PFAの融点は310℃であり、ラミネート時の温度、例えば300℃までの温度環境下でも溶融しない。PFAを含む表面層の表面は耐摩耗性に加えて離型性にも優れている。それ故、この表面層を離型面としてラミネート等の離型用用途に使用した場合、粘着テープは優れた離型性及び耐摩耗性を達成することができる。表面層は、他の溶融流動性樹脂を含むことができる。
【0023】
表面層の形成方法は後述するが、表面層として、溶融流動性を有していないPTFE樹脂を使用するのは好ましくない。つまり、表面層はPTFEを含まないことが望ましい。仮に、PTFEを含む表面層を形成する場合、このような表面層は、例えばPTFEのファインパウダーを含む材料から形成される。こうして形成された表面層は、上記の通り延伸方向に沿った配向を有している可能性がある。それ故、この表面層を備えた粘着テープをラミネートの離型用用途に使用した場合、耐摩耗性に劣るためである。
【0024】
表面層の厚みは、例えば0.1μm~50μmの範囲内にあり、好ましくは1μm~10μmの範囲内にある。
【0025】
基材層及び表面層の総厚みに占める基材層の厚みの割合は、例えば85%~99%の範囲内にある。基材層及び表面層の総厚みに占める表面層の厚みの割合は、例えば、15%~1%の範囲内にある。基材層及び表面層の割合を上記範囲内とすることにより、基材層に起因した十分な引裂強度を備えるとともに、表面層に起因した耐摩耗性に優れた粘着テープが得られる。
【0026】
粘着層4は、粘着性を有した層である。粘着層は、例えば粘着剤及び硬化剤を含んでいる。粘着層は、基材層の主面とは反対側の面上の少なくとも一部に形成されている。
【0027】
粘着剤としては、例えば、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤及びアクリル系粘着剤から選択される少なくとも1つを使用することができる。これらの中でも、耐熱性の観点から、粘着剤はシリコーン系粘着剤及び/又はアクリル系粘着剤を含むことが好ましい。
【0028】
シリコーン系粘着剤の例は、過酸化物硬化型の粘着剤又は付加硬化型の粘着剤である。粘着剤として過酸化物硬化型の粘着剤を使用する場合、硬化剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化-p-クロルベンゾイル、過酸化-2,4-ジクロルベンゾイル及び過酸化ジ-t-ブチルからなる群より選択される少なくとも1つを使用することができる。粘着剤として付加硬化型の粘着剤を使用する場合は、硬化剤としては、例えば白金を使用することができる。
【0029】
粘着層の厚みは、例えば10μm~100μmの範囲内にあり、好ましくは20μm~60μmの範囲内にある。
【0030】
粘着テープの厚みは、例えば20μm~500μmの範囲内にあり、好ましくは30μm~150μmの範囲内にある。粘着テープが過度に厚いと、ラミネート後のフィルム等において、粘着テープの厚さに起因した段差の跡が形成されてしまう傾向がある。また、粘着テープが過度に薄いと、引張強度が低下する傾向がある。
【0031】
粘着テープは、粘着層上に剥離紙を備えていてもよい。
【0032】
それぞれの層の層厚は、例えば、粘着テープの断面を走査電子顕微鏡(SEM: Scanning Electron Microscope)で観察することにより測定することができる。測定時は、SEM像においてランダムに5箇所の厚みを測定し、これらの平均値を算出する。
【0033】
<エンドレスベルト>
実施形態に係るエンドレスベルトは、実施形態に係る粘着テープを備える。
図2は、実施形態に係るエンドレスベルトの一例を概略的に示す断面図である。エンドレスベルトは、例えば、実施形態に係る粘着テープを2枚準備し、これらの粘着層が互いに接着するように貼り合わせると共に、一方の端部に存在する粘着層が、他方の端部に存在する表面層上に重ねられることにより形成される。
【0034】
エンドレスベルト10は、粘着テープ1Aと、これに積層された粘着テープ1Bとを備える。粘着テープ1A及び粘着テープ1Bは、それぞれ、図1を参照しながら説明した粘着テープ1と同一の構成を有している。つまり、粘着テープ1Aは、基材層2Aと、基材層2Aの主面上に形成された表面層3Aと、基材層2Aの主面とは反対側の面上に形成された粘着層4Aとを含む。粘着テープ1Bは、基材層2Bと、基材層2Bの主面上に形成された表面層3Bと、基材層2Bの主面とは反対側の面上に形成された粘着層4Bとを含む。ここでは、粘着テープ1Aが備える粘着層4Aと、粘着テープ1Bが備える粘着層4Bとを向かい合わせて、これらが接触するように貼り合わせると共に、一方の端部と他方の端部とを接合する(図示していない)ことによりエンドレスベルト10が形成されている。
【0035】
図3には、実施形態に係る粘着テープ1Aと、表面層を省略した粘着テープ1Cとを、それらの粘着層が接触するように貼り合わせてなるエンドレスベルトを示している。図3に示すように、2枚の粘着テープを貼り合わせてなるエンドレスベルトにおいて、一方の粘着テープは表面層を有していなくてもよい。粘着テープ1Cは、基材層2Cと、これに積層された粘着層4Cとを含んでおり、表面層を有していない。このエンドレスベルト10をラミネートの離型用用途で使用する場合、表面層3Aが離型面として設置されるように使用することにより、エンドレスベルト10は優れた離型性及び耐摩耗性を発揮することができる。
【0036】
<粘着テープの製造方法>
実施形態に係る粘着テープの製造方法の一例を説明する。
まず、PTFE樹脂を含んだファインパウダーを用意し、これに助剤を混合して混合物を得る。混合物を金型に充填し、加圧成型することにより予備成形品を得る。これをシート状に押し出した後、圧延し、次いで、助剤を取り除いて未焼成のPTFEシートを得る。
【0037】
なお、ファインパウダーの代わりにモールディングパウダーを使用してもよいが、粘着テープに引張強さが要求される場合には、ファインパウダーを原料とすることが好ましい。ファインパウダーを用いる成形では、押出し工程及び圧延工程などの、延伸方向への配向を強化する工程を介するため、延伸方向への配向が強い構造となり、高い引張強度を達成することができる。
【0038】
ファインパウダーの平均粒子径は、例えば100μm-1000μmの範囲内にある。
【0039】
次に、PFA粒子を分散させた水性ディスパージョンを準備する。水性ディスパージョンには、界面活性剤などの分散剤、及び、他の添加剤を適宜添加してもよい。ディスパージョンの溶媒は水である必要はなく、適切な有機溶媒を使用してもよい。このディスパージョンを、先に作製した未焼成のPTFEシートの少なくとも一方の面上に塗布して塗膜を形成し、塗膜を有するPTFEシートを得る。次いで、このPTFEシートを焼成してPTFEフィルムを得る。焼成は、例えば、327℃-420℃の温度で、5秒-600秒に亘り行う。
【0040】
焼成後のPTFEフィルムを一軸延伸して、基材層としてのPTFEフィルムの主面上に、PFAを含む表面層が形成された積層体を得ることができる。このように、焼成後のシートを一軸延伸することにより、延伸方向への引張強さが向上する。粘着テープに高い引張強さが要求されない場合は、この延伸工程は省略することができる。なお、粘着テープに高い引張強さが要求されない場合とは、後述するが、粘着テープをエンドレスベルトに加工すること無しに、ラミネートロールに直接貼り付ける場合などである。延伸工程を省略した場合、基材層及び表面層に応力が残留しにくい利点がある。
【0041】
PFA粒子のディスパージョンを使用して表面層を形成する代わりに、未焼成のPTFEシート上にPFAフィルムを重ねて、これらを熱ロール等で圧着して一体化することにより積層体を得てもよい。
【0042】
得られた積層体が含む基材層において、表面層が設けられていない側に粘着層を形成する。或いは、表面層が基材層の両面に形成されている場合は、その両面のうち何れか一方の面上に粘着層を形成する。粘着層の形成は、公知の方法で行うことができる。ここで、基材層の表面又は表面層の表面に対しては、任意に表面改質処理を行ってもよい。例えば、フッ素樹脂粒子及び二酸化ケイ素粒子を含む分散液を基材層上に塗布、乾燥することで表面改質処理を行うことができる。表面改質処理は、化学的処理に限られず、物理的処理であってもよい。
【0043】
以上のようにして粘着テープを製造することができる。この粘着テープは、粘着層が片面にのみ設けられているため、例えば、粘着層形成後にロール状に巻くことができる。
【0044】
<粘着テープ及びエンドレスベルトの使用形態>
続いて、実施形態に係るエンドレスベルト又は粘着テープがラミネート工程に用いられる場合の一例を説明する。図4は、ラミネート装置の一部を概略的に示す側面図である。図5は、ラミネート装置の一部を概略的に示す上面図である。
【0045】
図4には、図示しないシングルラミネート装置が備える、ラミネート部20を示している。ラミネート部20は、ラミネートロール21及び22、冷却ロール23、及び、ロール25を備えている。ラミネート部20は、ダイ24を更に備えている。ダイ24は、溶融樹脂31を冷却ロール23とラミネートロール22との間に供給することができる。実施形態に係るエンドレスベルト10は、ラミネートロール21及び22にまたがって掛けられている。
【0046】
エンドレスベルトを2本のラミネートロールに掛けて駆動させるためには、例えば、2本のラミネートロール間の距離を長くすることにより、一定の張力をエンドレスベルトに付与する必要がある。張力が不足すると、ロールの駆動によってエンドレスベルトが蛇行したり、皺が寄ったりする可能性がある。この張力は、PTFE基材層を製造する際の延伸方向に沿って掛けられるが、実施形態に係るエンドレスベルトは、PTFE基材層を含んでいるため、延伸方向に関する引張強さに優れている。それ故、エンドレスベルトを2本のロールにまたがって駆動させる場合に、十分な張力をこれに掛けることができる。言い換えると、エンドレスベルトは、比較的高い張力に耐えることができる。その結果、エンドレスベルトは、ロールの駆動に伴って適切に回転することができる。
【0047】
これに対して、仮に、PFAを含む表面層のみを備えた粘着テープによりエンドレスベルトを構成した場合、ベルトの引張強さが不足しているため、十分な張力をベルトに掛けることができない可能性がある。或いは、高い張力を掛けた状態でエンドレスベルトを回転させると、ベルトが伸びてしまい、ベルトが蛇行したり、皺が寄ったりする可能性がある。
【0048】
ラミネート部20に供給されたラミネート対象30は、搬送方向Tに沿って、ラミネートロール22と冷却ロール23との間、冷却ロール23の外面、及び、冷却ロール23とロール25との間をこの順に通過する。ラミネート対象30は、例えば、紙及びプラスチックフィルムなどのシート状物である。ラミネート対象30がラミネートロール22と冷却ロール23との間を通過する際、ラミネート対象30と冷却ロール23との間には、ダイ24から溶融樹脂31が供給される。溶融樹脂31は、冷却ロール23により冷却されると共に、ラミネート対象30を被覆するように固化する。この時、余剰の溶融樹脂31が、ラミネート対象30の搬送方向Tに対して垂直な方向に向かって、ラミネート対象30上からはみ出す。
【0049】
図5には、供給された溶融樹脂31の一部がラミネート対象30上からはみ出している様子を示している。はみ出した溶融樹脂31は、エンドレスベルト10上に付着して固化する。実施形態に係るエンドレスベルト10は離型性及び耐摩耗性に優れるため、エンドレスベルト10上に付着した樹脂31が、ラミネート対象30の搬送に伴って、エンドレスベルト10から繰り返し剥離されたとしても、表面層の摩耗は進みにくい。その結果、エンドレスベルト10上には不要な樹脂が残存しにくいため、エンドレスベルト10は長期間に亘る使用に耐えることができる。
【0050】
図4及び図5では、実施形態に係る粘着テープがエンドレスベルトに加工されて使用されている場合を説明したが、粘着テープは、ラミネートロール22に直接貼り付けられていても良い。この場合、粘着テープをエンドレスベルトに加工して使用する場合と比較して、粘着テープには高い引張強さが要求されない。
【0051】
実施形態に係る粘着テープの使用形態は、ラミネート時の離型用用途に限らず、例えば、ヒートシールを行う際に、シール対象物とヒートシール装置の加熱部との直接の接触を防ぐ離型用途などでも使用することができる。
[実施例]
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
<基材層及び表面層の作製>
PTFEファインパウダー100質量部に、炭化水素油30質量部を均一に混合した。この混合物をペースト押出して、棒状に予備成形を行った。この予備成形物を一対の金属製圧延ロール間に通し、長方形の未焼成テープを得た。次に、PFA粒子を40重量%の固形分濃度で含有する水性ディスパージョンを満たした含浸槽を準備した。このディスパージョンはPTFE粒子などの他の樹脂粒子を含んでいなかった。先に作製した未焼成テープをこのディスパージョンにくぐらせた後、片面のディスパージョンをブレードで掻き取り、片面に塗膜が形成された未焼成テープを得た。
【0053】
その後、この未焼成テープを、360℃の温度で60秒に亘り焼成した。更に、ロール延伸機を用いて、このテープを、テープの長手方向に向かって3倍に延伸して、基材層の主面上に表面層が形成された積層体を作製した。
【0054】
<粘着層の作製>
基材層の他の面に対して、金属ナトリウムを使用したエッチング処理を施し、当該面を表面改質させた。続いて、粘着剤として過酸化物硬化型のシリコーン系粘着剤を用意し、硬化剤として過酸化ベンゾイルを用意した。これら粘着剤及び硬化剤を、溶媒としてのキシレンに溶解させて、粘着剤含有溶液を作製した。この溶液は、溶液の重量に対して粘着剤を50重量%の量で含んでおり、硬化剤を1重量%の量で含んでいた。
【0055】
この溶液を、表面改質された基材層表面上に塗布し、塗膜を形成した。塗膜が形成された積層体を電気オーブンに入れて、バッチにて熱処理に供した。この熱処理は、200℃の温度で、280秒に亘って実施した。
【0056】
こうして、実施例1に係る粘着テープを作製した。実施例1に係る粘着テープの厚みは100μmであり、基材層の厚みは60μmであり、表面層の厚みは10μmであり、粘着層の厚みは30μmであった。
【0057】
また、JIS K 7161:1994に基づいて実施例1に係る粘着テープの引張強さを評価したところ、90MPaであった。
【0058】
作製した粘着テープを、図4及び図5に示すようにエンドレスベルトに加工して使用した。その結果、エンドレスベルト上には溶融樹脂の残存が少なく、長期間に亘る使用に耐えることができた。即ち、実施例1に係る粘着テープは離型性に加えて耐摩耗性にも優れていた。
【0059】
(比較例1)
表面層の形成を省略したことを除いて、実施例1と同様の方法で粘着テープを作製した。
【0060】
作製した粘着テープを、図4及び図5に示すようにエンドレスベルトに加工して使用した。その結果、短時間の使用でもPTFE基材層の表面において毛羽立ちが生じた。即ち、比較例1に係る粘着テープは、表面層を有する実施例1に係る粘着テープと比較して離型性及び耐摩耗性に劣っていた。
【0061】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下に、本願の出願当初の請求項に記載された発明を付記する。
[1] ポリテトラフルオロエチレンを含む基材層と、
前記基材層の主面上の少なくとも一部に形成され、パーフルオロアルコキシアルカンを含む表面層と、
前記基材層の前記主面とは反対側の面上に形成された粘着層とを含む粘着テープ。
[2] 前記表面層は、パーフルオロアルコキシアルカンからなる[1]に記載の粘着テープ。
[3] 前記表面層の厚みは0.1μm~50μmの範囲内にある[1]又は[2]に記載の粘着テープ。
[4] 前記基材層の厚みは10μm~500μmの範囲内にある[1]-[3]の何れか1項に記載の粘着テープ。
[5] 前記主面と平行な方向についての引張強さは30MPa~250MPaの範囲内にある[1]-[4]の何れか1項に記載の粘着テープ。
[6] 前記基材層は、ポリテトラフルオロエチレンフィルムである[1]-[5]の何れか1項に記載の粘着テープ。
[7] [1]-[6]の何れか1項に記載の粘着テープを備えたエンドレスベルト。
[8] 未焼成のポリテトラフルオロエチレンシートを準備することと、
前記ポリテトラフルオロエチレンシートの少なくとも一方の面上に、パーフルオロアルコキシアルカン粒子を含むディスパージョンを塗布して塗膜を形成し、塗膜を有する前記ポリテトラフルオロエチレンシートを得ることと、
前記塗膜を有する前記ポリテトラフルオロエチレンシートを焼成してポリテトラフルオロエチレンフィルムを得ることと、
焼成後の前記ポリテトラフルオロエチレンフィルムを延伸し、ポリテトラフルオロエチレンを含む基材層と、前記基材層の主面上に形成され、パーフルオロアルコキシアルカンを含む表面層とを備える積層体を得ることと、
前記基材層の前記主面とは反対側の面上に粘着層を形成することと
を含む粘着テープの製造方法。
【符号の説明】
【0062】
1…粘着テープ、2…基材層、3…表面層、4…粘着層、10…エンドレスベルト、20…ラミネート部、21、22…ラミネートロール、23…冷却ロール、24…ダイ、25…ロール、30…ラミネート対象、31…溶融樹脂。
図1
図2
図3
図4
図5