(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】圧力計測機能付き操作装置及び操作システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20240925BHJP
A63B 23/00 20060101ALI20240925BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240925BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20240925BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G06F3/01 510
A63B23/00
G06F3/041 602
G01L5/00 101Z
A61H1/02 K
(21)【出願番号】P 2020175909
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山子 剛
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-146324(JP,A)
【文献】特表2020-513274(JP,A)
【文献】特開2019-179433(JP,A)
【文献】特開2008-264195(JP,A)
【文献】特開2004-140499(JP,A)
【文献】憑依型遠隔ロボット操作,第74回(平成24年)全国大会講演論文集(4),2012年03月06日,p.4-67~4-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H1/00-5/00
A61H99/00
G06F3/01
G01L5/00-5/28
A63B69/00-69/40
A63B71/00-71/16
A63B1/00-26/00
A63H1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者が押圧、又は着座する被加圧面と、
前記操作者によって前記被加圧面に加えられている圧力の中心の、前記被加圧面と平行な計測面上における座標である押圧座標と、前記計測面上の基準点の座標に対する前記押圧座標の相対的な位置を表す位置ベクトルとを算出する演算部と、
前記位置ベクトルが向いている方向に基づいて定められる方向を
、別体である操作対象物の平面上における移動方向とする旨の制御信号を生成する信号生成部と、
前記操作対象物に対して前記制御信号を
無線通信によって送信する通信部とを備えることを特徴とする圧力計測機能付き操作装置。
【請求項2】
前記制御信号は、前記操作対象物を移動させる移動方向と共に、前記位置ベクトルの大きさに基づいて定められる、前記操作対象物の移動速度を制御する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の圧力計測機能付き操作装置。
【請求項3】
前記制御信号は、予め前記通信部が受信したそれぞれの前記操作対象物を区別するために割り振られた固有情報に基づいて定められる、識別情報を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力計測機能付き操作装置。
【請求項4】
前記制御信号の送信周期を設定する、周期設定部を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の圧力計測機能付き操作装置。
【請求項5】
操作者が押圧、又は着座する被加圧面と、前記操作者によって前記被加圧面に加えられている圧力の中心の、前記被加圧面と平行な計測面上における座標である押圧座標を算出して出力するデータ出力部とを有する圧力計測装置と、
平面上を移動するための移動機構を備える
、前記圧力計測装置とは別体である操作対象物と、
前記圧力計測装置から出力された前記押圧座標に関する情報に基づいて、前記操作対象物の前記平面上における移動方向を特定する制御信号を生成し、前記操作対象物に対して送信するコンピュータとを備え、
前記コンピュータは、
前記圧力計測装置から出力された前記押圧座標が入力され、前記計測面上の基準点の座標に対する前記押圧座標の相対的な位置を表す位置ベクトルを算出する演算部と、
前記位置ベクトルが向いている方向に基づいて定められる方向を前記操作対象物の前記平面上における移動方向とする旨の前記制御信号を生成する信号生成部と、
前記操作対象物に対して前記制御信号を
無線通信によって送信する通信部とを有することを特徴とする圧力計測機能付き操作システム。
【請求項6】
前記制御信号は、前記操作対象物を移動させる移動方向と共に、前記位置ベクトルの大きさに基づいて定められる、前記操作対象物の移動速度を制御する情報を含むことを特徴とする請求項5に記載の圧力計測機能付き操作システム。
【請求項7】
前記制御信号は、予め前記通信部が受信したそれぞれの前記操作対象物を区別するために割り振られた固有情報に基づいて定められる、識別情報を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の圧力計測機能付き操作システム。
【請求項8】
前記コンピュータは、前記制御信号の送信周期を設定する、周期設定部を備えることを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の圧力計測機能付き操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作装置及び操作システムに関し、特に、操作者の動作に基づいて、操作対象物を操作する圧力計測機能付き操作装置及び圧力計測機能付き操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人は、日常生活において、歩いたり、寝ている状態から起き上がったり等の動作を行う。そして、人は、これらの動作を難なく行い続けるために、腕や足の筋力や、バランス能力等を鍛えることで、ある程度の運動能力を維持させることが重要となる。しかしながら、自らの運動能力を常に自覚しながら生活することは難しい。
【0003】
そこで、運動能力を定量的に評価するために様々な方法が提案されている。例えば、バランス能力に関しては、簡易的な評価方法としては、両目を閉じた状態で、片足立ちを維持できる時間を計測する方法等がある。より詳細に評価する方法としては、例えば、下記特許文献1に記載されているような装置を用いた評価方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、運動能力は、人にとって重要な能力であり、特に、リハビリテーションの分野では、高齢者や大きな怪我をした人が不自由なく日常生活を送れるように、そして、スポーツの分野では、パフォーマンスを向上させるために、運動能力を回復、維持、向上、さらには、幼児、成長期にある子供などの運動能力を発達させる方法や装置が期待されている。
【0006】
また、近年では、高齢者や子供の運動能力の低下が問題視されている。そこで、運動能力を回復、維持、向上させる方法として、運動能力に影響する筋力を鍛える筋力トレーニングや、関節を柔らかくするための柔軟体操、バランス能力を鍛える運動等が提案されている。
【0007】
ところが、筋力トレーニングや柔軟体操等は、すぐに体に変化が現れるものではなく、定期的に長期にわたって行わなければ、なかなか効果が表れない。そして、筋力トレーニングや柔軟体操のように体に負担をかけるものや、体に痛みが生じるものは、精神的な負担にもなり、長期にわたって継続して実施することが難しい。
【0008】
また、高齢者、病気や怪我をした患者は、激しい運動やトレーニングが困難であり、自分の力で立位状態を維持することが難しい場合もある。このため、特に、リハビリテーション等では、安全性が求められることはもちろん、操作者が手や膝をついた状態や、座った状態で、ゆっくりとトレーニングを行うことができ、さらには、客観的に運動能力を評価できる装置や方法が期待されている。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、運動能力を定量的に評価し、かつ、楽しみながら運動能力を回復、維持、向上させることができる圧力計測機能付き操作装置及び圧力計測機能付き操作システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の圧力計測機能付き操作装置は、
操作者が押圧、又は着座する被加圧面と、
前記操作者によって前記被加圧面に加えられている圧力の中心の前記被加圧面と平行な計測面上における座標である押圧座標と、前記計測面上の基準点の座標に対する前記押圧座標の相対的な位置を表す位置ベクトルとを算出する演算部と、
前記位置ベクトルが向いている方向に基づいて定められる方向を操作対象物の平面上における移動方向とする旨の制御信号を生成する信号生成部と、
前記操作対象物に対して前記制御信号を送信する通信部とを備えることを特徴とする。
【0011】
ここでの「押圧」とは、力を込めて押し込むように行われる動作であり、被加圧面を押圧する方法としては、例えば、手や指で被加圧面を押す方法や、足で被加圧面を踏み込む方法が挙げられる。ただし、押圧する方法としては、体の一部を使って被加圧面に加える圧力の強弱を調整できる方法であれば、これら手足以外によって押圧する方法を採用しても構わない。押圧する方法は、子供や高齢者のトレーニングや、患者のリハビリテーション等、それぞれの使用用途に応じて選択される。
【0012】
また、本明細書における「着座」とは、椅子や台座の上に載置された上記装置に、操作者が臀部を載せるように座るだけでなく、床に設置した上記装置に長座位で着座する場合等も含まれ、さらには、被加圧面上に正座で座る場合等も含まれる。なお、被加圧面に正座で座る場合等は、被加圧面上に座布団やクッション、タオル等を敷いて、その上に操作者が着座するように使用しても構わない。
【0013】
上記装置は、操作者が被加圧面に加える圧力を調整することによって、特定の制御信号を受けて平面上を移動する操作対象物、例えば、ロボット、ラジコンカー等を、意図した方向に動かすことができる。計測面上の基準点の座標は、例えば、装置の被加圧面の中心点や、操作開始前に計測された操作者の静止着座時の上半身の重心位置とすることができる。
【0014】
操作者は、ロボット、ラジコンカーが意図通りに動くように、被加圧面に加える力や、上半身の重心を調整する。このような動作を継続することで、操作者は、腕や足の筋力や、上半身を支えるための筋力、俊敏に体を動かすための筋力、さらには体幹や神経系を鍛えることができる。
【0015】
また、例えば、被加圧面に臀部を載せるように着座した状態で操作する場合、操作者は、足を床面から浮かせて操作をすることで、大腿筋や大殿筋などの下半身の筋力トレーニングを併せて行うことができる。
【0016】
さらに、上記装置を用いることで、操作者は、ロボット、ラジコンカーを自分の分身として、特定の経路上を決まった時間内に走破させる等、ゲーム感覚で筋力、俊敏性、バランス感覚といった運動能力の要素の評価やトレーニングをすることができる。
【0017】
さらに、フィジカル空間で自分の分身としてロボット、ラジコンカーを協働的に動かすことで、障害物の有無やコースの形状等を意識した操作ができるため、画面やスクリーン上のバーチャル空間のキャラクターを操作する装置と比較して、本発明は、操作対象物に感情移入しやすく、操作性の難易度や緻密な調整が要求されるため、操作者がより効果的に運動能力を鍛えることができる。
【0018】
さらに、安定した位置に配置された操作装置に着座した状態での操作であれば、操作中に操作者が転倒したり、操作装置から足を踏み外すことがなく、自分の足で立つことが困難な患者のリハビリテーションにも好適に用いることができる。
【0019】
上記圧力計測機能付き操作装置において、
前記制御信号は、前記操作対象物を移動させる移動方向と共に、前記位置ベクトルの大きさに基づいて定められる、前記操作対象物の移動速度を制御する情報を含んでいても構わない。
【0020】
上記構成とすることで、操作対象物の制御に更なる要素が加わり、操作者は、より細かく押圧の力の調整や上半身の重心位置の調整を行うようになる。したがって、より高度な運動能力のトレーニングを行うことができる。
【0021】
上記圧力計測機能付き操作システムにおいて、
前記通信部は、平坦面上に載置された前記操作対象物に対して前記制御信号を送信するものであっても構わない。
【0022】
操作対象物の動作が平坦面上での移動だけとなれば、操作者は、押圧位置や押圧の力の調整、上半身の重心位置の操作だけに集中することができる。したがって、運動能力の回復を優先するリハビリテーションの初期段階におけるトレーニング等に活用することができる。
【0023】
上記圧力計測機能付き操作装置において、
前記制御信号は、予め前記通信部が受信したそれぞれの前記操作対象物を区別するために割り振られた固有情報に基づいて定められる、識別情報を含んでいても構わない。
【0024】
上記構成とすることで、複数の操作対象物を用意して、それぞれ独立の操作装置で操作することができる。つまり、各操作装置とペアリングした複数のロボットによって、レース、サッカーや棒倒しといった複数人で戦略性の高いゲームをすることができる。
【0025】
そして、各操作者は、同じフィジカル空間において、自分の分身であるロボットと、他の操作者が操作するロボットとを競争させ、又は協働させることで、自分が操作するロボットに愛着を持ち、ゲームを楽しみながら運動能力のトレーニングをすることができる。
【0026】
上記圧力計測機能付き操作装置において、
前記制御信号の送信周期を設定する、周期設定部を備えていても構わない。
【0027】
人は、同じ場所を一定の力で押圧し続けることや、自分の重心を固定したまま維持させることが困難である。つまり、ロボット、ラジコンカーは、常に操作者が加える力や、上半身の重心位置に基づいて動作するとなると、押圧座標に基づいて移動しながらも、僅かに揺動をしながら移動したり、意図した方向になかなか動こうとしないことがある。
【0028】
また、制御信号の周期が長すぎると、操作対象物は、移動と停止を繰り返す場合や、操作者が押圧位置や力の加減、重心位置を変えているにも関わらず、しばらくこれらの変化に反応せず、同じ移動方向に同じ移動速度で移動し続けてしまう場合がある。
【0029】
そこで、上記構成とすることで、制御信号の送信周期を任意に設定でき、操作対象物を制御する制御信号から、被加圧面に加えられる圧力の微小な変化や、人の重心の揺れ動きのような、短い周期の信号を取り除くことができる。したがって、操作者が、操作対象物をスムーズに動かすことができる。
【0030】
なお、ロボットを静止させる方法としては、例えば、任意の大きさに設定されたサークル内に圧力の合力の作用点があるときや、被加圧面に閾値以上の圧力がかかっていないことが検出されたときに、操作装置が操作対象物に対して停止信号を送信するように設定する方法がある。
【0031】
本発明の圧力計測機能付き操作システムは、
操作者が押圧、又は着座する被加圧面と、前記操作者によって前記被加圧面に加えられている圧力の中心の前記被加圧面と平行な計測面上における座標である押圧座標を算出して出力するデータ出力部とを有する圧力計測装置と、
平面上を移動するための移動機構を備える操作対象物と、
前記圧力計測装置から出力された前記押圧座標に関する情報に基づいて、前記操作対象物の前記平坦上における移動方向を特定する制御信号を生成し、前記操作対象物に対して送信するコンピュータとを備え、
前記コンピュータは、
前記圧力計測装置から出力された前記押圧座標が入力され、前記計測面上の基準点の座標に対する前記押圧座標の相対的な位置を表す位置ベクトルを算出する演算部と、
前記位置ベクトルが向いている方向に基づいて定められる方向を前記操作対象物の前記平面上における移動方向とする旨の前記制御信号を生成する信号生成部と、
前記操作対象物に対して前記制御信号を送信する通信部とを有する。
【0032】
また、上記圧力計測機能付き操作システムにおいて、
前記制御信号は、前記操作対象物を移動させる移動方向と共に、前記位置ベクトルの大きさに基づいて定められる、前記操作対象物の移動速度を制御する情報を含んでいても構わない。
【0033】
さらに、上記圧力計測機能付き操作システムにおいて、
前記通信部は、平坦面上に載置された前記操作対象物に対して前記制御信号を送信するものであっても構わない。
【0034】
さらに、上記圧力計測機能付き操作システムにおいて、
前記制御信号は、予め前記通信部が受信したそれぞれの前記操作対象物を区別するために割り振られた固有情報に基づいて定められる、識別情報を含んでいても構わない。
【0035】
さらに、上記圧力計測機能付き操作システムにおいて、
前記コンピュータは、前記制御信号の送信周期を設定する、周期設定部を備えていても構わない。
【0036】
上記システムは、上記装置に対して、圧力計測装置が被加圧面下に配置されたセンサ等によって被加圧面の各位置にかかっている圧力の計測を行ってコンピュータに対して測定データを出力し、コンピュータが、入力された測定データに基づいて押圧座標と位置ベクトルの演算と制御信号の生成と操作対象物への制御信号の送信を行う構成である。
【0037】
すなわち、上記の圧力計測機能付き操作装置と同じ機能を備えた操作システムであり、各構成による効果も上述の通りである。さらに、上記構成においては、圧力計測以外の機能がコンピュータに搭載されるため、操作者が乗る圧力計測装置をコンパクトで、かつ、軽量に構成することができ、圧力計測装置が持ち運びしやすくなる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、運動能力を定量的に評価し、かつ、楽しみながら運動能力を回復、維持、向上させることができる圧力計測機能付き操作装置及び圧力計測機能付き操作システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】操作装置の使用態様を示す模式的な図である。
【
図2】操作装置の一実施形態の模式的な全体斜視図である。
【
図4】操作装置の各処理手段の構成の一実施形態を模式的に示す図面である。
【
図6】一つの操作装置と複数の操作対象物を用いた使用態様を示す模式的な図である。
【
図7】複数の操作装置と複数の操作対象物を用いた使用態様を示す模式的な図である。
【
図10】操作システムの使用態様を示す模式的な図である。
【
図11】操作システムの一実施形態の模式的な全体構成図である。
【
図13】操作システムの構成の一実施形態を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の操作装置及び操作システムについて、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0041】
[第一実施形態]
本発明の操作装置1の構成につき、説明する。
【0042】
最初に操作装置1の使用態様を説明する。
図1は、操作装置1の使用態様を示す模式的な図である。
図1に示すように、椅子の上に置かれた操作装置1に臀部を載せるように着座した操作者が、操作装置1上で自分の上半身の重心位置をコントロールすることで、平坦面上の少し離れた位置に置かれた操作対象物2を操作する。操作対象物2は、操作装置1から送信された制御信号3を受信して、制御信号3に基づいて平坦面上を移動する。操作対象物2としては、例えば、二足歩行あるいは球形状の車輪で移動するロボットやミニカー等を用いることができる。
【0043】
図2は、操作装置1の一実施形態の模式的な全体斜視図である。
図3は、
図2の操作装置1の上面視の図面である。
図2及び
図3に示すように、第一実施形態の操作装置1は、操作者が着座する被加圧面1aを備えている。なお、以下説明において、被加圧面1aが構成されている平面をXY平面として、操作者が被加圧面1aに着座したときの左右方向をX方向(右方向をX正方向)、前後方向をY方向(前方向をY正方向)とし、XY平面と直交する方向をZ方向として説明する。
【0044】
操作装置1は、内部、すなわち
図2において被加圧面1aよりも下方において、情報に対する処理を行う処理手段が内蔵されている。
図4は、操作装置1の上記各処理手段の構成の一実施形態を模式的に示す図面である。
図4に示すように、操作装置1は、演算部10、信号生成部11、通信部12及び周期設定部13を備える。
【0045】
また、第一実施形態の操作装置1は、被加圧面1a下に図示しない複数の圧力計測用のセンサを搭載しており、圧力計測機能を備える。圧力計測用のセンサとしては、例えば、圧力センサ、歪ゲージセンサ、ロードセル等のセンサを用いることができる。
【0046】
演算部10は、上記の各センサが測定した分力及び各センサが配置されている座標位置を利用して、被加圧面1aと平行な計測面上の圧力の中心の座標を算出する。以後、圧力の中心の座標を押圧座標と呼ぶ。
【0047】
演算部10は、被加圧面1a上に着座している操作者の上半身の重心位置に相当する押圧座標と、基準点1bを原点とした押圧座標の相対的な方向と距離を表す位置ベクトルG1(CX,CY)とを算出する(
図5参照)。
図5は、位置ベクトルG1の各成分を示す図面である。ここで、CXは、位置ベクトルG1のX方向の成分、CYは、位置ベクトルG1のY方向の成分である。第一実施形態において、基準点1bは、Z方向に向かってXY平面を見たときに、被加圧面1aの中心点と重なる位置とした。なお、基準点1bは、操作開始前に計測された操作者の静止着座時における上半身の重心位置としても構わない。
【0048】
演算部10は、算出した位置ベクトルG1のX正方向を0°として反時計回りを正方向とする角度θと、位置ベクトルG1の大きさr1のデータを信号生成部11に対して出力する。位置ベクトルG1の角度θは、位置ベクトルG1の各成分(CX,CY)に基づいて、次の式を満たすように算出される。
【0049】
【0050】
そして、位置ベクトルG1の大きさr1は、位置ベクトルG1の各成分(CX,CY)に基づいて、次のように算出される。
【0051】
【0052】
信号生成部11は、演算部10から出力された位置ベクトルG1の角度θのデータに基づいて、
図1に示すように、平坦面上に配置された操作対象物2を、操作対象物2の正面をY正方向に対応させて位置ベクトルG1の角度θと同じ方向である移動方向に移動させる制御信号3を生成する。なお、操作が難しい場合等には、操作対象物2の正面には対応させず、操作装置1、あるいは被加圧面1aにおける操作者の向き等に合わせるように、移動方向が設定されていても構わない。
【0053】
さらに信号生成部11は、演算部10から出力された位置ベクトルG1の大きさr1のデータに基づいて、操作対象物2を角度θの方向である移動方向に向かって、位置ベクトルG1の大きさr1に比例する移動速度で移動させるように制御する制御信号3を生成する。ここで、制御信号3は、角度θに関する情報を含む制御信号3と、移動速度に関する情報含む制御信号3を別々で生成するものであってもよく、同じ制御信号3の中にいずれの情報をも含めて生成すものであってもよい。
【0054】
通信部12は、信号生成部11で生成された制御信号3を操作対象物2に対して送信する。このとき、制御信号3の送信周期が短すぎると、短い周期で細かく動く重心の揺動まで制御信号3として、操作対象物2に送信されてしまう。そうすると、操作対象物2が、重心の揺動に合わせて振動するような動作や、制御不能で動かなくなってしまう恐れがある。また、制御信号3の送信周期が長すぎると、操作対象物2が操作者の重心移動動作に追従しなくなり、操作対象物2が操作者の重心移動に対して遅れるような動作となり、スムーズ動きができなくなる。
【0055】
この対策として、操作装置1の制御信号3を生成するタイミングを調整する方法、制御信号3を操作対象物2に対して送信するタイミングを調整する方法、あるいは、操作対象物2で、制御信号3に対して応答するタイミングを調整する方法が考えられる。いずれの構成としても構わないが、操作装置1が送信する制御信号3に対応して動く操作対象物2を任意に選ぶ場合、操作対象物2によっては、制御信号3に対して応答するタイミングを調整できない場合が考えられる。したがって、操作装置1において、制御信号3を生成するタイミング、あるいは操作対象物2に対して送信するタイミングを調整できることが好ましい。
【0056】
そこで、本実施形態においては、信号生成部11が制御信号3を常時生成し、周期設定部13が操作対象物2に制御信号3を送信する周期を調整する構成とした。周期設定部13によって、制御信号3の送信周期を任意に設定できることで、上述のように、操作者が、操作対象物2をスムーズに動かせるように調整することができる。
【0057】
なお、操作装置1は、複数の操作対象物2の操作が可能な構成であっても構わない。
図6は、一つの操作装置1で特定の操作対象物2を操作する使用態様を示す模式的な図である。
図6が示すような状態の場合、複数の操作対象物2のそれぞれに対して、異なる固有情報が割り振られているものとすることができる。
【0058】
このときまた、通信部12は、操作対象物2に対して制御信号3の送信を開始する前に、複数の操作対象物2の中から、実際に操作する対象を特定するために、実際に操作したい操作対象物2から固有情報を受信する。信号生成部11は、当該固有情報に基づいて生成した識別情報を含めた制御信号3を生成し、通信部12はこの識別情報が含まれた制御信号3を送信する。
【0059】
通信部12から送信された制御信号3が受信可能な範囲内に配置されている複数の操作対象物2は、それぞれがこの制御信号3を受信する。操作対象物2は、このとき、制御信号3に含まれている識別情報が、自身の操作対象物2に割り当てられている固有情報に対応している場合に限り、制御信号3に含まれる情報に基づいて移動を行う。
【0060】
よって、操作者は、複数の操作対象物2が配置されている状態で、特定の操作対象物2のみを操作することができる。なお、操作装置1と操作対象物2の双方が複数存在していても構わない。
図7は、複数の操作装置1でそれぞれの操作対象物2を操作する使用態様を示す模式的な図である。上記構成とすることで、
図7が示すように、同時に複数の操作者が、それぞれの操作装置1によって、別々の操作対象物2の操作を行うこともできる。
【0061】
操作装置1の通信部12が、操作開始前に操作対象物2から、固有情報を受信する方法は、例えば、操作装置1の通信部12が、操作対象物2に対して、固有情報を発信させるためのトリガ信号を送信する方法や、操作装置1と操作対象物2をケーブル等で一度接続してペアリング処理を行う方法がある。
【0062】
このように、第一実施形態の操作装置1に着座した操作者は、操作装置1の被加圧面1a上で上半身を傾ける等して、操作対象物2を移動させたい移動方向に、かつ、動かしたい速度で動かすように自分の上半身の重心を調整して操作対象物2を操作する。したがって、操作者は、操作対象物2の動きを見ながら、常に自分の重心位置を意識して、操作対象物2が意図通りの経路を移動するように、細かな重心の位置調整や、俊敏な重心移動を繰り返す。
【0063】
つまり、操作者は、上半身の重心を微調整し、状況に応じて任意の位置で重心を動かないように維持したり、俊敏に上半身を動かしたりするので、操作者の体には自然と重心を調整しようとする筋肉に負荷がかかり、バランス能力に影響する筋力が鍛えられる。さらに、操作者は、常に上半身の重心位置を意識して、重心位置の維持や、俊敏に重心移動を繰り返すことにもなるため、自分の重心を調整する感覚が身につき、体幹や神経系も鍛えられる。
【0064】
また、複数の操作者が、それぞれの操作対象物2を、同じフィールド上で操作して、例えば、レース、協働性と戦略性の高いサッカーや棒倒し等のゲームを行うことができる。複数の操作装置1と複数の操作対象物2を用意して、複数人での一斉に操作対象物2を動かす場合、他の操作者が動かす操作対象物2の動きに注意を払うようになり、より細かい精度で、俊敏に重心の位置調整を意識するようになる。
【0065】
以上のように、第一実施形態の操作装置1を用いれば、操作者は、リハビリテーションや筋力トレーニングではなく、ゲームをしている感覚で、楽しみながら無意識に運動能力の回復、維持、向上を図ることができる。そして、楽しみながら運動能力のトレーニングができるため、定期的に長期にわたって継続して行うことができる。
【0066】
さらに、安定した位置に配置された操作装置1に着座した状態での操作であることから、操作中に操作者が転倒したり、操作装置1から足を踏み外すことがなく、自分の足で立つことが困難な患者のリハビリ等にも用いることができる。なお、より安全性を高めるために、操作者は、手すり等に握った状態で操作装置1を使用しても構わない。
【0067】
第一実施形態の操作装置1は、椅子の上に置かれ、その上に操作者が着座する使用態様が
図1等で図示されているが、床面の上や踏み台の上等、椅子の座面以外に配置して用いられても構わない。
【0068】
ここで、上述の説明で参照した図面の使用態様とは異なる使用態様の一例を説明する。
図8及び
図9は、第一実施形態の操作装置1の別の使用態様を示す図面である。
図8は、床面に着座した操作者が、操作装置1の被加圧面1a上に載せた足で踏み込むことで、被加圧面1aに加える圧力を制御し、操作対象物2を操作する使用態様である。
図8では、操作者が椅子に着座した状態が図示されているが、操作装置1は、操作者が床面に座った状態、いわゆる体育座りの状態で、足を載せて使用しても構わない。
【0069】
図9は、四つん這いの状態の操作者が、操作装置1の被加圧面1a上に載せた手で被加圧面1aを押圧することで、被加圧面1aに加える圧力を制御し、操作対象物2を操作する使用態様である。
【0070】
なお、操作者が被加圧面1aを押圧する方法としては、手や足で押圧する方法以外にも、体の一部を使って被加圧面1aに加える圧力の強弱を調整できる方法であれば、手足以外によって押圧する方法であっても構わない。
【0071】
[第二実施形態]
本発明の操作システム5の構成につき、説明する。
【0072】
第一実施形態の説明と同様に、最初に操作システム5の使用態様を説明する。
図10は、操作システム5の使用態様を示す模式的な図である。
図10に示すように、圧力計測装置50に着座した操作者は、圧力計測装置50上で上半身の重心をコントロールするように上半身を動かす。そして、後述される圧力計測装置50の被加圧面50aにかかる圧力の測定データ信号52を受信したコンピュータ51から送信される制御信号3によって平坦面上の少し離れた位置に置かれた操作対象物2が操作される。
【0073】
操作対象物2は、上述の第一実施形態でも例示したものと同様で、圧力計測装置50から送信された制御信号3を受信して、制御信号3に基づいて平坦面上を移動する、二足歩行あるいは球形状の車輪で移動するロボットや、ミニカー等を用いることができる。
【0074】
図11は、操作システム5の構成の一実施形態を模式的に示す図面である。
図12は、
図11の圧力計測装置50の上面視の図面である。
図11及び
図12に示すように、操作システム5は、圧力計測機能を備えるため、圧力計測装置50とコンピュータ51によって構成される。コンピュータ51は、汎用のノートブック型PC、デスクトップ型PC、タブレット型PC、スマートフォンなどで実現できる。
【0075】
第二実施形態の圧力計測装置50は、操作者が着座するための被加圧面50aを備えている。なお、以下説明において、被加圧面50aが構成されている平面をXY平面として、操作者が被加圧面50aに着座したときに正面となる方向をY正方向とし、XY平面と直交する方向をZ方向として説明する。
【0076】
第一実施形態における操作装置1と、第二実施形態における圧力計測装置50は、説明の便宜のために外観形状は同じとしたが、いずれも
図1等に図示された形状には限定されない。
【0077】
図13は、操作システム5の構成の一実施形態を模式的に示す図面である。
図13に示すように、圧力計測装置50は、データ出力部60を備え、コンピュータ51は、演算部70、信号生成部71、通信部72及び周期設定部73を備える。
【0078】
第二実施形態の圧力計測装置50は、被加圧面50a下に図示しない複数の圧力計測用のセンサを搭載しており、圧力計測機能を備える。圧力計測用のセンサとしては、上述した第一実施形態の操作装置1と同様に、圧力センサ、歪ゲージセンサ、ロードセル等のセンサを用いることができる。
【0079】
データ出力部60は、上記の各センサが測定した分力を測定データ信号52としてコンピュータ51に対して出力する。
【0080】
コンピュータ51の演算部70は、圧力計測装置50のデータ出力部60から出力された測定データ信号52に基づいて、着座している操作者の押圧座標と計測面上の基準点50bを原点とした押圧座標の相対的な位置を表す位置ベクトルG1(CX,CY)を算出する。第二実施形態においても第一実施形態の操作装置1と同様に、計測面上の基準点50bは、Z方向に向かって被加圧面50aを見たときの、被加圧面50aの中心点としたが、基準点50bは、操作開始前に計測された操作者の静止着座時の重心位置としても構わない。
【0081】
演算部70は、算出した位置ベクトルG1の角度θと大きさr1のデータを信号生成部71に対して出力する。位置ベクトルG1の各成分の定義は、第一実施形態の説明で上述した定義と同じである。
【0082】
コンピュータ51の信号生成部71及び通信部72の機能は、第一実施形態の操作装置1の信号生成部11及び通信部72と同じである。また、操作対象物2は、第一実施形態と同様に、上述したような、平坦面上を移動するための移動機構を備えたものを採用することができる。
【0083】
上記構成とすることで、第一実施形態の操作装置1と同様に、ストレスや苦痛を感じることが少なく、楽しみながら無意識に筋力トレーニングやバランス能力のトレーニング等を行うことができ、運動能力の回復、維持、向上を図ることができる。そして、楽しみながら運動能力のトレーニングができるため、定期的に長期にわたって継続して行うことができる。
【0084】
さらに、第一実施形態の操作装置1と同様に、安定した位置に配置された圧力計測装置50に着座した状態での操作であることから、操作中に操作者が転倒したり、操作装置1から足を踏み外すことがなく、自分の足で立つことが困難な患者のリハビリ等にも用いることができる。
【0085】
また、第二実施形態においては、圧力計測以外の機能をコンピュータ51が担うことで、第一実施形態の操作装置1と比べると圧力計測装置50をコンパクトで、かつ、軽量に構成することができ、持ち運びがしやすくなる。
【0086】
本実施形態において、圧力計測装置50とコンピュータ51との間は有線によって接続されていても構わない。なお、第二実施形態におけるコンピュータ51をUSBメモリ型などの小型コンピュータで構成し、圧力計測装置50に連結されることで利用されるものとしても構わない。
【0087】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0088】
〈1〉 操作装置1、又は操作システム5の圧力計測装置50の被加圧面(1a,50a)が被加圧面(1a,50a)上の重心位置を示すように、発光部を備えていても構わない。また、操作装置1、又は操作システム5の圧力計測装置50は、スピーカーを備えていてもよく、例えば、操作者の重心位置が所定の領域から外れると、アラーム音を発するように構成されていても構わない。
【0089】
上記構成とすることで、被加圧面(1a,50a)上のどこに自分の重心があるのか、着座時に体が傾いていないか等を簡単に確認や評価することができる。
【0090】
また、上記構成により、操作者は、操作対象物2の操作開始前に、自分の重心位置が基準とする位置からずれていないか確認し、ずれていれば調整することができ、さらに、操作対象物2が意図しない方向に移動する場合には、自分の重心位置が意図通りに動いていることも確認することができる。
【0091】
〈2〉 操作装置1、又は操作システム5のコンピュータ51の演算部(10,70)が、複数の圧力計測用のセンサから取得された時系列の計測値、あるいは、算出した押圧座標、位置ベクトルG1の時系列データに対して、高い周波数の成分を除去するための演算フィルタを備えていても構わない。演算フィルタは、例えば、移動平均フィルタ等を採用し得る。
【0092】
〈3〉 操作装置1及び操作システム5は、位置ベクトルG1で操作する方向と直交する方向だけを操作する別のコントローラを別途用意することで、ドローンのような飛行体を操作対象物2とするように構成されていても構わない。
【0093】
より具体的には、着座している操作者の手や足を載置する太ももの上や床面に載置する操作装置1、又は圧力計測装置50を用意して、上半身の重心操作で平面上の移動を操作し、手や足による押圧の圧力操作によって当該平面と直交する方向の操作を行う方法が考えられる。
【0094】
〈4〉 上述した操作装置1及び操作システム5が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0095】
1 : 操作装置
1a : 被加圧面
1b : 基準点
2 : 操作対象物
3 : 制御信号
5 : 操作システム
10 : 演算部
11 : 信号生成部
12 : 通信部
13 : 周期設定部
50 : 圧力計測装置
50a : 被加圧面
50b : 基準点
51 : コンピュータ
52 : 測定データ信号
60 : データ出力部
70 : 演算部
71 : 信号生成部
72 : 通信部
73 : 周期設定部
G1 : 位置ベクトル
θ : 角度
r1 : 大きさ