(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】物品移載装置、吸着機構及び物品移載方法
(51)【国際特許分類】
B25J 17/02 20060101AFI20240925BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20240925BHJP
B65G 47/91 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B25J17/02 H
B25J15/06 A
B65G47/91 A
(21)【出願番号】P 2020205708
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-11-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日:令和2年9月25日公開場所:キリンピバレッジ株式会社滋賀工場(滋賀県犬上郡多賀町敏満寺1600)公開した物の内容:株式会社エヌテックが、キリンビバレッジ株式会社に、中村亘孝が発明した物品移載装置及び吸着機構をテスト運転により公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日:令和2年10月22日公開場所:キリンピバレッジ株式会社滋賀工場(滋賀県犬上郡多賀町敏満寺1600)公開した物の内容:株式会社エヌテックが、キリンビバレッジ株式会社に、中村亘孝が発明した物品移載装置及び吸着機構をテスト運転により公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日:令和2年11月13日公開場所:株式会社エヌテック(岐阜県養老郡養老町豊字川原134番地)公開した物の内容:株式会社エヌテックが、キリンビバレッジ株式会社に、中村亘孝が発明した物品移載装置及び吸着機構をテスト運転により公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日:令和2年11月13日公開場所:株式会社エヌテック(岐阜県養老郡養老町豊字川原134番地)公開した物の内容:株式会社エヌテックが、石塚硝子株式会社に、中村亘孝が発明した物品移載装置及び吸着機構をテスト運転により公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日:令和2年11月19日公開場所:株式会社エヌテック(岐阜県養老郡養老町豊字川原134番地)公開した物の内容:株式会社エヌテックが、サントリープロダクツ株式会社に、中村亘孝が発明した物品移載装置及び吸着機構をテスト運転により公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日:令和2年11月30日公開場所:株式会社エヌテック(岐阜県養老郡養老町豊字川原134番地)公開した物の内容:株式会社エヌテックが、キリンビバレッジ株式会社に、中村亘孝が発明した吸着檄構の動作フロー図を配布した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000128131
【氏名又は名称】株式会社エヌテック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 亘孝
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037146(JP,A)
【文献】特開2017-052069(JP,A)
【文献】特開2004-148486(JP,A)
【文献】特開2020-062694(JP,A)
【文献】特開2012-040646(JP,A)
【文献】特開平07-137675(JP,A)
【文献】特開昭61-279490(JP,A)
【文献】特開2012-218112(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02329925(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016208456(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第111716380(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 11/00-17/02
B65G 47/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を吸着して移載する物品移載装置であって、
物品を吸着可能な吸着部を有する吸着機構と、
前記吸着機構を昇降方向を含む移動方向に移動させる移動機構とを備え、
前記吸着機構は、
前記吸着部を傾動可能に支持する傾動機構と、
前記移動機構に支持される本体に対して前記吸着部の傾動支点を前記昇降方向と交差するスライド方向にスライド可能に当該吸着部を支持するスライド機構と
、
前記スライド機構による前記傾動支点の基準位置からのスライドを許容しないロック状態と、前記スライド機構による前記傾動支点のスライドを前記基準位置に復帰可能な大きさの弾性付勢力が加わらない状態で許容するロック解除状態とに切り換える第1切換機構とを備え
、
前記第1切換機構は、前記ロック解除状態から前記ロック状態へ切り換えるとき、前記傾動支点を前記基準位置に復帰させることを特徴とする物品移載装置。
【請求項2】
前記吸着機構は、前記吸着部を、水平姿勢で傾動不能にロックするロック状態と、傾動を許容するロック解除状態とに切り換える第2切換機構を備えることを特徴とする請求項1
に記載の物品移載装置。
【請求項3】
前記移動機構及び前記吸着機構を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1切換機構による前記吸着部のロックを解除して当該吸着部をスライドが許容された状態とした後、前記吸着部を吸着位置に向かって下降させ、前記吸着部が前記物品を吸着した後に上昇したときに、前記第1切換機構を動作させて前記吸着部をスライド不能にロックされる前記基準位置に復帰させることを特徴とする請求項
1に記載の物品移載装置。
【請求項4】
前記移動機構及び前記吸着機構を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記吸着部が前記物品の吸着を解除した荷置位置から上昇したときに、前記第2切換機構を動作させて前記吸着部を傾動不能なロック状態とし、前記移動機構により前記吸着部を当該ロック状態のまま次の物品を吸着する荷取位置の上方位置に向かって移動させることを特徴とする請求項
2に記載の物品移載装置。
【請求項5】
前記移動機構及び前記吸着機構を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第2切換機構を動作させて前記吸着部のロックを解除して当該吸着部を傾動が許容された状態とした後、前記吸着部を吸着位置に向かって下降させ、前記物品を吸着した後も前記吸着部を前記傾動が許容された状態のまま移載先に向かって移動させることを特徴とする請求項
2に記載の物品移載装置。
【請求項6】
ロボットのアームに装着される吸着機構であって、
物品を吸着可能な吸着部と、
前記吸着部を傾動可能に支持する傾動機構と、
前記アームに支持される本体に対して前記吸着部
の傾動支点を昇降方向と交差するスライド方向にスライド可能に支持するスライド機構と
、
前記スライド機構による前記傾動支点の基準位置からのスライドを許容しないロック状態と、前記スライド機構による前記傾動支点のスライドを前記基準位置に復帰可能な大きさの弾性付勢力が加わらない状態で許容するロック解除状態とに切り換える第1切換機構とを備え
、
前記第1切換機構は、前記ロック解除状態から前記ロック状態へ切り換えるとき、前記傾動支点を前記基準位置に復帰させることを特徴とする吸着機構。
【請求項7】
物品を吸着して移載する物品移載方法であって、
物品を吸着可能な吸着部を有する吸着機構と、
前記吸着機構を昇降方向を含む移動方向に移動させる移動機構とを備え、
前記吸着機構は、
前記吸着部を傾動可能に支持する傾動機構と、
前記移動機構に支持される本体に対して前記吸着部の傾動支点を前記昇降方向と交差するスライド方向にスライド可能に当該吸着部を支持するスライド機構と
、
前記スライド機構による前記傾動支点の基準位置からのスライドを許容しないロック状態と、前記スライド機構による前記傾動支点のスライドを前記基準位置に復帰可能な大きさの弾性付勢力が加わらない状態で許容するロック解除状態とに切り換える第1切換機構とを備え、
前記吸着部の前記傾動支点を前記スライド方向のスライドが許容された状態とするスライド許容ステップと、
前記スライドが許容された状態の前記吸着部を吸着位置に向かって下降させる下降ステップと、
吸着対象の物品
を前記吸着部
が吸着する吸着ステップと
、
前記物品を吸着した前記吸着部を上昇させる上昇ステップと、
前記上昇ステップののち前記傾動支点を前記スライド方向の前記基準位置に復帰させるとともに前記傾動支点を前記スライド方向のスライドが許容されない前記ロック状態に切り換える復帰ステップとを備えることを特徴とする物品移載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を移載する物品移載装置、吸着機構及び物品移載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1、2には、ロボットが物品を1つずつ吸着して移載する移載作業を行う物品移載装置が開示されている。これらの物品移載装置は、回動可能に支持された吸着パッド等の吸着部を備える。特許文献1に記載された物品移載装置は、自在継手を介して傾動可能に支持された吸着部と、吸着部の傾きを検知するセンサとを備える。物品を偏心位置で吸着して少し持ち上げたときにセンサが吸着部の傾斜を検知すると、吸着部はワークを重心部分で吸着し直す。このため、画像処理などを要しない簡単な構成によって、ワークの重心部分を吸着して持ち上げることができる。
【0003】
また、特許文献2に記載された物品移載装置は、鉛直な軸に対して回動可能に支持された吸着部と、吸着部とは別にワークを把持するフィンガとを備え、吸着部は、フィンガの把持方向(水平方向)に平行移動が可能に構成され、平行移動の偏位置から中央位置に向かってばねにより付勢されている。吸着パッドによって持ち上げられたときのワークの位置、方向が、フィンガの把持に対する正規の位置、方向から多少ずれても、回動の余裕と、平行移動の余裕とが与えられることで、このずれ量を吸収してフィンガ、吸着パッドおよびワークに無理な力がかからない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-290385号公報
【文献】特開平4-129690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記載の物品移載装置では、吸着部が傾動できないので、物品が傾いていると、吸着部は物品を吸着できない。一方、特許文献1に記載の物品移載装置では、吸着部が傾動できるので、物品が傾いていても、吸着部が物品の傾きに応じて傾動することで物品を吸着することができる。しかし、吸着部が傾動できても、ワークの傾きが大きい場合、吸着部がワークの大きな傾きまで傾くことができず、吸着部がワークを吸着できない場合があるという課題がある。つまり、吸着部がワークの大きな傾きまで傾動できる傾動可能範囲であっても、傾き不足によって吸着部がワークを吸着できない場合があるという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、吸着部が大きく傾いた物品も吸着できる物品移載装置、吸着機構及び物品移載方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する物品移載装置は、物品を吸着して移載する物品移載装置であって、物品を吸着可能な吸着部を有する吸着機構と、前記吸着機構を昇降方向を含む移動方向に移動させる移動機構とを備え、前記吸着機構は、前記吸着部を傾動可能に支持する傾動機構と、前記吸着部の傾動支点を前記昇降方向と交差するスライド方向にスライド可能に当該吸着部を支持するスライド機構とを備える。
【0008】
この構成によれば、物品(ワーク)が昇降方向に対して傾く場合、吸着部は、当該物品を吸着する過程で、傾動支点が当該物品の傾きの低い側にスライドすることで傾動する。すなわち、物品が傾いていても、吸着部が下降して物品に当たると吸着部が傾き、さらに下降すると、吸着部は、その傾動支点が、傾きの低い側にスライドすることで、さらに傾くことができる。よって、吸着部は大きく傾いた物品を吸着することができる。
【0009】
上記物品移載装置において、前記吸着機構は、前記物品が前記昇降方向に対して傾いている場合、当該物品を吸着する過程で傾きの低い側にスライドした前記吸着部の前記傾動支点を、前記スライド方向の基準位置に復帰させる復帰機構を備えてもよい。
【0010】
この構成によれば、傾いた物品を吸着するときにスライドした吸着部は、物品を吸着した後、第1復帰機構によりスライド方向の基準位置(例えばセンタ位置)に復帰できる。吸着部がスライド方向にスライドしたまま次の物品を吸着しようとすると、スライド方向のずれによって物品に対する吸着位置精度が低下する可能性がある。これに対して、次の物品を吸着する前に吸着部がスライド方向の基準位置に復帰するので、物品に対する吸着位置精度の低下を抑制できる。
【0011】
上記物品移載装置において、前記復帰機構は、前記吸着部を前記基準位置でスライド不能にロックするロック状態と、前記スライド方向への前記吸着部のスライドを許容するロック解除状態とに切り換えてもよい。
【0012】
ところで、吸着部をスライド可能に構成した場合、吸着部が移動中に慣性でスライド方向にスライドしてしまう可能性がある。しかし、この構成によれば、傾いた物品を吸着するときにスライドを伴って傾動した吸着部は、第1復帰機構によって基準位置に復帰しその復帰した基準位置に保持(ロック)されるので、移動中の慣性による吸着部のスライド方向の揺れを抑制できる。
【0013】
上記物品移載装置において、前記吸着機構は、前記吸着部を、水平姿勢で傾動不能にロックするロック状態と、傾動を許容するロック解除状態とに切り換える第2切換機構を備えてもよい。
【0014】
この構成によれば、第2切換機構により、吸着部を傾動可能なロック解除状態からロック状態に切り換えることができるので、傾いた物品を吸着するときに傾動した吸着部をその傾動姿勢から水平姿勢に復帰させることができる。例えば、吸着した物品を移載し終わった後、吸着部を水平姿勢に保持することで、吸着部を次の荷取位置へ移動させる移動中における吸着部の揺れを抑制できる。例えば、吸着部を次の物品の荷取位置への移動速度の高速化が可能である。
【0015】
上記物品移載装置において、前記移動機構及び前記吸着機構を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記第1切換機構による前記吸着部のロックを解除して当該吸着部をスライドが許容された状態とした後、前記吸着部を吸着位置に向かって下降させ、前記吸着部が前記物品を吸着した後に上昇したときに、前記第1切換機構を動作させて前記吸着部をスライド不能にロックされる前記基準位置に復帰させてもよい。
【0016】
この構成によれば、傾きの大きな物品を吸着できるとともに、吸着した物品の移動過程におけるスライド方向の揺れを抑制することができる。
上記物品移載装置において、前記移動機構及び前記吸着機構を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記吸着部が前記物品の吸着を解除した荷置位置から上昇したときに、前記第2切換機構を動作させて前記吸着部を傾動不能なロック状態とし、前記移動機構により前記吸着部を当該ロック状態のまま次の物品を吸着する荷取位置の上方位置に向かって移動させてもよい。
【0017】
この構成によれば、移載先で物品の吸着を解除して荷置きした後、次の物品の荷取位置へ吸着部を移動する過程における吸着部の揺れを抑制することができる。例えば、吸着部を荷置位置から次の荷取位置へ移動するときの移動速度の高速化が可能になる。
【0018】
上記物品移載装置において、前記移動機構及び前記吸着機構を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記第2切換機構を動作させて前記吸着部のロックを解除して当該吸着部を傾動が許容された状態とした後、前記吸着部を吸着位置に向かって下降させ、前記物品を吸着した後も前記吸着部を前記傾動が許容された状態のまま移載先に向かって移動させてもよい。
【0019】
この構成によれば、物品を移送中の吸着部が自由に傾動できるので、移送中の物品の揺れによる衝撃を緩和することができる。例えば、移載途中の物品の落下を抑制できる。
上記課題を解決する吸着機構は、ロボットのアームに装着される吸着機構であって、物品を吸着可能な吸着部と、前記吸着部を傾動可能に支持する傾動機構と、前記吸着部を傾動可能な状態で昇降方向と交差するスライド方向にスライド可能に支持するスライド機構とを備える。
【0020】
この構成によれば、吸着機構がロボットのアームに装着されることにより、物品移載装置と同様の効果が得られる。
上記課題を解決する物品移載方法は、物品を吸着して移載する物品移載方法であって、物品を吸着可能な吸着部を有する吸着機構と、前記吸着機構を昇降方向を含む移動方向に移動させる移動機構とを備え、前記吸着機構は、前記吸着部を傾動可能に支持する傾動機構と、前記吸着部の傾動支点を前記昇降方向と交差するスライド方向にスライド可能に当該吸着部を支持するスライド機構とを備え、前記吸着部の前記傾動支点を前記スライド方向のスライドが許容された状態とするスライド許容ステップと、前記スライドが許容された状態の前記吸着部を吸着位置に向かって下降させる下降ステップと、吸着対象の物品が傾いている場合、前記吸着部の端部が当該物品に当たった状態でさらなる下降によって当該吸着部が前記傾動支点のスライドを伴ってさらに傾くことで当該物品を吸着する吸着ステップとを備える。この方法によれば、物品移載装置と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、吸着部が大きく傾いた物品も吸着できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態における物品移載装置を示す模式側面図。
【
図5】ロック状態にあるときのスライド機構を示す正面図。
【
図6】スライド許容状態にあるときのスライド機構を示す正面図。
【
図7】ロック状態にあるときの傾動機構を示す側面図。
【
図8】傾動許容状態にあるときの傾動機構を示す側面図。
【
図23】
図22と異なる変更例における吸着機構を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、物品移載装置に係る一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、
図1において、物品移載装置10が移載対象とする物品W(ワーク)が載置されるべき載置面を規定する2つの方向をそれぞれX方向、Y方向とし、X方向及びY方向と交差し重力方向と平行な方向を高さ方向Zとする。本例では、物品Wが複数段に段積みされたパレットPの積載面(パレットPの面)を載置面Paとする。また、高さ方向Zは、物品Wが載置されるべき載置面Paと直交する方向である。また、高さ方向Zと直交する方向を水平方向という。本例では、水平方向は、載置面Paと平行な方向である。
【0024】
図1に示すように、物品移載装置10(以下、単に「移載装置10」ともいう。)は、パレットP上に複数の物品Wが段積みされた物品群から、荷を取るべき荷取位置にある物品Wを1つずつ吸着して、コンベヤ12に運び、コンベヤ12上の荷を置くべき荷置位置に吸着を解除することで物品Wを置く移載作業(段ばらし作業)を行う。また、移載装置10は、コンベヤ12により搬送されてきた荷取位置にある物品Wを、1つずつ吸着してパレットPに運び、吸着を解除することでパレットP上又はパレットPに段積みされた他の物品W上の荷置位置に物品Wを置く移載作業(段積み作業)を行う。段ばらし作業と段積み作業のいずれを行う場合も、移載装置10は、荷取位置にある物品Wを吸着して把持し、その物品Wを荷取位置から荷置位置まで移送し、吸着を解除することで物品Wを荷置位置に置く移載作業を行う。
【0025】
図1に示すように、移載装置10は、物品Wを吸着する吸着機構30を移動させる移動機構の一例としてのロボット20と、アームの一例としてのロボットアーム23の先端部に装着された吸着機構30とを備える。物品群が積載されたパレットPは、搬送コンベヤまたは電動荷役車両(いずれも図示略)により、
図1に示すロボット20の作業範囲内の所定位置に載置される。本実施形態の物品Wは、例えば、袋体である。袋体は、例えば、粉体または粒体(例えば穀粒)を収容するものでもよい。具体的には、袋体の中身は、食料用の粉体(小麦粉等)や粒体(豆等の種子)でもよいし、セメント粉等の工業用粉体または工業用の粒体でもよい。また、袋体は、液体または気体を収容するものでもよい。
【0026】
移載装置10は、荷取対象の物品Wを高さ方向Zの上側から下方に向かって撮像可能なカメラ71を含む撮像装置70を備える。撮像装置70のカメラ71は、工場等の天井近くの所定位置、またはロボットアーム23の所定位置、あるいは吸着機構30の所定位置に取り付けられている。
図1の例では、カメラ71は天井近くの所定高さ位置に配置されている。移載装置10は、カメラ71により物品群を直上から撮像した画像を解析する画像解析処理を行うことで、物品Wが吸着される上面である被吸着面のXY座標位置及び高さ位置を含む位置情報と、荷置位置において物品Wが置かれる載置面の高さ位置を含む位置情報とのうち少なくとも一方を取得する。移載装置10は、取得した位置情報に基づいて荷取位置と荷置位置のうち少なくとも一方を取得する。なお、
図1の例では、荷置位置は、コンベヤ12上の所定位置であるため、予め入力設定された固定の位置情報が用いられる。
【0027】
図1に示すように、ロボット20は、床面に設置された設置台13の上面に配置された台部21と、台部21に対して鉛直軸を中心に回転可能な回転台22と、回転台22に支持された多関節のロボットアーム23とを備えた多関節式の産業ロボットである。吸着機構30は、ロボットアーム23の先端部に装着されている。ロボット20は、パレットP上の物品群のうち最上段の物品Wを吸着機構30により吸着して把持し、その把持した物品Wをコンベヤ12上の所定位置(荷置位置)に載置する移載作業(段ばらし作業)を行う。
【0028】
ロボットアーム23は、台部21の側部に配設された駆動機構24の駆動源25の動力により、回転台22と共に軸回転する。また、ロボットアーム23は、角度変更可能に連結された複数のアーム部23A~23Cを有する。駆動源25は、例えば、電動モータ又は電動シリンダ等である。複数のアーム部23A~23Cは、駆動機構24が駆動されることにより不図示のリンク機構を介して角度調整される。吸着機構30は、ロボットアーム23の先端部にモータ26を動力源とする回転部27を介して軸回転可能に吊下状態で支持されている。
【0029】
図1に示すように、吸着機構30は、台部21及び回転台22を経由してロボットアーム23に沿ってその内部または外部を通る配管と接続され、その配管を含む空気圧回路の負圧源(いずれも図示略)と接続されている。吸着機構30は、配管の途中に位置する不図示の電磁式の開閉弁が制御部100により開閉制御されることで、物品Wの吸着と吸着の解放とが可能である。本実施形態では、ロボット20は、カメラ71が物品群の上面全体を撮像した画像を制御部100が解析して取得した移載対象の物品Wの位置情報に基づいて吸着機構30を位置制御する。
【0030】
<吸着機構の構成>
次に、吸着機構30の詳細な構成を説明する。
図2に示すように、吸着機構30は、前述のとおり、ロボットアーム23の先端部に装着されている。機構本体31は、ロボットアーム23の先端部に装着するための被装着部33と、被装着部33の下端に固定された支持部34と、支持部34に対して吸着部32を昇降可能に支持する昇降機構35とを備える。
【0031】
昇降機構35は、軸線が高さ方向Zと平行となる縦型の2つの昇降シリンダ36を備える。2つの昇降シリンダ36はロッドが下側となる下向きに配置されており、それぞれのロッド36aの下端部は、昇降部材37に固定されている。2つの昇降シリンダ36が伸縮駆動することで、昇降部材37の下側に支持されている吸着部32は昇降する。
【0032】
昇降部材37と吸着部32との間には、吸着部32を傾動可能に支持する傾動機構40と、吸着部32をスライド可能に支持するスライド機構50とが介在している。
傾動機構40は、吸着部32を傾動可能に支持する継手機構41を備える。継手機構41は、例えば、十字継手により構成される。
【0033】
図2~
図4に示すように、継手機構41は、その軸線方向がX方向と平行な第1軸42(X軸)と、その軸線方向がY方向と平行な第2軸43(Y軸)と、両軸42,43を90°の角度をなして交差する状態かつそれぞれが独立して軸回転可能な状態で連結する連結部材44とを有する。連結部材44の上端部にはブロック45が突設されている。
【0034】
図2に示すように、吸着部32の上面から上方に延出する揺動部材48は、連結部材44に対して第2軸43を中心に回動可能な状態で連結されている。吸着部32は、継手機構41を介して傾動可能な状態で支持されている。すなわち、吸着部32は、第1軸42を中心とするX軸回りの傾動と、第2軸43を中心とするY軸回りの傾動とが可能となっている。
【0035】
ここで、第1軸42は、第2軸43よりも長い軸長を有している。継手機構41を構成する連結部材44は、第1軸42に沿ってX方向にスライド可能に支持されている。
継手機構41を構成する第1軸42の両端部は、スライド機構50を構成する一対の規制部材51に対して軸回転可能な状態で支持されている。連結部材44には、第1軸42が挿通されており、連結部材44は第1軸42に沿ってスライド方向Xにスライド可能なスライダーとして機能する。X方向に所定の距離を隔てて対向する一対の規制部材51は、第1軸42に沿ってスライド可能な連結部材44(スライダー)のスライド方向両側のエンド位置を規定する。すなわち、連結部材44は、第1軸42の両端部に位置する一対の規制部材51と当たる位置の範囲内でX方向にスライド可能である。また、連結部材44は、第2軸43を中心に回動可能に支持されている。
【0036】
また、吸着部32は、第1軸42に沿ってX方向にスライド可能となっている。すなわち、吸着部32は、昇降部材37に対して第1軸42(X軸)及び第2軸43(Y軸)を中心とする2方向の傾動が可能、かつ、第1軸42に沿ってX方向にスライド可能な状態で支持されている。
【0037】
図2に示すように、吸着部32は、負圧発生ユニット38と吸着パッド39とを備える。吸着パッド39は、吸着部32の下端部に位置する。吸着パッド39は下端部に所定形状の環状をなす緩衝部材39aが固定されている。本例の吸着パッド39は、長円形状を有し、その下面に固定された緩衝部材39aは、長円の環状を有する。緩衝部材39aは、例えば、気密性を有する弾性部材により構成される。緩衝部材39aは、ゴム製でもよいし、気密性及び弾性を有する多孔質材料(例えば発泡材料)よりなる合成樹脂製でもよい。吸着パッド39の下面は緩衝部材39aに囲まれた吸着口39bが開口している。
【0038】
負圧発生ユニット38は、例えば、エジェクタである。負圧発生ユニット38は、吸着パッド39の吸着口39bに負圧を発生させる。負圧発生ユニット38は、揺動部材48の下端面に固定された規制板49の下面に固定されている。
【0039】
<復帰機構>
また、昇降部材37と吸着部32との間には、傾動機構40により傾動した吸着部32を水平姿勢に復帰させる傾動復帰機能と、スライド機構50によりスライドした吸着部32をスライド方向Xのセンタ位置に復帰させるスライド復帰機能とを有する復帰機構55を備える。本実施形態の復帰機構55は、吸着部32をスライド方向のセンタ位置に復帰させる第1切換機構56と、傾動した吸着部32を水平姿勢に復帰させる第2切換機構46とを備える。本実施形態では、復帰機構55により復帰した吸着部32は、スライド方向Xの復帰位置であるセンタ位置にロックされ、傾動範囲の復帰姿勢である水平姿勢にロックされる。
【0040】
すなわち、第1切換機構56は、吸着部32をセンタ位置でスライド不能にロックするロック状態と、吸着部32のスライド方向Xへのスライドを許容するロック解除状態とに切り換える。第1切換機構56は、吸着部32をセンタ位置に復帰する復帰機能に加え、吸着部32をセンタ位置でスライド不能にロックするロック機構としても機能する。
【0041】
次に、
図5、
図6を参照して、第1切換機構56の構成を詳細に説明する。
図5は吸着部32がセンタ位置にロックされたロック状態を示し、
図6がロック解除状態を示す。なお、
図5、
図6では、第2切換機構46を構成する第2シリンダ47を省略している。
【0042】
図5、
図6に示すように、第1切換機構56は、スライダーとして機能する連結部材44の上端部のブロック45と、ブロック45を挟むX方向の両側に対向して位置する一対の第1シリンダ57とを備える。第1切換機構56は、吸着部32のスライドを許容しない
図5に示すロック位置と、吸着部32のスライド機構50によるスライドを許容する
図6に示すスライド許容位置とに駆動される。一対の第1シリンダ57が伸長駆動されると、一対のロッド57aの先端部がブロック45をX方向の両側から挟持することで、吸着部32の傾動支点がセンタ位置にスライド不能にロックされる。第1シリンダ57が収縮駆動されると、一対のロッド57aがそれぞれ離間する方向に退避し、ブロック45がX方向に自由に移動できるX方向へのスライドが許容された状態になる。つまり、吸着部32の傾動支点がX方向に自由に移動できるX方向へのスライドが許容された状態になる。
【0043】
このとき、吸着部32の傾動が許容された状態にあれば、吸着部32は、外力が加えられると、第2軸43(Y軸)回りの傾動が可能となる。本例の吸着部32は、物品Wを吸着するときに物品Wに押し付けられるため、物品Wの姿勢に応じた方向の外力を物品Wから受ける。物品Wが傾いていると、吸着部32は、その物品Wの傾いた被吸着面に押し付けられるので、その物品Wの被吸着面の傾いた方向に応じた方向に傾動する。そのため、吸着部32は、物品Wの傾きに応じて水平姿勢から、
図6に実線で示す反時計回り方向に傾動したり、同図に二点鎖線で示す時計回り方向に傾動したりする。このように吸着部32が物品Wの被吸着面の傾きに応じて傾動することで、傾いた物品Wでも、吸着パッド39の吸着口39bを物品Wの被吸着面に全面で押し付けて物品Wを吸着することができる。
【0044】
さらに、このように吸着部32が第2軸43(Y軸)回りの傾動が可能な状態で、そのY軸と交差(例えば直交)するX軸方向へのスライドも可能である。このため、吸着部32は、物品Wの被吸着面の傾きに応じて傾動支点を中心に傾動しただけの傾動角よりも、さらにその傾動過程で傾動支点を、その傾動支点の軸方向(Y軸方向)と交差(例えば直交)する方向であるX方向にスライドさせることで、大きな傾動角で傾動させることができる。この吸着部32の傾動支点をX方向にスライドさせる力は、傾いた物品Wの被吸着面に当たった吸着部32が、昇降機構35により下降するときの力の反力を物品Wの被吸着面から受ける。このとき吸着部32が受ける反力は、物品Wの被吸着面の傾きに応じて鉛直方向に対して交差する方向の力である。このため、反力のうちのX方向成分の力によって吸着部32は傾動支点をX方向にスライドさせつつさらに大きな角度で傾動する。
【0045】
なお、本実施形態では、スライド方向Xのセンタ位置が、スライド方向の基準位置の一例に相当する。例えば、センタ位置に対してX方向における+X方向側にスライドできる長さと、-X方向側にスライドできる長さとが異なる場合、基準位置は必ずしもスライド可能範囲のセンタ位置でなくてもよい。但し、吸着機構30全体のセンタを(ロボットアームの先端部に装着される被装着部33の軸心)を通る鉛直線上の位置の近傍であることが好ましい。つまり、吸着機構30の重心位置が、物品Wの吸着の有無で変化しない位置に基準位置を設定することが好ましい。但し、物品Wの移送上問題なければ、スライド範囲内の任意の位置に基準位置を設定してもよい。
【0046】
また、第2切換機構46は、吸着部32を、水平姿勢で傾動不能にロックするロック状態と、吸着部32の傾動を許容するロック解除状態とに切り換える。第2切換機構46は、傾動した吸着部32を水平姿勢に復帰させる復帰機能に加え、吸着部32を復帰姿勢である水平姿勢で傾動不能にロックするロック機構としても機能する。
【0047】
次に、
図7、
図8を参照して、第2切換機構46の構成を詳細に説明する。
図7は吸着部32が水平姿勢にロックされたロック状態を示し、
図6が吸着部32が傾動可能なロック解除状態を示す。
【0048】
図7、
図8に示すように、第2切換機構46は、吸着部32の上端部に固定された規制板49と、吸着部32の傾動支点の移動軌跡をY方向に挟む両側の位置で規制板49に対向する下向きに配置された一対の第2シリンダ47とを備える。
【0049】
図7に示すように、第2シリンダ47が伸長駆動されると、一対のロッドの先端部に固定された押圧部47aが、規制板49のY方向両側の端部を上から同時に押圧することで、規制板49が水平な状態に保持される。よって、規制板49を含む吸着部32は、第1軸42(X軸)回りの傾動が不能にロックされた状態で水平姿勢に保持される。
【0050】
また、
図8に示すように、第2シリンダ47が収縮駆動されると、それぞれのロッドの先端部に固定された押圧部47aが規制板49の上面から離間し、吸着部32の傾動が可能になる。このため、吸着部32は、外力が加えられると、第1軸42(X軸)回りの傾動が可能となる。本例の吸着部32は、物品Wを吸着するときに物品Wに押し付けられるため、物品Wの姿勢に応じた方向の外力を物品Wから受ける。物品Wが傾いていると、吸着部32は、その物品Wの傾いた被吸着面に押し付けられるので、その物品Wの被吸着面の傾いた方向に応じた方向に傾動する。そのため、吸着部32は、物品Wの傾きに応じて水平姿勢から、
図8に実線で示す反時計回り方向に傾動したり、同図に二点鎖線で示す時計回り方向に傾動したりする。このように吸着部32が物品Wの被吸着面の傾きに応じて傾動することで、傾いた物品Wでも、吸着パッド39の吸着口39bを物品Wの被吸着面に全面で押し付けて物品Wを吸着することができる。
【0051】
また、
図4に示すように、吸着機構30は、吸着部32が吸着した物品Wの底部を保持する保持機構60を備える。保持機構60は、吸着部32に吸着された物品Wの底部を保持可能な4つの板状の保持部61を備える。各保持部61は、物品Wを保持可能な
図4に二点鎖線で示される保持位置と、物品Wを保持しない位置である退避位置との間で回動軸61aを中心に水平に回動する。各保持部61は、リンク機構63を介して駆動源であるシリンダ62のピストンロッド62aの先端部と連結されている。
【0052】
シリンダ62が
図4に示す伸長する状態では、リンク機構63を介して保持部61が
図4に実線で示す退避位置に配置される。一方、シリンダ62が
図4に示す伸長状態から収縮駆動されると、リンク機構63を介して保持部61が
図4に二点鎖線で示す保持位置に配置される。また、保持機構60は、保持部61を昇降させるシリンダ64を備える。シリンダ64が収縮状態にあるとき、保持部61は、吸着パッドの緩衝部材よりも上方に位置する上昇位置に配置される。一方、シリンダ64が伸長駆動されると、保持部61は、吸着部32に吸着された物品Wの底面よりも下方の位置まで下降する。そして、この下降状態で保持部61が退避位置から保持位置まで回動し、さらに保持部61が物品Wの底面に当たる高さ位置まで上昇する。これにより、吸着部32に吸着された物品Wは、複数(例えば4つ)の保持部61によりその底面の複数箇所(例えば4箇所)を保持された状態で、あるいは、吸着部32と4つの保持部61との間に挟持された状態で移載可能となる。なお、物品Wを保持する保持部61は、2つでもよいし、3つでもよい。また、大きな保持部が1つだけでもよい。
【0053】
<物品移載装置の電気的構成>
次に
図9を参照して、移載装置10の電気的構成を説明する。
図9に示すように、移載装置10は、移載装置10を統括的に制御する制御部100を備える。制御部100は、コンピュータ110(マイクロプロセッサ)とメモリ120とを内蔵している。メモリ120には、例えば、
図21にフローチャートで示される移載制御用のプログラムが記憶されている。制御部100は、コンピュータ110がプログラムを実行することにより、移載装置10を制御する。
【0054】
図9に示すように、制御部100には、入力系として、作業者により操作される入力部15と、カメラ71と、吸着部32が物品Wを吸着したことを検知するセンサ75とが電気的に接続されている。作業者による入力部15の操作によって、移載装置10の移載作業に必要な荷役情報の入力、及び移載装置10に対する移載作業を開始させる指示が行われる。入力部15は、例えば、操作盤又はパーソナルコンピュータのキーボード及びマウス等よりなる。荷役情報には、物品Wの品番、大きさ(サイズ)、重量、内容物などに関する物品関連情報や、荷取位置と荷置位置のうち少なくとも一方の情報など移載作業関連情報が含まれる。センサ75は、吸着パッド39の吸着口39bよりも内部の空気圧(負圧)を検出する。吸着部32が物品Wを吸着する前は、吸着口39bから空気が流入するので吸着パッド39内の負圧は閾値を超えない。吸着部32が物品Wを吸着すると、吸着口39bが物品Wで塞がれて空気が流入しなくなるので、吸着パッド39内の負圧が閾値を超える。制御部100は、センサ75の検出圧が閾値を超えて所定値以上の負圧になったことをもって吸着部32が物品Wを吸着できたと判断する。なお、制御部100は、プログラマブルロジックコントローラ(以下PLCともいう。)と、ロボットコントローラとにより構成されてもよい。
【0055】
次に、
図10~
図21等を参照して移載装置10の作用を説明する。なお、
図10~
図20に示す各工程は、吸着部32が荷取位置で物品Wを吸着した後、荷置位置で吸着を解除して物品Wを荷置きし、再び次の移載対象の物品Wの移載作業を開始するまでの一巡の移載作業を示している。以下では、ロボット20にパレットP上の物品群の最上段から物品Wを1つずつコンベヤ12上へ移載する移載作業(段ばらし作業)を例に説明する。
【0056】
作業者が入力部15を操作して必要な荷役情報及び移載作業開始の指示を移載装置10に与える。制御部100は、入力部15から指示を受け付けると、移載装置10の制御を開始する。制御部100は、荷役情報に基づいて物品Wを荷取位置から荷置位置まで移送する経路を把握する。また、制御部100は、荷役情報に基づいて、物品Wの品番、形状及びサイズ等の情報を取得する。そして、制御部100は、物品Wを荷取位置から荷置位置まで移載する移載作業を開始する。制御部100は、移載制御を行うため、
図21にフローチャートで示される移載制御用のプログラムを実行する。以下、
図10~
図20の各工程及び
図21のフローチャートを参照しつつ制御部100が行う移載制御について説明する。詳細には、制御部100内のコンピュータ110がプログラムを実行することで移載制御を行う。なお、
図10~
図20では、保持機構60を省略している。
【0057】
以下、
図1に示すように、移載対象の物品Wが大きく傾いている場合を例に説明する。なお、移載装置10は、移載作業の指示を待っている状態では、昇降機構35の昇降シリンダ36は伸長状態にあり、第1シリンダ57及び第2シリンダ47は伸長状態にある。つまり、昇降機構35は吸着部32を下降位置に配置し、吸着部32がスライド方向Xのセンタ位置でロックされ、かつ水平姿勢でロックされている。
【0058】
まずステップS11では、制御部100は、吸着部32を荷取位置の上方の所定高さ位置である荷取開始位置に向かって移動させる。例えば、移載装置10が待機状態にあったときは、吸着部32を待機位置から移載対象の物品Wの直上に位置する荷取開始位置まで移動させる。この吸着部32の荷取開始位置までの移動は、ロボットアーム23を駆動することにより行われる。ここで、本例の荷取開始位置は、例えば、吸着部32をその位置から下降させれば、吸着部32を荷取対象の物品Wを吸着できる高さ位置に配置可能な位置である。
【0059】
ステップS12では、制御部100は、吸着部32を傾動許容かつスライド許容状態にする。詳しくは、制御部100は、第1シリンダ57を
図5に示す伸長状態から
図6に示す収縮状態に駆動させるとともに、第2シリンダ47を
図7に示す伸長状態から
図8に示す収縮状態に駆動させる。この結果、
図6に示すように吸着部32はX方向へのスライドが許容され、かつ
図6及び
図8に示すように互いに交差する第1軸42(X軸)と第2軸(Y軸)との両方の軸に対する傾動が許容される。なお、本実施形態では、このステップがスライド許容ステップの一例に相当する。
【0060】
ステップS13では、制御部100は、荷取開始位置に到達したか否かを判定する。制御部100は、カメラ71が撮像した物品群の画像を解析して今回の移載対象の物品Wの位置座標を割り出す。そして、制御部100は、吸着部32が目標とする物品Wの位置座標から算出した荷取開始位置に到達したか否かを判定する。吸着部32が荷取開始位置に到達しなければそのまま移動を継続し、吸着部32が荷取開始位置に到達すればステップS14に進む。例えば、吸着部32が、
図10に示す荷取開始位置に到達して停止すると、ステップS14に進む。
【0061】
ステップS14では、制御部100は、吸着部32を下降させる。すなわち、制御部100は、ロボットアーム23を下降させて、吸着部32を下降させる。制御部100は、この下降過程で負圧発生ユニット38を駆動させることで、吸着部32の吸着口39bに負圧を発生させる。
図10に示す荷取開始位置から下降した吸着部32は、
図11に示すように傾いた物品Wに当たる。吸着部32が物品Wの被吸着面に到達しても、吸着部32の吸着口39bが被吸着面によって塞がれず、物品Wは吸着されない。なお、本実施形態では、このステップが下降ステップの一例に相当する。
【0062】
さらに
図12に示すように、吸着部32が下降すると、吸着部32は傾動支点を中心に傾動するが、まだ傾いた物品Wとの間に隙間があり、物品Wを吸着できない。
さらに
図13に示すように、吸着部32が下降すると、吸着部32の傾動支点が傾いた物品Wの傾きの低い側へのスライドを伴って吸着部32が傾動支点を中心に傾動する。このときの吸着部32の最大傾動可能角度は大きいので、吸着部32は、傾いた物品Wの被吸着面に全面で当接し、物品Wを吸着する。
【0063】
ここで、
図14、
図15を参照して、吸着部32が傾動支点のスライドを伴って大きく傾動することで、傾いた物品Wを吸着する過程を説明する。
図14に示すように、吸着部32には下向きの矢印で示す下降する力が働き、吸着部32は傾いた物品Wに当たると、その当たった部分が物品Wから反力を受ける。この抗力のX方向成分の力によって吸着部32の傾動支点がX方向にスライドする。また、このとき、吸着部32が物品Wに当たった
図14における右端箇所が物品Wに押し付けられてほぼ固定され、吸着部32の下降に伴ってその右端箇所を中心に吸着部32は傾動しようとするが、その傾動を実現するためには傾動支点が右端箇所を中心とする円弧軌跡を描くように移動する必要がある。しかし、そのためには吸着部32の傾動支点のX方向のスライドが必要になる。スライドできない構成である場合、吸着部32が下降しても、所定の角度でそれ以上の傾動ができなくなる。
【0064】
これに対して、本実施形態の吸着部32は、傾動支点のZ方向の変位に加えX方向への変位が可能なので、吸着部32が下降する過程で、吸着部32が物品Wに当たったその端部箇所を中心に傾動支点が円弧を描くような傾動が可能になる。この結果、
図15に示すように、吸着部32はその吸着口39bの全体が、大きく傾く物品Wの被吸着面に塞がれることになり、吸着部32によって物品Wが吸着される。なお、本実施形態では、吸着部32が物品Wに当たってから、吸着部32が傾動支点のスライドを伴って大きく傾いて物品Wを吸着するまでの過程が、吸着ステップの一例に相当する。
【0065】
図21に戻って、ステップS15では、制御部100は、吸着を検知したか否かを判定する。制御部100は、センサ75の検出圧(検出負圧)が閾値を超えたことをもって吸着を検知したか否かを判定する。吸着を検知すればステップS16に進み、吸着を検知しなければ、吸着を検知するまでそのまま待機する。
図15に示すように、吸着部32の吸着口39bがその全面で物品Wの被吸着面に当接すると、物品Wが吸着部32に吸着され、吸着部32内の負圧が閾値を超えるので、吸着が検知される。
【0066】
ステップS16では、制御部100は、吸着部32を上昇させる。
図16に示すように、吸着部32に吸着された物品Wが持ち上げられる。
図16に示すように、物品Wが持ち上げられたとき、吸着部32の傾動支点はスライド範囲のセンタ位置からずれたままである。
【0067】
ステップS17では、制御部100は、吸着部32が荷取終了位置に到達したか否かを判定する。本例の荷取終了位置は、例えば、昇降機構35が吸着部32を所定高さ位置まで上昇させた位置である。吸着部32が荷取終了位置に到達していなければそのまま上昇を継続し、吸着部32が荷取終了位置に到達すればステップS18に進む。
【0068】
ステップS18では、制御部100は、吸着部32をスライド方向のセンタ位置に復帰させる。
図17に示すように、一対の第1シリンダ57が伸長駆動されることで、吸着部32の傾動支点がX方向のセンタ位置に復帰される。詳しくは、制御部100は、第1シリンダ57を
図6に示す収縮状態から
図5に示す伸長状態に駆動させることで、
図5に示すように吸着部32の傾動支点をスライド範囲のセンタ位置に復帰させる。この結果、吸着部32の傾動支点はセンタ位置でロックされる。なお、制御部100は、保持機構60を駆動させて保持部61を待機位置から下降、回動及び上昇させることで、保持部61で物品Wを保持してもよい。
【0069】
次のステップS19では、制御部100は、吸着部32を荷置開始位置(移載先)に向かって移動させる。この吸着部32の移動はロボット20がロボットアーム23を駆動して行う。この移動過程では、
図5、
図17に示すように、吸着部32の傾動支点がセンタ位置にロックされているので、物品Wを保持する吸着部32はスライド方向のがたつきが抑制される。また、この移動過程では、吸着部32の傾動はロックされておらず、吸着部32は傾動可能である。このため、移動中に物品Wが揺れても、その物品Wの揺れの衝撃を吸着部32が傾動することで緩和される。例えば、吸着部32が傾動不能にロックされていると、物品Wの揺れに応じて吸着部32が傾動することができないので、物品Wと吸着部32との間に発生した隙間が原因で物品Wが落下する可能性がある。しかし、本実施形態では、物品Wの揺れに応じて吸着部32が傾動することで、物品Wと吸着部32との間の隙間の発生をより効果的に抑制できる。よって、物品Wの移動中の落下を抑制することができる。なお、移動過程において、物品Wを保持部61で保持した場合は、物品Wが水平な姿勢に保持されるうえ、物品Wのがたつきや揺れが一層抑えられる。
【0070】
ステップS20では、制御部100は、吸着部32が荷置開始位置に到達したか否かを判定する。荷置開始位置に到達していなければそのまま移動を継続し、荷置開始位置に到達すればステップS21に進む。ここで、本例の荷置開始位置は、その位置から昇降機構35が吸着部32を下降させれば、物品Wを荷置位置に載置することが可能な位置である。なお、吸着部32が荷置開始位置に到達すると、保持機構60を駆動させて保持部61を保持位置から下降、回動及び上昇させることで退避させる。
【0071】
ステップS21では、制御部100は、吸着部32を下降させる。すなわち、制御部100は、昇降機構35の昇降シリンダ36を伸長駆動させることで、吸着部32を下降させる。なお、吸着部32の荷置位置までの下降は、昇降機構35の下降動作とロボットアーム23の下降動作の両方によるものでもよい。
【0072】
ステップS22では、制御部100は、吸着部32が荷置位置に到達したか否かを判定する。吸着部32が荷置位置に到達していなければそのまま下降を継続し、吸着部32が荷置位置に到達すればステップS23に進む。
図18に示すように、吸着部32が物品Wをコンベヤ12上から少し上方に離間した荷置位置に到達すると、ステップS23に進む。なお、
図19に示すように、吸着部32が物品Wをコンベヤ12上に載置される位置を荷置位置としてもよい。この場合、昇降機構35の下降動作とロボットアーム23の下降動作の両方により吸着部32が荷置位置まで下降される。
【0073】
ステップS23では、制御部100は、吸着部32の吸着を解除する。すなわち、制御部100は、負圧発生ユニット38の駆動を停止させるとともに吸着部32の吸着を解除する。例えば、開閉弁を開弁して吸着部32内を大気に連通することで吸着を解除してもよい。吸着の解除によって物品Wは移載先の載置面(本例ではコンベヤ12)に荷置きされる。なお、
図18における吸着部32の位置が荷置位置である場合、物品Wは少しの落下を伴ってコンベヤ12上に載置される。
【0074】
次のステップS24では、制御部100は、吸着部32を上昇させる。すなわち、制御部100は、ロボットアーム23を上昇させることで、吸着部32を上昇させる。
次のステップS25では、制御部100は、吸着部32が荷置終了位置に到達したか否かを判定する。荷置終了位置に到達していなければそのまま上昇を継続し、荷置終了位置に到達すればステップS26に進む。吸着部32は、例えば、
図20に示す荷置終了位置まで上昇する。
【0075】
ステップS26では、制御部100は、吸着部32を傾動不能にロックする。詳しくは、制御部100は、第2シリンダ47を
図8に示す収縮状態から
図7に示す伸長状態に駆動することで、吸着部32を水平姿勢の状態で傾動不能にロックする。
図20に示すように、吸着部32は荷置終了位置まで上昇すると、水平姿勢の状態で傾動不能にロックされる。
【0076】
こうして荷置終了位置で吸着部32を傾動不能な水平姿勢に復帰させると、1サイクルの移載作業を終了する。
次のステップS27では、制御部100は、次の移載対象の物品Wがあるか否かを判定する。次の移載対象の物品Wがあれば、ステップS11に戻り、次の移載対象の物品Wの移載作業を開始し、吸着部32を荷取開始位置に向かって移動させる。このときの吸着部32の移動は、ロボット20がロボットアーム23を駆動させることで行われる。この吸着部32の移動過程では、吸着部32がスライド不能にロックされるとともに傾動不能にロックされている。このため、吸着部32はスライド方向にも傾動方向にもがたつかない。よって、吸着部32を次の物品Wの荷取開始位置まで比較的高速度で移動させることができる。この結果、移載作業のサイクルタイムの短縮に貢献できる。
【0077】
制御部100は、次の移載対象の物品Wがあれば、物品ごとに、ステップS11~S27の処理を繰り返す。以降、移載装置10は、移載対象の物品Wがなくなるまで、物品Wごとの移載作業を行う。そして、次の移載対象の物品Wがなくなると、制御部100は、当該移載制御を終了する。
【0078】
以上詳述したように本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)物品移載装置10は、物品Wを吸着可能な吸着部32を有する吸着機構30と、吸着機構30を昇降方向を含む移動方向に移動させる移動機構の一例としてのロボット20とを備える。吸着機構30は、吸着部32を傾動可能に支持する傾動機構40と、吸着部32の傾動支点を昇降方向と交差するスライド方向にスライド可能に当該吸着部32を支持するスライド機構50とを備える。この構成によれば、物品W(ワーク)が昇降方向に対して傾く場合、吸着部32は、当該物品Wを吸着する過程で、傾動支点が当該物品Wの傾きの低い側にスライドすることで傾動する。すなわち、物品Wが傾いていても、吸着部32が下降して物品Wに当たると吸着部32が傾き、さらに下降すると、吸着部32は、その傾動支点が、傾きの低い側にスライドすることで、さらに傾くことができる。よって、吸着部32は大きく傾いた物品Wを吸着することができる。
【0079】
(2)吸着機構30は、物品Wが昇降方向に対して傾いている場合、当該物品Wを吸着する過程で傾きの低い側にスライドした吸着部32の傾動支点を、スライド方向の基準位置に復帰させる復帰機構55(特に第1切換機構56)を備える。
【0080】
この構成によれば、傾いた物品Wを吸着するときにスライドした吸着部32は、物品Wを吸着した後、復帰機構55(特に第1切換機構56)によりスライド方向の基準位置(例えばセンタ位置)に復帰できる。吸着部32がスライド方向にスライドしたまま次の物品Wを吸着しようとすると、スライド方向のずれによって物品Wに対する吸着位置精度が低下する可能性がある。これに対して、次の物品Wを吸着する前に吸着部32がスライド方向の基準位置に復帰するので、物品Wに対する吸着位置精度の低下を抑制できる。
【0081】
(3)復帰機構55は、吸着部32を基準位置でスライド不能にロックするロック状態と、スライド方向への吸着部32のスライドを許容するロック解除状態とに切り換える第1切換機構56である。ところで、吸着部32をスライド可能に構成した場合、吸着部32が移動中に慣性でスライド方向にスライドしてしまう可能性がある。しかし、この構成によれば、傾いた物品Wを吸着するときにスライドを伴って傾動した吸着部32は、第1切換機構56によって基準位置に復帰しその復帰した基準位置に保持(ロック)されるので、移動中の慣性による吸着部32のスライド方向の揺れを抑制できる。
【0082】
(4)吸着機構30は、吸着部32を、水平姿勢で傾動不能にロックするロック状態と、傾動を許容するロック解除状態とに切り換える第2切換機構46を備える。この構成によれば、第2切換機構46により、吸着部32を傾動可能なロック解除状態からロック状態に切り換えることができるので、傾いた物品Wを吸着するときに傾動した吸着部32をその傾動姿勢から水平姿勢に復帰させることができる。例えば、吸着した物品Wを移載し終わった後、吸着部32を水平姿勢に保持することで、吸着部32を次の荷取位置へ移動させる移動中における吸着部32の揺れを抑制できる。例えば、吸着部32を次の物品Wの荷取位置への移動速度の高速化が可能である。
【0083】
(5)ロボット20及び吸着機構30を制御する制御部100を備える。制御部100は、第1切換機構56による吸着部32のロックを解除して当該吸着部32をスライドが許容された状態とした後、吸着部32を吸着位置に向かって下降させ、吸着部32が物品Wを吸着した後に上昇したときに、第1切換機構56を動作させて吸着部32をスライド不能にロックされる基準位置に復帰させる。この構成によれば、吸着部32が傾きの大きな物品Wを吸着できるとともに、吸着した物品Wの移動過程におけるスライド方向の揺れを抑制することができる。
【0084】
(6)制御部100は、吸着部32が物品Wの吸着を解除した荷置位置から上昇したときに、第2切換機構46を動作させて吸着部32を傾動不能なロック状態とし、ロボット20により吸着部32を当該ロック状態のまま次の物品Wを吸着する荷取位置の上方位置に向かって移動させる。この構成によれば、移載先で物品Wの吸着を解除して荷置きした後、次の物品Wの荷取位置へ吸着部32を移動する過程における吸着部32の揺れを抑制することができる。例えば、吸着部32を荷置位置から次の荷取位置へ移動するときの移動速度の高速化が可能になる。
【0085】
(7)制御部100は、第2切換機構46を動作させて吸着部32のロックを解除して当該吸着部32を傾動が許容された状態とした後、吸着部32を吸着位置に向かって下降させ、物品Wを吸着した後も吸着部32を傾動が許容された状態のまま移載先に向かって移動させる。この構成によれば、物品Wを移送中の吸着部32が自由に傾動できるので、移送中の物品Wの揺れによる衝撃を緩和することができる。例えば、移載途中の物品Wの落下を抑制できる。
【0086】
(8)スライド機構50のスライド軸を継手機構41の第1軸42が兼ねるので、部品共通化により、吸着機構30の小型化を実現できる。
(9)ロボット20のロボットアーム23に装着される吸着機構30は、物品Wを吸着可能な吸着部32と、吸着部32を傾動可能に支持する傾動機構40と、吸着部32を傾動可能な状態で昇降方向と交差するスライド方向にスライド可能に支持するスライド機構50とを備える。よって、吸着機構30がロボットアーム23に装着されることにより、物品移載装置10と同様の効果が得られる。
【0087】
(10)物品移載方法は、スライド許容ステップと、下降ステップと、吸着ステップとを備える。スライド許容ステップでは、吸着部32の傾動支点をスライド方向のスライドが許容された状態とする。下降ステップでは、スライドが許容された状態の吸着部32を吸着位置に向かって下降させる。吸着ステップでは、吸着対象の物品Wが傾いている場合、吸着部32の端部が物品Wに当たった状態でさらなる下降によって吸着部32が傾動支点のスライドを伴ってさらに傾くことで当該物品Wを吸着する。この物品移載方法によれば、物品移載装置10と同様の効果を得ることができる。
【0088】
前記実施形態は、上記に限定されず、以下のように変更してもよい。
・前記実施形態では、吸着部32が物品Wの長手方向(X方向)のみにスライド可能なスライド機構50としたが、吸着部32がX方向とY方向との2方向にスライド可能なスライド機構としてもよい。すなわち、吸着部32が物品Wの長手方向と短手方向の両方向にスライド可能に構成してもよい。例えば、
図22に示すスライド機構150を採用する。前記実施形態のスライド機構50を第1スライド機構50とすると、スライド機構150は、吸着部32の傾動支点をX方向にスライド可能な第1スライド機構50と、吸着部32の傾動支点をY方向にスライド可能な第2スライド機構58とを含む。第2軸43は、連結部材44のY方向の長さ寸法よりも長い。連結部材44は、第1軸42が挿通されている第1部材44aと、第2軸43が挿通されている第2部材44bとを備え、第2部材44bが第1部材44aに対してY方向にスライド可能な状態で連結されている。このため、吸着部32の揺動部材48は、連結部材44の第2部材44bに対して第2軸43を中心に傾動可能に連結されている。このため、吸着部32は、第1軸42を中心とするX軸回りの傾動と、第2軸43を中心とするY軸回りの傾動と、第1軸42に沿ったX方向のスライドと、第2軸43に沿ったY方向のスライドとが可能である。
【0089】
また、復帰機構55は、2種類の第1切換機構56A,56Bを有する。一方の第1切換機構56Aは、前記第1実施形態の第1切換機構56と同様の構成であり、吸着部32の傾動支点をX方向にスライドが許容される状態と、スライド不能にロックされる状態とに切り換える。他方の第1切換機構56Bは、吸着部32の傾動支点をY方向にスライドが許容される状態と、スライド不能にロックされる状態とに切り換える。他方の第1切換機構56Bは、Y方向に対峙する一対のシリンダ59を有する。一対のシリンダ59が収縮駆動された状態では、吸着部32の傾動支点のY方向へのスライドが許容される。また、一対のシリンダ59が伸長駆動されると、連結部材44の第2部材44bに突設されたブロック(図示略)を一対のロッド59aで挟持することで、吸着部32の傾動支点をY方向の基準位置(例えばセンタ位置)に復帰させる。
【0090】
この構成によれば、吸着部32に対してその長手方向(X方向)に傾いた物品Wを吸着できるうえ、吸着部32の短手方向(Y方向)に傾いた物品Wを吸着できる。さらに、吸着部32に対してその長手方向(X方向)に傾く傾き成分と、吸着部32の短手方向(Y方向)に傾く傾き成分とをもち二方向に傾く物品をも、吸着部によって吸着することができる。よって、物品Wの傾きに起因する吸着ミスを一層低減できる。
【0091】
・
図22において、スライド機構として第2スライド機構58のみを設けてもよい。この構成によれば、吸着部32の短手方向に傾いた物品Wの吸着ミスを低減できる。
・復帰機構55は、シリンダを用いて基準位置に復帰させる構成に限定されず、ばねの付勢力で復帰する構成でもよい。例えば、
図23に示すように、復帰機構80は、規制板49の四隅に配置された4つのばね81を備える。ばね81は圧縮ばねであり、吸着部32の傾動に応じてそれぞれ変位し圧縮又は伸長する。吸着部32が傾いた物品Wを吸着する過程では、吸着部32はスライドしつつ傾動するので、より大きな傾き角まで傾くことができ、傾いた物品Wを吸着できる。吸着部32が大きく傾くと、傾きの低い側に位置するばね81が伸長し、傾きの高い側に位置するばね81が圧縮される。吸着部が物品を吸着した後に上昇すると、ばね81の付勢力により吸着部は水平姿勢に復帰する。吸着部32はばね81によって水平姿勢に戻る方向に付勢されている。
【0092】
・吸着部32を傾動可能に支持する継手機構41は、ユニバーサル継手であってもよい。この場合、スライド機構50のスライド軸は、ユニバーサル継手とは別部材で設ければよい。また、スライド機構は、XY平面上を任意の方向にスライドできる構成でもよい。この構成によれば、物品がどの方向に傾いていても、その傾いた向きに吸着部が追従して大きく傾くことができるので、物品の傾きに起因する吸着ミスを一層低減することができる。
【0093】
・スライド機構を構成するスライド軸は、吸着部32を傾動可能に支持する継手機構41の軸が兼ねる構成に限定されず、継手機構とは別のスライド専用のスライド軸であってもよい。
【0094】
・2軸の回動軸をもつ十字継手に替え、1軸の回動軸のみもつ1軸継手としてもよい。1軸継手であっても、その1軸に沿って吸着部がスライドできれば、吸着過程における吸着部の最大傾動角を大きくすることができる。
【0095】
・前記実施形態では、スライド機構は、昇降方向に対して直交する方向、すなわち水平方向にスライドしたが、吸着部が傾いた場合、吸着部をその傾き方向(昇降方向と鋭角な角度をなして交差する傾斜方向)に沿ってスライドさせる機構であってもよい。例えば、吸着部を傾動可能に支持する継手に対して傾動部材を介して吸着部を支持し、この傾動部材と吸着部との間にスライド軸を介在させることで、吸着部をスライド可能に支持するスライド機構を構成する。このような構成であっても、傾動可能に支持される吸着部の傾動支点が物品の傾き方向に沿ってその傾きの低い側へスライドすることで、吸着部の最大傾動角度を大きくし、大きく傾いた物品(ワーク)でも吸着部によって吸着することができる。
【0096】
・第1切換機構56に替えて復帰ばねを設けてもよい。復帰ばねの付勢力により吸着部32の傾動支点をスライド方向の基準位置に復帰させる。
・第2切換機構46を備えない構成でもよい。また、ばね81を備えない構成でもよい。
【0097】
・吸着パッド39は、緩衝部材39aがなくてもよい。
・吸着部32が吸着した物品Wを下側から保持する保持機構60はなくてもよい。
・カメラ71が撮像した画像を解析して物品Wの位置を検出する構成に替え、ロボットアーム23又は吸着機構30に設けた距離センサ等のセンサにより物品Wの位置を検知する構成でもよい。
【0098】
・物品Wは、袋体に限らず、箱などのケースでもよい。袋体以外の物品の形状は直方体に限らず、その他の多角柱状(例えば三角柱又は六角柱)や円柱状でもよい。
・吸着機構30が吸着パッド39を複数備え、物品Wを複数個ずつ吸着する構成でもよい。
【0099】
・物品移載装置の移載作業は、コンベヤからコンベヤへの移載でもよいし、パレットからパレットへの移載でもよい。また、パレットと台車間の移載、あるいは台車とコンベヤ間の移載でもよい。このように物品移載装置が移載作業を行うときの荷取りと荷置きの物品の載置先は何でもよい。
【0100】
・移動機構は、ロボット20に限定されない。例えば、X移動機構とY移動機構とZ移動機構を有し、吸着機構30をX方向、Y方向及びZ方向に移動させる移動機構でもよい。移動機構は、高さ方向Z(昇降方向)のみに移動するZ移動機構でもよい。また、吸着機構30が昇降機構35を備える構成である場合、移動機構は、X方向のみに移動するX移動機構でもよいし、Y方向のみに移動するY移動機構でもよい。また、XYZのうち2方向のみに移動する移動機構でもよい。
【0101】
・吸着機構30は、昇降機構35を備えない構成でもよい。この場合、ロボット20などの移動機構が、吸着部32の昇降方向の移動を行えばよい。
・吸着機構30が昇降機構35を備える構成である場合、昇降機構35が移動機構の一例を構成してもよい。
【符号の説明】
【0102】
10…物品移載装置(移載装置)、12…コンベヤ、15…入力部、20…移動機構の一例としてのロボット、23…アームの一例としてのロボットアーム、23A~23C…アーム部、24…駆動機構、25…動力源、26…モータ、27…回転部、30…吸着機構、31…機構本体、32…吸着部、33…被装着部、35…昇降機構、36…昇降シリンダ、37…昇降部材、38…負圧発生ユニット、39…吸着パッド、39a…緩衝部材、39b…吸着口、40…傾動機構、41…継手機構、42…第1軸、43…第2軸、44…連結部材、45…ブロック、46…第2切換機構、47…第2シリンダ、48…揺動部材、49…規制板、50…スライド機構(第1スライド機構)、51…規制部材、55…復帰機構、56,56A,56B…第1切換機構、57…第1シリンダ、57a…ロッド、58…第2スライド機構、59…シリンダ、59a…ロッド、60…保持機構、61…保持部、62…シリンダ、63…リンク機構、64…シリンダ、70…撮像装置、71…カメラ、75…センサ、80…復帰機構、81…ばね、100…制御部、110…コンピュータ、120…メモリ、150…スライド機構、W…物品、P…パレット、Pa…載置面、X…X方向(スライド方向)、Y…Y方向、Z…高さ方向。