(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】馬に関連する装置および車両
(51)【国際特許分類】
B62C 1/00 20060101AFI20240925BHJP
B60K 7/00 20060101ALI20240925BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B62C1/00
B60K7/00
B62D6/00
(21)【出願番号】P 2021072736
(22)【出願日】2021-04-22
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】521216762
【氏名又は名称】株式会社だんご2112
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】波多野 幾也
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-118614(JP,A)
【文献】特開平10-119808(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0107560(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0097124(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0105609(KR,A)
【文献】独国実用新案第9405104(DE,U1)
【文献】特開2018-14979(JP,A)
【文献】特開2017-12546(JP,A)
【文献】国際公開第95/016598(WO,A1)
【文献】特開2003-291821(JP,A)
【文献】特開2006-219025(JP,A)
【文献】特開2005-8007(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2457805(EP,A1)
【文献】実開平2-40672(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62C 1/00- 99/00
B60K 1/00- 6/12
B60K 7/00
B60K 8/00
B60K 16/00
B62D 6/00- 6/10
B62D 53/00- 53/04
B62D 1/00- 1/28
B62B 1/00- 5/08
A63G 19/00
A63G 25/00
A63H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
馬によって牽引される被牽引車両に搭載されるアシスト装置であって、
前記アシスト装置は、
前記馬の歩法を特定する特定手段と、
前記馬の速度を測定する測定手段と、
前記馬の歩法と前記馬の速度とに基づいて、前記被牽引車両の車輪の駆動を制御するときのアシスト比率を決定する決定手段と、
前記決定されたアシスト比率で前記被牽引車両の車輪の駆動を制御する制御手段と
を備える、アシスト装置。
【請求項2】
前記馬の歩法は、常歩と速歩と駈歩とを含み、前記特定手段は、前記馬の歩法が常歩であるか速歩であるか駈歩であるかを特定する、請求項1に記載のアシスト装置。
【請求項3】
前記決定手段は、第1の関数に従って前記アシスト比率を決定するように構成されており、前記第1の関数は、前記特定された歩法と前記測定された速度とを入力として前記アシスト比率を出力するものであり、前記第1の関数は、前記馬の歩法が速歩から常歩に遷移するように前記馬を促すように前記アシスト比率を規定したものである、請求項2に記載のアシスト装置。
【請求項4】
前記馬の歩法が常歩であるときの前記アシスト比率は、少なくとも部分的に、前記馬の歩法が速歩であるときの前記アシスト比率より高く、前記馬の歩法が速歩であるときの前記アシスト比率は、少なくとも部分的に、前記馬の歩法が駈歩であるときの前記アシスト比率より高い、請求項3に記載のアシスト装置。
【請求項5】
前記決定手段は、第2の関数に従って前記アシスト比率を決定するように構成されており、前記第2の関数は、前記特定された歩法と前記測定された速度とを入力として前記アシスト比率を出力するものであり、前記第2の関数は、前記馬の歩法が常歩から速歩または駈歩に遷移するように前記馬を促すように前記アシスト比率を規定したものである、請求項2に記載のアシスト装置。
【請求項6】
前記馬の歩法が駈歩であるときの前記アシスト比率は、少なくとも部分的に、前記馬の歩法が速歩であるときの前記アシスト比率より高く、前記馬の歩法が速歩であるときの前記アシスト比率は、少なくとも部分的に、前記馬の歩法が常歩であるときの前記アシスト比率より高い、請求項5に記載のアシスト装置。
【請求項7】
前記特定手段は、前記馬の歩行リズムが4拍子であるか2拍子であるか3拍子であるかを特定することによって、前記馬の歩法が常歩であるか速歩であるか駈歩であるかを特定する、請求項2~6のいずれかに記載のアシスト装置。
【請求項8】
牽引物によって牽引されるように構成された被牽引車両であって、前記被牽引車両は、
一対の車輪と、
前記一対の車輪の向きを変更するステアリング装置と、
前記一対の車輪の向きを制御することを可能にする制御手段であって、前記制御手段は、運転者の操作に応じて、前記一対の車輪の向きを制御するための制御信号を出力する、制御手段と
を備え、
前記ステアリング装置は、前記制御信号に応じて、前記一対の車輪の向きを変更するように構成されており、
前記運転者の操作は、1つ以上のパネル上の前記運転者の足の踏み動作を含む
、被牽引車両。
【請求項9】
牽引物によって牽引されるように構成された被牽引車両であって、前記被牽引車両は、
一対の車輪と、
前記一対の車輪の向きを変更するステアリング装置と、
前記一対の車輪の向きを制御することを可能にする制御手段であって、前記制御手段は、運転者の操作に応じて、前記一対の車輪の向きを制御するための制御信号を出力する、制御手段と
を備え、
前記ステアリング装置は、前記制御信号に応じて、前記一対の車輪の向きを変更するように構成されており、
前記運転者の操作は、第1の方向と、前記第1の方向と反対の第2の方向とに少なくとも倒すことが可能なレバーを有するレバー型スイッチを用いた、前記第1の方向または前記第2の方向への前記運転者の手の押し引き動作を含む
、被牽引車両。
【請求項10】
前記レバーは、前記第1の方向と前記第2の方向との間で前記レバーが移動するときに前記運転者が前記レバーをグリップする位置の高さが変化しないように、前記レバーのグリップ部が前記レバーの軸方向にスライド可能なように構成されている、請求項
9に記載の被牽引車両。
【請求項11】
牽引物によって牽引されるように構成された被牽引車両であって、前記被牽引車両は、
一対の車輪と、
前記一対の車輪の向きを変更するステアリング装置と、
前記一対の車輪の向きを制御することを可能にする制御手段であって、前記制御手段は、運転者の操作に応じて、前記一対の車輪の向きを制御するための制御信号を出力する、制御手段と
を備え、
前記ステアリング装置は、前記制御信号に応じて、前記一対の車輪の向きを変更するように構成されており、
前記牽引物は、馬であり、
前記運転者の操作は、前記馬の手綱操作を妨げない操作である
、被牽引車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、馬に関連する装置および車両、特に、馬によって牽引される被牽引車両に搭載されるアシスト装置および被牽引車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、馬を労力として使うことは知られている(例えば、馬車を牽引するなど)。最近では、「アニマルウェルフェア」という観点から、馬を酷使しないことが求められている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】農林水産省、“アニマルウェルフェアについて”、[online]、[令和3年4月13日検索]、インターネット<URL:https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/animal_welfare.html>
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの局面において、本発明のアシスト装置は、馬によって牽引される被牽引車両に搭載されるアシスト装置であり、前記アシスト装置は、前記馬の歩法を特定する特定手段と、前記馬の速度を測定する測定手段と、前記馬の歩法と前記馬の速度とに基づいて、前記被牽引車両の車輪の駆動を制御するときのアシスト比率を決定する決定手段と、前記決定されたアシスト比率で前記被牽引車両の車輪の駆動を制御する制御手段とを備える。
【0005】
本発明の1つの実施形態では、前記馬の歩法は、常歩と速歩と駈歩とを含み、前記特定手段は、前記馬の歩法が常歩であるか速歩であるか駈歩であるかを特定してもよい。
【0006】
本発明の1つの実施形態では、前記決定手段は、第1の関数に従って前記アシスト比率を決定するように構成されており、前記第1の関数は、前記特定された歩法と前記測定された速度とを入力として前記アシスト比率を出力するものであり、前記第1の関数は、前記馬の歩法が速歩から常歩に遷移するように前記馬を促すように前記アシスト比率を規定したものであってもよい。
【0007】
本発明の1つの実施形態では、前記馬の歩法が常歩であるときの前記アシスト比率は、少なくとも部分的に、前記馬の歩法が速歩であるときの前記アシスト比率より高く、前記馬の歩法が速歩であるときの前記アシスト比率は、少なくとも部分的に、前記馬の歩法が駈歩であるときの前記アシスト比率より高くてもよい。
【0008】
本発明の1つの実施形態では、前記決定手段は、第2の関数に従って前記アシスト比率を決定するように構成されており、前記第2の関数は、前記特定された歩法と前記測定された速度とを入力として前記アシスト比率を出力するものであり、前記第2の関数は、前記馬の歩法が常歩から速歩または駈歩に遷移するように前記馬を促すように前記アシスト比率を規定したものであってもよい。
【0009】
本発明の1つの実施形態では、前記馬の歩法が駈歩であるときの前記アシスト比率は、少なくとも部分的に、前記馬の歩法が速歩であるときの前記アシスト比率より高く、前記馬の歩法が速歩であるときの前記アシスト比率は、少なくとも部分的に、前記馬の歩法が常歩であるときの前記アシスト比率より高くてもよい。
【0010】
本発明の1つの実施形態では、前記特定手段は、前記馬の歩行リズムが4拍子であるか2拍子であるか3拍子であるかを特定することによって、前記馬の歩法が常歩であるか速歩であるか駈歩であるかを特定してもよい。
【0011】
本発明の1つの局面において、本発明の被牽引車両は、牽引物によって牽引されるように構成された被牽引車両であり、前記被牽引車両は、一対の車輪と、前記一対の車輪の向きを変更するステアリング装置と、前記牽引物の進行方向が前記被牽引車両の進行方向からずれたことを検出し、前記牽引物の進行方向からの前記被牽引車両の進行方向のずれの方向および大きさを示す進行方向ずれ検出信号を出力する進行方向ずれ検出手段と、前記進行方向ずれ検出信号に基づいて、前記被牽引車両の進行方向と前記牽引物の進行方向とが一致する方向に前記一対の車輪の向きを制御するための制御信号を出力する制御手段とを備え、前記ステアリング装置は、前記制御信号に応じて、前記一対の車輪の向きを変更するように構成されている。
【0012】
本発明の1つの実施形態では、前記被牽引車両は、連結部材を介して、前記牽引物に連結されており、前記連結部材は、前記被牽引車両の進行方向に垂直な方向に延在する基準部材に連結点で連結されており、前記連結部材は、前記牽引物の進行方向が変更されると、前記連結点の周りに回動することが可能であり、前記進行方向ずれ検出手段は、前記連結部材と前記基準部材とがなす角度から、前記ずれの大きさを検出することによって、前記進行方向ずれ検出信号を生成してもよい。
【0013】
本発明の1つの局面において、本発明の被牽引車両は、牽引物によって牽引されるように構成された被牽引車両であり、前記被牽引車両は、一対の車輪と、前記一対の車輪の向きを変更するステアリング装置と、前記一対の車輪の向きを制御することを可能にする制御手段であって、前記制御手段は、前記運転者の操作に応じて、前記一対の車輪の向きを制御するための制御信号を出力する、制御手段とを備え、前記ステアリング装置は、前記制御信号に応じて、前記一対の車輪の向きを変更するように構成されている。
【0014】
本発明の1つの実施形態では、前記運転者の操作は、1つ以上のパネル上の前記運転者の足の踏み動作を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、前記運転者の操作は、第1の方向と、前記第1の方向と反対の第2の方向とに少なくとも倒すことが可能なレバーを有するレバー型スイッチを用いた、前記第1の方向または前記第2の方向への前記運転者の手の押し引き動作を含んでいてもよい。
【0016】
本発明の1つの実施形態では、前記レバーは、前記第1の方向と前記第2の方向との間で前記レバーが移動するときに前記運転者が前記レバーをグリップする位置の高さが変化しないように、前記レバーのグリップ部が前記レバーの軸方向にスライド可能なように構成されていてもよい。
【0017】
本発明の1つの実施形態では、前記牽引物は、馬であり、前記運転者の操作は、前記馬の手綱操作を妨げない操作であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、馬に関連する装置および車両、特に、馬によって牽引される被牽引車両に搭載されるアシスト装置および被牽引車両を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のアシスト装置が搭載された被牽引車両の構成の一例を示す図
【
図2A】馬の歩法と速度とアシスト比率との対応関係を示す関数の一例を示す図
【
図2B】馬の歩法と速度とアシスト比率との対応関係を示す関数の他の一例を示す図
【
図2C】馬の歩法と速度とアシスト比率との対応関係を示す関数の他の一例を示す図
【
図3】アシスト装置100において実行される処理のフローの一例を示す図
【
図4A】牽引物によって牽引されるように構成された被牽引車両の構成の一例を示す図
【
図4B】牽引物による被牽引車両の牽引開始時の状態の一例を示す図
【
図4C】牽引物の進行方向と被牽引車両の進行方向との間でずれが生じた状態の一例を示す図
【
図5A】被牽引車両10において実行される処理のフローの一例を示す図
【
図5B】被牽引車両10において実行される処理のフローの一例を示す図
【
図7】馬をクールダウンするための装置の構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本明細書において用いられる用語を定義する。
【0021】
用語「約」とは、他の態様で明示されない限り、示された値の±10%を指す。
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面全体にわたって、同一の構成要素には同一の参照数字が付与されている。
【0023】
1.被牽引車両の構成
図1は、本発明のアシスト装置が搭載された被牽引車両の構成の一例を示す。被牽引車両は、牽引物(例えば、馬)によって牽引されるように構成されている。
【0024】
被牽引車両10は、車輪(図示せず)と、その車輪を駆動する駆動装置120とを含む。駆動装置120が駆動する車輪の数は任意である。例えば、駆動装置120は、被牽引車両10の後輪のみを駆動するようにしてもよいし、被牽引車両10の前輪のみを駆動するようにしてもよいし、被牽引車両10の後輪および前輪の両方を駆動するようにしてもよい。
【0025】
被牽引車両10には、アシスト装置100が搭載されている。アシスト装置100は、被牽引車両10の車輪にアシスト力を付与するように構成されている。アシスト装置100は、被牽引車両10の車輪の回転方向と同一の方向に正のアシスト力を付与することによって、被牽引車両10の車輪の回転を促進することが可能である。さらに、アシスト装置100は、被牽引車両10の車輪の回転方向とは反対の方向に負のアシスト力を付与することによって、被牽引車両10の車輪の回転を抑制することが可能である。
【0026】
アシスト装置100は、制御装置110とセンサ装置130とを備える。制御装置110は、被牽引車両10の車輪を駆動するための駆動信号(または制御信号)を駆動装置120に出力するように構成されている。センサ装置130は、センサ装置130によって検出された検出結果を示す検出信号を制御装置110に出力するように構成されている。
【0027】
制御装置110は、インターフェース部111と、プロセッサ部112と、メモリ部113とを含む。
【0028】
インターフェース部111は、センサ装置130からの検出信号を受信し、駆動装置120に駆動信号(または制御信号)を出力するように構成されている。インターフェース部111は、ネットワークを介した他の装置(例えば、ユーザ装置、サーバ装置、センサ)との間の通信を制御するようにさらに構成されていてもよい。
【0029】
メモリ部113には、被牽引車両10の処理を実行するために必要とされるプログラムやそのプログラムを実行するために必要とされるデータ等が格納されている。ここで、プログラムをどのようにしてメモリ部113に格納するかは問わない。例えば、プログラムは、メモリ部113にプリインストールされていてもよい。あるいは、プログラムは、インターネットなどのネットワークを経由してダウンロードされることによってメモリ部113にインストールされるようにしてもよい。
【0030】
プロセッサ部112は、被牽引車両10全体の動作を制御する。プロセッサ部112は、メモリ部113に格納されているプログラムを読み出し、そのプログラムを実行する。これにより、被牽引車両10のプロセッサ部112は、所望の機能を達成する手段として動作することが可能である。
【0031】
センサ装置130は、少なくとも1つのセンサを含む。例えば、センサ装置130は、振動を検出することが可能な振動センサ130a、または、速度を測定することが可能な速度センサ130bを含んでいてもよい。
【0032】
図1に示される実施形態では、被牽引車両10に搭載されているアシスト装置100がセンサ装置130を備えている例を説明したが、本発明はこれに限定されない。センサ装置130の一部または全部が、被牽引車両10の外部(例えば、被牽引車両10を牽引する牽引物(例えば、馬))に設けられていてもよい。この場合、被牽引車両10(特に、被牽引車両10のプロセッサ部112)は、有線でまたはネットワークを介して無線で、センサ装置130から出力される検出信号を受信するようにしてもよい。
【0033】
2.馬の歩法および速度に合わせたアシストを可能にするアシスト装置
馬が被牽引物を牽引しながら移動するとき、場所に応じてゆっくり移動しなければならない場合(例えば、馬が街中を歩行または走行している場合)もあれば、比較的急いで移動しなければならない場合(例えば、馬が、速度が落ちる傾向が高い坂道を上っている場合)もある。
図1に示される被牽引車両10を被牽引車両として馬が牽引するとき、本発明のアシスト装置100が、馬の歩法と速度とに基づくアシスト比率に応じたアシスト力を被牽引車両10の一対の車輪に付与することによって、アシスト力による一対の車輪の回転が馬を補助し、馬は、ゆっくり移動しなければならない場合にも、比較的急いで移動しなければならない場合にも、比較的労力を消費することなく移動することができる。なお、本明細書において、アシスト比率は、馬の牽引力に対するアシスト力の比率をいう。また、馬の歩法は、馬の脚が4拍子で着地する「常歩」と、馬の脚が2拍子で着地する「速歩」と、馬の脚が3拍子で着地する「駈歩」とを含む。
【0034】
図2Aは、馬の歩法と速度とアシスト比率との対応関係を示す関数の一例を示す。
【0035】
図2Aに示される関数は、馬の歩法が「常歩」であるときの曲線と、馬の歩法が「速歩」であるときの曲線と、馬の歩法が「駈歩」であるときの曲線とを含む。馬の歩法が「常歩」であるときの曲線は、馬の歩法が「常歩」であるときの速度およびアシスト比率の各々の範囲を画定し、馬の歩法が「速歩」であるときの曲線は、馬の歩法が「速歩」であるときの速度およびアシスト比率の各々の範囲を画定し、馬の歩法が「駈歩」であるときの曲線は、馬の歩法が「駈歩」であるとの速度およびアシスト比率の各々の範囲を画定する。
図2Aに示される関数は、馬の歩法と馬の速度とを入力として、馬の歩法および馬の速度の組み合わせに対応するアシスト比率を出力するものである。
【0036】
図2Aに示される実施形態では、馬の歩法が「常歩」であるときの馬の速度は、0~V
2の範囲内であり、馬の歩法が「常歩」であるときのアシスト比率は、A
1~A
2の範囲内であり、馬の歩法が「速歩」であるときの馬の速度は、V
1~V
4の範囲内であり、馬の歩法が「速歩」であるときのアシスト比率は、A
3~A
4の範囲内であり、馬の歩法が「駈歩」であるときの馬の速度は、V
3~V
5の範囲内であり、馬の歩法が「駈歩」であるときのアシスト比率は、A
5~0の範囲内である。なお、
図2Aに示される実施形態では、0<A
5<A
4<A
3<A
2<A
1であり、0<V
1<V
2<V
3<V
4<V
5である。
【0037】
図2Aに示される実施形態では、例えば、馬の速度がV
1~V
2の範囲内のV
xであり、かつ、馬の歩法が「常歩」である場合には、馬の歩法が「常歩」であるときの曲線に基づいて、速度V
xに対応するアシスト比率A
x(図示せず)が特定される。
【0038】
図2Aに示される実施形態では、馬の歩法が「常歩」であるときのアシスト比率は、全体的に、馬の歩法が「速歩」であるときのアシスト比率より高く、馬の歩法が「速歩」であるときのアシスト比率は、全体的に、馬の歩法が「駈歩」であるときのアシスト比率より高い。これにより、
図2Aに示される関数に規定されるアシスト比率に応じたアシスト力の影響を受ける馬は、歩法が「駈歩」である場合よりも歩法が「速歩」である場合の方がより高いアシスト比率でアシストされるため、「駈歩」で移動するより「速歩」で移動する方が楽に移動することができると認識することができる。また、歩法が「速歩」である場合よりも歩法が「常歩」である場合の方がより高いアシスト比率でアシストされるため、「速歩」で移動するより「常歩」で移動する方が楽に移動することができると認識することができる。このように、
図2Aに示される関数は、馬の歩法が「駈歩」および「速歩」から「常歩」に遷移するように馬を促すようにアシスト比率を規定しており、
図2Aに示される関数に規定されるアシスト比率に応じたアシスト力の影響を受ける馬の歩法が「常歩」に遷移するように促すことによって、ゆっくり移動しなければならない場所において馬をゆっくり移動させることが可能である。
【0039】
また、調教されていない馬は、負荷がかかると急に走り出してしまう傾向にあるため、
図2Aに示されるアシスト比率でアシストするアシスト装置100を搭載した被牽引車両10を調教されていない馬に牽引させることによって、調教されていない馬の歩法が「常歩」に遷移するように馬を促し、これにより、馬を調教することが可能である。
【0040】
図2Bは、馬の歩法と速度とアシスト比率との対応関係を示す関数の他の一例を示す。
【0041】
図2Bに示される関数は、馬の歩法が「常歩」であるときの曲線と、馬の歩法が「速歩」であるときの曲線とを含む。
図2Bに示される関数もまた、馬の歩法と馬の速度とを入力として、馬の歩法および馬の速度の組み合わせに対応するアシスト比率を出力するものである。
図2Bに示されるように、馬の歩法と速度とアシスト比率との対応関係を示す関数は、馬の歩法が「駈歩」であるときの曲線を含んでいなくてもよい(すなわち、馬の歩法が「駈歩」であるときのアシスト比率は常にゼロであってもよい)。
【0042】
図2Bに示される実施形態では、馬の歩法が「常歩」であるときの馬の速度は、0~V
7の範囲内であり、馬の歩法が「常歩」であるときのアシスト比率は、A
6~A
7の範囲内であり、馬の歩法が「速歩」であるときの馬の速度は、V
6~V
8の範囲内であり、馬の歩法が「速歩」であるときのアシスト比率は、A
8~0の範囲内である。なお、
図2Bに示される実施形態では、0<A
8<A
7<A
6であり、0<V
6<V
7<V
8である。
【0043】
図2Bに示される実施形態では、例えば、馬の速度がV
6~V
7の範囲内のV
yであり、かつ、馬の歩法が「速歩」である場合には、馬の歩法が「速歩」であるときの曲線に基づいて、速度V
yに対応するアシスト比率A
y(図示せず)が特定される。
【0044】
図2Bに示される実施形態では、馬の歩法が「常歩」であるときのアシスト比率は、全体的に、馬の歩法が「速歩」であるときのアシスト比率より高い。このように、
図2Bに示される関数は、
図2Aに示される関数と同様に、馬の歩法が「速歩」から「常歩」に遷移するように馬を促すようにアシスト比率を規定しており、
図2Bに示される関数に規定されるアシスト比率に応じたアシスト力の影響を受ける馬の歩法が「常歩」に遷移するように促すことによって、ゆっくり移動しなければならない場所において馬をゆっくり移動させることが可能である。また、
図2Bに示される関数は、馬の速度が速くなるにつれてアシスト比率が急激に低下するように馬の歩法が「速歩」であるときのアシスト比率を規定している。これにより、高速の馬がアシスト装置100のアシスト力の影響を受け、高速の馬や被牽引車両10が危険な状態に陥ることを防止することが可能である。
【0045】
図2Cは、馬の歩法と速度とアシスト比率との対応関係を示す関数の他の一例を示す。
【0046】
図2Cに示される関数は、馬の歩法が「常歩」であるときの曲線と、馬の歩法が「速歩」であるときの曲線と、馬の歩法が「駈歩」であるときの曲線とを含む。
図2Cに示される関数もまた、馬の歩法と馬の速度とを入力として、馬の歩法および馬の速度の組み合わせに対応するアシスト比率を出力するものである。
【0047】
図2Cに示される実施形態では、馬の歩法が「常歩」であるときの馬の速度は、0~V
10の範囲内であり、馬の歩法が「常歩」であるときのアシスト比率は、A
11~A
13の範囲内であり、馬の歩法が「速歩」であるときの馬の速度は、V
9~V
12の範囲内であり、馬の歩法が「速歩」であるときのアシスト比率は、A
9~A
12の範囲内であり、馬の歩法が「駈歩」であるときの馬の速度は、V
11~V
13の範囲内であり、馬の歩法が「駈歩」であるときのアシスト比率は、A
10~0の範囲内である。なお、
図2Cに示される実施形態では、0<A
13<A
12<A
11<A
10<A
9であり、0<V
9<V
10<V
11<V
12<V
13である。
【0048】
図2Cに示される実施形態では、例えば、馬の速度がV
11~V
12の範囲内のV
zであり、かつ、馬の歩法が「駈歩」である場合には、馬の歩法が「駈歩」であるときの曲線に基づいて、速度V
zに対応するアシスト比率A
z(図示せず)が特定される。
【0049】
図2Cに示される実施形態では、馬の歩法が「駈歩」であるときのアシスト比率は、少なくとも部分的に、馬の歩法が「速歩」であるときのアシスト比率より高く、馬の歩法が「速歩」であるときのアシスト比率は、少なくとも部分的に、馬の歩法が「常歩」であるときのアシスト比率より高い。これにより、
図2Cに示される関数に規定されるアシスト比率に応じたアシスト力の影響を受ける馬は、歩法が「常歩」である場合よりも歩法が「速歩」である場合の方がより高いアシスト比率でアシストされるため、「常歩」で移動するより「速歩」で移動する方が楽に移動することができると認識し、歩法が「速歩」である場合よりも歩法が「駈歩」である場合の方がより高いアシスト比率でアシストされるため、「速歩」で移動するより「駈歩」で移動する方が楽に移動することができると認識する。このように、
図2Cに示される関数は、馬の歩法が「常歩」から「速歩」または「駈歩」に遷移するように馬を促すようにアシスト比率を規定しており、
図2Cに示される関数に規定されるアシスト比率に応じたアシスト力の影響を受ける馬の歩法が「速歩」または「駈歩」に遷移するように促すことによって、比較的急いで移動しなければならない場所において馬を比較的楽に急かすことが可能である。また、
図2Cに示される関数は、馬の速度が速くなるにつれてアシスト比率が急激に低下するように馬の歩法が「駈歩」であるときのアシスト比率を規定している。これにより、高速の馬がアシスト装置100のアシスト力の影響を受け、高速の馬や被牽引車両10が危険な状態に陥ることを防止することが可能である。
【0050】
なお、
図2Aに示される実施形態では、馬の歩法が「常歩」であるときのアシスト比率が、全体的に、馬の歩法が「速歩」であるときのアシスト比率より高く、馬の歩法が「速歩」であるときのアシスト比率が、全体的に、馬の歩法が「駈歩」であるときのアシスト比率より高い例を説明したが、本発明はこれに限定されない。馬の歩法が「常歩」であるときのアシスト比率は、少なくとも部分的に、馬の歩法が「速歩」であるときのアシスト比率より高く、馬の歩法が「速歩」であるときのアシスト比率は、少なくとも部分的に、馬の歩法が「駈歩」であるときのアシスト比率より高くてもよい。
【0051】
図2A~
図2Cに示される実施形態では、馬の歩法と速度とアシスト比率との対応関係が不連続な曲線で表された例が説明されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、馬の歩法が「常歩」であるときの曲線と、馬の歩法が「速歩」であるときの曲線との間が連続していてもよいし、馬の歩法が「速歩」であるときの曲線と、馬の歩法が「駈歩」であるときの曲線との間が連続していてもよい。
【0052】
また、
図2A~
図2Cに示される実施形態では、馬の歩法と速度とアシスト比率との対応関係が曲線で表された例が説明されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、馬の歩法と速度とアシスト比率との対応関係は、直線で表されてもよいし、直線と曲線との組み合わせによって表されてもよい。
【0053】
また、
図2A~
図2Cに示される実施形態では、アシスト比率がゼロ以上である例が説明されたが、本発明はこれに限定されない。アシスト比率は、負の数を含んでいてもよい。例えば、アシスト力が、車両の車輪の回転に負荷をかける抑制力である場合には、アシスト力を負の値で示すことにより、馬の牽引力に対するアシスト力のアシスト比率を負の値で示してもよい。
【0054】
また、
図2A~
図2Cに示される関数は、アシスト装置100のプロセッサ部112が読み出すことが可能である限りにおいて、任意の場所に記憶されていてもよい。例えば、
図2A~
図2Cに示される関数は、アシスト装置100のメモリ部113の内部に記憶されていてもよいし、アシスト装置100に(例えば、有線でまたは無線で)接続されたデータベース部(図示せず)の内部に記憶されていてもよい。
【0055】
図3は、アシスト装置100において実行される処理のフローの一例を示す。以下、
図3に示される各ステップを詳しく説明する。なお、アシスト装置100を搭載している被牽引車両10は、馬によって牽引されているものとする。
【0056】
ステップS301:馬の歩法が特定される。この処理は、例えば、センサ装置130(例えば、振動センサ130a)によって実行される。振動センサ130aは、馬の歩行リズムを検出することが可能なように構成されている。振動センサ130aは、馬の歩行リズムが4拍子であるか2拍子であるか3拍子であるかを特定することによって、馬の歩行リズムが4拍子である馬の歩法が「常歩」であると特定し、馬の歩行リズムが2拍子である場合に馬の歩法が「速歩」であると特定し、馬の歩行リズムが3拍子である場合に馬の歩法が「駈歩」であると特定することが可能である。振動センサ130aは、馬の歩行リズムを検出し、馬の歩法を特定した後、特定された馬の歩法を示す信号を生成し、特定された馬の歩法を示す信号を入力信号としてアシスト装置100(特に、アシスト装置100のプロセッサ部112)に送信し得る。なお、振動センサ130aは、馬に装着され得る。振動センサ130aを馬に装着する態様は問わない。
【0057】
ステップS302:馬の速度が測定される。この処理は、例えば、センサ装置130(例えば、速度センサ130b)によって実行される。速度センサ130bは、馬の速度を検出することが可能なように構成されている。速度センサ130bは、馬の速度を測定した後、測定された馬の速度を示す信号を生成し、測定された馬の速度を示す信号を入力信号としてアシスト装置100(特に、アシスト装置100のプロセッサ部112)に送信し得る。なお、速度センサ130bは、馬に装着され得る。速度センサ130bを馬に装着する態様は問わない。あるいは、速度センサ130bは、馬と実質的に同一の速度で移動する被牽引車両10に取り付けられていてもよい。速度センサ130bを被牽引車両10に取り付ける態様は問わない。
【0058】
ステップS303:アシスト比率が決定される。この処理は、例えば、制御装置110のプロセッサ部112によって実行される。この処理は、例えば、ステップS301において特定された馬の歩法と、ステップS302において測定された馬の速度とに基づいて、
図2A~
図2Cに示される関数のいずれかを参照して実行される。
【0059】
あるいは、アシスト比率は、ステップS302において測定された馬の速度に基づいて、
図2A~
図2Cに示される関数のいずれかを参照して実行されてもよい。測定された馬の速度に対応するアシスト比率が複数存在する場合には、最も高いアシスト比率が、測定された馬の速度に対応するアシスト比率として決定されてもよい。
【0060】
馬の牽引力は、被牽引車両10の車輪の回転数および/または回転速度に反映されるため、制御装置110のプロセッサ部112は、決定されたアシスト比率に応じた車輪の回転数および/または回転速度になるようにするためのアシスト力の大きさを特定することが可能である。
【0061】
ステップS304:ステップS303において決定されたアシスト比率で被牽引車両10の車輪の駆動が制御される。この処理は、例えば、制御装置110のプロセッサ部112が被牽引車両10の車輪を駆動するための駆動信号を駆動装置120に出力することよって実行される。駆動装置120は、決定されたアシスト比率に応じた車輪の回転数および/または回転速度になるようにするためのアシスト力を被牽引車両10の車輪に付与することによって、被牽引車両10の車輪を駆動することが可能である。これにより、被牽引車両10を牽引する馬は、アシスト比率に応じたアシスト力が被牽引車両10の車輪に付与されたことによる影響(アシスト)を受けることが可能である。
【0062】
なお、
図3に示される実施形態では、ステップS302がステップS301の後に実行されるように説明されたが、本発明はこれに限定されない。ステップS302は、ステップS303の前に任意のタイミングで実行されてもよい。
【0063】
また、
図3のステップS303において参照される関数は、センサ装置130からの入力または運転者の入力に応じて(例えば、
図2Aに示される関数と、
図2Cに示される関数との間で)切り替え可能であってもよい。例えば、制御装置110のプロセッサ部112は、運転者の手動入力に応じて、参照される関数を切り替えてもよい。あるいは、アシスト装置100は、アシスト装置100の傾斜角度を測定する傾斜角度センサをセンサ装置130として備え、制御装置110のプロセッサ部112は、傾斜角度センサによって測定される傾斜角度が所定の閾値を超えると、
図2Aに示される関数から
図2Cに示される関数へ、参照される関数を切り替えてもよい。これにより、例えば、馬が街中を移動している間に馬が急に坂道に差し掛かったときに、手動でまたは自動的に、街中移動用のアシスト比率から坂道移動用のアシスト比率へ切り替えることが可能である。
【0064】
3.牽引物の進行方向に合わせるように転舵される被牽引車両の車輪
近年、時速20km未満で公道を走ることが可能な4人乗り以上の電動パブリックモビリティ(所謂、「グリーンスローモビリティ」)が推奨されている。なぜなら、グリーンスローモビリティは低速走行を前提としているため、高齢者でも安心して運転することが可能であり、電動であることから環境に優しいからである。高齢化が進んでいる地域での生活インフラや観光案内やイベントなどの様々な場面でのグリーンスローモビリティの活用が見込まれている。発明者は、このような車両を牽引物(例えば、馬、車両)に牽引させ、このような車両を「馬車」として使用することを見出した。しかしながら、通常の馬車の場合には、馬が左右に曲がるのに合わせて馬車を左右に転舵させる機械式の機構が馬車に存在するが、車両を「馬車」として使用する場合に、馬が左右に曲がるのに合わせて車両を左右に転舵させる機構は、車両には存在しない。
【0065】
図4Aは、牽引物によって牽引されるように構成された被牽引車両の構成の一例を示す。
【0066】
図4Aに示される実施形態では、被牽引車両10は、一対の車輪(図示せず)と、制御装置410と、一対の車輪の向きを変更するように構成されているステアリング装置420と、牽引物の進行方向からの被牽引車両10の進行方向のずれの方向および大きさを検出することが可能なように構成されるセンサ装置430(進行方向ずれセンサ)を備える。制御装置410は、インターフェース部411と、プロセッサ部412と、メモリ部413とを備える。制御装置410、インターフェース部411、プロセッサ部412、およびメモリ部413の構成は、それぞれ、
図1に示される制御装置110、インターフェース部111、プロセッサ部112、およびメモリ部113と同様の構成を有するため、ここではこれらの詳細な説明を省略する。進行方向ずれセンサ430は、牽引物の進行方向からの被牽引車両10の進行方向のずれの方向および大きさを検出すると、検出されたずれの方向および大きさを示す進行方向ずれ検出信号を出力し、進行方向ずれ検出信号を入力信号として被牽引車両10の制御装置410のプロセッサ部412に送信し得る。
【0067】
図4Bは、牽引物による被牽引車両の牽引開始時の状態の一例を示す。
【0068】
図4Bに示されるように、被牽引車両10は、牽引物(例えば、馬、車両)400によって牽引されるように構成されている。
図4Bに示される実施形態では、被牽引車両10は、被牽引車両10の進行方向に垂直な方向に延在する基準部材20をさらに備え、被牽引車両10は、連結部材30を介して、牽引物400に連結されている。連結部材30は、連結点において基準部材20に連結されている。連結部材30は、牽引物400の進行方向が変更されると、連結点の周りに回動することが可能なように構成されている。基準部材20は、例えば、一対の車輪(例えば、前輪)を連結するものであってもよい。
【0069】
図4Cは、牽引物の進行方向と被牽引車両の進行方向との間でずれが生じた状態の一例を示す。
【0070】
図4Cに示される実施形態では、牽引物400の進行方向は、被牽引車両10の進行方向に対して右方向に変更され、連結部材30が基準部材20に対して連結点の周りに回動することによって、連結部材30と基準部材20とがなす角度「α」が、形成されている。被牽引車両10の一対の車輪もまた、ステアリング装置420によって、被牽引車両10の進行方向に対して右方向に角度「α」だけ回動している。
図4Bに示される実施形態では、進行方向ずれセンサ430は、連結部材30と基準部材20とがなす角度「α」を測定し、基準部材20の長手方向に垂直な方向に対する連結部材30の長手方向の変位方向と、連結部材30と基準部材20とがなす角度「α」とから、「被牽引車両10の進行方向に対して右方向」をずれの方向として検出し、角度「α」をずれの大きさとして検出する。
【0071】
なお、
図4A~
図4Cに示される実施形態では、進行方向ずれセンサ430の進行方向ずれ検出信号をプロセッサ部412への入力とする例が説明されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、運転者の操作に応じて生成された運転者の操作を示す信号をプロセッサ部412への入力としてもよい。運転者の操作は、例えば、1つ以上のパネル上の運転者の足の踏み動作であってもよい。あるいは、運転者の操作は、例えば、第1の方向(例えば、進行方向)と、第1の方向と反対の第2の方向(例えば、進行方向と反対の方向)とに少なくとも倒すことが可能なレバーを有するレバー型スイッチを用いた、第1の方向または第2の方向への運転者の手の押し引き動作であってもよい。好ましくは、レバーは、第1の方向と第2の方向との間でレバーが移動するときに運転者がレバーをグリップする位置の高さが変化しないように、レバーのグリップ部がレバーの軸方向にスライド可能なように構成されている。これにより、牽引物が馬である場合、進行方向またはその反対方向への運転者の手の押し引き動作が、馬の手綱操作に沿った動作になり、進行方向またはその反対方向への運転者の手の押し引き動作と馬の手綱操作とを同時並行で行うことが容易になる。このように、特に牽引物が馬である場合には、運転者の操作は、馬の手綱操作を妨げない操作であることが好ましい。
【0072】
あるいは、運転者の操作は、視線スイッチを用いた運転者の視線による操作であってもよいし、運転者の足先を挿入することが可能な輪状機器を用いて運転者の足先を輪状機器に挿入した状態で運転者の足先を上下または左右に移動させる動作であってもよいし、シーソー状に動く一枚板上の運転者の足の踏み動作であってもよいし、被牽引車両10の座面に設けられた体重センサを利用した操作であってもよいし、運転者の膝を左右に傾ける動作であってもよい。
【0073】
図5Aは、被牽引車両10において実行される処理のフローの一例を示す。以下、
図5Aに示される各ステップを詳細に説明する。
【0074】
ステップS501:牽引物400の進行方向が被牽引車両10の進行方向からずれたことが検出される。この処理は、例えば、上述した進行方向ずれセンサ430によって実行される。進行方向ずれセンサ430は、例えば、連結部材30と基準部材20とが角度をなした(すなわち、直交ではなくなった)ことを検出することによって、牽引物400の進行方向が被牽引車両10の進行方向からずれたことを検出してもよい。
【0075】
ステップS502:牽引物400の進行方向からの被牽引車両10の進行方向のずれの方向および大きさを示す進行方向ずれ検出信号が生成される。この処理は、例えば、上述した進行方向ずれセンサ430によって実行される。進行方向ずれセンサ430は、例えば、基準部材20の長手方向に垂直な方向に対する連結部材30の長手方向の変位方向と、連結部材30と基準部材20とがなす角度とから、牽引物400の進行方向からの被牽引車両10の進行方向のずれの方向および大きさを検出し、検出されたずれの方向および大きさを示す進行方向ずれ検出信号を生成してもよい。生成された進行方向ずれ検出信号は、進行方向ずれセンサ430から、プロセッサ部412への入力信号としてプロセッサ部412に送信され得る。
【0076】
ステップS503:牽引物400の進行方向と被牽引車両10の進行方向とが一致する方向に被牽引車両10の一対の車輪の向きを制御するための制御信号が生成され、出力される。この処理は、例えば、被牽引車両10の制御装置410のプロセッサ部412によって実行される。生成された信号は、プロセッサ部412からステアリング装置420に送信され得る。
【0077】
ステップS504:ステップS503において生成された制御信号に応じて、被牽引車両10の一対の車輪の向きが変更される。この処理は、例えば、ステアリング装置420によって実行される。ステアリング装置420は、制御信号に応じて、牽引物400の進行方向と被牽引車両10の進行方向とが一致する方向に被牽引車両10の一対の車輪の向きを変更する。これにより、被牽引車両10は、牽引物400の進行方向が変更されると、牽引物400の進行方向と一致するように(すなわち、ステップS502において検出されたずれをなくすように)被牽引車両10の進行方向を変更することが可能である。
【0078】
なお、
図4A~
図4C、
図5Aに示される実施形態では、牽引物400の進行方向からの被牽引車両10の進行方向のずれの方向および大きさを示す進行方向ずれ検出信号を出力する進行方向ずれ検出手段として進行方向ずれセンサ430が説明されたが、本発明はこれに限定されない。進行方向ずれ検出手段は、牽引物400の進行方向からの被牽引車両10の進行方向のずれの方向および大きさ検出することが可能である限りにおいて、任意の装置であり得る。
【0079】
図5Bは、被牽引車両10において実行される処理のフローの一例を示す。以下、
図5Bに示される各ステップを詳細に説明する。
【0080】
ステップS501’:運転者の操作を示す入力が受信される。この処理は、例えば、被牽引車両10の制御装置410のプロセッサ部412によって実行される。運転者の操作を示す入力は、例えば、1つ以上のパネルからのものであり、運転者の操作は、1つ以上のパネル上の運転者の足の踏み動作であり得る。あるいは、運転者の操作を示す入力は、例えば、第1の方向(例えば、被牽引車両10の進行方向)と、第1の方向と反対の第2の方向(例えば、被牽引車両10の進行方向と反対の方向)とに少なくとも倒すことが可能なレバーを有するレバー型スイッチからのものであり、運転者の操作は、第1の方向または第2の方向への運転者の手の押し引き動作であり得る。レバーは、第1の方向と第2の方向との間でレバーが移動するときに運転者がレバーをグリップする位置の高さが変化しないように、レバーのグリップ部がレバーの軸方向にスライド可能なように構成され得る。
【0081】
ステップS502’:ステップS501において受信された入力が示す運転者の操作に応じて被牽引車両10の一対の車輪の向きを制御するための制御信号が生成され、出力される。この処理は、例えば、被牽引車両10の制御装置410のプロセッサ部412によって実行される。生成された信号は、プロセッサ部412からステアリング装置420に送信され得る。
【0082】
ステップS503’:ステップS502’において生成された制御信号に応じて、被牽引車両10の一対の車輪の向きが変更される。この処理は、例えば、ステアリング装置420によって実行される。ステアリング装置420は、制御信号に応じて、運転者によって操作されたとおりに被牽引車両10の一対の車輪の向きを変更する。これにより、運転者は、牽引物400の進行方向が変更されると、手動で被牽引車両10の進行方向を変更することが可能である。
【0083】
5.一人乗り用馬車
従来から馬車は知られているが、いずれも高価である。従って、発明者は、低コストの一人乗り用馬車を提供することを見出した。
【0084】
【0085】
馬車600は、車体610と、一対の車輪620と、車体610と一対の車輪620とを連結する少なくとも1つの支持部材630と、馬車600を牽引する馬と車体610とを連結する連結部材640とを備える。
図6に示される実施形態では、馬車600は、4つの支持部材630(1つの車輪に対して2つのV字型の支持部材)を備える。車体610は、ユーザが座るための座面を備える。
【0086】
馬車600の車輪620の最下端から車体610の座面までの高さは、着座状態におけるユーザの目線がユーザの視界を確保することが可能な位置(例えば、馬の背の高さ以上の位置)に到達する大きさであり得る。また、馬車600の車幅(すなわち、一対の車輪620間の距離)は、馬車600が転倒しないように、馬車600の車高(すなわち、車体610+一対の車輪620+支持部材630の高さの合計)に対して十分に安定する大きさ(例えば、車体610の幅の約2~3倍の大きさ)であり得る。
【0087】
馬車600は、車椅子を改造し、車体610および一対の車輪620を再利用することによって、低コストで実現することが可能である。馬車600は、従来の車椅子と比較して、より高い車高(およびより高い座面)と、より大きい車幅(および車輪間距離)とを有する。また、連結部材640によって馬に負荷がかかる向きは、下向き(馬の背から脚に向かう向き)であるのが好ましい。負荷が上向きにかかる場合、馬は、落ち着かないからである。
【0088】
馬車600は、支持部材630上に緩衝装置(すなわち、サスペンション)を備えていてもよい。これにより、馬車600の走行時にユーザが地面から受ける衝撃を和らげることが可能である。馬車600は、馬と車体610とを緊急分離するための装置、および、緊急分離時に車体610が前のめりになってユーザが車体610から落下することを防止するための補助輪または補助脚をさらに備えていてもよい。
【0089】
なお、支持部材630の構成は、車体610を支持することが可能である限りにおいて、任意であり得る。例えば、支持部材630の構成は、頑丈な1つの直立した支持部材であってもよいし、V字型の2つの支持部材であってもよいし、三角錐形状を形成する3つの支持部材であってもよい。
【0090】
5.馬をクールダウンする装置
高温の日に馬が屋外で作業するとき、馬を酷使しないようにするために、馬の作業中であっても馬をクールダウンできるようにする必要がある。
【0091】
図7は、馬をクールダウンするための装置の構成の一例を示す。
【0092】
馬をクールダウンするための装置700は、冷媒を通す孔を有する第1の管状部材710と、冷媒を貯蓄するタンク720と、タンク720から管状部材710へ冷媒を送達するための第2の管状部材730とを備える。タンク720は、例えば、馬の馬鞍に取り付けられるように構成され、馬の馬鞍に取り付けられていてもよい。あるいは、馬が被牽引車両740を牽引している場合は、タンク720は、被牽引車両740内に配置されていてもよい。
【0093】
第1の管状部材710は、馬の発汗部(例えば、首、脇腹)に沿って配置することが可能なように構成されている。例えば、2本の第1の管状部材710が、馬の首の発汗部上の左右対称位置にそれぞれ配置されてもよい。例えば、第1の管状部材710は、ヘアピンやヘアゴムなどを使用して馬のたてがみに取り付けてもよい。なお、馬の上に配置される第1の管状部材710の数は、1以上の任意の整数であり得る。通常、馬具は馬の首には装着されないため、馬の首上に第1の管状部材710を配置することは、馬の使役に影響を及ぼさない。
【0094】
第1の管状部材710は、孔から冷媒を噴霧または噴射することが可能なように構成されている。冷媒は、例えば、液体の水であってもよいし、ミストであってもよいし、ドライミストであってもよい。馬の表面(具体的には、馬の発汗部の表面)上に冷媒を直接噴霧または噴射することによって、馬が冷却される。また、馬の発汗部を冷却することによってより効率的に馬を冷却することが可能である。また、馬から冷媒が垂れ流されることになっても問題ない。さらに、水を噴霧または滴下して発汗の代替となし、発汗による疲労・消耗を低減しながら、馬の体温上昇を抑制することが可能である。
【0095】
装置700は、送風機(図示せず)をさらに備え、送風機から馬に向かって送風することによって馬の体温上昇をさらに抑制するようにしてもよい。
【0096】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、馬に関連する装置および車両、特に、馬によって牽引される被牽引車両に搭載されるアシスト装置および被牽引車両等を提供するものとして有用である。
【符号の説明】
【0098】
10 被牽引車両
100 アシスト装置
110 制御装置
120 駆動装置
130 センサ装置
400 牽引物
420 ステアリング装置
430 センサ装置
20 基準部材
30 連結部材
600 一人乗り用馬車
610 車体
620 一対の車輪
630 支持部材
640 連結部材
700 装置
710 管状部材
720 タンク
730 管状部材