(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】適応型垂直離着陸推進システム
(51)【国際特許分類】
B64D 33/04 20060101AFI20240925BHJP
B64C 29/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B64D33/04
B64C29/00 A
(21)【出願番号】P 2021524478
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(86)【国際出願番号】 US2019060786
(87)【国際公開番号】W WO2020097608
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-28
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518073310
【氏名又は名称】ジェトプテラ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】エバレット、アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】スモールウッド、テイラー
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101143622(CN,A)
【文献】特開2017-081544(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0368601(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0240275(US,A1)
【文献】特表2018-532075(JP,A)
【文献】米国特許第06547180(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 33/04
B64C 29/00
B64D 27/24
B64D 27/30
F02C 3/32
F02K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体を有する航空機用の推進システムであって、
吸気ポート及び出力ポートを有するプレナムと、
ファンに動力を与えるように構成されたモータに結合されたファンと、ここで、前記動力を与えられるファンは、前記吸気ポートに入る周囲空気を圧縮するように構成される、 1つ又は複数の弁を介して前記プレナムに流体的に結合された第1及び第2のエジェクタと、前記第1のエジェクタは前記第2のエジェクタから前記プレナムの反対側に配置され、
前記出力ポート内に配置されたノズルと、ここで、前記ノズルは、一組の
ノズルベーンを備える、
を備え、
前記システムは、ノズルベーンが閉じており、前記圧縮された周囲空気が前記1つ又は複数の弁だけを通って前記プレナムから前記第1及び第2のエジェクタに出る、第1の構成で動作し、
前記システムは、前記1つ又は複数の弁が閉じており、前記ノズルベーンが開いており、前記圧縮された周囲空気が前記出力ポートだけを通って前記プレナムから出る、前記第1及び第2のエジェクタが前記胴体に埋め込まれた、第2の構成で動作し、
前記システムは、前記ノズルベーンが部分的に閉じており、前記圧縮された周囲空気が前記1つ又は複数の弁を部分的に通って前記プレナムから前記第1及び第2のエジェクタに出る、第3の構成で動作する、
システム。
【請求項2】
前記エジェクタは、前記プレナムに対して少なくとも90度の角度回転可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1及び第2のエジェクタは、
凸面と、
前記凸面に結合された拡散構造と、
前記凸面に結合され、ビークルによって生成された一次流体を前記凸面に導入するように構成された少なくとも1つの導管と、
前記凸面に結合され、前記ビークルにアクセス可能な二次流体を前記拡散構造に導入するように構成された吸気構造と、ここにおいて、前記拡散構造は、前記導入された一次流体及び二次流体のために前記システムからの出口を提供するように構成された終端部を備える、
を含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【著作権表示】
【0001】
[0001]本開示は、米国及び国際著作権法の下で保護されている。(c) 2019 Jetoptera. All rights reserved.((c)は著作権マークを示す)。本特許文書の開示の一部には、著作権保護の対象となる資料が含まれている。著作権所有者は、特許商標庁の特許ファイル又は記録に記載されているような特許文書又は特許開示のいずれかによる完全な複写に異議を唱えないが、それ以外についてはあらゆる著作権を留保する。
【優先権主張】
【0002】
[0002]本願は、2018年11月9日に出願された米国仮出願第62/758,441号、2019年3月12日に出願された米国仮出願第62/817,448号、及び2019年4月26日に出願された米国仮出願第62/839,541号に対する優先権を主張するものであり、これらの開示全体は、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
[0003]垂直離着陸(VTOL)航空機を設計する上での主な課題の1つは、VTOL及びホバリングの両方の段階並びに巡航状態で効率的となるように推進システムのサイズを決定することである。最大積載量及び燃料リザーブを最大にするためには総重量のうち推進システムが占める割合を低く保つ必要があるため、離陸時(推力だけによるリフトモード(lift-by-thrust-only mode))又はホバリング時に、固定翼(wing-borne)状態及び巡航状態と比較して、およそ4~6倍大きい推力を生み出すシステムをいかに採用するかが課題である。最初のケースでは、推力が航空機の重量と釣り合っており、はるかに大きいエンジン及び動力又は推力が必要とされるが、巡航状態では、航空機の翼が重量と釣り合うため、抗力と釣り合うようにエンジンのサイズをはるかに小さくする必要がある。
【0004】
[0004]伝統的に、VTOLは、別個のシステム(重量は妥協するが推進力を分離するリフト/クルーズ)又はヘリコプターのような純粋な回転翼航空機(固定翼の能力を妥協する)のいずれかで達成された。VTOL能力を採用する最も成功した航空機は、垂直段階と固定翼段階の両方に同じシステムを使用する。例としては、ターボファンジェットを方向付ける(しかし、最終的には固定翼段階における任務のためにエンジンを大型化することになる)Harrier Hawkerのような垂直離着陸ジェット機や、傾斜能力を有するターボプロップを利用するV22オスプレィがある。ティルトロータ手法は、振動、ボルテックスリング状態(VRS)、及び大きなフットプリント、並びに複雑なアーキテクチャなどのリスクがないわけではない。
【0005】
[0005]より小型のシステム(すなわち、2~4人乗りの旅客機)の場合、特に、成長しているアーバンエアモビリティ市場では、大型のリフト+クルーズ型の飛行機が支配的な設計である。特に、電動VTOLの場合、効率上の理由から、8~16個の大きなロータ間の可動部及び非常に大きなフットプリントがもたらされる。4~6人の乗客を運ぶための翼幅は、小型のリージョナル機の翼幅と同じ大きさであり得る。今日の低エネルギー密度のバッテリによる航空機の重量はまた、大型の翼及びマルチロータによる複雑な動作を強要し、リスクを増大させる。
【0006】
[0006]以下の図面を参照して本発明の好ましい及び代替的な実施形態を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】[0007]VTOL構成の実施形態を斜めに見た斜視図を示す。
【
図2】[0008]一実施形態による、VTOLへの移行のための空気ブレーキとして使用されるFPSシステム要素を有する巡航構成の斜視図である。
【
図3】[0009]一実施形態によるVTOL構成における可変ベーンの斜視図を示す。
【
図4】[0010]一実施形態による、空気ブレーキをかけるために拡張されたFPSシステム要素を有する完全な巡航構成における可変ベーンの斜視図を示す。
【
図5】[0011]一実施形態による、航空機がFPSシステム要素によってのみ加速する間の、VTOL構成から固定翼構成への中間移行及び45度のFPSシステム要素の斜視図を示す。
【
図6】[0012]一実施形態による巡航構成におけるシステム要素の斜視図を示す。
【
図7】[0013]前方飛行中に推力増強装置を隠すことができる翼一体型のFPSシステム要素を使用する本発明の代替的な実施形態を示す。
【
図8】前方飛行中に推力増強装置を隠すことができる翼一体型のFPSシステム要素を使用する本発明の代替的な実施形態を示す。
【
図9】[0014]本発明の実施形態のエジェクタの断面図であり、エジェクタの上半分と、内部流れの中の速度及び温度のプロファイルとを描いている。
【詳細な説明】
【0008】
[0015]本特許出願は、本発明の1つ又は複数の実施形態を説明することを意図している。「~しなければならない(must)」、「~するであろう(will)」などの絶対的な用語及び特定の量の使用は、そのような実施形態のうちの1つ又は複数に適用可能であると解釈されるべきであるが、必ずしも全てのそのような実施形態に適用可能であると解釈されるべきではないことを理解されたい。そのため、本発明の実施形態は、そのような絶対的な用語の文脈で説明される1つ又は複数の特徴又は機能性を省略するか、又はそれらの修正を含み得る。
【0009】
[0016]一実施形態による流体推進システム(FPS)は、ホバリングから巡航に移行するために回転部のないスラスタを傾斜させることができる代替手法を導入する。VTOL及びホバリング中に、加圧流体を供給源として使用して推力増強を得ることができる。1つ又は複数の実施形態は、前進方向の推力の増強を依然として得ながら、飛行の全ての段階(垂直段階及び固定翼段階)で使用されるシステムを含み得る。
【0010】
[0017]一実施形態は、ファン又は圧縮機のような、空気を含む流体の圧縮源を伴うリフト+クルーズソリューションと、垂直飛行(VTOL+ホバリング)での増強された推力から巡航における別個のターボファン構成に切り替える二重能力とを含む。そのような構成及び動作により、速度の制限がなくなり、VTOLビークルが非常に高速度で前進すること、より高い高度能力となること、燃料燃焼(燃料消費率)の大幅な低下により非常に効率的に動作することができる。
【0011】
[0018]より記述的には、ファン若しくは圧縮機又は同様の機械が機械的な仕事を受け取り、周囲空気を1.5~2.5の圧力比に圧縮する。この構成要素は、1つ又はいくつかの段を有し得、減速ギアを必要とせずに、好ましくはターボシャフトエンジンのフリータービンのようなガスタービン段によって駆動され得る。この要素は、重量及び可動部の削減により、より軽量で単純な構造を採用することができるため、随意に有利である。
【0012】
[0019]
図1を参照すると、シャフト11は、電気モータ又はターボシャフトのフリータービンから機械的な動力を受け取り、その動力をファン21に伝えて、空気を上述した圧力比まで圧縮する。空気は、ファン21の直ぐ下流にあるプレナム12へと圧送され、そこから、空気は、側部ポート13及び14に向けられるか、又は可変ベーン16を有するノズルを通って軸方向に下流に向けられ得る。当技術分野で知られている機構によってベーン16を完全に閉じること又は完全に開けることができる。例えば、1つのこのような機構は、典型的な圧縮機に採用されている可変ガイドベーンであり得る。別の機構は、ベーン16のハブを回転させてベーンを強制的に閉じる機械ねじであり得る。
図1及び
図3に見られるように閉じているとき、ファン21からの全ての流れが、プレナム12の側部ポート13及び14に、そして弁15を介して、プレナム12に流体的に接続されたFPSシステム要素17,18に強制的に流れる。
【0013】
[0020]一実施形態では、ファン21は、例えば25,000RPMで回転するターボシャフト型のガスタービンのフリータービンから、例えば1000kWの動力を受け取る。この値は、フルスピード時における、減速ギアの前の、典型的なターボプロップアーキテクチャのような機械の典型的な値である。そのような動力及び速度は、ファンの部分で80%の効率を仮定すると、例えば1.8気圧(圧力比1.8又は約180kPa)の圧縮空気流と、約15kg/sの流量とを生じさせることができる。
【0014】
[0021]ファン21自体は、チタン又は複合材料のような超軽量材料で製造され得、前者は、より高い効率のためにワイドコードの複合スイープファンブレードを使用し、ブリスクとして一体に製造される。低ノイズ特徴を有する設計が含まれる。
【0015】
[0022]15kg/秒で、全圧が180~200kPaであり、353ケルビンの空気温度を仮定すると、流れ22は分割され、航空機の機体内に埋め込まれたFPS要素17,18に送出される。FPS要素17,18は、例えば、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる2016年7月27日に出願された米国特許出願第15/221,389号及び2016年9月2日に出願された米国特許出願第15/256,178号においてエジェクタとしてより詳細に説明されており、これらは、それがなければ、単に大気圧に対する流れを、少なくとも2:1の比率に、最大で3:1の比率に加速及び拡大させることで生じた推力を増強することができる。この例では、エジェクタ増強によって達成される推力は、以下の式1で与えられる:
[0023]
【数1】
[0024]上記は、単純なノズルを採用した場合の5.65kNの推力とは対照的である。このケースでは、287J/kg-Kは、空気定数であり、1.4は、空気指数係数であり、353Kは、ファン21圧縮からの吐出温度であり、2は、増強比であり、15kg/sは、総質量流量である。
【0016】
[0025]FPS要素17,18の更なる最適化により、総推力は、ファン21に供給される1000kWの機械的入力動力の量と同じ量の場合、増強比2.5、すなわち14.122kNに達し得る。
【0017】
[0026]
図9は、エジェクタ200の上半分の断面を例示しており、その構造及び機能は、要素17,18の構造及び機能と同様又は同一である。プレナム211には、例えば、ビークルによって採用され得る燃焼ベースのエンジンから、周囲よりも高温の空気(すなわち、加圧された原動力となるガス流)が供給される。この加圧された原動力となるガス流は、矢印600によって示されており、一次ノズル203のような少なくとも1つの導管を介してエジェクタ200の内部に導入される。より具体的には、一次ノズル203は、原動力となる流体流600を、壁ジェットとして凸状のコアンダ面204上で直接、可変の所定の所望の速度まで加速するように構成される。追加的に、一次ノズル203は、調整可能なボリュームの流体流600を提供する。次に、この壁ジェットは、矢印1によって示される方向から非ゼロ速度でエジェクタ200に接近しているか又は静止している可能性がある、矢印1によって示される周囲空気のような二次流体を、吸気構造206を通して巻き込む働きをする。様々な実施形態では、ノズル203は、アレイ状に、並びに、湾曲した向き、螺旋状の向き、及び/又はジグザグの向きで配置され得る。
【0018】
[0027]流れ600と空気1との混合物は、エジェクタ200のスロートセクション225では完全に軸方向に移動していてもよい。拡散器210のような拡散構造での拡散により、混合及び平滑化プロセスが継続するため、エジェクタ200の軸方向における温度(800)及び速度(700)のプロファイルは、スロートセクション225に存在する高値及び低値をもはや有していないが、拡散器210の終端部100においてより均一になる。流れ600と空気1との混合物は、終端部100の出口面に接近するにつれて、温度及び速度のプロファイルがほぼ均一になる。特に、混合物は、翼又は制御面のようなエーロフォイルに向けられるのに十分に低い温度である。
【0019】
[0028]ベーン16が閉じられており、ファン21がこの動力を供給する場合、例えば1100~1400kgの重量の航空機を持ち上げることができるのに十分な推力をそのようなシステムから得ることができる。このタイプの航空機は、ポート13及び14を介してファン21から供給される推力を、旋回するFPS要素17,18を介して上方に向けることができ、旋回するFPS要素17,18はまた、旋回ジョイント23を介してそれらの主軸に対して回転することができる。FPS要素17,18の旋回又は方向付けは、まずは垂直離陸時に、更には小さい角度変化によってホバリング時に、最後にはFPS要素の旋回によって固定翼動作への移行時に、航空機の姿勢を変化させて、45度(
図5に示すように)から、最大で
図1に示す最初のVTOL位置に対して垂直な90度に推力を向けることができる。
【0020】
[0029]要素17,18への流れの通過も可能にする旋回ジョイント23の角度を徐々に変化させて、ホバリング状態から速度を上げるまで航空機の完璧なバランスを可能にし、例えば航空機の失速速度よりも10%大きい前進速度で航空機の翼の揚力を増加させることができる。例えば、VTOL航空機の一実施形態による航空機は、飛行方向に対して45度上方を向いているFPS17,18によって依然として重量の一部と釣り合いをとりつつ、並びに、翼が前方に飛行する航空機の重量の例えば50%を支持し始めるときに依然として前方方向に加速しつつ、固定点でホバリングしてから数十秒以内に時速50マイルの速度に達することができる。この時点では、航空機が依然として時速100マイルまで急速に加速している間に、FPS要素17,18は、完全な水平位置(最初のVTOL位置に対して垂直な90度又はそれ以上)に移動しており、抗力と推力との間の釣り合いは、単にFPSシステムを使用して達成される(すなわち、FPS要素に原動力となる流体を供給するために、全ての空気22がポート13及び14を介して送られる)。例えば、時速150マイルの前進空気速度に近づくと、ベーン16は開き始めて、空気流22がベーンを通過するようになるため、航空機をより速く前進させる。完全な固定翼運転への上記移行の間、FPSの増強比は、FPS要素17,18内に流入する空気によってかかるラム抗力の増大により低下する。
図2及び
図4に示すようにベーン16を完全に開いた状態に切り替え、弁15を閉じてポート13及び14への空気供給を遮断し、空気22の全体を、ベーン16を介してプレナム12から出させて加速流25を発生させ、ファン21のRPMによって調節可能な速度で、固定翼モードで、及び前方方向に航空機を推進させることによって、固定翼動作で得られる最終的な推力を増大させることができる。
【0021】
[0030]このように、実施形態は、シャフト11を介してファン21に機械的な仕事を供給するために同じパワープラントを使用することによって、別個の離陸パワープラントと巡航パワープラントとの間の不一致という問題を解決する。加えて、機械的な動力を提供する主ガスタービンへの燃料流量の低下は、ターボファン動作と同様にファン21を減速させる。移行の終わりに、かつ、完全な固定翼の高速飛行中に、FPS要素17,18への空気を遮断することによって、機械的な仕事の低減によるファンの減速は、燃料節約につながり、航空機が前進移動のために必要な推力が大幅に少なくなるため、高度、速度、及び操縦性においてはるかに広い飛行エンベロープを可能にするであろう。例えば、FPS要素17,18を使用したVTOLに必要な推力の30%は、ファン21を最大速度よりも低い速度で動作させながら、高速巡航のためのノズルベーン16を使用することによって供給され得る。これは、式2により1.0の増強比で計算された推力に調整することを意味する:
[0031]
【数2】
[0032]上記は、航空機が全固定翼モードにあるときである。そのような推力を達成する典型的な一般の航空航空機は、高高度及び時速400マイルを超える速度まで問題なく加速する。逆に、ベーン16を閉じ、ポート13及び14を通して空気を強制的に送って、FPS動作を開始(open)し、ほぼ水平で航空機の胴体に埋め込まれた位置からホバリング又は着陸のためのほぼ垂直な位置にFPS要素17,18の旋回運動を反転させることで、
図6に例示したような巡航からホバリングに移行するための移行が達成され得る。FPS要素17,18の回転により、それらは、翼が発生させる揚力を徐々に下げ、要素17,18が航空機の重量に対するバランスの大部分を提供するところまで航空機を減速させる空気ブレーキとしても使用され得る。航空機が十分に減速し、ホバリングモードでほぼ静止している時点で、ファン21(ここでは、ベーンシステム16が完全に閉じ、ポート13及び14が完全に開いた状態で動作する)の変調により、航空機が着陸するところまで推力を減少させることができる。
【0022】
[0033]このようなシステムは、以下の利点を有する:
[0034]垂直から巡航(固定翼)動作への円滑な移行を助けるための要素の旋回以外に、FPS要素17,18のための可動部はない。
[0035]複雑さが最小化される。
[0036]モード1.8圧力比を有するファン21からの空気の吐出温度が低いため、耐熱性プラスチック複合材のような低温で軽量の材料をFPS要素17,18に使用可能することができる。
[0037]メンテナンスの達成がはるかに容易になる。
[0038]ファンタイプの動作に切り替えることによって巡航中に高速化が達成され得る。
[0039]ガスタービンは、高エネルギー密度のバッテリと共に使用するための電気モータと置き換えることができる。
[0040]高効率システム及び同じサイズのターボシャフトタービンを使用することで、コスト及び重量を最小限に抑えることができる。
【0023】
[0041]航空機40の一実施形態は、高速飛行中の抗力を減少させるために、FPSシステムをエーロフォイルのような空力制御表面に組み込むことによって更に改良され得る。このような実施形態は、
図7及び
図8に例示される。
図7では、要素17,18のものと機能性が同様の推進要素30,31が、航空機の主翼41のプロファイルに一致するように水平構成に回転する。この構成では、ターボファンノズル16を通してのみ推力が発生し、弁15は、FPS要素30及び31を通る空気流を防ぐために閉じられている。
図8に例示するように、FPS推進要素30,31及び付随する表面32~37は、ホバリング及びVTOLのために上方に推力が発生するように、翼41に対して回転する。この構成では、可変ノズルベーン16は閉じられており、全ての空気流は、FPS要素30及び31を通るように向けられている。
【0024】
[0042]
図7は、この代替的な実施形態の幾何学的形状を例示する。圧縮空気は、主プレナム12から装置30,31内の壁ジェット(図示せず)に向けられる。これらの壁ジェットは、後面32,33を横切るスロット形状の周縁部を通って高いバイパス比で周囲空気を巻き込む。表面32及び33は、側壁34a、34b、35a、35bによって部分的に囲まれている。これらの側壁は、エーロフォイルの後縁36及び37に向かってテーパ状になっている。
【0025】
[0043]
図7において、表面32,33は、水平(飛行方向)に対して45度より浅い角度でより多くの揚力を発生(揚力増強)させる役割を果たす。このケースでは、対象の速度において、要素30及び31から出てくる流れを見る表面32,33の吸引側は、航空機40の速度と比較してより大きな局所速度を経験するであろう。このケースでは、ターボファンノズルジェット方法に切り替わる直前に、表面32,33の吸引側と加圧側との圧力差によって発生する追加の揚力は、当業界で知られているように、ベルヌーイによって決まっている条件によって、より大きな揚力を生み出すであろう。ビークルのVTOL、加速、及び上昇時の推進に要素30及び31を使用している状態から、ノズルベーン16を通して圧縮空気をガイドする状態に切り替える瞬間は、切り替えを行う弁15と航空機40の姿勢との良好な連携のもと、航空機が最も速く安全な速度で移動する最良の条件と一致すると予想される。高速でのノズルベーン16を通した膨張によるダイレクトジェットへの巻き込みを伴ってスラスタ(要素30及び31)への原動力となる空気/一次空気として圧縮空気を使用する状態に切り替えることは、要素30及び31が、航空機40を更に加速させるのに十分な正味の力をできる限り生み出すために、巻き込まれた空気によって過度に大きなラム抗力を発生させる点と一致するであろう。例えば、このシステムを採用するビークルは、時速150~200マイルの範囲の速度まで加速して定常状態飛行に達することができるが、ビークルが時速400マイルまで加速するためには、この切り替えが必要である。従って、ビークルは、要素30及び31がもはや採用されておらず、加速に十分な正味の力をもはや生み出さないため、速度の上昇及び燃料消費の増加を経験する恐れがある。この時点では、これらの要素による空気質量の巻き込み、ひいては推力の増強は、許容可能なレベルを下回る可能性があり、ノズルベーン16における膨張による圧縮空気流量の使用に切り替えることで更なる加速を可能にする。この時点で、スラスタ30,31は、動作中に存在する抗力及びラム抗力を低下させる流線形のプロファイルとアラインされることができる。この逆は、減速して、低速度レジームにおいて、より低い速度であるがより高い効率で経済的に飛行するのに有効である。このようなシステムは、VTOL能力を有する可能な限り最速の商業的又は軍事的応用をもたらす。
【0026】
[0044]スラスタ(流体)巻き込みモードからファンモードへの切り替えは、2つのレジーム間で最適化された熱効率及び推進効率をもたらす。約時速125マイル未満のレジームでは、巻き込みによりラム抗力が増加しても、周囲空気の巻き込みによる流体(推力増強)を使用して、高い熱効率及びより良好な推進効率が得られる。エントレインメント率は、例えば10を上回り得、圧縮空気と巻き込まれた空気との混合物に現れる速度は、105m/s(時速235マイル)に達し得る。速度と共に巻き込みが減少し、ラムが増加するため、時速125マイルを超えると、一次空気全体をダイレクトジェットとして使用するように切り替わる。このように、熱効率は異なる割合で増加し、全体的な高い総効率は、推進効率と熱効率との積として得られる。
【0027】
[0045]本発明の1つ又は複数の実施形態は、以下の特徴を含む:
[0046]垂直飛行から固定翼飛行に航空機の推力を伝達することができるVTOLに適した推進システムであって、ファン又は圧縮機と、完全に開閉することができる一組のベーンと連通し、上記ファン吐出空気をファンから二次推力増強システムに送るために完全に開閉することができる少なくとも1つの他の開口部を有するプレナムとから構成されている。
[0047]二次推力増強システムが1.25~3の増強を生み出すシステム。
[0048]ファンが上記プレナム内で1.1~3.0の圧力比を生み出すシステム。
[0049]追加の開口ポートを開閉することができるシステム。
[0050]二次推力システムが、完全に垂直な位置から完全に水平な位置に旋回することができ、加えて、簡素化された方法で胴体に格納又は埋め込まれることができるシステム。
[0051]回転すること、前進巡航速度まで空気を加速させること、又は完全に閉じて増強システムに供給することができる可動ベーンシステムを有するシステム。
[0052]ガスタービンをファンに入力される機械的な仕事として採用することができるシステムを使用する航空機。
[0053]電気モータをファンの駆動装置として採用することができるシステムを使用する航空機。
[0054]ハイブリッドシステムをファンの駆動装置として採用することができるシステムを使用する航空機。
[0055]ファンの空気が完全に単一の推進ノズルを通るように向けられている間、二次推力システムが旋回して抗力を最小にし、非アクティブになる複数のシステムを採用する航空機。
【0028】
[0056]前述のテキストは、多数の異なる実施形態の詳細な説明を記載しているが、保護の範囲が以下の特許請求の範囲の文言によって定義されることは理解されたい。詳細な説明は、例示的なものとしてのみ解釈されるべきであり、全ての可能な実施形態を説明することは、不可能でないとしても非実用的であるため、全ての可能な実施形態を説明するものではない。現在の技術又は本特許の出願日以降に開発される技術のいずれかを使用して、多数の代替的な実施形態が実装され得、これらは依然として特許請求の範囲内にある。
【0029】
[0057]従って、本特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書で説明及び例示された技法及び構造に対して多くの修正及び変形が行われ得る。従って、本明細書で説明された方法及び装置が例示的なものにすぎず、特許請求の範囲を限定するものではないことは理解されたい。
以下に本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 航空機用の推進システムであって、
吸気ポート及び出力ポートを有するプレナムと、
ファンに動力を与えるように構成されたモータに結合されたファンと、ここで、前記動力を与えられるファンは、前記吸気ポートに入る周囲空気を圧縮するように構成される、 1つ又は複数の弁を介して前記プレナムに流体的に結合された1つ又は複数のエジェクタと、
前記出力ポート内に配置されたノズルと、ここで、前記ノズルは、一組のベーンを備える、
を備え、
前記システムは、ノズルベーンが閉じており、前記圧縮された周囲空気が前記1つ又は複数の弁だけを通って前記プレナムから前記1つ又は複数のエジェクタに出る第1の構成で動作し、
前記システムは、前記1つ又は複数の弁が閉じており、前記ノズルベーンが開いており、前記圧縮された周囲空気が前記出力ポートだけを通って前記プレナムから出る第2の構成で動作する、
システム。
[2] 前記エジェクタは、前記プレナムに対して少なくとも90度の角度回転可能である、[1]に記載のシステム。
[3] 前記1つ又は複数のエジェクタは、
凸面と、
前記凸面に結合された拡散構造と、
前記凸面に結合され、ビークルによって生成された一次流体を前記凸面に導入するように構成された少なくとも1つの導管と、
前記凸面に結合され、前記ビークルにアクセス可能な二次流体を前記拡散構造に導入するように構成された吸気構造と、ここにおいて、前記拡散構造は、前記導入された一次流体及び二次流体のために前記システムからの出口を提供するように構成された終端部を備える、
を含む、[1]に記載のシステム。