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特許7560131化粧料に使用するためのペプチドおよび組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】化粧料に使用するためのペプチドおよび組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20240925BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240925BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20240925BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240925BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61K8/64
A61K38/08
A61P17/16
A61Q19/00
A61Q19/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021539869
(86)(22)【出願日】2020-01-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 EP2020050070
(87)【国際公開番号】W WO2020144109
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】19382011.5
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519271311
【氏名又は名称】リポトゥルー,エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】グラウ-カンピスタニー,アリアドナ
(72)【発明者】
【氏名】パストル,シルヴィア
(72)【発明者】
【氏名】カルラ,パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】エスクデロ,フアン カルロス
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-208607(JP,A)
【文献】特開2010-195733(JP,A)
【文献】特開2007-145795(JP,A)
【文献】特表2014-521685(JP,A)
【文献】CAS REGISTRY NO. 2251071-79-9,DATABASE REGISTRY, [online],2018年12月04日,[2023.10.16検索], Retrieved from: STN
【文献】CAS REGISTRY NO. 2053868-05-4,DATABASE REGISTRY, [online],2016年12月23日,[2023.10.16検索], Retrieved from: STN
【文献】CAS REGISTRY NO. 2053813-75-3,DATABASE REGISTRY, [online],2016年12月23日,[2023.10.16検索], Retrieved from: STN
【文献】CAS REGISTRY NO. 2053684-31-2,DATABASE REGISTRY, [online],2016年12月23日,[2023.10.16検索], Retrieved from: STN
【文献】CAS REGISTRY NO. 2042092-81-7,DATABASE REGISTRY, [online],2016年12月01日,[2023.10.16検索], Retrieved from: STN
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
A61K
A61Q
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)のペプチド、それらの化粧料として許容される塩:
-(X)-AA-AA-AA-AA-AA-(Y)-R (I)
上記化学式(I)のペプチドは、
-Leu-His-Lys-Val-Lys-Val-R(R-配列番号2-R);または
-Ala-Leu-His-Lys-Val-Lys-R(R-配列番号3-R)であり、
がR-CO-であり、Rが非置換のC-C24アルキルラジカルであり、
がNHである。
【請求項2】
化学式(I)のペプチドが以下のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド:
ミリストイル-Leu-His-Lys-Val-Lys-Val-NH(ミリストイル-配列番号2-NH);または
Ac-Ala-Leu-His-Lys-Val-Lys-NH(Ac-配列番号3-NH)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のペプチドを含む、化粧料組成物。
【請求項4】
皮膚の老化の兆候を予防および/または低減を必要とする対象において、皮膚の老化の兆候を予防および/または低減するための化粧料の製造における、請求項1もしくは2に記載のペプチドまたはその化粧料として許容される塩もしくはその混合物、あるいは、請求項3に記載の化粧料組成物の使用。
【請求項5】
皮膚の引き締めを必要とする対象における、皮膚の引き締めのための化粧料の製造における、請求項1もしくは2に記載のペプチドまたはその化粧料として許容される塩もしくはその混合物、あるいは、請求項3に記載の化粧料組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は化粧料の分野に関する。より正確には、本発明は、引き締め活性および老化防止活性を有するペプチドおよび組成物に関し、さらに、化粧料の分野におけるその方法および使用に関する。
【0002】
過去数十年間に、人々の平均余命は著しく増加した。さらに、個人の美観に関する人々の関心も高まっており、エージングに関連する徴候の出現を遅らせ、または最小限に抑えようとしている。
【0003】
皮膚はヒトにおいて最大の器官であり、その位置のために、身体界面において、内因性(慢性)老化および外因性老化を受け、後者は環境要因(例えば、UV照射、喫煙または汚染など)によって引き起こされる。この連続的な露出、および、明らかに老化は、皮膚の変化、およびその中の欠陥の出現(例えば、引き締まりの喪失、しわ、粗さおよび/またはたるみ)につながる。
【0004】
皮膚の主成分の1つは、細胞外マトリックス(以下、ECM)である。
【0005】
ECMは分泌タンパク質、主にコラーゲンおよび弾性繊維の複合混合物であり、これらは、引張強度を提供し、そしてプロテオグリカン、糖タンパク質(例えば、フィブロネクチン、ラミニンおよびテネイシン)および水を含む粘弾性ゲル中に包埋されることが広く知られている。
【0006】
前記ECMは、皮膚の物理的性質のいくつか、例えば、タージェンシー(turgency)、引き締まりおよび粘弾性の原因である。したがって、皮膚の老化の兆候およびその引き締まりの損失の大部分は、皮膚のECMの変化(構造もしくは内容物の損失またはその変化)によるものである。皮膚が老化するにつれて、皮膚の厚さならびに真皮および表皮の質の変化が観察される。ECM中に存在するグリコサミノグリカンの量および組成(中でも、例えばヒアルロン酸を見出した)は、水分含量に関連し、したがって皮膚のタージェンシー(turgency)に関連し、徐々に低くなる。この結果、皮膚は徐々に乾燥し、薄くなる。例えば、コラーゲンおよび弾性繊維のような他のECM成分は、崩壊し、分解される。この全体的な完全性の喪失は、皮膚の硬直と、弾性の減少とをもたらす(Farage M.A. and Miller K.W., Structural characteristics of the ageing skin: a review (2007) Cutaneous and ocular toxicology, 26, 343-357)。
【0007】
プロテオグリカンは、ECMの主要成分の1つである。全てのプロテオグリカンは、コアタンパク質と呼ばれるタンパク質部分と、コアタンパク質に共有結合している、グリコサミノグリカン(以下、GAG)と呼ばれる1つ以上の非分岐、長鎖、および負に荷電した多糖鎖とを特徴とする。GAG鎖に依存して、プロテオグリカンは、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(例えば、パールカン(perlecan))、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(例えば、アグレカン(aggrecan))、デルマタン硫酸プロテオグリカン(例えば、バーシカン(versican))およびケラタン硫酸プロテオグリカン(例えば、ルミカン(lumican))として分類される。
【0008】
前記プロテオグリカンの中で、ECMの維持および機能において中心的役割を有することが示されているものは、バーシカンである(Uniprot参照番号:P13611(CSPG2_HUMAN);配列番号1)。前記タンパク質は、大きなコンドロイチン硫酸プロテオグリカンであり、ヒトゲノムの染色体5q 12~14に局在する単一の遺伝子から転写され、90kb以上に及ぶ。この遺伝子は15個のエキソンを含む。バーシカンは、バーシカンのmRNAの選択的スプライシングから生じる少なくとも4つのバリアント(V0、V1、V2およびV3)を含む。
【0009】
全ての変異体は、グリコサミノグリカンヒアルロナン(例えば、ECM中に存在する)と相互作用するアミノ末端G1ドメインと、C型レクチン結合ドメイン、2つの上皮成長因子反復および補体調節領域を含む、G3ドメインと呼ばれるカルボキシル末端ドメインとを含む。4つの変異体の違いは、グリコサミノグリカン結合ドメインを含むコア領域に見いだすことができる。V0はαおよびβドメインを含み、V1はβドメイン、V2はαドメイン、V3は何も含まない。
【0010】
上記の構造を考えると、バーシカンは既に上述したように、ECMの重要な成分であることが示されている。バーシカンは、ヒアルロナン、フィブリリン微小繊維およびエラスチンに結合し、弾性線維をグランド物質(ground matter)に連結するので、構造的および生体力学的役割を有するが、細胞移動および細胞増殖などの複数の細胞事象に影響を及ぼす細胞生物学的役割も有する(Wight, T.N., Versican: a versatile extracellular matrix proteoglycan in cell biology (2002) Current Opinion in Cell Biology, 14: 617-623)。
【0011】
ECMの他の関連分子は、既に上述した通りである:
弾性繊維:弾性繊維の分解は、老化における主要な寄与因子であり、皮膚の弾性の損失、しわ、たるみ、および粗いきめを引き起こすことが広く知られている。弾性繊維の成分に関して、トロポエラスチンが成熟エラスチンの形成に必要である一方で、フィブリリン-1が成体組織におけるエラスチン堆積のための足場として作用する微小繊維の主要な構造成分であり、皮膚において重要な生体力学的および生化学的役割を有することに注目することが重要である(Langton A.K., Sherratt M.J., Griffiths C.E.M. and Watson R.E.B., A new wrinkle on old skin: the role of elastic fibres in skin ageing (2010) International Journal of Cosmetic Science, 32, 330-339)。
【0012】
ヒアルロン酸:ヒアルロン酸はECMの成分であり、その高い保水能力の結果として、皮膚の加湿、従って、そのタージェンシー(turgency)に関連することが示されている(Nemoto T., Kubota R., Murasawa Y. and Isogai Z., Viscoelastic properties of the human dermis and other connective tissues and its relevance to tissue aging and aging-related diseases (2012) Viscoelasticity - From Theory to Biological Applications, book edited by Juan de Vicente)。さらに、ヒアルロン酸と種々の結合タンパク質(プロテオグリカンなどのヒアルアドヘリンと、何らかの状態で)との相互作用により、ヒアルロン酸は、局所的にだけでなく、皮膚の充填材としても、皮膚の引き締まりおよび緊張に作用する主要な分子となっている(Weindl G., Schaller M., Schafer-Korting M., Korting H.C., Hyaluronic Acid in the Treatment and Prevention of Skin Diseases: Molecular, Biological, Pharmaceutical and Clinical Aspects (2004) Skin Pharmacol Physiol, 17, 207-213)。
【0013】
近年、皮膚の老化の徴候、例えば、引き締まりの喪失、皮膚のきめ、およびしわを改善するための有効成分の数は、かなり増加している。そのような有効成分の例は、レチノイド、ビタミンまたは植物抽出物である(Bradley E.J., Griffiths C.E.M., Sherratt M.J., Bell M. and Watson R.E.B., Over-the-counter anti-ageing topical agents and their ability to protect and repair photoaged skin (2015) Maturitas, 80, 265-272)。
【0014】
レチノイドの場合、注目に値するのは、ECMのいくつかの分子(例えば、コラーゲン、フィブロネクチンまたはラミニン;Varani J., Mitra R.S., Gibbs D., Phan S.H., Dixit V.M., Mitra R., Wang T., Siebert K.J., Nickoloff B.J., Voorhees J.J., All-Trans Retinoic Acid Stimulates Growth and Extracellular Matrix Production in Growth-Inhibited Cultured Human Skin Fibroblasts (1990) The Journal of Investigative Dermatology, 94, 717-723)の合成誘導のための「ゴールドスタンダード」であるレチノイン酸である。したがって、レチノイン酸は、コラーゲンおよびフィブロネクチンなどのECMのタンパク質の転写および合成をアップレギュレートし、マトリックスメタロプロテアーゼ(以下、MMP)の阻害をアップレギュレートすることにより、顔のしわの臨床的な表出を改善できるので、老化の徴候を治療する最も強力な化合物の1つと考えられている(Varani J., Mitra R.S., Gibbs D., Phan S.H., Dixit V.M., Mitra R., Wang T., Siebert K.J., Nickoloff B.J., Voorhees J.J., All-Trans Retinoic Acid Stimulates Growth and Extracellular Matrix Production in Growth-Inhibited Cultured Human Skin Fibroblasts (1990) The Journal of Investigative Dermatology, 94, 717-723)。しかし、レチノイン酸の使用にはいくつかの欠点があり、例えば、レチノイン酸は、皮膚刺激を容易に生じ得るので慎重に使用されなければならず、レチノイン酸と日光暴露とを組み合わせることは推奨されない。レチノイドを使用する場合の他の主要な懸念は、特に酸素および光の存在下での、それらの不安定性である(Sorg O., Antille C., Kaya G. and Saurat J-H., Retinoids in cosmeceuticals (2006) Dermatologic Therapy, 19, 289-296)。
【0015】
抗酸化剤もまた、皮膚中のフリーラジカルの濃度を減少させ、したがってコラーゲン分解を妨げるために使用される。前記酸化防止剤の例はアスコルビン酸(ビタミンCとしても知られる)である。アスコルビン酸は、その酸化防止効果に加えて、とりわけ、表皮分化を促進し、MMP1を阻害しながら、ECM(コラーゲンIおよびIIIならびにエラスチン)からのタンパク質の合成を誘導する。残念ながら、アスコルビン酸は極めて不安定であり、特に高温、好気性条件、高pHにおいて、および/または光に暴露された場合に酸化を受ける(Manela-Azulay M., Azulay V., Aguinaga F., Issa M.C., Vitamins and other Antioxidants (2017) Daily Routine in Cosmetic Dermatology, 1-13)。
【0016】
化学的に合成された化合物に加えて、広範囲の植物抽出物および植物由来化合物、例えば、レスベラトロール(抗酸化剤)を含むブドウ抽出物;ポリフェノールを含む緑茶;またはイソフラボンを含む大豆といったものが、複数の用途で市場に見出されている。しかしながら、これらの成分のin vivo効力および組成は、十分に科学的に検証されていない。
【0017】
ヒアルロン酸は、その粘弾性特性および水を保持するその能力のために、皮膚を保湿状態に保ち、弾性を維持し、粗さを改善することによってしわを治療するために化粧料産業においても使用されており、または皮膚の充填材としても使用されている。しかし、現在、ヒアルロン酸はいくつかの供給源、例えば鶏冠または細菌抽出物から得られ、そしてその結果、これらの産物は、不純物を含み得、そして徹底的に特性付けられる必要がある(Kogan G., Soltes L., Stern R. and Gemeiner P., Hyaluronic acid: a natural biopolymer with a broad range of biomedical and industrial applications (2007) Biotechnological Letters 29, 17-25)。
【0018】
一方で、ペプチドは、皮膚の老化の徴候を改善するために化粧料処方に組み込むこともできる。生体活性ペプチドは、体自身の分子を模倣し、コラーゲン合成などの処理に影響を及ぼすことができ、耐容性および安定性がはるかに良好であるという利点を有する。さらに、広範囲の活性、化学および適応をペプチドについて開発することができる(Zhang L. and Falla T.J., Cosmeceuticals and peptides (2009) Clinics in dermatology, 27, 485-494)。
【0019】
当分野における広範囲にわたる種々の化合物および/または抽出物にもかかわらず、新規な作用メカニズムと、皮膚の引き締まりに対する効果をもたらす、ECMに対する全体的な効果(例えば、前記マトリックスの1つ以上の成分に作用する)とを有し、皮膚の老化(年齢的な老化および/または環境的な老化)の徴候の予防および/または低減を可能にし、かつ皮膚の粘弾性および引き締まりを改善する、代替組成物が依然として必要とされている。
【0020】
本発明の発明者らは、広範かつ徹底的な研究の後、驚くべきことに、バーシカン(配列番号1)のN末端領域におけるシグナル伝達ペプチド配列に由来する6個のアミノ酸の小ペプチド、および前記ペプチドの誘導体または変異体を見出した。これらは、ECMの維持および生産に直接関連する活性を示す(以下に含まれる実施例において実証されるように)。したがって、本発明の前記ペプチドは、皮膚の老化の徴候の予防および/もしくは減少;ならびに/または皮膚の引き締めに有用である。
【0021】
本発明者らは、配列番号2および3を有するペプチド(シグナルペプチドが位置するバーシカンのN末端領域に属し、より正確には配列番号1の21~26番目および20~25番目にそれぞれ属する)が、エラスターゼ活性を阻害し、メタロプロテアーゼ1および3の産生を阻害し(これはECMの分解の阻害である);ならびにバーシカン、トロポエラスチン(エラスチンの分泌前駆体)、フィブリリン-1およびヒアルロン酸(ECMの主要構造成分の4つ)の合成を促進する、重要な活性を有することを実証した。さらに、前記ペプチドは、皮膚の引き締まりにおける質が改善されていることを示す。したがって、前記ペプチドは、安定化および老化防止効果を有する。
【0022】
したがって、前記ペプチドは、皮膚の粘弾性および引き締めの特性を改善するための化粧料に有用である。したがって、ECMの構造的完全性に関連する様々な局面で直接作用することによって、ECMの改変または欠損に関連する皮膚の老化の徴候を予防および/または低減するために有用である。
【0023】
バーシカン由来の上記ペプチド(これは、配列番号2および配列番号3のペプチドである)における保存的置換から生じるペプチドもまた、本発明の範囲内である。
【0024】
したがって、第1の実施形態において、本発明は、以下に含まれる実験結果から直接的に導き出すことができるので、皮膚の粘弾性および引き締めの特性を改善するのに有効なペプチドの群に関する。したがって、前記ペプチドは、皮膚の老化の徴候を予防および/または低減させるのに有用である。
【0025】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明のペプチドの1つまたはそれらの組み合わせを含む組成物に関する。
【0026】
追加の実施形態において、本発明は、本発明のペプチドまたは化粧料組成物の化粧料としての使用に関する。
本発明のさらなる実施形態は、皮膚の粘弾性および引き締めの特性を改善し、したがって、皮膚の老化の徴候を予防および/または低減するための、本発明のペプチドまたは組成物の化粧用途に関する。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、本発明のペプチドまたは組成物の使用を含むことを特徴とする、対象における皮膚の老化の兆候を予防および/または低減する方法に関する。
【0028】
最後の実施形態において、本発明は、対象における皮膚の粘弾性および引き締めの特性を改善するための方法に関し、それは、本発明のペプチドまたは組成物の使用を含むことを特徴とする。
【0029】
本明細書において用いられるとき、用語「非環状脂肪族基」およびその複数形は、現在の技術水準においてこの用語に与えられている一般的な意味を有している。したがって、これらの用語は、例えば、直鎖状または分岐状のアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基を表す(ただし、これらに限定されない)。
【0030】
本明細書において用いられるとき、用語「アルキル基」およびその複数形は、1~24個の炭素原子を有している、飽和した直鎖基または分岐基を表す。炭素原子の数は、好ましくは1~16個であり、より好ましくは1~14個であり、より一層好ましくは1~12個であり、より一層好ましくは1個、2個、3個、4個、5個または6個である。アルキル基は、単結合を介して分子の他の部分と結合している。アルキル基の例としては、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、i-プロピル、イソブチル、tert-ブチル、n-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、ラウリル、ヘキサデシル、オクタデシル、アミル、2-エチルヘキシル、2-メチルブチル、5-メチルヘキシル、および類似の基が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。アルキル基は、1つ以上の置換基によって、任意で置換されていてもよい。置換基の例としては、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオが挙げられる。
【0031】
本明細書において用いられるとき、用語「アルケニル基」およびその複数形は、2~24個この炭素原子を有している、直鎖基または分岐基を表す。炭素原子の数は、好ましくは2~16個であり、より好ましくは2~14個であり、より一層好ましくは2~12個であり、より一層好ましくは2個、3個、4個、5個または6個である。アルケニル基は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有しており、好ましくは1個、2個または3個の炭素-炭素二重結合を有している。アルケニル基は、共役していてもよいし、非共役であってもよい。アルケニル基は、単結合を介して分子の他の部分と結合している。アルケニル基の例としては、ビニル、オレイル、リノレイル、および類似の基が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。アルケニル基は、1つ以上の置換基によって、任意で置換されていてもよい。置換基の例としては、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオが挙げられる。
【0032】
本明細書において用いられるとき、用語「アルキニル基」およびその複数形は、2~24個の炭素原子を有している、直鎖基または分岐基を表す。炭素原子の数は、好ましくは2~16個であり、より好ましくは2~14個であり、より一層好ましくは2~12個であり、より一層好ましくは2個、3個、4個、5個または6個である。アルキニル基は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有しており、好ましくは1個、2個または3個の炭素-炭素三重結合を有している。アルキニル基は、共役していてもよいし、非共役であってもよい。アルキニル基は、単結合を介して分子の他の部分と結合している。アルキニル基の例としては、エチニル基、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、ペンチニル(1-ペンチニルなど)、および類似の基が挙げられる(ただし、これらには限定されない)。アルキニル基は、1つ以上の置換基によって、任意で置換されていてもよい。置換基の例としては、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオが挙げられる。
【0033】
本明細書において用いられるとき、用語「環状脂肪族基」およびその複数形は、現在の技術水準においてこの用語に与えられている一般的な意味を有している。したがって、これらの用語は、例えば、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはシクロアルキニル基を表すために用いられる(ただし、これらに限定されない)。
【0034】
本明細書において用いられるとき、用語「シクロアルキル」およびその複数形は、3~24個の炭素原子を有している、飽和した単環または多環の脂肪族基を表す。炭素原子の数は、好ましくは3~16個であり、より好ましくは3~14個であり、より一層好ましくは3~12個であり、より一層好ましくは3個、4個、5個または6個である。シクロアルキルは、単結合を介して分子の他の部分に結合している。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、オクタヒドロインデン、デカヒドロナフタレン、ドデカヒドロ-フェナレン、アダマンチル、および類似の基が挙げられる(ただし、これらに限定されない)。シクロアルキルは、1つ以上の基によって、任意で置換されていてもよい。このような基の例としては、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどが挙げられる。
【0035】
本明細書において用いられるとき、用語「シクロアルケニル」およびその複数形は、5~24個の炭素原子を有している、非芳香族性の単環または多環の脂肪族基を表す。炭素原子の数は、好ましくは5~16個であり、より好ましくは5~14個であり、より一層好ましくは5~12個であり、より一層好ましくは5個または6個である。シクロアルケニルは、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有しており、好ましくは1個、2個または3個の炭素-炭素二重結合を有している。シクロアルケニルは、共役していてもよいし、非共役であってもよい。シクロアルケニルは、単結合を介して分子の他の部分に結合している。シクロアルケニルの例としては、シクロペント-1-エン-1-イル基、および類似の基が挙げられる(ただし、これらに限定されない)。シクロアルケニルは、1つ以上の基によって、任意で置換されていてもよい。このような基の例としては、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどが挙げられる。
【0036】
本明細書において用いられるとき、用語「シクロアルキニル」およびその複数形は、8~24個の炭素原子を有している、非芳香族性の単環または多環の脂肪族基を表す。炭素原子の数は、好ましくは8~16個であり、より好ましくは8~14個であり、より一層好ましくは8~12個であり、より一層好ましくは8個または9個である。シクロアルキニルは、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有しており、好ましくは1個、2個または3個の炭素-炭素三重結合を有している。シクロアルキニルは、共役していてもよいし、非共役であってもよい。シクロアルキニルは、単結合を介して分子の他の部分に結合している。シクロアルキニルの例としては、シクロオクト-2-イン-1-イル基、および類似の基が挙げられる(ただし、これらに限定されない)。シクロアルキニル基は、1つ以上の基によって、任意で置換されていてもよい。このような基の例としては、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどが挙げられる。
【0037】
本明細書において用いられるとき、用語「アリール基」およびその複数形は、6~30個の炭素原子を有している、芳香族基を表す。炭素原子の数は、好ましくは6~18個であり、より好ましくは6~10個であり、より一層好ましくは6個または10個である。アリール基は、1個、2個、3個または4個の芳香環を有しており、当該芳香環は炭素-炭素結合によって結合されているか、または縮合している。アリール基は、単結合を介して分子の他の部分に結合している。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ジフェニル、インデニル、フェナントリルまたはアントラニルが挙げられる(ただし、これらに限定されない)。アリール基は、1つ以上の置換基によって、任意で置換されていてもよい。このような置換基の例としては、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオが挙げられる。
【0038】
本明細書において用いられるとき、用語「アラルキル基」およびその複数形は、7~24個の炭素原子を有している、芳香族基で置換されたアルキル基を表す。アラルキル基の例としては、-(CH)1-6-フェニル、-(CH)1-6-(1-ナフチル)、-(CH)1-6-(2-ナフチル)、-(CH)1-6-CH(フェニル)、または類似の基が挙げられる(ただし、これらに限定されない)。アラルキル基は、1つ以上の置換基によって任意で置換されていてもよい。このような置換基の例としては、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオが挙げられる。
【0039】
本明細書において用いられるとき、用語「複素環基」およびその複数形は、3~10員の複素環または炭化水素環を表す。このとき、1個以上の環原子は炭素とは異なる元素であり、好ましくは1個、2個または3個の環原子は炭素とは異なる元素である(窒素、酸素、硫黄など)。複素環基は、飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。本発明の目的のため、複素環は、環系、単環系、二環系または三環系であってよく、これらは縮合環系を含んでいてもよい。複素環ラジカルにおいて、窒素、炭素または硫黄原子は、任意で酸化されていてもよい。窒素原子は、任意で四級化していてもよい。複素環ラジカルは、部分的に飽和していてもよいし、完全に飽和していてもよいし、芳香物であってもよい。より好ましくは、用語「複素環」は、5員環または6員環に関する。複素環基は、1つ以上の置換基によって、任意で置換されていてもよい。このような置換基の例としては、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオが挙げられる。
【0040】
本明細書において用いられるとき、用語「ヘテロアリールアルキル基」およびその複数形は、置換または非置換の芳香族複素環基で置換されたアルキル基を表す。上記のアルキル基は、1~6個の炭素原子を有している。上記の芳香族複素環基は、2~24個の炭素原子と、1~3個の炭素ではない原子を有している。ヘテロアリールアルキル基の例としては、-(CH)1-6-イミダゾリル、-(CH)1-6-トリアゾリル、-(CH)1-6-チエニル、-(CH)1-6-フリル、-(CH)1-6-ピロリジニル、および類似の基が挙げられる(ただし、これらに限定されない)。ヘテロアリールアルキル基は、1つ以上の置換基によって任意で置換されていてもよい。このような置換基の例としては、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオが挙げられる。
【0041】
本明細書において用いられるとき、用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す。また、これらのアニオンは、ハロゲン化物と呼ぶ。
【0042】
本明細書において用いられるとき、用語「誘導体」およびその複数形は、化粧料として許容される化合物と、化粧料として許容できない誘導体との両方を表す。前者は、化粧料の調製に使用できる所定の化合物の誘導体である。後者が「誘導体」に含まれるのは、化粧料として許容できる誘導体の調製に有用である場合があるためである。
【0043】
本明細書において用いられるとき、用語「塩」およびその複数形は、現在の技術水準において公知である任意の種類の塩を表す。このような塩の例としては、ハロゲン化物塩、ヒドロキシ酸塩(オキシ酸塩、酸性塩、塩基性塩および複塩など)、ヒドロキソ塩、混合塩、オキシ塩または他の水和塩が挙げられる。この用語には、化粧料として許容される塩と、化粧料として許容できない塩の両方が含まれる。後者は、化粧料として許容される塩の調製に有用である場合があるためである。
【0044】
本明細書において用いられるとき、用語「異性体」およびその複数形は、光学異性体、エナンチオマー、立体異性体またはジアステレオ異性体を表す。個々のエナンチオマーまたはジアステレオ異性体、ならびにそれらの混合物は、現在の技術水準で知られている従来技術によって分離できる。
【0045】
本明細書において用いられるとき、用語「溶媒和物」およびその複数形は、現在の技術水準で公知である任意の溶媒和物を表す(極性、無極性または両親媒性の溶媒和物など)。溶媒和物には、化粧料として許容できる任意の溶媒和物が含まれる。化粧料として許容できる溶媒和物を所定の対象に対して(直接的または間接的に)投与または適用すると、所定の化合物(本発明のペプチド)が提供される。好ましくは、溶媒和物は、水和物、アルコールとの溶媒和物(メタノール、エタノール、プロパノールまたはイソプロパノールなどとの溶媒和物)、エステルとの溶媒和物(酢酸エチルなどとの溶媒和物)、エーテルとの溶媒和物(メチルエーテル、エチルエーテルまたはTHF(テトラヒドロフラン)などとの溶媒和物)、またはDMF(ジメチルホルムアミド)との溶媒和物である。より好ましくは、溶媒和物は、水和物またはアルコールとの溶媒和物(エタノールなどとの溶媒和物)である。
【0046】
さらに、本明細書において用いられるとき、用語「アミノ酸」およびその複数形には、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸と、コードされないアミノ酸とが含まれる(当該アミノ酸が天然であるか否かにかかわらず。また、当該アミノ酸がD-アミノ酸であるかL-アミノ酸であるかにかかわらず)。コードされないアミノ酸の例としては、シトルリン、オルニチン、サルコシン、デスモシン、ノルバリン、4-アミノ酪酸、2-アミノ酪酸、2-アミノイソ酪酸、6-アミノヘキサン酸、1-ナフチルアラニン、2-ナフチルアラニン、2-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、4-クロロフェニルアラニン、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノ酪酸、シクロセリン、カルニチン、システイン、ペニシラミン、ピログルタミン酸、チエニルアラニン、ヒドロキシプロリン、アロイソロイシン、アロトレオニン、イソニペコチン酸、イソセリン、フェニルグリシン、スタチン、β-アラニン、ノルロイシン、N-メチルアミノ酸、α-アミノ酸およびβ-アミノ酸、ならびに、それらの誘導体が挙げられる(ただし、これらに限定されない)。それでもなお、さらなる非天然アミノ酸が、現在の技術水準において公知である(例えば、"Unusual amino acids in peptide synthesis" by D. C. Roberts and F. Vellaccio, The Peptides, Vol. 5 (1983), Chapter VI, Gross E. and Meienhofer J., Eds., Academic Press, New York, USAを参照)。
【0047】
ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質に関する「同一性のパーセンテージ(percentage of identity)」は、本明細書において用いられるとき、当技術分野において一般に帰する意味を持つ。したがって、これらの配列の最適アラインメント後に比較される2つのアミノ酸配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージに関連し、ここで、前記パーセンテージは単に統計的であり、2つのアミノ酸配列間の差異は、配列全体にわたってランダムに分布する。「最適アラインメント」は、より大きな同一性のパーセンテージを生じるアミノ酸配列のアラインメントとして理解される。同一性のパーセンテージは、2つの比較された配列においてアミノ酸が同一である同一位置の数を決定し、同一位置の数を比較された位置の数で割り、そして2つの配列間の同一性のパーセンテージを得るために、100を得られた結果に掛けることによって計算される。2つのアミノ酸配列間の配列比較は、手動で、またはBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)アルゴリズムなどの当技術分野で公知のコンピュータプログラムの手段によって行うことができる。
【0048】
[発明を実施するための形態]
上記のように、第1の態様において、本発明は、化学式(I)のペプチド、それらの化粧料として許容される異性体、塩、溶媒和物および/またはそれらの誘導体、ならびにそれらの混合物:
-(X)-AA-AA-AA-AA-AA-(Y)-R
(I)
式中、
XはAlaであり;
AAはLeuであり;
AAはHisであり;
AAはLysであり;
AAはValであり;
AAはLysであり;
YはValであり;
nおよびmは、互いに独立して、0および1から選択され;
はH、置換もしくは非置換の非環状脂肪族、置換もしくは非置換のアリシクリル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルおよびR-CO-から選択され、
は置換もしくは非置換のC-C24アルキルラジカル、置換もしくは非置換のC-C24アルケニル、置換もしくは非置換のC-C24アルキニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルケニル、置換もしくは非置換のC-C24シクロアルキニル、置換もしくは非置換のC-C30アリール、置換もしくは非置換のC-C24アラルキル、置換もしくは非置換の3~10員のヘテロシクリル環、ならびに2~24の炭素原子、1~3の炭素以外の原子、および1~6の炭素原子のアルキル鎖の、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキルによって形成される群から選択され、
はH、-NR-、-ORおよび-SR-から選択され、
およびRは独立して、H、置換または非置換の非環状脂肪族基、置換または非置換のアリシクリル、置換または非置換のヘテロシクリル、置換または非置換のヘテロアリールアルキル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のアラルキルから選択される。
【0049】
本発明のペプチドにおいて使用または存在するアミノ酸は、L-アミノ酸、D-アミノ酸またはそれらの組み合わせであることが意図される。好ましい実施形態において、本発明のペプチドにおいて使用または存在するアミノ酸は、L-アミノ酸である。
【0050】
好ましくは、上記の異性体は立体異性体である。前記立体異性体は、エナンチオマーまたはジアステレオ異性体であることが意図される。したがって、本発明の好ましい実施形態において、ペプチドは、ラセミ混合物、ジアステレオマー混合物、純粋なエナンチオマーまたは純粋なジアステレオ異性体である。
【0051】
本発明の範囲内には、本発明の化学式(I)のペプチドに関して保存的置換を有するペプチドも含まれる。したがって、本発明の範囲内には、本発明の化学式(I)のペプチドと実質的に相同であり、本明細書に開示される本発明の化学式(I)のペプチドと少なくとも75%、好ましくは80%、好ましくは85%、好ましくは90%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは99%の同一性のパーセンテージを有し、本発明のペプチドについて本明細書に開示される1つ以上の活性および効果、好ましくは本発明のペプチドについて本明細書に開示されるすべての活性および効果を示すペプチドがある。
【0052】
好ましい実施形態ではmは1であり、好ましくはnが0である。
【0053】
別の好ましい実施形態ではnは1であり、好ましくはmが0である。
【0054】
好ましくはRがHまたはR-CO-から選択され、ここで、Rは置換もしくは非置換C-C24アルキルラジカル、置換もしくは非置換C-C24アルケニル、置換もしくは非置換C-C24アルキニル、置換もしくは非置換C-C24シクロアルキル、置換もしくは非置換C-C24シクロアルケニル、置換もしくは非置換C-C24シクロアルキニル、置換もしくは非置換C-C30アリール、置換もしくは非置換C-C24アラルキル、置換もしくは非置換の3~10員ヘテロシクリル環、ならびに置換もしくは非置換の2~24の炭素原子、1~3の炭素原子以外の原子、および1~6の炭素原子のアルキル鎖のヘテロアリールアルキルによって形成される群から選択される。より好ましくは、RがH、アセチル(以下、Ac)、tert-ブタノイル、ヘキサノイル、2-メチルヘキサノイル、シクロヘキサンカルボキシル、オクタノイル、デカノイル、ラウロイルミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、オレオイルおよびリノレオイルから選択される。さらにより好ましくは、RはH、Ac、ラウロイル、ミリストイルまたはパルミトイルである。さらにより好ましい実施形態において、Rは、Acまたはミリストイルである。
【0055】
また、好ましくは、RはHまたはNH、より好ましくはNHである。
【0056】
したがって、最も好ましい実施形態では、RはAcまたはミリストイルであり、RはHまたはNH、より好ましくはNHである。
【0057】
好ましい実施形態において、化学式(I)のペプチドは以下である:
-Leu-His-Lys-Val-Lys-Val-R(R-配列番号2-R);または
-Ala-Leu-His-Lys-Val-Lys-R(R-配列番号3-R)。
【0058】
より好ましくは、化学式(I)のペプチドは以下である:
ミリストイル-Leu-His-Lys-Val-Lys-Val-NH(ミリストイル-配列番号2-NH);または
Ac-Ala-Leu-His-Lys-Val-Lys-NH(Ac-配列番号3-NH)。
【0059】
最も好ましい実施形態において、化学式(I)のペプチドは以下である:
-Ala-Leu-His-Lys-Val-Lys-R(R-配列番号3-R)、さらに好ましくはAc-Ala-Leu-His-Lys-Val-Lys-NH(Ac-配列番号3-NH)。
【0060】
別の最も好ましい実施形態において、化学式(I)のペプチドは以下である:
-Leu-His-Lys-Val-Lys-Val-R(R-配列番号2-R)、さらに好ましくはミリストイル-Leu-His-Lys-Val-Lys-Val-NH(ミリストイル-配列番号2-NH)。
【0061】
すでに上述したものによれば、ペプチドR-配列番号2-RまたはR-配列番号3-Rに関して保存的置換を有するペプチドも本発明の範囲内に含まれる。したがって、本発明の範囲内には、R-配列番号2-RおよびR-配列番号3-Rと実質的に相同であり、少なくとも75%、好ましくは80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%およびさらに好ましくは99%のR-配列番号2-RまたはR-配列番号3-Rとの同一性を有し、本発明のペプチドに関して本明細書に記載される1つ以上の活性、より好ましくは本発明のペプチドに関して本明細書に記載される全ての活性を保持するペプチドが含まれる。RおよびRは上述および上記で開示の通りである。
【0062】
本発明のペプチドは、従来技術において公知の方法のいずれかに従って、例えば、化学合成、生体発酵または遺伝子導入生産によって生産または合成することができる。より好ましくは、本ペプチドは化学合成の手段によって産生される。
【0063】
本発明のペプチドの活性は、エラスターゼ活性の阻害とメタロプロテアーゼ1および3の生産の阻害とであり;ならびにバーシカン、トロポエラスチン、フィブリリン-1およびヒアルロン酸の合成の調節は、既に上述したように、前記ペプチド(およびその由来ペプチド)およびそれらを含む組成物が対象の皮膚の粘弾性および引き締めの特性を改善することを目的とする化粧用製剤として、または化粧用製剤において使用するのに適していることを実証する。したがって、それらは皮膚の老化の徴候(例えば、しわ、粗さおよび/またはたるみ)を予防および/または低減するのに有用であることも実証する。
【0064】
前記ペプチドの局所適用は、真皮の粘弾性および引き締まりを改善するが、これは以下に含まれる実施例に直接由来し得るからである:
皮膚のこの特徴に関与する最も関連のある分子であるバーシカンの合成には、明らかな増加がある。
【0065】
フィブリリン-1およびトロポエラスチンの増加も観察することができるので、弾性繊維の分布も改善される。さらに、エラスターゼ活性は、本発明のペプチドによって阻害されることが示される。上述したように、弾性繊維の分解が老化の主要な原因であり、皮膚の弾性の損失、しわ、たるみ、および粗いきめを引き起こすことが広く知られている。したがって、弾性繊維の重要成分の合成の増加およびそれらの分解の抑制は、上述の老化の兆候の改善を提供する。
【0066】
ヒアルロン酸の合成を増加させ、皮膚の加湿、引き締め、および緊張を改善する。
【0067】
メタロプロテアーゼ1および3の生産の低下(それらの発現のダウンレギュレーション)は、ECMの分解に関与する分子の生産の低下である。
【0068】
さらに、以下に含まれる実施例に直接由来することができるように、本発明のペプチド(およびそれらに由来するペプチド)およびそれらを含む組成物は、皮膚の引き締まりの質の改善(例えば、外部刺激または攻撃に対する皮膚の回復を改善することによって)、好ましくは顔面皮膚の引き締まりの質の改善を提供する。
【0069】
従って、本発明のペプチドは、最新技術に存在する上記の技術的課題を解決する。
【0070】
第2の態様において、本発明は、本明細書中に開示されるように、本発明のペプチドを含む組成物に関する。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、組成物は、年齢的および/または環境的な老化を含む皮膚の老化の徴候の予防および/または低減を提供する化粧料組成物である。また、本発明の化粧料組成物は、上記の本発明のペプチドの特徴により、皮膚の粘弾性および引き締まりを改善させる。
【0072】
本発明の化粧料組成物は、本発明の1つのペプチド、または本発明のペプチドの組み合わせもしくは混合物を含むことが意図される。
【0073】
一実施形態において、上記に開示される化粧料組成物は、0.1%~0.0001%(質量/体積;これはmg/mlである)の本発明のペプチドまたは本発明のペプチドの組み合わせを含む。より好ましくは、前記組成物が0.05%~0.001%(m/v)の本発明のペプチドまたは本発明のペプチドの組み合わせを含む。
【0074】
本発明の化粧料組成物はまた、追加の化粧料成分を含むことが意図される。前記追加の化粧料成分は例えば、安定剤、可溶化剤、ビタミン、着色剤および香料などのアジュバント;担体;および/または他の化粧料有効成分として、当技術分野で通常使用されるものを含む。
【0075】
前記追加の化粧料成分は、組成物の他の成分、特に本発明の組成物に含まれる本発明のペプチドと物理的および化学的に適合しなければならない。同様に、前記追加の化粧料成分の性質は、許容できないほどに本発明の化合物の利点を変えてはならない。前記追加の化粧料成分は例えば、植物抽出物などの合成もしくは天然起源のものであってもよく、または生物発酵プロセスに由来するものであってもよい(例えば、CTFA Cosmetic Ingredient Handbook, Eleventh Edition (2006)参照)。
【0076】
上述の追加の化粧料成分は、皮膚および/または髪をケアするおよび/または清潔にする組成物において一般に使用される成分を含むことが意図される。例えば、メラニン合成の阻害剤、白化または脱色剤、老化防止剤、NO合成阻害剤、抗酸化剤、抗大気汚染および/またはフリーラジカル捕捉剤、抗糖化剤、乳化剤、軟化剤、有機溶剤、液体噴射剤、皮膚コンディショナー(例えば、湿潤剤)、水分保持物、アルファヒドロキシ酸、保湿剤、ビタミン、顔料または着色剤、染料、ゲル化ポリマー、増粘剤、界面活性剤、柔軟剤、他のしわ防止剤、眼の下の袋を低減または排除することができる薬剤、剥脱剤、抗菌剤、抗真菌剤、殺菌剤、真皮または表皮高分子合成および/またはそれらの分解を防止または阻害することができる薬剤(例えば、コラーゲン合成を刺激する薬剤)、エラスチン合成を刺激する薬剤、ラミニン合成を刺激する薬剤、コラーゲン分解を阻害する薬剤、エラスチン分解を阻害する薬剤、線維芽細胞を刺激する薬剤、ケラチノサイト増殖を刺激する薬剤、ケラチノサイト分化を刺激する薬剤、脂質合成および角質層の組成物(セラミド、脂肪酸、など)の合成を刺激する薬剤)、皮膚緩和剤(dermorelaxing agent)、皮膚グリカン合成促進剤、DNA修復剤、DNA保護剤、プロテアソーム活性促進剤、抗掻痒剤、敏感性皮膚治療剤、再確認剤、収斂剤、皮脂生成調節剤、脂肪分解抑制剤、抗セルライト剤、鎮静剤、抗炎症剤、毛細血管循環および/または微小循環に作用する薬剤、細胞ミトコンドリアに作用する薬剤、真皮-表皮連結を向上させる薬剤、防腐剤、香料、キレート剤、植物抽出物、精油、海洋抽出物、バイオ発酵プロセスに由来する薬剤、ミネラル塩、細胞抽出物、ならびに/またはソーラーフィルター(紫外線AおよびBに対して活性な有機または無機の光保護剤)である。
【0077】
一実施形態において、追加の化粧料成分の少なくとも1つは、本発明のペプチドについて上記に開示されたものと同じ、類似の、相補的または異なる化粧料活性を発揮し得る化粧料有効成分または物質である。
【0078】
好ましい実施形態において、本発明の化粧料組成物は、他の老化防止剤を含む。他の老化防止剤は、例えば、コラーゲンI、III、IVおよび/またはVIならびにラミニンの発現および/または合成を刺激する薬剤;グリコサミノグリカンまたはヒアルロン酸の合成を刺激する薬剤;エラスチンおよび他の弾性繊維関連タンパク質の発現および/または合成を刺激する薬剤;コラーゲンおよび/または弾性繊維の分解を阻害する薬剤;ミトコンドリア関連タンパク質(例えば、サーチュインおよびアコニターゼ)の発現および/または合成を刺激する薬剤;接着斑(focal adhesion)タンパク質の発現および/または合成を刺激する薬剤;ケラチノサイトおよび/または線維芽細胞の増殖および/または分化を刺激する薬剤;抗酸化剤;抗大気汚染および/またはフリーラジカル捕捉剤;抗グリカン剤;解毒剤;年齢的、環境的老化および炎症低減剤;ならびにメラニン産生低減剤および/またはチロシナーゼ阻害剤および/または脂質合成および表皮の成分(ケラチン)、より具体的には角質層(ケラチン、セラミド、フィラグリン、ロリクリンおよびSPRR1B)の合成を刺激する薬剤である。
【0079】
加えて、本発明の化粧料組成物は例えば、「リーブオン」および「リンスオフ」製剤を含む溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、粉末、スプレー、ローション、油、塗布薬、血清、ムース、軟膏、棒材または鉛筆形などの、当技術分野で通常使用される任意の形態として製剤化することができる。本発明の化粧料組成物は、ぬれナプキン、ヒドロゲル、接着剤(または非接着剤)パッチまたはフェースマスクなどの様々なタイプの固形の付属品に、当技術分野で公知の技術を用いることによって組み込むこともできる。あるいは、とりわけ、コンシーラー、メイクアップファンデーション、ローションまたはメイクアップリムーバルローションなどの様々なメイクアップライン製品に組み込むこともできる。
【0080】
また、本発明の化粧料組成物または本発明のペプチドは、本明細書に開示されるように、有効成分のより大きな浸透を得る目的で、リポソーム、ミリ粒子、微粒子およびナノ粒子、ならびにスポンジ、小胞、ミセル、ミリスフェア、微小球、ナノスフェア、リポスフェア、ミリカプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、ならびにマイクロエマルジョンおよびナノエマルジョン、などの化粧用徐放システムおよび/または担体に組み込むことができることも意図される。
【0081】
好ましい実施形態において、本発明の化粧料組成物は、対象の顔および/または身体に、より好ましくはヒトの顔、首および/または両顎に、局所的に適用されるのに適しているか、または適合される。
【0082】
第3の態様において、本発明は、対象における皮膚の老化の兆候を予防および/または低減するため、ならびに/もしくは皮膚の引き締めのための、本発明のペプチドまたは化粧料組成物の化粧料としての使用に関する。
【0083】
ペプチドは、単独で、または本発明の組成物内で、化粧料として有効な量(cosmetically effective amount)で使用される。より好ましくは、前記化粧料として有効な量が0.1%~0.0001%(m/v)であり、さらにより好ましくは、前記化粧料として有効な量が0.05%~0.001%(m/v)である。
【0084】
一実施形態では、皮膚の老化は、年齢的および/または環境的な老化である。
【0085】
好ましい実施形態では、皮膚の老化の徴候は、しわ、粗さ、および/またはたるみである。
【0086】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のペプチドまたは化粧料組成物の化粧料としての上記の使用が皮膚の老化(年齢的および/または環境的な老化を含む)、より好ましくは、しわ、粗さ、およびたるみの徴候を予防および/または低減することである。
【0087】
別の好ましい実施形態において、本発明のペプチドまたは化粧料組成物の化粧料としての使用は、皮膚の引き締め、より好ましくは皮膚(好ましくは顔面皮膚)の引き締まりの質を改善するためであり、さらにより好ましくは、外部刺激または攻撃に対する皮膚の回復を改善するためである。
【0088】
本発明のペプチドまたは化粧料組成物の化粧料としての使用はまた、既に述べたように、皮膚の粘弾性を改善する。
【0089】
また、好ましい実施形態において、対象はヒトである。
【0090】
上記に開示される本発明の化粧料としての使用において、本発明のペプチドまたは組成物は、1つ以上のさらなる有効成分および/または組成物と組み合わせて使用されることが意図される。前述の1つ以上の有効成分および/または組成物は、本発明のペプチドまたは組成物の前に、一緒に、または後に使用することができる。
【0091】
好ましい実施形態において、上記に開示される本発明の使用において、本発明のペプチドおよび/または化粧料組成物は、対象の顔および/または身体に、より好ましくはヒトの顔、首および/または両顎に、局所的に適用される。
【0092】
第4の態様において、本発明は、対象における皮膚の老化の徴候を予防および/もしくは低減させるための、ならびに/または皮膚の引き締めのための、上記のような本発明のペプチドまたは化粧料組成物の化粧用途に関する。
【0093】
ペプチドは、単独で、または本発明の組成物内で、化粧料として有効な量で使用される。より好ましくは、前記化粧料として有効な量が0.1%~0.0001%(m/v)であり、さらにより好ましくは、前記化粧料として有効な量が0.05%~0.001%(m/v)である。
【0094】
一実施形態では、皮膚の老化は、年齢的および/または環境的な老化である。
【0095】
好ましい実施形態では、皮膚の老化(年齢的および/または環境的な老化)の徴候は、しわ、粗さ、および/またはたるみである。
【0096】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のペプチドまたは組成物の化粧用途は、皮膚の老化の徴候(上記のように、年齢的および/または環境的な老化を含む)を予防および/または低減することであり、より好ましくは、前記徴候は、しわ、粗さおよび/またはたるみである。
【0097】
別の好ましい実施形態において、本発明のペプチドまたは組成物の化粧用途は、皮膚の引き締めのためであり、より好ましくは皮膚(好ましくは顔面皮膚)の引き締まりの質を改善するためであり、さらにより好ましくは、外部刺激または攻撃に対する皮膚の回復を改善するためである。
【0098】
既に述べたように、本発明のペプチドまたは化粧料組成物の化粧用途はまた、皮膚の粘弾性を改善する。
【0099】
また、好ましい実施形態において、対象はヒトである。
【0100】
上記に開示された本発明の化粧用途において、本発明のペプチドまたは組成物は、1つ以上のさらなる有効成分および/または組成物と組み合わせて使用されることが意図される。前述の1つ以上の有効成分および/または組成物は、本発明のペプチドまたは組成物の前に、一緒に、または後に使用することができる。
【0101】
好ましい実施形態において、上記に開示された本発明の化粧用途において、本発明のペプチドおよび/または化粧料組成物は、対象の顔および/または本体に、より好ましくはヒトの顔、首および/または両顎に、局所的に適用される。
【0102】
第5の態様において、本発明は、それを必要とする対象における皮膚の老化の兆候を予防および/または低減するための方法であって、本発明のペプチドまたは化粧料組成物の使用を含むことを特徴とする方法を指す。
【0103】
ペプチドは、単独で、または本発明の組成物内で、化粧料として有効な量で使用される。より好ましくは、前記化粧料として有効な量が0.1%~0.0001%(m/v)であり、さらにより好ましくは、前記化粧料として有効な量が0.05%~0.001%(m/v)である。
【0104】
一実施形態では、皮膚の老化は、年齢的および/または環境的な老化である。
【0105】
好ましい実施形態では、皮膚の老化(年齢的および/または環境的な老化)の徴候は、しわ、粗さおよび/またはたるみである。
【0106】
好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0107】
本発明のペプチドまたは組成物は、人体の皮膚の領域に直接適用することで、本発明の方法において使用されることが意図される。好ましい実施形態では、本発明のペプチドまたは組成物は、「リーブオン」および「リンスオフ」製剤を含む溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、粉末、スプレー、ローション、油、塗布薬、血清、ムース、軟膏、棒または鉛筆の形態で適用される。上記のように、本発明のペプチドまたは組成物は、タオレット、ヒドロゲル、接着性(または非接着性)パッチまたはフェースマスクなどの様々なタイプの固形アクセサリーに、当技術分野で知られている技術によって組み込むこともできることが意図される。あるいは、とりわけ、コンシーラー、メイクアップファンデーション、ローションまたはメイクアップリムーバルローションなどの様々なメイクアップライン製品に組み込むこともでき、したがって、本発明の方法における形態のいずれかで使用されることも意図される。
【0108】
上述したように、上記に開示される方法は、化粧効果を有する化粧方法である。
【0109】
上記に開示される本発明の方法において、本発明のペプチドまたは組成物は、1つ以上のさらなる有効成分および/または組成物と組み合わせて使用されることが意図される。前記1つ以上の有効成分および/または組成物は、本発明のペプチドまたは組成物の前に、一緒に、または後に使用することができる。
【0110】
好ましい実施形態では、上記に開示される本発明の方法において、本発明のペプチドおよび/または化粧料組成物は、対象の顔および/または身体に、より好ましくはヒトの顔、首および/または両顎に、局所的に適用される。
【0111】
最後の態様において、本発明は、それを必要とする対象における皮膚の引き締めのための方法であって、本発明のペプチドまたは組成物の使用を含むことを特徴とする方法を指す。
【0112】
本発明における皮膚の引き締めのための方法は、皮膚の引き締まり(および粘弾性)の損失の防止と、皮膚の引き締まり(および粘弾性)の損失の治療または矯正と、の両方を含む。
【0113】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、皮膚(好ましくは顔面皮膚)の引き締まりの質を改善するためであり、より好ましくは、外部刺激または攻撃に対する皮膚の回復を改善するためである。
【0114】
ペプチドは、単独で、または本発明の組成物内で、化粧料として有効な量で使用される。より好ましくは、前記化粧料として有効な量が0.1%~0.0001%(m/v)であり、さらにより好ましくは、前記化粧料として有効な量が0.05%~0.001%(m/v)である。
【0115】
一実施形態では、皮膚の老化は、年齢的および/または環境的な老化である。
【0116】
好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0117】
本発明のペプチドまたは組成物は、人体の皮膚の区域に直接適用することで、本発明の方法において使用されることが意図される。好ましい実施形態では、本発明のペプチドまたは組成物は、「リーブオン」および「リンスオフ」製剤を含む溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、粉末、スプレー、ローション、油、塗布薬、血清、ムース、軟膏、棒または鉛筆の形態で適用される。上記のように、本発明のペプチドまたは組成物はタオレット、ヒドロゲル、接着性(または非接着性)パッチまたはフェースマスクなどの様々なタイプの固形アクセサリーに、当技術分野で知られている技術の手段によって組み込むこともできることが意図される。あるいは、とりわけ、コンシーラー、メイクアップファンデーション、ローションまたはメイクアップリムーバルローションなどの様々なメイクアップライン製品に組み込むこともでき、したがって、本発明の方法における形態のいずれかで使用されることも意図される。
【0118】
上述したように、上記に開示される方法は、化粧効果を有する化粧用の方法である。
【0119】
上記に開示される本発明の方法において、本発明のペプチドまたは組成物は、1つ以上のさらなる有効成分および/または組成物と組み合わせて使用されることが意図される。前記1つ以上の有効成分および/または組成物は、本発明のペプチドまたは組成物の前に、一緒に、または後に使用することができる。
【0120】
好ましい実施形態では、上記に開示される本発明の方法において、本発明のペプチドおよび/または化粧料組成物は、対象の顔および/または身体に、より好ましくはヒトの顔、首および/または両顎に、局所的に適用される。
【0121】
すでに上述したように、本発明のペプチド(したがって、本発明の化粧料組成物も)は、ECMの維持および生産に関連する広範囲の活性を示した。したがって、前記ペプチドは、皮膚の引き締めならびに/または、皮膚の老化の徴候の予防、低減および/もしくは除去のための化粧料に使用するのに適している。
【0122】
より良い理解を可能とするために、本発明は例として提示される添付の図面を参照し、例示的かつ非限定的な例を参照して、以下により詳細に説明される。
【0123】
図1は、陽性対照と比較した、本発明のペプチドのエラスターゼ阻害(したがって、細胞外マトリックス分解に対する保護的役割)のパーセンテージを示す(これは、陽性対照サンプルのエラスターゼ阻害のパーセンテージを100%として確立し、次いで残りのサンプルとの比較を行うことである)。図1(A)は、試験した3つの濃度におけるミリストイル-配列番号2-NHペプチドでの処置において得られたエラスターゼ阻害のパーセンテージの結果を示す。x軸の左から右への列:阻害の陽性対照(フェニルメタンスルホニル(PMSF))、0.001mg/ml、0.005mg/mlおよび0.01mg/mlの本発明のペプチド。その傍ら、図1(B)は、試験した3つの濃度におけるAc-配列番号3-NHペプチドでの処置において得られたエラスターゼ阻害のパーセンテージの結果を示す。x軸の左から右への列:阻害の陽性対照(PMSF)、0.005mg/ml、0.01mg/mlおよび0.05mg/mlの本発明のペプチド。図1(A)および図1(B)の両方について、y軸は、エラスターゼ活性阻害のパーセンテージを示す(陽性対照サンプルに対して)。
【0124】
図2は、Ac-配列番号3-NHによるバーシカン合成の調節を示す。これは、基礎対照(未処理細胞)中のバーシカンの量と比較した、試験サンプル中のバーシカン(分泌および細胞内)の量によって示され、ここで、基礎対照中のバーシカンの量を100%に設定し、次いで、残りのサンプルとの比較を行う。x軸の左から右への列は、基礎対照、0.1μMレチノイン酸で処理したサンプル(陽性対照)、および種々の濃度のAc-配列番号3-NH(それぞれ、0.01mg/ml、0.05mg/mlおよび0.1mg/ml)で処理したサンプルを指す。y軸は、基礎対照に対するバーシカン合成のパーセンテージを示す。
【0125】
図3は、Ac-配列番号3-NHによるトロポエラスチン合成の調節を示す。これは、基礎対照(未処理細胞)中のトロポエラスチンの量と比較した、試験サンプル中のトロポエラスチン(分泌および細胞内)の量によって示され、ここで、基礎対照中のトロポエラスチンの量を100%に設定し、次いで、残りのサンプルとの比較を行う。x軸の左から右への列は、基礎対照および種々の濃度のAc-配列番号3-NH(それぞれ、0.01mg/ml、0.05mg/ml、0.1mg/mlおよび0.5mg/ml)で処理したサンプルを指す。y軸は、基礎対照に対するトロポエラスチン合成のパーセンテージを示す。
【0126】
図4は、Ac-配列番号3-NHによるフィブリリン-1合成の調節を示す。これは、基礎対照(未処理細胞)におけるフィブリリン-1の量と比較した、試験サンプルにおける分泌フィブリリン-1の量によって示され、ここで、基礎対照におけるフィブリリン-1の量を100%に設定し、次いで、残りのサンプルとの比較を行う。x軸の左から右への列は、基礎対照および種々の濃度のAc-配列番号3-NH(それぞれ、0.01mg/ml、0.05mg/mlおよび0.1mg/ml)で処理したサンプルを指す。y軸は、基礎対照に対するフィブリリン-1合成のパーセンテージを示す。
【0127】
図5は、Ac-配列番号3-NHによるヒアルロン酸合成の調節を示す。これは、基礎対照(未処理細胞)中のヒアルロン酸の量と比較した、試験サンプル中の分泌ヒアルロン酸の量によって示され、ここで、基礎対照中のヒアルロン酸の量を100%に設定し、次いで、残りのサンプルとの比較を行う。x軸の左から右への列は、基礎対照、陽性対照(0.1μMレチノイン酸で処理したサンプル)、および種々の濃度のAc-配列番号3-NH(それぞれ、0.01mg/ml、0.05mg/ml、0.1mg/mlおよび0.5mg/ml)で処理したサンプルを指す。y軸は、基礎対照に対するヒアルロン酸合成のパーセンテージを示す。
【0128】
図6は、0.05mg/ml(フィブリリン-1およびバーシカンについて)および0.1mg/ml(フィブロネクチン1ならびにマトリックスメタロプロテアーゼ1および3について)のペプチド濃度で6時間処理した後のHDFa細胞の遺伝子発現プロファイルに対するAc-配列番号3-NHペプチドの影響を示す。遺伝子発現レベルの変化は、基礎対照(未処理細胞)に関して正または負の倍数変化として表される。y軸の上部から下部までの棒は、メタロプロテアーゼ-1(MMP1)、メタロプロテアーゼ-3(MMP3)、フィブロネクチン1(FN1)、フィブリリン-1(FBN1)およびバーシカン(VCAN)遺伝子を指し、x軸は基礎対照に対する倍数変化を指す。負の倍数変化は、対応する遺伝子がダウンレギュレートされることを意味し;正の倍数変化は、対応する遺伝子がアップレギュレートされることを意味する。
【0129】
図7は、0.05%(m/v)のストック溶液から、1%(m/v)の化粧用製剤中でのその局所適用後の、ヒト皮膚外植片上における、0.005mg/mlのAc-配列番号3-NHによるバーシカン合成の調節を示す。これは、基礎対照(非処理皮膚外植片)中のバーシカンが占める皮膚表面の量と比較した、バーシカンタンパク質が占める皮膚表面(表皮および真皮)の量によって示され、ここで、基礎対照中のバーシカンが占める皮膚表面の量を100%に設定し、次いで、Ac-配列番号3-NHで処理した皮膚外植片との比較を行う。x軸の列は、左から右へ、それぞれ、非処理皮膚外植片、および0.005mg/mlのAc-配列番号3-NHで処理した皮膚外植片サンプルを指す。y軸は、基礎対照に対する、バーシカンタンパク質が占める皮膚表面のパーセンテージを示す。
【0130】
図8は、0.05%(m/v)の原液から、1%(m/v)の化粧用製剤中でのその局所適用後の、ヒト皮膚外植片上における、0.005mg/mlのAc-配列番号3-NHによるフィブリリン-1合成の調節を示す。これは、基礎対照(非処理皮膚外植片)中のフィブリリン-1が占める皮膚表面の量と比較した、フィブリリン-1タンパク質が占める皮膚表面(表皮および真皮)の量によって示され、ここで、基礎対照中のフィブリリン-1が占める皮膚表面の量を100%に設定し、次いで、Ac-配列番号3-NHで処理した皮膚外植片との比較を行う。x軸の左から右への列は、それぞれ、非処理皮膚外植片、および0.005mg/mlのAc-配列番号3-NHで処理した皮膚外植片サンプルを指す。y軸は、基礎対照に対する、フィブリリン-1タンパク質が占める皮膚表面のパーセンテージを示す。
【0131】
図9は、女性白人ボランティアへの局所適用後のAc-配列番号3-NHの効力を示す。0.05%(m/v)のストックからの3%(m/v)のAc-配列番号3-NHペプチドを含む化粧用製剤または偽薬を、顔面の半分(頬)および各ボランティアにそれぞれ適用した。図9(A)は、Dynaskinによるボランティアの頬の形状を示し(Dynaskinは、完全な非接触法で引き締まりを評価するためのデルマトップシステムのアドオンである;関心領域に垂直に、または専用の45°の角度で空気を吹き付けることによって、臨床的手法に近い形状を生じさせる;システムは任意の位置で測定することができる;3Dセンサは、縞投射技術を使用して、形状の直前に、局所表面の形を捕捉し、形状が適用されたとき、および形状の直後に)、処置の開始時における頬の体積に対する頬の体積(mm)の平均変化率によって測定される(時間=0日)。x軸において、3つの列のグループは、左から右に、全て処置の開始から、それぞれ、7日目、14日目、および56日目に対応する。また、x軸において、3つの列のグループの中の左から右への列は、化粧用製剤(偽薬)で処置したボランティア、同じ製剤であるが、0.015mg/mlのAc-配列番号3-NHをも含む製剤で処置したボランティア、および応答性(反応し易い)ボランティアのみ(0.015mg/mlのAc-配列番号3-NHを含む、化粧用製剤で処置したボランティアからのもの)に対応する。y軸は、対応する処置群または応答性ボランティアの平均についての、初期時間に対する体積変動のパーセンテージを示す。図9(B)は、Dynaskinによって測定した、処置開始時(時間=0日)の面積に対する、変形した頬領域の面積(mm)の変化のパーセンテージでの、ボランティアの頬の変形を示す。x軸において、3つの列のグループは、左から右に、全て処置の開始から、それぞれ、7日目、14日目、および56日目に対応する。また、x軸において、3つの列のグループの中の左から右への列は、化粧用製剤(偽薬)で処置したボランティア、同じ製剤であるが、0.015mg/mlのAc-配列番号3-NHをも含む製剤で処置したボランティア、および応答性ボランティアのみ(0.015mg/mlのAc-配列番号3-NHを含む化粧用製剤で処置したボランティアからのもの)に対応する。y軸は、対応する処置群または応答性ボランティアの平均についての、初期時間に対する面積変動のパーセンテージを示す。その傍ら、図9(C)は、Dynaskinによって測定された、処置開始時(時間=0日)の面積に対する、変形した頬領域の深さ(mm)の変化のパーセンテージでの、ボランティアの頬の変形を示す。x軸において、3つの列のグループは、左から右に、全て処置の開始から、それぞれ、7日目、14日目、および56日目に対応する。また、x軸において、3つのグループの列の中の列は、それぞれ、化粧用製剤(偽薬)で処置したボランティア、同じ製剤であるが、0.015mg/mlのAc-配列番号3-NHをも含む製剤で処置したボランティア、および応答性ボランティアのみ(0.015mg/mlのAc-配列番号3-NHを含む、化粧用製剤で処置したボランティアからのもの)に対応する。y軸は、対応する処置群または応答性ボランティアの平均についての、初期時間に対する深さ変動のパーセンテージを示す。図9(A)~9(C)において、表示「vol」で示されるパーセンテージは、本発明のペプチドを含む化粧用製剤で処置したボランティアの総数に関する応答性ボランティアのパーセンテージを指す。
【0132】
[実施例]
〔略語〕
アミノ酸に使用される略語は、Eur. J. Biochem. (1984) 138:937に概説される1983 IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature勧告に従う。
【0133】
2-CITrt、2-クロロトリチル;Ac、アセチル;Ala、アラニン;Arg、アルギニン;Boc、tert-ブチルオキシカルボニル;C-末端、カルボキシ-末端;DCM、ジクロロメタン;DIEA、N,N’-ジイソプロピルエチルアミン;DIPCDI、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド;DMF、N,N-ジメチルホルムアミド;equiv、当量;ESI-MS、エレクトロスプレーイオン化質量分析;Fmoc、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル;His、ヒスチジン;HOBt、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール;HPLC、高速液体クロマトグラフィー;HDFa、ヒト皮膚線維芽細胞;Ile、イソロイシン;INCI、化粧料成分の国際命名法;MBHA、p-メチルベンズヒドリルアミン;Leu、ロイシン;Lys、リジン;Me、メチル;MeCN、アセトニトリル;MeOH、メタノール;Myr、ミリストイル;N-末端、アミノ末端;Palm、パルミトイル;Pbf、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル;PMSF、フェニルメタンスルホニル;RT、室温;TFA、トリフルオロ酢酸;TIS、トリイソプロピルシラン;Trp、トリプトファン;Trt、トリフェニルメチルまたはトリチル;Val、バリン;Z、ベンジルオキシカルボニル。
【0134】
実施例に含まれる化学合成手順に関して、全ての合成プロセスは、多孔質ポリエチレンディスクを取り付けたポリプロピレンシリンジまたは多孔質プレートを取り付けたPyrex(登録商標)反応器中で実施したことに留意されたい。全ての試薬および溶媒は合成品質であり、いかなる追加の処理も行わずに使用した。溶媒および可溶性試薬を吸引により除去した。Fmoc基をピペリジン-DMF(2:8、v/v)(少なくとも1×1分、2×10分、5mL/g樹脂)で除去した(Lloyd Williams P. et al., Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins, CRC, 1997, Boca Raton (Fla., USA))。脱保護、カップリング、および再度の脱保護の段階の間の洗浄は、10ml溶媒/g樹脂を使用して、毎回DMF(3×1分)およびDCM(3×1分)で行った。カップリング反応は、3ml溶媒/g樹脂で行った。カップリングのコントロールは、ニンヒドリン試験(Kaiser E. et al., Anal. Biochem., 1970, 34: 595598)を実施することによって行った。全ての合成反応および洗浄を室温で行った。
【0135】
[実施例1.本発明のペプチドの合成および調製。]
Fmoc-(X)-AA-AA-AA-AA-AA-(Y)-R-Rink-MBHA-樹脂の取得、
ここで、AAはL-Leu、AAはHis、AAはL-Lys、AAはL-Val、AAはL-Lys、YはL-Val、nは1、mは0である。
【0136】
重量を標準化した。0.52mmol/gの官能化を有する4.8g(2.5mmol)のFmoc-Rink-MBHA樹脂を、記載された一般プロトコルに従ってピペリジン-DMFで処理して、Fmoc基を除去した。DIPCDI(1.17mL;7.5mmol;3当量)およびHOBt(1.01g;7.5mmol;3当量)の存在下で、DMFを溶媒として1時間使用して、2.55gのFmoc-L-Val-OH(7.5mmol;3当量)を、脱保護された樹脂上に組み込んだ。
【0137】
次いで、一般的な方法に記載されるように樹脂を洗浄し、Fmoc基の脱保護処理を繰り返して、次のアミノ酸をカップリングさせた。前述のプロトコルに従い、3.51gのFmoc-L-Lys(Boc)-OH(7.5mmol;3当量);続いて2.55gのFmoc-L-Val-OH(7.5mmol;3当量);続いて3.51gのFmoc-L-Lys(Boc)-OH(7.5mmol;3当量);続いて4.65gのFmoc-L-His(Trt)-OH(7.5mmol;3当量)および続いて2.65gのFmoc-L-Leu-OH(7.5mmol;3当量)を、HOBt(7.5mmol;3当量)1.01gおよびDIPCDI(7.5mmol;3当量)1.17mLの存在下で、順次カップリングさせた。既に上述したように、各アミノ酸付加工程の間に、Fmoc基の脱保護処理を行った。
【0138】
合成後、ペプチド樹脂をDCMで洗浄し(それぞれ3分間、5回)、真空下で乾燥させた。
【0139】
Fmoc-(X)-AA-AA-AA-AA-AA-(Y)-R-Rink-MBHAの取得、
ここで、XはL-Ala、AAはL-Leu、AAはHis、AAはL-Lys、AAはL-Val、AAはL-Lys、mは1、nは0である。
【0140】
重量を標準化した。0.52mmol/gの官能化を有する4.8g(2.5mmol)のFmoc-Rink-MBHA樹脂を、記載された一般プロトコルに従ってピペリジン-DMFで処理して、Fmoc基を除去した。DIPCDI(1.17mL;7.5mmol;3当量)およびHOBt(1.01g;7.5mmol;3当量)の存在下で、DMFを溶媒として1時間使用して、3.51gのFmoc-L-Lys(Boc)-OH(7.5mmol;3当量)を、脱保護された樹脂上に組み込んだ。
【0141】
次いで、一般的な方法に記載されるように樹脂を洗浄し、Fmoc基の脱保護処理を繰り返して、次のアミノ酸をカップリングさせた。前述のプロトコルに従い、2.55gのFmoc-L-Val-OH(7.5mmol;3当量);続いて3.51gのFmoc-L-Lys(Boc)-OH(7.5mmol;3当量);続いて4.65gのFmoc-L-His(Trt)-OH(7.5mmol;3当量);続いて2.65gのFmoc-L-Leu-OH(7.5mmol;3当量)および続いて2.33gのFmoc-L-Ala-OH(7.5mmol;3当量)を連続的にカップリングし、それぞれ1.01gのHOBt(7.5mmol;3当量)および1.17mLのDIPCDI(7.5mmol;3当量)の存在下でカップリングした。既に上述したように、各アミノ酸付加工程の間に、Fmoc基の脱保護処理を行った。
【0142】
合成後、ペプチド樹脂をDCMで洗浄し(それぞれ3分間、5回)、真空下で乾燥させた。
【0143】
アミノ酸の必要な選択を伴う上記の合成手順を使用して、以下の配列を合成した:
Leu-His-Lys-Val-Lys-Val(配列番号2);およびAla-Leu-His-Lys-Val-Lys(配列番号3)。
【0144】
[実施例2.実施例1に従って合成したペプチドのFmoc N末端保護基の除去。]
ペプチジル樹脂のN末端Fmoc基を、DMF中の20%ピペリジン(1×1分+2×10分)で脱保護した(Lloyd Williams P. et al. (1997) “Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins” CRC, Boca Raton (Fla., USA))。ペプチジル樹脂をDMF(5×1分)、DCM(4×1分)で洗浄し、真空下で乾燥させた。
【0145】
[実施例3.実施例2に従って得られたペプチジル樹脂上にRアセチル基を導入する処理。]
実施例2に従って得られたペプチジル樹脂1mmol(1当量)を、溶媒として5mLのDMFを使用して、25当量のDIEAの存在下、25当量の無水酢酸で処理した。それらを30分間反応させた後、ペプチジル樹脂をDMF(5×1分)、DCM(4×1分)で洗浄し、真空下で乾燥させた。
【0146】
[実施例4.実施例2で得られたペプチジル樹脂にRミリストイル基を導入する処理]
DMF(1mL)中の予め溶解したミリスチン酸10当量を、10当量のHOBtおよび10当量のDIPCDIの存在下で、実施例2で得られたペプチジル樹脂1mmol(1当量)上に組み込んだ。それらを一晩(約15時間)反応させ、その後、樹脂をDMF(5×1分)、DCM(4×1分)、MeOH(5×1分)で洗浄し、真空下で乾燥させた。
【0147】
[実施例5.実施例2、3および4に従って得られたペプチジル樹脂のポリマー支持体からの切断処理]
重量を標準化した。実施例2、3または4のいずれかで得られた乾燥ペプチジル樹脂200mgを、撹拌しながら室温で2時間、5mlのTFA/TIS/HO(90:5:5)で処理した。濾液を集め、50mL(8~10倍)の冷ジエチルエーテルを用いて沈殿させた。エーテル溶液を減圧および室温で蒸発乾固し、沈殿物をHO中の50%MeCNに再溶解し、凍結乾燥させた。
【0148】
[実施例6.実施例5に従って合成および調製したペプチドの特性決定。]
実施例5に従って得られたペプチドのHPLC分析を、逆相カラム(150×4.6mm、XBridge Peptide BEH C18、3.5μm、Waters、USA)を用いて、HO(+0.045%TFA)中のMeCN(+0.036%TFA)の勾配で、1.25mL/分の流速でShimadzu装置(京都、日本)を用いて行い、220nmで検出を行った。全てのペプチドは、80%を超える純度を示した。得られたペプチドの同一性は、移動相としてMeOHを使用し、0.2mL/分の流速で、WaterZQ4000検出器中のESI-MSによって確認した。得られた結果は、ペプチドであるミリストイル-Leu-His-Lys-Val-Lys-Val-NH(ミリストイル-配列番号2-NH);およびAc-Ala-Leu-His-Lys-Val-Lys-NH(Ac-配列番号3-NH)が効果的に合成されたことを示した。
【0149】
[実施例7.エラスターゼ活性阻害の測定。]
実施例1~5に従って合成されたペプチドである、ミリストイル-配列番号2-NHおよびAc-配列番号3-NHの両方を、それらのエラスターゼ活性を阻害する性能について試験した。
【0150】
Ac-配列番号3-NHペプチドを、HO中で0.005mg/ml、0.01mg/mlおよび0.05mg/mlの濃度に希釈し、ミリストイル-配列番号2-NHペプチドを0.001mg/ml、0.005mg/mlおよび0.01mg/mlの濃度に希釈した。次いで、ペプチド希釈物を、制御された条件下でエラスターゼ酵素と共にインキュベートした。TRIS緩衝液およびフェニルメタンスルホニル(以下、PMSF)を、それぞれ、エラスターゼ活性の阻害のための陰性対照および陽性対照として使用した。その後、特異的酵素基質を加えて酵素反応を開始させ、これにプレートリーダーを用いて405nmでの吸光度によりモニターした。吸光度は酵素活性と相関し、エラスターゼ阻害活性は容易に得られた。
【0151】
本実施例で得られた結果を、図1に要約して表す。前記図では、試験したAc-配列番号3-NHの全ての濃度で、陽性対照サンプルで見られたものの約39%の有意なエラスターゼ阻害活性を示したことが分かる。その傍ら、試験した2つのより低い濃度におけるミリストイル-配列番号2-NHペプチドもまた、エラスターゼを阻害する活性を示し、これは、陽性対照サンプルにおいて見られたものの35%~26%であった。陰性対照(これは、TRIS緩衝液で処理またはインキュベートされたサンプルである)において、エラスターゼ活性の阻害は観察されなかった(図1に示さず)。
【0152】
したがって、前記ペプチドは、試験した条件下でエラスターゼを阻害することができたと結論付けることができる。
【0153】
[実施例8.細胞培養におけるバーシカン合成の調節。]
バーシカン産生に対するAc-配列番号3-NHペプチド(実施例1~3および5に従って合成)の影響を、ヒト皮膚線維芽細胞(以下、HDFa)を用いてin vitroで評価した。
【0154】
簡潔には、HDFa細胞を、線維芽細胞増殖培地中、1×10細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、そして標準的な培養条件下(37℃、95%湿度、5%CO)で24時間維持した。前述のインキュベーション後、培地を除去し、0.01mg/ml、0.05mg/mlおよび0.1mg/mlのAc-配列番号3-NHペプチドの非細胞毒性濃度を含む新しい培地を添加し、24時間インキュベートした。0.1μMレチノイン酸をバーシカン刺激の陽性対照として含め、未処理細胞を基礎対照として含めた。細胞培養培地および細胞溶解物を、試験の終わりにすべてのウェルから収集し、-80℃で保存した。バーシカンのEx-novo合成を、製造者の指示に従ってサンドイッチELISAによって測定した。
【0155】
結果を図2に示す。
【0156】
上記のように、レチノイン酸を、バーシカンの合成の誘導のための陽性対照として使用した。
【0157】
図2から容易に分かるように、試験した全ての濃度は、基礎対照と比較した場合、バーシカン合成の有意な増加を示した。バーシカン合成の前記増加は、用量応答曲線に従い(0.01mg/ml、0.05mg/mlおよび0.10mg/mlのペプチドの濃度で基礎対照と比較した場合、それぞれ24%、35%および62%のバーシカン合成の増加)、試験した最高濃度(これは0.10mg/mlである)でレチノイン酸の値よりも大きい値に達した。
【0158】
[実施例9.細胞培養におけるトロポエラスチン合成の調節。]
トロポエラスチン合成に対するAc-配列番号3-NHペプチド(実施例1~3および5に従って合成)の潜在的な影響を、HDFaを用いてin vitroで評価した。
【0159】
HDFaを96ウェルプレート中で1×10細胞/ウェルの密度で培養し、非細胞毒性増加濃度のAc-配列番号3-NHペプチド(0.01mg/ml、0.05mg/ml、0.1mg/mlおよび0.5mg/ml)と共に24時間インキュベートした。未処理細胞を基礎対照として含めた。モニターした試験期間の終わりに、細胞培養培地および細胞溶解物をすべてのウェルから抽出し、-80℃で保存した。トロポエラスチンのEx-novo合成を、製造者の指示に従って、サンドイッチELISAによって測定した。
【0160】
この試験の結果を図3に要約して表し、ペプチドAc-配列番号3-NHについて試験した全ての濃度で、基礎対照と比較した場合にトロポエラスチンの合成が増加したことが分かる。同様に、バーシカンの合成に関して、上記の増加は、用量応答曲線に従った(0.01mg/ml、0.05mg/ml、0.10mg/mlおよび0.50mg/mlのペプチドの濃度で、基礎対照と比較した場合、それぞれ3%、11%、20%および31%のトロポエラスチン合成の増加)。
【0161】
[実施例10.細胞培養中のフィブリン-1合成の調節。]
(実施例1~3および5に従って合成された)Ac-配列番号3-NHペプチドによるフィブリリン-1合成の調節を、HDFaを用いてin vitroで評価した。
【0162】
HDFaを96ウェルプレートに1×10細胞/ウェルの密度で播種し、それらを3つの非細胞毒性濃度のAc-配列番号3-NHペプチド:0.01mg/ml、0.05mg/mlおよび0.1mg/mlに48時間接種した。未処理細胞を基礎対照として含めた。モニターした試験の終わりに、全てのウェルから細胞培養培地を抽出し、-80℃で保存した。フィブリリン-1量の調節を、製造者の指示に従って、サンドイッチELISAによって分析した。
【0163】
この試験の結果を図4に要約して表し、試験した全ての濃度でAc-配列番号3-NHペプチドが、基礎対照と比較した場合にフィブリリン-1の合成を増加させたことが分かる。バーシカンおよびトロポエラスチンの合成において見られる効果と同様に、上記の増加はまた、用量応答曲線に従った(0.01mg/ml、0.05mg/mlおよび0.10mg/mlのペプチドの濃度で、基礎対照と比較した場合、それぞれフィブリリン-1合成の18%、30%および41%の増加)。
【0164】
[実施例11.細胞培養におけるヒアルロン酸合成の調節。]
HDFaにおける、Ac-配列番号3-NHペプチド(実施例1~3および5に従って合成)によるヒアルロン酸産生の調節をin vitroで評価した。
【0165】
簡潔には、HDFaを96ウェルプレートに1×10細胞/ウェルの密度で播種し、次いで、非細胞毒性濃度のAc-配列番号3-NHペプチド(これは0.01mg/ml、0.05mg/ml、0.1mg/mlおよび0.5mg/mlである)と共に48時間インキュベートした。0.1μMレチノイン酸を陽性対照として含め、未処理細胞を基礎対照として含めた。試験の終わりに、全てのウェルから細胞培養培地を抽出し、-80℃で保存した。ヒアルロン酸のEx-novo合成を、製造者の指示に従って競合ELISAによって測定した。
【0166】
図5は、in vitroでのAc-配列番号3-NHペプチドによるヒアルロン酸合成の調節について、および基礎対照との対比で、この試験で得られた結果を示す。Ac-配列番号3-NHペプチドはヒアルロン酸産生において3%、8%、10%および18%の用量反応増大を誘導し、これは、3つのより高い濃度において統計的に有意である。
【0167】
[実施例12.細胞培養における遺伝子発現調節。]
HDFaにおけるAc-配列番号3-NHペプチド(実施例1~3および5に従って合成)による遺伝子発現の調節をin vitroで評価した。
【0168】
簡潔には、HDFa細胞を、6ウェルプレートに、4×10細胞/ウェルの密度で2連で播種し、そしてそれらを、24時間、通常の培養条件下(37℃、95%湿度、5%CO)で維持した。次いで、細胞を、0.05および0.1mg/mlの非細胞毒性濃度のAc-配列番号3-NHペプチドでさらに6時間処理した。未処理細胞を基礎対照として使用した。次いで、製造者の指示に従い、RNA精製市販キット(RNeasy mini kit-Qiagen、Netherlands)でRNA抽出のために細胞を溶解した。次いで、RNAをナノドロップによって定量し、濃度を調整し、市販のキット(High-Capacity cDNA Reverse Transcription kit-Thermofisher Scientific、USA)を用いてcDNAへの逆転写のために処理した。得られたcDNAを使用し、taqman技術と細胞外マトリックス成分および構造に関連する特定の遺伝子を標的とするように設計されたプローブのパネルとを使用して、RTqPCR(リアルタイム定量ポリメラーゼ連鎖反応)を行った。
【0169】
この実施例の結果を、図6に要約して表す。前記図は、Ac-配列番号3-NHペプチドが、細胞外マトリックス分解に関与するメタロプロテアーゼ1および3のダウンレギュレーションを誘導し、それぞれ-1.33および-1.20の倍数変化を伴うことを示す。また、細胞外マトリックスの成分であるフィブロネクチン1、フィブリリン1およびバーシカンはアップレギュレートされ、それぞれ1.41、1.55および1.22の倍数変化を伴う。
【0170】
上記の試験はすべて、本発明のペプチドが、(i)細胞外マトリックスの完全性を維持すること(エラスターゼ活性を阻害し、メタロプロテアーゼの発現を遺伝子レベルでダウンレギュレートすることによって)、ならびに(ii)細胞外マトリックス関連成分、例えば、トロポエラスチン、バーシカン、フィブリリン-1およびヒアルロン酸を、遺伝子レベルおよびタンパク質レベルの両方で産生すること、の両方に対して重要な活性を発揮することを示す。したがって、上記の結果は、本発明のペプチドが老化防止製品に使用することができる引き締め剤として化粧料の分野において有用であることを示す。
【0171】
[実施例13.ヒト皮膚外植片上でのバーシカン合成の調節。]
Ac-配列番号3-NHペプチド(実施例1~3および5に従って合成)のバーシカン産生に対する効果を、46歳の白人女性ドナー由来のヒト皮膚外植片で評価した。
【0172】
簡単に述べると、皮膚外植片を、形成外科手順を受けているボランティアドナーから得た。本研究には余分な皮膚が寄付された。皮膚外植片は、0.05%(m/v)のAc-配列番号3-NHのストックから1%(m/v)を含む化粧用製剤で処理した(Ac-配列番号3-NHの有効最終濃度、0.005mg/ml)。0日目、2日目、4日目および7日目に、試験した製品を、皮膚外植片1cm当たり2μlに基づいて局所的に適用し、小へらを用いて広げた。非処置外植片は、2、4および7日目に培養培地の半分(これは1mlである)を更新したことを除いて、いかなる処置も受けなかった。
【0173】
9日目に、各条件からの3つの外植片を回収し、緩衝化ホルマリン溶液中で固定した。緩衝ホルマリン中で24時間固定した後、サンプルを脱水し、含浸し、パラフィン中に包埋した。Leica RM 2125 Minot型ミクロトームを用いて5μm厚の切片を作製し、切片をSuperfrost(登録商標)組織学的ガラススライド上に載せた。顕微鏡観察は、Leica DMLBまたはOlympus BX43顕微鏡を用いて行った。写真は、CellD記憶ソフトウェアを有する数値DP72オリンパスカメラでデジタル化した。
【0174】
バーシカン免疫染色を、PBS-BSA0.3%(m/v)-Tween 20中で1/1000に希釈したポリクローナル抗バーシカン抗体(OriGene)を用いて0.05%(v/v)で室温にて1時間行い、ビオチン/ストレプトアビジン系(RTU、Kitベクター)を用いて増幅し、ペルオキシダーゼ(ベクター)の基質であるVIPによって明らかにした。自動スライド処理システム(Dako、AutostainerPlus)を用いて免疫染色を行った。染色は、顕微鏡観察および画像分析によって評価した。
【0175】
結果を図7に示す。
【0176】
図7から容易に分かるように、0.005mg/mlのAc-配列番号3-NHは非処理外植片と比較した場合、バーシカンタンパク質によって占有される皮膚表面の有意な増加を示した(バーシカンタンパク質によって占有される表面の増加は基礎対照と比較した場合、29%であった)。
【0177】
[実施例14.ヒト皮膚外植片におけるフィブリリン-1合成の調節。]
フィブリリン-1産生に対するAc-配列番号3-NHペプチド(実施例1~3および5に従って合成した)の影響を、46歳の白人女性ドナー由来のヒト皮膚外植片で評価した。
【0178】
簡単に述べると、皮膚外植片を、0.05%(m/v)のAc-配列番号3-NHのストックからの1%(m/v)を含む化粧用製剤で処理した(Ac-配列番号3-NHの有効最終濃度、0.005mg/ml)。0日目、2日目、4日目および7日目に、試験した製品を、皮膚外植片1cm当たり2μlに基づいて局所的に適用し、小へらを用いて広げた。非処置外植片は、2、4および7日目に培養培地の半分(これは1mlである)を更新したことを除いて、いかなる処置も受けなかった。
【0179】
9日目に、各条件から3つの外植片を収集し、-80℃で凍結した。凍結サンプルを、Leica CM 3050クリオスタットを用いて7μm厚の切片に切断した。次いで、切片を、Superfrost(登録商標)plusシラン化ガラススライド上に載せた。顕微鏡観察は、Leica DMLBまたはOlympus BX43顕微鏡を用いて行った。写真は、CellD記憶ソフトウェアを有する数値DP72オリンパスカメラでデジタル化した。
【0180】
フィブリリン-1免疫染色を、PBS-BSA0.3%(m/v)-Tween 20中で1/500に希釈したモノクローナル抗フィブリリン-1抗体(Novus biologicals)を用いて、室温で1時間、0.05%(v/v)にて凍結切片上で実現し、ビオチン/ストレプトアビジン系(RTU、Kitベクター)を用いて増幅し、FITC(Invitrogen)によって明らかにした。核をヨウ化プロピジウムを用いて対比染色した。自動スライド処理システム(Dako、AutostainerPlus)を用いて免疫染色を行った。染色は、顕微鏡観察および画像分析によって評価した。
【0181】
得られた結果を図8に示す。
【0182】
図8から容易に分かるように、0.005mg/mlのAc-配列番号3-NHは、非処理外植片と比較した場合、フィブリリン-1タンパク質によって占有される皮膚表面の有意な増加を示した(フィブリリン-1タンパク質によって占有される表面の増加は基礎対照と比較した場合、24%であった)。
【0183】
[実施例15 女性ボランティアに対する皮膚の引き締まりと老化防止効果の臨床評価]
顔面皮膚の引き締まりに対するAc-配列番号3-NHペプチド(実施例1~3および5に従って合成)の影響を、22人の白人女性ボランティアで評価した。
【0184】
簡潔には、ボランティアは0.05%(m/v)のAc-配列番号3-NHのストックからの3%(m/v)を含む化粧用製剤(Ac-配列番号3-NHの有効最終濃度、0.015mg/ml)を利用したか、または含まない化粧用製剤を利用した(偽薬)。適用体制は、56日間、早朝および就寝前に1日2回であった。同じボランティアに対するプラセボおよび活性物質の効果を比較するために、清潔な顔のいずれかの半分に化粧用製剤を適用した。
【0185】
0、7、14および56日目に、体積(mm)、面積(mm)および深さ(mm)の3つのパラメータに従って皮膚の引き締まりの質を測定するために、それぞれのボランティアにDynaskin装置を使用した。Dynaskinは、頬領域への空気ビーム投影を使用し、皮膚の変形を引き起こす。この変形の大きさは、各ボランティアおよび各半顔面について上記3つのパラメータのデータを収集する特別なソフトウェアによって測定される。
【0186】
治療日内の3つのパラメータのいずれかの低下は、顔面の引き締まりの増加を示し、従ってアンチエイジング効果を示した。
【0187】
得られた結果を図9に示す。
【0188】
図9(A)~9(C)から容易に分かるように、化粧用製剤中の0.015mg/mlのAc-配列番号3-NHは、最初の時期と比較した場合、全ての研究時期に研究された顔の皮膚の領域において、体積、面積および/または深さのいずれかの低下を示した(これら3つのパラメータのいずれかまたは全ての低下は、皮膚の引き締まりの増大および/または美容効果を示す)。治療56日後に、20%の体積低下、7%の面積低下および14.5%の深さの低下が見られた(本発明のペプチドを含む化粧用製剤で治療された全グループにおいて;このパーセンテージは、応答性ボランティアのみが考慮される場合にはさらに高くなる)。
【図面の簡単な説明】
【0189】
図1】陽性対照と比較した、本発明のペプチドのエラスターゼ阻害のパーセンテージを示す。
図2】Ac-配列番号3-NHによるバーシカン合成の調節を示す。
図3】Ac-配列番号3-NHによるトロポエラスチン合成の調節を示す。
図4】Ac-配列番号3-NHによるフィブリリン-1合成の調節を示す。
図5】Ac-配列番号3-NHによるヒアルロン酸合成の調節を示す。
図6】0.05mg/ml(フィブリリン-1およびバーシカンについて)および0.1mg/ml(フィブロネクチン1ならびにマトリックスメタロプロテアーゼ1および3について)のペプチド濃度で6時間処理した後のHDFa細胞の遺伝子発現プロファイルに対するAc-配列番号3-NHペプチドの影響を示す。
図7】0.05%(m/v)のストック溶液から、1%(m/v)の化粧用製剤中でのその局所適用後の、ヒト皮膚外植片上における、0.005mg/mlのAc-配列番号3-NHによるバーシカン合成の調節を示す。
図8】0.05%(m/v)の原液から、1%(m/v)の化粧用製剤中でのその局所適用後の、ヒト皮膚外植片上における、0.005mg/mlのAc-配列番号3-NHによるフィブリリン-1合成の調節を示す。
図9A】女性白人ボランティアへの局所適用後のAc-配列番号3-NHの効力を示す。
図9B】女性白人ボランティアへの局所適用後のAc-配列番号3-NHの効力を示す。
図9C】女性白人ボランティアへの局所適用後のAc-配列番号3-NHの効力を示す。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
【配列表】
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