(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】急性心不全(AHF)の治療のためのイスタロキシム含有静脈用製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5685 20060101AFI20240925BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240925BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240925BHJP
C07J 41/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61K31/5685
A61P9/04
A61K45/00
A61P43/00 121
C07J41/00 CSP
(21)【出願番号】P 2021552770
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 US2019060961
(87)【国際公開番号】W WO2020180356
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-11-09
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521396020
【氏名又は名称】ウインドトゥリー・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Windtree Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ビアンキ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】フェラーリ,パトリツィア
(72)【発明者】
【氏名】フェッランディ,マーラ
(72)【発明者】
【氏名】バッラッシ,パオロ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103315968(CN,A)
【文献】Current Heart Failure Reports,Vol.7,2010年,p.100-109
【文献】ClinicalTrials.govarchive NCT02617446,2017年08月31日,[online],2017年08月31日,[2023年10月2日検索],retrieved from the internet,<URL: https://classic.clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT02617446?B=2&A=1&C=merged#StudyPageTop>
【文献】Cardiovascular & Haematological Disorders-Drug Targets,2009年,Vol.9,p.193-205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 45/00
C07J 1/00-75/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象における静脈内注入用の医薬組成物であって、急性心不全の治療において使用され、イスタロキシム、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物を含み、投与が6時間より長い注入時間であり、該医薬組成物が3~6時間の静脈内注入によるイスタロキシムの投与と比較して拡張期弛緩を改善するためのものであり、拡張期弛緩の1つ以上のパラメーターによってその改善が測定される、医薬組成物。
【請求項2】
拡張期弛緩の改善が、心エコーパラメーターのE/A、E/e’、肺毛細血管楔入圧、血圧計、心電図、心臓カテーテル検査、放射性核種心室造影スキャン、またはその組み合わせによって測定される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
注入時間が、少なくとも約24時間である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
注入時間が、少なくとも12時間、少なくとも約36時間、および少なくとも約48時間から選択される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
イスタロキシムが、0.2μg/kg/分~1.5μg/kg/分の用量で投与される、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
イスタロキシムが、0.25μg/kg/分~1.0μg/kg/分の用量で投与される、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
イスタロキシムが、少なくとも約6時間の累積時間の間、約5ng/mlより大きい血漿中レベルのイスタロキシム代謝物を産生するのに十分な時間の注入によって投与され、イスタロキシム代謝物が、式(II)または式(III):
【化1】
式(II)
【化2】
式(III)
で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、または多形体、を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ヒト対象が、駆出率が保持された心不全(HFpEF)または駆出率が軽度低下した心不全(HFmEF)に罹患している、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ヒト対象が、ACE阻害剤、AIRB、利尿薬、Caチャネル遮断薬、ベータ遮断薬、ジギタリス、NOドナー、血管拡張薬、SERCA2a刺激剤、ネプリライシン(NEP)阻害剤、ミオシンフィラメント活性化剤、組換えリラキシン-2メディエーター、組換えNPタンパク質、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)活性化剤、およびアンジオテンシンII受容体のβ-アレスチンリガンドから選択される1つまたは複数のさらなる治療活性成分により、心不全の治療処置を受けている、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
利尿薬が、フロセミド、ブメタニド、トラセミド、メトラゾン
、スピロノラクトン
、エプレレノ
ン、ヒドロクロロチアジド、メトラゾン、
およびクロルタリドン、から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ACE阻害剤が、リシノプリル
またはラミプリルから選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
アンジオテンシンII受容体遮断剤が、バルサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、およびロサルタンから
なる群から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
アンジオテンシン受容体/ネプリライシン阻害剤が、サクビトリルである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ベータ遮断薬が、カルベジロール
またはメトプロロールから選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項15】
血管拡張薬が、硝酸イソソルビドと組み合わせられ
る、ヒドララジン、ニトログリセリン
、硝酸イソソルビド、アムロジピン、フェロジピン、非ジヒドロピリジン、
ジルチアゼム
、およびベラパミル、
からなる群から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項16】
心不全の治療のための薬剤が、ジゴキシン、エンレスト、オメカムチブ、セレラキシン、ウラリチド、
およびレボシメンダンから
なる群から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項17】
式(III):
【化3】
式(III)
で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、または多形体。
【請求項18】
請求項17に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、または多形体を、少なくとも1つの薬学的に許容されるビヒクルおよび/または賦形剤と混合して含む、医薬組成物。
【請求項19】
少なくとも1つの追加の治療成分をさらに含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
SERCA2aの活性化が求められる疾患を治療するための、請求項18または請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
心血管疾患を治療するための、請求項18~20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
心血管疾患が、
急性心不
全である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
イスタロキシムまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または水和物を含む、ヒト個体における静脈内注入用の、急性心不全の治療に使用するための医薬組成物であって、ヒト個体においてイスタロキシム代謝物の血漿中濃度レベルを産生するのに十分な注入時間で投与され、
(a)測定される前記血漿中濃度レベルが、少なくとも約6時間の累積時間、約5ng/mlより大きく、
(b)イスタロキシム代謝物が、式(III):
【化4】
式(III)
で示されるもの、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、または多形体を含み;
該医薬組成物が、累積時間前のイスタロキシムの投与と比較して、拡張期弛緩を改善するためのものであり、拡張期弛緩の1つ以上のパラメーターによってその改善が測定される、医薬組成物。
【請求項24】
拡張期弛緩の改善が、心エコーパラメーターのE/A、E/e’、肺毛細血管楔入圧、血圧計、心電図、心臓カテーテル検査、放射性核種心室造影スキャン、またはその組み合わせによって測定される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
注入時間が、少なくとも約6時間の累積時間の間、約10ng/mlより大きい血漿中濃度レベルのイスタロキシム代謝物を個体において産生するのに十分である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
注入時間が、少なくとも約6時間の累積時間の間、約15ng/mlより大きい血漿中濃度レベルのイスタロキシム代謝物を個体において産生するのに十分である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
注入時間が、少なくとも約6時間の累積時間の間、約20ng/mlより大きい血漿中濃度レベルのイスタロキシム代謝物を個体において産生するのに十分である、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
イスタロキシムが、0.2μg/kg/分~1.5μg/kg/分の用量で投与される、請求項23~27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
イスタロキシムが、0.25μg/kg/分~1.0μg/kg/分の用量で投与される、請求項28に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年3月5日に出願された米国仮出願第62/814,149号の利益を主張し、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、医薬品分野に関し、特に急性心不全の治療に使用するためのイスタロキシム含有静脈用製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
心不全(HF)の有病率は年齢に依存し、60歳未満の人の2%未満から75歳以上の人の10%以上までの範囲となっている(Metra M, Teerlink JR, Lancet 2017; 390:1981-1995)。HFのほとんどの患者は、高血圧、冠状動脈疾患、心筋症、弁膜症、またはこれらの障害の組み合わせの病歴を有している(Metra M, Teerlink JR, Lancet 2017; 390:1981-1995)。計算によるHFを発症する生涯リスクは増加すると予想され、高血圧症の人はより高いリスクにある(Lloyd-Jones DM et al., Circulation 2002;106:3068-3072)。HFの患者は予後がよくなく、入院率と死亡率が高い。
【0004】
HFの臨床症状は、筋収縮性異常にある心臓の二重の病理学的特徴によって引き起こされ、収縮性排出の減少(収縮機能障害)、および静脈系から血液を吸引する心室の能力が低下するコンプライアンス異常をもたらし(拡張機能障害)、したがって、収縮期の収縮に利用できる血液の量が減少し、左心室(LV)充満の障害となる。HFの最初のトリガーメカニズムがどのようなものでも、主要な細胞内Ca2+ストアである筋小胞体(SR)によるCa2+取り込みの減少に起因する、細胞内Ca2+の異常な分布(Schwinger RH et al., J Mol Cell Cardiol. 1999;31(3):479-91; Bers D et al., Ann N.Y. Acad Sci 2006; 1080:165-177)は、収縮性と弛緩の障害の根底にある。この異常なCa2+分布には、ATP依存性Ca2+輸送ポンプであるSR膜のCa2+-ATPase(SERCA2a)が関与している。SERCA2a活性は、ホスホランバン(PLN)との相互作用によって生理学的に制限され(Asahi M et al., J Biol Chem 1999; 274: 32855-32862.; Toyoshima C et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2003;100: 467-47; Bers DM., Annu Rev Physiol 2008;70:23-49.; MacLennan DH, Kranias EG., Nat Rev Mol Cell Biol 2003; 4(7): 566-577)、SERCA2a抑制は、通常、プロテインキナーゼA(PKA)によるPLNリン酸化によって緩和され、HFリモデリングの結果としてシグナル伝達経路がきわめて抑制される(Karim CB et al., J Mol Biol 2006; 358: 1032-1040; Lohse M et al., Circ Res 2003; 93:896-906; Bers DM, Physiology 2006;21: 380-387; Mann DL, Bristow MR, Circulation 2005; 111:2837-2849)。心臓のSERCA2a活性の欠如は、機能不全の心筋のSRにおけるCa2+取り込みの低下の主な原因として広く認識されている(Bers D et al., Ann N.Y. Acad Sci 2006; 1080:165-177; Bers DM, Physiology 2006;21: 380-387; Minamisawa S et al., Cell 1999; 99: 313-322.)。
【0005】
筋細胞の収縮と弛緩への影響に加えて、異常なCa2+分布は心不整脈も促進し(Zaza A & Rocchetti M, Curr Pharm Des 2015; 21:1053-1061)、長期的にはアポトーシスによる筋細胞の喪失を加速する(Nakayama H et al., J Clin Invest 2007; 117:2431-44)。SERCA2a機能の低下は、エネルギー効率の低いNa-Ca交換体(NCX)を介したCa2+放出の補償的な増加を必要とするため、収縮のエネルギーコストも増加させる(Lipskaya L et al., Expert Opin Biol Ther 2010; 10:29-41)。実質的な証拠により、SERCA2a機能の正常化が、細胞内Ca2+ホメオスタシスを回復し、心筋細胞と心臓の収縮と弛緩をその場で改善することが示されている(Byrne MJ et al., Gene Therapy 2008;15:1550-1557; Sato et al., J Biol Chem 2001;276:9392-99)。要約すると、HFでのSERCA2a機能の回復は、不整脈、心筋酸素消費、および筋細胞死を最小限に抑えながら、心臓の弛緩性と収縮性を改善する可能性がある(Lipskaia L et al., Expert Opin Biol Ther. 2010; 10:29-41)。SERCA2aの活性化と並行して、Na,K-ポンプの阻害は、過剰な細胞質ゾルのCa2+蓄積を誘発することなく、細胞内Ca2+含有量をさらに増加させることができる(Shattock MJ et al., J Physiol. 2015; 15;593(6):1361-82)。したがって、Na,K-ATPase阻害とSERCA2a刺激の組み合わせは、不整脈源性Ca2+誘発事象のリスクを低減しながら、さらにポジティブな変力性作用をもたらす可能性がある。
【0006】
HFの現在の長期治療は、「心筋リモデリング」の予防に集中しており、収縮性の低下に対する慢性的な不適応反応である神経ホルモンストーム(βブロッカー、ACE阻害剤、アルドステロンアンタゴニスト)が、初期損傷を増幅し、病気の進展の根底にある(Heineke J & Molkentin D, Nat Rev 2006;7:589-600)。このアプローチには議論の余地のないメリットがあるが、HFを定義し、その症状の原因となる機能障害である、心臓の「収縮」と「弛緩」を対象とはしていない。実際、特に急性心不全(AHF)の患者などの進行した病期では、心収縮/弛緩を増加させる薬剤(「変力/変弛緩剤」)が依然として広く使用されており、AHF患者の処置に不可欠である(Metra M, Teerlink JR, Lancet 2017;390:1981-1995)。これらには、交感神経刺激アミン(ドブタミン)および強力な血管拡張作用を有するCa2+増感剤であるレボシメンダンが含まれる。残念ながら、これらの薬剤は、生命を脅かす不整脈の促進、心筋の酸素消費量の増加、および一部の患者における、血管拡張によって引き起こされる血圧の低下による不十分な冠状動脈血流の障害など、潜在的に有害な要素を伴うメカニズムによって、作用する(Ashkar H & Makaryus AN, Dobutamine [2018年10月27日更新], In StatPearls [インターネット], Treasure Island (FL): StatPearls Publishing, 2018-Jan-2017 (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK470431/)で入手可能; Gong B. et al., J Cardiothorac Vasc Anesth 2015;29:1415-25; EDITORIAL Patel PA et al., Circ Heart Failure 2014;7:918-925)。これは、AHFの症状を緩和するためのこれらの薬剤の使用を制限し、これらに割り当てられてグレードCのエビデンスとなった米国とEUのガイドラインの両方に明確に述べられているように、利用可能な臨床試験の結果に基づく最低レベルのエビデンスである(Rigopoulus AG et al., Herz 2017 Sep 22; Butler J et al., Eur J Heart Fail. 2018;20(5):839-841; Georghiade M et al., J Am Coll Cardiol. 2008;51:2276-85)。さらに、これらの薬剤は患者の予後と生存を改善せず、それらの治療的使用は注意深く監視する必要がある(Ashkar H & Makaryus AN, Dobutamine [2018年10月27日更新], In StatPearls [インターネット], Treasure Island (FL): StatPearls Publishing, 2018 Jan-2017 (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/ books/NBK470431/)で入手可能; Gong B. et al., J Cardiothorac Vasc Anesth 2015 29:1415-25)。
【0007】
陽性変力性剤(positive inotropes)の中で、Na,K-ATPase酵素活性の阻害剤である強心性配糖体ジゴキシンは、過去に最も一般的に処方された薬の1つである。しかし、ジゴキシンは0.9ng/mlの閾値レベル(主に不整脈による死亡リスクの増加が観察される)に達することなくその有益な効果を示すジゴキシン血清濃度範囲(0.5~0.7ng/ml)を維持することが困難であるため、その使用は過去数十年にわたって減少している(Packer M, Journal of Cardiac Failure 2016; 22:726-730; Packer M, Eur J Heart Failure 2018;20:851-852)。弛緩障害を改善せずに心臓の収縮を増加させる心臓ミオシン活性化剤であるオメカムチブメカルビル(OMECAMTIV MECARBIL)が臨床開発中であるが、その心臓への影響は、ある程度の心筋細胞の傷害/損傷を示す高感度トロポニン血漿中濃度の増加にも関連している(Teerlink JR et al., J Am Coll Cardiol. 2016;67(12):1444-1455)。
【0008】
陽性変力作用以外の作用機序を有するHF薬の開発についても、精力的な研究が進行中である。最も調査され、臨床開発中の薬剤は次のとおりである。セルラキシン(SERELAXIN)-組換えリラキシン2メディエーター;ウラリチド(ULARITIDE)-組換えナトリウム利尿ペプチド;BMS986231-ドナーなし;アドレシズマブ(ADRECIZUMAB)-アドレノメデュリン阻害剤;ANX-042 -NPのスプライスバリアント;TD1439-ネプリライシン(NEP)阻害剤。しかしながら、臨床第2~3相試験で評価した場合、これらの新しい薬剤はいずれも主要エンドポイントを満たしていない。
【0009】
慢性心不全(CHF)患者の臨床経過と予後は、AHFの発症後にさらに悪化する(Solomon SD et al., Circulation 2007;116:1482-87; Teneggi V et al., Hear Failure Rev 2018;23:667-691)。AHFは、心不全の症状と徴候の新たな発症または再発として定義でき、緊急の診療と治療が必要であり、予定外の治療または入院をもたらす(Teneggi V et al., Heart Failure Rev 2018;23:667-691; Packer M, Eur J Heart Failure 2018;20:851-852)。AHFの患者の半数は収縮機能(HFrEF)が低下しており、それは潜在的な治療の標的となっている(Braunwald E., Lancet 2015; 385:812-24)。駆出率が低下した患者(HFrEF)のAHFの治療は、血管拡張薬、利尿薬、または限外濾過によるうっ血の緩和、または、陽性変力薬による心拍出量の増加に焦点が当たっている。この治療戦略は心臓突然死のリスクを低減したものの、退院後の事象率は、AHFで入院した患者では容認できないほど高いままである。多くの望ましくない心血管系の副作用が、利用可能な療法によって引き起こされる可能性があり、例えば、特に冠状動脈疾患(CAD)の患者における、変力薬療法の結果としての、心筋虚血、心臓損傷、および不整脈などがあり(Abraham WT et al., J Am Coll Cardiol 2005; 46:57-64; Flaherty JD et al., J Am Coll Cardiol. 2009; 53(3):254-63)、特に低血圧のHF患者における、血管拡張薬によって引き起こされる末梢器官(腎臓)の低灌流および低血圧がある。したがって、入院中の主要な目標は、心臓および/または腎臓の損傷を引き起こすことなく、心拍出量を改善することである。
【0010】
さらに、左心室(LV)拡張期弛緩障害の検査または治療にはほとんど焦点が当てられておらず、HF患者の残りの50%で、駆出率(HFpEF)の維持(50)、または中範囲(40~49)の駆出率(HFmrEFまたはHFmEF)の低下が、HFの症状の原因となっている(Butler J et al., Eur J Heart Fail. 2018; 20, 839-841; Bonsu KO et al., Heart Failure Reviews 2018; 23:147-156)。さらに、EFが低下したAHF患者は、心機能の全体的な障害の一因となる心室弛緩の障害も示す。動物モデルとHF患者の両方の心臓弛緩能力を測定するために、LV充満圧増加の心エコー検査パラメーター(例えば、E/e’比)とともに、さまざまな心エコー検査指標が開発されている(例えば、初期僧帽弁輪組織速度[e’]の低下、および初期僧帽弁流入[E]減速時間[DT]の低下)。単一の指標の変化の対応は、一部の動物モデルと患者では完全に重ね合わせることができないが、心室弛緩障害の動物モデルの全体的な変化は、確実に人間の病状に翻訳可能であり、AHFでの薬物効果の研究に使用される(Shah SA et al., Am Heart J 2009;157:1035-41)。
【0011】
SERCA2a機能を増加させるさまざまな治療アプローチがこれまで調査されている。これらには、遺伝子導入によるSERCA2aの過剰発現(Byrne et al., Gene Therapy 2008;15:1550-1557)、またはネガティブドミナントの変異体の発現によるPLNの不活性化(Hoshijima M et al., Nat. Med. 2002;8:864-871; Iwanaga Y et al., J Clin Invest 2004;113, 727-736)、AdV-shRNA(Suckau L et al., Circulation 2009;119:1241-1252)、microRNA(Groβl T et al., PLoS One 2014;9:e92188)、または抗体(Kaye DM et al., J. Am. Coll. Cardiol. 2007;50:253-260)が挙げられる。HFにおけるSERCA2a遺伝子送達を適用した最大の第2b相臨床試験(CUPID2)の否定的な結果によって強調されるように、これらのアプローチは、構成物送達(ウイルスベクターなど)および用量調整における大きな問題に悩まされており、解決にはほど遠い(Hulot JS, Eur Heart J 2016;19:1534-1541)。イスタロキシムとは構造的に異なる、SERCA2a活性に対するホスホランバンの阻害効果を弱める小分子(ピリドン誘導体)が最近報告されたが(Kaneko M et al., Eur J Pharmacol 2017;814:1-7)、患者についての利用可能なデータはない。
【0012】
最先技術の全体像から、30年以上の試験および関連する文献公開にもかかわらず、AHF症状のために入院した患者の治療は、「証拠に基づく」というよりも、依然として大部分が「意見に基づく」である。(Rigopoulus AG et al., Herz 2017 Sep 22; Butler J et al., Eur J Heart Fail. 2018;20(5):839-841; Georghiade M et al., J Am Coll Cardiol. 2008;51:2276-85)。利用可能な薬物の多くは、救助と症状の緩和を念頭に置いて設計されており、必ずしもAHFの症状の原因となり得る特定の根本的な病態生理学/生化学的メカニズムを標的および修正するものではない。
【0013】
一般的なパラダイムとして、薬物は、患者の分子/タンパク質と相互作用することによって、望まれるまたは望まれない効果を生み出す分子である。これらの薬物の治療上の利点は、不適切なあるいはバランスがとれた活性のタンパク質に対する他の可能性のある作用を超えて、病気の症状の根底にあるタンパク質の異常を修正する際の選択性に依存する。
【0014】
心臓SERCA2a活性の欠損は、心不全患者の心筋細胞の弛緩の減少および不整脈に対する感受性の増加の、最も重要な原因の1つとして広く認識されている(Bers D et al., Ann N.Y. Acad Sci 2006; 1080:165-177; Bers DM, Physiology 2006;21:380-387; Minamisawa S et al., Cell 1999; 99:313-322; Fernandez-Tenorio M & Niggli E., J Mol Cell Cardiol. 2018 Jun;119:87-95)。この結果、潜在的なエネルギー不足の心臓障害状態は、SERCA2a欠損症の結果をさらに増大させる可能性がある(Ventura-Clapier R, Garnier A, Veksler V, Joubert F., Biochim Biophys Acta. 2011 Jul;1813(7):1360-72; Pinz I et al., J Biol Chem 2011; 286(12):10163-10168)。一方、これらの2つの原因は、認められれば、適切に対処される可能性がある。さらに、200年以上の間(文献の最初の証拠:著者は記載されていない、An Account of the Effects of the Digitalis Purpurea in Dropsy, Lond Med J. 1785;6:55-60)、その後にNa-Kポンプの抑制を通して作用することが認められたジギタリス(Digitalis)が、いくつかの望ましくない副作用(例えば、不整脈または長期の心筋細胞の損傷)にもかかわらず、心臓のポンプ活動を増加させるために使用されてきた(Hougen TJ, Friedman WF., Am J Physiol. 1982 Oct;243(4):H517-22; Whitbeck MG et al., Eur Heart J. 2013 May;34(20):1481-8)。後者の作用は、心筋細胞の細胞質のCa2+増加による可能性が非常に高く、一方では収縮を刺激するのに有用であるが、他方では、SERCA2a活性の欠如によってさらに増強される上記の副作用をもたらす可能性がある(Zaza A & Rocchetti M, Curr Parm Des 2015: 21:1053-1061)。その結果、これら2つの分子標的に対する「選択的」効果を組み合わせた薬剤は、患者にとって有益でありえ、あるいは少なくとも、これら2つの分子メカニズムの臨床的影響を証明または反証し得る。
【0015】
弛緩または収縮の欠損の程度が異なる患者の集団の治療反応と結果の違いにもかかわらず(Butler J, Eur J Heart Fail. 2018;20,839-841; Bonsu KO et al., Heart Failure Reviews 2018; 23:147-156)(HFrEF HF、HFmEF、またはHFpEFの、心不全の減少した駆出率(=<40)、心不全の中程度の減少(mまたはmr)の駆出率(40~50)、心不全の維持された駆出率(>50)、を考慮)、患者の3つの集団のSERCA2a活性化とNa-Kポンプ阻害に関する2つの活性の適切な組み合わせを評価することを目的とした治療戦略を開発することが求められている。
【0016】
特に、根底にある分子メカニズムを修正することによる拡張機能の改善がいまだ達成されていない、HFpEF患者(Bonsu KO et al., Heart Failure Reviews 2018; 23:147-156)の急性心不全の治療を改善するための強い、そしてこれまで満たされていない必要性がある。
【0017】
イスタロキシム(Istaroxime)(PST2744)は、EP0825197、および、De Munari S. et al., J. Med. Chem. 2003, 64, 3644-3654に記載され、(3Z,5α)-3-[(2-アミノエトキシ)イミノ]アンドロスタン-6,17-ジオンという化合物である。イスタロキシムは、Na+/K+ポンプを阻害する二重の作用機序を備えたAHFSの治療のための臨床開発中の新しい小分子薬である(Micheletti R et al., J Pharmacol Exp Ther 2002; 303:592-600) while activating SERCA2a (Rocchetti M et al., J Pharmacol Exp Ther 2005;313:207-15)。
【0018】
同レベルの変力作用では、イスタロキシムの催不整脈作用は、純粋なNa-Kポンプ阻害剤であるジゴキシンのそれよりもかなり低い(Rocchetti M et al., J Pharmacol Exp Ther. 2005;313:207-15)。これは、細胞質ゾルからのCa2+クリアランスを改善することにより(Alemanni, J Mol Cell Cardiol 2011;50:910-8)、SERCA2a刺激が、変力作用を維持しながら、Na-Kポンプ遮断の催不整脈作用も最小限に抑える可能性があること(Rocchetti M et al., J Pharmacol Exp Ther 2005;313:207-15; Zaza A & Rocchetti, M Curr Pharm Des 2015;21:1053-1061)を示唆している。イスタロキシムによる催不整脈作用の低下は、イスタロキシムが6時間の連続注入として投与された臨床研究(Georghiade M et al., J Am Coll Cardiol 2008;51:2276-85)で、確認されている。
【0019】
HF患者では、イスタロキシム注入により収縮機能と拡張機能の両方が改善された。収縮機能の改善は、収縮組織速度(s’)の増加および収縮末期エラスタンスの勾配(ESPVR勾配)の増加として検出され;拡張期コンプライアンスの増加は、初期弛緩組織速度(e’)の増加および拡張末期エラスタンス(EDPVR勾配)の低下によって明らかになった(Shah SA et al., Am Heart J 2009;157:1035-41)。
【0020】
GheorghiadeによるHorizon研究(Gheorghiade M et al., J Am Coll Cardiol 2008;51:2276-85)に記載された結果によると、イスタロキシムが6時間注入された場合、拡張期弛緩の改善のプラトー効果は、PCWP(肺毛細血管楔入圧)の低下として継続的に測定されて、3時間の注入後に発生し、その後、PCWPのレベルは6時間まで一定に保たれる。パラレルなデュアルターゲットであるSERCA2aおよびNa-Kポンプから予想されるように、イスタロキシムの注入量を増やした場合の心エコー検査の弛緩指標と収縮指標との効果の間に、明確な分離はない。したがって、SERCA2aの活性化による潜在的に有益な効果は、イスタロキシムが6時間まで注入された場合、Na-Kポンプ阻害による潜在的に有害な効果から分けることはできない。臨床(Gheorghiade M et al., J Am Coll Cardiol. 2008;51:2276-85; Shah SA et al., Am Heart J 2009;157:1035-41)、およびイヌの実験研究(Mattera GG et al., Am J Cardiol 2007;99[suppl]:33A-40A)の両方において、イスタロキシムのSERCA2a刺激活性の存在が、Na-Kポンプ阻害に関連する催不整脈活性を大幅に低下させることが示されたが、特に、拡張機能を適切に改善し、患者の病院からのより安全な退院を確実にするためには、臨床結果として、依然、満足のいくものではない。実際のところ、GheorghiadeとShahの臨床試験(Gheorghiade M et al., J Am Coll Cardiol 2008; 51:2276-85; Shah SA et al., Am Heart J 2009;157:1035-41)は、6時間の注入の終わりに、一回拍出量係数(SVI)および駆出率(EF)などのLV収縮期機能の従来のパラメーターは、プラセボと比較してイスタロキシムで劇的に変化せず、拡張期弛緩に対する効果の持続性は適切に述べられていない。
【0021】
イスタロキシムが6時間注入された全体的なHORIZON研究(Gheorghiade M et al., J Am Coll Cardiol. 2008; 51:2276-85; Shah SA et al., Am Heart J 2009;157:1035-41、参照)では、0.5μg/Kg/分と1.5μg/Kg/分の用量範囲内で、拡張期弛緩よりも収縮期収縮において大幅な改善が示された。
【0022】
拡張機能の改善は、「純粋な」SERCA2a活性化剤によって達成されることが期待されている。しかしながら、SERCA2aを選択的に活性化することを目的とした小分子または遺伝子治療の発見に関する精力的な研究にもかかわらず、これまでのところ有望な臨床成果は得られていない。
【0023】
したがって、特に拡張機能を改善するために、急性心不全の治療における進歩が長い間必要とされてきた。本発明は、上記の要求を満たし、先行技術の課題を克服するものである。
【発明の概要】
【0024】
驚くべきことに、6時間より長く、48時間に至るまでまたはそれ以上のイスタロキシムの静脈内注入は、6時間以下の同様の注入に対して、心臓拡張期弛緩の心エコー指標において予期しない改善をもたらし、一方、拡張期収縮の心エコー指標は、6時間から24時間の注入時間においてほとんど変化していないことが分かった。
【0025】
本明細書において、急性心不全の治療法において使用するための、ヒト対象への静脈内注入用に製剤化された、イスタロキシムを含む医薬組成物、が説明される。特に、注入による投与は6時間より長い持続時間であり、それにより、6時間以下(例えば、3~6時間)の持続時間の静脈内注入によるイスタロキシムの投与と比較して、拡張期弛緩が改善する。いくつかの実施形態において、拡張期弛緩の改善は、心エコーパラメーターのE/A、E/e’によって、または肺毛細血管楔入圧によって測定される。いくつかの実施形態において、注入時間は、約24時間に至る。他の形態において、それは約36時間、または48時間に至る。そのような実施形態において、イスタロキシムを含む医薬組成物は、0.2μg/kg/分~1.5μg/kg/分の用量で投与され;好ましくは、それは、0.25μg/kg/分~1.0μg/kg/分の用量で投与される。
【0026】
いくつかの実施形態において、イスタロキシムを含む医薬組成物は、少なくとも約6時間、約5ng/mlより大きい血漿中レベルのイスタロキシム代謝物を産生するのに十分な時間、投与される。特に、イスタロキシム代謝物は、以下のような、式(II)または式(III)の化合物を含み得る。
【化1】
式(II)
【化2】
式(III)
【0027】
いくつかの実施形態において、ヒト対象は、駆出率が保持された心不全(HFpEF)またはは駆出率が軽度低下した心不全(HFmEF)に罹患し、および/または、1つまたは複数のさらなる治療活性成分による心不全の治療処置を受けている。
【0028】
本発明の別の態様は、式(II)または式(III):
【化3】
式(II)
【化4】
式(III)
で示される化合物を特徴とする。
【0029】
いくつかの実施形態において、式(II)または式(III)で示される化合物は、心血管疾患などの、SERCA2aの活性化が求められる疾患の治療に使用される。特に、化合物は、急性心不全を治療するために使用され得る。いくつかの態様において、これらの化合物は、少なくとも1つの薬学的に許容されるビヒクルおよび/または賦形剤との混合物に含まれる。
【0030】
また、本明細書において、心不全を有する個体を治療するための方法であって、以下のステップ:(1)心不全を有する個体を提供すること;(2)6時間より長い注入時間の間、治療有効量のイスタロキシムを含む医薬組成物を個体に投与すること;および、(3)拡張期弛緩などの心臓機能の1つ以上のパラメーターを測定すること、を含む方法が開示される。このような方法において、医薬組成物の投与は、6時間以下の静脈内注入によって投与されるイスタロキシムと比較して、拡張期弛緩の改善をもたらし、それにより、急性心不全を有する個体を治療する。好ましい実施形態において、個体はヒトである。特定の実施形態において、注入時間は約24時間に至る。他の実施形態において、注入時間は約36時間に至る。さらに他の形態において、注入時間は約48時間に至る。そのような方法において、イスタロキシムは、約0.2μg/kg/分~約1.5μg/kg/分の用量で投与され得る。好ましくは、それは、約0.25μg/kg/分~約1.0μg/kg/分の用量で投与される。
【0031】
いくつかの実施形態において、個体は、駆出率が保持された心不全(HFpEF)または駆出率が軽度低下した心不全(HFmEF)と診断されている。他の実施形態において、個体は、1つまたは複数のさらなる治療活性成分により心不全の治療処置を受けている。
【0032】
また、本明細書において、急性心不全の治療のための、個体に静脈内注入するためのイスタロキシムを含む医薬組成物が特徴とされる。そのような態様において、投与は、少なくとも約6時間の累積時間の間、約5ng/mlより大きい血漿中濃度レベルのイスタロキシム代謝物を個体において産生するのに十分な注入時間であり、それにより、拡張期弛緩は、累積時間より前のイスタロキシムの投与と比較して改善される。好ましくは、イスタロキシム代謝物は、式(II)または式(III)のものを含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、注入時間は、少なくとも約6時間の累積時間の間、約10ng/mlより大きい血漿中濃度レベルのイスタロキシム代謝物を産生するのに十分なものである。他の実施形態において、イスタロキシム代謝物の血漿中濃度レベルは、少なくとも約6時間の累積時間の間、約15ng/mlよりも大きい。さらに他の形態において、それは、約20ng/mlよりも大きい。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.2μg/kg/分~約1.5μg/kg/分の用量、好ましくは、約0.25μg/kg/分~約1.0μg/kg/分の用量で、投与される。
【0034】
本発明の他の態様は、心不全を有する個体を治療するための方法であって、以下のステップ:(1)心不全を有する個体を提供すること;(2)少なくとも約6時間の累積時間の間、約5ng/mlより大きい血漿中濃度レベルのイスタロキシム代謝物を産生するのに十分な注入時間のために、治療有効量のイスタロキシムを含む医薬組成物を個体に投与すること;および、(3)拡張期弛緩を含む、心臓機能の1つ以上のパラメーターを測定すること、を含む方法、が特徴とされる。
【0035】
いくつかの実施形態において、イスタロキシム代謝物の血漿中濃度レベルは、少なくとも約6時間の累積時間の間、約10ng/mlより大きい。他の実施形態において、それは少なくとも約6時間の累積時間の間、約15ng/mlよりも大きい。さらに他の形態において、それは少なくとも約6時間の累積時間の間、約20ng/mlより大きい。組成物の治療上有効な用量は、約0.2μg/kg/分~約1.5μg/kg/分、好ましくは、0.25μg/kg/分~1.0μg/kg/分である。
【0036】
本発明のさらに別の態様において、急性心不全を有する個体を治療するための方法であって、以下のステップ:(1)急性心不全を有する個体を提供すること;(2)心エコーパラメーターのE/A、E/e’または肺毛細血管楔入圧によって測定される拡張期弛緩を含む、心臓機能の1つ以上のパラメーターを測定すること;および、(3)個体の拡張期弛緩を改善するのに十分な期間、少なくとも約1.0μg/kg/分の用量で、治療有効量のイスタロキシムを含む医薬組成物を個体に投与すること、を含む方法が特徴とされる。次いで、個体の拡張期弛緩が改善した後、少なくとも約6時間の累積時間、約5ng/mlより大きい血漿中濃度レベルのイスタロキシム代謝物を個体において産生するのに十分な注入時間の間、約0.25μg/kg/分~約1.0μg/kg/分の用量で、イスタロキシムを含む治療有効量の第2の医薬組成物が、個体に投与される。そのような態様において、イスタロキシム代謝物は、式(II)または式(III)のものを含む。
【0037】
本発明のさらなる他の態様は、心不全を有する個体を治療するための方法であって、以下のこと:(1)心不全を有する個体を提供すること;(2)イスタロキシム代謝物を含む治療有効量の医薬組成物を、6時間より長い注入時間の間、個体に投与すること;および、(3)拡張期弛緩などの心臓機能の1つ以上のパラメーターを測定すること、を含む方法が特徴とされる。いくつかの態様において、注入時間は、約0.2μg/kg/分~約1.5μg/kg/分の用量で、好ましくは、約0.25μg/kg/分~約1.0μg/kg/分の用量で、6時間~48時間である。特定の実施形態において、個体は、駆出率が保持された心不全(HFpEF)または駆出率が軽度低下した心不全(HFmEF)と診断されている。
【0038】
本開示のこれらおよび他の特徴および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、および添付の図面によってより理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、患者における肺毛細血管楔入圧(PCWP)の変化の時間経過を示し、プラセボ(白い菱形)を注入した患者と、0.5μg/kg/分(濃い菱形)、1.0μg/kg/分(正方形)、および1.5μg/kg/分(三角形)の用量で、6時間、イスタロキシムを注入した患者との比較である。X軸は、平均PCWP(mmHg)を表し、Y軸は、時間(時間)を表す。
【0040】
【
図2A】
図2Aは、0.5μg/kg/分でイスタロキシムを24時間静脈内注入した白人患者における、イスタロキシム(正方形)およびその代謝物の血漿中濃度を示す。代謝物は、PST2915(菱形)、PST2922(円)、およびPST3093(三角形)である。X軸は、血漿中濃度(ng/ml)を表し、Y軸は時間(時間)を表す。
【0041】
【
図2B】
図2Bは、0.5μg/kg/分でイスタロキシムを24時間静脈内注入した白人患者(左パネル)および中国人患者(右パネル)における、イスタロキシム(正方形)およびその代謝物の血漿中濃度を示す。代謝物は、PST2915(菱形)、PST2922(円)、およびPST3093(三角形)である。X軸は、血漿中濃度(ng/ml)を表し、Y軸は、時間(時間)を表す。
【0042】
【
図2C】
図2Cは、1.0μg/kg/分でイスタロキシムを24時間静脈内注入した中国人患者における、イスタロキシム(正方形)およびその代謝物の血漿中濃度を示す。代謝物は、PST2915(菱形)、PST2922(円)、およびPST3093(三角形)である。X軸は、血漿中濃度(ng/ml)を表し、Y軸は、時間(時間)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書に開示される組成物および方法は、心不全に罹患する個体に予期しなかった利益を与える。本明細書において、イスタロキシムまたはその代謝物を含む組成物が提供される。さらに、本明細書に開示されるように、イスタロキシムまたはその代謝物を6時間以上注入すると、心臓収縮よりも選択的に心臓弛緩が改善する。さらに、イスタロキシム注入時間を延ばして、その代謝物の1つまたは複数の蓄積を可能にすることができ、そのうちの少なくとも1つは単一機能のSERCA2a活性を示す(すなわち、「純粋な」SERCA2a活性化剤として機能する)。以下、本明細書に開示の組成物および方法を詳細に説明する。
【0044】
定義
特に断りのない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。特に断りのない限り、標準的な技術が用いられる。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を本開示の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下に説明する。材料、方法、および例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書に記載されているすべての刊行物、特許、およびその他の文書は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0045】
本明細書において、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0046】
「約」との用語は、その測定値を得るために用いられる装置の典型的な誤差割合に起因する、例えば、体積、時間、圧力、濃度などの測定値の数値の変動を意味する。一実施形態において、「約」との用語は、述べられた数値の5%以内を意味し、好ましくは、「約」との用語は、述べられた数値の3%以内を意味する。
【0047】
「心不全」との用語は、安静時またはストレス時に、心拍出量の減少および/または心臓内圧の上昇をもたらす、構造的および/または機能的な心臓の異常によって引き起こされる徴候(例えば、頸静脈圧の上昇、肺雑音および末梢浮腫)に伴い得る典型的な症状(例えば、息切れ、足首の腫れおよび疲労)を特徴とする、臨床症候群を意味する。
【0048】
「急性心不全」または「AHF」との用語は、本明細書において互換的に使用され、一般に、即時の治療および入院を必要とするHFの症状および/または徴候の急速な発症または悪化を意味する。「急性心不全」の現在の定義はかなり非特異的であり、さまざまな臨床症状、病因、増悪因子、治療的アプローチ、および予後に特徴付けられるいくつかの表現型による広範囲の病気を含み得る。さらに、患者の大部分は、入院の数日前に発症し得るHFの徴候および症状の進行性の悪化による亜急性の疾患経過を有する。
【0049】
「慢性心不全」または「CHF」との用語は、本明細書において互換的に使用され、HFおよび左心室駆出率(LVEF)の徴候および症状の存在に基づく、慢性HFの現在の臨床分類を意味し、次の3つのカテゴリー:「駆出率が低下した心不全」すなわち「HFrEF」(約40%未満のLVEFを特徴とする);「駆出率が軽度低下した心不全」すなわち「HFmEF」または「HFmrEF」(約40%~約49%のLVEFを特徴とする);および、「駆出率が保持された心不全」すなわち「HFpEF」(約50%と同じかそれ以上のLVEFを特徴とする)、が認められている。「HFmrEF」および「HFpEF」との用語には、2つの追加基準、すなわち、構造的および/または機能的な心臓疾患のエビデンス(左心室肥大、および/または左心房拡大、および/または拡張機能障害のエビデンス)に関連する、ナトリウム利尿ペプチドレベルの増加(BNP>35pg/ml、および/またはNT-proBNP>125pg/mL)、が含まれる。HFエビデンスに基づく薬物療法の有効性は、「HFrEF」の患者でのみ確認されており、一方、「HfpEF」の患者では、有意な改善の結果を示す治療はなかった。
【0050】
「治療する」との用語は、疾患または病気の治療または改善における成功の兆候を意味する。治療は、例えば、疾患または病気の1つまたは複数の症状の重症度を軽減または緩和することを含むことができ、あるいはそれは、疾患、不具合、障害、または悪い状態などの症状をヒト患者などの個体が経験する頻度を減らすことを含むことができる。
【0051】
「予防する」との用語は、ヒト患者などの個体における疾患または病気、例えば、急性心不全、の予防を意味する。例えば、心不全を発症するリスクのある個体が本発明の方法で処置され、後で心不全を発症しない場合、疾患はその個体において予防されている。
【0052】
「治療または予防」との用語は、本明細書において、疾患または病気のあるレベルの治療または改善をもたらす方法を意味するために使用されることがあり、その目的に向けられた一連の結果を企図するが、完全な病気の防止に制限されるものではない。
【0053】
本明細書において、「薬学的に許容される担体」との用語は、イスタロキシム化合物またはイスタロキシム代謝物と組み合わせることができ、組み合わせたあとに、化合物を哺乳動物に投与するために使用できる、化学組成物を意味する。
【0054】
本明細書において、「薬学的に許容される」塩、溶媒和物、水和物、またはエステルとの用語は、医薬組成物の他の成分と適合性があり、組成物が投与される対象に有害ではない、有効成分の、塩、溶媒和物、水和物、またはエステルの形態を意味する。
【0055】
「静脈内注入」との用語は、哺乳動物の静脈への直接の液体物質の投与または送達を意味する。典型的な「注入」は、重力によって供給される圧力のみを使用する。
【0056】
本明細書において、心臓機能の測定を意図する「パラメーター」との用語は、当技術分野で利用可能な適切な測定技術を用いて観察可能または測定可能な任意の心臓機能を意味する。心臓機能の「パラメーター」としては、これに限定されるものではないが、例えば、心拍数、血圧、拡張期弛緩、収縮期収縮、LVEF、拡張期血圧、収縮期血圧、心拍出量、一回拍出量、減速勾配(deceleration slope)、心係数、僧帽弁流入血流速度などが挙げられる。当業者が理解するように、心臓機能の1つまたは複数の「パラメーター」を測定することは、平均的な正常パラメーターと比較して、心臓機能障害を検出するために用いることができ、また、治療中または後に心臓機能が改善したかどうかを決めるために使用することができる。
【0057】
「治療活性な」または「活性な」成分または化合物との用語は、物質が投与される個体に有益な効果を提供する物質を意味する。「治療有効量」または「治療有効用量」は、組成物または有効成分が投与される個体に有益な効果を提供するのに十分な組成物または活性成分の量である。
【0058】
説明
本発明は、6時間以上のイスタロキシム注入が、心臓弛緩のエコー指標(E/A DT、e’、E/e’、および左心房の面積または体積)を、収縮のエコー指標(Saおよびs)を変化させないまま、明らかに変化させることによって示されるように、一般的な変弛緩効果、または心臓弛緩低下の改善を提供する、という予期しない発見に基づく。いくつかの実施形態において、イスタロキシム注入は、約6時間から48時間までかそれ以上であり、例えば、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、30時間、31時間、32時間、33時間、34時間、35時間、36時間、37時間、38時間、39時間、40時間、41時間、42時間、43時間、44時間、45時間、46時間、47時間、48時間、またはそれ以上、である。例えば、注入は、24時間に至り、または36時間に至り、または48時間に至り、またはそれ以上であり得る。他の実施形態において、注入時間は、6時間より長く、約48時間以下であり、または、6時間より長く、約36時間以下であり、または、6時間より長く、約24時間以下であり、または、6時間より長く、約12時間以下である。イスタロキシムまたはその代謝物の注入は、イスタロキシムまたはその代謝物を6時間以下、例えば、0、1、2、3、5、または6時間の間、注入する場合と比較して、一般的な変弛緩効果、または心臓弛緩低下の改善を提供することが理解される。
【0059】
重要なことに、4つの独立したデータ群の分析により、6時間以上のイスタロキシム注入が、一般的な変弛緩効果と心臓弛緩の改善を提供することが確認されている。まず、
図1は、イスタロキシムを6時間まで静脈内注入した患者のPCWPの時間経過を示している。イスタロキシムを6時間静脈内注入した患者のHORIZON研究で前述したように、当業者が拡張期弛緩の有効なマーカーとして認識しているPCWPの経時変化は、最初の3時間で拡張期弛緩の改善を示すが、その後、平均PCWPが横ばいになり、次の3時間は変化していない(
図1参照)。言い換えれば、イスタロキシムを6時間注入された患者は、注入の3~6時間の間に拡張期弛緩の改善を示さなかった。対照的に、イスタロキシムの静脈内注入を24時間投与された患者は、拡張期弛緩の心エコー指標が6~24時間に明らかに増加しており、一方、収縮期収縮の指標は変化していない(表1A~表1C参照)。さらに、
図2A~
図2Cに示すように、6時間および24時間の時点で、イスタロキシム代謝物PST3093の血漿中濃度において漸進的かつ顕著な増加がみられ、一方、イスタロキシムの血漿中濃度はこの間一定のままである。最後に、PST3093の合成とその後の生化学的および薬理学的研究は、この化合物が、
図2に示される静脈内注入試験の濃度よりもはるかに低い濃度で、選択的なSERCA2a刺激活性(例えば、実施例2および表3、参照)を有することを示している。さらに、糖尿病性心筋症のラットモデルへの注入は、拡張期弛緩の改善と関連している(表5参照)。Munafoら(Nature 2018, 553(7689):399-401)によれば、単に単一の実験を繰り返すのは十分ではなく、むしろ多くの証拠が必要である。したがって、これらの4つの独立した知見の間に一貫性があり、それ自体で、6時間以上のイスタロキシム注入が、より短い注入時間と比較して、一般的な変弛緩効果および心臓弛緩改善を提供する、という主張に、科学的信頼性を与えるものである。
【0060】
イスタロキシムの血漿中濃度は、注入の全期間にわたって、続く時点の間、一定のままである(すなわち、3時間の時点での約10ng/mlから約8ng/mlの範囲内)ので、これらの発見は完全に予想外である。本発明者らは、ヒトにおいて、このイスタロキシムの長期注入が、選択的または「純粋な」SERCA2a活性化剤として作用する、イスタロキシム代謝物PST3093およびPST2915の濃度を増加させることを発見したものである。さらに、これはPST3093において選択的にさらに大きくなり、したがって、拡張機能を収縮機能よりも改善するという予期しない効果を説明している。
【0061】
その結果、HFpEFまたはHFmEFの患者は、代謝物の血漿中濃度を、イスタロキシムの血漿中濃度よりも増加させることにより、拡張期弛緩障害のより選択的な矯正による利益を得る可能性がある。したがって、不整脈または心筋細胞の損傷について関連する望ましくない作用を有するイスタロキシムの一定の血漿中濃度にもかかわらず、Na+/K+ポンプ阻害を最小限に抑えるものである。有利なことに、臨床結果は、急性心不全の治療後、より安全な患者を放出するものである。
【0062】
イスタロキシムは、以下の構造式(I):
【化5】
式(I)
で示される、変力性を有する化合物である。
【0063】
ヒトなどの哺乳動物に投与すると、イスタロキシムは、SERCA2aを活性化することが可能ないくつかの代謝物に代謝される。
【0064】
【0065】
このように、本明細書において、以下の構造式(II)および構造式(III):
【化7】
式(II)
【化8】
式(III)
で示される、SERCA2a活性を有するイスタロキシムの代謝物が開示される。
【0066】
好ましい実施形態において、選択的または「純粋な」SERCA2a活性を有するイスタロキシムの代謝物(ここでは、PST3093とも呼ばれる)は、式(III)の化合物である。
【0067】
本発明者らは、PST2915およびPST3093を単離し、そして特性を確かめた。糖尿病性心筋症のラットにおいて、PST3093の投与は、一回拍出量SVの増加として測定されるように、拡張期弛緩および全体的な心臓機能の改善を示した。
【0068】
したがって、本発明の目的は、式(II)の化合物または式(III)の化合物、またはそれらのそれぞれの薬学的に許容される塩またはエステル、ならびにそれらの異なる水和物、溶媒和物、多形体の形態の、SERCA2a活性化特性を利用することでもある。。本発明の別の目的は、特にSERCA2aの活性化が求められる疾患を治療するために、より好ましくは、心不全または急性心不全を治療するために、医薬として使用するための、式(II)または式(III)の化合物である。
【0069】
また、本明細書において、式(II)または式(III)の化合物を、少なくとも1つの薬学的に許容されるビヒクルおよび/または賦形剤と混合して含む、医薬組成物が開示される。好ましい実施形態において、医薬組成物は、注入によって、好ましくは、静脈内注入によって、個体に投与するために、製剤化される。
【0070】
心臓拡張期弛緩の改善に対する本発明の驚くべき効果は、以前の研究(HORIZON臨床試験)の6時間注入と、本発明による24時間注入との間の、心臓パラメーターの比較からよりいっそう理解することができる。研究の概要を以下に説明し、6時間の注入、24時間の注入、および48時間の注入におけるデータを、それぞれ、表1A、表1B、および表1Cに、まとめている。
【0071】
臨床試験の概要をここに記載する。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0072】
心エコー検査は、国際基準に従って患者に対して実施された(例えば、Lang RM et al., J Am Soc Echocardiogr 2005;18(12):1440-63; Nagueh SF et al., Eur J Echocardiogr 2009;10(2):165-93; Evangelista A et al., Eur J Echocardiogr 2008;9(4):438-48、参照)。心エコー検査は、現場の専門医または超音波検査技師によって行われた。心エコー検査は、スクリーニング、ベースライン、注入開始の6時間後、注入開始の24時間後(注入終了の直前)、および注入開始の48時間後に行われた。
【0073】
以下のパラメーターが、各時点で各患者について記録され、CoreLabによって中央で測定された。
1.心臓の寸法の測定
a.左心室拡張末期径(EDD):傍胸骨長軸像(PLAX)から、僧帽弁(MV)小葉のレベルで、Mモード心エコー検査で測定(正常範囲[NR]:男性42~59mm、女性39~53mm);
b.左心室収縮末期径(ESD):PLAXから、僧帽弁(MV)小葉のレベルで、Mモード心エコー検査で測定(NR:25~35mm);
c.左心室拡張末期容積(EDV):PLAXから、僧帽弁(MV)小葉のレベルで、Mモード心エコー検査で測定(NR:男性67~155mL、および女性56~104mL);
d.左心室収縮末期容積(ESV):PLAXから、僧帽弁(MV)小葉のレベルで、Mモード心エコー検査で測定(NR:男性22~58mL、および女性19~49mL);
e.左心房径(LAD):PLAXから、Mモード心エコー検査で心室収縮末期に測定(NR:男性30~40mm、女性27~38mm);
f.左心房面積(LAA):心尖部四腔断層像から測定(NR:≦20cm
2);および、
g.左心房容積(LAV):心尖部四腔断層像から測定された面積-長さから導き出される(NR:男性18~58mL、および女性22~52mL)。
2.左心室拡張機能パラメーター
a.E波:僧帽弁パルスドプラから測定され、早期充満のピーク速度である。すべての拡張期パラメーターの正常範囲は、年齢とともに大幅に変化する。
b.A波:僧帽弁パルスドプラから測定され、後期心房充満のピーク速度である。AFの患者では評価できない。
c.E波減速時間(EDT):僧帽弁パルスドプラから測定され、E波の下降部分の勾配を表す。
d.E/A比:拡張期充満パターンのタイプを決定する(正常型E/A=1~2、およびEDT=150~200ms、弛緩異常型E/A<1、およびEDT≧240ms、擬正常E/A=0.8~1.5;拘束型E/A≧2、およびEDT<160ms)。AFの患者では評価できない。
e.Ea:僧帽弁輪の側方および中隔側で、組織ドプラ法を使用して、心尖部四腔断層像から測定され、初期の拡張期速度である。この値は、側方Eaと中隔Eaの平均として計算されている。(NR≧10cm/s)(Nagueh SF et al., Eur J Echocardiogr. 2009;10(2):165-93、参照)。
f.Aa:僧帽弁輪の側方および中隔側で、組織ドプラ法を使用して、心尖部四腔断層像から測定され、後期の心房拡張期速度である。この値は、側方Aaと中隔Aaの平均として計算されている。AFの患者では評価できない。
g.E/Ea比:これは、E値とEa値から導出される測定値である。これは、左心室充満圧、およびHF患者の予後と、高い相関がある。(NR:<13)(上記のNagueh SF et al.、参照)。
3.左心室収縮機能パラメーター
a.左心室駆出率(LVEF):心尖部四腔断層像および心尖部二腔断層像から、国際的な推奨に従って、Simpson biplane法で測定される。(NR≧55%)(Lang RM et al., J Am Soc Echocardiogr. 2005;18(12):1440-63、参照)。
b.Sa:僧帽弁輪の側方および中隔側で、組織ドプラ法を使用して、心尖部四腔断層像から測定される。この値は、側方Saと中隔Saの平均として計算されている。検証試験は、SaがLVEFと相関することを示した(NR≧6cm/s)(Gulati VK et al., Am J Cardiol. 1996;77(11):979-84、参照)。
4.全体的な心臓収縮パラメーター
a.一回拍出量(SV):左心室流出路(LVOT)の寸法を直径とし、LVOT時間速度積分を速度として用い、ベルヌーイの式を適用して得られた測定値である。(NR>60mL/拍)。
b.心拍出量(CO):SV×心拍数(HR)の乗算によって導出される(NR:>4L/分);
c.一回拍出量指数(SVI):体表面積(BSA)によるSVの調整によって得られる導出パラメーターである(NR:33~47mL/拍/m
2)。
d.心係数(CI):体表面積(BSA)によるCOの調整によって得られる導出パラメーターである(NR:2.5~4L/分/m
2)。
5.右心室機能パラメーター
a.肺動脈収縮圧(PASP):三尖弁輪連続波ドプラでのピーク速度と下大静脈径および呼吸変化から導出された固定値の総合によって推定される。(NR<35mmHg)。
b.三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE):心尖部四腔断層像から、Mモードの心エコー検査から測定される。TAPSEは、右心室駆出率と、HFの予後不良に関連するその減少と相関している。(NR>16mm)(Ghio S et al., J Am Coll Cardiol 2001;37(1):183-8、参照)。
c.右心室Sa:心尖部四腔断層像から、右心室自由壁で、組織ドプラ法により測定される。Saは、収縮機能の導出パラメーターであり、右心室駆出率と相関している。(NR>10cm/s)(Voelkel NF et al., Circulation 2006;114(17):1883-91; Haddad F et al., Circulation 2008;117(13):1717-31、参照)。
6.その他のパラメーター:
a.僧帽弁逆流(MR):視覚的定性的検査で評価され、4つのカテゴリー:なし、軽度、中等度、および重度、に分類される(Lancellotti P et al., Eur J Echocardiogr 2010;11(4):307-32、参照)。
b.下大静脈径(IVC):右心房との接合部から1~2cmの肋骨下像から、Mモードの心エコー検査で測定される。このパラメーターは、収縮期肺動脈圧を推定するために使用されている。うっ血の程度を示す右心房圧と相関している。IVC径の増加は、HF患者の予後と関連している(NR:≦1.5cm)(Pellicori P et al., JACC Cardiovasc Imaging 2013;6(1):16-28; Voelkel NF et al., Circulation 2006;114(17):1883-91、参照)。
【表10】
【表11】
【表12】
【0074】
ヒト血漿中のPST2744およびその代謝物PST2915の定量分析は、70:30のアセトニトリル/水、1mL/Lの1Mギ酸、および1mL/Lの5M酢酸アンモニウムの移動相を含む、HPLC-MS/MS法によって測定された。流速は1mL/minであり、クロマトグラフィー分離は、逆相HPLC(カラム:SYNERGI 4μ POLAR-RP80A 150×4.6mm、セキュリティガードPhenomenex Polar-RP 4×3mmを装備)によるものであった。検出は、MS/MSによって実施され、取得モードはマルチプルリアクションモニタリング(MRM)であった。
【0075】
ヒト血漿中のイスタロキシム代謝物PST2922およびPST3093の定量分析も、HPLC-MS/MS法によって測定された。この場合、移動相は、50:50のH2O/CH3CN(v/v)、500μL/Lの98~100%HCOOHであった。流速は1mL/minであり、クロマトグラフィー分離は、アイソクラティック条件下、逆相HPLC(カラム:Phenomenexフェニルヘキシル、150×4.6mm、Phenomenexフェニルプロピルガードカートリッジを装備)によって行った。検出は、MS/MS(IS、PST2922の場合は376.0→282.0amu、PST3093の場合は378.0→284.0amu、PST3418の場合は362.0→268.0amu)によって実施された。
【0076】
表1Aに報告したデータにより、0.5μg/kg/分または1μg/kg/分のイスタロキシムの注入は、0.5μg/kg/分のE/e’でのみ有意な減少が発生しているが、拡張機能の変化するエコーパラメーター(E波、A波、およびE/A比)のほとんどを有意に改善しないことが明確に示されている、。収縮機能(Sa波およびS波)は1μg/kg/分で改善されている。
【0077】
驚くべきことに、イスタロキシムを24時間注入した場合、ほとんどの拡張機能パラメーター(E波、A波、E/A比、およびE/e’比)で明確で統計的に有意な改善が観察されており、一方、収縮機能(Sa波およびS波)の陽性効果は維持されるが、増加は続かない(表1B参照)。48時間でも、COおよびCIの変化はどちらも、プラセボよりも有意に増加している(表1C参照)。6時間および24時間でのSVおよびSVIの増加変化から、48時間でのCOおよびCIの変化へのシフトは、6時間および24時間でのHRの減少の正常化によっても支持され、これは、以前のHorizon研究で実証され、本研究において確認された。心臓の弛緩と収縮の他の指標の変化はまだ存在するが、統計的有意性は得られていない。
【0078】
図2A~
図2Cは、0.5μg/kg/分または1μg/kg/分のイスタロキシムを24時間注入中および注入後の、白人および中国人患者におけるイスタロキシムとその代謝物の血漿中濃度を示している。注入期間中、イスタロキシム(2744)およびイスタロキシム代謝物PST2922は、どちらも比較的一定のままであり、注入を停止した後に急速になくなっている。一方、イスタロキシム代謝物PST2915およびPST3093は、注入期間を通じて血漿中に蓄積し続け、注入期間終了までにPST3093の平均濃度は60ng/mLを超え、平均濃度レベルは、注入後46時間、または70時間でも、10ng/mLを超えている。
【0079】
特に、注入の48時間では、20時間後に血漿中濃度レベルのイスタロキシムは検出されないが、代謝物PST3093の血漿中濃度は、0.5μg/kg/mlのイスタロキシム注入後の白人患者において、平均約25.02ng/mlであり、0.5 μcg μg/kg/mlのイスタロキシム注入後の中国人患者において、平均約12.5ng/mlであり、1μg/kg/mlのイスタロキシム注入では、平均約21.2ng/mlである(
図2A~
図2C参照)。これらの濃度は、表3に示すように、正常なイヌの心臓のSR小胞においてSERCA2a刺激活性を示す3093の濃度よりもはるかに高い。さらに、Ferrandi Mら(BJP 2013; 169:1849-1861)によれば、イスタロキシムは、健康なイヌの心臓のSR小胞においてこの活性を刺激できる濃度よりもはるかに低い濃度(約10倍)で、機能不全のイヌの心臓のSR小胞において最大のSERCA2a活性化を発揮する。したがって、心臓SR小胞の正常と機能不全との間のこの顕著な違いは、PST3093でも発生する可能性があり、心エコーデータが利用できない、72時間で検出される低濃度でもSERCA2a刺激活性を維持し続ける可能性がある(
図2A~
図2C参照)。
【0080】
理論に拘束されることを意図するものではないが、上記の観察は、純粋なSERCA2a活性化剤が心臓ポンプ機能を改善し得るという仮説と一致している。最後に、心臓ポンプ機能の有効性のこの変化は、心臓専門医によって心筋損傷の最も信頼できるバイオマーカーと考えられている、Hs TnTの血漿中濃度の有意な変化とは関連していない。このHs TnT変化の欠如は、心筋細胞の血漿Ca2+濃度を低下させることにより、心筋細胞の損傷を最小限に抑える、SERCA2aの活性化が原因である可能性がある。現在、開発中の唯一の利用可能な変力剤(オメカムチブ(omecamtiv))による心臓ポンプ能力の刺激は、Hs TnTの血漿中濃度の増加に関連しており、血漿Hs TnTにおけるこれらの変化を最小限に抑える用量を検出するために、さまざまな開発戦略が研究されている(Teerlink J R et al., 2016 Lancet 388, 2895-903)。
【0081】
本発明は、PST3093とイスタロキシムとの血漿中濃度の異なる比率が、イスタロキシム注入の用量および時間を変えることによって、達成可能であるかどうかを評価することを目的とした適切な試験を計画するための基礎を提供することが可能であり、HFrEFの患者よりもHFpEFまたはHFmEFの患者に、あるいは、拡張期機能障害の状態を明らかにする心エコー指標の有無にかかわらない患者において、より大きな治療的利益を与えることができ、したがって、AHFの治療アプローチの精度を向上させる。
【0082】
医薬組成物
少なくとも1つの従来の薬学的に許容される担体および/またはビヒクルおよび/または賦形剤と混合したイスタロキシムまたはその代謝物を含む静脈内注入用の医薬組成物および製剤が、当技術分野において一般に知られる。
【0083】
静脈内注入用の医薬組成物および製剤は、任意の方法で製剤化することができ、病気または疾患および病気の程度、各患者の一般的な病状、および、それにより得られる好ましい投与方法などに応じて、さまざまな単位剤形で投与することができる。製剤および投与の技術の詳細は、科学文献および特許文献に詳しく説明されており、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co, Easton PA (「Remington’s」)の最新版を参照されたい。
【0084】
製剤は、単位剤形において簡便に提供することができ、薬剤の分野で知られている任意の方法によって製造することができる。単一の剤形を製造するために担体またはビヒクル材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される対象および特定の投与方法に応じて変化するものである。単一の剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生み出す化合物の量である。
【0085】
本明細書で提供される医薬製剤は、医薬品の製造のための当技術分野で知られている任意の方法に従って製造することができる。そのような製剤は、保存剤または安定剤などの追加の剤を含むことができる。製剤は、製造に適した無毒の薬学的に許容される担体または賦形剤と混合することができる。製剤は、1つまたは複数の、希釈剤、乳化剤、保存剤、緩衝液、賦形剤などを含むことができ、液体、粉末、エマルジョン、凍結乾燥粉末などの形態で提供することができる。
【0086】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合して、活性剤(例えば、本明細書で提供される使用および方法を実施するために用いられる組成物)を含むことができる。そのような賦形剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、およびアカシアガムなどの懸濁剤、および、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)などの分散剤または湿潤剤、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、または、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、が挙げられる。水性懸濁液はまた、エチルp-ヒドロキシベンゾエートまたはn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエートなどの1つまたは複数の保存剤を含むことができる。製剤は浸透圧を調整できる。
【0087】
本発明によれば、イスタロキシムは静脈内(IV)投与によって与えられる。これらの製剤は、薬学的に許容される担体に溶解された活性剤の溶液を含み得る。使用できる許容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、デキストロース含有水、およびリンゲル液、等張塩化ナトリウム液である。これらの溶液は無菌であり、一般に望ましくない物質が含まれていない。これらの製剤は、従来のよく知られた滅菌技術によって滅菌することができる。製剤は、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどの、生理学的条件に近づけるために必要とされる薬学的に許容される補助物質を含み得る。これらの製剤中の活性剤の濃度は広く変化させることができ、選択された特定の投与方法および患者のニーズに従って、主に液量、粘度、体重などに基づいて選択される。投与は、ボーラスまたは連続注入(例えば、指定された時間の血管への実質的に中断されない導入)によるものである。
【0088】
本明細書で提供されるイスタロキシムは、凍結乾燥することができる。本明細書において、本明細書で提供される組成物を含む安定な凍結乾燥製剤が提供され、これは、本明細書で提供される薬剤、および増量剤、例えば、マンニトール、トレハロース、ラフィノース、およびスクロース、またはそれらの混合物を含む溶液を、凍結乾燥することによって製造することができる。その他の多くの従来の凍結乾燥剤がある。糖の中で、乳糖が最も一般的である。クエン酸、炭酸ナトリウム、EDTA、ベンジルアルコール、グリシン、塩化ナトリウムなども使用される(例えば、Journal of Excipients and Food Chemistry Vol. 1, Issue 1 (2010) pp 41-54; U.S.特許出願20040028670号、参照)。好ましい実施形態において、イスタロキシムは、CN103315968の教示に従って注射用粉末として製造することができる。
【0089】
本発明によれば、本明細書で提供されるイスタロキシムは、予防および/または治療処置のために投与することができる。治療用途では、組成物は、病気または疾患およびその合併症の臨床症状を、治療、予防、治癒、緩和または部分的に阻止するのに十分な量(すなわち、「治療有効量」)で、病気または疾患にすでに罹患している対象に対して投与される。例えば、代わりの実施形態において、本明細書で提供される医薬組成物は、それを必要とする個体を、治療、予防、または改善するのに十分な量で投与される。これを達成するのに適切な医薬組成物の量は、「治療有効用量」として定義される。この用途に有効な投与スケジュールおよび量、すなわち「投与レジメン」は、疾患または病気の段階、疾患または病気の重症度、患者の健康の一般的な状態、患者の体調、年齢などを含む様々な要因に依存する。患者の投与レジメンを算出する際には、投与方法も考慮される。
【0090】
投与レジメンはまた、当技術分野でよく知られている薬物動態パラメーター、すなわち、活性剤の生物学的利用能、代謝、クリアランスなどを考慮に入れる(例えば、Hidalgo-Aragones J., Steroid Biochem. Mol. Biol. 1996;58:611-617; Groning, Pharmazie 1996;51:337-341; Fotherby Contraception 1996;54:59-69; Johnson, J. Pharm. Sci. 1995;84:1144-1146; Rohatagi, Pharmazie 1995;50:610-613; Brophy, Eur. J. Clin. Pharmacol. 1983;24:103-108;上記の最新のRemington’s、参照)。最先端技術により、臨床医は、個々の患者、活性剤、および治療される疾患または病気のために投与レジメンを決定することができる。医薬品として用いられる類似の組成物に提供されるガイドラインは、投与レジメン、すなわち投与スケジュールおよび投与レベルを決定するためのガイダンスとして使用することができ、本明細書で提供される方法を実施する投与が正確かつ適切になる。
【0091】
製剤の単回または複数回投与は、患者のAHF臨床症状により必要な用量および頻度に応じて行うことができる。製剤は、本明細書に記載される病気、疾患または症状を、効果的に治療または予防または改善するのに十分な量の活性剤を、提供するものである。患者の一集団(HFpEFまたはHFmEF)の症状の根底にある低下した生化学的活性を選択的に正常化することによるAHFの正しい治療法は、症状を選択的に改善し、入院中または退院後に利用可能な薬によって生じる望ましくない副作用の発生率を低下させることが期待され得る。予防との用語は、PCWPを推定し確立する適切な長期埋め込み型デバイスによって、肺動脈圧の継続的なモニタリングが可能な場合に適用される。この状態では、PCWPの有意な増加が、AHFの症状の発生よりも先行する可能性があり、したがって、症状とその結果の入院を防ぐために、適切な用量でイスタロキシムを注入する合理性が提供される。
【0092】
一実施形態において、それを必要とする個体に投与される、イスタロキシムまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物の同等物の有効量は、様々な投与スケジュールの使用を含み、例えば、約0.1μg/kg/分~約3.0μg/kg/分、例えば、0.1μg/kg/分、0.15μg/kg/分、0.2μg/kg/分、0.25μg/kg/分、0.3μg/kg/分、0.35μg/kg/分、0.4μg/kg/分、0.5μg/kg/分、0.6μg/kg/分、0.7μg/kg/分、0.8μg/kg/分、0.9μg/kg/分、1.0μg/kg/分、1.1μg/kg/分、1.2μg/kg/分、1.3μg/kg/分、1.4μg/kg/分、1.5μg/kg/分、1.6μg/kg/分、1.7μg/kg/分、1.8μg/kg/分、1.9μg/kg/分、2.0μg/kg/分、2.1μg/kg/分、2.2μg/kg/分、2.3μg/kg/分、2.4μg/kg/分、2.5μg/kg/分、2.6μg/kg/分、2.7μg/kg/分、2.8μg/kg/分、2.9μg/kg/分、または3.0μg/kg/分、である。例えば、いくつかの実施形態において、イスタロキシムまたはその代謝物(例えば、PST3093)は、約0.2μg/kg/分~約2.0μg/kg/分、または約0.2μg/kg/分~約1.5μg/kg/分、または約0.25μg/kg/分~約1.0μg/kg/分、または約0.5μg/kg/分~約1.0μg/kg/分、の有効用量で注入により投与される。
【0093】
代わりの実施形態において、それを必要とする個体に投与される、イスタロキシムまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物の同等物の有効量は、例えば、エコー指標、または肺毛細血管楔入圧(PCWP)、呼吸困難、末梢および肺の静脈うっ血、尿量、NT-proBNPおよび高感度心臓トロポニン(hs-cTnT)などの血清バイオマーカーなどの、特定の心臓機能パラメーターの基礎レベルおよびその後の変化に基づいて、個別化される。
【0094】
代わりの実施形態において、有効量は、PCWPの低下、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、肺雑音またはラ音などの末梢および肺の静脈うっ血の低下、足首の腫れの低下、NT-proBNPおよび高感度心臓トロポニン(hs-cTnT)などの尿排出バイオマーカーの減少などによって実証される。
【0095】
代わりの実施形態において、それを必要とする個体に投与される、イスタロキシムまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物の同等物の有効量は、例えば、エコー指標、または肺毛細血管楔入圧(PCWP)、呼吸困難、末梢および肺の静脈うっ血、尿量、NT-proBNPおよび高感度心臓トロポニン(hs-cTnT)などの血清バイオマーカーなどの、特定の心臓機能パラメーターの基礎レベルおよびその後の変化に基づいて、個別化される。
【0096】
代わりの実施形態において、有効量は、PCWPの低下、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、肺雑音またはラ音などの末梢および肺の静脈うっ血の低下、足首の腫れの低下、NT-proBNPおよび高感度心臓トロポニン(hs-cTnT)などの尿排出のバイオマーカーの減少などによって実証される。
【0097】
治療法
本明細書において、また、心不全を有する個体を治療する方法が提供される。好ましい実施形態において、個体は、急性心不全の症状を示すか、または急性心不全と診断されている。個体はヒト以外の動物であり得るが、好ましい実施形態において、個体は、ヒトの患者であり、例えば、心不全に罹患しているヒトの患者である。
【0098】
一般に、本明細書に記載の組成物は、心不全または急性心不全を有する個体を治療するために使用することができる。一実施形態において、治療方法は、心不全または急性心不全を有する個体を提供または提示することを含む。いくつかの場合において、測定ステップが最初に実施されて、個体のベースラインの心臓機能が決定される。例えば、心不全を有する個体は、拡張期弛緩機能の障害または低下を示し得る。測定ステップは、心不全の1つ以上のパラメーターの測定を含むことができ、これに限定されるものではないが、例えば、心拍数の低下、心臓圧力の低下、収縮期および/または拡張期の血圧の低下、左心室の拡張末期/収縮期の容積および機能(LVEF)の低下、または、E/Ea比またはE/A比の増加、Ea比の低下、1回拍出量の減少などが挙げられる。当業者が理解するように、測定ステップの時点で当技術分野において利用できる任意の適切な測定技術は、本明細書における使用に適しており、目的のパラメーターに対応する適切な測定技術を選択することは、十分に当業者の権限の範囲内である。適切な測定機器/技術は、これに限定されるものではないが、例えば、心エコー図、心臓カテーテル検査、核ストレステスト(nuclear stress test)、CATスキャン、放射性核種心室造影スキャン、聴診器、血圧計などが挙げられる。例えば、拡張期弛緩は、心エコー検査またはPCWPによって測定することができる。
【0099】
本明細書に開示される方法はまた、治療有効量のイスタロキシムまたはその代謝物、例えば、PST3093、を個体に投与することを含む。好ましい実施形態において、イスタロキシムまたはイスタロキシム代謝物は、医薬組成物、例えば、上記した組み合わせのいずれか1つに、含まれる。イスタロキシムまたはイスタロキシム代謝物は、本明細書の他のところで開示されるように、治療有効用量で、例えば、約0.25μg/kg/分~約1.0μg/kg/分で、投与される。より好ましい実施形態において、投与経路は、静脈内注入などの注入である。測定ステップは、投与ステップの前、その間、または後に、実施することができる。例えば、治療中およびその後の一定期間、心臓機能の1つ以上のパラメーターを継続的にモニタリングすることが望ましくなり得る。
【0100】
上記のように、驚くべきことに、6時間より長い、例えば、6.1時間、6.2時間、6.3時間、6.4時間、6.5時間、6.6時間時間、6.7時間、6.8時間、6.9時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、30時間、31時間、32時間、33時間、34時間、35時間、36時間、37時間、38時間、39時間、40時間、41時間、42時間、43時間、44時間、45時間、46時間、47時間、または48時間、あるいはそれ以上、の注入時間の注入によるイスタロキシム(またはその代謝物)の投与は、例えば、Na+/K+ポンプの抑制による催不整脈作用を引き起こすことなく、SERCA2a活性を増加させ、拡張性弛緩を改善することが見出された。この方法において、6時間を超えるイスタロキシム注入は、変力活性に優勢な変弛緩性SERCA2a活性を発揮し、6時間未満のイスタロキシム注入と比較して、拡張期弛緩の改善をもたらす。
【0101】
理論に拘束されることを意図するものではないが、この後に生じる「純粋な」SERCA2a活性化は、個体の血漿中のイスタロキシム代謝物の蓄積によるものと考えられている。したがって、いくつかの実施形態において、イスタロキシムは、個体の血漿中にイスタロキシム代謝物が蓄積するのを可能にするのに十分な期間、静脈内注入を介して投与される。好ましい実施形態において、注入時間は、1つまたは複数のイスタロキシム代謝物の蓄積を可能にするのに十分なものであり;好ましくは、代謝物は、構造式(II)で示されるPST2915、または構造式(III)で示されるPST3093であり;より好ましくは、代謝物は、PST3093である。いくつかの実施形態において、血漿中のイスタロキシム代謝物の蓄積は、少なくとも約3ng/mLの濃度、例えば、3ng/mL、4ng/mL、5ng/mL、6ng/mL、7ng/mL、8ng/mL、9ng/mL、10ng/mL、11ng/mL、12ng/mL、13ng/mL、14ng/mL、15ng/mL、16ng/mL、17ng/mL、18ng/mL、19ng/mL、20ng/mL、21ng/mL、22ng/mL、23ng/mL、24ng/mL、25ng/mL、26ng/mL、27ng/mL、28ng/mL、29ng/mL、30ng/mL、35ng/mL、40ng/mL、45ng/mL、50ng/mL、またはそれ以上の濃度になるのが、少なくとも約3時間の間、例えば、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、またはそれ以上の時間である。一実施形態において、イスタロキシム代謝物は、イスタロキシム注入開始から、6時間以内で;好ましくは、3時間以内、または2時間以内、または1時間以内で、血漿中に所望の濃度に蓄積し、そして、少なくともさらに約3時間、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、またはそれ以上の追加の時間;好ましくは、少なくともさらに6時間;より好ましくは、少なくともさらに約12時間、その濃度以上に維持される。いくつかの実施形態において、代謝物の望ましい血漿中濃度は、少なくとも約5ng/mLである。別の実施形態において、イスタロキシム代謝物は、血漿中に少なくとも約10ng/mLの濃度で蓄積し、少なくともさらに約6時間;好ましくは、少なくともさらに約12時間、その濃度以上に維持される。さらに別の実施形態において、イスタロキシム代謝物は、血漿中に少なくとも約15ng/mLの濃度で蓄積し、少なくともさらに約6時間;好ましくは、少なくともさらに約12時間、その濃度以上に維持される。いくつかの実施形態において、代謝物の血漿中濃度は、イスタロキシム投与の完了後、少なくとも約6時間、5ng/mLを超えて維持される。いくつかの実施形態において、代謝物の血漿中濃度は、イスタロキシム投与の完了後、少なくとも約6時間、10ng/mLを超えて維持される。さらに他の実施形態において、代謝物の血漿中濃度は、イスタロキシム投与の完了後、少なくとも約6時間、20ng/mLを超えて維持される。他の形態において、その濃度は、少なくとも約30ng/mL、40ng/mL、または50ng/mLで、イスタロキシム注入後に、さらに6時間以上、例えば、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、またはそれ以上、維持される。例えば、代謝物の蓄積は、少なくとも約10ng/mLの濃度レベルが、イスタロキシム注入後に、さらに12時間以上、例えば、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、30時間、31時間、32時間、33時間、34時間、35時間、36時間、37時間、38時間、39時間、40時間、またはそれ以上で、維持され得る。
【0102】
当業者が理解するように、イスタロキシムまたはイスタロキシム代謝物の血漿中濃度は、HPLC-MS/MSなどの従来の手段によって測定することができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、イスタロキシム代謝物は、構造式(II)または構造式(III):
【化9】
式(II)
【化10】
式(III)
で示されるものである。
【0104】
好ましい実施形態において、イスタロキシムの代謝物は、化合物PST3093である。
【0105】
さらなる例では、個体は、心不全または急性心不全と診断されており、約0.25μg/kg/分~約1.0μg/kg/分のイスタロキシムを、6時間より長い時間で投与される。イスタロキシムが個体によって代謝されると、PST3093などのイスタロキシム代謝物は、個体の血漿に蓄積し始める。例えば、イスタロキシム代謝物PST3093は、イスタロキシム注入の3時間以内に、少なくとも約5ng/mLの血漿中濃度まで蓄積する可能性があり、イスタロキシム注入の期間中、およびさらに6~約36時間の間、維持される。「純粋な」SERCA2a活性化剤として作用するPST3093の存在は、個体の拡張期弛緩の改善をもたらす。
【0106】
いくつかの実施形態において、治療方法は、イスタロキシムと組み合わせて、またはイスタロキシムの代わりに、注入によりイスタロキシム代謝物を投与することを含み得る。例えば、心不全を有する個体を治療する方法であって、薬学的に許容される担体、および式(II)または式(III)で示されるイスタロキシム代謝物を含む、治療有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む、方法が開示される。好ましい実施形態において、PST3093またはPST2915が代謝物であり;より好ましくは、それはPST3093である。そのような方法は、心臓機能の1つ以上のパラメーターを、当技術分野で利用可能な測定技術を用いて測定する、測定ステップを含み得る。測定ステップは、医薬組成物の投与前、投与中、または投与後に実施することができる。そのような方法において、PST3093の治療有効量は、約0.2μg/kg/分~約2.0μg/kg/分であり;好ましくは、約0.3μg/kg/分~約1.5μg/kg/分であり;より好ましくは、約0.5μg/kg/分~約1.0μg/kg/分である。そのような方法において、注入の時間は、6時間より長く、例えば、6.1時間、6.2時間、6.3時間、6.4時間、6.5時間、6.6時間、6.7時間、6.8時間、6.9時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上である。
【0107】
いくつかの実施形態において、急性心不全を有する個体を2つ以上のイスタロキシム用量レジメンで治療して、最初に急性心不全の症状を治療し、その後、より慢性の心不全の病状に関連する心機能障害を正常化することが望ましい。そのような実施形態において、投与レジメンは、急性心不全の症状を治療するための高用量のイスタロキシムの注入による投与を開始し、続いて、イスタロキシム代謝物の蓄積が可能となるように、より長い期間の注入による低用量のイスタロキシムの投与をすることによって、イスタロキシムと代謝物との比率を制御するように操作される。この方法において、最初の注入は、急速なSERCA2a刺激とNa,K-ATPase阻害を可能にし、急速な陽性変力作用をもたらして、急性心不全の症状を治療し、一方、2回目の注入は、選択的にSERCA2a活性化させるイスタロキシム代謝物PST3093を蓄積し、不整脈源性のCa2+誘発事象のリスクを低減した陽性変力作用を延長することを可能にする。
【0108】
したがって、本明細書において、急性心不全を有する個体を治療する方法であって、薬学的に許容される担体、およびイスタロキシムを少なくとも約1.5μg/kg/分の治療用量で含む、第1の医薬組成物を注入することによって、個体に投与する方法、が提供される。個体の心臓機能は、本明細書において述べられた技術のいずれかを用いて、第1の医薬組成物の注入を開始する前、その間、および/またはその後に、測定およびモニタリングすることができる。例えば、いくつかの実施形態において、例えば、個体がHFpEFまたはHFmEFのどちらを発症しているかを決定するために、イスタロキシムを投与する前に、心臓機能の1つ以上のパラメーターが測定される。他の実施形態において、初期の測定は、拡張期弛緩機能障害を測定するための心エコー図またはPCWP値を含み得る。これらの測定はまた、注入によるイスタロキシムの投与と同時に開始されてよく、および/または、注入の期間を通して継続されてよい。いくつかの実施形態において、心臓機能の1つ以上のパラメーターを測定するステップは、第1の医薬組成物を投与した後に実施することができる。
【0109】
用量操作の方法において、心臓機能のパラメーターの改善が測定されると、薬学的に許容される担体、およびより低い治療用量のイスタロキシムを含む医薬組成物が、注入により投与される。例えば、最初の注入の前および/または開始時に行われた同様の測定と比較して、心エコー図またはPCWPによって測定される個体の拡張期弛緩の改善は、急性心不全の症状の治療を示すものである。また、息切れ、足首の腫れ、頸静脈圧の上昇、肺雑音、末梢性浮腫などの、急性心不全の症状の軽減は、注入割合の変更を正当化し得る。いくつかの実施形態において、イスタロキシムの第2の治療用量は、約1.5μg/kg/分より少なく;好ましくは、約0.3μg/kg/分~約1.5μg/kg/分であり;より好ましくは、約0.5μg/kg/分~約1.0μg/kg/分である。例えば、1つの特定の実施形態において、イスタロキシムの第2の治療用量は、約0.5μg/kg/分である。次に、イスタロキシムの第2の治療用量の注入による投与は、6時間より長い時間、例えば、6.1時間、6.2時間、6.3時間、6.4時間、6.5時間、6.6時間、6.7時間、6.8時間、6.9時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上、継続することができる。
【0110】
いくつかの実施形態において、第2の低用量のイスタロキシムは、PST3093などのイスタロキシム代謝物の血漿中の蓄積濃度を産生するのに十分な時間、注入され得る。そのような実施形態において、低用量のイスタロキシムの注入は、PST3093の血漿中濃度が少なくとも約20ng/mLになるまで、続けられる。他の実施形態において、低用量のイスタロキシムの注入は、PST3093の血漿中濃度が少なくとも約30ng/mLになるまで、続けられる。さらに他の実施形態において、注入は、PST3093の血漿中濃度が、少なくとも約40ng/mL、または少なくとも約50ng/mL、または少なくとも約60ng/mLになるまで、続けられる。低用量のイスタロキシムの注入を停止すると、イスタロキシム化合物は個体から除去されるが、一方、選択的または「純粋な」SERCA2a活性化を示すイスタロキシム代謝物(すなわち、3093)は、長時間にわたって個体の血流に残り、不整脈誘発性の事象のリスクをより低減して、心臓機能の改善を個体にもたらす。
【0111】
代わりの実施形態において、治療、治療レジメン、または特定の投与量の有効性を評価する際、または管理投与量に対して治療を与えるべきかどうかを決定する際に、個体、例えば、急性または慢性心不全を患った患者は、臓器や組織の関与または損傷の存在と程度について、例えば、心臓(心室拡張、第3心音 心臓肥大)、倦怠感、疲労、運動耐性の低下、運動後の回復時間の増加、腎臓(腎不全、乏尿)、肺(起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、頻呼吸)、足首の腫れ、頸静脈圧の上昇などについて、規則的に定期的なスクリーニングを受ける。徹底的な身体検査は、心血管疾患、特に、心臓、肺、および末梢循環機能に集中された急性または慢性の心不全の治療の専門家に選択された時間間隔で、行うべきである。したがって、代わりの実施形態において、本明細書に開示されるイスタロキシム、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物の同等物による治療は、症状の急速な進展を防ぐために可能な限り早期に、好ましくは緊急に開始され、患者の退院後も、数年、好ましくは患者の一生の間、または少なくとも心不全で他の薬が使用されるのと一致する期間、継続される。医師による患者の病状の監視の結果、心不全の急性エピソードの発生を防ぎ、患者の緊急救助を回避し、生命を脅かすエピソードの可能性を低減するために、6時間より長いイスタロキシムの長期注入が、月に1回/2回まで患者に与えられ得る。
【0112】
本発明によれば、本明細書で提供される使用および方法は、他の薬物または医薬品との同時投与をさらに含むことができる。実際、本発明は、低下した心臓の生化学的機能(すなわち、SERCA2a活性)を選択的に修正する。これは確かに既存のHF臨床症状の緩和に貢献し、利用可能な治療法よりも望ましくない副作用を少なくする(上記の選択性のため)。しかしながら、CHFおよびAHFは、複雑な臨床症候群であるため、本発明は、以下のような既存および将来の薬物分類および/または特定の薬物に潜在的に関連している:a)薬物分類、例えば、ACE阻害薬、AIRB、利尿薬、Caチャネル遮断薬、β遮断薬、ジギタリス(digitalis)、NOドナー、血管拡張薬、SERCA2a刺激剤、ネプリライシン(NEP)阻害剤、ミオシンフィラメント活性化剤、組換えリラキシン-2メディエーター、組換えNPタンパク質、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)活性化剤、アンジオテンシンII受容体のβ-アレスチンリガンド;b)特定の薬物:ヒドロクロロチジド、フロセミド、ベラパミル、ジルチアゼム、カルベジロール、メトプロロール、ヒドララジン、エプレレノン、スピロノラクトン、リシノプリル、ラミプリル、ニトログリセリン、硝酸薬、ジゴキシン、バルサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、カンデサルタン、ロサルタン、エンレスト(entresto)、オメカムチブ、サクビトリル、セレラキシン、ウラリチド、レボシメンダン、シナシグアト。上記の薬物で治療され、定期的な臨床監視を受けている、例えば、埋め込まれたプローブで肺血圧を継続的にモニタリングされている、心不全に罹患した対象は、本発明によるイスタロキシムの注入によって防止され得るAHFのエピソードを予測するために、保護することが可能である。
【0113】
急性心不全を治療するための治療薬として使用される、本発明に開示されるイスタロキシムは、同じ疾患の治療に使用される他の治療薬と、組み合わせることができる。他の治療薬の例としては、利尿薬、例えば、フロセミド、ブメタニド、およびトラセミドである。メトラゾン、アルドステロン拮抗薬、例えば、スピロノラクトン、またはエプレレノン;チアジド系利尿薬、例えば、ヒドロクロロチアジド、メトラゾン、およびクロルタリドンも挙げられる。他の薬剤として、ACE阻害剤、例えば、リシノプリル、およびラミプリルがある。また、アンジオテンシンII受容体遮断剤(ARB)、例えば、バルサルタン、カンデサルタン、およびロサルタンも考慮に入れることができる。アンジオテンシン受容体/ネプリライシン阻害剤(ARNI)、例えばサクビトリル、が挙げられる。他の薬剤は、ベータ遮断薬、例えば、カルベジロールおよびメトプロロールなど、または、血管拡張薬、例えば、ヒドララジン、これは場合により硝酸イソソルビドと組み合わせられてもよく、硝酸薬、例えば、ニトログリセリン、アムロジピン、およびフェロジピン;非ジヒドロピリジン、例えば、ジルチアゼムまたはベラパミル、から選択することができる。本発明の化合物はまた、必要に応じて、ジゴキシンと組み合わせることができる。イバブラジンや他の抗凝血薬などの他の薬が考慮されてもよい。
【0114】
本発明の化合物は、他の治療剤、特に心血管疾患の治療に有用な薬剤、より特に心不全の組合せ療法において、組み合わせることができる。組み合わせた有効成分は、医師が決定したさまざまなプロトコルに従って投与することができる。本発明の一実施形態によれば、組合せ療法は、イスタロキシムを、さらなる治療活性成分(複数の成分でもよい)と、同時に、または異なる時間で、投与することによって実施することができる。同時投与の場合、本発明の化合物およびさらなる有効成分(複数の成分でもよい)は、各々、それぞれの医薬組成物で製剤化することができ、あるいは同じ単一剤形で製剤化することもできる。前者の場合、本発明は、特に心不全の治療のための、本発明の化合物およびさらなる有効成分(複数の成分でもよい)をそれぞれ含む別個の医薬組成物を含むキットを提供する。別の実施形態において、本発明は、特に急性心不全の治療のための、本発明の化合物およびさらなる有効成分(複数の成分でもよい)を同じ単位剤形中に含む、医薬単位剤形キットを提供する。本発明による組合せ療法は、本明細書に開示される追加の活性剤のよく知られた治療効果に加えて、または相乗的に組み合わせられて、本明細書に開示されるイスタロキシムの変力性変弛緩作用による心不全の有利な治療を提供する。
【0115】
また、本明細書で提供される使用および方法を実施するために用いられる、例えば、本明細書で提供される薬学的に活性な化合物および組成物を送達するために用いられる、化合物を含む、ナノ粒子、ナノ脂質粒子、ビヒクル、およびリポソーム膜が提供され:化合物は、イスタロキシム、または式(II)または式(III)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物の同等物であり、これは場合により、それを必要とする対象に対して上記で開示した追加の治療活性剤と組み合わせられてもよい。代わりの実施形態において、これらの組成物は、例えば、筋細胞または心臓細胞、内皮細胞などの所望の細胞種を標的とするために、細胞表面ポリペプチドを含むポリペプチドなどの生物学的分子を含む、特定の分子を標的とするように設計される。イスタロキシムの徐放性は、イスタロキシムの血漿中濃度を非常に低い範囲内にさせながら、代謝物の血漿中濃度を選択的に増加させるのに十分な化合物を提供し得る。
【0116】
本明細書で提供される方法、例えば、Parkらの米国特許出願第20070082042号に記載される方法を実施するために用いられる、化合物を含む、多層リポソームが、提供される。多層リポソームは、スクワラン、ステロール、セラミド、中性脂質または油、脂肪酸、およびレシチンを含む油相成分の混合物を用いて、製造することができ、粒子径が、約200~5000nmであり、本明細書で提供される使用および方法を実施するために用いられる組成物を捕捉する。
【0117】
リポソームは、例えば、米国特許第4,534,899号;または、Parkらの米国特許出願第20070042031号に記載された方法を用いて製造することができ、例えば、本発明による活性剤(または活性剤の組み合わせ)をカプセル化することによってリポソームを製造する方法が挙げられ、この方法は、第1の容器に水溶液を提供すること;第2の容器に有機脂質溶液を提供すること;次いで、第1の混合領域で水溶液と有機脂質溶液とを混合してリポソーム溶液を生成することであって、有機脂質溶液が水溶液と混合して実質的に瞬時に活性剤をカプセル化したリポソーム生成すること;および、すぐにリポソーム溶液を緩衝液と混合して、希釈したリポソーム溶液を生成すること、を含む。
【0118】
一実施形態において、本明細書で提供される使用および方法を実施するために用いられるリポソーム組成物は、例えば、米国特許出願第20070110798号に記載されているように、所望の細胞種に対して、本明細書で提供される方法を実施するために用いられる、例えば、イスタロキシムまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物の同等物の送達を標的とするために、置換アンモニウムおよび/またはポリアニオンを含む。
【0119】
例えば、米国特許出願第20070077286号に記載されているような、活性剤含有ナノ粒子(例えば、二次ナノ粒子)の形態で、本明細書に提供される使用および方法を実施するために用いられる、本発明による化合物を含むナノ粒子が提供される。一実施形態において、本明細書で提供される使用および方法を実施するために用いられる脂溶性活性剤、または二価または三価の金属塩と作用する脂溶化された水溶性活性剤、を含むナノ粒子が提供される。
【0120】
一実施形態において、例えば米国特許出願第20050136121号に記載されたように、固体脂質懸濁液を使用して、本明細書で提供される使用および方法を実施するために用いられる組成物を製剤化し、インビボ、インビトロ、またはエクスビボで哺乳類の細胞に送達することができる。
【0121】
本明細書で提供される使用および方法を実施するために用いられる組成物および製剤は、リポソームまたはナノリポソームの使用によって送達することができる。リポソームを使用することにより、特にリポソーム表面が標的細胞に特異的なリガンドを保有するか、あるいは特定の器官に優先的に指向される場合に、インビボで標的細胞への活性剤の送達に焦点を合わせることができる。例えば、米国特許第6,063,400号;米国特許第6,007,839号;Al-Muhammed, J. Microencapsul. 1996; 13:293-306; Chonn Curr. Opin. Biotechnol. 1995; 6:698-708; Ostro, Am. J. Hosp. Pharm. 1989; 46:1576-1587、を参照されたい。Eur J Pharm Biopharm. 2011;79(2):285-93に開示されたイスタロキシムのリポソーム製剤はまた、本発明において提供される。
【0122】
送達ビヒクル
代わりの実施形態において、送達ビヒクルを用いて、本明細書で提供される使用および方法を実施することができ、例えば、本明細書で提供される化合物を、それを必要とする対象に送達することができる。例えば、ポリカチオン、カチオン性ポリマー、および/またはカチオン性ペプチド、例えば、ポリエチレンイミン誘導体など、を含む送達ビヒクルを使用することができ、例えば、米国特許出願第20060083737号に記載されている。
【0123】
一実施形態において、乾燥ポリペプチド-界面活性剤複合体を用いて、例えば、米国特許出願第20040151766号に記載されているように、本明細書で提供される使用および方法を実施するために用いられる組成物を製剤化する。
【0124】
一実施形態において、本明細書で提供される使用および方法を実施するために用いられる組成物は、例えば、米国特許第7,306,783号;米国特許第6,589,503号に記載されているように、細胞膜透過性ペプチドコンジュゲートを有するビヒクルを使用して、細胞に適用することができる。一態様において、送達される組成物は、細胞膜透過性ペプチドにコンジュゲートされている。一実施形態において、送達される組成物および/または送達ビヒクルは、例えば、塩基性が高く、ポリホスホイノシチド(poly-phosphoinositide)に結合する輸送媒介ペプチドを記載した、米国特許第5,846,743号に記載されるように、輸送媒介ペプチドにコンジュゲートされる。
【0125】
一実施形態において、電気透過処理(electro-permeabilization)は、例えば、米国特許第7,109,034号;米国特許第6,261,815号;米国特許第5,874,268号に記載されているような任意のエレクトロポレーションシステムを使用して、組成物を細胞に送達するための主要なまたは補助的な手段として、使用される。
【実施例】
【0126】
以下の実施例により、本発明をさらに説明する。
【0127】
実施例1.式(II)および式(III)の化合物の製造
PST2915の合成
工程1:ヒドロホウ素化
【化11】
窒素雰囲気下、-10℃の温度に維持されたデヒドロエピアンドロステロンI(30.0g)の450mLのTHF溶液に、複合体BH.THF 1MのTHF(260mL)液を加えた。添加の完了後、温度を再び周囲温度まで上昇させ、3時間後、500mLのH
2Oを添加し、次にNaBO
3.4H
2O(31.4g)を添加した。反応物を一晩撹拌した。形成された沈殿物を濾過し、THFで洗浄し、除去した。水相と有機相に分離し、NaClを水相に加え、これをTHF(3×200mL)で再抽出した。合わせた有機相を、NaClおよびNa
2SO
4で水分を除去し、減圧下でエバポレートして粗生成物を得て、これをAcOEt/MeOHによって結晶化し、次いで濾過し、AcOEtで洗浄した。約21gのアンドロスタン3β,6α,17β-トリオールIIを得た(既知の生成物: Nicholson, S. H., Turner, A. B. J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1976, 1357、およびUS6,384,250B2)。
分析結果は、文献で報告されている結果と一致している。
【0128】
【0129】
アンドロスタン3β,6α,17β-トリオールII(30g)の、ジオキサン(825mL)、水(150mL)およびピリジン(16.5mL)により構成される混合物の溶液に、N-ブロモスクシンイミド(52g)を、容器を光から保護しながら、10分以内で少しずつ加えた。混合物を室温で16時間撹拌し、900mlの水で希釈し、次いで、Na2S2O3(15.5g)を15分以内で少しずつ加えた。溶液を濃縮し(約1500mLが除去された)、懸濁液を濾過し、固体を真空下で乾燥させて、28.1gの6α-ヒドロキシアンドロスタン-3,17-ジオンIII(95%収率)を得た。
【0130】
工程3:ケトン保護
【化13】
6α-ヒドロキシアンドロスタン-3,17-ジオンIII(18.85g)の、360mLのグリコールおよびp-トルエンスルホン酸(554mg)の懸濁液を、100℃で加熱し、真空下で蒸留して、共沸混合物のグリコール/水(約5mL)を除去した。混合物を冷却し、25mlのメタノールに溶解した250mgのKOHで処理した。15mLの水を加え、2時間撹拌した後、懸濁液を濾過して、白色の固体として、中間体IVを得た(20.2g、83%収率)。生成物をさらに精製することなく使用した。
【0131】
工程4:酸化
【化14】
3mLの次亜塩素酸ナトリウム(6%)および28mLの酢酸エチルからなる溶液を室温で撹拌し、27mgのRuO
2水和物を加えた。すべてのルテニウム触媒が可溶化されたとき、黒色の懸濁液が消えるのを待ちながら、生成物IV(1g)を少しずつ加えた。1時間後、さらに3mlの次亜塩素酸ナトリウム(6%)を加え、透明な溶液を室温で3時間撹拌した。反応が完了したとき、混合物をセライトパッドで濾過し、水相をAcOEtで抽出した。合わせた有機相を、NaHCO
3(水中5%)の溶液およびNaCl(水中10%)で洗浄した。有機層をNa
2SO
4で乾燥し、エバポレートして乾燥し、中間体V(950mg、94%収率)を得た。
【0132】
工程5:還元
【化15】
生成物V(5.76g)のメタノール(72mL)懸濁液を0℃で撹拌し、NaBH
4(730mg)を加えた。2時間後、反応が完了し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を30mLの水に懸濁し、CH
2Cl
2で抽出した。有機層をNa
2SO
4で乾燥し、エバポレートして乾燥させた。粗製の固体をフラッシュクロマトグラフィー(SiO
2、溶離液としてシクロヘキサン/AcOEt、7/3)により精製して、生成物VI(5.16g、89%収率)を得た。
【0133】
工程6:ケトン脱保護
【化16】
生成物VI(2.85グラム)の350mLの蒸留アセトン撹拌溶液に、p-トルエンスルホン酸(7.14g)を加えた。室温で3時間後、NaHCO
3の5%溶液を加え、溶媒を減圧下で除去した。生成物をCH
2Cl
2で抽出した。有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、エバポレートして乾燥させて、中間体VII(2.13g、95%収率)を得た。
【0134】
工程7:PST2915の合成
【化17】
6β-ヒドロキシアンドロスタン-3,17-ジオンVII(3.5g)のTHF(100mL)の撹拌溶液に、2-アミノエトキシアミン二塩酸塩(1.728g)のH
2O(34mL)溶液を、迅速に滴下して加えた。激しく撹拌しながら室温で1.5時間後、NaCl(4g)を加え、混合物を15分間撹拌した。相を分離し、水相をTHF(2×50mL)で2回抽出した。合わせた有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、エバポレートして、白色の固体(4.52g)を得た。
【0135】
粗生成物を、45mLのAcOEt/EtOH:97/3に懸濁し、1.5時間でスラリー化し、次いで濾過し、減圧下、35℃で48時間乾燥させて、(E,Z)-3-(2-アミノエトキシイミノ)-6β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オン塩酸塩、PST2915を得た(4.069g、89%収率)。
【0136】
PST3093の合成
工程1:ヒドロホウ素化。
【化18】
窒素雰囲気下、-10℃の温度に維持されたデヒドロエピアンドロステロンI(30.0g)の450mLの無水THF溶液に、複合体BH.THF 1MのTHF(260mL)液を加えた。添加の完了後、温度を再び室温まで上昇させ、3時間後、500mLのH
2Oを添加し、次にNaBO
3.4H
2O(31.4g)を添加した。反応物を一晩撹拌した。形成された沈殿物を濾過し、THFで洗浄し、除去した。水相と有機相に分離し、NaClを水相に加え、これをTHF(3×200mL)で再抽出した。合わせた有機相を、NaClおよびNa
2SO
4で水分を除去し、減圧下でエバポレートして粗生成物を得て、これをAcOEt/MeOHによって結晶化し、次いで濾過し、AcOEtで洗浄した。約21gのアンドロスタン3β,6α,17β-トリオールIIを得た(既知の生成物: Nicholson, S. H., Turner, A. B. J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1976, 1357、およびUS6,384,250B2)。
分析結果は、文献で報告されている結果と一致している。
【0137】
【0138】
アンドロスタン3β,6α,17β-トリオールII(30g)の、ジオキサン(825mL)、水(150mL)およびピリジン(16.5mL)により構成される混合物の溶液に、N-ブロモスクシンイミド(52g)を、容器を光から保護しながら、10分以内で少しずつ加えた。混合物を室温で16時間撹拌し、900mlの水で希釈し、次いで、Na2S2O3(15.5g)を15分以内で少しずつ加えた。溶液を濃縮し(約1500mLが除去された)、懸濁液を濾過し、固体を真空下で乾燥させて、28.1gの6α-ヒドロキシアンドロスタン-3,17-ジオンIII(95%収率)を得た。
【0139】
工程3:ケトン保護
【化20】
6α-ヒドロキシアンドロスタン-3,17-ジオンIII(18.85g)の、360mLのグリコールおよびp-トルエンスルホン酸(554mg)の懸濁液を、100℃で加熱し、真空下で蒸留して、共沸混合物のグリコール/水(約5mL)を除去した。混合物を冷却し、25mlのメタノールに溶解した250mgのKOHで処理した。15mLの水を加え、2時間撹拌した後、懸濁液を濾過して、白色の固体として、中間体IVを得た(20.2g、83%収率)。生成物をさらに精製することなく使用した。
【0140】
工程4:酸化
【化21】
3mLの次亜塩素酸ナトリウム(6%)および28mLの酢酸エチルからなる溶液を撹拌し、27mgのRuO
2水和物を加えた。すべてのルテニウム触媒が可溶化されたとき、黒色の懸濁液が消えるのを待ちながら、生成物IV(1g)を少しずつ加えた。1時間後、さらに3mlの次亜塩素酸ナトリウム(6%)を加え、透明な溶液を室温で3時間撹拌した。反応が完了したとき、混合物をセライトパッドで濾過し、水相をAcOEtで抽出した。合わせた有機相を、NaHCO
3(水中5%)の溶液およびNaCl(水中10%)で洗浄した。有機層をNa
2SO
4で乾燥し、エバポレートして乾燥し、中間体V(950mg、94%収率)を得た。
【0141】
工程5:還元
【化22】
生成物V(5.76g)のメタノール(72mL)懸濁液を0℃で撹拌し、NaBH
4(730mg)を加えた。2時間後、反応が完了し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を30mLの水に懸濁し、CH
2Cl
2で抽出した。有機層を分離し、Na
2SO
4で乾燥し、エバポレートして乾燥させた。粗製の固体をフラッシュクロマトグラフィー(SiO
2、溶離液としてシクロヘキサン/AcOEt、7/3)により精製して、生成物VI(5.16g、89%収率)を得た。
【0142】
工程6:ケトン脱保護
【化23】
生成物VI(2.85グラム)の350mLの蒸留アセトン撹拌溶液に、p-トルエンスルホン酸(7.14g)を加えた。室温で3時間後、NaHCO
3の5%溶液を加え、溶媒を減圧下で除去した。生成物をCH
2Cl
2で抽出した。有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、エバポレートして乾燥させて、中間体VII(2.13g、95%収率)を得た。
【0143】
工程7:PST3093の合成。
【化24】
6β-ヒドロキシアンドロスタン-3,17-ジオンVII(3.5g)のTHF(113mL)の撹拌溶液に、O-(カルボキシメチル)ヒドロキシルアミン二塩酸塩(1.56g)の溶液を、迅速に滴下して加えた。激しく撹拌しながら室温で1.5時間後、NaCl(6.4g)を加え、混合物を15分間撹拌した。相を分離し、水相をTHF(50mL)で3回抽出した。合わせた有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、エバポレートして乾燥させて、5.95gの粗生成物を得た。
【0144】
粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、CH2Cl2/MeOH/酢酸、92.5/7/0.5)により精製して、(E,Z)-[(6-β-ヒドロキシ-17-オキソアンドロスタン-3-イリデン)アミノ]オキシ酢酸、PST3093を得た(3.7g、69%収率)。
【0145】
実施例2.イスタロキシム代謝物の生物活性
手順
動物管理
調査は、アメリカ国立衛生研究所によって発行された実験動物の管理と使用のガイド(NIH出版物No.85-23、1996年改訂)、および参加機関によって承認された動物管理のガイドラインに準拠している。
【0146】
イヌ腎臓のNa,K-ATPaseの精製、およびNa,K-ATPase活性アッセイ
腎臓のNa,K-ATPaseの精製を、Joergensenの方法(Methods Enzymol. 1988;156:29-43)に従って行った。1~3年齢の雄のビーグル犬(WuXi AppTec, Suzhou Co., Ltd. 1318 Wuzhong Ave., Wuzhong District Suzhou, 215104 P.R. China)から、ペントバルビタール麻酔(イタリア保健省の輸入許可0009171-09/04/2015-DGSAF-COD_UO-P, 2015)下、腎臓を摘出した。腎臓をスライスし、外側の髄質を解剖し、プールし、250mMのスクロース、30mMのヒスチジン、および5mMのEDTAを含むスクロース-ヒスチジン溶液(pH7.2)に懸濁し(1g/10ml)、ホモジネートした。ホモジネート物を6.000gで15分間遠心分離し、上澄みをデカントし、48.000gで30分間遠心分離した。ペレットをスクロース-ヒスチジンバッファーに懸濁し、25mMのイミダゾールおよび1mMのEDTAを含むグラジエントバッファー(pH7.5)に溶解したドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液とともに20分間インキュベートした。サンプルを、スクロースの不連続グラジエント液(10、15、および29.4%)の上に重層し、60.000gで115分間、遠心分離した。ペレットをグラジエントバッファーに懸濁した。
【0147】
Na,K-ATPase活性は、以前の記載(Ferrandi M. et al., Hypertension 1996;28(6):1018-25、参照)による、32P-ATPの放出を測定することによって、インビトロでアッセイした。標準ウアバインまたは試験化合物の濃度を増加させ、0.3μgの精製されたイヌ腎臓酵素とともに、37℃で10分間、最終容量120μlの培地(140mMのNaCl、3mMのMgCl2、50mMのHepes-Tris、3mMのATPを含む、pH7.5)で、インキュベートした。次いで、10mMのKClおよび20nCiの32P-ATP(3~10Ci/mmol、Perkin Elmer)を含む10μlのインキュベーション溶液を加え、反応を37℃で15分間続けた。次に、20%v/vの氷冷過塩素酸で酸性化することにより反応を停止させた。活性炭(Norit A、Serva)を用いた遠心分離により、32Pを分離し、放射活性を測定した。阻害活性は、ウアバインまたは試験化合物の非存在下で実施された対照サンプルのパーセントとして表された。50%阻害のNa,K-ATPase活性(IC50)をもたらす化合物の濃度は、複数パラメーターの非線形回帰最適化プログラム(KaleidagraphTM、Sinergy Software)を使用して計算した。
【0148】
心臓筋小胞体(SR)ミクロソームにおけるSERCA2a活性の測定
SERCA2aが豊富な筋小胞体の調製のための心臓組織を得るために、雄のビーグル犬を使用した。表3のデータを得るために、健康なイヌを利用した。慢性心不全を、前述のようにポリスチレンラテックスミクロスフェア(45~90mm、Polysciences、米国ペンシルベニア州、ウォリントン)を用いた複数の冠動脈内微小塞栓術によって、イヌに誘発した(Sabbah HN et al., Am J Physiol. 1991;260:H1379-84、参照)。実験は、イタリア、ローマのSigma-Tauの総合薬理学部門で実施した。
【0149】
左心室組織を解剖し、Nediani C.ら(J Biol Chem. 1996;271:19066-73)の記載のように、4倍量の10mMのNaHCO3(pH7)、1mMのPMSF、10μg/mlのアプロチニンおよびロイペプチンでホモジナイズし、12.000gで15分間、遠心分離した。上清を濾過し、100.000gで30分間、遠心分離した。ペレットを、0.6MのKCl、30mMのヒスチジン、pH7、で懸濁し、さらに100.000gで30分間、遠心分離することにより、収縮性タンパク質を抽出した。最終ペレットを、0.3Mのスクロース、30mMのヒスチジン、pH7、で再調製した。
【0150】
SERCA2a活性を、以前の記載(Micheletti R. et al., Am J Card 2007;99:24A-32A)のように、試験化合物の非存在下および存在下、さまざまなCa2+濃度(100~3000nM)において、32P-ATP加水分解として、インビトロで測定した。各化合物の濃度を増加させて(0.05~300nM)、80μlの溶液(100mMのKCl、5mMのMgCl2、1μMのA23187、20mMのTrisを含む、pH7.5)中で、2μgのミクロソームとともに、4℃で5分間、プレインキュベートした。次いで、50nCiの32P-ATP(3~10Ci/mmol、Perkin Elmer)を含む20μlの5mMのTris-ATPを加えた。ATP加水分解を、37℃で15分間、継続し、100μlの20%v/v氷冷過塩素酸で酸性化することにより、停止させた。活性炭(Norit A、SERVA)を用いた遠心分離により、32Pを分離し、放射活性を測定した。SERCA2a依存性活性は、10μMのシクロピアゾン酸によって阻害された総加水分解活性の割合として同定された(Seidler NW. et al., J Biol Chem. 1989; 264:17816-23、参照)。
【0151】
用量応答曲線は、シグモイドカーブフィッティングソフトウェアを使用してフィッティングさせ、最大速度(Vmax)活性、およびKd Ca2+を計算した(Synergy Software KaleidaGraph3.6)。
【0152】
マウスにおける薬物毒性試験
急性毒性は、マウス(Albino Swiss CD-1、体重30g)で測定した。マウスを、経口投与または静脈内注射して、50%の死亡率を引き起こす用量を特定するために、試験物質の用量を増加させて単回投与した。死亡は投与後30分以内に発生し、24時間後は生存である。その後、急性毒性(LD50)を評価した。
【0153】
ストレプトゾトシン糖尿病ラットの血行動態(心エコー検査2M-ドプラ-組織ドプラ)
Sprague Dawley雄ラット(150~175g)を、0.1Mのクエン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)で新たに調製したストレプトゾトシン(STZ、50mg/kg、Sigma-Aldrich)の溶液を尾静脈に1回注射することにより、糖尿病にした。対照ラットはクエン酸緩衝液を投与した。空腹時血糖を1週間後に測定し、400mg/dlより大きい値のラットを糖尿病とみなした。
【0154】
STZ注射の8~9週間後、ラットを、ペントバルビタール麻酔下の経胸壁心エコー検査およびドプラ評価にかけた。二次元誘導Mモード記録を使用して、アメリカ心エコー図ガイドライン(Lang RM et al., Eur J Echocardiography 2006; 7:79-108)にしたがって、左心室拡張末期径(LVEDD)、左心室収縮末期径(LVESD)の短軸測定値、後部(PW)および中隔(SW)の拡張期壁の厚さを得た。短縮率は、FS=(LVEDD-LVESD)/LVEDDとして計算した。相対的な壁厚は、PWTd+IVSTd/LVEDDとして計算した。
【0155】
僧帽弁流入は、僧帽弁尖の先端でパルスドプラによって心尖部四腔断層像により測定し、早期および後期の充満速度(E、A)、および早期充満速度の減速時間(DT)を得た。減速勾配はE/DT比として計算した。僧帽弁減速指数はDT/E比として計算した。
【0156】
組織ドプライメージング(TDI)は、心尖部四腔断層像により評価し、中隔僧帽弁輪運動、すなわち、ピーク心筋収縮期(s’)、および初期および後期の拡張期速度(e’およびa’)を記録した。
【0157】
化合物PST3093を、0.22mg/kgの用量でSTZ注射ラットに静脈内投与し、心エコー検査パラメーターを、静脈内注入の開始から15分および30分後、および注入の中断後10分後に、測定した。
【0158】
統計分析
示すとおり、データは平均±SDとして報告される。統計分析は、スチューデントt検定(STZラットのペアt検定)によって実施した。p<0.05は統計的に有意であるとみなされた。
【0159】
生物学的結果
インビトロスクリーニング
イヌ腎臓のNa,K-ATPase活性の阻害
表2は、精製されたイヌ腎臓のNa,K-ATPaseの酵素活性に対する試験化合物の阻害効果を示している。対応するIC
50は、μM濃度で表している。イスタロキシムは、ジゴキシンと同様に、0.14μMのIC
50で、Na,K-ATPase活性を阻害し、一方、PST2915は、2.1μMのIC
50で、Na,K-ATPase活性を阻害した。さらに、PST3093は、Na,K-ATPase活性をまったく有意に阻害しなかった(IC
50>100μM)。
【表13】
【0160】
正常なイヌの心臓由来SRミクロソームにおける、SERCA2a ATPase活性
本明細書に開示される化合物について、0.1~500nMの濃度範囲で、正常および不全なイヌから調製したSERCA2a ATPase活性について試験した。効果は、化合物の非存在下で実施した対照サンプルのVmax活性の%増加として表される。データは平均±SDでり、nは実験数を示している。
【0161】
正常なイヌのSR小胞において、イスタロキシム、PST3093、およびPST2915は、0.1nMおよび10nMの濃度で、SERCA2a活性を有意に刺激した(表3参照)。イスタロキシム、PST3093、およびPST2915によるSERCA2aの活性化は、不全のイヌの調製物でも試験した。この効果は、SERCA2a活性が正常な心臓と比較して低下していること(Bers DM, Physiology 2006;21:380-387)が知られている、不全調製物(データは示していない)において、特に明らかであり、したがって、化合物イスタロキシムとPST3093は、心不全のSERCA2aの変化を矯正する可能性がある。
【0162】
対照的に、以前の研究では、ジゴキシンがSERCA2a活性を刺激できなかったことが示されていた(Rocchetti M et al., J Pharmacol Exp Ther 2005;313:207-215; Ferrandi M et al., Br J Pharmacol 2013;169:1849-61)。
【表14】
【0163】
インビボ試験
マウスの急性毒性
試験化合物PST3093の急性毒性を、マウス(Albino Swiss CD-1、体重30g)で測定した。化合物PST3093を、用量を増やして、経口投与するか、静脈内注射して、50%の死亡率を引き起こす用量を特定した。死亡は投与後30分以内に発生し、24時間後は生存であった。
【0164】
PST3093急性毒性の結果は表4に示しており、化合物は、静脈内投与または経口投与後に、それぞれLD
50が、>250mg/kgおよび>200mg/kgであることが示された。比較のために、参照化合物イスタロキシムの急性毒性も、表4に含めている。
【表15】
【0165】
ストレプトゾトシン(STZ)糖尿病ラットの血行動態(心エコー検査2M-ドプラ-組織ドプラ)
表5は、0.22mg/kgのPST3093の静脈内注入の15分後と30分後、および注入の中断後10分後の、STZ糖尿病ラットの心エコーパラメーターを示している。データは、平均±SDとして表され、アスタリスクの付いた値は、少なくともp<0.05で統計的に有意である。
【0166】
データにより、STZ糖尿病ラットなどの拡張機能障害を特徴とする動物モデルにおいて、PST3093の投与は、拡張機能を改善したことが示された。特に、E波(これは急速充満段階中の伝達流入の初期充満速度を表し、主にSERCA2a活性によって媒介されるLV弛緩のエネルギー依存段階を構成する)は、PST3093注入後15分および30分で、STZラットにおいて有意に増加した(表5)。この効果は、インビトロアッセイ(表3)に示されるように、化合物によるSERCA2a活性の刺激と一致しており、Choiら(AJP 2002; H1398-H1408)によって示されるようなSTZラットにおいて抑制される、SERCA2a機能活性を回復するPST3093の能力を示唆している。
【0167】
しかしながら、E速度ピークは前負荷の影響を受け、心拍数(HR)と直接相関していることを考慮する必要がある(Mihm MJ et al., Life Sci. 2001; 22;69(5):527-42; do Carmo JM et al., AJP 2008; 295:H1974-1981)。逆に、E波の減速時間(DT)、および関連する僧帽弁減速指数(DT/E)の変化、およびE波の減速勾配(E/DT)は、HRの変化の影響を受けず、拡張機能および拡張機能障害の初期兆候の強力な指標と考えられる(Mihm MJ et al., Life Sci. 2001; 22;69(5):527-42)。特に、E波のDTなど、一部の心エコー検査拡張期パラメーターの動向は、さまざまなグレードの拡張機能障害にしたがって、反対方向でも影響を受ける可能性がある。以前の文献(Mitter SS et al., JACC 2017;69(11):1451-1464、参照)で明確に示されているように、E波のDTは、拡張機能障害がグレード1の場合、通常長くなり、グレード3の拡張機能障害を有する患者では非常に短くなり、患者の肺うっ血の状態によっても大きく影響を受ける。
【0168】
この点で、拡張機能障害の動物モデルにおけるE波のDTの変動は、健康な対照と比較して、反対方向に変動する可能性がある。例えば、STZ注射によって誘発された糖尿病性心筋症のラットでは、DTの結果は、対照ラットと同等(Thackeray JT et al., Cardiovasc Diabetol. 2011;10:75; Carillion A et al., PloS One 2017; e0180103、参照)か、または対照ラットよりも長く(Joffe II et al., JACC Vol. 34, No. 7, 1999; 2111-2119; Guido MC et al., Oxid Med Cell Longev. 2017;5343972)、一方、冠状動脈の微小塞栓によって心不全が誘発されたイヌでは、DTの結果は、対照の健康なイヌと比較して減少している(Sabbah H et al., Am J Cardiol. 2007;99(2A):41A-46A)。さらに、透過型ドプラフローとは異なり、組織ドプラ(TDI)パラメーターは、負荷の影響を比較的受けず、初期弛緩速度(e’)の低下は、拡張機能障害の明確な指標になる。
【0169】
データにより、これらのパラメーターに対するPST3093の顕著な効果が証明された。E波はPST3093処置によって有意に長くなり、一方、DTは減少する。表5には、E/DTおよびe’の増加とともに、DTおよびDT/Eの有意な減少が示されている。e’の増加は、COおよびSVの有意な増加と関連しているように見え、一方、心拍数の有意な変化は観察されなかった。注目すべきことに、DTおよびE/e’に対するPST3093の効果の傾向は、このSTZラットモデルをイスタロキシムで処置したときに得られたものと同じである。
【0170】
対照的に、冠状動脈微小塞栓症のHFイヌモデルにおいては、対照のイヌと比較してDTが減少し(Sabbah H et al., Am J Cardiol. 2007;99(2A):41A-46A)、イスタロキシムの作用により、DTを長くさせた。言い換えれば、それぞれの対照と比較したHF動物モデルにおけるE波のDTの変動とは独立して、イスタロキシムは、そのようなパラメーターを、対応する対照動物に存在するレベルに向けるように逆転させ、拡張機能を改善させる。
【0171】
これらの効果は、PST3093注入の開始から30分後にさらに明確になり、注入の中断から10分後に消える傾向があった。STZラットの心臓機能障害に対するPST3093の効果は、化合物のSERCA2a刺激活性と一致しており、抑制された心臓弛緩を矯正することにより、収縮に利用できる血液量を増加させ、心室(SV)からポンプで送られる血液量の増加をもたらした。
【0172】
上記の結果とヒト疾患との関連性を評価するには、AHF患者とSTZラットとの間の明らかな病態生理学的な差異を考慮すべきである。後者では、体液、交感神経系、心拍数の著しい変化それ自体が、細胞Ca
2+処理の変化、およびSERCA2a活性の低下とは関係なく、心エコー検査のパラメーターに影響を与える可能性がある(Mihm MJ et al., Life Sci. 2001; 22;69(5):527-42; do Carmo JM et al., AJP 2008; 295:H1974-1981)。したがって、DT/E、E/DT、およびe’の変化におけるヒトとラットの類似性は、PST3093によるSERCA2a活性の刺激という同じ根本的なメカニズムを有していると考えられ得る。
【表16】
E, E波、僧帽弁流入の初期充満速度
DT(ms), E波の減速時間
DT/E(s
2/m), 僧帽弁減速指数
E/DT(m/s
2), 減速勾配
E/e’, LV充満圧力指標
e’(cm/s)TDI, 初期弛緩速度
CO(ml/min), 心拍出量
HR(拍/分), 心拍数
SV(ml/拍), 1回拍出量