IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デジュ・エレクトロニック・マテリアルズ・カンパニー・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-二次電池及びそのための製造方法 図1
  • 特許-二次電池及びそのための製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】二次電池及びそのための製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20240925BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240925BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240925BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240925BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240925BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240925BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240925BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240925BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240925BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240925BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/485
H01M4/36 C
H01M4/1395
H01M10/058
H01M4/36 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022510936
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 KR2020011028
(87)【国際公開番号】W WO2021034097
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】10-2019-0101353
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0101354
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0101355
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517108310
【氏名又は名称】デジュ・エレクトロニック・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEJOO ELECTRONIC MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】イム,ヒョンヒ
(72)【発明者】
【氏名】オ,ソンミン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジョンチャン
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156922(JP,A)
【文献】特開2008-004466(JP,A)
【文献】特開2017-091778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01M10/052、10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び電解質を含む二次電池であって、前記正極は金属酸化物活物質を含み、前記負極はシリコン系負極活物質を含み、及び前記負極は、負極の初期不可逆容量に相当する量で、リチウムでドープされており、前記シリコン系負極活物質は、その表面にカーボンフィルムを含むカーボン層を含み、前記負極活物質の粒径分布における累積50%平均粒径(D50)が0.5μm~15μmであり、前記シリコン系負極活物質は、MgSiO 結晶及びMg SiO 結晶を含み、X線回折分析において、2θ=22.3°~23.3°の範囲に現れるMg SiO 結晶に相当するX線回折ピークの強度(IF)の2θ=30.5°~31.5°の範囲に現れるMgSiO 結晶に相当するX線回折ピークの強度(IE)に対する比(IF/IE)が1以下である、二次電池。
【請求項2】
前記金属酸化物活物質は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、又はその混合物を含むスピネル構造を有する酸化物を含む、請求項1の二次電池。
【請求項3】
前記シリコン系負極活物質は、シリコン微粒子、SiO(0.3≦x≦1.6)で表される化合物、二酸化ケイ素、及びマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、又はその組み合わせを含むシリケートからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1の二次電池。
【請求項4】
前記カーボン層は、前記負極活物質の総重量に基づき、2重量%~10重量%の量で炭素を含む、請求項1の二次電池。
【請求項5】
前記カーボン層は、カーボンナノファイバ、グラフェン、及び還元型酸化グラフェンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1の二次電池。
【請求項6】
次の関係1を満たし、リチウムドーピングのためのリチウム金属板が10μm~30μmの厚さ及び0.3g/cm~0.8g/cmの密度を有する、請求項1の二次電池。
[関係1]
0.5<{TA×DA×CA0(100-ICE)/100}/CLt×(CLa/CLt)}×TL×DL<TL<{TA×DA×CA0(100-ICE)/100}/CLt×(CLa/CLt)×DL
関係1において、
TA:負極の厚さ(μm)
DA:負極の密度(g/cm
ICE:初期効率(%)
CA0:負極の第1の充電容量(mAh/g)
CLt:リチウムの理論容量(3,600mAh/g)
CLa:リチウムの実容量(mAh/g)
TL:リチウム金属板の厚さ(μm)
DL:リチウム金属板の密度(0.53g/cm
【請求項7】
(1-1)シリコン系負極活物質を含む負極活物質組成物を負極集電体に適用して、負極を調製する工程;
(1-2)負極とリチウム金属板との間にセパレータを置いて、セルを調製する工程;
(1-3)工程(1-2)において得られるセルを電気化学的に活性化して、リチウムで負極をプリドープする工程;及び
(1-4)リチウムでプリドープされた負極を使用して、二次電池を製造する工程
を含む、請求項1の二次電池を製造するための方法。
【請求項8】
工程(1-3)において、負極及びリチウム金属板を電気化学的に接触させる間、リチウムの吸着及び脱着を起こすことにより、負極の初期不可逆容量に相当する量で、リチウムで負極をプリドープする工程を含む、請求項に記載の二次電池を製造するための方法。
【請求項9】
工程(1-3)において、ひとたび負極がリチウムで電気化学的にプリドープされたとき、負極の初期不可逆容量に相当するリチウムの量以外のリチウムの量が放出されてプリドープが実行される、請求項に記載の二次電池を製造するための方法。
【請求項10】
(2-1)シリコン系負極活物質を含む負極活物質組成物を負極集電体に適用して、負極を調製する工程;
(2-2)反応器中に負極及びリチウム金属板を配置し、酸化還元反応を実行してリチウムで負極をプリドープする工程;及び
(2-3)リチウムでプリドープされた負極、セパレータ、金属酸化物活物質を含む正極を連続的に積層して、電極を調製する工程
を含む、請求項1の二次電池を製造するための方法。
【請求項11】
工程(2-2)において、酸化還元反応を一度以上実行して、プリドープの後、負極に過剰量にドープされたリチウムを除く、請求項10に記載の二次電池を製造するための方法。
【請求項12】
前記シリコン系負極活物質は、シリコン粉末及び二酸化ケイ素粉末を混合してシリコン-シリコン酸化物原料粉末混合物を得る工程;前記原料粉末混合物を加熱及び蒸着してシリコン酸化物複合材料を得る工程;及び前記シリコン酸化物複合材料を粉砕及び分級してシリコン系負極活物質を得る工程、により得られる、請求項又は10に記載の二次電池を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムでプリドープされた負極を含む及びシリコン系負極活物質を含む二次電池、及び同一のものを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報及びコミュニケーション産業の発展と共に、電子デバイスがより小さく、軽く、薄く、及びより携帯用になるにつれ、これらの電子デバイスのための電力源として使用される電池の高エネルギー密度への要求が増加している。リチウム二次電池は、この要求を最良に満たすことができる電池であり、同一のものを使用する小型電池、並びに大きい電子デバイス、例えば、自動車及び電力貯蔵システムへのその適用に関する調査が積極的に行われている。
【0003】
リチウム二次電池は、正極としてリチウム含有遷移金属酸化物、例えば、LiCoO及びLiMn、負極として炭素系材料、例えば、グラファイトを主に使用してきた。しかしながら活物質の充電速度における過剰な向上、セパレータの薄型化、又は特に高容量リチウム二次電池を達成するために、近年、セパレータとしてかかる構成材料の膜厚を減少させる方法を介しての充電電圧の高電圧は、リチウム二次電池の安全性に悪影響を与えるという問題を起こす。
【0004】
したがって、二次電池の信頼性及び安全性を達成する一方、高エネルギー密度を達成することが可能な新しい材料、例えば、合金負極活物質、例えば、シリコン又は錫及びその酸化物、が、次世代高容量材料として注目を集めている。酸化物系合金負極活物質は、非酸化物系負極活物質の体積変化よりも小さい体積変化を有し、グラファイトの充電及び放電容量の4倍以上の充電及び放電容量を有するという利点を有する。しかしながら、酸化物系合金負極活物質は、第1の充電及び放電時の不可逆容量が大きいという問題を有する。
【0005】
一般に、シリコン酸化物からなる負極活物質は、初期充電の間、可逆的にリチウムを吸蔵及び放出することができる材料及び可逆的にリチウムを吸蔵及び放出することができない材料(不可逆材料)との合金化反応を受ける。したがって、設計時に正極において存在しているリチウムイオンが減少しているという問題がある。
【0006】
この点において、特許出願公開第2002-313324号は、負極を作成するとき、リチウム金属を負極に直接添加することにより初期効率を向上させる方法を開示している。しかしながら、リチウム金属が負極に直接添加される場合、負極活物質組成物の調製の間、ゲル化が起こり、それにより、二次電池のプロセスの問題及び性能の問題が生じる。
【0007】
さらに、特許出願公開第2008-084842号は、二次電池を製造する際、負極をリチウム金属と接触させることによりドープする方法を開示している。かかる場合において、しかしながら、シリコン酸化物又は酸化チタンを伴う重大な熱の発生を含む反応が起こる可能性があるため、二次電池の安全性において問題があり得る。
【0008】
一方、リチウムをシリコン酸化物系(SiO、0.9≦x≦1.6)材料に直接ドープする方法が、特許出願公開第2011-222153号及び特許第6274253号に開示されている。しかしながら、これらの文書に示される技術によれば、満足な二次電池性能を得ることができないか、又は反応速度が遅く、それらは大量生産及び実際の使用においては困難性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、先行技術の課題を解決するために考案されている。本発明により解決される技術上の課題は、エネルギー密度、サイクル特性、及び速度特性を増大させることができる、及び、特に、初期放電容量及び容量保持率を更に増大させることができる二次電池を提供することである。
【0010】
本発明により解決される別の技術的な課題は、二次電池を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の実施形態は、正極、負極、及び電解質を含む二次電池であって、前記正極は金属酸化物活物質を含み、前記負極はシリコン系負極活物質を含み、及び前記負極は、負極の初期不可逆容量に相当する量で、リチウムでプリドープされている二次電池を提供する。
【0012】
別の実施形態は、(1-1)シリコン系負極活物質を含む負極活物質組成物を負極集電体に適用して、負極を調製する工程;(1-2)負極とリチウム金属板との間にセパレータを置いてセルを調製する工程;(1-3)工程(1-2)において得られたセルを電気化学的に活性化してリチウムで負極をプリドープする工程;及び(1-4)リチウムでプリドープされた負極を使用して二次電池を製造する工程を含む、二次電池を製造するための方法を提供する。
【0013】
更に別の実施形態は、(2-1)シリコン系負極活物質を含む負極活物質組成物を負極集電体に適用して負極を調製する工程;(2-2)反応器中に前記負極及びリチウム金属板を配置し、酸化還元反応を実行してリチウムで負極をプリドープする工程;及び(2-3)リチウムでプリドープされた負極、セパレータ、金属酸化物活物質を含む正極を連続的に積層して、電極を調製する工程を含む、二次電池を製造するための方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
前記実施形態による二次電池は、安全性を達成することができるだけでなく、エネルギー密度を著しく増大させることができ、サイクル特性及び速度特性を増大させることができる。特に、二次電池は、初期放電容量及び容量保持率において、更に増大されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態による二次電池を製造するための方法におけるリチウムで負極をプリドープする工程の一例を示す。
図2図2は、サイクルの数について実施例3-2及び比較例3-1の容量特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、下記に開示されたものに限定されない。むしろ、それは、本発明の要旨が変更されない限り、種々の形態で改変することができる。
【0017】
本明細書において、ある部分がある要素を『含む』と称されるとき、別段示されていない限り、前記部分が他の要素も含むことができると理解すべきである。
【0018】
さらに、本明細書において使用されるコンポーネントの数量、反応条件、等と関連するすべての数字及び表現は、別段示されていない限り、用語『約』により改変されているとして理解すべきである。
【0019】
[二次電池]
本発明の実施形態による二次電池は、正極、負極、及び電解質を含み、前記正極は金属酸化物活物質を含み、前記負極はシリコン系負極活物質を含み、前記負極は、負極の初期不可逆容量に相当する量で、リチウムでプリドープされている。
【0020】
本発明の実施形態による二次電池は、負極の初期不可逆容量に相当する量で、リチウムでプリドープされたシリコン系負極活物質を含む負極を含み、それにより二次電池の安全性だけでなく、エネルギー密度を顕著に増大させることができ、サイクル特性及び速度特性を増大させることができる。
【0021】
一般に、シリコン系負極活物質は高容量を示すが、サイクルが進行するので、体積膨張率は300%以上となり、それは抵抗の増加及び液体電解質における副反応の増加につながり得る。したがって、固体電解質界面(SEI)層の形成により生じる問題、例えば、電極構造に対するダメージ、は悪化し得る。さらに、シリコン酸化物系負極活物質はシリコン系負極活物質の体積膨張率よりも小さい体積膨張率を有し、一方、初期不可逆容量は増加し、負極活物質における酸素によるLiOにより増加されるが、エネルギー密度が低下し、サイクル特性及び速度特性が低下するという問題が生じる。
【0022】
本発明の実施形態によれば、高エネルギー密度を有する二次電池を得るために、負極活物質の不可逆容量をできる限り小さくすることが重要である。したがって、リチウムでプリドープされたシリコン系負極活物質を含む負極が本発明においては採用され、それにより負極の初期不可逆容量を低下させること、負極表面のSEIへの正極の金属イオンの侵入を防ぐこと、及びエネルギー密度を増大させることが可能である。プリドーピングは不可逆容量を補い、又は充電及び放電のために必要とされるリチウムは、リチウムを含まない活物質が正極において使用されるときでさえ、負極において含まれることができる。したがって、二次電池の性能を増大させることができる。
【0023】
本発明の実施形態によれば、負極はシリコン系負極活物質を含むことができる。シリコン系負極活物質は、シリコン微粒子、SiO(0.3≦x≦1.6)で表される化合物、二酸化ケイ素、及びマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、又はその組み合わせを含むシリケートからなる群から選択される、少なくとも1つを含むことができる。
【0024】
さらに、シリコン系負極活物質は、リチウムを吸蔵及び放出することができる酸化物のマトリクスを含む活物質であることができる。マトリクスは、シリコン酸化物、酸化チタン、又はその混合物を含むことができる。
【0025】
負極活物質において、シリコンの含有量は、前記負極活物質の総重量に基づき、30重量%~80重量%、具体的には、40重量%~80重量%、より具体的には、40重量%~70重量%、とりわけ、40重量%~60重量%であることができる。シリコンの含有量が30重量%未満である場合、リチウムの吸蔵及び放出時に作用する負極活物質の量は小さく、二次電池の充電及び放電容量を減少させ得る。他方、それが80重量%を超える場合、二次電池の充電及び放電容量は増加させることができる一方、充電及び放電の間の電極の膨張及び収縮は過剰に増加する可能性がり、サイクル特性を低下させ得る。
【0026】
シリコン微粒子は結晶性又はアモルファスであることができ、具体的にはアモルファス又はそれと同様の相であることができる。シリコン微粒子がアモルファス又はそれと同様の相である場合、リチウム二次電池の充電及び放電の間の膨張及び収縮は小さく、電池性能、例えば、容量特性を更に増大させることができる。
【0027】
さらに、シリコン微粒子は、SiO(0.3≦x≦1.6)で表される化合物、二酸化ケイ素、及びマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、を含むシリケート又はその組み合わせ、又はそれらに取り囲まれるものから選択される、から選択される少なくとも1つにおいて、均一に分散された形態として存在することができる。かかる場合において、シリコンの膨張又は収縮は、抑制することができ、それにより二次電池の性能を増大させる。一方、カーボンフィルムを含むカーボン層がシリコン微粒子上に形成される場合、それらはシリコン酸化物化合物又はシリケートに分散した構造を同様に有することができる。
【0028】
さらに、シリコン系負極活物質がシリコン微粒子を含むとき、それはシリコン微粒子と反応して破壊することが困難であるリチウム合金を形成するので、好ましい。充電の間、シリコン微粒子はリチウムと反応してLi4。2Siを形成し、放電の間、シリコンに戻る。
【0029】
シリコン微粒子がカソードターゲットとして銅を使用してX線回折(Cu-Kα)分析を受け、おおよそ2θ=47.5°のSi(220)の回折ピークの全半値幅(FWHM)に基づき、シェラー方程式により計算されたとき、2nm~10nm、具体的には、2nm~9nm、より具体的には、2nm~8nmの結晶サイズを有することができる。シリコン微粒子の結晶サイズが10nmを超える場合、充電及び放電の間の体積膨張又は収縮のために負極活物質においてクラックが起こる可能性があり、それによりサイクル特性が低下する。さらに、シリコン微粒子の結晶サイズが2nm未満である場合、充電及び放電容量は減少する可能性があり、物理的特性は増加した反応性のために、貯蔵の間、変化する可能性があり、それは加工性において問題を起こす可能性がある。シリコン微粒子の結晶サイズが前記範囲内である場合、充電及び放電に寄与しない領域はほぼなく、放電容量に対する充電容量の比、すなわち、充電及び放電効率を表す、クーロン効率における減少を抑制することが可能である。
【0030】
シリコン微粒子が約2~6nmのアモルファス又は結晶サイズに更に細分化される場合、負極活物質の密度は増加し、それによりそれは理論密度に近づくことができ、細孔は顕著に減少し得る。結果として、マトリクスの密度は増大し、強度が高まりクラッキングが抑制される;したがって、二次電池の初期効率又はサイクル寿命特性を更に増大させることができる。
【0031】
さらに、負極活物質は、SiO(0.3≦x≦1.6)で表される化合物又はシリコン酸化物化合物、例えば、二酸化ケイ素を含むことができる。具体的には、化合物は、SiO(0.5≦x≦1.6)、二酸化ケイ素、又はその混合物であることができる。より具体的には、それは、SiO(0.7≦x≦1.2)、二酸化ケイ素、又はその混合物であることができる。かかるものとして、シリコン酸化物化合物が用いられるとき、二次電池に適用されたとき、容量を増大させることができ、体積膨張を減少させることができる。
【0032】
シリコン酸化物化合物は、エネルギー分散型X線分光法(EDX)又は透過型電子顕微鏡により観測されたとき、アモルファスであることができ、又は数ナノメートル~数十ナノメートルのシリコン粒子(アモルファス)がシリコン酸化物化合物中に分散している構造を有することができる。
【0033】
シリコン酸化物化合物は、二酸化ケイ素及びサブミクロンのシリコン粉末又は50nm以下のサイズを有するシリコン微粒子の混合物を加熱することにより製造されるシリコン酸化物ガスを冷却及び蒸着させる工程を含む方法により得ることができる。
【0034】
シリコン酸化物化合物はアモルファスであり、放電の間、リチウムイオンと不可逆的な反応を起こして、Li-Si-O又はSi+LiOを形成することができる。したがって、シリコン酸化物化合物における二酸化ケイ素の含有量が増加するにつれ、初期の不可逆的な反応は増加する可能性があり、初期効率は減少し得る。
【0035】
シリコン酸化物化合物は、全負極活物質に基づき、5モル%~20モル%の量で使用することができる。シリコン酸化物化合物の含有量が5モル%未満である場合、二次電池の体積膨張及び寿命特性は低下し得る。それが20モル%を超える場合、二次電池の初期の不可逆的反応が増加し得る。
【0036】
本発明の実施形態によれば、負極活物質は二酸化ケイ素を含まないことができる。その理由は、シリコンが挿入されるとき、リチウムシリケートの生成が抑制され、初期効率を向上させることができる;しかしながら、二酸化ケイ素が含まれる場合、二酸化ケイ素がリチウムと反応するとき、不可逆的な反応が起こり、リチウムシリケートを生み出し、それにより初期効率を減少させる。
【0037】
さらに、前記負極活物質は、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、又はその組み合わせを含むシリケートを含むことができる。マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、又はその組み合わせは、ドープされた形態で用いることができる。具体的には、負極活物質は、マグネシウムがドープされた形態で用いられる、マグネシウムを含むシリケートを含むことができる。
【0038】
本発明の実施形態によれば、マグネシウムを含むシリケートは、MgSiO結晶、MgSiO結晶、又はその混合物を含むことができる。
【0039】
さらに、1つの実施形態によれば、マグネシウムを含むシリケートはMgSiO結晶を含むことができ、MgSiO結晶を更に含むことができる。
【0040】
マグネシウムを含むシリケートにおいて、マグネシウムがドープされるとき、例えば、SiO及びMgが1:1の比で反応するとき、元素が均一に分布している場合、Si及びMgOのみが熱力学的に存在している。しかしながら、元素濃度分布が不均一である場合、Si及びMgOだけでなく、他の物質、例えば、未反応のSiO及び金属Mgも存在し得る。
【0041】
本発明の実施形態によれば、負極活物質はMgSiO結晶及びMgOを含むことができるが、それは、充電/放電容量及び初期効率を増大させるために、大量のMgSiO結晶を実質的に含むことができる。
【0042】
本明細書において、表現『大量のコンポーネントを実質的に含む』、又はコンポーネントを『実質的に含む』は、主たるコンポーネントとしてコンポーネントを含む又はコンポーネントを主に含むことを意味する。
【0043】
具体的には、大量のMgSiOが含まれることは、MgSiO結晶の量よりも多い量のMgSiOが含まれることを意味する。例えば、X線回折分析において、2θ=22.3°~23.3°の範囲に現れるMgSiO結晶に相当するX線回折ピークの強度(IF)の2θ=30.5°~31.5°の範囲に現れるMgSiO結晶に相当するX線回折ピークの強度(IE)に対する比(IF/IE)は、1以下である。
【0044】
シリケートにおいて、SiOに対するマグネシウムの含有量は、充電及び放電の間、初期放電特性又はサイクル特性に影響を与え得る。
【0045】
SiOにおけるシリコンは、リチウム原子と合金化して、初期放電特性を著しく増大させることができる。一方、MgSiO結晶のマグネシウムシリケートが実質的に大量に用いられる場合、シリコン微粒子の細かさが維持され、マトリクスの強度を更に強化することができる。さらに、密度は増加することができ、それにより密集したマトリクスを形成する。結果として、初期効率の増加又は充電及び放電の間のサイクルの向上効果を増大させることができる。しかしながら、MgSiO結晶が大量に用いられる場合、シリコン微粒子のサイズが増加し、それによりマトリクスの強度又は密度を減少させることができ、シリコン原子とリチウム原子の合金化が減少し、それは二次電池の初期の放電特性における減少を起こし得る。
【0046】
負極活物質がマグネシウムを含むシリケートを含む場合、マグネシウムの代わりにリチウムがドープされる場合と比較して、負極活物質及びバインダー間の化学反応を抑制することができる。したがって、かかる負極活物質の使用は、負極活物質組成物の安全性を増大させることができ、それは負極の安全性を向上させるだけでなく、二次電池のサイクル特性を向上させる。さらに、マグネシウムを含むシリケートはリチウムイオンとほとんど反応しないので、電極に適用されたとき、リチウムイオンは迅速に増加するとき、電極の膨張/収縮は減少し、それによりサイクル特性を増大させることが理解される。さらに、シリコン微粒子を取り囲む連続相である、マトリクスの強度はシリケートで高めることができることが理解される。
【0047】
負極活物質がマグネシウムを含むシリケートを含む場合ドーピング量、すなわち、マグネシウムの含有量は、前記負極活物質の総重量に基づき、3重量%~15重量%、具体的には、4重量%~12重量%であることができる。マグネシウムの含有量が3重量%以上である場合、二次電池の初期効率における増大を達成することができる。それが15重量%以下である場合、それはサイクル特性及び二次電池の取り扱い安全性の点において、有利であり得る。
【0048】
本発明の別の実施形態によれば、負極活物質がカルシウム、アルミニウム、又はその組み合わせを含むシリケートを含む場合、ドーピング量、すなわち、カルシウム又はアルミニウムの含有量は、前記負極活物質の総重量に基づき、3重量%~15重量%、具体的には、4重量%~12重量%であることができる。
【0049】
本発明の実施形態によれば、マグネシウム、カルシウム、又はアルミニウムを含むシリケートは、次の式1により表すことができる:
【0050】
[式1]
SiO
【0051】
式1において、Mは、Mg、Ca、及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの金属であり、0.5≦x≦2、及び2.5≦y≦4である。
【0052】
式1のシリケートは、シリコン酸化物化合物よりも熱力学的に負のギブス自由エネルギーを有する酸化物であり、アモルファスであり、リチウムに対して安定であり、そのため、初期の不可逆的な反応を抑制するのに役立ち得る。
【0053】
本発明の実施形態によれば、シリコン系負極活物質は、カーボン層がカーボンナノファイバ、グラフェン、酸化グラフェン、及び還元型酸化グラフェンからなる群から選択される少なくとも1つを含むことができる、その表面にカーボンフィルムを含むカーボン層を含むことができる。
【0054】
具体的には、優れた伝導性のために体積膨張について柔軟であるカーボン層、具体的には、カーボンナノファイバ、グラフェン、酸化グラフェン、及び還元型酸化グラフェンからなる群から選択される少なくとも1つを、シリコン系負極活物質、例えば、シリコン微粒子、SiO(0.3≦x≦1.6)で表される化合物、二酸化ケイ素、及びマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、又はその組み合わせを含むシリケートからなる群から選択される、少なくとも1つの負極活物質の表面に直接的に成長させることができる。結果として、負極活物質の体積膨張を抑制して、シリコン系負極活物質が押される現象を減らすことが可能であり、カーボン層のためにシリコン系負極活物質と電解質との反応により形成されるSEI層の減少を減らすことが可能である。
【0055】
カーボン層は、前記負極活物質の総重量に基づき、2重量%~10重量%、具体的には、4重量%~8重量%、の量で炭素を含むことができる。炭素含有量が2重量%未満である場合、負極の伝導性は劣化し得る。それが10重量%を超える場合、炭素含有量は過剰に増加することができ、負極の容量を減少させることができ、本発明における所望のエネルギー密度の増大を達成することは困難であり得る。カーボン層を形成するための方法は、有機ガス及び/又は蒸気中での化学蒸着(CVD)の方法、又は熱処理の間、反応器への有機ガス及び/又は蒸気の導入の方法であることができる。
【0056】
さらに、カーボン層が形成される負極活物質の粒子分布における累積50%平均粒径(D50)は、0.5μm~15μm、具体的には、2μm~10μm、より具体的には、3μm~10μm又は4μm~8μmであることができる。D50が小さ過ぎる場合、バルク密度が小さくなり過ぎ、単位体積当たりの充電及び放電容量を低下させ得る。他方、D50が大き過ぎる場合、二次電池の電極層を調製するのは困難であり、それが集電体材料から剥離する可能性があるという問題が生じ得る。一方、D50は、レーザービーム回折法による粒度分布測定における重量平均値D50(すなわち、累積重量が50%であるときの粒径又はメジアン径)として測定される値である。
【0057】
本発明の実施形態によれば、カーボン層は、10nm~200nm、具体的には、20nm~200nmの平均厚さを有することができる。
【0058】
カーボン層の平均厚さが10nm以上である場合、伝導性を増大させることができる。それが200nm以下である場合、二次電池の容量における減少を抑制することができる。カーボン層の平均厚さは、例えば、次の手順により、測定することができる。
【0059】
第1に、負極活物質は、透過型電子顕微鏡(TEM)により、任意の拡大率で観測される。拡大率は、好ましくは、例えば、裸眼で確認することができる程度である。次に、カーボン層の厚さを任意の15点で測定する。かかる場合において、特定の領域に集中することなく、できる限り広く、ランダムに測定位置を選択することが好ましい。最終的に、15点でのカーボン層の厚さの平均値を計算する。
【0060】
さらに、本発明の実施形態によるシリコン系負極活物質が使用されるとき、負極活物質の単位重量当たりの電池容量は、1,500~3,000mAh/gであることができ、結果、比較的小さい体積膨張で高伝導性及び増大したサイクル特性を有する二次電池を提供することができる。さらに、それが炭素系負極活物質と組み合わせて使用される場合、クーロン効率及びサイクル特性は増大し得る。
【0061】
二次電池に採用される正極は、金属酸化物活物質が具体的にコバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、又はその混合物を含むスピネル構造を有する酸化物を含むことができる、金属酸化物活物質を含むことができる。
【0062】
本発明の実施形態による二次電池は次の関係1を満たし、リチウムドーピングのためのリチウム金属板は、10μm~30μmの厚さ(TL)及び0.3g/cm~0.8g/cmの密度(DA)を有することができる。
【0063】
[関係1]
0.5<{TA×DA×CA0(100-ICE)/100}/CLt×(CLa/CLt)}×TL×DL<TL<{TA×DA×CA0(100-ICE)/100}/CLt×(CLa/CLt)×DL
【0064】
関係1において、
TA:負極の厚さ(μm)
DA:負極の密度(g/cm
ICE:初期効率(%)
CA0:負極の第1の充電容量(mAh/g)
CLt:リチウムの理論容量(3、600mAh/g)
CLa:リチウムの実容量(mAh/g)
TL:リチウム金属板の厚さ(μm)
DL:リチウム金属板の密度(0.53g/cm
【0065】
さらに、リチウム金属板の厚さは、具体的には15μm~25μmであることができる。プリドープ速度を考慮するとき、大きい表面積を有するリチウム金属板が好ましい。扱いの簡便さ、生産性、及ぶリチウム金属板のプリドープ工程の環境を考慮するとき、小さい表面積を有するリチウム金属板が好ましくあり得る。リチウム金属板の厚さが前記範囲を満たす場合、それはリチウム残渣の抑制、プリドープ速度、及び生産性の点で好ましくあり得る。
【0066】
[二次電池を製造するための方法]
【0067】
本発明の実施形態による二次電池を製造するための方法は、(1-1)シリコン系負極活物質を含む負極活物質組成物を負極集電体に適用して負極を調製する工程;(1-2)負極及びリチウム金属板間にセパレータを置いてセルを調製する工程;(1-3)工程(1-2)において得られるセルを電気化学的に活性化してリチウムで負極をプリドープする工程;及び(1-4)リチウムでプリドープされた負極を使用して二次電池を製造する工程を含むことができる。
【0068】
工程(1-1)は、シリコン系負極活物質を含む負極活物質組成物を負極集電体に適用する工程、及びそれを巻いて乾燥する工程を含むことができ、通常使用される方法により実行することができる。
【0069】
具体的には、負極は、負極活物質、伝導性材料、及びバインダーが混合される、負極活物質組成物を負極集電体に適用する工程、及びそれを乾燥する工程により調製される。負極は、当該技術分野において通常使用される方法により調製することができる。例えば、負極活物質組成物(スラリー)は、バインダー、溶媒、及び、要すれば、伝導性材料及び分散剤を本発明の実施形態による負極活物質と混合及び撹拌することにより調製され、それは集電体に適用することができ、巻いて、及び乾燥して負極を調製することができる。
【0070】
前記シリコン系負極活物質は、負極活物質として使用することができる。
【0071】
本発明の実施形態による二次電池を製造するための方法において、シリコン系負極活物質は、シリコン粉末及び二酸化ケイ素粉末を混合して、シリコン-シリコン酸化物原料粉末混合物を得る工程;前記原料粉末混合物を加熱及び蒸着して、シリコン酸化物複合材料を得る工程;及び前記シリコン酸化物複合材料を粉砕及び分級してシリコン系負極活物質を得る工程により得ることができる。
【0072】
具体的には、シリコン系負極活物質を調製するための方法において、第1の工程は、シリコン粉末及二酸化ケイ素粉末を混合してシリコン-シリコン酸化物原料粉末混合物を得る工程を含むことができる。
【0073】
シリコン粉末及び二酸化ケイ素粉末を混合するとき、シリコン粉末に対する二酸化ケイ素粉末の混合モル比、すなわち、二酸化ケイ素粉末/シリコン粉末のモル比は、0.9より大きく1.1より小さく、具体的には、1.01~1.08である。
【0074】
シリコン系負極活物質を調製するための方法において、第2の工程は、前記原料粉末混合物を加熱及び蒸着してシリコン酸化物複合材料を得る工程を含むことができる。
【0075】
第2の工程における原料粉末混合物の加熱及び蒸着は、500℃~1,600℃、具体的には、600℃~1,500℃で実行することができる。加熱及び蒸着温度が500℃より低い場合、反応を実行することが困難であり得、それにより生産性を低下させる。それが1,600℃を超える場合、原料粉末混合物は溶融する可能性があり、それにより反応性を減少させる。
【0076】
シリコン系負極活物質を調製するための方法において、第3の工程は、シリコン酸化物複合材料を粉砕及び分級してシリコン系負極活物質を得る工程を含むことができる。
【0077】
粉砕は、0.5μm~15μm、具体的には、2μm~10μm、より具体的には、4μm~8μmの平均粒径(D50)を有する負極活物質に粉砕及び分級することにより、実行することができる。粉砕は、通常使用される粉砕機又はふるいを使用して実行することができる。
【0078】
さらに、本発明の実施形態によれば、前記方法は、第2の工程と第3の工程との間にシリコン酸化物複合材料を冷却する工程を更に含むことができる。
【0079】
冷却は、不活性ガスを注入する間、室温で実行することができる。不活性ガスは、二酸化炭素ガス、アルゴン(Ar)、水蒸気(HO)、ヘリウム(He)、窒素(N)、及び水素(H)から選択される少なくとも1つであることができる。
【0080】
一方、本発明の実施形態によれば、前記方法は、第3の工程の粉砕及び分級の後に化学的熱分解蒸着法を使用することにより、負極活物質の表面にカーボンフィルムを含むカーボン層を形成する工程を更に含むことができる。
【0081】
化学的熱分解蒸着法において、カーボンフィルムを含むカーボン層は、次の式2により表される化合物;次の式3により表される化合物;次の式4により表される化合物;及びアセチレン、ベンゼン、トルエン、及びキシレンから選択される、少なくとも1つの炭化水素から選択される、少なくとも1つのカーボン源ガスをそれに添加することにより、及び600℃~1,200℃で気相状態において反応を実行することにより、負極活物質の表面に形成することができる。
【0082】
[式2]
(2n+2-A)[OH]
式2において、nは1~20の整数であり、Aは0又は1であり、
【0083】
[式3]
2m
式3において、mは2~6の整数であり、
【0084】
[式4]

式4において、xは1~20の整数であり、yは0~20の整数であり、及びzは1又は2である。
【0085】
式2により表される化合物は、例えば、メタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、メタノール(CHOH)、エタノール(COH)、及びプロパノール(CO)から選択される少なくとも1つを含むことができる。式3により表される化合物は、エチレン(C)、及びプロピレン(C)から選択される少なくとも1つを含むことができる。一方、式4により表される化合物は、酸素含有ガスであり、例えば、一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO)から選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0086】
さらに、カーボン層が形成されるとき、二酸化炭素ガス、アルゴン(Ar)、水蒸気(HO)、ヘリウム(He)、窒素(N)、及び水素(H)から選択される少なくとも1つを含む不活性ガスを注入することができる。1つの実施形態によれば、カーボン層が形成されるとき、水蒸気が含まれる場合、負極活物質はより高い電気伝導性を示すことができる。具体的には、カーボン層が形成されるとき、水蒸気が含まれる場合、高結晶性カーボンフィルムはガス混合物との反応により負極活物質の表面に形成されることができ、より少量のカーボンが被覆されるときでさえも、高電気伝導性を示すことができる。ガス混合物中における水蒸気の含有量は、特に限定されない。例えば、それは、全カーボン源ガスの100体積%に基づき、0.01体積%~10体積%であることができる。
【0087】
1つの実施形態によれば、カーボン層が形成されるとき、CH及びCOの混合ガス又はCH、CO、及びHOの混合ガスをカーボン源ガスとして使用することができる。CH及びCOの混合ガスが使用されるとき、CH:COのモル比は、約1:0.20~0.50、具体的には、約1:0.25~0.45、より具体的には、約1:0.30~0.40であることができる。CH、CO、及びH2Oの混合ガスが使用されるとき、CH:CO:H2Oのモル比は約1:0.20~0.50:0.01~1.45、具体的には、約1:0.25~0.45:0.10~1.35、より具体的には、約1:0.30~0.40:0.50~1.0であることができる。
【0088】
別の実施形態によれば、カーボン層が形成されるとき、CO、CO、又はその組み合わせは、カーボン源ガスとして使用することができる。
【0089】
別の実施形態によれば、カーボン層が形成されるとき、不活性ガスとしてCH及びNを含むカーボン源ガスを使用することができる。混合ガスにおけるCH及びNのモル比は、約1:0.20~0.50、具体的には、約1:0.25~0.45、より具体的には、約1:0.30~0.40であることができる。
【0090】
1つの実施形態によれば、不活性ガスは含まれないことができる。
【0091】
さらに、反応の間、熱処理温度、ガス混合物の組成物、等は、所望の量のカーボンフィルムを鑑み、選択することができる。
【0092】
カーボン層が形成されるとき、熱処理温度は、600℃~1,200℃、具体的には、700℃~1,100℃、より具体的には、700℃~1,000℃であることができる。
【0093】
さらに、熱処理の間の圧力は、導入されるガス混合物の量を調節することにより、コントロールすることができる。例えば、熱処理の間、圧力は、1atm以上、例えば、1atm~5atmであることができるが、それに限定されない。
【0094】
さらに、熱処理時間は限定されないが、それは、熱処理温度、熱処理の間の圧力、ガス混合物の組成物、及び所望の量のカーボンコーティングに応じて、適切に調節することができる。例えば、熱処理時間は、10分~100時間、具体的には、30分~90時間、より具体的には、50分~40時間であることができる。1つの実施形態によれば、熱処理時間が増加するにつれ、形成されるカーボン膜厚は増加することができる。厚さが適度な程度に調節されるとき、負極活物質の電気的特性を増大させることができる。
【0095】
本発明の実施形態によれば、カーボンフィルムは負極活物質の表面全体にわたり均一に及び薄く形成されることが好ましく、実質的に大量のカーボンナノファイバ、グラフェン、酸化グラフェン、又は還元型酸化グラフェンがカーボンフィルムとして形成されることが好ましい。
【0096】
さらに、均一なカーボンフィルムを含むカーボン層は、カーボン源ガスの気相反応を介して、比較的低温でさえも、負極活物質の表面に形成することができる。負極活物質において、したがって形成された、カーボンフィルムの剥離は容易に生じない。さらに、高結晶性を有するカーボンフィルムは、気相反応を介して形成することができる;したがって、それが負極活物質として使用されるとき、構造を変化させることなく、負極活物質の電気伝導性を増大させることができる。
【0097】
カーボン層は、カーボンナノファイバ、グラフェン、酸化グラフェン、及び還元型酸化グラフェンからなる群から選択される、少なくとも1つを含むことができる。
【0098】
カーボン層の構造は、層、ナノシート型、又は数フレークが混合された構造であることができる。
【0099】
層は、グラフェンがシリコン微粒子、シリコン酸化物化合物、マグネシウムシリケート、及びその還元製品から選択される少なくとも1つの表面に、連続的に及び均一に形成される、フィルムの形態をいうことができる。
【0100】
さらに、ナノシートは、カーボンナノファイバ又はグラフェン含有材料がシリコン微粒子、SiO(0.3≦x≦1.6)で表される化合物、二酸化ケイ素、及びマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、又はその組み合わせを含むシリケートからなる群から選択される、少なくとも1つの表面上に、不規則な状態で形成される場合をいうことができる。
【0101】
さらに、フレークはナノシート又はメンブレンの一部が損傷される又は変形される場合をいうことができる。
【0102】
カーボン層が形成された後、方法は、粉砕及び分級を更に含むことができる。カーボン層が形成された負極活物質の平均粒径(D50)は、0.5μm~15μm、具体的には、2μm~10μm、より具体的には、3μm~10μm又は4μm~8μmであることができる。カーボン層が形成された負極活物質の平均粒径(D50)が0.5μmである場合、そのバルク密度は小さ過ぎであり、単位体積当たりの充電及び放電容量は低下し得る。他方、平均粒径(D50)が15μmを超える場合、電極層を調製することが困難であり、結果、集電体材料から剥離する可能性がある。平均粒径(D50)は、重量平均値D50、すなわち、累積重量がレーザービーム回折法による粒度分布測定において50%であるときの粒径又はメジアン径として測定される値である。
【0103】
カーボン層が形成された負極活物質の平均粒径(D50)は、前記粉砕により達成することができる。さらに、平均粒径(D50)への粉砕の後、分級を実行して粒度分布を実行することができ、そのために乾式分級、湿式分級、又はろ過を使用することができる。乾式分級において、分散、分離(微粒子及び欠陥粒子の分離)、集積(固体及びガスの分離)、及び放電の工程は、気流を使用して連続的に又は同時に実行され、前処理(水分、分散性、湿度、等の調節)は、粒子、粒子形状、気流のかく乱、速度分布、及び静電気の影響、等間の干渉により、分級効率を低下させないために、分級に先立ち実行することができ、それにより、使用される気流における水分又は酸素濃度を調節する。さらに、所望の粒径分布は、粉砕及び分級を一度に実行することにより得ることができる。
【0104】
平均粒径を有する負極活物質が粉砕及び分級処理により達成される場合、サイクル特性の初期効率は、分級前と比較して約10%~20%増大し得る。粉砕及び分級の際の負極活物質は、約10μm以下のDmaxを有することができる。かかる場合において、負極活物質の具体的な表面積は、減少し得る;結果として、SEI層に補われるリチウムは、減少し得る。
【0105】
さらに、負極活物質は、2m/g~20m/gの具体的な表面積を有することができる。負極活物質の具体的な表面積が2m/g未満である場合、二次電池の速度特性は低下し得る。それが20m/gを超える場合、電解質との接触面積が増加し、電解質の分解反応が促進され得る又は電池の副反応が起こり得るという問題を生じさせ得る。負極活物質の具体的な表面積は、具体的には3m/g~15m/g、より具体的には、3m/g~10m/gであることができる。具体的な表面積は、窒素吸着によるBETにより測定することができる。例えば、当該技術分野において一般的に使用される具体的な表面積測定装置(MOUNTECHのMacsorb HM(model 1210)、MicrotracBELのBelsorp-mini II、等)を使用することができる。
【0106】
負極活物質は、1.8g/cm~3.2g/cm、具体的には、2.5g/cm~3.2g/cmの比重を有することができる。比重が増加するにつれ、負極活物質における細孔の数が減少し、それにより伝導性を増大させることができ、マトリクスの強度が高まり、それにより初期効率又はサイクル寿命特性を増大させることができる。本明細書において、比重とは、真の比重、密度、又は真の密度をいうことができる。比重の測定、例えば、乾式密度計による比重の測定のために、Shimadzu Corporationにより製造されたAcupickII1340を乾式密度計として使用することができる。使用されるパージガスはヘリウムガスであることができ、測定は、23℃の温度でセットされたサンプルホルダーにおける200回のパージの後に実行することができる。
【0107】
本発明の実施形態によれば、カーボン層、特に伝導性及び体積膨張における柔軟性において優れているカーボン層、特にカーボンナノファイバ又はグラフェン含有材料を含む負極活物質においては、負極活物質上に直接成長し、結果、体積膨張を抑制し、シリコン微粒子、シリコン酸化物化合物、又はシリケートがプレスされ、収縮する現象を減少させることが可能である。さらに、負極活物質において含まれるシリコンと電解質との直接反応は、カーボンナノファイバ又はグラフェンにより制御することができるので、電極のSEI層の形成を減少させることが可能である。前記カーボン層を含む負極活物質が使用される場合、バインダーが負極活物質組成物の調製において使用されない場合であっても、シリコン微粒子、シリコン酸化物化合物、及びシリケートの体積膨張による構造的な崩壊を抑制することが可能であり、抵抗における増加を最小化することにより優れた電気伝導性及び容量特性を有する電極及びリチウム二次電池の製造において、有利に使用することができる。
【0108】
さらに、本発明の実施形態によれば、負極活物質は、炭素系負極材料を更に含むことができる。
【0109】
具体的には、負極活物質は、シリコン系負極活物質及び炭素系負極材料の混合物として使用することができる。かかる場合において、負極活物質の電気抵抗を減少させることができる、充電において関与する膨張応力を同時に緩和することができる。炭素系負極材料は、例えば、天然グラファイト、合成グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソカーボン、カーボンファイバ、カーボンナノチューブ、熱分解カーボン、コークス、ガラスカーボンファイバ、燃結有機高分子化合物、及びカーボンブラックからなる群から選択される、少なくとも1つを含むことができる。
【0110】
炭素系負極材料、例えば、グラファイト系負極材料、の含有量は、前記負極活物質の総重量に基づき、30重量%~95重量%、具体的には、30重量%~90重量%、より具体的には、50重量%~80重量%であることができる。特に、負極活物質がシリコン微粒子を含む場合、シリコン微粒子は体積膨張を起こさない;したがって、優れたサイクル特性を有する二次電池は、使用のために炭素系負極材料を混合するとき、得ることができる。
【0111】
バインダーは、特に限定されない。例えば、それは、フッ素系樹脂、例えば、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HEP)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン;ゴム系材料、例えば、フッ素ゴム及びスチレン-ブチレンゴム(SBR);ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン;アクリル樹脂;及びポリイミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つであることができる。シリコン系負極活物質は充電及び放電の間、大きい体積変化を有するので、優れた接着性を有する材料がより好ましくあり得る。例えば、それは、ポリイミド、ポリアミド-イミド、又はその混合物を含む、ポリイミド系樹脂を含むことができる。さらに、負極が調製されるとき、バインダーとの混合の量は、本発明の負極活物質の組成物の型、粒径、形状、及び組成物の混合を鑑み、決定することができる。負極の強度及び接着性を鑑み、適切に混合することにより、二次電池の良好なサイクル特性を得ることができる。
【0112】
伝導性材料は、それが電池において化学的変化を起こすことなく、伝導性を有する限り、特に限定されない。例えば、それは、グラファイト、例えば、天然グラファイト及び合成グラファイト;カーボンブラック、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、及びサーマルブラック;伝導性繊維、例えば、炭素繊維及び金属繊維;金属粉末、例えば、フルオロカーボン、アルミニウム、及びニッケル粉末;伝導性ウィスカ、例えば、酸化亜鉛及びチタン酸カリウム;伝導性金属酸化物、例えば、酸化チタン;伝導性材料、例えば、ポリフェニレン誘導体であることができる。
【0113】
分散剤は、水性分散剤又は有機分散剤、例えば、N-メチル-2-ピロリドンであることができる。
【0114】
負極集電体は、特に限定されない。その例は、銅ホイル、ステンレス鋼鉄ホイル、及びチタンホイルを含む。さらに、表面がエンボス加工された集電体又は多孔性集電体、例えば、膨張した金属、メッシュ加工された又は穴が開いた金属を使用することができる。
【0115】
さらに、二次電池を製造するための方法は、負極及びリチウム金属板間にセパレータを置いて、セルを調製する工程(1-2)を含むことができる。
【0116】
リチウム金属板は、10μm~30μm、具体的には、15μm~25μmの厚さを有することができる。プリドープ速度を考慮するとき、大きい表面積を有するリチウム金属板が好ましい。リチウム金属板の扱い易さ、生産性、及びプリドープ工程の環境を考慮するとき、小さい表面積を有するリチウム金属板が好ましい。リチウム金属板の厚さが前記範囲を満たす場合、リチウム残渣の抑制、プリドープ速度、及び生産性の点で好ましくあることができる。さらに、リチウム金属板は、0.3g/cm~0.8g/cmの密度を有することができる。
【0117】
一方、セパレータは、従来のセパレータとして使用される従来の多孔性ポリマーフィルム、例えば、ポリオレフィン系ポリマー、例えば、エチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマー、エチレン/ブテンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、及びエチレン/メタクリレートコポリマーから調製される多孔性ポリマーフィルムであり、それらは単独で又は積層して使用することができる。さらに、高イオン透過率及び機械的強度を有する絶縁薄膜フィルムを使用することができる。セパレータは、セラミック材料がセパレータの表面に薄くコートされている、安全性強化セパレータ(SRS)を含むことができる。
【0118】
さらに、従来の多孔性不織布、例えば、高融点ガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、等からなる不織布を使用することができるが、それに限定されない。セパレータは、10μm~30μm、具体的には、15μm~25μmの厚さを有することができる。
【0119】
前記二次電池を製造するための方法は、工程(1-2)において得られるセルを電気化学的に活性化してリチウムで負極をプリドープする工程(1-3)を含むことができる。
【0120】
本明細書において、プリドープとは、正極及び負極間の通常の充電及び放電前に、負極においてリチウムを吸蔵及び担持することによるリチウムのドーピングをいう。
【0121】
本発明において望まれる高エネルギー密度を有する二次電池を得るために、負極活物質の不可逆容量をできる限り小さくすることが重要である。それは、あるレベルより減少させることが理論的に不可能であるので、リチウムで負極をプリドープすることにより、高エネルギー密度が増大し得る。プリドープは、不可逆容量について補償し、又はリチウムを含まない活物質が正極において使用されるときでさえ、充電及び放電に必要とされるリチウムは負極に含まれることができる。
【0122】
本発明の実施形態によるプリドープ法として、対電極として採用されるリチウム金属板が二次電池において使用される電解質溶液において電気化学的に活性化される、負極活物質上へリチウムをプリドープする方法を使用することができる。プリドープは、電気化学的に負極及びリチウム金属板を接触させる間、リチウムの吸着及び脱着を起こすことにより、負極の初期不可逆容量に相当する量で、リチウムで負極をプリドープする工程を含むことができる。具体的には、ひとたび負極及び対電極としてのリチウム金属板が採用され、セパレータが負極とリチウム金属板との間に置いてセルを調製したとき、それは液体電解質において電気化学的に活性化され、第1の不可逆容量に相当するリチウムの量で、負極をプリドープする。液体電解質は、非水性電解質、高分子電解質、又はポリマーゲル電解質を含むことができる。
【0123】
さらに、電気化学的活性化は、セルを充電及び放電することにより、実行することができる。特に限定されないが、例えば、電圧が0.1Cの定電流で0.005Vに到達した後、充電は電流が定電圧で0.005Cになるまで行われ、放電は電圧が0.1Cの定電流で1.5Vになるまで行われる。
【0124】
前記のように、セパレータは液体電解質において、負極とリチウム金属板との間に置かれるので、負極及びリチウム金属板が直接接触していない間、負極及びリチウム金属板の電気化学的な接触を通じて、リチウムでプリドープされる;したがって、リチウム金属板を負極に直接取り付け又は蒸着させることにより形成される針状結晶(樹枝状結晶)がセパレータに悪影響を与えるという問題を解決することが可能である。結果として、二次電池の安全性を保障することができる。
【0125】
さらに、本発明の別の実施形態によるプリドープ法は、ドーピングの後、過剰のリチウム(負極において残る不可逆容量の量)がまたデドープすることにより、除かれる方法であることができる。プリドープ工程は、負極及びリチウム金属板がリチウムをドープするために電気化学的に接触している間、リチウムの吸着及び脱着を起こすことにより、負極の初期不可逆容量に相当する量で、リチウムで負極をドープする工程;及び負極の初期不可逆容量の量以外のリチウムの量を放出(デドープ)する工程を含む。
【0126】
具体的には、ひとたび負極及び対電極としてのリチウム金属板が採用され、セパレータが負極とリチウム金属板との間に挟まれ、セルが調製されると、それは液体電解質、例えば、非水性液体電解質、において電気化学的に活性化されて、第1の不可逆容量に相当するリチウムの量で、負極をプリドープする工程;及び負極の初期不可逆容量の量以外のリチウムの量を放出(デドープ)する工程。負極が、不可逆容量に相当するリチウムの量で、プリドープされる場合、特に、デドープにより、プリドープされる場合、100%に近い初期効率を達成することが可能である。結果として、負極/正極(N/P比)の容量比は1.0に近づくことができ、二次電池それ自体の容量を増大させることができる。さらに、リチウムでプリドープする間、大きな発熱反応が伴い得るが、リチウムでのドーピングの間電流はコントロールすることができ、それにより、その速度をコントロールし、安全性の点において大きな利点であり得る。
【0127】
したがって、本発明によれば、負極は電気化学的にドープ、又はプリドープ法によりリチウムでドープ及びデドープされているので、不可逆容量に相当する量で、リチウムで負極をプリドープすることが可能である。結果として、リチウムの吸蔵及び放出に関与する負極の体積膨張を減少させることができる。さらに、電流をコントロールすることによりドーピング速度をコントロールすることができるので、大量の熱の発生を抑制することにより、ドーピングの安全性をまた確保することができる。特に、大量にドープが実行されるとき、温度をコントロールすることができるので、前記方法は大量生産に有利であることができる。
【0128】
リチウム二次電池のための電解質として通常使用されるリチウム塩は、制限なく、本発明において電解質として用いることができる。例えば、リチウム塩のアニオンは、F、Cl、Br、I、NO3-、N(CN)2-、BF4-、ClO 、PF6-、(CFPF4-、(CFPF3-、(CFPF2-、(CFPF、(CF、CFSO3-、CFCFSO3-、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO3-、CFCO2-、CHCO2-、SCN-、及び(CFCFSOからなる群から選択される、いずれか1つであることができる。
【0129】
リチウム二次電池のための液体電解質において通常使用される有機溶媒は、制限なく、本発明の液体電解質において用いることができる。代表例として、炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸メチルプロピル、炭酸ジプロピル、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、炭酸ビニリデン、スルホラン、ガンマ-ブチロラクトン、亜硫酸プロピレン、酢酸メチル、ギ酸メチル、及びテトラヒドロフランからなる群から選択される、いずれか1つ又は2つ以上の混合物を通常使用することができる。液体電解質の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.5~2モル/リットルであることができる。100ppm以下の水分含有量を有することが好ましい。一方、本明細書において使用される用語『非水性液体電解質』は、非水性液体電解質及び有機液体電解質だけでなく、ゲル様及び固体電解質にまで及ぶ概念をいう。
【0130】
本発明の実施形態による、リチウムでプリドープされた負極を含む及びシリコン系負極活物質を含む二次電池において、そのエネルギー密度は顕著に増大させることができ、そのサイクル特性及び速度特性は増大させることができる。特に、二次電池は、初期放電容量及び容量保持率において、更に増大させることができる。
【0131】
二次電池を製造するための方法は、リチウムでプリドープされた負極を使用して二次電池を製造する工程(1-4)を含むことができる。
【0132】
具体的には、工程(1-3)における電気化学的活性の際、セルは、リチウムでプリドープされた負極、正極活物質を含む正極、及びセパレータを使用する二次電池を製造するために分離される。
【0133】
二次電池が製造されるとき、正極において用いられる正極活物質は、それがリチウムを電気化学的に吸蔵及び放出することができる材料である限り、特に限定されない。例えば、それは電気化学的に放出することができるリチウムを含む金属酸化物活物質を含むことができる。具体的には、それは、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、又はその混合物を含むスピネル構造を有する酸化物を含むことができる。
【0134】
さらに、正極活物質は、リチウム複合酸化コバルト、リチウム複合酸化ニッケル、リチウム複合酸化マンガン、及びリチウム複合酸化チタンからなる群から選択される、少なくとも1つを含むことができる。少なくとも1つの異なる金属元素が複合酸化物に添加された活物質を使用することができる。さらに、マンガン、バナジウム、及び鉄からなる群から選択される、少なくとも1つの金属酸化物からなる群から選択される、少なくとも1つ、ジスルフィド系化合物、ポリアセン系化合物、及び活性炭素は、電気化学的に放出可能なリチウムを含まないものとして使用することができる。
【0135】
さらに、セパレータとして通常使用されるセパレータを使用することができ、工程(1-2)において記載されるセパレータを使用することができる。
【0136】
別の実施形態による二次電池を製造するための方法は、(2-1)シリコン系負極活物質を含む負極活物質組成物を負極集電体に適用して、負極を調製する工程;(2-2)反応器中に負極及びリチウム金属板を置き、酸化還元反応を実行してリチウムで負極をプリドープする工程;及び(2-3)連続的にリチウムでプリドープされた負極、セパレータ、金属酸化物活物質を含む正極を積層して、電極を調製する工程を含む。
【0137】
工程(2-1)は、シリコン系負極活物質を含む負極活物質組成物を負極集電体に適用して、負極を調製する工程である。さらに、工程(2-1)は、負極活物質組成物を負極集電体に適用した後、それを巻いて乾燥する工程を更に含むことでき、それは通常使用される方法により実行することができる。
【0138】
本発明の実施形態による二次電池を調製するための方法において、シリコン系負極活物質を調製する方法は、前記のようである。
【0139】
さらに、工程(2-2)は、反応器中に負極及びリチウム金属板を置いて酸化還元反応を実行してリチウムで負極をプリドープする工程である。
【0140】
具体的には、図1を参照して、ひとたび工程(2-1)において調製される負極(10)及びリチウム金属板(30)が反応器に置かれたとき、酸化還元反応を実行することができる。かかる場合において、酸化還元反応は、液体電解質(20)において実行することができる。液体電解質(20)は、非水性電解質、高分子電解質、又はポリマーゲル電解質を含むことができる。酸化還元反応は、例えば、非水性液体電解中において、リチウム金属板とともに、0.0003~0.001Vでの還元反応を介してリチウムで負極をドープすることにより、及びデドーピングのために1.0~2.0Vになるまで酸化反応を実行することにより、実行される。
【0141】
リチウム金属板は、10μm~30μm、具体的には、15μm~25μmの厚さを有することができる。プリドープ速度を考慮するとき、大きい表面積を有するリチウム金属板が好ましい。扱いの簡便さ、生産性、及びリチウム金属板のプリドープ工程の環境を考慮すると、小さい表面積を有するリチウム金属板が好ましくあり得る。リチウム金属板の厚さが前記範囲を満たす場合、それはリチウム残渣の抑制、プリドープ速度、及び生産性の点で好ましくあり得る。さらに、リチウム金属板は、0.3g/cm~0.8g/cmの密度を有することができる。
【0142】
負極は、酸化還元反応により、リチウムでプリドープすることができる。
【0143】
本発明の実施形態によれば、高エネルギー密度を有する二次電池を得るために、負極活物質の不可逆容量は、可能な限り小さくすることが重要である。したがって、シリコン系負極活物質を含む負極は、本発明においてリチウムでプリドープされ、それにより、負極の初期不可逆容量を低下させることが可能であり、負極表面のSEIへの正極の金属イオンの侵入を妨げ、エネルギー密度を増大させる。プリドープは、不可逆容量について補償し、又はリチウムを含まない活物質が正極において使用されるときでさえ、充電及び放電のために必要とされるリチウムは、負極において、含まれることができる。したがって、二次電池の性能を増大させることができる。
【0144】
本発明の実施形態によるプリドープ法として、不可逆容量に相当する量で、対電極としてのリチウム金属板を使用する酸化還元反応が二次電池において使用される液体電解質において実行される、リチウムで負極をドープする方法を使用することができる。
【0145】
前記のように、負極(10)及びリチウム金属板(30)は液体電解質(20)に置かれ、酸化還元反応が実行され、それにより負極にリチウム金属板を直接取り付け又は蒸着させる方法と比較して、二次電池の安全性を確保することができる。リチウム金属板を負極に直接取り付け又は蒸着させる方法において、負極にリチウム金属板を直接取り付けるか又は蒸着させることにより形成される針状結晶(樹枝状結晶)は、セパレータに悪影響を及ぼす可能性があり、それにより安全性を損なう。
【0146】
さらに、本発明の別の実施形態によるプリドープ法は、ドープの後、リチウムのデドープにより過剰のリチウム(負極において不可逆容量の量が残る)が除かれる方法であることができる。プリドープは、ひとたび負極が還元反応を通じてリチウムでプリドープされたとき、初期不可逆容量のそれ以外のリチウムの量は、酸化反応を通じてリチウムを放出(デドープ)することにより除かれる方法を含むことができる。例えば、酸化還元反応は非水性液体電解質において実行することができ、負極は初期不可逆容量に相当する量で、リチウムでドープされ、初期不可逆容量の量以外のリチウムの量は放出(デドープ)することができる。負極が前記プリドープ法により不可逆容量に相当するリチウムの量で、プリドープされた場合、特に、デドープにより、100%近い初期効率を達成することが可能である。結果として、負極/正極(N/P比)の容量比は1.0に近づくことができ、それは二次電池自体の容量を増大させることができる。さらに、発熱反応がリチウムでプリドープする間、伴い得るが、リチウムでのドープの間の電流はコントロールすることができ、それによりその速度をコントロールし、それは安全性の点において大きな利点であり得る。
【0147】
したがって、本発明によれば、負極は、プリドープ法により酸化還元反応を介してリチウムでドープ、又はドープ及びデドープされるので、リチウムの不可逆容量に相当する量で、リチウムで負極をプリドープすることが可能である。結果として、リチウムの吸蔵及び放出に関与する負極の体積膨張を減少させることが可能である。さらに、電流をコントロールすることにより、ドーピング速度を制御することができるので、ドーピングの安全性を大量の熱の発生を抑制することにより、また確保することができる。特に、大量のドープが実行されるとき、温度はコントロールすることができるので、方法は大量生産のために有利であることができる。
【0148】
さらに、工程(2-2)において、プリドープされた後、酸化還元反応を一度以上実行して、負極に過剰量でドープされたリチウムを除くことができる。
【0149】
本発明において電解質として用いることができるリチウム塩及び有機溶媒は、前記のようなものである。
【0150】
本発明の実施形態によるリチウムでプリドープされたシリコン系負極活物質を含む二次電池において、そのエネルギー密度は著しく増大させることができ、そのサイクル特性及び速度特性は更に増大させることができる。
【0151】
工程(2-3)は、リチウムでプリドープされた負極、セパレータ、及び金属酸化物活物質を含む正極を連続的に積層して、電極を調製する工程である。
【0152】
二次電池が製造されるとき、正極及びセパレータ、及び二次電池製造工程は、前記のようである。
【0153】
本発明の二次電池の形状及びサイズは特に限定されないが、それは各用途に応じて、円筒型、スクエア型、パウチ型、フィルム型、又はコイン型を含むことができる。
【0154】
前記実施形態による二次電池はリチウムでプリドープされたシリコン系負極活物質を含む負極を含み、それにより二次電池の安全性を達成することができるだけでなく、エネルギー密度を著しく増大させ、及びサイクル特性及び速度特性を増大させることができる。
【0155】
発明を実施するための実施形態
【0156】
本発明は、次の実施例を参照してより詳細に説明される。しかしながら、これらの実施例は、本発明を説明するために提供され、実施例の範囲はそれにのみ限定されない。
【0157】
実施例1-1
【0158】
カーボンフィルムを含むカーボン層が提供され、次の物理的特性を有するシリコン系負極活物質(DAEJOO製)、伝導性材料としてのSuper-P(TIMCAL)、及びバインダーとしてのポリアクリル酸(PAA、Sigma-Aldrich)を80:10:10の重量比で混合し、負極活物質組成物を調製した。
【0159】
SiO、x=1.0
炭素含有量:5.1重量%
負極活物質の平均粒径(D50):5.3μm
【0160】
負極活物質組成物を18μmの厚さを有する銅ホイルに適用し、乾燥して40μmの厚さ及び1.35g/cmの密度を有する負極を調製した。負極を14mmの直径を有する円形の形状に打ち抜き、12時間、80℃で真空下で乾燥して負極を得た(工程1-1)。
【0161】
一方、セパレータとして多孔性ポリプロピレンシート(25μm)を、グローブボックス中において、負極と20μmの厚さを有するリチウム金属板との置き、セルを調製した(工程1-2)。
【0162】
工程1-2において得られたセルを反応器に置き、1:1の体積比での炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジエチレン(DEC)の混合溶媒中、1MLiPFを含む、リチウム非水性液体電解質を使用し、0.1Cの定電流で電圧が0.005Vに到達した後、定電圧で電流が0.005Cになるまで、充電を実行した。電圧が1.5Vになるまで0.1Cの定電流で放電を実行し、電気化学的活性化を介してリチウムで負極をプリドープした(工程1-3)。
【0163】
セルを分離し、リチウムでプリドープされた負極(工程1-4)を使用して二次電池を調製した。具体的には、グローブボックス中で負極、セパレータ、及び正極をこの順に重ね、同一の非水性液体電解質を使用してリチウム二次電池を製造した。正極に用いられる正極活物質はLiCoOであり、20μmのアルミニウムホイルを集電体として使用し、及びセパレータとして多孔性ポリプロピレンシート(25μm)を使用した。
【0164】
実施例1-2
【0165】
実施例1-1と同じシリコン系負極活物質及び天然グラファイトの炭素系負極材料(平均粒径:11μm)を50:50の重量比で混合したことを除き、負極(40μmの厚さ及び1.5g/cmの密度)及び二次電池は、実施例1-1と同じ方法で調製した。
【0166】
実施例1-3
【0167】
負極及び二次電池は、カーボン層のないシリコン系負極活物質(SiO、x=1.0、負極活物質の粒径(D50):5.6μm)を使用したことを除き、実施例1-1と同じ方法で調製した。
【0168】
実施例2-1
【0169】
<負極の調製>
【0170】
カーボン層が提供された、次の物理的特性を有するシリコン系負極活物質(DAEJOO製)、伝導性材料としてSuper-P(TIMCAL)、及びバインダーとしてポリアクリル酸(PAA、Sigma-Aldrich)を80:10:10の重量比で混合して負極活物質組成物を調製した。
【0171】
SiO、x=1.0
炭素含有量:5.1重量%
負極活物質の平均粒径(D50):5.3μm
【0172】
負極活物質組成物を18μmの厚さを有する銅ホイルに適用し、乾燥し、巻いて、40μmの厚さ及び1.35g/cmの密度を有する負極を調製した。
【0173】
負極は、1:1の体積比での炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジエチレン(DEC)の混合溶媒中、1MLiPFを含むリチウム非水性液体電解質中で、0.0005Vで、20μmのリチウム金属板で還元反応を介してリチウムでプリドープし、1.5Vまでの酸化反応を介してデドープし、電気化学的活性化を介して乾燥してリチウムでプリドープされた負極を得た。
【0174】
<正極の調製>
【0175】
正極活物質としてLiNi0.8Co0.2、伝導性材料としてSuper-P、及びバインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF、Solvay)を使用して、正極活物質組成物(スラリー)を調製した。正極活物質組成物は、15μmのアルミニウムホイル上にコートし、乾燥し、巻いて正極を得た。
【0176】
<二次電池の製造>
【0177】
多孔性ポリプロピレンシートのセパレータ(25μm)をリチウムでプリドープされた負極と正極との間に置き、巻いてゼリーロールを調製した。その後、それを円筒状の缶に置き、封入し、1:1の体積比での炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジエチレン(DEC)の混合溶媒中、1MLiPFを含む、液体電解質をそこに注入して1Ah-クラスの二次電池を調製した。
【0178】
実施例2-2
【0179】
負極及び二次電池は、ポリイミド樹脂をバインダーとして使用したことを除き、実施例2-1と同じ方法で調製した。
【0180】
実施例2-3
【0181】
負極(37μmの厚さ及び1.10g/cmの密度)及び二次電池を、実施例2-2におけるものと同じシリコン系負極活物質及び天然グラファイト(平均粒径:7.5μm)の炭素系負極材料を50:50の重量比で混合したことを除き、実施例2-2の方法と同じ方法で調製した。
【0182】
実施例3-1
【0183】
カーボン層が提供された、次の物理的特性を有するシリコン系負極活物質(DAEJOO製)、伝導性材料としてSuper-P(TIMCAL)、及びバインダーとしてポリアクリル酸(PAA、Sigma-Aldrich)を80:10:10の重量比で混合してシリコン系負極活物質組成物を調製した。
【0184】
SiO、x=1.0
炭素含有量:5重量%
シリコン系負極活物質の平均粒径(D50):7.0μm
【0185】
シリコン系負極活物質組成物を18μmの厚さを有する銅ホイルに適用し、乾燥して41μmの厚さ及1.3g/cmの密度を有する負極を調製した。負極は14mmφの直径に打ち抜き、12時間、80℃で真空下で乾燥して、負極を得た。したがって調製された負極が、4mmφの軸周りに巻かれた又は巻かれなかったとき、負極活物質は集電体から剥離しなかったしたがって、それは電気化学的評価のための十分な強度を有することが確認された。
【0186】
その後、グローブボックス中でセパレータとして多孔性ポリプロピレンシート(30μm)を負極と20μmの厚さを有するリチウム金属板との間に置き、セルを調製した。セルを反応器に置き、リチウム金属板の電位に対して1mVになるまで定電流で1.5mAの電流及び1mVに到達した後、リチウムの電位に対して1mVの定電圧を、所定の時間、1:1の体積比での炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジエチレン(DEC)の混合溶媒中、1MLiPFを含む、リチウム非水性液体電解質において、所定の時間、適用した。その後、リチウム金属板の電位に対して2.0Vになるまで、定電流で0.6mAの定電流でデドープ(リチウムの放出)を実行することにより、負極をリチウムでプリドープし、負極の初期効率を増加させた。したがって測定した初期効率は、76.1%であった。
【0187】
セルを分離し、リチウムでプリドープされた負極を使用して、二次電池を調製した。
【0188】
具体的には、正極活物質としてLiCoO、伝導性材料としてSuper-P(TIMCAL)、及びバインダーとしてポリアクリル酸(PAA、Sigma-Aldrich)を80:10:10の重量比で混合して、正極活物質組成物を調製した。正極活物質組成物をアルミニウム集電体に適用し、16mmφに打ち抜き、正極を調製した。15μmの厚さを有するリチウム金属板が取りつけられたセパレータを、正極に面するよう、リチウム金属板が配置された、正極上に積層した。使用したセパレータは、多孔性ポリプロピレンシート(25μm)であった。リチウムでプリドープされた負極をセパレータ上に重ね、セルを調製し、非水性液体電解質を使用して二次電池を製造した。二次電池を製造したとき、負極の初期効率を増加させる方法において使用した非水性液体電解質と同じ非水性液体電解質を使用した。
【0189】
実施例3-2
【0190】
カーボン層が提供された、次の物理的特性を有する、シリコン系負極活物質(DAEJOO製)及びバインダーとしてポリイミド樹脂(Ube Industries、 Ltd.製、U-varnishA、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)溶液、18.1重量%の固形分含有量)を使用した。シリコン系負極活物質及びバインダーを90:10(固形分含有量に基づき)の重量比で混合し、その粘度をNMPで調節して、負極活物質を調製し、実施例3-1と同じ方法で使用して、37μmの厚さ及び1.03g/cmの密度を有する負極を調製した。リチウムでプリドープされたシリコン系負極及び二次電池は、負極を16mmφに打ち抜き、10時間、200℃で真空下で乾燥したこと、及び3:7の体積比での炭酸エチレン(EC)及び炭酸メチルエチレンの混合溶媒中、1M LiPFを含むリチウム非水性液体電解質を電解質として使用したこと以外は、実施例3-1と同じ方法で調製した。
【0191】
SiO、x=1.0
炭素含有量:5.1重量%
シリコン系負極活物質の平均粒径(D50):5.3μm
【0192】
実施例3-3
【0193】
負極(37μmの厚さ及び1.00g/cmの密度)は、次の物理的特性(Shin-EtsuChemical、KSC801製)を有するシリコン系負極活物質及びバインダーを85:15(固形物含有量に基づく)の重量比でを使用したことを除き、実施例3-1におけるものと同じ方法で調製した。
【0194】
SiO、x=1.0
SiOにおける炭素複合材料の量:SiOに対して5重量%
SiO炭素複合材料の粒子径(D50):7.0μm
【0195】
負極は17mmφの直径に打ち抜き、10時間、80℃で真空下で乾燥した。負極、セパレータ、及び20μmのリチウム金属板を含むセルを調製した。電解質として、3:7の体積比での炭酸エチレン及び炭酸メチルエチルの混合溶媒中、1MLiPFを含むリチウム非水性液体電解質を注入し、それを60時間そこにそのままにして、リチウムで負極をプリドープした。
【0196】
一方、正極活物質としてLiNi0.8Co0.2、伝導性材料としてアセチレンブラック、及びバインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF、Solvay)を92:4:4の重量比でNMP(N-メチルピロリドン)溶媒中で混合し、正極活物質組成物(スラリー)を調製した。正極活物質組成物は、20μmのアルミニウムホイル上にコートし、乾燥し、巻いて正極を得た。正極の初期充電及び放電特性は、4.3V~2.7Vで175mAh/gの容量を有していた。
【0197】
二次電池は、前記方法と同様に調製した40μmの厚さを有するシリコン系負極(真空下10時間、200℃で乾燥)を使用して、実施例3-1と同じ方法で得た。
【0198】
<シリコン系負極を使用した二次電池の性能の評価>
【0199】
実施例3-3のリチウムでプリドープされた負極において、リチウムでプリドープされた負極の厚さは、60μmであった。したがって、リチウム金属板(20μm)に対応する厚さが増加したという事実は、リチウム金属板の損失によりギャップが発生しないことを示す。
【0200】
実施例3-3の二次電池を3mAの電流で4.3Vまで充電し、4.3Vの定電圧を適用して8時間電池を充電した。次に、それを3mAの定電流で2.0V(リチウム電位に対して約0.7Vに相当する負極電圧)まで放電した。二次電池は18.0mAhの充電容量、14.9mAhの放電容量、及び3.60Vの平均放電電圧を有していた.さらに、3.0Vまでの放電容量は、14.0mAhであった。
【0201】
比較例1-1
【0202】
負極及び二次電池は、負極はリチウムでプリドープしなかったことを除き、実施例1-1と同じ方法で調製した。
【0203】
比較例1-2
【0204】
負極及び二次電池は、負極はリチウムでプリドープしなかったことを除き、実施例1-2と同じ方法で調製した。
【0205】
比較例1-3
【0206】
負極及び二次電池は、カーボン層のないシリコン系負極活物質(SiO、x=1.0、負極活物質の粒径(D50):5.8μm)を使用したことを除き、比較例1-1と同じ方法で調製した。
【0207】
比較例2-1
【0208】
負極及び二次電池は、負極をリチウムでプリドープしなかったことを除き、実施例2-1と同じ方法で調製した。
【0209】
比較例2-2
【0210】
負極及び二次電池は、負極をリチウムでプリドープしなかったことを除き、実施例2-2と同じ方法で調製した。
【0211】
比較例2-3
【0212】
負極及び二次電池は、負極をリチウムでプリドープしなかったことを除き、実施例2-3と同じ方法で調製した。
【0213】
比較例3-1
【0214】
負極及び二次電池は、負極はリチウムでプリドープしなかったこと、及び正極及びリチウム金属板が接触していなかったことを除き、実施例3-1と同じ方法で調製した。
【0215】
比較例3-2
【0216】
負極及び二次電池は、40μmの厚さを有するシリコン系負極をリチウムでプリドープしなかった及び正極及びリチウム金属板が接触していなかったことを除き、実施例3-3と同じ方法で調製した。
【0217】
前記負極を使用して製造された二次電池を4.3Vまで1mAの電流で充電し、4.3Vの定電圧を適用して20時間電池を充電した。次に、それを3.0V(リチウム電位に対して約0.7Vに相当する負極電圧)まで2mAの定電流で放電した。二次電池は、18.2mAhの充電容量、10.6mAhの放電容量、及び3.57Vの平均放電電圧を有していた。
【0218】
比較例3-3
【0219】
負極及び二次電池は、実施例3-1と同じシリコン系負極活物質及び天然グラファイト(平均粒径:11μm)の炭素系負極材料を50:50の重量比で混合したこと、負極をリチウムでドープしなかったこと、及び30μmの厚さを有するシリコン系負極を使用したことを除き、実施例3-1と同じ方法で調製した。二次電池は、17.8mAhの充電容量、11.0mAhの放電容量、及び3.59Vの平均放電電圧を有していた。
【0220】
二次電池の容量特性及び初期効率の評価
【0221】
実施例及び比較例において得られたリチウム二次電池を、各々12時間老化させた。その後、充電及び放電試験装置(WonATech)を使用して、それらを、0.1Cの定電流で4.2Vに達するまで各々充電し、電圧が2.5Vに到達するまで、0.1Cの定電流で放電した。この充電/放電試験を50回繰り返し、容量保持率を得た。
【0222】
サイクルの後、初期放電容量及び容量保持率を次のように計算した。結果を表1に示す。
【0223】
初期放電容量:1サイクルでの放電容量
【0224】
容量保持率:(50番目のサイクルでの放電容量)/(1番目のサイクルでの放電容量)×100
【0225】
【表1】
【0226】
表1からわかるように、リチウムで負極がプリドープされた実施例1-1~1-3の二次電池は、8.8mAh~12.9mAhの初期放電容量を有しており、一方、リチウムで負極がプリドープされなかった比較例1-1~1-3の二次電池は8.6mAh以下の初期放電容量を有しており、実施例1-1~1-3の二次電池と比較して、それは著しく減少した。
【0227】
さらに、実施例1-1~1-3の二次電池は97%以上の容量保持率を有し、実施例1-1及び1-2の二次電池は99%の容量保持率を有し、一方、比較例1-3の二次電池は95%の値を有し、それは、実施例1-1~1-3、特に、実施例1-1及び1-2の二次電池の容量保持率と比較して、著しく減少した。
【0228】
【表2】
【0229】
表2からわかるように、リチウムで負極がプリドープされた実施例2-1~2-3の二次電池は、リチウムで負極がプリドープされなかった比較例2-1~2-3の二次電池と比較して、二次電池の特性において優れていた。
【0230】
特に、実施例2-1~2-3の二次電池は86%以上の効率を有しており、一方、比較例2-1~2-3のものは69%未満の効率を有していた。実施例2-1の二次電池は86.4%の効率を有しており、68.7%の効率を有する比較例2-1の二次電池と比較して、20%以上増加した。さらに、実施例2-1及び2-2の二次電池は、約1.0mAh以上の容量を有しており、一方、比較例2-1~2-3のものは0.8mAh未満の容量を有していた。
【0231】
一方、実施例及び比較例の二次電池を、一晩室温で置いた。その後、それらは、充電及び放電試験装置(NaganoCo.、Ltd.製)を使用して、試験電池の電圧が4.2Vに達するまで、0.5mA/cmの定電流で各々充電した。放電を0.5mA/cmの定電流で実行し、セル電圧が2.5Vに達したとき、放電を終えた。放電容量をそれから測定した。この充電及び放電試験を50回繰り返し、容量保持率を測定した。
【0232】
サイクルの後の放電容量及び容量保持率を上に計算した。結果を表3に示す。
【0233】
【表3】
【0234】
表3からわかるように、リチウムで負極がプリドープされた実施例2-1~2-3の二次電池は、11mAh~13.2mAhの初期放電容量を有しており、一方、リチウムで負極がプリドープされなかった比較例2-1~2-3の二次電池は、8.5mAh以下の初期放電容量を有しており、それは、実施例2-1~2-2の二次電池と比較して、20%~50%減少した。
【0235】
一方、実施例3-1~3-3及び比較例3-1~3-3において得られたリチウム二次電池を、前記と方法で、初期効率及び容量保持率について測定した。結果を図2及び表4に示す。
【0236】
【表4】
【0237】
表4からわかるように、リチウムで負極がプリドープされた実施例3-1~3-3の二次電池は、50サイクルの後、88%~89%の初期効率及び98%~99%の容量保持率を有していた。
【0238】
対称的に、リチウムで負極がプリドープされなかった及びリチウム金属板が正極と接触していなかった、比較例3-1~3-3の二次電池は、58%~62%の初期効率を有し、実施例の二次電池と比較して約20%以上減少した。さらに、比較例3-1~3-3の二次電池は、実施例の二次電池と比較して、容量保持率においてもまた減少した。
【0239】
一方、図2は、サイクルの数に対しての実施例3-2及び比較例3-1の二次電池の容量特性を示す。図2からわかるように、実施例3-2の二次電池は、比較例3-1の二次電池と比較して、充電及び放電試験を50回繰り返した後でさえも、約20%以上増大した。
【符号の説明】
【0240】
10:負極
20:液体電解質
30:リチウム金属板
【産業上の利用可能性】
【0241】
前記実施形態による二次電池は、安全性を達成することができるだけでなく、エネルギー密度を著しく増大させ、及びサイクル特性及び速度特性を増大させることができる。特に、前記二次電池は、初期放電容量及び容量保持率において、更に増大させることができる;したがって、それは、二次電池の分野において有利に使用することができる。
図1
図2