(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】医療機器のためのリアルタイム蛍光検出システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/06 20060101AFI20240925BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61B5/06
G01N21/64 F
(21)【出願番号】P 2022535636
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 US2020063181
(87)【国際公開番号】W WO2021133533
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-09-01
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521217884
【氏名又は名称】エイシーズ メディカル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】シップル、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ノーリン、ブライアン エル.
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-501586(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0045798(US,A1)
【文献】国際公開第2013/046993(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0033610(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06
A61B 5/145-5/1495
A61B 5/00
A61B 10/00
G01N 21/64
A61M 25/00-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的バイオマーカをリアルタイムで感知するためのプローブであって、
先端及び開口部を備える針と、
前記針の前記開口部内に収容された発光プローブであって、
前記針の前記開口部内に配置され且つ前記針の前記開口部を覆う、バイオマーカ発光材料
を含み、
前記バイオマーカ発光材料は、前記針の先端に隣接する又は前記針の先端の内部にあ
るコーティングであって、
前記バイオマーカ発光材料は
、前記針が生体系内に挿入されたときに生体組織と接触す
るように配置される、発光プローブと、
前記針
内にあって前記
バイオマーカ発光材料であるコーティングに隣接す
るイオン消費コーティングと、
を
含み、
前記バイオマーカ発光材料は鉄イオンへの親和性があり、
前記イオン消費コーティングは鉄イオンへの親和性があり、
前記イオン消費コーティングの親和性は前記バイオマーカ発光材料の親和性より大きい
標的バイオマーカをリアルタイムで感知するためのプローブ。
【請求項2】
前記バイオマーカ発光材料は蛍光分子を含む、請求項1に記載の標的バイオマーカをリアルタイムで感知するためのプローブ。
【請求項3】
前記蛍光分子はフルオレセインを含む、請求項2に記載の標的バイオマーカをリアルタイムで感知するためのプローブ。
【請求項4】
前
記イオン消費コーティングは、鉄、及び血液の存在を検出する、請求項1に記載の標的バイオマーカをリアルタイムで感知するためのプローブ。
【請求項5】
前記プローブは、血液の有無をリアルタイムで示すことができる、請求項4に記載の標的バイオマーカをリアルタイムで感知するためのプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2019年12月27日に出願された「REAL TIME FLUORESCENT DETECTION SYSTEMS FOR MEDICAL DEVICES」と題する現在継続中の米国特許仮出願整理番号62/954,404の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、生物学的物質をリアルタイムで検出し、身体組織を区別するためのシステム及び方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特に脊椎手術での手術結果と費用構造を改善する努力は、最小侵襲手技の使用の増加につながった。これらの手技は、蛍光透視法、CT、神経刺激器、及びより最近ではドップラー超音波などの画像誘導モダリティをよく使用する。多くの場合、手術よりもリスクは低くなるが、最小侵襲脊椎手技、疼痛管理手技、神経ブロック、超音波ガイド下介入、生検、及び経皮的留置又は切開術中留置は、臓器、軟組織、血管構造、及び壊滅的には脊髄などの神経組織を含むがこれらに限定されない様々な構造体の穿通に起因する感染、卒中、麻痺、及び死などの効果のない結果及び医原性損傷のリスクを伴い続けている。外科用器具は、脊柱管内の所望のスペースに到達するのに身体組織のいくつかの層及び体液を通過しなければならないため、施術者の経験に関係なく損傷が発生する可能性がある。
【0004】
説明のために、多くの薬剤が投与される、脊髄領域の髄腔内(又はくも膜下)スペースは、神経根と脳脊髄液(CSF)を収容しており、中枢神経系を包む3つの膜のうちの2つの間にある。中枢神経系の最も外側の膜は硬膜であり、2番目はくも膜であり、3番目の最も内側の膜は軟膜である。髄腔内スペースは、くも膜と軟膜との間にある。この領域に到達するには、外科用器具は、最初に皮膚層、脂肪層、棘間靭帯、黄色靱帯、硬膜外スペース、硬膜、硬膜下スペース、及び髄腔内スペースを通過する必要がある場合がある。さらに、薬剤を投与するために針を使用する場合、針の開口部全体が、くも膜下スペース内になければならない。髄腔内スペースへの外科用器具の挿入には複雑さが伴うため、脊髄及び神経組織の穿通は、最小侵襲脊椎手技及び脊椎手術の公知の複雑化した問題である。さらに、一部の手技では、より大きな外科用器具を使用する必要がある。例えば、小さなワイヤリードが脊髄硬膜外スペース内に挿入されることがある最小侵襲脊椎手技の一種である脊髄刺激では、刺激器のリードを通すために14ゲージの針を硬膜外スペース内に導入する必要がある場合がある。このゲージの針は、制御するのが技術的により難しく、病的状態のリスクが高くなる可能性がある。合併症としては、硬膜裂傷、髄液漏出、硬膜外静脈破裂とそれに続く血腫、及び脊髄又は神経の直接の穿通とその結果としての麻痺が挙げられる。脊椎介入及びラジオ波焼灼術などのこれらの及び他の高リスクの状況は、施術者が重要な解剖学的構造内の針又は外科用装置の先端の位置を検出できないときに発生する可能性がある。
【0005】
現在、そのような構造の検出はオペレータに依存しており、オペレータは、触覚、造影剤、解剖学的ランドマークの触診、及び画像誘導モダリティ下での視覚化を使用する。患者の安全性は、触覚及び画像の解釈の際の施術者の訓練及び経験に依存する可能性がある。さらなる訓練及び経験が施術者の役に立つ場合があるにもかかわらず、自然に又は瘢痕組織の形態で繰返しの手技から生じる可能性がある解剖学的変化により、施術者の経験及びスキルとは無関係に医原性損傷が発生する可能性がある。ラジオ波焼灼術などの一部の手技でのフェローシップ訓練は、能力を保証するのに十分なだけ厳しくはない場合があり、訓練しても手技からの結果はかなり異なることがある。硬膜外注射及び脊椎手術の場合、黄色靱帯の厚さ、硬膜外スペースの幅、硬膜拡張症、硬膜外脂肪腫症、硬膜中隔、及び瘢痕組織の変化はすべて、経験豊富なオペレータであっても従来の確認方法に課題を課す可能性がある。さらに、多くの場合1年以上後に、神経が再生するときに行われるラジオ波手技の繰り返しは、再生後の神経の分布がさらなる解剖学的変化をもたらすため、多くの場合、効果が低くなり、より困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な説明からより容易に理解されるであろう。一態様において、生体系の標的バイオマーカを含むバイオマーカ検出システムが開示される。開示されるバイオマーカ検出システムは、リアルタイム蛍光プローブを含む。標的バイオマーカをリアルタイムで感知するための開示されるプローブは、開口部を有する針と、針内に収容された蛍光プローブを含む。蛍光プローブは、針の開口部内に配置され且つ針の開口部を覆う、蛍光コーティングを含み、蛍光コーティングは生体組織と接触する。いくつかの実施形態において、生体組織は血液を含む。開示される蛍光プローブはまた、針内で蛍光コーティングに隣接するイオン消費コーティングと、イオン消費コーティングに接触している光ファイバ導波路を含む。
【0007】
本開示において、
「光受信器」という用語は、生物発光デバイスから光検出器への光路に沿って戻る光を検出するように構造化及び構成された光検出デバイスを指す。
【0008】
「光検出器」という用語は、その光路内の光を感知し、その量を測定することができるデバイスを指す。
【0009】
「光カプラ」という用語は、流体チャネルと少なくとも1つの光ファイバとの間で光を結合するように構造化及び構成されたデバイスを指す。
【0010】
「光学フィルタ」という用語は、光を受けて、波長、極性、強度、又は他の選択的特性などの特定の特性をもつ光のみを通過させるデバイスを指す。
【0011】
これらの考慮事項を考慮して、患者の解剖学的構造への外科用器具の正確な配置を支援するべくリアルタイムのフィードバックを提供するシステム及び方法を提供することが望ましいであろう。
【0012】
以下の説明は図面を参照して読まれるべきである。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、例を示しており、本開示の範囲を限定することを意図していない。本開示は、添付図に関連した様々な例に関する以下の説明に照らすと、より十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示に係るバイオマーカ検出システムの一部の具体例の概略的な準断面図である。
【
図2】本開示に係るバイオマーカ検出システムの一部の別の具体例の概略的な準断面図である。
【
図3A】本開示に係るバイオマーカ検出システムの一部の構成要素のさらに別の具体例の概略的な断面図である。
【
図3B】
図3Aのシステムの構成要素のうちのいくつかの詳細を示す拡大図を提供する概略的な断面図である。
【
図4】本開示に係るバイオマーカ検出システムの一部の構成要素のまた別の具体例の概略的な断面図である。
【
図5A】本開示に係るバイオマーカ検出システムの一部のさらにまた別の具体例の概略的な断面図である。
【
図5B】
図5Aのシステムの構成要素のうちのいくつかの詳細を示す拡大図を提供する概略的な断面図である。
【
図6A】本開示に係るバイオマーカ検出システムの一部のまたさらに別の具体例の概略的な断面図である。
【
図6B】
図6Aのシステムの構成要素のうちのいくつかの詳細を示す拡大図を提供する概略的な断面図である。
【
図7A】本開示に係るバイオマーカ検出針の一実施形態の概略的な断面図である。
【
図8A】その長さに沿って光ファイバ及び管腔を備える本開示に係る針のボアの概略的な端面図である。
【
図8B】その長さに沿って光ファイバ及び管腔を備える本開示に係る針のボアの概略的な端面図である。
【
図8C】その長さに沿って光ファイバ及び管腔を備える本開示に係る針のボアの概略的な端面図である。
【
図8D】その長さに沿って光ファイバ及び管腔を備える本開示に係る針のボアの概略的な端面図である。
【
図9】提供される開示で有用な空気と液体とを区別するための光ファイバセンサの一実施形態の概略的な断面図である。
【
図10】開示される光ファイバ空気センサを組み込むことができる針システムの具体例のボアの概略的な端面図である。
【
図11】音響的空気センサを組み込むことができる針システムの一実施形態の概略的な断面図である。
【
図12A】電気的空気センサを組み込むことができる針システムの一実施形態の具体例の概略的な平面図である。
【
図13A】電気的空気センサを組み込むことができる針システムの別の実施形態の具体例の概略的な横断面図である。
【
図14】分子の電子状態間の可能な遷移を示す概略的なヤブロンスキー図である。
【
図16】リアルタイム蛍光プローブの一実施形態の平面横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
開示されるバイオマーカ検出システム及びリアルタイム蛍光プローブは、本技術分野での欠点のいくつかを改善することができる。その使用により、特に脊椎及び他の最小侵襲外科的手技での手術結果及び費用構造を改善することができる。開示されるバイオマーカ検出デバイスは、触覚、造影剤、解剖学的ランドマークの触診、及び画像誘導モダリティ下での視覚化に依拠するのではなく標的バイオマーカ材料を見つけることでオペレータ依存から脱却することができ、これにより、バイオマーカの識別を必要とする手技の安全性及び有効性が向上する。
【0015】
本開示は、血液を含む体液及び組織などの生物学的物質を検出するため、並びに、液体及び空気などの身体媒体を区別するために用いられるシステム及び方法に関する。システム及び方法の様々な実施形態が、図面を参照して詳細に説明されることになり、同様の参照番号は、いくつかの図面を通して同様の部品及びアセンブリを表す場合がある。様々な実施形態への言及は、本明細書で開示されるシステム及び方法の範囲を限定するものではない。さらに、本明細書に記載されるどの例も、限定することを意図しておらず、システム及び方法の多くの可能な実施形態のうちのいくつかを単に示しているにすぎない。状況によっては示唆又は便宜がもたらされるため様々な省略及び均等物の置換えが考えられるが、これらは本開示の精神又は範囲から逸脱することなくいくつかの用途又は実施形態をカバーすることを意図していることを理解されたい。また、本明細書で用いられる専門語及び用語は、説明するためのものであって、限定するものとしてみなされるべきではないことを理解されたい。
【0016】
本開示は、バイオマーカと1つ以上の検出材料との相互作用、及び前記相互作用の光学的検出を介して、1つ以上のバイオマーカを検出するように構造化、構成、及び/又は検出することができるシステム及び方法を提供する。いくつかの例では、バイオマーカと検出材料との相互作用により、感知できる光の発光放出が生じ、前記発光の感知は、相互作用、したがって、バイオマーカの存在の証拠を提供する。これらの例の一部では、光の放出は、バイオマーカと検出材料との相互作用によって生じる固有の化学発光であり得る。これらの例のうちの他の一部では、バイオマーカの存在下で外部光源により検出材料に照射することにより、感知できる蛍光又は燐光の放出が生じ得る。本開示は、化学発光、蛍光、及び/又は燐光の感知によりバイオマーカの検出を提供することができるシステム及び方法を提供する。
【0017】
本開示で図示及び説明されるバイオマーカ検出システムの複数の例は、針及び流体送達システムを含む又はそれらと併せて用いることができるが、開示されるバイオマーカ検出システム及び方法の用途は流体送達用途に限定されない。本開示において、開示される流体送達システムを通じて薬剤流体を送達することができる。本開示の検出技術を組み込んだ流体送達システムを使用して、ワイヤ/リード、ナノ粒子、並びに、再生医療薬及び化学療法薬を含む任意の適切な薬理学的薬又は他の治療薬を送達することができる。
【0018】
図1は、本開示のバイオマーカ検出システム100の具体例を概略的に示している。システム100は、シリンジ104又は他の適切な流体分配システムから流体チャネル108(前記流体チャネルは管腔103を含む)を介して針の先端106に流体を送達することができる管腔103を有する針102を含み得る。コーティングプロセスなどにより、針102の先端106に、又は先端106の内部に及び隣接して、バイオマーカ発光材料110を配置することができる。
【0019】
システム100は、流体チャネル108と光ファイバ114との間で光を結合するように構造化及び構成することができる光カプラ112を含み得る。本開示の光カプラ112及び他の任意の光カプラは、例えば、検出器に到達する光のスペクトルをフィルタリングすることによって信号対ノイズ比を改善することができる波長分割マルチプレクサとして機能するように構造化及び構成することができる。光ファイバ114は、そのコア材料を、流体チャネル108内の流体の屈折率に実質的に近い又は本質的に等しい屈折率を有するように選択することができ、その結果、光学的不一致から生じる可能性がある反射損失及び他の光学的問題を最小にしながら、流体チャネル108と光ファイバ114との間で光を容易に結合することができるようになる。代替的に又は加えて、例えば、グルコース、アルコール、糖類の塩、及び/又は任意の他の生物適合性流体などの流体の様々な成分の濃度を選択することによって、チャネル108内の流体の屈折率を光ファイバ114のコアの屈折率と実質的に又は本質的に正確に一致するように調整することができる。流体チャネル108は、流体が存在する状態で光導波路として作用できるように構造化及び構成することができる。
【0020】
光源から光ファイバ及び流体チャネル108によって提供される光導波路を介して針102の先端106に、より詳細には前記先端にあるバイオマーカ発光材料110に光を送達できるように、ダイオードレーザ又は他の適切な光源などの光源116を光ファイバ114に光学的に結合することができる。バイオマーカ発光材料110から放出、或いは散乱された光は、流体チャネル108及び光ファイバ114により提供される光路によって光受信器118に戻すことができ、光受信器118は、針102の先端106から光路に沿って戻る光を検出するように構造化及び構成された光検出器又は任意の他の適切な光検出デバイスとすることができる。光カプラ112は、光源116の1つ以上の放出周波数及びバイオマーカ発光材料110の発光周波数を含む任意の関連する光周波数について、流体チャネル108と光ファイバ114との間で効果的に光を結合することができるように構造化、構成、及び調整することができる。
【0021】
様々なメカニズムにより、望ましくないことに、光源116からの光が組織及び他の後方散乱経路からの後方反射などで光受信器118に到達し、バイオマーカ発光材料110からの発光信号を測定する際に光受信器118によって読み取られるノイズに加わることがある。この測定ノイズ源は様々な方法で対処することができる。前述のように、光カプラ112は、波長分割マルチプレクサとして機能するように構造化及び構成することができ、光受信器118に入射する光の周波数をバイオマーカ発光材料110から放出される周波数に選択的にフィルタリングすることができる。代替的に又は加えて、光受信器118は、光源116からの照射光及び周囲室内照明などの環境中に存在し得る他の光などのバイオマーカ発光材料110の発光周波数以外の周波数が光受信器に到達するのを選択的に防ぐためのフィルタを含み得る。光受信器118の敏感な周波数での放射を減弱させるために室内照明をフィルタリングするなどの、信号対雑音を改善するための他の手段を講じることができる。このような波長及び周波数のフィルタリング/敏感さの考慮事項は、本開示の任意の関連するシステムに適用することができる。
【0022】
バイオマーカ発光材料110から放出された光を光受信器118で検出する際の信号対雑音を改善するために採用することができる別の技術は、時分割多重化である。光源116によるバイオマーカ発光材料110の照射を、材料からの発光放出の検出から一時的に分離することによって、このノイズ源を回避することができる。具体例では、光源116は、完全にオン、完全にオフの、方形波で駆動することができる。十分に迅速に(すなわち、バイオマーカ発光材料110からの発光放出の減衰時定数に比べて速く)オフに切り替えることができる光源116により、光源116から生じる後方反射/散乱光が光受信器118で記録されないように、光受信器118からのデータ収集を光源116がオフのときにのみ実行されるようにゲート制御することができる。潜在的に、光受信器118に意図せず到達する可能性がある(例えば手術室で使用される可能性がある)他の光源も、それらの検出を防ぐために光源116と同じ波形で駆動することができる。十分に高い周波数では、そのようなパルシングはヒトの目には知覚できないであろう。これらの時分割多重化法は、本開示の任意の互換性のあるシステム及び方法で有利に採用することができる。
【0023】
システム100の例示的な使用方法では、バイオマーカ発光材料110の照射を提供するべく光源116が作動された状態で、臨床医が針102を患者内に前進させる。光学的に適切な屈折率をもつ流体が流体チャネル108(管腔103を含む)内に存在することがある。針102を、針の先端106が標的生体材料(例えば、血液、しかし他の標的生体材料が可能である)に直面するまで前進させ、そこでの標的生体材料(例えば、血液)とバイオマーカ発光材料110との相互作用により、光源116からの照射光と組み合わせて、バイオマーカ発光材料からの光の放出がもたらされ、光受信器118で検出される。光受信器118に作動的に結合される通知システム(図示せず)は、標的バイオマーカが検出されていることを臨床医に通知することができる。次いで、臨床医は、標的生体材料の検出と、患者の解剖学的構造の知識に従って針102の先端106を配置する(例えば、針をさらに前進させる、前進を止める、又は後退させること)。針102の先端106が適切に配置された状態で、流体送達システムからの流体チャネル108を通じた治療流体の送達を実行することができる。
【0024】
図2は、本開示の別のバイオマーカ検出システム200の別の具体例を概略的に示している。システム200は、シリンジ204又は他の適切な流体分配システムから流体チャネル208を介して針の先端206に流体を送達することができる針202を含み得る。針202とシリンジ204は、1つ以上の流体コネクタ209により流体的に結合することができ、流体コネクタ209は、(限定はされないが)LUERロックフィッティングなどの任意の適切なコネクタとすることができる。流体チャネル208は、針202の管腔210を含み得る。
図2に例示されているシステム200の構成では、針202の管腔210は、光ファイバ212によって少なくとも部分的に占有され得る。光ファイバ212は、コーティングプロセスなどによりその遠位先端部に取り付けられたバイオマーカ発光材料214を含み得る。
図2に例示されているように、その遠位先端部にバイオマーカ発光材料214が取り付けられた光ファイバ212は、バイオマーカ発光材料が針202の先端206に又はその近くに存在するように針202の管腔210内に配置することができる。このような構成のいくつかの実施形態において、光ファイバ212は、針202の管腔210での流体の通過を実質的に遮断することができる。いくつかの他の実施形態において、管腔210内に存在する光ファイバは、少なくとも部分的な流体の通過を可能にし得る。システム200において、光ファイバ212は、ファイバの遠位先端部がシリンジ204から管腔210を経由した針202の先端206への流体の流れを実質的に妨げない位置216などの位置に又はその近くに存在することができるように、管腔210内に選択的に後退させることができる。
【0025】
システム200は、光源から光ファイバの遠位先端部に、より詳細には前記先端にあるバイオマーカ発光材料214に光を送達できるように光ファイバ212に光学的に結合することができる、ダイオードレーザ又は他の適切な光源などの光源218を含み得る。バイオマーカ発光材料214から放出、或いは散乱された光は、光ファイバ212によって光受信器220に戻すことができ、光受信器220は、ファイバの遠位先端部から光ファイバ212によって戻された光を検出するように構造化及び構成された光検出器又は任意の他の適切な光検出デバイスとすることができる。
【0026】
システム200は、光源218からの光を光ファイバ212の遠位先端部にあるバイオマーカ発光材料214へ通過させる及びバイオマーカ発光材料214から放出された光を光受信器220に伝達するように構造化及び構成することができる光カプラ222を含み得る。光カプラ222は、例えば、波長分割マルチプレクサとして、選択的に、バイオマーカ発光材料214から放出された光の光受信器220への伝達を最大にし、そのような放出された光の光源218に戻る方への伝達を最小にするように調整することができる。光検出器又は任意の他の適切な光検出デバイスとすることができる第2の光受信器224を、光ファイバスプリッタ222を介してシステム200の光学系に結合することができる。第2の光受信器224は、光源218からの放出の駆動信号レベルを感知するために用いることができ、これは、光受信器220で信号を解釈するときの光源218の強度の変動(例えば、温度変動に起因するドリフト)を補償する目的で差分信号を生成するために用いることができる。この構成はまた、場合によっては、バイオマーカ発光材料214から光受信器220で受信される信号の位相に敏感な検出を実施するために用いられ得る。
【0027】
システム200は、システム100について説明したのと同様に多くの態様で用いることができる。動作において、ファイバの遠位先端部にあるバイオマーカ発光材料214が針202の先端206に又はその近くに存在するように光ファイバ212が管腔210内に配置された状態で、システム200の針202を患者内に前進させることができる。バイオマーカ発光材料214が標的生体材料(例えば、血液)と接触すると、そのような接触から生じる光がファイバを経由して光受信器220に伝達され、検出がシステムのユーザに示される。針が適正に(例えば、血流内に)配置されると、光ファイバ212を(例えば、216に)後退させ、シリンジ204から針202の先端206に流体の流れを送達するべく管腔210を開くことができる。
【0028】
図3Aは、本開示の別のバイオマーカ検出システム300の構成要素の別の具体例を概略的に示しており、
図3Bは、
図3Aに示された構成要素のうちのいくつかの詳細を例示する拡大図を提供する。システム300は、バイオマーカの検出及び治療送達のためのシステム100について説明したのと同様に多くの態様で用いることができる。
図3A、
図3Bのシステムは、流体送達システム(全体は図示せず)から流体ライン306の流体チャネル304を介して流体を送達することができる針302を含み得る。
図3A、
図3Bのシステム300は、針302を流体送達システム及び光学系(全体は図示せず)と結合することができるカプラ308を含み得る。カプラ308を含む
図3A、
図3Bのシステム300は、(限定はされないが)LUERロックフィッティングなどの任意の適切な流体コネクタ(必ずしも図示されていない)を使用することができる。光学系は、光ファイバ310と、光学マウント314によって光学的に位置合わせされた状態に保持される1つ又は複数のレンズを含む結合光学系312とを含み得る。光学マウント314は、支持ウェブ318によってカプラハウジング316に対して特定の位置関係に保持することができる。光学マウント314、カプラハウジング316、及び支持ウェブ318の及びそれらの間の図示された物理的配置は単なる例であり、限定するものとみなされるべきではない。
【0029】
結合光学系312は、光ファイバ310に対して適切に配置及び位置合わせされたとき、光ファイバから放出される照射光を針302の管腔320内に結合又は集束させることができる。針302の管腔320を取り囲む内壁322は、電気化学的プロセス又は他の適切なプロセスなどによって研磨又は他の方法で平滑化することができ、したがって、そのように結合された照射光の導波路として作用することができる。いくつかの例では、針302の管腔320を取り囲む内壁322は、管腔内の流体の屈折率よりも低い屈折率を有するガラス又はポリマーなどの誘電体材料の薄層でコーティング又は裏打ちすることができ、したがって、光ファイバと同様の内部全反射導波路が得られ、管腔内のより高屈折率の流体は「コア」として作用し、管腔壁をコーティングするより低屈折率の薄い誘電体層は「クラッディング」として作用する。(この導波路構成は、潜在的に、光がシステム100、400、500、及び600のそれぞれ針102、402、502、及び602を含む流体チャネルを通って伝搬する本開示の任意のシステムで使用することができる)。ダイオードレーザなどの任意の適切な光源(図示せず)によって提供された照射光は、針302の管腔320を下る伝搬によってその先端324に送達され、先端324にはコーティングプロセスなどによりバイオマーカ発光材料326を配置することができる。バイオマーカ発光材料326から放出、或いは散乱された光は、逆光路(針の管腔320の導波路、次いで、光学系312によって光ファイバ310に結合される)によって光受信器(図示せず)に戻され、光受信器は、針302の先端324から光ファイバ310によって戻ってきた光を検出するように構造化及び構成された光検出器又は任意の他の適切な光検出デバイスとすることができる。
【0030】
カプラ308は、流体ライン306の流体チャネル304と針302の管腔320との間で流体連通することができる1つ以上の流体チャネル328を含み得る。光学マウント314は、空隙330を画定又は提供することができ、空隙330は、流体送達システムの流路(304、328、320)から流体的に密封され、安定した屈折率の真空又は気体雰囲気をその中に維持することができ、したがって、光学的結合に対する屈折率変動の影響を低減又は排除することができる。同じ理由で、レンズ312の流体に面する側は平坦面とすることができる。
【0031】
図4は、本開示の別のバイオマーカ検出システム400の構成要素の別の具体例を概略的に示している。
図4のシステム400は、流体送達システム(図示せず)から管腔404を通じて針402の先端406に流体を送達することができる針402を含み得る。
図4のシステム400は、(限定はされないが)LUERロックフィッティングなどの任意の適切な流体コネクタとすることができる流体コネクタ410により針402を流体送達システムと結合することができる流体カプラ408を含み得る。カプラ408及び/又は針402は、コネクタ側流体チャネル413と針402の管腔404との間で流体連通することができる1つ以上の流体チャネル411を含む又は画定することができる。
【0032】
コーティングプロセスなどにより針402の先端406にバイオマーカ発光材料412を配置することができる。針402の管腔404を取り囲む内壁は、電気化学的プロセス又は他の適切なプロセスなどによって研磨又は他の方法で平滑化することができ、したがって、バイオマーカ発光材料412から放出された光を光受信器414に効率よく輸送するための導波路を形成することができ、光受信器414は、バイオマーカ発光材料から放出された光を検出するように構造化及び構成された光検出器又は任意の他の適切な光検出デバイスとすることができる。バイオマーカ発光材料412によって放出される光の1つ以上の波長に合わせて調整される波長弁別光学フィルタ416は、迷光を排除し、信号対雑音を改善する一助となり得る。光受信器414は、接続418を介して検出電子装置に電気的に接続することができる。
【0033】
図4のシステム400は、外部光源による照射なしに標的生体材料(例えば、血液)と接触すると光を生成することができるバイオマーカ発光材料412と共に用いるのに適している可能性がある。照射光源を省略すると比較的単純なバイオマーカ検出デバイス及びシステムを作製することができる。
図4のシステムと共に用いられ得る、必ずしも外部照射を必要としないバイオマーカ発光材料の一例は、ルミノールであり、これは本明細書の他の箇所でさらに説明される。
【0034】
外部光源によるバイオマーカ発光材料412の照射の省略を除いて、システム400は、バイオマーカの検出及び治療送達のためのシステム100について説明したのと同様に多くの態様で用いることができる。
【0035】
図5Aは、本開示の「自己完結型の」バイオマーカ検出針システム500の具体例を概略的に示しており、
図5Bは、システム500の構成要素のうちのいくつかの詳細を例示する拡大図を提供する。システム500は、管腔504とコーティングプロセスなどによりバイオマーカ発光材料508を配置することができる先端506とを有する針502を含み得る。システム500は、針502をマウントする及び(限定はされないが)LUERロックフィッティングなどの任意の適切な流体コネクタとすることができる流体コネクタ512により流体送達システム(図示せず)に接続することができるマウント510を含み得る。
【0036】
マウント510は、バイオマーカ発光材料508でのバイオ検出を可能にするべく光学系及び電子装置を収容することができる。マウント510において、システム500は、ダイオードレーザ又は他の適切な光源などの光源514と、光検出器又は任意の他の適切な光検出デバイスとすることができる光受信器516を含み得る。マウント510の光学系は、ビームスプリッタ518及びミラー520を含み得る。このような光学的配置では、
図5Bに破線の白抜き矢印で表される、光源514からの照射光を、針502の管腔504を下って針の先端506に向けて誘導することができ、針の先端506にあるバイオマーカ発光材料508に照射することができる。バイオマーカ発光材料508から放出、或いは散乱された光は、実線の白抜き矢印で表される逆光路によって光受信器516に戻る。針502の管腔504を取り囲む内壁522は、電気化学的プロセス又は他の適切なプロセスなどによって研磨又は他の方法で平滑化することができ、したがって、針502内を伝搬する光の導波路として作用することができる。マウント510の光学系はまた、針502の管腔504内の流体がマウント510の光学的/電子的スペース526に入るのを防ぐことができる光学窓524を含み得る。光学窓524は、波長を選択的にフィルタリングするように製造することができる(例えば、望ましくない波長を遮断しながら、光源514からの照射光及びバイオマーカ発光材料508から放出された光を選択的に通過させる)。選択的フィルタリングはまた、ビームスプリッタ518の1つ以上の表面で実施することができる。
【0037】
マウント510及び/又は針502は、コネクタ側流体チャネル530と針502の管腔504との間で流体連通し、ミラー520の周りに流体バイパスを提供することができる、1つ以上の流体チャネル528を含む又は画定することができる。
【0038】
光源514及び光受信器516は、回路基板532に電子的に結合することができ、回路基板532は、デバイスに電力及び制御信号を提供し、デバイスから信号又は他の情報を受信及び処理することができる。
図5Bでは、光源514と光受信器516との両方は、ワイヤボンディングにより回路基板532に電子的に結合されるように示されているが、これは限定ではなく、デバイスと回路基板との間の任意の適切な機能的接続(表面マウント技術など)を使用することができる。システム500の要素532に関連して用いられる「回路基板」という用語は、一般的に用いられており、限定するものとみなされるべきではない。回路基板532は、複数の個別の構成要素を備えたプリント回路基板、単一のチッププロセッサ又は「システムオンチップ」、複数のサブボード、ハイブリッドシステム、又はシステム500の要素と共にバイオマーカ検出システム機能に電力を供給する及び実行することができる任意の他の適切な構成を含み得る。マウント510は、ボタン、発光ダイオードなどの視覚的インジケータ、及び音声アナンシエータ/スピーカを含み得る(がこれらに限定されない)任意の適切なユーザインターフェース要素534をホスト又は支持することができる。回路基板532は、検出信号、セルフテスト、バッテリ状態などの動作に必要な又は望ましい任意のBLUETOOTH特徴を組み込むことができるBLUETOOTHインターフェースなどの1つ以上の無線インターフェースを含み得る。マウント510は、バッテリ又は任意の他の適切なデバイスとすることができるエネルギー蓄積装置522を収容することができ、エネルギー蓄積装置522は、光源514、光受信器516、回路基板532、及びマウント510によってホストされる他の適切な構成要素の動作電力を提供することができる。システム500は、バイオマーカの検出及び治療送達のためのシステム100について説明したのと同様に多くの態様で用いることができる。
【0039】
図6A及び
図6Bは、本開示の別のバイオマーカ検出システム600の構成要素の別の具体例を概略的に示している。
図6Aは、システム600の検出構成を一般に示しており、
図6Bは、検出後の流体送達構成を一般に示している。システム600は、管腔604を有する針602を含み得る。
図6Aの構成では、針602の先端608に又はその近くに配置された半透過性障壁606は、管腔604内に存在するバイオマーカ発光材料流体が針の先端で針を出る及び潜在的に患者の体内に入るのを防ぐことができる。システム600での半透過性障壁606の使用は、針602の管腔604内にバイオマーカ発光材料流体の大きなリザーバを設けることを可能にし、そのようなリザーバがない他の構成と比較してより大きな照射及び感度の延長された持続時間を提供することができる。
【0040】
半透過性障壁606は、標的生体材料610に対して少なくとも半透過性とすることができ、したがって、標的生体材料は、管腔604内に存在するバイオマーカ発光材料流体と接触し、反応することができる。いくつかの例では、半透過性障壁606は、例えば、血液の成分として見受けられる鉄イオン又は鉄含有化合物の透過を選択的に可能にするように構造化及び構成することができる。管腔604内に存在するバイオマーカ発光材料流体は、そのような鉄イオン又は鉄含有化合物と反応する材料とすることができる。いくつかの実施形態において、血液は無期限にアクティブであり続ける。血液中に存在する任意の形態の鉄がバイオマーカ発光材料と接触し、発光を生じると、鉄は、通常、反応で消費されない。いくつかの実施形態において、標的生体材料とバイオマーカ発光材料流体は、反応によって光子612が生成されるように反応することができる。例示したように、このような光子612は、標的生体材料が障壁606を通過して管腔の容積内に進入することに応じて、管腔604内の様々な場所で生成され得る。いくつかの実施形態において、半透過性障壁606は、障壁内の反応によって生成された光子612が検出のために障壁を出ることを可能にするべく半透明又は少なくとも部分的に透明とすることができる。
【0041】
標的生体材料610とバイオマーカ発光材料流体との接触の結果として生成された光子612は、針602の管腔604内で光受信器614に伝搬し、光受信器614は、このような光を検出するように構造化及び構成された光検出器又は任意の他の適切な光検出デバイスとすることができる。針602の管腔604を取り囲む内壁616は、電気化学的プロセス又は他の適切なプロセスなどによって研磨又は他の方法で平滑化することができ、したがって、針内を伝搬する光の導波路として作用することができる。
【0042】
図6Aでは、バイオマーカ検出システム600は検出構成で示されているが、
図6Bでは、システムは流体送達構成で示されている。システム600は、標的生体材料の検出の成功後に
図6Aの検出構成から
図6Bの流体送達構成に再構成することができるが、これは限定ではなく、このような再構成は、必ずしも生体材料の検出の成功に依存しない。
【0043】
図6Bを参照すると、再構成は、抽出穴620を介して針の管腔と流体連通することができる流体抽出ポート618を介して針602の管腔604からバイオマーカ発光材料流体を取り出すことによって行うことができる。抽出穴620は、任意の適切なプロセス(従来の機械加工、レーザドリリング、エッチングなど)によって形成することができる。バイオマーカ発光材料流体の取り出しが矢印622で示されており、これは取り出し中のバイオマーカ発光材料流体の流れの方向を示す。半透過性障壁606は、針602の管腔604内にスライド可能に構成することができる。バイオマーカ発光材料流体が管腔604から取り出される際に、スライド可能な半透過性障壁606を、その前の遠位位置(針602の先端608)から近位方向に(
図6A及び
図6Bの右の方に)引き出すことができる。バイオマーカ発光材料流体を管腔から実質的に完全に取り出した後の半透過性障壁606が管腔604の近位端に示されている。いくつかの代替的な例では、半透過性障壁606は、スライド不可能なバースト障壁の形態をとることもできる。このようなバースト障壁はバースト時に微粒子を生成しないことが一般に望ましい場合がある。
【0044】
針602の管腔604からバイオマーカ発光材料流体が取り出されると、システム600は、流体流入ポート624を介して流体送達システム(図示せず)から流体を送達するために用いることができ、流体流入ポート624は、送達穴626を介して針の管腔と流体連通することができる。送達穴626は、任意の適切なプロセス(従来の機械加工、レーザドリリング、エッチングなど)によって形成することができる。流体送達システムからの流体の送達が矢印628で示されている。
【0045】
図6A及び
図6Bの断面図でのスペース630は、例えば針602を取り囲む環状スペースを介して、流体流入ポート624と流体連通することができることに注目されたい。同様に、スペース632は、流体抽出ポート618と流体連通することができる。
【0046】
バイオマーカ発光材料と標的生体材料との接触の結果として生じる発光放出の感知によるバイオマーカ検出のための他の針構成が可能である。
図7Aは、バイオマーカ検出針700の概略的な断面図であり、
図7Bは、
図7Aの針の左側の視点から見た針700の概略的な平面図である。その先端702で、針700は、バイオマーカ発光材料704を含み得る。針700は、1つ以上の光ファイバ706、708を含み得る。光ファイバ706、708のうちの1つは、ダイオードレーザ又は他の適切な光源などの光源(図示せず)からバイオマーカ発光材料704に照射光を送達するために用いることができ、2つの光ファイバのうちのもう1つは、バイオマーカ発光材料から放出された光を光受信器(図示せず)に輸送するために用いることができ、光受信器は、光検出器又は任意の他の適切な光検出デバイスとすることができる。針700は、シリンジ又は他の適切な流体分配システム(図示せず)からの流体送達に適した管腔710を含み得る。
【0047】
この針の構成は、照射光及びバイオマーカ発光材料によって放出される光の高効率輸送のために後退しない光ファイバ706、708を使用し、同時に、針の先端702への流体送達のために常時開放されている管腔を提供する。比較すると、
図2のシステム200では、流体送達のために管腔210を開くべく、光ファイバ212を先端206から位置216に後退させる必要がある。
図1のシステム100などの本開示のいくつかの他の実施形態において、針の開放された管腔は、1つ又は複数の光ファイバが前記針の遠位先端部に延びることなく、光輸送のための光導波路を提供するために用いられ得る。多くの場合、光ファイバは、針の管腔よりも効率の高い光の輸送を提供することができる。
【0048】
図8A、
図8B、
図8C、及び
図8Dは、
図7A及び
図7Bの針700と同様に、針の先端までの長さに沿って光ファイバ及び管腔を提供する針のボアの概略的な端面図である。
図8Aの針802は、5つの光ファイバを含むことができ、外側のファイバ804は、光源照射光をバイオマーカ発光材料に送達する照射ファイバであり、内側のファイバ806は、バイオマーカ発光材料から放出された光を光受信器に輸送するために用いられる感知又は検出ファイバである。この4つの外側照射ファイバと1つの内側検出ファイバの配置は単なる例であり、限定するものとみなされるべきではない。他のファイバ構成が企図される。針802は、流体送達に適した1つ以上の管腔808を含み得る。いくつかの例では、共通の流体リザーバからの流体送達のためのより高い流体コンダクタンスを提供するべく複数の管腔を使用することができる。いくつかの他の例では、異なる流体用の独立した送達経路を提供するべく複数の管腔を使用することができる。
【0049】
図8Bの針810は、3つの光ファイバ812と流体送達に適した3つの管腔814を含み得る。
図8Cの針816は、2つの光ファイバ818と2つの管腔820を含み得る。
図8Dの針822は、単一の光ファイバ824と単一の管腔826を含み得る。これらは単なる例であり、他の数の光ファイバ及び管腔を、本開示で考えられるバイオマーカ検出針に設ける及び使用することができる。単一の光ファイバを有する針の光ファイバは、例えば、単一のファイバで照射光と検出光の結合を取り扱うために光ファイバスプリッタ(
図2のシステム200のスプリッタ222と同様)を使用することによって照射と検出との両方のために用いることができる。代替的に、単一の光ファイバを有する針の光ファイバは、照射光を必要としない検出構成でバイオマーカ発光材料から光受信器に検出光を輸送するためにのみ用いることができる。
【0050】
本開示で考えられるいくつかの例において、
図7A、
図7B、
図8A、
図8B、及び
図8Cに例示した針と同様の(限定はされない)複数の光ファイバを備えた器具を、複数のバイオマーカ及び/又は他の検出可能な物質を検出するように構成されたデバイスに使用することができる。複数のファイバのそれぞれは、独立した検出チャネル及び/又は照射チャネルに使用することができる。例えば、異なるバイオマーカ発光材料を針の先端にある異なる検出ファイバの端にコーティングすることができ、したがって、異なる発光検出信号を独立して感知することができる。異なるバイオマーカ発光材料は、複数の照射ファイバによって提供することができる異なる照射要件を有し得る。本明細書の他の箇所で説明されるように、空気/気体の検出のために別個のファイバを使用することができる。
【0051】
本開示のシステム及び方法でのバイオマーカ検出に用いられるバイオマーカ発光材料は、様々な異なる発光現象を利用することができる。いくつかのバイオマーカ発光材料は化学発光に依存し、バイオマーカ発光材料と標的バイオマーカが接触すると生じ得る化学反応は、追加のエネルギー入力なしに、バイオマーカ検出信号として感知できる光放出をもたらす。必ずしも光源を含まないシステム400及び600は、光源を含むシステムよりも(少なくとも光学的複雑さにおいて)複雑でないことを考えると、化学発光のバイオマーカ発光材料と共に用いるのに特に適している可能性がある。しかしながら、潜在的に、システム100、200、300、400、500、及び600のいずれかと、針700、802、810、816、及び822のいずれかは、化学発光検出と併せて用いることもできるが、前記システムのうちのいくつかに光源が含まれていることは、化学発光によって生成された光の検出とは無関係であり得る。
【0052】
いくつかの他のバイオマーカ発光材料は、バイオマーカ発光材料と標的生体材料との接触によって活性化される光ルミネセンス(例えば、蛍光及び/又は燐光)を使用することができる。光ルミネセンスのための照射光は、具体例のシステム100、200、300、及び500の光源によって提供することができ、システム100、200、300、500の光ファイバ(及び/又は場合によっては他の導波路)と針700、802、810、816、及び822のうちの少なくともいくつかによって輸送することができる。
【0053】
いくつかのバイオマーカ発光材料は、標的バイオマーカが存在しない状態で光ルミネセンスを呈し、標的バイオマーカに曝されると、光ルミネセンスが停止又は減少し得る。
【0054】
バイオマーカ発光材料コーティングの物理的特性は、競合因子のバランスを反映することができる。薄いコーティングは、照射光が透過し、放出光が検出のために出ていくことを可能にするのに十分なだけ半透明とすることができ、一方、より厚いコーティングは、より多いバイオマーカ検出材料及びより強い放出信号を提供することができる。コーティングは、架橋された親水性コーティングを含み得る。架橋された親水性コーティングは、バイオマーカ発光材料を、コーティングの一部として含むことができ、或いは送達デバイスにカプセル化又は密封することができる。バイオマーカ発光材料の多孔性は、バイオマーカと材料との相互作用を容易にするために望ましい場合がある。
【0055】
図9は、空気と液体とを区別するための光ファイバセンサ900(本明細書では「光ファイバ空気センサ」と呼ばれる場合がある)の概略的な断面図である。センサ900は、光ファイバコア902を含むことができ、光ファイバコア902はクラッディング904で取り囲まれ、クラッディング904はバッファ906で取り囲まれる。バッファ906は、一次バッファ層及び二次バッファ層などの1つ以上のバッファ層を含み得る。光ファイバ空気センサ900は、強度、保護などのために他の任意の適切な層(図示せず)を含み得る。
【0056】
光ファイバ空気センサ900は、光源(図示せず)からファイバ内で検出端の方に(すなわち、
図9の左から右に)伝搬する光が、検出端でファイバコア902の面909に入射すると内部全反射を経験するどうかに基づいて、検出端908で液体と空気とを区別するように構造化及び構成することができる。光線の束の一例が、コア902内で検出端908の方に伝搬し(910)、次いで、面909で反射した後、検出端から離れる方に伝搬する(912)ものとして示されている。内部全反射の場合、内部全反射の臨界角より浅い入射角で面909に入射する光線は、本質的に完全に反射され得る。臨界角よりも急な角度で入射する場合、一般に、光線は、コア902内で部分的に反射され(912のように)、光線914で概略的に例示されているようにファイバから部分的に屈折され得る。
【0057】
面909は、コア902内で検出端908の方に伝搬する光線を再帰反射するように構造化することができる。それらは、例えば、コア902の縦軸に対して45度に配向することができる。いくつかの実施形態において、それらは、キューブコーナー構成で配置することができる。コア902の縦軸(本質的に光伝搬軸である)に対して45度に配向された面は、空気と液体とを区別するために適切に配向することができる。溶融石英ファイバの場合、空気の外部媒体に対する内部全反射の臨界角は、およそ43度であり、水の外部媒体に対する内部全反射の臨界角は、およそ67度である。したがって、コア902の縦軸に沿って伝搬し、縦軸に対して45度に配向された面909に入射する光は、空気の臨界角より浅く、且つ水の臨界角より急な角度で面に入射することができる。
【0058】
動作において、検出スキームは、検出端908から再帰反射された光源からの光を検出するように適切に構成することができる光受信器(図示せず)を含み得る。この再帰反射信号は、一般に、検出端908の面909が空気の外部媒体に曝されて内部全反射が生じるとき、面が液体に曝される(したがって、内部全反射が生じない)ときとは対照的に、より明るくなり得る。面909は、それらの検出の有用性を高めるためにコーティングを含み得る。コア内の光が入射できる面の部分を含む面909の内側部分916は、検出端908が空気中にある時に面上の残留液体をはじくために疎水性コーティングを有することができる。面909の外側部分918は、内側部分916から液体を引き離すために親水性コーティングを含み得る。
【0059】
図10は、光ファイバ空気センサ1002を組み込むことができる針システム1000の具体例のボアの概略的な端面図である。
図9の光ファイバ空気センサ900のようなものであり得るセンサ1002は、モールド1008内の皮下針1004内に配置することができる。皮下針1004は、薬剤流体を送達するために流体チャネル1006を包囲することができるが、これは限定ではなく、他の実施形態において、針は、他の治療ペイロード及び/又はデバイスを送達又は収容することができる。光ファイバ空気センサは、本明細書に記載のバイオマーカ検出システムとの組み合わせを含む、医療機器の他の構成に組み込むことができると考えられる。
【0060】
図11は、空気と液体とを区別するための音響的プローブ(本明細書では「音響的空気センサ」と呼ばれる場合がある)を組み込むことができる針システム1100の概略的な断面図である。1つ以上のエラストマーアタッチメント1106を介して皮下針1104内に感知ロッド1102を取り付けることができる。感知ロッド1102は、圧電アクチュエータ1108によって反応マス1110に対して長手方向に(その上に重ねられた矢印で示される)適切な周波数で駆動することができる。針システム1100の遠位端にある感知ロッド1102の先端1112は、組織、液体、又は気体であるかどうかにかかわらずその位置に存在し得る任意の媒体と機械的に接触することができる。これらの媒体のそれぞれは、感知ロッド1102の動きに対して異なる機械的インピーダンスを呈することがあり、インピーダンスは一般に、順に減少する(組織>液体>気体)。音響的/機械的インピーダンスは、(A)一定の駆動力を適用し、振幅を測定する、(B)一定の振幅に駆動し、駆動力を測定する、及び/又は(C)駆動力と運動との間の位相シフトを測定する、を含むがこれらに限定されない様々な方法で測定することができる。針システム1100は、薬剤流体を送達するために流体チャネル1114を包囲することができるが、これは限定ではなく、他の実施形態において、針は、他の治療ペイロード及び/又はデバイスを送達又は収容することができる。音響的空気センサは、本明細書に記載のバイオマーカ検出システムとの組み合わせを含む、医療機器の他の構成に組み込むことができると考えられる。
【0061】
図12A、
図12B、及び
図12Cは、それぞれ、空気と液体とを区別するための電気的センサ(本明細書では「電気的空気センサ」と呼ばれる場合がある)を組み込むことができる針システム1200の具体例の略平面図、概略的な横断面図、及びボアの概略的な端面図である。導体1204A、1204Bは、皮下針1202内に存在する絶縁体1206内に成形することができる。皮下針1202は、接地することができ、導体1204A、1204Bは、電気駆動及び感知装置(図示せず)に接続することができる。導体1204A、1204Bの端は、それらの面1208A、1208Bが針の先端にある任意の媒体と導電接触することができるように、針1202の遠位先端部において研磨することができる。一般に、導体1204A、1204Bの面1208A及び1208B間の電気伝導率は、前記媒体に依存し得る。例えば、ヒト血漿の導電率(13.5×10
-3)[(Ω・cm)
-1で測定される]は、胃液(24×10
-3)及び尿(40×10
-3)の導電率とは著しく異なる。空気の導電率は、一般に著しくより低い。空気スペースに直面したときの導体1204A、1204Bの面1208A及び1208Bからの液体の排除を助けるために疎水性コーティングを針の端に配置することができる。導体1204A、1204Bの面1208A及び1208B間の導電率を監視することにより、針システム1200の先端に存在する媒体の差異を検出する、場合によっては特定することができる。針システム1200は、薬剤流体を送達するために流体チャネル1210を包囲することができるが、これは限定ではなく、他の実施形態において、針は、他の治療ペイロード及び/又はデバイスを送達又は収容することができる。電気的空気センサは、本明細書に記載のバイオマーカ検出システムとの組み合わせを含む、医療機器の他の構成に組み込むことができると考えられる。
【0062】
図12A、
図12B、及び
図12Cのシステム1200と同様の針システムが、
図13A、
図13B、及び
図13Cに例示されており、これらはそれぞれ、電気的空気センサを組み込むことができる針システム1300の具体例の概略的な横断面図、及び針システム1300の2つの代替的な構成のボアの概略的な端面図である。導体1204A、1204Bが針1202の管腔内の絶縁体1206内に成形される針システム1200と比較して、
図13A、
図13B、及び
図13Cの構成では、ワイヤが皮下針1302の管腔内に結合される。
図13A、
図13B、及び
図13Cの構成のワイヤはそれぞれ、導体304A、1304B、又は1304Cを含み、各導体は絶縁体1312で取り囲まれる。ワイヤは、接着剤1314で針の管腔内に結合することができる。
【0063】
図13Bの構成では、導体1304Aを有する単一のワイヤが針1302内に結合される。この構成では、導体1304Aが一方の導体として作用し、針1302が電気的空気感知のための他方の導体として作用する。
図13Cの構成では、導体1304B、1304Cを有する2つのワイヤが針1302内に結合され、空気感知回路を完成させるのに必要とされる2つの導体として作用する。空気スペースに直面したときの導体1304A、1304B、1304Cの面1308A、1308B、1308C及び針1302の端1316からの液体の排除を助けるために疎水性コーティングを針の端に配置することができる。針システム1300は、薬剤流体を送達するために流体チャネル1310を包囲することができるが、これは限定ではなく、他の実施形態において、針は、他の治療ペイロード及び/又はデバイスを送達又は収容することができる。
【0064】
システム1000、1100、1200、又は1300のうちの1つなどの、光学的、音響的、又は電気的空気検出システムを有する針システムの例示的な使用方法では、臨床医にフィードバックを提供するべく空気検出システムが作動された状態で、臨床医が針を患者内に前進させる。針の先端が関心ある媒体内に進むと、空気検出システムに作動的に結合される通知システム(図示せず)は、標的媒体が検出されていることを臨床医に通知することができる。次いで、臨床医は、標的媒体の検出と、患者の解剖学的構造の知識(例えば、針をさらに前進させる、前進を止める、又は後退させること)に従って針の先端を配置する。針の先端が適切に配置された状態で、流体送達システムからの治療流体の送達(又は他の治療行為)を実行することができる。
【0065】
本開示はさらに、患者の解剖学的構造内の外科用器具の正確な配置を支援するべく患者の解剖学的構造内の気体(「空気」と呼ばれる場合がある)と液体とを区別するためのリアルタイムのシステム及び方法を企図している。このようなシステムは、光学的、音響的、及び/又は電気的検出を含むことができ、光学的、音響的、及び/又は電気的インピーダンスの差に基づくことができる。
【0066】
本開示はまた、標的バイオマーカの存在をリアルタイムで検出することができる、バイオマーカ検出システムの位置を求めるためのリアルタイムのシステム及び方法を企図している。いくつかの実施形態において、開示されるバイオマーカ検出システムは、特定のタイプの身体組織の存在を感知することができるプローブを含み得る。例えば、本開示に係るバイオマーカ検出システムは、そのタイプの組織と接触したときに鉄、したがって血液の存在を検出するプローブを含み得る。開示される血液のリアルタイムプローブは、血液に近接しているか否かを示すことができ、プローブが血液と接触するときに血液の存在を示し、プローブが血液と接触しなくなったときに血液が存在しないことを示す。本開示に係るリアルタイムプローブは、例えば、手術中に体内を精査することを含む内視鏡手技に、又は前述のように脊椎腔などの狭い場所に麻酔薬を導入しようとする際に有用であり得る。このようなプローブは、プローブの近くの鉄の濃度を検出することによって動作し得る。
【0067】
簡略化された典型的な蛍光プロセスが、
図14に例示したヤブロンスキー図に示されている。蛍光は、「ある波長での光エネルギー(光子)の分子吸収と、別のより長い波長でのその再放出」として定義される。その過程で、光子が、例えば、蛍光分子の基底状態(S
0)から吸収されて蛍光分子が励起状態(S
n)などの励起状態になり、基底状態と励起状態とのエネルギーギャップは、吸収された放射のエネルギーと一致する。多くの場合、
図14に示すように、電子は(S
n)などの上位の励起状態になることがあり、励起した分子は振動を通じてエネルギーを失い、最低の励起状態(S
1)に達するまで配座が変化することがある。(S
1)状態に十分な電子が存在するとき、蛍光分子の励起状態は基底状態(S
0)に降下して戻り、吸収波長とは異なる波長の光子を放出する。放出される光子は、ほとんどの場合、吸収時よりも低いエネルギー(より高い波長)である。蛍光プロセスは周期的であり、したがって、フルオロフォアは繰返し励起され、光子の蛍光発光吸収、したがって、それぞれ(S
1)又は(S
n)への励起と、放射放出(蛍光)を伴う(S
1)から(S
0)への再変換が繰り返され得る。
【0068】
図15は、フルオレセインの化学構造及び分子式を表したものである。フルオレセイン(C
20H
10Na
2O
5)及び密接に関連する構造は、典型的な医療処置を超える期間にわたって持続し、活発に発光(蛍光)し続けることができる。フルオレセイン又はフルオレセインのような)コーティングを備えた針での検出及び発光は持続することができ、典型的な医療処置を超える時間にわたって活発に発光し続けることができる。血液からの鉄イオン(Fe
2+)がコーティングと接触すると、鉄は、異なる周波数で吸収放射の再放出を可能にする触媒として作用し、反応では消費されない。
【0069】
フルオレセイン分子は、鉄イオンへの強い親和性及び選択性を有し、金属イオンへの供与に利用可能な2つの非共有電子対を有する。共有結合が生じると、分子は蛍光を発する能力を得る。鉄イオンをキレート化するこの選択性は、フルオレセインがこのセンサの理想的な選択肢である理由の1つである。このセンサプラットフォームは、このフルオロフォアとその金属に特異的なキレートFe2+との間の光誘起電子移動(PET)に依存する。また、一般に、蛍光特性の持続は利点である。ルミノールなどによる鉄が消費される化学プロセスでは、発光の持続は鉄が消費される時間に限られ、多くの場合、外科的手技よりも短い。ラミネーションの強度はまた、時間が経つにつれて減少する。
【0070】
比較的無制限の蛍光時間に伴う問題は、鉄イオンに富む環境を離れるときに、センサが「オン」状態のままであることである。センサの一実施形態の目標が、鉄イオン濃度へのリアルタイムの動的応答を有するセンサを作製することである場合、主要な目的は、センサがより低い鉄濃度の組織に移行する際に蛍光が時間とともに減少するように、これらの鉄イオン結合を一定の速度で切断することである。
【0071】
リアルタイムで鉄濃度を測定するように設計された本実施形態は、蛍光媒体コーティングの表側がサンプル流体に曝されている間、コーティングの裏側で蛍光媒体コーティングから鉄イオンを着実に引き離す手段を含み得る。本開示は、蛍光媒体コーティングの下にある、鉄イオンに対してより強い親和性をもつ第2のコーティングを使用するバイオマーカ検出プローブを導入する。蛍光媒体コーティングは、コーティングの表側が高い鉄濃度を経験するときにこのコーティングの鉄イオン濃度が蛍光を生じ、コーティングの表側が低い鉄イオン濃度に曝されたときに鉄イオンを一掃し、それに応じて蛍光強度が低下するように半透過性の膜とすることができる。この第2の層の組成は、時間とともに検出層からイオンを除去するための所望の特性をもつ多くの異なる材料で構成することができる。
【0072】
図16は、リアルタイム蛍光プローブの一実施形態の平面横断面図である。
図16に示されているリアルタイム蛍光プローブは針1601の直径内に収められている。針1601は、針1601が生体系に挿入されたときに生体組織と接触するその外縁に蛍光コーティング1602(例えば、フルオレセイン又は関連する分子を含有する)を有する。蛍光コーティング1602は、検出後に鉄イオンを効果的に除去するイオン消費コーティング1604上に配置される。蛍光コーティング1602が上に配置されているイオン消費コーティング1604は、蛍光コーティング1602が鉄イオン1608の存在下にあるときに蛍光コーティング1602から放出された放射を検出器に伝導することができる光ファイバ導波路1606に隣接している。
【0073】
イオン感知応答時間を変更するべく様々な層のコーティングの厚さ及び透過性を調整することができる。コーティング組成物は、放出された光が光ファイバ導波路又は選択された光伝送媒体に入るように、蛍光コーティングによって放出される光の波長に対して実質的に透明でなければならない。
【0074】
別の企図される実施形態は、蛍光媒体コーティング自体にナノ粒子を組み込むことができ、蛍光媒体コーティングは、時間とともに、しかし標的イオンの存在下で蛍光コーティングが発光するのを妨げるほど速すぎずに鉄イオンを消費するべく化学物質をゆっくりと放出することができる。また、イオン感知応答時間を変更するべく放出速度を調整することができる。