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特許7560155有機無機混合材料、その調製方法及び出発原料の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】有機無機混合材料、その調製方法及び出発原料の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240925BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240925BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20240925BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L75/04
C08K3/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022547020
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 CN2019104479
(87)【国際公開番号】W WO2021042314
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】522271937
【氏名又は名称】詮達化学股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANDA CHEMICAL CORP.
【住所又は居所原語表記】7F, No. 288, Ming Sheng W. Rd. Taipei, Taiwan 103
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】戴憲弘
(72)【発明者】
【氏名】呉建欣
(72)【発明者】
【氏名】黄英治
(72)【発明者】
【氏名】黄▲イュ▼翔
(72)【発明者】
【氏名】叶世杰
(72)【発明者】
【氏名】鄭如忠
(72)【発明者】
【氏名】楊兆翔
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-232197(JP,A)
【文献】特開2001-002746(JP,A)
【文献】特開2005-187768(JP,A)
【文献】特開平08-034828(JP,A)
【文献】特開2017-203159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機無機混合材料であって、
構造式(1)で示される化合物とフェノール類とが反応した縮合物、及び高分子のプレポリマーからゾルゲル法で調製され、
前記有機無機混合材料の総重量において、含まれる無機化合物の重量割合は5~50wt.%であり、且つフーリエ変換赤外スペクトルの1050±50cm-1の位置において特徴的ピークを有する、ことを特徴とする有機無機混合材料。
(BPはフェノール、ポリフェノール誘導体又はハロゲン含有フェノール類であり、
Xは(-CH-)m又は-O-であり、mは1~10の正整数であり、
Yは(H)a、(-OH)b、(-OCHc、(-OCHCHd又は(-OCHCHCHe、且つa+b+c+d+e=3である。)
【請求項2】
前記構造式(1)で示される化合物は、4-(2-(4-フェノール)プロパン-2-イル) フェニル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンエステルである、ことを特徴とする請求項1に記載の有機無機混合材料。
【請求項3】
前記フェノールは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、構造式(2)で示される化合物、構造式(3)で示される化合物又は構造式(4)で示される化合物を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の有機無機混合材料。
(Rはそれぞれ炭素数10以下の長炭素鎖、シクロアルカン、ハロアルカン、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、又は二置換ポリフェノール基であり、
はそれぞれ水素又は炭素数5以下の長炭素鎖、シクロアルカン、ハロアルカン、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、又はポリフェノール基であり、
Zはそれぞれ独立に4以下の整数であり、p≦20である。)
【請求項4】
前記高分子は、ポリウレタン、エポキシ樹脂又はポリイミドを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の有機無機混合材料。
【請求項5】
前記高分子のプレポリマーの分子量は、5,000~50,000Daである、ことを特徴とする請求項1に記載の有機無機混合材料。
【請求項6】
前記ゾルゲル法は、加水分解凝縮反応である、ことを特徴とする請求項1に記載の有機無機混合材料。
【請求項7】
以下の工程を含むことを特徴とする有機無機混合材料の調製方法:
(1)構造式(1)で示される化合物とフェノール類とが反応した縮合物を提供する工程;
(BPはフェノール、ポリフェノール誘導体又はハロゲン含有フェノール類であり、
Xは(-CH-)m又は-O-であり、mは1~10の正整数であり、
Yは(H)a、(-OH)b、(-OCHc、(-OCHCHd又は(-OCHCHCHe、且つa+b+c+d+e=3である。)
(2)前記構造式(1)で示される化合物とフェノール類とが反応した縮合物を、分子量が5,000~50,000である高分子のプレポリマーに加え、混合物を得、前記プレポリマーの含有量は、前記混合物の10~60質量%を占める工程;
(3)ゾルゲル法により、前記混合物が加水分解凝縮反応して前記有機無機混合材料を形成し、前記有機無機混合材料の総重量において、含まれる無機化合物の重量割合は5~50wt.%であり、且つフーリエ変換赤外スペクトルの1050±50cm-1の位置において特徴的ピークを有する工程
【請求項8】
前記構造式(1)で示される化合物は、4-(2-(4-フェノール)プロパン-2-イル) フェニル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンエステルである、ことを特徴とする請求項7に記載の有機無機混合材料の調製方法。
【請求項9】
前記フェノールは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、構造式(2)で示される化合物、構造式(3)で示される化合物又は構造式(4)で示される化合物を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の有機無機混合材料の調製方法。
(Rはそれぞれ炭素数10以下の長炭素鎖、シクロアルカン、ハロアルカン、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、又は二置換ポリフェノール基であり、
はそれぞれ水素又は炭素数5以下の長炭素鎖、シクロアルカン、ハロアルカン、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、又はポリフェノール基であり、
Zはそれぞれ独立に4以下の整数であり、p≦20である。)
【請求項10】
前記高分子は、ポリウレタン、エポキシ樹脂又はポリイミドを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の有機無機混合材料の調製方法。
【請求項11】
前記混合物は、溶媒又は添加剤を更に含む、ことを特徴とする請求項7に記載の有機無機混合材料の調製方法。
【請求項12】
前記溶媒は、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン又はアニソールを含む、ことを特徴とする請求項11に記載の有機無機混合材料の調製方法。
【請求項13】
前記添加剤は、ホウ酸、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸、亜硫酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、アルカリ金属水酸化物、リン酸ナトリウム、脂肪族アミン類、ピペリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体又は窒素複素環含有化合物を含む、ことを特徴とする請求項11に記載の有機無機混合材料の調製方法。
【請求項14】
前記加水分解凝縮反応の温度は、20~60℃である、ことを特徴とする請求項7に記載の有機無機混合材料の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機無機混合材料に関するものである。当該有機無機混合材料に含まれる無機化合物の重量割合は5~50wt.%であり、且つフーリエ変換赤外スペクトルの約 1050±50 cm-1の位置に特徴的ピークを有する。そして、本発明は、当該有機無機混合材料の調製方法及びその出発原料の組成を提供する。当該出発原料の組成の1つは、イソシアネートとフェノール類の縮合物である。特に、当該イソシアネートの調製方法は、炭酸エステル類から変換して前記イソシアネートを生成し、当該方法は、ポリカーボネートエステルの廃棄物問題を解決することができ、且つ変換過程において二酸化炭素を放出しないため、経済的で環境に優しい製造方法である。
【背景技術】
【0002】
複合材料はハイテク産業、特に有機無機混合材料関連の用途に多く使用され、その特殊な高ガスバリア性、低吸湿性及び分散性により、材料特性が従来の材料に比べて大幅に向上し、光学、医療材料、エレクトロニクス、特殊コーティングなどのハイテク用途に不可欠な材料となっている。
【0003】
複合材料は通常有機高分子と無機物で有機無機混合材料を形成するが、有機高分子の分子鎖に比べて、無機物粒子又は粉末は、相対的に大きいナノスケールの大きさを有し、かつ形態変化後に2次元平板やシート状材料が高分子に導入される過程において、有機-無機相の分離現象が起きることがあり、複合材料の特性及び材料の安定性に影響を与える。
【0004】
従って、要求を満たすように、如何に添加剤の組成を設計するか、及び有機-無機物間の相溶性を促進すると同時に、成膜性、吸水性又はガスバリア性等の複合材料全体の特性を向上することは、当技術分野で克服すべき緊急の課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の発明の背景に鑑み、産業上の要求を満たすために、本発明的の第1目的は、新たな有機無機混合材料を提供することである。革新的に、本発明の有機無機混合材料は、新たな改質剤及び導入方法により調製される。第二に、本発明の有機無機混合材料は、炭酸エステルや炭酸エステルのリサイクルから再利用できるグリーン原料であるため、材料のリサイクル使用目的を実現可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
具体的に、前記有機無機混合材料は、構造式(1)で示される化合物又はイソシアネートとフェノール類とが反応した縮合物又は炭酸ジフェニル又は無機微粒子、及び高分子のプレポリマーからゾルゲル法で調製され、前記有機無機混合材料の総重量において、含まれる無機化合物の重量割合は5~50wt.%であり、且つフーリエ変換赤外スペクトルの約1050±50cm-1の位置において特徴的ピークを有する。
【0007】
具体的に、本発明の前記改質剤は、前記構造式(1)で示される化合物である。
【0008】
前記構造式(1)において、BPはフェノール、ポリフェノール誘導体又はハロゲン含有フェノール類であり、Xは(-CH-)m又は-O-であり、mは1~10の正整数であり、Yは(H)a、(-OH)b、(-OCHc、(-OCHCHd又は(-OCHCHCHe、且つa+b+c+d+e=3である。
【0009】
具体的に、前記フェノールは、ビスフェノールA (2,2-bis(4-hydroxyphenyl) propane (bisphenol A))、ビスフェノール F (2,2-bis(4-hydroxyphenyl) methane (bisphenol F))、構造式(2)で示される化合物、構造式(3) で示される化合物又は構造式(4)で示される化合物を含む。
【0010】
前記構造式(2)で示される化合物は以下の通りである。
前記構造式(3)で示す化合物は以下の通りである。
前記構造式(4)で示す化合物は以下の通りである。
【0011】
前記構造式(2)、(3)及び(4)で示されるRはそれぞれ炭素数10以下の長炭素鎖、シクロアルカン、ハロアルカン、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、又は二置換ポリフェノール基であり、Rはそれぞれ水素又は炭素数5以下の長炭素鎖、シクロアルカン、ハロアルカン、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、又はポリフェノール基であり、Zはそれぞれ独立に4以下の整数であり、p≦20である。
【0012】
本発明の有機無機混合材料は、上述した改質剤の反応組成を含むことで、有機物と無機物との相溶性を向上し、ゾルゲル法により物性の良い有機無機混合材料を調製することができる。
【0013】
具体的に、前記反応組成の主にそれぞれ(1)前記構造式(1)で示される化合物及び高分子のプレポリマー;(2)前記イソシアネートとフェノール類とが反応した縮合物及び高分子のプレポリマー;(3)前記炭酸ジフェニル(Diphenyl carbonate)及び高分子のプレポリマー又は(4)前記無機微粒子及び高分子のプレポリマーである。
【0014】
具体的に、前記高分子は、ポリウレタン、エポキシ樹脂又はポリイミドを含み、そのプレポリマーの分子量は5,000~50,000Daである。
【0015】
本発明の第2目的は、第1目的による有機無機混合材料の調製方法を提供することである。創新的に、本発明により提供される方法は、ポリ炭酸エステルの廃棄物問題を解決可能であり、二酸化炭素を調製された有機無機混合材料に固定し続け、材料中の二酸化炭素の炭素循環を延長し、経済的で環境に優しい製造方法である。
【0016】
具体的に、本発明の前記有機無機混合材料の調製方法は、以下の工程を含む:(1)構造式(1)で示される化合物又はイソシアネートとフェノール類とが反応した縮合物又は炭酸ジフェニル又は無機微粒子を提供する工程;
(2)前記構造式(1)で示される化合物又はイソシアネートとフェノール類とが反応した縮合物又は炭酸ジフェニル又は無機微粒子を、分子量が5,000~50,000である高分子のプレポリマーに加え、得到混合物を得、前記プレポリマーの含有量は、前記混合物の10~60質量%を占める工程;
(3)ゾルゲル法により、前記混合物が加水分解凝縮反応して前記有機無機混合材料を形成し、前記有機無機混合材料の総重量において、含まれる無機化合物の重量割合は5~50wt.%であり、且つフーリエ変換赤外スペクトルの約1050±50cm-1の位置において特徴的ピークを有する。
【0017】
具体的に、前記混合物は、更に溶媒を含み、これにより前記混合物は均一になる。前記溶媒は、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)、ジメチルスルホキシド(Dimethyl Sulfoxide)、ジメチルホルムアミドDimethyl Formamide、N-メチルピロリドン(NMethyl-2-Pyrrolidone)又はアニソール(Anisole)を含む。
【0018】
好ましくは、前記加水分解凝縮反応の温度範囲は20~60℃である。
【0019】
本発明の第3目的は、炭酸エステル類からのイソシアネートの調製方法を提供することである。本発明の方法により調製して得られるイソシアネートは、本発明の第1目的の有機無機混合材料の重要な原料の1つである。特に、前記調製方法は、ポリ炭酸エステルの廃棄物を反応原料の1つとしており、2段階の加熱工程を行うだけで、イソシアネートに転換可能である。そのため、本発明の第3目により提供される炭酸エステル類からのイソシアネートの調製方法は、ポリ炭酸エステルの廃棄物の処理問題を解決可能である。従来のホスゲン法によるイソシアネートの調製方法に比べて、本発明の方法は、非ホスゲン法であり、加熱工程において二酸化炭素を放出することがないので、本発明の第3目の炭酸エステル類からのイソシアネートの調製方法は、安全で、環境に優しいという利点を兼ね備え、有効なイソシアネートの調製方法である。
【0020】
具体的に、前記炭酸エステル類からのイソシアネートの調製方法は、以下の工程を含む:混合物を提供する工程であって、前記混合物は、炭酸エステル類、アミン類又はシリコン含有アミン類の化合物及び溶媒を含み、前記炭酸エステル類は、ポリ炭酸エステル、炭酸ジフェニル又はその組み合わせを含み;転換プロセスを行う工程であって、前記混合物の前記炭酸エステル類及び前記アミン類又はシリコン含有アミン類の化合物を転換させて前記イソシアネートを生成し、前記転換プロセスは、第1加熱工程及び第2加熱工程を含み、前記第1加熱工程の操作温度は40~150℃であり、前記第2加熱工程の操作温度は100 ~250℃であり、且つ前記第2加熱工程の操作圧力は0.0001~400mmHgである。
【0021】
具体的に、前記混合物の総重量において、前記ポリ炭酸エステル又は炭酸ジフェニル又はその組み合わせの反応濃度は、5~50wt.%である。
【発明の効果】
【0022】
以上より、本発明により提供される有機無機混合材料、その調製方法及びその出発原料の調製方法は、少なくとも以下の創新性及び利点を有する。(1)本発明により提供される有機無機混合材料は、特殊な改質剤を加えることで、有機物と無機物との相溶性を向上し、防水性や成膜性等のその材料の全体の物性を更に高める。(2)本発明により提供される有機無機混合材料の調製方法において使用する反応組成の1つは、ポリ炭酸エステル等の廃棄物の高分子であるため、前記方法は、高分子材料の廃棄物問題を解決可能である。(3)本発明の有機無機混合材料のうちの1つの出発原料は、「イソシアネート」であり、これは炭酸エステル類を出発物質の1つとし、加熱工程を行うだけてイソシアネートに転換可能であり、言い換えると、本発明は、更に非ホスゲン法であるイソシアネートの調製方法を提供し、前記方法は、イソシアネートの生成過程において、炭酸エステル類構造の二酸化炭素を放出することがないので、二酸化炭素の酸素循環を大幅にに延長し、安全で、環境に優しい調製方法である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1のフーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトル図である。
図2】実施例2のフーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトル図である。
図3】実施例3のフーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトル図である。
図4】実施例4のフーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトル図である。
図5】実施例5のフーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトル図である。
図6】実施例10のフーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の上記及びその他の技術的内容、特徴および効果は、以下において図面を参照して好ましい実施例について詳細に説明により明確に示される。本発明を十分に理解できるようにするため、以下の説明において、詳細な工程とその構成を示す。当然のながら、本発明は、その実施において、当業者に周知の特定の細部に限定されるものではない。 一方、知られている組成物や工程については、本発明の不必要な限定を避けるため、詳細な説明を省略する。 以下、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明するが、これらの詳細な説明に加えて、本発明は他の実施形態においても広く実施することができ、本発明の範囲は後記特許の範囲によって限定されるものではない。
【0025】
本発明の第1実施例によれば、本発明は新たな有機無機混合材料を提供する。創新的に、本発明の有機無機混合材料は、新たな改質剤及び導入方法により調製される。第二に、本発明の有機無機混合材料は、炭酸エステルや炭酸エステルのリサイクルから再利用できるグリーン原料であるため、材料のリサイクル使用目的を実現可能である。
【0026】
具体的実施例において、前記有機無機混合材料は、構造式(1)で示される化合物、イソシアネートとフェノール類とが反応した縮合物、ジフェニルカーボネート又は無機微粒子、及び高分子のプレポリマーでゾルゲル法により調製される。当該有機無機混合材料の総重量において、含まれる無機化合物の重量割合は5~50wt.%であり、且つフーリエ変換赤外スペクトルのうち約1050±50cm-1の位置において特徴的ピークを有する。
【0027】
具体的に、前記改質剤は構造式(1)で示される化合物である。
【0028】
前記構造式(1)において、BPはフェノール、ポリフェノール誘導体又はハロゲン含有フェノール類であり、Xは(-CH-CH-)m又は-O-であり、mは1~10の正整数であり、Yは(H)、(OH)、(-OCH、(-OCHCH又は(-OCHCHCHであり、且つa+b+c+d+e=3である。即ち、a、b、c、dの合計は3である。好ましくは、b、c、d又はeは1~3の整数である。
【0029】
具体的に、前記フェノールは、ビスフェノールA(2,2-bis(4-hydroxyphenyl) propane(bisphenol A)、ビスフェノール F (2,2-bis(4-hydroxyphenyl) methane (bisphenol F)、構造式(2)で示される化合物、構造式(3)で示される化合物又は構造式(4)で示される化合物を含む。
【0030】
具体的に、前記構造式(2)で示される化合物は以下の通りである。
【0031】
具体的に、前記構造式(3)で示される化合物は以下の通りである。
【0032】
具体的に、前記構造式(4)で示される化合物は以下の通りである。
【0033】
前記構造式(2)、(3)及び(4)で示されるRはそれぞれ炭素数10以下の長炭素鎖、シクロアルカン、ハロアルカン、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基又は二置換ポリフェノール基であってよく、Rはそれぞれ水素又は炭素数5以下の長炭素鎖、シクロアルカン、ハロアルカン、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基又はポリフェノール基であってよく、Zはそれぞれ独立に4以下の整数であり、p≦20である。
【0034】
好ましい実施例において、構造式(1)を有する化合物は、4-(2-(4-フェノール)プロパン-2-イル) フェニル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンエステル(4-(2-(4-hydroxyphenyl)propane-2-yl)phenyl(3-(trimethoxysilyl)propyl)carbamateであり、当該化合物の別の名称は、トリメチルシロキシアミノ末端ポリジメチルシロキサン又は3-一級アミノプロピルトリエトキシシランである。シロキサンのアミン末端基は一級アミン基であり、その特性により、前記シリコーンポリマーが水類において広いpH範囲にわたって正味の正電荷を形成することができる。
【0035】
具体的実施例において、当該イソシアネートは、脂肪族イソシアネート、ヘキシルイソシアネート(hexyl isocyanate)、1-オクチルイソシアネート(octyl isocyanate)、ドデシルイソシアネート(dodecyl isocyanate)、オクタデシルイソシアネート(octadecyl isocyanate)、シクロヘキシルイソシアネート(cyclohexyl isocyanate)、トリメチルシランイソシアネート (trimethylsilyl isocyanate)、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン (3-(triethoxysilyl)propyl isocyanate)、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(3-(trimethoxysilyl)propyl isocyanate)、イソプロピルイソシアネート(phenylethyl isocyanate)、イソシアン酸メチル(methyl isocyanate)、イソシアン酸エチル(ethyl isocyanate)、イソシアン酸プロピル(propyl isocyanate)、エイコシルイソシアネート(eicosyl isocyanate)又はテトラコシルイソシアネート(tetracosyl isocyanate)を含む。
【0036】
具体的実施例において、当該無機微粒子は、構造式(1)で示される化合物又は当該イソシアネートとフェノール類が反応した縮合物が無機粒子の表面を覆って構成されるものである。
【0037】
具体的実施例において、当該無機粒子は、シリコン酸化物又は硫化物、アルミニウム酸化物又は硫化物、チタン酸化物又は硫化物、ゲルマニウム酸化物又は硫化物、鉄酸化物又は硫化物、バリウム酸化物又は硫化物、亜鉛酸化物又は硫化物、銅酸化物又は硫化物、クロム酸化物又は硫化物、ニオブ酸化物又は硫化物、マンガン酸化物又は硫化物、スズ酸化物又は硫化物、リチウム酸化物又は硫化物、セリウム酸化物又は硫化物、コバルト酸化物又は硫化物、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化亜鉛、ジルコニア、酸化鉄、チタン酸バリウム、ニオブ酸リチウム、セレン化カドミウム、酸化銅、ジルコン酸バリウム、三酸化クロム、五酸化ニオブ、二酸化セリウム、チタン酸鉄、鉄シリサイド、酸化アルミニウム/酸化チタン混合層、酸化アルミニウム/ジルコニア混合層、酸化マンガン、酸化スズ、又は硫化亜鉛を含む。
【0038】
具体的実施例において、当該無機粒子の粒径範囲は、20~1,000nmである。
【0039】
具体的実施例において、当該高分子は、ポリウレタン、エポキシ樹脂又はポリイミドを含む。
【0040】
具体的実施例において、当該高分子のプレポリマーの分子量は、5,000~50,000Daである。
【0041】
具体的実施例において、当該ゾルゲル法は、加水分解凝縮反応である。
【0042】
具体的実施例において、当該無機化合物は、シリコン酸化物又は硫化物、アルミニウム酸化物又は硫化物、チタン酸化物又は硫化物、ゲルマニウム酸化物又は硫化物、鉄酸化物又は硫化物、バリウム酸化物又は硫化物、亜鉛酸化物又は硫化物物、銅酸化物又は硫化物、クロム酸化物又は硫化物、ニオブ酸化物又は硫化物、マンガン酸化物又は硫化物、スズ酸化物又は硫化物、リチウム酸化物又は硫化物、セリウム酸化物又は硫化物、コバルト酸化物又は硫化物、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化亜鉛、ジルコニア、酸化鉄、チタン酸バリウム、ニオブ酸リチウム、セレン化カドミウム、酸化銅、ジルコン酸バリウム、三酸化クロム、五酸化ニオブ、二酸化セリウム、チタン酸鉄、鉄シリサイド、酸化アルミニウム/酸化チタン混合層、酸化アルミニウム/ジルコニア混合層、酸化マンガン、酸化スズ、又は硫化亜鉛を含む。
【0043】
本発明の第2実施例によるば、本発明は有機無機混合材料の調製方法を提供する。前記調製方法は、構造式(1)で示される化合物、イソシアネートとフェノール類とが反応した縮合物、炭酸ジフェニル又は無機微粒子を提供する工程と、前記構造式(1)で示される化合物、イソシアネートとフェノール類とが反応した縮合物、炭酸ジフェニル又は無機微粒子を分子量は5,000~50,000の高分子のプレポリマーに加えて混合物を得、当該プレポリマーの含有量は前記混合物の10 ~ 60質量%である工程と、ゾルゲル法により、前記混合物の組成が加水分解凝縮反応を行い、前記有機無機混合材料を形成し、前記有機無機混合材料の総重量において、含まれる無機化合物の重量割合は5~50wt.%であり、且つ共有結合の再結合反応が可能な構造を有し、フーリエ変換赤外スペクトルの約1050±50 cm-1位置において特徴的ピークを有する工程と含む。
【0044】
具体的実施例において、前記構造式(1)は以下の通りである。
【0045】
前記構造式(1)において、BPはフェノール、ポリフェノール誘導体又はハロゲン含有フェノール類であり、Xは(-CH-)又は-O-であり、mは1~10の正整数であり、Yは(H)、(-OH)、(-OCH、(-OCHCH又は(-OCHCHCH)e且つa+b+c+d+e=3のいずれの組み合わせであってもよい。
【0046】
具体的に、前記フェノールは、ビスフェノールA (2,2-bis(4-hydroxyphenyl)propane(bisphenol A))、ビスフェノール F(2,2-bis(4-hydroxyphenyl)methane(bisphenol F))、構造式(2)で示される化合物、構造式(3)で示される化合物又は構造式(4)で示される化合物を含む。
【0047】
具体的に、前記構造式(2)で示される化合物は以下の通りである。
【0048】
具体的に、前記構造式(3)で示される化合物は以下の通りである。
【0049】
具体的に、前記構造式(4)で示される化合物以下の通りである。
【0050】
前記構造式(2)、(3)及び(4)で示されるRはそれぞれ炭素数10以下の長炭素鎖、シクロアルカン、ハロアルカン、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、又は二置換ポリフェノール基であってもよく、Rはそれぞれ水素又は炭素数5以下の長炭素鎖、シクロアルカン、ハロアルカン、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、又はポリフェノール基であってもよく、Zはそれぞれ独立に4以下の整数であり、p≦20である。
【0051】
好ましい実施例において、構造式(1)を有する化合物は、4-(2-(4-フェノール)プロパン-2-イル) フェニル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンエステル(4-(2-(4-hydroxyphenyl)propane-2-yl)phenyl(3-(trimethoxysilyl)propyl)carbamateであり、当該化合物の別の名称は、トリメチルシロキシアミノ末端ポリジメチルシロキサン又は3-一級アミノプロピルトリエトキシシランである。シロキサンのアミン末端基は一級アミン基であり、その特性により、前記シリコーンポリマーが水類において広いpH範囲にわたって正味の正電荷を形成することができる。
【0052】
具体的実施例において、前記イソシアネートは、脂肪族イソシアネート、ヘキシルイソシアネート(hexyl isocyanate)、1-オクチルイソシアネート(octyl isocyanate)、ドデシルイソシアネート(dodecyl isocyanate)、オクタデシルイソシアネート(octadecyl isocyanate)、シクロヘキシルイソシアネート(cyclohexyl isocyanate)、トリメチルシランイソシアネート(trimethylsilyl isocyanate)、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(3-(triethoxysilyl)propyl isocyanate)、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(3-(trimethoxysilyl)propyl isocyanate)、イソプロピルイソシアネートphenylethyl isocyanate、イソシアン酸メチル(methyl isocyanate)、イソシアン酸エチル(ethyl isocyanate)、イソシアン酸プロピル(propyl isocyanate)、エイコシルイソシアネート(eicosyl isocyanate)又はテトラコシルイソシアネート(tetracosyl isocyanate)。
【0053】
具体的実施例において、前記無機微粒子は、構造式(1)で示される化合物又は前記イソシアネートとフェノール類とが反応した縮合物で無機粒子の表面覆って構成されるものである。
【0054】
具体的実施例において、前記無機粒子は、シリコン酸化物又は硫化物、アルミニウム酸化物又は硫化物、チタン酸化物又は硫化物、ゲルマニウム酸化物又は硫化物、鉄酸化物又は硫化物、バリウム酸化物又は硫化物、亜鉛酸化物又は硫化物物、銅酸化物又は硫化物、クロム酸化物又は硫化物、ニオブ酸化物又は硫化物、マンガン酸化物又は硫化物、スズ酸化物又は硫化物、リチウム酸化物又は硫化物、セリウム酸化物又は硫化物、コバルト酸化物又は硫化物、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化亜鉛、ジルコニア、酸化鉄、チタン酸バリウム、ニオブ酸リチウム、セレン化カドミウム、酸化銅、ジルコン酸バリウム、三酸化クロム、五酸化ニオブ、二酸化セリウム、チタン酸鉄、鉄シリサイド、酸化アルミニウム/酸化チタン混合層、酸化アルミニウム/ジルコニア混合層、酸化マンガン、酸化スズ、又は硫化亜鉛を含む。
【0055】
具体的実施例において、前記無機粒子の粒径範囲は20~1,000nmである。
【0056】
具体的実施例において、前記高分子はポリウレタン、エポキシ樹脂又はポリイミドを含む。
【0057】
具体的実施例において、前記高分子のプレポリマーの分子量は5,000~50,000Daである。
【0058】
具体的実施例において、前記混合物は、更に溶媒又は添加剤を含む。
【0059】
具体的実施例において、溶媒は、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)、ジメチルスルホキシド(Dimethyl Sulfoxide)、ジメチルホルムアミド(Dimethyl Formamide)、N-メチルピロリドン(N-Methyl-2-Pyrrolidone)又はアニソール(Anisole)を含む。
【0060】
具体的実施例において、前記添加剤は、ホウ酸、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸、亜硫酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、アルカリ金属水酸化物、リン酸ナトリウム、脂肪族アミン類、ピペリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体又は窒素複素環含有化合物を含む。
具体的実施例において、前記加水分解凝縮反応の温度範囲は20~60℃である。
【0061】
本発明の第3実施例によれば、本発明は炭酸エステル類からイソシアネートを調製する方法を提供する。前記方法は、混合物を提供する工程と、転換プロセスを行う工程とを含む。前記混合物は、炭酸エステル類、アミン類又はシリコン含有アミン類的化合物及び溶媒を含む。前記炭酸エステル類は、ポリ炭酸エステル、炭酸ジフェニル又はその組み合わせを含む。前記転換プロセスは、前記混合物の前記炭酸エステル類及び前記アミン類又はシリコン含有アミン類の化合物が変換されて前記イソシアネートを生成する。前記転換プロセスは、第1加熱工程と、第2加熱工程とを含み、前記第1加熱工程の操作温度は40~150℃であり、前記第2加熱工程の操作温度は100 ~250℃であり、且つ前記第2加熱工程の操作圧力は、0.0001~400mmHgである。
【0062】
具体的実施例において、前記アミン類化合物は、ベンジルアミン(Benzylamine)、n-エチルアミン(Ethylamine)、フェネチルアミン(Phenethylamine)、n-プロピルアミン(Propylamine)、3-フェニルプロピルアミン(3-Phenylpropylamine)、n-ブチルアミン(Butylamine)、4-フェニルブチルアミン(4-PhenylButylamine)、n-ペンチルアミン(Pentylamine)、5-フェニルペンチルアミン(5-PhenylPentylamine)、n-ヘキシルアミン(Hexylamine)、6-フェニルヘキシルアミン(6-PhenylHexylamine)、イソブチルアミン(IsoButylamine)、アミノエチル-1,4-ジアゼピン(Aminoethyl piperazine)、メチルヘキサヒドロピラジン(1-Methylpiperazine)、N-アミノプロピルモルホリン(3-Morpholinopropylamine)又はアミノエチル-1,4-ジアゼピン(Aminoethyl piperazine)を含む。
【0063】
具体的実施例において、前記シリコン含有アミン類化合物は、3-アミノプロピルトリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane)又は3-アミノプロピルトリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)。
【0064】
具体的実施例において、前記混合物の総重量において、前記ポリ炭酸エステル、炭酸ジフェニル又はその組み合わせの反応濃度は5~50wt.%である。
【0065】
具体的実施例において、前記溶媒は、ジエチルエーテル(Diethyl ether)、ジプロピルエーテル(Di-n-propyl ether)、イソプロピルエーテル(Isopropyl ether)、アニソール(Anisole)、エトキシベンゼン(EthoxyBenzene)、プロポキシベンゼン(PropoxyBenzene)、ブトキシベンゼン(ButoxyBenzene)、O-メチルアニソール(2-MethoxyToluene)、m-メチルアニソール(3-MethoxyToluene)、p-メチルアニソール(4-MethoxyToluene)、ベンジルエチルエーテル(Benzyl ethyl ether)、ジフェニルエーテル(Diphenyl ether)、ジベンジルエーテル(Dibenzyl ether)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)、ジヒドロピラン(2,3-Dihydropyran)、テトラヒドロピラン(Tetrahydropyran)、2-メチルテトラヒドロピラン(2-Methyl Tetrahydropyran)、ベンゼン(Benzene)、トルエン(Toluene)、キシレン(Xylene)、エチルベンゼン(EthylBenzene)、ジエチルベンゼン(DiEthylBenzene)又はシクロヘキシルベンゼン(CyclohexylBenzene)を含む。
【0066】
以上から、本発明により提供される有機無機混合材料及びその製方法は、新たな改質剤及び導入方式により、有機物及び無機物の相溶性を大幅に向上し、ゾルゲル法を利用して本発明の前記有機無機混合材料を調製する。そして、本発明の前記有機無機混合材料は、炭酸エステル又はポリ炭酸エステルのリサイクルから再利用できるグリーン原料であるため、材料のリサイクル使用目的を実現可能である。更に、本発明により提供される炭酸エステル類からイソシアネートを調製する方法は非ホスゲン法であり、且つイソシアネートを調製する過程において、二酸化炭素が放出されないため、二酸化炭素の炭素循環が延長され、安全で環境に優しい調製方法である。
【0067】
以下の実験例及び実施例は、上記の発明の内容及び実施例で述べた内容にに基づくものであり、本発明の詳細な説明として用いられる。
【0068】
本発明の構造式(1)を有する化合物/改質剤の通常の調製工程
適量のイソシアネート及びフェノール類を非極性溶媒に溶解して均一な混合物を形成し、60~100℃で反応する。反応を促進するために、少量の有機スズ、アミン、ビスマス、亜鉛等の触媒を加えてもよい。12時間観察してフェノール類が完全に消費された後、精製して溶媒を除去し、構造式(1)で示される化合物を得た。
【0069】
改質剤の代表的実験例:3-一級アミノプロピルトリエトキシシラン;(4-(2-(4-hydroxyphenyl)propan-2-yl)phenyl(3-(trimethoxysilyl)propyl)carbamateの調製方法
イソシアネートプロピルトリエトキシシラン5gとビスフェノールA(BPA) 4.17gをトルエン50mlに溶解し、80~100℃で反応する。少量の有機スズ触媒を加えて反応を加速させる。薄層クロマトグラフィー(thin layer chromatography)で12時間観察してビスフェノールAが完全に消費された後、精製して溶媒を除去し、3-一級アミノプロピルトリエトキシシラン7.8g(4-(2-(4-hydroxyphenyl)propan-2-yl)phenyl(3-(trimethoxysilyl)propyl)carbamateを得た。反応過程をFT-IRでモニターし、1716cm-1のカーバメート(carbamate)の炭素-酸素二重結合官能基吸収ピークを生成し、最後に減圧・蒸留により溶媒を除去して生成物を得、H-NMR分析を行った。
【0070】
(FTIR)(KBr):1716 cm-1, 3350 cm-1(NH,urethane), 950cm-1 (Si-O); H-NMR (400MHz, d-DMSO): δ(ppm)=0.5(t, 6H), 1.2 (t, 27H), 1.5(t, 18H), 3.0(m, 6H), 3.8(m, 18H), 6.7(m, 6H), 7.0(m, 12H), 7.2(m, 6H), 7.7(t, 3H), 9.2(s, 3H)。
【0071】
上述した具有構造式(1)を有する化合物の通常の調製工程において使用するイソシアネートは、脂肪族のイソシアネート、単独又は混合で脂肪族イソシアネート、ヘキシルイソシアネート(hexyl isocyanate)、1-オクチルイソシアネート (octyl isocyanate)、ドデシルイソシアネート (dodecyl isocyanate)、オクタデシルイソシアネート(octadecyl isocyanate)、シクロヘキシルイソシアネート(cyclohexyl isocyanate)、トリメチルシランイソシアネート (trimethylsilyl isocyanate)、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(3-(triethoxysilyl)propyl isocyanate)、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(3-(trimethoxysilyl)propyl isocyanate)、イソプロピルイソシアネートphenylethyl isocyanate、イソシアン酸メチル(methyl isocyanate)、イソシアン酸エチル(ethyl isocyanate)、イソシアン酸プロピル(propyl isocyanate)、エイコシルイソシアネート(eicosyl isocyanate)又はテトラコシルイソシアネート(tetracosyl isocyanate)を使用する。
【0072】
上述した構造式(1)を有する化合物の通常の調製工程において使用するフェノール類は、ビスフェノール又はポリフェノール類に由来し、前記フェノールは、ビスフェノールA(2,2-bis(4-hydroxyphenyl) propane (bisphenol A))、ビスフェノール F(2,2-bis(4-hydroxyphenyl) methane (bisphenol F))、構造式(2)で示される化合物、構造式(3)で示される化合物又は構造式(4)で示される化合物を含む。
【0073】
本発明の前記無機微粒子の通常の調製工程
構造式(1)のシロキサン官能基含有化合物と無機物粒子表面のヒドロキシル基(-OH)、アミン基(-NH)又はチオール基(-SH)と縮合反応を行うことで、カルバメート官能基を含有する構造式(1)の化合物が無機粒子の表面に結合・固定され、本発明の前記無機微粒子を形成する。前記無機微粒子は、表面官能化無機粒子である。そして、前記無機粒子の粒径範囲は、20~1,000 nmである。具体的に、前記無機粒子は、シリコン酸化物又は硫化物、アルミニウム酸化物又は硫化物、チタン酸化物又は硫化物、ゲルマニウム酸化物又は硫化物、鉄酸化物又は硫化物、バリウム酸化物又は硫化物、亜鉛酸化物又は硫化物物、銅酸化物又は硫化物、クロム酸化物又は硫化物、ニオブ酸化物又は硫化物、マンガン酸化物又は硫化物、スズ酸化物又は硫化物、リチウム酸化物又は硫化物、セリウム酸化物又は硫化物、コバルト酸化物又は硫化物、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化亜鉛、ジルコニア、酸化鉄、チタン酸バリウム、ニオブ酸リチウム、セレン化カドミウム、酸化銅、ジルコン酸バリウム、三酸化クロム、五酸化ニオブ、二酸化セリウム、チタン酸鉄、鉄シリサイド、酸化アルミニウム/酸化チタン混合層、酸化アルミニウム/ジルコニア混合層、酸化マンガン、酸化スズ、又は硫化亜鉛を含む。
【0074】
本発明の前記有機無機混合材料の通常の調製工程
前記構造式(1)で示される化合物、前記イソシアネートとフェノール類とが反応した縮合物、炭酸ジフェニル又は前記無機微粒子を提供する。特に、カルバメート官能基(carbamate)を有する原料とカルボニル基(carbonyl)を含有する高分子は相溶性が良い。高分子プレポリマーを提供する。前記高分子プレポリマーは、ポリウレタン(polyurethanes)、エポキシ樹脂(epoxy resins)、ポリイミド又はポリアミック酸(Polyamic acid; PAA)等の分子量5,000~50,000の高分子のプレポリマーを含む。前記構造式(1)の化合物を前記高分子プレポリマーに直接加え、赤外線分光計によりモニターし、950cm-1においてSi-O-Rの官能基の左右に吸収ピークが現れることが観察でき、構造式(1)で示される化合物と前記高分子プレポリマーを含む混合溶液を溶媒で希釈した後、0.1~5.0重量比の塩酸、硝又は醋酸等の酸性触媒を加えて均一に攪拌し、成膜して乾燥させ、60℃のオーブンに入れ、24~48時間でゾルゲル反応を完成し、次に真空オーブンで乾燥させて過剰な溶媒を除去した。反応終了後、950cm-1のSi-O-R官能基がなくなり、再び1000~1100cm-1のSi-O-Si官能基が形成され、本発明の前記有機/無機混合材料の調製を完成した。
【0075】
ポリウレタンプレポリマーの通常の調製工程
前記ポリウレタンのプレポリマーは、高分子重合反応により調製される。具体的に、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)又は1,6-ヘキシレンジイソシアネート(HDI)等のジイソシアネート、及びポリエーテルグリコール(PEG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリカプロラクトンポリオール(PCL)、又はポリカーボネートジオール(PCPO)等のポリオールを60~80 ℃で縮合重合し、反応過程で少量のジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)、ジメチルスルホキシド(Dimethyl Sulfoxide)又はアニソール(Anisole)等の溶媒を加えてもよい。約30分後に、予備重合反応を完了し、この際に、FT-IRスペクトルにおいてカルバメート官能基の特徴的ピークを観察できた。
【0076】
前記ポリウレタンのプレポリマー及び有機無機混合材料の通常の調製工程により調製される各種のカルバメート含有有機無機混合材料は、表1に示す。ジイソシアネート及びポリオールは、ポリウレタンプレポリマーの反応組成である。シリカ(Silica)は、調製して得られる有機無機混合材料の無機化合物の含有量である。
【0077】
表1
a)ポリオールの後方の数字は分子量を示し、ポリエーテルポリオール2000は分子量が2000g/molのポリエーテルポリオールを示す。 b) シリカ(%)は全体の有機無機混合材料における無機化合物の重量割合を示す。 c)有機無機混合材料の平面上の水接触角を示す。Xは成膜性質が劣ることを示す。Oは成膜性質が普通であることを示す。◎は成膜性質が優れることを示す。
【0078】
実施例1は、ジフェニルメタンジイソシアネートMDIとポリエステルポリオールPCL2000とを予備重合したポリウレタンである。実施例1は、構造式(1)を加えていない実験対照組であり、図1に示すFT-IRスペクトルによれば、1737cm-1付近の位置においてカルバメート官能基の特徴的ピークを観察できる。実施例2は、MDIとポリエステルポリオールPCL2000とを重合したポリウレタンプレポリマーであり、その後、構造式(1)で示される化合物又は代表実験例で生成される化合物を前記MDIとポリエステルポリオールPCL2000とが重合したポリウレタンプレポリマーに加え、混合溶液を形成し、溶媒で希釈した後、0.1~5.0重量比の塩酸、硝酸又は醋酸等の酸性触媒を加えて均一に攪拌し、成膜して乾燥させ、60℃のオーブンに入れ、24~48時間でゾルゲル反応を完成し、次に真空オーブンで乾燥させて過剰な溶媒を除去した。反応終了後、950cm-1のSi-O-R官能基がなくなり、再びSi-O-Si官能基が生成され、(FTIR)スペクトル1041cm-1の位置に特徴的ピークを有し、そのスペクトル図は図2に示す。これにより、本発明の前記有機/無機混合材料の調製を完成した。実施例3は、MDIとポリ炭酸エステルポリオールPCPO2000とを予備重合したポリウレタンであり、実施例3には構造式(1)を加えていない。図3に示すように、その(FTIR)スペクトルは、1742cm-1付近においてカルバメート及び炭酸エステルが重なったC=O(carbonyl)官能基を確認できる。実施例4は、MDIとポリ炭酸エステルポリオールPCPO2000とを予備重合したポリウレタンであり、構造式(1)で示される化合物又は代表実験例で生成される化合物を加え、上述した実施例2と同様なゾルゲル反応工程及び調製プロセスを経、(FTIR)スペクトルの1085cm-1付近において新たな生成されたSi-O-Si官能基を観察でき、得られる有機/無機混合材料の(FTIR)スペクトルを図4に示す。
【0079】
実施例5は、MDIとポリエーテルポリオールPTMEG2000とを重合したポリウレタンであり、実施例5は、構造式(1)を加えていない。(FTIR)スペクトルの1732cm-1付近においてカルバメート官能基の特徴的ピークを観察でき、その(FTIR)スペクトルを図5に示す。実施例6~10は、構造式(1)で示される化合物又は代表実験例の化合物と前記高分子プレポリマーの混合溶液を溶媒で希釈した後、更に寸法が20~1,000nmであるシリカベースナノマイクロスフェアを加え、0.1~5.0重量比の酸性触媒を加えて均一に攪拌し、成膜して乾燥させて60℃のオーブンに入れ、24~48時間でゾルゲル反応を完成し、次に真空オーブンで乾燥させて過剰な溶媒を除去した。反応終了後、(FTIR)スペクトル位置に950cm-1のSi-O-R官能基がなくなり、その後、1095cm-1のSi-O-Si官能基を生成(実施例10)し、本発明の前記有機無機混合材料を得、その(FTIR)スペクトルを図6に示す。
【0080】
上述した実施例1、3、5は、構造式(1)で示される化合物又は代表実験例の化合物を加えていない実験対照群である。上述した実施例2、4、6~10は、各種のジイソシアネートとポリオールとで形成されるポリウレタンのプレポリマー及び構造式(1)で示される化合物又は代表実験例の化合物(3-一級アミノプロピルトリエトキシシラン;(4-(2-(4-hydroxyphenyl)propan-2-yl)phenyl (3-(trimethoxysilyl)propyl)carbamate)を上記の通常工程により調製して得られる有機無機混合材料を示す。
【0081】
以上より、本発明のカルバメート官能基(carbamate)を有する化合物は、無機物と高分子プレポリマーと相溶を有効に補助し、ゾルゲル法により調製して得られる本発明の前記有機無機混合材料に含まれる無機化合物の重量割合是5~50wt.%である。第2に、本発明の有機無機混合材料の平面上の水接触角は、通常80~90度であり、その技術的意義は、本発明の有機無機混合材料の耐水性又は耐湿潤性が大幅に改善されることであり、そのため、本発明により提供される有機無機混合材料は、絶縁、密封および防水又は構造材料として特に有利である。
【0082】
本発明の炭酸エステル類からイソシアネートを調製する代表実験例
3-アミノプロピルトリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)及びポリ炭酸エステルを溶媒に混合し、前記溶媒は、ジエチルエーテル(Diethyl ether)、ジプロピルエーテル(Di-n-propyl ether)、イソプロピルエーテル(Isopropyl ether)アニソール(Anisole)、エトキシベンゼン(EthoxyBenzene)、プロポキシベンゼン(PropoxyBenzene)、ブトキシベンゼン(ButoxyBenzene)、O-メチルアニソール(2-MethoxyToluene)、m-メチルアニソール(3-MethoxyToluene)、p-メチルアニソール(4-MethoxyToluene)、ベンジルエチルエーテル(Benzyl ethyl ether)、ジフェニルエーテル(Diphenyl ether)、ジベンジルエーテル(Dibenzyl ether)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)、ジヒドロピラン(2,3-Dihydropyran)、テトラヒドロピラン(Tetrahydropyran)、2-メチルテトラヒドロピラン(2-Methyl Tetrahydropyran)、ベンゼン(Benzene)、トルエン(Toluene)、キシレン(Xylene)、エチルベンゼン(EthylBenzene)、ジエチルベンゼン(DiEthylBenzene)又はシクロヘキシルベンゼン(CyclohexylBenzene)を含む。まず、80~90℃に加熱して反応し、その後、200~250℃に昇温するとともに、高温を制御するための操作圧力は真空下であり、圧力範囲は0.0001-400mmHgである。最後に、イソシアネートプロピルトリエトキシシランのイソシアネートが得られ、その(FTIR)スペクトルの2260cm-1においてイソシアネートの特徴的吸収ピークが観察された。
【0083】
前記炭酸エステル類からイソシアネートを調製する代表実験例で使用する3-アミノプロピルトリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)の代わりに、その他のアミン類化合物を使用してもよい。これにより各種のアルキル基又は官能基のイソシアネートが調製される。前記その他のアミン類化合物は、ベンジルアミン(Benzylamine)、n-エチルアミン(Ethylamine)、フェネチルアミン(Phenethylamine)、n-プロピルアミン(Propylamine)、3-フェニルプロピルアミン(3-Phenylpropylamine)、n-ブチルアミン(Butylamine)、4-フェニルブチルアミン(4-PhenylButylamine)、n-ペンチルアミン(Pentylamine)、5-フェニルペンチルアミン(5-PhenylPentylamine)、n-ヘキシルアミン(Hexylamine)、6-フェニルヘキシルアミン(6-PhenylHexylamine)、イソブチルアミン(IsoButylamine) アミノエチル-1,4-ジアゼピン(Aminoethyl piperazine)、メチルヘキサヒドロピラジン(1-Methylpiperazine)、N-アミノプロピルモルホリン(3-Morpholinopropylamine)又はアミノエチル-1,4-ジアゼピン(Aminoethyl piperazine)等の脂肪族アミン類又は3-アミノプロピルトリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane)等のシリコン含有アミン類化合物を含む。
【0084】
本発明を説明するために特定実験例を使用したが、それは本書の範囲を限定するものではなく、本書の要旨から逸脱しない限り、当技術分野に精通している者は、様々な修正または変更が可能であることを理解するであろう。そして、要約と発明の名称は、特許の検索を支援するためのものであり、本発明の権利の範囲を制限することを意図したものではありません。
図1
図2
図3
図4
図5
図6